【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part11【改蔵】at EROPARO
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part11【改蔵】 - 暇つぶし2ch2:名無しさん@ピンキー
07/11/02 13:25:59 ep1ZIShg


                  , ´  ̄ ` 、
                      l__   l
                ...-‐:::<:::::::::::::::::<__
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      , ´ ̄`く:::::::::::::::::::::::::::::::l:::::::::::::::::::::::::::::::::::::ヾヽ、>
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     ゝ、_,ィ '::::::::::::::::::::::::::糺:::::::::::::::::::::::::::::/〆
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      /:::::::::::::|  `ミ:::::::::::::`ゝ、_ノ            /         n
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3:名無しさん@ピンキー
07/11/02 21:57:19 moFf+Us8
>>1さん、乙です!
戻ってまいりました430ですこんばんは。

すごいですね、いつの間にか前スレ終わってるし…。
えー、というわけで、放置プレイにあっていた長編を投下させていただきます。
いつもながら完全に原型とどめてなくて申し訳ないですが、毎度の捏造設定で、
CPは先生×可符香(赤木杏)、久藤君×倫、すでにそれぞれ恋人同士です。

えー、無駄に長いので13レスずつ2分割で投下させせていただきます。


4:旅立ちの時 前編 1/13
07/11/02 21:59:20 moFf+Us8
可符香は、白い靄の中を歩いていた。
――ここは、どこだろう…。

なんとはなしに不安な気持ちにさせる、白い靄。
可符香は、その中で、一生懸命誰かを探していた。

――どこに…どこに、いるの…?

と、靄を通して、袴を着た背の高いシルエットが霞んで見えた。
「先生…。」
可符香は、小さく呟いた。

――そうだ、私は、先生を探していたんだ…。

可符香が歩み寄ると、その姿…望がゆるゆるとこちらを振り向いた。

「可符香…あなたと、お別れしなければなりません。」
「え…?」
望は、それだけ言うと可符香の視線を避けるように目をそらせた。

可符香の喉は、からからだった。

――何を、言っているの?先生!?

問い質したいのに、声が出ない。

急に、2人を取り巻く靄が濃くなった。
望の姿が霞んでいく。
いつの間にか、その首にはロープが巻きついていた。

「…さようなら、もう、会うこともないでしょう…。」

靄の向こうから、望の声だけが聞こえてきた。

「――先生!!」



可符香は、自分の叫び声で目を覚ました。


5:旅立ちの時 前編 2/13
07/11/02 22:00:21 moFf+Us8
「……夢…?」

可符香は、自分のベッドで寝ていた。
心臓が激しく動悸を打っている。
汗をびっしょりかいていて、気持ちが悪かった。

――なんで、あんな夢なんか…。

のろのろと起き上がり、台所で水を飲んだ。
何故か、先ほど夢の中で感じた不安感が消えなかった。

可符香は、台所の窓から見える月を眺めると、呟いた。
「先生…。」


* * * * * * * *


その頃、糸色望は、宿直室で執事の時田と向かい合っていた。
腕を組んで執事を睨みつける望に対して、時田は涼しい顔をしている。

「何度言っても同じです。見合いはしません。」
「ぼっちゃま。そうおっしゃいますが…。」
「だいたい、あの儀式なんて、所詮、時田の憂さ晴らしじゃないですか。」

時田は、望の言葉にモノクルをきらりと光らせた。
「ぼっちゃま、今回の見合いは、『見合いの儀』ではございません。」
「…なんですって?」
「きちんとした、本格的なお見合いでございます。」
そういうと、時田はカバンから大きな封筒を取り出し、望の前に置いた。

「さる代議士のお嬢様です。優しくお美しく、お年もぼっちゃまと頃合い、
 これほどの良縁はございません。」
「じょーーーーだんじゃありません!!」
望は大声で叫んだ。

「だいたい、見合いだったら私よりも兄さん達の方が先でしょう!
 なんで、いつも、私ばかり結婚させようとするんですか!!!」


6:旅立ちの時 前編 3/13
07/11/02 22:01:15 moFf+Us8
激昂する望に、時田は、首を振った。
「ぼっちゃま…ぼっちゃまには、糸色家の正当な継承者として、
早くに身を固めていただく必要があるのです。」
「木目糸売の件ですか!?あれは、お父様の悪ふざけでしょうが!」

時田のモノクルが再び光る。
「本当に、そう、お思いですか…?」
「え…。」
「旦那様は、自分の地盤を継がせるには、望ぼっちゃま、
あなた様しかおられないと、前々から考えておられるのですよ。」
「な…、私なんかに、政治家なんか務まるわけないじゃないですか。」
望は、あきれたように時田を見た。

時田は、首を振ると鋭い目を望に据えた。
「縁様は、確かに実力はご兄弟で一番ずば抜けていますが、何せご縁の薄い方。
 景様は、才能ある方ですが、常人には理解し難い。
 命様は、怜悧すぎて、やや人情味に欠けるところがございます。
 あなた様が、一番、大様の地盤を継ぐのにふさわしいのですよ。」

「…つまりは、私は、一番出来が悪くて平凡だってことですか。」
傷ついた顔をする望に、時田は諭すような目の色になった。
「ご両親は、あなた様に、糸色家の未来を託しておられるのです。」
望は、思わず時田から目をそらせた。
「ぼっちゃまは、そのご両親のご期待にお応えなさらないのですか?」
「…………でも、……私は……。」

言いよどむ望に、時田の表情が厳しくなる。
「例の女生徒の件であれば、それは考慮の範囲外ですぞ。」
「――!!!」
「私の調査能力を見くびってもらっては困ります。」
望の顔から、ゆっくりと血の気が引いていった。

時田は、悲しげな目で望を見つめた。
「…ぼっちゃま。その場限りの関係であれば、相手が教え子だろうが構いません。
 しかし、あなた様は江戸時代から続く糸色家の、大事な跡継ぎなのです。
 ゆめ、ご軽率な行動は取られませぬよう…。」
「………。」


7:旅立ちの時 前編 4/13
07/11/02 22:02:03 moFf+Us8
時田が宿直室を辞したのは、真夜中を過ぎていた。
1人残った望は、封筒を前に、無言で腕を組んでいた。

秋の夜長の虫の音が、うるさいくらいに辺りに響いている。
暗い部屋の中で、望の横顔を、月が照らしていた。

月が校舎の影に沈んだ後になって、ようやく、望は立ち上がった。
そして、封筒を見下ろすと、深いため息をついた。


* * * * * * * *


翌朝。

可符香は、昨日から消えない不安にいたたまれず、早朝に学校の門をくぐった。
そのまま、まっすぐに宿直室に向かう。

宿直室の前の中庭から、煙がひと筋昇っていた。
「…?」
可符香が、中庭を覗き込むと、望がなにやら焚き火をしていた。

「…先生、こんな朝っぱらから、何やってるんですか?」
可符香が呼びかけると、望は、大げさなくらいに驚いて飛び上がった。
「か、可符香!どうしたんですか、こんな早くに!!」

「…ちょっと、眠れなくて…それより先生、何を燃やしてるんですか?」
可符香は、望の手元を覗き込んだ。
炎の端から白い、封筒らしきものが見える。
望は、慌てた様子で焚き火をかき回した。
「べ、別に、単にゴミを燃やしていただけですよ!早くに目が覚めたもんですから!」

「…。」
可符香は押し黙った。
望の行動はどう考えても怪しかったが、それ以上突っ込んでも
素直に答える性格ではないことは、長い付き合いで良く知っている。

――放課後、ゆっくり探ってみるしかない、かな…。

可符香は、心の中で呟いた。



8:旅立ちの時 前編 5/13
07/11/02 22:03:02 moFf+Us8
可符香は、放課後、すぐにでも宿直室に行きたかったのだが、
そういうときに限っていろいろと用事が重なるものだ。
結局、可符香が宿直室を訪れたのは、すっかり日が暮れてからのことだった。

「先生…います?」
扉をそっと開けて中を覗き込んだ可符香は、目を丸くした。

この学校の宿直室は風流なことに、中庭に面して縁側が作られている。
望が、そこに座って、一人、杯を傾けていたのである。

望は振り向くと、驚いたような顔をした。
「可符香……?どーしたんですか、こんな、時間に…。」
少し酔っているようだ。

「…珍しいですね、先生がお酒を飲むなんて…。」
可符香は、上がりこむと、望の隣にすとんと腰を下ろした。
「交君は、どうしたんですか?」

望は、ゆらゆらと杯を上げながら答えた。
「交ですか…交はですねぇ…。」
ふと、望の表情に苦々しさがよぎる。
「…時田が、実家に、連れて帰りました…。」
「時田さんが?また、どうして?」

望は、それに答えずに杯を干すと、ふーっと息をついた。

「…先生、お酒、飲めないんじゃなかったでしたっけ?」
「…余り、得意ではありませんねぇ…。」
「だったら、何で飲んでるんですか?しかも1人で。」

絶対、今日の望は何かおかしい。
可符香は思った。

「先生…。」
可符香が言いかけたとき、望が口を開いた。
「あなたも、飲みますか?」
「…生徒にお酒勧めるなんて、問題ですよ。」


9:旅立ちの時 前編 6/13
07/11/02 22:04:02 moFf+Us8
可符香自身も、余り酒を飲みつけてはいない(まあ、当然だが)。
しかし、望から何かを聞きだすためには、とりあえず調子を合わせたほうがいい、
そう考えた可符香は、望の手から杯を受け取った。

可符香の手の中の杯に酒を注ぎながら、望が呟く。
「この杯を受けてくれ、どうぞなみなみ注がしておくれ…か。」
「勧酒、でしたっけ…?」
可符香は、その有名な訳詩の先を思い出して、ヒヤリとした。

――サヨナラダケガ ジンゼイダ…。

「せん…」
「さ、飲んでください、可符香。」
「…。」

大きめの杯に満たされた酒に、月の光が反射している。
可符香は、それを見つめると、一気に飲み干した。

喉を熱い塊が下りていき、体がかっと熱くなる。
可符香は、ほぅ、と息をついた。

と、望が可符香の手から杯を奪い取った。
「先生?」
顔を上げた可符香に、望が乱暴に口付けてきた。

「んんっ!」
望の息は、甘い、酒の香りがした。
可符香は、そのまま縁側に押し倒された。
「せ、先生…?」

望の表情は、月の光を背にして、はっきりとは分からなかった。
次の瞬間、望がいきなり可符香の首筋に顔を埋めてきた。
「…っ!?」
可符香は、混乱した。

望は、普段体を合わせるときは、優しく焦らすような愛撫を繰り返し、
可符香が何もかも分からなくなるまで、ゆっくりと追い詰める。

しかし、今の望には、そんな余裕は全く見られなかった。
何かにすがるように、可符香にしがみついていた。


10:旅立ちの時 前編 7/13
07/11/02 22:04:55 moFf+Us8
「先生…。」
呼びかけても、望からは答えはない。
「や、…んっ!」
首筋を強く吸われて、可符香はのけぞった。

「先生、待って、私、先生に聞きたいことが…。」
可符香は、望の胸を押し返した。
望は、一瞬、動きを止めて可符香を見たが、何も言わずに
再び、可符香の首筋に顔を埋めた。

「やっ、ちょっと、先生、待って…!」
望の指が、セーラーのリボンをほどき、前襟のスナップを外していく。
可符香は、両腕を上げられ、あっという間に上着を脱がされてしまった。
ブラもむしりとるように取り去られ、顕になった素肌に、
望が紅い跡を散らしていく。

可符香は、既に息が上がっていた。
望に、話を聞かなければと思いながらも、何も考えることができない。
自分の上を行き来する、望の指と唇の触感だけが可符香を満たしていた。

望が、スカートのファスナーを下げる。
スカートと一緒に下着も下ろされた。

「え…。」
望が、袴を乱暴に脱ぎ捨て、可符香の上に覆いかぶさった。
「っ、ぁぁぁあああ!」
望が、前触れも無しに可符香の中に侵入してきた。

既に、十分潤っていたとはいえ、さすがに痛みを感じる。
「先生、痛い…!」
望の性急な行為に可符香は恐れを感じた。

望から、こんなにも強引に体を開かれたのは、前に一度きり。
合意さえなかったあのときは違うとはいえ、それ以来、望は
可符香が痛みを感じるようなことは一度もしたことがなかった。

それが、今は、可符香の抗議が聞こえているはずなのに、
動きを止めようとする気配もない。


11:旅立ちの時 前編 8/13
07/11/02 22:05:51 moFf+Us8
望の顎から、可符香の上に汗が落ちてきた。
望は、着物さえ脱いでいなかった。

――どうしたの、先生、ねえ、何があったの…!?

可符香の疑問は、段々と湧き上がってきた快感に押し流されてしまった。

「くっ…!」
「…ぁっ!」
2人、小さく叫んで、可符香は望と同時に果てた。

2人は、虫の音の中、しばらく無言で呼吸を整えていた。
月の光だけが照らす部屋で、互いの息遣いが響く。

可符香は、隣でごろりと横になっている望に顔を向けた。
望は、手の甲を目にあて、上を向いていた。
その姿が、何となく泣いているように見えて、可符香は声をかけた。
「先生…?」

望は、ピクリと体を動かすと、手を顔からどけた。
そして、ゆっくりと、可符香の方を向いた。
望の目は、乾いていた。
しかし、その瞳は暗くよどみ、可符香を不安にさせた。

「先生…。」
口を開いた可符香に、望が手を伸ばした。
ぐい、と引き寄せられ、再び望の唇が強く押し付けられる。
「んっ、せん、せ…。」
可符香の抗議は、絶え間なく与えられる口付けに封じ込められた。

可符香は、息が苦しくて朦朧となりながらも、
望の欲望が再び盛り上がっているのを感じた。

望が、可符香の細い体を組み敷いた。
「え、まさ、か、せんせ…。」
可符香の声を無視するように、望が再び可符香に押し入った。

――先生…!!

