【涼宮ハルヒ】谷川流 the 53章【学校を出よう!】at EROPARO
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 53章【学校を出よう!】 - 暇つぶし2ch400:モテ男の女型化
07/10/14 12:23:58 htTQsUZ7
朝のホームルームで岡部が簡単に事情を説明し、自己紹介をした。
クラスの奴らは男言葉に多少面くらってたがハルヒの蛮行になれてるせいかあんまり気にならないようだ。

さて、一時間目は体育か。ハルヒが着替えだす前にはやく出ないとな。
おい谷口なにボーとこっち見てんだ?行くぞ。
「え?どこへ?…ハッ!すまん、キョンよ。とうとう俺の時代が来たようだ。先に大人の階段上らせてもらうぜ。
 おまえが帰ってきた時には親戚だな…」
何をぶつぶつ言ってんだ?先行ってるぞ。
「ちょっとキョン子!着替え持ってどこ行く気?女子はここで着替えよ!」
…そーだった俺もここで着替えなくちゃならんのか。これはいろいろまずいんじゃなかろうか。
「残念だったね、谷口。キョン子さんは着替え場所を勘違いしてただけみたいだったね。」
国木田…おまえまでキョン子言うか。
「ふふ…甘いな国木田。よく考えてみろ。なぜ俺の名前が谷口とわかったか。それは事前に俺のことを調べていた…
 つまり俺に惚れているということなのだ!」
こいつ、脳に虫が沸いてんじゃないのか?まあ一応この寒い誤解を解いておこう。
「あーすまんすまん。キョンからクラスに谷口というとんでもないアホでスケベがいると聞いてな。
 こっちを変な目で見てきたからすぐわかった。着替えを見られたくないから連れ出そうとしただけだ。」
「…だそうだから、これ以上変態にならないように早く教室から出よう。」
そう言って国木田は固まってる谷口を引きずって出て行った。ふむ、完璧だ。
それよりもここからが問題だな。
って!みんなもう着替えはじめてる!これはちょっと刺激が…
「あんた何モジモジしてんの?さっさと着替えなさい!なんなら手伝ってあげるわよ…うりゃぁぁあ!」
ハルヒに返事をするまえに脱がされた。こいつ朝比奈さんで慣れてやがるな。
て言うかやめろ!恥ずかしいだろ!
「うわ!でっかい!みくるちゃんには劣るけど揉みごたえがあるわね。」
アホか!揉むな!おい、そんなダイレクトに……そ、そこ…は…こねく…りまわ…すとこじゃ…ハァ…ァ…ん…
「………」
「…ハ…ャ…ゥン…ってアホ!何真顔で揉みしだいとるか!!」
「ハッ!?あたしったら何を?キョンと触れあってるようで…キョン子侮れないわね…」
何を言ってるんだ、こいつは!

しかし危なかった…男で生まれ育った約17年間の大切な何かが壊れるとこだった。
「す、すごいのね…私も…」
ん?なんか視線が…
「キョン子ちゃん…」「少しだけでいいから…」「お、おねえさま…」
真っ赤な顔をした阪中を筆頭に下着姿の女子達がワラワラと…なんか怖いぞ!
「おい、ハルヒ!なんとかしろ!おまえのせいでみんな妙な術にかかってるぞ!」
「え!?わ、わかったわ!あんた達止まりなさい!キョンはあたしのよ!」
「間違えてる!いろいろ間違えてるから!!なにがわかっただ!ハル子!」
「え?え?……ハルヒよ!」
「あーもう!俺は逃げる!先に行ってるからな!」
「ちょ、待ちなさい!キョン子!」

なんで体育の前に疲れないといかんのだ…


―――


401:モテ男の女型化
07/10/14 12:24:35 htTQsUZ7
授業はバスケだった。
どーやら女で育った俺は運動神経が良いらしくハルヒと互角以上の対戦をしていた。
「やるわね、キョン子。でもこれを二本とも決めればあたしのチームの勝利よ!」
「そうだな、でも気は抜かないことだ。時間はもう少しある。」
「ふん!いくわよ!」
ハルヒは一本目を決めた。これで同点。
「あ!?」
二本目を外しやがった。
すかさず俺は背の高さを生かしてリバウンドをとる。
「阪中!いくぞ!」
俺は阪中にパスすると全力で前へ走る。「待ちなさ~い!キョン子~!」と追ってくるハルヒが少し怖い。
「はいなのね!」
阪中から絶妙なパスを受け、そのまま俺はジャンプをしながら半回転して後ろ向きにダンクをした。
正直気持ちいい。まあゴールの高さはみんなが楽しめるように少し低くしてるがな。
「何格好つけてんのよ~!」とハルヒが叫んだと同時に試合終了。
悪いなハルヒ。たまにはおまえに勝ちたいからな。
しかしダンクってどうよ?俺本当に女に生まれたほうが良かったんじゃないか?と軽くショックを受けつつ阪中らチームメイトに抱きつかれてた。
うむ、やわらかい。


授業が終わり着替えの時また襲われたりしたが、あれよという間に昼休みである。

「あんたずっと寝ていたわね。」
「勉強は得意ではないらしいからな。」
「なによ、らしいって。」
女の俺は男より馬鹿みたいだ。谷口以上だろう。なんせちょっとした漢字がわからなかったりする。
英語の教師が喋ってることも長門の高速言語に聞こえ、板書もたまに読めないからな。
やっぱり男に生まれてよかった。
「それよりも、おまえ食堂に行かないのか?昼休み終わっちまうぞ。」
「パンがあるからいいわ。それにあたしが居なくなるとあんたも困るでしょ?」
体育が終わってから妙に女子達がまとわりついてくる。
それをハルヒが牽制してくれてるので助かってはいるのだが少し残念なのはなぜだろう。
「なに?あんた、ゆりんゆりんな人なの?アブノーマルもほどほどにしときなさい。」
「なんだよ、ゆりんゆりんって。俺はいたってノーマルだ。」
しかし今体が女である以上そうなってしまうのか?
いかんな。やはり早急に男に戻らなければ。

「そんな男言葉で言われてもねぇ。あんた彼氏とかいないの?」
「そんなものはおらん。」
いてたまるか。
「ふ~ん、ま、どうでもいいけど。」
じゃあ聞いてくんなよ。
「どーでもよくないのね!大事なことなのね!」
阪中がいつの間にか隣にいた。なんだ?女ってのは気配を消せるのか?どうでもいいが目が少し怖いぞ。
「女の子同士なんて不純なのね…でもキョン君の周りはいっぱい美人さんがいるし…キョン子ちゃんなら…」
「ん?なんだって??」
「へ!?あ、あの…キョン君もいいけどキョン子ちゃんもね!って言ったのね。」
なんだその正月のカレーの様な扱いは。意味がわからんぞ。そしてさりげなく胸を揉むな。
「はいはい阪中さん。キョン子にそっちの気はないわ。それとこの胸はあたしが揉むためにあるのよ。」
「アホか!おまえも揉むな!」
また真顔になって迫ってきたので俺は屋上へと避難した。

ふぅ…しかし女の俺のスペックがだいたい理解できたな。だからどうしたって感じだが。


―――


402:モテ男の女型化
07/10/14 12:25:09 htTQsUZ7
くだらないやりとりで昼休みは終わり、午後の授業は睡眠という時空魔法を使って今は放課後である。

「さあ!キョンがあたしの事をなんて言ってるのか事細かく説明しなさい!」
ハルヒは授業が終わった瞬間にまだ夢の住人だった俺を引きずるように文芸部室にひっぱりこんだ。
おまえはもうちょっと落ち着け。拉致された気分だ。
「落ち着いてるわよ!ただ少しキョンがあたしのことどんだけ好きなのか早く聞きたいだけよ!」
いつ好きかどうかの話になったんだ?何をテンパってるんだか。
「そう急かすな。別にたいした事は聞いてないぞ。」
「いいから!」
そう言われてもな…そもそも何も聞いてない。俺自身だし。適当に言っとくか。
「そうだな…無駄に行動力があって周りを疲れさす。特に俺が。と言ってたな。」
「…え?ほんとに?」
ハルヒが不安そうな顔して見上げてきた。
本当の事だがちょっと意地悪だったな。
「でも、そのおかげで今俺はそこら辺の奴らよりずっと楽しい高校生活を過ごせているから、ハルヒには感謝している。だとよ。」
これも本当だが、なにやらこっ恥ずかしいな。
「あ、あたりまえだわ!団長に感謝するのは団員として当然よ!」
「そうかい。良かったな。」
「そ、それで…他には?」
「他?なんだ他って。」
「だから!まだ何か聞いてるでしょ!もっとあたしがこうした方がいいとか、ああしたら可愛くなるとか!」
「何言ってんだ?「こう」とか「ああ」とか言われてもわからんぞ。」
だいたい可愛くってなんだよ。…いやポニーには…っていかんいかん。
「何か聞いてるんでしょ!?もったいぶらずに言いなさい!」
「なにそんな熱くなってんだよ。もう何も聞いてない。」
「あたしはいつも熱い女よ!隠してたら為にならないわよ!」
あーもう、誰かこいつをなんとかしてくれ。

「私のことはなんて言ってた?」
おわ、長門いつからここに居たんだ?頼むから気配を消さないでほしい。心臓に悪い。
「最初からいた。彼はなんて言ってた?」
「い、いや…長門?俺は、その、おまえ知って…」
「なんて言ってた?」
なんだこのプレッシャーは?しかしなんか言っとかないと大変なことになりそうだ。なぜか俺の胸に手をかざしてるし。
「え、えーと…なんでもこなせて完璧なんだけど、どこか危なげで守ってあげたくなる存在…かな?」
「…そう。」
ふぅ…どうやら正解だったようだな。
「ちょっと!あたしにはそういうこと言ってないの!?」
「それよりもわたしには何かないんですか!?」
「みくるちゃん!?」
いつの間に入ってきたんだ?古泉も居るし。て言うかハルヒ以外俺が女に変わってるだけって知ってるだろ。
俺にどうしてほしいんだ?
「涼宮さんや長門さんばかりズルイです!わたしも聞きたいです!」
朝比奈さんそんなに迫られると、どうにかなってしまいそうなんですが…
俺が男って忘れてるんじゃなかろうか。
それと最近この方から「ズルイ」ばっかり聞いてる気がする…うぉ!さらに密着してきた。
「わ、わかりました。えーと、ドジっ娘なんだけど心を癒してくれる天使の様な人…って。」
「え?そんな…ふぁぁ」
「な!?あ、あたしにもそういうのあるんでしょ!?言いなさい!!」
「私にもまだある気がする。」
古泉!ニヤケてないで助けろ!
「いえいえ、僕は彼から何も聞いてないので。」
…もう勘弁してくれ。

この後も三人娘から質問攻めにあった。しかしこれでハルヒも満足したろう。今日中には戻れそうだな。


―――

403:モテ男の女型化
07/10/14 12:25:44 htTQsUZ7
透き通るような青い空、やわらかい日差しが散歩にはもってこいの休日の午後、俺は古泉と並んで歩いていた。
まぁいつもの不思議探索な訳だが、

「おい、ほんとにこれで戻るのか?」
「いえ、これは森さんがどうしてもと言いまして。関係ありませんよ。」

今俺は値段が張りそうな白のワンピースを基調とした、森さんプロデュースの格好をしている。
ついでに言えば化粧までしている。つまりまだ俺は女だったりする。

「な!?なんだと!おまえ昨日の夜電話でそろそろ戻りましょうかって俺の神経を逆なでするようなこと言ってたじゃないか!
 女らしいとこを見せればいいんじゃなかったのか!?だから我慢して化粧までしたのに!と言うか戻れる方法があるならさっさとやっとけよ!」
「まあまあ、その方法も確実とは言えませんし、十中八九閉鎖空間が生まれますから今まで黙っていたんです。しかし涼宮さんは女性のあなたが気に入ったらしく
 なかなか戻りそうな様子ではなかったので森さんに相談したところ明日まで待ってくれと頼まれたんです。」
「俺を女装させたいが為に!?そこは断ってくれよ!」
「あなたはあの微笑の前に逆らうことができますか?」
「……俺が悪かった。」
「いえ、わかってもらえて幸いです。」

朝、森さんに化粧される時に「さすがにそれは…」と断ろうとしたら「しないとダメです。」
と虎も逃げ出すようなオーラで微笑まれたからな。

「しかしな、今はおまえといるからいいが、午前朝比奈さんとパートナーだったろ?びっくりするくらいナンパされてな。
 ウザいったらなかったぞ。」
「それだけあなたと朝比奈さんが魅力的だということですよ。」
「アホか。はぁ…しかしモテ期ってのは人生で三度あるっていうじゃないか。その大事な一つで男からモテるってどうなんだ?
 そもそも戻ったあとで俺にモテ期ってくるのか?」
「…それ、本気で言ってるんですか?」
「あたりまえだ。おまえみたいなツラがいい奴にモテ期もなにもないだろうがな。」
「ふぅ…これは手に負えませんね。」
古泉は肩を竦めながら溜息をついた。
溜息をつきたいのは俺のほうなんだがな。所詮ハンサムボーイにはわからないことなのさ。



404:モテ男の女型化
07/10/14 12:26:15 htTQsUZ7
「やあキョン、こんな短期間でこんなにも変わるとは、さすがに驚きを隠せないね。」
あても無くブラブラしてたら突然声をかけられ、振り向くと佐々木が微笑んで見ていた。
なんで俺ってわかったんだ?
「わたし達の情報網だってすごいんです。侮っちゃいけないのです!」
橘もいたのか。古泉は相変わらずニヤケ顔だからほっといても大丈夫だろう。
「俺が女として生まれたらこうなってたらしいぞ。きついだろ?ほんと男で良かったよ。」
「あれ?私のことはスルーなのですか?」
「男で良かったのは同意って言うか男でなくちゃ困るね。それはおいといて今の君はそこら辺の女優より格段に綺麗だよ。」
「そこら辺に女優はいないと思うがな。あんまりからかわないでくれ。」
「僕は正直に言ってるよ。キョンはあらゆる意味でもっと自覚したほうがいいね。」
何を自覚しろってんだ。
「僕っ子と俺っ子…この組み合わせは最強なのです…しかも片方はお姉さま系…
 佐々木さん!!やっぱり涼宮さんの力は佐々木さんのほうが相応しいのです!そしてその力でキョンさんと姉妹に!」
「しかし今のキョンが古泉君といるとまさにベストカップルだ。なんだか妬けちゃうよ。」
「あれ?佐々木さんもスルーなのですか?」
「それは光栄ですね。」
「気持ち悪いこと言うな!」
橘が不穏なこと言ってたが佐々木が空気を読んでくれたようだ。だいたい俺っ子てなんだよ…
「―――あなたは――嫁……なの?―――」
ぅお!いたのか昆布娘!
「――それとも―――私が……嫁?―――」
相変わらず何を言ってるのか全然わからない。佐々木も大変だなこんな連中と一緒だと。
「そうでもないな。なかなか愉快な人達だ。少なくとも退屈はしないね。
 それでは僕らは用事があるのでこれで失礼するよ。次会うまでには男に戻ってくれてるとありがたいな。
 僕には女性を愛でる趣味はないからね。それじゃ。」
「あ!待ってください、佐々木さん!女同士も案外悪くないのですよ!」
なにやら佐々木が爆弾発言をした気がするが橘のせいでよく聞き取れなかった。

