キモ姉&キモウト小説を書こう!Part7at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう!Part7 - 暇つぶし2ch450:名無しさん@ピンキー
07/12/28 17:42:47 5x/p3/+j
いとこ同士が鴨の味なら
身内同士なら一体何の味になるんだろう

451:名無しさん@ピンキー
07/12/29 00:11:25 +q3kL8n6
俺「八歳と九歳と十歳と!十二歳と十三歳の時も僕はずっと!待ってた!」
母「な、何を…」
俺「存在すら知らなかった実姉との劇的な再開だろ!?」
母「ああっ!」
俺「血の繋がなって妹もだ!ママンの再婚相手の連れ子だって待ってた!」
俺「あんたはキモ姉妹の代わりに、残ったローンを息子にくれるのかよ!!」


452:名無しさん@ピンキー
07/12/29 00:18:15 CEG5JPyr
>>451
ジョン帰れ!!

453:名無しさん@ピンキー
07/12/29 01:09:32 3h+CveC6
>>448
僕は目覚める
キモウトへの愛に
(字余りorz)
>>450
味覚は人それぞれなので
是非自分で試してみて
報告を願う

>>451
犯れよ、バロンズゥ!


454:名無しさん@ピンキー
07/12/29 02:21:17 s3zSxmUX
このスレの人達にイイコ姉さんから一言


455:名無しさん@ピンキー
07/12/29 02:21:56 eM7vbx3R
勇うううううううううううううううううううううう!!!

456:名無しさん@ピンキー
07/12/29 02:42:50 hPgDdklH
なんか、今更何ヵ月も前の作品を投下するのは気が引けるのな…

457:名無しさん@ピンキー
07/12/29 02:56:00 NkL8W2W4
>>456
気にするなぁ!!

さぁここにぶちまけるんだぁっ!!
みんなもぶちまけて欲しいと思ってるに決まってるさ!!

458:名無しさん@ピンキー
07/12/29 03:05:11 GTKLieIe
逆に投下してくれない事の方が読んでる側には辛いんだぜ

459:名無しさん@ピンキー
07/12/29 03:36:16 iRwn8h/4
>>456
この板には3年越しで復活した作品もあるんだぜ。

460:名無しさん@ピンキー
07/12/29 08:21:50 DTQZUZ5z
一度でいいから見てみたい
キモ姉がオナニーするところ

461:名無しさん@ピンキー
07/12/29 11:09:11 soX1rJ1P
>>448
新春キモ姉妹カルタですか?

姉の愛
当たり前だと
教えられ


462:名無しさん@ピンキー
07/12/29 14:40:26 qbGcxFNn
>>461
気づけばすでに
両親おらず

463:名無しさん@ピンキー
07/12/29 16:57:28 kqsbsWmp
綾のSS書いた人、嫉妬避難所に投下してた

464:名無しさん@ピンキー
07/12/29 19:56:36 v80OIWai
>>445
以前投稿した作品のタイトルは何て言うんですか?

465:名無しさん@ピンキー
07/12/29 21:54:33 z1YBrkUa
>>451
11歳の時には夢がかなってるじゃねえかw

466:名無しさん@ピンキー
07/12/30 02:04:11 L8HRU77b
キモ姉妹カルタね

腕にだく
姉の体は
柔らかく

467:名無しさん@ピンキー
07/12/30 02:22:14 sDUmwf5A
妹よ
妹妹
妹よ

あ、これキモ兄だ

468:名無しさん@ピンキー
07/12/30 02:26:26 d0Q3qFlJ
エロ本の
代わりに使えと
義妹の下着


469:名無しさん@ピンキー
07/12/30 02:32:46 3tWJer/W
義妹は
あまり良くない
このスレで

470: ◆/waMjRzWCc
07/12/30 02:59:52 G4eLCM2g
久しぶりに投下。
年越す前に出来て良かった…

471:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/12/30 03:00:23 G4eLCM2g
「第一段階は上手く行ったみたいね」
一人の部屋で御神弥子はそう呟く。
神代と織部修を引き合わせるのは上手く行った。
ここまで早急に手を打たなくてはならなかったのは、織部修の回復力が高かったからだ。
あの子は貧血を怪我のせいだと思ってるけど、実は違う。
既にあの子の傷は退院できる程に治っているのだ。
だから、眠っている間に細工をしておいた。
多少の血を抜いておいたのだ。
注射の傷は点滴をしていたからごまかせる。
しかしあまり長引かせるのも無理が有る。
織部理緒…だったかしら?
に怪しまれるだろう。
回文、その名前の意味は…おそらく輪廻。
収束せず、無限に繰り返される世界。
父親はこの姉弟に何をさせたいのかしらね。
終わらせたいのか、それとも繰り返したいのか。
ま、私には関係の無い事だけど。
織部修はしばらく自由にさせておきましょうか。
もちろん布石は打っておくのだけれど。
来るべき時にあの子がどんな選択をするのか…
あの子がどう変わるのか。
それを考えただけでゾクゾクするわね。
もしあの子が父親の希望通りなら…
私もその中に囚われてしまうかもしれないわね。
それも楽しそうなんだけど…ね。

472:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/12/30 03:00:52 G4eLCM2g
やっぱり私は人の下につくより、絶対的な隷属をさせる方が性に合ってるしね。
今の所私を満足させているのは聖の他には二人だけ。
他なんて玩具にすらそぐわない人ばかり。
その点で言えば織部修には期待してるけど…
まぁ…あれよね。
私程度に従う様なら例え終わらせる者だったとしても無様な姿を晒すだけよ。
その程度の存在に歪みきった一つの世界を閉じる事はできないわ。
何にせよ私は楽しませて貰うわ。
観客兼役者っていう微妙な役どころだけどね。
「考え過ぎて疲れちゃったなぁ。こういう時は…聖!ちょっと来なさい」
「弥子様?何か御用でございますか?」
「そんなに離れてないでもっと近くに来なさい」
頭の上に疑問符が出そうな顔で近付く聖。
近付ききった瞬間。
むにゅ~…
「ひゃ、ひゃにをなひゃいまふ!?」
「聖、貴女もう少し笑った方が良いわ。折角可愛いんだから」
口を上に上げさせる。
「神凪程笑えとは言わないけど、少しはね。でないと笑い方を忘れるわよ?」
ぱっと手を離す。
少し潤んだ聖の目が可愛かった。
「笑い方など…とうの昔に忘れました」
「ふ~ん…でも、鳴き方は忘れて無いわよね?後で私の寝室に来なさい」

473:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/12/30 03:01:18 G4eLCM2g
朝の日差しが差し込んで来た。
眩しさに目を細めながらゆっくりと起き上がる。
もう、朝か…
俺は窓を見ながら昨日の幻想を思い出す。
あの中の俺はただ囚われていただけだった。
理緒姉の檻に…というより、理緒姉自身に。
俺は消えない不安に苛まれ、混乱して…
理緒姉を壊してしまいそうだった。
俺が、俺自身の手で…
「しゅ~う~くんっ!」
「うわっ!」
「えへへ、びっくりした?」
俺の目の前には、理緒姉が居た。
さっきまで考えていた事のせいで、理緒姉の顔がまともに見られない。
「修くん?どうしたの?もしかして…久しぶりにお姉ちゃんに会って照れてるのかな?」
「ち、違うって。久しぶりったって一日ぶりじゃないか」
俺がそう言った途端に頬を膨らませる理緒姉。
「お姉ちゃんは一日…ううん、一秒だって離れたくないんだから!家に修くんが居なくて…寂しかったんだから」
「っ!」
今の理緒姉の言葉に、俺の体はビクリと反応した。
理緒姉が発した言葉は、昨日俺が見た檻そのものに感じられたからだ。
「 」
理緒姉が何か言っている。
頼む…今は話しかけないでくれ…
「 」
駄目だ…早く、俺から離れてくれ!

474:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/12/30 03:02:26 G4eLCM2g
「 」
もう何も言わないでくれ…
「理緒姉…離れてくれ…」
「どう…して?」
やっと、まともに聞こえてきた。
「お願いだから…」
俺の体は理緒姉を壊したいと、壊してしまえと言っている。
「…修くん、今日はもう退院できるんだって。だから、先に家に行ってるから、絶対帰って来てね」
「約束…するよ…」
理緒姉が部屋を出ていく。
「泣かせた…かな」
でも、理緒姉を壊してしまうより良い。
…俺はどうしたら良いんだ?
退院、出来るんだったな…
外に出れば何か変わるかな…
そう考えて着替えと準備を終わらせる。
「退院おめでとうございます」
「神代さん…」
「院長から伝言です」
…御神さんから?
「もし何か有ったらすぐに私の所に来て下さい。ただし、必ず一人で」
「何か有ったら…?」
怪我の事とかか?
それとも、別の何かなんだろうか。
「院長からの伝言は以上です」
「…ありがとうございました」
「それでは、また」
神代さんは軽く微笑んで俺から離れて行った。
ん…?
あの人、またって言ったよな?
また入院しろって事か?
そういえば態度もそっけなかったし…
まぁ…いいか…
今は理緒姉の事を考えないと…

475:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/12/30 03:04:10 G4eLCM2g
病院を出て、なんの代わり映えもしない町を歩く。
すぐに家に帰る気にはなれなかった。
公園には、冬華ちゃんが居るかもしれない。
今は冬華ちゃんに会うのも避けたい。
俺は…俺の名前は何を求めているんだ?
逃げていては、駄目なのか?
「名前に縛られて生きる必要はありませんわ」
御神さんの言葉が頭をよぎる。
でも…逃げようとしても縛られる。
なら…立ち向かうしか無い。
帰ろう。帰って理緒姉に会ってみよう。
そう決意して家へと向かった…


476:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/12/30 03:06:51 G4eLCM2g
どうして…?
私、修くんに嫌われたの…?
あんなに真剣に「離れてくれ」だなんて…
私は…もういらないの?
どうして…?
どうしてっ!私は気が狂いそうな程愛しているのに!
今だって…あの一言だけで胸が、私自身が張り裂けてしまいそうなのに…
どうして側に居てくれないの?
このまま離れて行ってしまうの?
そんなの…そんなのいやぁ…
どんっ
…何かぶつかった?
…それどころじゃない。そう思って通り過ぎようとする。
「おいねぇちゃん。人にぶつかっといて挨拶も無しか?」
人…?ゴミか何かの間違いでしょ?
「ねぇちゃんなかなか綺麗じゃねぇか。ちょっと俺に付き合えよ」
下らない…どうして修くん以外の男ってこうなの?
ゴミはゴミらしく棄てられてればいい。
「こっちに来な」
無理矢理人気の無い所に連れて行かれる。
こんなことしてる場合じゃないのに…
段々と怒りが感情を支配していく。
「へへ、こんな服着てんだ、男誘ってんだろ?俺が相手してやるよ」
なんでそう人の外見と自分の下半身でしか物を考えられないのかしら。
頭に来た。
お前はゴミだって事を徹底的に思い知らせてやる。


477:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/12/30 03:09:38 G4eLCM2g
男は無抵抗な私を見てのこのこと近付いてくる。
ニヤニヤと下卑た笑顔をこちらに向けながら。
私を掴もうと手を伸ばした。
その瞬間、思い切り膝を突き上げる。
ぐちゅりと、何かが潰れた様な感触。
下卑た笑顔は一転して驚愕と悶絶が混じった苦痛の表情へと変わる。
「いぎぃぃぃぁぁぁっ!」
聞くに耐えない虫の様な声。
あまりにも五月蠅いので顔面を蹴りつける。
「あぐぁっ」
情けない…なんでこんなゴミが生きているのかしら。
このゴミ、ゴミ、ゴミ、ゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミゴミ!
気付けば目の前のゴミはぴくぴくと動いているだけだった。
「これで終わりだとでも思ってるの?」
足を持ち上げ、膝を踏み付ける。
「ゆるひて…もう…」
「ゴミ相手に許すも許さないもあるわけ無いでしょ?」
全体重を膝にかける。
ボキリと、骨の折れる音が響く。
「ぁあぁああぁあ!」
喉からありったけの叫びをあげる。
男はまともに動けず、地面を這ってでも逃げようとしていた。
その姿は芋虫の様で、私を急激に冷めさせた。
つまらない…
やっぱり私には修くんしか居ない。
理由を聞いてみないと…
私の勘違いかもしれない。
早く家に帰ろう…

478: ◆/waMjRzWCc
07/12/30 03:11:15 G4eLCM2g
投下終了。
流れに乗って一句
姉の愛
重過ぎる故に
美しく
字余り。

479:名無しさん@ピンキー
07/12/30 06:10:51 54saVVuC
理緒の続き来てた(・∀・)

480:名無しさん@ピンキー
07/12/30 09:50:15 CjbFgMkz
気がつけば
ドアから覗く
2つの瞳(め)

481:名無しさん@ピンキー
07/12/30 10:31:21 MOn89WMd
やめてくれ
姉さん俺もう
できないよ

482:名無しさん@ピンキー
07/12/30 11:33:06 5G1itNhO
>>478
GJ!
理緒姉がまたいい感じに壊れてきたなw

483:名無しさん@ピンキー
07/12/30 11:42:44 d0Q3qFlJ
>>478
GJ!
理緒姉キモカワイイよ
カワイイよ

悲しみに
涙こらえて
血を流す

484:名無しさん@ピンキー
07/12/30 13:32:07 ZiCeh1cf
愛してる
私が一番
誰よりも
血の繋がりは
関係ないわ

485:名無しさん@ピンキー
07/12/30 13:44:46 +ws+rwEs
このまま新春までにキモ姉妹百人一首ができそうだな。

寝てもなお
弟包む
姉の香

下の句ヨロ

486:名無しさん@ピンキー
07/12/30 18:09:14 LeSfsDE7
>>485
瞳開けば
姉の柔肌

487:名無しさん@ピンキー
07/12/30 19:01:07 LHYO0wLZ
新年が待ちきれないスレと聞いてすっとんできました

キモ姉が
俺の布団に
忍びこみ
朝目が覚めると
股間が痛い

488:名無しさん@ピンキー
07/12/30 19:25:03 VLHbt9Zi
なんでだろ
このスレ俳句に
なってるの

489:名無しさん@ピンキー
07/12/30 19:37:51 zbvkZ8qr
>>488
正月が近いからさ。

490:名無しさん@ピンキー
07/12/30 20:17:46 FYHBMATy
>>489
空気嫁
嗚呼空気嫁
空気嫁

491:名無しさん@ピンキー
07/12/30 20:48:07 WuZmPtWM
なぜだろう
ゴミ箱の中
いつも空
捨てても捨てても
気づけば綺麗

492:名無しさん@ピンキー
07/12/30 21:03:52 +8ZIqx70
気がつけば
俺のブリーフ
新品に
古い下着は
何故姉の部屋?