望の狂おしい表情を目に、可符香の意識は遠のいていった。


12:旅立ちの時 前編 9/13
07/11/02 22:06:48 moFf+Us8


* * * * * * * *


「…。」

夜半もだいぶすぎた頃、望はそっと起き出した。
立ち上がり、ぐっすりと寝入っている可符香を見下ろす。

飲みつけぬ酒を飲んだところに、何度も激しく求められ、
可符香は、いつになく深い眠りについているようだった。
ちょっとやそっとでは目を覚ましそうにない。

望は、押入れから布団を出して可符香にかけると、
旅立ちセットが入ったカバンを取り出した。
そして、大きな音を立てないよう、その中身を入れ替えていった。

最後、カバンを閉め、手に持って立ち上がりかけ、
望は、再び可符香を見下ろした。

「…。」
望は、カバンを置くと身をかがめ、寝ている可符香の頬をそっとなでた。
可符香が、くすぐったそうに身じろぎをする。

望は、はっと身を引き、息を殺して可符香を見守った。
どうやら、可符香は再び眠りに落ちたようだ。

望は、ほっと息をついた。
しばらく可符香をそのまま眺めていたが、引き寄せられるように顔を近づけ、
可符香に口付けしようとして……直前で止まると、体を起こした。

そして、小さくため息をつくと、今度こそカバンを手に立ち上がった。

「さようなら、可符香…。」
望は、呟くと、音も立てずに宿直室から出て行った。


* * * * * * * *




13:旅立ちの時 前編 10/13
07/11/02 22:07:32 moFf+Us8
翌朝、可符香は宿直室で目を覚ました。

――あ、あれ!?まずい、私、そのまま寝ちゃったの!?

慌てて起き上がり、辺りを見回す。
「…先生…?」
そこに、望の姿はなかった。

ふと、押入れが少し空いているのに気づき、近づいて、開けてみる。
そこにあったのは、望がいつも「旅立ちセット」と言っていた小物たち。
「何で、これがここに…。」
旅立ちセットが入っていたカバンは見当たらない。

――先生!?

急に、得体の知れない不安が可符香を捉えた。
この「旅立ちセット」は、実際には旅立てない見せかけだけの代物である。
それを置いて、望は、いったい代わりに何をカバンに詰めて行ったのか。

――そもそも、先生は、いったいどこに行っちゃったのよ!!

宿直室の押入れをもう一度覗く。
着替えが入った行李には手はつけられていないようだった。

――着替えも持たないで、どこに…?

心臓の音がうるさいくらいに鳴っている。
可符香は宿直室を出ると、隣りの用具室の扉が僅かに開いているのに気が付いた。

覗くと、壁にかかっていたはずの、丈夫で太いロープがなくなっている。

可符香は、息を飲んだ。
「先生!!」
可符香は、望の姿を求め、廊下に飛び出した。




14:旅立ちの時 前編 11/13
07/11/02 22:08:17 moFf+Us8
「えー、どうやら、糸色先生は、また失踪中のようです。」
新井智恵は、朝のホームルームで、うんざりした顔でそう告げた。
生徒達の反応も、慣れたもので、誰も心配していない。

その中で、1人、可符香だけが青ざめた顔をしていた。

と、教室の扉が開いて、袴姿の少女が現れた。
「あれ…まといちゃん?先生についていったんじゃないの?」

不思議そうな顔をするクラスメートに、まといは顔をしかめた。
「先生がくれたコーヒーを飲んだら急に眠くなっちゃって…。
 気が付いたら、保健室で寝てた。」

頭を振りながら席につくまといを見て、生徒達が呟いた。
「それって、睡眠薬?」
「先生、今回の失踪は、随分手が込んでるねぇ…。」

ガターーン!

可符香は、思わず椅子を引っくり返して立ち上がっていた。
教室の皆が、可符香を振り返る。まといが、す、と目を細めた。
智恵も、教壇から驚いたような顔で振り返った。

「あ…、と。すいません、智恵先生、お手洗いに行きたいんですが。」
可符香は、慌ててその場を取り繕った。
「え、ええ、もうホームルームは終わりなので、どうぞ。」
智恵が、面食らったような顔で答えた。

クラスの皆も、いつにない可符香の態度をいぶかしんでいるようだ。
可符香は、皆の目を避けるように教室から出ると、宿直室に向かった。

無人の宿直室に入ると、
「先生…。」
可符香はちゃぶ台の前にへたり込んだ。

と、後ろから聞きなれた声がした。
「杏ちゃん、いったいどうしたっていうのさ。」


15:旅立ちの時 前編 12/13
07/11/02 22:09:01 moFf+Us8
「准君…」
可符香は振り向いた。

「先生に、何かあったの?」
尋ねる准に、可符香はうつむくと、ぽつりぽつりと話し始めた。

昨日、朝から望の様子がおかしかったこと。
可符香に何も言わず姿を消してしまったこと。

さすがに、昨日の夜のことは話せなかったが、
旅立ちセットの中身が入れ替わっているようだと話したとき、
黙って可符香の話を聞いていた准の表情が変わった。

「…それって…。」
准は、眉根を寄せて、可符香を見た。
可符香は、准が、自分と同じことを心配しているのだと分かり、
不安がさらに高まってくるのを感じた。

准は顔を上げた。
「倫ちゃんに、何か分からないか、聞いてみるよ。」
「…倫ちゃん?」
「うん。時田さんが交君を実家に連れて行ったって言ってたろ。
 先生の実家の方で、何かあったのかも知れない。」
「…うん。ありがとう、准君…。」

気にしないでよ、と笑顔で手を上げる准を見送ると、
可符香は、再び、ちゃぶ台の前に座り込んだ。

――先生、なんで、何も言ってくれなかったの…?

可符香は、両手をちゃぶ台の上につき、その中に顔を埋めた。


* * * * * * * *




16:旅立ちの時 前編 13/13
07/11/02 22:10:04 moFf+Us8
倫が、喫茶店で待つ准のもとに、息せき切って走ってきた。
「准!分かったぞ!」
「良かった!…どうもありがとう、倫ちゃん。」

「時田の奴、はじめはしらばっくれていたが、締め上げたら吐いた。」
倫は准の向かいに腰を下ろした。
准は、「締め上げた」の言葉が気になったが、あえて尋ねないことにした。

「お兄様、どうやら見合いの話があるらしい。」
「ええ!?また!?」
「いや、今回は『見合いの儀』ではなく、本格的な見合いだ。」
「…だって、先生には、杏ちゃんが…。」

倫は、ふむ、と腕を組んだ。
「お父様は、どうやら望お兄様を本気で跡継ぎに、と考えているようだな。
 いくら、冗談好きなお父様でも、さすがにそうなると…。」
「杏ちゃんは、糸色家にはふさわしくないってこと!?」
気色ばむ准に、倫はムッとした顔をした。
「私が言っているわけではないぞ。」
「あ、ごめんよ倫ちゃん、つい…。」
准は、倫に謝りつつも、口を尖らせた。
「…でも、てことは、先生は杏ちゃんに内緒で見合いに出かけたってわけ?」

倫が首を振った。
「それが…お兄様、実家にも姿を見せていないらしい。」
「え…。」
「時田の口ぶりだと、かなり見合いに抵抗していたらしいから…。」
「じゃあ、本当に、失踪…?」

准と倫は顔を見合わせた。
倫が、表情を曇らせて、呟いた。
「これは少し…心配だな。」


* * * * * * * *




17:430
07/11/02 22:10:55 moFf+Us8

と、ここまでで半分ですが、
他の職人さんの投下もあるでしょうから、とりあえず退避。
残りは、明日、投下します。

なんて言ってるうちに、例のヤツが戻ってきてまた規制されたりして。
これから出張も増えそうだし、いい加減、WILLCOM加入しようかなぁ…。


18:名無しさん@ピンキー
07/11/03 00:19:42 rI9yB22W
亀ですが、
>>1 さん乙です!


>>17
おかえりなさい430氏。
・・・とりあえず、続きが気になって寝付けませんw

19:名無しさん@ピンキー
07/11/03 00:41:38 G6shis98
前スレ>>637さんへ
お菓子あげるからイタズラさせろ! GJでした。

20:名無しさん@ピンキー
07/11/03 00:42:47 PczZgU+k
そういえば、明日が先生の誕生日だったっけか

21:名無しさん@ピンキー
07/11/03 00:46:09 vcb+nb+Z
百合板が急に活発になってきている気がする。
ここと掛け持ち組もいるのかな?作者。

22:名無しさん@ピンキー
07/11/03 01:26:46 NKJGqiCl
久しぶりに来てみたら、もう新スレ立ってたのか、、
前スレ>>636>>642 超GJ!
おあづけくらってる、このじれったさがたまらん

23:名無しさん@ピンキー
07/11/03 01:56:21 DdzTlvAV
>>17
あなたの文がとても好きだ
続き待ってるぜ


全裸で

24:430
07/11/03 10:07:10 hHyXEEu3
おはよーございます(って、もう「早い」って時間でもないか…)。
なんか職人さんもいらっしゃらなかったようなので、
とっとと後半落としちゃいますね。お待たせするほどのもんでもないしorz
えー、ちなみに、後半にはエロがありません。
相変わらず軸がぶれていてすいません。

あと、前編にも一部あって申し訳なかったのですが、
以前書いた自作SSのエピソードを勝手に入れ込んでいるので、
読んでいて「??」となった部分は読み飛ばしていただければ。


25:旅立ちの時 後編 1/13
07/11/03 10:08:18 hHyXEEu3
宿直室で、倫を伴って戻ってきた准から事情を聞いた可符香は、青ざめた。
見合いの話に、ではない。
その見合いを前に、望が姿を消した、という事実にだ。

何だかんだ言いながらも、望は、律儀な人間であった。
「見合いの儀」のときも、文句を言いながらきちんと実家に帰っていた。
それが、今、実家にも帰っていないということは…。

可符香の表情を見て、准が憤懣やるかたない、といった顔をした。
「まったく、あの馬鹿教師、何度杏ちゃんを泣かせたら気が済むんだ!」
と、倫を見て謝る。
「あ、と、言いすぎだったね、ごめん。」

倫は、首を振った。
「いや、准、お前が正しい。お兄様は、大馬鹿者だ。
 だいたい、お兄様ときたら、子供の頃から人に心配ばかりかけて…。」
と、倫の言葉が止まった。
准と可符香が、何事か、と倫の方を見る。

「もしや…。」
「なに?どうしたの?倫ちゃん。」
「お兄様の、行き先に、心当たりがある。」
「――!!」




1時間後、3人は、望の実家の方向へと向かう列車に乗っていた。
その中で、倫が話し始めた。
「お兄様は、子供の頃、体が弱くてな…。
 夏はいつも、奥の別荘に、1人で静養にやらされてたんだ。
 人の出入りが多い本宅では、体が休まらないだろうと言われてな。」

准が意外そうな顔で相槌を打つ。
「へえ、そうなんだ……先生1人だけで?」
「まあ、もちろん手伝いの者はいたけどな。」
「子供なのに、寂しくなかったのかな…。」


26:旅立ちの時 後編 2/13
07/11/03 10:09:34 hHyXEEu3
倫は、苦い笑いを浮かべた。
「寂しい、といえば、本宅の屋敷にいても同じだったからな…。」
「え…?」
「お父様もお母様も、お忙しくてめったに姿をお見かけしなかった。
 我々を育ててくれたのは、時田と、乳母や達だ…。」
「…。」
「特に、お兄様は、体調を崩して奥座敷で寝ていることが多かったから、
 友人も少なかったし…。」
「…知らなかった。先生も、倫ちゃんも、ある意味寂しい子供時代を 
 過ごしてきたんだね…。」
「ははは、まあ、人は沢山いたんだがな。」

准と倫の会話を、可符香は意外な気持ちで聞いていた。
――先生に、そんな子供時代があったなんて…。

今まで、可符香は、望は自分とは違い、誰からも愛されて
幸せな人生を送ってきたんだとばかり、思っていた。
体が弱く、大人だらけの大きな屋敷の奥で1人、
ぽつんと寝ている子供の姿など、想像もしたことがなかった。

――私、先生のこと、何も知らなかったんだ…。

「それにしても、先生が、病弱だったなんてね…。
 でも、確かに、見るからにひ弱そうだもんなぁ、先生。」
准の言葉に、倫は苦笑した。
「いや、見た目はあれでも、今では随分と丈夫になったんだぞ。
 上のお兄様達に、よってたかって鍛えられたからな。」

可符香は、ぼんやりと思い出していた。
――そういえば、前に、泳ぎを散々鍛えられたとか言ってたっけ…。

そのおかげで、自分は、望に命を助けられたことがあった。
2人が、初めて心を通わせたときの、北の果てでの遠い記憶。

――先生……会いたい…どこにいるの、先生…。
可符香は、膝の上で両手を握り締めていた。


27:旅立ちの時 後編 3/13
07/11/03 10:10:26 hHyXEEu3
望や倫の実家がある蔵井沢駅を過ぎ、列車はさらに山間部へと進んでいく。
列車は、やがて、小さな駅で止まり、可符香達はそこで列車を降りた。
秋の湿った落ち葉の香りが、ホームに降り立った可符香達を包む

倫は、駅でタクシーを拾うと、行き先を告げた。

タクシーの中で、准は倫に尋ねた。
「ところで、なんでここに先生がいるって思うの?倫ちゃん。」
倫は、小さいため息をついた。

「この別荘は、私やお兄様にとって、両親との幸せな思い出の場所だから…。」
「…?」
「夏の間、両親は、必ず1度は、幼い私を連れてここを訪れるようにしていた。
 …さすがに、お兄様のことが不憫だったのだろうな。
 そのときだけは、客も来ず、本当に家族だけの水入らずの生活ができたんだ。」
上の兄達はいないことが多かったけどな、と倫は笑った。
「本当に、楽しかった…。子供時代では、ほとんど唯一の、両親との思い出だ。」

倫は遠い目をしてタクシーの窓から外を眺めた。
「だから…お兄様が、家族のことで悩んでいるのだったら…
 一番に、ここに来ているのではないかと思って…。」
「…。」

准は黙り込んだ。
可符香も、痛む胸を押さえて外を眺めた。
外は、既に夕闇が濃く降りており、白い靄があたりに漂っていた。

――どきん。

白い、靄。
夢の中で見た光景が蘇る。

――さようなら、もう、会うこともないでしょう…。

遠くに消えていく、後姿。
首にはロープが巻きついて…。

「…いや。」
可符香は思わず、声に出して呟いていた。


28:旅立ちの時 後編 4/13
07/11/03 10:11:14 hHyXEEu3
「杏ちゃん?」
「やだ…先生…だめ…。」
可符香が両手を口に当てて震え始めた。
――だめ、もうこれ以上、ポジティブな考えなんか、できない…!

