【涼宮ハルヒ】谷川流 the 53章【学校を出よう!】at EROPARO
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 53章【学校を出よう!】 - 暇つぶし2ch300:名無しさん@ピンキー
07/10/11 05:48:11 WaBcQCQS
>>289
壊れ朝倉Nice!

301:名無しさん@ピンキー
07/10/11 06:54:21 r3iE4rlN
Nice Asakura

302:名無しさん@ピンキー
07/10/11 10:29:42 /Y2XNTNw
>>264
GJ!

>1コマの授業内で30名のクラスメートを連続レイプして
ちょwwwクラス全員かよwww

303:名無しさん@ピンキー
07/10/11 10:38:58 bjVM+3lM
>1コマの授業内で30名のクラスメートを連続レイプして全員イき潰すなんて

アッー!w

304:名無しさん@ピンキー
07/10/11 18:47:21 1JFqSxSv
>あなたが256回目の(ry

だから、30人ぐらいは何とかなるんだろね
1人6回としても、残る76回は朝倉さんとですか・・・はげしーw

305:名無しさん@ピンキー
07/10/11 18:51:28 dA557TRP
女性徒以外も……

306:名無しさん@ピンキー
07/10/11 20:00:09 d/yyNM6p
その後古泉が6組に転入して来たそうな。

307:名無しさん@ピンキー
07/10/11 21:01:03 FStmgnkv
>>303
そこは特別編成された美少女クラスでの行状と考えれば(ry

308:名無しさん@ピンキー
07/10/11 21:10:45 swsu6HQn
>>307
つか、それしか考えられんだろ。
しかし、理性を眠らせてるわりには理性的だな。キョンは本能にまでキョンフィルターが実装されているのか。
新作も楽しみにさせてもらいますよ、>>264さん

309:名無しさん@ピンキー
07/10/11 21:15:04 x2qzQjF/
>>264
GJ!いつも思うが本当に上手い。
豊かな語彙に裏打ちされたエロ文章力はプロと比べても遜色ない気が。


310:名無しさん@ピンキー
07/10/11 22:57:02 swsu6HQn
非エロ投下します。
キョン語り訓練のための実験作。
分析的なお話なので苦手な方はスルーよろしく。

『ぬくもりのなかでおもうこと』

311:ぬくもりのなかでおもうこと
07/10/11 22:58:21 swsu6HQn
真夜中に目覚めて、寝直そうにもなかなか寝付けないという経験はないだろうか。
俺の場合、可能であれば脳細胞から抹消したい記憶を植え付けられた日を思い出さざるを得なくなり、
その度に拳銃を捜そうとする衝動に駆られたりしたのだが、今ではそれも過去のことと思えるように
なってきた。触れられたくはないがな。
まあ、そんなデタラメな非日常に遭遇しなくても、眠れなくなることはあるものらしい。

そんなやくたいもないことを考えながら、見慣れた、というほどではないが俺の感覚としてそこそこ
記憶に残る天井をぼんやりと見つめていた。
布団の暖かさを全身に、それとは別の、無機物には絶対に生み出せないぬくもりを左腕を中心とした
半身に感じ、おまけに心地よいそよ風を横顔に浴びながら、意識を手放せる奴がいたらみてみたいね。
今何時なのかは枕元にある目覚まし時計をみればすぐにわかるのだが、少しでも身じろぎすればそよ風の
主を起こしてしまいそうで、かろうじて視界に入る穏やかであろう寝顔を観賞することすらままならない。
室内は真っ暗なので、おそらくまだ夜は長いのだろう。どうしたものかね。

さて、この状況で眠れる奴がどうこうといったが、この状況に気付く前俺は少しは眠っていたはず
である。何せ、この体勢をとった覚えはないからな。記憶にある就寝前の行動については、悪いが
黙秘権を行使させてもらう。下手に言葉にすると、自分を抑えきれなくなりそうなんでね。
……いかん、思い出したら懸念が現実になりかねん。何とかして気を紛らわさねば。

そこでふと、柄にもないことを考えてごまかすことを思いついた。
いつかの幽霊騒動の時には実のない思索は古泉に任せておけばいいと決めこんではみたが、高校入学を
機に始まった俺の巻き込まれ人生を見返してみれば、気になることはいくらでも出てくる。
今日は……そうだな、俺にとって最初の非日常について考えてみるか。



312:ぬくもりのなかでおもうこと
07/10/11 22:59:05 swsu6HQn
情報統合思念体。情報だけの生命体なんていわれてもいまだに何のことだかさっぱりだが、宇宙人と
いうわかりやすい例えのおかげで、連中曰く有機生命体の、おまけに掛け値なしの凡人の俺とは根本的に
別物な存在だということだけは理解できる。少なくとも親玉連中は、いけ好かない奴らだってのもだ。
進化したいのか何だかしらんが、「進化の可能性」であるところのハルヒを煽るためだけに俺を殺そう
とした時に味わった恐怖は、一生もののトラウマだ。あれは急進派の、さらにいえば朝倉の独断だった
らしいが、殺される側にすれば意見の出所はどうでもいい。第一、俺が死んだらハルヒが行動を起こす
ってのは、どこの桶屋の発想だ。頭のいい奴は考え方が常軌を逸しているという話があるが、当時の
俺は、あいつが立ち上げた目的不明の団体の一員である以上の価値なんてなかった。今だってそうだ。
いちクラスメイトが突然殺されたって、あのころのあいつにはせいぜい「不思議なこと」のひとつで
片づけられたに違いない。いや、日常の範囲内だろうな。死ぬんなら価値のある死に方をしたい、
なんて殊勝な考え方ができるほど俺は達観しちゃいないし、恨みはあっても恩のない奴らのために
命を懸けるなんてマジでごめんだ。
朝比奈さんのためだったら、少しは考えてみてもいいかもしれないけどさ。万一、あの方が俺の死を
心から願うなんてことになったら、それを知っただけでショック死しちまうかもな。

朝比奈さんで思い出したが、親玉共は時間も空間も超越しているとかいってたな。一万五千四百九十八回も
同じ夏休みを過ごしたときだっけ。俺には最後の一回以外に正確な記憶なんざありはしないわけだが、
連中はその間の出来事を自分が造り出した何とかインターフェースを通じて全部知ってるわけか。
おとといの晩飯が思い出せないとかそんなことには無縁なんだろうが、何か引っかかるんだよな。
夏休みの宿題のことは連中だって把握してたはずだし、俺でさえ思いついた突破口に気づけねえなんて、
本当にあの状況についてどうでもいいって意見だったのかね。それにしちゃ、変化のない状況には
否定的らしいし、はっきりしない奴らだぜ、全く。
記憶を過去にもっていくことができれば、赤点レーダーをかいくぐるには便利そうだけどさ。
まあ、未来のことがわかったって面白くないどころか変に気を遣う羽目になるばかりだし、未来を
知ろうとしてお説教を受けるのは一回で十分なんだけどな。


313:ぬくもりのなかでおもうこと
07/10/11 22:59:41 swsu6HQn
それにしても、あいつらにとっての「進化」ってなんなんだろうな。俺からすれば連中は完膚無きまでに
俺達地球に済む生き物よりハイスペックだ。変な空間に人を閉じこめやがったり、どう考えても物理を
無視したことを笑顔を浮かべながらやってのけたり、金縛りに遭わせたり……くそ、また背筋が凍る
ようなことを思い出しちまった。まあ、それでも全能ではないことは確かなんだよな。
あの気味の悪い吹雪の中の竜宮城に放り込まれたとき、少なくとも奴らは別口の宇宙存在とやらに
アドバンテージをとられていたはずだ。あの時、ハルヒと古泉の知恵がなかったら、完全にお手上げ
だった。俺には逆立ちしてもあの計算式の意味がわからなかっただろうからな。あの時は自分の無力さ
加減に本気でいらだったが、SOS団の絆の強さが感じられたのはうれしかったぜ。
しかし、あの時古泉が気付いた最後のヒント、妙に直球だったな。あれがコンピ研との勝負の時のように
俺に理解できるように教えてくれてたんだったら、どうにかフォローしてやりたかったな。

それにハルヒ曰く「悪夢」の世界にも奴らはろくに介入ができなかった。おまけに「失望している」と
まで感じたそうじゃないか。いい気味だ。何でもできるような気になって、そういう奴に限っていざ
不測の事態になったらなんにもできねえんだ。はなっから自分が駄目だと決めこむのも芸がないが、
出来の良さにあぐらをかいてる奴は、いつか足許をすくわれるのが相場なんだよ。
まあ、そういう連中の進化なんて、俺からすりゃくだらないもんなのかもしらんし、第一俺にすれば
生き物らしさを示すものを「エラー」だの「バグ」だの抜かす奴らだ、興味を持ちたくもない。
……あの時のようなことを考えてみやがれ、絶対に容赦しねえからな。



314:ぬくもりのなかでおもうこと
07/10/11 23:00:23 swsu6HQn
そうやってとりとめもなく考えているうちに、頭が痛くなってきやがった。つくづく自分の出来の悪さを
思い知らされるね。我ながら愚かなことをしていたもんだ。おかげで、落ち着かせるべきところは落ち着
いたが、気分がえらく悪くなってしまった。
右手を何の気なしに額にやる。別に熱くも冷たくもないんだが、少し気を晴らしてみたかったのさ。
それがいけなかったと気付いたのは、例によってやった後なんだが。
「…………」
すまん、起こしちまったか。
「…………」
俺以外なら出会った頃と同じ、俺にはとてもそうとは思えなくなった闇色の瞳が、寝起きというのが信じ
られないくらいはっきりと眼前の存在を映し込む。
「何だか眠れなくてな、くだらないことを考えてたら頭痛がしただけだ。」
その瞳に宿る「心配」の色に、理由もなく強い罪悪感が襲ってきた。こいつの心の平穏を守りたいのに、
それを乱すのが他ならぬ俺である場合、どうすれば償えるんだろうね。
おそらく文殊が3人寄ったって出せやしない答えを捜していると。
「…………」
身体に感じるぬくもりが変わった。ずっと左半身だけに感じていたものが、今は全身を包んでくれている。
ちょっと待ってくれ。今まで俺が意図的に目を逸らそうとしていたところに真正面から飛び込まれたら、
こっちとしては混乱するほかないわけなんだが。
「だいじょうぶ」
抑揚のない、平坦で記憶に残りにくい声が耳から全身に染み渡ってくる。飢餓感が刺激されて、自分の
原始的な欲求がさっきまでの俺をあざ笑うかのように膨れ上がるのを自覚する。全然だいじょうぶじゃ
ないんだが。睡眠時間はきちんと確保しないと、ただでさえ朝に弱い俺は寝坊確実だぞ。
「あなたが望むようにすればいい」
そういわれて抵抗できるほど、凡人の理性が強靱にできてるはずもなく。
俺はその言葉に従って、互いの距離をゼロにする行為を始めるんだ。
この先はひとつ、禁則事項ということで。

315:310
07/10/11 23:02:24 swsu6HQn
以上です。

316:名無しさん@ピンキー
07/10/11 23:08:13 G/mcmXba
GJ

317:名無しさん@ピンキー
07/10/11 23:16:40 V80W6rhv
うおっ!!ちょっと間置いてた時に投下されてた
>>315
くど過ぎず、短すぎず、キョンの語りっぽさが出てるね
訓練となると…次は訓練の成果を見せてくれるってワケだな!
待ってます!GJでした

318:名無しさん@ピンキー
07/10/12 01:53:50 WWRot5BV
中身がないな。
ただ文章力には目を引かれるものがあった。
出し惜しみしてんじゃないかしら。独り占めにする気?