493:名無しさん@ピンキー
07/12/30 21:04:24 XbbBBSOT
愛してる
姉さんのこと
愛してる

さあ言ってみて
ほら言いなさい!

494:名無しさん@ピンキー
07/12/30 21:24:31 Juq4K46K
>>493
兄妹で
恋愛キモイ
病院へ

495:名無しさん@ピンキー
07/12/30 21:28:39 +8ZIqx70
>>494
鉈か鋸


496:名無しさん@ピンキー
07/12/30 21:30:37 XbbBBSOT
キモければ
キモいほど良い
愛がある

それがキモ姉
またはキモウト

497:名無しさん@ピンキー
07/12/30 21:31:12 EqKR8W5J
命賭け
守った操を
散らす夢

498:名無しさん@ピンキー
07/12/30 21:33:56 CjbFgMkz
おしょうがつ
いとしのせのきみ
うちにくる

499:名無しさん@ピンキー
07/12/30 22:00:51 sDUmwf5A
しのぶれど
色にいでにけり
わが恋は
兄はどこかと
人のとふまで

500:名無しさん@ピンキー
07/12/30 23:05:55 y2xV9OqX
この流れだと来年は
キモ姉妹で歌会始だな

501:名無しさん@ピンキー
07/12/30 23:08:14 +8ZIqx70
>>500
当然その後姫初めとな?www

502:485
07/12/30 23:17:47 PfmGxgGC
>>486
GOD JOB!!
ティンコたった。

503:名無しさん@ピンキー
07/12/31 00:40:58 mcXUsgef
兄さんよ
ああ兄さんよ
兄さんよ
あんあんああん
あんっんあああ

504:名無しさん@ピンキー
07/12/31 01:03:48 pgAH+5Iu
キモ姉妹カルタネタを送りバントした俺が、ひとつ気になった事を言ってみる。

埋めネタに
保管するのは
大変だ

もひとつ

キモウトを
欲しい俺には
いないんだorz

下の句お願いします

505:名無しさん@ピンキー
07/12/31 01:07:30 PzdoAqPN
>>504
しかし脳内
無限のキモウト

506:名無しさん@ピンキー
07/12/31 02:21:48 vFxmIhMf
その妹は妄想で出来ていた

507:名無しさん@ピンキー
07/12/31 03:35:27 gVzXbbsX
どうか嘆かないで。
世界があなたを愛さなくても、キモウトはあなたを愛します。

どうか嘆かないで。
あなたが世界を愛さなくても、キモ姉はあなたを愛します。

だから教えてください。
あなたはどうしたら、キモ姉妹を愛してくれますか?

508:名無しさん@ピンキー
07/12/31 03:42:45 wm/O3Dt/
ちょっwww型月とひぐらし混じってるwww
だが悪くない!
キモウトの兄に対する心の嘆きを一句↓

509:名無しさん@ピンキー
07/12/31 08:04:21 uPbB/7Y6
妹よ
どうして俺に
刃を向ける

510:名無しさん@ピンキー
07/12/31 08:25:42 mcXUsgef
>>509
俺は死ねない
あいつが待ってる

511:名無しさん@ピンキー
07/12/31 08:38:32 wm/O3Dt/
お兄ちゃん
どいてそいつを
殺せない

512:名無しさん@ピンキー
07/12/31 10:51:42 YTK5/a1I
明らかに投下しにくそうな流れだな

513:名無しさん@ピンキー
07/12/31 13:11:04 mcXUsgef
>>512
> 明らかに投下しにくそうな流れだな

妹よ字余りだな。だがそんなうっかりもまたよし。
本日3度目の投稿のお兄さんが直してやろう

明らかに
投下しにくい
流れだな

下の句任せた!

514:名無しさん@ピンキー
07/12/31 13:58:13 wm/O3Dt/
ここは静かに
投下を待とう

つい書いちゃったが>>512は句を書いたつもりじゃなくスレの流れを心配しただけだろう
確かにスレ投下しにくい流れだからな
ちょっと自重すべきなのかもしれない。でも楽しいんだよなぁ…


515:名無しさん@ピンキー
07/12/31 14:21:43 mcXUsgef
>>514
ごめん、わかってたんだけど流れが悪くならなければと思って…
うん、俺は自重する。


