【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合23at EROPARO
【ゼロの使い魔】ヤマグチノボル総合23 - 暇つぶし2ch100:名無しさん@ピンキー
07/11/02 20:34:47 t03H6a/b
>>98
1枚目の画像を元にせんたいさんあたりが書いてくれねぇかな

101:名無しさん@ピンキー
07/11/02 21:48:39 YgnGQtvU
>>93
GJ。職人が増えるのはいいことだ。

102:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/11/02 23:31:12 RA9dqpbO
さあて皆さんお待ちかね
前すれの投票結果でございます

…でもまた途中なのゴメンしてねorz

103:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/02 23:32:34 RA9dqpbO
結局。
ティファニアは今のも取っ組み合いを始めそうな二人をなんとか仲裁して、部屋に戻ったのだった。

「…ほんとにもう…二人とも、仲良くしてくれると思ったのに…」

ふう、とため息をついて、ティファニアはベッドに腰掛ける。
実はこれから授業なのだが、なんだかもう満身創痍だ。

「…サボっちゃおうかなあ」

などとひとりごちながら天井を眺めるティファニア。
そんな彼女に、語りかける人物が居た。

「お姉ちゃんがそんな不真面目さんだとは思わなかったなあ」

そこにいたのは。
先ほどさんざん叱って、ベアトリスと仲直りさせたタニアだった。

「え、なんで?」

ティファニアの疑問に、タニアはすたすたとベッドに歩み寄りながら言う。

「そりゃ、ベッドメイキングに来たに決まってんじゃない。
 部屋の掃除とか片付けは、ぜんぶ私たちの仕事なんだから」

言いながら軽く皺になったシーツをベッドから剥ぎ取り、手にしていた新しいシーツを、古いシーツを剥ぎ取ったマットの上に敷く。
タニアはウエストウッドに居た頃と変わらない手際のよさでベッドを整え終わると、ティファニアに言った。

「で、授業はいいの?遅刻しちゃうよ」

タニアの指摘に、しかしティファニアはため息をついて、椅子に腰掛けた。

「…誰かさんのせいで疲れちゃった」

頬杖をついて、今日何度目か分からない、ため息をついた。
そんなティファニアを横目に見ながら、タニアはてきぱきと仕事を片付けていく。
そして言った。

「おばさんくさー。
 そんなんだとお兄ちゃんに嫌われるよー」

机の上で頬杖をついていたティファニアの身体がぴくん、と揺れる。
それを見逃すタニアではなかった。

「なんかお兄ちゃんこっちじゃえらいモテるみたいだし?
 いつまでも『お友達だから』とか言ってるどこかの誰かさんじゃ、勝ち目ないかもねー」

『お兄ちゃん』『モテる』『勝ち目ない』のところで律儀にぴくん、ぴくんと反応しながら、ティファニアはそれでも無視を決め込む。
タニアはそんなティファニアを見て、にやにや笑いが止まらない。

「わ。わわわ私には関係ない、もん…」

思いっきり噛んでるし。
そしてタニアは、とっておきをメイド服のポケットから取り出す。

「はいこれ」

それは、小さな香水の瓶。
透明な安っぽいガラスの瓶に、細いリボンが巻かれている。
そのリボンには、小さな字で『誘蛾香』と書かれている。

104:名無しさん@ピンキー
07/11/02 23:33:14 p5BKbquL
リアルタイム支援

105:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/02 23:33:18 RA9dqpbO
「…なに、これ?」
「いつまでも煮え切らないテファお姉ちゃんにとっておきをあげます。
 これはね、『誘蛾香』って言って、オトコノコを興奮させる匂いの香水なんだって。
 トリスタニアでは結構流行ってるんだってさ」

言って、タニアは取り出したそれを、ティファニアの掛ける椅子の前にある円卓にたん、と置く。

「これをどう使うかはお姉ちゃん次第。
 あ、値段に関しては気にしなくていいからね。友達になった子からもらったもらいもんだし」

ティファニアは十三の子に何を与えてるのよ、と心の中でその友達に突っ込みを入れたが、思春期の女の子はえてしてそう言うものに興味がいくものである。
そしてタニアは香水をそのままテーブルの上に置いて。

「んじゃ、頑張ってねえ~」

ぱたぱたと手を振って、部屋から出て行ってしまった。
残されたのは、香水の瓶と、固まったティファニア。
ティファニアの視線は、香水の瓶に完全に固定されていた。
こ、こんなの、こんなのつけて、サイトの前に…。

『お?なんかいい匂いするね、テファ』
『え、あ、うん…』
『テファってこんないい匂いのする女の子なんだな…食べちゃいたいよ』
『え、あの、その、えとあの』
『いいだろ?テファ』
『あ、えと、さ、サイトだったら…』

今朝の夢とほとんど変わらない内容の妄想をそこまでして。
真っ赤な顔でティファニアは顔をぶんぶんと振った。
そ、そんな上手くいくわけないじゃない!
心の中で自分で自分に突っ込みを入れ、そして。
もう一度、香水の瓶を凝視する。
で、でも。
でも、た、試してみるくらいは…いいよね…。
白磁のような細い指が、瓶の蓋を開く。
即座に香水が気化し、辺りに香りを撒き散らす。
どこかで嗅いだような、少し鼻にかかる奇妙な匂いが、ティファニアの鼻腔をくすぐった。

106:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/11/02 23:35:19 RA9dqpbO
すまにゅ、今日はここまで
明日も仕事で早いので…。

明日帰ってきたら気合い入れて書きますので

あ、あと『タニアってダレやねん』と言う人のために
つ URLリンク(wikiwiki.jp)
オリキャラなんですごめんなさい…orz

107:名無しさん@ピンキー
07/11/02 23:36:19 p5BKbquL
おつかれさまじゃ!
テファかわいいよテファ。


108:名無しさん@ピンキー
07/11/02 23:45:32 t1xCTSri
・・・タニアに萌えたらあれか?
枕元にせんたいさんが来て、斧で・・・・・・なのか?
はたまた未来の旦那さんに(げふんげふん)なのか?


タニアにメイド服 やばすぎるでしょ俺的に。

109:名無しさん@ピンキー
07/11/02 23:56:49 F8PFB++t
何だ今回は投票ないのか

110:名無しさん@ピンキー
07/11/03 00:15:43 LZrGKvyn
おつかれさまです!
いつの日かタニアにもサイトの魔の手が伸びるような気がしてならない

111: ◆LoUisePksU
07/11/03 01:26:41 yVvwa3ip
新スレ乙+職人さま乙。

「サイトが魔法を使えたら」+番外編 投下します。
URLリンク(wikiwiki.jp)


112:サイトが魔法を使えたら(1/4)
07/11/03 01:28:35 yVvwa3ip
グングニールは真っ直ぐにヨルムンガントに突き進んでいく。残り5メイル、3メイル、1メイル---ゼロ。
ヨルムンガントの頭部と穂先が接した瞬間、無数の紅色のプラズマがその厚い装甲に網のように貼りついた。
バチンッ。破裂音とともにグングニールの穂先が装甲にめり込んでいった。と、次の瞬間、頭部の1/3が内側から破裂し、めくれ上がったのだった。
「あ、ありえない---」
予想外な光景にミョズは顔色と言葉を失った。

一方、グングニールを投げてしまった今、サイトは丸腰になってしまった。ここぞとばかりにアルヴィーたちが襲い掛かってくる。徒手空拳でなんとか致命傷は避けるものの、かなりの手数を喰らってしまう。これまでのケガのせいか意識がぼやける。
眼前に隊列を組んだ槍ぶすまがサイト目掛けて突き進んできている。
や、ばっ---避けようにももう足が言うことを利かない。
ルイズ・・・ごめん・・・・サイトは目を瞑った。

ズブッ。何かに突き刺さる鈍い音がした----俺、死んだ?!
サイトは、恐る恐る目を開けた。なんとサイトは羊水のような水の球に包み込まれているのだった。
ゆらめく視界には槍ぶすまが水球の表面5サントくらい突き刺さって止まっていた。
誰かが水魔法でサイトを護ってくれたのだ。背後からかすかな声が聞こえた。
”ガンダールヴ----手助ケシヨウ。アノ指輪ヲ我ノモトニ・・・”
声の主はこのラグドリアン湖に棲まう水の精霊であった。

水の精霊・・・。精霊の涙を分けてもらって以来の邂逅であった。
”オマエト約シタ。アノ指輪ヲ我ノ許ニモドスト。”
そうだった。忘れちゃいない。目の前にアンドバリの指輪はあった。
サイトの身体に接する「水」が柔らかいグリーンの光を放ち始めた。先までの傷が徐々に癒されるのが感じ取れる。
身体が軽くなってきた。サイトの中で消えかけていた灯が再び燃え上がる。黒い瞳の奥に生気を取り戻した。
「一つお願いだ。あそこに倒れているタバサも助けてやってくれ」
タバサのほうを指して精霊に願いを請うた。
”分カッタ。約束シヨウ---”
サイトを包み込んでいた水の球は消え失せ、今度はタバサが精霊の胎内に抱かれていく---

ザンッ。ヨルムンガント1体を打ち破ったグングニールがサイトの許に舞い戻ってきた。
右の手で槍をむずと握り、ずぶりと湖面から引き抜いた。
その刹那。湖の上空から閃光が降り注いだのだった。
ルイズ。ニッと笑ってサイトは自分の周りに防御魔法を展開した。湖面の水が魔力によって持ち上がり壁となす。
虚無の爆風にたゆんと水の壁がゆらめいた。

ざざざ。ざざざ。タバサは夢の中にいた。彼女は母の胎内に宿る夢。背中を丸め、両の手は胸の前に両足は屈めている。小さな身体をさらに小さくして、母の中をたゆたっていた。
”母さま---”
トクン、トクン。小さな身体に生命の拍動が戻ってきた。
突如、その空間に一条の光芒が差し込んできた。タバサはその光を求めるように手を差し出した---
青髪の少女の瞳は開かれた。碧い双眸に再び光が灯る。意識はすこし霞がかかったような状態だった。
けれど、湖上で魔法を展開している黒髪の少年、上空で風竜の背に立つ桃髪の少女の存在は分かった。
タバサの足元にはいつのまにか流れ着いた彼女の杖が漂っていた。タバサは屈みこみ杖をつかんだ。

シルフィの背に立ちルイズはエクスプロージョンを眼下の敵勢に放った。
これでおしまいにするんだから。精神力の大半を使い込んだ彼女はシルフィの上でへたりこんだ。
サイト。大丈夫かしら。自分の虚無で傷ついていないかと不安になった。
シルフィの肩越しにサイトの姿を確かめずにはいれない。しかし彼はしっかりと立っていた。そして水の壁が彼の周りをとりまいていた。
魔法使えるようになっちゃったの---ルイズは一瞬目を丸くして驚き、唇をかみしめた。
シルフィはそんなルイズを横目で見やりつつ湖上にふわりと着水した。

虚無の光が晴れた後、小さな人形たちは無残な姿をさらしていた。しかし---------

二度、同じ技が通じると思うとは浅薄だな・・・・ミョズは不適な笑みをうかべそう言い放った。
彼女の背後から多数の巨大な影がもぞりと蠢いた。

113:サイトが魔法を使えたら(2/4)
07/11/03 01:31:04 yVvwa3ip
「1体は斃せるようだな、褒めてやるぞ。しかし余興は終わりだ。邪魔なメイジどもからかたづけてやる」
ミョズの言葉が言い終わらないうちミョズの背後から現れたヨルムンガントたちがタバサとルイズに襲いかかる。
タバサは魔法で身軽にかわすが、攻撃はしなかった。体力の回復がさきだった。ルイズはよろけながらも果敢に杖を向ける。そんなルイズの前にサイトは盾になってたちふさがった。
「こうも数が多いとあたしでもつかれちゃうわぁ。あいつも使いなさいよぉ」とグングニールがぼやく。
あいつ=デルフリンガーはいまだ湖に突きたれられたままになっていた。サイトは正眼の構えから槍を斜めに振り下ろし、ヨルムンガントの足を払った。
敵がどうと倒れこむ隙をついて、後ろへ飛びすさりルイズを抱きかかえると、一気にデルフの下へ駆けた。
なぁ、グング。デルフ握るまでに変身しといてくれ。サイトの言葉にグングニールが黄金に輝いて変化する。
「待ちくたびれたぜ~相棒。錆びちまうかとおもった」デルフが茶化した。
サイトは抱えていたルイズを湖面に降ろしてあげた。そして剣をしかと握り、巨大な鎧の群れへと近づいていく。ふいにタバサの視線を感じた。サイトはその視線の方向に目を向ける。
すこし離れているタバサの口元が動いていた。するとサイトの目の前に薄い白銀色の泡が現れた。泡は割れてその中からタバサの声が飛び出した。水の系統魔法バブルであった。
”このヨルムンガントには系統も虚無も通じない----たぶん、先住魔法で強化されてる。だから---”
先住には先住ってことか。サイトはひとりごちる。この数では槍でも焼け石に水だ。他に先住魔法の使い手といえば----精霊しかいない。
「精霊さんよ。もう一度”分けて”くれないかな」
サイトは、湖面に向かって声をかける。
”-------------使ウガヨイ”サイトには足元の水の雰囲気が変化したのが分かった。
精霊の了解を得たサイトは、タバサへむけ先ほど彼女がやったのと同じ魔法を使い用件を伝えた。そして抱えたままのルイズを見やる。視線が合ったルイズはあわてて目をついとそらした。


114:サイトが魔法を使えたら(3/5)
07/11/03 01:32:00 yVvwa3ip
「まほう。つかえるよーになっちゃたんだ・・・・」
言葉の中に悔しさが混じっているのが分かった。
「言ったろ、お前を護りたい----だからがんばったんだ。」
サイトは言葉を続ける。
「まだ虚無使えるか?今から精霊の涙をもらうからそれに”ディスペル”をかけてくれ」
ルイズは目をそらしたまま、すこし口を尖らせて言葉を返す。
「さっきほとんど使っちゃた。歩くので精一杯なの・・・・だ、だからね・・・・あ、あんたに力を分けてほしいの・・・・」
分ける?ってどうやって??サイトは怪訝な表情でルイズに聞く。
「ききききききき」
ルイズは頬を朱に染め上げてサイトを見て言葉を伝えようとするが、口からでていかない。
ききききききき??サイトはオウム返しに繰り返す。
「きききき・・・・・キスして」
こんな状況だというのになんというご主人さま。サイトは内心にんまりしながらご主人さまの願いを叶えてあげた。
くやしいけれど、やっぱりこいつへの気持ちは嘘はないの。今まで恋敵(タバサ)と一緒にいたという不安は虚無を使う力にもマイナスなのだ。この不安を消してもらうには使い魔、
いやサイトから愛情表現(キス)をしてもらうのが一番だった。ルイズの中で気持ちが満たされてゆく。
”儀式ではないキス”をもらえたルイズは喜色満面に言い放った。
「いまなら虚無でもなんでも出してあげるんだから」
サイトはルイズに微笑みかけた。しかし、一瞬でその表情は戦う少年ガンダールヴに変化した。その意味を理解したルイズは虚無のスペルを唱え始めた----

