07/12/02 11:24:03 T4fnFOBf
>>1乙です
3:名無しさん@ピンキー
07/12/02 17:06:43 KxtRP6DN
3get
4:名無しさん@ピンキー
07/12/02 17:36:52 WBE6/Fj5
大草さんのやきうどんが食べたいです
5:名無しさん@ピンキー
07/12/02 18:40:42 wlwPFytY
大草さんが食べたいです
6:名無しさん@ピンキー
07/12/02 18:53:14 N1QJSQtN
じゃ奈美ちゃんはもらっていきますね
7:名無しさん@ピンキー
07/12/02 19:30:33 6S/2xNBE
では私は霧ちゃんを
8:名無しさん@ピンキー
07/12/02 19:51:25 +5uPXFsk
楓はいただいきます
9:名無しさん@ピンキー
07/12/02 20:19:51 CxLqbEXs
クラスの女子は全員先生のお手つきなんで無理でーす
10:名無しさん@ピンキー
07/12/02 20:44:51 WBE6/Fj5
じゃあ知恵先生で
11:名無しさん@ピンキー
07/12/02 21:05:39 mRiOS/p2
>>1さん乙です!
12:名無しさん@ピンキー
07/12/02 21:38:00 GwylNz3r
じゃ絶倫先生だな
13:名無しさん@ピンキー
07/12/02 21:40:06 CxLqbEXs
>>12
いや、倫ちゃんも望坊ちゃまが担任のクラスの生徒だから
14:名無しさん@ピンキー
07/12/02 22:29:44 XW22ROIX
じゃあ、ことのんも先生のお手付きなのか…
15:絶望の器
07/12/03 02:46:49 1qYltdt2
その九.
URLリンク(d.hatena.ne.jp)
どういう展開になるのかよく分からない。
(完成率35%)
16:名無しさん@ピンキー
07/12/03 07:12:20 dnrGpUtP
霧も出てくるのか
確かにどういう展開になるのか分からないw
しかしそれが良い 続きが楽しみだ
17:名無しさん@ピンキー
07/12/03 13:01:08 HOhX0Ncz
薄暗い明かりの元、千里が望の腕に抱かれている。
「ぐすぐす…」
「うわ何で泣くんですか木津さん!?すいません、痛かったんですか?」
「だって…だって先生最近抱いてくれなかったし、それどころか私のこと避けてるみたいで…
先生に嫌われちゃったのかと、ずっとずっと心配で…」
「…すいません、迷ってたんです…なかなか決心がつかなくて…」
「先生…?」
「ですが、もう迷いません決めました、木津さん。」
ぎゅうっと望は千里を抱きしめた。
「え…それって…本当ですか、嬉しい!」
「ええ、一周して気が付きました、やっぱり木津さんが一番です。」
「………一周…?」
望が何やらプロポーズの言葉を続けているが、魚目状態の千里の耳には届いていないようだ。
「ふふふ…一周ですか…先生が立派なだんなさまになるためにはきっちりした躾が必要なようね…」
「あれ?…あの木津さん…なんですかそのスコップは…?」
千里が一糸纏わぬ姿でスコップを水平に構える。
その姿は月明かりに照らされ、この世のものとは思えないほど美しく輝いていた。
埋。
18:名無しさん@ピンキー
07/12/03 13:03:53 Rsh/xhq8
新スレを埋めてどうするww
19:名無しさん@ピンキー
07/12/03 16:13:17 R1HCs4gM
育ってダーリンで冬馬がうららに色々されるようなのない?
20:名無しさん@ピンキー
07/12/03 22:40:24 dnrGpUtP
>>15
ああ…なんかいい、本当に好きだなぁ…このSS。
淡々としていながら、徐々に高まっていく感じが堪らなく好きです。
キャラの雰囲気も皆、大好き。
てか、好きばっかり言っててすんません。
21:名無しさん@ピンキー
07/12/04 00:44:22 PQQ1YwGT
こんな素敵なスレがあったのですね
眼福です
作家の方々ありがとうございます
22:名無しさん@ピンキー
07/12/04 01:02:22 azkhMoim
>>18
望を埋めているので問題ありません。
23:名無しさん@ピンキー
07/12/04 09:02:27 vsa9NRY1
>>18
新スレ繁栄のための人柱ですよ
24:名無しさん@ピンキー
07/12/04 11:46:49 ZUMIz62E
ocn...とうとう全鯖永久規制来たか...運営すごいことするな。
dionもまだ全鯖規制続いてるしasahiやeonetも食らってるらしいし
これは職人さん減りそうだ...。
25:真昼
07/12/04 17:06:15 DCnWG7Gr
全スレも微妙に埋まってないというのに、新スレを土足で踏み荒らさせていただきます。
今週の楓があまりに可愛かったので、愛情が妙な方向に暴走した結果、捏造設定の嵐に。
原作設定ぶち壊し、エロなしです。メインは楓、カエレ、望の三名になります。
無駄に長くなりましたので、2~3回に分けた投下となりそうです。よろしければお付き合いくださいませ。
26:ダブルキャスト 01
07/12/04 17:13:02 DCnWG7Gr
ゴトン、ゴトン、ゴトン――
規則的に身体が上下に揺れる。風の鳴る音が窓越しに耳を打つ。
平日の昼間だからだろう。人の少ない電車内で、望は一人の少女と向かい合って座っていた。
「あの……、私、どこへ連れてかれるんですか?」
さっきから俯いたまま顔を上げない少女に、おずおずと話しかける。けれど少女は、頑なに顔を上げようとしない。
「……あの……、木村、カエレさん?」
名を呼ぶと、ピクリと細い肩を震わせる少女―木村カエレ。
彼女はゆっくりとした動作で、長い金髪に埋もれた顔を上げる。
その表情は、いつもの彼女からは想像出来ないほど儚げだった。望はハッとして、もしやと思いつつ問う。
「もしかして、今は……楓さん、なのですか?」
カエレ―いや、楓はゆっくりと頷くと、眉をハの字にして目を伏せた。
「…突然このようなマネをして申し訳ありません…。ひどく、驚かれたでしょう?」
「い、いえ、確かに驚きましたが……」
滅多に顔を合わせる事のない、彼女の中に眠るもう一つの人格の発露に慌てつつも、
本当に申し訳無さそうに謝られて、望は咄嗟に手をパタパタと振りフォローする。
「何か理由があるのでしょう?
話してくれませんか。これから、私をどこに連れて行こうとしているのか」
楓の緊張を解すような優しい声色で問いかける。
伏せていた目を上げた彼女は、その瞳に決意の色を宿していた。
◇ ◆ ◇ ◆
紅葉の美しい中庭で、望はベンチに座りぼんやりと秋の空を見ていた。
昼休みの僅かな休息を、独りでセンチメンタルに過ごしていると――
「せ、先生」
「ん?」
気の抜けた返事を返しつつ、空から視線を下ろす。そこには心なしか頬の赤いカエレが立っていた。
「木村さん。どうしました?」
スカートを押さえてモジモジと視線を逸らしながら立っている彼女の様子に、怪訝な顔をしながらも立ち上がる望。
思えば、もうこの時既に彼女の人格は入れ替わっていたのだろう。そもそも気付かなかったのがおかしい。
「あ、あの…その」
紅潮する頬をそっと掌で覆いながら、上目遣いに望を見つめる彼女であったが、
「―!」
ふいに、彼の背後から突き刺さる視線に身体を硬直させる。
そこには、いつも望に付き纏っている少女の姿があった。彼は気付いていないらしく、キョトンとした顔で楓を見ている。
「木村さん?」
訝しげに首を傾げる望。その背後で、まといは鋭い視線を楓に向けた。
近寄るな。
彼女の目は明らかにそう告げていたが、逆にそれが楓の対抗心を燃やす事となる。
今の彼女には、譲れない目的があったのだ。
27:ダブルキャスト 02
07/12/04 17:14:18 DCnWG7Gr
「―先生!!」
まといの視線を撥ね退けるように大声で愛しい人を呼びながら、その細い腕を掴む楓。
「え、な、なんです?」
ぎょっとしながら目を白黒させる望。その背後で、まといの目が更に険しくなった。
まといの身体が動く、その前に。
楓は望を引き寄せると―その身体を勢いよく抱え上げた。
ちなみにお姫様抱っこである。
突然の事にぎょっとするまといの隙を突いて、彼女は全速力で駆け出した。
「は、え、えええぇぇえええッ!?」
何故いきなりこんな展開になっているのかちっとも分からない望は、困惑の中で悲鳴を上げた。
正直楓自身、自分が今何をしているのか分かっていなかった。
ただ愛しい人を是が日でもあの場から引き剥がしたい。その一心で、彼女は大和撫子の謙虚さを捨て去った。
「今は何も聞かず、どうか私についてきて下さいましッ!」
「いや、いやいや、ついて行くも何も連れ去られてますから!
ちょ、ま……だ、誰かーーーッ!!人攫いですーーーーッ!!」
◇ ◆ ◇ ◆
そんなこんなで突然連れ去られ、駅に着くとそのまま電車に押し込まれ――
あれよあれよという間に、今に至る。
楓は今更になって、なんて大胆な事をしたのかと、羞恥心と罪悪感に襲われていた。
だがもう後戻りは出来ない。彼女はぎゅっと膝の上の両手を握り締めて、真っ直ぐに望の目を見つめた。
「先生に、どうしても見せたいものがあるのです」
「見せたいもの、ですか」
「とても大切なものなのです。それは、ここから少し遠い所にあります」
「どのくらい遠いのですか?」
窓の外に視線を移し、過ぎ去っていく景色を瞳に映す望。
「隣町です。電車で30分程でしょうか…。
―ついたら、そこで、とても大切な話をしたいのです」
たどたどしい口調ではあったが、彼女の必死な想いだけは伝わってきた。
望はやれやれと溜息を吐きながらも、ゆっくりと頷く。
「仕方ありませんね。まぁ、ここまで来てしまったのですから、貴女の気の済むまで付き合いますよ」
学校を早退してしまった事は気がかりだったが、今ままでにも似たような事は多々あったのだ。今更その程度の事で騒いだりはしない。
「あ、ありがとうございますッ」
楓はその返事にホッとして、そっと胸を撫で下ろした。
望が連れてこられた先は、小規模な墓地だった。
所々に紅葉の木が植えられている。目に鮮やかな落葉の舞う中を、二人は歩いていた。
まさかこんな所に連れてこられるとは思っていなかった望は、内心混乱しながらも、無言で歩く楓の隣を歩く。
彼女の歩は、ある一つの墓石の前で止まった。
28:ダブルキャスト 03
07/12/04 17:15:40 DCnWG7Gr
「これが―貴方に見せたかったものです」
そう言って、楓は墓に向き直る。望もそれに習い、その墓に向き直った。
木村家。そう大きく掘られたその墓石の脇に、ここに眠る故人の名が記された石がある。
「これが、ですか……?」
リアクションに困って、視線を彷徨わせながら聞き返す。
そんな彼を尻目に、楓は故人の記された墓石へと歩み寄った。
「来て下さい、先生」
そこに屈み込み、肩越しに振り返って手招きをする楓。望は墓石に一礼してから、彼女の隣に同じように屈み込む。
彼女の、今は亡き家族の名が記されているはずのそこに、
「――え……?」
あってはならない名前を見つけて、望は小さく声を上げた。
木村 楓。
隣に居る彼女の名が、そこには記されていた。
「どっ……、同名のご家族がいらっしゃったのですか?」
一瞬唖然としたものの、すぐに思い直して聞き返す。そう考えるのが自然だろう。
だが彼女はもの悲しげに目を伏せて、ゆっくりと左右に首を振った。
楓はすっくと立ち上がると、悲しげな瞳のまま微笑んで見せた。
少し、強い風がふく。彼女は長い金髪を風に遊ばせながら、望を見下ろして言った。
「私は―もうこの世に居ないのです。
そう言ったら先生は、信じてくれますか?」
風に煽られる彼女の姿が、とても儚く見えた。
「な、何を言って……」
何を言えばいいのか、わからない。これは彼女なりの冗談なのだと、そう思いたかった。
けれど、微笑む楓の表情は、冗談を言うには似つかわしくない程悲しげだ。
「今から、とても大切な話をします。
私はこれを伝える為に、貴方をここに連れてきました」
立ち上がれないままでいる望に向き直り、楓はそっと胸に手を当てる。
一度、深く息を吸ってから、瞳を閉じて話し出す。
「木村カエレと、木村楓にまつわる、昔話です」
◇ ◆ ◇ ◆
木村カエレは、不器用な少女であった。
外国の文化に染まった彼女は、日本に帰国すると、その文化と思想の違いに戸惑った。
いつからか周囲は彼女を異物扱いし、かつての友人達は彼女から離れていく。
そんな中で、ある一人の少女だけは、彼女の傍に居続けた。
木村楓。
偶然同じ苗字、そして名前の五感が似ている事もあり、楓はなんとなくカエレのことが気になった。
恐々と話しかけてみると、不器用ながらに優しげな人柄が窺えた。楓は、カエレの友達になることに決めた。
二人の性格は正反対で、淑やかな楓と、やや不躾なカエレで、丁度良いバランスが取れるようになった。
不躾と言えどそれは表面的なもので、カエレは本来他人の事を考えすぎる所がある。
だが彼女は、そんな繊細な自分を「弱い」と嫌った。
そんな自分の弱さを悟られぬよう、つい無神経とも取れる態度を取ってしまうカエレ。
友人の不器用さを心配しつつも、楓は彼女のそんな所が好きだった。
29:ダブルキャスト 04
07/12/04 17:17:08 DCnWG7Gr
楓のおかげか、徐々に日本に慣れ始めたカエレ。
だがそんなある日、カエレの心を絶望の底に貶める出来事が起きる。
いつも一緒に登校する楓とカエレだったが、その日カエレは寝坊して、偶然一人での登校となった。
少し遅れて学校に着くが、先に来ている筈の親友の姿はない。
不信に思うカエレのもとに、教師からの知らせが届く。
今朝、楓が交通事故にあった。
呆然と、信じられない思いで病院へ赴くカエレ。
だが、そこに待っていたのは見紛う事のない親友の―動かぬ身体。
体中に包帯やガーゼを纏った楓は、もう二度と、彼女に微笑む事はない。
青白い顔で横たわる彼女の姿は、カエレの心を打ち砕くのに十分過ぎた。
どうしてあの朝に限って、自分は寝坊なんてしたのだろう。
いつものように、一緒に登校していれば、何かが出来たはずだ。
何も出来なかったとしても―最悪でも、一緒に逝くことくらい出来たはずだ。
慣れない環境の中での唯一の支えを失った彼女は、独りきりで塞ぎこんだ。
