07/10/26 19:36:02 Dh5qt9pW
翌朝
俺はその雑誌をもう一度ゴミ箱に捨てた、もう拾うまいと思い、なぜか手をパンパンと打って拝んだ
分厚く艶のある表紙で装丁された雑誌はルイズの八つ当たりとそれ以外の理由でボロボロになっていた
ゴミ箱にはあの時捨てた拳銃がまだ転がっていた、マメなゴミ集めをしていないルーズさに少し呆れたが
数日放っといただけでゴミ箱からゴミが溢れる世界が正しいかといえば、そうでもないような気もする
俺は夕べの痕が痛む体を捻りながら、表紙が破れホチキスが取れかけた雑誌を木箱の底に押し込んだ
いずれ燃えるゴミは風呂を沸かす焚き付けになり、鉄の機械は街の鍛冶屋が溶かして鎌にでもするだろう
後ろを通りがかったシュヴルーズ先生が、雑誌から飛んだホチキスを摘み上げる、赤土のメイジは
「これはわたしのひい孫みたいなものですね」と茶目っ気のある顔で笑うと、「まだ早いぞ」と言い
ホチキスの針をゴミ箱に放り込んだ、粘土から作られた金属、アルミニウムが俺の世界で生まれたのは
中世の末期で、実用的な普及は大規模な電気精錬が行われる20世紀まで待つ事になると漫画で読んだ
そしてアルミニウムは戦争の道具を多く生み出し、精製に必要な大量の電気は地球の資源を浪費した
拳銃と同様、労せずして女の裸を好きなだけ見られる物もまた、この時代にはそぐわないように思った
俺は夕べルイズにつけられた噛み跡と引っかき傷を撫で、それと引き換えに得た物を頭の中で妄想した
ルイズのまだ未成熟ながらしなやかな肢体と、桃色の髪を燃やしながら乱れる情熱的な姿、その感触
きっと俺がそれを望んだ時にそれはもう一度感じられるだろう、また体中に代償を刻まれるだろう
この世界のこの時代では大切なものは簡単には手に入らない、それはとても愛おしいものだから
(完)