07/11/07 18:22:08 /wUQBlaw
真夜は息を弾ませながら自クラスの教室に辿り着くと、少し震える手で自分の机の中に手を突っ込んで、詰
め込んであるものを引っ張り出そうとする。
掻き出すように集めた所で、ハッと気が付いたように顔を上げ、何かを探すように忙しなく教室内を見回す
。その視線が、部屋の隅にあるくず入れで止まり、真夜はくず入れに駆け寄ると、容器に被せてあるゴミ袋
を外し、再び自分の机に駆け戻る。
「三珠さん?」
ちょうどそこで、真夜を追いかけてきた先生が教室に姿を見せ、それに動揺したのか、真夜は机にぶつか
ってしまった。
その拍子で傾いた机から、出しかけていた物がバラバラとこぼれ落ち、真夜は反射的に手を伸ばして、最
初に落ちてきたバットを掴む。
しかし、勢いが付いていたらしく、机の中の物は次々と音を立てて床に落ち、散らばってしまった。
バットがもう一本に、ハサミが数本と、着火マンがいくつも転がっていた。
すべてに「まよ」と書かれた名前が貼り付けてあるのが見える。
先生は言葉を失ったように呆然と床に散らばった品を見ているようだった。
真夜はのろのろと、先生の顔と床を交互に見て、
――じわり と、その瞳に涙がにじむ。
「・・・・・・あ」
先生が声を掛ける間もなく、真夜は掴んだままのバットを持って身を翻し教室を飛び出して行ってしまった。
「三珠さん・・・・・・」
しばし、一人きりになった教室に立ちすくんでいた先生は、困ったように頭をかきながら真夜の落としていっ
た物に近寄り、バットを手に持ってみる。
「・・・わりと丸い文字なんですね。名前――ひらがなで書くのがお好きなんでしょうかね・・・・・」
指で文字をなぞり、苦笑を浮かべて肩をすくめると、先生は落ちている物を拾い集め、真夜の机に戻してい
った。