そんな痛々しい友人の姿に、楓は魂をこの世に繋ぎとめられた。
自分が居なくなった所為で、カエレの心は酷く傷ついている。
独り部屋に蹲るカエレの姿があまりに痛々しく、楓はそんな親友の姿を見ている事しか出来なかった。
葛藤の末、限界に達したカエレは自ら死を選ぼうとする。
自室の窓から飛び立とうとする親友の身体に、触れられぬと知りつつも、楓は必死で縋りついた。
その時。
楓の魂が、カエレの中に溶け込んだ。
ふっと自分の中に降り立った暖かなものに、カエレは飛び降りるのを思いとどまる。
鏡を見た。
そこには、泣きながら微笑む自分の顔があるだけだった。
けれどその微笑みは、紛れもなく親友のそれだという事が、彼女には分かった。
ああ、この胸の中にある、もう一つの暖かい存在は彼女なのか。
カエレはそれを理解すると、泣きじゃくりながら鏡に縋りついた。
鏡は冷たい感触を掌に返すだけだったが、その向こうには、穏やかにカエレを見守る楓の姿がある。
二人は別離の果て、誰よりも身近にその存在を感じる間柄となった。
だがそれは、周囲の人々からすれば、カエレの心の病が悪化したようにしか見えなかった。
故人となった親友が自分の中に居る。そんな事を、誰が信じるというのだろう。
幼い二人は、楓の存在を信じてもらおうと必死になった。
時には楓、時にはカエレとなり、死に物狂いで訴えかけた。
だが彼女らが必死になればなるほど、カエレの心の病は悪化していると捉えられる。
多重人格障害。そう診断されたカエレは、外国で専門的なカウンセリングを受ける事となる。
そこでカエレは、もはや洗脳とも言えるカウンセリングを受ける。
今自分の中に居る「楓」という存在は、自らの弱さが作り出した、親友の偽者である。
そう大人達から言われ続け―カエレは否定し続けた。
この暖かな存在は、紛れもなく親友の魂なのだと。
だが、長い長い月日をかけて、「楓」がただの別人格でしかないと、心に深く刻み込まれ――
長い洗脳の末、彼女は、「楓」が自らの弱さが作り出した別人格である事を、認めざるを得なかった。
◆ ◇ ◆ ◇
30:ダブルキャスト 05
07/12/04 17:18:28 DCnWG7Gr
「それから彼女は、私の事を嫌うようになりました。
友人の死を乗り越えられない自分への嫌悪を、私に向けるようになったんです。
自分の弱さを、何よりも嫌う彼女でしたから………」
カエレの心が悲鳴を上げる時、楓は彼女を想うあまり、表に顔を出す。
けれどそれは逃げでしかない事を、カエレは十分に自覚していた。
だからこそ楓が顔を出す際には、苦しげに身悶えて楓の存在を否定する。
二人はお互いを想い合っているにも関わらず、お互いを傷つけ合っている。
そんなのは悲しいと、楓は強くスカートの裾を握り締めた。
「――昔話は、これで終わりです。
先生は……先生も、私を偽者だと思いますか?」
楓は深く俯いて、強く瞳を閉じた。
信じてもらえないかもしれない。
全て、カエレの作り出した妄想だと取られるかもしれない。
そうならない為にわざわざ自分の墓にまで連れてきたのだが、
だからと言って、今、目の前に居る楓が本物である事の証明にはならない。その事は、痛いほど理解していた。
あるいは全て信じてもらえたとしても、幽霊など恐ろしいと逃げられるかもしれない。
もしもそうなら、いっそ信じてもらえないほうがマシだった。
愛しい人が恐怖に染まった目で自分を見るだなんて、きっと耐えられないだろうから。
―望が立ち上がる気配がする。楓は恐々と顔を上げて、望の様子を窺った。
望は戸惑うように目を泳がせていた。だが、そこに恐怖の色はない。
「……正直、あっさりとは信じられません……」
彼は心の内を正直に口にした。オブラートに包む事はせず、感じた事をそのまま口にする。
「ですが、貴女がわざわざここまでして嘘を吐く理由も思い当たりません。
だから―その……、信じてみようかと、思います」
戸惑いながらも、自分の思いを正面から受け止めてくれた。
―ああ、やはり、この人は他の大人達とは違うのだ。
自分達の理解できないモノを頭ごなしに否定して、無かった事にしようと躍起になる大人達とは、違う。
楓は魂のみの存在となって初めて、自らを肯定してくれる他人に出会う事が出来た。
正直、楓の心は限界に来ていた。
大切に想う友人には嫌悪され、誰一人として自分の存在を信じてくれない。
そんな中、所謂幽霊という存在である自分が、恋をしてしまった。
それが罪深い事と知りながらも、出会った時から一目で恋に堕ちてしまったのだ。
けれどそんな彼の周りには、彼を想う人々が寄り固まっている。
特にあの、まといという名の少女には、露骨に敵意すら向けられた。
そもそも、生者に死者である自分が、勝てる筈もなかったのだ。
失意の最中、彼女の脳裏に過ぎった、一番選んではいけない選択肢。
もう一度、死んでみましょうか。
今度は、大切な友人を連れて。
そもそもカエレを独り遺して逝く事が未練だったのだ。
ならば彼女を連れて逝けばいい。彼女だって、一度はそれを望んだのだ。
弱った楓の心は、そんなあまりに絶望的な選択肢を選んでしまった。
だが、それを止めてくれたのもまた、望だった。
31:ダブルキャスト 06
07/12/04 17:20:05 DCnWG7Gr
やはり彼は特別なのだ。
きっと今度も、自分を正しい方向へ導いてくれる。きっと、力になってくれる。
「あぁ……、やっぱり先生は、私にとって特別な人です……ッ」
感極まった楓の瞳に、見る見るうちに涙が浮かぶ。
はらはらと落涙しながらも、心から安らいだ笑顔を浮かべる楓。
その表情があまりにも美しく―望は彼女を心配するより先に、思わずその笑顔に見惚れてしまった。
呆けたようにその涙に見惚れていた望だったが、すぐにハッと我に返り、慌てて懐からハンカチを取り出す。
「大丈夫、ですか?」
おずおずと、今なお彼女の頬を濡らし続ける涙をハンカチで拭う。
その優しい感触に、楓は波打つ心が穏やかになっていくのを感じていた。
そのまま瞳を閉じて、彼が頬から手を離すまで、しばらくその優しい感触に浸る。
「―はい……、申し訳ありません。みっともないところをお見せしました」
「いいえ、いいのですよ。……寂しかったのでしょう?」
離れていく柔らかな布の感触。染み渡る優しい言葉。
思わずまた瞳に涙が浮かぶのを、楓はぎゅっと目を閉じて堪える。
次に目を開けた時には、もう心はすっかり落ち着いていた。
「もう、話せそうですか」
「えぇ。大丈夫です、ご心配お掛けしました」
そっと赤くなった目尻を拭いつつ、楓はもう一度唇を開く。
「それで、この話をしたのは―」
「私に頼みたい事があるから、ですか」
「はい」
そう、わざわざこうして身の上話をしたのは、何も望が想い人であるからというだけではない。
「カエレと、仲直りがしたいのです」
「仲直り?」
小首を傾げる望。楓はコクリと頷いた。
「私を自分の別人格だと思い込んでから、彼女は私の事を嫌悪し続けています。
そんなのは―彼女にとっても、私にとっても不幸な事です。
けれどもう、私の訴えは……、彼女に届きません」
どんなに言葉を連ねても、それは全て自分自身の言い訳に過ぎないと、カエレは思ってしまう。
楓一人の力では、彼女の心を開く事などできなくなっていた。
まず、楓が「本物」である事を、カエレに認識させなくてはならない。
「そのために、先生の協力が必要です」
「は、はぁ…協力は惜しみませんが、私に出来る事なんてあるんでしょうか」
困ったように顎に手を当てる望に、楓はずいっと身を寄せて、
「先生の身体を、私に貸して下さい!」
真剣な眼差しで、そう力強く言った。
「へ?」
唖然と目を瞬かせる望。言われた事の意味が、よく理解できないでいた。
「そ、それは、どういう…?」
困惑する望に、楓は人差し指を立てて説明する。
別の身体に憑依した状態で、カエレと再会を果たす。
そうすればカエレもさすがに、楓が自分の別人格であるとは思わくなるはずだ。
その案に、なるほどと頷く望。だが、
「―で、その、憑依する別の身体、というのが…?」
っぴ、と人差し指を望に向けて、
「はい。先生です」
楓は笑顔で頷いた。
32:ダブルキャスト 07
07/12/04 17:22:24 DCnWG7Gr
「あ、あのいやでもその…ッ、何故私なのですか?
貴女は女性ですし、男の私に乗り移るのは、何かと抵抗があるのでは……」
「いいえ、先生でないと駄目なんですッ」
しどろもどろになる望。だが、楓はブンブンと首を左右に振って、力強く言い放つ。
「こんな事を頼める人、先生以外にいらっしゃいませんッ。それに……」
さっきまでの勢いはどこへやら、突然言葉に詰まってしまう楓。
「……それに?」
先を促すように問いかけると、彼女はポッと頬を染めて俯いてしまった。
「―こ、これ以上はその、言えません」
頬に両手を当てて上目遣いに望を見ると、彼はただ不思議そうに首を傾げていた。
しばらくじっと楓の赤い顔を見つめていた望だったが、覚悟を決めたように瞳を閉じて、
「わかりました。力になると言いましたからね。
こんな身体でよろしければ、どうぞ使ってやって下さい」
幽霊にとりつかれる、なんて経験は普通そうない筈だが、以前望は一度だけそれを経験していた。
得体の知れないモノが自分の中に入ってくるあの感触には、言葉では言い表せない恐怖がある。
けれど、身体を貸し与える相手が目の前の少女というのであれば、それほどの抵抗感はない。
恐怖がないといえば嘘になる。だが、そんな粗末な感情より、楓の親友を想う気持ちの方が大切だと思った。
「あ、ありがとうございますッ!」
楓は思い切り身体を二つに折り曲げて礼をした。勢いよく金髪が揺れる。
「それで、私はどうすればいいんですか?」
「はい。先生はそのまま、じっとしていて下さい」
言われた通り、緊張で身体を固くしながら立ち尽くす。鼓動がやけに大きく耳に響いた。
身体を起こした楓は、少し何か思案するように沈黙する。
―楓は、自分がカエレに憑依した時の事を思い出していた。
あの時は親友の自殺を止めようと必死で、彼女の身体に縋りついた。
……身体に触れればいいのだろうか。
そう思い、目前に固い表情で立ち尽くす望に手を伸ばす。
思わず身を引きそうになるのを堪えながら、迫る指先をじっと見据える望。
彼の鼻先に触れる直前、その指先はピタリと動きを止めた。
「――先生、目を……閉じていただけますか?」
「え? あ、はい。こうですか?」
静かに目を閉じる望。
触れる直前だった手が再び動き、そっと望の頬に触れる。もう片方の手も同様に。
やや冷たい少女の掌の感触。そのすぐ後に、
「―……失礼します」
微かな呟きと、鼻先に近づく体温。そして。
唇に柔らかな感触を感じた瞬間、望の意識は深く沈んでいった。
33:真昼
07/12/04 17:25:06 DCnWG7Gr
一区切りです。次の投下で書き切れると思いますが、
何分行き当たりばったりな奴なんで、また無駄に長くなってしまったらすみません。
34:名無しさん@ピンキー
07/12/04 22:06:00 vDlbBwlS
>>33
文中に織り込まれている、カエレ・楓への愛が切々と伝わってくる。
・・・なんて素敵なんだ、あなたは。
本気じゃないと作れない話だなぁ・・・・・・ そう、ひしひしと感じて。
続き待ってます。
真昼さんは規制にかかってはないのですね。
・・・430氏は・・・巻き込まれてるでしょうか・・・多分。
こんな時間にネット喫茶にいる私も(ry
35:名無しさん@ピンキー
07/12/04 22:53:19 tG7bUFA3
ま あれだ
早く続きを・・・
36:名無しさん@ピンキー
07/12/04 23:11:45 f8E3qJ9g
これは素晴らしい新発想。
不躾で悪いのですが、気が向いたらこの発想を使って百合板にも足を運んでみてください。
とにかくGJ
37:名無しさん@ピンキー
07/12/04 23:39:03 N66BrUhf
>>33
真昼さんGJです!続き楽しみにしてます!
>>34
とーもーだーちー!
はい、思いきり巻き込まれてます。携帯でぽちぽち打ってます。
もうね、ocnどれだけ嫌われてるのかと…解除なして、あなた…。
まぁ、ポジティブに考えれば、ROM生活もまた、楽しからずや…orz
38:名無しさん@ピンキー
07/12/05 01:13:02 NZIZohGq
真昼さん、あなたという人は…
不安定な状態に投下の救いをありがとう
39:名無しさん@ピンキー
07/12/05 01:58:38 AZ8aus8A
うーん、続きが気になるんだぜ・・・
40:名無しさん@ピンキー
07/12/05 04:58:38 qaaO4JR7
楓って人格ポータビリティの回で先生の中に入ってなかったっけ
41:名無しさん@ピンキー
07/12/05 12:38:35 aLiZLAy8
それ以前の話という事でここはひとつ…。
42:名無しさん@ピンキー
07/12/05 22:49:34 s+e0E4B0
そのタイトルの元ネタはやるドラかwww懐かしいwww
43:名無しさん@ピンキー
07/12/07 00:01:10 EG/lRRrt
ドアノブが照れてる
44:名無しさん@ピンキー
07/12/07 00:37:27 YOjhXQeI
書きたいけどいいネタが出てこない…誰かお題を~
45:名無しさん@ピンキー
07/12/07 00:40:05 kLAsi87c
>>44
セーラー服の楓
46:名無しさん@ピンキー
07/12/07 01:19:47 zKAEDcQk
>>44
霧と押入れに入る
47:名無しさん@ピンキー
07/12/07 01:31:00 hvl5nfJJ
レシピ通り奥さん対非難訓練指導員
48:名無しさん@ピンキー
07/12/07 01:46:50 KN6GeNF8
千里とのきっちりとしたお付き合い
49:名無しさん@ピンキー
07/12/07 04:10:33 UKrQDoQu
マジパロも読みたい気分。
50:名無しさん@ピンキー
07/12/07 13:36:13 QQnIaWuV
ふっかふか
51:名無しさん@ピンキー
07/12/07 21:10:46 YOjhXQeI
やってみるわ
52:名無しさん@ピンキー
07/12/07 21:45:52 hMATGGAp
保管庫で改蔵や南国とか絶望先生以外のパロが読めないのは何故?