516:名無しさん@ピンキー
07/12/31 14:37:55 07R/9L9w
知るかボケ
流れを悪く
すんなボケ

517:名無しさん@ピンキー
07/12/31 14:38:58 O5y60nNr
【審議中】
    |∧∧|       (( ) )(( ) ) ((⌒ )
 __(;゚Д゚)___    (( ) )((⌒ ) (( ) )
 |⊂l>>516 l⊃ |     ノ火.,、 ノ人.,  、ノ人.,、
  ̄ ̄|.|.  .|| ̄ ̄    γノ)::)γノ)::) γノ)::) 
    |.|=.=.||       ゝ人ノ ゝ火ノ  ゝ人ノ
    |∪∪|        ||∧,,∧|| ∧,,∧ ||  ボォオ
    |    |      ∧ (´・ω・) (・ω・`) ∧∧
    |    |      ( ´・ω) U) ( つと ノ(ω・` )
   ~~~~~~~~     | U (  ´・) (・`  ). .と ノ
              u-u (    ) (   ノ u-u
                  `u-u'. `u-u'

518:名無しさん@ピンキー
07/12/31 16:19:00 BspLCN+s
>>517を見た瞬間、審議中の方々が全員
>>516のキモ姉に熨されてる場景が浮かんだ俺は末期

519:名無しさん@ピンキー
07/12/31 16:25:50 OU8LMpoi
冬コミで綾の本ゲットしたぜ!

520:名無しさん@ピンキー
07/12/31 16:44:57 wm/O3Dt/
>>519
えっ?ちょっとマジでなにそれ?詳細を詳しく聞こうじゃないか(脱ぎ脱ぎ)

521:名無しさん@ピンキー
07/12/31 17:34:32 otx3NY0A
これは報告を期待せざるをえない

522:名無しさん@ピンキー
07/12/31 18:02:18 vPPzhqt7
俺も買ったが内容には変わりないみたいだな
表紙なかなかかわいい

523:名無しさん@ピンキー
07/12/31 18:26:06 LpPud76X
うpうp!

524:名無しさん@ピンキー
07/12/31 18:41:46 o3BKZexT
うpはだめだろう

525:名無しさん@ピンキー
07/12/31 21:12:13 OU8LMpoi
綾の本は522でいうとおり中身に大きな変更は無し。
ただ、パソコンを立ち上げずともおはようからおやすみまで綾たんと一緒にいられるんだぜ。

526:名無しさん@ピンキー
07/12/31 22:14:02 RYTwrIMJ
>>525
せめてサークル名だけでもっ・・・!!

527:名無しさん@ピンキー
07/12/31 22:16:13 2/Yo1Taa
さ、そこに横になりなさい
除夜の鐘にあわせて108回突いてね
今年分の煩悩は払っておかなきゃね
そのまま姫始めだから頑張ってね
お年玉に期待しているわ

528:名無しさん@ピンキー
07/12/31 22:22:42 Cpngk3wR
おにぃ、わたしには108回出してね。

529:名無しさん@ピンキー
07/12/31 22:23:11 OU8LMpoi
>>526
URLリンク(oyuki.lix.jp)
ここですよ

530:名無しさん@ピンキー
07/12/31 23:30:07 jJGjob+o
>>529
俺は526ではないけどもこれは初めて知った。
綾シリーズの作者さんってHP開いてたのか・・・。
まあ知ったところで地方民の俺には関係のない話だがなorz

531:名無しさん@ピンキー
07/12/31 23:50:39 vPPzhqt7
職人も住人も一年間お疲れ様
来年もよろしく

キモウトの成分解析結果:

キモウトの48%は見栄で出来ています。
キモウトの38%は魂の炎で出来ています。
キモウトの12%は優雅さで出来ています。
キモウトの2%は情報で出来ています。


532:名無しさん@ピンキー
07/12/31 23:58:00 vPPzhqt7
キモ姉の成分解析結果:

キモ姉の48%は記憶出来ています。
キモ姉の45%は勢いで出来ています。
キモ姉の7%は宇宙の意思で出来ています。


533:【姉兄妹どんぶり】
08/01/01 10:43:44 DbDac4Hq
 ねえ、お姉ちゃん。
 去年のお兄ちゃんの姫初めはお姉ちゃんだったでしょ?
 今年は、私に譲ってほしいな。
 その代わり、キスとフェラの最初はお姉ちゃんね。
 ……え? お尻?
 どっちの? お兄ちゃんの、それとも私たちの?
 お姉ちゃんはどっちがいい?
 ……犯すほう?
 じゃあ、私はお兄ちゃんに犯してもらうほうね。
 今年も二人で協力して、よその泥棒猫からお兄ちゃんを守ろうね、お姉ちゃん♪

534:名無しさん@ピンキー
08/01/01 11:34:36 BMyTSpKt
>>531-532
なんか当たってなくもないな。

535:名無しさん@ピンキー
08/01/01 17:44:04 hJPGou5n
姫始めの次は書初めか

536:名無しさん@ピンキー
08/01/01 18:32:29 3imcMYn5
カキ初めだな

537:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
08/01/01 22:43:13 w+tElTVa
投下させて頂きます
思い立って元日中に書き上げようとしたので、どうもキモ要素が低いです

538:憑き人(つきびと)
08/01/01 22:45:01 w+tElTVa
初夢に死んだ姉さんが出てきた。
ベッドから起き上がり、ひどく重い肩を回して首を鳴らす。

「・・・・・・なんだったんだろ」

勉強机の上に置かれた写真立て。
その中で笑っている姉さんが死んでからもう一週間近く経つ。
雪の降ったクリスマス、
素敵なプレゼントと一緒に会いに来ると言った姉さんはダンプに跳ねられて轢死した。
原型は留めてなかったらしい。
警察から届けられたぐしゃぐしゃの小さな箱と、
中に入っていた血が染みてほとんど読めない僕宛のクリスマスカード。
そして小さな指輪。
姉さんが伝えたかったことを知る術のない僕は、
せめてと思ってその指輪をいつもはめている。
不思議と、サイズは薬指にぴったりだった。
そのせいだろうか。
年明け一番の夢に、満面の笑みで僕へと抱きついてくる姉さんを見てしまったのは。

「重いなあ」

姉さんは絵に描いた完璧の文字が人になったような人物だった。
長身のモデル体系に記憶と発想に優れた頭脳。
両親の遺伝子を分割せずにそのまま足したような運動能力。
優しい、いつだって僕のことを気にかけてくれた性格。
ほんの少しだけスキンシップは過剰だったけど、
姉さんの弟に生まれたのは恵まれていたんだな、と今でも思える。
だからこそ胸に空いた穴は大きくて、
友人の励ましや両親の懸命に耐える姿、
落ち込んでいる自分を叱咤する声を幾ら投げかけても、その隙間を埋められない。
何をするにも手につかず、
大切な人の重さがなくなった時、こんなにも心がふわふわするのだと実感する。
風が吹けば今ここにいる自分が消えてしまいそうな浮遊感。
ずっと一緒に生きて来た相手を失って、
自分の一部を切り取られたように生きている感覚が薄い。



「おはよういっちゃん!」



そのせいで、ノックもなく開かれた扉から聞こえてきた声には本当に驚いた。

「は・・・?」

だって、それは確かに聞きなれた声で。
でも、それはその声ではあり得ない言い方だったから。

「いっちゃんいっちゃんいっちゃんいっちゃんいっちゃぁぁあああん!!」

腹部に衝撃。
ベッドに押し倒されて、視界に黒髪が舞う。

「・・・ハル?」

触れそうな距離に輝くような笑みを近づけてきたのは、妹。
垂れた長髪が僕の顔にかかる。

「あ~~、いっちゃんだぁ。この匂い・・・凄く久し振り。会いたかったよいっちゃん!」

539:憑き人(つきびと)
08/01/01 22:46:11 w+tElTVa
?を頭上で乱舞させる僕をよそに、髪に隠れた額が胸に押し付けられた。
シャツ越しに高速で擦られ、妹のつむじの向こうでちょっと荒い鼻息が鳴る。

「えっ・・・と、ハル、どうしたんだ? いきなり」

理解出来ない状況に、素直に心情を吐露した。
ハル。僕の一つ下の妹。
少しブラコンの気があるのが兄として、少なくとも唐突にこんな真似をする奴ではない。
どちらかと言えば物静かで楚々とした佇まい、
黒髪を垂らして静々と歩くようなのが僕の妹のはずだ。
僕をいっちゃんと呼び、こんな言動を取るのはまるで──。

「私はハルじゃないよ、いっちゃん。忘れたの?
 私はいっちゃんを世界で一番大好きな、たった一人のお姉────あれ?」

急に。
見てる方が驚きそうになる勢いで顔を上げた妹は何かを言おうとして、
呆けた顔で動きを止めた。

「っ!」

かと思うと、その全身がぱっと輝いた──ように見えた。
反射で目を瞑り、目蓋を撫でる光が収まってからゆっくりと開く。
焦点の合ってない妹の瞳と目が合った。
さっきまでの陽気というか活気さが消えている。
ただ、何となく纏っている雰囲気がいつもの妹に戻っていて、
憑き物を落とされた直後みたいにぼんやりとしていた。
状況の理解に務めようと思考するうちに瞳の焦点が合い始め、
やがて妹がはっきりと僕と視線を絡める。

「き」

「え?」

一瞬、妹の顔が引きつって。

「きゃああああああああああ!」

思いっきり頬を引っ叩かれた。

「~~~~~~!?」

片頬が熱くなり、ついでに妹が飛び退いたせいでほんの少し後ろにあった壁に頭をぶつける。

「ななななな、一体何をしているんですか姉さん!」

そんな意味の不明な声を聞きながら、ちょっと意識が遠くなった。



それから暫くして。
今、僕は世間で言う超常現象と向き合っていた。
場所は依然として僕の部屋。

『────と言う訳なの。ゴメンね? いっちゃん』
「本当にもう・・・姉さんは破廉恥過ぎます」

目の前には二人、と言っていいのだろうか?
見慣れた、いつも通りの言動に戻った妹のハル。
その横に立つ、いや浮いている今は亡き──はずの──半透明な姉さん。

540:憑き人(つきびと)
08/01/01 22:47:16 w+tElTVa

「俄かには信じ難い話だね」

現状の説明に、あくまでも姉さんの言葉を信じて用いるならこうなる。
先ず、姉さんは死んだ。
次に、死んだけどこの世への未練が強すぎて幽霊となった。
幽霊にはなったものの特別な力が使えるでもなく、
ただ存在しているだけで退屈だった。
幽霊と言っても空想上のような便利な存在ではないらしい。
生きている時に出来なかったことが死んでから出来るようになるのは変な話、
とは姉さんの談。
なのだが。

「サンタや神が実在しているっていうのは」

姉さんを失ってから二度、僕は同じ願い事をした。
一度目はサンタにクリスマスで。
そして二度目は今日、新年の就寝前、神に初詣でで。
姉さんに戻ってきて欲しいと。
別にそれ自体はおかしなことではないはずだ。
頼りない藁よりは、たとえ空想でも神に縋る人間がいたっていい。
大切な人を失った僕が、丁度そういう時に神頼みをする、神に祈るのは不自然じゃない。
ただ、僕自身もまさかそれが叶うとは思っていなかっただけで。

『確率的には物凄く低いけど、
 一年に世界でほんの少しの子供にだけ本物のサンタさんが願いを叶えてあげる対象の一人が、
 今年はたまたまいっちゃんだったんだって。
 でも、流石に死人を生き返らせるのはサンタさんの力じゃ無理だから保留にしてたんだけど、
 いっちゃんが初詣での時に一生懸命に私のことを願ってくれたのが、
 最近は全然真剣な願いがなくなったのに辟易してた天照大神様の目にとまったみたいなの。
 それでまあ、クリスマスとお正月の願いを合わせてってことでね。
 生き返らせるのはダメだけど、せめて私の姿がいっちゃんや家族に見えるように、
 あと他人の体を借りていっちゃんに触れられるようにしてもらえたの』

妹の奇行は取り憑いた姉さんによるもので、
妹の体が光ったように見えたのは抵抗した妹が姉さんを体から弾き出したせいらしい。
ビンタに関しては不可抗力だとか。

「まさかねえ」

それにしても、そう感じてしまうのは仕方ないと思う。
そんな都合のいい話があるのか。
実際に姉さんは見えているし声も聞こえるので、集団幻覚でもなければ他に可能性はないのだけど。

『私だってびっくりしてるよ。でもそれ以上に嬉しいの。
 だって、またこうやっていっちゃんとお話ししたり出来るんだもん! きゃー!』

言って、浮遊する姉さんが飛びついてくるのをハルの手が遮った。
やろうと思えばすり抜けられるのだろうけど、
生きていた頃の習慣なのか反射的に姉さんが止まる。
自分で自分の行動に驚いたような顔をした妹が、気まずい感じで一つ咳をした。

「と、とにかくそういうことですので、兄さんも外では出来るだけ普通に振舞って下さいね。
 姉さんがどうしても兄さんとそ、その・・・・・・肌を合わせたい時は、
 私が体を貸しますので。
 さっきみたいに不意打ちでなければですけど」

姉さん、さっきは無断で実の妹の体を乗っ取ったのか。

541:憑き人(つきびと)
08/01/01 22:49:27 w+tElTVa

『ごめんね、ハル。
 でもハルって理屈屋だし、説明するよりは体験してもらった早いかなって。
 ・・・・・・ちゃんといい想い出来たでしょ?』

「う・・・それは、そうですけど」

顔を俯かせるハル。
その横で姉さんが微笑んだ。

『兎に角、いっちゃんは何も心配しなくていいからね?』

嬉しそうに、戻って来た幸せを噛み締めるように、にこにこと笑っている。

『いっちゃん達以外に私の姿は見えないし、だけど私から取り憑くことは出来るんだもん。
 むしろ生きていた頃よりもずっと簡単に確実にいっちゃんを守れるよ。
 いっちゃんには私が許さない限り誰も近づけない。
 いっちゃんを困らせる人も、いっちゃんの言うことを聞かない人も、
 いっちゃんを誑かす泥棒猫も、私が乗り移れば皆いっちゃんの言いなりだもんね?
 邪魔になったら私と同じ死に方でもしてもらえばいいんだし。
 これでもう、私は何も怖くないよ。
 私はどこにも行かずに、ずっといっちゃんが死ぬまで一緒にいられる。
 ううん。もしも死んだいっちゃんが幽霊になったら、永遠に一緒になれるかも』

「全く。姉さんばかり、いつもずるいです。
 でも・・・相手が姉さんだけならまだ私も安心ですね」

姉さんとハル、姉妹揃って笑顔を向けてくる。

『あ』

どう反応すればいいのか考えていると、姉さんが思い出したように呟いた。

『そう言えばまだ言ってなかったよ』

「・・・何を?」

反対側が見える笑みで姉さんが僕を向く。

『うん・・・自分の体がなくなったのは残念だけど、おかげで色々と出来ることも増えたし。
 それも、いっちゃんが一生懸命に私のことを想ってくれたおかげなんだから、
 私ってどちらかと言えば幸せだよね?』

だからね、と一旦言葉を切って、姉さんが僕に近付く。
今度はハルも何もしなかった。
感触のない指が僕の両肩にかけられる。
姉さんは、気のせいか生前よりも綺麗になった顔で笑った。



『あけましておめでとう、いっちゃん!』



あけましておめでとう、姉さん。

542:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
08/01/01 22:51:45 w+tElTVa
投下終了
ラスト二行を思いついたがために急遽書き上げました
お目汚しにならなければ幸い

年が明けてスレも二年目
住人の皆さんに、今年もいいキモ姉妹との出会いがありますよう

543:名無しさん@ピンキー
08/01/01 22:53:43 hJPGou5n
リアルタイムに遭遇
今年の俺は憑いているw

おじさん、いつもいつもGJです

