07/11/09 00:03:34 uOl57tLm
私を好きだといってくれた人。私の使い魔をしてくれている人。
一緒に来てくれた。嬉しかったけど、怖かった。いつ、彼が巻き込まれるかわからなかったから。
それを話したら彼は、もう巻き込まれてるじゃん、そう言って笑ってた。彼の足が震えてたのは、見逃さなかった。
どのくらい逃亡したかわからなかった。逃げても逃げても、世界は私たちを逃さない。人と会うたびに戦って逃げて、エルフと会うたびに戦って逃げて、追っ手と会うたびに戦って逃げて……。
彼は伝説の使い魔でも、無敵ではない。化け物でもなければ、最強でもない。
二人対全世界。傷つけたくなかった私は、虚無を使わなかった。傷つけたくなかった彼は、剣を振るわなかった。
待っていたのは、数の暴力だった。
逃げるたびに、私たちのキズは増えていく。逃げるたびに、私たちの疲れは溜まっていく。
虚無といっても、魔法。世界を操作する魔法でも、精神力を消費する。度重なる逃亡で、私の精神力は尽きていた。彼の体力も、限界だった。
弓矢が、貫いた。炎の弾が当たって、雷が当たって、氷が貫いた。
それでも彼は、私を心配して、逃げろと言ってくれた。死ぬ間際でも、彼は私を思ってくれていた。
ああ、駄目。こんなにも彼が、私の中で大きい。彼が存在しない世界なんて、私にとっては価値が無い。
彼さえいれば、私は世界なんていらない。
最後の爆発が起きた。
その後に残ったのは、無。
何も無い世界で、私は彼が起きるのを待ち続ける。
傷は完治した。内臓の機能にも影響は無い。心臓も動いてる。
彼は、寝息を立てている。
彼の寝顔を見ていると、どうしても気持ちが抑えられない。寝ている彼の唇に、私は自分の唇を合わせる。
そろそろ起きるかな? 起きたら、彼はなんて言うだろう?
世界の構想は出来てる。私たちを拒絶しない世界を創る準備も、万端だ。
後は彼が起きるのを待つばかり。
ねえ、サイト。私、待ってるからね。