07/10/28 19:33:01 RDLODFz4
「見よ!これが我が戦闘術、『武装錬金』であるッ!」
ロナの宣言と同時に、タバサの詠唱が完成する。
ロナの周囲の水分が一瞬で細かな氷の刃と化し、風が渦巻いて、白い嵐となって襲い掛かる。
「やったか?」
普通の人間なら、この氷の刃の嵐の中では、数秒ともたずに息絶えるだろう。
よしんば初撃の氷の刃に耐え切っても、微細な刃は容赦なく肌を切り裂き、そして呼気とともに呼吸器を傷つける。
この術をまともに食らって、立っていられる人間などいない。
はずだった。
「…嘘」
タバサの目が、驚愕に見開かれる。
殺意を含んだ白い霧の晴れた後に。
腕を組んで、平然と。
鈍色に光る彫像が、そこに立っていた。
「噴!効かぬな!」
氷の刃によって裂けた服の隙間から覗くロナの肌は、鈍い銀色に染まっていた。
そう、彼は、『錬金』によって、己の身体を鋼へと変えていたのである。
「…アレをやらかすバカがいるとは思わなかったぜ…」
ロナのその身体を見て、デルフリンガーが呟く。
「…なんなんだアレは?」
間合いを取りながら、才人はデルフリンガーに尋ねる。
「…見てのとおりただの『錬金』さね。『錬金』で自分の肌を鋼にしてんだよ。
ただし、並みの力じゃ、鋼になった自分の重さで身動きも取れなくなる」
デルフリンガーの言葉のとおり、ロナの足元は、彼の重さで大地が沈んでいる。
しかしロナはそんな重さをものともしないで、右腕を勢いよく振り上げた。
「そう!鍛え抜かれた鋼の筋肉あればこそ!この戦闘術『武装錬筋』が成しえるのだ!
鋼と化した我が肉体の前に、刃は意味を成さぬ!まさに無敵無敵無敵ィィィィィ!」
「な、なんつー厄介な…」
今の才人に、鋼を両断できるほどの膂力も腕もない。
この状態のロナに対しては、完全に手詰まりであった。
「こういうとき、虚無の嬢ちゃんの『ディスペル・マジック』があればねえ」
デルフリンガーの指摘どおり、ルイズの『ディスペル・マジック』があれば、ロナの術を解き、なんとか勝つことも可能だっただろう。
しかし今ここにいない人間の話をしても意味はない。
「そしてぇっ!」
突如叫んだロナは、振り上げた拳をそのまま、才人めがけて振り下ろす。
「うわっ?」
才人は結構なスピードで振り下ろされるそれを横っとびに避ける。
ロナの拳は文字通り大地を割り、地面に突き刺さった。
ロナはそれを容易く引き抜き、そしてまた吼える。