「……さて僕達もそろそろ戻りましょうか。」
「そうだな。」

佐々木達を見送りつつ俺達は駅前へと戻った。


―――


405:モテ男の女型化
07/10/14 12:27:02 htTQsUZ7
「先ほど手をうちました。これで男に戻れると思います。」

帰宅して風呂に入ってると古泉から連絡があった
「そうか、すまんな。しかし何をしたんだ?なんか嫌な予感がするんだが。」
「明日になればわかると思いますよ。あとのことはあなたにお任せします。」
「あとのことってのが非常に意味深だな。」
「深い意味はありません。あなたならなんとかしてくれるでしょう…っと、すいません案の定閉鎖空間が発生したようですね。」
「何をしたんだいったい…まあいい怪我しないように頑張れよ。」
「そんな色っぽいハスキーボイスで言われると俄然やる気がでますね。それでは。」
アホかとツッコム前にきりやがった。
やれやれ俺ものぼせない内に風呂からでようかね。

…う~む、自分の体なのに未だに直視できんな。俺もまだまだ純粋だね。
それよりも名残惜しい気分にならない内にさっさと着替えて寝よう。起きたら男だ。


「キョン君おはよー!あ!男に戻ってる!!」
妹の体を張った目覚ましで起こされた。よかった、ちゃんと元に戻ったか。
「あんたやっぱり女のほうが良かったわね。もったいない。」
おふくろが非常に傷つくことを言ってきた。
でも「キョン君は男のほうがいいよー!」と妹がまた抱きついてきたので良しとしよう。
妹よ今度デラックスパフェ食わせてやる。
「キョン君だいだいだいすきー♪」ふむ、キスするのはいいが舌をいれてくるな。
よし今日は気分がいいので早めに学校に行くかね。

いつもより爽快に早朝ハイキングをして教室に入るとすでにハルヒがいた。
「よう、久しぶりだ…な。ハルヒ?」
「そうね。ちょっと団室までついてきなさい。」
なんだろう非常に怒ってらっしゃる。
「よし!断る。」
「………」
ぶん殴られた。


406:モテ男の女型化
07/10/14 12:27:47 htTQsUZ7
曳きづられながら団室につくとなぜか他の団員がいた。
「昨日古泉君から聞いたわ。あんた隠してることがあるでしょう。」
まさかハルヒにばらしたのか?いや、みんなの表情からそれはなさそうだな。
「何をだよ。別に何も隠してないぞ。」
「とぼける気?古泉君…」
「ええ、では。森さんから聞いたのですが、活発で非常にかわいらしい女性とあなたがそれはそれは仲むつまじく手を繋いで歩いていたのを目撃したと。」
「おい…まさかおまえ…」
「はい、ご想像の通りです。森さんは仕事の関係でそちらにいたそうです、いや~偶然ですね。」
白々しいわ!あとのことってこれのことか!無茶だろ!!
「さあどーゆーことか説明してもらおうかしら?」
「知らん!事実無根だ!そんなことはいっさいなかった!」
「嘘おっしゃい!その女のどこが良かったのよ!目!?鼻!?口!?この浮気者!!!」
「だから知らんと言っとるだろうが!浮気者って意味わからんぞ!」
「なによ!どうせ昨日別れるときもテールランプ五回点滅さして、
 ‘今は離れ離れになるけど次に会うときはエアーズロックに行って世界の中心でアイを叫んだけものになって帰ってくる。そして結婚しよう。愛してる。’
 てサインだしたんでしょ!?正直に言いなさいよ!」
「五回点滅だけでそんな壮大なサインあるか!!そこは‘あいしてる’だけでいいだろ!」
「やっぱりしてたんじゃない!」
「バイクも車も持っとらんわ!」
「う~キョンが訳のわからない女にとられちゃう!キョンはあたしのなのに~あたしのなのに~~」
ハルヒが故障した!
「あ~ん…キョンは…ヒッ…あた…ッのなの…に…うあ~ん。」
「す、涼宮さん!落ち着いて!キョン君はなにもしてませんから!」
「……そう、古泉一樹が言ってるのは間違い。」
おぉ!この為の朝比奈さんと長門か!助かった!
「……ホント?有希?」
「そう、彼と手を繋いでたのは私。」
長門!?
「ぇえ!?長門さんなんですか!?」
ぇえ!?朝比奈さん!? 
「ぅあ~ん、キョンが~キョンが~」
「長門さんズルイですよぅ!!」
「……彼は私のもの。」
なんだこのカオスな状況は。どうにかしろ古泉!おまえにも責任はあるぞ!

407:モテ男の女型化
07/10/14 12:29:15 htTQsUZ7
「こ、こんなことになるとは…す、涼宮さん落ち着いて僕の言ったことを思い出してください!」
「…ヒッ…ゥ…?」
「活発で非常にかわいらしい女性…つまり涼宮さんのような人です!彼も涼宮さんに会えなくて寂しかったんですよ!」
「……!?」
何を勝手なこと言ってるんだ!
「…でも…有希が…。」
「冷静に考えてください。彼が向こうに行ってる間長門さんはずっとこっちにいたんですよ?彼と一緒にいるのは不可能なんです!」
なぜ俺を睨む、長門よ。
「じゃ、じゃあキョンは…」
「ええ、涼宮さんのものです。」
「なんでだよ!!おまえまで狂ったのか!?」
なんて言ってる間にハルヒが「キョン~」と俺に向かって飛んできたのだが
朝比奈さんが「させません!」と妙に腰が入った体勢でブロッキングしていた。
朝比奈さんって実は強いのか?
「め~がっさ~!キョン君の匂いがするにょろ!!」
ドカンと扉が開けられ鶴屋さんが飛び込んできた。
「ふふぅ…最近キョン君に会ってなかったからね。覚悟するにょろよ。」
鶴屋さんが俺に抱きつこうとしたのを「させない。彼は私が守る。」と長門が立ちふさがった。
「ほほぅ。有希っこ…第2ラウンドだね。いくにょろよ!」
長門と鶴屋さんのカンフーを見ながら思う。どうすんだよこの状況。
「あなたも大変ですね。」
「居たんですか、黄緑さん。」
「驚かないんですね。それとわざと名前間違えました?」
どうしてわかったんだろう。
「この状況で驚くほうがむずかしいですよ。」
「そうですか。それよりそろそろ授業ですよ。なので今は誰もいない保健室に私といきませんか?」
「なのでの意味がまったくわかりません。遠慮しときます。」
「あら、冷たいんですね。」

はぁ、登校するまで気分良かったんだけどな。一気に疲れた。
「まあまあ、男に戻れたのですからいいじゃないですか。」
「そうかもしれんが、おまえこれどうするつもりだ?」
「……どうしましょう?」
古泉はお手上げってな感じで肩を竦めた。俺もお手上げだよ。

……帰ろうかな。

「キョン~キョン~キョン~」

ハルヒに抱きつかれた。



おわり

408:名無しさん@ピンキー
07/10/14 12:30:16 htTQsUZ7
以上です。
ではでは。

409:名無しさん@ピンキー
07/10/14 12:46:10 soSks00A
まさかホントに続いてたとは!乙!

強気みくるいいなw

410:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:08:43 9wEfv7UJ
くっ…なんという破壊力のあるSSだ…
クラスの女子達に笑ったw
GodJobと言わせていただきたい

411:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:23:18 4ogXxHly
やや腐臭が漂うんで酢が

412:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:31:30 sVLa5fHv
GJ
こういうのもっと頼むw

413:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:31:57 GjxrU7Su
このシリーズ続いたりは・・・しないのか?

414:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:52:09 hqD6wC9m
全員暴走してる!

415:名無しさん@ピンキー
07/10/14 14:43:25 RjuEzBeQ
>>408 GJ!! 続いてほしいが、もう変身するネタがないな。
無理やり考えるとするならば、ロリ化か動物化のどちらかな?


416:名無しさん@ピンキー
07/10/14 14:52:22 49oGpqKp
きょこたんの扱いはどこに出ても相変わらずだなwww
次のネタはアレか。いよいよ「巨大な毒虫」か。

417:名無しさん@ピンキー
07/10/14 14:54:48 9wEfv7UJ
ロリ化は
高校生→思春期前
男→女
と2段変化を要するから面倒だな。それにハルヒがロリを望むとも思えんし
動物だと学校に行けんわなw


418:名無しさん@ピンキー
07/10/14 14:56:29 9wEfv7UJ
思春期前とは限らないか。ちょっと語弊がありました。
連レスすまん。

419:名無しさん@ピンキー
07/10/14 15:07:39 iY+CTmGM
どうでもいいが、「」の中に句点を入れるな。

420:名無しさん@ピンキー
07/10/14 15:27:34 1XyMXHKz
面白かったです!!
次は成人化がみたいな

421:名無しさん@ピンキー
07/10/14 15:44:43 y3u65fuT
>>326
>JUNMENかよ。俺のコート確か丸井だぞ?

JUNMENは押しも押されもせぬ丸井系な件w
つまり、何も問題もないんじゃ(ry

422:名無しさん@ピンキー
07/10/14 18:10:25 9Swv9kXN
面白かった。女の子たちがいいね

423:名無しさん@ピンキー
07/10/14 18:46:54 N6eLRea6
よし、妹。自重しなくていい。もっとやr(ry

424:名無しさん@ピンキー
07/10/14 18:49:55 GjxrU7Su
誰か居ないと思ったらミヨキチが居ないのか。

425:名無しさん@ピンキー
07/10/14 22:24:40 nS990FkM
そうか、次はキョンがミヨキチにんなるのか

426:名無しさん@ピンキー
07/10/14 22:48:53 WbIcUoWY
そうか、次はキョンとシャミセンが入れ替わるのか

427:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:36:44 dB/Mw/DN
キョンがにゃーにゃーいいながらすりすりするわけですな

428:名無しさん@ピンキー
07/10/15 02:27:33 4/pXkdGW
そのキョンinシャミ略してキャミはハルヒが妹からの奪取に成功すると

429:名無しさん@ピンキー
07/10/15 02:33:54 fU+sFOFo
「あんたが妹ちゃんみたいに可愛かったらいいのに」

妹と入れ替えだろ

430:名無しさん@ピンキー
07/10/15 02:35:53 4/pXkdGW
キョン化した妹が妹化したキョンと…

疲れているようだ、お休み

431:名無しさん@ピンキー
07/10/15 02:56:20 LGZHWRyE
妹inキョンの体って凄い兵器だよな

キョンの体で「わーい、ハルにゃん」と抱きついたり、
「みくるちゃんがいい!」とか言い切っちゃうんだろ

432:名無しさん@ピンキー
07/10/15 08:49:19 IfRCxX7j
【・・・・・・・・】(・・・・・・・・)
天才岸本が考案したNARUTO世界で生きていくための基本スキル。
マンガの売りは短期間での提供力だとほざく岸本が更に短期間で作品を完成させるために、
台詞を考える時間を省いた結果生まれた天才的発明。
これによりネーム作成時間が飛躍的に短縮され、さらに短期間での作品提供を可能にした。


やっぱり長門はタダ者じゃなかった

433:名無しさん@ピンキー
07/10/15 19:45:14 B0vzsHcu
両袖、胴体部分、裏地、襟はじゃんけんの続きを書いてみた。
今回はちょっとエロありだが相変わらず馬鹿話。


434:両袖、その少し後の話
07/10/15 19:45:54 B0vzsHcu
両袖、その少し後の話


「……」
「……」
「……」
 いや…別に有希が三人いるとかじゃないわよ。
 あたし達三人、有希とみくるちゃんは一着のさえないコートを中心に三すくみで、何故か丁寧に正座していた。
 まるで三国同盟ね。
 Gacktは最初どうかと思ったけど、みんな演技が大仰だから馴染んでいたのがすごかった。
 で、場所は有希の家。
 時間は馬鹿キョンからコートを貰った帰り。
 パンツ? あんなの今だけなんだから、コンビニで十分よコンビニで。時間がもったいないわ。
「で、二人とも、もう一度言っておくけど、そもそもこれはキョンがあ・た・し、に自ら着させてくれたコートなのよ。つまり、あたしに
主権があるわ」
「で、ですから! そっ! それだけじゃ、独り占めの理由にはにゃりません!」
 珍しくみくるちゃんがまた反論する。
 可愛いけど生意気だわ。上級生だけど。
「それは貴女の思いこみ。私が転んでも彼は同じ事をしてくれた。それどころか、私だったら彼は更に、体を心配して家まで負ぶってくれた筈。
そして彼の広くて心地よい背中のおおらかさについ眠ってしまった私を彼は合い鍵を使って部屋まで運び、そっと布団に眠らせてからおやすみの
優しく、そして長いキスをして静かに帰る。私は目覚めた時に独りの寂しさについ涙を零してしまうが、ふと枕元を見るとそこには指輪の入った
小さな箱がおいてあり、手紙には結…」
 ちょっと待ちなさいよ! むきー! 有希まで反論? て言うか人の発言を思い込みとか言ってあんたの後半文章も激しく思いこみじゃない!
 合い鍵なんて渡してないでしょ! そもそもここオートロックだし! 安っぽい携帯小説サイトにでも投稿する気? 語る気? キョンは
確かにみんなに優しいけど、あたしに他の人が越えられない壁十枚分は優しいのよ!
『>』が百個は並ぶわよ!
「とにかく! こんなさえない地味コートが手元にあってもどうにもならないでしょ? だからあたしが回収してあげようって言っているの!」
「なら、そんなさえないコートは貴女の手元にあるのは似合わない。地味な私にこそそれは似合う。朝比奈みくる、あなたにもこのコートは
体型的にも絶対に合わない。私の体型なら問題ない」
 あたしに口撃した後、返す刀でみくるちゃんにも口撃とはやるわね。しかも所々に自虐が入っている辺りが、少し反論しづらい雰囲気を作って
いるわ。流石本の虫。
「う~~」
 みくるちゃんはもう返す言葉が無いみたい。
 …違うわね。反論したら怖いのと可哀想なのがごちゃ混ぜって表情だわ。
 そんな押し倒したくなっちゃう涙目で有希を見ている。
 …多分、睨んでいるつもりなんだろうな。
「……」
「……」
「……」
 はぁ。
 結局、膠着状態に戻ってしまった。
 仕方ないわね。
 あたしの燃え尽きる程ヒートなハートには及ばないにしても、二人の気持ちも分かったわ。
「山分けしましょ」
「え?」
「……」
 みくるちゃんは頭に?を浮かべ、有希は珍しくぶん、と音が聞こえるくらいの勢いで頷いた。
「え? やまわ…えぇえっ!? いいんですか?」
 七秒掛かって理解したみたいね。
 いいのよ、あたしも名誉あるSOS団の超団長。
 広い心と隙あらば抜け駆けの精神で、謀反を企てようとした部員にも平等に権利をあげるわ。
 …あんまり否定すると、分が悪くなりそうだし。
「う、嬉しいんですけど…」
 踏ん切りはすぱっと付けた方がいいわよ。三方一両損! ちょっと違うかもしれないけど気分はそんなもんよ。
 あたしがここまで気持ちをあけっぴろげにしたんだから!
「有希! 切るものある?」