准は、驚いたように可符香を見ていたが、無言でその肩に手を回した。
倫は、自分も手を伸ばして可符香の膝をぽんぽんと叩くと、呟いた。
「…あの馬鹿兄……絶対に許さん…。」


タクシーは、瀟洒な別荘の前で止まった。
倫は、タクシーを返すと、懐から鍵を取り出した。

「さて、と…。」
倫が別荘の鍵を開けようとしている間、可符香は辺りを見回した。
と。
向こうの木立に、靄の中にぼんやりと佇む人影が見え、息を飲んだ。
「――先生!!」

倫と准が驚いたように可符香を見た。
可符香は、人影に向かって走り出していた。

人影が振り返り、驚いた顔でこちらを見つめた。
「可符香…何故…。」
可符香は、望に体当たりした。
「わふっ!」
そのまま、ぎゅっとしがみつく。
「先生の馬鹿!なんで、何も言わずにいなくなっちゃうんですか!」


* * * * * * * *


望は、自分に抱きついている少女を見ながら、驚愕していた。

何故、ここに可符香がいるのか。
顔を挙げ、遠くに准と倫が立ちすくんでいるのを見て理解した。
「ああ…倫が……うかつでした…。」

望は、相変わらずの、自分の脇の甘さに苦笑した。


29:旅立ちの時 後編 5/13
07/11/03 10:12:10 hHyXEEu3
望にしがみついたままの可符香が、顔を上げた。

「お見合いの話…聞きました。」
「え…。」
「先生、どうするつもりなんですか…。」
「…。」
「先生、私…大人しく身を引くから、お見合いを受けてください。」
可符香の言葉に、望は、目を見張った。

「なっ…、あなたは、いったい、何を言って…!?」
うろたえる望に、可符香は、目に涙を湛えて言った。
「私、たとえ、先生と二度と会えなくなったとしても、それでも、
 先生が、元気で生きててくれるんだったら、それだけで、いいから…。
 だから…。」

望は、思わず可符香から顔をそらした。

「いなく、ならない、で、ください、先生…!」

その場に、沈黙が落ちた。

望は、ゆっくりと、ため息をついた。
そして、可符香の腕をそっと外すと、別荘を見上げた。
可符香も一緒に、瀟洒な建物を見上げる。

「ここで…私は、両親から沢山の愛情をもらいました。」
「…倫ちゃんに、聞きました…。」

望は、別荘を見上げたまま続けた。
「私は…両親の恩に、背くことはできません。
 かといって、教師をやめて、政治家になるなど…
 ましてや、愛していない人と結婚することなど、できはしません。」

そう言うと、可符香を振り返った。
心から、愛しいと思っているのは彼女1人だけ。
しかし――。

「私は、あなたを、この糸色の家のしがらみに巻き込む勇気もない。」


30:旅立ちの時 後編 6/13
07/11/03 10:13:06 hHyXEEu3
「私は、そんな、心の弱い大人なんです…。
 こんな私は…この世にいる価値もない。
 却って、私なんかがいるから、両親もいらぬ期待をするのです。」
望は自分の手を見下ろした。

「私がいなくなれば、両親も、あきらめるでしょう。
 だから………。」

可符香の唇が震え始めた。

と、そのとき。

――どげしっ!!!
あたりに不気味な音が響いた。

望は、後ろから思い切り蹴り飛ばされ、地面に顔面から突っ込んだ。
望の後ろには、怒りマークを貼り付けた倫が、足を上げて立っていた。

「な、何をするんですか、倫!」
望は振り返ると、痛さの余り涙目で抗議したが、倫の怒声に遮られた。
「だまらっしゃい!この、馬鹿兄!!」

「ば…。」
望は、絶句して、年の離れた妹を見上げた。
倫は、顔を真っ赤にして怒っていた。
妹がこんなに激昂するのを見るのは、久しぶりだった。

「何を勝手に自己完結なさっておられるのですか!
 いいかげんに目を覚ましなさい、お兄様!」
「…。」

望の顔を見て、倫の表情が、少し和らいだ。
「お兄様…お父様も、お母様も、お兄様のことを愛しています。
 お兄様を苦しめてまで、跡を継がせようとは思ってませんわ。」
「いや、でも、お父様は…。」
「お兄様。」
倫がまた怖い顔をした。


31:旅立ちの時 後編 7/13
07/11/03 10:14:25 hHyXEEu3
「だいたい、お兄様は、今までに一度でも、お父様にご自分のお考えを
 お伝えになったことがありまして…?
 本当に、なんたるチキン!
 それでは、お父様も、お兄様のお気持ちを測りようがないじゃないですか!」

望は、唇を噛み締めた。
確かに、倫の言うとおりだった。
自分は、昔から、親に対して心からの要望を述べたことがない。

子供時代、元気で優秀な兄達に比べ、病弱で寝込んでばかりいる自分は、
この家の厄介者だと、いつも負い目を感じていた。

親に心配されればされるほど、申し訳ない気持ちが膨らみ、自分など、
この世からいなくなってしまえばいいのに、とさえ思うようになった。
思えば、望の自殺癖は、子供の頃からのこの思いの発露なのかもしれない。

厄介者の自分は、これ以上、親の期待に外れるようなことはできなかった。
たまに文句を言ってみたり、軽い抵抗を試みたりはするけれど、
兄達や倫のように、親に対し、自分の我侭を突き通すことはできなかった。

それでも、どうしても、親の期待に応えることができないのであれば…。
――私は、消えるしかないじゃないですか…。


と、そこに、もう1人の教え子が、倫の後ろから現れた。
「そうですよ、だいたいにおいて、先生は、自分が身を引きさえすれば
 それでいいと思ってる、それは大きな間違いですよ。」

望は、むっと准を睨み上げたが、准は気にしていないようだった。
「そんなの、一番、卑怯な解決方法だと思います。
 残された者の気持ちを何も考えない、自分勝手で、非道で、我侭な。」
「…そこまで言われると、さすがに腹が立ちますね…。」

「腹が立ってるのは、僕の方ですよ。
 …杏ちゃんの顔を、見てご覧なさい、先生。」
准の言葉に、望は、愛する少女の方へと目を向けた。


32:旅立ちの時 後編 8/13
07/11/03 10:15:21 hHyXEEu3
可符香は、事の成り行きに呆然としているようだったが、
その顔は依然青ざめており、眼の下には心労からくる隈ができていた。

「先生に、お見合いを受けてくださいって、さっきの杏ちゃんの言葉。
 杏ちゃんが、どんな気持ちで言ったと思ってるんです?」

准の言葉に、可符香がうつむいた。

――可符香…。

望の胸に、後悔が波のように押し寄せてきた。

――私は、自分のことでいっぱいで……、彼女の気持ちなんて…。
   
言葉もなく、可符香を見つめている望に、准が畳み掛けるように言った。
「杏ちゃんに、あんな顔させているのは、先生です。
 これで、先生がいなくなっちゃったら、杏ちゃんはどうなるんですか。
 いい加減に、ダメ大人から卒業してくださいよ、先生!」
准の語気が荒くなった。

望は、准を見、倫を見て、最後に、愛する少女を見た。
可符香が、顔を上げると、真剣な目で望を見つめ返した。

倫が准の後を続けた。
「教え子に意見されて腹が立つのだったら、
 見返してやればいいじゃないですか、お兄様!
 一生に一度くらい、逃げずに正面突破してご覧なさいませ!」

望は、もう一度、可符香の顔を見た。
――可符香…。
私は、何度、あなたを泣かせれば気が済むんでしょうね…。

望は、決心した。

「…分かりました。お父様に、会いに行きましょう。」





33:旅立ちの時 後編 9/13
07/11/03 10:16:39 hHyXEEu3
翌朝、望は、緊張の面持ちで、実家の敷居をまたいだ。
後ろに、准、倫、そして可符香が望の後を押すように続いている。

――教え子や妹に守られているようで、情けないですね…。

望はため息をついたが、実際にそうなのだから仕方ない。
望の姿を見て、驚いたように駆け寄ってきた使用人の一人に尋ねた。
「お父様は?」
「旦那様なら、今日は書斎で書き物をしておられますよ。」

父親が家にいるとは、これは珍しい。
望は、この幸運が何か幸先の良さを告げているような気がした。
続いて尋ねる。
「時田はいますか?」
「時田様なら、今、旦那様のご用事で外出中でございます。」

――しめた。

今、時田と対面したくはなかった。
あの老執事は、いつも望に、両親の期待に応えることを望んでいた。
ここにいたら、きっと大騒ぎをするに決まっている。

「では、あなたからお父様につないでくれませんか。
 ――望が、大事な話がある、と伝えてください。」
「は、はい…。」

慌てて屋敷の中に駆け込んでいく使用人を見送ると、望は振り返った。
「あなた達は、別室で待っていてください。」

「先生…。」
不安そうに見上げる可符香に、望は微笑んだ。
「大丈夫ですよ…もう、逃げたりはしませんから。」


* * * * * * * * *



34:旅立ちの時 後編 10/13
07/11/03 10:17:41 hHyXEEu3
可符香達は、応接室の1つで落ち着かなげに茶を飲んでいた。
「随分、時間かかってるね…。」

と、そこに、外から戻ってきたらしい執事が通りかかり、驚いたように足を止めた。
「これは、倫様…?それに、ご学友の方達も…。」
と言いつつ、その目は鋭く可符香を見やる。
「もしや、望坊ちゃまも、こちらに?」

「…お兄様なら、今、お父様と大事なお話中です。」
倫の答えに、時田のモノクルが光った。
「…そうですか…、では、私は、これにて失礼をば。」

「…お待ちなさい、時田。」
倫の静かな声が響いた。
時田が無表情のまま、ゆっくり振り返る。
「お父様のところに行こうというのでしょう。…いけません。」
倫は立ち上がると、時田の前に回った。

「お前が、お兄様を大切に思って…期待しているのも分かります。
 お兄様は、お前が育てたようなものだもの。」
時田の表情が、小さく動いた。

倫は、時田にはっきりと告げた。
「でも、お兄様の人生は、お兄様のものだ…お前のものではない。
 お前の期待は、お兄様を苦しめているだけです。」
時田の顔が悲しそうに歪んだ。

准と可符香は声もなく二人を見つめていた。

倫は時田の手を取った。
「時田…。私も、お兄様も、子供の頃から、お前のことが大好きだった。
 お前は、いつも私達を助けてくれた。
 だから…これからも、私達を助けて欲しいのです。本当の、意味で。」
時田の肩が、がっくりと落ちた。

ちょうどそのとき、応接室の扉が開き、疲れた表情の望が顔を出した。


* * * * * * * *



35:旅立ちの時 後編 11/13
07/11/03 10:18:47 hHyXEEu3
望は、目を丸くした。
応接室の扉を開けたら、目の前で倫と時田が手を取り合っていたのだ。
「倫?………時田?あなた方、何をしているんです?」

時田が、こちらを向いた。

「望ぼっちゃま…。」
自分のもとに歩み寄って来る時田に、望はやや怯んだが
ぐっと歯を噛み締めると、時田に向き直った。

「時田。お父様に、見合いはしない、跡も継がない、とお伝えしました。」
「…。」
「お父様は……、私の気持ちを、分かってくださいました。」

望は、挑戦的な目で時田を睨みつけた。
何か小言を言われたら、すぐさま言い返してやるつもりだった。

しかし、時田は、望に深々と頭を下げた。
「……時田?」
時田は、顔を上げると望に微笑みかけた。
「ご立派に、なられましたな、ぼっちゃま。」
「…!」

望は、混乱した頭で辺りを見回した。
つい先日まで、あんなにも頑なだった時田が、どうしたというのだ。
と、倫と目が合った。
倫は、望に向かってにっこりと微笑んだ。
望は、何があったかを、だいたい理解した。

――どうやら、倫には、一生分の借りを作ってしまったようですね…。

ため息をつくと、時田の方を向いた。
子供の頃から父代わり、母代わりであった時田に認められるのは、
本当のところ、何よりも嬉しかった。
「…時田……ありがとう。」

望は、嬉しそうに時田に微笑んだ。





36:旅立ちの時 後編 12/13
07/11/03 10:19:44 hHyXEEu3
「では、本当に、世話をかけましたね、時田。」
「とんでもないことでございます。お車は、よろしいのですか?」
「ええ、たまには、駅まで歩いてみようと思うので…。」
「さようでございますか。」

一同は、糸色家の門を出ると、駅に向かって歩き始めた。

先頭を歩いていた可符香が、望を振り返って笑いかけた。
「先生。私たち、これからは、もっともっと色々お話しましょうね。」
望は、まぶしそうに可符香を見返した。
「ええ…そうですね。」

