09/10/09 21:23:36 2aAFWx1j
愛の歌2番とおまけ、めっちゃ笑いました。有難うございます。
私も小説を書いてみました。アホみたいですが読んでみてください。
大坂の道頓堀の川沿いには歌舞伎を上演する劇場がいくつもあり、川舟から降りた千両役者の
華やかな姿を見られる。一番人気の芝居がかかる劇場の裏の中庭を通った奥座敷では、主演した
女形を抱くことも出来たが、ほんのごく一部のお偉方だけである。
裏通りに入ると侘しげな陰間茶屋がいくつもあるが、表通りとは違い華やかさも色気もない。
その中でも「ゐたう」はそういった陰間茶屋の中でも最も人気がなく、いわば武家の三男以下の
貧乏武士などがわずかな金を稼いでは通うような店であった。皆が陰で「ゐたうは厭うに通ず」などと
悪口をいうのも尤もな、ひんまがった陋屋の奥には、とうのたった醜い陰間しかいないのである。
その「ゐたう」を贔屓にしている者がいた。武士とは名ばかり、主も決まった収入もなく、
住まいとしているなめくじ長屋の他の住人の手助けをすることで糊口をしのいでいた。
といっても未亡人や老人などの力仕事をたまに請け負う程度、その日生きていくのがやっと
だったのだから、滅多と行かれはしない。
余り恵まれているとは言えないが奉公人である友人が、彼を憐れんで臨時の仕事を回してくれた
時に得られる臨時収入があればやっと行くことができるのだった。
「おたけ。暫くぶりだった。お前に会えるのをどれほど待ち焦がれたことか」
すすけたような畳の上に敷かれた粗末な布団の上で彼が腕の中のおたけに語りかけた。
「まぁ…江櫓本様。私には勿体ないようなお言葉を…。私もお待ち申しておりました」
「相変わらず愛くるしい。お前ほどの可愛い子を私は見たことがない」
「ああ江櫓本様…」おたけは何と言っていいかわからず絶句していた。貧乏子沢山の農家からまだ
物心が付いたか付いていないか分からないほど幼い頃に売り飛ばされてきたが、一度もそんな
言葉を掛けられたことがない。なかなか買い手がつかずこの「ゐたう」に二束三文でやっと
売り飛ばされたような余り麗しいとは言えない子だった。