07/10/25 02:03:59 CWgsQxO4
学院の片隅、誰も居ないほの暗い闇の中にソレは有った。
「本当に……有ったんだ」
大きな釜。
大きな釜が有るから、そこで待っているようにシュヴァリエはそう言った。
釜茹でにした事を後悔して、釜茹でにされたいのならソコに行けば良いと。
どうしても死にたいのなら、どこで死んでも一緒だろうと、そう……言われた。
テファに嫌われたわたしは何にも興味が無かったけれど、
テファが来る。
その言葉がわたしの足をここに向けさせた。
―テファになら殺されてもいいから。
シュヴァリエが支度してくれているのだろう、釜の中にはお湯が張ってあって、
釜の下ではまだ薪が燃えていた。
(ここで死ぬんだ)
テファに謝った後なら、もう何も要らない。
そのまま死んじゃっていい。
そんな事を考えていると、夕闇の中から声が響いた。
「ベアトリス?」
「っ!」
……テファ……が……テファが……ベアトリスって呼んでくれた。
昼間の様に、『ミス・クルデンホルフ』って他人行儀に呼ばれると思ってたのに。
それだけで、良いや。
もう……何も……
「ベアトリス、ずるい」
「テ、テファ?」
わ、わたしまた何かしたのかな?
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
繰り返し謝りながら、恐る恐るテファの方を見ると、すねた表情のテファが居た。
「仲直りの仲介をサイトに頼むなんて、ずるい」
「え……? ……ぇ?」
ナカナオリ?
「……あ……の……?」
「サイトが……ちゃんと仲直りした方がいいよって……わたし、サイトに怒られたわ」
……ぇと……
「仲直り……して……くれるの?」
「……だって、サイトが……もう……ベアトリスは仲直りしたくないの?」
突然訪れた幸せに何も考えられないまま、わたしはテファを抱きしめた。