望は、会見の最後の父の様子を思い出していた。

少し悲しそうな顔をしながらも、その目は慈愛に満ちていた。
――お前も、やっと、自分の守りたいものができたのだな…。

そのときの父の言葉を思い出しながら、望は可符香をそっと見た。

――守りたいもの。
自分の命よりも、大切に想っている少女。
なのに、自分は、またしても、この少女を自ら傷つけてしまうところだった。

――可符香を、守りたい。
彼女を守るために、自分は、もっと、強くなりたい…。

望は、生まれて初めてポジティブな考えが自分の中に生まれてきたのに気づき、驚いた。

――あなたが、私を、ここまで変えてくれたんですね…。

望は、前を行く可符香の後姿に、小さな声で呼びかけた。
「可符香…あなたが、高校を卒業して…教師と、生徒でなくなったら、そうしたら…。」

可符香が、振り向いた。
「ん?先生、何か言いました?」


37:旅立ちの時 後編 13/13
07/11/03 10:21:59 hHyXEEu3
望は、一瞬口ごもると、可符香に微笑みかけた。
「…いいえ、なんでもありません…。」

焦ることはない、と望は心の中で微笑んだ。
自分は、まだ、ようやく親離れしたばかりのひよっこだ。
これから、まだまだ壁に突き当たることもあるだろう。

――それでも、あなたと一緒なら、私は…。

望は、空を仰ぐと、太陽に向かい、思い切り明るい笑顔を見せた。






38:430
07/11/03 10:23:16 hHyXEEu3
以上です。
だらだら長いお話にお付き合いいただきまして、ありがとうございました。
テーマは「望君の親離れ」、副題「ダメ大人バンザイバンザイ!」でした。
本当に、お前ら一体誰なんだという状態ですね。

うーん、ラストシーンが微妙に真昼さんの『午後の紅茶』とかぶっているような。
…でも、けっして真似したわけではないんじゃないんですよぉ…orz

んで、以下は、オマケ小ネタです。
今回この2人は振り回されてばかりで気の毒だったので、ラブラブさせてみました。
こっちも完全に原型崩壊してますなぁ…。


39:おまけ小ネタ
07/11/03 10:24:09 hHyXEEu3
「いやー、しかし、ホントに毎回毎回、先生は何かしら騒ぎを起こすよなぁ…。」
「…すまないな、准。お兄様が世話をかけて。」
「って、何で倫ちゃんが謝るのさ。倫ちゃんだって被害者じゃないか。」
「いや、そこはやはり妹だし…。」
「…なんか、気に入らないなぁ…。」
「ん?」
「だって、倫ちゃん、僕が先生に迷惑かけたって、先生に謝ったりしないでしょ?」
「はぁ…?お前がお兄様に迷惑かけることなんかないだろう?」
「結局、僕より先生の方が倫ちゃんに近いってことか…。」
「な、お前、何を言ってるんだ!?」
「寂しいなぁ…。」
「おい!ちょっと待て、准、どこに行く!?」
いつになく渋い顔をして、倫に背を向けて歩き出す准に、倫は焦った。
慌てて追いかけたが、躓いて転びそうになる。
「きゃっ!!」
地面に激突する、と思ったが、准がはっとした顔で振り向き倫の体を抱きとめた。
倫は、自分が准の腕に包まれているのに気がつくと、
次の瞬間、がばっとその腕にしがみついた。
「り、倫ちゃん…!?」
准が驚いたような声を上げたが、倫は黙ったまま必死で准の腕をつかんでいた。
「…。」
と、頭の上から、准の小さなため息が聞こえた。
「……ごめん、倫ちゃん。さっきの泣き言は忘れて。」
倫が顔を上げると、准は苦笑を浮かべて倫をぎゅっと抱きしめた。
「考えたら、そういうところも全部含めて僕は倫ちゃんが大好きなんだよね。
 あーあ、惚れた弱みとは、よく言ったもんだよ…。」
「…!!」

――何を勝手に自己解決してるんだ…お前、お兄様より性質が悪いぞ…!

倫は心の中で叫ぶと、赤くなった顔を准の胸にそっと埋めた。


40:430
07/11/03 10:25:28 hHyXEEu3
…今気がついたんだけど、交を連れてかえるの忘れてた…。

では、戻ってきていきなり大量レス消費、どうも失礼いたしましたm(__)m


41:名無しさん@ピンキー
07/11/03 11:39:33 cP++EX5r
もうこれで一本ドラマを作るべきだ。GJ!!

42:名無しさん@ピンキー
07/11/03 13:45:35 DV8MV9yd
もはやパロの領域を越えて一つの作品として見れるぐらい秀作!
このくらいうまく書けたらなぁと思っちゃいますね!GJです!!

43:名無しさん@ピンキー
07/11/03 14:18:10 7XbCqlNo
この二つのカップルすごくいい!GJ!

44:名無しさん@ピンキー
07/11/03 15:04:58 7ubIKLQO
何か別々に保管されてるけど不知の涙って作品もn6w50rPfKwさんの作品らしいな

45:名無しさん@ピンキー
07/11/03 19:17:03 ZDWo7N8A
久々の430氏の可符香×望キテターーーーー

46:名無しさん@ピンキー
07/11/04 02:27:09 IRLmFVdv
もう430さん以外の人は投下しなくてもいいよ!

47:名無しさん@ピンキー
07/11/04 04:05:06 XIz/A4zq
よくないよ!

さて
糸色先生誕生日おめでとう糸色先生

48: ◆n6w50rPfKw
07/11/04 08:05:57 Dgg6wRQs
>>44
おっしゃるとおりです。「不知~」を上げたときには、トリップをつけていなかったんで……

>>46
投下させちくりよー

おっと、肝心なことを。430さんGJ!

49:名無しさん@ピンキー
07/11/04 10:14:29 lUdBJbsa
>>46
貴様…何て事を…

50:名無しさん@ピンキー
07/11/04 10:48:26 baq443eF
角煮に居た荒らしと同じ人種だろ
スルー汁

51:名無しさん@ピンキー
07/11/04 12:09:36 rO9sBXuH
友達のトモダチは大抵自分 by改蔵

52:名無しさん@ピンキー
07/11/04 12:49:36 rTAWmD02
>>51
それは・・・つまり・・・

53:名無しさん@ピンキー
07/11/04 12:53:29 iT5dYunz
アルカイダの構成員がミンスに居たのか

54:名無しさん@ピンキー
07/11/04 18:48:57 dvrwMXBK
あやつは民主ではなく自民であろ

55:名無しさん@ピンキー
07/11/04 20:37:57 IEIKl9V2
マズい流れになってきてるな……

56:名無しさん@ピンキー
07/11/04 20:39:39 eutHD0X9
ともだちで連想

もしも羽美が20世紀少年の世界にいたら

57:名無しさん@ピンキー
07/11/04 21:35:33 gk4IL0ZE
>>46 おねがいだからしんでください

58:名無しさん@ピンキー
07/11/04 22:02:33 pvoehw3Z
そうですね、じゃあもうしません。

59:名無しさん@ピンキー
07/11/04 22:07:44 zv3NDL8m
まずい流れだ

60:名無しさん@ピンキー
07/11/04 22:14:32 baq443eF
誕生日なんだから誕生日ネタSSの一本や二本期待してもいいですか・

61:名無しさん@ピンキー
07/11/04 22:24:59 +Lw+n3Be
投下止まってるな・・・
本気で>>46はテロリストだな

62:430
07/11/04 23:17:10 IV2yqb3f
何で戻ったとたんにこんなことになるんだろう…orz
何か却って申し訳ないです…。

本当に、マジでどなたか投下、お願いいたします…!


63:名無しさん@ピンキー
07/11/04 23:32:00 baq443eF
あんま騒ぎ立てると>>46が調子に乗るから気をつけましょう

64:名無しさん@ピンキー
07/11/04 23:40:14 IV2yqb3f
あ…ごめんなさい…。

65: ◆n6w50rPfKw
07/11/05 00:03:37 Dgg6wRQs
うう、私にも責任が……

では、誕生日祝いという訳でもないのですが、今書いているものの序盤をアップします。

この間ちらっと申したように戦隊物で、明るく爽やかなえっちを目指しました。
今回投入分は非常にライトなので、特にNGワードはありません。

66:名無しさん@ピンキー
07/11/05 00:05:32 Ui6xLoYk
>>46の下らない発言を真に受ける方がおかしいんだよ

67:絶望戦隊ノゾムンジャー 1
07/11/05 00:11:37 im3dC1bV
 ここは糸式望女子問題調査隊、略して絶好調である。隊長はもちろん我らが糸色望。スウィーツ好きのイケメンである。
元禄時代より続く名家である糸色家の後継者として将来を嘱望されている身でもある。
それなのに、望は高校教師などという稼業に手を染めてしまっている。
それだけならまだしも、年の離れた妹と同じような年齢の娘子たちとのトラブルに巻き込まれてばかりいる。
これでは、糸色家、ひいては旧糸色家領地内の民草の安泰が危うい。

 そこで、彼の日常生活を監視し、可能な限り未然に、やむをえない場合は事後にトラブルを解決し、
もって糸色家の安寧を図ることを任務とする、絶好調が生まれたのである。
いわば糸色家防衛隊の一部として活動していると思ってもらってよい。

 隊員は、望の教え子や同僚のうち、彼と関係を持った者の中から厳選されている。
普段は女子高生・職員として望と同じ学校に通っているが、ひとたび事件が起きると、特殊コスチウムに身を包み、問題解決のために尽力するのである。

     ☆

「おお、新規開店の案内が!」

 絶好調の隊長室で、望がいつになく喜色満面といった調子で何やらチラシを持っている。
隊長を囲むのは隊員のうち、当番として絶好調に詰めている、千里・晴美・あびる、そして奈美。特に望と親しい面々だ。

「どうしたんですか、隊長?」
「銀座の有名洋菓子店『アルフォンス・ミュシャ』が小石川に支店を開くんですよ。
 開店初日にこのチラシを持っていくと、特製ピスタチオプリン1パック10個入りをを無料でプレゼントしてくれるんですって。
 それでですね、開店日が今日なんですよ」
「先生は本当に甘いものが好きですねぇ」
奈美が呆れたような声を出す。
「普通の反応ありがとうございます」
「普通って言うなぁ!」
「はいはい。他にも美味しそうなスウィーツがたくさんありそうですから、よく見て選んで来ますね。三時のおやつは任せてください」
 奈美のいつもの反応をさらっと受け流し、望は身支度を整えた。

「じゃあ行ってきますね。皆さんの分もありますから、どうぞお楽しみに」
「ちょっと、隊長!」
「書類が溜まってますよ」
 晴美とあびるの声が聞こえなかったようなふりをして望が部屋の外へ向かう。
「隊長~!」
 千里の僅かに怒気を含んだ声にも耳を塞いだまま、望はいそいそと出かけていった。

     ☆

「本当にもう、先生ったら! 帰ってきたらきっちりお仕置きしないといけないわね。」
千里が額に青筋を立ててプリプリしている中、あびるがくだんのチラシにふと目を留めた。
「あら?」
「どうしたの? あびるちゃん」
晴美が尋ねた。
「この店の名前なんだけど」
あびるが封筒を指さした。
「先生が言っていた名前と微妙に違ってるわ。ほら」

 彼女が指さしたところを一同が覗き込む。
「本当だ!」
「アノレフォソス・ミュツャ」
「ばったものみたい」
「隊長、大丈夫かなあ……」
「まあ、いい年をした大人だからだいじょうぶでしょう。」

 だが、それきり望は三時のおやつ時どころか、夕食時を迎えても帰ってこなかった。

     ☆


68:絶望戦隊ノゾムンジャー 2
07/11/05 00:18:34 im3dC1bV
「遅いわねえ」
「隊長、どうしたのかしら。」
「もしかして、大人街で悪い遊びでも……」
「なんですって! 許さないんだか…」

 ここで突然ドアが開いき、まといがよろめきながら入ってきた。着衣がひどく汚れ、ところどころすり切れていて、髪もいつも以上に乱れている。

「うう……」

 まといが床にへたり込んだ。皆が弾かれたように立ち上がって彼女を取り囲む。

「大丈夫? しっかりして」
「何があったの?」

 まといは声を絞り出した。

「うう……ご、ごめんなさい。目の前で、た、隊長を……」
それだけ切れ切れに言うと、ガクリと首を垂れた。気を失っていた。

「医務室に連れて行くわ!」
「お願い!」

 ストーキングの達人として、望の日常生活の監視を続けているまといをここまで虚仮にした者はこれまでいない。
望を拉致した者は只者ではない。
いったい誰が、何のために!? 突発的な事態に浮き足立つ絶好調。
だが、間もなくさらなる激震がもたらされることになる。

「いったい、何が……」

 奈美が不安になって呟きかけた言葉は、けたたましい館内緊急警報によってかき消された。

「緊急警報! 緊急警報! 隊長の位置情報発信装置からの電波が途絶えました! 隊員は直ちに作戦会議室へ集合して下さい! 繰り返します。隊長の……」

 皆が一斉に立ち上がった。
「ああ、やっぱり!」
「だからあれほど言ったのに!」
「帰ってきたら、きっちりお仕置きね。」

     ☆

 絶好調の全員(三六協定で休暇中の可符香を除く)が作戦会議室に集合した。
手当を受け、意識を回復したまといも簡易ベッドに横たえられたまま、部屋の隅にいる。
室内には、既に副隊長の智恵(教職員で唯一の隊員であるが、実質的に絶好調の影の隊長である)が待機している。
内勤で文書作成を任務としている霧が、集まってきた面々にてきぱきとレジュメを配付する。
皆がざわつく中、突然、正面の大型ディスプレイに外部からの強力な通信が混入してきた。
通信係の芽留がしばらく格闘していたが、智恵に指示を仰いできた。