544:名無しさん@ピンキー
08/01/01 23:03:06 FLXYhdBh
リアルタイムktkr
超GJっす

545:名無しさん@ピンキー
08/01/01 23:12:23 PBJTHC2i
>>542
乙!

世の中のありとあらゆるキモ姉キモウトよ、あけましておめでとう!

546: ◆a.WIk69zxM
08/01/01 23:18:43 1VLATAyT
続けてで申し訳ないですが、投下します。
4レスほど予定。非エロ。(今回は)キモ姉妹登場なし。

547:(1/4)
08/01/01 23:22:52 1VLATAyT
 如月 秋巳(きさらぎ あきみ)は、劣等感の強い人間だった。
 自分は他の人と違って特別である。高校二年生という時期を考えれば、思春期特有の自然な感情である。
 しかし彼の場合、『特別』それすなわち『他の人より特別劣っている』と、ひたすら負のベクトルしかなかった。
 自分は本気になればなんでもできるんだという無根拠の万能感とは、まったく逆の無根拠の無能感。
 無能。愚鈍。唐変木。出来損ない。彼の自己評価は殊更低い。

 客観的に見て、彼は、特段人より劣っている人間ではなかった。
 学生の評価基準となりやすい勉学・運動・容姿等それぞれをとってみても、人より抜きん出ている分野もあれば、
他の人が当たり前にできるところでも躓く分野があった。
 例えば、彼は、数学や物理といった教科については、テスト等で平均点を下回ったことがない。
それどころか過去遡って理系科目だけの平均点を見れば、彼はクラスで五本の指には入る程度であった。
しかし、暗記物が中心の歴史・地理等の科目になると、途端に赤点すれすれの低空飛行。
下手をすれば三回に一回くらいは補修をうける羽目になる。
 運動についても、陸上競技のような基礎運動については平均を上回るが、緻密性を問われるような球技はてんでダメ。
ソフトボールでピッチャーをやろうものなら、敵の攻撃が終わらない。
というか、運動しているのがピッチャーとキャッチャーだけになる。
 容姿だって、概して平均してみれば恵まれているほうと言えるが、生来色素が薄いのか、極端に色白で頭髪についても赤みがかっている。
それを小学生のときに、周囲に「気持ち悪い」と言われてからというもの、彼の中で「自らの容姿」イコール「他人にとって不快感を与える」となり、
夏だろうと冬だろうと極力肌を露出するような格好はしない。海やプールにも小学校以来行ったことがない。

 つまり、そう、彼にとっての劣等感の根本たる原因は、彼が人より劣っていることではない。
 彼が、人より劣る部分しか評価しないことである。マイナスポイントしか見ないので、当然、総合結果は大きくマイナスに振れる。
 そして、ダメダメ人間の評価が算出される。

 ただ、如月秋巳にとって、ある意味幸運だったのは、そのような無能感を抱くような人間であるにもかかわらず、自分の人生を嘆いていないところであった。
 自分自身という人間に対しては悲観的であったが、生き方に対しては、楽観的といっても差し支えなかった。
 自分がまったくのダメ人間であると自覚し、人並みの幸せはそもそも望まなかった。
 思春期の高校生ともなれば、異性に多大な興味を持ち、あわよくば彼氏彼女を作ろうとするものだが、彼はそういう希望は持たなかった。
 かといって、自棄にならず、腐らず、自分にふさわしい生き方をしたいと望んでいた。
 自分の実力はこんなものじゃない。こんな生活よりもっとすばらしい充実した生活が送れるはずだ。普通の若者なら、そう思い込むところであろう。
 彼は、自分はこんなに他人より不出来な人間だけれども、これだけ平穏な毎日が過ごせるなんて、上出来である。
 そのように考えていた。
 
 要するに、彼は、地味に目立たず、ひっそりと日陰で生きられれば満足だったのである。


548:(2/4)
08/01/01 23:25:05 1VLATAyT
 だから、そんな彼が、通う高校でクラスや学年の男子たちから人気のある柊 神奈(ひいらぎ かんな)から告白を受けたときは、
目の前の女生徒が自分の幸せを侵害する敵のようにしか思えなかった。
 彼は積極的に人付き合いはしなかったので、交友関係は狭かった。
それでも係わり合いをもたれれば、できるだけ相手が不快にならないよう、かつ自分が目立つこと無いよう対応する人間だった。
特に異性関係は不必要に話しかけたり等はしなかったが、話しかけられれば普通に受け答えはしていた。
そして必要以上に周囲の評価を気に病むのは、自分の考える「幸せ」ではないので、周囲の評判というものに余り関心を持たず、とくに異性からのそれについては無頓着であった。
無頓着ではあったが、彼の理想は、異性も含めて、「空気のような人間」「いてもいなくてもいいヤツ」「取るに足らないどうでもいい人間」と思われることであった。
そして、自分を嫌う人間はいるだろうけど、まあ概してそのような評価を得られているのではないかと思っていた。

 そんなところに、告白、である。

 目の前で、スカートごしに太ももの上で手をすり合わせ、俯き加減で告白というものをしてくる柊神奈という存在は、彼にとって、彼の「幸せ」を脅かすものとしか、感じられなかった。
「あ、あの……ね。その、多分、こんなこといきなり言われても、困ると思うんだけど……」
 ああ。困る。非常に困る。
 柊神奈に告白されたという事実だけで、自分は少なくともあのクラスから「浮く」。浮き上がる。
 最悪のパターンは、この告白が「本当」であったときの周囲の反応は想像もしたくない。
 妬み。嫉み。僻み。好奇。
 この女生徒の周囲からの評判を鑑みれば、容易に想像がつく。
 だが、まぁ、あくまでの最悪の可能性であり、その可能性は低いものだと、秋巳は考えた。

 いま、この状況から考えうる最良のパターンは、眼前の彼女が嫌々、あるいは、脅されるような形で罰ゲームをやらされていることだ。
 それなら、彼女が乗り気でないなら、彼女と協力してその「背後」に納得する形で、終わらせることができるのではないか。
 自分は、クラスの人気者に告白されて、有頂天になって、舞い上がって、最後には突き落とされる間抜け。
 彼女は、愚かなクラスメイトを天国から地獄へ叩き落す、執行者。
 それを見て、普段自分が与えていると思われる不快感の溜飲を下げる「背後」の人たち。
 そういう人たちは嘲笑相手さえ得られれば、そんなに拘りがないと考えたい。
 たまたま、今回自分がターゲットになっただけで、自分を嘲け笑った後、一月もすればそんなこと忘れるだろう。
 恐れるは、その役柄が嵌りすぎて常習化すること。あるいは、彼らの期待する結果が得られなくて、さらなるフラストレーションを呼ぶこと。
この二つに気をつけながらスムーズにこなせればベストだ。
 秋巳は、躊躇いながら言葉を紡ぐ彼女を前に、そんなことを計算していた。

 次善は、彼女が進んで行っている場合。
 そのときは、当然彼女に対しても、自分が惨めな道化師であることを強調しなくてはならない。
 接触が多くなると思われる、彼女にも納得してもらわなければならない。上手くいけるだろうか。
 人気者はプライドが高そうだからやだなぁ。
 秋巳は憂鬱な気持ちを抱かずにはいられなかった。

549:(3/4)
08/01/01 23:28:02 1VLATAyT
「え、えっとね……。如月くんは、私のこと、まだ、あ……、あんまり良く知らないと思うんだけど……」
 先ほどから手だけでなく、膝をすり合わせるようにそわそわとする柊神奈。
 秋巳の頭の中は、今後の対策を必死で考えていたので、目の前に立つ少女の声は、話半分。
 彼女の所為で、こんな厄介ごとが発生しているのだから、少し黙って欲しかった。

 ああああ! もうっ!
 なんで自分が!
 秋巳は心の中で盛大な溜め息を吐いた。
 どう考えても暫くは自分の望まない生活が続くと思われた。下手すれば、今後クラス替えが発生する三年に学年があがるまで。
最悪、この学校を卒業するまで。
 なにか、なにかないんだろうか。
 いますぐ、この彼女が前言を撤回し、そして、「このことは自分も誰にも言わないからあなたも絶対誰にも言わないで! そして忘れて!」と言わせるようなウルトラCが!

 そもそも、このことが彼女ひとりで完結していない可能性が非常に高いのだ。
 その時点で、明日から秋巳の望む生活が送れる可能性は低い。
 そんな秋巳の内心の沈鬱な感情など、まるで想定していないように柊神奈は続ける。
「だから……その、いきなり、付き合ってください……とか、難しかったら、その、まずは、そ、そう、友達として私のことを知ってもらえれば……」
 そんなことしたら罰ゲームの期間が長くなるだろう!
 当然口には出さない秋巳。
 大体、女の娘から告白されている最中上の空で、気の利いた言葉ひとつ発さず、かつ喜んで舞い上がるわけでもない男の相手をして、なにが楽しいのだろう。
 他の人たちはどこから見てるのか。告白されるなんて初めての経験で、緊張で固まってるくらいに思ってくれてるんだろうか。

 場所は校舎裏の中庭。時間は放課後。
 わざわざ帰ろうとしている自分を、呼び止めてここに連れてきたんだから、それなりの準備は整っているのだろう。
 ここで上手いこと反応見せたら、この場で終わったりしないかな……。
 なかば希望をもって、秋巳は対応を考えてみるが。
 結構こういうのって、持ち上げて持ち上げてから落とすから、引っ張るんだよね……。
 すぐに否定する考えが浮かぶ。

「そ、その、答えは、きょ、今日じゃなくても良いから……」
 柊神奈の話が一通り終わったのか、いままで俯いていた顔を上げて、まっすぐ秋巳の目を見つめる。その顔は緊張のためだろうか、若干紅潮していた。
 そこまで、聞いて秋巳の考えるは。
 柊さん、話長いよ……。ひょっとしてアドリブなの? 国語の先生が、相手に話すときは話の要点を整理しましょうって言ってなかったけ?
 混乱のせいか、頓珍漢なことを思っていた。

「あのさ、えっと……」
 それでも、柊神奈の言い分が一通り終わったってことは、秋巳からなにか反応を返さなければいけないわけで。
 秋巳が一番聞きたかったのは、「このこと他に誰が知っているのか?」であった。回答を留保してもらえるなら、対応をもっと考えたいので、とりあえず留保することは即断した。あとは、それまで騒がれないかどうかだが。
 彼女が他には誰も知らない、と答えれば、すくなくとも自分が回答を返すまでは、『誰も知らない』ことになるはずだ。途中で他人が暴くという行為の結果、彼らのお遊びがグダグダになる可能性があるからだ。
 ただ、彼女がその答えに躊躇したりしたら、ちょっとまずい。周囲が煽る作戦かもしれない。話を大きくしたら、彼女にもダメージがあるはずなんだけど。彼女自身が積極的だけども、それを理解していないか。あるいは、嫌々やらされてるか。

550:(4/4)
08/01/01 23:32:10 1VLATAyT
 そこまで考えて、いや、待てよ、と秋巳は思う。
 回答を出すまでに、騒いでもらって、
 「本当は自分からお願いしたいくらいだけど、こんな風に騒がれるのは本意じゃないから、なかったことにしない?」
 ―という限りなく本音に近い形かつ、彼女や周囲のプライドも傷つけない形に持っていけないかな。
 いや、やっぱ不自然か。憧れの人に好きって言ってもらって舞い上がれば、周囲が騒ごうが普通は付き合うことを選択するか。
 とにかく、他に誰が知っているかってことをいきなり聞いたら不自然かな。それでもなにかは言わなくちゃ。
 秋巳は思う。
 とりあえずは、お礼とか、喜んでいるってことを言ったほうがいいのかな。
「その、ありがとう。柊さんの気持ちは、嬉しかったよ。でも、ほら、いきなりだからちょっとびっくりしちゃってさ……」
「い、いえ、そんな。わ、私のほうこそ、ごめんなさい、いきなりこんなこと」
 ほんとだよ。
 でもまぁ、彼女も嫌々やらされてるなら、同情するけど。
 でも、どうやって不自然でないようにもっていけばいいのか。
「いや、ほんと。嬉しいんだけど、こういう経験初めてだからさ……、ちょっと、応えって言うか、なんていうのか、そのすぐ応えられなくてさ」
「えっ? あ、うんっ! さっきも言ったけど、いきなりだったのは自覚してるから、うん。ほら、だからね。急に返事求められても、困ると思うしさ……」
(失敗した……っ!)
 柊神奈の顔に、わずかに失望が走ったのをみて、秋巳は思った。
 とりあえず、回答を先延ばしにする旨だけ、先に伝えようと思ったのだが、その反応は彼女が考えていたものとは違ったらしい。
 当然自分が告白するからには、即答で受け入れるものだろう、くらいに考えていたに違いない。
 しくじった。
 多分、勿体つけやがって、何様のつもりだ、くらい『彼ら』も考えているのかもしれない。
 ああ! もう、だから嫌なんだ!
 言動、動作のひとつひとつが試されるような場にいることは、秋巳にとってものすごいストレスだった。
そもそもその場の状況すら、自分で推測して判断しなければならない。非常に苦痛だった。
「ほら、その、なんか、夢見たいで信じられないっていうか、現実味がないっていうか」
 その秋巳の取り繕うような言葉に、わずかに頬を赤らめると、また俯く柊神奈。
「え……、あ、うん。あの、ってことは、ちょ、ちょっとは、き、期待しててもいいのかな……」
 ―作戦の成功を?
 喉まででかかった言葉を、あわてて飲み込む秋巳。この態度を見る限り、彼女も進んで乗っかっているのかもしれない。
 秋巳はさらに気分が重くなるのを感じた。
「あ、そ、それじゃあ。また」
「あ、ちょ、ちょっと!」
 照れ隠しのように、あわててその場を去ろうとする柊神奈を、秋巳は慌てて呼び止める。
まだ、肝心の聞きたいことを訊ねていない。もう、取り繕う言葉を考えている余裕はない。
どうせ混乱してるってことで納得してもらえるだろう。
「え……?」
「あのさ、このことって、他に、誰か知ってたりするのかな?」
 秋巳の質問に、なんでそんなことを訊くのか不思議そうに首をかしげる柊神奈。
「あ、なんていうのかな。あんまり騒がれると恥ずかしいって言うか……」
「ううん。友達にもね。相談してたけど、それが誰か、までは言ってないし……。
 他にも、水無都(みなと)くんに相談もしようかなって思ったけど、
 やっぱりちょっと恥ずかしくって……。
 って、本人に直接言うほうが恥ずかしいよね!」
 えへへ、と自分の頭を小突いて笑う柊神奈。
 秋巳は、柊神奈のつっこみポイントはどうでもよかったが、気になる名前が出た。
 水無都くん―水無都冬真(とうま)―秋巳の唯一の親友とも呼べる人物。
 なんてこった。相談しとけよ! そうすれば、事前に対策がとれたのに!
 本日何度目かのつっこみを心の中で行う秋巳であった。


551: ◆a.WIk69zxM
08/01/01 23:33:32 1VLATAyT
投下終了。
まだキモいのは主人公ひとりですが。
いずれ。

552:名無しさん@ピンキー
08/01/01 23:34:21 hJPGou5n
よしわかった
続編を待ってるw

553:名無しさん@ピンキー
08/01/01 23:37:29 FLXYhdBh
寝る前に確認しておいてよかったw

主人公の性格が案外好きかも(´・ω・`)

GJです

554:名無しさん@ピンキー
08/01/01 23:39:00 UuoB0N0A
>>551
GJ!
キモ姉妹の行方も気になるけど、同級生も病んじゃうのか気になる

555:名無しさん@ピンキー
08/01/01 23:45:29 jPzxeS39
こういうマイナス思考の主人公は、大抵間違った方向に暴走して修羅場起こすからなぁ・・・
本当に修羅場的な意味でもキモ姉妹的な意味でも期待しちゃうよ

556:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
08/01/01 23:49:58 w+tElTVa
