07/12/16 17:36:10 LOUwFFjP
とある日曜日、朝目が覚めて真っ先に千秋は藤岡の事を考えていた。
藤岡を父親の様に慕う千秋を見たハルカが、気を利かせて家族で行く遊園地の予定に藤岡も誘ったからだ。
しかし前日、姉の二人は風邪で倒れてしまった。
結局2人だけで行く事になった遊園地、千秋は不謹慎と思いながらも、少しドキドキしていた。
ピンクのスカートに花の髪飾り…普段の千秋からは考えられないような格好で待ち合わせの駅に向かった。
普段なら10分くらいの距離は大した事無いのに、すごく長く感じる…
「あれっ?千秋ちゃん、どうしたの?今日は凄いおしゃれだね。」
「あたりまえだ。今日の私は一味ちがうぞ。」
「??? そうだね、すごく可愛いよ。」
その一言で千秋は幸せ過ぎて溶けてしまいそうになった。
「…藤岡とデートだから……おしゃれしてきたんだぞ。」
なんて事は千秋には言えなかった。
顔が熱い……千秋はしばらく藤岡と目を合わせる事も出来なかった。
小一時間して遊園地最寄の駅につき、電車を降りた千秋達をどしゃ降りの雨が迎えた。
朝見た天気予報では降水確率10%と言っていたのに……
この日を2週間も前から楽しみにしていた千秋の表情がどんどん暗くなっていくのに藤岡が気づいた。
「千秋ちゃん、少し待ってて。」
見渡す限り雨雲が広がる空を見上げ、茫然とする千秋を置いて藤岡は駅の方へ走っていく。
千秋は、きっと帰りの切符を買いに行ったのだと思うと泣き出しそうになった。
「お待たせ。」
そう言った藤岡の手にはコンビニで買ったビニール傘があった。
千秋が不思議そうな顔をしていると、藤岡は傘を開き手を差し伸べた。
「雨はやむかもしれないし、それに室内の乗り物なら動いてるよ。」
千秋の顔がみるみる明るくなっていくのを見て、藤岡もホッとした。
しかしここで千秋がある事に気づく。
「藤岡、傘は一本しか買ってないのか?」
「え?……あっ!」
藤岡の持っている傘はせいぜい65㎝幅の小さなビニール傘。
藤岡は慌てて「コンビニでもう一本買ってくるね」と言って、コンビニに行こうとした。
しかしその手を千秋が掴み引き留める。
「いいよ、お金がもったいないだろ。」
「え…でも……」
「仕方ないから一緒に入ってやるよ。」
顔を真っ赤にした千秋を見て藤岡は少し笑い、「それじゃあ」と言って、濡れない様に千秋の肩を抱き傘に入った。
その瞬間千秋は眼を細め、緊張で息が止まりそうになりながら、自分がさらに深い恋に落ちたのが分かった。
藤岡の抱き寄せた千秋の肩が少しふるえる…
高鳴る鼓動…この藤岡の手を通じて気付かれたらどうしよぅ…千秋の顔はますます赤くなった。
しかし、千秋はこの藤岡の左手を通じて、思いが届くように何回も願った。
「藤岡……大好きだよ…。」