タバサはそんなメイジと使い魔の光景を複雑な思いで見た。しかし、今は眼前の敵を蹴散らすことに気持ちを切り替える。
サイトと再び目線があった。それは、戦いの始まりを意味していた。その表情は雪風と呼ばれるメイジの顔になった。

ふくれあがったタバサの力とサイトの力が湖上で混ざり合う。呼応するかのように湖水がざわめき立ち始めた。

----ルイズの詠唱が完了した瞬間、サイトとタバサは同時に魔法を放った。
「「ウィンディ・アイシクル!!!」」
湖面から無数の氷の矢が三人の前に出現した。精霊の涙がこめられた淡いブルーの氷の矢からは二人のメイジの力がもれだすかのように白い煙を放っている。
ルイズは矢の出現を確かめ虚無の力(ディスペル)を氷の矢に向かって放った。
一斉に氷の矢がワインブルーへと変色する。タバサとサイトは杖を敵の方向へと振りかざした-----

空気を切り裂き矢がヨルムンガントめがけて降り注ぐ。それと同時にサイトは敵勢の真正面へ飛び込んでいく。ヨルムンガントたちの攻撃をかいくぐり、指揮官のところへ突き進む。
虚無の使い魔の命知らずな行動にミョズは後れをとってしまった。
ひっ。あっという間に懐に入られたミョズにはなす術がなかった。サイトは脇に構えたデルフでミョズを切り伏せた。倒れたミョズの手から指輪を回収した。
サイトが振り返ると。すでに戦いは終わりを告げていた。
先住魔法の込められたヨルムンガントたちは同じく先住魔法を込めた氷の矢によって穴だらけにされ瓦礫の山となっていた。
ルイズとタバサの許にサイトは指輪をもって戻ってきた。
「アンドバリの指輪・・・」
タバサとルイズは口をそろえた。サイトはしゃがんでその指輪をそっと水の中に落とした。
”ガンダールヴ。感謝スル。”精霊の声がした。

115:サイトが魔法を使えたら(4/5)
07/11/03 01:33:53 yVvwa3ip
”ガンダールヴヨ、オマエニワタスモノガアル”精霊はそう言葉をつなぐと、サイトの目の前の水が生き物のようにぐにゃりとせり上がってきた。
その先にはきらりと輝くものがあった。取り上げてみると鴇色の宝石がはめ込まれた指輪だった。
”ソノ指輪は《ミョルニル》トイウ。左ノ手、四ノ指ニ嵌メヨ。双月ガ重ナルトキ、愛ノ宣誓ヲ行ウト奇蹟ガ起コルトイワレテイル。
奇蹟ガオコレバ、ソノ誓イハ永遠ノモノトナル---タダシ、誓イヲ違エテハナラヌゾ”
精霊はそういい残して湖の奥へ消えていった。
「四の指ってなんだ?」サイトは首をかしげた。
「内側の指から数えて4番目」タバサが薬指を指差してくれた。
それって婚約指輪ってことなんじゃ・・・サイトはうろたえつつ、自分の左手の薬指にミョルニルの指輪を嵌めた。一瞬、鴇色の宝石が光を放った。
サイトの指輪を桃髪と青髪の二人の女の子は黙って見つめているのだった。

「さ、さて、この瓦礫の山どーすんだ。女王様に伝えて回収してもらったほうがいいよな。」
サイトは指輪に触れられないようにルイズに話を振った。
「そ、そうね。伝えるべきだわ。これも成果だわ。そうだわ」どことなく落ち着きのないルイズはポケットから紙とペンを取り出しこれまでの出来事をしたため、伝書フクロウを呼んだ。
よろしくね。ルイズはフクロウの頭をなでながら書状を渡す。フクロウは書状をつかみ空高く飛び去った。

それじゃ、戻ろうか。サイトは二人に声をかけた。タバサは首を縦にふって空に向かって口笛を吹いた。シルフィが三人の前に降り立った。ところが、サイトのご主人さまは黙ったまんまであった。
「ルイズ、どした」サイトはうつむいたルイズの顔を覗き込む。
「ね、ねぇ、サイト。あんたわたしが助けに来てなかったら、タバサと何をするつもりだったわけ?」
ウッ。ルイズは急に顔を上げたのでサイトの鼻っ面にルイズの石頭がヒットした。サイトはその場に蹲った。
サイトに代わってタバサは表情を変えずに言葉を返す。
「サイトを連れ出したのは、私。この湖で誓いを立てるために一緒に来てもらった」
「ちちち誓いですってぇ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~」ゴゴゴゴとルイズの背後から怒気が沸き立つ。
「そう。誓い。私はサイトに心身を捧げることを誓った」タバサはルイズを見据える。
「きぃぃぃぃっ~~~~~~~~~~~~~!!」ルイズは言葉にならない奇声を発していた。
「ま、まてタバサ。誤解を受けるぞ。俺が危ないときに護ってくれるって意味だろ!?」両手で鼻を押さえつつサイトは立ち上がった。しかしその時を狙っていたかのようにルイズがサイトのデリケートな部分に蹴りを入れた。
っ~~~~~~~~~~~~~!!サイトの声にならない悲鳴がラグドリアン湖に響き渡るのであった。

瓦礫の向こうでサイトに叩き切られたミョズがいた。ところが、その姿がミョズから人形《スキルニル》に変わっていった。本物のミョズは森の陰に潜んで戦況を見つめていたのであった。
”ゼロの使い魔が魔法を使えるとは・・・想定外だった・・・指輪は奪われてしまったがおまえの命には変えれんからな。”ミョズの主の声が彼女の頭に直接響いた。
彼女の表情は先ほどと一変し恋する乙女となっていた。
”そんな。もったいのうございます。いますぐジョゼフさまのもとへ戻ります---”そういってミョズは森深くへと姿を消した。

116: ◆LoUisePksU
07/11/03 01:35:48 yVvwa3ip
本文長すぎとか行長すぎとかでカウントがめためたにorz
保管庫で修正するから許して。


続いて番外編です。

117:トリスティンの杜(サイトが魔法を使えたら・番外編)(1/2)
07/11/03 01:40:15 yVvwa3ip
サイトは夜のトリスティンの杜へルイズに連れ出されていた。

寝る準備をする時間というのにルイズは寝巻きに着替えるそぶりもみせず、心もちそわついていたのだ。
窓の外には二つの月が重なっていた。月の映える夜である。
その月を見上げため息一つついたルイズはちょっと外へ出てみない?と言い出したのだ。
夜更かしは苦労ではないサイトは一つ返事でルイズに学院の外へと連れ出された。

外に出て数歩歩いたところでルイズは立ち止まり、口を尖らせて愚図った。
「あんた魔法使えるんだから、ご主人さまをあそこまで連れてきなさいよー」
可愛いご主人さまの命令(いうこと)を聞いて、ルイズを横抱きにかかえてサイトはスペルを唱えるのだった。
”イル・フル・デラ・ソル・ウィンデ”サイトたちの身体はふわりと宙に浮きあがる。飛翔魔法フライでご主人さまの目指すあそこへと飛び立った-------

そして今。このトリスティンの杜に桃髪のご主人さまとその使い魔は並んで立っていた。
何しにここまできたんだか分からなかったもんだからサイトは黙って茂みから聞こえてくる虫の調べに耳を傾けていた。
リーン、リーン、リン、リン---しばらく時間が経ってからルイズが口を開いた。
「指輪。どうするのよ。誓わないの。」ルイズの視線は使い魔の左手薬指に嵌められた鴇色の石が輝く指輪に向けられていた。
その指輪は《ミョルニル》の指輪という。その指輪を嵌めた者が二つの月が重なる時に愛を誓うと”奇蹟”が起こるといわれているらしい。
そしてその奇蹟が起これば永遠の愛が叶うという言い伝えがあったのだ。
サイトは空を見上げ重なった二つの月を見つめた。そうか今日がその時だったのか、だからルイズが------あ、もしかして。はたとサイトは感づいたのだった。
そして薄っすらと笑みを浮かべてルイズに言葉を返してみる。
「そか。今夜は双月が重なってるのかぁ~。綺麗だなぁ」ルイズの問いかけとはまるで的外れな言葉を選んだ。
ルイズはそんなサイトにやきもきして言葉をぶつけてきた。
「ねぇってば。今夜がその時なんだから。誓う人いるでしょーが」
サイトはさらに焦らすように言葉を紡いでいく。
「うーん・・・だれかなぁ。俺が愛を誓う人って誰かなぁ----」わざと言葉を濁す。
煮え切らないサイトの言葉の魔法にかかってしまったルイズは両頬を薄紅色に染めて桃色の髪の毛をいじいじしはじめたのだ。
これを言っちゃうとあの言葉を言っちゃたのと同じゃないのよ。でもでもでもでも・・・ここで確かめてとかないとチビメイジやチチオバケのエルフとか世間しらずなどっかの女王とかにとられちゃうかも。
彼女の中で抑え切れないくらいに使い魔への使い魔を越えてしまう想いが虚無の魔法のように膨れ上がっていくのであった。


118:トリスティンの杜(サイトが魔法を使えたら・番外編)(2/2)
07/11/03 01:41:16 yVvwa3ip
もはや表情が魔法がかけられてかのようにころころ変わっていくルイズを半分にやりと残り半分は愛しいという気持ちを込めてサイトは眺めていた。そして最後のダメ押しの一言をルイズへ呟いた。
「何回も『好き』って言ってんだけど応えてくんないからなぁ・・・」
ルイズの溢れる想いを喉で抑えつけていた何かがふっと消え失せ、口をついて出てしまった。
「『わたし』がいるでしょー。このわたしに誓いなさいって言ってるんでしょーが」
ついに言ってしまった。頬どころか顔や耳までも紅潮させてルイズは涙目である。
サイトは嬉しくなった。ルイズがついに彼女のホントの気持ちに肉薄する言葉を放ってくれた。真顔になってルイズに向き直った。そしてさっきの言葉を確かめる。
サイトの真剣な眼差しにルイズも涙をためながらも目を逸らさずにまっすぐと見つめている。
「じ、じゃぁ誓うからな。後戻りできねーんだぞ。いいな」
サイトの問いかけにルイズはこくんとうなずいたのだった。ルイズの首肯を受けて、サイトは二つの月に向かって左手の指輪を差し伸べた。
「我が名はサイト・シュヴァリエ・ド・ヒラガ。重なりし双月のもとミョルニルの仲立ちにて誓いの儀式を執り行う。我はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに永遠の愛を約することを誓う----」
重なり合った二つの月の光芒に鴇色の宝石が呼応しまぶしいばかりの輝きを放ち始めた。宝石から白銀色の光の束が弧を描いて、ついに真円の形を成した。続いて宝石そのものから鴇色の光の球が湧き出てきた。
その光の球はしばらく宙で浮遊していた。そして寸秒燃えるような輝きを見せ、球の色が紺碧に変化した。最後に紺碧の球は先の真円と重なり合って今まで最も眩しく光り輝いた。まるでこれからの二人を祝福するかのような輝きで。
奇蹟は完成したのだった-----サイトの右の掌の上にはもう一対の紺碧の宝石のついた《ミョルニル》の指輪がのっていた。
綺麗・・・ルイズはその光景に見入っていた。サイトは指輪をつけた左の手でルイズの左の手をとる。そしてルイズの鳶色の瞳を見つめた。
「誓い・・・・受けてくれるよな」
サイトの黒い瞳を見つめすぎてルイズは吸い込まれそうな気持ちになりながらも応える。
「・・・・うん。受けてあげるわ」彼女は軽く腰をかがめる貴族の淑女の所作をした。よろしくおねがいしますという意味を込めて。
サイトの人差し指と親指つままれた生まれたばかりの誓いの証はゆっくりとルイズの四の指”薬指”に嵌められていった。奥まで嵌められた指輪は、サイトの時と同じように紺碧色の宝石が一瞬輝いたのだった。
想い人に誓いの指輪を嵌めてもらってルイズは感極まってしまって涙がとまらくなっている。ぬれた双眸で想い人を見上げて一言、今まで封じ込めてきた正真正銘の気持ちを告げたのだった。
「好きなんだから」
その一言を想い人は微笑みで応えてくれた。そしてこの場所に来たときと同じようにルイズを横抱きに抱いてふわりと魔法で舞い上がる。二人のシルエットが二つの月と重なった。
主人と使い魔という壁を越えた桃髪の少女と黒髪の少年の二人を讃えるかのように双月の月の光がやさしく二人を包み込んでいった。

119: ◆LoUisePksU
07/11/03 01:42:47 yVvwa3ip
以上です。ノシ

勢いで書いちゃったので乱文スマソ。

120:名無しさん@ピンキー
07/11/03 09:09:51 oih2NbIB
すごくいいけどすごく読みにくい
GJ

121:205
07/11/03 17:15:40 oymzW4k8
タバサの冒険2はまだ読んでいないのでよく分かりませんが、
前スレを読む限り、俺が「ノボルにパクられた!」とか騒ぎ出したら相当面白いんだろうなとか思いつつ。

っつーか兎塚さんや編集さんは何も分かってない。
竜態減らして人態増やすって、そんなことして誰が喜ぶんだ! ふんとにもう。

そんなこんなで犬竜騒動(URLリンク(wikiwiki.jp))の続きを投下します。
ゼロ戦襲来編ラストですよ。

122:犬竜騒動
07/11/03 17:16:43 oymzW4k8

 最近、どうも周りが騒がしい。
 いかに研究に没頭し始めると周りが見えなくなるコルベールとは言え、そのぐらいのことには一応
気がついているのであった。
 その日もゼロ戦のコックピットであれやこれやと作業をしていたのだが、気がつくとやはり周囲か
ら何かが動く気配が伝わってくる。
 そっとコックピットから身を乗り出してみる。今、ゼロ戦は、板と布で適当に作った仮設の格納庫
の中に置かれている。そのために日陰となっており、周囲は大変暗かったが、それでもそこを動き回
る何者かの影ぐらいは見ることができた。
(……トカゲか?)
 のそのそとゼロ戦の周囲をうろつきまわっているのは、どこかで見たことのあるサラマンダーで
あった。
 それだけではない。よく見ると、チューチュー鳴きながら、学院長の使い魔であるネズミも走り
回っている。
 コルベールの見ている前で、二匹はしばらくゼロ戦の周りをうろつき回ったあと、示し合わせたよ
うに揃ってその場を離れていった。
(一体、何事だろうか)
 多少気にはなったものの、今のコルベールの目の前にはゼロ戦がある。彼の知的好奇心を捕らえて
離さないこの機械の前では、使い魔の妙な行動などあまり興味を惹きはしない。コルベールはすぐに
動物達のことを忘れて、またコックピットに潜り込んだ。

「偵察行ってきたぜ」
「ご苦労様ですのよ」
 森の外れの会議場に戻ってきたフレイムとモートソグニルを、シルフィードは愛想よく出迎えた。
「で、どうでしたの」
「ダメだな。やっぱあのハゲが四六時中張り付いてやがる。あの野郎、多分夜中もあの中で寝てやがるぜ」
「まあ」
 シルフィードは憤慨した。