連続で申し訳ないのですが投下させて頂きます
季節的に合わないのですが、
ちょっと都合で下手をすると四月までパソコンに触れないもので、書きかけを仕上げました
キモ分(狂愛)は薄いです


557:チョコっと姉さん(シスター)
08/01/01 23:52:10 w+tElTVa
己の限界へと挑むことを戦いと言うなら、なるほど、それは確かにある種の聖戦だった。

「がつがつがつがつ・・・!」

戦場に友はなく、武器もなく、剣折れ矢尽きるまでもなく、元よりその身は単騎。
如何なる守りも身に帯びず、ただ信念を背負って臨む。

「ばくばくばくばく・・・!」

対して、敵は幾十倍。
己に託された想いを鎧と纏い、寡兵も単騎も容赦なく、等しく押し潰さんと吶喊する。
その一人一人が一騎当千、この日に命を散らすべくして集まった猛者どもだ。

「はぐはぐはぐはぐっ・・・!」

ならば彼我の戦力、その差は実に一と数万。
果たして如何なる戦士、軍師、賢者、英雄ならばそれに抗し得るのか。
敗北は必定。拮抗を望むことさえおこがましい。勝利など夢幻の彼方、屈服こそ必然。

「がふがふがふがふがふっ!」

故に、ボクはそれを奇蹟と呼ぼう。
ひどく薄汚れた、失笑ものの、この上なく馬鹿らしくて泥臭い奇蹟だ。

「もぐもぐもぐもぐもぐ────もげふっ!?」

最早それだけで暴力的な数的劣勢を前に彼女──姉さん──が選択した道は一つ。
突撃、突撃、突撃。
数で勝る相手に組み付き、鎧を引き剥がし、食い破る。単純で明快。
無理を承知で、無策を携え、無茶を笑って突き進む。

手には乾いた黒色がこびり付き、口元は汚れ、胃の腑から責めて来る吐き気に顔色は青く。
後から後から噴き出す汗は拭い切れず、またその暇もない。
傍目にも限界だった。
現に、戦場に銅鑼の音が響いてから半時間足らずで、姉さんが苦痛に身を捩るのもこれで三度目。

「~~~~~~~~~っ!?!?」

だが、諦めない。
とうに許容量は越えているはずなのに、
周囲に漂う鼻の曲がりそうな匂いとは違った焦げ付くような闘志を一層に燃え上がらせ、
喉に突き立った異物の排除へとかかる。

「っ!? っ、ぁ、っっ────!」

手刀で自身の首に喝を入れること数度。
雫の滲み出した目でボクを見詰めながら苦戦するうちに、叱咤された喉が動く。

「ん・・・? んっぐ」

ごくりと、姉さんを苦しめた異物が食道と直結した奈落へ敗れ落ちていく。

「すぅー・・・・・・はぁー」

558:チョコっと姉さん(シスター)
08/01/01 23:53:43 w+tElTVa
しばし、沈黙。
若干の呼吸の乱れを整え、数十分もの格闘の末に残った敵と相対する。
そう、最後の敵と、だ。

そいつは、今までの相手に比べれば、ひどく小さいヤツだった。
一回りどころか、体積で言えば数分の一以下である。唯一、姉さんが考えた作戦らしい作戦の結果がこれだ。
強敵は最初に、弱者をこそ最後に残す。
なるほど、圧倒的な物量差があるなら、倒すほど楽になっていく戦いの方が最終的にはモチベーションが保てる。
尻上がりの人間は段々と希望に近付くが、逆の場合は悲惨だ。


「いいぃぃぃいいいよぉぉおっっしゃぁぁぁああああーーーーっっ!!!」


ヴァレンタイン・デイ
聖なる二月十四日。
包装という鎧を剥がされ、部屋の中を耐え難い甘い匂いで満たし、
姉さんの手と口に黒い跡を残しながら食われて行った数多の女性からの贈り物たる戦士達は、
そうして姉さんの胃袋の前に敗れ去った。

『アンタ、何か甘い匂いさせてるわね。
 言っておくけど姉さんね、今日はとっても機嫌が良くないの。
 つまりこのイライラを抑えるためには糖分が必要なのよ。だからね?
 甘いもの持ってたら頂戴、つーか出しなさい。あるだけ全部。今すぐに。
 隠したら甘いものの代わりにアンタを食べるからね』

本日。
帰宅してから開口一番、背後に炎を揺らめかせながらそう告げた姉さんに、
ボクが無条件降伏したのを責められる人はいないと思う。
今日が何の日か忘れていたボクを、通学路や校門前、下駄箱、机の中、教室後ろのロッカー、
移動教室の後で戻って来た机の上、呼び出された職員室、放課後の部室、
返してもらった限定DVDのBOXの奥、
自宅の郵便ポスト、宅配便の包みの中と、ありとあらゆる場所で迎えたチョコの群。
否、軍勢。
もともと甘いものはあんまり好まないボクが、
むしろ安心と共に姉さんに選手交代したのは当然じゃないだろうか。
まさか姉さんが全部食べきるとは思わなかったけど。

「うっぷ・・・もう限界」

姉さんの方も流石にチョコの山とまでは想像していなかったに違いない。
何せ、部屋に持って帰ったチョコは大きな袋で二つ分くらいあった。
それを食べきる姉さんも凄いけど。
やはり辛いらしく、口を抑えてふらふらと立ち上がる。

「お姉ちゃん、もう上がるけど・・・・・・その前に、これ」

と、服の内側をごそごそと探って包みを差し出した。
多分、ボクの頭上には?が出たに違いない。

559:チョコっと姉さん(シスター)
08/01/01 23:56:40 w+tElTVa

「友達に材料の買出しに誘われて、ついでに自分で作ったんだけど、
 もう限界で食べられないからアンタにあげる。
 ヴァレンタインに女の子の手作りチョコを一つも食べないで終わるのは、流石に可哀想だし」

一応、自信作なんだから。
そう言って押し付けられた丁寧なラッピングのハート型が手に収まる。
反応に困ったボクをよそに姉さんはさっさと歩き、
リビングの扉に手をかけたところで振り返った。

「受け取ったからには、その・・・・・・ほ、
 ホワイトデーのお返し、期待してるんだからね!
 きっちり三倍返し! 出来なかったら体で払ってもらうわよっ!」

勢い良く扉が閉まり、階段を駆け上がる音。
上でばたんと音が鳴り、一転してしん、と静かになる。
何となく渡された綺麗な包みを弄びながら、ボクは思案した。

「ホワイトデー・・・・・・うーん。どうしよう。
 去年は姉さん、何もくれなかったのに一月経ったら急に怒り出すんだもんな。
 弟なんだから当然! とか言って。
 確か、プロレスだか柔道の技の実験台にされたんだっけ。
 体が密着したと思ったら絞められて意識落ちたし、
 結局何があったのか覚えていないんだよね。
 肌が汗ばんでたのと服が乱れてたような気はするんだけど・・・」

もしかしたら、今年はチョコをくれたのは牽制なのかもしれない。
去年であれなら、ちゃんとチョコをもらった今年に返さなかったらどうなるのか。
数時間も記憶が抜け落ちるような目に遭うのはごめん被りたいな。

「忘れないようにカレンダーにでも書いておこうかな」

うん。そうしよう。
思い立ったら有言実行、ボクも部屋に上がる。
姉さんのいる隣部屋からベッドの上を転げ回って悶えるような音がしたけど、
たまにあることなので気にしない。
一ヵ月後の日付に赤丸をつけてメモ。これで安心だ。

「よし」

ちなみに、姉さんのくれた手作りのチョコは美味しかった。
何だかんだ言ってボクの好みを把握しているのでビター系。
食べ慣れない味だったけど何かの酸味が効いていたのも良かった。
これはお返しも頑張らないといけないな。



そんなことを思いつつ、
何故か気が付くと三月のカレンダーがなくなっていて、
お返しを忘れたボクがしっかりと姉さんに怒られたのは後の話。
その晩に姉さんがボクを部屋に呼び出して、何故か睡魔に襲われて意識を失ったのはまた別の話。

560:名無しさん@ピンキー
08/01/02 00:00:03 EQbvZ16m
>>551
GJ!!
早くも続きが気になっている俺がいる。
そして、みんな明けましておめでとう。
今年もよろしく。

561:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
08/01/02 00:00:50 w+tElTVa
投下終了
姉は怒ったときだけ弟に対する時の一人称が姉さんになる、と変換を
書いてて何故かツンデレにorz

>>543の方
どちらかと言うとたまに現れて短期集中投下ですね、私
次は頑張りますorz

>>551の方
つ、続きがきになります。しばらく来れないのが残念。
乙でした

562:名無しさん@ピンキー
08/01/02 00:30:23 CBKG4/N8
相変わらずエロ書かねーのなww

563:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
08/01/02 04:11:21 k3OOUos8
おそらく今月最後の投下
ちょっと試験的な内容です

564:妹々かぶり
08/01/02 04:13:20 k3OOUos8
妹々かぶりという妖怪がいる。
人間の負の気や欲望から生まれた妖怪で、
読んで字の如くほぼ同時に生まれた妹の妖怪を頭にかぶっている。
または背負っていたり肩車していたりする。
特に人間に危害を加えたりはしない。
元となった願望の性質から攻撃性はないし、余りにもマイナーな欲望過ぎて弱いからだ。
正直、
妖怪であるおかげで物理攻撃が効かないという特性がなければそこらの不良に喧嘩を売っただけで死ねる。
限りなく近い体験をしたことがあるから間違いない。
そう。
何故オレがこんなにたかが一妖怪のことに詳しいのかと言えば、
それがオレ自身のことに他ならないからだ。

「ひまだねー、お兄ちゃん」
「ああ。暇だな、妹よ」

雨の降る山中、オレは肩車してやった妹と共に散歩をしていた。
特に目的はない。ただの暇潰しである。
寿命の概念を持たない妖怪は大部分が暇を持て余す。
本当は山の中より都会の町並みでも歩きたいのだが、
最近は人間の世界もやりにくくなり、
長時間年下の少女を背負っていたり肩車している者は不審者とされて捕まるらしい。
妖怪なので手錠など意味がないし、警官に姿が見えるとも思えないが、
たまにいるオレ達の姿が見える人間に騒がれると面倒なのでこうしているのだ。

「雨、いやだねー」
「まったくだな」

そう言いつつ、妹はピンクの傘を差し、
肩車している妹の脚を両手で保持するオレはずぶ濡れ。
風邪など引かないが鬱陶しい。
妹の傘も、高低差があり過ぎてオレには雨避けにならない。
かと言って妖怪、妹々かぶりの存在にかけて手は放せないために傘は持てない。
マイマイカブリみたいにカタツムリの殻でもかぶりたいね、ほんと。

「お兄ちゃん、さむくない? 雨に打たれて」
「妖怪なんだから関係ねーよ」
「ごめんねー。わたしだけ楽ちんしちゃって」

頭の後ろがもぞもぞと動き、背を曲げた妹の顔が覗き込んで来る。

「これがオレの仕事で、それがお前の仕事だ。気にするな」
「うんー。じゃあ、ありがと!」

妖怪だから腹は減らないし、試験も学校もない。
人間の娯楽は楽しめるが入手が難しい。
つまり暇である。それを潰すために山で散歩なんかしているのだが。
濡れた木の葉を高く掲げる木々の間を巡り、柔らかな土を踏みしめてただ歩く。
ふと視線を上げると、遠くから近付いてくる影がある。

「うゆ? 誰だろ」
「あれは・・・・・・兄馬(けいば)さんだな」

565:妹々かぶり
08/01/02 04:14:15 k3OOUos8
しばらくして、数歩分の距離まで相手と近付いた。

「どう、どう」

綺麗な高い声が響き、オレが足を止めるのと同時に相手も止まる。
目の前に二人。
一人は馬か犬のような四つん這いの姿勢で這って来た男。
口には沢山の穴が空けられた小さな玉を噛み、目は黒い革で覆われている。
妖怪の兄馬さんだ。
その上で傘を差し、湿気に重くなったくるくるの巻き毛を、
乗馬に使う鞭を持った手で憂鬱そうに撫でているのが妹さん。
視線が交わる。

「あら、妹々かぶりさんじゃございませんか。ご機嫌麗しゅう。
 と言っても、この天気では雅に欠けますわね」
「う・・・? うう゛っ、ううう゛う゛う゛!」

優雅な挨拶をくれた妹さんの下で兄馬さんが唸る。
多分、挨拶をしてくれたんだろう。

「おだまり!」

妹さんの手が霞んだ。破裂するような音。
振るわれた鞭が兄馬さんの尻を打つ。

「う゛ぉうっ!?」
「今は私が話している最中です。兄様は静かにしてなさいな」

言われながら、体を細かく揺らしている兄馬さん。
オレと妹のようにそういう願望が具現化した妖怪だとは聞いていても、
傍から見ていると真剣に痛そうである。

「だ、大丈夫ですか兄馬さん・・・?」
「心配はいりません。これでも私の兄でしてよ。
 百度打たれようと死にはしませんわ」

いや、死ななくても痛いものは痛いと思うんだが。
そんなオレの視線を意に介した風もなく妹さんが髪をかき上げる。

「はあ。本当に無思慮な雨ですこと。
 降るなら私が帰ってから降ればよろしいでしょうに」

ほんと、どんな願望が集まればこんな妖怪が生まれるんだか。

「妹々かぶりさん。そんな訳で私は急ぎますので、もう行かせて頂きますわね」
「え? あ、はい。それじゃ」

随分とあっさりだが、
引き止めて話し続けても兄馬さんの打たれる可能性が増えるだけなので簡潔に済ます。

「では、御機嫌よう」

そう言って妹さんが兄馬さんをもう一度叩くと、
兄馬さんは肘と膝を地面につけながら去って行った。
あんな移動の仕方、きっと慣れないうちは相当に辛いに違いない。
兄馬さんと同じ妖怪に生まれなかったことを内心で感謝して、オレも歩き出した。

566:妹々かぶり
08/01/02 04:15:45 k3OOUos8



兄馬さん達から完全に見えなくなるくらい離れてからすぐ。
それまで無言だった妹が、肩に乗せた足とオレの首の隙間を狭めてオレを締め上げてきた。

「ぐえ」
「お兄ちゃん」

左右から動脈が圧迫されて呻いたオレの首に、更に妹の指がかかる。

「兄馬さんの妹さんのこと、変な目で見たでしょ?」
「ぐ・・・変、なって・・・どんな・・・だよ」

ああ、またか。
そんな思考を脇において妹を見上げた。
降りしきる雨の中、
水滴と共に光を遮る傘を背に、影を帯びた妹の顔で瞳が輝く。

「えっちな目」
「そんな目でなんか・・・見てねえ・・・っての」

首にかかる圧力が増した。

「ぐっ!?」

肺に溜め込んだ空気が漏れ出し、痺れ始めた意識の中で雨音が遠ざかる。

「嘘」

頬を打つ雨粒に混じって声が降る。

「お兄ちゃんがああいう人が好みだって知ってるもん。
 どうしてそういう嘘をつくの? ねえお兄ちゃん。
 今まで何回も言ったよね? 嘘つくのはやめてって。
 お兄ちゃんとわたしは一心同体なのに。ダメ。わたしに秘密なんて絶対ダメ。
 お兄ちゃんのことでわたしが知らないことなんてあっちゃダメなの。
 だから教えて。ちゃんと答えて。
 お兄ちゃん、えっちな目、してたでしょ?」

確かにオレはああいうちょっと気の強い女が好みだ。
だからってそれがそのまま色目を使うことにはならない。
オレに関係なく、妹はいつもこうなのだ。
妹は同性と会話しない。異性とも会話しない。
例外はオレだけ。
そして、オレがオレにとっての異性、つまり女と会話することを何より嫌う。

567:妹々かぶり
08/01/02 04:16:10 k3OOUos8

「聞いてるの? お兄ちゃん。
 わたしがこんなにお兄ちゃんだけを思ってるのを知ってるくせに、
 他の女に色目なんか使って、それにわたしが怒ってるのにそれも無視するの?」

ぎりぎりと細い指がオレの首に食い込む。
更に両足で挟まれ圧迫され、段々と呼吸も苦しくなってきた。
妹を振りほどくことは出来ない。
妹をかぶる、乗せているからこその妹々かぶりだ。
それを放棄した瞬間にオレは消滅し、半身である妹も死ぬ。

「あは。あはは。
 お兄ちゃん、首をしめられて苦しいのにわたしの手をどけようとはいしないんだね。
 どうしてかな? うっかりわたしを振り落としたらお兄ちゃんも死んじゃうから?
 それとも────お兄ちゃんが死んだらわたしも消えちゃうから?」
「そう、だよ」

まだ死にたくはない。が、妹が死ぬような真似はしないとも決めている。
生まれた時から一緒なのだ。
