【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合23at EROPARO
【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合23 - 暇つぶし2ch41:名無しさん@ピンキー
07/11/01 02:28:27 PDrN1Nkp
GJ!最後のオチじゃなくて伏線だったのか

42:名無しさん@ピンキー
07/11/01 02:44:27 AqYGuHkD
GJ!
シリアスじゃない話も面白かったアッー!

43:名無しさん@ピンキー
07/11/01 03:07:32 z9QQth1c
>>40
バロスwww
腹筋いかれるかと思ったwww
GJGJGJ!!

44:名無しさん@ピンキー
07/11/01 03:24:59 YVSdoOaU
>40
キタコレ
コレキタ

っていうか、ガチエロ以外も上手い!
ボルボの兄貴はやってくれるぜ!!

45:名無しさん@ピンキー
07/11/01 04:55:16 YfTu3KKP
もしかしてコルネットのなれの果てかその子孫?

46:名無しさん@ピンキー
07/11/01 05:15:03 jb97R0ND
殺意の波動に目覚めたアホ竜がツボったw
GJ


47:名無しさん@ピンキー
07/11/01 05:23:15 IftNgVfi
自分は世界一多芸の緑色の竜を思い出していたのだが……。
あと泉の底に金を溜め込んでいたのか?

48:ボルボX
07/11/01 09:17:14 5gmiWgR4
>>41、すまん「最後の」というより「最後のほう」。
>>47の指摘した「泉の底」が伏線です。変なアイテムでも登場させようかと。
顔出し失礼、説明不足だったと感じたもので。

49:名無しさん@ピンキー
07/11/01 10:22:46 qmuH9bL9
>>40
あなたはボルボX氏ではないな?本物なら今頃アン様専門の激エロSSを書いてる
はずだああああああああああああああああ!

ってな訳で笑わせてもらったw次の激エロアン様SSも期待している

50:名無しさん@ピンキー
07/11/01 17:45:59 w80t5Sau
いや、ギガワロタ! たまにはこういう、脳の皺がツルツルになりそうな全編バカネタも良し!!
次のガチエロも楽しみにしてますぜ、旦那!!

51:虹山
07/11/01 18:11:07 vd6Rigm5
なんか前スレでは時間のずれについていろいろ論議していてびっくりした。
俺なんか光の速さだと時間が遅くなるなんて全然知らなかったよ。

まぁ今回も短めだけど大目に見てやってください。


52:虹山
07/11/01 18:12:55 vd6Rigm5
屋敷に着いたはいいが、やはりハルケギニアでは名家といわれるだけのヴァリエールだ。
警備がしっかりできているし、防犯用の魔法もかかってるように思える。
あんな像があるくらいだし俺は超有名人だろう。そのまま玄関に行けば、中には入れるかもしれない。
だが、騒ぎを起こすのもどうかと思い、忍び込むことを決意した。とりあえず、誰かが窓とか扉を開けた隙を狙うしかない。
しばらく木のそばで隠れながら待つこと約1時間。
大きな帽子を被った女性が裏の扉から出てきた。取りあえず後をつけていくことにしたが、彼女の行き先は裏庭にある花の花壇のようだ。

俺は音を立てないように歩き……俺、立派なストーカーじゃねーか……。
日が傾き、山吹色の光が降りそそいで来る。彼女は花に水をやっているところを俺はじっと観察していた。
彼女はとてもきれいで歳は20後半から30前半ぐらい。
とても長く一本一本が細い金髪をリボンで一束にまとめていた。
服装はどう見ても貴族のものだった。
顔を見ようにも口から上が大きな帽子によって隠れていたから誰か確認できない。
どうしてもその素顔を見たくて、うずうずして、……俺、もーストーカーでいいやー。
そんな姿を少し眺めていたのだが、突風がものすごい勢いで、裏庭を駆け抜ける。
それによって彼女の帽子が空へと舞い上がった。
彼女の顔でその女性が誰であるかを知った。

53:虹山
07/11/01 18:13:58 vd6Rigm5
長い耳。きれいな細い髪。妖精であるかのような可愛さ。そして、この俺が名づけた『バスト・レヴォリューション』。

ティファニアだった。

「テファ!!」
俺は大きな声で彼女の方へ走っていった。ティファニアは驚いたのかビクッと肩を震わして俺の方を向いた。
「……………誰?」
俺は思いっきり、ずっこけ、滑りながら倒れた。
プロ野球だったら監督からも、チームからもほめられていると思われる理想的なヘッドスライディングだった。
ゆっくり落ちてきた帽子が俺の頭に乗っかった。

54:虹山
07/11/01 18:16:46 vd6Rigm5
『あなたは私の最初のお友達だもの。あなたこそ私たちのこと忘れないでね』
テファ…の言葉、嘘だったのか?
忘れるなって言った奴が忘れちゃいけないだろ、俺姿顔立ちとか全然変わってないんだから。
しかも、屋敷の近くに俺のでっかい像置いてあるだろ……。
「俺のこと……覚えていない?」
「ごめんなさい……見たことはあるような気がするんだけど……」
「オイラたちだよ、忘れちまったかい?エルフの娘っ子?」
「もしかして……サイト?」
あぁやっと思い出してくれた!このエルフはなんて天然なんだろ……
「ひさしぶりだな。テファ……きれいになったな」
なんか、また胸が大きくなってないか。うーん、俺、熟女好きじゃなかったはずだけど……
「ふふふ、ありがとう。本当、久しぶりね。大体200年振りくらいかしら、あなたに出会うの」
「……そんなに経ってたのか」
やっぱりルイズたちには会うことはできないんだろう。
会いたい気持ちが強すぎて気づかなかったが、かなりの時間が流れていたのだ。
200年も人間が生きられるわけがない。
エルフの血が流れているティファニアは歳を取るスピードが遅いから今でも若い姿だが、
当時の仲間はみんな死んでしまっているのだろう。
もうみんなに会えることはできないのか、と思い俺はとっても悲しくなった。
「そっちの世界はどうだった?」
俺は今までのことをティファニアに話した。「始祖の虚無」によって地球の人類や生命が全て消えてしまったこと。
人がいないか、何百年もかけて旅をしていったが一人もいなかったこと。
真のガンダールヴとして世界を見届けるため、不老不死になったこと。
「……そうだったの、大変だったのね。お疲れ様、サイト」
ティファニアの優しい言葉が俺の心を癒していってくれた気がした。俺はみんなが幸せだったのか気になった。
「……ルイズはどうだった?幸せに生きて、死んでいったのか?」
「……あなたが向こうの世界に旅立ってからルイズは5年くらいで亡くなったわ。
虚無魔法の使いすぎが原因。彼女は命を削りすぎた。
私にはわからないわ……彼女が本当に幸せだったか。
……だけどね、サイト、あの人はあなたをずっと愛していた。
だから他の人と婚約を結ばなかったし、あなたの持っていた『のーとぱそこん』を大切に保管していたもの」
「……そっか」
俺は嬉しかった。俺が向こうの世界にいっても愛していてくれたことを。
だけど悲しくもあった。あのルイズが大切な人生を楽しむことができず早くに亡くなっていたことを。

55:名無しさん@ピンキー
07/11/01 18:17:11 JlcZ8jtt
gjgj
飯食いながら読んでたら5回くらいふいた。

56:虹山
07/11/01 18:18:13 vd6Rigm5
「サイト、あなたはルイズを愛してる?」
「もちろんだよ」
俺がそう答えると、ティファニアは杖を取り出した。
「何をする気なんだ、テファ」
「あなたを、過去に送ってあげるのよ。サイト」
俺はあっけに取られた。
「……そんなことができるのか?」
「一様、私は伝説なのよ?サイト」
ティファニアは胸を張って言った。テファ……君がそういう行動すると、その革命的な胸が揺れるんだよ…。
しかし、魔法ってのはほんとに何でもありなんだな、と思った。
もし本当に過去に送ってくれると言うのならこれほど嬉しいことはない。
「何年も虚無魔法なんか使ってないから精神力はかなりたまってると思うわ。一度もその魔法を詠唱したことないんだけど」
「良いさ別に。頼む」
ティファニアが首を縦に振り、彼女の口からゆっくりと言葉が流れていく。
詠唱の開始と一緒に俺の体を青白い光が包んでいく。
魔法の詠唱が終わったのか、ティファニアは俺のほう向いて言った。
「ルイズを絶対に幸せにしてね!」
「当たり前だ!」
ティファニアが杖を振ると同時に、俺はこの時間から姿を消した。
ティファニアは少し時間が経った後、裏庭のもっと奥の方へ歩いていった。
そこにあるのは、一つの小さな墓石。
『 ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール 』
と書かれている
ティファニアが優しい声で語りかけるように言った。
「ルイズ……。大丈夫、彼はきっとあなたを幸せにしてくれるわ」
西に太陽が沈んでいき、東に二つの蒼と紅の月が出てきていた。


57:虹山
07/11/01 18:20:15 vd6Rigm5
今日はここまで。
投稿し終わって「ぜろ☆すた」って入れるのを忘れてた…orz
それではノシ

58:名無しさん@ピンキー
07/11/01 18:25:04 UkI5im7r
GJ
続きがたのしみだ

59:名無しさん@ピンキー
07/11/01 19:16:15 ALCefV8U
投下乙です。
過去のどの時点に戻るのか分からんけど、サイト帰還直後に戻ったとして、ルイズの命は5年間か……。
何かシリアスにもギャグにもいけそうで、すごく続きが気になる展開だw

60:名無しさん@ピンキー
07/11/01 20:20:49 pEwsAXzd
乙乙。
文章的なことでいくつか。
前の投下から気になってたけど「一様(いちよう)」じゃなく「一応(いちおう)」な。
あと、花壇に花があることは明白なので、花か花壇かどちらかでいい。
指摘だけになりましたが、けなすつもりは全くないので頑張ってくだされ。

61:名無しさん@ピンキー
07/11/01 20:29:09 KgjLaBOu
いちようって書く奴はアホだな

62:名無しさん@ピンキー
07/11/01 20:49:09 RKRihraA
なんかアンチ沸いてない?
沸いていいのはアン様だけでいいと思う。 いや、ナイチチはいら…
ん? だれか玄関に来たようだ。

63:名無しさん@ピンキー
07/11/01 21:05:12 KgjLaBOu
沸いてんのは>>62の頭じゃね?

64:名無しさん@ピンキー
07/11/01 21:16:13 jVIxA6eN
いやいや、俺が沸いてる。

65:名無しさん@ピンキー
07/11/01 21:18:17 CkkzJ5h2
やっべ、お湯沸かしっぱなしだったわ。なんか息苦しいと思っt

66:名無しさん@ピンキー
07/11/01 21:19:57 9LUjz9z3
ルイズを見てるとあまたがフットーしそうだよー

67:名無しさん@ピンキー
07/11/01 21:51:02 WRQBJVMA
なにこの流れww いつもの変態紳士どもはいずこ?

68:名無しさん@ピンキー
07/11/01 22:20:57 VvvYawGt
もうアンチとかどうでもいいからテファの乳を揉み倒させr(ry

69:名無しさん@ピンキー
07/11/01 23:14:40 ALCefV8U
さっき久しぶりに12巻読み返してて思いついた。


「ホンモノかどうか、さわって確かめて







 ――私のオ・チ・ン・チ・ン♥」byスカロン

70:名無しさん@ピンキー
07/11/01 23:15:44 RKRihraA
ごめ 吹いたwwww

71:名無しさん@ピンキー
07/11/01 23:36:13 psTjK5yv
アン様が生類憐みの令の使い魔バージョンをだしたらサイトはやりたい放題なんだろうか

72:名無しさん@ピンキー
07/11/01 23:53:51 pxfhdc49
才人以前にシルフィードがやりたい放題です。

73:名無しさん@ピンキー
07/11/01 23:58:33 psTjK5yv
>>72
ああ、忘れてたわ

74:名無しさん@ピンキー
07/11/02 00:05:29 WyCUHJTK
>>71
シエスタやテファにやりたい放題し放題のサイトを見て、
「自分も犬になる!」と鼻息も荒い水精霊騎士隊の面々が容易に想像できるw
特に、マリコルヌとかグランドプレとか。

75:名無しさん@ピンキー
07/11/02 00:31:49 C9ZxsMgo
>>72-74
大抵の使い魔はメイジと感覚や視覚を共有する事ができる
あとは、わかるな?

76:名無しさん@ピンキー
07/11/02 00:55:57 NwzSBqnt
>>75
死亡フラグ立ちまくり?

77:名無しさん@ピンキー
07/11/02 00:58:51 sJHmagz/
>>75
タバサがイクとシルフィもイクわけだな。

78:名無しさん@ピンキー
07/11/02 01:07:27 9UAONWEZ
>>77
その発想は無かったわ

79:名無しさん@ピンキー
07/11/02 01:53:13 e5f42B76
使い魔がイク→感覚の共有で御主人様もイク→御主人様がイったので使い魔さらに昇天→御主人様も(ry


つまり無限ループということだな

80:261のひと
07/11/02 02:28:57 dF3pBYIp
2年続けてハロウィン過ぎてからハロウィンネタ投下……

進歩の無い人間です。

81:1/5
07/11/02 02:29:29 dF3pBYIp
 広い湯船の中で、ゆらゆらと天井を見上げていると、
 香水の甘い香りが、心を落ち着かせる。

 杖を抱えたまま、タバサはお湯に浮いていた。
 別の目的のためとはいえ、ここの守りは完璧に近い。
 ガーゴイルやアルヴィすら立ち入れない為、何も気にせずに放心できる。

(ここより安心できる場所は……)

 少し考えたタバサは、ちょっと頬を染めてお湯の中に隠れる。
 思い切り泣いた場所を思い返すのは恥ずかしかったから。

 いつもは少し邪魔だけど、お風呂の時は少し便利な杖を浮き輪にして天井を見ながらくつろぐ。
 なんて幸せな時間。

 いつもより少し早めの入浴。
 なんだかよく窓から降って来るあの人を助けるために、なんだか最近いつも外で待機。
 訓練中は比較的安全だから、一度時間をずらして入ったお風呂。
 広々として居心地が良いのを知ってからは、毎日この時間。

 いつもは煩いほどの声も、数人しか居ない為ほとんど気にならない。

 静かで、穏やかな、とっておきの……

「ねー、聞いた?」
「うん、アレでしょー」

 ? とっておきの……

「出るんですってね」
「どんなのかしら?」

 ……と、とっておき……

「一匹? かしら? 一匹二匹じゃないんでしょう?」
「えぇ、山のように出るらしいわ」

 …………

「「見てみたいわねー」」

 お風呂で怪談する子なんて嫌い……

82:2/5
07/11/02 02:30:09 dF3pBYIp
 怖い話は嫌いだけど、聞き始めたら最後まで聞かないと余計怖い。
 聞いてない話まで想像して、しばらく夜が怖くなる。

 すくなくともわたしはそう。
 仕方ないから名も知らない女の子が話し終わるのを待つために、いつもより念入りに身体を洗った。
 ……でも、

(聞くんじゃなかった)

 まっすぐ部屋に帰っても、このままじゃ寝れない。
 すこし話でもしようと、少し早足でキュルケの部屋に向かう。

(気が紛れる位まで話をするのもいいし……)

 いつもは断るけど、今日ならキュルケがお願いするんなら一緒に寝てもいい。

 窓から差し込む夕日が、廊下に長い影を伸ばす。
 ……その影に、何かが潜んでいる気がして、気が付いたらわたしは走っていた。

「キュルケ」

 トントンと、入りなれた部屋をノックする。

 ―返事が無い。

 いつもなら、部屋にいる時間なのに。

 ……ま、まさか、ばんせーせつのオバケに食べられたの?
 