携帯だと読めない物なのか?
53:名無しさん@ピンキー
07/12/08 06:17:32 WLtVPAGX
読めるだろ
54:名無しさん@ピンキー
07/12/08 11:04:08 H2uR555h
>>53何故かアダルトサイトの広告ページが出てくるんだ
55:名無しさん@ピンキー
07/12/08 16:53:59 NGuBl+Oc
過疎過疎過疎過疎過疎まくって~♪
56:名無しさん@ピンキー
07/12/08 17:02:33 FM7HJcA+
やはり規制の影響かね…寂しい事だ…。
57:名無しさん@ピンキー
07/12/08 19:59:29 OxWGr3FE
どうでも良いが、前スレの埋め千里AAに素でびびった。
58:二話 帰ってきたティエリア先生
07/12/08 22:30:00 F4vNPuxZ
~私、脱いでも凄いんです~ ‥凄すぎて絶望した!非エロ、小ネタです。
私なんて生きていてもしょうがない人間なんです。恥の多い生涯を送ってきました。
あの、先生。ここは基本的に生徒たちの相談室なので‥
まあ‥‥ 話は聞きますが。
で、今日は何で死にたくなったんですか?
私の心が汚れているから、アニメもまっすぐ見れないんです。
今年はガンダムに興じてみようと、がっちりタイプを応援する事に決めたのですが、
「画像」 ( URLリンク(upload.jpn.ph) 消えてるかも)
毛にしか見えないんです!あの中のナドレ!!
あれは装甲に接続されるコードだと思いますが。
私の心が、私の目が汚れているから、天使の神経さえも薄汚い毛に見えてしまうのです。
メールでハゲハゲ言われる私があの装甲を纏っていると思うとせつなくて刹那苦手‥
毛を被っているから?
増毛したらムックっぽい、前作の主人公とコンビでガチャピンムックかってに捏造先生‥
とまでは言いますまい。
なんだか話したら少し心が晴れました。
それが言いたかっただけなのでは?
一方そのころ
ふがー!こんなヴァーチェは認めないー!
ガチムチ以外に擁(いだ)かれるなんて先生じゃない!
59:305
07/12/09 01:46:23 VGv8mQbn
や、書きこめた。
柔らか銀行は今のところ大丈夫そうですねw
お疲れ様です。305です。
なんかとっても規制の仕業・・・? 強制過疎なんて・・・
奈美で短編作ってきました。
やはりエロ無し、ですのでスルーを推奨で。
では、よろしくお願いします。
60:奈美:二周目の予感?
07/12/09 01:48:46 VGv8mQbn
規則正しい呼気のリズム。それに合わせるように交互に跳ね上げる踵。
スパイクを効かせてアスファルトの表面を蹴りながら、軽快な足取りで住宅街の路地を走ってい
た。
「・・・よーし! あと一周したら終わりにしよっ!」
暮れなずむ空、屋根の隙間に見える夕日をチラリと目の端で捉え、奈美は一人つぶやいた。
片手でパーカのポケットからハンドタオルを取り出し、首筋に滲んだ汗を拭き取る。
ちらほらと家路につく背広姿や、買い物袋を下げた姿とすれ違いながら、奈美は商店街の方向へ
と走って行く。
ふと眉を軽く寄せ耳を澄ます。後ろから次第に近づいてくる足音が聞こえてきた。
その足音も走っているようだったが、どう聞いても靴の立てている音ではない。
興味をそそられた奈美が振り返ろうとするより先に、追い付いてきた足音の主が奈美の真横に並
んだ。
「あれ!? 先生!」
「おや日塔さん。感心ですね、まだ運動を続けていたのですか。・・・ああ、今日が三日目でし
たね?」
先生の物言いに、奈美の顔が引きつり不機嫌そうな声を出す。
「どうせ三日坊主とか言う気ですよね!?」 (ちゃらちゃらちゃら)
「まあ、運動の秋なんて、それが普通ですから。」
「普通って言うなあ!!」
むくれた表情で文句を叫んだ奈美だったが、ふと先生の格好が普段の着物姿である事に気が付き
首をかしげた。
袖や袴が風になびき、いかにも走りにくそうな雪駄が軽い足音を立てている。
「先生もジョギング? 動きにくくない?」 (ちゃらちゃらちゃら)
「はは、何を言っているのですか。そんな訳ないでしょう。」
じゃあ何で走っているの、と言いたげに眉をしかめる。 (ちゃらちゃらちゃら)
「よく分からないけど・・・ 先生さっきからうるさいです!」
「何の言いがかりですか!?」
「いくら普段はチャラチャラしてるからって、音まで立てなくてもいいのに!」
嫌そうな顔で告げる奈美に、先生はさらに嫌そうに顔をしかめてみせる。
「どこぞの普通さんみたいに、そんなアピールなんてしません!」
一瞬、苦い顔になり、反論しようと口を開きかけた奈美だったが、
「・・・あれ? じゃ何の音?」 (ちゃらちゃらちゃら)
よく耳をかたむけると、音は自分達の後方から聞こえ、心なしか僅かずつ近寄って来ているよう
にも思える。
走りながら、チラリと首だけを向けて振り返る奈美。
「ひっ!?」
短く悲鳴を上げた。無意識に足に力が篭り走る速度を早めてしまう。
「何で犬が追いかけて来てるんですかぁ!?」
後ろで音を立てていたのは、一匹の大きな土佐犬だった。
引き千切ったかのような不自然に千切れた太い鎖を引きずり、口の端からは泡混じりのよだれを
垂らし、目を輝かせながら二人の跡を追って駆けている。
「いやー・・・ ヘイの向こうに見事に熟れた実を下げている柿の木を見付けたものでして。―
―ちょっと竹ざおで突付いてみたら、なぜか怒られて犬をけしかけられましてね・・・」
「当たり前だぁ!! ・・・っていうか、犯罪!」
すました顔で説明する先生に、やや裏返った声で叫ぶ奈美。
「ちょっと一周して童心に返っていただけですが。」
「それ、一周してないだろ!?」
二人が言い合いをしている間も、後ろの犬はじりじりと間を詰めてきている。
「先生! 追い付かれちゃうよぉ!」
走りながらちょっと涙目になって叫ぶ奈美に、先生は額に汗を滲ませながら困った顔で口を開く。
61:奈美:二周目の予感?
07/12/09 01:50:30 VGv8mQbn
「確か、犬は逃げるモノを追いかける習性があるとかで・・・・・・そうすると走っている限り
は、追われてしまいますね。」
「ええ!? じゃあ逃げない方がいいって事ですかあ!?」
「・・・止まってみますか?」
一瞬考えた奈美だったが、後方から迫る犬が低い唸り声を上げ、
「いやです!!」
「じゃ、走って。」
「あああ! なんでいつも私まで巻き込むかな!?」
人通りの少なくなってきた路地を右へ左へ折れながら逃げていた二人だったが、幾度目かの角を
曲がった所で強制的にその足を止める事となった。
「ええ! 行き止まりですよ!?」
曲がった路地の先は三方を壁に囲まれ、逃げ道など何も無い空間となっていた。
中身が空の青いポリバケツが数個転がり、ここを餌場にしているのか数羽でたむろっていたカラ
スが空へと逃げてゆく。
壁は何の足がかりも無くすぐに登れるような高さではない。それに、二人の人間が登っている暇
などないだろう。
「せんせえ・・・・・・どうしよう・・・・?」
じりじりと近寄ってくる犬の姿に涙声になりながら奈美は先生の顔を見上げる。
焦った顔で犬の濁った目を睨みつけていた先生だったが、ハッと何かを閃いた表情を浮かべ、お
もむろに自分の履いている雪駄を片方掴み、犬の後方に向けて放り投げた。
「ほら、取ってきなさーい!」
先生の声と共に放物線を描きながら放られた雪駄に反応し、犬は自分の頭上を越えていったそれ
を求めて勢いよく踵を返して突進してゆく。
「今です!!」
「あ、待ってよお!」
嬉しそうに雪駄を齧っている犬の横をすり抜けて一目散に駆け出した先生に続き、少し遅れて奈
美も後を追い全速で追いかけていった。
「・・・こ・・・ここまでくれば・・・さすがに・・・・・・」
「・・・先・・・生。息切れ・・・て、ますよ・・・」
夢中で走って辿り着いた河川敷は見渡す限り人の姿すらなく、しつこく後を追ってきた犬の姿も
何処かへ消えていた。
奈美は大きく息をつきながら枯草が混じりはじめた土手に腰を下ろす。
火照った顔に川面から吹き付ける風があたり、奈美は気持ちよさそうに目を細める。
遠くに見える橋の上を行き交う車のライトが時折チラチラとした瞬きを見せていた。
パーカのポケットからハンドタオルを取り出すして顔の汗を軽く拭い、隣に腰を下ろした先生に
差し出す。
「どうぞ。風邪ひいちゃいますから、汗拭いて。」
「ああ、どうも・・・って、これ、今使った物ですよね?」
先生は指で摘まむようにしてタオルを受け取る。奈美は顔をしかめた。
「汚いものみたいにつまむなぁ! 裏返して使えばいいじゃないですか!」
先生は少し意地悪そうな笑みを浮かべ、そのタオルで汗を拭った。
川沿いに並んで伸びたススキが、さわさわと枯れた葉音を立てている。
汗を拭きながら、先生はどこかすがすがしい口調で話しかけてきた。
「いや、いい運動をしましたねえ。」
「爽やかに言うな! しなくてもいい運動だぁ・・・!」
奈美は文句を言いながらもその顔には笑みが浮かんでいる。――どさり、と音を立てて土手に
仰向けに寝転んだ。
62:奈美:二周目の予感?
07/12/09 01:52:24 VGv8mQbn
ほとんど日が落ちた空には、時々小さな光を放つ星が姿を現わし始めていた。
「どうも。・・・日塔さん、香水などを使われているのでしょうか?」
タオルを手渡しながら問いかける先生に、奈美は小首をかしげた。
「使ってないけど・・・何で?」
「いや、タオルから良い香りがしましてね。そうなのかな、と。」
奈美は、がばっと起き上がり、手に取ったタオルを鼻の近くに持ってくる。
「そ・・・そうですか? あれー・・・? 自分じゃわかんないのかなー?」
柔らかな生地を鼻と口に押し当てて息を吸っているが、特に何の匂いも感じないのか、奈美はし
きりに首をかしげている。
「うーん・・・ しないなー」
「まあ、嘘ですから。」
「・・・さらっとウソつくなぁ!!」
伸ばした足の踵でドンドンと地面を叩きながら、奈美は顔をしかめて叫んだ。
先生は澄ました顔で視線をそらし、おもむろに立ち上がって服についた枯れ草の端などを払い落
とした。
「さて。もう、ほとぼりも冷めたでしょうし、帰りますか。」
「いいですけどね、別に・・・・・・」
何か言いたそうな顔でブツブツと呟きながら立ちあがり、奈美は先生の足元に気がついた。
「あー・・・先生、片足だけ履物無しで走ってたなぁ・・・ 怪我してない?」
奈美に言われて、先生は足袋を付けただけの片足を抱えて、足の裏を確認してみる。
「さすがにちょっと擦り切れていますが・・・ まあ、大丈夫でしょう。」
「危ないと思うけど。何が落ちてるかわかんないし・・・ ――あ! よし!」
奈美は軽く手を叩き、先生の前に回りこむと背中を見せてしゃがみこんだ。
両手を背中に回して少し首を捻って後ろを見る奈美の姿に先生は眉を寄せた。
「・・・何ですか?」
「私、おぶってあげますよ! はい! どうぞー。」
「えええ!? そんな、普通に格好悪いではないですか!」
「普通って言うなあ!!」
ぶすっとした表情で奈美は後ろ手に先生を招く。
「かっこ悪いのはいまさらだろ! いいから! 私こう見えて結構体力ありますよ?」
奈美に促され、先生はしぶしぶといった感じで肩に腕を回す。
「なるほど・・・意外と肩幅ありますね。・・・・・・骨太ですか?」
「余計な事言うなぁ! まったく・・・!」
先生の足に手を回し、抱え込むと奈美はゆっくりと立ちあがった。
その両肩を手で掴みながら、先生は不安気な表情になる。
奈美の表情が変わった。低い唸り声を出しながら一歩踏み出し――踏み出したところで、べ
ちゃっ と潰れてしまった。
「大丈夫ですか?」
「先生・・・痩せてるのに意外と重いー・・・」
やれやれといった顔で先生は苦笑を浮かべながら体を離し、まだ土手に突っ伏したままの奈美の
頭をポンと叩いた。
「なにするんですかぁ・・・?」
「まあ、発想は悪くありませんよ。」
そう言って微笑んでみせた。
63:奈美:二周目の予感?
