08/01/09 21:23:27 7ecvSydb
才人達の立ち去ったその裏道には、なぜか野次馬が一人も来なかった。
あれほどの轟音を立て、銃が乱射されていたにも拘らず、である。
それは、周囲に張られた結界のせい。
あらかじめシェフィールドに渡されていた結界装置で、マキシマムは周囲に人払いの結界を築いていたのだ。
しかし、その結界は、術者の死亡と共に消えるはずだった。
つまり。マキシマムは、腹部を拳で貫かれ、なお生きているのだ。
しかし。壁にめり込み、口から腹から血を流す金髪の少年は、どう見ても死んでいた。
そこへ。
一人の女が現れる。
長い髪をなびかせ、その女は金髪の少年の握り締める、銀色のリボルバーを手に取る。
「情けないわね。身体を与えられておきながら」
全てのマジック・アイテムを操るミョズニトニルンの心に、そのリボルバーから声が流れ込む。
なぁに。次は上手くやるさ!
あぁ、凄ェゾクゾクしてきた!またやりてえ!アイツとやりてえ!
そう、このリボルバーこそが、マキシマムの本体。
精神だけでハルケギニアにやってきた、マキシマムそのものであった。
「…次は油断せずにやりなさい。
我が主はともかく、私はそこまで寛容ではないわ」
ミョズニトニルンはそう言って、手にした皮袋にリボルバーを詰め込む。
その間も、マキシマムは心の声で喚いていた。
ヒリヒリしたぜ!あの感覚!最高だ!これが『充実感』ってヤツだな!
シェフィールドは、その声に応える代わりに、呆れたように呟いた。
「…どうしようもない中毒者ね、この男」