 ばんせーせつって何の日か知らないけれど、大量のオバケが町じゅうねり歩く日らしい。
 しかもそのオバケは、餌を求め家々を巡り、家人を脅迫までするらしい。

 ―恐ろしい。

 どうしてそんな恐ろしい日を、わたしは今の今まで知らなかったんだろう。

 それに……ばんせーせつが何時なのか、あの子達も知らなかった……

「キュルケ! キュルケ、キュルケッ!」

 きょ、今日だったらどうしよう……

83:3/5
07/11/02 02:30:49 dF3pBYIp
 サイトが訓練を終えて部屋に入ろうとしていると、珍しいものが見れた。

「キュルケ! キュルケ、キュルケッ!」

 取り乱したタバサ。

「キュルケなら、先生の所でみたけど、呼んでくる?」

 後ろから声を掛けただけなのに、過剰に驚いたタバサが驚いた表情でサイトを見つめる。
 ほっとしたような、困ったような、複雑な表情で何かを考え込んだタバサに、サイトはもう一度尋ねた。

「呼んでこようか?」
「……いい、邪魔すると悪い」

 ひどく落胆したタバサが、ずるずる杖を引きずりながらサイトの横を通ると、
 お風呂上りの甘い香りが漂う。

 いつもは香水とか使っていない様子のタバサの意外な一面にサイトが驚いていると、
 ふと、立ち止まったタバサが恐る恐るサイトに声を掛ける。

「ばんせーせつって……知ってる?」

 まるで怖い話をしているかのような様子に首をかしげながら、サイトは答えた。

「知ってるけど?」

 ギーシュやマリコルヌが、女の子と話す話題が無いかーと暴れまわったときに話した気がする。
 地球じゃそれなりに楽しいお祭り騒ぎ、周りに迷惑を掛けなきゃ楽しいものだし。

「い、いつ?」

 ……いつって……地球の暦はわからないしなぁ。

「ちょっと、わからないな」
「誰に聞けばわかる?」

 タバサの真剣な表情に違和感を覚えながらも、サイトは出来る限りの返事をした。

「……多分、誰に聞いてもわからないよ」
「そ、そうなの?」
「ああ、今日かも知れねーし、明日かも……もう過ぎたのかもわからないなぁ……」

 真っ青になったタバサが、へちゃりとその場に座り込んだ。

84:4/5
07/11/02 02:31:20 dF3pBYIp
「ま、まだ大丈夫、まだ大丈夫、オバケ避けの方法も、あの子達言ってたから……
 まだ大丈夫、まだ大丈夫……」

 サイトの耳に届くのは、途切れ途切れのそんな言葉。

「タ、タバサ?」

 切羽詰った様子のタバサの肩にそっと手を掛けると、
 サイトは慎重に声を掛けた。

「大丈夫か?」

 コクリと小さく頷いた後、そっと頭を上げたタバサを見たサイトは心臓が止まりそうな衝撃を受けた。

(かっ……)

 いつもは無表情な瞳が揺れ、湛えた涙がうるうるとサイトを誘惑する。
 僅かに乱れた息は切なげに響いたし、いつもは冷たいといわれる事が多い顔も鮮やかな朱に彩られていた。

(……わいいっ……)

 しばし交わされていた視線が、つ……とそらされた瞬間、サイトは正気に返ろうと勤めるが、
 コクリと喉を鳴らしてから伝えられた言葉は、サイトを更に混乱させた。

「イタズラ……シテ」
「は?」

 羞恥に更に頬を染めたタバサが、もう一度サイトをまっすぐ見つめ……

「イタズラ……シテクダサイ」
「な……」

 思考停止に陥ったサイトに、タバサはもう一度丁寧に説明をする。

「サイトが、タバサに、イタズラを……してください」

 ……返事できない。
 サイトは何も考えることが出来ない、無欲とは行かないが、健全な男の子であるサイトは、

『おっけぇぇぇいっ! まぁかしとけぇっ!!!』

 とは、いかない。

 どちらにとっても重く静かな時間が流れ、サイトが覚悟を決める寸前、
 窓の外を一人の男が通るのが見えた。

 ―マリコルヌだった。

85:5/5
07/11/02 02:32:12 dF3pBYIp
 タバサは返事をしないサイトを悲しそうに見つめた後、
 とてとてと、階段に向かって駆け出した。

「タ、タバサ?」

 8割の安堵と、2割の後悔を覚えながら立ち上がると……
 窓の外にはマリコルヌ。

「ちょっ……」

 10割の恐怖と共に、マリコルヌに駆け寄るタバサを見つめたサイトは、
 ―とりあえず窓から飛び降りた。

 タバサに呼び止められただけで感激しているマリコルヌに、タバサが決定的な一言を……

「あの……わたしにイ……」
「しねぇぇぇぇ、マリコルヌゥゥゥゥゥ」
「なんでっ!?」

 墜落馴れしたサイトの、高高度からの飛び蹴りを食らったマリコルヌが、
 どこへとも知れず飛んでいった。

「お、おちつけぇぇぇ、タバサっ、おまっ……」

 サイトが振り向いた先には、既にタバサは居なかった。

「あの……」
「ん? なんじゃ?」

 次の標的は、学院長。

「わたしに……」
「死ねぇぇぇぇっ、淫行教師ぃぃぃぃぃ!」
「なんでばれたぁぁぁぁぁ!」

 とりあえず学院長を殴り倒したサイトが、今度は逃がさないようにタバサを抱きとめた。

「なんでいきなり、人生捨てにかかってるんだぁぁぁ」
「だって……イタズラ……してもらわないと……」

 ごにょごにょと口の中で何か言い訳するタバサを、サイトが荒い息で見つめていると、
 追い詰められて涙目のタバサがサイトを見上げながら呟いた。

「サイトは……してくれないから」

 再度硬直するサイトに、タバサはしっかりと掴まった。
 オバケは怖いけれど、ここなら絶対安心だから。

 この人相手なら、イタズラだって絶対平気。


「イタズラ……してくれる?」

 無意識に可愛らしく傾けられた顔が、サイトを降参させる。
 ……なにより、今のタバサを放っておくと何人かの生徒の人生が変わりそうだし。

「……勤めさせていただきます」

 溜息を吐いたサイトは、 あ、思ってたより柔らかい。
 抱き寄せた小さな身体に、そんな不謹慎なことを思って、現実逃避していた。

86:名無しさん@ピンキー
07/11/02 02:33:43 dF3pBYIp
しかも、ハロウィン微妙に関係ないし。

エロくない予定と言ったら、どれくらいの人が信じてくれるでしょうか……ではまたそのうちに。

87:名無しさん@ピンキー
07/11/02 09:02:24 UHFQyIUC
1年間待ってましたGJ
またそのうちってまさかまた来年のハロウィンにでもなんて言うんじゃないだろうな
もしそんなことしたら…もう一年待ってやろうじゃないか

黒い展開になる予定って言ったらみんな信じるとオモウヨ?

88:名無しさん@ピンキー
07/11/02 09:39:13 QaFXWNVo
56 : すくつ(長屋) : :2007/11/01(木) 23:32:27 ID:UaYs6w630 BE:514242656-PLT(12013)
URLリンク(news23.jeez.jp)
URLリンク(news23.jeez.jp)



アン様分が不足している・・・

89:名無しさん@ピンキー
07/11/02 14:09:05 6cGEG+8P
初めてSSという物が作ってみました。
短い作品なのに結構時間が掛かってしまいました。
自分にはむいてないと感じましたよ。
語学力が無い為変な文章表現・誤字脱字があると思いますが
暇つぶしと思って読んで見て下さい。

90:サイトの不幸?幸福?
07/11/02 14:10:39 6cGEG+8P
私は夢を見ていた。
そこは何も無く真っ白い空間が広がった所で
私は足を抱え小さく丸っていた。

「そんな、所にいないでさっさと帰ろうぜ~。」
「・・・・・」
「はぁ~じぁ~勝手に抱えて行くから文句言うなよ。よいしょ-と。」

え~っと今、私は彼に抱えながら運ばれていて、
この恰好はちょっとなんというか・・・。

「自分で歩くから降ろして。それにこの格好は恥ずかしい。」
「この格好っていわえる、お姫さま抱っこってやつ。」
「そう、それに重いから降ろして。」
「別に重くないぞ。むしろ軽い方だな。ちゃんと飯食ってるか?」
「食べてる」
「そっか、なら良いけどな。皆が待っているから
走って行くからしっかりとつかまってろよ。」

そう言いながら彼は走りだした。
私は彼の腰に手を回しながら呟いた。

「私はあなたの事が・・・・・」

ここで私は目を覚ましてしまった。
あの続きの言葉は何を言うとしたのか
分からないがすごく心が暖かく感じた。

「ん・ん~~~~ん、そろそろ起きて支度しないと。」
「今、何時?」

ベットの横のテーブルから時計を取って見ると。

「あ・もうー、こんな時間。早く着替えて食堂に行かないと」

私は手早く身支度を整えると食堂に向かって走りだした。


この時間より少し前の出来事。
どこからともなく、男と絶叫が木霊していた

91:サイトの不幸?幸福? 02
07/11/02 14:12:31 6cGEG+8P
私は食堂に何とか間に合い、いつもの席に着いて
待っていると声を掛けられた。

「隣の席、良いか?」

声を聞いた時、ドキッとした。
それはさっき夢で見た彼の声を聞いたからだ。
私は一瞬遅れてしまったけど小さく頷いた。

「おはよう、タバサ。」
「おはよう・・・・・。」

私は顔を上げて彼の顔を見た時、絶句した。
それは彼の顔がアザと切り傷で怪我をしていたから。

「その顔はどうしたの?」
「これか?これはいつもの事だけどルイズにやられたんだ。
でも今回は違うんだよぉ~」
「違うって?」
「今回は事故でね。足を滑らせてその時シエスタに抱きついた所を
ルイズに目撃されて、これは事故で偶然だと言っているのに
聞いてくれなくて今に至ると。
朝から最悪だと本当に。」

私は席を立ち彼女の・・・ルイズの所に向かって歩き始めた。

「おい!タバサどこに行くんだよ。って聞いてないしよ。
それより腹減ったなぁ~。」


92:サイトの不幸?幸福? 03
07/11/02 14:13:42 6cGEG+8P
私はルイズの所に向かう途中で考えていた。
なぜ?彼の事を信じてあげようとしなの。
なぜ?彼の事を傷付けとしまうの。
私には分からない。
私なら彼を信じ、傷付けたりは絶対にしない。
私はルイズの横に立ち声を掛けた。

「おはよう、ルイズ。」
「あら、タバサ、おはよう。何か用事?」
「なぜ?彼の事信じてあげないの?」
「彼?あぁ~サイト事ね。信じるって何を?」
「彼から話は聞いている。あれは事故だという事を。」
「あれはサイトがシエスタに抱きついているのが悪いの。
それもがっちりとね。
さっさと離れないから罰を与えたの。」
「傷付ける前に、彼の話を聞くべき。それぐらいの時間はあった筈。
なぜしなかった?」
「うぅ~~~う・うるさぁ~い。サイトは私の使い魔だから良いの。
タバサに文句を言われる事はないじゃない。」

私は少し考えてた。

「分かった。だったら、私にも考えがある。それじゃ。」
「ちょっと、タバサー。もぉ~なんなのよ。」


93:サイトの不幸?幸福? 04
07/11/02 14:15:16 6cGEG+8P
私は自分の席に戻る途中で、ある事を考えていた。

「お、帰って来たか、おかえりタバサ。どこ行っていたんだ。」
「ん、ルイズの所に行っていた。」
「ルイズのとこだって!何話していたんだ?」
「ただの世間話。」
「ん? そっか。じゃ~一緒に飯食おうぜ。タバサの事待ってたんだぜ。」
一人で食べるの寂しいだろ。だから待ってた。」
「ありがとう。」
「それじゃ~いただきまぁ~す。うーん、うまい。」
「いただきます。」

私はご飯を食べながら彼をどうやって誘おうか考えていた。
考えて私は口を開いた。

「お願いがある。」
「お願い?オレに?」
「うん。」
「へぇ~珍しいなタバサがオレに願い事があるなんてな。
いいぜ、それでお願いってなんだ。」
「私はまだ、お願いの内容を話してない。なぜ了承するの?」
「なぜって、タバサに限って変な事言う訳ないだろ。」

彼は私の事を信頼してくれている事が嬉しかった。
あ、この感情が嬉しさなんだ。
私はまた一つ彼に教えられたと気付いた。
私は自然と「ありがとう」とつぶやいていた。

「何か言ったか?」
「何も。お昼休みになったら、火の塔の裏庭に来て欲しい。」
「分かった。昼休み火の塔の裏庭だな。」
「うん。必ず来て。」
「必ず行くって。」
「それとこの事は他言無用。」
「了解。」

このあとサイトの身に起こった事は不幸か?幸福か?は
それはサイト自身が感じる事と時が教えてくれる事である。

次回に続く??

