07/11/02 23:32:34 RA9dqpbO
結局。
ティファニアは今のも取っ組み合いを始めそうな二人をなんとか仲裁して、部屋に戻ったのだった。
「…ほんとにもう…二人とも、仲良くしてくれると思ったのに…」
ふう、とため息をついて、ティファニアはベッドに腰掛ける。
実はこれから授業なのだが、なんだかもう満身創痍だ。
「…サボっちゃおうかなあ」
などとひとりごちながら天井を眺めるティファニア。
そんな彼女に、語りかける人物が居た。
「お姉ちゃんがそんな不真面目さんだとは思わなかったなあ」
そこにいたのは。
先ほどさんざん叱って、ベアトリスと仲直りさせたタニアだった。
「え、なんで?」
ティファニアの疑問に、タニアはすたすたとベッドに歩み寄りながら言う。
「そりゃ、ベッドメイキングに来たに決まってんじゃない。
部屋の掃除とか片付けは、ぜんぶ私たちの仕事なんだから」
言いながら軽く皺になったシーツをベッドから剥ぎ取り、手にしていた新しいシーツを、古いシーツを剥ぎ取ったマットの上に敷く。
タニアはウエストウッドに居た頃と変わらない手際のよさでベッドを整え終わると、ティファニアに言った。
「で、授業はいいの?遅刻しちゃうよ」
タニアの指摘に、しかしティファニアはため息をついて、椅子に腰掛けた。
「…誰かさんのせいで疲れちゃった」
頬杖をついて、今日何度目か分からない、ため息をついた。
そんなティファニアを横目に見ながら、タニアはてきぱきと仕事を片付けていく。
そして言った。
「おばさんくさー。
そんなんだとお兄ちゃんに嫌われるよー」
机の上で頬杖をついていたティファニアの身体がぴくん、と揺れる。
それを見逃すタニアではなかった。
「なんかお兄ちゃんこっちじゃえらいモテるみたいだし?
いつまでも『お友達だから』とか言ってるどこかの誰かさんじゃ、勝ち目ないかもねー」
『お兄ちゃん』『モテる』『勝ち目ない』のところで律儀にぴくん、ぴくんと反応しながら、ティファニアはそれでも無視を決め込む。
タニアはそんなティファニアを見て、にやにや笑いが止まらない。
「わ。わわわ私には関係ない、もん…」
思いっきり噛んでるし。
そしてタニアは、とっておきをメイド服のポケットから取り出す。
「はいこれ」
それは、小さな香水の瓶。
透明な安っぽいガラスの瓶に、細いリボンが巻かれている。
そのリボンには、小さな字で『誘蛾香』と書かれている。