435:両袖、その少し後の話
07/10/15 19:46:41 B0vzsHcu
 有希は音も立てずに立ち上がり、台所へと向かった。
 台所でなんか小声がぶつぶつ聞こえた気もするけど、あの子も独り言なんて言うのかしら?
「…これ」
 で、有希が戻ってきて…ってあんた、それ、もしかしてメスじゃないの? なんでそんなもんがある訳!?
 有希が持ってきたのはカッターでもはさみでもなく、おそらくは手術用の本物のメス。
「…これが一番綺麗に切れる」
 それはそうだけど。
 有希は元の位置に座り、メスを目線の高さに構える。
 なんだか、果物とか切ってもくっつけたら元通りになりそうな輝き。
 まさかお金燃やした炎で鍛えたとか言わないわよね?
 有希は中央の不干渉地帯に鎮座していたキョンのコートを手に取り、真剣なまなざしでメスを構えた。
 あ…自分で言ってなんだけど、ちょっとコートが可哀想…。
「大丈夫。痛くはしない」
 そう言い、コートの肩口にメスを滑り込ませた。
 有希はバイオリンを弾く様な滑らかな動作でメスを滑らせる。
 驚いたのは、あたしはてっきり縫い目から布を切り分けるだけかと思っていたけど、有希はそうじゃなくて、縫い目の糸のみを切っていた事。
 数分後、コートはまるで縫製前の状態みたいに綺麗に分解されていた。
 それは左右の腕と胴体、裏地、コート特有の大きな襟の合計五つに分けられた。
「…縫ったら、元に戻りそうですぅ」
 みくるちゃんが感嘆の声を上げる。
 あたしは綺麗に切り分けられた、位にしか見えないけど、お裁縫が好きだから分かるんだろうな。
 …って、なんで五つなのよ! 三つでいいじゃないの!
「部分によりレアさが違う」
「! レアさ! 確かにそうですぅ」
 あ。
 そうだわ! そうよ! 流石有希だわ!
 部位によって残り香の量や質が違うのよ。
 単純に面積では割りきれない黄金比を見失うところだったわ!
 ダヴィンチも大あわてよ。
 ちなみに、あたし的見地から言えば、キョンの髪のにおい、首筋のにおいを最も濃く残している襟が最も貴重な部位。
 そこの香りをかげば、キョンのあったかい首筋にかじりついているのと同じ気持ちになれるし、ほんわりと残る髪の香りをかげば、この胸に
キョンの頭を抱きしめている気分になれるもの。
 魚で例えれば、本鰹のカマトロってところね。あたしの好みだけど。
 次になんと言っても裏地よ。
 胸、背中とキョンの胴体の香りを一心に受けた裏地は肌触りの良さを生かして抱きついてよしシーツにしてよしと大きさを生かした楽しみ方が
出来るわ。
 肉で例えるなら米沢牛のA-5かしら。ただ、個人的には霜降りの肉って油まみれで好きじゃないけど、価値的にね。
 次は両腕。
 言っておくけどこの順位はあくまでも順位を付けたらと言う意味であって、実際はどれも拮抗しているんだからね。
 で、この筒に手を入れれば、まるでキョンの腕に抱かれている様な気分になれるし、アームウォーマーとしてそのまま外にも着ていけ…ないか。
でも部屋でならOKね。
 たくましい両腕に抱かれて眠るなんて中々無い贅沢よ。
 次に裏地を抜いた胴体部分。
 裏地程の魅力は無いけど、キョンの体を一番多く包み込んできた部分であり、それはつまりキョンの体に包まれているのと同じって事だわ。
裏地よりもしっかりしている分抱擁されている気分が高まるし、外見的にも鏡に映して見ればまるでキョンのコートの中に入れて貰っている様な
気分になれるわ…。
 例えるなら…もういいわ、くどいし。
 じゅる。
 あたしじゃない涎の音がした。
 桃色のトリップ空間から戻ると、みくるちゃんと有希がお預け中のわんこみたいな表情で涎を垂らしていたわ。
 有希のこんな顔珍しいわねって、はっ!? あたし、もしかして声に出していた?
「キョンの髪のにおい…から丸聞こえでした」
「臨場感たっぷり」
「……」

436:両袖、その少し後の話
07/10/15 19:47:41 B0vzsHcu
 えーと、と、とりあえず、ローテーションって事でどうかしら?
「かわりばんこって事ですか?」
「悪くない」
「そうそう、いいでしょ? 両腕、裏地、胴体をかわりばんこにして、一番香りがいい襟はその都度じゃんけんで占有って事でどう?」
「が、頑張って勝ちます!」
「正々堂々と」
「よーし! それじゃー合意と見なしていいわね? せーの!」
「「「じゃーんけーん」」」
「あ」
 みくるちゃんの声であたしは拳を振り上げたまま仰け反ってこけそうになった。
「何? 今更ルール変更は無しよ!」
「い、いえ…さっき言おうとして忘れて…それに今更遅い事なんですけど…」
「だから何よ」
「…このコート、キョン君からいただいたんでしたっけ?」
「「あ」」
 珍しく有希とハモったわ。
「……」
「……」
「……」
「じ、事後承諾って事でいいんじゃない?」
「でで、でも…キョン君には…どうやってお詫びしたらいいんでしょう…?」
「べ、別に、キョンになんて、あ…あやまらなくても…でも…もしも怒ったらどうしよう…? お前なんか嫌いだっていわれたら…きらわ…き…
ひっく…うぅ…いや…うぐぅ…」
「お、落ち着いてください! キョン君は非道い事なんて言いません! えっと、えっと…」
「証拠隠滅」
「「え?」」
 …ぐす、今日は良くハモるわね。
「やってしまった事は仕方がない。ある高名な哲学者も言っている。『バレなければ嘘ではない』と」
 その言葉が哲学者かどうかはともかく、今となっては有希に全面賛成だわ。
 でも…どうしよう。
「彼には別のコートを買って渡す。このコートは汚れた等の理由を付けて渡さなければいい。それに、彼は許してくれる。間違いなく」
 …普段の無垢なイメージからは考えられない冷徹な表情と判断ね。これならモリアーティ教授も逃げ出すんじゃないかしら? 
 みくるちゃん? そのちゃうねん、みたいな手の動きはなに?
「で、でも…私、恥ずかしいんですけど…今、持ち合わせが…」
「う…あ、あたしだってそうよ。無くはないけど、コート買う程のは…」
「今回は任せて」
 有希がどこからか、きらりと輝くゴールドカードを取り出した。
 有希! あんた輝いているわ!
「その代わり、最初に襟を得るのは私」
 有希! あんたちゃっかりしているわ!
 その後、次回不思議探索のペア優先くじ引き工作や、帰りに二人きりになる割合、使ったストローの割り当てとか様々な取引の後、今回の
割り振りはあたしが裏地、みくるちゃんが両袖、有希が胴体と襟になった。
 香りが逃げない様にジップロックに入れて、さぁ、これからコートの買い出しだわ!
 そのあと解散して、心ゆくまでオナ…想いにふけるわよ!
「「すーはーすーはー」」
「…ってこら! みくるちゃん! こんなところでおっぱいいじりはじめないの! 有希も下着に手入れない!」
「……」
「もう、駄目です…」
 み、みくるちゃん! 有希!
 ああっ! みくるちゃん、そんな、女同士だからって、待って待って! セーター脱ぎ始めちゃだめ!
 有希は…ああっ! もう下着脱いでるじゃない!
 だ、駄目! だめよ、こんな、こんな、女の子同士だからって…その…男の子の…で、こんな風に乱れるなんて…。
「貴女の想いはその程度?」
 有希が呟いた。
 あたしは息をのむ。

437:両袖、その少し後の話
07/10/15 19:48:38 B0vzsHcu
 みくるちゃんも、普段あれだけ恥ずかしがり屋なのに今、目の前でとうとう胸をさらけ出している。
 女のあたしが見ても目が離せないそれを恥ずかしげもなく揉みしだいていた。
 それは…その布が…キョンのだから…す、好きな、人の…だから…。
 好きな人。
 好きな男の人。
 大好きな、キョン。
 だから、こんなにはしたない真似も出来る。
 心臓が早鐘の様になり始める。
 あたしは袋を手に取り、封を開ける。
 そこからはキョンの体の香りがふんわりと流れはじめ、あたしの鼻腔をキョンで埋め尽くす。
 体が震えた。
 キョン…。
 あたしは裏地に顔を埋め、思い切り深呼吸する。
 肺にキョンが流れ込む。
 ずくん、と下腹が、あたしの女がうずいた。
 あたしはまるで馬鹿な不良がするやつみたいに、袋に顔をつっこんで深呼吸を繰り返している。
 一呼吸する度に下腹が、子宮がうずく。
 下着が湿り始めたのが分かる。
 信じられない。
 香りを嗅いでいるだけなのに。
 みくるちゃんを見ると、既に上着は完全に脱ぎ、ズボンの方も足首まで下げて、体育座りみたいな姿勢でいた。
 脱ぎかけのその姿は何て言うか、とってもエロい。
 袖を胸の間に挟み、その先は顔に埋めて荒く呼吸。
 そしてもう一本の袖は自分の腕に通して、あそこをいじっていた。
 きっと、キョンの手でいじられているって思っているんだ…。
 そう思うと羨ましかった。
 袖もいいな…。
 みくるちゃんの行為がまるで自分の行為の様に思えてくる。
 あたしは裏地を手に取り、そのまま下着の中に手を入れる。
 うぁ…。
 裏地があたしの敏感な部分をこする。
 キョンの体に触れていた布が、あたしを弄んでいるよぉ…。
 どうしよう…すごく気持ちいい…。
 不意にみくるちゃんと目が合った。
 みくるちゃんは優しげに微笑む。
 こんな時までかわいいんだから…。
 有希を見ると、もっとすごい。
 既に有希は全裸。
 横臥してコートを抱き枕の様に手と足で抱きかかえ、襟をマスクの様に口に当てて荒い呼吸を繰り返している。
 あれは…抱かれているんだ。
 キョンが、有希を求めて獣の様に覆い被さり、唇を奪っている…。
 いいな…いいな…キョンからあんなに求められて…。
 あたしはうらやましさで目が潤むのが分かる。
 無意識に裏地を体に巻き付け、あたしは裏地の上から全身をまさぐる。
 そう、あたしも今、キョンに体中を触られている…。
 キョンの香りが体中に染み込む。
 手が、舌があたしの体をキョンに染める。
 普段絶対出さない様な声が出る。
 有希を見た時、やはり目が合った。
 有希の瞳も何となく微笑んでいた。
 ああ、そうだ。
 あたし達は今、お互いがお互いを観察しあって、同じ人に抱かれているんだ。
 お互いの痴態を見せ合い、見せつけながら、高めあっている。
 自分の愛情の深さを、興奮の度合いを。
 こんなに愛しているんだ、と。

438:両袖、その少し後の話
07/10/15 19:49:31 B0vzsHcu
 …あっ。
 いけない、もう、イキそう…。
 駄目、駄目。
 キョン…うしろなんて駄目…きたないよぉ…。
 あ…そんな…両方いっぺんになんて駄目…。
 許して…。怖い…。
 逆らえないから…だから、駄目…本当に、すべて許しちゃうから…。
 キスして…キスして…。
 …は…あっ…キョン…キョン…キョーンっ!
 …頭の中が真っ白になる瞬間、二人の声も重なった気がした。

「……」
「……」
「……」
 それから少しの後。
 あたし達は裸のまま、またキョンのコートを目の前に悩んでいた。
「どうしよう」
「まさかこんな…」
「うかつ」
 うん、うかつだった。
 あの後、三人が目を覚ましてから、互いに交換してもう1ラウンド、と言う事になったんだけど、いざ交換してみたら、なんとキョンの
香りがしなかった!
 そう、あたし達、あまりにも激しく乱れちゃったのか、キョンの香りをあたし達の香りで上書きしちゃったみたいなの。
 むぅ、こんな事で消えちゃうなんて着込みが足りないわよ、キョン、と責任転嫁はさておいて…。
「…どうします?」
「どうって、洗っても全部落ちるだけだし…」
「修復は不可能」
「……」
「……」
「……」
 三人の、大きなため息が重なった。
 …いい機会だから、いっそ本物でやる?
「えっ!?」
「…!」
 二人が流石に驚いた表情になる。
 でも、見逃さないわよ。
 あんた達の瞳がきらりと輝いたのを。
 とりあえず、これはこれでまだ使えるんだから各自持ち帰って、早くコート買いに行きましょう。
 次の計画は、その時に…ね。


おわり

439:名無しさん@ピンキー
07/10/15 19:50:12 B0vzsHcu
以上。
おそまつ。


440:名無しさん@ピンキー
07/10/15 20:26:32 okYfwATa
>>439
続き期待!

441:名無しさん@ピンキー
07/10/15 20:31:47 leuzCTVg
GJ!
本物期待wwww

442:名無しさん@ピンキー
07/10/15 20:34:13 dM0qm/NE
GJ!!
ちょwほんとにそこまで話を広げるかww
ついでにブラックジャックの小ネタに吹いたww

443:名無しさん@ピンキー
07/10/15 20:35:21 JtWCJuyq
確かにバカだなw

444:名無しさん@ピンキー
07/10/15 20:53:46 2U3svkhJ
いや、これマジすごいと思う。
さくさく読めると思ったら無駄な部分がほとんどなくて洗練されてるんだな。
ハルヒの一人称も掴めてるし、言い回しも面白い。
ちょっと尊敬した。

445:名無しさん@ピンキー
07/10/15 21:32:22 dB/Mw/DN
正直ハルヒがキモいwwwwww
次回作期待!

446:名無しさん@ピンキー
07/10/15 21:51:15 D6TbhEeX
実にけしからん!


続けてくださいおながいします

447:名無しさん@ピンキー
07/10/15 23:14:55 qBzUMiz9
もしかして変態佐々ハルの人?いや、違うかな・・・

448:名無しさん@ピンキー
07/10/15 23:17:58 pDwLU7OJ
ホームズネタとか色んな小ネタ混ざってるなぁ

449:名無しさん@ピンキー
07/10/15 23:27:15 VHi4baHj
俺達はもしかしてここで天才に出会ったのかもしれない…

450:名無しさん@ピンキー
07/10/15 23:48:54 VGcMdqkG
>>438
ホワイトデーのお返しに手作りの金太郎飴と指輪を挙げた話を書いた人かな?

451:名無しさん@ピンキー
07/10/15 23:54:33 9WoFE9bG
上手いしみんなすごいバカで楽しすぎるw

452:名無しさん@ピンキー
07/10/15 23:57:42 ztrEzKR+
>ひっく…うぅ…いや…うぐぅ…
>うぐぅ…

おいwwww

453:名無しさん@ピンキー
07/10/16 00:01:41 sWsbBTlD
「うぐぅ」
というと、本体は病院に居て自分の分身が主人公に向かって時速60㌔で走りまくるやつのことか!