07/12/09 01:53:46 VGv8mQbn
「・・・何だか、私の方が迷惑かけてるみたいじゃないですかぁ。」
背中で揺られながら奈美が少し不満そうな声を上げた。
先生は何も答えずに小さく笑ってみせる。
その足には奈美のジョギングシューズを履いており、雪駄は帯に挟みこんであった。
奈美の目の前に先生の横顔があった。
息をするたびにその髪が僅かに揺れるのが妙に気恥ずかしく、奈美は顔をそらして住宅地の方を
眺めつづけている。
「日塔さん――良い香りがしますね。」
「え?」
思わず奈美は顔を上げた。
「ほら・・・何処かのお宅が今夜はカレーのようですよ。」
「あ・・・そうですか。」
ふう、と息を軽くついて奈美は再び顔を落とした。
力の抜けた顔でゆっくりと進む景色を眺めていたが、やがてあることに気が付く。
(カレーの匂いなんてしないじゃない・・・)
奈美の口元がほころび、ほんのりと顔が赤くなった。肩に回した腕に力を込め体を押し当てるよ
うにしてさらに密着させた。
先生は変わらぬ様子で歩いている。
「・・・今度、カレー作ってあげますよ。」
「おや? 恩着せ予告ですか?」
奈美の顔に苦笑が浮かぶ。
「・・・・・・口が曲がるくらい辛くしますからね。」
「はは、カレーが辛いのなら普通ですね。」
「普通って言うなあ!」
小さく叫ぶ奈美に笑いを浮かべ、先生は土手の横にある小道に入った。
奈美は訝しげな顔で口を開く。
「先生? そっち道が違う。遠回りだよ?」
「また、あの犬に逢わないとは限りませんから。・・・まあ、町の外側を一周する事になります
が、急がば回れと言いますしね。」
奈美はクスリと笑った。何も言わずに背中に頬を寄せて目を閉じる。
「じゃ、もう一周しちゃいますか。」
「運動不足でしたからねぇ。ちょうどいいですよ。」
先生の声を半ば聞き流しながら、奈美はぼんやりと胸の内に広がる考えに入りこんでいた。
(先生のスタート地点・・・どうなんだろ? 聞いたって教えてくれないよなぁ・・・・)
奈美は心の中で溜め息をついた。
(・・・私はやっぱり――もう通りすぎた後なのかな・・・いや、それ以前に、通るのかなぁ・・・・)
一人考えに耽る奈美の耳に、先生の言葉が入ってくる。
「まあ、二周目に入るとしますか。」
奈美は一瞬驚いた表情を浮かべ――少しはにかんだ笑顔で「うん」とうなずいた。
「明日は、普通に筋肉痛でしょうねぇ。」
「普通って言うなぁ・・・!」
言い返しながらも言葉には出さずに、ありがとうと胸の中で呟いた。
この背中をもう少し暖めていられる事が今はとても嬉しい。
この場所に自分の温もりを残したい。
残り香のように、なればいいな、と。
そう願い、もう一度、そっと目を閉じて頬を寄せた。
64:305
07/12/09 01:56:46 VGv8mQbn
おそまつでした。
こんな時間でも、ネット喫茶は結構混んでる・・・
難民キャンプ・・・ じゃないかw
読んで下さった方ありがとうございます。
ではまた。
65:名無しさん@ピンキー
07/12/09 02:53:05 zPTMxGbB
普通に良い。
ネット喫茶は空調が悪いらしいから風邪とか結核とか貰うなよ!
66:名無しさん@ピンキー
07/12/09 03:02:13 FO+X3UAw
>>305
おお、何と雰囲気の柔らかい素敵なお話。普通に感動した。
ネカフェからホントにご苦労様です。
67:名無しさん@ピンキー
07/12/09 05:51:00 VFhEHW+C
クリスマスも近いし、フランク・キャプラの素晴らしき哉、人生
パロディみたいなのを書こうと思ってるが上手く行かないぜ。
絶望した先生、見習い天使はカフカという設定なのだが…。
もうあきらめた。徹夜でなにやってんだ俺は。
誰かクリスマススペシャルっぽいの書いてくれんかな。ディケンズの
クリスマスキャロルみたいなのもいいなあ。
やっぱり奇跡がおきないとね。クリスマスくらいは。
68:名無しさん@ピンキー
07/12/09 08:45:32 CoXizE+O
>>67
430氏に土下座しな。
69:名無しさん@ピンキー
07/12/09 09:11:24 oonPKn6F
>>64
普通にGJ!
よい雰囲気ですなぁ~。
70:名無しさん@ピンキー
07/12/09 09:54:20 KE5DqVBj
>>67 クソワロタ とりあえずお前が前スレを読んでないことは分かった
71:名無しさん@ピンキー
07/12/09 10:39:49 pzfvseYP
週末投下宣言した人マダー?
72:名無しさん@ピンキー
07/12/09 11:38:48 XxZ2b2gv
>>68
> 430氏に土下座しな。
同意。氏ね>67
以後430氏の素晴らしい作品を汚すだけだからクリスマスネタ関係のSS投下するの禁止ね
73:名無しさん@ピンキー
07/12/09 12:02:52 CoXizE+O
>>72
てめえも黙ってろ、いつものクソ荒らしが。
74:名無しさん@ピンキー
07/12/09 12:06:42 XxZ2b2gv
>>73
前スレぐらい読め
クソが
75:名無しさん@ピンキー
07/12/09 12:22:38 b7FRtOsG
>67
まあ、とりあえず書いてみるといいよ
せっかく考えたのだし
76:名無しさん@ピンキー
07/12/09 14:08:34 83O8ydZU
>>72
> クリスマスネタ関係のSS投下するの禁止ね
何勝手にルール作ってんの?何様?
77:名無しさん@ピンキー
07/12/09 14:10:08 V4gOvCeE
荒らし様だろ
角煮で相手されなくなったからってこっち来るなよ
78:名無しさん@ピンキー
07/12/09 17:35:37 nEGYCb3Y
携帯からぽちぽちと失礼します…。
>>64
雨ニモマケズ 規制ニモマケズ…305さん、あなたは素晴らしい!
私も今週あたり、ウィル○ム加入してきます…。
そして!いつも心暖まるお話をありがとうございます!
おんぶネタ、いいなぁ…しつこいけど、ホントに305さんの先生大好きです。
>>67
素晴らしき哉、人生の絶望パロ!!!めっちゃ読みたいです!
うわぁ、それを思い付いたあなたはすごい!マジ読みたい。
あきらめるなんて言わずにどうか…!
そして、真昼さんの続きと、173氏の新作もひそかに楽しみにしていたりする…。
79:名無しさん@ピンキー
07/12/09 19:08:48 fUpMNVga
こんな状態になって投下する奴はいないだろ。
アニメが始まって投下量が増えた頃は面白かったんだけ
どな。量だけじゃなくていろいろな傾向の作品が投下され
て一種混沌としていた雰囲気が良かった。
いろんな人の妄想を覗かせてもらうというか、共有できる
感覚が楽しくて。
アニメ2期が始まるとまた変わるかな?
80:真昼
07/12/09 19:26:10 i09HJke1
非常に申し訳ないんですがこんな状態で投下する輩がここに一匹。
ダブルキャストの続きを投下させていただきます。
思いの他長くなってしまい完結には至らず…長々お付き合いさせて申し訳ない。
4レス程消費させていただきます。
81:ダブルキャスト 08
07/12/09 19:27:52 i09HJke1
―沈んだ意識が、ふっと浮上する。
気が付けば目前に、見慣れた担任教師の顔があった。
(……は?)
唖然として、困惑の声を出そうとする。だが、唇が何かに塞がれていてそれはかなわない。
覚醒したばかりのぼんやりとした思考は、唇を塞ぐモノが何なのか理解するのに、たっぷり1分ほどの時間を要した。
「………」
目の前の男と、キスをしている。それに気が付いた瞬間、
「――っぎいぃやああぁああぁあぁぁぁあッ!!?」
とてもうら若き乙女とは思えぬ豪快な悲鳴を上げて、カエレは思い切り望の身体を突き飛ばしていた。
「きゃあッ!」
望は甲高い悲鳴を上げながら、なす術もなくその場に尻餅をつく。
「うううううう訴えてやる!何がなんだかわからないけど訴えてやるぅううぅぅぅッ!!」
錯乱して髪を振り乱し、絶叫するカエレ。
「……って、きゃあ?」
だが、突き飛ばした望の口から漏れた、彼に似つかわしくない悲鳴に違和感を感じて、一先ず頭を振り回すのを止めた。
「痛たた……」
弱々しい声を上げながら、ぶつけた尻を擦りつつ起き上がる望。
「あぁ良かった…成功したみたいです」
立ち上がると、望は自分の身体を物珍しげに見下ろした。まるで新しい服を見せびらかす少女のように、その場でクルリと一回転してみせる。
「どうですか? 私、ちゃんと先生に見えてますか?」
そう問いかける声色は、紛れも無く聞きなれた担任教師のモノだ。
だが、不思議と妙に甲高いというか、少女のような初々しさを漂わせている。
男の声にはあまりにミスマッチな喋り方で、唐突に意味不明な事を問い質してくる。明らかに様子がおかしい。
カエレは唇を奪われたショックよりも、オカシイを通り越して不気味な望への恐怖が上回り、身震いした。
自分の身体を抱きながら、ズリズリと後ずさる。
「き、、気持ち悪いわよ、先生……。
っていうか、ココはどこ!? 何で私、こんな所に連れてこられてるのよ!」
周囲を見回し、自分が今居る場所が墓地と分かると、カエレはまた混乱がぶり返したようで声を荒げた。
「落ち着いて、落ち着いて下さい」
「落ち着けるわけないでしょう!? 気が付いたらいきなり、ふぁ、ふぁふぁファーストキッスを奪われてて、
挙句その場所が墓地!!? シャークだとしても笑えないわよ!!」
「……鮫がどうかしましたか?」
ジョークと言いたかったらしい。間違えるほうが難しそうだ。
「しかもキッスの相手はよりによって先生だし、何か妙に態度が気色悪くなってるし!」
「あ、あ…そ、そうですよね。私は今、男性ですものね。こんな風に振舞ったら駄目ですよね。
……でも、そんな……気色悪いだなんて……」
と、言われた傍からしなりと身体をくねらせて、よよよ…と泣き崩れる望。
「そーれーがー! 気持ち悪いってのよ!」
「あぁ、申し訳ありません…ッ」
ダン!と足を苛立たしげに踏み鳴らし、頭上から罵声を浴びせると、望は怯えたように身を竦める。
慌てたようにその場に正座し、畏まった態度で揃えた両手を膝の前に置き、頭を下げた。
―ふと、カエレはその仕草に懐かしさを覚える。
だがそれは、遠い昔に失くしたモノの筈だ。
こんな男に彼女の影を重ねるなんて、自分も等々焼きが回ったか。
82:ダブルキャスト 09
07/12/09 19:29:51 i09HJke1
「あの、お怒りは静まりましたか?」
突然押し黙ったカエレを、恐々と上目遣いで見上げる望。
その様子が本当に彼女ソックリで、余計にカエレの癇に障った。
「先生がその気持ち悪い態度を治さない限りは、静まるものも静まらないわよッ!」
「あの、私は、先生ではございません」
「――はぁ?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまう。何を言っているのだろう、この男は。
望は潤んだ瞳でカエレを見上げて、そっと両手を伸ばして来た。
普通ならば身を引いて、その手から逃れようとしただろう。
だが、何故だかその時、カエレにはその手を避ける事が出来なかった。
この手は避けてはならない。避ける必要はない。
だってその手は、いつだって自分の心を守ってくれた、彼女の――
ふわり、と、彼の着物の袖が身体を包む感触。
背中に回された腕に、ほんの少しだけ力が込められた。
膝を立てて身体を伸ばし、ともすれば縋りつくように、カエレを抱きしめる望。
耳元に感じる暖かな呼吸が、くすぐったかった。
「…私です…、楓です。
―また、こうして貴女に触れられるなんて、思わなかった」
耳元で囁かれた言葉は、みっともないほどに震えている。
カエレは自然と、自分にしがみ付く望に合わせるように中腰になる。
望―楓は、カエレの首筋に顔を埋めて、彼女の温かな体温に酔いしれる。
首筋に濡れた感触を感じて、カエレは彼―彼女が泣いている事を知った。
「何、泣いて……」
何を泣いているのか。そう問おうとする自分の声が、彼女のそれよりも震えている事に気付く。
自分もまた泣いているのだと、その時になってようやく気が付いた。
自分でも何故泣いているのかわからない。頬を流れる涙の温かさに、呆然とするカエレ。
―しばらく二人は、泣きながら身を寄せ合っていた。
先に我に返ったのはカエレだった。ハッと目を見開いたかと思うと、その顔は見る見るうちに朱に染まる。
「ふ……、ふ、ふざけないでッ!」
叫びながら、温かな身体を引き剥がす。途端、秋の風をやけに冷たく感じた。
恐ろしいモノを見るような目を楓に向けて、じりじりと後ずさるカエレ。
そんな彼女の反応を、覚悟していたとはいえいざ目の当たりにすると、酷く心が軋む。
地に膝を付いたまま、楓は泣きそうな瞳でカエレを見つめていた。
「い、意味がわからない……、先生だって楓のことは知ってるはずでしょ!?」
「はい……先生は、私のことを全部知っています。知った上で、協力してくれると言ってくれました」
楓はようやく身体を起こし、自らの身体を抱いて震えているカエレに歩み寄る。
「全部…?」
呆然と呟きながら、カエレの瞳が泳ぐ。その視線は、木村と記された墓石に吸い寄せられた。
ようやくここが誰の墓なのか気付いたカエレは、驚愕と悲しみの入り混じった瞳で、木村の二文字を凝視している。
83:ダブルキャスト 10
07/12/09 19:31:18 i09HJke1
カエレはずっと、親友の墓参りに行けないでいた。
彼女の死を乗り越えるため、無理をして赴こうとした事もあった。
だが、その度に自分の中のもう一つの心が、優しく諭すのだ。
―悲しいのなら、無理をして行かなくてもいいのですよ。
だって私は、ずっと貴女の傍に居るのだから――と。
もちろんカエレはその声に反発した。けれど、いざ行こうと踏み出した足は、どうしても二歩目を踏み出せない。
それが楓の意思なのか、自分が臆病な所為なのか、彼女にはわからなかった。
だが、今こうして自分は、数年ぶりに親友の墓を前にしている。