94:名無しさん@ピンキー
07/11/02 15:15:48 5XQ6vWhY
とりあえず頑張れとしか言えないな

95:名無しさん@ピンキー
07/11/02 15:17:01 eFJcCkN8
だが

96:名無しさん@ピンキー
07/11/02 18:19:25 /pWWYaNJ
シエスタ「ちんぽ無いと生きられないのおおおお」
まで読みました。

97:名無しさん@ピンキー
07/11/02 18:33:06 NQ/mckw9
アホっ竜(こ)Aが、どこで登場するのか期待

98:名無しさん@ピンキー
07/11/02 19:19:14 2S/zYnom
お前らのMPを回復してやるぜ
URLリンク(www.dengekionline.com)
URLリンク(www.dengekionline.com)
URLリンク(www.dengekionline.com)

99:名無しさん@ピンキー
07/11/02 19:56:33 +hLayyN1
>>98
おいおいおいおい!
MP回復どころか色んな部分が不足してやばいんですがよ!!
どうしてくれる

100:名無しさん@ピンキー
07/11/02 20:34:47 t03H6a/b
>>98
1枚目の画像を元にせんたいさんあたりが書いてくれねぇかな

101:名無しさん@ピンキー
07/11/02 21:48:39 YgnGQtvU
>>93
GJ。職人が増えるのはいいことだ。

102:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/11/02 23:31:12 RA9dqpbO
さあて皆さんお待ちかね
前すれの投票結果でございます

…でもまた途中なのゴメンしてねorz

103:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/02 23:32:34 RA9dqpbO
結局。
ティファニアは今のも取っ組み合いを始めそうな二人をなんとか仲裁して、部屋に戻ったのだった。

「…ほんとにもう…二人とも、仲良くしてくれると思ったのに…」

ふう、とため息をついて、ティファニアはベッドに腰掛ける。
実はこれから授業なのだが、なんだかもう満身創痍だ。

「…サボっちゃおうかなあ」

などとひとりごちながら天井を眺めるティファニア。
そんな彼女に、語りかける人物が居た。

「お姉ちゃんがそんな不真面目さんだとは思わなかったなあ」

そこにいたのは。
先ほどさんざん叱って、ベアトリスと仲直りさせたタニアだった。

「え、なんで?」

ティファニアの疑問に、タニアはすたすたとベッドに歩み寄りながら言う。

「そりゃ、ベッドメイキングに来たに決まってんじゃない。
 部屋の掃除とか片付けは、ぜんぶ私たちの仕事なんだから」

言いながら軽く皺になったシーツをベッドから剥ぎ取り、手にしていた新しいシーツを、古いシーツを剥ぎ取ったマットの上に敷く。
タニアはウエストウッドに居た頃と変わらない手際のよさでベッドを整え終わると、ティファニアに言った。

「で、授業はいいの?遅刻しちゃうよ」

タニアの指摘に、しかしティファニアはため息をついて、椅子に腰掛けた。

「…誰かさんのせいで疲れちゃった」

頬杖をついて、今日何度目か分からない、ため息をついた。
そんなティファニアを横目に見ながら、タニアはてきぱきと仕事を片付けていく。
そして言った。

「おばさんくさー。
 そんなんだとお兄ちゃんに嫌われるよー」

机の上で頬杖をついていたティファニアの身体がぴくん、と揺れる。
それを見逃すタニアではなかった。

「なんかお兄ちゃんこっちじゃえらいモテるみたいだし?
 いつまでも『お友達だから』とか言ってるどこかの誰かさんじゃ、勝ち目ないかもねー」

『お兄ちゃん』『モテる』『勝ち目ない』のところで律儀にぴくん、ぴくんと反応しながら、ティファニアはそれでも無視を決め込む。
タニアはそんなティファニアを見て、にやにや笑いが止まらない。

「わ。わわわ私には関係ない、もん…」

思いっきり噛んでるし。
そしてタニアは、とっておきをメイド服のポケットから取り出す。

「はいこれ」

それは、小さな香水の瓶。
透明な安っぽいガラスの瓶に、細いリボンが巻かれている。
そのリボンには、小さな字で『誘蛾香』と書かれている。

104:名無しさん@ピンキー
07/11/02 23:33:14 p5BKbquL
リアルタイム支援

105:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/02 23:33:18 RA9dqpbO
「…なに、これ?」
「いつまでも煮え切らないテファお姉ちゃんにとっておきをあげます。
 これはね、『誘蛾香』って言って、オトコノコを興奮させる匂いの香水なんだって。
 トリスタニアでは結構流行ってるんだってさ」

言って、タニアは取り出したそれを、ティファニアの掛ける椅子の前にある円卓にたん、と置く。

「これをどう使うかはお姉ちゃん次第。
 あ、値段に関しては気にしなくていいからね。友達になった子からもらったもらいもんだし」

ティファニアは十三の子に何を与えてるのよ、と心の中でその友達に突っ込みを入れたが、思春期の女の子はえてしてそう言うものに興味がいくものである。
そしてタニアは香水をそのままテーブルの上に置いて。

「んじゃ、頑張ってねえ~」

ぱたぱたと手を振って、部屋から出て行ってしまった。
残されたのは、香水の瓶と、固まったティファニア。
ティファニアの視線は、香水の瓶に完全に固定されていた。
こ、こんなの、こんなのつけて、サイトの前に…。

『お?なんかいい匂いするね、テファ』
『え、あ、うん…』
『テファってこんないい匂いのする女の子なんだな…食べちゃいたいよ』
『え、あの、その、えとあの』
『いいだろ?テファ』
『あ、えと、さ、サイトだったら…』

今朝の夢とほとんど変わらない内容の妄想をそこまでして。
真っ赤な顔でティファニアは顔をぶんぶんと振った。
そ、そんな上手くいくわけないじゃない!
心の中で自分で自分に突っ込みを入れ、そして。
もう一度、香水の瓶を凝視する。
で、でも。
でも、た、試してみるくらいは…いいよね…。
白磁のような細い指が、瓶の蓋を開く。
即座に香水が気化し、辺りに香りを撒き散らす。
どこかで嗅いだような、少し鼻にかかる奇妙な匂いが、ティファニアの鼻腔をくすぐった。

106:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/11/02 23:35:19 RA9dqpbO
すまにゅ、今日はここまで
明日も仕事で早いので…。

明日帰ってきたら気合い入れて書きますので

あ、あと『タニアってダレやねん』と言う人のために
つ URLリンク(wikiwiki.jp)
オリキャラなんですごめんなさい…orz

107:名無しさん@ピンキー
07/11/02 23:36:19 p5BKbquL
おつかれさまじゃ!
テファかわいいよテファ。


108:名無しさん@ピンキー
07/11/02 23:45:32 t1xCTSri
・・・タニアに萌えたらあれか?
枕元にせんたいさんが来て、斧で・・・・・・なのか?
はたまた未来の旦那さんに(げふんげふん)なのか?


タニアにメイド服 やばすぎるでしょ俺的に。

109:名無しさん@ピンキー
07/11/02 23:56:49 F8PFB++t
何だ今回は投票ないのか

110:名無しさん@ピンキー
07/11/03 00:15:43 LZrGKvyn
おつかれさまです!
いつの日かタニアにもサイトの魔の手が伸びるような気がしてならない

111: ◆LoUisePksU
07/11/03 01:26:41 yVvwa3ip
新スレ乙+職人さま乙。

「サイトが魔法を使えたら」+番外編 投下します。
URLリンク(wikiwiki.jp)


112:サイトが魔法を使えたら(1/4)
07/11/03 01:28:35 yVvwa3ip
グングニールは真っ直ぐにヨルムンガントに突き進んでいく。残り5メイル、3メイル、1メイル---ゼロ。
ヨルムンガントの頭部と穂先が接した瞬間、無数の紅色のプラズマがその厚い装甲に網のように貼りついた。
バチンッ。破裂音とともにグングニールの穂先が装甲にめり込んでいった。と、次の瞬間、頭部の1/3が内側から破裂し、めくれ上がったのだった。
「あ、ありえない---」
予想外な光景にミョズは顔色と言葉を失った。

一方、グングニールを投げてしまった今、サイトは丸腰になってしまった。ここぞとばかりにアルヴィーたちが襲い掛かってくる。徒手空拳でなんとか致命傷は避けるものの、かなりの手数を喰らってしまう。これまでのケガのせいか意識がぼやける。
眼前に隊列を組んだ槍ぶすまがサイト目掛けて突き進んできている。
や、ばっ---避けようにももう足が言うことを利かない。
ルイズ・・・ごめん・・・・サイトは目を瞑った。

ズブッ。何かに突き刺さる鈍い音がした----俺、死んだ?!
サイトは、恐る恐る目を開けた。なんとサイトは羊水のような水の球に包み込まれているのだった。
ゆらめく視界には槍ぶすまが水球の表面5サントくらい突き刺さって止まっていた。
誰かが水魔法でサイトを護ってくれたのだ。背後からかすかな声が聞こえた。
”ガンダールヴ----手助ケシヨウ。アノ指輪ヲ我ノモトニ・・・”
声の主はこのラグドリアン湖に棲まう水の精霊であった。

水の精霊・・・。精霊の涙を分けてもらって以来の邂逅であった。
”オマエト約シタ。アノ指輪ヲ我ノ許ニモドスト。”
そうだった。忘れちゃいない。目の前にアンドバリの指輪はあった。
サイトの身体に接する「水」が柔らかいグリーンの光を放ち始めた。先までの傷が徐々に癒されるのが感じ取れる。
身体が軽くなってきた。サイトの中で消えかけていた灯が再び燃え上がる。黒い瞳の奥に生気を取り戻した。
「一つお願いだ。あそこに倒れているタバサも助けてやってくれ」
タバサのほうを指して精霊に願いを請うた。
”分カッタ。約束シヨウ---”
サイトを包み込んでいた水の球は消え失せ、今度はタバサが精霊の胎内に抱かれていく---

ザンッ。ヨルムンガント1体を打ち破ったグングニールがサイトの許に舞い戻ってきた。
右の手で槍をむずと握り、ずぶりと湖面から引き抜いた。
その刹那。湖の上空から閃光が降り注いだのだった。
ルイズ。ニッと笑ってサイトは自分の周りに防御魔法を展開した。湖面の水が魔力によって持ち上がり壁となす。
虚無の爆風にたゆんと水の壁がゆらめいた。

ざざざ。ざざざ。タバサは夢の中にいた。彼女は母の胎内に宿る夢。背中を丸め、両の手は胸の前に両足は屈めている。小さな身体をさらに小さくして、母の中をたゆたっていた。
”母さま---”
トクン、トクン。小さな身体に生命の拍動が戻ってきた。
突如、その空間に一条の光芒が差し込んできた。タバサはその光を求めるように手を差し出した---
青髪の少女の瞳は開かれた。碧い双眸に再び光が灯る。意識はすこし霞がかかったような状態だった。
けれど、湖上で魔法を展開している黒髪の少年、上空で風竜の背に立つ桃髪の少女の存在は分かった。
タバサの足元にはいつのまにか流れ着いた彼女の杖が漂っていた。タバサは屈みこみ杖をつかんだ。

シルフィの背に立ちルイズはエクスプロージョンを眼下の敵勢に放った。
これでおしまいにするんだから。精神力の大半を使い込んだ彼女はシルフィの上でへたりこんだ。
サイト。大丈夫かしら。自分の虚無で傷ついていないかと不安になった。
シルフィの肩越しにサイトの姿を確かめずにはいれない。しかし彼はしっかりと立っていた。そして水の壁が彼の周りをとりまいていた。
魔法使えるようになっちゃったの---ルイズは一瞬目を丸くして驚き、唇をかみしめた。
シルフィはそんなルイズを横目で見やりつつ湖上にふわりと着水した。

虚無の光が晴れた後、小さな人形たちは無残な姿をさらしていた。しかし---------

二度、同じ技が通じると思うとは浅薄だな・・・・ミョズは不適な笑みをうかべそう言い放った。
彼女の背後から多数の巨大な影がもぞりと蠢いた。

113:サイトが魔法を使えたら(2/4)
07/11/03 01:31:04 yVvwa3ip
「1体は斃せるようだな、褒めてやるぞ。しかし余興は終わりだ。邪魔なメイジどもからかたづけてやる」
ミョズの言葉が言い終わらないうちミョズの背後から現れたヨルムンガントたちがタバサとルイズに襲いかかる。
タバサは魔法で身軽にかわすが、攻撃はしなかった。体力の回復がさきだった。ルイズはよろけながらも果敢に杖を向ける。そんなルイズの前にサイトは盾になってたちふさがった。
「こうも数が多いとあたしでもつかれちゃうわぁ。あいつも使いなさいよぉ」とグングニールがぼやく。
あいつ=デルフリンガーはいまだ湖に突きたれられたままになっていた。サイトは正眼の構えから槍を斜めに振り下ろし、ヨルムンガントの足を払った。
敵がどうと倒れこむ隙をついて、後ろへ飛びすさりルイズを抱きかかえると、一気にデルフの下へ駆けた。
なぁ、グング。デルフ握るまでに変身しといてくれ。サイトの言葉にグングニールが黄金に輝いて変化する。
「待ちくたびれたぜ~相棒。錆びちまうかとおもった」デルフが茶化した。
サイトは抱えていたルイズを湖面に降ろしてあげた。そして剣をしかと握り、巨大な鎧の群れへと近づいていく。ふいにタバサの視線を感じた。サイトはその視線の方向に目を向ける。
すこし離れているタバサの口元が動いていた。するとサイトの目の前に薄い白銀色の泡が現れた。泡は割れてその中からタバサの声が飛び出した。水の系統魔法バブルであった。
”このヨルムンガントには系統も虚無も通じない----たぶん、先住魔法で強化されてる。だから---”
先住には先住ってことか。サイトはひとりごちる。この数では槍でも焼け石に水だ。他に先住魔法の使い手といえば----精霊しかいない。
「精霊さんよ。もう一度”分けて”くれないかな」
サイトは、湖面に向かって声をかける。
”-------------使ウガヨイ”サイトには足元の水の雰囲気が変化したのが分かった。
精霊の了解を得たサイトは、タバサへむけ先ほど彼女がやったのと同じ魔法を使い用件を伝えた。そして抱えたままのルイズを見やる。視線が合ったルイズはあわてて目をついとそらした。


114:サイトが魔法を使えたら(3/5)
07/11/03 01:32:00 yVvwa3ip
「まほう。つかえるよーになっちゃたんだ・・・・」
言葉の中に悔しさが混じっているのが分かった。
「言ったろ、お前を護りたい----だからがんばったんだ。」
サイトは言葉を続ける。
「まだ虚無使えるか?今から精霊の涙をもらうからそれに”ディスペル”をかけてくれ」
ルイズは目をそらしたまま、すこし口を尖らせて言葉を返す。
「さっきほとんど使っちゃた。歩くので精一杯なの・・・・だ、だからね・・・・あ、あんたに力を分けてほしいの・・・・」
分ける?ってどうやって??サイトは怪訝な表情でルイズに聞く。
「ききききききき」
ルイズは頬を朱に染め上げてサイトを見て言葉を伝えようとするが、口からでていかない。
ききききききき??サイトはオウム返しに繰り返す。
「きききき・・・・・キスして」
こんな状況だというのになんというご主人さま。サイトは内心にんまりしながらご主人さまの願いを叶えてあげた。
くやしいけれど、やっぱりこいつへの気持ちは嘘はないの。今まで恋敵(タバサ)と一緒にいたという不安は虚無を使う力にもマイナスなのだ。この不安を消してもらうには使い魔、
いやサイトから愛情表現(キス)をしてもらうのが一番だった。ルイズの中で気持ちが満たされてゆく。
”儀式ではないキス”をもらえたルイズは喜色満面に言い放った。
「いまなら虚無でもなんでも出してあげるんだから」
サイトはルイズに微笑みかけた。しかし、一瞬でその表情は戦う少年ガンダールヴに変化した。その意味を理解したルイズは虚無のスペルを唱え始めた----

タバサはそんなメイジと使い魔の光景を複雑な思いで見た。しかし、今は眼前の敵を蹴散らすことに気持ちを切り替える。
サイトと再び目線があった。それは、戦いの始まりを意味していた。その表情は雪風と呼ばれるメイジの顔になった。

ふくれあがったタバサの力とサイトの力が湖上で混ざり合う。呼応するかのように湖水がざわめき立ち始めた。

----ルイズの詠唱が完了した瞬間、サイトとタバサは同時に魔法を放った。
「「ウィンディ・アイシクル!!!」」
湖面から無数の氷の矢が三人の前に出現した。精霊の涙がこめられた淡いブルーの氷の矢からは二人のメイジの力がもれだすかのように白い煙を放っている。
ルイズは矢の出現を確かめ虚無の力(ディスペル)を氷の矢に向かって放った。
一斉に氷の矢がワインブルーへと変色する。タバサとサイトは杖を敵の方向へと振りかざした-----

空気を切り裂き矢がヨルムンガントめがけて降り注ぐ。それと同時にサイトは敵勢の真正面へ飛び込んでいく。ヨルムンガントたちの攻撃をかいくぐり、指揮官のところへ突き進む。
虚無の使い魔の命知らずな行動にミョズは後れをとってしまった。
ひっ。あっという間に懐に入られたミョズにはなす術がなかった。サイトは脇に構えたデルフでミョズを切り伏せた。倒れたミョズの手から指輪を回収した。
サイトが振り返ると。すでに戦いは終わりを告げていた。
先住魔法の込められたヨルムンガントたちは同じく先住魔法を込めた氷の矢によって穴だらけにされ瓦礫の山となっていた。
ルイズとタバサの許にサイトは指輪をもって戻ってきた。
「アンドバリの指輪・・・」
タバサとルイズは口をそろえた。サイトはしゃがんでその指輪をそっと水の中に落とした。
”ガンダールヴ。感謝スル。”精霊の声がした。

115:サイトが魔法を使えたら(4/5)
07/11/03 01:33:53 yVvwa3ip
”ガンダールヴヨ、オマエニワタスモノガアル”精霊はそう言葉をつなぐと、サイトの目の前の水が生き物のようにぐにゃりとせり上がってきた。
その先にはきらりと輝くものがあった。取り上げてみると鴇色の宝石がはめ込まれた指輪だった。
”ソノ指輪は《ミョルニル》トイウ。左ノ手、四ノ指ニ嵌メヨ。双月ガ重ナルトキ、愛ノ宣誓ヲ行ウト奇蹟ガ起コルトイワレテイル。
奇蹟ガオコレバ、ソノ誓イハ永遠ノモノトナル---タダシ、誓イヲ違エテハナラヌゾ”
精霊はそういい残して湖の奥へ消えていった。
「四の指ってなんだ?」サイトは首をかしげた。
「内側の指から数えて4番目」タバサが薬指を指差してくれた。
それって婚約指輪ってことなんじゃ・・・サイトはうろたえつつ、自分の左手の薬指にミョルニルの指輪を嵌めた。一瞬、鴇色の宝石が光を放った。
サイトの指輪を桃髪と青髪の二人の女の子は黙って見つめているのだった。

「さ、さて、この瓦礫の山どーすんだ。女王様に伝えて回収してもらったほうがいいよな。」
サイトは指輪に触れられないようにルイズに話を振った。
「そ、そうね。伝えるべきだわ。これも成果だわ。そうだわ」どことなく落ち着きのないルイズはポケットから紙とペンを取り出しこれまでの出来事をしたため、伝書フクロウを呼んだ。
よろしくね。ルイズはフクロウの頭をなでながら書状を渡す。フクロウは書状をつかみ空高く飛び去った。

それじゃ、戻ろうか。サイトは二人に声をかけた。タバサは首を縦にふって空に向かって口笛を吹いた。シルフィが三人の前に降り立った。ところが、サイトのご主人さまは黙ったまんまであった。
「ルイズ、どした」サイトはうつむいたルイズの顔を覗き込む。
「ね、ねぇ、サイト。あんたわたしが助けに来てなかったら、タバサと何をするつもりだったわけ?」
ウッ。ルイズは急に顔を上げたのでサイトの鼻っ面にルイズの石頭がヒットした。サイトはその場に蹲った。
サイトに代わってタバサは表情を変えずに言葉を返す。
「サイトを連れ出したのは、私。この湖で誓いを立てるために一緒に来てもらった」
「ちちち誓いですってぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」ゴゴゴゴとルイズの背後から怒気が沸き立つ。
「そう。誓い。私はサイトに心身を捧げることを誓った」タバサはルイズを見据える。
「きぃぃぃぃっ~~~~~~~~~~~~~!!」ルイズは言葉にならない奇声を発していた。
「ま、まてタバサ。誤解を受けるぞ。俺が危ないときに護ってくれるって意味だろ!?」両手で鼻を押さえつつサイトは立ち上がった。しかしその時を狙っていたかのようにルイズがサイトのデリケートな部分に蹴りを入れた。
っ~~~~~~~~~~~~~!!サイトの声にならない悲鳴がラグドリアン湖に響き渡るのであった。

瓦礫の向こうでサイトに叩き切られたミョズがいた。ところが、その姿がミョズから人形《スキルニル》に変わっていった。本物のミョズは森の陰に潜んで戦況を見つめていたのであった。
”ゼロの使い魔が魔法を使えるとは・・・想定外だった・・・指輪は奪われてしまったがおまえの命には変えれんからな。”ミョズの主の声が彼女の頭に直接響いた。
彼女の表情は先ほどと一変し恋する乙女となっていた。
”そんな。もったいのうございます。いますぐジョゼフさまのもとへ戻ります---”そういってミョズは森深くへと姿を消した。

116: ◆LoUisePksU
07/11/03 01:35:48 yVvwa3ip
本文長すぎとか行長すぎとかでカウントがめためたにorz
保管庫で修正するから許して。


続いて番外編です。

117:トリスティンの杜(サイトが魔法を使えたら・番外編)(1/2)
07/11/03 01:40:15 yVvwa3ip
サイトは夜のトリスティンの杜へルイズに連れ出されていた。

寝る準備をする時間というのにルイズは寝巻きに着替えるそぶりもみせず、心もちそわついていたのだ。
窓の外には二つの月が重なっていた。月の映える夜である。
その月を見上げため息一つついたルイズはちょっと外へ出てみない?と言い出したのだ。
夜更かしは苦労ではないサイトは一つ返事でルイズに学院の外へと連れ出された。

外に出て数歩歩いたところでルイズは立ち止まり、口を尖らせて愚図った。
「あんた魔法使えるんだから、ご主人さまをあそこまで連れてきなさいよー」
可愛いご主人さまの命令(いうこと)を聞いて、ルイズを横抱きにかかえてサイトはスペルを唱えるのだった。
”イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ”サイトたちの身体はふわりと宙に浮きあがる。飛翔魔法フライでご主人さまの目指すあそこへと飛び立った-------

そして今。このトリスティンの杜に桃髪のご主人さまとその使い魔は並んで立っていた。
何しにここまできたんだか分からなかったもんだからサイトは黙って茂みから聞こえてくる虫の調べに耳を傾けていた。
リーン、リーン、リン、リン---しばらく時間が経ってからルイズが口を開いた。
「指輪。どうするのよ。誓わないの。」ルイズの視線は使い魔の左手薬指に嵌められた鴇色の石が輝く指輪に向けられていた。
その指輪は《ミョルニル》の指輪という。その指輪を嵌めた者が二つの月が重なる時に愛を誓うと”奇蹟”が起こるといわれているらしい。
そしてその奇蹟が起これば永遠の愛が叶うという言い伝えがあったのだ。
サイトは空を見上げ重なった二つの月を見つめた。そうか今日がその時だったのか、だからルイズが------あ、もしかして。はたとサイトは感づいたのだった。
そして薄っすらと笑みを浮かべてルイズに言葉を返してみる。
「そか。今夜は双月が重なってるのかぁ~。綺麗だなぁ」ルイズの問いかけとはまるで的外れな言葉を選んだ。
ルイズはそんなサイトにやきもきして言葉をぶつけてきた。
「ねぇってば。今夜がその時なんだから。誓う人いるでしょーが」
サイトはさらに焦らすように言葉を紡いでいく。
「うーん・・・だれかなぁ。俺が愛を誓う人って誰かなぁ----」わざと言葉を濁す。
煮え切らないサイトの言葉の魔法にかかってしまったルイズは両頬を薄紅色に染めて桃色の髪の毛をいじいじしはじめたのだ。
これを言っちゃうとあの言葉を言っちゃたのと同じゃないのよ。でもでもでもでも・・・ここで確かめてとかないとチビメイジやチチオバケのエルフとか世間しらずなどっかの女王とかにとられちゃうかも。
彼女の中で抑え切れないくらいに使い魔への使い魔を越えてしまう想いが虚無の魔法のように膨れ上がっていくのであった。


118:トリスティンの杜(サイトが魔法を使えたら・番外編)(2/2)
07/11/03 01:41:16 yVvwa3ip
もはや表情が魔法がかけられてかのようにころころ変わっていくルイズを半分にやりと残り半分は愛しいという気持ちを込めてサイトは眺めていた。そして最後のダメ押しの一言をルイズへ呟いた。
「何回も『好き』って言ってんだけど応えてくんないからなぁ・・・」
ルイズの溢れる想いを喉で抑えつけていた何かがふっと消え失せ、口をついて出てしまった。
「『わたし』がいるでしょー。このわたしに誓いなさいって言ってるんでしょーが」
ついに言ってしまった。頬どころか顔や耳までも紅潮させてルイズは涙目である。
サイトは嬉しくなった。ルイズがついに彼女のホントの気持ちに肉薄する言葉を放ってくれた。真顔になってルイズに向き直った。そしてさっきの言葉を確かめる。
サイトの真剣な眼差しにルイズも涙をためながらも目を逸らさずにまっすぐと見つめている。
「じ、じゃぁ誓うからな。後戻りできねーんだぞ。いいな」
サイトの問いかけにルイズはこくんとうなずいたのだった。ルイズの首肯を受けて、サイトは二つの月に向かって左手の指輪を差し伸べた。
「我が名はサイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。重なりし双月のもとミョルニルの仲立ちにて誓いの儀式を執り行う。我はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに永遠の愛を約することを誓う----」
重なり合った二つの月の光芒に鴇色の宝石が呼応しまぶしいばかりの輝きを放ち始めた。宝石から白銀色の光の束が弧を描いて、ついに真円の形を成した。続いて宝石そのものから鴇色の光の球が湧き出てきた。
その光の球はしばらく宙で浮遊していた。そして寸秒燃えるような輝きを見せ、球の色が紺碧に変化した。最後に紺碧の球は先の真円と重なり合って今まで最も眩しく光り輝いた。まるでこれからの二人を祝福するかのような輝きで。
奇蹟は完成したのだった-----サイトの右の掌の上にはもう一対の紺碧の宝石のついた《ミョルニル》の指輪がのっていた。
綺麗・・・ルイズはその光景に見入っていた。サイトは指輪をつけた左の手でルイズの左の手をとる。そしてルイズの鳶色の瞳を見つめた。
「誓い・・・・受けてくれるよな」
サイトの黒い瞳を見つめすぎてルイズは吸い込まれそうな気持ちになりながらも応える。
「・・・・うん。受けてあげるわ」彼女は軽く腰をかがめる貴族の淑女の所作をした。よろしくおねがいしますという意味を込めて。
サイトの人差し指と親指つままれた生まれたばかりの誓いの証はゆっくりとルイズの四の指”薬指”に嵌められていった。奥まで嵌められた指輪は、サイトの時と同じように紺碧色の宝石が一瞬輝いたのだった。
想い人に誓いの指輪を嵌めてもらってルイズは感極まってしまって涙がとまらくなっている。ぬれた双眸で想い人を見上げて一言、今まで封じ込めてきた正真正銘の気持ちを告げたのだった。
「好きなんだから」
その一言を想い人は微笑みで応えてくれた。そしてこの場所に来たときと同じようにルイズを横抱きに抱いてふわりと魔法で舞い上がる。二人のシルエットが二つの月と重なった。
主人と使い魔という壁を越えた桃髪の少女と黒髪の少年の二人を讃えるかのように双月の月の光がやさしく二人を包み込んでいった。

119: ◆LoUisePksU
07/11/03 01:42:47 yVvwa3ip
以上です。ノシ

勢いで書いちゃったので乱文スマソ。

120:名無しさん@ピンキー
07/11/03 09:09:51 oih2NbIB
すごくいいけどすごく読みにくい
GJ

121:205
07/11/03 17:15:40 oymzW4k8
タバサの冒険2はまだ読んでいないのでよく分かりませんが、
前スレを読む限り、俺が「ノボルにパクられた!」とか騒ぎ出したら相当面白いんだろうなとか思いつつ。

っつーか兎塚さんや編集さんは何も分かってない。
竜態減らして人態増やすって、そんなことして誰が喜ぶんだ! ふんとにもう。

そんなこんなで犬竜騒動(URLリンク(wikiwiki.jp))の続きを投下します。
ゼロ戦襲来編ラストですよ。

122:犬竜騒動
07/11/03 17:16:43 oymzW4k8

 最近、どうも周りが騒がしい。
 いかに研究に没頭し始めると周りが見えなくなるコルベールとは言え、そのぐらいのことには一応
気がついているのであった。
 その日もゼロ戦のコックピットであれやこれやと作業をしていたのだが、気がつくとやはり周囲か
ら何かが動く気配が伝わってくる。
 そっとコックピットから身を乗り出してみる。今、ゼロ戦は、板と布で適当に作った仮設の格納庫
の中に置かれている。そのために日陰となっており、周囲は大変暗かったが、それでもそこを動き回
る何者かの影ぐらいは見ることができた。
(……トカゲか?)
 のそのそとゼロ戦の周囲をうろつきまわっているのは、どこかで見たことのあるサラマンダーで
あった。
 それだけではない。よく見ると、チューチュー鳴きながら、学院長の使い魔であるネズミも走り
回っている。
 コルベールの見ている前で、二匹はしばらくゼロ戦の周りをうろつき回ったあと、示し合わせたよ
うに揃ってその場を離れていった。
(一体、何事だろうか)
 多少気にはなったものの、今のコルベールの目の前にはゼロ戦がある。彼の知的好奇心を捕らえて
離さないこの機械の前では、使い魔の妙な行動などあまり興味を惹きはしない。コルベールはすぐに
動物達のことを忘れて、またコックピットに潜り込んだ。