319:名無しさん@ピンキー
07/10/12 02:11:11 dlLKMkC4
>>318
もっと素直に褒めて求めなさいよw

320:名無しさん@ピンキー
07/10/12 03:15:34 wyAIaxrr
もっと改行があってもいいような気がする
でも好きな文章だGJ

321:名無しさん@ピンキー
07/10/12 07:01:00 rj3dxTDV
次は抜ける文章ヨロ

322:名無しさん@ピンキー
07/10/12 10:50:11 muutdWQe
BBS形式の場合、文字数で改行すると文字の大きさでズレてしまって逆に読みにくくなるから、区切りのいいとこで改行する方がいいかも。
1行に120文字入るから参考にして欲しい。

323:名無しさん@ピンキー
07/10/12 15:58:30 44OD3cdK
小ネタいきます。
馬鹿話。


324:両袖、胴体部分、裏地、襟はじゃんけん
07/10/12 15:59:05 44OD3cdK
 両袖、胴体部分、裏地、襟はじゃんけん



「今日も元気に不思議探索っ…なんだけど、最近急に寒くなってきたわね」
 まぁ、夏の暑さが異常なだけにその気持ちは分かる。
 秋の空もそれらしくなってきたとある週末。
 俺達は相も変わらず不思議探索という名の市内徘徊に精を出していた。
「昨日の夜はちょっと降ったみたいだからどうなるかと思ったけど、晴れて良かったわ。…ちょっと涼しいけど」
 俺は天気予報を見てきたのでコートを引っ張り出してきたが、ハルヒの奴は上こそ長袖だが下はミニスカートときた。
 カーディガンも着ていないから流石に寒いだろう。
 ちなみに長門はいつも通り。
 朝比奈さんは胸の部分だけ編み目が多そうなセーターを着てらっしゃる。
 あと古泉も服を着ているな。
「これは地球に向けて宇宙人が密かに謀略を企てているって事だわ! なんとかしないと! 寒いし!」
 何をだよ? とうとう妄想が地球規模になってきたぞ。てか最後の一言が主語だろお前。
「とりあえずあそこの喫茶店でお茶しながら考えましょ。キョン、あたしミルクティーとハニートースト」
 奢り確定。と言うかやっぱお前寒いんだろ。
「あの、いつもすいません」
「……」
「光栄ですね」
 うーん、君達もたまには遠慮というものを知ってくれ給え。
 喫茶店でハルヒはハニートーストに顔をほころばせ、珍しく無防備なほのぼの顔で幸せそうにしていた。やっぱり寒かった
だけだなこいつ。
「キョン君、私のモンブランちょっと食べてみてくれませんか? 量が多くて…」
 コーヒーだけだった俺に哀れみをかけてくれたのはやはり朝比奈さんである。
 このケーキ半分の為なら華厳の滝で水ごりしたっていいね。
「いいんですか?」
「はい、ぜひ」
 俺は殿様から褒美を貰う農民の気持ちでありがたくそれを頂く事とする。腐らなければ家宝にしたいね。
「あ、でも一口でいけそうですね…。それじゃ」
 そう言い、事もあろうに朝比奈さんは残りのケーキを、当然自分も口を付けたフォークに刺し…。
「はい、あーん」
 世界は見捨てたもんじゃないぜ!
 俺は人生二回分の幸せをここで使った気分で甘露を味わった。
「キョン! これあんまり美味しくないから食べなさい! あとあんた食べるの下手そうだから蜂蜜が落ちないように食べさせて
あげるわ! 仕方なく! 仕方なくよ!」
 そう言ってハルヒはさっきまで美味しいと言っていたトーストを俺の口に押し込む。
 待て待て待て! せっかくのモンブランの後味が…。
 嗚呼、もう蜂蜜の味しかしないし…。
 そして綺麗に食わせると言った筈が口の周りを蜂蜜でべたべたにされ、その後更に長門のパフェをやはり俺の手を使わずに食わされる
事になる。
 だが、ポッキーを口にくわえて食べさせようとされたときは流石に驚いたぞ。
 流石に二人の視線と古泉の凍り付いたスマイルが痛々しくて辞退させてもらったが。
 …喫茶店ってこんなに疲れる場所だったか?

 その後、体も温まった、と言うか空気が色々ヒートアップした俺達は、頭を冷やす為に公園の方へ足を運ぶ。
 紅葉が目に優しく、舞い散る落ち葉はパステル調で石畳の遊歩道を染めていた。
「落ち葉が舞い散る遊歩道って素敵ですよね」
 朝比奈さんが何となく俺に近づきつつ、ロマンティックな事をおっしゃった。
 Exactlyでございます!
 もう一回言うぞ。
 Exactlyでございます!
「うふふ、こういう時、映画の恋人同士だと腕を組んで…」
 心なしか潤んだ瞳の女神朝比奈みくる(属性ロリ顔巨乳・ドジメイドLv.99・俺マグネタイト消費量最大)はつつ、と俺の横に並び、
何かを求めるように指を泳がせ、グッピーが水草をついばむ様に俺の指をつんつんとつつきながら、俺の瞳を見詰める。

325:両袖、胴体部分、裏地、襟はじゃんけん
07/10/12 15:59:53 44OD3cdK
 あー、天下の往来で人を押し倒すと罪になるんだっけ? でも同意の上ならいいかな?
 乾いた砂で出来ている理性の門がみくるビームで木っ端微塵に崩されようとしていたその時、俺と朝比奈さんは背中から、地獄の
業火が蝋燭の炎に思える灼熱の視線と、液体ヘリウムがいい湯加減に思える絶対零度を超えた冷気の視線を背中に突き刺された。
 と言うか突き抜けた。
 朝比奈さんは別の意味で涙目になり、血の気を引かせて俺からつつ、と離れる。
 それでも最後まで目を離さないのが健気だ。
「なにおしてゐるのョばかきょン」
 言葉遣いが変になっていますよハルヒさん。
「五月蠅い! あんたがみくるちゃんに変な色目使っていたから助けてあげただけよ! この晴天の変態男!」
 晴天の霹靂ね。
「しょ、しょんなことないで…す…」
 決死の覚悟でフォローしようとした朝比奈さんだが、長門の一睨みでいよいよ縮こまり、声も出せなくなってしまう。
 あーあ、泣いてる泣いてる。
 長門、あんまりいじめちゃ駄目だ。
 そしてさも当然のように長門が先ほどの朝比奈さんのポジションに流れ込んできた。
 しかもあっさりと俺の腕に自分の手を回して。
「ふえ…」
 ずるい、と言う心の叫びが聞こえたが、もう一つの怒声にそれもかき消される。
「キっっっっ…キキキキョンっっっっ!あんたっ! 今度は有希にまで迫ろうっての! この節操無しの極楽鳥っ!」
 お前の目は体のどこに付いているのか、そしてその網膜には何が写っているのか、一度科学的に検査させてくれ。NASA呼ぶから。
「有希! キョンになんかイヤイヤくっつく必要無いのよ! どこの女に手を出すか分からない節操なしなんだから! 汚れるから
離れなさい!」
 ハルヒは顔を真っ赤にしながら、俺を指さして怒りに打ち震えていた。
 なんか指が折れそうなくらい反っているぞ。
 長門は、そんなハルヒをちらりと見て、まるっきり冷静に言った。
「だから、この人がそんな事をしないように私がずっとこうして見張ればいい。全て任せて。それなら、あなたは何もしなくていい」
 しかも腕に頭をこつん、と寄りかからせる。
 今の俺達、端からの見た目はもう、さっき朝比奈さんが言った映画に出てくるアレだよアレ。
「な、な、な…」
 うーん、ハルヒの背中からなんか非常に嫌な気が沸き上がっている様な気がするなぁ。
 その後ろでは古泉が蒼白というか真っ白になってエクトプラズムを沸き上がらせている。
 古泉、それ、切れたら死ぬぞ。
「こここ、このエロキョ」
 不条理で不名誉な事を言いつつのしのしと迫ってきたハルヒが、突然こけた。
「きゃあっ!」
 どうやら落ち葉の下に水たまりがあり、そこを踏んでしまったという事になる。
 ハルヒはそのまま豪快に尻餅をついた。
 ばちゃ、と音がする。
「ひっ!」
 ハルヒが短い悲鳴を上げた。
「あ」
 俺も思わず声を出す。
「す、涼宮さん?」
 朝比奈さんも分かった様だ。
 水たまりに足を滑らせ、そしてこけた。
 それはつまり…。
「つ…冷たい…」
 ハルヒは尻の痛さと冷たさに、思わず涙目で呟いた。
 怒りがそのまま情けなさになったのか、今にも泣き出しそうな顔になっている。
「立てるか?」
「う、うん」
 俺は手を差し伸べてハルヒを立たせる。
 突然の事に動転しているのかずいぶんと素直なハルヒ。
「…濡れた」
 ハルヒは顔を赤くしてスカートの後ろを押さえていた。

326:両袖、胴体部分、裏地、襟はじゃんけん
07/10/12 16:00:45 44OD3cdK
「気持ち悪い…。どうしよう…」
 濡れた下着の感触がどうにも気持ち悪いらしい。
「ど、どうしましょうか? このあたりにランジェリー屋さんは…」
「うう…そこまで穿いていくの嫌…」
 更にだだっこモードだ。
「で、でも、こんなところで…」
 やれやれ。
 俺はコートを脱ぎ、ハルヒの肩にそれをかけた。
 突然の事にハルヒがえ? と呆けた顔をする。珍しい顔だな。
「とりあえずそのままにしていろ」
 俺はコートのボタンを止め、プールで首から被るタオルみたいにする。
「これならコートで見えないから、そこの木の陰にでも行けばなんとか出来るだろ? 後はそのコートそのまま着てていいから、
店に行って替えを買ってこい」
「あ、うん…」
 ハルヒにしてはずいぶん素直に頷く。
「……」
 が、中々向こうに行こうとせず、顔をコートに埋めて深呼吸している。
「これが…キョンの…」
 ん? なんだ?
「な、なんでもない!」
 ハルヒは赤い顔をしながら、慌てて木の向こうに行った。
 細い木なので大して隠れていないし、コートで隠れて見えないとはいえやっている事はアレなので、マナーとして向こうを向いておく。
「……」
 遅い。
 流石に遅い。
 俺はそっと向こうを見ると、ハルヒは木の向こう側で立ちつくしている様だ。
 なんかすごい勢いですーはーすーはーと鼻息が聞こえるのは気のせいか?
 朝比奈さんと長門と見ると、何故か羨望のまなざしでハルヒを見ていた。
 朝比奈さん?
「え? あ! あ、あの…呼んできますね?」
 朝比奈さんがそう言って木の向こうのハルヒに声をかけると、ハルヒもハルヒで何故か素っ頓狂な声を出して飛び上がる。
 何やってんだ?
 それからようやくあいつはこっちに戻り、店に行く事になった。
「んじゃ今日は解散だな」
「あの、キョン…」
「ん? ああ、コートは今度でいいぞ」
「そ、そう? ありがと…」
 だぶだぶの袖を顔に寄せ、未だに赤い顔のハルヒは、珍しく申し訳なさそうな顔で礼を言った。
「それじゃ、あたし店に…」
「私もお付き合いします」
「え? 別に…」
「一緒に行く」
「ゆ、有希? きゃ!」
 二人はがっちりと両の腕、と言うかコートの袖を掴み、連行する様な形でハルヒを連れて行ってしまう。
「ちょ、ちょっと! そんなに腕強くつかまないで…! か、顔くっつけ…い、痛い痛い! 二人とも、腕噛んでない? 噛んでない?」
「……」
 俺は、2つの鼻息を耳に残しつつその場を後にした。
 …多分、あのコートは戻ってこない気がする。
 それは予感、と言うか確信。
 そしてそれは次の日、コートを汚してしまったから弁償する、と女性陣三人から渡される新品のコートで証明されるのであった。
 JUNMENかよ。俺のコート確か丸井だぞ?
 で、汚れててもいいから返せと言ってみたら、全員蜘蛛の子を散らす様にその場から消えてしまった。

 なんか知らないが、やれやれだぜ。
 さらば、俺のコートよ。
 そしてようこそ、新品のコートよ。
 願わくば、末永く…。

おわり

327:名無しさん@ピンキー
07/10/12 16:01:17 44OD3cdK
以上。
おそまつ。


328:名無しさん@ピンキー
07/10/12 16:19:36 rj3dxTDV
コートは三つにバラバラにされたのか…
乙!

