嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 43も古参もat EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ 43も古参も - 暇つぶし2ch344:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:34:09 JWc/FKoC
>>342
申し訳ない。
1対多の論戦だから、目に止まらずに流してしまったようだ
いいだろ? どうせゴミみたいな質問で、全然建設的じゃないんだから

可哀相だから、君の涙目に免じて相手にしてやるよ

「そんなコトしても、書き手の目には止まらないだろ」

これで満足かい?

345:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:37:02 SIrG+Dn1
>>344
だから批評サイトで感想批評書くたびにURL貼ればいいっつってんじゃん。
何回ループさせる気? いい加減呆れ果てるよ。
大丈夫!URLは自動でリンカー付きになって文字色も目立つ色に変更されるからいくらでも目に付くよ!

346:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:39:46 sKMQjl2N
>>344
何度も言われてるが、ここは批評の場じゃない。
それがルールだ。
批評をしたいなら批評をしても良い場所でやれ。
それが守れないならお前は荒らし、もしくは駄々をこねてる子供だ。

もし書き手がお前の批評を必要とするなら
書き手のほうからお前の批評を探しに行く。

347:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:41:10 rPucxqhF
まぁ結局>>346が真理だよね


348:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:41:14 JWc/FKoC
>>345
ウンザリしてるのは俺様の方なんだが
俺様がそんな面倒なことするわけないって知ってて言ってんでしょ?
まったく君には俺様だけじゃなく、スレのみんなも大いに迷惑している

349:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:42:48 SIrG+Dn1
例えば阿修羅氏に頼んで自分の批評サイトにリンク付けてもらうとかさあ、
スレテンプレの中や付近に批評サイトのURLを貼っておくとかさあ、
自慢の敏腕批評で有名になれば自ずと作家諸兄も自分の作品がいかに評価されてるか気になって見に行くと思うよ!

350:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:43:11 JWc/FKoC
>>346
その通りだ
みんな感想以外のレスはもう慎もう
俺様も基本的に感想以外のレスをつけるつもりはないんだから

351:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:44:26 cVRMvURE
俺様さん、見る方向が違うなら、あなたの理論も他の人の理論もそれぞれ違うでしょう。自分の理論へ導くのは善し、相手の理論は悪しでは、あなたを煽る人と同じことをしています。

一緒に作品を楽しみましょうよ。荒らしになんて負けちゃ駄目ですよ。

352:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:44:34 SIrG+Dn1
>>348
だからさあ、その面倒臭がりが結局あんたの「荒らし自称」に繋がってるんだってば。

353:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:47:26 JWc/FKoC
>>394
阿修羅氏には感謝している。
しかし彼にこれ以上迷惑を掛けられないだろう。

ただでさえ問題児を隔離するためだけに、
避難所とやらを設けてくれているんだから。

自分ではSS書かず、他人の書いた作品を保管するだけで神扱いされているのは
正直言ってちょっぴり妬ましいがね。

354:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:50:02 2vXOBINk
スルーできる人間は書き手も含めて最初から読んでないよ
荒らしも反応するから調子に乗るんでしょ?可哀相な子を見る眼差しで生暖かく見守ってあげるにとどめておいたら?

355:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:50:49 SIrG+Dn1
>>353
神扱いされたがってやってるのか、あんたやっぱり。
で、実際やってるのがスレの停滞工作と作品以外の長文投稿。
なるほど阿修羅氏とは姿勢から何から雲泥の差だなあ、もっと妬んでもいいと思うよ、あんた。

356:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:52:25 haldT8B8
かんそう ―さう 0 【感想】
(名)スル
あることについて、感じたり思ったりしたこと。所感。感懐。
「読後の―を語る」「―文」「高遠幽深なる関係を―する/欺かざるの記(独歩)」


ひひょう ―ひやう 0 【批評】
(名)スル
事物の善悪・優劣・是非などについて考え、評価すること。
「文芸―」「作品を―する」


>>350
お前がしてきたレスの大部分は感想ではなく批評だ。
批評的要素を多く含めば、いくら感想だと言い逃れようとも批評の枠に入る。
大人なら場を弁えろ。

357:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:54:32 JWc/FKoC
>>355
ほう、今度は俺様の怒りの矛先を阿修羅氏に向けようって戦術かな?
何度も言うように、IP抜かれるおそれのある個人運営サイトには、
立ち入らないことにしているから。
個人情報でも垂れ流された日には、目も当てられないからね。

358:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:54:59 SIrG+Dn1
どうしてもこのスレでやりたいんだってさ。
避難所は問題児ぞろいでー、
批評サイト作るのは著作権で危なくてついでに面倒臭くてー、
相手してくれるこのスレがいいんだってさ。

359:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:57:56 SIrG+Dn1
>>357

阿修羅氏

・投稿者のリモートホスト情報は調べません。
(そこまでする余裕がありません・・・)
従って、ホスト情報の晒しやアクセス禁止などの措置は行いません。
(あまりに悪質な場合はこの限りではありません)




ていうかさあ、IP抜かれることしなきゃ問題ないでしょ。
何も悪い発言してないのに個人情報抜かれるとかないから。
ちょっと非現実的過ぎる被害妄想だよ。

360:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:58:10 cVRMvURE
なんで反応してくれないんですか。なんでですか。反応してくださいよ。無視しないでよ。ひどいよ。

361:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:58:40 JWc/FKoC
>>356
書き手に耳障りのいいことだけが感想っていう理論でいい?
君の小学校ではそういう風に教わっていたんだね。
疑問的もしくは批判的に感じるのも「あることについて、感じたり思ったりしたこと」
の一つの形態だと思うのは間違っているかな?
辞書なんか持ち出してきても、きちんと内容を解釈できなけりゃ意味がないよ

362:名無しさん@ピンキー
07/11/26 21:59:42 zUSuK/Xf
一番目の彼女の投下まだかなぁ・・・

363:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:01:26 JWc/FKoC
>>cVRMvURE
誰だ、お前は?

何だ、知らないうちに流していたよ

364:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:03:09 PwMKh3cp
いやしかし俺様氏が来るとホントにスレが伸びるなwwwwww

このスレも前スレみたく埋まってくのか……

365:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:03:14 haldT8B8
>>361
何故批評がルール違反なのかという考えれば
批評的な感想も同じ理由でしてはいけないというのは分かりそうなものだが。

こういう屁理屈でルール違反を開き直ってする輩がいるなら
否定的な感想もしてはいけないとテンプレにしたほうが良いかもね。

366:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:03:15 t54RIMQp
>>361
作品を素直に楽しもうとは思わないの?
粗探しばっかしてもつまらないだろうに。

367:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:04:11 SIrG+Dn1
屁理屈こねてはぐらかして、立派な20歳以上ですこと。
皮肉です。通じないのは馬鹿だけです。

368:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:04:33 vQp63Exc
投稿以外禁止にしてまえ

369:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:05:35 cVRMvURE
ひどいよ。傷つくような言い方しないでよ。何でそんな言い方するの。意味がわからないよ。荒らしじゃないんでしょ。なんで。もっと言い方あるでしょ。最低限のマナーがあるでしょ。なんで。もっと寛大な心を持ってよ。何でなの。ねえ。何で。

370:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:05:52 JWc/FKoC
>>366
本当にそう思う
心から楽しめるSSの投下をひたすら待つよ
外野さえやかましく言わなきゃ、俺様だって黙ってるんだけどな

371:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:06:33 FuJJn5zt
  /\___/\
/ /    ヽ ::: \
| (●), 、(●)、 |    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
|  ,,ノ(、_, )ヽ、,,   |  < まーたはじまった
|   ,;‐=‐ヽ   .:::::|    \_______
\  `ニニ´  .:::/
/`ー‐--‐‐―´´\


372:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:06:55 SIrG+Dn1
>>368
なんだかんだでそれが一番いい気もする。極端すぎるけど。
批評くんは結局
「俺が嫌いな作品がGJ!とか乙!とか言われまくってる!こんな世界は間違ってる!修正してやる!」
が行動原理なわけだし。あほらし。

373:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:11:34 JWc/FKoC
 41 :名無しさん@ピンキー:2007/11/19(月) 21:11:32 ID:SRSqFTxA
 真性キチガイっぷりがヤバイ。
 アナタ何様ですか? 俺様? 小学生ですか?
 批評家きどりで気持ち悪い長文をうだうだとよく書けるな。
 キチガイだからしょうがないのか?

その通り
王様が裸だって口にするのは、いつだって子供の役目だから

374:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:13:15 gBZi8gAG
投稿以外禁止にしても無駄かもね。
この荒らしはそもそもルールを守る気が無いんだから。

もうこのスレはダメだろうな。
ルールを守れと言っても聞かないし、これからも粘着し続ける気らしいし。

冬の星空が好きみたいな事を言ってるが
実際には自分が原因で冬の星空が投下されなくなっても屁とも思わないだろう。

スルーにも限度があるし、こういう粘着質の高い荒らしに張り付かれたら
アク禁以外スレを守る方法は無いよ。
こんな調子で評論家ごっこされたら、誰も投下なんてしなくなるだろう。

もうしばらく嫉妬スレは諦めて
新スレは、ほとぼりが冷めるのを待ったほうが良い。

このスレの残りは俺様クンをおちょくって遊んで埋める方針にすれば?

375:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:13:15 5vteHpLf
侮辱ありきで読むのならそれでもいいが
感想を読んで不快になる人間がいるんだからトリップつけような
後、見たくない文字列があるならNG指定しような、お互いに。悪い事いわんから

376:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:13:53 SIrG+Dn1
>>373
子供に言われない限りは王様は自分が陰で笑われてると気付きもしませんけどね。

377:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:15:22 SIrG+Dn1
あ、この場合批評くんが子供ってことなのか。参った。

378:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:16:49 JWc/FKoC
>>374
空回りして惨めな思いをするのは君たちだが?
当方は会ったこともなければ今後も会う予定のない人物に、
回線を通じておちょくられても、一向に腹は立たないんだから。
せいぜいレスの無駄遣いをしてくれたまえ。
では、ごきげんよう。

379:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:20:48 53ZdpKWq
おーい、赤ID自重しろよ

380:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:21:48 SIrG+Dn1
>>378
今日一回で完全証明できたことは大きい。
批評くんは荒らし目的でスレに感想(笑)を投下していること。
批評くんは相手にしてもらえると嬉しいということ。
そのくせ外野がやかましいから黙っていられないと嘯いていること。

381:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:24:12 cVRMvURE
何で無視するの。反応してよ。何で。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。
反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。
反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。反応してよ。

382:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:24:16 RHtAoZoo
まぁ結局投下以外の長文はやめてくれに尽きるわな

383:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:24:46 gBZi8gAG
おちょくられてって言葉に反応して顔真っ赤だなwwwww

こんな言葉一つでそんなに怒るなよ。
これだから子供はからかい甲斐があるなぁw

384:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:30:54 cVRMvURE
俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。
俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。
俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。
俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。
俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。
俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。
俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。俺様さんが反応してくれない。

385:山埼渉
07/11/26 22:31:09 SIrG+Dn1
     ∧_∧
ピュ.ー (  ^^ ) <これからも僕を応援して下さいね(^^)。
  =〔~∪ ̄ ̄〕
  = ◎―◎                      山崎渉


386:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:38:53 eYhb8Oas
スレオワタ\(^o^)/

387:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:41:07 1Y8zWN5t
こんなときの為の避難所だろ。有効活用しよう

388:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:47:33 2vAhrsDI
ID:JWc/FKoC
ID:SIrG+Dn1
ID:cVRMvURE
みんなNGにしたらすっきりした

389:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:51:59 mKcMK3LS
避難所に投下しても読んでもらえないからな あそこって空気もなんか嫌だし なんていうかこことは世界がちがうって感じ

390:名無しさん@ピンキー
07/11/26 22:58:12 VOJExO/d
いやーひどいスレになったもんだ。今じゃエロパロ屈指の糞スレだな

391:名無しさん@ピンキー
07/11/26 23:12:26 Rlr30YBN
俺様(恥)くん、まだいたのwwww?

392:名無しさん@ピンキー
07/11/26 23:20:54 +LfyVl70
もっと批評しろクズどもー(^0^)/

393:名無しさん@ピンキー
07/11/26 23:26:42 nBIUzrXn
>>389
印象操作乙

394:名無しさん@ピンキー
07/11/26 23:41:23 bi7ww6P2
>>387
俺の携帯書き込めない。
涙目、つーか泣いてる。


395:名無しさん@ピンキー
07/11/26 23:41:48 cx9qCyXg
批評くんには一度IDそのままで一本投下してもらいたいな。
これだけ他人の作品を批評しておいて、自分の作品を批評されるのが怖いなんて情けない事は言わないだろうし、
投下しないで、怖気づいてまたID変えるなんてしたら惨めな姿を晒すだけだからさ。

笑ったりしないから。
勇気を出して一本投下してみてくれないか?