「偵察行ってきたぜ」
「ご苦労様ですのよ」
 森の外れの会議場に戻ってきたフレイムとモートソグニルを、シルフィードは愛想よく出迎えた。
「で、どうでしたの」
「ダメだな。やっぱあのハゲが四六時中張り付いてやがる。あの野郎、多分夜中もあの中で寝てやがるぜ」
「まあ」
 シルフィードは憤慨した。

123:犬竜騒動
07/11/03 17:17:31 oymzW4k8

「あのハゲチャビンも、やっぱりあの鉄の竜の肉体に溺れているのね! それも四六時中ベッタリだ
なんて、もはや堕落しているとしか言い様がありませんわ。きゅいきゅい」
 あんな、硬くて鉄臭くてずんぐりした不恰好な体のどこがそんなにいいのか、シルフィードには全
く理解できない。空を飛ぶために無駄なく引き締まった筋肉、風を切り裂き大気を支配する勇壮な翼、
きめ細やかで形の整った美しい鱗。どう考えても、自分の方が竜として格段に優れた肉体を持ってい
るはずである。
「サイトたちは、あんなうさん臭い女の汚らわしい魔性に捕われて、清楚かつ高貴な正統派美少竜で
あるこのシルフィードの肉体美に気付いていないのだわ。やっぱりシルフィが正道に戻してあげなく
ちゃいけないのね。きゅいきゅい」
 決意を新たにするシルフィードの前で、フレイムとモートソグニルはどことなく気まずげに顔を見
合わせている。
「あのよ、嬢ちゃん」
「そのことなんだが」
「なぁに」
 シルフィードが首を傾げると、二匹は互いに「お前言えよ」と言うように視線を押し付け合った。
その結果、ため息混じりに言ったのはフレイムの方だった。
「多分、嬢ちゃんが鉄の竜って呼んでる、あれよ」
「あの女がどうかしたの」
「いや、あれ、女っつーか、そもそも竜……いや、生き物ですらないと思うんだが。どっちかと言う
と風石使ってる船とか、その類じゃないかと」
「んまあっ」
 シルフィードは牙を剥いた。
「フッチーったら、なんて馬鹿なこと言い出すのかしら。きゅいきゅい」
「いや、多分馬鹿なこと言ってんのは嬢ちゃんの方だぜ」
 やれやれ、とシルフィードは内心ため息を吐いた。何があったか知らないが、フレイムはすっかり
あの鉄の竜に騙されているようだ。
(フッチーもいい人……いや、いいトカゲではあるんだけど、あまり頭はよくないのね。やっぱりア
ホの子なのよ。まあトカゲなんてそんなもんでしょうけどね、きゅいきゅい)
 こうなれば仕方がない、目の前のお味噌が足りないトカゲとネズミに説明してやるだけである。シ
ルフィードは言い聞かせるように話し出した。
「いいことフッチー、あの女は、シルフィのことを散々見下して嘲笑って弄んだのよ。悪い女なのね、
性悪なのね」
「いや、だからな」
「あれは竜よ。竜なのよ。だって、サイトがシルフィより気に入るんですもの。竜に決まってるのね」
 そう言った拍子に、才人の顔が思い浮かんだ。鉄の竜の腹に顔を埋めていたときの、至福の表情で
ある。途端に胸の中で悔しさが爆発し、シルフィードはバシバシと目の前の切り株を叩いた。
「なによあんな女! シルフィの方がずっとずっと、ずーっといい竜なのよ。その素晴らしさが分か
らないサイトなんて、あとでシルフィの脚に縋りついて、『許してくんろーっ!』って泣き喚くのが
お似合いなのね、きゅいきゅい」
「要するに、あれが竜じゃなくてただの道具としたら、竜のくせに選んでもらえなかった自分の立場
がないってことか」
「子供じみたプライドってやつですなあ」
 ひそひそ内緒話をするトカゲとネズミを、シルフィードはじろっと睨みつける。
「なんか言いました?」
「いや、別に何も」
「これっぽっちも」
 二匹はしれっと声を合わせる。

124:犬竜騒動
07/11/03 17:18:50 oymzW4k8

「まあいいわ」
 と、気を取り直して、シルフィードは訊ねた。
「それで、他には何か分かったことはないの?」
「一つあるぜ」
 モートソグニルが尻尾を撫でながら言った。
「あの鉄の竜の名前な、ゼロセンっていうらしい。あのハゲがそう言ってた」
「ゼロセン?」
 シルフィードは一度声に出して繰り返してから、我慢しきれずにぷぷっと吹きだした。
「ゼロセン! ゼロセンだって! 変な名前変な名前、変ななーまーえー!」
 ゼロセンゼロセン、と憎い仇敵の滑稽な名前を舌の上で転がすたびに、胸からこみ上げる笑いの衝
動はどんどん大きくなっていく。シルフィードはとうとう、文字通りその場で笑い転げ始めた。地面
を転がる竜の巨体に潰されそうになったモートソグニルが、慌てて安全圏まで退避する。
「ゼロセンゼロセンゼロセンゼロセン! 何度繰り返しても面白いのねー。なにそれなにそれ、竜に
つける名前じゃないのねこれ! きゅいきゅい」
 心底から同情を禁じえない。ゼロセンなんて変な名前をつけられては、周りの竜たちに散々馬鹿に
されて育ってきたことだろう。そう思えば、あんな傲慢で意地の悪い女に育ったのも多少は許せると
いうものである。
(そうよ、わたしったら寛容な女ですものね! なんたって、イルククゥでシルフィードですもの)
 イルククゥ、シルフィード。自分に与えられた二つの名前を思い浮かべて、シルフィードはうっと
りと目蓋を閉じる。なんていい名前なんだろう。今改めてそう思う。
(イルククゥ。可愛らしい名前だわ。自由な翼で空に舞い、柔らかな風と無邪気に遊ぶ。妖精のよう
に純真な風韻竜にぴったりなのね。シルフィード。美しい名前だわ。愛する主をその背に乗せて、空
を優雅に駆けめぐる。精霊のように華麗な風韻竜にぴったりなのね)
 この二つの名を兼ね備えた自分は優秀で愛らしい最高の竜なのだと、シルフィードは自信を新たにする。
 それに比べて、相手はゼロセンである。またも失笑が漏れた。
(勝てる。勝てるのね。負ける気がしないのよーっ!)
 すっかり気分を良くしたシルフィードは、切り株の前にどっかり腰を落ち着けた。
「それじゃモートソグニルの旦那、早いとこあの哀れなゼロセンちゃんに引導を渡して差し上げるのね」
「なに?」
 必死に逃げ回っていたためにすっかり疲労困憊になって地面に横たわっていたモートソグニルが、
驚いたように体を起こす。
「早いとこ、ってのはどういうことだ?」
「早いとこは早いとこなのね。遅くとも三日後までにはケリをつけるのよ」
「オイオイ、嬢ちゃん、『あの女は陰険かつ危険だから、事は慎重に運ぶのね』とか言ってたじゃねえか」
「大丈夫大丈夫。もう何も恐れることはないのね」
「何を根拠に言ってんだ」
 モートソグニルは怪訝そうに首を傾げる。シルフィードは胸を張って断言した。
「だって、相手はゼロセンなのね。イルククゥかつシルフィードなこのわたくしが、ゼロセンに負け
る理屈が分かりませんのね」
「俺にはその理屈の方が分からねえんだが」
 モートソグニルは納得しかねる様子ながらも、渋々首を縦に振った。
「分かった。で、具体的にはどういう感じにやりたいんだ?」
「そうですわね。なにせ竜と竜、女と女の意地を賭けた対決ですもの。出来るなら、ハゲチャビンの
邪魔は一切抜きでやりあいたいのね。きゅいきゅい」
「要するに、ハゲの邪魔抜きで嬢ちゃんとゼロセンが一騎打ちできるようにお膳立てすりゃいい訳だ
な。分かった、策は俺が考えて、他の奴にも伝えといてやるよ」
 頼もしい言葉だった。シルフィードは小さな巨人に向かって深々と頭を下げる。
「いろいろとありがとうございます、モートソグニルの旦那」
「気にすんな。俺はただ裸が見てえだけだ」
 男らしく断言して、モートソグニルは素早く駆け去っていった。
(さて、あとはコンディションを万全に整えて、正々堂々あの女を負かしてやるだけなのね。きゅいきゅい)
 シルフィードの胸で、闘志の炎が静かに燃え上がる。そんな彼女とは裏腹に、フレイムの方はどこ
となく憂鬱そうな様子であった。閉じられた口の隙間から漏れ出す炎も、燻っているように勢いがない。
「あらどうしたのフッチー、何か悩み事?」
「いや、あのな」
 フレイムは何やら言いずらそうにもごもごと口ごもり、思い切ったように切り出してきた。

125:犬竜騒動
07/11/03 17:21:17 oymzW4k8

「なあ、嬢ちゃん。あの、サイトって若造のことなんだが」
「サイトがどうかしたの?」
 フレイムは低い位置から探るような視線でこちらを見上げながら、慎重な口調で問いかけてきた。
「嬢ちゃんは、あの若造に惚れてるのか? あー、つまり、男として好きなのか、ってことなんだが」
 一瞬、何を言われているのかよく分からなかった。予想外の質問に呆けたようになったまま、シル
フィードは質問を返す。
「恋? わたしが、サイトに?」
「そうだ」
「フッチー、真面目に聞いてるの?」
「そのつもりだが」
 トカゲの強面は真剣そのもので、ほとんど深刻ですらある。
 それを理解した瞬間、腹の底からこみ上げてきた笑いの衝動が、抑える間もなく口を割って飛び出
した。全身を余すところなく震わせるような、凄まじい発作である。先程ゼロセンという名前を聞いたとき以上に長く、激しく、のた打ち回るほどの勢いで、シルフィードは笑い始めた。
 それがようやく収まりかけてから、息も絶え絶えに言う。
「フッチーったらバカなのね、竜が竜でないものに恋をするなんて、それじゃただの変態なのね。
モートソグニルの旦那は普通に変態だから別として、自分だってトカゲだからご主人様に欲情なんて
しないって言ってたのに」
「そりゃそうだが」
 フレイムは困惑したように言った。
「でもお前さん、正妻と愛人がどうのとか言ってなかったか」
「それはたとえというものなのよ」
「そうなのか」
 まだ疑っているようだ。シルフィードは切り株の前に座りなおすと、一つ咳払いして言った。
「いいことフッチー、元々、サイトの騎竜はこのわたしだったのね。そこにあの泥棒猫がやって来て、
ほーまんなボデーでサイトを誘惑したのよ。セクシーかつ清楚な竜の魅力が分かっていなかったお子ちゃ
まのサイトは、まんまとあの毒婦の罠にかかって堕落してしまいました」
 また怒りがぶり返してきて、シルフィードは腹立ち紛れに切り株を叩く。
「つまり向こうが愛人で、こっちが正妻! わたしは一刻も早く、サイトに正しい竜の魅力を叩き込
んで、彼を騎竜の正道に戻さなくてはならないのね。ごつごつ硬い鉄の竜なんかよりも、シルフィみ
たいな滑らかで芸術的な美しい鱗を持つ竜の方が、よっぽど乗り心地がいいってことを骨の髄まで分
からせてやるのよ! きゅいきゅいきゅいきゅい!」
 シルフィードの熱弁を、フレイムはただ黙って聞いていた。その顔に、安堵の色が広がる。
「そうか。つまり、あくまでも乗り物としてあのゼロセンに負けたのが悔しいってことなんだな」
 シルフィードは抗議の意味を込めて鼻息を吹きだした。
「ぶー。シルフィ、負けてなんかいないもん。それに、乗り物だなんて言い方はひどいのね」
「スマンスマン」
「いいことフッチー」
 シルフィードは人間の乙女を真似るように、両方の前脚を合わせて説明を始めた。
「シルフィにとって、サイトは将来、ご主人様の夫にもなろうというお方。なおかつ竜を大切にして
くれるし優しいし強いしカッコイイし、お慕い申し上げるのは当然の話なのね。そして、大好きな人
を乗せて空を飛ぶというのは、竜にとってはとても幸せなことなのよ」
 才人を乗せて大空を舞った楽しい思い出の数々が、色鮮やかに思い浮かぶ。その中から未来への夢
が新たに溢れ出してきて、シルフィードの胸は幸福感で一杯になった。
「タバサお姉さまとサイトの結婚式も、シルフィの背中の上で挙げるのよ。わたし、体中にたっくさ
ん鐘をくくりつけて、ディンドンディンドン鳴らしながら飛ぶのね」
「はぁ。そりゃまたやかましそうだな」
 フレイムの呆れ声も、愛しいご主人様の結婚式を想像してうっとり夢見心地のシルフィードにとっ
ては、些細な雑音に過ぎない。
(シルフィが一生懸命鳴らす祝福の鐘の音の中、タバサお姉さまとサイトのシルエットがゆっくりと
重なり合うのよ。わたしの背中が二人のチャペル。ああ、なんて素敵なのかしら)
 甘美な夢想に耽るシルフィードの前で、フレイムは細く火を噴出した。
「そうかい。あー、ほっとした。胸のつかえが取れたってもんだぜ」
 心底安堵した様子である。シルフィードは少し不思議になった。
「ねえフッチー。どうして、そんなに心配してたの?」
「ん。いや、なんだな」
 フレイムは決まり悪そうに目をそらした。

126:犬竜騒動
07/11/03 17:22:48 oymzW4k8

「エルフと人間とか翼人と人間、あるいは別種の竜同士とか、体の作りが似てるなら、上手くいかね
えことはねえだろう。だが、竜と人間じゃ食うものから住む場所、生活様式まで、何もかも違いすぎ
てる。子供だって絶対作れねえしな。要するに、そんな恋愛なんざ、上手くいきっこねえってわけだ。
ご主人の友人の使い魔で、俺にとっても恩人である嬢ちゃんがそんな風になるのは、実に忍びねえと
思ったのさ」
「それだけ?」
「……実はな」
 フレイムが目を細める。どことなく、辛そうな顔だ。
「俺の友達にもな、昔、人間に恋した大馬鹿野郎がいたのさ。そいつは使い魔でもなんでもねえ、た
だのサラマンダーだったんだが。こいつが、火竜山脈に冒険に来てた人間の女に、一目ぼれしちまってな」
「きゅい。アホの子なのね」
 正直な感想を言うと、フレイムはか細く火を噴出して笑った。
「ああ、そうだな、スゲーアホな奴だったよ。火も噴けねえし鱗も尻尾もねえ、そんな奴なんかの何
がいいんだって、俺たちゃ皆で止めたもんさ。だが、あいつは聞かなかった。『お前らに変態と呼ば
れてもいい。俺は、人間の肌の柔らかさに、ぞっこん参っちまったんだ』なんて言ってよ。杖をぶら
下げた人間の女に向かって、のっしのっしと歩いていきやがったのさ」
「それで、どうなったの」
「死んだよ」
 暗い声音だった。
「あいつが目の前に現れた瞬間、人間の女は迷うことなく杖を引き抜いて素早く詠唱を始めた。
『待ってくれ、違うんだ』と叫びながら、あいつは四本脚で素早く駆けた。だが女は詠唱を止めず、
一瞬後には風の刃が奴を切り刻んでいたってわけさ」
 フレイムは深く息を吐き出し、遠くを見るような目つきでじっと地面を見つめた。
「何が決定的にいけなかったのかは分からん。あの人間の女が悪い奴だったのかもしれんし、ただ急
にサラマンダーが現れて警戒したのかもしれん。制止する声がただの鳴き声にしか聞こえなかったの
は間違いないし、トカゲのジェスチャーが人間に通じたとも思えんしな。そもそもトカゲが人間に恋
なんかした時点で、こうなる運命だったってのは分かりきったことだったんだろう」
 淡々と言ったあと、フレイムはまた、真剣な目でシルフィードを見上げた。
「なあ、嬢ちゃん。しつこいと思うかもしれねえが、もう一度だけ聞かせてくれ。お前さんがあの坊
主に抱いてる感情は、ただ乗り手として尊敬し、敬愛してるってだけの話なんだな? 竜の女が、人
間の男に惚れこんじまったって話ではないんだな?」
 念を押すような口調である。シルフィードは厳かな気持ちで、首を横に振った。
「違うわ。わたしにとって、サイトはご主人様の伴侶候補で、素晴らしい乗り手。ただそれだけよ」
 数瞬、二匹の視線が静かに絡み合った。先に目をそらしたのはフレイムの方だった。
「俺も、決戦の日にはハゲの目を引きつける役割に回る。敵は手強いんだろう? 嬢ちゃんもしっか
り準備しておくこったな」
 静かな足取りでフレイムが歩み去り、シルフィードはただ一頭、森の会議場に残された。
(シルフィが、サイトに恋?)
 改めて考えてみる。果たして、自分が才人に抱いている気持ちは、恋心という類のものなのだろうかと。
 そもそも、シルフィードはまだ恋愛というものを経験していない。200歳という年齢は、竜の中
ではまだ幼い。大人になれば自然と雄の竜に心惹かれるものだと知識としては知っていたが、感覚と
しては理解できていなかった。
(でも、サイトのことは好きなのよ)
 頭を撫でられたことや体を洗ってもらったときのこと、優しく、また気さくに話しかけられたこと、
飛んでいるとき「疲れないか、重くないか」と心配そうに声をかけられたときのことを思い出す。
 サイトへの愛しさが胸にあふれ出してきたが、それは主であるタバサに抱く感情と、そう大差はな
いように思われた。
 シルフィードはそっと安堵の息を吐いた。
(そうよね。シルフィ、変態じゃないもん。人間の男を好きになるはずがないのね。今回のことだっ
て、あくまでも騎竜としてのプライドの問題なのよ。きゅいきゅい)
 そうと分かれば、怖いものなど何もなくなった。あとは見事あの鉄の竜を討ち果たし、才人の騎竜
としての役割を奪い返すだけである。
 木の葉のざわめきと小鳥の囁きを聞きながら、シルフィードは静かに闘志を燃やすのだった。

127:犬竜騒動
07/11/03 17:23:46 oymzW4k8

 最近のコルベールは、ゼロ戦のコックピットを寝床にしている。機械狂い故にそこが心地よいから
ではなく、夢中でゼロ戦のことを研究している内についついそのまま寝入ってしまうからであった。
 そんなわけで、コルベールはその日もコックピットの中で丸くなっていたのだが、遠くから何やら
ガンガンと金属を叩く音が聞こえてきて、目を覚ました。
(なんだろうか)
 目をこすりながら顔を出した瞬間、眠気が吹っ飛んだ。種類様々な無数の動物達が、ゼロ戦の周囲
で好き勝手に騒ぎまわっていたのだ。機体の上で跳ね回るもの、気持ち良さそうに糞を撒き散らすも
の、ピーピーギャーギャー騒ぎ立てるものなど、実に騒がしい。中には爪で機体を引っかいたり脚で
叩いたりしているものもおり、先程のガンガンと金属を叩く音の元はこれらしい。
 あまりの光景に呆然としたコルベールだったが、すぐに立ち直って慌ててコックピットから飛び降りた。
「こ、これお前達、離れんか!」
 動物達を追い払おうと杖を取り出して走り出した途端、突然地面の感覚がなくなった。
 フライやレビテーションを唱える間もなく落下したコルベールは、強かに腰を打ちつけてしまう。
「いたたたたた」
 腰をさすりながら上を見上げると、ぽっかり穴が開いてゼロ戦格納庫の天井が見えている。どうや
ら、誰かが掘った落とし穴に引っかかったらしい。
(誰が。何故、こんなところに)
 疑問に思ったとき、コルベールは隣に何か巨大なものがいることに気がついた。どこかで見たこと
のある巨大なモグラが、ミミズをほお張っていたのである。
「この悪戯は君の仕業かね。一体なんのつもり」
 しかし、問いただしている暇はなかった。ぽっかり開いた穴から、先程ゼロ戦の周囲で騒いでいた
動物達が一斉になだれ込んできたのである。大小さまざまな動物達に襲い掛かられて、コルベールは
悲鳴を上げた。

128:犬竜騒動
07/11/03 17:24:27 oymzW4k8

(よし、今のところは順調なのね)
 格納庫の入り口から中の喧騒を眺めて、シルフィードは満足げに頷いた。
 中央に鎮座するゼロセンの近くにぽっかり穴が開いて、そこに使い魔たちが蟻のごとく群がってい
る。長い悲鳴が絶えることなく響いているところを見る限り、ハゲチャビンを落とし穴に落として無
力化する計画は成功したようである。
(さて、あとはあの陰険女とケリをつけるだけなのね)
 シルフィードは気合を入れて格納庫の中に脚を踏み入れ、ついに憎い仇敵と対峙した。あれだけ周
辺で騒がれたというのに、ゼロセンは静かにふんぞり返ったままだった。例の魔法で使い魔たちを切
り裂くことも、謎の回転板を回して八つ裂きにしようともしない。不気味な沈黙である。
 だが、優秀な風韻竜であるシルフィードには、敵の魂胆など手に取るように分かっていた。
(あなたも、このシルフィードと一対一でケリをつけることをお望みなのね。変な名前の陰険女だけ
ど、その度胸だけは買ってあげるわ)
 シルフィードは咆哮を上げて敵を威嚇しながら、瞬時に翼を広げて低空飛行を開始した。真っ直ぐ
敵に向かおうとはせず、ジグザグに飛びながら少しずつ距離を詰める。これが、シルフィードが考え
出した例の魔法対策であった。
(あの魔法で地面が抉られた痕は、ほぼ直線状に連続して続いていた。つまり、すぐには軌道を変え
られないと見た!)
 こうして変則的な動きで接近すれば、敵はこちらに狙いを定められないだろうと踏んだのだ。実際、
ゼロセンは全く魔法を撃ってこない。自分の読みが正しかったことを確信して、シルフィードは会心
の笑みを浮かべた。
(でも、だからと言って正面から迫れば、あの回転板に捕まるかもしれない。だから……!)
 シルフィードはギリギリまで距離を詰めたあと、先程までの低空飛行からは予想もつかないほど急
激かつ瞬時に上昇した。格納庫の低い天井付近までほぼ垂直に舞い上がると、後脚を突き出してゼロ
セン目掛けて一気に降下する。風韻竜の体重を活かした、必殺の蹴りである。
(殺った! きゅいきゅい、このまま潰れておしまい!)
 観念したのか、ゼロセンは全く動かない。シルフィードは自分の勝利を確信する。だが、その瞬間、
不意に間の抜けた声が響き渡った。
「うわ、何の騒ぎだこりゃ!?」
(え、サイト?)
 気がそれた瞬間、体勢が崩れた。
(しまった!)
 慌てて修正しようとするが、時既に遅し。シルフィードはゼロセンの横を通過してしまう。下にい
た使い魔たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ去り、風韻竜の巨体は受け止めるものもなく地面に激突した。
 痛みに悶える暇もなく、瞬時に跳ね起きて状況を再確認。入り口に姿を現した才人は、目を白黒さ
せて格納庫内の惨状を見回している。
「何が起きてんだこりゃ。うわ、ゼロ戦が汚れて……って、なんだ、シルフィードまでいんのか。一
体何があったんだ、おい」
 シルフィードは答えることが出来なかった。元々、才人には人語で喋らないようにしているが、た
とえ喋ることが出来たとしても、今は何も言えなかっただろう。
(迂闊だった……! サイトが来ない時間帯を狙って、早朝の闇討ちを決行したというのに……! 
ま、まさか、ゼロセンはこれを狙って……!)
 きっと睨みつけるが、ゼロセンは微動だにしない。その態度がなおさら余裕を見せつけているよう
に思えて、シルフィードは歯噛みする。
「シルフィード、何があったんだよ。お前、知ってるんだろ、なあ」
 歩み寄るサイトと、「さあ、どうとでも申し開きしてご覧なさいな」とでも言うようにどっしりと
鎮座しているゼロセンを交互に見て、シルフィードは恐れ慄いた。
(きゅいきゅいきゅいきゅい! しゅ、修羅場なのねぇぇぇぇぇぇぇっ!)
 計画が完全に失敗したことは、いちいち確認するまでもなかった。

129:犬竜騒動
07/11/03 17:25:35 oymzW4k8

 才人がコルベールを助け出し、逃げなかった使い魔たちをふん捕まえて、およそ三十分ほど。
 ゼロ戦の前に正座(と言うか並べられた)使い魔たちは、学院長オールド・オスマンの面前で取調
べを受けている最中であった。
「止めてください、ご主人様に連絡とか勘弁してくださいよホント」
「あ、いや、ご主人様は関係ないんで」
 ゲコゲコゲコゲコクワァクワァッと、ロビンやクヴァーシルが通じもしないのに弁解する横では、
モートソグニルがオールド・オスマンに洗いざらいぶちまけているところであった。
「っつー訳でさ、俺は悪くないのよご主人。分かる?」
「おうおう分かるとも。お主はただ裸が見たかっただけじゃからな。その気持ちはよく分かるとも。
許してやるから、ミス・ツェルプストーの裸を見るときは、ちゃんとワシにも映像を繋ぐんじゃぞ」
 何やら通じ合っている様子である。
 直接の被害者であるコルベールは、水魔法で治療を受けて完治した。どうやら使い魔たちが結託し
てやった悪戯らしい、と、オールド・オスマンから大事なところはぼかした説明を受けると、怒るど
ころか逆に目を輝かせた。
「ほほう。つまり、使い魔たちにもちゃんとコミュニティが存在する訳ですな! これは非常に興味深い」
 と、笑っているところを見るに、どうやらこちらにお咎めはなさそうである。
 そんな訳で、結局問題が残ったのはシルフィードだけということになった。
「なあ、そろそろ理由教えてくれよ」
 目の前で困り果てている才人から、シルフィードはぷいっと顔を背ける。
(ふんだ。なによなによ、サイトなんて、あの鉄臭い女と戯れてればいいのね)
 計画が失敗したので、とりあえず開き直ることにしたのである。
(愛人を殺そうとした現場を押さえられたのね。もう見離されて捨てられてお終いなのね)
 そんな風に、自棄を起こしている一面もなくはなかったが。
 才人はシルフィードがだんまりを決め込んでいるので、すっかり困惑した様子であった。
「お前みたいな気のいい奴が、理由もなしに暴れるとは思えねえんだけどなあ」
(あら、いい奴だなんて)
 ぼやくような言葉に、シルフィードの胸がほんの少しときめいたが、
(って、違う違う!)
 と、気を取り直してまたそっぽを向く。
(シルフィはもうサイトとは完全に袂を分かつことにしたのね! サイトがゼロセンを選んだ以上、
二人の関係はもうお終い。さよならサイトフォーエバーなのよ! シルフィの決心はタバサおねーさ
まの胸板よりも固いのね、きゅいきゅい)
 決意も新たにシルフィードが完全に押し黙ったとき、格納庫の入り口に新たな人影が現れた。
「……何の騒ぎ」
 静かな声。相も変わらず無感動な表情のタバサである。天の助けとばかりに、才人が彼女に歩み寄る。
「タバサ、ちょうどよかった。実はさ」
 才人の説明に、タバサが無言のまま頷いている。シルフィードは少し焦った。さすがに、タバサか
ら全部事情を聞きだされて、自分が嫉妬に狂ったのだなどと伝えられたら恥ずかしいことこの上ない。
(だ、大丈夫。何も言わずに黙っていれば、お姉さまにだって分かりはしないのね)
 心に言い聞かせていると、話を聞き終えたタバサがこちらに歩み寄ってきた。静かな表情で聞いてくる。
「何故こんなことをしたの」
 答えるつもりはないので顔を背けたが、タバサは何故か「そう。そういうこと」と話を聞きだして
いるかのように頷いている。シルフィードが怪訝に思っていると、主は踵を返して才人のところに戻った。
「あなたがあの機械に乗ってばかりいるから、嫉妬したみたい」
(なんでばれてるの!?)
 シルフィードは驚愕したが、すぐに事情を察した。
(そ、そうか、使い魔と主人は心と心で繋がっているから、シルフィの心の中をのぞいたのね! ひ
どいわひどいわ、姉さまの鬼! 悪魔! 心まで大平原!)
(別にそんなことしなくても、あなたの心は分かる。それと、最後の一言は死ぬまで覚えておくから)
 心で文句を言うと心で返答が返ってくる。そんなやり取りをしている間に、才人がこちらに向かって歩いてきた。
「なんだ、そういうことか。お前、最近俺がゼロ戦にばっかり乗ってるから拗ねてたのかよ」
 嬉しそうなにやけ面でそう言われて、シルフィードはとうとう我慢できずに怒りを爆発させた。

130:犬竜騒動
07/11/03 17:26:36 oymzW4k8
(当たり前なのね! サイトったらひどいんだもの! あれだけわたしと仲良くしてたのに、新しい
娘が来たらあっさり乗り換えちゃって! ひどいひどい、サイトの嘘吐き! 大っ嫌い!)
 と、直接文句を言うことはできないので、きゅいきゅいきゅいきゅい鳴きながら、バタバタバタバ
タ翼をばたつかせる。才人は「おいおい落ち着けよ」と腕で顔を庇いながら、苦笑した。
「別に、お前のこと忘れてたんじゃねえって。ただ、久しぶりに動かすわけだから、やっぱりいろい
ろテストとかしなくちゃならないしさ」
(ふんだ、意味のわかんないこと言って。要するにあの子の寸胴に夢中なのね。きゅいきゅい)
 シルフィードは、またむくれ面でそっぽを向く。それを見た才人が、どことなく意地悪な声で言った。
「そっかー。許してくんねーのかー」
(当たり前なのね。竜は気高い生き物なのよ。今更謝ったって、犬みたいに尻尾振ったりなんかしないのね)
 あくまでも意固地なシルフィードの前で、才人はこれみよがしにため息を吐いてみせる。
「残念だなー。ゼロ戦動かすのって思った以上に面倒くさいから、これからも空の散歩はシルフィー
ドと一緒にしようと思ってたのになあ」
 シルフィードは思わず才人のほうを見てしまう。彼は悲しむように首を振っていた。
「だがまあ、お前が嫌だって言うんならしょうがねえ。シルフィードほどいい竜なんて他にはいねえ
だろうけど、どこかから違う竜を探してくるしかねえかなあ」
(ダメッ!)
 慌てて才人の腕をくわえ、首を横に振って意志を伝える。
「なんだ、また俺を乗せて飛んでくれるのか」
 驚いたような声が返ってきたので、シルフィードは才人の腕を離して勢いよく首を振った。
(そう、そうなのよ、シルフィまたサイトを乗せて飛んであげる。シルフィよりもいい竜なんて、ど
こ探したっているはずがないのね。きゅいきゅい)
 その思いが伝わったのかどうかは知らないが、彼は嬉しそうに目を細めてシルフィードの頬を撫でた。
「そっか。ありがとうな。あのなシルフィード。俺、車とか馬とか飛行機とか、いろんなものに乗ったけどよ」
 才人は満面の笑みを浮かべた。
「お前ほど、乗ってて楽しい奴は他にはいなかったぜ」
 シルフィードの胸が、じわりと暖かくなる。
(サイト……!)
 感極まって、シルフィードは前脚でサイトの体を引き寄せた。
「お、おい、シルフィード!?」
(ごめんね、ごめんねサイト。シルフィさみしかったの。さみしかっただけなのよ。ゆるしてちょうだいね)
 言葉が伝えられない分せめて動作で親愛の念を示そうと、シルフィードは長い舌で才人の顔を舐め
始める。彼はくすぐったそうに身じろぎした。
「おいシルフィード、くすぐったいって……っつーか、お前の舌はざらざらしてるから、そんな勢い
で舐めるといたたたたたたたいだいいだい、ちょ、やめっ」
 身じろぎが段々もがきに変わってきているのにも気付かず、シルフィードはいつまでも才人の顔を
舐め続けた。


131:犬竜騒動
07/11/03 17:27:31 oymzW4k8

「いたたたたた……」
(ごめんなさい……)
 赤くなった頬を手で押さえている才人の横で、シルフィードはしゅんとなってうなだれていた。ど
うも、自分の思いを伝えようと必死になりすぎてしまったらしい。
(うう。シルフィ、ちょっと冷静さが足りないかもしれないわ。大人のレデーになるために、反省す
るのね。きゅいきゅい)
 反省の意を示そうと小さく丸まるシルフィードの頭を、誰かが優しい手つきで撫でる。頭を上げる
と、才人が柔らかい微笑を浮かべて手を伸ばしていた。
「別に怒っちゃいないから、安心しろよ」
(本当?)
 シルフィードが首を傾げると、才人は「ホントホント。ああ、そうだ」と何か思いついたように言った。
「なら、お詫びとして、これからまた空の散歩に連れてってもらおうかな。ほら、いつか行った花畑。
また行こうぜ」
 才人が花冠を作ってくれた思い出が色鮮やかに蘇り、シルフィードの体が喜びに満ち溢れた。
(任しとくのね!)
 長い舌で才人の体を持ち上げ、背に乗せる。シルフィードはそのまま大きく翼を広げ、助走をつけ
て格納庫から飛び出した。地を蹴り早朝の空に舞い上がると、背中から歓声が聞こえてくる。
「うおーっ、やっぱスゲーなシルフィード。ホント、こっちの方が面倒くさくなくていいや!」
 聞き方を間違えれば「お前は単細胞だ」と言われているように聞こえなくもないが、シルフィード
は優秀な風韻竜だったので、才人の言わんとしているところをきちんと理解していた。
(つまり、面倒くさい女はお断りってことなのね。オホホホホ、ざまあ見なさいゼロセンちゃん。
やっぱり女はこのシルフィのように、さっぱりした爽やかな性格でなくちゃいけないのよーっ!)
 きゅいきゅいと嬉しい鳴き声を響かせながら、シルフィードは懐かしい花畑に向かって羽ばたき続けた。

「ふん。なによあいつ、子供みたいにはしゃいじゃって」
 まだ誰もが寝静まっているはずの早朝の寮の中で、ルイズは不満げに呟いた。まだ寝衣のままで、
小柄な体は寝台の上にある。サイトがまだ早朝の内にいそいそと部屋を出て行くものだから、なんと
なく彼女も目が覚めてしまったのであった。今、タバサの風竜に乗って飛び立っていくサイトを、窓
越しに見送ったところである。
「まーったく、ご主人様をほっぽり出して、竜で空なんか飛びまわっちゃって。一体何が面白いんだ
かさっぱり分かりゃしないわ」
 ぶちぶち文句を言いつつも、心の中では多少安心している部分があった。
(あのメイドとかキュルケとかと一緒にいるんなら、ともかく、竜相手じゃあいつだって盛りようが
ないものね。その点はまあ、いいことって言えばいいことなのかも)
 ルイズは安堵感に包まれながら、また毛布にくるまって寝始めた。

 使い魔たちによるゼロ戦襲撃はこれっきりで、以降は誰もこの機械に興味を抱くものはなくなった。
持ち主である才人自身もあまり乗らなくなってしまったのは多少寂しいことだが、その分自分もじっ
くりと研究に打ち込めるというものだ。そんなことを考えながらまたコックピット内の機材を調査し
ていたコルベールは、ふと手を止めた。外から、何やら勝ち誇った声が聞こえてくる。
「そういう訳で、シルフィはサイトとお花畑で楽しい時間を過ごしたのよ。オホホホ、どう、悔しい
かしらゼロセンちゃん。悔しかったらその板を回転させるなり例の魔法を撃つなりしてみたらいか
が? そんなことしたって、サイトの心はもうあなたには向きっこありませんけどね。きゅいきゅい」
 何事かと思ってコックピットから顔を出してみると、最近よく見かける風竜が、悠然と歩み去って
いくところであった。その背中が何故かやたらと得意そうに見えて、コルベールは首を傾げる。
(……一体なんだ? 先程の声の主も見当たらぬようだし……)
 少し困惑したが、まあこの機械の魅力に比べれば取るに足らないことである。そんなことを考えて、
コルベールはまたコックピットに潜り込むのだった。

132:205
07/11/03 17:29:04 oymzW4k8
以上。

仕方がないから最近は竜のCGとか置いてあるサイトをつらつらと眺めていたりします。メス竜可愛いよメス竜。
誰か竜の交尾について詳細に記してある本とか知ってたら教えてつかーさい。

133:名無しさん@ピンキー
07/11/03 17:32:21 ofWWMtEB
>>132
そんな本は太公望書房クラスまでたどらないとないぞw

134:名無しさん@ピンキー
07/11/03 17:40:55 MdsPMBgs
ヒロインはシルフィだということにようやく気付いた
次は人間態での絡みですよねそうですよね

135:名無しさん@ピンキー
07/11/03 17:59:00 0DEd4mzS
>>132
GJ!
ワニとかオオトカゲの絡みで満足するべきではw というか恐竜ならどうでしょ?

136:名無しさん@ピンキー
07/11/03 18:09:43 QLLYHcv1
×太公望書房
○太公望書林

>134
そんなありふれたモノなど無用!
古くより精霊に愛された竜体こそ、ハルケギニアにおける美の極致だと何故わからないのか…

シルフィ悲しくて涙が出ちゃうのね!

137:名無しさん@ピンキー
07/11/03 19:03:12 0NuddZcR
こんなにおもしろく書けるのが不思議でならない。
しかしサラマンダーが人間にほれる所でほろりと来るとは思わなかった。
GJ!シルフィはやっぱりいい子だ。

138:名無しさん@ピンキー
07/11/03 19:32:27 FQWwYOwU
ヤバイ、シルフィの事がどんどん好きになってきた、幸せにしてやりてぇw

139:名無しさん@ピンキー
07/11/03 20:46:08 aYQr20+A
>「あなたがあの機械に乗ってばかりいるから、嫉妬したみたい」
嘘はついておらず、しかもサイトが事態を把握可能な、実に的確な表現だ。
タバサはいいご主人様だなぁ。

そんなタバサを放置して、シルフィードに乗って飛び去るサイトは実にヒドス。

140:名無しさん@ピンキー
07/11/03 20:54:16 aYQr20+A
>132
>誰か竜の交尾について詳細に記してある本とか知ってたら教えてつかーさい。

URLリンク(allabout.co.jp)
>繁殖期になると1匹のメスに対して複数のオスがからみついて団子状になる行動が知られています。
>メスは交尾後6ヶ月後に出産を行います。

141:名無しさん@ピンキー
07/11/03 21:09:54 7ioygqS+
>>140
竜?


142:名無しさん@ピンキー
07/11/03 21:28:56 MdsPMBgs
LV0 ゼロの使い魔?どうせ典型的萌えラノベだろ?どうでもいいよ…
LV1 話はあんまり萌えラノベっぽくないな。ってかこの主人公何で武器使いこなしてんの?
LV2 なかなか燃える内容だな。ルイズってのはなんかツンデレしてて結構いいかも。
LV3 ルイズって女神じゃね?理想のご主人様って感じ・・・
LV4 シエスタもドジっ子でかわいいな。アン様とかキュルケとかモンモンとかティファもいい・・・
LV5 タバサって別にかわいくないのにカリスマ扱いされててうぜぇ。タバサ死ね!
LV6 タバサ結婚してくれ!
LV7 やべぇタバサ最高!タバサと水さえあれば生きていける!
LV8 タバサと結婚した!俺はタバサと結婚したぞ!!
LV9 やっぱルイズは最高だわ
MAX シルフィとちゅっちゅしたいよぉ~


143:名無しさん@ピンキー
07/11/03 21:45:41 n6M9tq1Y
とりあえずLV1はおかしい
誰が見たってゼロの使い魔は典型的萌えラノベ

144:名無しさん@ピンキー
07/11/03 21:48:17 yCm+cC6X
>>142
アン様が添え物扱い。許しがたい w

145:名無しさん@ピンキー
07/11/03 22:46:59 MmlSNO4U
Lv8とLv9、Lv9とMAXの間もおかしくね?(w

146:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:28:22 RWVv359f
竜とファックしたいから、ちょっくら世界中の火山巡りしてくる。

できれば雌竜に巡り合いたいものだな

147:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:28:57 cznHrtnG
5と6の間に何があったのか気になる

148:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:33:45 XTpmRhME
11巻と12巻の間に
ノボルに何があったのか知りたいわ・・・・

149:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:40:18 4F1evp3j
封じられていたラブコメさんとの思い出が、ついに噴出してしまったのだろう。
奴がいま感じている感情は精神的疾患の一種だ。
しずめる方法は俺が知っている。俺に任せろ。

150:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:56:25 6NNg/+UE
>>142ってコピペネタじゃないのか?
俺がまだ本スレにいた頃に見た気がする

151:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:58:17 2K3au7eV
>>142なんて改変されて出回りまくってるぞ
Lv5以降がルイズが多い気がする
最後はオチだからなんでもありだが シルフィもギーシュもオスマンもコルベールもみた

152:名無しさん@ピンキー
07/11/04 01:05:03 rspPwz59
前スレがまだ埋まってないぞ?
雑談するならそっちに書き込むんだ!

153:虹山
07/11/04 01:15:36 tr8N5gxR
うぃーす。ども、虹山です。
やっぱ誤字とかありましたか……。
報告してくだされば保管庫のほうは修正しときますんで。

終わるのいつになるんだろう…自分のss。

154:ぜろ☆すた
07/11/04 01:16:46 tr8N5gxR
「なぁデルフ?」
「なんだい?相棒」
「浮いてるな」
「浮いてるね」
俺がいるのは宇宙。無重力なんて初めてだ。
体を反転させてみると、そこにあるのはとってもきれいな蒼い星。
大陸の形を見るとこの星は地球じゃない。きっとハルケギニアだろう。
だけどあの天然エルフ…なんで宇宙なんかに跳ばすんだ?
真のガンダールヴの力を発揮してなかったらどうなっていただろう。……想像するのはやめておこう。
本当にこの力は便利だ。飛べるし、疲れないし、怪我しても力を込めれば再生する。
不老不死だけど宇宙でも活動できるなんて思わなかった。
ただ、どんどん人間から遠ざかっていることに嫌気がさしてきた。
「星って丸いんだな。はじめて知ったぜ相棒、きれいだなー」
「ほんとだ。大きな星がついたり消えたりしている…大きい…彗星かな?
いや、違う。違うな。彗星はバアーッと動くもんな…暑っ苦しいな…」
「いやほんとあついぞからだがとけちゃうあついあついあついしぬのかおいらいやいやいやしぬのはいやー!!」
ありゃ、知らないうちに大気圏突入しようとしてるみたい。
俺は大丈夫だけどデルフは溶けちゃうだろうし、何より自分のデジカメと服が危ない。落ちた時にスッポンポン
「大丈夫だ、デルフ!!お前はは死なない!!お前はは俺が…俺が守るから!!うおおぉぉぉ!!」
大気圏突入のために光の翼で身体や荷物を覆い、摩擦熱から保護した。
後は落ちるだけだ。だけどトリステインに落ちる確立はごくわずか。
ロバ・アル・カリイエとか訳もわからないところに落ちたらどうしよう。
まぁ何とかなるだろうけどさ。とりあえず俺は眼を閉じて祈ることをしてみた。


155:ぜろ☆すた
07/11/04 01:17:23 tr8N5gxR
ラ・ヴァリエールの中庭……。
モンモランシーは傍らのマリコルヌとギーシュに尋ねた。
「……こんな夜中に、見せたいものってなに?」
寝ようとしたら、見せたいものがある、と、呼び出されたのでやってきた。
目の前には何もないが、このパターンはギーシュがモンモランシーに何かを見せる時である。
「やっと完成したんだ。一番最初に、君に見てもらいたくてね」
「また何か作ったのね……今度は何?この前作ったわけわかんないものじゃないでしょうね?」
「これだよ」
ギーシュは唇をニヤリとさせてばさっと、何もないように見えた空間を引っ張った。
そこに現れたのは……、高さ20メイルはあろうかという、巨大なサイトの像。
両手を腰にあて胸を張っている立派な像だった。
「何ヶ月かかったことやら。サイトがゲートをくぐってから一ヶ月経った頃ぐらいから作業しはじめてね。
ルイズたちに見つからないように、僕とギーシュで毎晩作業をしていたんだ。ずいぶんと苦労したよ」
マリコルヌは、やれやれといった感じで言った。
「これ、昔、造ったサイトの像をもとにして巨大化させたやつ?」
「そうだよ。懐かしいだろ?後はいつものように“錬金”をかけて青銅にするだけだ」
「明日の朝、ルイズやティファニアにも見せてあげましょうよ。ガリアにいるタバサとかゲルマニアにいるキュルケや先生も呼んで!」
「だったら姫さまやシエスタも呼ばなきゃならないな!みんなでパーティをしよう!大英雄ヒラガ・サイトを称える会だ!」
「じゃあ、あなたはそんな大英雄の像を作り上げた最高の男だわ!」
「あ、ありがとう……モンモランシー」
ギーシュは愛する人に褒められ照れくさくなった。モンモランシーはそんな彼に唇を近づけようとする。
二つの唇が重なり合おうとしたとき……モンモランシーとギーシュは、ギュッと音がしたので思わずそっちのほうに眼を向けてしまった。

156:ぜろ☆すた
07/11/04 01:19:04 tr8N5gxR
そっちを見てみると……マリコルヌが首をつっていた。木の枝からたれているロープがゆらゆらとゆっくりと動いている。
ギーシュはいそいで縄抜けの呪文をそのロープにかけた。
しかし急いでいて何かをミスをしてしまったのか、ロープは緩むどころか逆にきつくしまってしまった。
マリコルヌの顔はどんどん青くなり、手と足が訳のわからないようにじたばたと動いている。
今度はモンモランシーが縄抜けの呪文をかけた。
彼女もあせっていたので失敗しそうになったが、取りあえず成功しロープは解けた。
ロープから落ちたマリコルヌは、ぜぇぜぇと急いで空気を肺の中へと入れている。
そして叫んだ。
「死んだらどーする!」
夜の寒い空気が風となって駆け抜ける。
「……なぁマリコルヌ、死にたかったんだよな?」
「なのに、死んだらどーするって……」
二人はあきれながらも言った。その言葉にマリコルヌはキレた。
「うるさい!ああ、そうさ、死にたかったさ!
僕がいるのに、目の前でそんなラブゲームなんか繰り広げ、僕の存在さえも無視して!
彼女すら一人もいないこの僕が!この僕が!!死にたくなるのは当然だろがぁぁぁ!!!」
マリコルヌはこの世の全てを今にも破壊しそうな雰囲気、いや、オーラが出ていた。
「「ごめんなさい」」
二人は土下座して謝る。貴族とあろうものが土下座をするのだ。
彼の怒りを静めるにはただ謝るしか方法がなかった。
「じゃあさぁぁぁ!僕にも紹介してよぉぉぉ!!いちゃいちゃさせてくれるひとをさぁぁぁ!」

157:ぜろ☆すた
07/11/04 01:19:57 tr8N5gxR

モンモランシーがマリコルヌを説得しようと思って、顔を上げ空を見たら一言、
「あ、流れ星!」
「モンモランシー、そんなふうに話をはぐらかしたら逆効果だぞ」
ギーシュは小声で言った。
「だけど見てみなさいよ!ほら!」
モンモランシーは、星空に指を突きつける。
「……うん、確かに流れ星だね」
ギーシュはうなずいた。
「……またそうやって君たちは僕をのけ者にするんだねぇぇぇ!!!死んでやる!死んでやるぞぉぉぉ!!」
マリコルヌは椅子ににのぼり、もう一度ロープに輪を作って死のうとした。
「なぁモンモランシー……いくら流れ星でも長すぎないかい?」
「……そうね、確かに光り輝く時間が長すぎるわね……」
二人が話しているのを見ながらマリコルヌは死のうとしているのに止めてくれないバカップルを見て死ぬことを改めて決心した。
父上、母上、自分の死に場所がみつかりました…、などと思っていると、
「どんどんあの流れ星大きくなってないか?」
ギーシュのつぶやきにモンモランシーが叫んだ。
「こっちにくるわよ!!」
「マリコルヌ、逃げろーーーーー!!!」
ギーシュがマリコルヌに叫ぶ。
その言葉に椅子の上にいたマリコルヌが、へ?っと言って振り返った。


その一瞬だった。


その流れ星はものすごい威力で巨大な像を貫き、その直線上にいたマリコルヌにダイレクトに直撃。
まっすぐに約50メイルも吹っ飛んだ。
椅子は跡形もなく破壊され、その先にはさっきの流れ星によってできた大穴。
その大穴に二人が駆けつけて覗くと、マリコルヌと光の翼で包まれた『何か』がみえた。
マリコルヌは……もう言葉ではなんともいえない状況になっていた。ただ『ひどい』としか表現できない。
その『何か』は光の翼に包まれていたが二人には見覚えがあった。
ゆっくりと光の翼がひろがる。
「………ただいま」
サイトだった。

158:虹山
07/11/04 01:20:47 tr8N5gxR
もう夜遅いので寝ます……
それではノシ

159:名無しさん@ピンキー
07/11/04 01:30:59 Zrz1RdUN
GJ!

160:名無しさん@ピンキー
07/11/04 01:49:28 3NVDcKOC
過疎ってるのかと思ってたら、いつのまにやら次スレに移行してたのか…orz

161:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 03:13:53 b9xVjTy0
>>103の続き。
でもまだ終わらない不思議。
仕事終わってから書くもんじゃないなあ…。

162:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 03:14:58 b9xVjTy0
よ、よし。
私はタニアのくれた香水をつけて、廊下に出た。
授業はもう始まっている。今から教室に向かっても、意味はない。
私が今から向かう先…。
それは、サイトのところ。
べ、べつにサイト墜とそうとか、そんな事考えてるわけじゃなくって!
えと、うんと、もっと、サイトの事、知りたいから。
もっと、サイトと仲良くなりたいから。
お、お友達だもん。当然だよね!
私は廊下の左右を確認して、誰もいないことを確かめると、寮の外へ向かう。
…だって、サボってるの見られたりしたらまずいし。
外に出ると、空は晴れていて、気持ちのいい秋晴れだった。
中庭を見渡すけど、特に人影はない。
サイトは…ヒマなときには、中庭の隅っこにある倉庫にいるって言ってたっけ。
私は以前サイトが教えてくれたその場所に、向かっていく。
少し歩くと、すぐにその建物が視界に入った。
それと同時に、胸がとくん、と鳴る。
…ち、違うんだから!サイトは友達!大切なお友達なんだから!
でも。
一歩一歩近づくたびに、私の胸はどんどん高鳴っていく。
倉庫まであと少し、と言った所まで来ると。
私の心臓は、早鐘のように鳴り響いていた。
…お、おおおお落ち着かなきゃ!
私は大きく深呼吸をして、気を静める。
新しい空気が私の中に入るたび、少しずつ落ち着きが戻ってくるのが分かった。
私は近くにあった水場の低い石積に腰掛けて、一息つく。
そして、水場の水面に、自分の姿を映してみる。
…ヘンじゃ、ないよね?
そして少し落ち込む。
…やっぱり、ヘンだよね…。この胸。
私は白い制服を中から押し上げている胸を両手で隠してみる。
両手じゃ納まりきらなくて、少しはみ出てる。
…こんなヘンな胸、サイトは、どう思うのかな…。
…こんな胸でも、お友達って、言ってくれるのかな。
そこまで考えて、私は決めた。直接聞いてみよう。
…それで、もし、ヘンじゃないって、言ってくれたら。
そのときは、その時は。
え、えと、やっぱり『お友達からお願いします』かなっ?
『友達以上になりたいの』とかってダイタンに言ってみる?
香水の効果で、ひょっとしたらひょっとして、うまくいくかもだし…。

「言ってみる?ティファニア…?」

私は水面に映る自分に、そう尋ねてみる。
しかし、水面に映った虚像は、何も応えない。

163:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 03:16:07 b9xVjTy0
なーん。

でも。
いつの間にかすぐ近くに居た、ちょっと太った虎縞の猫が、そう応えるように鳴いた。
私はなんだかその猫に応援されているような気がして。

「ふふ。ありがと」

優しくその猫を撫ぜる。
猫はぐるるるる、と喉を鳴らして石積に腰掛ける私の太股に擦り寄ってきた。

「甘えんぼさんね」

言って私はその猫の背を撫ぜる。
猫は変わらず、ぐるるるる、と喉を鳴らしている。

ぞりっ。

「ひゃんっ!?」

いきなりの刺激に、私の喉から声が滑り出た。
猫が、いきなり太股を舌で舐めてきたから。

ごるるるるるる…。

慌てて後ずさった私を見つめて、今にも飛び掛ってきそうな体勢で、その猫は喉を鳴らす。
…これ、どっかで見たこと…。
あ…!
この猫、発情してる…!
で、でもなんで?近くに雌猫なんかいないし…!

すんっ。

どこかで嗅いだ匂いがする。
ちょっとつんとくる、奇妙な匂い。
…え?ちょっとまって?これって…。
私はある事を思い出し、香水をつけた手首に鼻を寄せる。
そして完全に思い出した。
どこかで嗅いだ匂い。それは。
発情期の、雌猫のおしっこのにおい…!
ま、まさか、この香水って…!
気づいた時には遅かった。
次の瞬間から、私は、十数匹の発情した牡猫に追い掛け回される羽目になったのだった。

164:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 03:17:37 b9xVjTy0
「助けて、サイトっ!」

俺が午前中のアンニュイなひとときをゼロ戦の格納庫で過ごしていると。
あばれももりんごがおそってきた!
コマンド?
にアたたかう
  ぼうぎょ
  にげる
  どうぐ
  さいごまでつっぱしる
じゃなくて。
テファが、そんな事を言いながら俺を見るなり駆け寄ってきた。

「どしたのテファ?」

テファは俺の呼びかけには応えず、俺の後ろに隠れると、格納庫の入り口を指差す。
そこには。

なーん、ごるるるる…。なー、なーん…。

あばれねこだまがおそってきた!
コマンド?
にアたたかう
  ぼうぎょ
  にげる
  どうぐ
  ぬっこぬこにしてやんよ
な、なんじゃありゃあああああ?
猫の塊が、この格納庫めがけて走ってきている。
そしてテファはどうやら、その猫の塊に追いかけられているらしい。
あの猫どもになんかしたのかテファは?
俺が尋ねる前に、テファは言った。

「ねえサイト、ここに隠れられる場所、ないっ?」

…って、そんな隠れる場所、って…。
見渡す俺の目に、ゼロ戦の風防ガラスが映った。

「テファ、こっち!」

俺はテファの手を引いて、ゼロ戦のコックピットに乗り込む。
そのまま前にテファを抱えたまま、風防ガラスを閉じる。
すると。

べちべちべち!

さっきの猫の塊が、風防にとびついてへばりつく。
…なんなんだ一体?

「なにあれ?何があったのテファ?」

俺の質問に、俺の上で真っ赤になりながら。
テファは事情を説明してくれた。

165:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 03:18:15 b9xVjTy0
じゃーねゆー。
つづきとエロパートは日が昇ってからー。
ねゆー。

166:名無しさん@ピンキー
07/11/04 05:05:41 0U1EypbF
まじ?
「ゼロの使い魔 (13)」 12/25発売予定

167:名無しさん@ピンキー
07/11/04 05:27:01 pddc26uI
>>166
URLリンク(shinkan.main.jp)

キタ━━━\(T▽T)/━━━ !!!!! ノボルネ申、ハッスルしすぎw
ゼロ魔ユーザーにはクリスマスなんて「そんなの関係ねぇ!」ってかw

168:名無しさん@ピンキー
07/11/04 07:49:44 O3LX4z2Q
>>164
ちょwww自ら密室へwww

169:トマト祭り1/4
07/11/04 09:04:06 O3LX4z2Q
 今日は虚無の曜日。日頃の疲れをテファの部屋で癒すことにしたんだ。よし!とことん楽しんでやるぞ!

「テファ!トマト祭りしようぜ!」

「トマト祭り?サイト、それは何なの?」

「トマト祭りってのは俺がいた世界のある地域に伝わる儀式なんだ。トマトを相手に投げて悪いものを追い払うのさ!」

「うん、わかった!お友達のサイトのために頑張って投げるからね!えぃ!えぃ!」

ビチャッ!ビチャッ!
ブルン!ブルン!

「えぃ!えぃ!」

ビチャッ!ビチャッ!
ボヨン!ボヨン!

 な、なんだ!俺は夢を見ているのか?
 俺はトマト祭りと言ったはずだ!トマト祭りとはトマトを投げ合う祭りだ!トマト以外が宙を舞うはずがない!
 ならば今、目の前で舞っているのはなんだ?

 も も り ん ご だ!

 こ、こんな破廉恥ききき極まりないお祭り聞いた事ないぞぉぉぉお!

 うおぉぉぉおおお!

ブボボボッ!

 あ、鼻血が…

「さ、サイト!鼻からトマトを出すなんて!変な病気ね!サイトから悪いもの出てけ!えぃ!えぃ!」

ビチャッ!ビチャッ!
ブルルン!ボロロン!ポロリ…

 ぬうわぁぁぁぁああ!て、ててテファの片乳が!腕を振りすぎてテファの形の良い片乳が!



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