123:犬竜騒動
07/11/03 17:17:31 oymzW4k8

「あのハゲチャビンも、やっぱりあの鉄の竜の肉体に溺れているのね! それも四六時中ベッタリだ
なんて、もはや堕落しているとしか言い様がありませんわ。きゅいきゅい」
 あんな、硬くて鉄臭くてずんぐりした不恰好な体のどこがそんなにいいのか、シルフィードには全
く理解できない。空を飛ぶために無駄なく引き締まった筋肉、風を切り裂き大気を支配する勇壮な翼、
きめ細やかで形の整った美しい鱗。どう考えても、自分の方が竜として格段に優れた肉体を持ってい
るはずである。
「サイトたちは、あんなうさん臭い女の汚らわしい魔性に捕われて、清楚かつ高貴な正統派美少竜で
あるこのシルフィードの肉体美に気付いていないのだわ。やっぱりシルフィが正道に戻してあげなく
ちゃいけないのね。きゅいきゅい」
 決意を新たにするシルフィードの前で、フレイムとモートソグニルはどことなく気まずげに顔を見
合わせている。
「あのよ、嬢ちゃん」
「そのことなんだが」
「なぁに」
 シルフィードが首を傾げると、二匹は互いに「お前言えよ」と言うように視線を押し付け合った。
その結果、ため息混じりに言ったのはフレイムの方だった。
「多分、嬢ちゃんが鉄の竜って呼んでる、あれよ」
「あの女がどうかしたの」
「いや、あれ、女っつーか、そもそも竜……いや、生き物ですらないと思うんだが。どっちかと言う
と風石使ってる船とか、その類じゃないかと」
「んまあっ」
 シルフィードは牙を剥いた。
「フッチーったら、なんて馬鹿なこと言い出すのかしら。きゅいきゅい」
「いや、多分馬鹿なこと言ってんのは嬢ちゃんの方だぜ」
 やれやれ、とシルフィードは内心ため息を吐いた。何があったか知らないが、フレイムはすっかり
あの鉄の竜に騙されているようだ。
(フッチーもいい人……いや、いいトカゲではあるんだけど、あまり頭はよくないのね。やっぱりア
ホの子なのよ。まあトカゲなんてそんなもんでしょうけどね、きゅいきゅい)
 こうなれば仕方がない、目の前のお味噌が足りないトカゲとネズミに説明してやるだけである。シ
ルフィードは言い聞かせるように話し出した。
「いいことフッチー、あの女は、シルフィのことを散々見下して嘲笑って弄んだのよ。悪い女なのね、
性悪なのね」
「いや、だからな」
「あれは竜よ。竜なのよ。だって、サイトがシルフィより気に入るんですもの。竜に決まってるのね」
 そう言った拍子に、才人の顔が思い浮かんだ。鉄の竜の腹に顔を埋めていたときの、至福の表情で
ある。途端に胸の中で悔しさが爆発し、シルフィードはバシバシと目の前の切り株を叩いた。
「なによあんな女! シルフィの方がずっとずっと、ずーっといい竜なのよ。その素晴らしさが分か
らないサイトなんて、あとでシルフィの脚に縋りついて、『許してくんろーっ!』って泣き喚くのが
お似合いなのね、きゅいきゅい」
「要するに、あれが竜じゃなくてただの道具としたら、竜のくせに選んでもらえなかった自分の立場
がないってことか」
「子供じみたプライドってやつですなあ」
 ひそひそ内緒話をするトカゲとネズミを、シルフィードはじろっと睨みつける。
「なんか言いました?」
「いや、別に何も」
「これっぽっちも」
 二匹はしれっと声を合わせる。

124:犬竜騒動
07/11/03 17:18:50 oymzW4k8

「まあいいわ」
 と、気を取り直して、シルフィードは訊ねた。
「それで、他には何か分かったことはないの?」
「一つあるぜ」
 モートソグニルが尻尾を撫でながら言った。
「あの鉄の竜の名前な、ゼロセンっていうらしい。あのハゲがそう言ってた」
「ゼロセン?」
 シルフィードは一度声に出して繰り返してから、我慢しきれずにぷぷっと吹きだした。
「ゼロセン! ゼロセンだって! 変な名前変な名前、変ななーまーえー!」
 ゼロセンゼロセン、と憎い仇敵の滑稽な名前を舌の上で転がすたびに、胸からこみ上げる笑いの衝
動はどんどん大きくなっていく。シルフィードはとうとう、文字通りその場で笑い転げ始めた。地面
を転がる竜の巨体に潰されそうになったモートソグニルが、慌てて安全圏まで退避する。
「ゼロセンゼロセンゼロセンゼロセン! 何度繰り返しても面白いのねー。なにそれなにそれ、竜に
つける名前じゃないのねこれ! きゅいきゅい」
 心底から同情を禁じえない。ゼロセンなんて変な名前をつけられては、周りの竜たちに散々馬鹿に
されて育ってきたことだろう。そう思えば、あんな傲慢で意地の悪い女に育ったのも多少は許せると
いうものである。
(そうよ、わたしったら寛容な女ですものね! なんたって、イルククゥでシルフィードですもの)
 イルククゥ、シルフィード。自分に与えられた二つの名前を思い浮かべて、シルフィードはうっと
りと目蓋を閉じる。なんていい名前なんだろう。今改めてそう思う。
(イルククゥ。可愛らしい名前だわ。自由な翼で空に舞い、柔らかな風と無邪気に遊ぶ。妖精のよう
に純真な風韻竜にぴったりなのね。シルフィード。美しい名前だわ。愛する主をその背に乗せて、空
を優雅に駆けめぐる。精霊のように華麗な風韻竜にぴったりなのね)
 この二つの名を兼ね備えた自分は優秀で愛らしい最高の竜なのだと、シルフィードは自信を新たにする。
 それに比べて、相手はゼロセンである。またも失笑が漏れた。
(勝てる。勝てるのね。負ける気がしないのよーっ!)
 すっかり気分を良くしたシルフィードは、切り株の前にどっかり腰を落ち着けた。
「それじゃモートソグニルの旦那、早いとこあの哀れなゼロセンちゃんに引導を渡して差し上げるのね」
「なに?」
 必死に逃げ回っていたためにすっかり疲労困憊になって地面に横たわっていたモートソグニルが、
驚いたように体を起こす。
「早いとこ、ってのはどういうことだ?」
「早いとこは早いとこなのね。遅くとも三日後までにはケリをつけるのよ」
「オイオイ、嬢ちゃん、『あの女は陰険かつ危険だから、事は慎重に運ぶのね』とか言ってたじゃねえか」
「大丈夫大丈夫。もう何も恐れることはないのね」
「何を根拠に言ってんだ」
 モートソグニルは怪訝そうに首を傾げる。シルフィードは胸を張って断言した。
「だって、相手はゼロセンなのね。イルククゥかつシルフィードなこのわたくしが、ゼロセンに負け
る理屈が分かりませんのね」
「俺にはその理屈の方が分からねえんだが」
 モートソグニルは納得しかねる様子ながらも、渋々首を縦に振った。
「分かった。で、具体的にはどういう感じにやりたいんだ?」
「そうですわね。なにせ竜と竜、女と女の意地を賭けた対決ですもの。出来るなら、ハゲチャビンの
邪魔は一切抜きでやりあいたいのね。きゅいきゅい」
「要するに、ハゲの邪魔抜きで嬢ちゃんとゼロセンが一騎打ちできるようにお膳立てすりゃいい訳だ
な。分かった、策は俺が考えて、他の奴にも伝えといてやるよ」
 頼もしい言葉だった。シルフィードは小さな巨人に向かって深々と頭を下げる。
「いろいろとありがとうございます、モートソグニルの旦那」
「気にすんな。俺はただ裸が見てえだけだ」
 男らしく断言して、モートソグニルは素早く駆け去っていった。
(さて、あとはコンディションを万全に整えて、正々堂々あの女を負かしてやるだけなのね。きゅいきゅい)
 シルフィードの胸で、闘志の炎が静かに燃え上がる。そんな彼女とは裏腹に、フレイムの方はどこ
となく憂鬱そうな様子であった。閉じられた口の隙間から漏れ出す炎も、燻っているように勢いがない。
「あらどうしたのフッチー、何か悩み事?」
「いや、あのな」
 フレイムは何やら言いずらそうにもごもごと口ごもり、思い切ったように切り出してきた。

125:犬竜騒動
07/11/03 17:21:17 oymzW4k8

「なあ、嬢ちゃん。あの、サイトって若造のことなんだが」
「サイトがどうかしたの?」
 フレイムは低い位置から探るような視線でこちらを見上げながら、慎重な口調で問いかけてきた。
「嬢ちゃんは、あの若造に惚れてるのか? あー、つまり、男として好きなのか、ってことなんだが」
 一瞬、何を言われているのかよく分からなかった。予想外の質問に呆けたようになったまま、シル
フィードは質問を返す。
「恋? わたしが、サイトに?」
「そうだ」
「フッチー、真面目に聞いてるの?」
「そのつもりだが」
 トカゲの強面は真剣そのもので、ほとんど深刻ですらある。
 それを理解した瞬間、腹の底からこみ上げてきた笑いの衝動が、抑える間もなく口を割って飛び出
した。全身を余すところなく震わせるような、凄まじい発作である。先程ゼロセンという名前を聞いたとき以上に長く、激しく、のた打ち回るほどの勢いで、シルフィードは笑い始めた。
 それがようやく収まりかけてから、息も絶え絶えに言う。
「フッチーったらバカなのね、竜が竜でないものに恋をするなんて、それじゃただの変態なのね。
モートソグニルの旦那は普通に変態だから別として、自分だってトカゲだからご主人様に欲情なんて
しないって言ってたのに」
「そりゃそうだが」
 フレイムは困惑したように言った。
「でもお前さん、正妻と愛人がどうのとか言ってなかったか」
「それはたとえというものなのよ」
「そうなのか」
 まだ疑っているようだ。シルフィードは切り株の前に座りなおすと、一つ咳払いして言った。
「いいことフッチー、元々、サイトの騎竜はこのわたしだったのね。そこにあの泥棒猫がやって来て、
ほーまんなボデーでサイトを誘惑したのよ。セクシーかつ清楚な竜の魅力が分かっていなかったお子ちゃ
まのサイトは、まんまとあの毒婦の罠にかかって堕落してしまいました」
 また怒りがぶり返してきて、シルフィードは腹立ち紛れに切り株を叩く。
「つまり向こうが愛人で、こっちが正妻! わたしは一刻も早く、サイトに正しい竜の魅力を叩き込
んで、彼を騎竜の正道に戻さなくてはならないのね。ごつごつ硬い鉄の竜なんかよりも、シルフィみ
たいな滑らかで芸術的な美しい鱗を持つ竜の方が、よっぽど乗り心地がいいってことを骨の髄まで分
からせてやるのよ! きゅいきゅいきゅいきゅい!」
 シルフィードの熱弁を、フレイムはただ黙って聞いていた。その顔に、安堵の色が広がる。
「そうか。つまり、あくまでも乗り物としてあのゼロセンに負けたのが悔しいってことなんだな」
 シルフィードは抗議の意味を込めて鼻息を吹きだした。
「ぶー。シルフィ、負けてなんかいないもん。それに、乗り物だなんて言い方はひどいのね」
「スマンスマン」
「いいことフッチー」
 シルフィードは人間の乙女を真似るように、両方の前脚を合わせて説明を始めた。
「シルフィにとって、サイトは将来、ご主人様の夫にもなろうというお方。なおかつ竜を大切にして
くれるし優しいし強いしカッコイイし、お慕い申し上げるのは当然の話なのね。そして、大好きな人
を乗せて空を飛ぶというのは、竜にとってはとても幸せなことなのよ」
 才人を乗せて大空を舞った楽しい思い出の数々が、色鮮やかに思い浮かぶ。その中から未来への夢
が新たに溢れ出してきて、シルフィードの胸は幸福感で一杯になった。
「タバサお姉さまとサイトの結婚式も、シルフィの背中の上で挙げるのよ。わたし、体中にたっくさ
ん鐘をくくりつけて、ディンドンディンドン鳴らしながら飛ぶのね」
「はぁ。そりゃまたやかましそうだな」
 フレイムの呆れ声も、愛しいご主人様の結婚式を想像してうっとり夢見心地のシルフィードにとっ
ては、些細な雑音に過ぎない。
(シルフィが一生懸命鳴らす祝福の鐘の音の中、タバサお姉さまとサイトのシルエットがゆっくりと
重なり合うのよ。わたしの背中が二人のチャペル。ああ、なんて素敵なのかしら)
 甘美な夢想に耽るシルフィードの前で、フレイムは細く火を噴出した。
「そうかい。あー、ほっとした。胸のつかえが取れたってもんだぜ」
 心底安堵した様子である。シルフィードは少し不思議になった。
「ねえフッチー。どうして、そんなに心配してたの?」
「ん。いや、なんだな」
 フレイムは決まり悪そうに目をそらした。