『副隊長! 異常な波形の通信で、遮断が困難です』

 智恵は腕組みをしていたが、眉一つ動かさずに指示を下した。

「いいわ。おそらく敵からの通信でしょう。スクリーンに映しなさい」

智恵は最後に目配せをした。芽留も智恵の意図に気付いたようだ。

『……はい』



69:絶望戦隊ノゾムンジャー 3
07/11/05 00:26:20 im3dC1bV

 芽留が装置を操作していると、突然画面に女性の顔が映し出された。長身の艶やかな美人である。
ブロンドはカエレのものよりさらに艶があり、緩やかに波打っている。

「あ、あいつ、う……『最高の女』だわ……」
 簡易ベッドから首をもたげたまといが呟く。

『絶好調の皆さん、ごきげんよう』
「くっ……」

 何とも艶っぽい声が流れてきた。その媚びを含んでいるようなベタッとした甘い声色は、妙に智恵たちを苛立たせた。

『こちらは〆布家望獲得プロジェクト、略して希望プロ。
 用件だけ言うわね。そちらの隊長、望さんは私たちが預かっています』

ここで画面が切り替わり、女の全身が映った。
最高の女が、ぐったりとして目を閉じた望をお姫様だっこしているように見える。
だが、よく見ると、望の両手足には細いワイヤーがかけられていて、画面上方に延びている。
そして、上半身は赤いロープで幾重にも括られている。服が所々はだけ、青あざが見え隠れしているのが痛ましい。

「かなり拷問されてるわね……」
あびるが冷静に分析する。

 ここで最高の女は望の袴をめくり上げ、妙に生白い太腿を露出させると、柔らかそうな内腿におもむろに接吻した。

『あふぅん』

 望の喘ぎ声がした。絶好調の全員が聞き覚えのある、隊長が本気で感じているときのものであった。

 最高の女の目に邪悪な光が宿る。手がすうっと望の股間に伸びると、妖しい動きでまさぐる。手の微妙な動きに合わせ、望が
「あっ、あぅ、ん」
と押し殺した声を漏らしているのが聞こえてくる。

 望をいたぶりながら女が言葉を継いだ。

『要求は簡単よ。糸色家が我々に無条件降伏し、望さんを我々〆布家に婿入りさせること。
 そして、ここ小石川と蔵井沢にある糸色家の利権をすべて我々に譲り渡すこと。
 そうすれば我らの「希望」プロジェクトは第一歩を踏み出せます』
「な、何ですって!」
『それまで望さんは預かっておくわ。そちらから意思表示があるまで、そうねぇ……まぁ婚前交渉の一環として、せいぜい楽しませてもらうわね』

「くっ!…………」
千里やまといが歯噛みをして悔しがる。

『どう?さっさと降伏する? それとも、実力でこのコを取り戻しに来るぅ? どちらにしても早くしないと……』

 ここで最高の女は望の袴をぱっとはだけ、局部を露出させた。
下着は既に取り去られていて、ありのままの絶棒がスクリーンに大映しになった。
そうしてどういう指技を施していたのか、早くも先走りの露を滲ませて屹立している絶棒に顔を寄せ、いとおしげに舌を這わせ始めた。

「あっ!」
「や、止めてぇ!」


70:絶望戦隊ノゾムンジャー 4
07/11/05 00:32:50 im3dC1bV
 だが、最高の女は固くなった茎を上から下へねっとりと舐め下げ、下から上へいやらしく舐め上げていく。
その舌捌きは真夏に美味しいソフトクリームを急いで舐め取るように、一点の隙もない。
女は幾度となくピンクの舌先を望の茎に往復させていた。
が、不意に、透明な涙が一滴滲んだ頭に妖艶な唇をぱっくりと被せ、そのまま深く飲み込んでいく。

「いやあ! それ私の!」

思わず何人かの隊員が悲鳴混じりの声をあげた。

 ディスプレイの中で、最高の女はまるで絶好調の面々に見せつけるかのように、ゆっくり顔を上下させている。
おそらくは口の中でも、舌先が敏感なくびれや裏筋を的確に舐め回しているに違いない。
しかも、絶品の舌技を施しつつ、指先を絶棒の根本に添え、男の芯に微妙な刺激を送り込んでいるのを智恵は見逃さなかった。

―あれは、古来より伝わる禁忌の房中術、筒涸らしの術!
智恵の顔色がわずかに変わった。

 早くも達するのか、望が緊縛された全身をしきりに捩っていたが、ぴくぅんっっと大きく痙攣したのを境にぱったりと動かなくなった。
最高の女は、何かを美味しそうにほおばっていたが、やがて絶棒から口を放すと、ごくりと喉を鳴らして望の屈服の証を嚥下していく。

『うっふふ……美味しかったわよ♪』
「く、悔しい!」
「おのれぇ!」
『早く来ないと、このままぜ~んぶ絞り取っちゃうわよ。それとも、私たちの僕として改造しちゃおうかしら』

「本音はそっちね」
智恵が低く呟く。

『じゃあ、待ってるわよ~』
ここで通信が途絶えた。

 会議室に重苦しい沈黙が広がりかけたが、すぐに智恵が指示を出した。

「仕方ないわ。すぐに隊長の救助に向かってちょうだい。なんとしても改造される前に救い出すのよ!」
「はいっ!」
「音無さん!」
『解析できてます。奴らは小石川区内ポイントC地点にいます』
「流石芽留ちゃん。よくやったわ。そうね……木津さん、小節さん、加賀さん」
「はい」
「あなた方が出撃して。フォーメーションH、パターン69」
「了解っ!」

 かくて絶望戦隊ノゾムンジャーは、隊長救出という史上かつてない重要な任務を帯びて出撃することになった。
頑張れ、絶望戦隊ノゾムンジャー! 負けるな、絶望戦隊ノゾムンジャー!!


71:絶望戦隊ノゾムンジャー 5
07/11/05 00:45:00 im3dC1bV

 通信を終えた最高の女は、望をベッドに投げ出すと、改めて四肢を革バンドで大の字に拘束した。
望はある程度はベッドの上で身を捩ってみたものの、とうていそこから逃げ出すことは出来ない。

 望の全身の青あざは、もちろんキスマークによるものである。
ケーキ屋に似せて造られた罠にまんまと吸い寄せられた望は、あっさり〆布家本部アジトに連れてこられた後、すぐに衣服をはぎ取られた。
そして、宇宙の真理を知っている団地の奥さんに望の性感帯を全て探査・発見された。
その憎いほど的確な指示の基で、須寺夫人や目尻に小皺のある妙齢のメイドを始めとする微妙な女性たちによって、
それらをことごとく青あざが出来るほどキツく吸い上げられたのだった。
この刺激により、望の性感は体の芯の奥の奥から掘り起こされることとなった。
今や望は全身を快感スポットに覆われていると言っても良い状態になっている。
つまり、どこを触られても快感で悶えるほどえっちな体になってしまっているのである。



「うう……もう、放してください」
「あらぁ……うっふふ、この人質さんは面白いことを言うわねぇ」

 女はますます笑みを深くしながら望の耳たぶをてろっと舐め、うひゃぁという声を上げさせた。
そうしておいて、そっと耳たぶを摘み、顔を寄せると耳元で優しく呟いた。

「なめるんじゃねーぞ、このウスノロ」

驚愕した表情の望を見下ろしながら、女はあくまで優しく、だが絶望的に宣言した。

「お前はこれからすぐ改造手術をしてやる。我らの従順な僕として、死ぬまでこき使ってやるわね。
 いや、死んでも使い続けてあげるわ。
 ……うふふ……あっはははぁ………お―っほっほほっほほほ……」

 女の高笑いはしばらく続いた。




72:名無しさん@ピンキー
07/11/05 00:53:41 66uIa/BV
やっぱ430さんのでないとおもしろくないや。
430さん、傑作の投下お待ちしています。

73: ◆n6w50rPfKw
07/11/05 01:05:42 im3dC1bV
 木津千里は、レッドチリに変身した。赤いセーラー服(これが千里の特殊コスチュームである)に身を包んだレッドチリが、C地点の正面突破を図るべくダッシュしかけたその時である。

「木津さんじゃない。何してるの?」

 突然声を掛けてきたのは准であった。

「今忙しいの。後で!」
彼の脇を駆け抜けようとしたレッドチリだったが、その腕を准がはっしと掴んだ。

「ちょ、ちょっと、久藤君! 何をするの!」
「木津さん。ボク、お話を聞いてほしいんだ」
「え!? この非常時に、何を……くっ……」
手を振り解こうとするが、まったく准の力は緩まない。変身後のチリのパワーは常人の5倍はあるから、これは明らかに異常事態である。

「お願いだから、聞いてよ」

 准の声は相変わらず淡々としている。
 おもわず准の顔を覗き込んだレッドチリの目に飛び込んできたのは、彼の目に妖しく輝く邪悪な赤い光であった。
吸い込まれるようにその光を凝視しているうちに、レッドチリの力がすうっと抜けていった。

―こ、これは!
「じゃあ、話すよ。
 『私こと木津千里は、糸色望先生のことを考えると身体が火照って仕方がない。
 いけないことだとは分かっていても、つい手がアソコに伸びてしまう』

―な、なんて破廉恥な! ああ、でも、手が!

 驚いたことに、千里の意志に反して、手が秘所に伸びていった。

―ああ、駄目よ、ダメ! 私ったら、どうしたのかしら……。



74: ◆n6w50rPfKw
07/11/05 01:07:00 im3dC1bV
さきほどのが6番目ですな。

では、今晩はここまでです。また後日投下に来ます。

75:名無しさん@ピンキー
07/11/05 01:29:09 nakcqKAh
千里が・・俺の千里が・・・
>>74GJ!!
続きを楽しみに裸待機!

76:名無しさん@ピンキー
07/11/05 01:31:06 zb8yxB5P
お疲れさま。続きもよろしく。

77:名無しさん@ピンキー
07/11/05 02:42:00 /qQ2q8Gh
はじめまして、初めてお話を考えたので聞いてください。
エロくはないです。3レスの予定です。

78:さよならティエリア先生 1
07/11/05 02:43:30 /qQ2q8Gh
気が付いたらその青年は、姿見の前に立ち尽くしていた。
私は一体何を‥‥ 思い出せない‥‥
紫味を帯びたストレートの髪が美しい。切れ長な瞳に知的な眼鏡が光る。
何だこの格好は‥‥
昔存在した日本の文学者が好んだ服装のようだ、自分にはとても古臭く思えた。
着替えを探し、自然と在り処がわかった普段あまり開けることの無い洋服箪笥を引き出す。
チャラチャラした服の中からピンクのカーディガンを身に纏う。
何故だろう、とても落ち着く。

  少女は憂鬱だった。原稿に追われて今年のハロウィンの準備が出来なかったのである。
  当日の夕方もぽてぽて参考資料を読みながら帰路に付くだけであった。
  どかっ! 住宅街の角で何者かと出会い頭にぶつかってしまう。

  見上げた先にどこかで観た事があるような青年が立ち尽くしていた。
  紫味を帯びた髪、切れ長な瞳に知的な眼鏡。
  その美しさに不釣合いなファンシーなピンクのカーディガン。
  (えっ?ティ‥‥  ・・・・・先生?)
  彼女に圧し掛かっていたメタボな憂鬱は、絶望砲の衝撃に吹き飛ばされた!

青年は夕刻迫る街を彷徨っていた。自分が何者なのか糸色 いや糸口を掴むために。
住宅街の辻でてれてれと漫画を読み耽ける少女にぶつかられた。
セミロングに眼鏡、少し私に似ているかもしれない。
彼女は私を見つめしばし驚いたような顔をしていた。やはり私に縁のある者だろうか。
自分の事を問おうとしたその刹那セイエ‥ はしゃいだように叫んだ。
  『ティエリア先生っ!』
「私はティエリアではありませーん!!」
不思議なことに自然と突っ込みが出た。

79:さよならティエリア先生 2
07/11/05 02:45:00 /qQ2q8Gh
はて、ティエリア‥ 先生? そうだ、確か私はティエリアという名だった。
師と仰がれるような尊い活動を先導していた気がする。
  『先生、嬉しいです!あんなに嫌がる素振りをしていたのに
   私がプレゼントしたウィッグ愛用してくれているんですね!
   しかもピンクのカーディガンなんて用意周到!』
「わ、私はヅラなど愛用していませんから!」
また自然と言葉が出た。
「大体あなたはどちら様です?私はティエリアです、多分。あなたとは初対面ですよね。」
  (そうか、ちょっと微妙だけど先生なりきってるつもりなのね!)
「実は私、記憶を無くしてしまったようなのです。あなたの話からティエリアという名を思い出しました。
. 私について知っている事があるなら教えてもらえませんか?」
  (ははあ、記憶喪失の振りをして特徴を聞き出すつもりね。じゃあ私も応えてあげなきゃ!)
  ニャマリ
  『はじめまして、私は藤吉晴美、あなたの大切な存在なんですよ。
   先生は悪の秘密結社、それ廃れてるビーイングのガンダムマイスターなのよ。
   力には力で対抗してジャイアンみたいに世界を改革しようとしているのよ!』
  (ちょっと間違っていてもわかりやすいようにさらっと極端に教えるほうが効果的ね。)
「ありがとう、大切な事を思い出しました。」
  『先生、今日は私間に合わなかったけど、今度一緒に行きましょう。先生がその気になってくれて嬉しい!
   それじゃ私、また締め切りあるからこれで、さよならティエリア先生。』

断片的な情報の中から思い出した記憶があった。そうだ、私は革命活動をしていたのだ!
ティエりあ!?のようなものは使命感に燃え、猛然と夕闇を駆けていった。
  『先生、頑張って!似る似ないは関係ないわ、その勢いさえあれば今夜の主役になれるのよ。』

「私はティエリア先生!ソ連スタイルのガンダムオイスターだ!俺がマンダムだ!」
. ジークイオン!岡田ミニストップ!僕が政界を一番上手く扱えるんだー!」

80:さよならティエリア先生 3
07/11/05 02:46:30 /qQ2q8Gh
 朝刊 
ハロウィンの夜更け 安田講堂占拠のお騒がせコスプレ教師御用
昨晩、安田講堂によじ登り「自分は人気アニメの主人公だ!」 などど仮装姿で
意味不明な声明をわめき散らしていた教師が、駆けつけた警官隊に取り押さえられた。
同容疑者は以前にも類似の手口で謎の垂れ幕を提示するなどの事件を起こし、
工作員の疑いもあり引き続き取調べを行い余罪の追及に当たっている。


留置場に押し込められ、頭上の紫が地に堕ちた瞬間、望は帰ってきていた。
はっ、私は一体何を!?  ‥そうだ、藤吉さんに押し付けられたこのヅラ、
コスプレなんてどこが良いのかと鏡を見たところまでは覚えているのですが‥

              ⌒ヽ-、_
             _,.--`‐ヽ \、_  
        ,r " ̄ ̄  __      ` -,        /\   /\   /\   /\   /\ 
       v'  /     ゙‐-、  ヽ  \     /.  \/   \/   \/   \/   \  
     /  /    /'´/  /  /  . | ∨  .ノ   幺ク 亡 月 |  ┼‐ .|] |]       
.   _,/   //     / //    /   ヽ \  小巴 三l三. ヽ_ノ / こ o o
    ̄ `'ヽ /      /'´/  /  /  .| ∨∧  ヽ 
      / '  / | //   // / ィ /| /┤|  / 試しに被ったヅラの因縁に絶望した!!
      / /  | | |/ /∠、 彡 ´/ /∠イV  / 
    l//  | |/代汀ヘ≧='彡ィfjアノ / イ  /    神谷のアホっ!お調子者~! 
      |/| ( ト l|`/  ̄   ´ヽ__,_i' ̄イイ l|   ̄ ̄.|     /ヽ、  /\   /\    /
      ′ | しゝ ゝ、   rソ⌒V` / イ|   (ヽ、//\/   \/   \/   \/
        |ヘヘ     ̄  - / イ l /     ヽ´ヽ、ヽ
         V|ヽ   ,. __¬ /| /|/  (,ゝ、  \ ヽ l、
         _V >     /        ヽ、 ヽ、 | | ! l
        /\ /\   ̄ |          ヽ ヽ/  l | l
        / # ヽ   >,--|\           〉  `ヽ l/ 
      /#    #\/  O /ヽ ヽ          /      ,!

81:ティエリア先生 後記
07/11/05 02:47:31 /qQ2q8Gh
絶望した!容姿といい中の人といい、ハイレベルキャラクターポータビリティーに絶望した!
という印象が発端となってこのティエリア先生は埋まれました。
藤吉さんが先生に無理矢理ヅラを被せる原案が発端となり、
ティエリアのAAを絶望先生に勝手に改造している時にこのお話を思い浮かべました。
それでは。

82:名無しさん@ピンキー
07/11/05 03:06:15 WEQ2jSJV
ワロタwwGJ!

83:名無しさん@ピンキー
07/11/05 03:15:42 sQpSOEKG
>ティエリアのAAを~
ワロタ

84:名無しさん@ピンキー
07/11/05 03:29:33 N6HaWkM8
>>74
>略して絶好調 ってwwww。
>>81
ティエリア先生 wwwwwww. 。

ダメだ、この人達天才すぎるw。GJ!!

85:名無しさん@ピンキー
07/11/05 08:49:19 gnbq7OvF
>>81
うますぎwwGJ!

86:名無しさん@ピンキー
07/11/05 13:01:03 ZM9k7Mfo
こんなに反響が大きいとは思わなかったwww
このスレを紹介した甲斐があったってもんだwww

87:名無しさん@ピンキー
07/11/05 14:09:59 EE+9/UGz
>>86
元スレ見てきたw
住人達の自由さにワロタww

88:名無しさん@ピンキー
07/11/05 22:29:51 xBBA8VjU
絶望した! 元ネタがわからない自分に絶望した!

89:名無しさん@ピンキー
07/11/05 22:56:59 W/YkInn8
>>88
さよならティエリア先生
スレリンク(shar板)

90:名無しさん@ピンキー
07/11/06 01:21:04 EtrEF86u
絶好調wwwww

91:名無しさん@ピンキー
07/11/06 01:56:13 OtiNd7ZE
おお、GJ!!ギャグっぽくておもしろいエロだった!!

92:名無しさん@ピンキー
07/11/06 02:14:06 gKZ2j5ng
ティエリア先生はこっちが元ネタじゃなかったのか…

スレリンク(anichara2板:498-502番)

93:77
07/11/06 02:42:00 vTVwFzis
すみません、混ぜてました。エロくないんでここでいいのかな?と迷った挙句の
ティエリアには先生視点を、藤吉さんには藤吉さん視点という形にしていました。
結果的に推敲されここで完成となったのですがマルチっぽくなってすみませんでした。

94:名無しさん@ピンキー
07/11/06 12:34:41 +Ze6CDPH
まったく付いていけん。

95:名無しさん@ピンキー
07/11/06 16:20:09 y5SBjiHk
>>74
面白くてどんどん読んじゃったよ
続きを待つ!

96:名無しさん@ピンキー
07/11/06 22:16:30 zDNjOra8
エロパロ保管庫って
非エロ作品は保管されないんですか?

97:名無しさん@ピンキー
07/11/06 23:35:33 f1QSPDxj
とりあえず、聞く前に保管庫の作品を読んでみるといいんじゃないかな

98:名無しさん@ピンキー
07/11/07 00:01:43 ryaXi9OU
最近は、1日投下がないだけで禁断症状に陥る自分がいる
慣れとは恐ろしいものだナミアムダブツナミアムダブツ…

99:名無しさん@ピンキー
07/11/07 00:03:04 qmRqIGT/
>>96
たぶん保管されているかと。


一応「エロくない作品はこのスレに」というのもあるが、ジャンルはバラバラのようだ。

100:名無しさん@ピンキー
07/11/07 01:25:52 NGNNCpZk
>>97否エロは真昼の雪やさぼてんの花位感動するのしか保管されないのかと思ってましたがコミカルなのもありましたすいません


>>99エロパロに投下したSSで一括りでジャンルはバラバラなんですな


エロなしでシリアスな旧姓の続編書いたんですが大丈夫そうですね

101:名無しさん@ピンキー
07/11/07 01:50:07 qmRqIGT/
>>100
むしろシリアスなのもあった方がいいと思う。期待。

102:名無しさん@ピンキー
07/11/07 04:05:47 sDANF0pj
>>98
>ナミアムダブツナミアムダブツ…

ワザとなのか本気で間違えたのか、きっちりしなさい!

103:305
07/11/07 18:19:15 /wUQBlaw
お疲れ様です。

>>62 >>65
すいません! すいません! 私が遅筆なのが悪いんです・・・・・・って、加害妄想ですから! お二方!ww

◆n6w50rPfKw氏、保管庫でしか見れないと思ってましたが、まさか立ち会えるとは・・・!
305と申します。よろしくです。 
簡単に挨拶だけさせて頂きます。


えーと、真夜で短編作ってきました。
・・・エロなしですが、よろしくお願いします。

104:真夜:全力で伝えたい私がいる
07/11/07 18:21:07 /wUQBlaw
ガラ、ガタカタ・・・コト・・・・・・

人気の無い放課後の廊下。通りがかりの保健室の中から聞こえてきた物音に、先生は足を止め、怪訝そう
な顔をして入り口の方を振り返った。

(・・・おかしいですね。智恵先生は今日はもう帰られたはず。――小森さんは宿直室にいましたから、多
分違いますよねえ・・・・・・)

先生は入り口に近づき耳を澄ます。・・・パサッ、という軽い布のような音が聞こえる。取っ手に指を掛け、
僅かに力を入れると鍵が掛かっていない事が分かった。
中に誰かいる事は確かのようだった。先生は一呼吸置いて、ゆっくりと引き戸を開けてみる。

「えー ・・・誰かいるのでしょうか?」

まだ夕暮れには早い時刻だったが、照明の点けられていない室内は少々薄暗い。その室内に、入り口に
背を向けて佇んでいた少女がこちらを振り返った。
睨まれたような錯覚を受ける鋭い目線に、先生は一瞬怯むが、すぐにその相手が誰なのかを思い出した。

「ああ、三珠さん。・・・どうされました? 怪我を・・・・・・されているのでしょうか?」

先生は真夜の手元に視線を置いて、戸惑いながらそう尋ねた。
智恵先生のデスクの上には、包帯や、ガーゼ、脱脂綿などが取り出してあり、その脱脂綿には血を拭いた
様に赤い色で染まっている物が混じっている。
真夜は先生に尋ねられて、首を捻ってデスクの上に広げた物に視線を落とした。
――と、その真夜の前髪の間から、赤い筋が眉間の間を通り、鼻筋の上へと流れ落ちた。

「み、三珠さん・・・・・・!?」

驚いた先生の言葉でそれに気が付いたのか、真夜は慌てて、流れ落ちた血をガーゼで押さえた。



指で髪を掻き分けながら丁寧に消毒した傷口を、先生は脱脂綿で押さえた。
「・・・傷自体は深くないようですが・・・・・・なにぶん頭ですからねえ。気分が悪かったりはしませんか?」
真夜は丸椅子に腰をおろし、先生に手当てをしてもらいながら、軽く首を横に振った。
先生は片手でパッケージを開けて包帯を取り出し、片端を、傷口を押さえた手で摘んでゆっくりと伸ばす。
「しかし・・・三珠さん、どこかで頭をぶつけられたのでしょうか? 他に怪我は?」
包帯を巻きながら先生に尋ねられ、真夜は再び、首を横に振る。

数回巻きつけ、適当なところでハサミで切ると先生は紙テープを取り出した。包帯をテープで固定しながら
ちょっと冗談めかした口調で、
「まさか、誰かに殴られた―― なーんて・・・・・・」
苦笑混じりのその言葉に真夜の両肩が ビクリ! と大きく震える。
その反応に先生の動きが止まり、手に持っていたテープを落としてしまった。

「ま、マジですか!? いや、ホントに誰かとケンカしたという事なのですか!?」

強張った表情で自分の顔をのぞきこむ先生に、真夜は、やや間を置いてから首を横に振った。

「三珠さん! 正直に言ってください。ケンカしたんですか? ・・・もしくは、イジメられたのですか?」

真夜は何も答えず、気まずそうに先生から視線をそらした。
先生は一つ咳払いすると、屈みこんで真夜の肩にそっと手を乗せる。


105:真夜:全力で伝えたい私がいる
07/11/07 18:22:08 /wUQBlaw



真夜は息を弾ませながら自クラスの教室に辿り着くと、少し震える手で自分の机の中に手を突っ込んで、詰
め込んであるものを引っ張り出そうとする。
掻き出すように集めた所で、ハッと気が付いたように顔を上げ、何かを探すように忙しなく教室内を見回す
。その視線が、部屋の隅にあるくず入れで止まり、真夜はくず入れに駆け寄ると、容器に被せてあるゴミ袋
を外し、再び自分の机に駆け戻る。

「三珠さん?」

ちょうどそこで、真夜を追いかけてきた先生が教室に姿を見せ、それに動揺したのか、真夜は机にぶつか
ってしまった。
その拍子で傾いた机から、出しかけていた物がバラバラとこぼれ落ち、真夜は反射的に手を伸ばして、最
初に落ちてきたバットを掴む。
しかし、勢いが付いていたらしく、机の中の物は次々と音を立てて床に落ち、散らばってしまった。

バットがもう一本に、ハサミが数本と、着火マンがいくつも転がっていた。
すべてに「まよ」と書かれた名前が貼り付けてあるのが見える。

先生は言葉を失ったように呆然と床に散らばった品を見ているようだった。

真夜はのろのろと、先生の顔と床を交互に見て、

――じわり と、その瞳に涙がにじむ。

「・・・・・・あ」
先生が声を掛ける間もなく、真夜は掴んだままのバットを持って身を翻し教室を飛び出して行ってしまった。


「三珠さん・・・・・・」
しばし、一人きりになった教室に立ちすくんでいた先生は、困ったように頭をかきながら真夜の落としていっ
た物に近寄り、バットを手に持ってみる。
「・・・わりと丸い文字なんですね。名前――ひらがなで書くのがお好きなんでしょうかね・・・・・」
指で文字をなぞり、苦笑を浮かべて肩をすくめると、先生は落ちている物を拾い集め、真夜の机に戻してい
った。





106:真夜:全力で伝えたい私がいる
07/11/07 18:23:29 /wUQBlaw

日が落ちかけた空は一面が茜色に染まっている。遠くを飛んいる二つの黒い影はカラスだろうか?
彼方へと寄り添うように飛び去って行く影をぼんやりと眺めながら、真夜は橋の上に佇んでいた。
手に握り締めたままのバットを見つめた。
所々が変形して窪み、やや汚れているが、何度も巻きなおしたグリップはすっかり手に馴染み、隙間なく握
り締める事が出来ている。
目線に持ち上げたバットのの向こう側に、飴色に染まった川面が見えていた。
流れは緩やかで、あまり水深も無いのか、鯉のような魚が泳いでいるのが見て取れる。

真夜はしばらく川面を見つめていたが、やがて、バットを持った手をゆっくりと後ろに振りかぶった。

――と、大きく振りかぶった腕を誰かに掴まれ、真夜は少し後ろに仰け反り慌ててバランスを取り直す。

腕を掴まれたまま首を捻って後ろを見ると、そこには困ったような笑みを浮かべた先生が立っていた。

「・・・・・・悪い子ですねえ。」

ぽつりと言った先生の言葉に、真夜は先生から目をそらした。
先生は掴んでいた真夜の腕をそっと離した。真夜は、腕を下ろしたが、先生には背を向けたまま振り向こう
とはしない。