329:名無しさん@ピンキー
07/10/12 17:06:21 EaZX/WEu
古泉のポジションにいても、純粋に羨ましいとは思えなくなるな
ここまでくるとwwwww

330:名無しさん@ピンキー
07/10/12 17:26:01 w0VTjTYQ
乙!
一つだけ。Exactllyなw
Lは2つにしてくれw
話の内容はよかった

331:名無しさん@ピンキー
07/10/12 17:39:24 Vxuaj5iP
>>古泉も服をきてるな。
にちょっと吹いた。ちょっとだけだからねッ!

332:名無しさん@ピンキー
07/10/12 17:52:57 PjWq8U7h
古泉が空気と化しているwww

333:名無しさん@ピンキー
07/10/12 18:04:18 qLFuSUkd
こういう系統のネタは大好きだw

334:名無しさん@ピンキー
07/10/12 19:00:56 j4MJLlkA
>>327 職場でお茶噴いたじゃねーか GJ!!
古泉の扱いの軽さに全俺号泣w
それに3人娘は匂いフェチ確定なのか!
実は裏地が一番需要高いんじゃね?ww

335:名無しさん@ピンキー
07/10/12 19:11:59 68dVSgF/
タイトルだけ見て朝倉さんの解体ショーネタかと思った

336:名無しさん@ピンキー
07/10/12 19:36:33 JPfzwd6l
>>330
exactlyで合ってるぞ。Lは1つだった。
俺もLが1つか2つかで迷って辞書引いたよ
受験生だってのに…orz

>>327
匂いネタ好きだわwみっくるんるんが積極的なSSは久々な希ガス
GJ

337:名無しさん@ピンキー
07/10/12 19:59:23 6y8cOL5j
というかexactlyはルビが「その通りでございます」じゃなかったか

338:名無しさん@ピンキー
07/10/12 20:02:02 68dVSgF/
      /  , -''"´     \
  / /  /  ,. ‐'''""~´ ̄ ̄\
 V /   /  /             }
  ∨ /  / ,,.. -一ァ',二二二{
   V  ,..,/ ,.ィ彳 f==<r'二二二{、    | ̄ ̄              __|__ |
   ∨| ヘ`<=''~   弋ッ-ミ'''テ~ナ/    |ー― \/ ´ ̄| 「 ̄`  |   | \/
    〉'| | ト、   i{   ,..`二/ =|/''′     |__ /\ 匚]__ !__,  |_ |  __/
   //ヽヽぅ   ヽ     {   =|
   //匚 ̄]〕       丶,-‐ ,>      ( そ の と お り で ご ざ い ま す )
  /´r┐|__,|ト、       、____`7´
__人..二.」'   l>、    ヽ`,二/
     ´"''ー-�A_\  ∠三ノ
―-、__        ``ヾニ='′
     `ヽ      /、
       |‐- ...__   /ヽ\_
         \    ̄   `ヽ \


339:名無しさん@ピンキー
07/10/12 20:34:39 UI/gg/bq
こらwwwwww

340:名無しさん@ピンキー
07/10/12 20:49:20 Wji8OkJw
ネタもよく、料理もよかった
後は色々と言い回しを確認していただければ

341:名無しさん@ピンキー
07/10/12 22:47:21 3PNs4bwJ
>>337
キョンのレベルに合わせたらあんなもんでないんか?

342:名無しさん@ピンキー
07/10/12 22:55:37 +gSObPWF
>>341
確かに、そうかもね。
キョンはたとえ話や慣用句を間違えて用いることが多いんだよな。
原作最新作でも、女性二人をさして「ツーペア」、神もどき二人とのつきあいの密度について
「技あり有効2本で一本勝ち」という表現があるし。
らしさを出そうとするとハードルが高い。それを使いこなせる作者さんには感服するぞ、純粋に。

343:名無しさん@ピンキー
07/10/12 23:06:34 rj3dxTDV
ダービー乙!

344:名無しさん@ピンキー
07/10/12 23:38:55 aLqZXQJp
>>342
つーかそれキョンのキャラ設定じゃなくて谷川が素で教養ないだけっすから
それが味なんだけど

345:名無しさん@ピンキー
07/10/13 07:27:47 ZX+zjpNA
M i k u r u n r u n (禁則事項でございます)

346:名無しさん@ピンキー
07/10/13 10:34:05 bGmLJNUA
H u n m m o f f u (カマドウマでございます)

347:名無しさん@ピンキー
07/10/13 10:54:16 NS1Q5yVC
>>327
かなりいまさらだけど、
外伝的にでもそれぞれのコートの破片の使われ方をちょっとみてみたいなw

348:名無しさん@ピンキー
07/10/13 11:05:09 J0gW2Vx6
Maggare (超能力者でございます)

349:名無しさん@ピンキー
07/10/13 11:08:25 5gX8RTYZ
>>347
三人のオナニーか?(;´Д`)ハァハァ

350:名無しさん@ピンキー
07/10/13 11:37:13 gcUML/4P
レザーソーでコートを三つに解体。
Nice coat.

351:名無しさん@ピンキー
07/10/13 11:45:33 OrizQBAu
中で何も穿いてませんよ

352:名無しさん@ピンキー
07/10/13 13:16:38 N/ZdZYGg
三人ともノーパンなのか

353:名無しさん@ピンキー
07/10/13 15:11:03 NS1Q5yVC
三人とも長門の家に集合、(部分的な)コートのみ着用で状態でキョンを呼びつけるとか?

354:名無しさん@ピンキー
07/10/13 15:15:50 NS1Q5yVC
・・・ってかそしたら誰かが隠さなきゃいけないところが隠せないのか。

長門もみくるも小柄だから3人一緒にノーパンでコートにくるまってるほうが現実的かぁ

355:名無しさん@ピンキー
07/10/13 15:30:58 6l6bmM/R
実はそんなに小さくもなかったような

356:名無しさん@ピンキー
07/10/13 15:33:57 Gw6lvl2W
どういうプレイだよw

>>344
まあ、キャラ付けのためにわざと間違えさせてるって事はないだろうしなw

357:名無しさん@ピンキー
07/10/13 15:49:27 mnluTPDF
キョン「ワザと誤用するのがコツだ」

358:名無しさん@ピンキー
07/10/13 15:50:36 NS1Q5yVC
>>356
くんかくんかしながらキョンをまってるうちに興奮してきて訳がわからなく・・・
いつの間にか絡み合ってる3人をキョンが目撃してしまい、
「俺も混ぜろ~!」ってプレイ?w

・・・キャラが違いすぎるな;


むしろ、3人とも興奮してるけどハルヒだけ暴走して、長門に協力させてみくるに襲い掛かってるところにキョンが到着。
とめるつもりがキョンも興奮しちゃってさらに訳がわからなく・・・

朝目が覚めたら、部屋中べとべとだったとかか?w

359:名無しさん@ピンキー
07/10/13 16:04:05 Gw6lvl2W
>>358
どこから突っ込むべきか迷うけど、とりあえず一つ。

それ、あんまりコート関係なくね?

360:名無しさん@ピンキー
07/10/13 16:08:42 5gX8RTYZ
さあ、それを文章にするんだ

361:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:10:22 G4o82bWy
M e g a s s a (にょろ)

362:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:13:09 mDk4afpW

「キョン。僕はね、常に冷静でありたいのさ。そうでなければ、周囲の事象を上手く判断することができない。どうにも僕には情緒的な感情が欠落しているらしくてね、専ら経験則や理屈に頼る傾向があるし、それを由としている。
デカルトの方法序説には共感する部分が多いよ。僕は科学者ではないけれど、自分の目で見たものを情緒に頼って処理をしたいとは思わない。おそらく真であろうということを突き止めてから物事を進めたい」

 朝から降り続いた雨はまだ空から小さな粒となって降っていた。霧のようにしとしとと空気を濡らし、空を灰色一色に染め上げている。
 昼過ぎの暗い校舎は静かで、蛍光灯の明かりだけが廊下を照らしていた。その中で、佐々木の柔らかい声だけが廊下に響く。

「僕自身が人間である以上、知覚をこの曖昧な器官である体に頼らなければいけないのは明白だろう。しかし、この体で感じるものだけが世界のすべてではない。知覚できないからといって存在を否定するだなんて何千年前の科学だよ。
けどね、例えば小さな原子、いやウィルスや単細胞程度であっても僕の持つこの目ではうまく見ることができない。だがその存在を顕微鏡などで観察することはできる」

 授業が終わり、俺と佐々木は日直の仕事を終えてこれから帰宅するところだった。
 二学期の中間テストも終わり、ほんの少しだけのんびりした気分になれる。まぁそんな中、隣を歩いている佐々木がいつものように語り始めたわけだが。

「でも顕微鏡で覗いた世界がまた真実かどうかはわからない。そこに見えた映像は僕にも見える形状に変換されたものだからだ。画角も狭すぎる。そして、人には知覚できない様々なものがこういった変換によって情報としてもたらされる。
よくテレビなどで使われるサーモグラフィーもそうだ。視覚的に物体の温度を把握できるよう、あれもまた通常の知覚、この場合は視覚で捉えられるように変換したものだから」

 あまりの眠気に思わず欠伸が出た。饒舌に任せて言葉を連ねる佐々木は、機嫌よさそうに手をひらひらとさせながら話している。
 俺は重たい鞄を背負いなおして廊下を歩く。
 一階の職員室から出て、廊下を歩き、下駄箱へ向かった。中庭に通じる扉が開け放たれていて、そこから入ってきた雨が廊下を濡らしている。

「象徴化されたものを真実の姿だと思って接するのはあまりに愚かだと思わないか? その変換する作業は人に知覚できないものを知覚可能にするため必要だから仕方ないにしても、それが決して真の姿では……きゃあっ!!」

 佐々木が派手に転んだ。
 濡れた廊下に足を進めた途端、その足が前に滑り、尻餅をつくようにして腰から落ちやがった。


363:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:13:40 mDk4afpW
「お、おい大丈夫か?」
 今のコケ方はちょっと痛そうだ。まったく予測してなかったみたいだしな。
「……いたた」
 苦痛に顔をしかめ、腰に手をやっている。俺は助け起こそうと手を出して、そこで制止した。