126:犬竜騒動
07/11/03 17:22:48 oymzW4k8

「エルフと人間とか翼人と人間、あるいは別種の竜同士とか、体の作りが似てるなら、上手くいかね
えことはねえだろう。だが、竜と人間じゃ食うものから住む場所、生活様式まで、何もかも違いすぎ
てる。子供だって絶対作れねえしな。要するに、そんな恋愛なんざ、上手くいきっこねえってわけだ。
ご主人の友人の使い魔で、俺にとっても恩人である嬢ちゃんがそんな風になるのは、実に忍びねえと
思ったのさ」
「それだけ?」
「……実はな」
 フレイムが目を細める。どことなく、辛そうな顔だ。
「俺の友達にもな、昔、人間に恋した大馬鹿野郎がいたのさ。そいつは使い魔でもなんでもねえ、た
だのサラマンダーだったんだが。こいつが、火竜山脈に冒険に来てた人間の女に、一目ぼれしちまってな」
「きゅい。アホの子なのね」
 正直な感想を言うと、フレイムはか細く火を噴出して笑った。
「ああ、そうだな、スゲーアホな奴だったよ。火も噴けねえし鱗も尻尾もねえ、そんな奴なんかの何
がいいんだって、俺たちゃ皆で止めたもんさ。だが、あいつは聞かなかった。『お前らに変態と呼ば
れてもいい。俺は、人間の肌の柔らかさに、ぞっこん参っちまったんだ』なんて言ってよ。杖をぶら
下げた人間の女に向かって、のっしのっしと歩いていきやがったのさ」
「それで、どうなったの」
「死んだよ」
 暗い声音だった。
「あいつが目の前に現れた瞬間、人間の女は迷うことなく杖を引き抜いて素早く詠唱を始めた。
『待ってくれ、違うんだ』と叫びながら、あいつは四本脚で素早く駆けた。だが女は詠唱を止めず、
一瞬後には風の刃が奴を切り刻んでいたってわけさ」
 フレイムは深く息を吐き出し、遠くを見るような目つきでじっと地面を見つめた。
「何が決定的にいけなかったのかは分からん。あの人間の女が悪い奴だったのかもしれんし、ただ急
にサラマンダーが現れて警戒したのかもしれん。制止する声がただの鳴き声にしか聞こえなかったの
は間違いないし、トカゲのジェスチャーが人間に通じたとも思えんしな。そもそもトカゲが人間に恋
なんかした時点で、こうなる運命だったってのは分かりきったことだったんだろう」
 淡々と言ったあと、フレイムはまた、真剣な目でシルフィードを見上げた。
「なあ、嬢ちゃん。しつこいと思うかもしれねえが、もう一度だけ聞かせてくれ。お前さんがあの坊
主に抱いてる感情は、ただ乗り手として尊敬し、敬愛してるってだけの話なんだな? 竜の女が、人
間の男に惚れこんじまったって話ではないんだな?」
 念を押すような口調である。シルフィードは厳かな気持ちで、首を横に振った。
「違うわ。わたしにとって、サイトはご主人様の伴侶候補で、素晴らしい乗り手。ただそれだけよ」
 数瞬、二匹の視線が静かに絡み合った。先に目をそらしたのはフレイムの方だった。
「俺も、決戦の日にはハゲの目を引きつける役割に回る。敵は手強いんだろう? 嬢ちゃんもしっか
り準備しておくこったな」
 静かな足取りでフレイムが歩み去り、シルフィードはただ一頭、森の会議場に残された。
(シルフィが、サイトに恋?)
 改めて考えてみる。果たして、自分が才人に抱いている気持ちは、恋心という類のものなのだろうかと。
 そもそも、シルフィードはまだ恋愛というものを経験していない。200歳という年齢は、竜の中
ではまだ幼い。大人になれば自然と雄の竜に心惹かれるものだと知識としては知っていたが、感覚と
しては理解できていなかった。
(でも、サイトのことは好きなのよ)
 頭を撫でられたことや体を洗ってもらったときのこと、優しく、また気さくに話しかけられたこと、
飛んでいるとき「疲れないか、重くないか」と心配そうに声をかけられたときのことを思い出す。
 サイトへの愛しさが胸にあふれ出してきたが、それは主であるタバサに抱く感情と、そう大差はな
いように思われた。
 シルフィードはそっと安堵の息を吐いた。
(そうよね。シルフィ、変態じゃないもん。人間の男を好きになるはずがないのね。今回のことだっ
て、あくまでも騎竜としてのプライドの問題なのよ。きゅいきゅい)
 そうと分かれば、怖いものなど何もなくなった。あとは見事あの鉄の竜を討ち果たし、才人の騎竜
としての役割を奪い返すだけである。
 木の葉のざわめきと小鳥の囁きを聞きながら、シルフィードは静かに闘志を燃やすのだった。

127:犬竜騒動
07/11/03 17:23:46 oymzW4k8

 最近のコルベールは、ゼロ戦のコックピットを寝床にしている。機械狂い故にそこが心地よいから
ではなく、夢中でゼロ戦のことを研究している内についついそのまま寝入ってしまうからであった。
 そんなわけで、コルベールはその日もコックピットの中で丸くなっていたのだが、遠くから何やら
ガンガンと金属を叩く音が聞こえてきて、目を覚ました。
(なんだろうか)
 目をこすりながら顔を出した瞬間、眠気が吹っ飛んだ。種類様々な無数の動物達が、ゼロ戦の周囲
で好き勝手に騒ぎまわっていたのだ。機体の上で跳ね回るもの、気持ち良さそうに糞を撒き散らすも
の、ピーピーギャーギャー騒ぎ立てるものなど、実に騒がしい。中には爪で機体を引っかいたり脚で
叩いたりしているものもおり、先程のガンガンと金属を叩く音の元はこれらしい。
 あまりの光景に呆然としたコルベールだったが、すぐに立ち直って慌ててコックピットから飛び降りた。
「こ、これお前達、離れんか!」
 動物達を追い払おうと杖を取り出して走り出した途端、突然地面の感覚がなくなった。
 フライやレビテーションを唱える間もなく落下したコルベールは、強かに腰を打ちつけてしまう。
「いたたたたた」
 腰をさすりながら上を見上げると、ぽっかり穴が開いてゼロ戦格納庫の天井が見えている。どうや
ら、誰かが掘った落とし穴に引っかかったらしい。
(誰が。何故、こんなところに)
 疑問に思ったとき、コルベールは隣に何か巨大なものがいることに気がついた。どこかで見たこと
のある巨大なモグラが、ミミズをほお張っていたのである。
「この悪戯は君の仕業かね。一体なんのつもり」
 しかし、問いただしている暇はなかった。ぽっかり開いた穴から、先程ゼロ戦の周囲で騒いでいた
動物達が一斉になだれ込んできたのである。大小さまざまな動物達に襲い掛かられて、コルベールは
悲鳴を上げた。

128:犬竜騒動
07/11/03 17:24:27 oymzW4k8

(よし、今のところは順調なのね)
 格納庫の入り口から中の喧騒を眺めて、シルフィードは満足げに頷いた。
 中央に鎮座するゼロセンの近くにぽっかり穴が開いて、そこに使い魔たちが蟻のごとく群がってい
る。長い悲鳴が絶えることなく響いているところを見る限り、ハゲチャビンを落とし穴に落として無
力化する計画は成功したようである。
(さて、あとはあの陰険女とケリをつけるだけなのね)
 シルフィードは気合を入れて格納庫の中に脚を踏み入れ、ついに憎い仇敵と対峙した。あれだけ周
辺で騒がれたというのに、ゼロセンは静かにふんぞり返ったままだった。例の魔法で使い魔たちを切
り裂くことも、謎の回転板を回して八つ裂きにしようともしない。不気味な沈黙である。
 だが、優秀な風韻竜であるシルフィードには、敵の魂胆など手に取るように分かっていた。
(あなたも、このシルフィードと一対一でケリをつけることをお望みなのね。変な名前の陰険女だけ
ど、その度胸だけは買ってあげるわ)
 シルフィードは咆哮を上げて敵を威嚇しながら、瞬時に翼を広げて低空飛行を開始した。真っ直ぐ
敵に向かおうとはせず、ジグザグに飛びながら少しずつ距離を詰める。これが、シルフィードが考え
出した例の魔法対策であった。
(あの魔法で地面が抉られた痕は、ほぼ直線状に連続して続いていた。つまり、すぐには軌道を変え
られないと見た!)
 こうして変則的な動きで接近すれば、敵はこちらに狙いを定められないだろうと踏んだのだ。実際、
ゼロセンは全く魔法を撃ってこない。自分の読みが正しかったことを確信して、シルフィードは会心
の笑みを浮かべた。
(でも、だからと言って正面から迫れば、あの回転板に捕まるかもしれない。だから……!)
 シルフィードはギリギリまで距離を詰めたあと、先程までの低空飛行からは予想もつかないほど急
激かつ瞬時に上昇した。格納庫の低い天井付近までほぼ垂直に舞い上がると、後脚を突き出してゼロ
セン目掛けて一気に降下する。風韻竜の体重を活かした、必殺の蹴りである。
(殺った! きゅいきゅい、このまま潰れておしまい!)
 観念したのか、ゼロセンは全く動かない。シルフィードは自分の勝利を確信する。だが、その瞬間、
不意に間の抜けた声が響き渡った。
「うわ、何の騒ぎだこりゃ!?」
(え、サイト?)
 気がそれた瞬間、体勢が崩れた。
(しまった!)
 慌てて修正しようとするが、時既に遅し。シルフィードはゼロセンの横を通過してしまう。下にい
た使い魔たちが蜘蛛の子を散らすように逃げ去り、風韻竜の巨体は受け止めるものもなく地面に激突した。
 痛みに悶える暇もなく、瞬時に跳ね起きて状況を再確認。入り口に姿を現した才人は、目を白黒さ
せて格納庫内の惨状を見回している。
「何が起きてんだこりゃ。うわ、ゼロ戦が汚れて……って、なんだ、シルフィードまでいんのか。一
体何があったんだ、おい」
 シルフィードは答えることが出来なかった。元々、才人には人語で喋らないようにしているが、た
とえ喋ることが出来たとしても、今は何も言えなかっただろう。
(迂闊だった……! サイトが来ない時間帯を狙って、早朝の闇討ちを決行したというのに……! 
ま、まさか、ゼロセンはこれを狙って……!)
 きっと睨みつけるが、ゼロセンは微動だにしない。その態度がなおさら余裕を見せつけているよう
に思えて、シルフィードは歯噛みする。
「シルフィード、何があったんだよ。お前、知ってるんだろ、なあ」
 歩み寄るサイトと、「さあ、どうとでも申し開きしてご覧なさいな」とでも言うようにどっしりと
鎮座しているゼロセンを交互に見て、シルフィードは恐れ慄いた。
(きゅいきゅいきゅいきゅい! しゅ、修羅場なのねぇぇぇぇぇぇぇっ!)
 計画が完全に失敗したことは、いちいち確認するまでもなかった。

129:犬竜騒動
07/11/03 17:25:35 oymzW4k8

 才人がコルベールを助け出し、逃げなかった使い魔たちをふん捕まえて、およそ三十分ほど。
 ゼロ戦の前に正座(と言うか並べられた)使い魔たちは、学院長オールド・オスマンの面前で取調
べを受けている最中であった。
「止めてください、ご主人様に連絡とか勘弁してくださいよホント」
「あ、いや、ご主人様は関係ないんで」
 ゲコゲコゲコゲコクワァクワァッと、ロビンやクヴァーシルが通じもしないのに弁解する横では、
モートソグニルがオールド・オスマンに洗いざらいぶちまけているところであった。
「っつー訳でさ、俺は悪くないのよご主人。分かる?」
「おうおう分かるとも。お主はただ裸が見たかっただけじゃからな。その気持ちはよく分かるとも。
許してやるから、ミス・ツェルプストーの裸を見るときは、ちゃんとワシにも映像を繋ぐんじゃぞ」
 何やら通じ合っている様子である。
 直接の被害者であるコルベールは、水魔法で治療を受けて完治した。どうやら使い魔たちが結託し
てやった悪戯らしい、と、オールド・オスマンから大事なところはぼかした説明を受けると、怒るど
ころか逆に目を輝かせた。
「ほほう。つまり、使い魔たちにもちゃんとコミュニティが存在する訳ですな! これは非常に興味深い」
 と、笑っているところを見るに、どうやらこちらにお咎めはなさそうである。
 そんな訳で、結局問題が残ったのはシルフィードだけということになった。
「なあ、そろそろ理由教えてくれよ」
 目の前で困り果てている才人から、シルフィードはぷいっと顔を背ける。
(ふんだ。なによなによ、サイトなんて、あの鉄臭い女と戯れてればいいのね)
 計画が失敗したので、とりあえず開き直ることにしたのである。
(愛人を殺そうとした現場を押さえられたのね。もう見離されて捨てられてお終いなのね)
 そんな風に、自棄を起こしている一面もなくはなかったが。
 才人はシルフィードがだんまりを決め込んでいるので、すっかり困惑した様子であった。
「お前みたいな気のいい奴が、理由もなしに暴れるとは思えねえんだけどなあ」
(あら、いい奴だなんて)
 ぼやくような言葉に、シルフィードの胸がほんの少しときめいたが、
(って、違う違う!)
 と、気を取り直してまたそっぽを向く。
(シルフィはもうサイトとは完全に袂を分かつことにしたのね! サイトがゼロセンを選んだ以上、
二人の関係はもうお終い。さよならサイトフォーエバーなのよ! シルフィの決心はタバサおねーさ
まの胸板よりも固いのね、きゅいきゅい)
 決意も新たにシルフィードが完全に押し黙ったとき、格納庫の入り口に新たな人影が現れた。
「……何の騒ぎ」
 静かな声。相も変わらず無感動な表情のタバサである。天の助けとばかりに、才人が彼女に歩み寄る。
「タバサ、ちょうどよかった。実はさ」
 才人の説明に、タバサが無言のまま頷いている。シルフィードは少し焦った。さすがに、タバサか
ら全部事情を聞きだされて、自分が嫉妬に狂ったのだなどと伝えられたら恥ずかしいことこの上ない。
(だ、大丈夫。何も言わずに黙っていれば、お姉さまにだって分かりはしないのね)
 心に言い聞かせていると、話を聞き終えたタバサがこちらに歩み寄ってきた。静かな表情で聞いてくる。
「何故こんなことをしたの」
 答えるつもりはないので顔を背けたが、タバサは何故か「そう。そういうこと」と話を聞きだして
いるかのように頷いている。シルフィードが怪訝に思っていると、主は踵を返して才人のところに戻った。
「あなたがあの機械に乗ってばかりいるから、嫉妬したみたい」
(なんでばれてるの!?)
 シルフィードは驚愕したが、すぐに事情を察した。
(そ、そうか、使い魔と主人は心と心で繋がっているから、シルフィの心の中をのぞいたのね! ひ
どいわひどいわ、姉さまの鬼! 悪魔! 心まで大平原!)
(別にそんなことしなくても、あなたの心は分かる。それと、最後の一言は死ぬまで覚えておくから)
 心で文句を言うと心で返答が返ってくる。そんなやり取りをしている間に、才人がこちらに向かって歩いてきた。
「なんだ、そういうことか。お前、最近俺がゼロ戦にばっかり乗ってるから拗ねてたのかよ」
 嬉しそうなにやけ面でそう言われて、シルフィードはとうとう我慢できずに怒りを爆発させた。

130:犬竜騒動
07/11/03 17:26:36 oymzW4k8
(当たり前なのね! サイトったらひどいんだもの! あれだけわたしと仲良くしてたのに、新しい
娘が来たらあっさり乗り換えちゃって! ひどいひどい、サイトの嘘吐き! 大っ嫌い!)
 と、直接文句を言うことはできないので、きゅいきゅいきゅいきゅい鳴きながら、バタバタバタバ
タ翼をばたつかせる。才人は「おいおい落ち着けよ」と腕で顔を庇いながら、苦笑した。
「別に、お前のこと忘れてたんじゃねえって。ただ、久しぶりに動かすわけだから、やっぱりいろい
ろテストとかしなくちゃならないしさ」
(ふんだ、意味のわかんないこと言って。要するにあの子の寸胴に夢中なのね。きゅいきゅい)
 シルフィードは、またむくれ面でそっぽを向く。それを見た才人が、どことなく意地悪な声で言った。
「そっかー。許してくんねーのかー」
(当たり前なのね。竜は気高い生き物なのよ。今更謝ったって、犬みたいに尻尾振ったりなんかしないのね)
 あくまでも意固地なシルフィードの前で、才人はこれみよがしにため息を吐いてみせる。
「残念だなー。ゼロ戦動かすのって思った以上に面倒くさいから、これからも空の散歩はシルフィー
ドと一緒にしようと思ってたのになあ」
 シルフィードは思わず才人のほうを見てしまう。彼は悲しむように首を振っていた。
「だがまあ、お前が嫌だって言うんならしょうがねえ。シルフィードほどいい竜なんて他にはいねえ
だろうけど、どこかから違う竜を探してくるしかねえかなあ」
(ダメッ!)
 慌てて才人の腕をくわえ、首を横に振って意志を伝える。
「なんだ、また俺を乗せて飛んでくれるのか」
 驚いたような声が返ってきたので、シルフィードは才人の腕を離して勢いよく首を振った。
(そう、そうなのよ、シルフィまたサイトを乗せて飛んであげる。シルフィよりもいい竜なんて、ど
こ探したっているはずがないのね。きゅいきゅい)
 その思いが伝わったのかどうかは知らないが、彼は嬉しそうに目を細めてシルフィードの頬を撫でた。
「そっか。ありがとうな。あのなシルフィード。俺、車とか馬とか飛行機とか、いろんなものに乗ったけどよ」
 才人は満面の笑みを浮かべた。
「お前ほど、乗ってて楽しい奴は他にはいなかったぜ」
 シルフィードの胸が、じわりと暖かくなる。
(サイト……!)
 感極まって、シルフィードは前脚でサイトの体を引き寄せた。
「お、おい、シルフィード!?」
(ごめんね、ごめんねサイト。シルフィさみしかったの。さみしかっただけなのよ。ゆるしてちょうだいね)
 言葉が伝えられない分せめて動作で親愛の念を示そうと、シルフィードは長い舌で才人の顔を舐め
始める。彼はくすぐったそうに身じろぎした。
「おいシルフィード、くすぐったいって……っつーか、お前の舌はざらざらしてるから、そんな勢い
で舐めるといたたたたたたたいだいいだい、ちょ、やめっ」
 身じろぎが段々もがきに変わってきているのにも気付かず、シルフィードはいつまでも才人の顔を
舐め続けた。