「・・・駄目じゃないですか。・・・不法投棄ですよ?」

真夜は困惑した表情を浮かべて振り返り、先生を見上げる。そして、自分の持っているバットに気が付き、
少し肩をすくめた。
再び、背を向けて川面を見つめる真夜に、先生は苦笑を浮かべてその肩に手を置いた。

「分かってますよ三珠さん。・・・先生は、分かっています。・・・・・・あれは、あなたじゃ無いんでしょう?」

返事をしないまま、真夜は顔をそむけたまま、唇を強く横に結んでうつむいた。
先生は少し口を開いて笑みを浮かべたように見えた。 ポンポンと、その肩を手で叩く。

「・・・・・悪い子ですねぇ。ほんとに。」

うつむいて、ただ川面を見つめ続ける真夜を見ながら、先生は、そっと後ろに隠し持っていた物を取り出し
た。

――コツン

何か硬い物が自分の頭に触れた感触に、真夜は驚いて振り返る。

見覚えのあるバットが頭に当てられていた。
それを握っている先生は、真夜が自分を見つめたタイミングに合わせるかのように、あっ、と口を開いて見
せて、わざとらしく慌てて頭を掻いた。


107:真夜:全力で伝えたい私がいる
07/11/07 18:24:14 /wUQBlaw

「――はは。・・・先生も意地悪しちゃいましたよ。」
一瞬の間を置いて、驚いた表情のままだった真夜の顔がほんのりと赤く染まった。
先生は少し、はにかむように頬を指で掻いて、真夜の頭に手を乗せた。包帯の下の傷口には触れないよう
に、優しくその頭をなでる。

「三珠さん。先生は、余計な事を言わない子は大好きですから――ね?」

頭を撫でられながら、真夜は恥ずかしそうに先生から視線をそらした。


ボチャン・・・

不意に川面から聞こえた重い水音に反応し、先生は川を覗き込んだ。
「・・・おや。この川、魚がいますね。・・・フナ・・・・・・いや、鯉でしょうかね?」
誰とは無しに呟いた先生は、いつ間にか正面にいたはずの真夜の姿が無くなっている事に気が付いた。

「・・・・・・え?」

真夜の姿を確かめようとする間も無く。

ゴッ!!

唸りを上げてフルスイングされたバットが先生の背後から襲い掛かり、鈍い音と共に先生の体は宙に浮き
、橋の欄干を越えて飛び出して頭から水面に突き刺さる。

激しい水音に掻き消されたのか、先生の悲鳴は聞こえなかった。
先生の姿は一旦水中に沈み、しばらく泡立つ水面だけが見えていたが、

「死んだらどうする!?」

叫び声と共に、水しぶきを上げて先生の上半身が水面に生えた。
水位は腰までしか無い様で、水を滴らせて川の中に立ち上がりながら、先生は橋の上を振り返った。

夕日が逆光になっていて、ほぼシルエットしか見えないが、真夜がバットを片手に、そこに佇んでいる様子
は分かった。
その顔は影になっているが、真夜の口が嬉しそうに笑みを浮かべているように見える。

「・・・犯人なわけが無いです!」

先生は一言叫んで、仰向けに倒れ、そのまま水面に浮いて見せた。
その表情には苦笑が浮かんでいる。
真夜は手すりから身を乗り出して先生を見つめると、紅潮したその顔に満面の笑みを浮かべ、

――先生に向かって、力一杯バットを投げつける。

夕暮れの川辺に、悲鳴と水音が響き渡った。





108:305
07/11/07 18:25:48 /wUQBlaw
お粗末でした。

では、また。 礼。

109:名無しさん@ピンキー
07/11/07 18:45:36 Q74XPGhG
保管庫のアドレスおしえて下さい

110:名無しさん@ピンキー
07/11/07 19:34:30 flHwuSZL
>>109 >>1


111:名無しさん@ピンキー
07/11/08 00:17:04 Bb2G93sO
真夜かわいいよ真夜

しかし無粋なこと言うが、智恵先生はSCなんだよな

112:名無しさん@ピンキー
07/11/08 00:52:53 C5HUQfbN
真夜かわいいー、本編でもこのくらい出番ほしすGJ!!

113:名無しさん@ピンキー
07/11/08 05:20:08 Z5x7gdk+
 川のほとりで、千里はお姉さんの側に座って、することがないのでとても
退屈になってきていました。お姉さんの読んでいる本を覗きこんでみたけれ
ど、そこには猟奇的な絵や暴力的な会話もありませんでした。「猟奇も暴力
も無い本なんて、ちっとも面白くないわ」千里は考えました。

 千里はひなぎくのジュースを作って、お姉さんに注射したら楽しいだろう
けど、立ち上がってひなぎくを摘むのも面倒だし、どうしたらいいものかと
考えました。昼間で暑いし、眠いので考えるだけで大変でしたが。すると突
然、ピンクの目をした白いうさぎが千里の側を走っていったのです。

それはそんなに言うほどのことはありませんでした。さらに千里は、うさぎ
が「大変だ! 大変だ! 生肉になっちゃう!」と呟いているのを聞いても、
たいしておかしいこととは考えませんでした。
うさぎがチョッキのポケットから懐中時計を取り出して、それを見て、また
仕舞い、急いで走りだしたとき、千里も手にスコップを持って駆け出しました。
チョッキのポケットに懐中時計を入れているうさぎは見たことがないし、うさ
ぎの生肉を見たこともないのに気が付いたのです。千里は好奇心いっぱいに
なってうさぎを追いかけて、うさぎが茂みの下にある大きな穴に飛び込むとこ
ろにちょうど間に合いました。

つづきません、保管庫にも入れないでね。


114:名無しさん@ピンキー
07/11/08 10:26:01 nDdMp1ec
アリス千里キター!

115:305
07/11/08 10:31:04 fZd0zoST
ごめんなさい! やっちゃいました!

>>104 と >>105 の間に 1レス入れ忘れてました!
申し訳ない・・・orz

いまさらですが、レスさせてください。 土下座。

116:真夜:全力で伝えたい私がいる(104.5)
07/11/08 10:33:13 fZd0zoST

「大丈夫です。先生に話してごらんなさい。・・・心配しなくても、誰かに話したりしませんから。」

そう言って、真夜に微笑んでみせる。真夜は少し困ったように眉を寄せながら、先生の方に向き直った。
先生は一つ頷いて、真夜の肩をポンポンと叩く。

「安心して下さい。先生はそういった、乱暴したりとか、誰かに意地悪する人は、大嫌いですから。何でも話
してごらんなさい。」

ビックゥ!

真夜は、目を見開き体を大きく震わせて息を飲み、その場に硬直した。
ゴクリとその喉が鳴り、小さく震えている。

「三珠・・・さん? どうしました? 気分でも悪いのですか?」
顔色が変わった真夜の様子に気が付き、先生は首をかしげた。
真夜はしばらく、口を小さくパクパクとさせていたが、やがて何かを思いついたように椅子を蹴って、突然そ
の場に立ち上がった。

「ど・・・・・どうしたんですか!?」

先生の問いには答えず、真夜は戸を開けて廊下に飛び出すと、一目散に何処かへ駆け出していった。
静かな廊下に反響する足音が遠ざかってゆく。

「三珠さん!?」

一瞬遅れて、訳が分からないといった顔のまま、先生も保健室を飛び出した。




117:305
07/11/08 10:34:19 fZd0zoST
ごめんなさい・・・・・・orz
以後、注意いたします!

118:名無しさん@ピンキー
07/11/08 10:40:14 ZVMphj80
>>117
ああ、これで納得
昨日から首をひねっていたのさ GJ!

>>113
再現率高いな!GJ!
千里アリスに魚目で「こうもりは猫を食べるかしら?」とかやって欲しいw

119:名無しさん@ピンキー
07/11/08 12:37:15 bujkWndR
先生とカフカは付き合っていました
夏休みには2人で島に行く計画も立てていました
なのにカフカはトラックに引かれて死んでしまいました
先生は絶望して自分も死のうと首を吊ろうとしました
すると死んだはずのカフカが現れて先生を止めました
先生はカフカの想いに心を打たれて死ぬのをやめました
そして強く生きようと心に誓ったのでした ちゃんちゃん

120:名無しさん@ピンキー
07/11/08 22:02:04 nDdMp1ec
>>116真夜はまさに乱暴したりいじわるする人だからなあ~切ない


>>101様の意見に後押しされ「旧姓」の続きを投下いたします
前回はコミカルに終わりましたが今回はシリアスでエロ抜き
凄惨で繊細な感じにしてみました

121:ヤンデレな神が支配する 前編壱/六
07/11/08 22:04:59 nDdMp1ec
問題、
一生癒える事のない傷を負ってしまいましたどうすればいいでしょうか?

答え、
その傷を負わせた者の一生を終わらせればいい


こんな道徳感ゼロ社会適応性ゼロ
まるで野蛮な原始時代の住人の様な答えをする少女木津千里


その傷を負わせた者はさっきダム建設により水底に沈む村で刺して切って刻んで掘って叩いて埋めてきた

だがその者の一生を終わらせても一向に心は晴れない
「うっうっうっ先生・・・・・」

最愛の教師とは初めから何もなかった
全て自分の勘違いだった北極で遭難した先生が真っ先に自分の前にも現れたり
前世で夫婦だったと知り今でも愛し合っていたと思っていたのに

心に大きく開いたこの穴はなんでもできちゃうキッチリスコップにさえ埋める事は出来ないんだ


ダム予定地は山奥だったため戻って来た時辺りは開いた穴の様に真っ暗な闇夜に包まれていた


「うっうっひっくうぐう・・・・・」
ガラガラガラガラガラ

泣き声とスコップが引きずる音は夜の町に響くばかり
その悲哀の二重奏に気が着いた少女が一人

「えっ千里!?こんな夜中にどうしたの!?」

122:ヤンデレな神が支配する 前編弐/六
07/11/08 22:07:48 nDdMp1ec
晴美は戸惑いの色を隠せなかった
珍しく学校を休んだ親友がこんな夜中に血塗られたシャツを着てスコップを引きずり
一人で泣いてるだなんて

「千里!一体どうしたの!?」

急に聞き慣れてた声が耳に入り千里は涙で揺らめく幼じみの姿に少し驚いた

「は・・るみ?」


「そんな格好おまわりさんに見られたらどうすんの!
私の家近いし来て」


晴美はやや強引にぬぐった涙に濡れ震える手を引き自宅まで連れて帰った
夜遅くまで同人誌を描きコンビニでコピーを取った帰りの思わぬ再会
両親は既に寝ており
幸い上の兄も帰ってこない

「顔はびしょ濡れだし泥だらけだしシャワー浴びなよ
服は私のに着替えて良いから」


スコップは玄関に置き
半ば強引に血塗られた服を脱がせて風呂場に入れる
「ひっ!手に血がついた
なんか暖かいし!!」

一体何がどうなってるんだろう訳がわからない

シャワーと手を洗うため捻られた蛇口から出た水
二つの水音が鳴り響く中混乱しつつも晴美はとてつもなく嫌な予感はしていた

123:ヤンデレな神が支配する前編参/六
07/11/08 22:11:43 nDdMp1ec
涙と泥と血を洗い落とせたのか千里は晴美が置いたパジャマに着替えた

しかし目の焦点は定まらず眉はいつもの様な気丈な釣り上がりを失っていた
左右対象だった真ん中分けも整える様子はない
髪だって几帳面なはずなのにきちんと拭かれず
水滴がポツポツとしたっていたのだ


そのまま行き慣れた晴美の部屋に入ったがまるで幽霊の様に生気がなかった
「きょ・・今日はどうしたの?
風邪でも引いたの?
それとも交通事故にでもあったとか・・・・・」


幼い頃からよく知る彼女がまるで別人の様に様変わりしている
きっと何か相当な理由があるに違いないと問い質す
「・・・・・」

「あっ話したくないなら話さなくて良いのよ」

「・・んを・・して埋めたの・・・・・」

「えっまた先生埋めたの?」

彼女が先生をよく埋めてるのはよく知っている
だがいつも埋めた後は喜んでいるとゆうのに
何故なんだろう


「私、一旧さんを殺して埋めてきたの・・・・・」

「ええぇーーーッ!?
なんで一旧さんを不自然消滅させたの!!!!
旧ザクのプラモからポロロッカしてガンダムアニメに入ったから!!??」

「違うわ、昨日帰りに河原で無理矢理レイプされたから。」

124:ヤンデレな神が支配する 前編四/六
07/11/08 22:14:36 nDdMp1ec
幼なじみ千里は昔からきちんとしていない人を殺してるかの様な節は多々あったがなんとか見て見ぬフリを通して来た

しかしそんな彼女が強姦され復讐のために殺すなんて
悪い予感はしたがこれほどの事だとは

「私ん家からの帰りに・・そ・・そんな・・・・・」

「しかもね、復讐しようと千里眼で一旧さんの居場所突き止めたら倫ちゃんにも乱暴していて、
先生にまで暴力奮っていて・・・・・
旧姓が欲しいだなんて理由でよくも!よくも!
殺しても殺したりないわよお・・・・・」

「・・千里・・・・・」


再び泣き始めた親友にどう声をかけて良いかわからない
どんな慰めをかければいいのかわからない程むごい事実を黙って聞く他なかった


「私馬鹿よね、
犯されながらあいつの口から先生とは何もなかったと聞かされるまでずっと初めてが先生だと、
責任を取れと先生に迷惑かけていたなんて。

ごめんね晴美、こんな話聞かせてごめんねごめんね・・・・・」


委員長とアダ名されるほどしっかり者の彼女が顔を真っ赤にして泣き崩れている

125:ヤンデレな神が支配する 前編伍/六
07/11/08 22:18:01 nDdMp1ec
慰める言葉を選んでる場合じゃない
一番苦しい時支えてあげなくちゃ
親友なんだもの
晴美は千里の肩をそっと抱いた