 ちょうど、佐々木が膝を立てて両足を広げているもんだから、スカートの中が丸見えだった。
 腿の間に見えた白いパンツに、廊下に溜まっていた水が染み込んでいく。まるでお漏らしでもしたみたいだ。
 白地に水が染みていくものだから、吸い付いた肌の色がパンツの上に滲んでいく。

「なっ?!」
 慌てて佐々木がスカートでパンツを隠した。その顔に焦りのようなものが見えたのは間違いない。
「あっ、いや、違うぞ。たまたま見えちまっただけだからな」
「……ああ、わかってる……。ただ、その、あれだ。見えたことは言わないで欲しかった」

 しかし、白か。うん。いいもの見せてもらった。案外シンプルなもの履いてるんだな。
 まぁ色っぽいレースの下着つけててもそれはそれでビックリだが。

 そうやってぼんやり考え事をしていたが、佐々木が起き上がってくる気配がない。
 どうやら一人で立てないらしい。俺は佐々木の手を取って、その体を引き起こしてやった。
「……すまない」
 佐々木は腰を手の甲で叩き、痛みが治まるのを待っている。

「大丈夫か?」
「ああ、たいしたことはない」
 今のはかなり痛いと思うんだがな。俺もああいう転び方をしたことがあるからわかる。
「腰打ったんだろ? 保健室行こうぜ」
「別にそこまでしなくてもいいだろう……」
 佐々木は顔を赤くして、ぷいと横を向いた。
「それにお前、今のでケツ濡れただろ。スカートも濡れてるぞ。着替えたほうがいいって」
「う……ああ」
「負ぶってやろうか?」
「いや、遠慮しておこう。自分で歩ける」
 本当かよ。
 佐々木は歩こうとしているようだったが、どうも尻が痛いらしく立ちすくんだままだった。


364:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:14:11 mDk4afpW

「ほら、掴まれよ」
 俺は佐々木の手を取って自分の肩に回した。これでいくらかは歩きやすくなるはずだ。

「そ、そこまでしてもらわなくたっていい。自分で歩けるさ。保健室なんてすぐそこだろう」
「いいから、掴まっとけ」
 肩に佐々木の体重をわずかに感じながら、ゆっくりと歩き始める。佐々木もなんだかんだ言って、歩くのが辛そうだ。だというのに、俺に体重を預けることをよしとしないのか、少し離れて歩こうとしていた。
 こういう時くらい人の好意に甘えたっていいだろうに。いちいち難儀なヤツだな。

「……すまない。みっともないところを見せてしまった」
 ぽつりと佐々木がそう呟く。割と恥ずかしかったらしい。気持ちはわからんでもない。
「ま、まぁあれだ。パンツ見たことは忘れるから」
 びくりと佐々木の体が一度震えた。
「……それはまぁ、仕方ない。別に君に非があることじゃないし。僕が言いたかったのは転んでしまうのがみっともなく、情けないということだ」

 パンツじゃなかったのか。
「気にすんなよ。誰だって転ぶ時は転ぶさ」
「すまない……。ああ、本当にみっともない。なんてことだ」
 どうやら佐々木は滑ったことを気にしているらしい。別に周りの目があるところで転んだわけでもないだろうに。
 どうせ俺しか見てなかったはずだから、そこまで深く気に病むことじゃない。

365:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:15:09 mDk4afpW
「それにしても、意外とかわいい悲鳴だったな。喋ってる最中だったけど、舌は噛まなかったんだよな?」
 佐々木の体がびくっと震えて、さらに俺と距離を取ろうとする。
 んなことしたら歩けないだろうと、俺は佐々木の腰に手を回して抱き寄せるようにして距離を詰めさせた。
「し、仕方ないだろう。咄嗟のことだったんだ。ああ、僕だって突然ああいうことが起これば多少なりとも動揺をするよ。それは僕が未熟だったからだ。ああ、未熟だったからこそあんなみっともない声を出してしまったわけだけどね。
なに、もう金輪際ああいうことが無いよう僕は注意を払って生活するよ。例え転ぼうが車に跳ねられようが情けなくみっともない悲鳴を上げたりしないくらいにね」

 早口で一気にそうまくしたてる佐々木。
「いや、そこまでせんでもいいだろ。別に悲鳴あげるくらい普通だし」
「そういう問題じゃない。僕は常に冷静でいたい。だからあの程度のことでいちいち悲鳴を上げるような愚かな自分のことが許せないのさ」
「そうやってムキになってる時点で冷静じゃないと思うんだが」
「ッ?!」
「まぁそんだけ喋れれば舌は噛まなかったみたいだな。よかった」
「う、ううなんてことだ。僕としたことが」

 保健室の前まで来ると、その扉を開いた。病院と同じ、どこか無機質な匂いが鼻をつく。
 入学して以来、2,3回しか来たことが無いもんだから、どうも入るのに緊張してしまう。
 部屋を見渡すと、誰もいないようだった。
「すいませーん。誰かいますか?」
 声をかけても返事がない。奥にはカーテンで仕切られたベッドが二床あったはず。
 カーテンで仕切られてるから人がいるかどうかはわからない。

366:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:15:41 mDk4afpW

「とりあえず佐々木、座っとけ」
 俺は置いてあった丸椅子を引き寄せて、そこに佐々木を座らせた。
 持っていた鞄を、足元に放っておく。

 奥のベッドを見てみたが、誰もいないようだった。だったら鍵くらい閉めとけよと思わないでもないが、何か急な用事で出かけているのかもしれない。
 しかし困った。保健室のおばちゃんがいないと、佐々木を診てもらうことができない。

「どうする佐々木? 先生いないみたいだけど」
「だから、たいしたことはないと言っているだろう。わざわざ治療を受けるほどじゃない」
「そうか。まぁどっちにしても着替にゃならんだろ。今日は体育あったし、体操服持ってんだろ?」
「ああ……」
「そりゃよかった。でもパンツの換えは無いんだよな?」
「んなっ?!」
「でもまぁ長ズボンがあれば大丈夫か」

 とりあえず、佐々木に着替えてもらって、それから保健室の先生が戻ってくるのを待とう。
 電気も点けっぱなしだったし、そのうち戻ってくるはずだ。

「……情けない」
「佐々木、じゃあ俺外出てるから着替えろよ」
「なんてみっともないところを……」
 椅子に座りうなだれてぶつぶつと何かを呟いている。
「おい聞いてんのか?」
「え? ああ、着替えればいいんだろ。わかってるさ。ああ、君には本当に世話になりっぱなしだな。本当に自分が情けないよ」
 そこまで思いつめるようなことかね。
 転んだ友人を介抱するってだけでいちいち大袈裟なヤツだな。

367:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:16:12 mDk4afpW

「気にすんなよ。人の世話すんのなんて妹で慣れてる」
「妹? ふふ、そうか、妹か。ふふふ」
 自嘲するように薄い笑みを浮かべて佐々木が立ち上がる。足元の鞄を拾うと、奥のベッドに向かい、カーテンを閉め切る。
「じゃあ俺出てるから着替え終わったら呼んでくれ」
「ふん、別に僕みたいなのが着替える程度で君がいちいち退室する必要なんかない。そこで待っていてくれ」

 妙にトゲトゲしい声でそう言いやがる。
 まぁ別にいいかと、俺は近くにあったパイプ椅子に座り込んだ。さっきまで佐々木が座っていた椅子を見ると、その表面が濡れている。
 やっぱりあいつケツ濡れてたんだな。パンツまで濡れてたらさぞかし気持ち悪いだろうに。

 カーテンを見ると、ぼんやりと佐々木のシルエットが浮かんでいた。スカートの中に手を入れている様子が見える。
 両手のラインがゆっくりと両足を伝い落ちていった。カーテンの下の部分だけは開いているもんだから、そこに佐々木の足が見えた。
 その足首に、佐々木が脱いだばかりのパンツが引っ掛かっている。先に上靴を脱いでからにパンツ脱げばいいのに。
 佐々木の白いパンツは靴にひっかかっていたが、なんとかそれを抜き取った。 

 こうやって冷静に考えると、妙にエロいシチュエーションだ。
 すぐ近くで女の子がパンツ脱いでるんだからな。しかも脱ぎたてのパンツが今しっかりと見えたぞ。

 俺は薄ぼんやりとしたシルエットを食い入るように見つめてしまった。
 鞄から体操着を取り出したらしい。佐々木はそれを穿こうと片足をあげる。
 長ズボンに片足を差し入れていく。だからお前、先に上靴脱げよと。

 そこで異変が起こった。佐々木がバランスを崩したのだ。
 慌てたように手を振って咄嗟にカーテンを掴んだようだが、体を支えきれずにカーテンからこちらへと思い切り倒れこんできた。
 カーテンの留め金がバチバチと音を立てて外れる。カーテンが保健室の棚にぶちあたって表面のガラスを叩いた。

 カーテンを掴んだままだったものだから、変に回転をしながら佐々木の体が倒れこんでくる。どだん、と重い音を立てて佐々木が尻餅をついた。
「…………」
 放心したように佐々木がしばらくぼんやりと視線を宙に漂わせる。
 俺はというと視線は一箇所に集中していた。



368:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:16:28 vzAXdzgd
「それにしても、意外とかわいい悲鳴だったな。喋ってる最中だったけど、舌は噛まなかったんだよな?」
 佐々木の体がびくっと震えて、さらに俺と距離を取ろうとする。
 んなことしたら歩けないだろうと、俺は佐々木の腰に手を回して抱き寄せるようにして距離を詰めさせた。
「し、仕方ないだろう。咄嗟のことだったんだ。ああ、僕だって突然ああいうことが起これば多少なりとも動揺をするよ。それは僕が未熟だったからだ。ああ、未熟だったからこそあんなみっともない声を出してしまったわけだけどね。
なに、もう金輪際ああいうことが無いよう僕は注意を払って生活するよ。例え転ぼうが車に跳ねられようが情けなくみっともない悲鳴を上げたりしないくらいにね」

 早口で一気にそうまくしたてる佐々木。
「いや、そこまでせんでもいいだろ。別に悲鳴あげるくらい普通だし」
「そういう問題じゃない。僕は常に冷静でいたい。だからあの程度のことでいちいち悲鳴を上げるような愚かな自分のことが許せないのさ」
「そうやってムキになってる時点で冷静じゃないと思うんだが」
「ッ?!」
「まぁそんだけ喋れれば舌は噛まなかったみたいだな。よかった」
「う、ううなんてことだ。僕としたことが」

 保健室の前まで来ると、その扉を開いた。病院と同じ、どこか無機質な匂いが鼻をつく。
 入学して以来、2,3回しか来たことが無いもんだから、どうも入るのに緊張してしまう。
 部屋を見渡すと、誰もいないようだった。
「すいませーん。誰かいますか?」
 声をかけても返事がない。奥にはカーテンで仕切られたベッドが二床あったはず。
 カーテンで仕切られてるから人がいるかどうかはわからない。

369:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:17:08 mDk4afpW



 佐々木は片足をズボンに突っ込んで、膝を立てて、股を開いた状態で固まっていた。
 つまり、なんだ、その。

 女の子の大事なところが丸見えだった。パンツはさっき脱いだばっかりだからな。
 スカートもめくれあがり、下半身を隠すものは何も無い。
 蛍光灯に照らされた佐々木の薄い陰毛と、その下にある割れ目もくっきりと見えた。
 