131:犬竜騒動
07/11/03 17:27:31 oymzW4k8

「いたたたたた……」
(ごめんなさい……)
 赤くなった頬を手で押さえている才人の横で、シルフィードはしゅんとなってうなだれていた。ど
うも、自分の思いを伝えようと必死になりすぎてしまったらしい。
(うう。シルフィ、ちょっと冷静さが足りないかもしれないわ。大人のレデーになるために、反省す
るのね。きゅいきゅい)
 反省の意を示そうと小さく丸まるシルフィードの頭を、誰かが優しい手つきで撫でる。頭を上げる
と、才人が柔らかい微笑を浮かべて手を伸ばしていた。
「別に怒っちゃいないから、安心しろよ」
(本当?)
 シルフィードが首を傾げると、才人は「ホントホント。ああ、そうだ」と何か思いついたように言った。
「なら、お詫びとして、これからまた空の散歩に連れてってもらおうかな。ほら、いつか行った花畑。
また行こうぜ」
 才人が花冠を作ってくれた思い出が色鮮やかに蘇り、シルフィードの体が喜びに満ち溢れた。
(任しとくのね!)
 長い舌で才人の体を持ち上げ、背に乗せる。シルフィードはそのまま大きく翼を広げ、助走をつけ
て格納庫から飛び出した。地を蹴り早朝の空に舞い上がると、背中から歓声が聞こえてくる。
「うおーっ、やっぱスゲーなシルフィード。ホント、こっちの方が面倒くさくなくていいや!」
 聞き方を間違えれば「お前は単細胞だ」と言われているように聞こえなくもないが、シルフィード
は優秀な風韻竜だったので、才人の言わんとしているところをきちんと理解していた。
(つまり、面倒くさい女はお断りってことなのね。オホホホホ、ざまあ見なさいゼロセンちゃん。
やっぱり女はこのシルフィのように、さっぱりした爽やかな性格でなくちゃいけないのよーっ!)
 きゅいきゅいと嬉しい鳴き声を響かせながら、シルフィードは懐かしい花畑に向かって羽ばたき続けた。

「ふん。なによあいつ、子供みたいにはしゃいじゃって」
 まだ誰もが寝静まっているはずの早朝の寮の中で、ルイズは不満げに呟いた。まだ寝衣のままで、
小柄な体は寝台の上にある。サイトがまだ早朝の内にいそいそと部屋を出て行くものだから、なんと
なく彼女も目が覚めてしまったのであった。今、タバサの風竜に乗って飛び立っていくサイトを、窓
越しに見送ったところである。
「まーったく、ご主人様をほっぽり出して、竜で空なんか飛びまわっちゃって。一体何が面白いんだ
かさっぱり分かりゃしないわ」
 ぶちぶち文句を言いつつも、心の中では多少安心している部分があった。
(あのメイドとかキュルケとかと一緒にいるんなら、ともかく、竜相手じゃあいつだって盛りようが
ないものね。その点はまあ、いいことって言えばいいことなのかも)
 ルイズは安堵感に包まれながら、また毛布にくるまって寝始めた。

 使い魔たちによるゼロ戦襲撃はこれっきりで、以降は誰もこの機械に興味を抱くものはなくなった。
持ち主である才人自身もあまり乗らなくなってしまったのは多少寂しいことだが、その分自分もじっ
くりと研究に打ち込めるというものだ。そんなことを考えながらまたコックピット内の機材を調査し
ていたコルベールは、ふと手を止めた。外から、何やら勝ち誇った声が聞こえてくる。
「そういう訳で、シルフィはサイトとお花畑で楽しい時間を過ごしたのよ。オホホホ、どう、悔しい
かしらゼロセンちゃん。悔しかったらその板を回転させるなり例の魔法を撃つなりしてみたらいか
が? そんなことしたって、サイトの心はもうあなたには向きっこありませんけどね。きゅいきゅい」
 何事かと思ってコックピットから顔を出してみると、最近よく見かける風竜が、悠然と歩み去って
いくところであった。その背中が何故かやたらと得意そうに見えて、コルベールは首を傾げる。
(……一体なんだ? 先程の声の主も見当たらぬようだし……)
 少し困惑したが、まあこの機械の魅力に比べれば取るに足らないことである。そんなことを考えて、
コルベールはまたコックピットに潜り込むのだった。

132:205
07/11/03 17:29:04 oymzW4k8
以上。

仕方がないから最近は竜のCGとか置いてあるサイトをつらつらと眺めていたりします。メス竜可愛いよメス竜。
誰か竜の交尾について詳細に記してある本とか知ってたら教えてつかーさい。

133:名無しさん@ピンキー
07/11/03 17:32:21 ofWWMtEB
>>132
そんな本は太公望書房クラスまでたどらないとないぞw

134:名無しさん@ピンキー
07/11/03 17:40:55 MdsPMBgs
ヒロインはシルフィだということにようやく気付いた
次は人間態での絡みですよねそうですよね

135:名無しさん@ピンキー
07/11/03 17:59:00 0DEd4mzS
>>132
GJ!
ワニとかオオトカゲの絡みで満足するべきではw というか恐竜ならどうでしょ?

136:名無しさん@ピンキー
07/11/03 18:09:43 QLLYHcv1
×太公望書房
○太公望書林

>134
そんなありふれたモノなど無用!
古くより精霊に愛された竜体こそ、ハルケギニアにおける美の極致だと何故わからないのか…

シルフィ悲しくて涙が出ちゃうのね!

137:名無しさん@ピンキー
07/11/03 19:03:12 0NuddZcR
こんなにおもしろく書けるのが不思議でならない。
しかしサラマンダーが人間にほれる所でほろりと来るとは思わなかった。
GJ!シルフィはやっぱりいい子だ。

138:名無しさん@ピンキー
07/11/03 19:32:27 FQWwYOwU
ヤバイ、シルフィの事がどんどん好きになってきた、幸せにしてやりてぇw

139:名無しさん@ピンキー
07/11/03 20:46:08 aYQr20+A
>「あなたがあの機械に乗ってばかりいるから、嫉妬したみたい」
嘘はついておらず、しかもサイトが事態を把握可能な、実に的確な表現だ。
タバサはいいご主人様だなぁ。

そんなタバサを放置して、シルフィードに乗って飛び去るサイトは実にヒドス。

140:名無しさん@ピンキー
07/11/03 20:54:16 aYQr20+A
>132
>誰か竜の交尾について詳細に記してある本とか知ってたら教えてつかーさい。

URLリンク(allabout.co.jp)
>繁殖期になると1匹のメスに対して複数のオスがからみついて団子状になる行動が知られています。
>メスは交尾後6ヶ月後に出産を行います。

141:名無しさん@ピンキー
07/11/03 21:09:54 7ioygqS+
>>140
竜?


142:名無しさん@ピンキー
07/11/03 21:28:56 MdsPMBgs
LV0 ゼロの使い魔?どうせ典型的萌えラノベだろ?どうでもいいよ…
LV1 話はあんまり萌えラノベっぽくないな。ってかこの主人公何で武器使いこなしてんの?
LV2 なかなか燃える内容だな。ルイズってのはなんかツンデレしてて結構いいかも。
LV3 ルイズって女神じゃね?理想のご主人様って感じ・・・
LV4 シエスタもドジっ子でかわいいな。アン様とかキュルケとかモンモンとかティファもいい・・・
LV5 タバサって別にかわいくないのにカリスマ扱いされててうぜぇ。タバサ死ね!
LV6 タバサ結婚してくれ!
LV7 やべぇタバサ最高!タバサと水さえあれば生きていける!
LV8 タバサと結婚した!俺はタバサと結婚したぞ!!
LV9 やっぱルイズは最高だわ
MAX シルフィとちゅっちゅしたいよぉ~


143:名無しさん@ピンキー
07/11/03 21:45:41 n6M9tq1Y
とりあえずLV1はおかしい
誰が見たってゼロの使い魔は典型的萌えラノベ

144:名無しさん@ピンキー
07/11/03 21:48:17 yCm+cC6X
>>142
アン様が添え物扱い。許しがたい w

145:名無しさん@ピンキー
07/11/03 22:46:59 MmlSNO4U
Lv8とLv9、Lv9とMAXの間もおかしくね?(w

146:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:28:22 RWVv359f
竜とファックしたいから、ちょっくら世界中の火山巡りしてくる。

できれば雌竜に巡り合いたいものだな

147:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:28:57 cznHrtnG
5と6の間に何があったのか気になる

148:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:33:45 XTpmRhME
11巻と12巻の間に
ノボルに何があったのか知りたいわ・・・・

149:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:40:18 4F1evp3j
封じられていたラブコメさんとの思い出が、ついに噴出してしまったのだろう。
奴がいま感じている感情は精神的疾患の一種だ。
しずめる方法は俺が知っている。俺に任せろ。

150:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:56:25 6NNg/+UE
>>142ってコピペネタじゃないのか?
俺がまだ本スレにいた頃に見た気がする

151:名無しさん@ピンキー
07/11/03 23:58:17 2K3au7eV
>>142なんて改変されて出回りまくってるぞ
Lv5以降がルイズが多い気がする
最後はオチだからなんでもありだが シルフィもギーシュもオスマンもコルベールもみた

152:名無しさん@ピンキー
07/11/04 01:05:03 rspPwz59
前スレがまだ埋まってないぞ?
雑談するならそっちに書き込むんだ!

153:虹山
07/11/04 01:15:36 tr8N5gxR
うぃーす。ども、虹山です。
やっぱ誤字とかありましたか……。
報告してくだされば保管庫のほうは修正しときますんで。

終わるのいつになるんだろう…自分のss。

154:ぜろ☆すた
07/11/04 01:16:46 tr8N5gxR
「なぁデルフ?」
「なんだい?相棒」
「浮いてるな」
「浮いてるね」
俺がいるのは宇宙。無重力なんて初めてだ。
体を反転させてみると、そこにあるのはとってもきれいな蒼い星。
大陸の形を見るとこの星は地球じゃない。きっとハルケギニアだろう。
だけどあの天然エルフ…なんで宇宙なんかに跳ばすんだ?
真のガンダールヴの力を発揮してなかったらどうなっていただろう。……想像するのはやめておこう。
本当にこの力は便利だ。飛べるし、疲れないし、怪我しても力を込めれば再生する。
不老不死だけど宇宙でも活動できるなんて思わなかった。
ただ、どんどん人間から遠ざかっていることに嫌気がさしてきた。
「星って丸いんだな。はじめて知ったぜ相棒、きれいだなー」
「ほんとだ。大きな星がついたり消えたりしている…大きい…彗星かな?
いや、違う。違うな。彗星はバアーッと動くもんな…暑っ苦しいな…」
「いやほんとあついぞからだがとけちゃうあついあついあついしぬのかおいらいやいやいやしぬのはいやー!!」
ありゃ、知らないうちに大気圏突入しようとしてるみたい。
俺は大丈夫だけどデルフは溶けちゃうだろうし、何より自分のデジカメと服が危ない。落ちた時にスッポンポン
「大丈夫だ、デルフ!!お前はは死なない!!お前はは俺が…俺が守るから!!うおおぉぉぉ!!」
大気圏突入のために光の翼で身体や荷物を覆い、摩擦熱から保護した。
後は落ちるだけだ。だけどトリステインに落ちる確立はごくわずか。
ロバ・アル・カリイエとか訳もわからないところに落ちたらどうしよう。
まぁ何とかなるだろうけどさ。とりあえず俺は眼を閉じて祈ることをしてみた。


155:ぜろ☆すた
07/11/04 01:17:23 tr8N5gxR
ラ・ヴァリエールの中庭……。
モンモランシーは傍らのマリコルヌとギーシュに尋ねた。
「……こんな夜中に、見せたいものってなに?」
寝ようとしたら、見せたいものがある、と、呼び出されたのでやってきた。
目の前には何もないが、このパターンはギーシュがモンモランシーに何かを見せる時である。
「やっと完成したんだ。一番最初に、君に見てもらいたくてね」
「また何か作ったのね……今度は何?この前作ったわけわかんないものじゃないでしょうね?」
「これだよ」
ギーシュは唇をニヤリとさせてばさっと、何もないように見えた空間を引っ張った。
そこに現れたのは……、高さ20メイルはあろうかという、巨大なサイトの像。
両手を腰にあて胸を張っている立派な像だった。
「何ヶ月かかったことやら。サイトがゲートをくぐってから一ヶ月経った頃ぐらいから作業しはじめてね。
ルイズたちに見つからないように、僕とギーシュで毎晩作業をしていたんだ。ずいぶんと苦労したよ」
マリコルヌは、やれやれといった感じで言った。
「これ、昔、造ったサイトの像をもとにして巨大化させたやつ?」
「そうだよ。懐かしいだろ?後はいつものように“錬金”をかけて青銅にするだけだ」
「明日の朝、ルイズやティファニアにも見せてあげましょうよ。ガリアにいるタバサとかゲルマニアにいるキュルケや先生も呼んで!」
「だったら姫さまやシエスタも呼ばなきゃならないな!みんなでパーティをしよう!大英雄ヒラガ・サイトを称える会だ!」
「じゃあ、あなたはそんな大英雄の像を作り上げた最高の男だわ!」
「あ、ありがとう……モンモランシー」
ギーシュは愛する人に褒められ照れくさくなった。モンモランシーはそんな彼に唇を近づけようとする。
二つの唇が重なり合おうとしたとき……モンモランシーとギーシュは、ギュッと音がしたので思わずそっちのほうに眼を向けてしまった。

156:ぜろ☆すた
07/11/04 01:19:04 tr8N5gxR
そっちを見てみると……マリコルヌが首をつっていた。木の枝からたれているロープがゆらゆらとゆっくりと動いている。
ギーシュはいそいで縄抜けの呪文をそのロープにかけた。
しかし急いでいて何かをミスをしてしまったのか、ロープは緩むどころか逆にきつくしまってしまった。
マリコルヌの顔はどんどん青くなり、手と足が訳のわからないようにじたばたと動いている。
今度はモンモランシーが縄抜けの呪文をかけた。
彼女もあせっていたので失敗しそうになったが、取りあえず成功しロープは解けた。
ロープから落ちたマリコルヌは、ぜぇぜぇと急いで空気を肺の中へと入れている。
そして叫んだ。
「死んだらどーする!」
夜の寒い空気が風となって駆け抜ける。
「……なぁマリコルヌ、死にたかったんだよな?」
「なのに、死んだらどーするって……」
二人はあきれながらも言った。その言葉にマリコルヌはキレた。
「うるさい!ああ、そうさ、死にたかったさ!
僕がいるのに、目の前でそんなラブゲームなんか繰り広げ、僕の存在さえも無視して!
彼女すら一人もいないこの僕が!この僕が!!死にたくなるのは当然だろがぁぁぁ!!!」
マリコルヌはこの世の全てを今にも破壊しそうな雰囲気、いや、オーラが出ていた。
「「ごめんなさい」」
二人は土下座して謝る。貴族とあろうものが土下座をするのだ。
彼の怒りを静めるにはただ謝るしか方法がなかった。
「じゃあさぁぁぁ!僕にも紹介してよぉぉぉ!!いちゃいちゃさせてくれるひとをさぁぁぁ!」

157:ぜろ☆すた
07/11/04 01:19:57 tr8N5gxR

モンモランシーがマリコルヌを説得しようと思って、顔を上げ空を見たら一言、
「あ、流れ星!」
「モンモランシー、そんなふうに話をはぐらかしたら逆効果だぞ」
ギーシュは小声で言った。
「だけど見てみなさいよ!ほら!」
モンモランシーは、星空に指を突きつける。
「……うん、確かに流れ星だね」
ギーシュはうなずいた。
「……またそうやって君たちは僕をのけ者にするんだねぇぇぇ!!!死んでやる!死んでやるぞぉぉぉ!!」
マリコルヌは椅子ににのぼり、もう一度ロープに輪を作って死のうとした。
「なぁモンモランシー……いくら流れ星でも長すぎないかい?」
「……そうね、確かに光り輝く時間が長すぎるわね……」
二人が話しているのを見ながらマリコルヌは死のうとしているのに止めてくれないバカップルを見て死ぬことを改めて決心した。
父上、母上、自分の死に場所がみつかりました…、などと思っていると、
「どんどんあの流れ星大きくなってないか?」
ギーシュのつぶやきにモンモランシーが叫んだ。
「こっちにくるわよ!!」
「マリコルヌ、逃げろーーーーー!!!」
ギーシュがマリコルヌに叫ぶ。
その言葉に椅子の上にいたマリコルヌが、へ?っと言って振り返った。


その一瞬だった。


その流れ星はものすごい威力で巨大な像を貫き、その直線上にいたマリコルヌにダイレクトに直撃。
まっすぐに約50メイルも吹っ飛んだ。
椅子は跡形もなく破壊され、その先にはさっきの流れ星によってできた大穴。
その大穴に二人が駆けつけて覗くと、マリコルヌと光の翼で包まれた『何か』がみえた。
マリコルヌは……もう言葉ではなんともいえない状況になっていた。ただ『ひどい』としか表現できない。
その『何か』は光の翼に包まれていたが二人には見覚えがあった。
ゆっくりと光の翼がひろがる。
「………ただいま」
サイトだった。

158:虹山
07/11/04 01:20:47 tr8N5gxR
もう夜遅いので寝ます……
それではノシ

159:名無しさん@ピンキー
07/11/04 01:30:59 Zrz1RdUN
GJ!

160:名無しさん@ピンキー
07/11/04 01:49:28 3NVDcKOC
過疎ってるのかと思ってたら、いつのまにやら次スレに移行してたのか…orz

161:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 03:13:53 b9xVjTy0
>>103の続き。
でもまだ終わらない不思議。
仕事終わってから書くもんじゃないなあ…。

162:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 03:14:58 b9xVjTy0
よ、よし。
私はタニアのくれた香水をつけて、廊下に出た。
授業はもう始まっている。今から教室に向かっても、意味はない。
私が今から向かう先…。
それは、サイトのところ。
べ、べつにサイト墜とそうとか、そんな事考えてるわけじゃなくって!
えと、うんと、もっと、サイトの事、知りたいから。
もっと、サイトと仲良くなりたいから。
お、お友達だもん。当然だよね!
私は廊下の左右を確認して、誰もいないことを確かめると、寮の外へ向かう。
…だって、サボってるの見られたりしたらまずいし。
外に出ると、空は晴れていて、気持ちのいい秋晴れだった。
中庭を見渡すけど、特に人影はない。
サイトは…ヒマなときには、中庭の隅っこにある倉庫にいるって言ってたっけ。
私は以前サイトが教えてくれたその場所に、向かっていく。
少し歩くと、すぐにその建物が視界に入った。
それと同時に、胸がとくん、と鳴る。
…ち、違うんだから!サイトは友達!大切なお友達なんだから!
でも。
一歩一歩近づくたびに、私の胸はどんどん高鳴っていく。
倉庫まであと少し、と言った所まで来ると。
私の心臓は、早鐘のように鳴り響いていた。
…お、おおおお落ち着かなきゃ!
私は大きく深呼吸をして、気を静める。
新しい空気が私の中に入るたび、少しずつ落ち着きが戻ってくるのが分かった。
私は近くにあった水場の低い石積に腰掛けて、一息つく。
そして、水場の水面に、自分の姿を映してみる。
…ヘンじゃ、ないよね?
そして少し落ち込む。
…やっぱり、ヘンだよね…。この胸。
私は白い制服を中から押し上げている胸を両手で隠してみる。
両手じゃ納まりきらなくて、少しはみ出てる。
…こんなヘンな胸、サイトは、どう思うのかな…。
…こんな胸でも、お友達って、言ってくれるのかな。
そこまで考えて、私は決めた。直接聞いてみよう。
…それで、もし、ヘンじゃないって、言ってくれたら。
そのときは、その時は。
え、えと、やっぱり『お友達からお願いします』かなっ?
『友達以上になりたいの』とかってダイタンに言ってみる?
香水の効果で、ひょっとしたらひょっとして、うまくいくかもだし…。

「言ってみる?ティファニア…?」

私は水面に映る自分に、そう尋ねてみる。
しかし、水面に映った虚像は、何も応えない。

163:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 03:16:07 b9xVjTy0
なーん。

でも。
いつの間にかすぐ近くに居た、ちょっと太った虎縞の猫が、そう応えるように鳴いた。
私はなんだかその猫に応援されているような気がして。

「ふふ。ありがと」

優しくその猫を撫ぜる。
猫はぐるるるる、と喉を鳴らして石積に腰掛ける私の太股に擦り寄ってきた。

「甘えんぼさんね」

言って私はその猫の背を撫ぜる。
猫は変わらず、ぐるるるる、と喉を鳴らしている。

ぞりっ。

「ひゃんっ!?」

いきなりの刺激に、私の喉から声が滑り出た。
猫が、いきなり太股を舌で舐めてきたから。

ごるるるるるる…。

慌てて後ずさった私を見つめて、今にも飛び掛ってきそうな体勢で、その猫は喉を鳴らす。
…これ、どっかで見たこと…。
あ…!
この猫、発情してる…!
で、でもなんで?近くに雌猫なんかいないし…!

すんっ。

どこかで嗅いだ匂いがする。
ちょっとつんとくる、奇妙な匂い。
…え?ちょっとまって?これって…。
私はある事を思い出し、香水をつけた手首に鼻を寄せる。
そして完全に思い出した。
どこかで嗅いだ匂い。それは。
発情期の、雌猫のおしっこのにおい…!
ま、まさか、この香水って…!
気づいた時には遅かった。
次の瞬間から、私は、十数匹の発情した牡猫に追い掛け回される羽目になったのだった。

164:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 03:17:37 b9xVjTy0
「助けて、サイトっ!」

俺が午前中のアンニュイなひとときをゼロ戦の格納庫で過ごしていると。
あばれももりんごがおそってきた!
コマンド?
にアたたかう
  ぼうぎょ
  にげる
  どうぐ
  さいごまでつっぱしる
じゃなくて。
テファが、そんな事を言いながら俺を見るなり駆け寄ってきた。

「どしたのテファ?」

テファは俺の呼びかけには応えず、俺の後ろに隠れると、格納庫の入り口を指差す。
そこには。

なーん、ごるるるる…。なー、なーん…。

あばれねこだまがおそってきた!
コマンド?
にアたたかう
  ぼうぎょ
  にげる
  どうぐ
  ぬっこぬこにしてやんよ
な、なんじゃありゃあああああ?
猫の塊が、この格納庫めがけて走ってきている。
そしてテファはどうやら、その猫の塊に追いかけられているらしい。
あの猫どもになんかしたのかテファは?
俺が尋ねる前に、テファは言った。

「ねえサイト、ここに隠れられる場所、ないっ?」

…って、そんな隠れる場所、って…。
見渡す俺の目に、ゼロ戦の風防ガラスが映った。

「テファ、こっち!」

俺はテファの手を引いて、ゼロ戦のコックピットに乗り込む。
そのまま前にテファを抱えたまま、風防ガラスを閉じる。
すると。

べちべちべち!

さっきの猫の塊が、風防にとびついてへばりつく。
…なんなんだ一体?

「なにあれ?何があったのテファ?」

俺の質問に、俺の上で真っ赤になりながら。
テファは事情を説明してくれた。

165:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 03:18:15 b9xVjTy0
じゃーねゆー。
つづきとエロパートは日が昇ってからー。
ねゆー。

166:名無しさん@ピンキー
07/11/04 05:05:41 0U1EypbF
まじ?
「ゼロの使い魔 (13)」 12/25発売予定

167:名無しさん@ピンキー
07/11/04 05:27:01 pddc26uI
>>166
URLリンク(shinkan.main.jp)

キタ━━━\(T▽T)/━━━ !!!!! ノボルネ申、ハッスルしすぎw
ゼロ魔ユーザーにはクリスマスなんて「そんなの関係ねぇ!」ってかw

168:名無しさん@ピンキー
07/11/04 07:49:44 O3LX4z2Q
>>164
ちょwww自ら密室へwww

169:トマト祭り1/4
07/11/04 09:04:06 O3LX4z2Q
 今日は虚無の曜日。日頃の疲れをテファの部屋で癒すことにしたんだ。よし!とことん楽しんでやるぞ!

「テファ!トマト祭りしようぜ!」

「トマト祭り?サイト、それは何なの?」

「トマト祭りってのは俺がいた世界のある地域に伝わる儀式なんだ。トマトを相手に投げて悪いものを追い払うのさ!」

「うん、わかった!お友達のサイトのために頑張って投げるからね!えぃ!えぃ!」

ビチャッ!ビチャッ!
ブルン!ブルン!

「えぃ!えぃ!」

ビチャッ!ビチャッ!
ボヨン!ボヨン!

 な、なんだ!俺は夢を見ているのか?
 俺はトマト祭りと言ったはずだ!トマト祭りとはトマトを投げ合う祭りだ!トマト以外が宙を舞うはずがない!
 ならば今、目の前で舞っているのはなんだ?

 も も り ん ご だ!

 こ、こんな破廉恥ききき極まりないお祭り聞いた事ないぞぉぉぉお!

 うおぉぉぉおおお!

ブボボボッ!

 あ、鼻血が…

「さ、サイト!鼻からトマトを出すなんて!変な病気ね!サイトから悪いもの出てけ!えぃ!えぃ!」

ビチャッ!ビチャッ!
ブルルン!ボロロン!ポロリ…

 ぬうわぁぁぁぁああ!て、ててテファの片乳が!腕を振りすぎてテファの形の良い片乳が!


170:トマト祭り2/4
07/11/04 09:05:06 O3LX4z2Q
 びっくり箱からバネ付きの何かが飛び出すように!ポロン、と弾け飛んだ!

「ああああああああ!」

「さ、サイト?」

 さすがのティファニアも異常な才人を訝しんでいる様である。その証拠に先ほどまで無我夢中になって投げていたトマトと右腕が止まっている。
 そりゃあいきなり奇声を発したんだ。

(わたしの投げたトマトが変なトコロに当たったのかな?あ、大変!サイトの頭がカワイソウな事になっちゃったかも!)

 ティファニアの心配は杞憂であり『カワイソウな事になっちゃった』のではなく『元々カワイソウだった』のだ。

「こちらヒラガサイト三等兵デアリマス!テキハッケン!迎撃ニウツリマス!」

「え?さ、サイト!ど、どどどうしたの!サイトのおめめ、けものさんみたいだよ?」

「ワタクシノ目標ハ飛ビ出シテイル右乳デゴザイマス。全軍突撃デアリマスデス」

きしゃー!

 クワッ!と見開いた目。グフゥ!荒々しい鼻息、と流れ出る鼻血(彼女はトマトと認識している)。ダラァ!と垂れた涎。

 こんな男が目の前にいて、自分に襲いかかってるんだ。次の彼女のセリフは決まってる。

「き、キャァァァァァアアア!!」



171:トマト祭り3/4
07/11/04 09:06:05 O3LX4z2Q
 しかし悲しいかな、虚無の曜日の為、閑散とした魔法学院という状況は彼女にとっては不幸な事に、彼としたらこれ幸いにと周囲を気にしない戦場を作り出したのだった。
 戦場で尻餅をついてへたり込み、自らの体を抱き締め怯えている彼女の様子はソルジャーの彼に酷く扇情的に映っただろう。

「テファ!テファ!」

モミモミ

「んん…あぅぅ…さ、サイト!落ち着いて!手を離して!」

 才人に胸を揉まれながらも彼女は考える。

(そ、そうよ!サイトは自分の中の悪いものをトマトで追い払って欲しかったんだわ!だからトマト祭りなんていう奇怪な事をしようなんて言い出したの。うん、絶対そう!)

「テファぁぁ!テファぁぁ!」

フンガー!フンガー!

「あぅあぅあぅ」

 才人が顔を胸に押し付けてきても彼女は思考する。

(サイトの悪いものはトマトなんかじゃダメなのよね。トマト以上のものは…)

 と、自分の胸を見やる。彼女の右乳を才人が美味しそうに貪っていた。

「ん…あふぅ…もう…サイトぉお!」



172:トマト祭り4/4
07/11/04 09:07:05 O3LX4z2Q
(あ…そう言えば…サイトがわたしの胸をももりんごって呼んでた!村の子たちも、わたしの胸はトマトよりも大きいって言ってたし、これならいけるかな?ううん、やらなきゃダメ!お友達で大好きなサイトのためだもん!)

「テファぁぁぁぁああ!」

「待っててサイト!わたしが戻してあげるからね!」

 うにゃぁぁあ!っと右乳を貪る才人を引き離し、むにゃぁぁあ!っと彼を突き飛ばし距離を取る。
 そしてティファニアは自分の右のお乳を両手でがっしりと掴むと、餌が突然無くなり未だ呆然としたままの才人に突撃した。

「サイトぉぉお!目を覚ましてぇぇえ!」


 その後、才人は気絶した。

(デカかったなぁ…)

 彼が最後に目にしたのは自分に向かって飛んで来るももりんごだった。

END


173:名無しさん@ピンキー
07/11/04 09:08:11 O3LX4z2Q
誤爆しました…orz

174:名無しさん@ピンキー
07/11/04 09:15:40 rspPwz59
うん、わかるよ。
中途半端に残ってる前スレを前スレのネタで埋めてくれようとしたんだよね。
うん。
いいからももりんごよこせ。俺のもんだ。

175:ツェルプストーの熱き血
07/11/04 10:38:46 UOrNevyT

「お久しぶりね、みんな!」
 馬車から降りてきた友人達を、両手を広げて出迎える。
 タバサ、ティファニア、モンモランシーらと代わる代わる抱擁を交わしたルイズだったが、キュルケが下りてくると両腕を下げた。
「あら、わたしとは再会の抱擁を交わしたくないってことかしら」
 冗談めかして言うキュルケに、苦笑気味に首を振る。
「違うわよ。そんな格好じゃ、まともに抱擁できやしないでしょ」
「そうね。ジャン、ちょっとこの子をお願い」
 今まで両手に抱いていたものをコルベールに預けると、キュルケは改めてルイズと抱擁をかわした。
 体を離し、ルイズはおもむろに問いかける。
「今年でおいくつになるんだったかしら」
「2つよ」
 夫であるコルベールに抱かれて眠っている自分の娘を、キュルケは柔らかい眼差しで眺めた。
「これがもう、本当に元気な子でね。元気すぎて困るぐらいなのよ。この間も、領地の兵100人を」
「まあまあ、積もる話は中で、ね? さ、皆さんこちらにどうぞ」
 ルイズは手でヴァリエール邸を指し示した。

「しかしまあ、本当に早かったね!」
「何が」
「皆が結婚するのが、さ」
 前髪を指で弄びながら、ギーシュが苦笑気味に仲間達を見回す。
「東方まで冒険して帰ってきて、一年経つよりも早くくっついていたじゃないか、僕らは」
「未だに誰とも予定のない人がここにいるんだけどね」
 マリコルヌがため息混じりに言うと、ヴァリエール邸のダイニングルームにどっと笑いが起きる。
「ルイズとサイトが結婚、ギーシュとモンモランシーが結婚、キュルケとミスタ・コルベールが結婚……と」
「落ち着くところに落ち着いた感じですよねえ」
 紅茶を啜りながら、ティファニアが穏やかに微笑む。タバサが周囲を見回した。
「そう言えば、サイトはどこ?」
「この時間帯なら、お父様と訓練してるんじゃないかしら。
 もしかしたらヴァリエール公爵家を継ぐことになるかもしれない婿様だから、徹底的に仕込まれてるのよ」
 ルイズが澄まして言うと、先程から何やらブツブツ呟いていたマリコルヌが首を傾げた。
「あれ、でもサイトの奴、今は一階の南東角のところで黒髪のメイドと話し込んでるみたいだけど。
 ああ、遠見の魔法で見てるんだけどね」
「ごめんなさいね、ちょっと失礼するわ」
 少し抑えた口調で言って、ルイズが足早に部屋を出る。
 それを見送った一同が、揃って肩をすくめた。
「相変わらずよね、あの子も」
「あんな調子じゃ、二人の子供を見るのはまだまだ先になりそうだね」
「あら、分かんないわよ」
 キュルケが悪戯っぽく片目を瞑る。
「わたしだって一年もせずに産んだんだもの。
 ジャンったら、結婚前はあんなに固かったのに、結婚後はそれはもう情熱的に」
「こ、これキュルケ」
 コルベールが慌ててキュルケを止めに入る。ギーシュが苦笑した。
「やれやれ。当学院最高の頭脳を誇るミスタ・コルベールも、結局は一人の男だったってことですか」
「い、いやあ、面目ない」
 赤い顔で頭をかくコルベールに、一同からまたも温かみのある笑いが起きる。


176:ツェルプストーの熱き血
07/11/04 10:40:03 UOrNevyT

 それから少し経って、マリコルヌは小用に行くためにダイニングルームを出た。
(はぁ。皆が結婚ねえ。僕はいつになるんだろうなあ)
 学院を卒業してからもからきし恋愛と縁のない自分を顧みて、マリコルヌは歩きながらため息を吐く。
 角を曲がったとき、彼は廊下の中央に何か小さな影が座っているのを発見した。
(あれ。あれって、キュルケの子供じゃないのかな)
 別室に寝かせてあったはずの赤子が何故こんなところにいるのかと、首を傾げながら近づく。
 癖のある赤毛が印象的なその子供は、近づいてきたマリコルヌを見上げて「あー」とか「うー」とか言いながら小さな腕
を伸ばしてくる。
「ははあ、扉が開いていたためにここまで一人で歩いてきてしまったんだな。そういえば、キュルケが元気すぎて困るとか
言ってたっけ」
 とりあえず自分が元のところに戻してあげようか、と思って赤子に向かって手を伸ばすと、赤子はその手をすり抜けて、
マリコルヌの足に向かって這い寄ってきた。
「うー」
「あははは、本当に元気な子だなあ……って、ちょ」
 マリコルヌが止める間もなく、赤ん坊は彼の足を上り始めた。
「これは本当に元気な……って、え?」
 気付くと、ズボンをずり下ろされている。他人の家で下着丸出しである。マリコルヌは焦った。
「え、ちょ、何が」
 だが、ズボンをずり上げる暇もなく、今度はパンツを下ろされた。
 一体いつの間に下ろされたのか。目にも止まらぬ早業である。
「い、一体この子は……!?」
「あー」
「い、いや、今はいい。それよりも早く大事な部分を隠さないと……!」
 慌てて屈み込もうとしたら、赤ん坊が足にしがみついていたせいもあってバランスを崩して転んでしまう。
 尻餅をついて「いたたたた」と呻いていると、大事な部分に柔らかい何かが絡み付いている感覚があった。
 ぎょっとして見ると、倒れたマリコルヌのむき出しの陰茎を、赤ん坊が「いー」とご満悦な笑みを浮かべながら弄んでいる。
「こ、こらこら、それは玩具じゃ……あふぅ」
 赤ん坊は楽しそうに、両手で陰茎を弄り始めた。
 無論マリコルヌとて赤子に欲情するほど救いようのない変態ではないが、その手の柔らかさと巧みな技に、陰茎が首をも
たげてくるのを抑えられない。
(お、恐ろしい子……!)
 たまらず、マリコルヌは嬌声を上げた。


177:ツェルプストーの熱き血
07/11/04 10:41:29 UOrNevyT

 ダイニングルームで談笑を続けていたキュルケたちは、部屋の外から聞こえてきた長い長い絶叫に、顔を見合わせた。
「なんだろう」
「ルイズの声だったみたい」
「ま、まさか……!」
 一瞬コルベールと顔を見合わせたキュルケが、凄い勢いで部屋を出て行く。他の面々もすぐに後を追った。
 屋敷の中は、まさに死屍累々と言うべき惨状を呈していた。
 そこかしこに下半身を露出させた男たちが倒れており、皆陰茎の先からドロドロした白い液体を垂れ流しにしている。
「あちゃあ、遅かったか」
 走りながら、キュルケが頭を抱えている。紅潮した顔で周囲の惨状を見回しながら、モンモランシーが怒鳴った。
「なに、なによ、一体どういうことよ!」
「来てみれば分かるわ」
 短く言い置くキュルケについて、一同は屋敷の中を走りぬける。
 そして一階の南東の廊下に辿りついたとき、そこに立ち尽くす三人の人影を見つけた。
「ルイズ、サイト、シエスタ!」
 キュルケが駆け寄って、呼びかけた。
「大丈夫? 特に、サイト」
「キュ、キュ、キュ、キュルケェェェェェッッ!」
 ルイズが物凄い勢いでキュルケにつかみかかる。
「なに、なんなのよあの赤ん坊! わたしたちの目の前で、我が家の召使を昇天させて物凄い速さでハイハイ……!」
「あー、ごめんねぇ、ホント」
 キュルケが苦笑気味に頬を掻く。
「なんか、ああいう悪戯が大好きみたいで。ホント、元気すぎて困っちゃうわよねー。この間も我が家の兵を百人ほど……」
「のん気に話してる場合か! と、止めるぞ、すぐに!」
 才人が慌てて走り出し、他の皆も後を追う。
 一人放心状態でその場に残ったルイズは、
「侵攻よ……ツェルプストー家の侵攻が始まったんだわ……!」
 と、虚ろな瞳で呟き続けた。

 以上が、ヴァリエール家がツェルプストー家との交流を完全に閉ざすに至った顛末であると歴史学者ノーヴォル・ヤマグッ
ティー氏は語っているが、真相は定かではない。
 なお、住人からこの話を聞きだしたとき、同氏は
「一度でいいから赤ん坊とにゃんにゃんしてみてえ」
 というコメントを残している。まことに業が深い話である。 

178:名無しさん@ピンキー
07/11/04 11:34:57 Bq3J1U5Q
ノーヴォル・ヤマグッティー
自重w

179:名無しさん@ピンキー
07/11/04 14:03:28 K37WBiNN
うむ・・・うむ・・・ついに赤ん坊まで性欲の対象にwww
ここは本当に変態性のさまざまな発露の形にことかかないスレでつねw GJ!

180:名無しさん@ピンキー
07/11/04 14:09:28 cReFYCF8
待望の新刊がクリスマスとな!
発売前までにクリスマスネタを考えるとしようw

181:名無しさん@ピンキー
07/11/04 15:23:43 woGRc+aS
作者の事後報告がない(「これ、書いたの俺じゃないよ」と言われればそれまで、のはずw)のに
>>175-177がカキコ11分後に、有るべき場所にwiki保管されていたのには吹いたwww

205氏&名もなき編集人、乙です!!w

182:名無しさん@ピンキー
07/11/04 17:22:59 kJqtvnZG
本人でしょ>編集

え? マジレスは無し?

183:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 17:56:30 b9xVjTy0
さて待たせましたね皆さん。
「ウチの妹のばあい」の残り&エロシーンでございます

小便は(ry

184:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 17:57:10 b9xVjTy0
ティファニアの説明によれば、タニアからもらった香水のせいで、猫に追いかけられる羽目になったという。

「…なんでまた、猫のおしっこなんか…」

才人はそう言うが、香水の中にはそういったものもある。
香水は本来、汗や垢などの匂い消しに用いられたものが起源である。
まず最初に、匂い消しに花や果物の香りが使われるようになった。
更に時代が進むと、様々な効果を求めて、様々な『匂い』が用いられるようになる。
『誘蛾香』も、そうした思惑から、発情期の雌猫の尿を使って、男の本能を刺激しようとしたのだろう。
才人は知らないが、女性の気を引く香水の中には、動物の雄の睾丸から搾り取ったエキスを使ったものすらもあるのだ。

「そ、そんなの知らない…」

言って、ティファニアは怯えたように才人にすがりつく。
猫たちはいまだ風防に張り付いており、ごるごると発情期特有の喉を鳴らす鳴き声を上げている。
風防越しにも、『誘蛾香』の香りが届いているらしい。
すがりつくティファニアの首筋から、つんとした奇妙な匂いが才人の鼻に届く。
…香水が、原因なんだよな…。
才人はちょっと考えてみる。
香水って、ふき取っても意味ないよな。
それに、肌に直接かけてたとしたら、全部は拭き取れない。
肌に、直接…。
才人の煩悩が、そこで発動する。

「あ、あのさ、テファ」

そして才人は提案した。
香水を、舐めて取ったらいいんじゃないか、と。

185:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 17:57:44 b9xVjTy0
ティファニアは、才人の膝の上で真っ赤になってワイシャツをはだけ、首筋を晒していた。
まずはここから、ということらしい。
才人はどきどきしながら、ティファニアの真っ白な首筋に顔を寄せる。
薄桃色に染まったその肌からは、たしかにつんとした奇妙な匂いが立ち上っていた。
才人はその肌にそっと舌を這わせる。

「ひぅ!」

その瞬間、ティファニアの喉から声が上がる。
ティファニアは真っ赤になった顔を更に赤くして、声に見上げた才人の視線から顔を逸らす。

「つ、続けて大丈夫かな」

才人の疑問に、ティファニアは応える。

「う、うん、大丈夫、だから…。
 こ、声邪魔なら、出さないようにするからっ…」

言ってティファニアは、右の人差し指を噛んで、猿轡にした。
真っ赤な顔を逸らし、羞恥に堪えるその姿は、才人の煩悩をこれでもかと刺激する。
才人はもう一度、ティファニアの首筋に顔を埋める。

「ふンっ…!」

才人の荒い鼻息だけで、ティファニアの敏感になった官能が反応する。
喉が意思に反して踊り、腰の奥の器官がきゅうきゅうと啼きはじめる。

ぴちゃ…。

「ふぅぐぅ…っ!」

才人の舌が這った瞬間、ティファニアの背筋が反り、鼻から声が漏れる。
声が漏れないように、必死に人差し指を噛んでいたが、しかし鼻腔から牝の鳴き声が漏れてしまう。

ぺろぺろぺろぺろ…。

才人の舌がピッチを上げ、舐める範囲を広げる。
それは鎖骨周囲だけに留まらず、広げられたシャツのぎりぎりまで、そのたわわに実った乳房の半分にまで及んだ。

「ふぅっ!ンふぐぅ!んふぅ!」

イヤイヤをするようにティファニアは首を振り、背筋を駆け上ってくる悪寒にも似た快感の電流に堪えようとする。
しかし意思に反し身体は震え、すでに堰の破れた股間は、牝の体液が溢れ出していた。
そして、無意識に、才人の膝を跨いだ腰が、前後にグラインドしてしまう。

ぬちゅ…。

「んふぅぅぅぅ───っ!」

才人の膝とティファニアの股間の間で、薄い布が擦れる。
その電流が一気に身体を駆け抜け、一瞬、ティファニアの視界は真っ白になった。
指が口から離れ、くたん、と才人にもたれかかる。

「は、は、はぁ、はぁ…」

荒い息をつきながら、ティファニアは才人に全体重を預け、朦朧とする。

186:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 17:59:05 b9xVjTy0
そんなティファニアを才人は抱え上げ、そして。

がばっ!