もちろんここまで来た記憶はない。という事は、人格が楓に切り替わっている時に、来させられたのだ。
「―ッ、なんで……なんで今になって連れて来たのよ、楓……」
「貴女と、仲直りがしたいからです」
「先生には聞いてないわ!」
弱々しい呟きに楓が答える。けれどカエレは、そんな彼女の言葉を跳ね除けるように叫び、ギリ…と奥歯を噛んだ。
苦しげなカエレの視線を真っ向から浴びながら、楓は、ただただ優しい口調で、そっと問いかける。
「カエレ……。今、貴女の中に、私は居ますか?」
―その言葉に、気付かないフリをしていた、心の空白を意識させられた。
「――………」
暴れ狂う心臓を押さえるように、服の胸元を握り締めるカエレ。
その顔は、とても昔―楓の亡骸を前にした、あの時を思わせる。自分が直面している現実を、受け入れられないでいる時の顔だ。
「カエレ、寂しくなんてないですよ。
だって私は、今もこうして貴女の傍に居るじゃないですか」
楓の足が、一歩前に出る。砂利の擦れる音にハッと我に返ったカエレは、ぶんぶんと激しく首を左右に振った。
「嘘…ッ!」
「私、本物です。本当の、貴女の親友の楓なんです」
「来るなッ!」
ゆっくりとした足取りで、そっと両手を広げてカエレに歩み寄る。
彼女はそんな楓を言葉で拒絶しながらも、その場を動けないでいた。
逃げ出したいのか、それとも―親友との再会を喜んでいるのか。
それを認めたいのか、認めたくないのか。もう、カエレは自分の本心がまったくわからなくなっていた。
本当に心が二分しそうになる。頭が割れるように痛い。
いや、本当はわかっている。きっと、認めているのだ、認めていたのだ。とっくの昔に。
けれど周囲の人々は、そんな彼女を異常だと言った。
本当は……そんな人々の声など気にせずに、自分さえ彼女の存在を信じ続けていれば良かったのだ。
―だが彼女は、死して尚自分を想い続けた親友よりも、万人の声を優先した。
人々の、自分を異常者として見る目が怖かったのだ。
それからはずっと、自分を騙し続けていた。楓に自分の嫌なモノ全てを押し付け、それでも尚縋っていた。
そんな無様な自分を見て見ぬフリが出来たのは、楓がただの別人格、つまりは自分自信であるという、言い訳があったからだ。
だがこうして、楓が本物であるという証拠を突きつけられてしまったら、その言い訳は成り立たなくなってしまう。
今まで楓に向けた罵詈雑言は、自分自身へではなく――紛れもなく、親友へ向けたもの、という事になってしまう。
その罪悪感と自己嫌悪に、カエレは耐えられる自信がなかった。
84:ダブルキャスト 11
07/12/09 19:34:47 i09HJke1
自らの思考に逃げ込んでいた意識だったが、間近に感じる他人の息遣いに、一気に現実に引き戻される。
気が付けば、呼吸が顔に触れるほど間近に、望の顔があった。
見慣れた担任教師の顔。だが、そこに浮かぶ儚げな表情は、紛れもなく彼女のものだった。
薄い唇が小さく開き、震える声で言葉を紡ぐ。
「信じて下さい……楓です、私。楓なんです。
私が泣いてる時は、ずっとうんざりした顔で、それでも一緒に居てくれた貴女が大好きな、楓です」
泣きそうなのを必死に我慢しているのがわかった。
懸命に堪えているが、見る見るうちに瞳に涙が浮かび、声はみっともなく裏返ってしまう。
「今でも、これからもずっと、貴女の事が……大好きな……」
僅かに広げた両手は、拒絶される事を恐れてか、静かに下ろされた。
咳き込むような短い息が、カエレの頬を撫でる。耐えかねたように俯いて、小さく肩を震わせはじめる楓。
ひとつ、ふたつ。温かい雫が、二人の足元に染みを描いた。
消え入りそうな、言葉にならない小さな声が、カエレの鼓膜の奥に響くように届く。
『信じて下さい』
――もうこれ以上、言い逃れなど不可能だった。
「……か」
カエレの唇が、震えながらも、ゆっくりとその名前を紡ぐ。
「か、え……で」
掠れた声で、親友の名を呼んだ。
楓はその声に答える様に顔を上げた。頬にいくつも涙を伝わせながらも、その表情は瞬く間に希望に染まっていく。
「―は、はいッ。そうです、楓ですッ」
「……楓…、本当に……」
認めた。自分が虐げてきたモノは、あんなにも優しかった親友であると、認めた。
数年越しの再会への歓喜。罪悪感。自己嫌悪。様々な感情が渦巻く中で、カエレは咄嗟に彼女に抱きつこうと身を乗り出す。
けれどそれを、喜びより遥かに強い罪悪感が制止した。こんな自分が、また彼女を求めて良い筈がない。
彼女に触れようとした掌は、冷たい風だけを掴む。
ガクン、と、膝から力が抜ける。地面に倒れる彼女の後を追うように、長い金髪が靡く。
「カエレ…ッ」
固く冷たい砂利の上にカエレの身体が触れる直前、寸でのところで、楓の腕がそれを抱きとめていた。
そのまま、もつれ合うように座り込む二人。
再び温かな両腕に包まれながら、空を思わせる青い瞳に楓の姿を映し、カエレは泣いた。
声を上げる事なく、ただ自分を心配そうに見下ろす親友の顔を見つめながら、涙を流す。
「泣かないで、泣かないで下さい」
喜びの涙ならば良かった。だが、その涙が苦しみから流すものという事が、楓にはわかってしまった。
「―私、酷いこと、してきたね」
「いいんです、いいんですよ。………寂しかったんでしょう?」
望が優しく自分に言ってくれた言葉を、今また彼女は口にしていた。
いくら大事な親友が傍にいるとはいえ、それ以外の人間に淘汰されるなんて、寂しすぎる。
だから彼女は、心を痛めながらも他人に合わせる事を選んだ。
その為には、楓は「幽霊」ではなく「別人格」である必要があった。
それだけのことだ。彼女に罪などない。ただ、寂しかっただけなのだ。
自分と同じように。
「……許してくれる?」
「許すも何も、怒ってなんていません。
ただ、また貴女と仲良くなりたかった……、それだけです」
カエレの右手が、おずおずと上げられる。楓はそれをしっかりと掴んだ。
「また、仲良くしてくれますか?」
―カエレは答える代わりに、繋いだ掌に力を込めた。
そして、自分から楓の胸に縋りつく。声を出せば、みっともなく泣きじゃくってしまいそうだった。
親友の身体を、冷たい風から守るように抱きしめ返す楓。
カエレは薄い胸に顔を埋めながら、額を擦りつける様にして、小さく頷いた。
『信じて下さい』
数年越しの訴えは、ようやく彼女の心に届いた。
85:真昼
07/12/09 19:36:36 i09HJke1
切りの悪い所でぶった切って申し訳ありません。
多分、きっと、できれば次くらいには終了でき…たらいいなと思います。
タイトルの元ネタ知ってる人が居てちょっくらビックリ。
86:42
07/12/09 22:13:45 83O8ydZU
>>85
あのゲームは名作だからなwww
経験者故に>>43でワロタwww
87:名無しさん@ピンキー
07/12/09 23:42:43 nEGYCb3Y
うわ、真昼さん来てたー!
カエレ….・°(>_<) °・.
真昼さんにはあらゆるところで泣かされているような気がする。
そして先生はどこへ…?ううう、続きが気になります…!
88:名無しさん@ピンキー
07/12/10 22:21:45 Bb7nbavN
>>85う~むやはり真昼さんは凄い叙情的でありながら叙事的でもあるとはカエレと楓がどうなるか展開読めないです!
真昼さんの超良SSの後ですいませんが
絶望日本書紀天岩戸編を投下させていただきます
天照大御神の配役は皆さんの予想通りですが
他の配役のせいで前回とは違うカオスとなりましたがよろしくお願いします
89:絶望日本書紀 天岩戸編壱/十弐
07/12/10 22:24:01 Bb7nbavN
「ふぅイザナミはわかってくれた様ですね。」
二度と会うことはない永遠の別れ、
それでもなお二人が産み育てた愛するこの国を守り育てると。
「・・しかし恐くて変な汗かいてしまいましたよ、水浴びでもしますか。」
イザナギは最初の頃の様に服を脱ぎ捨て海でジャブジャブと禊ぎを行いました、
汚れを落とすそのおごそかな行為においても多くの神々が産まれていきました。
「う~ん特に顔を洗うと気分がさっぱりしますねえ」
右目を洗うと太陽神であり天地全てを照らすアマテラスオオミカミが産まれ、
左目を洗うと月と夜を司る闇夜の神であるツクヨミノミコトが産まれ、
鼻をすすぐと海と嵐を司る荒ぶる神スサノオノミコトが産まれました、
この三柱はただ漠然と産まれた八百万の神と国を纏め支配する三貴神と呼ばれる神の中の神でもあるのです。
「これでこの国は安心ですねえ、良い老後が過ごせそうですよ。」
ぴろりぱらぴろ♪
「ん?神話なのにメールとは、一体誰でしょうか?」
『オレだよオレ、老け込んでるんじゃねーよハゲ』
「ス、スサノオ!?日本書紀で携帯はやめてください!!」
90:絶望日本書紀 天岩戸編弐/十弐
07/12/10 22:28:26 Bb7nbavN
『うるせー!神だから人知を超えてんだよ!!』
スサノオはとても気性が荒くイザナギに任せられた海をロクに納めもせず事あるごとに他の神々へ毒舌メールを送り、
父や兄弟を困らせてばかりいたのです。
『てかなんで俺鼻をすすいで産まれてんだよ!
俺はオメーのハナクソかよふざけんな!!
おふくろに会わせろや!!!』
「神話とはそうゆうシュールな物ですしイザナミは貴方のおふくろではありません!
貴方は、私が、鼻をすすいで産まれたんです!!!!」
『そんなわけわかんねー出生秘話受け入れられるか!!俺は黄泉にいるおふくろに会いてえんだ!!』
母を猟奇に変えた恐ろしい黄泉の国に我が子が興味を持つこの事態に父イザナギは血相を変えて益々声を荒げました。
「ダメ絶対!黄泉に行ってはいけません!!イザナミに会ってはいけませ~ん!!!」
『おまえよりはマシだハゲ!!短小!!
とにかく俺は会いに行くぜ!!!
・・・・・てかオマエもう出番ねえぞ(爆)』
「 な ん で す っ て !?
絶望した!
我が子に罵倒されて出番が終わる創造神に絶望した!!」
91:絶望日本書紀 天岩戸編参/十弐
07/12/10 22:31:33 Bb7nbavN
スサノオは散々罵倒したイザナギの屋敷から出るとそのまま黄泉の国へ悠々と向かっていきました、
しかし普段弱気な父親があんな剣幕で恐ろしいと叫んだ国です、
荒ぶる凄まじい神と言えど流石のスサノオも不安になってきました。
『取り敢えず高天原に寄り道して姉貴に挨拶でもすっか。』
そうしてスサノオは高天原の入口にある小川にまでたどり着きました、
すると対岸から勇ましい武人姿をしていながらも何処かあどけない顔立ちをした神が現れました、
『ケッ!姉貴ショタコン過ぎてとうとう男装にまで手を染めやがったか(笑)』
そう写し出された液晶ディスプレイを見たその神アマテラスは顔を赤らめながら叫びました。
「ち、ちがうよ!
私は最初男神だったのが太陽を奉る巫女と同一視されて女神になったんだし連載当初私を男の子と間違えた読者さんもいたけどそんなんじゃないよお!!」
『必死だなオイ(笑)』
「そんな事よりスサノオ何しに来たの?高天原を乗っ取りに来たの!?」
剣を握り乱暴な弟を威嚇しようとしますが涙目なのでまったく恐くありません、
スサノオは鼻で笑いながら指を高速で動かし、
来た理由が載った液晶をぐいっと見せつけました
92:絶望日本書紀 天岩戸編四/十弐
07/12/10 22:34:11 Bb7nbavN
『ちげーよw黄泉にいるおふくろに会いに行く途中でな、
寄り道して挨拶しにきただけだっつの。』
「え、そうなの?じゃあ身の潔白を証明してよ。」
『あぁあれやるのかよ』
そう文字を打っているとアマテラスはまが玉の輪をスサノオに投げ渡したのでスサノオは自らの十拳剣をアマテラスの足元に投げ渡しました。
「えいっ!」
アマテラスは剣を三つに割ると三柱の女神を生み、スサノオはまが玉から五柱の男神を生みました。
『へへへ俺は五柱も生んだぜw。』
「その五柱の材料のまが玉は元はあたしのだよ、
てか一度に五人もかわいい息子産まれちゃったあうふふ。
スサノオの剣からは心優しい女神が三柱も産まれたんだし、高天原入って良いよ。」
『へへへちょろいぜ!』
川をひょいと乗り越えスサノオは意気揚々と高天原に入っていきました、しかし・・・・・
「あっスサノオ、高天原は携帯圏外だよ。」
ガーーーーーーン!!!
アマテラスの言った事は本当でした、
神々が住まう天界たる高天原に携帯のアンテナなどある訳はなく、スサノオは唯一のコミニケーション手段を失ってしまいまったのです。
93:絶望日本書紀 天岩戸編五/十弐
07/12/10 22:39:03 Bb7nbavN
スサノオは本来の黄泉にいる母に会いに行くとゆう目的を忘れるほど慌てふためき、
おろおろとアンテナが立つ場所を探し廻りましたがバリ1どころか表示はずっと圏外のまま、
長い時間コミニケーション手段を奪われついに・・・・・
「うガp議*Ζモモギレ蛾ドススレ・am@魔!!」
「ひっ!スサノオ様が聞いた事もない言葉を!?」
「黄泉の底から響くような声だ!?」
スサノオの顔は渇ききった大地の様にひび割れ、シャイだった口には肉食獣の様な牙が生え大きくぱっちりした眼は白黒反転しおぞましい醜鬼の目付きとなり。
口から発するは文字化けしたこの世で一切聞いた事のない様な声、
いやむしろ音は高天原中に響き渡り作物は枯れ、八百万の神々に吐き気、頭痛、悪寒をもたらしました、そこで神々は彼が入る事を許可した最高神に苦情を言いにきました
「アマテラス様!貴女の弟君が高天原に混乱と破壊をもたらしてます!」
「スサノオが!?彼にも何か理由があったはずよ、」
彼の剣からは心優しい女神が生まれたし自分にかわいい息子をもたらしてくれた、
しかし神々の鬼気迫る顔に押され取り敢えず様子を見に行く事にしました
94:絶望日本書紀 天岩戸編六/十弐
07/12/10 22:41:33 Bb7nbavN
「璽$∝/ヅψэθК≦>ガ!!」
「こわっ!」
神々の苦情は本当でした心が清いと証明したはずの弟がこの世の者とは思えぬ姿で秩序を乱してるではありませんか。
するとアマテラスの侍女のワカノヒルメが頭を抱え初めました、
「なんなのこの内臓をえぐる様な声は!?