「うっううっううっ・・・・・」


震える肩ごしに伝わってくる彼女の憎しみが、苦しみが、悲しみが、弱さが、切なさが、
彼女の負った深い深い心の傷を自分は癒す事も引き受ける事も出来ない

だからせめて少しでも私の胸の中で楽になってほしい
どうか・・どうか・・


「うううごめんね、こんな私でごめんね・・・・・」

「いいのよいいのよ、
例え世界中が敵になっても私は千里の味方よ

だから千里は千里のままでいいんだよ」


「は・・るみ・・」


その夜はずっと親友の胸の中で泣き続けた
この世の誰よりも優しくて
何よりも暖かくて
何処よりも安心できる場所だったから


「あれ千里、泣き疲れて寝ちゃったの?
しょうがないなあフフフ」

ベットに寝かせ電気を消し布団を被り藤吉晴美は眠りにつく
赤ん坊の様にうずくまる木津千里を守る様に抱き抱えながら

126:ヤンデレな神が支配する 前編六/六
07/11/08 22:27:21 nDdMp1ec
翌朝千里を家に送り届けた
彼女の両親に本当の事を話せるわけもなく

「少し体調が良くなり気分転換に散歩していたら
交通事故で野良犬が死んでいたので
一緒に埋めてあげたら彼女の気分が悪くなり
家で一旦休ませたら眠ってしまった」


と嘘をつくと娘の親友とゆう事もありすんなり信じ聞き入れた


「ほらスコップと服も洗っといたよ
じゃあ学校行くね
千里は調子良くなってから来て」


「・・うん・・・・・」


彼女はスコップと服を受け取り
憂いの中に微笑を浮かべると自宅に入っていく


―でもその日、千里は学校に来る事はなかった―

127:名無しさん@ピンキー
07/11/08 22:29:54 nDdMp1ec
はい、最初からいきなり重くて後半は若干百合入ってすいません
中編と後編は百合なしなので
よろしこうお願いします

128:名無しさん@ピンキー
07/11/08 22:35:08 2Eel7uJN
>127
お疲れ。かなり長そうですね。

129:名無しさん@ピンキー
07/11/08 22:39:38 aOkzSuVL
>>127
どうか最後は千里が幸せになれますように…!

130:名無しさん@ピンキー
07/11/08 22:50:26 j3jZa1Tu
ところで倫は誰がなぐさめてくれのかな?のぞm

この後は汚れていて読めなくなっている

131:名無しさん@ピンキー
07/11/08 23:58:40 PhsvCiMi
GJ!なんだかシリアスな展開・・・?

>旧ザクのプラモからポロロッカしてガンダムアニメに入ったから!!??
のはずなのにここで笑わせるなwww
そんな理由で殺されたら浮かばれんわ

132:430
07/11/09 00:12:53 1gW7Wfd1
>>305さん
はい、確かに加害妄想だったかも。逆に良くないですよね。
しかし、すっかり真夜エキスパートですね!真夜可愛いよ真夜。
そして、305さんの書く余裕のある大人な先生が大好きです。

>>127
これは、またシリアスな…っ!
千里がカワイソ過ぎて心が痛くなります。
どうかどうか、千里を幸せにしてあげてください…!

えーと、改めましてこんばんは。
懲りずに投下させていただきます…。
試験前に何故か机の上を片付けてしまうように、
仕事でテンパるとSSを書いてしまう今日この頃。
人として部下として、かなりヤバイです。

最近キャラの中で先行きが一番心配な、大草さんのSSです。
またしても無駄に長いです。


133:As it will be 1/14
07/11/09 00:14:57 1gW7Wfd1
私は、高校に入ると同時に結婚し、間もなく子供を生んだ。

大恋愛の末の結婚だったし、当初は反対していた親も最後は認めてくれ、
順風満帆、幸せな結婚生活を送る……はずだった。

夫に、あんなに生活能力がないとは思わなかった。
夫は、決して悪い人ではない。心が優しすぎるのだ。

仕事で何か嫌なことがあるとふさぎ込み、家にこもってしまう。
そして、パチンコなどの遊興に逃避する。
結局仕事は長く続かず、我が家の家計はいつも火の車だった。

最近は、家に帰ってこないこともある。
帰ってくるときに香水の匂いをさせていることもあった。

親には、必ず幸せになって見せると大見得を切った手前、
今の状況を知られたくなかったし、絶対に頼りたくなかった。
そんなわけで、私は今日も、学校の昼休みに内職の造花作りに
精を出していた。

「麻菜実ちゃん、精が出るね。」
風浦さんが私を見て、「手伝うよ。」と一緒に造花を作り始めた。
それを見て、他のクラスメート達もわらわらと集まってくる。

「どう?この芸術的なシルエット!」
「晴美!そこは、こうやってきっちり作らないとダメでしょ!」
「…千里のは直線的過ぎて、もはや花じゃないよ…。」
「マリアもできたヨー。ほら。怪獣花!」
「だめよ、マリアちゃん。私に貸してみて。」
『…お前のは、可もなく不可もなく、ホントに普通だな!』
「普通って言うなぁ!」

…皆の気持ちは嬉しいんだけど…余り、役に立ってないかも…。

そこに、
「なにやら楽しそうですね。私も混ぜてください。」
このクラスの担任の、糸色先生が、ひょいと顔を覗かせた。


134:As it will be 2/14
07/11/09 00:16:16 1gW7Wfd1
千里ちゃんが立ち上がって先生にビシっと指を突きつけた。
「お気楽なこと言わないで下さい!遊びじゃないんですよ!
 これには、大草さんの生活がかかってるんですから!」
「え、そ、そうなんですか…。」

先生は、怯んだように千里ちゃんと私を見比べた。
……事実ではあるが、余りはっきり言われると傷つく。

「だいたい、先生、担任なら、大草さんの窮状を助ける、
 何らかの動きがあってしかるべきでしょう!」

え、ちょっと待って。
それは、だいぶ話が違う。

しかし、私が何か言う前に、風浦さんが立ち上がった。
「それなら、いい方法があります!」
風浦さんは、両手を高く差し上げた。
「先生の下に会員(子)を募り、またその下に会員(孫)を募り、
 倍々で増やしていくのです!!」
「その方法は、すでに経験済みです!!
 またマルチ商法で逮捕されるのはまっぴらですよ!」
「だったら、先生が教祖になって、信者からお布施をもらうとか!」
「それだって、結局は詐欺ですからあぁぁあ!!
 風浦さん、あなた、どうしても私を犯罪者にしたいんでしょう!
 絶望した!生徒が教師を罪に陥れる現代社会に絶望した!!」
「それって現代社会とは関係ないから…。」

なんだか、話が横に逸れていったようで、私は内心ほっとした。
皆が、楽しみ半分に造花作りを手伝ってくれるのと、
他人から援助を受けるのとでは、全然話が違う。
それくらいなら、とうの昔に、親に頼っている。

私は、すっかり風浦さんに手玉に取られている先生を、ぼんやりと眺めた。

――ダメ大人の典型みたいな人なのに、けっこう人気あるよね…。

頭を振り、造花の片づけをしようとして、ふと視線を感じて顔を上げた。
…先生が、私のことを気遣わしげな目で見つめていた…。


135:As it will be 3/14
07/11/09 00:17:17 1gW7Wfd1
週末、私は野球場でビール売りのバイトをしていた。
このバイトは、サーバーが重くて腰に来るし、背中は冷たいしで、
けっこう辛いのだが、その分バイト料は、造花作りなどとは比較にならない。

今日は朝から暑く、ビールが飛ぶように売れていた。
サーバーを交換しながら、足元がふらつくのを感じる。
朝から、ロクにモノを食べていない上に、この炎天下。
――これは、少し、何か口に入れたほうがいいかもしれない…。

そのとき、ファウルボールがこちらに向かって飛んでくるのが見えた。

――危ない!
と思ったが、打球は思ったより前方に落ちた。
誰かに思い切り当たったみたい…鈍い人がいるものだ。

「…ん?」
よく目を凝らすと、それはうちの担任教師だった。
ファウルボールの直撃を受けたらしく、めそめそと泣いている。
――ああ、もう、本当にこの人は…。

声をかけると、先生は振り向き、
「痛かったよぉぉぉぉお!」
と抱きついてきた。
私は、つい、息子にするように、
「はいはい、痛かったですねぇ。」
と頭をなでたが、腰に回された先生の手の存在が、何故か気になる。

下腹に埋められた先生の顔が、涙を拭くように、すり、と動いた。
「…っ!」
思わず、反応してしまった自分に、次の瞬間赤くなった。
最近、夫に触れられていないせいかもしれないけれど
こんな場所で、しかも先生相手に、なんて…。

私は、頭がくらくらして、目の前が霞んでくるのを感じた。
先生が、顔を上げて何か叫んだ。

最初は、恥ずかしさの余り気が遠くなったのかと思ったけど、
どうやら、貧血らしい。
そう思った次の瞬間、意識がブラックアウトした。



136:As it will be 4/14
07/11/09 00:18:18 1gW7Wfd1
気が付くと、私は、自分の家の畳の上に、布団を敷いて寝ていた。
「…あれ…?」
「…気が付きましたか。」

驚いて振り返ると、先生が壁に寄りかかって胡坐をかいていた。
「せ、先生…?なんで…?」
先生は苦笑した。
「あなたが、しきりに自宅に運べと言い張ったんじゃないですか。」
全然、記憶がない。
「球場の方が、こちらまで運んでくださったんですが、
 ご家族の連絡先が分からなくて…。私が担任だと言ったら、
 残ってあなたを看るよう言いつけられました。」

申し訳ありませんが、勝手に財布を探らせていただきましたよ、
と言いながら、先生は家の鍵をぶらぶらさせた。

と、先生は、いきなり表情を改めた。
「それにしても、貧血なんて…きちんと食事はしているんですか?」

私は先生から目をそらして時計を見て、あっと声を上げた。
「どうしました?」
「大変、子供を迎えに行く時間が…!」

息子を預けている託児所の引き取り時間はとうに過ぎていた。
慌てて身支度をしようとして、再び眩暈に襲われる。

そんな私を見て、先生が立ち上がった。
「IDカード、財布の中にありましたよね。」
「え…。」

先生は、私の財布から託児所のIDカードを取り出した。
「私が、代わりに迎えに行ってきます。」
「ちょ、ちょっと待ってください、先生!」
しかし、先生は、さっさと部屋を出て行ってしまった。

私は、さっきより強い眩暈を感じて、布団に倒れこんだ。


137:As it will be 5/14
07/11/09 00:19:24 1gW7Wfd1
先生は、程なくして戻ってきた。
その頃には、私の眩暈は、なんとか治まっていた。

息子は、先生の腕の中ですやすや寝ている。
「どうも、すいません…。」
「いいえ、どういたしまして。可愛い息子さんですね。」

息子を先生から受け取り、2階に寝かせると、私は下に降りて行った。
先生は、台所の椅子に座って、辺りを見回していた。
「先生、本当にご面倒をおかけしました。」
深々と頭を下げる。

先生は、私のバイトの予定がびっしりと書き込まれたカレンダーを
ぼんやりと見ながら、呟いた。
「大草さんは、なんでこんなに頑張ってるんですか。」
「なんで、って…。」

先生が、私の方を向いた。
「もう少し、気楽に生きたっていいじゃないですか。」
「…気楽に生きてたら、一家が路頭に迷います。」
「そうでしょうかね?」
先生の言葉に、私はムッとした。

「先生みたいな真正のお坊ちゃまには分かりませんよ。」
私の不機嫌が伝わったらしく、先生は、小さい声で呟いた。
「私は…。ただ、あなたが随分無理をしているように見えるので…。」

…無理は、してますとも。
でも、そうしなきゃやっていけないんだから、仕方ないじゃないですか。
この間は追証までかけられちゃったんだし。

「あなたには、ちゃんと、夫君がおられるのでしょう?」

…そのことは、今、触れられたくなかった。
ここのところの夫の不在の事実が、痛みを伴って胸に蘇る。
私は、両腕で体を抱えるようにして、先生から顔をそらした。


138:名無しさん@ピンキー
07/11/09 00:20:07 sdF+6YFm
私も無駄に長いの書いていますが、過疎ってきたら穴埋めに投下します。
というかまだ完結してない...

139:As it will be 6/15
07/11/09 00:20:49 1gW7Wfd1
ははは、14レスじゃなくて15レスもあった…orz



と、先生が、椅子から立ち上がる音がした。
足音がして、私の横に、影が落ちた。
見上げると、すぐ隣に先生が立っていた。

先生は、囁くような声で尋ねた。
「ねえ、あなたは、今、幸せなんですか…?」

私を見る先生の目には、質問以上の意味が、含まれていた。
私だって、初心な小娘ではない…それくらいは、分かる。

私は、一歩後ろに下がった。
先生が、その分、前に歩を進める。
我が家は狭い。すぐに、私の背中は、壁に突き当たってしまった。

先生が、私の両脇の壁に手をつき、私の退路を塞ぐ。
「どうなんですか、大草さん…。」

はい、幸せですと答えれば、きっと先生は私を解放するだろう。
でも、ここで、違うと言ったら――。

私は、先生を見上げたまま逡巡していた。
言葉が出てこない。

自分がどうしたいのか、よく分からなかった。

先生は、立ち尽くす私をしばらく黙って見下ろすと
「分かりました…いいですよ、答えなくて…。」
そう言って、私を抱き寄せた。

私は、形ばかりの抵抗を示してみた。
「先生、だめです…夫が…上には、息子も…。」
ほとんど機械的に呟いた言葉は、先生の唇にふさがれた。



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