396:名無しさん@ピンキー
07/11/26 23:46:46 +9uO1v35
>>395
それは興味あるな。
別にここじゃなくて避難所でもいいから自分の作品をお披露目してほしい

397:名無しさん@ピンキー
07/11/27 00:05:32 5TI6g5rx
今俺たちがすべき事はただ口をつぐみ、裸になって投下を待ち続けることだと思う

まあ、いちいちこんな事書いてる時点で俺も荒らしと同類かもな

398:名無しさん@ピンキー
07/11/27 00:08:29 nArd9+hs
いい加減荒らしに耐性をつけてほしいな。
それに、荒らしを叩いても貴方達の自己満足にしかならない事にも気付いてほしい。
学ぶ気があるなら幾つかの荒れ切ったスレを観てくれ。
それでも理解できないなら聞いてくれ。
その頃には自分が何をわかっていないのかくらいはわかっていると思うから。


399:名無しさん@ピンキー
07/11/27 00:10:56 /Y9YaCcL
ていうか明らかに反応してる人はもう荒らしだよ

400: ◆tVzTTTyvm.
07/11/27 00:22:27 ETHyXOGB
皆殺し(37.5ロシ)スレに投下したヤツの続き投下します 短いですが
この投下が他の作者さん達への呼び水になる事を祈って

401:I wish I could... ◆tVzTTTyvm.
07/11/27 00:23:54 ETHyXOGB
「ねぇトキちゃん。 あの時の言葉、信じていいんだよね?」
 ―あの時の言葉。 それは二人が再会した時に遡る。

「トキちゃん……?」
「え? も、若しかしてキミ、レンちゃん?」
 それは幼い頃親の転勤で別れて以来10年ぶりの再会。 だが二人共一目でわかった。
 期せずして再会した幼馴染同士。 そして初恋の相手。
 それは凍祈緒にとってそうだったのは先に述べたが、それだけではなく―。

「でも本当に嬉しい。 ちっちゃい頃お別れしたっきりだったんだもの」
「うん。 俺もまた逢えて物凄く嬉しいよ」
「お別れしたとき物凄く寂しかったわ……。 あのね、あの時言えなかった言葉があるの。
それでね、また会う事が出来たら絶対言おうって決めてたの」
 そう言うと憐花は目を瞑り一つ深呼吸をし、そして目を開けると意を決し言葉を紡ぎだす。
「トキちゃんの事ちっちゃい時からずっとずっと大好きでした。 だから私と付き合ってください」
 そう。 憐花にとってもまた凍祈緒は初恋の相手だったのだ。

「レンちゃん……。 俺も……大好きだよ」
 そして返ってきた凍祈緒の答え。 それは憐花にとって望んでた答え。
 其の答えに憐花の胸のうちは喜びで満たされていく。
 だが次の瞬間気付く。 凍祈緒の表情が重たい事に。
 それが何を意味するのか、憐花は一つの推論が浮かぶ。
 まさかと思いつつも恐る恐る憐花は口を開く。
「若しかして……トキちゃん、付き合ってるコがいるの?」
 答えは無い。 だがより重さを増した表情、更に俯いた顔が物語る。
 其の問いに対する答えを。

「そっか……、そうだよね。 トキちゃんだって年頃の男の子だもんね。
それにおっきくなって昔よりもカッコ良くなって……、彼女がいたっておかしくないよね……」
 そして「ごめんね……」と呟き瞳から涙を溢れさせ背を向け走り去ろうとする。
「待ってレンちゃん!」
 凍祈緒はそんな憐花の手を掴み呼び止める。
「別……れるから。 今付き合ってるコとは別れるから! だから俺付き合うよ!
恋人同士になろうよ!」

 其の言葉に憐花は驚き目を見開く。
「え……そ、そんなの……そんなの駄目だよ……。 その彼女さんに悪いよ……」
「でも……、でも! 折角レンちゃんと再会できたんだもん! だから……だから……」
 言いながら凍祈緒の瞳からも涙が溢れ始めていた。

「信じて……いいの?」
 其の表情に凍祈緒の本気を感じ取ったのか恐る恐る憐花は問い返す。
「うん! 勿論だよ! だから……だから別かれたら付き合ってくれる?!
その……直ぐには無理だけど、でも……!」
「わかったわ。 トキちゃんがそこまで言うのなら、私信じるわ」
 憐花は凍祈緒の言葉を遮るように口を開き微笑んだ。

「あ、ありがとう! ただ、さっきも言ったけど別れるまで其の、少し待って欲しいんだ。
いや、待って欲しいというかその、なるべく傷つけずに別れたいんだ。
コッチの都合で別れを切り出すわけだから。 こんなの責任逃れや偽善かもしれないけど……」
「うん、別った。 トキちゃんの其の言葉。 私信じて待つから」

To be continued....

402:名無しさん@ピンキー
07/11/27 00:26:10 ETHyXOGB
年内中に1/8と白き牙の続きも投下できるよう頑張ります

403:名無しさん@ピンキー
07/11/27 00:28:00 C5jJw/0J
>>>402
GJ!
あんたの勇気に敬服するぜ。

404:名無しさん@ピンキー
07/11/27 00:39:48 hM8hQ68V
>>402
1/8を全裸で待ってますw

405:名無しさん@ピンキー
07/11/27 00:51:42 rT+2h0Mo
好きなジャンルのSSくらい楽しく読みたいもんだ



406:名無しさん@ピンキー
07/11/27 01:12:51 7rBlEr8i
んだんだ
平和が一番

407:名無しさん@ピンキー
07/11/27 01:22:40 meoa7RnJ
>>401
なんか、もうね……あの時言えなくて、また会う事が出来たら絶対言おうって決めてた言葉なら、
どうして今、一から紡ぎださなきゃならないの?
もう言うべき言葉は決まってたんじゃないの?

それに、相変わらずというか、この作者はどうして倒置表現ばかり使いたがるんだろうか。
そういうのは、ここぞって時に使ってこそ効果的なんだろに。

「憐花は一つの推論が浮かぶ」こういうダブル主語も書き手の個性ね。分かってますよ。

「別……れるから」は読みに直すと「わか……れるから」か。
ずいぶん変なところで切るんだね、別に書き手と登場人物の勝手だけどね。

どうでもいいけど、自分でスレ違いと分かってる作品を投下するのは如何なもんかな?
またここを荒そうって魂胆なら別だけど、黙って投下した方がよかったね。
変に先入観を持たずに読みたかったよ。

408:名無しさん@ピンキー
07/11/27 01:27:10 piKsO/Lp
>>402
お疲れ様です
年末は大変だろうし、無理せず自分のペースで投下してください

409:名無しさん@ピンキー
07/11/27 01:28:30 7/DqU8So
>>402
GJ!
1/8好きな人多いな。俺も全裸で待つ組だw

410:名無しさん@ピンキー
07/11/27 01:36:11 aQzjvlBB
>>408
GJ
投下してくれてうれしい限り
期待して待ってます

411:名無しさん@ピンキー
07/11/27 01:39:08 meoa7RnJ
>>401
やっぱり止めときゃよかった。
なんか君の作品に真剣な感想つけるのは、弱いものイジメしてるみたいで
後ろめたい一種の罪悪感が付きまとうよ。
書いてしまったものはもう取り消せないが、よかったら忘れてくれないか。
いや、本当にすまなかった。

412:名無しさん@ピンキー
07/11/27 01:41:49 RHAiFP6E
>>402
乙です。続きが楽しみだ。
憐花がこれからどうなるのかwktk

413:名無しさん@ピンキー
07/11/27 01:44:18 /fh3U97P
やっぱりSSスレはSSが何よりの清涼剤だな。
作者さん乙です。

414:名無しさん@ピンキー
07/11/27 01:45:18 aG2ZwS+O
>>401
癒されるなGJ
やはり、嫉妬修羅場は癒されるぜ

415:名無しさん@ピンキー
07/11/27 02:13:56 qiQROaaS
>>402
GJ
あっさり振られた彼女が気になる。

416:名無しさん@ピンキー
07/11/27 02:25:55 U0IjNHUH
tesu


417:名無しさん@ピンキー
07/11/27 02:34:05 DtHgOrAZ
>>402おまいさんの勇気に乾杯ww


418:名無しさん@ピンキー
07/11/27 04:43:00 PZPMs4am
>>417禿げ胴

419:名無しさん@ピンキー
07/11/27 05:51:13 CHFqbg+H
nice brave

420:名無しさん@ピンキー
07/11/27 07:44:19 gv73MIru
>>402
ナイス投下!

トキちゃんいきなり乗り換え宣言w
今後の動向に目が離せないぜ

421:名無しさん@ピンキー
07/11/27 07:46:01 gv73MIru
sage忘れ・・・申し訳ない

422:名無しさん@ピンキー
07/11/27 15:06:37 StIQ/N+N
>>402あなたこそ神だ。GJ!!!


423:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:40:41 U0IjNHUH

 親の顔は知らない。生まれてすぐ捨てられたからだ。
 青空が見える路地を寝床にして私の心は次第に汚れていく。
 心地よく胸の奥底に濁った物が溜まるのを感じ始めた頃、私は病気に伏せって路上で倒れた。
 誰も助けない見て見ぬふり、人間はやっぱり一番自分が可愛いんだなと思った時一人の男の子に手を差しのべられた。
 
「僕の所に来ませんか?」

 どこかのお坊ちゃんだと一目で分かる身なりをしたソイツの言葉を聞いて私は言い知れぬ怒りを感じた。
 
(あぁコイツは今、私を哀れだと思っているんだな…)

 そう思った。私はソイツの掌に唾を吐きかけて言った。
 
「偽善者」

 どう見ても貴族の輩だ。今ここで殺されても文句の言えない行為をした。
 でも別に焦りとか後悔とかは感じなかった。
 思えば死にたかったんだと思う。生きていてもしかたがない人生に疲れたんだろう。
 でもソイツは腰にかけた剣の柄に手を触れさえしなかった。
 
「偽善者でもいいです。貴方を助けれるなら」

「なっ!?」

 お姫様だっこで無理やり連れて行かれた私は、男の子の紹介で病院に連れて行かれた。病気は重病だったらしく入院をよぎなくされた。
 お金が無い私はすぐに病院を出ようとしたが医師に止められ、男の子の家が全額支払うことになっていたことを聞かされた。
 しばらくしてやってきた男の子は無理やり病院に連れて来たことを詫びて再度聞いてきた。
 
「僕の所へ来ませんか?」

 と、別に元の生活に戻ってもらってもいいと言われたが、無理矢理にしろ命を救ってもらったことの恩もあって断れなかった。
 そのことを皮肉めいて言ってやったら「偽善者ですから」と返されて、つい私は笑ってしまった。
 男の子との交渉は成立して、男の子の屋敷のメイドとして働くことになった。
 後で聞いた話だが、男の子は私より一歳年下だったらしい。
 

 メイドの仕事にも慣れ始めた頃、貴族の男の子改めてティークの父親が私の元へやってきた。

424:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:41:13 U0IjNHUH
「これからティークが進む道は長く険しい、敵も散々と湧いてくる。
  親の私が言うのもなんだがティークは生真面目で一人ではきっと耐えられないだろう。
   一人でもいい。護衛という立場でどんな時でも息子について離れず決して裏切らない味方が欲しいのだ。
    血反吐を吐くような厳しい訓練もあるが、受けてくれるなら給料も今の3倍…いや4倍出そう。どうだろうか…?」
 
 私は二つ返事で了承した。
 メイドとして働くようになってすぐにティークは私のことを姉さんと呼んで慕ってくれていた。
 曰く、一人っ子で兄弟が欲しかったのだという。初めて会った時とは違い、貴族の振る舞いが引っ込んだ無垢な子供のような態度でそう言ってきたのだ。
 貴族とそれに使えるメイド、立場は違えど私にとっても弟が出来たような感覚があった。
 だからティークの父親からその申し出が出た時、私は迷わなかった。
 
(彼を守りたい)

 給料のことなどどうでもよかった。ただ純粋にそう思ったから了承したのだ。
 話が纏まって三日もしない内に私はメイドの仕事から外され、ティークの父の計らいで国が抱える軍隊の訓練校へと入学することになった。
 私の苦難の人生を差し引いてもまだツライ訓練に苦しみながらも私は訓練を受けた。
 
「ゼンメイ、辛くない? 止めてもいいんだよ? 父さんには僕が言うから」

 しばらくして事情を知って面会に来たティークは、本当に心配そうな顔で私にそう言ってきた。
 
「平気です。強制されたわけじゃなく私が望んだことなんですから、若が心配することではないですよ」

「でも…」

「帰って来た時には立派になった私をお見せします。楽しみに待っていてください」

「じゃあ…、じゃあ僕も軍隊に入る!」
 
「へ!?」

 面会でティークが宣言したことは後日ティークの根勝ちで決定したらしく。次に会った時は訓練校の食堂でだった。
 正式に軍隊には加入せず3年後に私が、その1年後にティークが訓練校を卒業をして元の貴族とメイドの関係へと戻った。
 ティークの訓練校の卒業祝いの時に半分酒に酔ったティークが自分の夢を語ってくれた。
 
「隣の…もう戦争で負けて属国になった国土の荒れた小さな国だけど、そこに好きな娘が居るんだ。
  その国の姫様で子供の頃に数回会っただけなんだけど、その時に一目惚れした。
   最後に会った時に彼女が言ったんだ。皆が笑える幸せな国を見たいって…
    今考えれば恥ずかしいくらいの勢いで自分が作ってみせる! てその娘に宣言した。
     いつもその娘は無表情で笑わなかったから、その夢を叶えたらきっと彼女は笑ってくれるはずだって思った」

425:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:41:52 U0IjNHUH
 その言葉を聞いて私は自分の本当の気持ちに気づいた。
 自分はティークのことを弟として好きだと思っていた。違っていた。本当はティークを一人の男性として好きだったんだ。
 じゃないとこんな苦しくて、気持ち悪くて、醜くて、汚い気持ちになんかならないはずなんだから。
 
「叶うと…いいですね…」

 震えそうそうな声を必死で抑えて私は言った。
 
「もちろん…!」

 酒の勢いもあってか意気揚揚と拳を握り締めてティークは答えた。
 それから私とティークの間に微妙なぎこちなさを残して一年の月日が流れた。
 
「どうかなゼンメイ、服…変になってないかな」

 客室の鏡の前で自分の尻尾を追い回す犬のようにクルクル回るティーク。
 ティークと私はティークの想い人が居る隣国へと足を伸ばし、ついさっき王様への謁見を済ました所だった。
 名門中の名門の出身にしてその身分の驕れることなく精進してきたティークの噂は小国の王も耳にしたことがある上、過去にも面識があったため姫との縁談の件はトントン拍子に進んだ。
 すぐに姫との面談が決まり、今に至る。
 
「若…少し落ち着いたらどうですか」

「お、俺は落ち着いてる…ぞ?」

「なら聞かないでくださいよ…」

 一人称も変わり(ティーク僕は男らしくないと言って無理矢理変えた)昔の面影を残しつつも青年へと成長したティークはそういうと椅子に座るとまたソワソワとし始める。
 それが一人の女性に向けられた態度だと思うと、私の胸はミシミシと音をたてて軋んだ。
 