妹々かぶりは背負う兄と背負われる妹で成り立つ妖怪。
どちらかが欠けても生きては行けない一蓮托生。
それを抜きにしても、オレが妹を殺すような真似をするはずがない。

「あはっ♪」

オレの答えに、
最初からそれを聞くためだけにオレの首を絞めた妹が満足して手と足を緩めた。
細くなった呼吸が元に戻り、くらくらする意識の中で五感が回復を始める。

「そうだよね? だってお兄ちゃんの一番はわたしだもん。
 生まれた時からからずっとずうっと一緒に生きて来たんだから決まってるよね。
 わたしがいないとお兄ちゃんは死んじゃうし、お兄ちゃんが死ねばわたしも死んじゃうもんね?」

雨音に愉快げな声が混じり、首を絞める代わりに頭に抱きつかれた。

「大好きだよ、お兄ちゃん。じゃあ、行こ?」
「・・・ああ」

また歩き出す。
立ち並ぶ樹木はずっと先まで続き、まだまだ散歩が終わらないことを告げていた。

「でもね、お兄ちゃん? わたしはお兄ちゃんを他の女に奪われるくらいなら死ぬよ。
 わたしたちは二人で一つ。生まれるのも死ぬのも一緒だもん。
 わたしがお兄ちゃんを一番大切に思ってるのに、
 お兄ちゃんがそうじゃなくなったらおにいちゃんを殺してわたしも死ぬ。
 お兄ちゃんの上から降りて、お兄ちゃんが消えてわたしも一緒にこの世からいなくなるの。
 そうすればきっとあの世でもそばにいられるもんね」

妖怪に死後の世界があるとは聞かない。
だが、妹の声を聞きながらオレが歩く木々の間はどこまでも続いているようで、
何となく冥府や地獄に続く黄泉平坂のようにも思えた。
まあ、どの道関係ない。
オレは妖怪、妹々かぶり。嫉妬深い妹を乗せて歩くだけなのだから。

568:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
08/01/02 04:17:38 k3OOUos8
投下終了
皆さん、よいお正月を

569:名無しさん@ピンキー
08/01/02 06:05:56 Yk8TA3Lv
大量投下キテタワァ*・゚゚・:*・゚(n'∀')η.*・゚゚・:*・゚

570:名無しさん@ピンキー
08/01/02 07:12:14 wszZa0lv


571:名無しさん@ピンキー
08/01/02 07:29:59 5x0/fYDk
>>551
みなと、秋巳と聞いてショタっ娘が思い浮かんだのは俺だけでいい

>>568
連作、GJです。

572:名無しさん@ピンキー
08/01/02 07:42:22 k3OOUos8
すいませんorz 話の中で辻褄が合わなくなるので
>ちなみに、姉さんのくれた手作りのチョコは美味しかった。
>何だかんだ言ってボクの好みを把握しているのでビター系。
>食べ慣れない味だったけど何かの酸味が効いていたのも良かった。
>これはお返しも頑張らないといけないな。


ちなみに、姉さんのくれた手作りのチョコは美味しかった。
これはお返しも頑張らないといけないな。

に脳内で変換して下さい。うあああやってしまった。

573:名無しさん@ピンキー
08/01/02 10:28:11 HRmzOk0H
>>571 よう、俺

574:名無しさん@ピンキー
08/01/02 17:10:08 C8R3Fp5O
>>568
新年明けましてGJ

575:名無しさん@ピンキー
08/01/02 19:48:39 jyVUL+19
>>551
GJだができればタイトルをちゃんとつけて欲しい。
無題の作品は保管する際結構扱いに困る。

576:名無しさん@ピンキー
08/01/02 19:53:23 3EW5Osz3
>>568
すばらしくGJ!なんて裏山しい妖怪なんだ…
しかしけしからん!まったくけしからん!ちょっと裏山で妹々かぶり探してくる

577:名無しさん@ピンキー
08/01/02 20:46:57 AiAKDJwC
ヤンデレは心のオアシス

578:名無しさん@ピンキー
08/01/02 23:35:46 CXbWppB4
カミーユ「遊びでやってんじゃないんだよ!
     キモ姉は力なんだ! キモウトはこの宇宙を支えているモノなんだ!
     それを、それを、こうも簡単に読めるのは、それは、それはすごい事なんだよ!
     何が楽しくてSSを書くんだよ! キサマのようなヤツは神だ!
     連載を書かなくてはいけないヤツだ!」





カミーユ「あ……? はははは……。
     彼女が大きな刃物を持って近づいてくる……。あはははは……大きいなぁ! ノコギリかなぁ? 
     いや、違う、違うな。ノコギリはもっとバァーって血飛沫が出るもんな! 
     暑苦しいな、ここ。おーい、この鎖を外してくださいよー」

579:名無しさん@ピンキー
08/01/03 00:29:19 JTD65rlI
シン・アスカのプッツンとか見ると、案外ヤンデレはMSパイロットに向いてるかも
(近親婚可の法改正含めた)全面的バックアップの下に、
兄や弟を報酬にすればキモ姉妹は戦場で凄まじい活躍をしそうな希ガス
むしろMSの中枢で兄や弟が巨大試験管みたいなのに入ってたりして・・・

しかし考えてみると現代以外やファンタジーでのキモ姉妹作品って少ないな
もう少し裾野を広げてもよさそうなもんだが

580:名無しさん@ピンキー
08/01/03 01:00:15 YAy9YXbb
なんだろうなあ…ファンタジーだとなんでも有りみたいなとこがあるからか?
法や常識や倫理を身近に感じるからこそハラハラワクワクするとか

581:名無しさん@ピンキー
08/01/03 01:11:41 ZwxVl8rK
「これが私の…ガンダム…」
「そう、君の新しい剣。OT-10、オトゥートガンダムだ。
君は、弟くんのために世界を変えたいんだろう?
だったらこの剣を手に取るべきではないか?」
「……わかりました。
全ては弟くんのために……」


彼女はまだ知らない。この先に待つ戦いが彼女と弟の運命を激しく揺さぶるということを……


こんなん?

582:名無しさん@ピンキー
08/01/03 01:14:52 ZwxVl8rK
……の使い方間違えたorz
ごめんなさい、そしてさよなら

583:名無しさん@ピンキー
08/01/03 01:24:15 JTD65rlI
ファンタジーならではの表現とかもありそうだけどなー
本気でキモ姉妹が兄・弟以外の人類全滅させましたとか、
SF的に世界はキモ姉妹のクローンで満たされて兄・弟だけしか男性がいないとか
キモ姉妹だけのハーレムとか現代風じゃ無理だし
幾つかあった気がするけど幽霊ネタもいいよな

つまり何が言いたいかと言うと、キモ姉妹の可能性は無限大

584:名無しさん@ピンキー
08/01/03 02:26:55 77zblm7a
>>583待て!言いたいことはなんとなく分かるが落ち着け!

585:名無しさん@ピンキー
08/01/03 03:43:31 JTD65rlI
ちゃんともちついたよ
・・・あれ?

586:名無しさん@ピンキー
08/01/03 06:30:05 85b09EkA
市×信長とか
ルクレツィア×チェーザレ(ボルジア)とか
歴史IFものはアリかいの?

政略結婚させられるたびに夫が不審死を遂げるルクレツィア・ボルジア
世間の人は兄チェーザレによる陰謀を噂するが
実は兄の許へ戻りたい一心のルクレツィアが
夫に毒を盛っていた、と

587:名無しさん@ピンキー
08/01/03 10:05:18 xaexci7l
ボルジアがピンとこない・・・

588:名無しさん@ピンキー
08/01/03 10:35:57 wiS5IHti
古代ギリシャにいたと言われる伝説の部族。
その部族は女性のみの構成で成り立っており、子孫を残す場合は攫うか戦争で得た彼らを使う。
騎馬民族ゆえ戦闘では騎馬に跨り長弓を使いこなすその強さは神話クラス。
全能神でも戦神でもなく、狩人神を奉る彼女たちは・・・


「た、大変だー!やつらが、やつらが来たぞおおおおお!!」
「戦える女は武器を取れ!該当する男と子供たちは神殿へ逃げるんだ!」
「え・・・やつらって?」
「お前は先月買われた奴隷だな・・・そうか、お前も該当するのか、さぁ、逃げるんだ!」
「いえ、僕も戦います!」
「馬鹿を言うな!やつらの目的はお前のような男なん(ビュッ!)ぐえっ・・・」パタッ
「戦士さん!しっかりしてください戦士さん!この矢を放ったのは・・・お前か!?」

「えへへへへ、お姉ちゃんが助けに来たよ?さ、一緒に帰って国でたくさん気持ちイイことしよう?」
「お前たちが伝説の女部族、アネゾネス・・・」



という電波が新年早々舞い降りた。

589:名無しさん@ピンキー
08/01/03 10:44:55 y9AgtAZG
その電波を(ry

590:名無しさん@ピンキー
08/01/03 14:01:33 qpo/KnnD
是非僕を連れてって!

あ、キモートリア族の方がいいかな?

サクッ

(へんじがない。ただのしかばねのようだ)

591: ◆a.WIk69zxM
08/01/03 14:47:59 0jWN78la
投下します。
>547-550 のつづき。
非エロ。6レス予定。

592:__(仮) (1/6)
08/01/03 14:52:32 0jWN78la
如月秋巳が、本人にとっては厄介ごととしか思えない告白を受けた翌日。
お昼を挟んで、現国、日本史、古文と彼にとっては苦手極まりない授業を乗り切ってから、放課。
秋巳は早速、彼の小学校時代からの幼馴染である、水無都冬真を呼び出していた。
水無都冬真は、一言でいってしまえば、秋巳とはある意味対照的な性格をしていた。
彼にとって得意な分野は周囲に対してより大きく見せ、苦手なことはより小さく見せる。
いわば、アピール上手。世渡り上手。クラスのヒエラルキーでは、まず最上位の一角には位置する人間。
交友関係も一部を除いて、浅く広くが基本。
彼の友達の友達を辿れば、学年の任意の生徒に辿りつく。
さらにその友達を辿れば、おそらく学校全部をカバーするであろう。
そんな彼だが、小学校三年のときに秋巳と一緒のクラスに配属されるという縁があってからは、
なぜだかお互い気があった。
水無都冬真は、秋巳のことを地味で陰気な人間だとレッテル張りをしなかったし、
秋巳もいわゆる『クラスの人気者』というのは、付き合う人間としてはどちらかというと苦手なタイプとしていたが、
彼と付き合うのは心地よかった。
秋巳は彼の前では、あれこれ考えず素でいられたし、水無都冬真も彼に対してはいい意味で気遣いがなかった。
そんな彼が、水無都冬真を呼び出したのは誰もいない屋上。
五月にしては、まだ少し肌寒い風がわずかに吹きぬける、わずかに赤みがかった青空の下だった。
秋巳が水無都冬真を先導して、屋上の扉を抜けて。そのまま校庭の反対側、校舎裏中庭の見えるフェンスの前。

「なにさ。こんなところに改まって呼び出すなんて。あれか。あれなんか。
ついに俺と椿(つばき)ちゃんの仲を、認めてくれる気になったんか?」
水無都冬真に背をむけたまますぐに話を切り出そうとしない秋巳に向かって、そう尋ねる水無都冬真。
椿というのは、彼の妹―如月椿。高校に上がる前くらいから、水無都冬真は、やたらと彼の妹にご執心にみえて、
下手すれば秋巳のことを『お義兄さん』とでも呼びかねない勢いだった。
「ん? ああ、それについては、冬真が椿と一緒に僕の前に来て、土下座したときにでも、応えてあげるよ」
制服の襟を正して向き直った秋巳に、すぐさま屋上の硬いアスファルトの上に土下座をかまして
制服のネクタイに手をやり居住まいを正す水無都冬真。
「おっ、お義兄さん! ここまで椿さんを育てていただいたご恩は決して忘れません。
椿さんは、椿さんはボクが必ず一生守り抜いて、一生幸せになることを誓います!」
「一生幸せになるのって、冬真が?」
「当然」
左手を地面についたまま、右手を握り締め胸に当てて、なにを当然のことをとばかりににこやかに破顔する水無都冬真。
その表情は、これ以上ないくらい自信に満ち溢れていて。
「ダメ。落第。失格」
即却下。
「なんでっ!」
「日本語が不自由だから」
「アッ……アイ、ラブッ、ユー、フォーエバー!! ……ツバキ?」
「ついでに、英語も不自由だから」
「おっ、おまえなぁ。惚れた女を一生幸せにします! なんて、いまどき古臭いんだよ。
いまの時代は、惚れた女と一緒になれば、己が一生幸せになるっ!
くらい言い切らんと新鮮味がないし、そこに女はキュンとくるんだよ!」
「いや、ポイントそこじゃないし。さっきの台詞を椿に吐いてキュンとさせてから、
もう一度椿と一緒に来たら?」

593:__(仮) (2/6)
08/01/03 14:55:47 0jWN78la
「ばっか! おまえ、椿ちゃんはいつでも俺の心のなかにいるんだよ! すでにキュンキュンなんだよ!
 今朝も優しく『おはよう』って起こしてくれたし、
 『ほらぁ、早くしないと遅刻しちゃうよ!』って、一緒に登校してきたんだよ!
 んで、帰ったら『おかえりなさい』って三つ指ついて迎えてくれて、
 『今日は、北海道産の牛肉コロッケ(商品名)でご飯にします? 愛知産の開放燃焼型湯沸器でお風呂にします?
 そ・れ・と・も、コウノスケさんのファンヒータで一緒にお休みになります?』って囁いてくれるんだよ!」
「そのまま、ふたりで永遠の幸せに浸れるといいね」
「あぁん! 嫉妬か。 このヤロウ! 椿ちゃんがおまえには冷たいからって、嫉妬か。 妬みなんだな!
 愛しの椿ちゃんは、僕ちんにはそんな甘い言葉囁いてくれないのにって、僻んでるんだろ!
 このブラコン! このブラジャーコンプレックス! ブラジャーコンプリーティスト! 一枚よこせよ」
 両膝をついたまま、秋巳を指差しながら、口角泡を飛ばす水無都冬真。
「いや、それいうならシスコンだし」
「じゃあ、シスコンでいいよ。だから、ブラジャーは忘れんなよ。椿ちゃんの。できれば脱ぎたて」
 滾る思春期の欲望を微塵も隠そうとしない水無都冬真。
「でさ、呼び出したのはさ……」
「無視すんなよ! 俺が折角、切り出しやすい雰囲気作ってやってんだから感謝しろよ!」
 水無都冬真は、眉根を寄せて不満げな表情をして立ち上がり、膝についた汚れをパンパンと払った。
 それから秋巳は話した。昨日起こった彼にとって迷惑極まりない出来事を。
 ともすれば―聞く人によっては―自慢話としか受け取れないような話を、
水無都冬真は、んはー、へー、ほー、と相槌を打ちながら非常に興味深そうに聞く。
「で、おまえとしては罰ゲームで柊神奈ちゃんが告白してきたんじゃないかと?」
「ん? まだ、僕の見解は言ってないけど」
 秋巳は、できるだけ主観を省き、客観的な説明しかしていなかった。
「はん。おまえが、その告白をうけて考えそうなことは大体想像できるわ。
 『クラスのアイドルの柊さんが、ボクちんに告白してくるなんてありえない!
 きっと罰ゲームなのね。そうなのね! じゃなかったら、
 親友の格好良くてイけてる冬真くんに近づくために、
 ボクちんを踏み台にしようっていうのね! なんて恐ろしい子……!』
 ぐらい考えたんだろ?」
「僕のなかでは、冬真が恐ろしい子だけどね」

「そんで、おまえはどうしたいわけ? って、まあ、大体想像つくけどな。
 罰ゲームかどうかは別として、柊ちゃんがおまえに興味を無くしてくれればいいんだろ?」
 さすがは付合いが長いだけある、と秋巳は思った。
 水無都冬真は、普段はおちゃらけているように見えて、
秋巳の考え方や嗜好をよく把握していたし、こういうときはズバリ本質を突いてくることが多かった。
 翻って自分はどうだろう。秋巳は思う。
 自分は冬真が秋巳を把握しているほどに、冬真のことを判っているだろうか。
 水無都冬真の常の物言いは、好き放題言っているようで、なかなか本心を見せない。
 それも本心を隠しているのではなく、不必要な過剰な装飾のなかに本心を紛れ込ませて
見えにくくしているように思える。
 木を隠すなら森の中。