 放心していた佐々木が、にやりと笑う。
「ふふ、どうだいキョン。今度はみっともない悲鳴はあげなかったぞ」
 誇らしげに、そう言い放つ。ああそうか、こいつ悲鳴を聞かれたのがそんなに嫌だったのか。プライドの高いヤツだからな。
 視線が合うと、急に恥ずかしくなった。
「それより佐々木、前隠せ」
「え?」
 佐々木が視線を自分の体に落とした。そして、自分が一体どういう状況にあるのかを悟ったのだろう。
 顔が固まった。わなわなと佐々木が震える。

 せめてもの情けと、俺は後ろを向いて耳を塞いだ。

370:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:17:46 mDk4afpW



「キョン、後生だ。今日のことは忘れてくれ」
 俯いたまま佐々木が呟く。
「あ、ああわかった」
 帰り道を二人で歩きながら俺は佐々木の代わりに傘を差してやった。
 まだ腰が痛むのか、歩みは遅い。

 どうやら随分とショックを受けてしまったらしい。大丈夫だろうか。
「その、なんだ。佐々木も女の子だし、ショックなのはわかるけどさ元気出せよ」
「き、君というヤツは……。忘れてくれと言った矢先に思い出させないでくれ」
「え? ああ、すまん。けどまぁ、その、俺が見たことは忘れるから」
「聞いたことも忘れてくれ」
「大丈夫。耳塞いでたから、佐々木の悲鳴なんか聞こえなかったって」
「ほう、耳を塞いでいたのに君は僕が声をあげたかどうかがわかるのかい」
「いや、それはだな」
 まぁ耳を塞いでてもあれだけでかい声出してりゃ聴こえるって話で……。

「だから佐々木、深いことは気にすんなって。忘れろ」
「うん、僕はもう忘れた。君が忘れてくれれば問題ない」

 佐々木はもう忘れたつもりらしい。話を合わせてやるのも友情というヤツか。
 この話題は避けたほうがよさそうだ。



371:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:18:23 mDk4afpW


 二人で並んで歩く。しとしと降り続く雨が鬱陶しく足元を濡らした。少し風が出てきた。風の向きに合わせて少し傘を傾ける。
 車道の端を歩いていても、天気のせいか静かで、人通りさえ少ない。いつもはもうちょっと車が走ってるものだが。
 傍に広がる田んぼはすでに収穫を終えていて、寒々しい焦げ茶色を晒している。アスファルトに出来た水溜りを避けながら、のんびりと歩いた。
 風がさらに強くなってくる。代わりに雨が殆ど降らなくなっていたので、もう傘を差さなくてもいいかもしれない。

 こんな天気だからか、どうにもテンションが上がらない。普段から低いけどさ。
 それに二人でいる時はいつも佐々木が何か喋るものだから、俺は何を話していいのかがわからない。

 沈黙だけがやけに耳をついて、痛々しい。
「そ、そうだ。その埴輪スタイルもなかなか似合ってるぞ」
「なっ?!」
 佐々木はスカートの下に体操着の長ズボンを穿いていた。俺達の学年の色である緑が、スカートから生えている。
「寒い日なんかそれで通学したらどうだ? 暖かいぞ」
「断る。こんなみっともない格好で外を歩くだなんて屈辱だ」
 どうやら埴輪スタイルはお気に召さなかったらしい。
「ああ、そうだ。なんで僕がこんな恥ずかしい格好をしなきゃいけないんだ」
「そりゃ転んでパンツが濡れたからだろ」
「キョン。いい加減、忘れてくれないか? なぁ、僕は君を友人と見込んで頼んでいるんだ」
 佐々木の目がちょっと怖い。なんていうか今にも切れそうなロープを見てる気分だ。 
「あ、ああ。了解した」
「情けない。ああ、本当にみっともない」
 お前だって忘れてねぇじゃねぇか。



372:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:18:40 vzAXdzgd
「お、おい大丈夫か?」
 今のコケ方はちょっと痛そうだ。まったく予測してなかったみたいだしな。
「……いたた」
 苦痛に顔をしかめ、腰に手をやっている。俺は助け起こそうと手を出して、そこで制止した。

 ちょうど、佐々木が膝を立てて両足を広げているもんだから、スカートの中が丸見えだった。
 腿の間に見えた白いパンツに、廊下に溜まっていた水が染み込んでいく。まるでお漏らしでもしたみたいだ。
 白地に水が染みていくものだから、吸い付いた肌の色がパンツの上に滲んでいく。

「なっ?!」
 慌てて佐々木がスカートでパンツを隠した。その顔に焦りのようなものが見えたのは間違いない。
「あっ、いや、違うぞ。たまたま見えちまっただけだからな」
「……ああ、わかってる……。ただ、その、あれだ。見えたことは言わないで欲しかった」

 しかし、白か。うん。いいもの見せてもらった。案外シンプルなもの履いてるんだな。
 まぁ色っぽいレースの下着つけててもそれはそれでビックリだが。

 そうやってぼんやり考え事をしていたが、佐々木が起き上がってくる気配がない。
 どうやら一人で立てないらしい。俺は佐々木の手を取って、その体を引き起こしてやった。
「……すまない」
 佐々木は腰を手の甲で叩き、痛みが治まるのを待っている。

「大丈夫か?」
「ああ、たいしたことはない」
 今のはかなり痛いと思うんだがな。俺もああいう転び方をしたことがあるからわかる。
「腰打ったんだろ? 保健室行こうぜ」
「別にそこまでしなくてもいいだろう……」
 佐々木は顔を赤くして、ぷいと横を向いた。
「それにお前、今のでケツ濡れただろ。スカートも濡れてるぞ。着替えたほうがいいって」
「う……ああ」
「負ぶってやろうか?」
「いや、遠慮しておこう。自分で歩ける」
 本当かよ。
 佐々木は歩こうとしているようだったが、どうも尻が痛いらしく立ちすくんだままだった。

373:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:19:35 mDk4afpW


「キョン、ちょっと止まってくれ」
 佐々木が立ち止まって辺りを見渡す。俺の他に誰もいないことを確認すると、佐々木は両手をスカートの中にいれ、長ズボンを一気に下ろした。
 傍に立っていた電柱に手をかけ、器用に足だけで靴を脱ぐと、ズボンをズリ下ろして脱ぎ去った。
 脱いだズボンをぐるぐると丸めながらもう一度靴を履き、佐々木はズボンを鞄の中へ放り込んだ。

「お前なぁ……」
「こんなみっともない格好を誰かに晒すだなんて僕にはもう耐えられない」
「でもお前、パンツ履いてないだろ」
「よく考えてみれば、スカートの中を覗かれるだなんてことは殆どありえない話だ。それともキョン、君は女子生徒のスカートの中をすべて把握しているとでもいうのかい?」
「そりゃ、お前の言うこともわからんでもないが……。見えそうで見えないもんだしなぁ」
 かといってノーパンで歩くつもりか。
 こいつの美意識はよくわからん。素直にスカートの中にズボンの埴輪スタイルで帰ればいいものを。

 その時、強い風が吹いた。さっきから強くはなっているとは思ったが、突風と言ってもいいほどの強い風だった。
 スカートが思い切りめくれ上がっていた。一瞬だったが、その中ももちろん見えた。慌てて佐々木がスカートを抑えた時にはもう遅かった。

「……」
「……」
「耳、塞いどいたほうがいいか?」
「その必要は無い。ふ、ふふふ。なんだっていうんだい。君に外性器を見られた程度で、僕がうろたえて悲鳴をあげるとでもいうのかい?」
「あげてたじゃないか」
「忘れろ」
 命令形だった。すんません。忘れますからそんな怖い目で睨まないでくれ。

「ふふふ。そうだとも。体を見られたというだけの話さ。肉体的な苦痛なんかまったく無いし、至って問題無い。ああむしろ君が見たいのならこんな体いくらでも見せてやるさ。見るかい? 穴が開くほど見てもいい。もう穴は開いてるけどね」
「落ち着け佐々木」
「僕はいつだって落ち着いているよ。ああ、今だって冷静そのものだ。僕は常にそう在りたいと思っているんだからね。ふふ」
 冷静なようには見えないけどな。なんか顔赤いし、目が泳いでるし、瞬きの回数も異常に多いし。
「だから落ち着けって。俺も忘れるから、お前も忘れろ」
「ふ、ふふふふふふ」
 怖いよあんた。


374:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:20:16 mDk4afpW


「あのさ佐々木。ズボンを折り返せばなんとかスカートの中に隠れて外から見えなくなるんじゃないのか? それなら下にズボン穿いてるとかわからないだろうし」
「……」
 佐々木はぽかんとした様子で俺を見つめていた。次第にその顔に俺への非難の色が浮かび始める。
「キョン、君はそれに気づいていて僕にそれを告げなかったのかい?」
「まさか?! 今思い出しただけだって」
「だろうね。僕の大切な友人である君が、まさか黙っているだなんてことは無いはずだからな。ははは」
「そうそう」

 佐々木は鞄からさっき脱いだばかりの長ズボンを取り出した。
 それを穿こうとわずかに前かがみになった時、また突風が吹いた。佐々木のスカートをめくりあげ、後ろに突き出された尻を顕わにする。
 さらにスカートが腰の上に引っ掛かり、まるで自分でめくり上げて尻を誰かに見せ付けているようだった。

「……」
「いや、隠せ。固まるんじゃない」
 俺は腰の上にひっかかっていたスカートを戻してやる。さすがに野外でケツ丸出しはまずいだろう。
「なんだかもうどうでもよくなってきたよ」
「こういう運の悪い日だってあるさ。元気出せ」
 段々とかわいそうになってきた。
 佐々木はスカートの下にズボンを穿き、裾を折り返してスカートの中に納めた。これでパッと見ならスカートの下にズボンを穿いているようには見えまい。

「よかったな。これで一件落着だ」
「なんのことだい? 今日は何も無かった。わかるね?」
 無意味にきらきらとした瞳で俺をじっと見てくる。
 こうやって見てると、こいつの顔立ちの可愛さがよく見てとれて少しだけ胸が弾んだ。
 そんな可愛い女の子のパンツどころか、その中身まで見てしまったんだから、佐々木には悪いが俺の運勢は最高のようだ。
 神様がいるなら感謝したいね。信じてないけど。


375:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:20:48 mDk4afpW

「キョン……。僕は忘れろと言ったはずだよ。どうして顔が赤いのかな」
 無邪気な瞳で小首を傾げ、じっと尋ねてくる。
「いや、気のせいだろ。なに、たいしたことじゃない」
「そうか、ならいい。さて、僕はもう行くよ」
「大丈夫か?」
「はぁ? 何を言ってるんだいキョン。いつもの帰り道を一人で帰るくらいは普通だろう。幼稚園児でも出来ることだ。それともなんだい、君は僕を幼稚園児以下だと判断しているのか? 心外だね」
「そうじゃなくて、痛めた腰とかもう大丈夫なのか?」
「腰? なんのことかな」
「……」
 何がなんでも無かったことにするらしい。
「ああ、まぁそんじゃ気をつけてな。家帰ってゆっくりしろよ」
「じゃあキョン。またね」
 案外しっかりとした足取りで佐々木が去っていく。横断歩道を渡って、住宅街へと消えていった。
 どうやら打ち付けた腰の具合はもういいらしい。まぁそれならそれでいいんだけどさ。



376:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:21:18 mDk4afpW

 あいつ、妙に強がりなところがあるから心配だ。
 住宅街へ入る角を曲がって消えていくその姿を見送って、はたと気づいた。そういや、あいつの傘借りっぱなしじゃないか。
 俺は片手に持った濃紺の男性用傘が、佐々木のものであることに思い至った。

 雨が止んだとはいえ、あいつが忘れていくとはな。
 今ならすぐ追いつくはずだ。

 俺はそう思って走り出した。道路から住宅街に入って佐々木の姿を探す。
 すると、民家の塀に手をつけて目を閉じ、腰をさすっている佐々木がいた。その表情は、難問が解けなくて苦しんでいる数学者のようだ。
 なんだよお前、やっぱりまだ痛いんじゃねぇかよ。

「おい佐々木」
 声をかけるとびくっと体が震えた。どうやら俺がここに居るのがよっぽどおかしかったらしい。
「ど、どうしたんだいキョン」
 慌ててまっすぐ立つと、佐々木はさも余裕でございとばかりに微笑みを浮かべた。こいつの強がりもここまで来ると金賞ものだな。
「やっぱお前、まだ腰痛いんだろ」
「なんのことだかわからないね。いい加減にしてくれ」
「そりゃこっちのセリフだ馬鹿」
 恥ずかしい目に遭ってショック受けるのはわかった。けど、体が辛い時くらい誰かに頼ったってバチは当たらないぜ。神様が偏屈でない限りはな。

 俺は佐々木に近づくと、背を向けて負ぶされと言った。
「キョン、君は何か勘違いをしているよ。君に背負われるいわれはまったくない」
「ほう、じゃあお前はまさに健康だと言うのか。だったらちょっとランニングでもしようぜ」
「……キョン。だから僕は」
「やかましい。グダグダ言ってると無理矢理抱え上げるぞ」
 佐々木に近づいて、膝に手をかけようとする。
「わかった! 待ってくれ。わかったから」
「じゃあ素直に負ぶされよ。まだ腰痛いんだろ」
「うん、まぁ……多少は。でも迷惑じゃないかい?」
「迷惑なわけあるか馬鹿。ほら」
 背を向けてかがむと、ゆっくりと佐々木が俺の背に体重をかけてきた。俺は佐々木の両膝の下あたりに手を差し入れて、ゆっくりと佐々木の体を持ち上げる。
 鞄は佐々木に背負ってもらい、傘も佐々木に持ってもらった。


377:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:21:51 mDk4afpW

「重くないかい?」
「いや、全然。妹と大差ないな」
「……また妹さんか」
 背の上で佐々木が小さく息を吐いたのがわかった。その意味はよくわからんが、とりあえず歩き出すことにした。
 佐々木は遠慮してるのか、妙に体を離そうとするので余計に疲れる。荷物を持つのと一緒で、もう少し近づいてもらったほうが楽なんだがな。

 そう告げると、佐々木がゆっくりと俺の肩に手を回してきた。
「君がこっちのほうが楽だというのなら仕方が無い。君に従うよ」
「そうしてくれ」
 背負いなおすように、俺は軽く膝を伸ばして佐々木の体を揺らした。そうすると背負うのも多少楽になる。
「ううっ」
「あっ、すまん。もしかして痛かったか?」  
 揺らしたせいで腰が痛んだのだろうか。
「いや、違う。全然違うから気にしないでくれ。ほら、前を見て歩いてくれないか」
「ん、ああ。大丈夫なら別にいいんだけど、お前、痛い時はちゃんと痛いって言えよ本当」
「わかった、わかったから振り向かないでまっすぐ歩いてくれ」

 雨が上がったかと思えば、今朝からずっと空を覆っていた雲が割れていくのが見えた。
 金色の光が灰色を切り裂いている。ああ、もう夕焼けの時間なのか。随分早くなったもんだ。確かに夏至と冬至なら冬至のほうが近いしな。
 雨上がりの空が広がっていく。山脈へ流れる雲は早く、現れた天頂の空は青い。けれど、空の端は地平から炎が沸き立っているかのような赤色を吹き上げていた。



378:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:22:25 GW9dqNtd
支援とか必要なんだっけ?

379:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:22:28 mDk4afpW

「おお、綺麗だな」
「……うん」
 佐々木の住んでいる地域が微妙に海と山が近いのもあって、住宅街へ向かうと段々と上り坂が多くなってくる。まぁおかげで夕日を見下ろせるんだけど。
「なぁキョン。疲れただろう。もういいよ」
「まだ大丈夫だぞ」
「……僕もずっと背負われてるとさすがに苦痛だからね。そこの公園で一休みしないか?」
 佐々木が指差した辺りに、切り立った崖に臨むような公園があった。ちょうど都合よくベンチもあるみたいだったが、雨に濡れてて座れそうにはないな。
 俺は公園に入ると、佐々木の体をゆっくり下ろした。

「大丈夫か?」
「ああ、大丈夫さ。本当に、君がそこまで心配する程じゃないよ」
 夕日を受けた佐々木の顔が赤く染まっていた。なんでだろう。雨上がりの夕日ってのは、普段の夕日より色が濃いような気がする。
 別に変わらないと思うんだけどな。

 佐々木はゆっくりと公園の崖側に歩いていった。そこにある柵に捕まって、落ちていく夕日をじっと眺めていた。
 俺も釣られてその隣に立つ。坂が多くて嫌な街だが、こうやって高い場所から景色を見下ろせるのはなかなかいいものだ。

「なぁ佐々木。お前さ、情緒が欠落してるとかなんとか言ってたけど、夕日見て綺麗だと思うんだったら別に欠落なんかしてないんじゃないのか?」
「……さぁ、どうだろうね」
「なんかで読んだことがあるぞ。科学じゃ人が何かを綺麗だとかそう思う気持ちは説明できないとかさ。でも思うもんは仕方ない。だからまぁ情緒的だとかなんとかいって、大昔からありがたがってるんだろ。お前もそれでいいだろたまにはこうやってのんびりするのもいいぜ」
「そうかもしれないな。時には、理性に頼らず心に任せるのもいいかもしれない……」
「ああ、そうしとけ」
「でも生憎僕の性分じゃないのさ。こういうのも悪くはないけどね。だから、ほんの時々でいいよ。そうだな……その時、君が今みたいに隣にいてくれたら嬉しいかな」


 早い雲と、流れ続ける強い風が佐々木の短い髪を揺らした。
 佐々木は片手で髪を抑えながら俺を見て、普通の女の子のように微笑んだ。



380:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:24:19 mDk4afpW
終わり。
368と372で、二重投稿になってしまった。
そこだけ飛ばしてください。

381:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:34:43 4zASoMSh
これはGJ
もっとやってくれ

382:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:47:45 +Bv58UIN
>>380
>>368>>372は他の投下してるIDと違うな。2つ使ってんのかな?
一瞬佐々木スレにいるような錯覚がして「ここPINKじゃねぇぞ」って思ったけど
間違ってるのは俺の方だったw
会話が多かったからだろうか、長くても読みやすかったです
GJ!!ダイジェストでもいいから佐々木サイドも読みたいです

383:名無しさん@ピンキー
07/10/13 17:55:40 sewQhdYq
GJ!
キョンはこの日で運を使い果たしたなw

>>382
ここには>>291みたいに投下中の作品をコピペする奴が居るみたいだ。

384:名無しさん@ピンキー
07/10/13 18:18:53 S/sDa1RX
いつもの粘着荒らしクンだよ。気にしない方がいい。

GJ!これはタイトルが欲しいw
佐々木語りが上手いな。

385:名無しさん@ピンキー
07/10/13 21:15:36 5gX8RTYZ
襲ってくれよキョン!

386:名無しさん@ピンキー
07/10/13 21:50:51 hPt7ZIfO
原作テイストが強めで良いなGJ!

387:名無しさん@ピンキー
07/10/13 22:31:19 5gX8RTYZ
タイトルは

1佐々木のアソコ丸見え。
2佐々木のマンコ丸見え。
3見えちゃったよ佐々木さん。
4見たのか?見せたんだよ!佐々木さん。
5佐々木×キョン。
6ある日の禁止事項。
7二人の秘め事。
8尻餅そして…丸見え…。

388:名無しさん@ピンキー
07/10/13 23:44:14 oeIC9PfA
よかったよ~
タイトルは「佐々木さんの恥辱」を希望します。

389:名無しさん@ピンキー
07/10/14 05:26:07 pJDD+ih4
age

390:名無しさん@ピンキー
07/10/14 07:44:45 yozDSnio
なんというラッキースケベ

391:名無しさん@ピンキー
07/10/14 11:43:59 QGkNzuK6
いいな、キョン×佐々木

古泉×みくるをみたかったり・・・

392:名無しさん@ピンキー
07/10/14 11:55:50 hqD6wC9m
>>391
書いて!

393:名無しさん@ピンキー
07/10/14 11:57:25 Kk3KKuZM
>>391
妄想を形にすればイイジャナイ

394:名無しさん@ピンキー
07/10/14 12:17:18 htTQsUZ7
投下します
>>188の続きです
一応TS。キョンの母がしゃべります。苦手な方はスルーして下さい。
>>201でお義妹ちゃんと見える方は変態さんです。普通の方はお義姉ちゃんと見えます。
…はい、ごめんなさい。では、いきます。

395:モテ男の女型化
07/10/14 12:18:05 htTQsUZ7
モテ男の女型化


「な、長門さん!今回はさせませんよ!」

朝比奈さんがカバディの様なポーズで俺と長門の間をシャカシャカ動いてる。
非常に愛らしいんだが、何してるんだろう。
どうしました、朝比奈さん?
「え?えっと…キョン君がまた変身するんですよね?そしたらまた長門さんが噛んじゃいますから!」
どうやら俺を守ってるつもりらしい。それにしても、変身…。うん、まあ変身だな…
「今回涼宮ハルヒは、今のあなたで女になることを望んでいる。だから意識はそのまま。噛む必要はない。」
ということは、ハルヒの扱いになれてる俺で動けるわけか。
子供のときより楽に解決できそうだな。
「万が一があるかもしれない。噛んどく?」
「ダ、ダメです!」
朝比奈さんはまだカバディをしている。
噛まれたことあるんだから痛くないことは知ってるはずなんだが、ここまでされるとさすがにな。
「いや、いいよ。噛む必要ないんだろ?長門にも負担かけたくないしな。」
「……そう。」
若干悲しそうな表情してるな。ここは…
「ありがとな、長門。」
笑顔でそう言って頭を撫でてやる。この撫で心地さはなんだろうね。癖になりそうだ。
「やっぱり長門さんはズルイですぅ!」

「まあまあ、そんなことよりも、」
そ、そんなこと!?と涙目なってる朝比奈さんを尻目に
「まずは女性になる前にご家族に説明したほうがよろしいかと。」
古泉が間に入ってきた。
そうだな。事情は知ってるとはいえ、いきなり女が帰ってきたら戸惑うだろう。
「長門、あと何分ある?」
「約15分。」
あと15分か。ここから家まで5分かからないけど一応急いだほうがよさそうだな。
「よし、帰るか。みんなも来てくれるだろ?」
「ええ。」「…そう。」「見張らないと!」
一名ほど違った意図を感じるが、気にしないでおこう。