「やっぱり、嬉しいですか? 姫に会うのは」

 私の心境のことなど当然知らないティークに自分の胸の声を遠回しに吐き出す。
 
「当然だよ。もう何年ぶりだろうか、…早く会いたい」

 涙が出そうになる。訓練校で心身ともに鍛えたはずなのに、胸の底はグシャグシャになりその場から去りたくなる。
 私にとってティークは大切な存在だ。ティークだってそうだと思いたい。
 でも、それは一つの見解で大きく意味が異なっているんだろう。そう思うとまた辛くなる。
 
<ガチャリ>

426:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:42:34 U0IjNHUH
 そんなことを延々と考えていると扉が開かれた。
 男装をした女性が開けた扉の奥から、控え目なドレスを身にまとった少女が現れる。
 一瞬その女性と目が合うがすぐに目を逸らされティークの向かいに座る。その椅子の後ろにさっきの男装をした女性が立つ。
 
「…久しぶり、スラル」

 向こうからは切り出さず、しばしの沈黙の後ティークが切り出した。
 スラルと呼ばれた少女は無表情に首を振る。
 反応の薄さにティークは困りつつも次の言葉を懸命に探す。
 
「スラルの皆が笑える幸せな国を作れるよう今まで努力してきた。きっと作って見せる。だから、結婚してください」

 今日まで深夜こっそりと練習してきた甲斐があったせいなのか、なにか色々なことを無視していきなりの本題を噛まずにはっきりとした口調でティークは言った。
 言った後に次第に赤くなる顔に気づいたのかティークは視線を落とす。
 その時のスラル姫の反応を見たとき、私は彼女の心境を悟った。
 
「……サ……ア」

 誰にも聞こえないような小さな声で、眉を落として彼女は誰かの名前を呼んだ。
 スラル姫にも想い人は居たのだろう。それは確実にティークでは無く別の誰かで、でも私が言える立場でもなくティークが顔を上げる頃には元の無表情に戻っていた。
 
「ティーク、あなたと…結婚…します」

 スラル姫が噛み出すように一言一言言葉を紡ぎ、紡ぎ終わった後ティークの表情は今までに見たことの無い歓喜の表情をしていた。
 緊張していたティークにスラル姫の声からわかる心境など分かるはずもなくその日の面談はそれだけで終わった。
 長男であるが故にティーク家に猛反対を受けたが、スラル姫の父・国王とティーク自身たっての希望でティークはスラル姫と婿養子として結ばれることになった。
 
「夢じゃなよな!? な!?」

「夢だと思った時は頬を抓ると分かりますよ」

「いだだだ! もう抓ってるから! 痛いから止めてくれ!」

「……もう寝てくださいね。明日も国王と謁見するんですから」

「そうだな、じゃあもう寝るよ。おやすみ、姉さん」

「おやすみなさい」

 側近としてティークの護衛を務める私は部屋から出て扉のすぐ近くの壁へ背を預ける。
 男装の女性は相当腕が立つなとか、スラル姫のことを考えているとふと目の端に何かが写った。

427:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:43:14 U0IjNHUH
「あれは…」

 窓の向こうに見えたそれは月夜に照らされて真白に光るカーテンの束だった。
 いくつも紡ぎあわされてロープのように地面へと落ちたそれを伝って降りていくのは、スラル姫だった。
 そんなことをしてどこへ行くのだろう。そんなの簡単だ。想い人の所へ決まっている。
 
「若…すいません」

 そう言い残して私はスラル姫の元へと向かった。
 ばれない様に建物を影にしてスラル姫を尾行し、着いた先は城下町にある一つの宿だった。
 ちょうど宿の窓全てが見える向いの宿の主人に金を握らせてその場を観測する。
 運よく開いていた窓の中にスラル姫を見つける。
 泣いていた。一人の男に抱きつき泣いていた。男は姫が泣きやむまで抱きしめると、淡くキスをして姫をその場から追い出した。
 その後トボトボと歩いて帰る姫を尾行して自分も城へと戻った。
 

 それから十日後、盛大にティークとスラル姫の結婚式が行われた。
 
「君を幸せには出来ないかもしれない。でも、君を絶対に不幸にはさせない」

 式を締めるキスの時に姫の無表情の中に何かを見たティークが弱気になっていった言葉だ。
 家とのイザコザも解消して、先代から国王の仕事について詳しく聞いていたティークがその報告を受けたのは結婚式から僅か十日のことだった。
 
「スラル姫が失踪しました」

 一人の家臣が言った言葉の大きさにティークは受け止めきれず聞き返した。そして同じ答えが返ってきた。
 
「自分に不満があったんだ」

 言葉を掛けた私にティークは言った。
 
「――きっと帰って来てくれる。あの結婚式に言った言葉は男らしくなかったんだ。今度はスラルを幸せにする努力をしてみせる」

 まるで取り憑かれたように執務に没頭するティークに心配して再度声をかけたが、目の下にクマを溜めた笑顔でそう言われた。
 そして心身共にティークが衰弱したのを見計らったようにあの男装の女が動き始めた。
 
「王、少しお休みになられた方がいい」

「いや、しかし…」

「適度な睡眠を取らなければ健康を害します。謁見もそのようなお顔では民にいらぬ誤解を招いてしまう」

428:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:44:02 U0IjNHUH
「スラルのことは民には知られていない。しかもまだ仕事は山ほど残っている」

「…貴方がどれだけ仕事を前倒しでしているか私が知らないとでも思っているのですか。
  スケジュールを調節すれば数回の謁見を除いて一か月は仕事をしなくていいと聞きましたよ」
  
「…いいじゃないか、仕事を早く終わらせるのに越したことはない」

「強情ですね…」

「うわっ!? お、降ろせホーネット!?」

「無理矢理ですが寝室に運ばさせていただきます」
 
 私が見ている目の前で、遠征から帰ってきたホーネットと呼ばれた男装の女性はティークを抱き上げた。
 この男女の名前は本当に今知った。知る機会がなければ知る意味もない上に知りたくもなかった。
 
「ホーネット様。王は私が寝室に連れて行きますので、王自身も嫌がっていることですし」

「姉さ…ゼンメイは俺の側近のメイドだ。俺のことは彼女が一番よく知っている。だ、だから降ろしてくれっ!」」

「……そうですか。でも抱き上げついでに寝室に運んでしまいます。私が去った後このメイドは情で動いて貴方の身勝手を許してしまうかもしれないですし」

「なっ!? 私はそんなことっ」

「なら、なぜ王はこんなに衰弱しているのだろうな? お前がしっかりしていればここまでならなかったはずだ」

 反論できなかった。ホーネットが言ってたことは八割がた当たっていたし、現にティークが弱っているのは体調管理が出来なかった私のせいだ。
 ホーネットの見下すような言葉に耐えて私はホーネットとティークの後ろをついて歩くことにした。
 
「…屈辱だ」

 逆お姫様抱っこで廊下を渡っていれば当然多数のメイドや臣下、客人にまで見られることになりティークは真赤に赤面する。
 
「罰です。今度このようなことがあれば再度この罰を受けることになりますよ」

「うぅ…」

 さらに赤みが増す屈辱の表情に私は悪いと思いながらもそれにときめいてしまう。あぁ、こんなティークもありだな、と。
 王の寝室に着くとホーネットはティークの着替えや寝るまでの世話、私の仕事を全て奪いティークをベッドに横にさせた。
 
「もう嫌だ…死にたい…」

429:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:44:49 U0IjNHUH
「王は恥ずかしがり屋だ」

「誰の性だと思っているんだ」

「さて…誰でしょうか。私には皆目見当もつきません」

「もういい! 寝るぞ! 寝てやる。爆睡してやる!」

「ははは、お休みなさい。明日は執務室は封鎖しておきますのでそれでは…」

「んなっ!? 王が怠け者になってもいいのか!」

「貴方なら大丈夫ですよ。あ、それと…」

「な、なん――」

<チュ…>

 不意をついてホーネットがティークにキスをした。触れるか触れない程度のものだったが真直でそれを見た私には耐えられるものではなかった。
 
「ホーネット様っ!!」

「よく眠れる御まじないです。それでは改めてお休みなさい」

 ホーネットが背を向けた瞬間、ティークには見えないように私に向けてホーネットは見下すような目つきをして出て行った。
 ティークは唇に指を触れて呆然としている。
 
「若…お気になさらず、ただのお戯れですよ」

「そう…だな、そうだよな、うん。…よし! 姉さん執務室から書類を持ってきてくれ、ここで仕事するぞ」

「いいえ、もうせっかくですから寝てください」

「姉さんだけは俺の味方だと思っていたのに…」

 ティークの表情に思わず揺らいでしまうがここで押し負ければホーネットに何か言われてしまう。
 
「駄目です。寝てください」

「…わかったよ」

430:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:45:29 U0IjNHUH
「………」

「本当に寝るから無言で隣に佇まないでくれ!」

 ティークに背を押されて部屋を追い出される。そして部屋の前でまつこと数分、扉の隙間から洩れる光が消える。
 しばらくご無沙汰だった寝室前での護衛のため私はそのまま壁に背中を預けた。
 話は若干変わるがティークは姫が失踪してからあまり寝たがらなくなった。
 それには訳がある。時計が無いのでわからないが、ティークが寝てから二時間ぐらいが立とうとしていた時、それは起こった。
 
「ゼンメイ様、ここは私達が見張りますからゼンメイ様もお休みになられては…」

 扉の両隣に控えていた兵士が沈黙に耐えきれず心配して私に話しかけてくる。
 
「これが私の仕事の内でもありますし、気持ちだけ受け取っておきます」

「そうですか、ではせめてそこの椅子に座って頂けないでしょうか。失言ですがその…気が逸れますので」

「…わかりました」

 兵士の勧めを受けて、廊下の装飾にと置かれている椅子に私は腰を落ち着かせた。
 兵士が全く頼りにならないというわけではないが、やはり自分もやっていたほうが安心感が増す。
 そしてまた夜の静けさに加えて物音一つ無い沈黙、しかしすぐにそれはティークの絶叫によって打ち破られた。
 
「ああああああああぁぁぁぁぁああああぁあぁぁああぁあぁっあああぁ!!!!!!」

 耳を劈くティークの絶叫に兵士達は耳を塞ぐ。
 これが初めてでは無いわけだがこの兵士達は初めてだったのだろう。慌てて部屋に入ろうとする兵士を静止して、すぐに私は部屋の中に入りティークのの様子を確認した。
 
「××××××××××××××××××××××××!!!」

 切り裂くような鋭利な絶叫、部屋の輪郭をも歪ませれそうなほどの既に言語化できない声が部屋中に響き渡る。
 その声の震源には目に混濁を浮かべて顔面を両手で抑えるティークが居た。
 
「若…!」

 ティークのベッドに寄り乗り私はティークを抱きしめた。
 反応して狂乱的に暴れたティークだったが、しばらくして探るように私の背中に手をまわす。
 
「痛っ…!」

 背中にティークの爪が突き刺さるほど力強く抱きしめられる。

431:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:46:17 U0IjNHUH
「大丈夫…大丈夫だから…」

 子供をあやす様に背中を擦りながら何度も何度もティークの耳元で囁く。
 
「ス、ラル…」

 枯れてガラガラになった声でティークが呟く。
 
「スラルは…俺のこと、ぎらいなのか…?」

「そんなことないですよ」

「な、ら…なんで…いなぐ…なっ、たんだ」

「……」

 言葉に詰まる。真実を知っている私はどう言ったものかと考える。

「…ごめん。もう大丈夫…だから」

 最善な答えが浮かばない内にティークが離れる。
 目は血走り、涙と鼻水がとめどなくながれるそれは王の威厳などあったものではなかった。
 
「水もってきましょうか?」

「…頼む」

 姫の失踪から何度もこのティークの症状は起こっていた。
 お抱えの医者は姫が戻ってくれば止むといったが、そんなことがすぐできれば苦労はしない。
 ティーク自身は夢にスラル姫が出てきて、姫の身に散々なことが起きて自分の元から去っていくのを見るといっていた。あながち嘘でもない。
 
「王…大丈夫ですか」

 騒ぎを聞きつけてホーネットがやってきた。
 
「このことを知っていれば無理に言わなかったのに…、私はなんて軽率なことを」

「ホーネットのせいじゃない。言わなかった自分も悪かったし、心配してくれたホーネットの気持ちは素直に嬉しい」

「王…」

432:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:46:59 U0IjNHUH
「発作は一回だけだから、もう一回寝たら普通に眠れる」

「…それでは私が隣ついておきます」

「いいよ別に、ゼンメイも居るし」

「させてください。王が許しても私が自身を許せない」

「う…わかったよ。好きにしてくれ」

「はい…!」

 蝋燭一本の光を残してティークの寝室には私とホーネットとティークが居た。
 さきの発作の疲れですぐに眠りに落ちたティークの手を握り続けるホーネットに、私は言い知れぬ違和感を感じていた。
 その違和感の正体はすぐにわかった。
 
 ティークの発作のことはホーネットも知っていたんじゃないのか。
 
 いくら遠征をしていたからといって自国の王のことだ。耳に入ってもおかしくはない。
 聞けばホーネットはスラル姫が信頼する側近中の側近だったという。ならスラル姫の想い人のことも失踪のことも知っているはずだ。
 どうやって姫は城の外はまだしも街の外へ出れたのか、という疑問もホーネットの協力があれば可能ではない。
 どんどんとカンではあるもののホーネットへの疑惑が増していく。
 
「…そう睨むな、怖いぞ」

 ホーネットが口を開く。
 
「睨んでなんかいません」

「はは、でも目が怖いのはたしかだ」

「…ホーネット様はもしかして…」

 このやりとりで私は確信した。もちろんカンだが、証拠もあったものじゃないが間違いなくコイツが姫様を逃がしたんだ。
 そして次のホーネットの言葉で確信は確固たるものとなった。
 
「もしかしてスラル姫のことを何かしっているんじゃないのか、か?」

「……」

「あたりだよ。お前が今考えていることは全部正解」

433:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:47:37 U0IjNHUH
「やっぱり。…でも、まだ腑に落ちない点があります」

「その行為に至った動機、だろ。簡単さ、王のことが好きでスラルのこと嫌いだからだ。
  子供の頃に会ったのはなにも王とスラルだけじゃない。王は覚えてないだろうが私も王と会ったことがあるのさ。
   その時の私の家は荒れててね、やっかいもの扱いされて落ち込んでいた私を励ましてくれたのが王だ。
 その王をなんの努力もせずに惚れさせてあまつさえ旅人の男に恋をしたスラルには心底ウンザリさせられたよ」
 
 引出しを開けて出てきた一枚の写真をクシャリと握りしめてホーネットは私に投げてきた。
 グシャグシャになているもののそれは間違いなくスラル姫が写った写真であり、私はホーネットに得体の知れない気持ち悪さを覚えた。
 
「まぁスラルも最後に私のために役立ってくれたからよしとするか」

「姫の場所は」

「さあね、今頃どこぞで旅人と宜しくやってるんじゃないかな」

「最低ですね」

「気持ちを隠したまま傍に居続けるお前よりはマシだよ。
  いちメイドのお前もこれ以上王には近づかない方がいいよ。死ぬだけだから」

「私がそんな大人しく見えますか?」

「見えるね。お前は王が…ティークが傷つくのを見たがらない」

 たしかに、ティークにこの件を言う気は無かった。
 姫が初めからティークに興味がなかったこと、そしてほかの男を好きになっていたこと、それを今のティークにとってどれだけ重大なことか重々承知していた。

434:名無しさん@ピンキー
07/11/27 16:49:06 U0IjNHUH
 
  
  *  *  *
 
 そして姫の失踪から何も進展しないまま二年の時が過ぎようとしていた頃、姫を見つけることに成功したが既に手遅れになっていた。
 ホーネットの手で私も姫の捜索隊へと編入させられ、目撃した部下とどうするか話をしてる最中に偶然通りがかったティークに聞かれた。
 部下は悪くなかった、王の命令だ。私がなにがあっても言うなと言われたこと以外全てを王に話した。
 
「あぁよかった…無事なんだな、よかった…! よかった…!」

 私の言葉など聞く耳持たず、すぐにティークと私、そしてホーネットで会いに行くことになった。
 そして知られなくなかったことをティークはは知ってしまった。
 
「……」

 まずは遠くから見るだけということで姫が隠れていた街の外から眺めることとになり、一つの民家から出てきた姫を見てティークは絶句した。
 いつかの時に見たあの男と共に出てきた姫は両手の赤子を抱き、ティークに見せたことすらない笑顔で男と話をしていたからだ。
 
 その光景からティークは全てを悟ってしまい。壊れてしまった。
 
「夜までに軍を用意しろ。この町全てを焼き払う」

 耳疑う言葉に私もホーネットも顔を見合わせた。
 王の言葉は絶対だ。ホーネットは返事一つで馬にまたがりすぐに城へと戻る。
 
「若…」

「あのスラルと男とあの子供は捕えろ。あとは全て殺せ」


というプロットを思いついた。
誰かこれを元に描いてくれるのを祈る。

435:名無しさん@ピンキー
07/11/27 17:15:18 Z08sTe0J
ここまで書いたなら時分で書きなよwwwwww

436:名無しさん@ピンキー
07/11/27 17:16:18 Cs6fdnVE
うまいこと嫉妬が絡み合ってるな。
話のつくりがすごく面白い。

437:名無しさん@ピンキー
07/11/27 17:22:33 GmiC8mON
良いと思うけど、ここまで形になってるなら
他の人が書くのは難しいのでは?

とは言えGJ。

438:お前名無しだろ
07/11/27 17:25:49 q7YDy9Ey
>>1-1000
オリジナル地球( ̄ー ̄)ニヤリ
    ↓
URLリンク(image.space.rakuten.co.jp)

439:名無しさん@ピンキー
07/11/27 18:46:04 ql9Y7/5N
>>434
おまwwwwwwww

440:名無しさん@ピンキー
07/11/27 19:09:46 htXCVRVo
ぶん投げやがったWWWWW

441:名無しさん@ピンキー
07/11/27 19:24:12 qEvBShG/
投げっぱなしジャーマンとか通り越してハンマー投げレベルだなww

442:名無しさん@ピンキー
07/11/27 19:51:16 gv++/4Gu
GJしようと思ってたのに最後の一行でぶっ飛んだw

443:名無しさん@ピンキー
07/11/27 20:54:12 askTHkOt
これはwwwwww
ワロタwwwwwwwwww


444:名無しさん@ピンキー
07/11/27 21:15:06 U0IjNHUH
自分書く派じゃなくて見る派だから
最後まで書いてもいいんだけど後半絶対だれるから書けないんだよ。

コンセプトはなんか姫様がそこらの奴らと駆け落ちとかよくあるやつの逆転。
姫をホントに愛してるのに報われなかった王子側の話。

445:名無しさん@ピンキー
07/11/27 21:20:49 GmiC8mON
大抵、書きたいシーンを書き終わったらモチベーションが無くなっちゃうからね。
SSを書く能力とは別に、モチベーションを維持し続けて終わらせれる能力なんだなと思う。
作品をちゃんと完結出来る能力を持った人は凄いよ。

446:名無しさん@ピンキー
07/11/27 21:21:32 InowkLwg
匙を投げるどころか器そのものが剛速球で飛んできて顔面にクリーンヒットした気分だ(いい意味で)

447:名無しさん@ピンキー
07/11/27 21:24:06 VyLR6Dyt
プ  ロ  ッ  ト  か  よ  !!
「というエロビデオはありませんか」と聞いたら店主が帰れと言ったコピペ思い出したぞ。

448:名無しさん@ピンキー
07/11/27 21:30:29 0gwaLvvK
>>445
ンむ。完結している作品って少ないもんねぇ。
しかしこの流れはいっそ潔いww

449: ◆YH6IINt2zM
07/11/27 21:32:45 9PqS4/kv
すみません、ちょっと投下しまよ……。

450:明暗六角形 その1 ◆YH6IINt2zM
07/11/27 21:33:55 9PqS4/kv

from:兄
Sub :なし
-------
今日帰りに神社
寄ってくけど、
お前も行くか?


そう表示されたメールを見て、受け取り主である弟、御影(みかげ)は、本文に
『行く』とだけ付け加え、返信した。
「(今日もか……)」
携帯電話を閉じ、制服のポケットにしまい込んだ。机に両肘を突き、ぼんやりと外を
眺め始める。

御影の兄、陽樹(ようき)は、大学受験を控えている。

志望する大学に合格することを目指し、日夜勉強に励んでいるのである。
その志望校というのは、本来陽樹の学力ではあまりに不相応だと言わざるを得ない、
屈指のレベルを誇る大学であった。
何故陽樹がそんな大学を目指しているのか。
理由は、一人の女生徒に関わっている。

倉林瑛子――陽樹の恋人であり、彼女もまた先の「屈指のレベルの大学」の受験
を予定している。
こちらは陽樹と異なり、抜群の成績を取っている。合格の見込みもほぼ間違いないと
周りから言われている才女であった。
そんな瑛子の恋人として、同じ大学へ進学したいという気持ちを抱き、陽樹は、普段は
しないようなことでも、目標達成のための努力として、出し惜しみせず行っている。
神社へ寄り、参拝するのもその一つである。
元々、陽樹は神仏に祈る習慣などなかった。しかし現在、陽樹はワラをも掴み取る思い
で、たびたび神社に足を運び、手を合わせている。
弟の御影から見て、全く兄らしくない行為だと思いつつも、合格のためなら何でも
やってやるという気概は実に兄らしいと、妙に納得していた。
兄のメールを返してからほんの一分程度で、御影の携帯が震えた。
兄からの返信は、『じゃ、放課後神社前でな』という文章のメール。
御影は脳内スケジュール表に神社への寄り道を書き込んでから、机に伏せた。
午後の授業が始まるまでこうしていようと。


451:明暗六角形 その1 ◆YH6IINt2zM
07/11/27 21:34:26 9PqS4/kv
五限を迎える直前の御影に、ごく些細な出来事が起きた。

「あれ? 忘れたかなあ」
御影の隣の席で鞄の中を念入りに探る少女、羽鳥雛(はとりひな)。
どれだけ探しても、次の授業に必要な、英語の教科書がない。
「あちゃ~」
雛は頭を左右に振った。左右に二つ束ねられた柳のような髪もつられて揺れる。
英語の授業では、前回の復習と称して、二、三人の生徒に一人ずつちょっとした問題が
出る。
きちんと答えられるかどうか即ち、復習しているかどうかが成績に影響するのは
言うまでもない。
大体は、前回進めた教科書の範囲を、授業の直前にざっと見直しておけば答えられる。
本日その復習には雛も当てられることになっているので、開始前に確認しておこうと
思ったらその教科書がない、というちょっとしたピンチを迎えていた。
雛の落胆の声は御影の耳にも入った。伏せた上体を起こし、隣の席で頭を振っている雛
を見て、御影は状況を認識した。
自分の教科書を手に取り、雛の眼前に突き出し、
「まあ、使えよ」
と言を添えた。

「およ?」
雛はきょとんとした顔つきをしたが、すぐに目を希望に輝かせた。
「おおおおぉっそれは!!」
声を上げたと同時に教科書を取り、即座に開く。
大袈裟なリアクションだと、御影は苦笑した。
「いや~助かるよ。終わったら返すね」
繰り返し頭を下げる雛に向かって、御影はいやいや、と手を振った。
教科書の貸し借りなど、クラス内では珍しいことではない。雛のように、英語の
復習問題担当なのに教科書を忘れた、というのもよくある話であった。
特に友達ではない雛に貸したのは御影にとっては初めてだったが、そのことになんら
気まずさも感じていない。
実際は、寝て起きたばかりで相手がどうとか考える前に、手と口が動いただけなのだが。
「はいさんきゅー」
無事に復習問題をこなした雛は、笑みを浮かべて教科書を御影に返した。
口元が、だらしないくらいに緩んでいた。


452:明暗六角形 その1 ◆YH6IINt2zM
07/11/27 21:35:12 9PqS4/kv
「んっ……あ~っ。終わりか」
三年生のクラスの教室内、その最前列の席で伸びをするのは遠山陽樹(とおやまようき)
今日最後の授業が終了してからおよそ三十分間、まとめとして、復習を兼ねたノートの
一部書き直しの作業などをしていた。
「お疲れ様」
陽樹の側に寄った倉林瑛子が、肩を軽く叩いた。
瑛子は自分のクラスの授業が終わった後、陽樹のクラスの教室前で待ったいたのだった。
「ああ、お疲れい」
「図書館に寄ってく?」
「いや、今日は神社行くわ」
陽樹は帰り支度をしながら返した。陽樹の放課後は、瑛子と一緒に図書館で勉強するか、
今日のように神社に行くかのどちらかであった。
「熱心ね」
瑛子は笑って見せるものの、内心は穏やかではなかった。
合理的に考えれば、神社に行ってお祈りなどしてる暇があったら、その分勉強したほうが
より合格に近づけるに決まっている。
ましてや陽樹は神仏を信仰する性格ではなかったはずなのに、今では合格のためと
必死に祈っている。
陽樹は、合格するまで休日のデートもプライベートの電話も禁止すると自戒していた。
図書館などで一緒に勉強することは多いが、それはあくまでただの勉強であり、二人の
仲を深めるものになっていない。
たまには息抜きにでもと色々持ちかけても、陽樹は合格するまで我慢すると言って
聞かない。

瑛子は、ここまでガチガチで息つく時も安らぐ間もなくては、どこかで軋轢が生じて
しまうのではないかと恐れていた。
軋轢とは―そう、急に神社などに行くようになったこと。
瑛子は過去に一度、陽樹と共に神社を訪れたことがあった。
訪れたはいいものの、敷地内にある樹齢数百年とか言われる神木にも、霊験あらたか
らしい祠にも、ほとんど興味が湧かなかった。
ただ年老いてくたびれた木と、古くて汚れた百葉箱くらいにしか思えなかった。

しかし一つだけ、瑛子にとって悪い意味で印象的な存在がいた。
陽樹と瑛子を出迎えた巫女。
その人物は、慎ましく、儚げで、大和撫子を絵に描いたような女性。そして陽樹に
とっては、勉強以外のところで接している女性。
最近神社によく足を運ぶのは、もしや……。
……という所まで考えて、そんなわけがない、と振り払う。でもやっぱり……。
思考が何巡もしていく。
「(私が先に音を上げてどうするのよ……)」
瑛子はずれてもいない眼鏡を掛け直した。

「それじゃあ、一人で行くわね」
「ああ」
「神社の後もちゃんと勉強するのよ」
「わかってるって」
陽樹を残して教室を出た瑛子は、足早に下り階段へと向かった。
遅れて教室を出ようとした時、陽樹の携帯が鳴る。
開いて見ると、弟からメールが来ていた。
『遅い。寒い。まだか』
苛立ちの程が窺える催促であった。
「(やっべ早く行かないと)」
陽樹もまた、勢いよく校門を飛び出し、神社まで駆けて行った。


(その2に続く)

453:明暗六角形 その1 ◆YH6IINt2zM
07/11/27 21:36:15 9PqS4/kv
お久しぶりです。またこのスレのお世話になります。
どうかよろしく。

454:名無しさん@ピンキー
07/11/27 21:57:00 hM8hQ68V
>>453
リボンの剣士の作者様ですか
どんな修羅場になるかwktkして待ってます

455:名無しさん@ピンキー
07/11/27 22:19:58 /Y9YaCcL
GJ!

456:名無しさん@ピンキー
07/11/27 22:33:38 GmiC8mON
>>453
GJ!

このスレで巫女ものは有りそうで無かったような気がするので期待大です。
まださわり程度なので分からないですけど
何やら期待できそうな感じがビンビンするんで楽しみにしています。

457:名無しさん@ピンキー
07/11/27 22:47:29 U0IjNHUH
GJ! 期待の作家ktkr
俺は見る派だとつくづく実感した

458:名無しさん@ピンキー
07/11/27 23:14:20 4ZpDn0k2
ラノベの吸血鬼のおしごとって作品はここでは既出?

459:名無しさん@ピンキー
07/11/27 23:21:34 ZP9OG1cu
やめて!トラウマやめて!
まるでブタのようだな、ははははは

460:名無しさん@ピンキー
07/11/28 00:02:55 nFk8+Ccf
筆者がドSのやつか

461:名無しさん@ピンキー
07/11/28 00:15:36 mmtVM1+6
投下増えてきて良きかな良きかな

462:名無しさん@ピンキー
07/11/28 00:23:35 5Ox/lqvc
>>453
GJ!
だけど、リボンの剣士のようなトラウマを植え付けるのは勘弁してくれなw

463:名無しさん@ピンキー
07/11/28 00:29:15 s828ZPh0
なんかいい流れだなwwww

464:名無しさん@ピンキー
07/11/28 00:30:00 asgiQY3K
レイプされて寝取られたんだったけ?

465:名無しさん@ピンキー
07/11/28 00:56:39 CIZhKuf0
寝とられは、されてないでしょ
それにそんな鬱も面白ければいいや

466:名無しさん@ピンキー
07/11/28 01:50:14 UT709xBq
あー思い出した。
確かにあれはトラウマになってこないだ夢に出てきたぞ。
仮にやるなら別ルートで寝取られないルートやって、
なおかつ、やった奴は拷問スレのSSのごとく
全員徹底的にミンチになるまで皆殺しにしないと収まりがつかん。

467:名無しさん@ピンキー
07/11/28 02:02:33 0fm45U6/
>>466
確かに処女の貴重さを痛感させられた作品だったな。
避難所に過去のSSを語るスレがあるから一緒に行かない?

468:名無しさん@ピンキー
07/11/28 02:12:38 UT709xBq
>>467
悪寒と殺意で眠れなくなったから、まあいいけどさ。

469:名無しさん@ピンキー
07/11/28 05:21:38 sZ+XB4XU
一万年とニ千年前からの続きマダー?

470:名無しさん@ピンキー
07/11/28 06:00:37 /HVvYZZX
一万年の話題は自重

471:名無しさん@ピンキー
07/11/28 09:06:38 VQd7joht
つーかお前ら石橋を叩いて渡りすぎてるだろwwww
そんな鬱展開なんてそうそうあるわけないさ! ハッハハッ! ハハッハハ……ハハ、ありませんよね?

472:名無しさん@ピンキー
07/11/28 10:37:24 v851mF8K
現実は残酷なのさ・・・

473:名無しさん@ピンキー
07/11/28 13:21:38 s828ZPh0
俺はなんか10年くらい前に劇場版エヴァをみた時と同じような気持ちに陥った

474:名無しさん@ピンキー
07/11/28 13:58:29 W81Hiy16
何か耐性無い奴多いんだな

475:名無しさん@ピンキー
07/11/28 14:48:11 QjtXn+Gr
「鬱展開いやぁぁ!」なんて口先だけで、本心では鬱展開を欲しがってるんだよ!


476:名無しさん@ピンキー
07/11/28 15:13:13 edWuJzEc
大人になるってかなしい事なの・・・。

477:名無しさん@ピンキー
07/11/28 15:14:10 tsXF/LFF
たしかにむけたらいたい

478:名無しさん@ピンキー
07/11/28 15:16:24 qjzQ59EJ
ここにいるのは痛い大人だけどなHAHAHA

479:名無しさん@ピンキー
07/11/28 16:20:49 Nt49671G
何うまくまとめたつも(ry

480:名無しさん@ピンキー
07/11/28 16:23:56 UG+7C7DL
>>444
稚拙で良いなら書こうか?
内容は期待出来ない超素人だが

481:名無しさん@ピンキー
07/11/28 16:47:56 vhRdgLp/
書けよ
枯れ木も山の賑わいっていうしな

482:名無しさん@ピンキー
07/11/28 17:13:58 hIisppMj
tesu

483:蒼天の夢 07 後編 ◆ozOtJW9BFA
07/11/28 17:27:41 5sQgXovN
皆さんこんばんは。
ちょっと前に投稿させて頂いた蒼天の夢の続編です。
前回の投稿が一話の前編だったので読みにくいかと存じます。
申し訳ありません。

484:蒼天の夢 07 後編 ◆ozOtJW9BFA
07/11/28 17:28:26 5sQgXovN
 エリシアさんとミリアちゃんに引っ張られ、俺たちは庭園の中央までやって来た。
 そこでは既に大勢の人々が手や腕をつなぎながら踊っていた。
 音楽を奏でるのは市長が呼んだ大楽団。あらゆる楽器が用意されており、どんな唄でも演奏してくれそうだ。
 今流れているのは祭りでよくある踊曲だ。
 太鼓や笛など、シンプルな楽器が素早くリズムを刻んでゆく。
 踊っているのはほとんどが平民だが、周りの貴族たちもリズムに合わせて手を叩くほどノリの良い曲だ。
 料理もいいが宴といえばやっぱり踊りである。これは平民も貴族も変わらない。
 俺が踊りに見とれている間、エリシアさんとミリアちゃんは何か視線で語り合っていた。
 いつの間にそんなに仲良くなったのかと感心いると―
「ジースさん、わたしと踊りましょう!」
 いきなり踊りに誘われた。
「もう少し様子見ないか?」
 別に踊りたくない訳ではないが食後からすぐに、というのも何だか気が引けた。
「いいから、いいから」
 ミリアちゃんはそんな俺を有無言わせず、強引に踊りの輪の中に引きずり込んだ。
 民踊の渦に加わると、中は炎のような真っ赤な熱気で満ち溢れていた。
 とてもではないが今さら脱出なんてできない。
 だがすぐに逃げる必要なんてないと分かる。
 民踊の動きは大味なものの躍動感があり、純粋な楽しさがフツフツと湧き上がってくるのだ。
 ミリアちゃんと腕を組ながら回って、とまって、また回る。単純な動作の繰り返しだが余計なことは何も考えず、歓喜に身をゆだねられる。
 子供の頃の無邪気さが戻ってきそうだ。
 気づく頃には曲が終わり、もう一回踊りたい気分になる。
 踊曲が終わると平民の招待客はそそくさと踊り場から撤退する。
 入れ替わるように貴族の紳士淑女たちがゆったりとした足取りで中央に進み出る。
 俺もミリアちゃんと一緒に踊り場の外周まで戻ってくる。
 するとそこにはエリシアさんが腕全体で曲線を描くように手をさし出しながら待っていた。
「教えたことは覚えてる?」
 俺は思わず微笑みながらエリシアさんの手の甲に口づけをする。
「もちろん」
 エリシアさんから教わったのは何も読み書きだけではない。
 そして柔らかい手をとり、再び踊り場に舞い戻る。


485:蒼天の夢 07 後編 ◆ozOtJW9BFA
07/11/28 17:29:02 5sQgXovN
 楽団はうって変わって、アルス王国の舞踏曲を弾きはじめる。
 ヴァイオリンやリュートなどの弦楽器で導かれ、ゆっくりとはじまる曲だ。
 舞踏曲の踊りは基本的に男女のペアで行われる。
 そして祭りの曲とは違い全てのステップは正確にして優雅。パートナーの瞳を覗き込みながら、身体の動きを制御する繊細さが必要だ。
 アルス王国の舞踏曲は曲が進むにつれて参加する楽器が増えてくる。ゆったりとした雰囲気が壮大さに変わる。
 それに応じて踊る男女の動きも鋭さを増し、一歩一歩が強調される。
 エリシアさんの動きに合わせ、間合いを計る剣士のように的確に姿勢を変える。
 舞踏曲の最後は全楽器がそれぞれの音色を一気に奏で、そして一同揃って静止する。
 残るのは石像のようにポーズをとって固まるペアと熱情の余韻のみ。
 曲が終わり、閑静から開放されるとドッと疲れがきた。
 楽しかったが休まず二回も踊ったため、少し休憩が必要だ。
 エリシアさんをエスコートしながら踊り場を去ろうとすると、背後で再び祭曲がはじまる。
「凄いスタミナだな。あの人たち……」
 休まず演奏を続ける楽団員。踊り場を取り戻そうとするかのように一斉に飛び出す平民の招待客。
 疲れを知らないのだろうか。
「ジースさん!もう一回踊りましょう!」
 すると彼らに混じってミリアちゃんがエリシさんから俺の腕を引っ手繰る。
「ちょっと休ま―」
 返事する間もなく、俺は再び踊りの輪の中に連行されていった。

 そして六曲目が終わると、俺はプライドを投げ捨て片膝をつきながら懇願した。
「もう……勘弁して。あ、足の感覚がもうない……」
 俺は休む暇も与えられず二人にかわるがわるダンスに誘われた。
 宴の席で女性に誘われたのだから断りたくなかったが、流石に六曲も連続で踊らされると話は別だ。
「え~!わたしともう一回……」
「お願い。本当にもう体力が……」
「わ、分かりました」
 ミリアちゃんとエリシアさんはまだまだ踊り足りない様子だったがなんとか許してもらえた。
 それから二人は何か飲み物をとってくると言い、人ごみの中へと消えていった。
 俺は適当なベンチに腰掛け休むことにした。


486:蒼天の夢 07 後編 ◆ozOtJW9BFA
07/11/28 17:29:49 5sQgXovN
「ふぅ~……」
 貴族主催のパーティーでこれほど疲れるとは思っていなかった。
 もっとも、ここまで楽しいとも思っていなかった。
 今のところ予想していた堅苦しい宴とは正反対である。
 しばらくしてボーっと視線を泳がせていると、一人のきらびやかなドレスを身に纏った女性が目に入った。
 薔薇を思わせる真っ赤なドレスだ。
 恐らくは貴族のご令嬢だろう。周りの取り巻きを見ただけでも分かる。
 召使いや護衛の騎士。家来だけでも4,5人はいる。その他にもダンスに誘おうとしている貴族のお坊ちゃまや社交辞令に来ている偉そうな爺さんたち。
 彼女の行くところに常に人だかりができている。
 ご苦労なことだと顔を他所へ向けようと思った時、令嬢と一瞬だけ目が合った。
「……あ」
 よく見ると俺は彼女のことを知っている。
 刃物を思わせる鋭い目つき。派手な服装に負けない気品のある金髪。
 いつもとは違う女らしい服装で気づかなかったが、あれはティオーナである。
 不思議なのは彼女もスキッダーなのにドレス姿だということ。
 市長はスキッダー全員、貴族平民問わず革鎧を着てこいと言ってきた。それなのになぜ彼女だけあんな豪華な格好をしているのか。
 あるいはベイヴェルグ家の娘だから例外なのだろうか。
 ふと、ある推測が頭をよぎる。
 もしかしたらこのパーティー自体、市長がティオーナのために開いたものなのかもしれない。つまり“市民への感謝の気持ち“は建前で、本当の理由は彼女の優勝を祝うため。
 だとしたら彼女だけ正装していることや突然の宴にも納得がゆく。
 そんなことを考えていると、先日の口論を思い出した。
 ティオーナの態度は明らかに乱暴でおかしかった。同時に俺の対応もただの八つ当たりだった。
 彼女に非がまったくないとは思わない。
 だが男なら悪かったところは素直に謝っておくべきだろう。
 大体このままティオーナにビクビクしながら過ごすのも身体に悪い。
「よし」
 決心がつくとまだ感覚の薄い足に活を入れ、ティオーナの方へ歩いてゆく。
 しかし近づくにつれ、彼女と話せるかどうかさえ怪しくなってくる。
 彼女の周りには人の壁があり、中には明らかに俺がこの場にいることを快く思っていない人たちもいる。
 特に貴族のお坊ちゃまたちの視線が痛い。


487:蒼天の夢 07 後編 ◆ozOtJW9BFA
07/11/28 17:30:21 5sQgXovN
 さて、どうしたものかと困っていると幸運にもティオーナ本人が気づいてくれた。
「おまえは」
 威圧的な雰囲気は健在だが、口調は普段より柔らかだ。
「お久しぶりです」
「何用か?」
「少し話がありまして。すぐに終わります」
 言い終わった瞬間、ティオーナの取り巻きの目つきが変わる。平民の分際でお嬢様に何を、と言わんばかりだ。
「……いいだろう。来い」
 そう答えると俺に集まっていた目線は驚きをもってティオーナに返される。
 異様な光景に思わず笑い出しそうになるがなんとか堪える。
 対してティオーナは周りのことなどどこ吹く風。ドレスの裾を持ち上げ、さっさと歩き出した。
 護衛の騎士が付き従おうとするが彼女は鋭い眼光でそれを制す。
「お前はここで待っていろ」
「しかし……」
「いいな?」
「……ハッ」
 騎士は主人の命令に頭を垂れる。同時に俺に一睨みすることも忘れない。
 流石は公爵家の護衛の騎士。例えスキッダー相手でも警戒心を隠そうともしない。
 俺はティオーナを宴から少し離れた庭園の一角へとついていった。
 そして彼女は適当な木の下で止まり、振り返った。
「ようやく何か話す気になったのか?」
 闇に埋もれるのを拒むかのように輝く金髪に一瞬見とれてしまう。
「ぁ……いや、俺は先日の件で無礼を働いたことに謝りたいのです」
「なに?」
「その……あの時は負けてイライラしてました。大変申し訳ありませんでした!」
 俺は頭を下げ、なるべくハッキリした声で謝ろうとした。
「つまり、おまえの技の話を聞かせてくれる訳ではないのだな」
 彼女は額に手を当てながらため息をついた。
「え?あ、はい。ですから―」
「もういい。分かった」
 ティオーナは俺の言葉を遮ると両手を太ももの上で合わせ、改めるように言った。
「あの時は私も大人気なかった。すまなかったな」
 驚いた。貴族が平民に謝っている。
 てっきり俺が一方的に責められ、罵詈雑言が飛んでくるものと想像していた。


488:蒼天の夢 07 後編 ◆ozOtJW9BFA
07/11/28 17:31:47 5sQgXovN
 それとも単に俺がティオーナと貴族に対して偏った見方をしていただけなのだろうか。
 呆気にとられた俺をよそに彼女は続ける。
「しかし、本当に何も知らない、いや、喋る気がないのだな?」
「つまり……」
「おまえの技のこと。疾風のドノテのこと、だ」
 ようやく俺にも合点がいった。
 彼女が知りたがっていることを俺が話すと思ったからつき合ってくれたのか。
「疾風のドノテのことでしたら俺よりファンの方が詳しいはずです。技は先日言った通り御自分で見定め下さい」
「おまえまさか……いいだろう。明日からしっかりと見ておいてやろう」
 一瞬何か気づいたような表情を浮かべたが、すぐに不敵な笑みに変わる。
「それでおまえの名はなんという?」
「ジース・グリンです」
「ジースか。覚えておこう。私の名は分かるな?」
「ティオーナ様ですね」
 彼女がはじめてグレイ・クリフに来た日のことを思い出す。
 おおげさな自己紹介の仕方だとは思っていたが彼女の態度から見てやっぱりわざとだったらしい。
「うむ。用件はこれで全部か?」
「はい、お騒がせして申し訳ありませんでした」
「お互い様だ」
 ティオーナは来た時のようにドレスの裾を持ち上げ再び歩き出した。
「ではジースよ、パーティーに戻るとしよう」
「はい」
 短い会話だったが妙な満足感があった。
 刃物のような少女だと思っていたティオーナといつの間にかくだけた雰囲気で話せたのだ。
 もしかしたら彼女は案外普通の女の子なのかもしれない、という考えさえよぎった。
 派手だと思っていたドレス姿も可愛く見えてくる。
「あぁ、これか」
 俺はいつの間にかティオーナのドレスを見つめていたようだ。
 彼女はそれに気づきバツの悪そうな顔で言う。
「これはリックベン殿―市長殿―がどうしてもというのでな。ここについてから着替えさせられたのだ。悪く思わないでくれ。何も特別扱いされたい訳ではないのだ」
「いえ、そういうつもりではありません。ただ似合っているなと思っただけです」
「……おまえは作法や踊りの他に世辞もうまいのだな」


489:蒼天の夢 07 後編 ◆ozOtJW9BFA
07/11/28 17:32:25 5sQgXovN
 プイっとそっぽを向くティオーナ。
 珍しくしおらしい仕草を見て俺は吹き出しそうになった。
 パーティーの方へ戻ると律儀にもティオーナの取り巻きが同じ場所で待っていた。
 当然ながら全員、俺に対して険悪な顔を向けてきた。
 予想外だったのは彼らと共に、ミリアちゃんとエリシアさんも不機嫌な表情で飲み物片手に待っていたことだ。


490:蒼天の夢 07 後編 ◆ozOtJW9BFA
07/11/28 17:34:24 5sQgXovN
投下終了です。
これから連載をはじめた頃のペースに戻れればなと思っています。
あとこんな作品ながら待ち遠しいと言ってくれた方、本当にありがとうございます。

491:名無しさん@ピンキー
07/11/28 17:40:09 Ss4ZUeyA
EVAなぁ

やめて
火炎放射器二回も浴びせないで
悲鳴が消えてしまう

492:名無しさん@ピンキー
07/11/28 18:06:03 s828ZPh0
蒼天キタ━(゜∀゜)━!!キタ━(゜∀゜)━!!

493:名無しさん@ピンキー
07/11/28 18:21:01 2lKGIqXY
グッジョブ!
蒼天待ってたよ!

494:名無しさん@ピンキー
07/11/28 18:34:18 EcZloSW5
本人乙

495:名無しさん@ピンキー
07/11/28 18:43:51 pwl/2HJC
設定だけが先走りしてスレ違いな感じがする
もっと相応しい投下先があるんじゃね?

496:名無しさん@ピンキー
07/11/28 18:48:22 40cHzRJG
これから三つ巴の嫉妬が展開されるんだYO!
>>490 GJです

497:名無しさん@ピンキー
07/11/28 18:52:38 W81Hiy16
>>490
蒼天ktkr
次回の投下も楽しみに待ってます

498:名無しさん@ピンキー
07/11/28 19:01:00 ENaHNHxa
>>490
GJ!

499:名無しさん@ピンキー
07/11/28 19:32:07 cu5qF3NB
エロパロ板なのに全然エロくない
普通の小説家目指すのなら創作板でも逝って書けば

500:名無しさん@ピンキー
07/11/28 19:52:31 3VQN1kUY
修羅場と嫉妬は普通に興奮出来る。

501:名無しさん@ピンキー
07/11/28 19:53:07 hIisppMj

 町に火が灯る。私はそれを眺める。大きく強く、全てが灰に帰るほどの業火が覆う町を。
 まさに『阿鼻叫喚』という言葉は今このためにあるのだろう。
 訳のわからないまま焼け崩れた家に取り残された子供の叫び、目の前で我が子を失った母の嗚咽、運よく難を逃れた者達の先にはそれでも希望は無い。
 老若男女問わず助かった者は町を囲む兵士達捕えられてある場所へと連れて行かれる。
 
「お前達が匿っていた王女スラルとの関係は?」

 連れてこられた者にティークは第一にそう問いかける。
 
「それより孫が…! 孫がまだ町に…」

「…王女スラルとの関係は?」

 半狂乱な老婆の言葉を遮るようにティークは再度問いかける。
 
「…ス、スラル様の子供の出産に、た、立ち会いました」

 産婆だと名乗った老婆、それを確認するように後ろで捕えていた姫にティークは目をやる。
 
「もう…もうやめて…」

「メンゼイ、スラルが目を閉じなように瞼を抑えておいてくれ」

「……はい」

 姫の泣きじゃくる声に罪悪感とい輪で胸が締め付けられる。
 でもティークの言葉には従う。私は姫ではなくティークに仕えているからだ。
 
「お、王さ…――」

<ザンッ>

「ちっ…」

 ティークの方を振り向いてしまったために首へと振り下ろされた剣は老婆の顔を縦一門に切り裂いてしまう。
 金切り声のような耳障りな悲鳴が姫の口から飛び出す。
 
「次だ

502:名無しさん@ピンキー
07/11/28 19:53:48 hIisppMj
「……はっ」

 ホーネットが応える。 
 異常な光景だった。
 燃える町を背景に地面には別れた無数の人の胴と首、それを作り出しているのは目の前の血に塗れたティーク、兵士の誰もが吐き気を覚えた。私も例外では無い。
 そうして一分もしない内に次の者が連れてこられた。若い年ごろの娘だった。
 
「…王女スラルとの関係は?」

 すでに何度も繰り返された機械的な行為。
 姫との関係を明かすと同時に娘はスラルに向かって罵詈雑言の限りを尽くした。
 そして首が切り落とされた。
 全てが終わった時には夜が明けていた。
 
「どうだ? 素晴らしい光景だろう! お前達の行動が招いた結果だ…!!」

 山になった死体の前でティークは縛られた姫とその夫見下して言った。
 
「………」

 そのどちらも硬く口を閉ざしてティークの言葉には答えない。
 しばらくその様子を見つめた後、姫へと近づき思いっきりお腹を蹴り飛ばした。
 
「ぅ…あ…」

「王の前だぞ、答えろ」

「や、やめろ。スラルの腹には子供が…!!」

 やっと口を開いた男の言葉を聞き、ティークは無表情に男を蹴った。
 一切の手加減をせず、微塵の躊躇もなく狂うように男を蹴り続けた。
 
「サーナキア! …サーナキア!!」

 呪詛のように姫の言葉が繰り返しサーナキアという男の名前を枯れた叫ぶ。
 その言葉を聞くにつれてティークの憤怒の表情に涙を浮かばせてサーナキアを蹴り続ける。
 そしてそれはサーナキアの首の骨が折れる音で終わりを迎えた。
 
「先に使った軍は正規のではなく私直属の部下達なのでその者達から今回のこと洩れる心配は無いでしょう」

「……そうか。じゃあスラルのことを公表してくれ、あのサーナキアとか言う男に全ての罪をなすりつけてな」

503:名無しさん@ピンキー
07/11/28 19:54:51 hIisppMj
「わかりました」

「あと…スラルは死んだことにしてくれ」

「…はい」

「俺の暴挙に苦労を掛ける」

「いえ、今回の件は多少の非は王にあろうとも圧倒的にスラル様が悪い。
  それは事実を公表したとしても変わらないでしょう」
  
「…気休めとして受け取っておく」

 ホーネットが部屋から出ていく。全ての元凶は自分にあると言うのによくもそこまで言えたものだと、私は関心してしまった。
 明日から忙しくなる。こうしてティークと二人きりになるのも、これからしばらく無いだろう。

「…あの光景を見たとき、皆が笑える幸せな国を作るなんて言葉頭の中から消えていた。
  スラルの笑顔が見たくてここまで来たはずだったのに、俺は一体なにをしているんだ…」

「若のせいじゃありませんよ…」

「でももういいんだ」

「……え?」

「笑顔はもう見なくていい。スラルは死なさない。生かしもしない。ずっとずっと苦しませる。
  アイツは俺のことを嫌いなはずだよな、きっときっと感情の籠った顔をいっぱいいっぱいしてくれるよな。嗚呼楽しみだ」
  
 
 気力出して前の続き。
 ここで分岐して
 心壊れたまま堕ちてホーネットルート
 ゼンメイの懸命な気持ちで幸せゼンメイルート
 に流れる。
 俺がんばりました。うん、もう無理だ。これはプロットだ。

504:名無しさん@ピンキー
07/11/28 19:56:59 fr1LBQQB
蒼天待ってたヨ………
これからどんどん話が進むのを楽しみに次回を待つぜ。

505:名無しさん@ピンキー
07/11/28 19:59:40 cu5qF3NB
また、新IDがw

506:名無しさん@ピンキー
07/11/28 20:18:31 /HVvYZZX
プロットというタイトルのSSが見れるスレはここですか?

507:名無しさん@ピンキー
07/11/28 20:25:42 mmtVM1+6
まず最初にGJ。仕事はえーな

さてさて、俺も勝手に続き書いてたんだけど、どうしたもんかね
遅筆なもんで、まだ書き終わってないけどさ

やっぱり見てもらいたいし、出来上がったらここに投下しちゃって良いのかな

508:名無しさん@ピンキー
07/11/28 20:28:18 Q1LsFdGR
誘い受けはやめれ。書きたいから書く。読んでもらいたいから投下する。
それがこのスレだろ?少なくともここに一人続きを待っているヤツがいるぜ?

509:名無しさん@ピンキー
07/11/28 20:29:32 xEDmwhAi
プロットと言う名のリレーSSが始まるのか?w

510:名無しさん@ピンキー
07/11/28 20:29:55 JbHFBvCT
>>490
グジョーブ!
完結目指してがんばって!

>>503
さぁ、はやく続きのテキストを書く仕事に戻るんだ

511:名無しさん@ピンキー
07/11/28 20:35:54 hIisppMj

>>507
……ごめん。ログ読んでなかった。
描きたい部分とプロットしか書かない俺だからリメイクとか激しく嬉しい。
皆が期待しすぎないように投下する時キャップつけるようにするさ。

>>510
俺が投げっぱなしジャーマンをこのスレで何回してきてると思っているんだ



512:名無しさん@ピンキー
07/11/28 21:02:37 xUKLlEFW
プロットとか言ってる奴、ようは書けないから逃げてるだけなんだよな
誘いウケだっていうんならそれなりの成果はあったよな
もう満足したろうから黙っててくれ
おかしなこと自慢してるようだと荒れるだけだから

513:名無しさん@ピンキー
07/11/28 21:12:54 tsXF/LFF
何でわざわざ潰すような発言するかなあ
一時の感情で滅多なこと言うなよ

514:名無しさん@ピンキー
07/11/28 21:23:08 1O4uxygZ
このスレじゃ作者が途中でSS投げ出すのは珍しいことじゃないだろ
投げっぱなしのジャーマンか何か知らないけど、少なくとも声高に自慢するようなことじゃないだろ
バカじゃなかろうか

515:名無しさん@ピンキー
07/11/28 21:27:14 F2FIeLvI
モウコノナガレハカンベンナンダガ、ホントセイチョウセンナオマエラ('A`)

516:名無しさん@ピンキー
07/11/28 21:37:34 8LOHn/13
ほんとほんと
続きが気になるのに続き投げ出したSSのタイトル次々読み上げてやろうかマジで