 先ほど秋巳が言った『冬真は恐ろしい子』は、あながち冗談でもなかった。
 それでも秋巳は水無都冬真のことを親友だと思っていたし、
好悪の感情でいえば明らかに好意を持っていた。
 基本的に、他人に対して無関心な秋巳にとっては、家族である椿を除いて、
唯一気の置けない相手といえた。


594:__(仮) (3/6)
08/01/03 14:58:50 0jWN78la
「しっかしなぁ。あれだぞ、あの柊ちゃんだぞ。柊神奈。成績優秀で容姿端麗、
 運動神経微妙にして、『一家に一人!』クラスのアイドルの柊ちゃんだぞ?
 それが告白してきたんだぞ? 俺だったら逃がさないね。キャッチ&フィニッシュよ。
 例え罰ゲームで告ってきたとしても、偽装期間中に惚れさせるね。
 そんで罪悪感に苛まさせるね。向こうが本気になったところで真実暴露させて、リリースよ。
 んで、一生心に癒えない傷を負わせるの。考えるだけでゾクゾクしねぇ?」
「鬼だね。椿は鬼畜な人間嫌いだけど?」
「…………」
「…………」
「……あ、いや。待て。全部聞け。やっぱり忘れられないんだよ。
 付き合ってた間の楽しい思い出のことが。そんで、今度はおれから告白するわけだよ。
 『もう一度、はじめからやり直しませんかって』 そこでエンディングソングよ。
 間違いなく百万人が泣くね! 全米が震撼するね」
「確かに泣けるね」
 いじましいまでの水無都冬真の姿が。
「と、とにかくさ! おまえが態度決めんのは、
 罰ゲームかどうかがはっきりしてからでもいいじゃね?」
「いや、そこは重要じゃないんだけど……」
「周りに好奇の目に晒されるのは変わらない、からか。
 でもさ、もう柊に告白されたってだけで、そこは避けられないんじゃないのか?
 ましてや、罰ゲームならなおさらだろう」
「いや、隠れてやってくれてるんなら別にいいし。
 どちらにせよ一過性だから、できるだけ短く、軽くしたいんだ」
 秋巳は言う。
 自分を表立って嘲笑の舞台に上げないなら、別にそれはいくらやってもらっても構わない。
そもそも、普段からある程度はされているだろうし。
 だから、秋巳にとっては、できるだけ早く柊神奈含めて彼らに飽きて欲しかった。
罰ゲームでなければ、『彼ら』が単に、柊神奈ひとりになるだけの問題だった。

「くわっ! クールだねぇ。なにこのクールちゃんは。
 ボクちんは、クラスの可愛い女の娘に告白されても嬉しくもなんともありません。
 迷惑なだけってか?」
「いや、本気で好意を寄せられてるなら、僕だって嬉しいと思うよ。
 人並みに性欲とかあると思うし」
 でも、それを上回る彼の『幸せ』を求める想いのが強いだけ。
単に、優先度に従って行動が決まっているだけ。
 そもそも、柊神奈が本当に『如月秋巳』を好きだったとして、彼女の想いは否定しないが、それは如月秋巳ではない。
 秋巳はそう思っていた。

「だったら、いいじゃん。付き合ってみれば。ダメだったら別れりゃいいだけじゃん?
 俺にはおまえが怖がっているように思えるぞ? 『あの葡萄は―』って。
 目の前にまでぶら下げられてるのに」
 秋巳はぎくりとした。
 その水無都冬真の台詞は、秋巳のなかで自分でもはっきり認識していないような本心を
ある意味えぐるような言葉だった。
 水無都冬真は、どういう意味でいまの言葉を紡いだのか。
 表面上の意味だろうか―それとも、そこまで自分の本心を掴んでいて?
 秋巳がなにを恐れているのか。
 あの葡萄は―。

595:__(仮) (4/6)
08/01/03 15:01:30 0jWN78la
 自分でもあまり自覚していない恐れを突きつけられた秋巳は、慌てて話を戻す。
「あのさ。なんか話が、罰ゲームでないことが前提になってない?」
「お? そうか? んなら、まず、俺が柊の告白が罰ゲームかそうでないか調べてやるよ。
 そっからどうするか決めようぜ。ってか、柊には昨日おまえなんて応えてるの?」
「いや、その場で断ったりとかしたら、彼らの反感を買うと思ったし、
 『気に食わないって』余計に標的になりそうだと思ったから、保留してる」
「てか、その断る前提はどうよ? でも、今日の段階では俺のところには
 柊ちゃんが告白したって話すら入ってきてないからなぁ」
「彼女は、あくまで『誰にも話してはいない』とは、言ってたよ。
 一部で秘密裏に進んでるんじゃない」
「いやだから、なんで罰ゲーム前提よ? で、秋巳、なんか対応策とか考えてんのか?
 罰ゲームであった場合とか、そうでない場合とか」
「いや。具体的には。でも、基本方針は変わらないよ?
 罰ゲームとかそうでないとか関係なしに。
 どうしたら彼らの興味が別に移るか、だから」
「おっまえ、ほんと冷徹だよな。彼女の気持ちが本当だったらどうすんだよ?
 想像してみろよ。もし、柊ちゃんの気持ちが本心だったとしてだよ。
 まぁ、ちょっと想像力を働かせるために、柊ちゃんを椿ちゃん、秋巳を俺に置き換えてみようか。
 んで、椿ちゃんがなけなしの勇気を振り絞って、必死の思いで俺に告白するわけだ」
「椿は、勇気凛々だと思うけど」
「いいから! 黙って聞けよ。 えっと、椿ちゃんが夕日の差し込む誰もいない教室で、
 頬を赤らめて震えながら俺に告白するところまで話したな? ん。で。俺が冷たく切り捨てるわけだ。
 『一緒に帰って噂とかされると恥ずかしいし……』。ショック! 椿ちゃんショック!
 そのまま窓を開けて四階からダイブしかねないほど、ショック! なわけですよ。
 おまえ、椿ちゃんにそんな悲しい思いさせていいのか?」
「悲しい思いさせてるのは、冬真だし」
「ばっか! 例えだろう。実際の登場人物はおまえだ!」
「じゃあ、悲しんでるのは椿じゃないし」
「ああ! もう! ああ言えばこう言う! おまえ、そんなんだと女の娘にもてないぞ!
 女の娘に告白されるなんて夢のまた夢だっ!」
「あ、椿」
 秋巳がひょいと水無都冬真の肩越しに、顔をあげる。
「でも、そんなおまえでも俺は見捨てないからな! おまえの義理の兄貴として!
 椿ちゃんも安心していいぞ!」
 秋巳の肩を右手でバンバン叩きながら、後ろを振り向く水無都冬真。
 背後には誰もいない。


596:__(仮) (5/6)
08/01/03 15:03:11 0jWN78la
「あれ?」
「落ち着いた? 冬真」
「いや。おれは一年365日、一日24時間常に冷静沈着KOOLだし。
 で、椿ちゃんは? 俺に振られてショックで窓から飛び降りようとしてる椿ちゃんは?」
「全然落ち着いたように見えないね。まぁ、いいや。
 でさ、なんかいい案ないかなって相談したいわけさ」
「落ちこんだ椿ちゃんを慰める?」
「いや、もうそこから離れようよ……」
「椿ちゃんがいないならもうどうでもいいよ……」
「そんな、不貞腐れないでも……。椿は、水無都さんっていつも元気ですねって言ってたぞ」
「えっ……? そう? 椿ちゃん、いつも元気な俺が好きだって? いや、参るな。
 しょうがないなぁ、このダメ兄貴は。そこまで煽てられちゃ、協力するしかないか!」
「煽てと判ってるのに協力するんだね」
「まあな」
 頷いて、女の娘だったらときめくかもしれない爽やかな笑みを浮かべる水無都冬真。
「ま、おまえの信念はそう簡単に揺るがないみたいだし、
 俺でできることなら協力はしてやるさ。
 おまえの気持ちも判らないでもないし。俺だって怖いからな」
「え? 冬真が?」
「ああ。なんとなくな。例えるなら、犯罪者に対して、決定的な証拠を握っているのが自分だけで、
 でもその証拠を突きつけたら最悪その犯罪者は死刑になるかもしれないっていうときの怖さかな」
「全然よく判らないけど、ありがとう」
 とりあえず、お礼をいう秋巳。
 いつもそうだった。秋巳が困っているときには、
なんだかんだ言って、最後には助けてくれるのが水無都冬真だった。
「ああ。椿ちゃんにも報告忘れんなよ。
 今日も格好良くて偉大な冬真さんに助けていただきましたって」
それももう、水無都冬真の口癖のひとつのようになっていた。




597:__(仮) (6/6)
08/01/03 15:06:56 0jWN78la
 その後。水無都冬真が提案した内容は。
「まあ、とりあえず、その告白が罰ゲームか、そうでないかは少なくとも調べるか」
 秋巳としては、罰ゲームであろうとなかろうと、
柊神奈の興味が別へ移ってくれればそれで構わなかったが、特に異存はなかった。
「で、だ。もし、柊ちゃんが、本当に秋巳のことを好きだったんなら、
 俺の魅力で柊ちゃんをめろめろにしてやるよ。
 柊ちゃんと俺が付き合えば、少なくともおまえは好奇の的に晒されないだろ?」
「それはいいけど、冬真はいいの? それで」
 秋巳としては、水無都冬真の提案はありがたかったが、自分の意志を通すために、
彼の気持ちを無視して彼だけが犠牲になるようなことはしたくなかった。
 水無都冬真の台詞は、他人が聞けば、なんて傲慢な物言いだろうと思うかもしれないが、
彼なら柊神奈を振り向かせることは可能だと、秋巳はなんの疑問もなく信じていた。
 しかし、そこに水無都冬真の意志は存在しないのではないか。
 そう考えるところからも、秋巳にとっては、水無都冬真とそれ以外の人間については明確な隔たりがあることを示していた。
 そこに柊神奈への配慮が存在しないのだから。

 そして、それに加えて、もうひとつ秋巳がそう尋ねた理由があった。
秋巳は明確にそれがなんであるかは自覚していなかったが。
「おお。あの柊ちゃんと付き合えるなら、嫌がる男はいないだろ。
 ていうか光栄だね。俺にも青春の甘酸っぱい思い出を作る時期が到来したわけだ」
「椿は、浮気な人間は嫌いって言ってたけど?」
「…………」
「…………」
「だ、大丈夫! 恋愛の駆け引きってやつさ。押してだめなら引いてみろってね。
 普段自分に言い寄ってくれてる男が、素っ気なくなって、
 別の女に興味を示しだすことで自覚する想いもあるってもんさ。
 『なに? なんなのこのもやもやした気持ち。彼があの娘と仲良くしてるのを見ると、
 なぜかいらいらする。ああ、以前は気づかなかったけど、
 やっぱり私は冬真くんのことが好きなのね』ってさ」
「それって、柊さんは、ただの当て馬ってこと?」
「おっ、なに? 流石に自分を慕ってくれる娘が、蔑ろにされるのには、ムカッとくる?」
 秋巳の反応が想定外だったように、若干嬉しさに笑みが零れるのを噛み殺しながら水無都冬真が訊ねる。
「いや、まぁ。なんていうか……」
 秋巳もはっきりとは表せない思いだった。
 なんとなく、冬真にあまりそういうことはして欲しくない、っていうかさせたくない。
 その程度の漠然とした思いだった。
 だが、水無都冬真は、秋巳が柊神奈に対しての意識が芽生えたのだと思い込んだ。勘違いをした。
 秋巳の意識の中心が、水無都冬真であり、ひいては、妹である如月椿であったのに気づかずに―。
「まぁまぁ。そんな深刻に考えることじゃないだろ。そもそも柊ちゃんは、
 罰ゲームでやってるのかもしれないし。柊ちゃんが俺に振り向くとも限らないし。
 でも、俺が柊ちゃんにアピールすれば、周囲の眼はそっちに向くわけだ。
 秋巳にとっては万々歳だろ?」
 水無都冬真はそうは言ったが、半ば確信に近い考えを抱いていた。
 水無都冬真は、柊神奈のことをそれほど良く知るわけでない。せいぜい気軽に話す友達程度である。
 それでも。
 それでも、如月秋巳に惚れたのなら。
 自分には―。

「…………」
 自分の中のよく判らない想いに、戸惑いから沈黙する秋巳。
「どうした? 不服ならやめとくか?」
「いや、冬真がいいなら、いいんだけど……」
 ―椿は、いいんだろうか。
 秋巳は、自分でもなぜそう思うのか判らない。判らないけど明確に反対するほどの強い思いはなかった。
「じゃあ、とりあえず、それでいくか」
 だから、秋巳は、水無都冬真のその言葉に頷いた。

598: ◆a.WIk69zxM
08/01/03 15:08:06 0jWN78la
投下終了。

>575
とりあえず、仮打ちで『__(仮)』と。
タイトル考えるの苦手なんで申し訳ない。

599:名無しさん@ピンキー
08/01/03 15:34:25 r2iyKBkR
面白いですねーグッジョブ
ただ誤字が多くて気になります

600:名無しさん@ピンキー
08/01/03 15:39:14 OW+elohk
>>598 GJでした。一日も早くキモ姉(またはキモウト)が登場することを待っています。

601:名無しさん@ピンキー
08/01/03 19:07:57 I0UpDWOI
>>598
タイトルがむずいなら、SSにもトリップ付けてくれるとありがたい
後で探すのが楽になるから

602:名無しさん@ピンキー
08/01/03 20:32:56 wQqTywbg
保管されたくて書いてるというわけでもなし、職人さんの自由

603:名無しさん@ピンキー
08/01/03 22:03:16 my1UvAA7
>>598
妹(?)はツンツンとな?

604:名無しさん@ピンキー
08/01/03 23:30:06 rPebhl0G
>>602
テンプレ嫁

605:名無しさん@ピンキー
08/01/03 23:46:29 wQqTywbg
推奨は強制じゃないから最終的に自由では

606:名無しさん@ピンキー
08/01/03 23:57:10 rPebhl0G
>>605
だからその推奨されてることをやってくれって頼んでるだけ
職人さんが判断した上でやらないって明言したのならともかく、頼んでるだけの前段階で
「職人さんの自由なんだから」で話し終わらせなくてもいいだろ、ってこと

607:名無しさん@ピンキー
08/01/04 00:04:24 BDO7vh8q
たしかにルールじゃないかもしれんけどマナーとしてはつけて欲しいな
別のスレである作家がトリつけないでいると勝手に続き書かれたとか言い出してスレが荒れたんだ
そこはここと住人が被ることが多いと思えるスレだからできることならトリはつけて欲しいな
まあ、作者さんがNOって言えば仕方がないが

608:名無しさん@ピンキー
08/01/04 00:19:55 +ZWUddgg
新年早々荒れそうな話題はやめとこうや

609:名無しさん@ピンキー
08/01/04 00:40:40 BDO7vh8q
>>608
スマソ

610:名無しさん@ピンキー
08/01/04 01:51:23 pbbfnQFs
既出かもしれんが
魔法スレの魔法技師の義理の妹がキモウトっぽいよ

611:名無しさん@ピンキー
08/01/04 02:18:57 mwnqGvN7
あの娘はこのスレ的にはアウトなんじゃね?
自分以外の女が義兄と関係しているのを面白くないみたいだけど容認(黙認)してるし、女達とも結構仲良いし

612:名無しさん@ピンキー
08/01/04 03:40:18 glcyqJ5p
>>588
アマゾネスの一族に生まれた男は捨てられ、部族の外で育てられるという。
適齢期になってつがいの男を奪いにきたキモ姉さんは、生き別れの弟君が欲しくなってしまったんだな


613:変名おじさん ◆lnx8.6adM2
08/01/04 06:04:45 hmY/7yYs
ファンタジーもSFも妖怪も、キモ姉妹ならみんな好き
前言を翻して投下開始。長いので連投規制が入るかもしれません
これが本当に今月最後です

614:妹夢妹夢
08/01/04 06:05:49 hmY/7yYs
落陽の時。
黄昏の中に浮かぶ町並みは斜陽に照らされて赤く溶け、
血のように光りながら夜へと向かって冷えて行く。
夜空には気の早い星が輝き、漆黒の領域を増していく彼方で弱弱しく瞬いていた。
夕闇に覆われていく世界。
刻一刻と宵に近付いていく空間。
そんな中で木霊する叫びが大気を引き裂き、激突する刃の煌きが虚空に散る。

「そこをどけぇぇえええええ!」

「邪魔っ、するなあああああ!」

遥か上空、目を細めて漸く視認が可能となる高高度で殺気が衝突する。

「兄上は渡さん。誰が相手であろうともな!」

「同意。だから兄はワタシが連れて行く」

剣と光、炎と不可視の力。
四人の少女がそれぞれの能力を叩き付け、弾き返し、相殺する。
四種の異能、四つの超常。
炸裂する閃光に目を覆いながら、僕は何故こうなったのかを思い出そうとした。

世界は一つではない。
それが全宇宙という意味でも個人や人類が認識する範囲という意味でも、それは決して唯一ではない。
僕がその事実を学ぶまでには四つの出会いがあった。
四人の妹達に導かれた、四つの世界との出会いが。

始まりは双子の妹である長女、誘宵(いざよい)。
兄妹とは言っても生まれたのはほとんど同時。
いつも艶のある長い黒髪を揺らしながら気さくに話しかけてくる妹が、
壮絶な戦いの中に身を置いていたことを知ったのはいつだっただろうか。

『兄さん。少し聞いて欲しい────いや、頼みたいことがあるんだ』

ある日。
血の気の失せた、押し潰されそうな不安を浮かべた顔で部屋に入って来た誘宵は、
本当に珍しく長い長い沈黙の後でそう言った。
双子。
同じ時間に同じ母親の子宮の内側で隣り合って育った半身の言葉に、
ただならない気配を感じて頷いた僕を待っていたのが、最初の世界との邂逅。
手を握った長女の全身が輝いたと思った次の瞬間には、僕は涼しい夏の日ような香り漂う草原に立っていた。
そこは『異世界 ニーサン』。
家族の誰にも気付かれないうちに誘宵が召喚された、
剣と魔法、神と悪魔、勇者と魔王、奇蹟と絶望が隣り合う世界。
妹はそんな場所に生贄の英雄、人類を代表して血を流す存在、勇者として召喚されたのだと、後で聞いた。

モンスターを皮切りに、
普段から聡明な妹が異世界の証明を終えた後に切り出したのは、
きっと誰よりも強い勇者の、誰にも言えないささやかな願い事。

『一緒にいて欲しいんだ。兄さんに、私と。
 そうすれば、私はもう一度・・・・・・いいや、何度だって戦えるはずだから』

615:妹夢妹夢
08/01/04 06:09:17 hmY/7yYs
莫大な魔力と何らかの犠牲の上にあっちの都合で召喚された誘宵は、ある呪で縛られた。
魔王を倒すこと。そしてその強制的な契約を果たした時には、対価として何らかの報酬がある。
だが。妹は魔王に敗れた、らしい。
現実とは時間の流れが異なる別世界で一年近くも耐え抜いた戦いの果てに、
仲間と挑んだ最終決戦で敗北したのだと言っていた。
それからは戦うことが出来なくなったのだとも。
幸い、機転を利かせた仲間のおかげで死者は出なかったが、妹は剣を握れなくなったという。
ひたすら殺しと死の恐怖の中で抑え続けてきた色々なものが、一気に溢れ出したんだろう。
きっと僕を呼んだのは苦肉の策で、何より苦渋の決断だったはずだ。

『すまない。兄さん。本当に、すまない。
 私の都合に巻き込んでしまって。でも・・・嫌なんだ。怖いんだ。
 魔王と戦うことよりも、契約を果たせずにこの世界に縛られることが。
 兄さんと離れたまま、この世界で一生を終えることの方が、ずっと怖いんだ』

涙ながらの告白だった。勇者の力の源は勇気。それは守る者がいてこそ最大に発揮される。
誘宵が選んだ、一番守りたくて最も失いたくないもの。それが僕。
自分を召喚した賢者に迫られて、特例の下に帰還しての再召喚。
魔法か何かの力で縛られ、逃げ出すことは不可能だったらしい。
まだ大人にもなっていない僕と誘宵。本来ならまだ守られていてしかるべき子供。
姉妹の長女として責任感と愛情の強い妹が、
血を流すのが当たり前の日々で、どれ程の苦痛を経てそれを選択したのか。
気付くことさえ出来なかった半身の戦いの記憶に泣いて、そうして僕は協力を決めた。
魔王との再戦。僕をパーティーの最後尾に置いた妹は自分の身を守ろうともせずに、
一秒でも早く魔王打倒をなそうと吶喊して仲間さえ驚くほどの活躍を見せた。

それから、更にニーサン側でしばらくの月日が過ぎて。
勇者として世界最高の名声を得た妹は、泣き付いた多くの人に頼まれて、
しぶしぶながらたまにはニーサンに来ることを承諾して帰還。
荒れ果てた世界の復興には勇者の名前による素早い統治と結束が必要だから、らしい。
兎に角、魔王を倒した誘宵は僕と共に現実に帰って来た。
そうして、また双子の妹に平穏が戻った────その、はずだったのに。

「兄さんは私と旅立つんだ。あちらの復興は順調、
 無能な王侯貴族も国の荒廃による民衆の不満と勇者の名前のゴリ押しで権益を削った。
 今なら教育レベルの低い民衆は魔王消滅の熱狂に包まれた状態で私に味方する。
 かつての仲間も、戦闘力の低い僧侶と賢者以外の半数は味方につけた。
 武器も力もあり、内政のプランもある。革命は容易い。
 あともう一度帰還すれば、私は私の──いや、兄さんのための国を作れる。
 文明レベルは如何ともし難いが、この世界より遥かに充実した人生を約束出来るんだ。
 私が作り、私が兄さんに捧げる兄さんの、兄さんのための、兄さんを王とする国だ」

銀色に輝く、確かな重量の中にも女性の体の流線を模った鎧。
金の羽根飾りが揺れる兜を奥から誘宵の声が聞こえる。
兜から背中に零れた長い黒髪が、空に線を引いていた。
 
「そうだな。国で足りなければいずれは世界でも征服しよう。ははは、そうだ。それがいい。
 私の愛を示すのに国では不足だ。
 あの世界の全ての大地を、大海を、天空を、人民を、私は兄さんに捧げよう。
 国土を侵略し、海洋を征服し、天上の神を駆逐し、愚民を洗脳し、私は兄さんを神とする。
 世界の全てが兄さんの思いのままだ。戦争でも圧制でもハーレムでも、私は兄さんの全てを許容しよう。
 逆らう者は私が殺す。兄さんのために、兄さんと共に戦ったこの剣で私が殺す。
 兄さんに逆らった愚物を、兄さんの世界に存在するに値しない汚物を切り払い、
 汚れた身を帰ってから王座につく兄さんに慰めてもらうんだ。
 どうだ? 理想的な世界じゃないか。私にはそれが出来る。
 兄さんに全てを捧げ、兄さんを最も幸せにすることが出来るんだ。
 それが理解出来たら────さっさとそこを退かないかああっ!」

純白の刀身が大気を滑る。ニーサンにいた頃からほとんど視認も出来ない、
勇者にのみ可能な人間を超越した一撃。それがもう一人の妹を、一緒に育った愛すべき家族を襲った。

616:妹夢妹夢
08/01/04 06:11:02 hmY/7yYs
「勝手なことを、言うなあああ!」

虚空に光の軌跡が生まれる。
空間に描かれた淡い輝きの交錯はそれぞれが複雑に絡み合い、重なり合い、
奇怪な紋様を三次元に構成して発光した。
魔法陣。異世界法則の顕現が既存の空間のルールを侵食し、発生した抵抗が神剣の刃を押し留める。

「お兄ちゃんはアタシのものだ!
 お兄ちゃんはアタシと一緒に魔法の国に行って、ずっと永遠に結ばれるんだからっ!」

妹、次女の古宵(こよい)の指先が空中を走る。
利き手に握られた、ライフルの砲身と槍を融合させたような武器の先端が誘宵に向けられた。

「エクセリオンッ!」
『諾』

三角に近い刃、その中央に埋め込まれた真紅の宝玉に光が灯る。
精霊融合型他律式魔法兵装、『エクセリオン』。彼の承諾と共に金属の表面に回路のような紋様が走り、
伝達された指令と魔力が切っ先へ収束する。
飛行を可能とする三対六枚の光翼を背に、真っ白なマントをたなびかせながら古宵が距離を取った。
刻まれた魔法陣も伴って移動し、明滅、解き放たれる威力の内圧に崩壊して弾け飛ぶ。

「ギャラクティック────バスタァァアアアー!!」

闇の濃さを増していく空を閃光が蹂躙する。
圧縮された魔力が与えられた指向性に従って前方に広がる空間へ進撃、
異界の化物さえ薙ぎ払う破壊の光線が誘宵に迫った。



次女の古宵が教えてくれたのは、ファンタジーとはまた少し違った魔法の存在。
物質と精神、それぞれの領域を発達させた世界が持つ力。
ただ、文明の発達が弊害を生むのはどこの世界でも同じらしく、
むしろより具体的に精神の力を操れるようになった人間は、
時にその意識だけで世界に大きな影響を及ぼすようになったらしい。
その世界の名前は『魔法世界 ニィチャン』。
翳り始めた精神と科学の進歩にもがくように魔法犯罪が多発し、
また進化した人の意志力から生まれた悪意が実体化する世界。
犯罪者は次元の壁を乗り越えて世界を渡り逃れ、悪意の獣もまた同じく。
世界を単位とする広大な範囲を抑えるには圧倒的な人員の不足を前に、
ニィチャンの世界政府が出した結論は人員の現地調達だった。
何らかの対価を示して、犯罪者の逃げた先々で知性体に武器を与えてを登用する。
そして今、僕のいる世界。
ここでその対象に選ばれたのが妹、古宵だった。

『お兄ちゃん・・・ごめんなさい。ちょっとの間でいいから、ぎゅってして・・・』

ある晩。帰りの遅い妹を心配していた僕をケータイで呼び出した古宵の言葉。
茶色がかった髪を血と、泥と、何か分からない体液染みたもので塗らした頭を僕に預けて、
見たこともない衣装をボロボロにした妹が告げた真実。
他の世界から渡ってくる犯罪者や、悪意が肉を纏った化物の存在。
彼らとの戦いの日々。相棒は一人、武器であるエクセリオンだけ。
彼、ニィチャンの世界で用いられている武器は精神力を魔力と呼ばれるエネルギーに変換する。
特に異世界での使用を前提に作られたシリーズの場合、
未熟な精神で膨大な力を生み出すために使用する精神力、その源となる感情を限定し、
一つに特化することによって強大な出力を得るらしい。妹の場合は、愛情。
誰かから与えられる愛情を実感し、自分も相手にそれを抱くほどにエクセリオンは強力になる。
日々続く魔法犯罪者や異形との連戦に消耗した古宵は、
とうとう自分だけでは魔力の回復が追いつかなくなったのだとエクセリオンに聞かされた。
残された道は愛情を与えてくれ、また古宵側からもそうである相手との触れ合い。

617:妹夢妹夢
08/01/04 06:12:23 hmY/7yYs
『アタシ、頑張るから。お兄ちゃんのいるこの世界を、ちゃんと守って見せるから。
 だから・・・・・・たまに、本当にたまにでいいからこうして。お願い・・・』

その日、ふらふらと立ち上がった古宵を場所も知らない戦場に送り出してからも、
僕は幾度となく妹を抱き締めて夜を過ごした。
日増しに強力になって行く相手との戦いに身を投じる妹が、愛する家族がせめて少しでも楽になるように。

そうして、戦って戦って戦い抜いた妹が、
それなりの平穏をこの世界に齎したのも少し前のことだ。
激戦の対価に古宵が何を願ったのかは僕も知らない。
だが、血を流す戦場に臨むことを代償としたそれは、大切で譲れないものだったのだろう。

「ぉ、おぉおぉおぉおぉおぉおぉおおぉおおおおお!!」

収束された光の渦が過ぎ去った後、そこには鎧を発光させている誘宵がいた。
白煙を上げながらも剣を構えている。
伝説の武具の一つである勇者専用の鎧に施された加護と本来の防御力。
そこに防御魔法を上乗せしただろう。
顔の輪郭だけを覆い、表情の部分は露出している兜から覗く口が強く結ばれた。

「今のを耐え切るなんて・・・・・・でもそれなら!」

古宵の、抱き締めている時に僕の背中に弱弱しく当てられていた細い指が空中に踊る。
描かれた魔法陣はエクセリオンの機能を以て増幅され、
古宵を中心に回転しながら拡大した。

「やってくれたな!」

誘宵が剣を上段で固定した。
爆発のような光が全身──いや、身に着けた武具から放たれる。
一度だけ見たことがあった。魔王を消滅させた技。
神の力と人の技術を合わせた伝説の武具を共鳴させ、
全開にした力を刀身の形にして射出する必殺の一撃。

「これで終わりだよ」

「私と兄さんの恋路を邪魔する者は殺す。それがたとえ魔王だろうと、妹だろうとな!」

展開された魔法陣が爆縮、エクセリオンの切っ先で極小の球体となった。
内部に留め切れない魔力の奔流が紫電となって空間に荒れ狂い、閃光の花が咲く。
対するのは、巨人が振るうかのような光の帯。
刃の形状に凝集された光の力が切っ先から伸び、逃れる者、立ち向かう者、
全てを断ち切らんとして開放を待つ。

「うるさい!
 私はお兄ちゃんと魔法の国に行って、そこで永遠の命をもらってずっと幸せに暮らすんだから!
 邪魔をするなら、たとえお姉ちゃんでも殺してやる!
 塵になれ────アルティメットバスタァァアアアアアアアアアア!!」

「お前がなあっ! 聖剣一刀、討魔伏滅!!」

光同士が激突する。
目を焼く発光と耳を震わせる衝撃。
その、ほんの少し横にも似た光景があった。

618:妹夢妹夢
08/01/04 06:14:08 hmY/7yYs
三女、火宵(かよい)。
彼女が教えてくれたのはこの世界にある、だけど多くの人間が忘れてしまった世界のこと。
妖怪という存在。
火宵は僕の妹であると同時に、遥か昔に生まれ、そして死んだ人外の者でもある。

『兄上よ、ゆめゆめ忘れるでないぞ。人は唯一ではない。
 人の堕落が続き、文明が滅びへ近付いた後に再生を迎えるならば、その過程で我らは再び生まれよう』

火宵の正体は七本の尻尾を持った化け狐。つまりは妖狐だ。
狐火と幻術を得意とし、機嫌の悪い時はよく僕を化かそうとする。
もっとも、今の火宵は体の面では完全に人間。昔、ちょっとした悪さをして滅ぼされた火宵は、
その直前に転生の術というものを使ったらしい。
だがその代償は大きく、力も削がれ、転生先は選べない。
虫や微生物にでも転生すれば終わりだ。
だから使う者は滅多になく、更には転生先で生き残れる確立は天文学的低さだという。

『耐えられぬ。この身の何と弱きことよ。
 初めから弱き者に生まれたならば良かったものを、今の我の何と不完全なことか』

火宵は一般的には奇妙極まりない子供で、まだ僕に正体を明かす前はよくそんなことを口にしていた。
転生した火宵の力は以前の半分を下回っていたというから、分からなくはない。
当時、まだ大人というには遠かった僕は妹の言葉に首を傾げつつも、
じゃあ今の状態で出来ることを楽しもうよと、
それはもうあっちこっちで色々なことを火宵としたものだった。
幸運にも、と言うべきか、僕の行動で妹の苦悩は減ったらしかったけれど。

『兄上は我にとっての色よな。
 自らの苦悩と嘆きで色褪せていたこの世界で取り戻せたもの、生まれたもの。
 からーてれびを見慣れた者は、もうものくろの画面には耐えられまい。
 兄よ・・・・・・頼む。兄はどこにも行くな。
 この色づき始めた世界の中で、いつまでも我の傍にいておくれ』

そう言った日のうちに、火宵は正体を明かした。ただし、僕だけに。
今の時代にも力を持つ者はいるから、出来るだけ正体は隠しておきたいんだとか。
僕と妹がたまに、一緒にテレビを見ながら狐うどんをすするようになったのはそれからだ。

「うすうす感じてはおった。
 お前が他の姉妹と違って、そも我のように人でない存在であったことはな。
 それでも黙っておれば見逃してやったものを・・・・・・兄の魂をこの星より連れ去るなど、
 断じて罷りならん! 諦めぬと言うならば、その身を未練さえ残らぬよう焼き尽くしてくれる!」

「不許可。兄の周囲にアナタ達のような存在がいるのは危険。
 兄のためにも、兄の精神はワタシの母星に連れて行く。邪魔しないで」

「化生の類でさえない人外が、どの口でほざくかあっ!」

火宵が、まるで尻尾のように広がった七つのポニーテールを背後の炎で赤々と照らしながら吼えた。

「狐火っ!」

火球が七つ、後部から爆炎を振りまいて高速で放たれる。
対する四女、真宵(まよい)は軽く手を掲げた。

「#△@Ω■δ?Λ」

耳鳴りのような声が響く。
意味を認識出来ない音声の羅列が紡がれ、世界そのものへの呼びかけが行われた。
見た目には何の変化もない。
にも拘らず、飛来した火炎は全てがまるで不可視の壁がそびえ立ったように虚空で弾け、溶け消えた。
多分、僕が姉妹中でも最も理解出来ていない真宵の力によるものだろう。


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch