07/11/04 10:38:46 UOrNevyT
「お久しぶりね、みんな!」
馬車から降りてきた友人達を、両手を広げて出迎える。
タバサ、ティファニア、モンモランシーらと代わる代わる抱擁を交わしたルイズだったが、キュルケが下りてくると両腕を下げた。
「あら、わたしとは再会の抱擁を交わしたくないってことかしら」
冗談めかして言うキュルケに、苦笑気味に首を振る。
「違うわよ。そんな格好じゃ、まともに抱擁できやしないでしょ」
「そうね。ジャン、ちょっとこの子をお願い」
今まで両手に抱いていたものをコルベールに預けると、キュルケは改めてルイズと抱擁をかわした。
体を離し、ルイズはおもむろに問いかける。
「今年でおいくつになるんだったかしら」
「2つよ」
夫であるコルベールに抱かれて眠っている自分の娘を、キュルケは柔らかい眼差しで眺めた。
「これがもう、本当に元気な子でね。元気すぎて困るぐらいなのよ。この間も、領地の兵100人を」
「まあまあ、積もる話は中で、ね? さ、皆さんこちらにどうぞ」
ルイズは手でヴァリエール邸を指し示した。
「しかしまあ、本当に早かったね!」
「何が」
「皆が結婚するのが、さ」
前髪を指で弄びながら、ギーシュが苦笑気味に仲間達を見回す。
「東方まで冒険して帰ってきて、一年経つよりも早くくっついていたじゃないか、僕らは」
「未だに誰とも予定のない人がここにいるんだけどね」
マリコルヌがため息混じりに言うと、ヴァリエール邸のダイニングルームにどっと笑いが起きる。
「ルイズとサイトが結婚、ギーシュとモンモランシーが結婚、キュルケとミスタ・コルベールが結婚……と」
「落ち着くところに落ち着いた感じですよねえ」
紅茶を啜りながら、ティファニアが穏やかに微笑む。タバサが周囲を見回した。
「そう言えば、サイトはどこ?」
「この時間帯なら、お父様と訓練してるんじゃないかしら。
もしかしたらヴァリエール公爵家を継ぐことになるかもしれない婿様だから、徹底的に仕込まれてるのよ」
ルイズが澄まして言うと、先程から何やらブツブツ呟いていたマリコルヌが首を傾げた。
「あれ、でもサイトの奴、今は一階の南東角のところで黒髪のメイドと話し込んでるみたいだけど。
ああ、遠見の魔法で見てるんだけどね」
「ごめんなさいね、ちょっと失礼するわ」
少し抑えた口調で言って、ルイズが足早に部屋を出る。
それを見送った一同が、揃って肩をすくめた。
「相変わらずよね、あの子も」
「あんな調子じゃ、二人の子供を見るのはまだまだ先になりそうだね」
「あら、分かんないわよ」
キュルケが悪戯っぽく片目を瞑る。
「わたしだって一年もせずに産んだんだもの。
ジャンったら、結婚前はあんなに固かったのに、結婚後はそれはもう情熱的に」
「こ、これキュルケ」
コルベールが慌ててキュルケを止めに入る。ギーシュが苦笑した。
「やれやれ。当学院最高の頭脳を誇るミスタ・コルベールも、結局は一人の男だったってことですか」
「い、いやあ、面目ない」
赤い顔で頭をかくコルベールに、一同からまたも温かみのある笑いが起きる。