はだけたワイシャツを一気にまくりあげ、ティファニアの胸を完全に露出させる。
『凶器』と湛えられるその胸が一瞬踊り、外気に晒される。

「え、サイト、何っ…」

ティファニアの顔が再び真っ赤に染まる。
才人はそんなティファニアの耳元で囁く。

「こっからも匂いがするんだよ、テファ」

言って、両手でティファニアの先端をつまんだ。

「…っひ!」

ぞくん!とティファニアの背筋に先ほどに倍する快感が走り抜ける。
きゅう、と両足で才人の膝を抱え込み、背筋を反らせる。
しかしなんとかティファニアは踏みとどまり、才人に反論する。

「で、でも、塗ったの首筋だけ…」
「広がっちゃったのかもよ?ほら、こんなに匂うし」

言って才人は、ぷっくり膨らんだ桜色の先端を集めるように、規格外に大きなティファニアの乳房を両手で挟み込んだ。
そして、くんくんとその乳首の匂いを嗅ぐ。その先端は、甘いティファニアの牝の香りがした。
そんな行為すら、焚き上げられたティファニアの獣欲は反応してしまう。

「ひぃ!や、だめぇ、嗅いじゃだめぇ…!」
「それじゃあ、舐めちゃうよ」

ティファニアの返事も待たず。
才人は、集められたその双つのピンクの真珠を、執拗に嘗め回した。

「ひぁ!やぁ!ら、らめぇ!ちくびぃ!」

才人の舌が往復するたび、びくんびくんと仰け反り、歓喜の声を上げるティファニア。
閉じられた脚がぎゅうぎゅうと才人の太股を締め付け、股間から溢れた蜜でティファニアの下着と才人のズボンはべとべとになっていた。

「ひ、ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

一際大きな声を上げ、ティファニアはもう一度、くったりと才人にもたれかかる。
今度は声も上げられず、もたれかかった才人の上でびくん、びくんと痙攣する。
胸虐だけで、ティファニアの意識は飛びかけていた。

187:ウチの妹のばあい ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 17:59:53 b9xVjTy0
「すっごい感じやすいんだね、テファ」

言って才人は、返事をする気力もないティファニアの金髪を、優しく撫でる。
ティファニアはその言葉に、半ば反射で応える。

「も…らめ…らめなんらからぁ…」

しかし、才人は聞かなかった。
彼の股間はこれ以上ないほどにいきり立っており、そして、彼の上には、牡の来訪を今か今かと待ち受ける、涎を垂らした牝がいるのだ。
今度は才人は、身体を入れ替え、ティファニアをゼロ戦の操縦席に座らせる。
脱力したティファニアの身体はくったりと、操縦席にもたれかかる。
だらしなく開いた上半身では、そのオーバーサイズな胸が、桜色に染まって上下している。
脱力しきった脚はO字に開き、まるでお漏らしをしたように濡れそぼった下着を晒していた。
ごくり、と才人の喉が鳴る。
そして、もどかしく狭いコクピットでズボンを脱ぎ去り、己を晒すと。

「じゃ、いくよ、テファ…!」

いつの間にか開いていた風防の隙間から白い手が伸びて、その頭蓋をがっしりと掴んだのだった。

「さて犬?辞世の句は決まったかしら?」

そこには、にっこり笑顔の、戦闘態勢の牝猫を連想させる、桃色の髪の彼の主人が居た。
そしていつもどおりに。
トリステイン魔法学院に、ある牡犬の絶叫が響き渡ったのだった。


後日。
仲直りの印、と言ってタニアはベアトリスにある香水を贈る。
オトコノコにもてるわよ、と言われて渡されたその香水を、ベアトリスは受け取って。
二人の仲がより険悪になったのは、また別の話である。~fin

188:せんたいさん ◆mQKcT9WQPM
07/11/04 18:01:18 b9xVjTy0
はいいつもどおりのオチでしたまる。
で、ベア様編はありませんまる。
仕事で忙しいしいじるキャラはテファだからだめなんですまる。

それじゃあまったねーノシ

189:名無しさん@ピンキー
07/11/04 18:03:45 cReFYCF8
リアルタイムGJ!!
ベア編ないんですか・・・残念っ

190:名無しさん@ピンキー
07/11/04 19:05:06 aKxHj5J7
せんたいさんは最近細切れ投下が多いな
話は面白いんだが

191:名無しさん@ピンキー
07/11/04 19:26:27 0BZNjB5Z
>>190
忙しい合間の中でも良作SSを投下してくれる
神と評価したい
というわけで>>188 GJ!!

192:名無しさん@ピンキー
07/11/04 19:30:27 OYl0C3rg
そう言われるとボルボ氏とかは暇人なのかと突っ込みたk

ちょっと外が騒がしいから注意してくる

193:名無しさん@ピンキー
07/11/04 20:17:36 GMTs34zm
細切れでもなんでも、書く人は自分のテンポで書いてくれればいいと思う。
自分も、自分の都合いいスケジュールで書いたほうが、ノリもいいしデキも(多分)いい。

ただ、「いじるキャラはテファだからだめなんです」と決めてるなら、
そもそもアンケートを取る必要がなかったのではないか。

194:名無しさん@ピンキー
07/11/04 20:49:35 itsEo9Xk
スレリンク(eroparo板:841番)

195:名無しさん@ピンキー
07/11/04 20:51:31 A3IXIi6a
うわwwwwwこのへんたいどもwwwwwwwwwwgj

196:名無しさん@ピンキー
07/11/04 22:15:04 CMf5O6d9
いじる為のネタを誰関連にするか、ってことなんじゃね?
期待させといてぇ~っ!というのは確かに同意するけど。

197:名無しさん@ピンキー
07/11/04 23:06:36 nnnBlYLE
このド変体めが!(ほめ言葉

へんたいさんGJ!ベア様ないのはちょっと残念だけど仕方ない。
仕事ガンがれ~

198:名無しさん@ピンキー
07/11/05 00:10:26 JEhEjIQJ
前スレ>>836
URLリンク(usokosystem.com)

199:チキュウの物語
07/11/05 00:40:00 iI7eOeCx
「怖い恋愛物?」
 こくり、とタバサがうなずく。慣れないとわかりにくいが、視線には期待の色が濃い。ルイズも女集団
がサイトを囲んでいるのに上機嫌だ。
 王都で上演された芝居の影響で、平民から貴族まで、女達の間では今、「少し怖い恋愛物」が流行なの
だという。タバサは例によって今世に出ている作品を読み尽くし、その大方はクラス中の女子で回し読み
された。そこで新作に飢えた女たちが思いついたのは東方からの異邦人、とい
うわけだ。ルイズも今回は女たちに邪心が見えなかった上に「私の使い魔」を自慢したくなったというわ
けだ。
 特等席である正面にはルイズが笑顔で座り、隣りにはタバサが筆記の準備。その後ろにはサイトも名前
すら覚えていない女子達が座り、最後部にはシエスタが控えという名目で座って小さく手を振っている。
 サイトは記憶を辿り、幾つかおぼろげな筋を思い出し、少しずつ脚色しながら語り始めた。

「『ダンスのお礼は何が欲しい?』『愛する彼の首を』」
 一斉に女たちが身震いする。サイトも興が乗って話続ける。
「そこでサロメは、真紅に染まった2つの月を背に生首にキスをすると、首を抱えながら踊るんだ」
 ふとルイズと視線が絡む。妙に浮かされたような目をしていると思う。
 一つ終わったが、さらにとせがまれたので別な話を始める。
「オシチは思った。『もう一度大火事があれば逢える』。オシチは王都に火を放ち、火事を知らせる鐘を
必死で打ち鳴らした」
 キュルケがぼんやりと手の中で火の玉を弄ぶ。口元が「炎蛇…」と動く。気付いたモンモランシーは慌
ててキュルケの脇をつついた。
 キュルケとルイズの動きにさすがのサイトも不安を感じて話を終えることにした。だがまだ大勢はアン
コールをする。やむなくサイトはもう一つ語った。
「モリドオにケサは、夜に寝静まったら寝室を教えるから夫を殺せ、と言った」 さすがに不倫だと身近に思えないのか、女子達が緩くなる。サイトは話を続けた。
「誤って夫の代わりにケサを殺してしまったモリドオは、ケサの首を持って山へ山へと落ち延びた」
 ルイズは少し呼吸が荒くなっている。シエスタが今までにない視線でルイズを睨んでいた。

 学院全体が寝静まった頃、ルイズはサイトを挟んだ向こうで寝るシエスタすら気付かない静かさで起き
上がった。彼女はためらわずデルフを掴んだ。
「やめときな嬢ちゃん」
 ルイズは慌てて手をひいた。デルフは続ける。
「あんた、普通に幸せだってあり得るだろ」
 ルイズは呟く。
「でも、敵多いし」
 言いつつもルイズは頭を抱えながら剣をひく。シエスタもサイトも眠るばかりだ。
 月を見上げてルイズは呟く。
「サイトが首だけなら」
 2つの満月はルイズのやるせない拳に光を振らせていた。


200:名無しさん@ピンキー
07/11/05 00:49:25 pIecBzsx
nice SS.
短いけど雰囲気あるなー。
才人がこれだけいろんな話を知ってるのがちょっと面白いw

201:名無しさん@ピンキー
07/11/05 00:55:42 eDFvYTPN
>>199
ガチなら笑えねぇな…ルイズオソロシイコ!

202:名無しさん@ピンキー
07/11/05 00:58:24 Y+26EkI8
>>199
なんというヤンデレww GJ!!

203:名無しさん@ピンキー
07/11/05 01:44:51 dCHmoyze
>>199
なんかかなり頻繁に蓬莱へ行ける麒麟が存在しそうな世界だな。
情報早すぎ。

204:199
07/11/05 08:06:58 iI7eOeCx
ルイズは愛情で傷つけるタイプな感じがするんですね。本当の平時にふと狂気の淵に魅入られる性質の。
で、背中を押してみました。

205:名無しさん@ピンキー
07/11/05 10:33:42 5D+Z1GhN
最近は基本的に投下が多いスレなので
一作出来上がってから投下する方が親切だと思うけどね。
何度か割り込み事故とかあったし

206:名無しさん@ピンキー
07/11/05 16:20:58 pbYvEbXf
アニキャラ総合板にある「あの作品のキャラがルイズに召喚されました」や「ゼロの奇妙な使い魔」みたいに、
「何時何分から投下」「投下完了」を書き込むようにした方が事故が減っていいのでは。

207:名無しさん@ピンキー
07/11/05 16:34:04 NOT00vGf
そこまで混雑してないからする必要はないと思うけど
投下するときはまとめたほうがいいかもねー。


208:名無しさん@ピンキー
07/11/05 16:51:41 zMy28vSo
投下する前に、一度更新するだけでいいんだよ(´・ω・`)

209:名無しさん@ピンキー
07/11/05 17:47:35 BVZa4Okx
アライブで竜態シルフィが出てたな、205氏がんば
マンガ版タバサの冒険でタバサが北花壇騎士と名乗っていたけど
小説版タバサの冒険203Pで「北をつけて名乗る北花壇騎士はいない。」って書いてあるんだけどな

210:名無しさん@ピンキー
07/11/05 17:54:11 301ZHjO/
>209
もう一度「タバサの冒険(1)」を読み直すことを推奨する。

211:名無しさん@ピンキー
07/11/05 21:53:28 BVZa4Okx
>>210
推奨されたのでさっそく読み返した
イザベラ他・侍女・花壇騎士以外の普通の平民・貴族はタバサ=北花壇騎士とは知らないみたいだし、
タバサ自身名乗ってもいないよう
ちなみにマンガ版で名乗った場面は翼人のとこの村人に対して、だ
読み逃しがあったらスマソ

212:名無しさん@ピンキー
07/11/05 22:26:56 3TqW9ron
タバサの冒険2を読んだ時に、人買いにとらわれたタバサが・・・
というSS出ないかな?と望んだのはないしょだ。

213:名無しさん@ピンキー
07/11/05 22:41:39 suKo3MBT
>>211
俺も今日見て驚いたわ。公には存在しないことになっているはずだもんな>>北花壇騎士
これは作者の読み込みが足りなかったんだと諦めるしかないのか……

214:名無しさん@ピンキー
07/11/05 22:51:23 FNbuXV6J
まあ、投下前&投下完了宣言するのは良いんじゃないんじゃない?

215:ボルボX
07/11/06 13:39:09 X2pUolBx
何人かのご要望がありましたので、才人にアン様孕ませてみました。母乳プレイと新妻要素も混ぜてみた。なんだコレww
陵辱はまたいつか書くかもだけど、いまはちょい難しくて。すみません。
でもリクエストは、着想を呼び覚まされることがあるのでありがたいです。謝謝。


216:ご懐妊九月目です。(女~録ラブエロ版5)
07/11/06 13:39:59 X2pUolBx
○リクエストを受け、孕みっ娘な姫さまでお送りします。

 王家と強力な大貴族ラ・ヴァリエール家の連帯という剣を、焼き入れをして強固に鍛えなおし、国内の封建諸侯に対しにらみをきかせ、政権の安定をもはかる。
 アンリエッタとルイズの考えたその政略自体はしごくもっともなものだったが、ただその方法が非常にとっぴなものだった。
 それが形をとって顕現し、夕闇のなかマントをまとって王宮の庭を歩いている。トリステインの王配、サイト・ド・ヒラガという生きた人間の形で。

「いや……政権の安定もなにも、すげー反発されてると思うんだけどね……あのタコ貴族ども、連日ねちねちと嫌味くれやがって……」

 春風そよぐ王宮の庭。噴水は残照にきらめき、花壇にはとりどりの花咲きほこる。
 そんな心地よい宵の口というのに、げっそりと頬がこけた感じの才人であった。
 今彼が王宮で一から叩き込まれているのは、書類決済やら要人との面会やら講演内容の清書やらの仕事。要は、身重のアンリエッタの代理である。
 その仕事のほとんどは、数少ない好意的な大臣や高級官吏が付き人のようにして指導してくれ、才人の手に余ったら自分の仕事のついでに片付けてくれるのだが。
 そのうえ基本的な教養まで何時間も教育される毎日だった。

 が、それらの苦労など、宮廷や在野の貴族たちからの嫉妬と蔑視にくらべればなにほどのものでもなかった。あれこそ針のむしろである。

 平民あがりの自分がアンリエッタと結婚して『夫君殿下』になり、ルイズを愛妾に迎えるという無茶苦茶な成りあがりっぷりである。貴族たちの嫉視は、それはもうすごいものだった。
 こんにちはの代わりに侮蔑の視線をなげられ、そのくせ口ではあからさまな追従、しかし嫌味をそこに混ぜられる。その後で、卑しき身分のくせにこちらをへりくだらせるとは礼儀知らずと陰口を叩かれる。
 陰険すぎるコンボに、何度も切れかけたが、今となってはおいそれと怒気を発することさえ慎まねばならないのだった。

 平民からは意外な喝采をあびているのと対照的である。巷に流れる与太話では、才人はじつは東方から来た異国の王子だが、あえて平民身分でアンリエッタに求婚した流れになっている。
 荒唐無稽かつ無責任なうわさ話だが、平民寄りとされていたアンリエッタの評価を裏付けた形であり、才人もすっかり平民の英雄とまつりあげられているのだった。

 しかしながら。
 最近では貴族と平民双方から〈幸運な〉という称号を名前の前につけられつつある少年は、実のところそこまで自分が幸福とは思えないのだった。

(むしろ、今は三人ともそれぞれ、微妙に不幸な気がするんだけどね。お、アニエスさんだ)

 庭で銃士隊員数名をひきつれて待っていたアニエスが、さっと敬礼した。

「陛下のおわす離宮まで、殿下の警護を勤めさせていただきます。
 それと昨晩、ラ・ヴァリエール殿の部屋に置き忘れていたという手巾を、ことづかってお持ちしました。これにございます」

 一夜ごとに交代で二人の部屋をおとなう才人だった。ただ、かならずしもそこで眠るわけではなく、寝室は王宮内に用意されているので、少女たちと会った後たいていはそっちに帰る。
 それはともかく、才人は落ちつかなげにアニエスに言う。

「や、やめてくださいよその言葉遣い……」

「了解しました。いようサイト、風雅な夜だな。
 死ね」




次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch