07/10/29 00:26:34 Iqz7Ht9t
時が経つのは早いもので、あと半年でこの魔法学院を卒業することになる。
この書に書くのも、これが最後。内容は、簡単。
―旅立つ日、私はヒラガサイトと結ばれる―
この一行だけ。
もう、この書を開くことも無いと思う。最後に書くのはこれにしよう、と決めてたから。
もっとも、今開いてるのは最後のページ。これ以上書く事が出来ないから、開くことがなくなるのは、決めてても決めてなくても同じことだった。
私は、その書を閉じて、本棚の中にしまった。サイトに見られるかもしれない危険があるけど、サイトには『見たら駄目だからね』ときつく言ってあるから、たぶん大丈夫。
それに、始祖の祈祷書と同じで、虚無の系統の人間しか見ることが出来ないみたい。
半年の間に、やることはたくさんある。
今よりももっと綺麗にならなくちゃならないし、今よりももっと魔法を習得しなくちゃいけない。この胸も、出来れば今よりも大きく。
世界一の男の人に嫁ぐんだから、世界一の女にならなくちゃいけない。たぶん、この半年は今まで以上に忙しくなる。
絶対絶対、サイトが見惚れるくらいの女になってやるんだから!
始祖ブリミルは、偉大なメイジであったと同時に、偉大な予言者であったとも言われている。ブリミルの言うことに外れは無く、まるで全てが予定されてあったことのように。
そして、ブリミルは全ての予言を一冊の書に残しているという。
その書は、始祖の予言書と言われているが、本当に存在するかどうかはわかっていない。
私は、始祖の予言書を見ながら、ため息をついていた。
今まで、色々な事を書いて始祖の予言書を試してきた。
サイトが転ぶ。サイトが私を抱きしめる。サイトが私に愛の言葉をささやく。サイトが私といい雰囲気になって……。
全てが成功。始祖の予言書は、その通りの効果を示してくれた。
始祖の予言書の効果は簡単。
書いたことが、現実に起こること。
人の命を奪うとかは出来ないけれど、ある程度のことならば叶えてしまう。
明日は、特別な日になりますように……。
そう願いながら私が始祖の予言書を見てると、サイトが部屋にやってきた。
あ、サイト。え? 卒業おめでとう? まだ早いわよ。卒業式は明日。まあ、一応お礼は言っておくわ。え? 綺麗になったって? 何言ってるのよ、いきなり。見惚れるくらいですって? ……ありがと……。
あ、ちょうどいいわ。……ねぇ、サイト。私からも言いたいことがあるんだけど、聞いてくれる?
予言書に書いたことはただの予定。この予言だけは、私が叶えなくちゃいけない。
予言書の力を借りちゃ駄目。なぜなら、これは私にとって一番大切なことだから。
大切なことは、自分の力でやらなくちゃ。
あのね? 私、サイトと……。