517:名無しさん@ピンキー
07/11/28 21:37:51 OraNQX3C
ファンタジー祭りに便乗して投下します。

518:魔女の祈り
07/11/28 21:39:13 OraNQX3C
 血が足りない。早く渇きを癒さなきゃいけない。じゃなきゃ、ベルゼブブ様に叱られてしまう。
早く、早く、早く。
手遅れになる前に、審判の日がやってくる前に、僕は位階を上げなきゃいけない。神の軍団を打ち破る力をつけなきゃいけない。
そのためには、血を吸わなきゃ。罪深い魂を集めなきゃ。
僕がいっぱい血を吸えば、きらきらした鎧を着て、ベルゼブブ様の側近として働けるんだ。そうさ、それが定説なんだ。
―いた。見つけた。
「兄ちゃん?」
 おいしそうな、罪深い人間。無知の罪に浸された、ちっちゃな子供。血をもらおう。ごくごく飲ませてもらおう。
「ちょっ、どうしたの!」
この生贄を羽交い絞めにする。五月蝿いクソ餓鬼め。お前なんか、ベルゼブブ様からいただいた神通力でイチコロなんだぞ。
「い、痛い! 放してったら!」
 じたばた動くな。ああ、おいしそうな首筋だ。待っててくださいベルゼブブ様。今、血を吸ってあなたのお傍に行きます。
ちゅうちゅうぺろぺろ、なかなか、上手くいかない。もっと、強く噛まなきゃ駄目だ。
「助けてお母さん! 兄ちゃんが!」
 ええい、糞餓鬼め。僕の神聖な儀式の邪魔をするな。せっかく集めた霊気が発散しちゃったじゃないか。
とにかく、こいつを静かにさせなきゃ。
「あぐっ……苦し……やめ……」
「プーレ! 何をやっているのトト!」
 放せくそばばあ。さもなくば僕の神通力を食らわせるぞ。
くそ、くそ、動けない。こうなったら、貴様も殺してやる。ポアしてやる。
「暴れないでトト! 誰か、誰か来てちょうだい!」
 死ね死ね死ね。僕の神通力を味わえ。一瞬で凍り付いて死に至るんだぞ。
―エターナルフォースブリザードッ!
「あなた、何を?」
 ……ちくしょう、どうして効かないんだ。霊力が足りないのかもしれない。だったら、これでどうだ。
―ディアボリックデスバーストッ!
「トト?」
 ……くそ、ベルゼブブ様から力を貰ったはずなのになんで出ないんだよ。
「プーレ! おい、何があったんだ!?」
「さっきからこの子の様子がおかしいのよ!」
 止めろ、放せこの野郎。髭男め、汚らわしい手で僕に触れるな。
「いつっ、この野郎噛み付きやがった! 足を押さえてくれ。そら、じたばたするな!」
 霊気が……神通力が抜けて力がでない……。いつもの僕ならこんなやつら楽勝なのに……。
「この子は、悪魔憑きだわ……」
 そうさ……僕は……ベルゼブブ様の……。

519:魔女の祈り
07/11/28 21:40:32 OraNQX3C
 イゼベルは編み物をしていた手を休めて窓を眺めてみたが、雨は弱まっていなかった。
この様子では、今日じゅうには止まないだろう。
暖炉にくべられた薪はちりちりと燃えて熱を吐き出し、この部屋と、部屋を横断する紐にかけられた衣類を温めている。
しかし、朝から干していても一向に湿気が抜ける気配はない。
昨夜から、梅雨の生暖かいどしゃ降りがラグナグの都市全体を覆っていた。
石畳に打ち付けられた雨水は街路脇の溝に流れ込み、溢れかえって小さな洪水を起こしている。
死体のようにぐったりと枝を垂らした街路樹の下には、どろどろの粥に変わった地肌があり、砂糖のように溶かされた土は地面と舗装との段差を乗り越え、こげ茶色の水となって氾濫した小川と合流する。
湿気は町中の壁にびっしょり汗をかかせて、大雨は家々の屋根と窓ガラスに響きを立て、不均等なリズムで滴り落ちている。
イゼベルが居る建物の入口にぶら下がる、ストルドブラグ祓魔(ふつま)事務所と書かれた看板は、ぽつぽつと大粒の涙をたらして、まるで来客が無いのを悲しんでいるかのようだった。
ここひと月、祓魔事務所の扉を叩く客は、とある一部の人間を除けば一人もいなかった。
ただでさえ財政が苦しいというのに、こんな天気が続いていけばますます客足が遠ざかって、財布の中身は軽くなるばかりである。
(洗濯物も、乾かないし……)
 イゼベルは視線を手元に戻すと、はぁとため息を吐いた。
けれども、彼女は雨が嫌いではない。
雨音や、屋根を伝う水の音に耳を済ませていると不思議と気持ちが落ち着いてくるし、大水のなかで身の安全を感じているのは心地よい。
(それに……)
 顔を上げて、部屋の中心ある古ぼけた机を見やる。
机の上で広げた本に手を当てたまま、もう片方の腕で頬杖を突いて居眠りしている青年が、琥珀色の瞳のなかに映し出された。
時折、寝息に合わせて、青年の癖が付いた黒いぼさぼさの髪が小さく揺れる。
(今日は、ずっと二人きり)
 愛しい男を見つめながら、少女はその青白い肌をほのかな薔薇色に染めた。

520:名無しさん@ピンキー
07/11/28 21:41:25 1O4uxygZ
なんだ、この嫌な感じは

521:魔女の祈り
07/11/28 21:41:46 OraNQX3C
 来客があったのは、イゼベルが無防備に眠っている青年のほっぺたをつつこうと、指を震わせて彼の前で身構えた瞬間だった。
「フェイド! フェイド・ストルドブラグは居るか!」
 ばん、とノックも無しにいきなり扉が開かれて、雨でびしょびしょに濡れた緑色の外套を羽織った女性が事務所に怒鳴り込んできた。
その反動で青年の頬杖が折れ、支えを失った頭部が落ちた。衝突した額と机がごつんと鈍い音を立てる。
イゼベルは一瞬だけびくりと大きく全身を震わせたが、すぐまた我に帰って、不機嫌そうな顔を無粋な乱入者に向けた。
「おっと、すまないがイゼベルさん、外套はそこにかけておいてくれ。ああ、それと紅茶は濃い目のオレンジペコを頼む」
 女性はそう言うと、首筋のあたりで切りそろえられた栗色の髪を揺らしながら、青年の対座にある肘掛け椅子にどっかと腰を下ろす。
悪びれるどころかお茶を催促し始めた目の前の女に聞こえぬよう、イゼベルは小さく舌打ちをした。
「……わかった。少し待っていて」
 ご注文どおり、雑巾汁100%の特製紅茶を淹れてあげる。
そんな、ちょっとした仕返しを企みながら、至福の時間を邪魔された少女は台所へと歩き出した。

「フェイド! さっさと起きろ!」
 フェイドと呼ばれた、先ほどから眠りこけている青年は、この女性の、やや低めだがよく通る声を夢のなかで聞きとったらしい。
彼はゆっくりとした動作で少しだけ顔と瞼を上げて、焦点の合わない目でちらりと正面を覗き見た。
しかし、彼の黒い瞳に彼女の姿が映るや否や、再び糸の切れた人形のように机に突っ伏して寝息を立てはじめる。
「こら! 寝るな!」
 女性がばんばんと机を叩くと、耳元の振動と騒音でようやく目覚める気になったのか、フェイドはけだるそうに頭をかきながら起き上がった。
やがて、安眠を妨害された彼は眉間に皺を寄せ、迷惑げに、重々しい調子の声で話しかける。
「……聖騎士マノン・ヤレリック卿。人がせっかく瞑想に耽っているというのに、邪魔しないでもらえるか」
「何が瞑想だ。貴様は居眠りしていただけではないか」


522:魔女の祈り
07/11/28 21:43:59 OraNQX3C
 起き抜けの心底不機嫌そうな目つきでにらまれても動じないこの女性の名前は、マノン・ヤレリック。
ラガード王国竜騎兵第十三連隊、通称聖騎士団に大尉として所属する貴族である。
聖騎士といえば聞こえはいいが、ラガード王国における竜騎兵第十三連隊とは実際のところ、退役間近の老人や扱いに困る貴族の子女といった、家柄は結構だが実力はいまいちで解任しようにも解任できない士官の厄介払い先というのが現状だった。
元は近衛第七連隊という古くからあった連隊の一つで、先代国王が行った大規模な軍備構造改革の際に、半ば形骸化した、名誉職で官僚の天下り先となっていたそこを竜騎兵科として再編成して厄介者の士官を集めたことが始まりである。
そうして、所属する貴族のうち男爵以上の称号を持たぬ者にはお情け、というよりむしろ強制的に聖騎士の称号が与えられる。
騎士という階級は男爵の下に位置するため、聖騎士になるということは、事実上、それ以上の爵位を得られない、出世街道から外れたことを意味するのだ。
そういった事情から、聖騎士団という通称は彼らに対する皮肉の一つであり、結成以来未だ戦場に投入されていない事実からきた、抜けぬ懐刀、無敗連隊、国立修道会といった揶揄と併せて用いられている。
ちなみに、竜騎兵第十三連隊はまだ出来て間もない連隊であるので、田舎から飛び出してきた世相に疎い人間などは聖騎士団という名称を聞くと、強い兵士の代名詞である竜騎兵の兵科も相まって盛大に勘違いしてくれるらしい。
 寝起きが悪いほうなのか、フェイドは正面でふんぞり返っているマノンを無視して、しばらくの間虚ろな目を人差し指の背で擦った後、たっぷり一分間かけて全身で伸びをした。
それからやっと、首をこきこきと鳴らしつつも言葉を続ける。
「で、今日は何の要件だ? 除霊の依頼か? それとも人生相談か? おあいにくさま、後者は専門じゃないんでな。教会の聴罪司祭さまかそこらの占星術師にでも当たってくれ」
「違う! 貴様、まさか今日が何の日なのか忘れているのではないだろうな?」
 フェイドには思い当たるふしがない。六月はとくに祝日もないし、暦の中でこのやたら元気な女に関係する日なんて、先月の誕生日くらいだ。
「何だよ」
 欠伸を噛み殺す男の姿に、大きな、つり上がり気味の、不透明な青色をした目が細まった。

523:魔女の祈り
07/11/28 21:46:18 OraNQX3C
 しかしマノンが気を静めるように一度大きく深呼吸をしてしまうと、目じりの力が抜け、今度は得意そうな目つきになり、ふふん、という含み笑いが口元でこぼれる。
不敵そうな面構えになった彼女は、懐から大事そうな手つきで薄汚れた紙切れを取り出して、それを机の上にゆっくりと広げた。
「ああ、あのときのやつか」
 広告か何かの裏地を利用したのだろう、所々に染みがあるそれには汚い文字でこう殴り書かれている。

『私、フェイド・ストルドブラグは本日十九時三十分、マノン・ヤレリック様から、金貨百ガードを借り入れました。神に誓って返済期日までに―』

 先月、マノンと一緒に飲みに行ったとき、それまで溜めていた酒場のツケを支払わなければならなくなり、持ち合わせの無いフェイドは彼女に代金を肩代わりしてもらった。
机にあるのは、そのときの借用書だった。署名の横には、ご丁寧に血判も押してある。
フェイドの脳裏に、酔いと困窮に任せるがまま、このいけ好かない女に土下座してしまった屈辱が甦った。
暴君は手を腰に当てながら、薄い胸を張って言い放つ。
「今日がその返済日だ。耳を揃えて払ってもらうからな!」
「いつもニコニコ現金一括払いと、いきたいところだがな……なあ、しょっちゅうウチに来てるんだから、わかるだろ?」
「ほほう。返せない、と言いたいのか」
「無いものは無い。そもそも依頼が無いんだ。収入だってあるはずが無い」
 今月の生活費だって、イゼベルの服を質に入れて得たものである。それほど今の祓魔事務所は貧乏なのだ。
ここは対話と圧力による平和的解決を図るべく、フェイドは開き直ってやった。
降伏せよ、さもなくば一千万人の捕虜を送り込む、とでも言いたげな顔つきをして腕を組み、鼻で笑う。
ハ、と声に出すのは、彼が人を虚仮にするときの癖である。
しかし、マノンは先ほどから浮かべている笑みをますます深めた。
「……ならば、貴様はこれから、私の奴隷になるということだ」
「はぁ?」
「見るがいい!」
 びしぃ、と折れるくらいにのけぞらせた人差し指で、マノンは借用書の隅っこを示した。
そこには普通に見るだけでは判別できないくらいの小さな文字で何かが書かれている。
フェイドはくっ付きそうなほど目を近づけて、あの時マノンが書き入れたらしい、彼の知らない借用条件を読んだ。



524:魔女の祈り
07/11/28 21:47:40 OraNQX3C
『もしも、下賤で卑屈な私めが期日までに麗しく高貴な貴女さまへ金銭を返済できなかったばあい、全額を返済するまでの期間、マノン様の奴隷になることを誓います』

 残念なことに、後から書き込んだ形跡はない。おそらく、べろんべろんに酔っ払っていたせいで見逃してしまったのだろう。
「な、ふざけやがって……」
「ふふん。しっかり確認しなかった貴様の自業自得だ」
 たしかに、最期の血判を押させる前に、彼女はやたらとフェイドに同意の確認を取っていた。
しっかり読んだかという言葉を何度も繰り返したことから考えるに、マノンは今の状況を見越していたらしい。
嵌められた、とフェイドは思った。その場を凌げるならどうとでもなれさという、投げやりになった心の隙を突かれた。
あの時は酔っていたとはいえ、こんな女に出し抜かれてしまった。
目も当てられないほど愚劣きわまる失敗をしでかしてしまったのだ。
フェイドは、地団駄を踏んで悔しがった。この失態は、死ぬまで自分に付きまとうだろうとさえ感じた。
そんな彼とは対称的に、マノンは非常に上機嫌のようだ。勝ち誇って、顔を赤らめてさえいる。
悔しがるフェイドの姿を、真面目な顔つきでじっと観察しているかと思えば、突然口元をだらしなくにへらと緩ませて、次の瞬間には慌てて引き締めたりしている。
忙しなく歓喜を表現している彼女の様子を見て、フェイドは心の中で呪詛を唱えた。
祓魔師という曲がりなりにも聖職者である彼が口にすべきではない罵詈雑言を延々と唱え続けた。

525:魔女の祈り
07/11/28 21:50:04 OraNQX3C
 イゼベルが三人分のお茶をお盆にのせて音もなく現れたとき、マノンはあさっての方向に顔を逸らして、
「そ、そういうことで、まずは私の買い物の荷物持ちをやってもらう!」
 と叫んでいた。彼女の耳は充血して、赤く色付いている。
イゼベルはなんとなくその仕草が気に入らなかった。
なので、フェイドの分のお茶だけを降ろして、マノンの分をのせたまま、机の上で聖騎士の体からなるべく離れた、手が届きそうで届かないような位置にお盆を放置する。
そのままイゼベルは自分の椅子に戻って、編み物を再開した。
お茶が飲みたければ自分で歩いて取りに行け、と少女は心の中で貴族の女につぶやいた。
「アンタ、聖騎士の任務はどうするんだよ。今日は非番じゃないだろ」
 いくらお飾りの聖騎士団でも、平日には練兵所で訓練だとか、路上のゴミ拾いだとかの雑用があるはずである。
ならば彼女が毎日のようにここへ入り浸っているのはどうなのか、と問われると困るのだが、ともかく、苦し紛れにフェイドは建前上の常識を持ち出してみた。
いくら窓際貴族でも、おおっぴらに遊びまわるのはよろしくないのだ。
「有給休暇をとった」
 マノンはけろりと言った。そういわれてみると、フェイドは彼女の恰好が普段と違うことに気が付く。
いつもなら外套の中には、あの無闇に派手で気色悪い色合いをしているうえ、布地が見えなくなるほどたくさんの勲章をぶらつかせている、聖騎士団専用の恥しい軍服があるはずだった。
けれども今の彼女は私服姿で、四六時中、後生大事に抱えている例の長剣も持っていない様子である。
「外は雨が降っているだろうが」
「貴様が傘になればいい」
 フェイドはまた厭な記憶を思い出した。以前、雨の翌日に彼女と町を歩いていて、大きな水溜りに出くわしたことがあったのだ。
マノンはそんなときに限って新品の高価な長いスカートとやらを穿いていて、濡れるのがいやだとかいう理由で彼の上着を水溜りの上に敷かせた。
ちょうどそのころ彼女に弱みを握られていたフェイドは、反論さえ出来ずに泣く泣く上着を一着献上したのだった。
後日、マノンから詫びとして、駄目にしたそれよりも値の張る上着を買い与えられた。
そうしてその晩、フェイドは自分の惨めさと、情けなさを呪った。

526:魔女の祈り
07/11/28 21:52:48 OraNQX3C
 再びあんな思いをするのはこりごりだと考えた彼は、次の理由を持ち出す。
「……俺にだって祓魔師の職務ってものがある」
「こんな大雨の日に客が来るのか? それにしても、留守番ならイゼベルさんにしてもらえばいいではないか」
「こいつは愛想がないから接客は無理だ。そうだよな?」
 そうだと言え、と、フェイドは窓際で編み物を続けるイゼベルに熱の篭った視線を送る。
「ええ」
 少女は手元から視線を外さずに答えた。もとより彼の言うことに関して彼女の答えは肯定以外にない。
自分たちの平穏をぶち壊してくれた女を追い出すためというのなら、なおさらだ。
そんなイゼベルの思惑を知ってか知らずか、マノンは立ち上がって、すたすたと机の周りを歩いて行き、紅茶の乗ったお盆の前で止まった。
そうして冷め始めたカップの取っ手に手をかけながら、少女をとがめる。
「イゼベルさん、あまりフェイドを甘やかしてはいけない。貴女がそうだからいつもこいつは」
「とにかく、駄目なものは駄目だ。今日はなんとなく胸騒ぎがするんだよ。こう、耳の後ろにざらついた感覚があってだな、きっと俺に助けを求める依頼人が……」
 説教がうるさくなりそうだから、フェイドは適当に思いついたことを口走る。
「馬鹿なことを言うな。来るはずな―」
 ―こん、こん、という弱々しいノックが、マノンが言葉を続けようとした矢先に扉から響いた。
一瞬にして、姦しかった事務所に静寂が訪れる。一ヶ月と二週間ぶりの、来客を知らせる音色だった。
マノンはノックをしないので、普段は聞こえることはない。
数十秒ほどして、再び、先ほどより少し強めに、こん、こん、と鳴った。
ぽかんと間抜けに口を開けたままでいるマノンより、一足早く気を持ち直したフェイドがイゼベルに目配せすると、彼女は小さく頷いて、
「どうぞ」
 と、鈴を鳴らすようなかわいらしい声色で言った。こういうときに言葉をかけるのはもっぱら女性であるイゼベルの役目である。
スケベ心と言っては身も蓋も無いが、相手がよほどの女嫌いでもないかぎり、客に聞かせる第一声は儚げな少女の声のほうが好印象を与えられるし、依頼者が女性の場合でも気安さを装うことが出来る。
後は事務所に入れてしまえばこっちのものというわけで、大事な大事なお客さんを逃がさないために、フェイドはゆっくりと立ち上がって扉に近寄った。

527: ◆RKfY.eXwSY
07/11/28 21:53:24 pLR4XfYe
>>469仕事の都合でしばらく書けそうにありません。ごめんなさい。

528:名無しさん@ピンキー
07/11/28 21:54:35 PXsfZbX7
ジャーマン氏に限らず、作品を途中で投げ出す無責任な書き手は
取り敢えずチヤホヤして欲しかっただけなのかな
ここは練習用のスレじゃないんだが

529:魔女の祈り
07/11/28 21:54:52 OraNQX3C
 充分に油の差されていない扉がぎいと小さな唸り声を発した。
開いた隙間から覗きこむように、髭を生やした中年男性の、おどおどと気後れした顔が現れる。
「あ、あのぅ……」
 声と同時にフェイドは飛び掛るように男性の肩に手をかけると、すぐさま扉を大きく開いて半ば無理矢理彼を部屋の中に招きいれた。
「ああ! お客様ですね! ささ、ご用件は何でしょうか? 悪魔憑きですか? それとも悪霊? 洗礼オプションの悪魔祓いのほうもたいへんお安くなっておりますよ」
「あ、悪魔憑きです」
 背中を押しながら一息にまくしたてる青年に気を呑まれたのか、依頼者の中年男性は声の調子は弱々しいものになっている。
「おお! なんと悪魔憑き! それでは、まずはこちらにおかけになって。どけ!」
「いたっ。何をする貴様!」
 あっけにとられつつも椅子に戻ろうとしていたマノンの体をフェイドは無造作な手つきで払いのけ、彼女の席に緊張し切った依頼人を座らせた。
そうして、マノンの首根っこを掴み扉のほうへと引き摺りながら、顔だけをお客さんに向けて続ける。
「ええ、安心してください。これでも悪魔殺しのプロです。必ずやにっくき悪魔野郎を屠殺してくれましょう!」
「は、はぁ」
 あれよあれよという間に、依頼人はちょこんと椅子に腰掛けて、マノンは出口に追い遣られていた。
「そんなわけだ。じゃあなマノン」
「ちょっと!」
「ここからは部外者お断りだ。最近は個人情報云々もうるさいからな」
「まだ私お茶飲んでな―」
―ばたん、と音を立てて扉が閉まった。続いてがちゃんと鍵をかける音が聞こえ、聖騎士マノン・ヤレリックは一人ぼっちで外に取り残された。
大粒の生暖かい雨が、マノンの体を打ち据える。壁から跳ね返るしぶきが、彼女の顔を濡らす。
あっという間に、追い出されてしまった。豪雨は弱まる気配もない。
彼女は懐から、湿気でふやけてよれよれになった小さな紙片を取り出して眺める。
やがて、新悲喜劇優待席と書かれた二枚のそれを、彼女はくしゃりと握りつぶした。
地面と同じで、心も水びたしだった。
「……この、下衆男」
か細い声で、彼女は扉に向かってつぶやいた。
ストルドブラグ祓魔事務所と書かれた看板が小さく揺れる。
「この、インチキエクソシスト―ッ!」
そう叫んで、マノンは大雨の中を疾走した。

530:名無しさん@ピンキー
07/11/28 21:56:50 ti62aKW8
長編書き上げるにはそれなりの力量がいるんだろ
それに書き出したはいいがモチベーションが続かないとな
無理せず読み切りの短編書けばいいのに

531:魔女の祈り
07/11/28 21:58:02 OraNQX3C
 ところで、学問および学問に裏付けられた技術による合理化―即ち学問の進歩―とは、それを欲しさえすれば、どんなことでもつねに学び知ることができるということである。
そして、そこにはなにか神秘的な、予測し得ない力がはたらいている道理がないということであり、むしろすべての事柄は原則上、予測によって意のままになるということである。
高度に発達した科学は、魔法であってはならない。魔法からの世界解放こそ、科学というものにほかならないのだ。
剣と魔法が支配するこの世界においても、人類発生以来絶え間なしに続けられた数多の賢者たちの思索と実験によって、魔法は既に元来の意味における魔法ではなくなり、主知化、合理化、原則化、体系化され、つまり予測しえる現象に昇華されて人類の英知の一つとして君臨した。
この世界の人々にとって魔法とは火と車輪と言語の延長であり、神秘や不思議なんてものは一欠けらもなしに極々一般的の学識として人間の生活に溶け込んでいる。
物語の舞台となるのはたしかに剣と魔法の世界だが、森や草原でおとぎ話に登場するような怪物が跋扈しているわけでもない。
あくまで地上における最も強い種族は人間で、最も賢い種族も人間なのだ。
半人半獣の亜人種なんてものも、漫画のなかにしか存在しなかったりする。
しかしそれでも、こんなつまらない世界であっても宗教というものは存在した。
神が何度となく起きた宗教革命で半殺しにされ、さらには哲学者によって息の根を止められた後も、神秘と歴史ある思想に憧れる人々は今だ教会を徳の拠り所とし、坊主達の食い扶持を補ってくれていた。
魂を扱うという、このほとんど暴きつくされた神秘の最後の砦は、しかしまた難攻不落の要塞であった。
祓魔師という、いかがわしい、やくざな業種が生き残れているのもそのお陰である。

532:名無しさん@ピンキー
07/11/28 21:59:00 UG+7C7DL
ちょwww必死こいて書き写ししたりしてる間に>>501に書かれてるwww

どうしようコレ…

533:魔女の祈り
07/11/28 21:59:18 OraNQX3C
 交渉はとんとん拍子に運んだ。
 ―プランはどのようにいたしますか? バリューパック甲、乙、丙に、法人向けビジネスパックや各種オプション、プラチナスペシャルゴージャスパックをご利用ならただ今キャッシュバックキャンペーン実施中でたいへんお徳―
 ―あの、一番安いやつで……。
 ―……通常祓魔プラン丙ですね。
 ―は、はい。それで頼みます。
 ―では教区のほうはどちらで?
 ―ええと、リェレナです。
 ―それなら教会のほうから補助金が下りますので、ここと、ここに署名をお願いします……貧乏人が。
 ―はい?
 ―なんでもございません。ささ、御記入は済みましたか? それではお子さんに憑いた悪魔がどのようなものなのか、お聞かせください。
 そんなこんなであくる日には、フェイドとイゼベルは悪魔に憑かれたという少年が住む村、リェレナ行きの郵便馬車に揺られていた。
 馬車の窓の外には、菜種畑が広がっている。
花盛りを過ぎ、波打つように敷かれた緑の毛布は、黒々としたあぜ道で大きな網の目に仕切られている。
ところどころで鎌を持った農夫が、茶色の地肌を広げるべく、せっせと菜種刈りに精を出している。
空では、巨大な蒸気の塊が青い下地の半分を覆って、太陽光を遮り、大地にくっきりと影を落としている。
馬車が雲の影を抜けた。
柔らかな日光に愛撫されて、イゼベルの透き通った白い肌の上に、綿の糸のようにぼやけた、ほのかなうぶ毛が浮かび上がる。
曲がり角に差し掛かったのか、車体が大きく揺れた。
細い、色あせた金髪がほつれて、少女の瞼にかかる。
前髪を撫でるように指を滑らせると、イゼベルは頑丈な石造りの家並みをぼんやり見つめた。


534:名無しさん@ピンキー
07/11/28 22:00:49 I6s4FEUA
バカな
短編に仕上げる方がむしろ力量がいるんだぞ
ダラダラした長編よりピリッとした短編の方が書くの難しい

535:魔女の祈り
07/11/28 22:01:50 OraNQX3C
「僕は地獄からやってきた魔王ベルゼブブの部下だ、か。やれやれ、面倒なことになりそうだ」
 イゼベルの向かいに座るフェイドは、調書を手に持ってそうつぶやいた。
彼の言葉を聞いても、イゼベルは外の景色を眺めたまま、何も言わない。
馬車の乗客は彼らだけだった。速歩で進む二頭の馬の蹄に、古くなった車体の軋みと、車輪が回り、道路を踏みしめる音のほかには、二人分の衣擦れだけが聞こえていた。
今みたいに彼女と二人きりのとき、彼はよほどのことがないかぎり少女に意見を求めることはありえない。
彼は自分自身に言い聞かせるような独り言しか口に出さないのである。
イゼベルはそのことを痛いほどよく理解しているから、沈黙をまもるのだった。
 二人がリェレナの集落にたどり着いた時、村の学校で正午の鐘が鳴り響いていた。
鐘が鳴り終わってしばらくすると、昼飯に帰るのだろう学童たちが校門から、競争するように大急ぎで飛び出してきた。
村道を歩くフェイドたちの正面にも、何人かの腕白小僧がわれさきにと腕を振り振り走ってくる。
そうして、見慣れぬ法衣姿の青年と、こんな田舎ではまずお目にかかることの無い、フリルの付いた服を着た少女の二人組みに遭遇すると、わっと大声を上げて驚き、すぐにまた踵を返して、喚きながら逃げていった。
 こうして若い祓魔師と助手の少女の訪問は、当日のうちに村中へ知れ渡ることとなった。
田舎では、流行が伝わるのは遅いが、個人の噂はどんな都会よりも素早く広まる。
悪魔に憑かれたトト少年の父親、依頼主のラッシ氏はこの点において考えが足りなかった。
対岸の火事ほど面白い話題はない。無関係な人間ほど変に勘ぐったり、憤慨して陰口を叩きたくなったりするものだ。
早く息子を元に戻したいばかりに段取りを焦りすぎたおかげで、ラッシ氏は村に新たな娯楽を提供してしまった。
その上、悪魔憑きの人間も悪魔祓いの人間も、ごく真っ当な村人からしてみれば、教義を厳守する教区司祭と代わらないのである。
ようは、楽しく陰口をたたける手合いなのだ。
そうして、祓魔師フェイド・ストルドブラグはそれを知っていながらも、わざわざ真っ昼間に村を訪れたのだった。
格安には格安なりの待遇がある、とは彼の言い分である。


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