不安定になる!不安定になる!不安定になるぅ!!」
ワカノヒルメはスサノオの文字化けに耐え切れずとうとう断末魔を叫びながら泡吹いて普通に倒れてしまいました。
「ひいぃいぃいぃ!!!!!!」
息子は母親に似て娘は父親に似ると言われてます、
イザナミは厳密には実母ではありませんがスサノオは黄泉での彼女と同じく恐ろしい姿へ変貌し、それを見たアマテラスは実父のイザナギと同じく怯えて逃げだし、
洞穴に入ると岩戸で扉を締めて引きこもってしまいました。
しかし彼女は太陽神、光り輝くその不思議な力で高天原は繁栄を保っていたのですが岩戸に引きこもった事により光が照らなくなり高天原も地上の葦原の中つ国も闇に包まれてしまいました。
「アマテラス様岩戸開けて出て来て下さ~い!」
「コミケ始まる前に世界が終わっちゃいますよ~!!」
「開けないでよ!」
95:絶望日本書紀 天岩戸編七/十弐
07/12/10 22:45:11 Bb7nbavN
神々は数柱がかりでなんとか岩戸をこじあけようとしますがアマテラスの意志の様に岩戸は硬く重く閉まったまま、
神々が困り果てる中何故かほくそ笑む神がいました。
「フフフ太陽神である姉さんの蔭に隠れまさに日蔭者だった僕が目立つチャンスだ!」
アマテラスの弟にしてスサノオの兄ツクヨミです、彼はここぞとばかりに毛が薄い頭を突き出しました。
「みなさん落ち着いてください!太陽神たる姉さんが引きこもり闇夜包まれた世界を、
月の神たる僕の光りで照らしてあげますから!」
「やだっ誰もいないのに声が聞こえた!?」
「気持ち悪いね、」
ツクヨミを奉る神社は割とありますし天皇ともいくらか関わったりしてます、
しかし八百万の中で最も高い人気と知名度を持つ姉と弟に挟まれ彼は三貴神の中で最も影の薄い存在になってしまいました。
「そんな!ひどい!!」
神々は三貴神の一人でもいるかいないかよくわからないツクヨミではなく八百万中最も頭の良いオモイカネガミに相談する事に決めました。
「やだなあ皆さん、高天原の神々ともあろう方々がそんな辛気臭い顔しちゃって♪」
96:絶望日本書紀 天岩戸編八/十弐
07/12/10 22:47:59 Bb7nbavN
オモイカネガミはイザナギ、イザナミが生んだ子ではなく最初に誕生した文化レベルの高い神の直系であるため自身も高い文化レベルを誇っていました。
神々の真剣な頼みにオモイカネは荒ぶるスサノオに怯まず近づいていきます、
「魔那レ゛㍾Ⅷκ○∠@†Ж↑■マカクカガagp!!」
「これは、あの時のイザナミちゃんと同じ、
えいっ!!」
ガツゥン!
「今殴った!?あなた知恵の神様なのに石でブン殴らなかった!?」
「やだなあこれが石なわけないじゃないですかぁ、これは塞の神と言って悪い物を抑え守ってくれるありがたい石なんですよ♪」
「石って言ってるじゃん!!」
「それよりも問題なのはアマテラスちゃんよ。」
オモイカネいわく引きこもりは周囲が出そうとすればする程心を閉ざし余計引きこもってしまう物、
童話の北風と太陽みたく自分から出てくる様にするべきだと。
「でもどうやって?」
「天岩戸の前でドンチャン騒ぎをするのです!
鶏を鳴かせ楽器を鳴らしアメノウズメに舞わせアマテラスちゃんが岩戸の隙間から覗こうとしたとこをアメノタヂカラオにこじ開けさせるのです!」
「コノアジノ開キノ様ニ開イテミセマース!!」
97:絶望日本書紀 天岩戸編九/十弐
07/12/10 22:53:43 Bb7nbavN
アメノタヂカラオは八百万一の力自慢、
横にいるオモイカネが子どもに見える程の巨体に太い手足に彫りの深い顔、
人々に相撲をもたらしたとされる屈強な彼なら岩戸を開けてくれそうですしかし・・・
「ちょっと!日本の国技をもたらした神の役が何でこの人なのよ!?」
「相撲は日本人力士より外人力士が活躍してるのでむしろこの方が正しいのです!」
こうして神々はオモイカネの指示に従い家畜の神はまだ元気な鶏を集めて鳴かせ、
鍛治の神は楽器や鏡を作り、
他の神々は酒や食べ物を携えて天岩戸前に集いて最高神引きこもり脱却の宴が始まったのです。
「今カラ、ウズメ踊ルヨ♪」
鶏と楽器も鳴らされるとそのリズムに乗りウズメの舞踏が始まりました、高い運動神経と褐色の肌が際立たせる愛くるしさに女神たちからの黄色い歓声が響きましたが
男神たちは一部を除き冷ややかです、
何故なら半裸で踊っているものの彼女の胸は平たく色気がないからです、しかし一人の男神がある事に気づきました。
「てか下はなにも穿いてないんじゃ?」
軽やかに踊るたびに服がめくれ毛も生え揃わぬ陰部があらわになってる事に気付いた男神たち不自然な前屈みになりながら大歓声を送りました
98:絶望日本書紀 天岩戸編十/十弐
07/12/10 22:57:13 Bb7nbavN
「さわがしいな・・」
先程まで神々は出てくる様に泣き付いていたというのに今聞こえるのは笑い声や歓声と言った楽しげな声ばかり、
自分が引きこもり世界は闇に包まれてるはずなのに・・・・・
アマテラスは岩戸の中から歓声の中心にいるウズメに聞いてみる事にしました。
「ねえ、私が引きこもってるのになんで皆楽しそうなの?」
「貴女よりモ立派ナ神ガ現れたからだヨ」
自分よりも立派な神とは誰だろう?
もしやかわいい男子の神かもと期待しながらアマテラスは岩戸を少し開けて覗き込みました、
そこには鏡が置いてあり自分の姿が写ってますがそうとは気付いていません。
「最近は男の子でも髪を私位伸ばしてるんだあ」
「今ダ、天岩戸開キナサーイ!!」
アマテラスが鏡に見とれている隙にタヂカラオは太い指を岩戸につっこみ自慢の怪力で神々が束になっても開けられなかった岩戸をグググとこじ開けていきます、
そして彼女の手を引き外に出すとアマテラスの体は山吹色の輝きを放ち、
その名の通り天から世界を照らして再び不思議な力で暖かい繁栄の活力を分け与えていきました。
99:絶望日本書紀 天岩戸編十壱/十弐
07/12/10 22:59:47 Bb7nbavN
アマテラスが引きこもり脱却した後
まどろみと鈍痛で頭がぼやける中
石で殴られ気を失っていたスサノオが目を覚ましました、
寝ぼけ眼を開くと雲一つない快晴の青空の下でうらめしそうな顔をした神々が自分を取り囲んでいたのです。
「出て来たから良いものをよくもアマテラス様を引きこもらせて!」
「なんとか言ったらどうなんですかスサノオ様!!」
神々は一斉に世界を滅ぼしかけたスサノオを責めはじめましたが携帯メールでしか意志を伝えれないスサノオは言葉を発する事が出来ません。
「大丈夫よメールや言葉じゃなくても伝える手段は沢山ありますよ、
目を見れば相手が何を言いたいかわかるもんです。」
オモイカネは先程自分が後頭部を殴り青ざめてるスサノオの目をじーっと見つめだしました、
「やーねえ
『正気を失った私を止めてくれただけでなく、
引きこもった姉さんを出してくれるなんて
オモイカネ様は凄いです!
尊敬します!
流石機○戦艦ナデシコや蛮○引力で電子頭脳になるだけありますね』だなんて照れるなあ♪」
自分が思ってる事とまったく違う妄言にスサノオは頭を激しく横に振りました。
100:絶望日本書紀 天岩戸編十弐/十弐
07/12/10 23:03:00 Bb7nbavN
「じゃあ次は私の目を見て私の考えてる事わかる?」
おそるおそるスサノオはオモイカネの大きな目を見つめてみました、
濁りなく黒真珠の様に奥深いその瞳の果てに浮かんだその言葉は・・・・
「ウセロ ウセロ ウセロ ウセロ ウセロ ウセロ 」
『!?』
こうしてスサノオは圏外の高天原からアンテナが立っている地上の出雲に追放されましたとさ。
101:名無しさん@ピンキー
07/12/10 23:08:35 Bb7nbavN
はい十弐レスもお付き合いいただきありがとうございました
前回千里ちゃんがまた出るのかと質問してくださった方がいますが
国生み編~因幡の白うさぎ編まで基本一人一役を通してるので出ません
芽留は今後も出ますが
ヤマタノオロチ編は様子を見ながら投下させていただきます
102:名無しさん@ピンキー
07/12/10 23:51:32 WLdOuNS8
正直読んでるうちに誰が誰だかわかんなくなった
103:名無しさん@ピンキー
07/12/11 01:26:04 XPkyFuS4
日本書紀ってこういう話だったのか!?あなたのSSでポロロッカしそうw
面白いから期待してるぜ!
104:名無しさん@ピンキー
07/12/11 02:38:01 rofy5p2y
途中で誰か分かったけど正直ごっちゃになりそうだ
でも続きには期待している
てか
>連載当初私を男の子と間違えた読者さんもいたけどそんなんじゃないよお
マジか?
105:名無しさん@ピンキー
07/12/11 08:46:52 fHCfocaD
3話の霧か
あれは間違えるだろw
106:追記②
07/12/11 11:03:49 BlV02iYp
>>102読み返すと確かにわかりづらかったですね
取り敢えず名前が出てないその他八百万の神役は藤吉さんと他の2のへ生徒ということで
>>103なんとありがたいお言葉、ありがとうございます
スサノオとツクヨミとオモイカネあたりが特にオリジナル要素入ってますがあらすじはこういう感じです
>>104-105そうです最初は言葉使いが粗暴で名前も中性的なので2ちゃんの書き込みでも美少年だと書いた人がいました
107:名無しさん@ピンキー
07/12/11 12:58:31 6YJVUkJX
明日は番外編の発売日ですね
108:名無しさん@ピンキー
07/12/11 22:48:36 waLX8LOT
よし子先生かわいいよよし子先生
109:名無しさん@ピンキー
07/12/12 00:30:24 iNb08hOP
番外編は先生がどSになったりは…しないだろうな
110:名無しさん@ピンキー
07/12/12 01:00:40 yR85TW+X
なみ並にはいつもSじゃないか先生は。
111:名無しさん@ピンキー
07/12/12 02:40:54 hhuTf8PR
料理されていた佐藤年男さんは人間なのか神なのか疑問だw
(本筋に関係ないが)
112:430
07/12/12 20:11:04 7/H9YXls
こんばんは、とうとう、ウィ○コム契約してしまいました。
これで規制も出張もバッチ来いですよ。
嬉しさの余り、職場の会議室からこっそり投下。
ホントにスチャラカだなぁ…途中で誰か入ってきたらどうしよう。
エッジで初投下なので、とりあえず短めのものでチャレンジ。
千里28歳のお話です。…エロなしです、すいません。
一応、以前書いた「さぼてんの花」や「ありかなしか」の続き、
にはなってますが、別にそちらを読まなくても大丈夫かと。
113:都会のサボテン 1/4
07/12/12 20:12:28 7/H9YXls
「はぁー、今日も残業しちゃった…。」
千里はやれやれとため息を吐きながら自宅マンションのドアを開けた。
「…というより、もう、これが定時かな。」
一人笑いをして壁の時計に目をやると、とうに日付は変わっている。
「全く、今日中にドキュメント上げろなんて、無茶言ってくれるわよね…。」
ぶつぶついいながら、千里は脱いだスーツをハンガーにかけた。
千里は、今、外資系のコンサル会社でシニアマネージャーを務めていた。
28歳という千里の年齢を考えれば大抜擢である。
しかし、当然、それに呼応するように仕事は増えていく。
最近では、日付が変わる前に千里が帰宅できることは、ほとんどなかった。
軽くシャワーを浴び、楽な部屋着に着替えると、
千里はブランデーグラスを片手に、ソファに背を預けて息をついた。
部屋の電気を消したまま、そこから、ぼんやりと窓の外を眺める。
都心の高層マンション。
夜景が美しいという評判につられ、高い家賃にも関わらず引っ越した。
「うーん、あんまり意味なかったかなぁ…。」
千里は、窓の外の、既に照明を落とした観覧車を見ながら呟いた。
それでも、都会の灯はまだ明るく、星の海のように千里の前に広がっている。
千里は、自分が、その無数の星の1つであることを強く感じた。
息を吐いて、グラスに少しだけ注いだブランデーを口に含む。
ふと、高校生の頃、風呂上りに麦茶で似たようなことをしていたのを思い出した。
クスリ、と千里の口から笑いがこぼれる。
「あの頃は、背伸びばっかりしてたなぁ…。」
今の自分が嫌で、何か別のものになりたくて必死だったあの頃。
大人の真似をすれば、今の自分から抜け出せるような気がしていた。
「でも、楽しかったな…あの頃は。」
ふいに自分の口からついて出た言葉に、千里は自分で驚いた。
「やだ、何で、こんな年寄りみたいなこと…。」
思わず、背筋を伸ばしてソファの上に座りなおした。
114:都会のさぼてん 1/4
07/12/12 20:13:19 7/H9YXls
「はぁー、今日も残業しちゃった…。」
千里はやれやれとため息を吐きながら自宅マンションのドアを開けた。
「…というより、もう、これが定時かな。」
一人笑いをして壁の時計に目をやると、とうに日付は変わっている。
「全く、今日中にドキュメント上げろなんて、無茶言ってくれるわよね…。」
ぶつぶついいながら、千里は脱いだスーツをハンガーにかけた。
千里は、今、外資系のコンサル会社でシニアマネージャーを務めていた。
28歳という千里の年齢を考えれば大抜擢である。
しかし、当然、それに呼応するように仕事は増えていく。
最近では、日付が変わる前に千里が帰宅できることは、ほとんどなかった。
軽くシャワーを浴び、楽な部屋着に着替えると、
千里はブランデーグラスを片手に、ソファに背を預けて息をついた。
部屋の電気を消したまま、そこから、ぼんやりと窓の外を眺める。
都心の高層マンション。
夜景が美しいという評判につられ、高い家賃にも関わらず引っ越した。
「うーん、あんまり意味なかったかなぁ…。」
千里は、窓の外の、既に照明を落とした観覧車を見ながら呟いた。
それでも、都会の灯はまだ明るく、星の海のように千里の前に広がっている。
千里は、自分が、その無数の星の1つであることを強く感じた。
息を吐いて、グラスに少しだけ注いだブランデーを口に含む。
ふと、高校生の頃、風呂上りに麦茶で似たようなことをしていたのを思い出した。
クスリ、と千里の口から笑いがこぼれる。
「あの頃は、背伸びばっかりしてたなぁ…。」
今の自分が嫌で、何か別のものになりたくて必死だったあの頃。
大人の真似をすれば、今の自分から抜け出せるような気がしていた。
「でも、楽しかったな…あの頃は。」
ふいに自分の口からついて出た言葉に、千里は自分で驚いた。
「やだ、何で、こんな年寄りみたいなこと…。」
思わず、背筋を伸ばしてソファの上に座りなおした。
115:都会のサボテン 2/4
07/12/12 20:14:37 7/H9YXls
「疲れてるのかな…。」
千里は、呟きながら目線を窓際の植木鉢にやって、目を見開いた。
この部屋に入居したときに買ったサボテンに小さな蕾がついていた。
千里は、窓際に歩み寄り、植木鉢を手にとって呟いた。
「花が…咲くんだ…。」
しばらくサボテンを見つめるうちに、目の前がだんだんぼやけて来た。
息がつまり、千里は思わず胸を押さえた。
――ねえ、木津さん…。
この、サボテンね、めったに花はつけないですけど…花が咲くと、
それは美しいんですよ…。
――我慢して、一生懸命生きているものは、皆、美しいんです。
それは、人間も、一緒なんですよ。
高校時代の担任の言葉が、鮮やかに脳裏に蘇る。
それと同時に、穏やかに微笑む彼の笑顔も。
それは、千里が今まで忘れていた…いや、忘れようとしていたものだった。
高校時代の担任、糸色望に、千里は会って間もない頃から惹かれていた。
望は、千里の隠された弱い部分を、初めて見つけてくれた大人でもあった。
高校生活の間、様々な出来事を通して2人の間には少しずつ特別な想いが育まれ、
そしていつしか、互いの存在を「恋人」と呼び合う関係になっていた。
――なんで、こんなこと…ずっと忘れてたのに…。
いや、それは嘘だった。
忘れたことなんかない。
忘れた振りをしていただけだった。
この部屋に入居して、一番はじめにサボテンを買ったのも、
きっと、初めて望に優しい言葉をかけてもらったあのときのことが、
どこか頭にあったからに違いないのだ。
――先生とは、もう、終わったのに…自分で、そう決めたのに。
116:都会のサボテン 3/4
07/12/12 20:15:38 7/H9YXls
結局、2人の関係は、長くは続かなかった。
実家に帰って跡を継ぐから一緒に来て欲しい、という望に
千里が首を横に振ったのだ。
当時、千里は社会人になったばかりだった。
自分の将来に対する夢と希望が、胸に満ち溢れているときだった。
社会で、自分の可能性を試すのが楽しくてならない、そんなときに、
全てを捨てて望について行く、と、千里は思い切れなかったのだ。
――…しかた、ありませんね…あなたには輝かしい未来があります。
それを束縛する権利は、私にはありません。
悩みぬいた挙句の千里の答えを聞いて、
望は、どこかが痛むような笑顔で千里を見た。
そのときの望の顔と声は、今も千里の胸に焼き付いている。
千里とは別の選択をした女性もいた。
彼女は、高校のときと同じ一途さで、望を蔵井沢まで追いかけて行った。
その後しばらくして、千里は風の便りに、2人が結婚したと聞いた。
今は子供にも恵まれ、幸せに暮らしているらしい。
――あのとき、先生に付いていかなかったこと…後悔してる…?
千里はサボテンに問いかけた。
あの時望に付いて行ったら、自分にはどんな人生が待っていたのだろう。
望の隣で微笑んでいるのは、まといではなく自分だったのかもしれない。
千里はしばらくサボテンを眺めていたが、頭を振った。
そんなことを考えても意味はない。
今の自分の生活に、不満があるわけではなかった。
どんどん大きなプロジェクトを任されるようになっている。
顧客の信頼も得られるようになって来た。
千里は、自分の力で築き上げて行く人生に、確かな充実感を感じていた。
――これが、私の選んだ道なんだから…。
117:都会のサボテン 4/4
07/12/12 20:16:53 7/H9YXls
それでも時に、こんな疲れた夜には、ふと、心をよぎることある。
――望と共に歩むことができたかもしれない、もう1つの人生が――。
千里は、サボテンの蕾をそっとなでた。
――先生、私、今も、一生懸命生きてます。
先生と同じ花は咲かせることはできなかったけど…。
でも、美しい花を咲かせるために、ここで、頑張ってます…。
微笑みながら、サボテンをなで続ける千里の頬の上を、
一粒の涙が、窓の外の光に煌きながら零れ落ちていった――。
118:430
07/12/12 20:18:34 7/H9YXls
無事、投下完了しました!ドキドキした!
それと、妙に暗いSSを投下してスイマセン。
でも、幸せの形というのは人それぞれだと思うですよ…。
しかし、やはりエッジでの投下は時間はかかりますね…長編は辛いかなぁ…。
うーん、規制解除されるといいなぁ…。
119:名無しさん@ピンキー
07/12/12 21:40:06 b5BXnDRq
その話、もう終わった。
120:名無しさん@ピンキー
07/12/12 22:30:36 TxKQqSNX
なんか既視感があるなあ。
似たようなSSなかったっけ?
121:名無しさん@ピンキー
07/12/12 22:38:09 sttlkaIv
>>120
851氏の千里28歳、かも。
>>118
しんみりと読ませてもらいました。
千里、先生を忘れられないまま生きて行くのか…
切ない。でも、リセットできないんだろうな… と、なんだか感情移入してしまう(ry
職場で投下… ご用心をw
産業スパイとかと間違われぬようにw
122:名無しさん@ピンキー
07/12/12 22:50:47 b5BXnDRq
大草さんとぬかどこかき混ぜたいです
123:名無しさん@ピンキー
07/12/12 23:24:47 tkKD/+Hd
千里ちゃんはこういうのが変に似合うから困る・・・
124:430
07/12/13 00:24:38 6gsn+Gtg
>>120 >>121
うわぁ、ホントだ……851さんごめんなさい…!
意識して書いたわけではなかったのですが、
こちらのSSは、以前読ませていただいているので、
その内容が何となく頭に残っていたのかも…です。
以後、気をつけます…orz
125:名無しさん@ピンキー
07/12/13 01:08:28 GW5H+7Kr
>>430
色んな話を投下してくださってるんだから、そういう事もありますがな。
お気になさらず、と作者でもない自分が言うのもなんですが。
自由に投下できない状況で頑張ってくれてありがたい。またの投下を心よりお待ちしとります。
126:名無しさん@ピンキー
07/12/13 01:41:54 m6Yq0FdT
あのジョーバエピソードの影響か、千里の未来はせつな系になっちゃう傾向があるんですかね?
明るい未来も見てみたい。
127:名無しさん@ピンキー
07/12/13 21:45:26 Ht7op+nF
あの未来はどうみても先生に振られたあとの人生だな。
先生と一緒になって幸せな28歳像をみてみたい
128:名無しさん@ピンキー
07/12/13 22:30:18 4pco1BIq
千里の話で盛り上がってるとこ悪いけど、先生はやっぱ可符香と一緒がいいや。
129:名無しさん@ピンキー
07/12/13 22:33:49 p2o1duFX
そんなサブヒロイン好きの立場がなくなること言わないでくだしあ
130:名無しさん@ピンキー
07/12/13 23:42:44 rcH1OPyG
むしろメインヒロインは千里ちゃん。たとえ宇宙人からミンチにされたとしてもこれだけは譲れない
131:名無しさん@ピンキー
07/12/13 23:50:50 81nc1QUj
普通の変な子こそ主人公ですよ。
132:名無しさん@ピンキー
07/12/14 00:05:15 p2o1duFX
別にサブヒロインだろうが関係ない
俺は先生と霧ちゃんのやりとりが好きなんだ
133:名無しさん@ピンキー
07/12/14 00:18:27 S80OfMfc
>>130はすぐにそういうこと言わない方がいいと思うぜ
信者がうざいからアンチもうざくなんだよ
134:名無しさん@ピンキー
07/12/14 00:30:19 t+K0GCgN
金子みすずも言ってます
「みんな違ってみんな良い」と
135:名無しさん@ピンキー
07/12/14 02:04:06 pBezFSyO
つまり望がヒロインで良いと言う事ですね。
そもそもこの作品にヒーローいないし。
136:名無しさん@ピンキー
07/12/14 02:34:34 wmqPPYkz
嫌だなあ、誰だ?かっこいい!のヒーローさんガイルじゃないですか。
137:名無しさん@ピンキー
07/12/14 02:50:58 p88oZhgM
ジョジョの?
138:名無しさん@ピンキー
07/12/14 09:35:43 AqRMQOJp
パーティの後、寝てる先生の元にきよ彦が現れて、そこになぜかみんな居るってのは
みんな宿直室で一緒に寝てたって事になるのか、いやらしい
139:名無しさん@ピンキー
07/12/14 10:43:31 42c1/Aya
このクラスの女子は全員 先生のお手付きなんで
140:名無しさん@ピンキー
07/12/14 19:47:45 wkyV4T/l
どうも今年はハロウィン、クリスマスとも不発だった気がする。
ってここはエロパロすれか。
141:名無しさん@ピンキー
07/12/14 20:24:09 rw+kPA1F
ハロウィンは先生の部屋であんな格好しちゃう霧ちゃん見れただけで満足でさぁ
142:名無しさん@ピンキー
07/12/15 00:24:04 Eb30oVyW
きよ彦も飛び入り参加するクリスマス乱交パーティーのSSキボンヌ
143:携帯から。改行ミスったらスマソ
07/12/15 06:16:33 VQaXpgtA
「突然ですが、先生、2のへ組の担任を辞めようと思います」
「本当に突然ですね」
「普通の反応ですね」
「普通って言うなぁ!」
「先生!せめて三学期の終わりまできっちり担任してください!
大体、元総理じゃあるまいしどーしてこんな変なタイミングで辞任なんですか!」
「先生、エロパロ板にいて思ったのです。このままでは自分の教師人生が
強制終了してしまうと!そもそも私は皆さんの担任になってからごくごく普通の
担任教師として教え子と接しているつもりなのに、ここに書かれるSSときたら!」
********** 開 始 **********
「……ん……せんせ……あぅ」
「本当に白くて……綺麗な肌ですね。すべすべしていて、先生の好みですよ……」
「あっ!んぅ……せん……せ…ぃっ」
「いつも人の後ろに立つ貴女ですけど……後ろからされるというのも、新鮮でしょう?」
「やああん!せっ、先生、そこ違っ……あああっ!」
「おや、普通を嫌がる貴女ですから、こちらの方がお気に召すかと思ったのですが」
「んっ、先生、駄目ですよ、外でなんて……きっちり中で、いってっ、もらいますから、ねっ……」
『おいおい、こんなもんでいっちまうのかよ早漏w こんなもんで女を満足させようなんて
千年早っつーの、童貞でももうちょい粘るぜw』
「誰が胸だけで出していいって言ったの?勝手に自分だけ満足しない、訴えるよ」
「嫌だなぁ、逆レイプなんてあるわけないじゃないですか。これは女性が主導権を握った
女性メインの性行為ですよ」
********** 終 了 **********
144:名無しさん@ピンキー
07/12/15 06:20:34 YbVIw5BR
「絶望した!男女の営みでも受けにされてしまう自分の属性に絶望した!!」
「あー……まあ確かに先生は攻受で言ったら、受けですよねー」
「意味ありげにじっくり見つめないで下さい!
……とにかく、何時の間にやら貴女たち教え子との間に
いろいろな関係が捏造されているのです!
これがしかるべき機関に発覚すれば私はその場で免職!野良教師!
それどころか未成年にわいせつな行為をした罪で有罪ですよ!」
「首、吊ッテモラエルヨ」
「そ、そこまで大罪にはならないと思いますが……ということで、こういった数々の
捏造フラグを全て消去するため、私はこの教室を離れようと!」
「嫌だなぁ、捏造フラグなんてあるわけないじゃないですか」
「はい?」
「先生、エロパロ板は全て妄想の産物なんです。妄想の力は素晴らしいんですよ」
「も、妄想の力?」
「そうです。妄想さえあれば日常生活のありとあらゆるものがエロになるのです」
・女の子に咥えられたフランクフルト
・女の子の口の周りについた生クリーム
・「力抜いて……力入れてると余計痛むよ……」(注射針)
・「……生でいいよ?」(最初の一杯)
・「私、経験なくて……ちょっと怖いけど、頑張るから……」(献血初挑戦)
・「あなたと合体したい……」(お茶の間を凍りつかせるパチンコCM)
145:一部キャラ出せなくてスマソ
07/12/15 06:30:47 0CLr9Ljw
「ですから、エロパロ板に妄想さえあれば、先生が野良教師になっても
全く問題なくSSは生産されるのです。全ては妄想の賜物なんですよ」
「な ん で す っ て !
それじゃあ私が今更何をしても逮捕フラグは消えないということですか!
と言いますか捏造とどこが違うんですか!」
「……先生、ばれなきゃ逮捕なんてされないんです。きっちり、最期まで
隠し通せばいいんですよ」
「あ、あの、隠し通すも何も事実無根ですよ?」
「真実の愛に教師も生徒も関係ないと思います。刑法も民法も私と先生を
引き裂くなんてできません」
「まあ、確かに貴女は刑法でも民法でも離れてくれないような気はしますが……」
「大丈夫だよ、せんせ。刑務所でずっと引きこもるのも楽しいかもよ?」
「いやいやいや、刑務所って非常に規則正しい労働生活ですよ、って……」
「刑務所かあ……囚人同士ってジャンルもいいかも。そういうの実際あるって聞くし」
「貴女はどこまで開拓するつもりなんですか!……いえあの、そうではなくて」
「先生、もし有罪になっちゃっても、ちゃんと帰りを待っててあげますから!」
「……普通のシナリオですね」
「普通って言うなぁ!」
「いえ、だからそうではなくてですね……
皆さん、どうして私にどんどん迫ってくるんです……?」
「捏造だの妄想だの、人聞きが悪いじゃない。訴えるよ」
「そういうの、いらいらするんです。きっちり事実にしてください!」
『良かったなオイ。オメーなんかを相手にしてやるって言ってんだ。
ありがたく思って泣いて喜びな』
「先生、今こそ私と真実の愛を育みましょう!」
「先生!攻められてるところスケッチさせてください!」
「え、えっと、こういうのってやっぱりまずはキスからですよね!」
「え、ちょ、まっ――――!!」
「いやだなぁ、オチなんてあるわけないじゃないですか。
これは神様を待つ間の、ほんの妄想ですよ」
146:430
07/12/15 13:21:39 FYRuFuHv
>>145
うまい!こういう原作風味の小話大好きです!
えーと、神でなくてスイマセン…。
先般、マルかぶり気味のSSを投下してしまい反省しきりだったので、
今回は、これならかぶらないだろう!という組み合わせで書いてみました。
命兄と智恵先生です…でも命兄×智恵先生ではない。
なお、SM風味となっておりますが、
SMは当然のことながら全くの素人なので嘘ばっかりだと思います。
そこら辺は生暖かくスルーライフでお願いいたします。
147:放課後のいたずら 1/10
07/12/15 13:22:41 FYRuFuHv
「ああ、疲れた…。」
命は、注射針を注射器から外しながら、やれやれと肩を揉みほぐした。
今日は弟の高校で予防接種があり、命は、校医として来校していたのだ。
そんな命に、
「本当に、お疲れ様でした。で、申し訳ないんですが、
私、子供の迎えの時間がありますので、これで失礼します。」
助手を務めていた丸顔の保健医は、そう言うと、とっとと保健室を後にした。
「はあ…。」
保健室に残された命が、仕方なく1人、医療器具を片付けていると
保健室と隣の部屋をつなぐドアが開いた。
「あら、糸色先生、まだいらしたんですか。」
姿を現したのは、スクールカウンセラーの新井智恵であった。
「新井先生?へぇ、保健室は、中でSC室とつながってるんですね。」
「ええ、カウンセリング中に気分が悪くなる生徒もいるので…。
私、彼女から保健室の戸締りを頼まれてたんですが、先生、
もしよろしかったら、こちらの部屋でお茶でもいかがですか?」
智恵は、保健室の入口を施錠しながら、命に微笑みかけた。
こんな美人の誘いを断る手はない。
命は、二つ返事で誘いに応じた。
10分後。
命は、SC室で智恵と向かい合ってお茶を飲んでいた。
命は、お茶を一口飲むと、智恵に尋ねた。
「どうです、うちの愚弟は皆さんにご迷惑をかけてませんか?」
智恵は、その質問に苦笑した。
「そうですね、糸色先生は…。」
といいかけて、あら、と口を押さえる。
「先生も、糸色先生ですものね、紛らわしいわ。」
命は笑うと、すかさず自分を売り込んだ。
「私のことは、命、と呼んでください。
弟のことは、アホでも馬鹿でもお好きなように。」
智恵はコロコロと笑った。
「分かりました、それでは先生のことは命先生と呼ばせていただきます。
私のことも、下の名前で呼んでくださいな。皆、そうしてますから。」
148:放課後のいたずら 2/10
07/12/15 13:23:47 FYRuFuHv
――いい女だなぁ。
命は、智恵の笑顔を見ながら思った。
今まで、それなりに色々な女性と遊んできてはいるものの、
ここまでの美人にはそうそうお目にかかったことはない。
色っぽい体つきと真面目そうな風情とのギャップも、男心を誘う。
――望の奴、こんな美人と一緒に働いてるのか。
命は、弟をうらやましく思った。
「で、弟が何か?」
話を戻すと、智恵は頬に手を当てた。
「いえ、迷惑というほどではないんですけれど…。」
命は、智恵から、望が毎朝SC室に相談にくるという話を聞いて眉を上げた。
――なるほど。望の奴、この先生に惚れてるのか。
そういえば、と、弟は昔から年上の女性が好きだったのを思い出す。
――あいつは、マザコンだからなぁ…。
「すいません、あの馬鹿ときたら、とんでもないご面倒を…。」
渋面を作って謝ると、智恵は、いいんですよと笑って手を振った。
「それに、何だか、糸色先生ってどこか放っておけないところがあって。」
命はそれを聞いて、内心、またか、と舌打をした。
昔から、そうだった。
命も望も同じような顔つき、背格好で、年頃も近く、条件は変わりない。
むしろ、医者である命の方が、世間的には好条件のはずなのに、
こと、女性に関しては、命は弟に連戦連敗していた。
命が目をつけた女性達は、皆、必ずと言っていいほど、
いつの間にか手取り足取り弟の世話を焼いているのである。
――だって、望君って何となく放っておけないんですもの。
命の抗議に、彼女達は異口同音にそう答えるのだ。
しかも、望自身は、それを全く自覚していないところが余計に腹が立つ。
――この先生も、いままでの娘たちと一緒か…。
命は、弟に対する対抗心がむくむくと湧いてくるのを感じた。
149:放課後のいたずら 3/10
07/12/15 13:24:53 FYRuFuHv
命は、つと智恵から目をそらすと、ため息をついて見せた。
「智恵先生は、お優しいんですね…。」
タイミングを見計らって、顔を上げる。
「知恵先生。私にも悩みがあるんです…聞いていただけますか?」
「え…?」
「先生、初めてあなたを見たときから、私は、胸が苦しいんです…。」
「…。」
「あなたを見ていると、何故か、全身の疼きが止まりません…。
…あなたのその優しさは、私には向けていただけないんでしょうか?」
陳腐極まりない、品のない口説き文句であることは百も承知だ。
しかし、智恵も小娘ではない、命の言っている意味は分かるだろう。
あとは、目力で勝負である。
切なそうな表情を瞳に浮かべ、一心に智恵を見つめた。
目を合わせてしまえば、大抵こっちのものだった。
智恵はため息をつくと言った。
「…私に、どうしろと?」
「あなたに…この疼きを癒して欲しい…。」
智恵は立ち上がった。
「…分かりましたわ、命先生。
でも、治療は、私なりの方法でやらせていただいてよろしい?」
命は、心の中で、弟に向かってガッツポーズをして見せた。
しかし、表情はあくまでも誠実に
「もちろんです。あなたの嫌がることは一切しませんよ。」
と微笑んだ。
ところが。
次の瞬間、智恵の態度がガラリと変わった。
「じゃあ、まず、そこに跪いてちょうだい。」
「…は?」
命は、先ほどの笑顔で固まったまま、智恵を見返す。
「私の方法に従うんでしょう、さあ、早く跪きなさい!」
命の背中に冷や汗がつたった。
150:放課後のいたずら 4/10
07/12/15 13:26:06 FYRuFuHv
――こ、これは。
自分は決してM 属性の人間ではない。
むしろどちらかといえばSだと思う。
――しかし…。
目の前で腕を組む美しい女性。
これを、みすみす逃すのも惜しい話である。
弟に対する対抗心もある。
命は、目を瞑り、何事も経験だ! と思い切ると智恵の前に跪いた。
智恵が、命の前に立ちはだかり、つと手を命の顎にかけ上を向かせる。
智恵の目は異様に輝いており、命は、思わず体を引いた。
「怖がってるのね…ふふふ。」
智恵が楽しそうに笑う。
「大丈夫よ。初めての人には、優しくしてあげるから…。」
――そ、その方向で、お願いします…。
命は言葉も出なかった。
「体が、疼いて困るんでしょう…?」
智恵は、唇が触れ合わんばかりのところまで顔を近づけると囁いた。
「ちゃんと、どこが疼くのか説明してご覧なさい?」
そう囁きながら、指先で、命の喉元をすっと撫で上げる。
命の背中を快感がぞわぞわと這い登った。
「さあ、どこが疼くの?」
「え、その…。」
さすがに、命が口ごもる。
しかし、智恵にじっと見つめられ、小さな声で答えた。
「か、下半身が…。」
智恵は、口の端をあげた。
「下半身、だけじゃ分からないでしょう?…ここ?」
喉をなでていた手が命の腿に伸び、そこをさわさわと撫でた。
「う…。」
151:放課後のいたずら 5/10
07/12/15 13:27:30 FYRuFuHv
「さあ、答えてご覧なさい…。」
智恵は、命の耳元で囁くと、そっと命の耳たぶを甘噛みした。
その手は膝から足の付け根の間を微妙な動きで行き来している。
その妖しげな感覚に、すでに、命の下半身は完全に張り詰めていた。
しかし、智恵は、わざとそこには手を触れようとしない。
「きちんと、疼く場所の名前を言ってご覧なさい…?」
「…。」
改めて、その名を口にしようとすると、何だか恥ずかしい。
ためらう命に、智恵の声が一オクターブ低くなった。
「…言わないと、これでおしまいよ。」
「…っ!」
命は、顔を羞恥に赤く染めながら、不承不承その器官の名を口にした。
「よくできました。」
智恵は、嬉しそうに微笑むと
「いい子には、ご褒美をあげないとね。…ちょっと待っててちょうだい。」
そういうと、ついたての後ろに回った。
しばらくして出てきた智恵の姿に、命は息を飲んだ。
黒いボンデージファッションに身を包んだ智恵は、まさに「女王様」であった。
智恵は命に近づくと、命のシャツのボタンをゆっくりと外していった。
「どうしたの…黙り込んで。」
固まったまま、気が付くと、命はすっかり服を脱がされていた。
「ふふふ…なかなかいいものを持ってるじゃない。」
智恵が命を見下ろす。
「こんなきれいな顔をして、いけない子ね…。」
智恵は妖艶に笑うと、命の頬をすっと撫でた。
命の背中に再び快い痺れが走った。
しかし次の瞬間、命は、智恵がロープを取り出すのを見て焦った。
――いくらなんでも、ロープは…。望じゃあるまいし。
152:放課後のいたずら 6/10
07/12/15 13:28:39 FYRuFuHv
「あ、あの、智恵先生、ロープはちょっと…なにぶん初心者なので。」
情けないと思いつつ、口調が哀願調になる。
智恵は眉を上げると、ため息をついた。
「しかたないわね。じゃあ、特別に今回は別のものを使ってあげる。」
智恵は保健室とつながるドアの向こうに姿を消すと、
伸縮性の包帯を手に戻ってきた。
包帯で両手を後ろ手に固定される。
包帯の柔らかい感触にほっとしていると、後ろから首に包帯を回された。
「――え??」
智恵は、淡々と、反対側の手首に包帯の端を結び付けている。
これでは、腕を伸ばしたら首が絞まってしまう。
――窒息プレイか…確か、事故事例も多かったはず。
……下手すれば、酸素不足で多量の脳細胞が死滅して、
取り返しの付かないことに…。
なまじ知識があるだけに、窒息状態よって生じる様々な症例が頭に浮かぶ。
「ち、智恵先生、これは危険では…?」
自分は、弟と違い、自殺未遂の趣味はない。
「大丈夫、加減は分かってますから。」
凄絶な笑みを浮かべる智恵に、命の背筋に、先ほどとは異なる戦慄が走った。
「さあ、いきましょうか。」
智恵は、どこから取り出したのか、いつのまにか長いムチを持っていた。
「ちょ、待って…!」
命の制止を聞かず、智恵は、勢いよくムチを振り下ろした。
バシっと大きな音がSC室に響き渡る。
ムチ自体は、派手な音の割に、意外にも痛くなかった。
しかし、背中を打たれるその感覚に、思わず腕が伸びる。
腕から回された包帯が首を圧迫した。
――く、苦しい…!
一瞬、意識が朦朧となる。
153:放課後のいたずら 7/10
07/12/15 13:29:48 FYRuFuHv
慌てて腕を緩めるが、そこに再びムチが振ってくる。
――た、助けてくれ…!
しかし、そのうちに不思議な快感が命の中で湧き上がって来た。
触られてもいないのに、下半身が爆発しそうになる。
「あら、命先生、才能あるみたい。」
智恵の笑いを含んだ呟きに、命はぶんぶんと首を振った。
――ちがう、私はMではない…!
智恵は、ムチを振るう手を止めると、命の前にしゃがみこんだ。
「だって、先生…ほら、こんなに。」
張り詰めた命自身の先端から、透明の雫がにじみ出ている。
智恵は、それを、ゆっくりと先端に塗り広げた。
「く…っ、ふ…。」
思わず、命の口から喘ぎが漏れる。
「ふふふ、いけない子ね。」
智恵は楽しそうに命自身を弄り始めた。
「う、ぐぅ…!」
智恵の指が敏感な部分を触れるたびに体が跳ね、腕が伸びて気道が圧迫される。
――息が、できない…!
しかし、喘いでいるうちに、再び意識が朦朧としてきて、
それに伴い、快感が苦しさを上回るようになってきた。
「先生…そんなに腕を伸ばしては、駄目よ。」
智恵が囁くが、体は言うことをきかない。
遠のく意識に頭のどこかで警鐘が鳴っているのを感じたが、命はもはや、
このまま快感の波にさらわれてしまってもいいような気分になっていた。
智恵は、眉をひそめるとはさみを取り上げ、命の首にかかる包帯を切った。
「かはっ!」
命は前に倒れこみ、激しく咳き込んだ。
「まったく、先生ったら、ご自分で危険だっておっしゃったのに。」
命は、床に倒れたまま涙目で智恵を見上げる。
智恵は、たった今切り離した包帯の切れ端を持って立っていた。
154:放課後のいたずら 8/10
07/12/15 13:31:34 FYRuFuHv
「この子が、元気すぎるのがいけないのかしらね。」
そう言うと、包帯を、まだ元気を保っている命自身の根本に巻き始めた。
「聞き分けのないこの子に、しばらく大人しくなってもらいましょうか。」
「ちょ、智恵先、げほっ!」
命は慌てて抗議しようとするが、再び咳き込んでしまった。
抵抗しようにも、両腕は未だ後ろに拘束されたままだ。
智恵は、難なく包帯を命自身の根本にきつめに巻きつけると、結び目を作った。
「さて、と。」
智恵はにこやかに微笑むと、ゆっくりと命自身を口に含んだ。
「――!!!」
美しい女性が、自ら、口を使ってくれている。
本来であれば、非常に喜ばしいシチュエーションであるはずである。
しかし、命の脳裏にはそのような考えはひと筋も浮かばなかった。
智恵の舌遣いは巧みで、命自身の敏感な部分を隅から隅までを嬲りつくす。
「くっ、はぁ、はっ…!」
命は、体をそらせて息を吐いた。
既に、自身は張り詰めきっていたが、包帯で根本を押さえつけられているため
欲望を解放することができない。
限界を超えて与えられる快感は、苦痛にも等しかった。
「智恵先生…もう…!」
命は叫んだ。
智恵は顔を上げると、涙目で懇願する命を、楽しそうにじっくりと観察した。
「いいお顔…。」
とその唇にキスをしたが、その間も、今度は手を使って命自身を撫でさすっている。
「智恵先生、お願いです、お願いですから…!」
命はほとんど泣いていた。