454:名無しさん@ピンキー
07/10/16 00:05:13 jmp0shiG
そう、それ。原作準拠スレでアニメ繋がりの話するのもなんだと思ったけど、
ツッコみたい欲求を抑えきれなかったw

455:名無しさん@ピンキー
07/10/16 01:20:45 w5XUPIY5
 | ', i l  /  l   イ,、-‐ーー‐--、::::,、-‐ー-、l !::i;::::::::::';::::::::::::::::::l l:::::::::` ‐、
 | ', l イ//  l/ r'/ /-''"´ ̄ ̄ヽ `,-''"´``‐、 ヽl';::::::::::';ヽ/:::::ノ ノ::::::::::::';::::\
 |  ',!     l/ /::::/::::::/::::::::::l l:l      lヽ、二ニニニニニニ、-'´:';:::::::::::::';:::::::
ヽ!          /、:/:::::;イ::_,、-'´ノ:l し u    l:!';:l ';::::/:l', ';::::::l';::::::';:::::::::::::';::::::
   ___l___   /、`二//-‐''"´::l|::l       l! ';!u ';/:::l ', ';::::::l ';:::::i::::::l:::::::';:::::
   ノ l Jヽ   レ/::/ /:イ:\/l:l l::l   u   !. l / ';:::l ', ';:::::l. ';::::l::::::l::::::::i::::
    ノヌ     レ  /:l l:::::lヽ|l l:l し      !/  ';:l,、-‐、::::l ';::::l:::::l:::::::::l:::
    / ヽ、_      /::l l:::::l  l\l      ヽ-'  / ';!-ー 、';::ト、';::::l:::::l:::::::::l::
   ム ヒ       /::::l/l::::lニ‐-、``        / /;;;;;;;;;;;;;ヽ!   i::::l::::l:::::::::::l:
   月 ヒ      /i::/  l::l;;;;;ヽ \             i;;;;;;;;;;;;;;;;;;;l   l::l::::l:::::::::::::
   ノ l ヽヽノ    /:::l/:l /;;l:!;;;;;;;;;',               ';;;;;;;;;;;;;;;;;ノ    l:l:::l:::::::::::::
      ̄ ̄    /::::;ィ::l. l;;;;!;;;;;;;;;;;l            `‐--‐'´.....:::::::::!l:イ:::::::::::::
   __|_ ヽヽ   /イ//l::l ヽ、;;;;;;;ノ....      し   :::::::::::::::::::::ヽ /!リ l::::::::::::::
    | ー      /::::l';!::::::::::::::::::::  u               ', i ノ l:::::::::::::::
    | ヽー     /イ';::l          ’         し u.  i l  l:::::::::::::::
     |       /';:';:!,.イ   し    入               l l U l::::::::;':::::
     |      /,、-'´/ し      /  ヽ、   u    し ,' ,'  l::::/:;':::::::
     |        /l し     _,.ノ     `フ"       ,' ,'  ,ィ::/:;'::::::::
     |       /::::::ヽ       ヽ    /     し ,' ,' / l::/:;'::::::::::
     |      /::::::::::::`‐、 し      ',  /    u   ,、-'´  l,、-''"´ ̄
     |      ``‐-、._::::::::::` ‐ 、     ',/       , -'´`'´ ,-'´
     |      _,、-‐'"´';:::::::::イ:l';:::` ‐ 、._____,、-‐'"´  u /     し
   | | | |    \ l::/ l::::::/リ ';:::::lリ:::::l';:::l l:l:::::l\  u /
   | | | |      \/  l:::/ ノ  ';::/ ';::::l l::l リ l::l l::/ヽ /   し
   .・. ・ ・. ・     ヽ \ リ    レ  ヽ! り  レノ  `y

456:名無しさん@ピンキー
07/10/16 02:30:09 sxb0iokQ
そうか、次はキョンとカマドウマが入れ替わるのか

457:名無しさん@ピンキー
07/10/16 04:42:44 BFOUscbR
微妙にあずまんがも入ってるよなw
こういう小ネタが所々に散りばめられてると面白いな。

458:名無しさん@ピンキー
07/10/16 08:15:04 RgQ6zmAe
保管庫更新されていたな。
それよりも、演奏の続きまだかな?

459:名無しさん@ピンキー
07/10/16 14:27:46 sCNG0E35
>>453
放置すると20日過ぎに悲しそうに会いに来るあいつだな!

460:名無しさん@ピンキー
07/10/16 17:43:38 2CKYybSy
何こいつ…
きめぇ…

461:名無しさん@ピンキー
07/10/16 17:44:11 2CKYybSy
何こいつ…
きめぇ…

462:名無しさん@ピンキー
07/10/16 17:44:51 2CKYybSy
連レスしてた
佐々木みたいな男口調の女なんか好きじゃないし
自重するわ

463:名無しさん@ピンキー
07/10/16 17:45:41 2CKYybSy
うわ…
佐々木厨厨のこと言っただけでなに佐々木スキー扱いスマソ

464:名無しさん@ピンキー
07/10/16 18:04:19 ArryWQoC
保管庫を読み返していて未完ものに当たるとなんか悲しくなる

465:名無しさん@ピンキー
07/10/16 18:11:16 3H6K6ooR
inドラクエも未完だったよな
あと○天国も待ち続けてる俺がいる。

466:名無しさん@ピンキー
07/10/16 20:18:19 Vxqu/bLT
マダーを繰り返しとけば抹消みたいにいつか完結することを祈ってる。
まあいくらマダーを繰り返しても某ラノベみたいに完結しないのもあるんだけどねw

467:名無しさん@ピンキー
07/10/16 20:21:27 ezoBbdej
ハルヒが手のひらサイズに小型化した・・・・
っていうSSを前に読んだ気がしたのだが、あったか?

468:名無しさん@ピンキー
07/10/16 20:33:27 upEyWT9m
未完って言えば幼女化したハルヒもいた。
前戯が終わろうとしたところでイキ過ぎて目がうつろになったところで、だったけど。

469:名無しさん@ピンキー
07/10/16 20:56:56 pKqlw8fe
>>467
シャミと意識が入れ替わって猫になるのは合ったと思うが。

470:名無しさん@ピンキー
07/10/16 21:06:29 gLJelJTv
ポニーテール

471:名無しさん@ピンキー
07/10/16 21:07:17 7nacEZFn
変態佐々木の人の変態朝倉とてもよかった
このままでは朝倉がかわいそうなので
佐々木シリーズに出して欲しい
そしてキョンにやられまくって子供を産ませて欲しいです

472:名無しさん@ピンキー
07/10/16 21:27:08 RgQ6zmAe
>>468
>>465

473:名無しさん@ピンキー
07/10/16 22:07:34 /Pmhk31s
日常待ってるのは俺だけ?

474:名無しさん@ピンキー
07/10/16 22:09:12 OCHPsUq7
>>438
URLリンク(www.watch.impress.co.jp)

まさにこれだな

475:名無しさん@ピンキー
07/10/16 22:09:14 bcSNfPAR
>>473
いや、俺も待ってる

476:名無しさん@ピンキー
07/10/16 23:22:58 e+PmnsxZ
「日常」は保管庫読み終わったあと、

「未完かよっ」

って突っ込んでしまった

477:名無しさん@ピンキー
07/10/16 23:37:40 7VWEVKy5

そんな俺の返事を聞いて、それまでこちらを向いていた古泉が前の方に向き直った。
ミラー越しに見える、まるで獲物を目の前にした肉食獣のような顔。
猫なで声とはこういうのを言うのだろうと思う声で、古泉は言った。
「それでも、我々はあなたを見捨てたりはしません。何故なら、それが涼宮さんが望んだことだからです」

俺は古泉のその言葉で、ずっと心の奥底に封印していようとしていた、あの件をぶちまけることに決めた。
後がどうなろうと、知ったことか。

「古泉」
「なんでしょう?」
「お前は何故『涼宮』の側にいてやらない?」
「……ご存じの通り、僕たちはあくまでも涼宮さんのメンタル面の担当ですからね。残念ですが現実世界では
無力に等しいのです」
「そうじゃない。『涼宮』には「お前」という恋人が居るのに、なんで『涼宮』に振られた俺が、わざわざ
フォローしてやらなければいけないんだと聞いているんだ」

車の中に沈黙が流れた。

「……今、なんと?」
「だから……お前は『涼宮』の恋人なのに、なんで俺を引っ張り出すのか?と聞いたんだ」
「??仰る意味がよく分からないのですが、僕は涼宮さんとそう言ったお付き合いはしておりませんよ。
以前あなたに言ったように、僕は身の程というのを十分にわきまえているつもりですから」
「ならば聞くが、2次試験当日の朝に、俺が駅前で見たあの光景は幻だったのか?」

古泉の息を呑む声が聞こえた。ゆっくりとこちらを振り返る。

「……見ていたのですか?」
「ああ。それと、二人でスイートルームに向かっていくところもな」
脳内の奥底に封印していた、二度と思い出したくないあの光景が再び脳内にフラッシュバックされる。


478:名無しさん@ピンキー
07/10/16 23:42:26 7VWEVKy5
黒塗りハイヤーは、静かにサービスエリアを出た。
本当なら、小腹も空いてきたことだしレストランでメシでも食いたかったのだが、時間に余裕が無いと長門の
一言で缶コーヒーのみを購入し、俺たちは再び車上の人になった。

「……どこに向かっているんだ?このままだと県外に出ちまうぜ?」
「空港ですよ。もう一つのね」
空港?ああ、そう言えば県北に小さな地方空港があったな。
「ちょっと待て!もしかして俺が連れて行かれるのは……」
「ええ、涼宮さんの所です。チャーター便で飛んで貰います」
「待てよ、俺はまだ『涼宮』の所に行くとは言ってないぜ?」
「分かってますよ。でも僕の話を最後まで聞けば、あなたは必ず涼宮さんに会いたくなるはずです。必ずね」
自信たっぷりに断言する古泉。先ほどのショックから抜け出したようで、いつもの口調に戻っていた。
「では、順にご説明します。まず、あなたが引っ越されてからの涼宮さんは、しばらくの間は落ち着いていま
した。閉鎖空間も出現せず、特進クラスで勉強に精を出されていたんです。ところが、GWの遠征が終わった
あたりから少々異変が現れ始めました。実はあなたが転校したことで我々『機関』も、出動の機会が増える
のではないかという意見が大勢を占めていました。ところが新学期が始まってからGWまでの間に出現した
『閉鎖空間』は僅かに一回のみです。しかもかなり規模が小さく、すぐに消滅してしまったそうです。駆け
つけた仲間によると、そこには神人も現れませんでした」
「それはアレか、新学期初めて電話で『涼宮』と話した、あの時か」
「ええ、そうです。実は、それ以降あの2次試験の日まで『閉鎖空間』は出現していなかったんです」
「『閉鎖空間』の出現回数が減ったと言うことは良い事じゃないか」
アイツも大人になったと言うことなんだろうよ。一年近くも出現していないなんて新記録じゃないか?

「ところが、事はそう単純ではありません。過去、毎年涼宮さんが『閉鎖空間』を作り出す日があったのを
覚えていますか?」
「ああ」
7月8日、七夕だ。翌日になると偉く不機嫌な顔をしていたから、良く覚えてる。
もちろん、自分がやったことも含めてな。
未来遡行。校庭の落書き。3年間の時間凍結。異時間同位体。朝比奈さん(大)。そして、ジョン・スミス。
忘れられるわけがない。

479:名無しさん@ピンキー
07/10/16 23:43:54 RtD0vjOH
コピペ死ねよ

480:名無しさん@ピンキー
07/10/16 23:46:57 1pstEpPL
ちょっと質問なんだけど、
原作で花見のイベントってあったっけ?
なんか頭ん中がSSとごっちゃになってわかんなくなった

481:名無しさん@ピンキー
07/10/16 23:52:18 YOsNHb4x
分裂にて春休みに鶴屋さん邸で決行済み。

482:名無しさん@ピンキー
07/10/16 23:56:49 7VWEVKy5
すいません、477と478は誤爆です。
テラハズカシス……

483:名無しさん@ピンキー
07/10/16 23:57:20 /Pmhk31s
>>476
きっとこれから投下されるんだよ

そう言ってもう1年経ったかもだが…

484:名無しさん@ピンキー
07/10/16 23:57:27 RtD0vjOH
誤爆だったのか。申し訳ない。

485:名無しさん@ピンキー
07/10/17 00:43:58 Z1J15aXa
遅レスだが>>467
それハルヒじゃなくて『人形朝倉』じゃまいか?番号忘れたけど

486:名無しさん@ピンキー
07/10/17 00:44:16 zUoYEoEB
おいおいどこの誤爆だよ、非常に気になるぜ?

487:名無しさん@ピンキー
07/10/17 00:46:02 Pt/dPsvp
VIP

488:名無しさん@ピンキー
07/10/17 00:48:18 zUoYEoEB
あーそうかVIPか
あっちはチェック入れてなかったからな
これを気にちょっと見てみるか

489:名無しさん@ピンキー
07/10/17 01:01:14 vCbG5vGC
誤爆は仕方がない、だがなsageろよ。

490:名無しさん@ピンキー
07/10/17 02:31:06 +B74QBnH
>>480
キョンの消失で花見はやるけど…違うっぽいね

491:名無しさん@ピンキー
07/10/17 11:20:40 M93Yfzyr
花見ってありがちな気がするけど、SSでもあんま見ないな。
ありだちだから敬遠すんのかね。

492:名無しさん@ピンキー
07/10/17 12:37:17 vCbG5vGC
花見をし酒を呑んでエロに至電波を受信

493:名無しさん@ピンキー
07/10/17 15:24:45 ZHLB7Khr
>>492
SOS団で花見してから長門家に移動しみんなで酒飲んだ挙句に女性陣たちの前で
古泉とキョンがツイスターゲームで口付け寸前というカオスなら昔書いた記憶がw

494:名無しさん@ピンキー
07/10/17 16:29:23 0JDKTEY5
朴念仁の愛され方の続き。
馬鹿話なんで短く、短くと思ったのに長くなった。反省。
めどい人はスルーで。
居るかどうか分からない人も出てくるので、その辺はご容赦。


495:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:30:13 0JDKTEY5
朴念仁の嵌り方



「ぷぷ…」
 かっこーん。
「ぶひゃひゃひゃひゃあははははっっ!」
 清々しくも正直やかましい位大きな笑い声と、庭の鹿威しが涼しげな音を出したのは同時だった。
「あはっあはっあはははは! おお、お姉さんこんなに笑ったのは生まれて初めてにょろよーー! ぶははははは!」
 生涯初めてかはどうかはともかく、貴女はけっこう日頃からそれくらい笑っていますよ。
 俺は予想通りのリアクションに乾いた笑顔で返すしかなかった。
 朝比奈さんのクラスメイト、正当庶民派の俺には想像も出来ない対極的正統派名家の御曹司たる淑女、鶴屋さんは、歴史的文豪の面々が
座っている光景が似合うであろう重厚さを醸し出す二十畳の客間の真ん中で、その部屋には不釣り合いな大笑いを絶賛上演中だった。
 観客俺。
 最初こそきちんと座布団に座っていたのだが、俺の言葉と共にやがて体がのけぞり始め、震え、仕舞いには仰向けになって笑い声の音量を
跳ね上げた。
 なんか、笑い声が天上に反射して増幅されています。
 それと、着物で大の字になると足下が色々危険です。
 特に俺の目線的に。
「はーっはーっはーっ…。ちょ、ちょっとタンマ。は、肺から酸素が無くなったにょろ…」
 鶴屋さんは大の字のまま、目に涙を浮かべながら大きく息をしている。
「キョン君恐るべしにょろ~…」
 太陽の様なスマイルはそのまま。
 それからしばらくの間、鶴屋さんは先ほどの俺のセリフを思い出す度に突然笑っては深呼吸してを繰り返した。
「お嬢様」
 ふと、ふすまの向こうから落ち着いた女性の声がする。
 タイミングからして、恐らく笑い声が落ち着くのを待っていたのだろう。
 俺はその声から、上品な老婆の姿を想像した。
「にょろ?」
「お茶をお持ちしました」
「にょろー」
「承知しました。失礼します」
 たった今まであれだけの笑い声がしていたにも関わらず、襖の向こうの人は至って落ち着いた声でやりとりしている。
 きっと鶴屋さんは普段からこんな感じなんだろうな。
 て言うか、ここの家はにょろーで話が通じますか、にょろーで。いっぺん言ってみようか。
 俺はヒラ団員の悲しい性か、無意識にお茶を取りに行こうと立ち上がってしまった。
 その時、突然鶴屋さんは「めがっさー!」と叫びながら畳の上をころがり、そのまま俺の足を掴んだ。
 それも意味分かりません、とか言っている場合じゃない。
「うわ!」
 とっさにマトリクスの様な姿勢でバランスを取り、体制を建て直す。
 我ながら非常識なポーズだ。これならスタンドだって出せそうだぜ。
「うわ! じゃないにょろ。キョン君、何する気にょろ?」
 鶴屋さんがバネでも付いているかの様な勢いで立ち上がる。
「いや、お茶を取りに行こうとふが」
 鶴屋さんは俺の鼻を指でつまんでぐりぐりする。痛いです。
「どこの世界にお客様にお茶を取りに行かせる無礼もんが居るにょろ! あたしが取ってくるから、キョン君はどっしり座ってお茶を待って
ればいいにょろ!  不動如山!」
 そう言って鶴屋さんは俺の背中を押して元の位置に戻させる。
 よし、と鶴屋さんは襖を開け、お盆をもって戻ってくる。
 割と早足で歩いている様に見えるのに、ほとんど無音で歩くのがすごい。
 それに、下見てないのに、縁はちゃんと踏まずに歩くし。
「はい、粗茶だけどどうぞっ!」
 ここで出されるお茶の場合、どんなに粗茶と言われようとも玉露百パーセントとかそういうレベル以外の上物以外考えられませんけどね。
 ついでに、和菓子も添えられていた。
 うす桃色の、なんとも上品な色の餅菓子である。

496:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:31:00 0JDKTEY5
 俺は進められるままに茶碗を手に取る。
 見てみろこの茶碗。年代物の青磁で、向こう側から光がうっすら透ける薄さだ。そして花模様が上品に浮き彫りになっている。
 これ一腕で、俺の小遣いなんて年単位でふっとぶんだろうな。
「キョン君、茶碗の銘を嗜むのもいいけどさ、お茶は飲まないと味がわかんないよ」
 そうですね。俺はくい、と一口飲む。
 美味い。
 それは、俺みたいな奴の舌ですら、品質の違いをこれでもかと分からせる美味さだった。
 そして半畳分程の距離を置き俺の対面に座る鶴屋さんもお茶を飲む。
 ぷはー、と満足げな微笑みが可愛らしいと言うか何というか。
 ところでこの広い部屋、どうして机がないんですか? 本当ならベッドより大きな机が鎮座してそうな部屋ですけど。
「そんなもん置いておいたらキョン君の声が遠くになっちゃうにょろから、えいやっととっぱらっちゃったよ!」
 えいやっとは言葉の綾だろうが、部屋に通される直前、にょろーと言う声と共に重々しい物の落下音が聞こえたのは気のせいだよな?
 まぁ、それなら声が良く聞こえると言うところで、話の続きをしてもいいですか?
「ほい? 話…。はなし……ぶぷぷ…あ、あはは…おおお思いだしちゃったにょろーー! ぎゃはははははっっ! キョ、キョン君が!
 キョン君がそんな事言うなんて!しし信じられないっさ! はひゃひゃひゃひゃっ!」
 またまた超高級笑い袋になって転げ回る鶴屋さん。ですから転がると着物から見目麗しい太股がのぞいちゃいますよ。
「あひゃははははははっっ! お姉さん笑い死にしひょうにょよ~~!」
 噛んでるし。
 まぁ、そういう反応するよな、と俺はため息混じりに残りの茶を飲み干した。

 今日の午後の事だった。
 俺は至って健全な善意による行動の果てに修羅の道の鱗片を見た。
「い、妹とミヨキチを?」
「そうよ! 明日の探索はあたしに有希、みくるちゃんに古泉くん、そして妹ちゃんとミヨキチでやるわ!」
 俺は?
「あんたは居るに決まっているの!」
 だよな。
「しかし、ミヨキチは入院しているお母」「大丈夫です。私、出ます」
 ミヨキチは珍しく俺の言葉を遮って意見する、と言うか宣言する。
「いいのか?」
 ミヨキチは俺を見上げると、強い意志を含んだ瞳で力強く微笑んだ。
「これは、決して避けては通れない道なんです」
 命を賭して、と使命感に燃える無垢な瞳。
 …いや、何の目的もない市街徘徊なんだが。
 妹を見れば、もちろん、とばかりにミヨキチと同じく凛々しい瞳で頷いている。
 お前の凛々しい顔は珍しいぞ。
「いじわるー」
 一瞬で普段の顔に戻った。
 ハルヒや長門、朝比奈さんを見ても皆同じような感じだ。
 俺はため息と言う名の生返事しかできなかった。
「それじゃ今日は解散! キョン! 遅れたら今日の死刑と併せて打ち首獄門市中引き回しの上張りつけ水攻め島流しだからね!」
 俺は一体どんな極悪人だよ。
 仕方ない、と妹を連れ、ミヨキチを病院まで送り届けようとした時。
「ちょっと待った!」
 ハルヒが目をらんらんと輝かせて俺達を呼び止めた。
「妹ちゃんにミヨキチ、ちょっと明日の打ち合わせしない?」
 妙に優しい声と表情。
 俺はそれが逆に怖いね。
「いや、ハルヒ、それは…」
「いいよ、ハルにゃん」
「私も、構わないです」
 君たち、オオカミの群れに自ら飛び込んでも、ガブやメイの様に種族を超えた親友になれるとは決して思ってはいけないんだぞ!
「分かった、なら俺も」「キョンはいいのよ」
 あの、ハルヒさん? 明日の不思議探索の打ち合わせですよね?
 それなら当然俺も…。
「キョン…? これ以上…あたしを怒らせる気かしら?」

497:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:32:01 0JDKTEY5
 美しい笑顔。だが恐ろしさ以外を感じないのが不思議だ。
 あ。
 忘れていた。
 忘れたいと思ってました。
 ぶっちゃけ無かった事にしたいです。
 目を閉じて開いたら、やっぱりベッドの上だった。ああ、夢か。やれやれだ。なんて風になったらいいなぁ。先ほどまでの超修羅場。
 だが、意地でも現実と認識させんとばかりに、もう二人の鬼も目を光らせている。
 はっきり言います。
 お二人とも怖いです。
 だがそれにしたって、この我が儘全開の全能神に、バーダックも裸足で逃げ出す万能最強宇宙人、可愛いさでならきっと人を殺せる未来人と
いった超人の群に、ただの小学生二人を置いてけぼりってのはいいのか?
 俺は生まれたばかりの子猫を捨てなければならない無能な飼い主の瞳で二人を見る。
「お兄さん、丁度お互いに、色々…お話ししたい事もありますし」
「うん、だからキョンくんはさきにかえっていていいよ」
 色々、の意味がものすごく気になるが、これはもう女同士の問題の様だ。
「…無事に帰って来いよ?」
「やだなー、ハルにゃんたちとおはなしするだけだよー」
「そうですよ。ご心配なく」
 だが俺は見たぞ。
 ほんのわずか、口元が引きつっているのを俺は見逃さない。
 すまない、妹よ、ミヨキチよ。
 今度俺に出来る事があったら何でも言ってくれ。
 出来ればシモの事以外で。
「聞き分けが良くていい子だわ。それじゃキョン、あんたはさっさと帰りなさい」
「あ、ええと、キョン君、まぁ、ご心配なく」
「人権はそれなりに守る」
 朝比奈さんと長門も二人を悪くする気は無い様だ。無い様だが! 何となく言葉の端々が不安なんです!
「…分かった」
 だが、反論すればかえって二人に危機が及ぶ事になるのは明白。
 俺は一人、帰路につく事となった。

 …だが、このまま帰る事は出来なかった。明日、何が起きるのか想像が付かない。
 そして何よりもその原因は…。
 俺は、引き寄せられる様に鶴屋家へと足を動かしていた。
 暫くの後、俺は鶴屋家の門前に立っていた。
 いつ見ても本当にでかい。
 でかいだけじゃない。
 この門一つとっても重要文化財になりかねない重厚さをもっている。
 これは、成金と本当の金持ちの決定的な差だ。
 ウチとあんたの家、どっちが大きい? なんて厚顔無恥な事を平気で聞いてくる成金とは雲泥の差がある。
 この家には、歴史がある。
 …そこでふと、俺は冷静に考えた。
 こんな場違いな場所に俺が来ても、鶴屋さんは会ってくれるだろうか?
 もしかしたら、鶴屋さんが居たとしても使いの人とかに追い返されて終わり、なんて事にならないだろうか?
 そもそも俺は朝比奈さんの様な同級生ではなく、朝比奈さんを通じて知っているだけの一下級生だ。
 朝比奈さんなら顔パスかも知れないが…。
 身の程知らずだったか?
 そう思い、踵を返そうとしたその時。
「やっほー」
「うわ!」
 突然、門に隣接した通用門の小窓が開き、鶴屋さんが笑顔と共に顔を覗かせた。
 一瞬、小窓からはい出そうとする猫みたいで可愛いと思ったのは秘密にしよう。
「キョン君、何か御用かなっ?」
「あ、こ、こんにちは。用、と言うか…ちょっと聞いて欲しい事が…ご迷惑ならすぐ帰ります」
「だーれがそんな事言ったにょろか? ちょっと待ってね。鍵開けるから」

498:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:33:29 0JDKTEY5
 小窓が一反閉まり、門の向こうから元気な声が聞こえる。
「だからはやく解除するにょろ! 予定にない? あたしの客だってばさっ! 急な来客だから時間かかる? だったらブレーカー切れば
いいっさ! 動かなくなる? 手であけるっさ! 両の手両の足は動かすためにあるんだよっ!」
 一体、どんな警備なんだろう?
 それから約一分後、トラックだって入れそうな重厚な門がゆっくりと開き始めた。
「お待たせ! いやー、気の利かないセキュリティでごめんね!」
 鶴屋さんが満面の笑みで俺を迎えてくれた。
 普段着の鶴屋さんは清楚な着物姿だ。整った顔立ちには和服が実に似合う。
 開いた扉は想像以上に分厚く、門の後ろには重い扉を手で開いて疲れたのか、屈強な二人の男性が肩で息をしている。
「大丈夫ですか? 俺なら、通用門でもなんでも…」
「キョン君を通用門から通す様な真似しないにょろよ。ささ、どーぞどーぞ」
 差し出された手を見ると、すこし汚れている。
 もしかして、鶴屋さんも門を引っ張ったとか? 何とも律儀な人だ。
 俺は自宅の廊下なら何往復するか分からない距離の廊下を歩き、鶴屋さんの導きで客間に通される。
 少しして、先ほどの着物から着替えた鶴屋さんが入ってきた。
 先ほどの着物は橙色を基調とした大きな花柄を織り込んだものだったが、今目の前にいる鶴屋さんは朱を貴重とした落ち着いた小花柄の
着物だ。
 言うまでもなく、どちらも似合っている。
「さて、今日はどんな御用なのかな?」
 真っ直ぐに正座して俺を見る目は真剣そのもの。
 俺は訳もなく、どこか気恥ずかしさを覚えてしまう。
「…鶴屋さんにしか、言えない事なんです」
「ほうほう? それはそれは! では、おねーさんにいってみるにょろにょろ」
 鶴屋さんは興味津々心わくわくどきがむねむね全開の瞳を輝かせ、俺ににじり寄る。
「……」
「……」
「顔が近いです」
「にょ~」
 鶴屋さんはちぇ~っと言う顔で自分の座布団に座り直る。
「SOS団の、事なんです」
「みくるがまた何かそそうでもしたのかい?」
 それ、朝比奈さんが聞いたら泣きますよ?
「そうじゃなくて、古泉を除いた女性全員…併せて妹、そして妹の友達も含めた女性全員の事で、相談なんですよ」
「そりゃ何ともお色気たっぷりの相談にょろねぇ?」
「端から聞けばそうかもしれません。その彼女達から…俺が…」
「ふんふん」
「非常に…」
「ひじょーに?」
「ものすごく、過度に…好かれているんです」
「……」
「……」
 鶴屋さんは実に表情豊かに静止し、俺の言葉を考え、整理し、理解し、納得する。
 そして。
「……ぷ…ぷぷ……ふっ……ぶあっははははははーーーーーーっ!」
 そして、時は動き出す。
 かっこーん。
 鹿威しが鳴った。

「はーっ…はーっ…落ち着いたにょろ」
 そして、話は冒頭に戻る。
「……」
 俺は会話より遥かに長い笑い時間の間に逆に冷静になっていた。
 いや、これが正常だ、と。
「ありがとうございました」
「はい?」
 瞬間、太陽の様な笑顔が真顔になり、鶴屋さんは大きな瞳であれ? と言っている。

499:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:34:42 0JDKTEY5
「いえ、鶴屋さんに聞いて貰ったおかげで、ぐちゃぐちゃにこんがらがっていた馬鹿な思考がほどけました」
 俺は清々しい気持ちで言うが、逆に鶴屋さんの表情には陰が出始めた。
「え…ち、ちょっと待って! あたしはまだなんにも話してないよ? あ…もしかして機嫌悪くしちゃった? 怒った? 笑いすぎた?
 いやその、キョン君を馬鹿にしたんじゃないんだよ?」
「いえ、その笑いで十分です」
「ち、違うの! ま、待って待って! そんな皮肉お願いだから言わないで! 待って!」
 鶴屋さんにしては狼狽した表情。
 こんな表情もするんだな。
 俺はありがとうございます、と立ち上がりかける。
「だめーっ!」
 突然鶴屋さんが狐の様に飛び跳ね、俺の服の裾を掴む。
「わっ!」
 俺はその勢いに押され、そのまま仰向けにぶっ倒れる。
 そして、俺の動きをトレースしたかの様に鶴屋さんも時間をずらして俺の上に落下してきた。
「げほ!」
「にょふっ!」
 肺から空気が押し出され、一瞬視界が飛ぶ。
「…つ」
 ぼやけた視界が戻った時、そこには倒れた俺の腹の上辺りに顔を載せ、腕をきめている鶴屋さんが居る。
 端から見るとT字状になっている様だ。
 痛くも苦しくはないが、鶴屋さんはどうやら俺を押さえ込んでいるらしい。
 力を入れている様には見えないが、梃子か何かの応用なのか、ちょっと体が動かない。
 これも合気道か何かの技だろうか。
「…あの」
 俺はどこか諦めた様な気分で言う。
「笑いすぎはあやまるから! ごめんなさい! 相談に来てくれたのに無礼だった! まだあたしは解答も何もしてないよ!」
 対して、鶴屋さんは逆に先ほどまでの笑い声が嘘の様な真摯な表情。
 その瞳には真剣さと後悔、更には狼狽が滲んでいた。
 でも、それがますます俺の頭を冷ましていた。
 俺がやっぱり、一人相撲していただけなんだ、と。
「いや、だから俺のど阿呆なご都合妄想は鶴屋さんの爆笑で、やっぱり俺のご都合的勘違いだったのだと見事に証明されました」
「え?」
「そんな訳ないそんな訳ないと思ってはいたんですよ。最初は…。でも、だんだんハルヒや長門、朝比奈さんの行動や言動がどうしても俺を
誘っているようにしか思えなくなって…。しかも、身内である妹まで異常に過度なスキンシップを求めてくるようになって、果てはミヨキチ
までが同じ様に…。でも、それはやっぱり何かの間違いなんですよ。言いたくないけどそれは古泉にこそあっておかしくない事で、俺の様な
奴にハルヒ達の様な美人達が、万が一もなびく訳が無いんです」
 俺はごとりと畳の上に頭を降ろし、自嘲気味に口をゆがめる。
 深呼吸すると体から力が抜ける。
 体、そして心が楽になった。
 良かった。
 やはり、俺一人の思いこみだったんだよ…。
 俺がハルヒや長門、朝比奈さんの誘惑と思って必死に違う事を考えたり、誘惑に負けそうになるのを堪えていたのも全部独りよがりの妄想
だったのさ。
 妹だって、まだ考えが幼いからスキンシップの度が過ぎただけだ。今度、ちゃんと境界線を教えないとな。ミヨキチも妹の影響だろう。
一緒にそれとなく教えればあんな事もうしないだろう。
「キョン君」
 俺は目を開けた。
 いつの間にか、鶴屋さんが俺の胸の上に顔を載せている。
「何ですか?」
「だから、あたしは放置かい?」
 鶴屋さんはむつけた表情で、すらりとした指で俺の胸の上にのの字を書いている。
「ええと、俺の用は済んだし、鶴屋さんも先ほど見事に俺の馬鹿妄想を打ち砕いてくれましたから、もうこれ以上お邪魔は」「分かってない」
 真剣な瞳で鶴屋さんは呟いた。
「?」
「君は、本当に損な性格だね」
 諭す様な、悲しい様な声だった。

500:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:35:52 0JDKTEY5
「キョン君は、どうしてあたしの所に相談に来たのかな?」
「それは、鶴屋さんなら、絶対に俺には…」
 言いかけ、次の言葉が出ない。
 これも当然の事だ。
 鶴屋さんほどの人が、俺になんて絶対に…。
 だが、これを本人の前で言うのは、例えその通りでも。
「失礼にょろよ~」
 見事に俺の考えを読み取ったらしい。
 鶴屋さんは俺の鼻をつんつん、と指でつつきながら、いつも通りの明るくて、どこか悪戯っぽい笑顔に戻って言う。
「すいません…」
「二重の意味で失礼にょろよ。ぷんぷん」
 そう言うと、鶴屋さんは体制を変え、今度は俺に馬乗りになった。
「……」
 あの、鶴屋さん、今来ているのはお着物ですよね?
「これがディアンドルに見えるにょろ?」
 いえいえ、オーストリアの民族衣装には到底見えません…ではなく! そのつまり、馬乗りになるという事は当然足を開く訳で、着物で
足を開いて跨るという事はつまり開いた部分は多分下着であり…それが…。
 満面の笑みの鶴屋さんの顔から、うっかり俺は視線を腰に落としてしまった。
 そこには…薄紫のレースの下着が丸見え状態っ!
 紐だし!
 全体的に透けているし!
 真ん中に何か見えそうな! いや見えているようなっ!
 色々すごいセクシーだけど絶望的に着物には合わないですっっっ!
 と、とにかく理性がシス卿に取り込まれそうな、そんなヘブンな物体が、俺の腹の上に熱を帯びて鎮座していた。
 だめだ! これもきっと何かの間違い! 陰謀! 策略だ! 孔明の罠だ! て言うか俺の都合の良い妄想だ! 目覚めろ俺! 砕け散れ
馬鹿な妄想!
 いやむしろ俺が砕け散ってしまえ!
 ゴルディオンハンマーはどこだ!
「キョン君!」
 ラオコーンの如き苦悶の表情であった筈の俺を、鶴屋さんが強い口調で呼ぶ。
 はっと目を開けた俺の前に、静かだが、確かに怒った表情の鶴屋さんが居た。
「女の子はね、そりゃ人によるけど、概ね人を好きになるのに損得勘定なんてしないんだよ。キョン君はどうしてそんなに自分を殺すのかな?」
「それ…は…」
 真摯な瞳が心を打ちますが、正直下着のインパクトに打ち消されています。
「みくるも、ハルにゃんも、有希っこも…本気なんだよ。たまにしか顔を出さないあたしだって一発で分かるくらいにね。あのハルにゃん達が、
自分をさらけ出してあたしに悩みを打ち明けに来た時は胸が締め付けられそうだったよ」
「みんな、悩んで…?」
 明るく笑うハルヒ、真っ直ぐな瞳で俺を見詰める長門、子供の様に微笑む朝比奈さんの顔がよぎる。
 みんな、俺の事を…?
「ハルにゃんは、キョン君にわざと意地悪しているみたいに当たる事でキョン君の堪忍袋の緒が切れて、みんなが居なくなった後の部室で
呼び止められ、何って言おうとしたらいきなり机に体を押しつけられて、泣いていやがる自分を無視して、あんな事やこんな事をしてくれ
たら、それをネタに一生を約束させるのに、変に我慢強くてなかなか上手くいかないって泣いてたし」
 はい?
「有希っこも、そっち関係にはまったく無知だと思わせて無知故の大胆さを演じて、知らず知らずにキョン君を興奮させてしまい、気が付いた
時はすでに遅く、ぷっつんしてケダモノと化したキョン君に繋がったまま抜いて貰えず気絶するまでされちゃって、それをネタに一生一緒に
居られる様にしたいけど、胸の容量が少ないせいか作戦が不発ばかりって俯いちゃうし」
 …え?
「みくるも、コスプレ衣装を実はこっそり改造して丈を短くしたり、胸やおしりの部分の布を薄くしたりして、時々部室で二人きりになった
時にはお茶に怪しい薬を少しだけ忍ばせて、辛抱たまらん状態になったキョン君が襲われて、体中をめちゃくちゃにされたところをタイミング
良くみんなに見られたら、晴れて夫婦になれるのに、あたしドジだから上手くできないんですってぽろぽろ泣いちゃうんだよ」
 ……。
 一瞬、深い感慨に浸れるかと思ったが、何故か宇宙の彼方にその感情が吹き飛んだ。
「でも、あたしもそれを聞いている時、本当は切なくて、羨ましくて堪らないんだよ」
 貴女も、切なくなる前に彼女達の頭の方を心配してあげてください。
 て言うか羨ましがっているのはあくまでもその想いですよね? やりたいとか言わないですよね?
 とりあえず一瞬でも三人に覚えた胸の切なさを返して欲しい。
 で、そんな事俺に言っちゃっていいんですか?

501:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:37:19 0JDKTEY5
「キョン君が本気で気付いていなかったら言わなかったけど、気付いていない振りって言うんなら別っさ。あたしだって塩を送りっぱなしは
嫌にょろ」
 だからってそんな洗いざらい…。
「女はこういう時は、例え親友同士でも怖いにょろよ」
 ……。
「でも、でもね、あたしは、そんなみんなを心底愛おしいと思う。少し弾けた行動も、想いの裏返しなんだよ」
 裏返しどころかめくれかえってどこか異次元に吹っ飛んでる気がします。
「でも、その感情と同じくらい…あのね、君には言うよ。その時ね、彼女達を憎らしいとも思っちゃったんだ」
 鶴屋さん…。
「ええと、とにかく、分かったかい? 君は、そんなにまで好かれているんだよ」
 信じられない言葉だった。
「ハルヒ達は、その…色々と、すごい連中なんです。俺なんて、居るのがおこがましい位に…。そんな平凡な男が、どうしてそんな彼女達に
好かれている、なんて思えますか?」
「…真面目だね。馬鹿がつくくらい、真面目で…残酷だよ。女殺しってのは君の事だね」
 鶴屋さんは馬乗りのまま優しく微笑む。
 出来れば腰をゆっくりグラインドさせないでください。
「古泉君も悩む訳だね」
 キコエナイ! 全身全霊で今の一言は聞こえないっっっ!
「キョン君、キョン君は女の子を、例えば相手がお金持ちかどうかで選ぶ?」
「そんな事しません!」
「それと同じ」
「……」
「すごいと思っている人たちに頼られる、好かれるのは、君の方がすごいところがあるからなんだよ。勉強とかそういうのじゃなく、ね」
「…でも、俺はどうしたらいいのか分からないんです」
「成り行きに任せればいいんだよ。だって、あの子達はすごい連中なんでしょ? それなら、君も、周りの子達だって、悪い様になんか
しないもんさ」
 鶴屋さんは笑った。
 眩くて、そして暖かい微笑み。
 …ああ、この人もすごい。
 のどの奥に突き刺さっていた棘が、じわじわと溶けていく気がする。
 どう行動しようかとか、そう言うのは分からない。
 でも、その場その場で『動ける』勇気が持てた気がする。
「…ありがとうございます」
「うむ! アリストテレス曰く、素直な事はいい事にょろ!」
 絶対違う。
 鶴屋さんは馬乗りのまま腕を組んでえへん、とふんぞり返った。
 あの、そうするとますます股間が押しつけられる気が…。
 ヘソの上あたりがなんとなくじっとりと熱いんですけど。
「むふふふ、ところでキョン君?」
 打って変わって小悪魔の様な、可愛らしくも悪戯で邪悪な微笑み。
 鶴屋さんは獲物を狙って跳び上がった時の狐の様に、俺の両肩に手を置いて質問を始めた。
「もう一度聞くけど、どうして君はあたしにそう言う相談をしに来たのかな?」
「……」
 何かもう、俺の脳は再び警鐘を打ち鳴らしている。
 この人に、俺はたった今助けられた筈なのに、何故俺の脳はハルヒ達に対するものと同じ警鐘を鳴らし始めているのだろう?
「どうして、あたしは『違う』と思ったのかなぁ?」
「いえ、それは…」
「そりゃあ、SOS団の正式団員達に比べればあたしは出番が少ないよ。でもね、キョン君に対する気持ちの蓄積は決して負けていないのさっ!」
 正直、どうしよう?
「他の女の子の気持ちを代弁させる失礼、あたしの気持ちを分かってない失礼。この二つの失礼をとりあえず詫びてもらうにょろ~」
 どうやって? と言えなかった。
「んっ」
 鶴屋さんは俺の体の上にそのまま体全体を乗せながら、肩を掴んでいた手を素早く両頬に固定さてそのまま唇を重ねた。
 少しの間、時間が止まる。
 やがて、鶴屋さんは唇を嘗め回し始めた。
 そしてそのまま唇は肌から離さず、器用に頬やあご、首筋までも舐め始める。

502:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:39:22 0JDKTEY5
「おいしいにょろよ…」
 耳に甘い言葉が響く。
「んむ…」
 程なく鶴屋さんの唇が俺の唇に戻ってきた。
 そんな筈は無いのに、蜂蜜を舐めている様な甘みを感じる。
 鶴屋さんの長い髪がふわりと降りかかり、その滑らかさと柔らかな香りで意識が遠くなりそうになる。
 密壷に填っているような感じだ。
 重ねた唇は決して放さず、そしてまんべんなく位置を変えながら、鶴屋さんは味と感触を楽しんでいる様だった。
 感覚が鋭敏になっているのか、唇をついばむ音が妙に大きく聞こえる。
「ふ…んん…」
 鶴屋さんはもう、どう見ても夢中としか思えぬ恍惚の表情で俺の唇をついばみ続ける。
 いつもの太陽の様な笑みを携えた爽やかな表情とは打って変わり、その妖艶とすら言える表情に俺も意識が飛びかける。
「んう…ちゅ…」
 その時。
「お茶のお代わりをお持ちしました」
「…ぷあ…おいて…くちゅ…おいて…ちゅぱ…ちゅ…ちゅ…」
「失礼します」
 ちょっとまってっっ!
 俺は思わず飛び起きようとしたが、人一人の体重が上半身にかかっている上にそもそも顔が動かせない為どうにもならない。
 今お茶を持ってきた婆やさん(予想)! 聞こえてますよね?
 この声や音、あなた絶対に聞こえていますよね!?
 俺は鶴屋さんに目で訴えたが、鶴屋さんはそうかもね、と目で笑い、事も無げに行為に没頭し続けた。
 鶴屋さん、あなた普段どういう行動してますか? こういう事していても誰も気にしないんですか?
 あたしのやる事に文句は言わせないにょろー。
 瞳がそう言っていた。
 別の意味で目眩がする。
 やがてすこしずつ唇が舌で押し開けられ、更に甘いそれが俺の口の中にゆっくりと、確実に、口腔内すべてを舐め尽くそうと大胆に
進入してくる。
 両腕が俺の頭を抱え込み、離さないぞとの意思表示がこれでもかと伝わる。
 そして舌は舌で、歯茎、舌、頬の内壁と、自分でも舐めた事無いんじゃないかと思える所まで懇ろに舐め尽くされた。
「んぷ…」
 数分後。流石に酸素が欲しかったらしい。
 鶴屋さんが俺の唇から舌を離す。
「鶴屋さん」
「何?」
「キス、長すぎません? と言うかスキンシップが過激です」
 普通なら頭が真っ白になって何も考えられない所だが、何故か今の俺は落ち着いていた。
 鶴屋さんのおかげかね?
「ふっふっふっ。冷静で嬉しいよ。こういう事は先手必勝なのさっ! 学校じゃハルにゃん達と比べて圧倒的に逢える時間が少ないから、
こういう風に蛸が蛸壺に嵌った時に利子付きで甘い汁を吸っておかないとね! そして、その時こそ、普段の練習が実践でモノを言うんだよっ!
 こんな風にね」
 そうか。俺はずいぶんと立派な蛸壺に嵌っちまったらしい。て言うか練習ってナニをしてますかあなたは。
「では快く同意を得た事だし遠慮無く続きにょろー。はむ」
 快くも同意も何も許可した覚えはないが、俺は再び唇を塞がれた。
 そして鶴屋さんの手が頭から離れ、手探りで俺の手を掴むと背中に誘導しようとしている。
 抱いて、と言う事か。
 だが、そんな最中でも口を一切離そうとしないせいか、どうにもうまくいかない。
 これが、気付かせてくれた礼になるかは分からない。
 だが、応えるべきだろう。
 俺はその手を握り返し、そのまま放さずに腰のあたりをぐい、と掴んだ。
「! …ひょんふん…」
 唇をくっつけたままで鶴屋さんが呟く。
 その目は少し驚きの色を含んでいた。
 当然かも知れない。
 突如、背中に手を回して固定された状態になってしまったのだから。

503:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:41:39 0JDKTEY5
「これじゃ…縛られているみたいだよ…」
 だが、その声には恐怖どころか悦びが混じる。
 鶴屋さんの息はだんだん荒くなる。
 こういうの、好きですか?
「…女の子にそんな事言わせないでにょろ…。あ…そんな…は…んむ…」
 ならば少々強引にいかせてもらおう。
 今度は俺から鶴屋さんの唇を奪う。
 馬乗りで折り重なり、しかも後ろ手。
 とんでもなくはしたない格好で俺の上に乗っている鶴屋さんは、強引な行為になすがままで唇をぬらし続けた。
「あ…んむ…すごい…。あたし…今…キョン君に…犯されているみたい…」
 その声は上気し、瞳は潤んでいた。
 この状態では見えないが、おそらく上に乗っている鶴屋さんは尻を丸出しにしているだろう。
 その状況と鶴屋さんの言葉に、俺は思わず興奮する。
 握っていた鶴屋さんの手を離し、手が尻を掴んだ。
「ひあ…」
 柔らかで暖かい尻の感触が心地よかった。
 もう、このままどうなるのだろうと思った時。
「あん…あ…まって…これ以上は…許して…ぷ…あ…」
 その言葉に俺が手と唇を離すと、鶴屋さんはごとりと頭を胸の上に落とした。
 一体、どれほどの時間鶴屋さんを抱きしめていたのだろう。
 手を離すと、後ろ手になっていた鶴屋さんの手はのろのろと俺の頭を抱きかかえる。
「詫びを入れて貰うつもりが…詫びを入れちゃったにょろ…」
「鶴屋さん…俺…」
 その言葉をついばむ様なキスが止めた。
「これ以上は、正直残念だけど今はお預けだね。この先は流石にアンフェアになっちゃうし、このまま…全部奪われても、きっとみんなは
引いたりしないから」
 俺の自惚れではなく、心底残念そうな顔で鶴屋さんは言った。
 ああ、そうか。
 俺は思い出す。
 明日の探索、一体どうなるのだろう? と。
「でも…」
 鶴屋さんは俺の上でむくりと起きあがり、悪戯な顔で笑う。
「キョン君、おっぱいは好きかい?」
 すいません、正直大好きです。
「それじゃ、えいっ!」
 うおっ!
 鶴屋さんは着物の肩をぐい、と開き、肩口を露わにする。
 そしてそのまま着物をずらし…。
「ぽろりにょろ」
 目の前に、豊満な乳房が現れた。
 形が良く、つややかなそれは鶴屋さんのおでこの様に…げふんげふん。
 とにかく、目の毒どころか致死的な美しさだった。
「触っていいよ」
 鶴屋さんが俺に起きて、と促し、俺と鶴屋さんは座位の駅弁スタイルになった。
 眼前の胸もそうだが、より股間に密着する鶴屋さんの下着とその中身の感触が俺の息子を元気づける。
 俺は両の手で胸を触り、そっと揉んだ。
「あっ…」
 それは素の鶴屋さんの声。
 俺はゆっくりと胸を揉み、登頂の乳首をそっとつまむ。
「やっ! …え、えっ? あっ! あっ! そんな…うそ!? うそっ!?」
 鶴屋さんが仰け反ってもだえながら、何故か疑問符を浮かべている。
 ここで逃げられても嫌なので、腰を抱き寄せ固定。
 どうしたんですか?
「だ…だって、だって…あっあっ! おか、おかしいよ…」
 何が?
「ちがう…ちがうよ…だって、こんなに気持ちいいなんて…違うよ…やっ! あうっ! ダメ! ダメぇっ!」
 そう言われても止まりません。

504:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:43:00 0JDKTEY5
「やんっ! なん…なんでっ? ここまで気持ちいいなんて…想像と…ちが…ひっ! あっあっあっ!」
 鶴屋さんは驚きと恍惚を混ぜた表情で、痙攣する様に体を跳ねさせながら仰け反る。
 胸が弱いのを自分では知らなかった、と言うところか。
 珍しく取り乱している鶴屋さんを見ているとやっぱり少々いじめてみたくなる。
 俺は胸を揉んでいた片方の手を腰に回し、ぐい、と胸を顔の前に引き寄せる。
「ひっ!?」
 流石察しがいい。
「キョン君! やめてやめて! おねがい! ゆるして! ゆるして! ごめんなさい! ごめんなさい! ゆるしてっ!」
 鶴屋さんはやめてやめて、と本気で涙を流している。
 今日は色々初めての経験や見るものが多いな。
 色々技も持っている筈なのに錯乱しているのか、子供の様に腕を伸ばして体を離そうとしているだけだし。
 表情も動きも、普段のりりしさはかけらもない鶴屋さん。
 だがそれでも、いや、それはそれでとても魅力的だった。
「やん! やだ! ゆるしてゆるして! おねがい! やめてっ!」
 うん、それ無理。
 俺は誰も触れた事が無い乳房を揉むだけにとどめず、それをそっと口に含んだ。
「ひ…」
 鶴屋さんの全身が硬直した。
 舌で乳首をゆっくりと舐める。
 甘い。
 俺はころころと乳首をころがし、登頂をくりくりと細かく左右に揺する。
「…き…あ…」
 体ががくがくと震えた。
 俺はそのまま、乳首をやんわりと唇で噛む。
「~~~~!!!!!」
 次の瞬間、鶴屋さんは声にならない悲鳴をあげて思いっきり仰け反った。
 勢いで口からぶるん、と乳房が離れる。
 やっぱり歯で噛まなくて良かった。
 そして体ががくがくと痙攣し…鶴屋さんは
 仰け反った体制のまま、果てた。
 俺の股間を、なんだか暖かいもので濡らしながら。
 うん、やっぱり美人でもあれはそれなりに匂うんだな。
 で、えーと、どうしよう?
「……。しん…じられ…ない…」
 仰け反ったままの鶴屋さんを畳に降ろすと、人形の様に体を弛緩させたまま、寝言の様な呟きで鶴屋さんは言った。
「あたしが…こんな風に…」
 どこか焦点の合っていない瞳で鶴屋さんは呟いた。
 あの、すいません、やりすぎました。
 俺は乱れきった衣服をなんとか前だけでもと隠し、謝る。
「キョン君…」
 はい。
「君が…本当に怖くなったよ…」
 え?
「あたしを…ここまで…ここまで…なんて…」
 そう言い、自分の股間にそっと指を当てる。
 ぴちゃ、と下着から音がした。
「おまけに、お漏らしさせてくれちゃった…。ここまで…あたしを…めちゃくちゃにするなんて…」
 すいません、本当にすいません。
「…覚悟、してね」
 何をですか?
「色々だよ。そして、君だけじゃなくて…」
 鶴屋さんは天井を眺め、何故か不敵に微笑んだ。
「ちょっと待ってね」
 鶴屋さんは瞳を閉じ、大きな深呼吸を何回かする。だんだん、下がっていた眉がいつもの鶴屋眉になってきた。
「…さて、着替えないとね。キョン君、起こして」
 一分ほどして、鶴屋さんがいつもの声で言う。

505:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:44:05 0JDKTEY5
 俺は手を取り、鶴屋さんを座らせた。
「にょろー…」
 気怠げに鳴く鶴屋さん。
「かしこまりました」
 心臓が飛び出るかと思った。
 いや、多分何センチかは動いたと思う。
 婆やさん(仮名)居たの!?
 ずっと居たんですか!?
 全部聞いてたんですか!?
 不可思議言語のやりとりよりもその事実が俺を驚愕させる。
「ばっちゃに隠し事は不要にょろ」
 そう言う問題じゃないと思うんですが!
「戦国時代だって、親方様と側室の初夜は襖一枚隔てた向こうに何人も付き人が居る状態で行われたにょろよ」
 そうだけど! そうだけど!
 流石に慌てる俺によしよし、と優しくキスをする鶴屋さん。
「替えをお持ちしました。キョン様のは礼の一式で宜しいですか?」
「にょーろー」
「はい。では失礼します」
 この言語を解析できたら多分ロゼッタストーンの解析に次ぐ偉業だろうな、とか思っている内に鶴屋さんはのろのろと歩いて着物を二着
持って来た。
 一着は鶴屋さん、もう一着は俺、か。
「それじゃ、洗濯するから着替えてね。流石にその服のままは帰れないでしょ? 妹ちゃんなんか勘がいいから、絶対に問いつめられるよ」
 その通りです。ご厚意に甘えさせて貰います。
「あたしが先に着替えるから、ちょっと後ろ向いていてくれるかな? それとも着替えさせてくれる?」
 いえ、頭を冷やさせてください。
「ふっふー」
 なんですか? その出来るかな? みたいな表情は。
「まぁいいっさ。そんじゃお着替え開始にょろよー」
 俺は速やかに後ろを向く。
「終わったにょろよー」
 早っ!
 思わず振り向くと、先ほどの着物よりやや軽めな、浴衣みたいな作りの着物を着ている鶴屋さんが居た。
 涼しげな格好も似合っています。
 で、えーと、なんか、胸の開きが大きいですよ? それに、質は良さそうですが布地が薄いんですか? その…胸の先が…くっきりと…。
「うっふん」
 やめてください。頭冷やしている最中なんです。と言うか、そんな格好流石に家の人に見られていいんですか?
「この辺りはばっちゃ以外入って来ないから平気にょろ」
 …それってつまり、この辺り一角全て鶴屋さんの領域、って事ですか?
「んー、そんなところ。でも領域なんて言わないでよっ。部屋だよ部屋」
 相変わらずスケールが違うというか次元が違う。
「さて、キョン君こそ早く着替えないと、あたしのあれの匂いが染みついちゃうよ? 薔薇の香りには思えないからねぇ」
 そうでした。
 えーと、それじゃ鶴屋さん、後ろを…。
「しゅるっと」
 わぁ。
 鶴屋さん、突然俺のベルトを素早く抜きました。
「ちょいちょいっと」
 そしてシャツのボタンをぷちぷちと外し、あっさり上半身裸に剥かれちゃいました。
 いやーん。
「それー!」
 って鶴屋さん! ズボンを! 一気にっ!
「ぅわ」
 おもちゃを見つけた子供みたいな表情で、鶴屋さんが満面の笑みを描く。なんか瞳も輝いていませんか?
 ええと…なんと言うか…どうしよう。
「…見ちゃった」
 少し興奮気味の表情。頬がほんのり紅色で色っぽい。

506:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:47:22 0JDKTEY5
「…ちゅ」
 って! 鶴屋さん! ちょっと!
 そこは! そこは! オベリスクが発動しちゃうっ!
「えーと、ここ? ぺろ」
 俺のターンっ!
「え? …わっ! すご…別の生き物みたい…。えと…やっぱり、あそこで止めたら男の子はたいへんだよねぇ? …ところで、これって
普通の大きさ…なのかな? なんか、おっきい…」
 …たぶん平均と思いますよ。
「そうなの? 親父っち以外のは見た事なくて…」
 意外にウブ?
「失礼にょろー! これでも正真正銘バリバリ伝説な箱入り娘なんだからねっ! 運動会や学芸会以外じゃ男の子と手繋いだ事も無いんだよっ!」
 その割には行動が色々すごいんですけどっ!
「そのかわり、女の子に関しては知識も実技も豊富にょろ。それ繋がりでねっ」
 ……。
 なんだろう、一瞬朝比奈さんの泣き顔が頭に浮かんだぞ。
「だから…気持ちよくなかったら、ごめんね」
 そう言い、鶴屋さんはあーんと口を開け、俺のオベリスクをくわえ込んだ。
 ふんもっふ!
「…んっ! げほっ! げほっ!」
 喉の奥に入れすぎたのか鶴屋さんが激しくむせて顔を離す。
 大丈夫ですか? …もしかして、俺のが匂ったとか? すいませんっ!
「えほ…だ、大丈夫。初めてだから加減がわからなくて…。それに、変な匂いだけど…キョン君のだから…なんか、嫌じゃ…ないみたい」
 自分でも恥ずかしい事を言っていると分かっているのか、鶴屋さんの顔が真っ赤になる。
 いかん、その表情、俺のオベリスクにパワーが流れ込む。
「それじゃ、続きね」
 鶴屋さんは俺を寝かせると、股間に顔を埋める。
「えーと、本当はあたしもひっくり返った方がいいんだろうけど…ごめんね、今キョン君にあそこいじられたら、多分本当に気絶しちゃうか…
我慢が、もう…」
 謝らないでください。多分、それやられたら俺も本当に理性が吹っ飛びます。
 ありがとう。そう言って鶴屋さんは暖かい口腔に俺を納める。
 舌をまとわりつかせ、ゆっくりとゆっくりと動かすそれは、未知の快感となり俺の下半身を刺激していた。
 湿った音が耳に響き、それも興奮度を高める。
 何よりも、鶴屋さんという才色兼備な女性が俺の股間に顔を埋めて息子を加えているという非現実的な現実が何よりすごい。
「つ、鶴屋さん……!」
 俺は思わず鶴屋さんの頭を押さえていた。
 ちょっと驚いた表情だったが、いいよ、と目で合図してくれ、俺は逆らうことなく鶴屋さんの頭を自分でゆっくり上下させる。
「…っ!」
 程なく、俺は快感の絶頂に達し、鶴屋さんの口の中にそれを吐き出した。
「んむーっ!」
 流石に鶴屋さんが苦悶の表情を浮かべるが、自分でも腰をしっかり掴み、顔を離そうとはしない。
 押し寄せる快感の波が収まってきた頃、鶴屋さんは深くくわえ込んでいたそれをゆっくり、ずるずると放し、やがてぷるん、と唇から
それが外れた。
 口をつぐんだままの鶴屋さんはちょっと悩んでから、顔を持ち上げて薬を飲む時みたいに、口の中のそれを飲み込もうとして…。
「!!」
 大あわてで立ち上がり、部屋の隅のゴミ箱に顔をつっこんだ。
 大丈夫ですかっ!
「げほっ! げほっ!」
 俺は鶴屋さんの背中をさする。
「…けほ…大丈夫。胃の中のものを出しちゃった訳じゃないよ…」
 鶴屋さんは顔を上げ、涙ぐんだ瞳で健気に微笑んだ。
 本当に平気ですか? 気分は?
「んー…何て言うか、やっぱり、匂いがすごくて…ごめんね、飲めなかった。だんだん慣れるから、許してね」
 いやいや、許すも何も…て言うか無理に飲めなんて言いません。
 …だんだん?
「慣れるから」
 真摯な瞳が俺を見る。
 ……。

507:朴念仁の嵌り方
07/10/17 16:51:09 0JDKTEY5
「頑張って、って言って」
「頑張ってください」
「めがっさ! …ところで、キョン君はスッキリした?」
 そりゃもう。
「ふふ、あたしもなんだかとっても気分爽快だよ。それに、お互いに初めてをたくさんあげちゃったね。キスに、おフェラに、ペッティングに、
ごっくんは…未遂だけど、ちょっと飲んだからまぁよしとして、粗相までして、しかもキョン君にかけちゃったんだから、これはもう、相当な
アドバンテージをSOS団から奪ったねっ!」
 確かに。
 これを知られた時、俺は人生が終わるかも知れませんが。
「ふふふ」
 悪戯な微笑みがそれでも可愛らしくて、俺も頬をゆるめる。
 ところで、そろそろ帰ります。流石に時間も経ちました。
「んー、夕餉も一緒にと言いたいけど、あんまり独り占めじゃ悪いしね。そんじゃ、体吹いて、これに着替えてね」
 鶴屋さんは用意されていた衣装一式を俺に勧める。
 下着からジャケットまで一通りだ。
 あの、俺が着てきた服から明らかにランクが跳ね上がっています。それとなんでこんなにサイズぴったりですか?
「ふっ。鶴屋家の情報網を甘く見ると怖いにょろよ」
 色々怖いなぁ。
「んじゃ、脱いだ服はこっちで洗っておくっさ」
 恐縮です。
 それじゃ、今度この服もクリーニングしてから、俺の服を返してもらいに伺いますね。
「それはそのうちいずれいつの日か、ふと記憶の片隅でそれに気が付いたら気になったらひょっとして返そうかなって考える事があるかも
しれないと思うのは思想の自由にょろ。過去の事は、特に衣服関連の事はきれいさっぱり忘れるといいって今朝の新聞の占いに出ていたっさ~
にょろにょろにょろ…」
 鶴屋さんは漫画で見る催眠術師みたいな手つきでやたら文面の明確な呪文を唱える。
 …えーと、それじゃ、この服もそのうちって事で…。
「にょろ!」
 その後、着物の上にもう一枚羽織を着た鶴屋さんに連れられ、俺は鶴屋家の長い廊下を歩いている。
「今のところ、あたしが肉体的関係で一歩リードにょろね。ふふふ…内緒だけど」
 鶴屋さんは俺の腕につかまり、頬ずりしながら楽しそうに言う。
「先の見えないレースっていうのは、どうしてこうもどきどきするものなんだろうね…」
 最早言うのもアホらしいが、鶴屋さんもこの信じられない五つ巴に飛び込む気まんまん…と言うか実質飛び込んでいるな。
 そうすると六つ巴?
 ふーん、楽しそうだなぁ。
 …駄目だ。いくら第三者的視点でものを見ようとしても現実は今の鶴屋さんの様に俺の腕にのしかかってくる。
「キョン君。もう一度言うけど、君は充分すごいんだよ。人としてね」
 煽てられた人間はたいてい自滅しますよ。
「そうならないのがすごい所なのさっ!」
 自信ないなぁ。
 そんな俺を見て鶴屋さんはさも楽しそうに笑った。
 ついでにちょっと股間を撫で…あふん。
「…ふふ、もうすぐ…どきどきにょろね」
 何が!? 分かっているけど聞きますよ! 何が!?
 鶴屋さんは禁則事項です、と人差し指を口に当てて微笑んだ。
 その笑顔が美しくもどこか怖いのは、きっと規定事項です。


つづく

508:名無しさん@ピンキー
07/10/17 16:51:52 0JDKTEY5
以上。
おそまつ。
名称とか細かいとこ変だろうけど許してね。
>>447 >>450
どっちの人ともちゃうねん。

509:名無しさん@ピンキー
07/10/17 16:54:01 vCbG5vGC
乙!です。後は佐々木、橘、周防、森さんかな?クラスメイトの阪中

510:名無しさん@ピンキー
07/10/17 17:06:01 BkHle13j
非常にGJデス

511:名無しさん@ピンキー
07/10/17 17:20:12 BzuUHaBK
うわ…
佐々木厨厨のこと言っただけでなに佐々木スキー扱いしてるんだよ…
佐々木みたいな男口調の女なんか好きじゃないし

512:名無しさん@ピンキー
07/10/17 17:40:59 +Mo++E15
GJ!!
続き期待してます

513:名無しさん@ピンキー
07/10/17 17:41:33 +Mo++E15
専ブラなのにsage忘れた。すまん

514:名無しさん@ピンキー
07/10/17 17:45:16 HV0S7nQE
>>511
男口調ともまた違うと思うぞ。あのくどい言い回しが煩わしいだけだろ。俺は大好きだけどな!

515:名無しさん@ピンキー
07/10/17 18:31:19 GPua0Y0l
>>508 GJ!

516:名無しさん@ピンキー
07/10/17 22:11:49 iqy5rNAJ
>>508
色々吹いたw
GJ!

517:名無しさん@ピンキー
07/10/17 22:43:36 q3WpIy8Q
投下します。

キョン×みくるものですが、エロはありません。
たぶん37レスです。



518:敬具、来未ワリ人形より 1
07/10/17 22:44:56 q3WpIy8Q
「わぁ、これ可愛いなあ」
 これ見よがしに仰々しくショースタンドで展開されている目玉商品の一つを手に取り、朝比奈さんは感嘆の声を上げてそれに魅入っている。
 昭和基地辺りの寒さくらい厳しい家計を憂う俺は、その横でチラチラと値札を目で追う。財布の中身との緊急会議を急いで開く必要がありそうだ。
「……あ。やややっぱり、ちょっとわたしには似合わないかなぁ」
 きっと、値札に記された数字の羅列が目に入ったのだろう。
 オドオドと不審者の如く立ち振る舞いで商品を戻し、朝比奈さんはタタッと別の陳列什器へ向かう。嗅ぎ慣れた安物のシャンプーの香りを、置き土産に残していくのがまた憎い。
「朝比奈さん。これ気に入ったんなら、これにしましょう。たぶん、大丈夫ですから」
 俺が使う分の出費を色々と切り詰めれば、まあなんとかなりそうだしな。
 ロウソクの長さを計るまでもなく、寿命を削らんばかりに頑張ってくれた朝比奈さんには、これくらいのお返しは当然の必然ってもんさ。むしろこれでも安いくらいですよ。
「ええっ、そんな。あたしより絶対キョンくんの方が大変でしたよ」
 もうどっちが大変だったとか関係なく、とにかく今俺は猛烈に朝比奈さんにお返しがしたいんです。それこそ俺の身を売っても構わないくらいだ。
「ありがとう、キョンくん。気持ちはとっても嬉しい。でも、ダメ。ダメですからね。後のこと考えないと」
 店内の野郎客全員を一瞬で恋に落とせそうな笑顔を俺に向け、その笑顔のままの朝比奈さんに俺は軽くお叱りを受けた。なんだかM属性が芽生えてしまいそうだ。
 笑顔は別に減るもんではないが、これ以上他の男どもに見せていると何か減ってしまいそうな気がして、俺はすぐさま話題を変えて元の状態へと導く。ちょっと惜しい気もするが、俺はいつだってこの笑顔を拝見できるしな。
 そうして値段を第一に気に掛けつつも朝比奈さんお気に入りの靴を探して、久々の、本当に久々のショッピングらしいショッピングを俺たちは楽しんでいた。
「あ、えと……これ可愛い」
 わざわざ値札を確認してから「可愛い」と言う心遣いが、もう果てしなくたまりません。
「いいですね、試着してみましょうか」
 俺はニヤケそうになる頬を左手で制しながら、右手を上げて店員を呼ぶ。
 営業スマイルの奥に忙しさを垣間見せつつも、俺の声に反応を見せたお姉系店員がこちらへとやって来る。朝比奈さんが希望のサイズを告げると、在庫を確認すると言ってバックルームへと姿を消した。
「あ、キョンくん。今日のご飯どうします?」
 他の客が扉を開けた際に入り込む風が艶やかな栗色の髪を揺らし、今度はその揺れる髪が俺の平常心を揺らしてくる。十万本のエナメル質ミサイル。
 俺は懸命に迎撃を試みようと、晩飯のことだけを頭に浮かべることにした。
「そうですね。えーと」
 俺がメニューを考えあぐねていると、そのあいだに在庫を調べ上げた店員が戻ってきた。
 だが朝比奈さん指定のサイズはどうやら品切れらしく、ワンサイズ上の物を抱えて、どうですか、と試着を勧めてくる。
「……じゃあ、一度履いてみます」
 履き込みすぎて、その可憐な容姿には不釣合いな状態になっている靴を脱ぎ、朝比奈さんは真新しい靴へと足を運ぶ。私服に裸足って、なんかいいな。
「ふぇ、ちょっと大きいかも……。残念です」
 ガラスの靴を履きこなすには少しばかり幼い容姿だったシンデレラは、一瞬、顔を曇らせるが、
「あ、じゃあこれ。これも可愛い」
 年頃の女の子は何かと移り変わりが激しいようで、すぐさま笑顔を取り戻して次の候補を手に取る。まあ、朝比奈さんが履くのならなんだって可愛くなりますよ。
「あ、ピッタリ」


519:敬具、来未ワリ人形より 2
07/10/17 22:45:54 q3WpIy8Q
 店を出た俺と朝比奈さんは、特に行き先を決めるでもなく適当な方向へ歩き出した。
 予想よりリーズナブルに済ませることになった朝比奈さんへのプレゼント入りの紙袋を右手に持ち、さて次はどうしようかと目的地を決めかねていると、
「そういえばキョンくん、ご飯どうします?」
 ああ、さっき訊かれてそのままでしたね。えーと、そうですね。
「久し振りに、朝比奈さんが作ったサンドイッチが食べたいです」
 あの鶴屋山で食べて以来、一度も口にしていませんからね。
「ええっ、そんなのでいいの?」
 そんなのも何も、俺にとってはどんなフルコースよりもごちそうです。それにさっき、後のことを考えないと、って言ったのは朝比奈さんですからね。贅沢はいけません。
「ありがとう。そう言ってくれると作り甲斐があるなぁ。うん、贅沢はダメですね」
 そう自分を戒めて、頭をコツン、とやる朝比奈さん。
 その可愛らしい仕草に地球も興奮を隠しきれなかったのか、自身が立ち昇らせた熱気の分の空気を埋めるように、俺たちの足元に風を吹き付けてくる。
 スカートは膝下だが、それでも眩しい膝小僧を見え隠れさせるその風に俺は少しの嫉妬を覚えつつ、そんなガキな自分を心の中で嘲っていた。
 等間隔に植えられた、まだ育ちきっていない街路樹を俺がぼーっと数えていると、
「あ、いや、ちょっと、朝比奈さん」
「えへ。いいですよね」
 とか言って背伸びして腕を絡めておいでになった。幼顔の少女も、ちょっとした大人びた振る舞いで本当に大人っぽく見えてしまうから侮れない。年下に見えたシンデレラは、魔女の魔法の一振りで上級生へ。
 いっぽう俺はといえば、赤い顔を冷やす作業で精一杯で、なんだかいつもとは立場を逆転されてしまった感じだ。
 羞恥心と優越感が絶妙にブレンドされたような感情を湧き上がらせつつ、俺は周りの男どもから突き刺さる視線を左右へと受け流していた。このお方は俺のもんだぞ、と。
 そうして俺が見知らぬ人々と牽制し合っていると、加えて肩にもふわっとした感触が現れる。またもやシャンプーの香り。
 お世辞にも王子様とは程遠い俺に、シンデレラなんぞもったいないのは百も承知だが、それでも俺は離したくない。絡まる腕に力を入れ、ぐっと強く引き寄せる。それに答えて、朝比奈さんが頭を肩にコツンとやってくれるのがこそばゆい。
 半年前に蒔かれた苦労の種が、ようやく花開いた至高のひと時。
 そう、全ては半年前に。








520:敬具、来未ワリ人形より 3
07/10/17 22:46:40 q3WpIy8Q
 半年前。文芸部室。
 おぼろげな記憶の地引き網を引っ張らずとも、キュートな字体という海上保安の巡視船が、記憶の海から該当する人物をすぐさま引き揚げてくる。一瞬で誰なのかを推測できた。
 そもそもこういった呼び出し手段を選択している時点で、端から俺の先入観は全開でスタートアップしており、結果ある人物だと完全に決め付けていた。
 未来ではデジタル化が一周して逆にアナログに回帰しているのだろうか、手紙という古くからの習わし。うむ、音楽とかでも何かとアナログに執着する人がいたりするからな。あながちそうなのかもしれん。
 エコマークが好感度の上昇に拍車を掛ける可愛らしい便箋をポケットに忍ばせ、俺は放課後の部室で待ち呆けていた。
「あ、ごごめんなさい。待たせちゃいました?」
 痛んだ扉を労わるようにそっと開け、俺の前に姿を現したのは、ちょっとばかし予想とはズレた人物だった。いや、同一人物なんだから合ってるっちゃあ合ってるんだが。
「いえいえ、俺も今来たばかりですよ」
 脳内モニターに映し出していた人物像をズームアウトで小さく写し直すと、俺の眼前に現れた人物と一致する。
 そう、大きい方の朝比奈さんではなく、見慣れた俺の朝比奈さんだ。
「あの、またなんですけど、ちょっと付いて来て欲しいところがあって……」
 乾季を凌ぎきれなかった稲みたいに萎びた様子で、朝比奈さんは申し訳なさそうに俺に請う。
 茶っ葉の買出しか、はたまた未来絡みの付き添いなのか、どっちにしろ次世紀のヴィーナスにこんなお願いの仕方をされたんじゃあ、俺がイエス以外の回答を弾き出すわけがない。過去でも異空間でもお供いたしましょう。
「よかったぁ。うふ、ありがとう」
 いえいえ、こちらこそ毎日の眼福をありがとうございます。
 まあ、どちらかといえば二人きりで茶っ葉の買出しの方が色々と満たされる気もするが、未来のおつかいだって十分なもんさ。
 どこへ行こうとも、朝比奈さんの萎びた稲には俺が水を満たして差し上げたいね。
 俺が勝手に朝比奈水田に足を踏み込まんと長靴に履き替えようとしていると、俺の手に小さな手の感触が伝わってきた。眼福ならぬ触福とでも言うべきだろうか。この時点で、俺の方の水田は七割くらい水で満たされたようなもんだ。
「では、いきますね。目を閉じて……」
 言われるがままに瞼を下ろし、お世辞にも気持ちいいとは言えないあのハードな感覚に備える。
「じゃあ長門さん、ちょっと行って来ますね」
 ちなみに今まで全く触れていなかったが、長門も部屋の隅っこで活字漁りに精を出していることを伝えておこう。
「…………」
 目を瞑っているのでなんとも言えんが、なんとなく長門が今うなずいたような気がする。 
 長門に、いってきます、とテレパシーを送っている俺を尻目に、いよいよ浮遊感が身体を襲い始めた。
 そして次の瞬間。


 部室の扉がやかましく開いた気がした。


 しかしすぐに時間遡行に入ったため、それは気のせいだったのかもしれないと思い直し、しばし壮絶なバイキングにリンパ液を掻き回されていた。
「ふぇ……何か……」
 遡行中に聞こえたどことなく不安げな朝比奈さんの呟きも、きっと気のせいなんだろう。病は気から的な要素で、さっきの扉の音が心に妙なつっかえを作っているが故に聞こえた幻に違いない。
 あーもう、とにかく気持ち悪くてどうでも良くなってきた。いい加減慣れてきそうなもんだが、遊園地のコーヒーカップでさえ苦手な部類に入る俺には、ちときつい。



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