―――


396:モテ男の女型化
07/10/14 12:18:52 htTQsUZ7
予定通り家に着いたな。良かったおふくろも居る。
さっさと済ませちまおう、みんな入ってくれ。
「ただいま。おふくろちょっと話が…」
「おじゃまします。」「ただいまです。お義母さま。」「!?ただいま。お義母さん。」
さらに一名脱線した気がする。
「おかえり。あら、いらっしゃい。一樹君お姉さんが恋しくなった?」
まだそんなこと言ってんのかこの人は。それよりハルヒのことで話があるんだよ。
「また子供になるの?そっちの方がかわいいから大歓迎よ。」
「親としてどうなんだそれ。そうじゃなくてな…」

言い出すと共に服が破け素っ裸になり、いろんなものが無くなったり出てきたり増えたり減ったりして服が再構成された。

「ハニーフラッシュ…じゃなくて、まあこういうことだ。」
おふくろは固まってるな。長門は気まずそうに俯いてる。古泉も朝比奈さんも顔を赤くして俯いてる。
みんな後ろにいて良かったが…ハルヒよ、変な演出加えてくれるな。
しかし長門さん?もう少し時間あったんじゃないのかな?
「涼宮ハルヒは不思議がいっぱい。」
確かにな。でも目を見て話そうな。

長門によると、俺が女に生まれ順調に育った場合の姿らしい。
男で良かった。俺から見るといろいろきつい。ていうよりも何か気持ち悪い。
「自分の女性姿ですからそう思うのも無理ありませんが、とても魅力的ですよ。」
気持ち悪いこと言うな。フォローしてるつもりか?
「キョン君本当に綺麗…なんだかちょっとくやしいです。」
朝比奈さんはいつもやさしいですね。でも正直に言っていいんですよ?
「あんた女に生まれたほうが良かったわね。」
どういう意味だ。

「………納得いかない。」
不意に今までジッと俺を見つめていた長門がつぶやいた。
何かおかしなとこがあるのだろうかと自分をまさぐってると、ガッと右の胸を掴まれた。
「………治まりきらない。」
長門さん。相変わらずの握力ですね。でもね?このままだとモゲルと思うんだ。よくわからんが勘弁してくれたらありがたい。
「ただいま~!あっ!みんなどーしたの!?」
ちょうど妹が帰ってきて長門が離してくれた。おかえり妹よ。そしてナイスだ。
「え?おねーちゃんだれ~?」
5才の俺と同じ口調じゃないか。…来年中学生だよな?
「この人はキョン君ですよ。」
「え!?キョン君??」
「そーだ。ハルヒによって今度は女になっちまった。」
説明すると同時に妹は飛び込んできた。もう少し落ち着いたらどうだ?
「だって~キョン君きれーなんだもん。それにいい匂いがする~。」
「わかったから離れろ。いつまでも玄関にいてもしょうがない。」
抱きついてフガフガしてる妹を引き剥がし、みんなを促し居間に向かった。


397:モテ男の女型化
07/10/14 12:20:47 htTQsUZ7
「えっと…先日とお、同じように…その、機関で…」
「ウフフ♪」
おい、おばさん。そんな熱い瞳で古泉を見つめるな。古泉がしゃべりにくいだろう。
そして俺も寒気がする。
「と…ということですので、彼はまた家訓によって親戚の家に行っているということで、
 あと学校のことはこちらで編入、というより交換留学生のような形で工作したのでご安心を。」
いつの間に工作したんだ?…って!俺これで学校行くのか!?
「あたりまえじゃない。唯でさえ成績悪いのにサボりなんて許さないよ。
 そんなことしたら有無を言わさず予備校にぶち込むから。」
くっ…卑怯な…
「制服等は明日の早朝に持ってきますので今日のとこはこれで失礼しますね。」
「お、おい。制服って…」
「ええ、女生徒のです。楽しみにしてて下さいね。あ、後で機関の者がサイズを測りに来るのでよろしくお願いします。」
「わかったわ。一樹君何から何までありがとね。今度お姉さんお礼しなくちゃね。バチコーン♪」
ウインクすんな!バチコーン言うな!!あんたほんとダメだな!!!
「で、では…僕はこれで失礼します。」

ハァ…女の制服…これはきついな。
「うーん、それじゃわたしも帰りますね。」
あ、長門も朝比奈さんも結局やることがなかったな。
申し訳ないな。なんか無理に来てもらったみたいで。
「いいんですよぅ。それにキョン君の家ならいつでも来ちゃいます!」
朝比奈さんは本当に心が広いね。
「あら?もう帰るの?せっかくだから一緒に晩御飯でもどう?しまった一樹君帰すんじゃなかったわね…」
「あんま無理に引き止めるなよ。もう時間も遅いんだ。」
「いいじゃない。将来、娘になるかもしれない子と料理してみたいし。」
この前からお約束なことを言ってるが、ツッコンでも無駄なんだろう。
「わかった。お義母さん。朝比奈みくるは帰宅する様なので私が残る。カレーが得意。」
長門の純粋さに心うたれるね。しかしレトルトって得意のうちに入るのか?
「言い回しがズルイです、長門さん!わたしも残ります!」
う~ん、最近この二人仲良いな。見てて微笑ましい。
「あらあら楽しくなってきたわね。それじゃ台所にいきましょうか。」
「おかーさん!キョン君はわたしのだよ!」

軽くにやけていた俺一人残してみんな台所へ消えていった。若干寂しい気持ちになるが、
まあ、いいか。うまそうなもんが食えそうだしな。
しかし、明日どーすっかなぁ…


―――



398:モテ男の女型化
07/10/14 12:21:54 htTQsUZ7
「長門さんはいつもずっこいですよぅ。わたしだって…」
さっきから朝比奈さんがなにやら長門に言ってるが、長門は完全にスルーしてる。
しかし今の俺には気にかけてる余裕がない。羞恥心でどうにかなりそうだ。すごく現実逃避したい。

「それにしても驚きました。パジャマ姿の朝比奈さんと長門さんがいるとは予想外でしたからね。」
そういえば朝、制服を持ってきた古泉がポカーンと口を開けて固まったのはなかなか愉快だったな。
「おふくろが無理矢理泊まらしたんだよ。夜遅くに女の子を一人で帰せないってな。」
そこは俺も同意して二人は妹の部屋で寝ていたんだが、
「長門よ、いつの間に俺のベッドに入ってきたんだ?起きた時さすがにびっくりしたぞ?」
今は女になってるから良い…いや良くはないが、俺だって思春期まっさかりだ。いろいろもてあます。
「そーですよ!一緒のベッドで寝るなんて…恋人同士がすることです!!」
朝比奈さんが叫んだ。やっぱり朝比奈さんも長門を大事に想ってるんだな。こういうやさしさはなんだかうれしい。
「なら問題ない。」
「なにがですか!?」
「彼は一昨日、女の宇宙人がいたら結婚すると言った。私に異論はない。よって結婚できる年までは恋人同士と言える。」
…純粋過ぎんぞ、長門。子供の言うことを真に受けちゃいけません。
「なら、わたしだってお嫁さんです!一緒のベッドで寝る権利があります!」
朝比奈さんもムキにならないで下さい。
「早い者勝ち」
「やっぱり長門さんは卑怯です!」
あ~もういいや。

二人のやりとりを聞き流しながら、店のウインドウに薄く映る自分を見た。
どう見ても女だな。でも自分で見るとやはり違和感がある。なんか気持ち悪いし。ほんと男に生まれて良かった。
「そんなことないですよ。先日も言いましたがとても魅力的です。そこら辺の女性では歯が立たないでしょう。」
「どこがだよ。女にしたらでかい方だし、目も細い。それにこの髪型だと武士にしか見えんぞ。」

女になったとき髪が腰のあたりまで伸びた。重くて邪魔くさかったのでおふくろにばっさり切ってもらおうとしたんだが
「ダメよ。ポニーテールにできないじゃない。」と却下された。遺伝ってすごいな。

「そーですね…僕から言わしてもらいますと、スラッとして背が高く、細いわりにスタイルが良い。
 目が細いと言いますが、そのきつめの目も魅力の一部です。妖艶とも言えますね。そんな目で微笑まれたら男性なんてイチコロですよ。もちろん髪型も良く似合ってます。
 あとは、口調を女性らしくすれば完璧ですね。」
「百歩…いや千歩譲っておまえの言う通りだとしてもな、俺のこころは漢だ。制服だけでこんなに恥ずかしいんだ、女口調なんかできるか!」
「それは残念です。しかし今の口調でもそれはそれで…」
クソッ!このニヤケ顔楽しんでやがる!どうにかしてやり返せないだろうか。
…そうだ。多少ベタだが
「さっきスタイルがどうとか言ってたな。ちょっと触ってみるか?なに、男同士だ。気にするな。」
自分で胸を揉みながら古泉に迫る。ほんとに触ってきたら痴漢の称号を与えてやろう。
…しかしほんとにでかいな。朝比奈さんよりは小さいと思うが。
……っていかん。自分で自分の胸を揉んでモンモンとしてしまった。
「遠慮しときましょう。あとが怖そうだ。」
涼しい顔して言いやがった。なんか自滅した気がするな。
「私が触る。」
長門が瞬間移動してきた。よし長門落ち着け。なんか知らんが落ち着け。
「……やはり納得いかない」
言うと同時に両手でわし掴みされた。
オーケーだ長門、これは引っ張るものじゃない。今度こそモゲルと思うぞ?


399:モテ男の女型化
07/10/14 12:23:20 htTQsUZ7
「有希なにしてんの?あら、古泉くんにみくるちゃんもおはよう!!朝からめずらしいわね!」
助かった…おはよう、ハルヒ。朝から元気だな。
「え?あんた誰?なんであたしの名前知ってんの?なんかキョンみたいなしゃべり方ね。」
しまった!つい普段通り接してしまった。
「彼女は彼の親戚の方ですよ。なんでもまた家訓によってかわりに来たみたいです。」
「また…キョン休みなの?なによ…あたしに知らせないで急に…」
いきなりハルヒのテンションが落ちたな。よし今のうちに機関が用意してくれた名前で自己紹介しとこう。
「あいつからおまえのことはよく聞いてるよ。短い間だがよろしくな。」
できれば今日中に終わらしたいが。
「……あんたキョンの代わりなのよね。じゃああんたもSOS団の一員よ!キョンがあたしのことなんて言ってるか言う義務があるわ!
 放課後団室に来なさい!キョン子!。」
またテンション上がってきたな。相変わらずよくわからん奴だ。それよりも
「なんだキョン子って。さっき名前言ったろうが。」
「ほんとキョンみたいな口調ね。キョンの代わりだからいいじゃない。それともキョン美がいい?」
「アホか!それならいっそキョンでいいじゃないか!」
「それはダメね。キョンはキョンだけよ。他の誰でもないわ。」
強引だな、おい!
こうなると自分の意思を変えないだろうな。しかしこのままじゃちょっと悔しい…
「じゃあしょうがない。俺はおまえをハルハルと呼ばしてもらおう。」
「な!?ダメよ!それであたしを呼んでいいのは一人だけなの!」
なんだ?急にあたふたしやがって。母親にでも呼ばれてるのか?
「と、とにかく!あんたはキョン子よ!!」
「ハァ…わかったよハル子。」
「ハルヒ!!」

やれやれ


―――

400:モテ男の女型化
07/10/14 12:23:58 htTQsUZ7
朝のホームルームで岡部が簡単に事情を説明し、自己紹介をした。
クラスの奴らは男言葉に多少面くらってたがハルヒの蛮行になれてるせいかあんまり気にならないようだ。

さて、一時間目は体育か。ハルヒが着替えだす前にはやく出ないとな。
おい谷口なにボーとこっち見てんだ?行くぞ。
「え?どこへ?…ハッ!すまん、キョンよ。とうとう俺の時代が来たようだ。先に大人の階段上らせてもらうぜ。
 おまえが帰ってきた時には親戚だな…」
何をぶつぶつ言ってんだ?先行ってるぞ。
「ちょっとキョン子!着替え持ってどこ行く気?女子はここで着替えよ!」
…そーだった俺もここで着替えなくちゃならんのか。これはいろいろまずいんじゃなかろうか。
「残念だったね、谷口。キョン子さんは着替え場所を勘違いしてただけみたいだったね。」
国木田…おまえまでキョン子言うか。
「ふふ…甘いな国木田。よく考えてみろ。なぜ俺の名前が谷口とわかったか。それは事前に俺のことを調べていた…
 つまり俺に惚れているということなのだ!」
こいつ、脳に虫が沸いてんじゃないのか?まあ一応この寒い誤解を解いておこう。
「あーすまんすまん。キョンからクラスに谷口というとんでもないアホでスケベがいると聞いてな。
 こっちを変な目で見てきたからすぐわかった。着替えを見られたくないから連れ出そうとしただけだ。」
「…だそうだから、これ以上変態にならないように早く教室から出よう。」
そう言って国木田は固まってる谷口を引きずって出て行った。ふむ、完璧だ。
それよりもここからが問題だな。
って!みんなもう着替えはじめてる!これはちょっと刺激が…
「あんた何モジモジしてんの?さっさと着替えなさい!なんなら手伝ってあげるわよ…うりゃぁぁあ!」
ハルヒに返事をするまえに脱がされた。こいつ朝比奈さんで慣れてやがるな。
て言うかやめろ!恥ずかしいだろ!
「うわ!でっかい!みくるちゃんには劣るけど揉みごたえがあるわね。」
アホか!揉むな!おい、そんなダイレクトに……そ、そこ…は…こねく…りまわ…すとこじゃ…ハァ…ァ…ん…
「………」
「…ハ…ャ…ゥン…ってアホ!何真顔で揉みしだいとるか!!」
「ハッ!?あたしったら何を?キョンと触れあってるようで…キョン子侮れないわね…」
何を言ってるんだ、こいつは!

しかし危なかった…男で生まれ育った約17年間の大切な何かが壊れるとこだった。
「す、すごいのね…私も…」
ん?なんか視線が…
「キョン子ちゃん…」「少しだけでいいから…」「お、おねえさま…」
真っ赤な顔をした阪中を筆頭に下着姿の女子達がワラワラと…なんか怖いぞ!
「おい、ハルヒ!なんとかしろ!おまえのせいでみんな妙な術にかかってるぞ!」
「え!?わ、わかったわ!あんた達止まりなさい!キョンはあたしのよ!」
「間違えてる!いろいろ間違えてるから!!なにがわかっただ!ハル子!」
「え?え?……ハルヒよ!」
「あーもう!俺は逃げる!先に行ってるからな!」
「ちょ、待ちなさい!キョン子!」

なんで体育の前に疲れないといかんのだ…


―――


401:モテ男の女型化
07/10/14 12:24:35 htTQsUZ7
授業はバスケだった。
どーやら女で育った俺は運動神経が良いらしくハルヒと互角以上の対戦をしていた。
「やるわね、キョン子。でもこれを二本とも決めればあたしのチームの勝利よ!」
「そうだな、でも気は抜かないことだ。時間はもう少しある。」
「ふん!いくわよ!」
ハルヒは一本目を決めた。これで同点。
「あ!?」
二本目を外しやがった。
すかさず俺は背の高さを生かしてリバウンドをとる。
「阪中!いくぞ!」
俺は阪中にパスすると全力で前へ走る。「待ちなさ~い!キョン子~!」と追ってくるハルヒが少し怖い。
「はいなのね!」
阪中から絶妙なパスを受け、そのまま俺はジャンプをしながら半回転して後ろ向きにダンクをした。
正直気持ちいい。まあゴールの高さはみんなが楽しめるように少し低くしてるがな。
「何格好つけてんのよ~!」とハルヒが叫んだと同時に試合終了。
悪いなハルヒ。たまにはおまえに勝ちたいからな。
しかしダンクってどうよ?俺本当に女に生まれたほうが良かったんじゃないか?と軽くショックを受けつつ阪中らチームメイトに抱きつかれてた。
うむ、やわらかい。


授業が終わり着替えの時また襲われたりしたが、あれよという間に昼休みである。

「あんたずっと寝ていたわね。」
「勉強は得意ではないらしいからな。」
「なによ、らしいって。」
女の俺は男より馬鹿みたいだ。谷口以上だろう。なんせちょっとした漢字がわからなかったりする。
英語の教師が喋ってることも長門の高速言語に聞こえ、板書もたまに読めないからな。
やっぱり男に生まれてよかった。
「それよりも、おまえ食堂に行かないのか?昼休み終わっちまうぞ。」
「パンがあるからいいわ。それにあたしが居なくなるとあんたも困るでしょ?」
体育が終わってから妙に女子達がまとわりついてくる。
それをハルヒが牽制してくれてるので助かってはいるのだが少し残念なのはなぜだろう。
「なに?あんた、ゆりんゆりんな人なの?アブノーマルもほどほどにしときなさい。」
「なんだよ、ゆりんゆりんって。俺はいたってノーマルだ。」
しかし今体が女である以上そうなってしまうのか?
いかんな。やはり早急に男に戻らなければ。

「そんな男言葉で言われてもねぇ。あんた彼氏とかいないの?」
「そんなものはおらん。」
いてたまるか。
「ふ~ん、ま、どうでもいいけど。」
じゃあ聞いてくんなよ。
「どーでもよくないのね!大事なことなのね!」
阪中がいつの間にか隣にいた。なんだ?女ってのは気配を消せるのか?どうでもいいが目が少し怖いぞ。
「女の子同士なんて不純なのね…でもキョン君の周りはいっぱい美人さんがいるし…キョン子ちゃんなら…」
「ん?なんだって??」
「へ!?あ、あの…キョン君もいいけどキョン子ちゃんもね!って言ったのね。」
なんだその正月のカレーの様な扱いは。意味がわからんぞ。そしてさりげなく胸を揉むな。
「はいはい阪中さん。キョン子にそっちの気はないわ。それとこの胸はあたしが揉むためにあるのよ。」
「アホか!おまえも揉むな!」
また真顔になって迫ってきたので俺は屋上へと避難した。

ふぅ…しかし女の俺のスペックがだいたい理解できたな。だからどうしたって感じだが。


―――


402:モテ男の女型化
07/10/14 12:25:09 htTQsUZ7
くだらないやりとりで昼休みは終わり、午後の授業は睡眠という時空魔法を使って今は放課後である。

「さあ!キョンがあたしの事をなんて言ってるのか事細かく説明しなさい!」
ハルヒは授業が終わった瞬間にまだ夢の住人だった俺を引きずるように文芸部室にひっぱりこんだ。
おまえはもうちょっと落ち着け。拉致された気分だ。
「落ち着いてるわよ!ただ少しキョンがあたしのことどんだけ好きなのか早く聞きたいだけよ!」
いつ好きかどうかの話になったんだ?何をテンパってるんだか。
「そう急かすな。別にたいした事は聞いてないぞ。」
「いいから!」
そう言われてもな…そもそも何も聞いてない。俺自身だし。適当に言っとくか。
「そうだな…無駄に行動力があって周りを疲れさす。特に俺が。と言ってたな。」
「…え?ほんとに?」
ハルヒが不安そうな顔して見上げてきた。
本当の事だがちょっと意地悪だったな。
「でも、そのおかげで今俺はそこら辺の奴らよりずっと楽しい高校生活を過ごせているから、ハルヒには感謝している。だとよ。」
これも本当だが、なにやらこっ恥ずかしいな。
「あ、あたりまえだわ!団長に感謝するのは団員として当然よ!」
「そうかい。良かったな。」
「そ、それで…他には?」
「他?なんだ他って。」
「だから!まだ何か聞いてるでしょ!もっとあたしがこうした方がいいとか、ああしたら可愛くなるとか!」
「何言ってんだ?「こう」とか「ああ」とか言われてもわからんぞ。」
だいたい可愛くってなんだよ。…いやポニーには…っていかんいかん。
「何か聞いてるんでしょ!?もったいぶらずに言いなさい!」
「なにそんな熱くなってんだよ。もう何も聞いてない。」
「あたしはいつも熱い女よ!隠してたら為にならないわよ!」
あーもう、誰かこいつをなんとかしてくれ。

「私のことはなんて言ってた?」
おわ、長門いつからここに居たんだ?頼むから気配を消さないでほしい。心臓に悪い。
「最初からいた。彼はなんて言ってた?」
「い、いや…長門?俺は、その、おまえ知って…」
「なんて言ってた?」
なんだこのプレッシャーは?しかしなんか言っとかないと大変なことになりそうだ。なぜか俺の胸に手をかざしてるし。
「え、えーと…なんでもこなせて完璧なんだけど、どこか危なげで守ってあげたくなる存在…かな?」
「…そう。」
ふぅ…どうやら正解だったようだな。
「ちょっと!あたしにはそういうこと言ってないの!?」
「それよりもわたしには何かないんですか!?」
「みくるちゃん!?」
いつの間に入ってきたんだ?古泉も居るし。て言うかハルヒ以外俺が女に変わってるだけって知ってるだろ。
俺にどうしてほしいんだ?
「涼宮さんや長門さんばかりズルイです!わたしも聞きたいです!」
朝比奈さんそんなに迫られると、どうにかなってしまいそうなんですが…
俺が男って忘れてるんじゃなかろうか。
それと最近この方から「ズルイ」ばっかり聞いてる気がする…うぉ!さらに密着してきた。
「わ、わかりました。えーと、ドジっ娘なんだけど心を癒してくれる天使の様な人…って。」
「え?そんな…ふぁぁ」
「な!?あ、あたしにもそういうのあるんでしょ!?言いなさい!!」
「私にもまだある気がする。」
古泉!ニヤケてないで助けろ!
「いえいえ、僕は彼から何も聞いてないので。」
…もう勘弁してくれ。

この後も三人娘から質問攻めにあった。しかしこれでハルヒも満足したろう。今日中には戻れそうだな。


―――

403:モテ男の女型化
07/10/14 12:25:44 htTQsUZ7
透き通るような青い空、やわらかい日差しが散歩にはもってこいの休日の午後、俺は古泉と並んで歩いていた。
まぁいつもの不思議探索な訳だが、

「おい、ほんとにこれで戻るのか?」
「いえ、これは森さんがどうしてもと言いまして。関係ありませんよ。」

今俺は値段が張りそうな白のワンピースを基調とした、森さんプロデュースの格好をしている。
ついでに言えば化粧までしている。つまりまだ俺は女だったりする。

「な!?なんだと!おまえ昨日の夜電話でそろそろ戻りましょうかって俺の神経を逆なでするようなこと言ってたじゃないか!
 女らしいとこを見せればいいんじゃなかったのか!?だから我慢して化粧までしたのに!と言うか戻れる方法があるならさっさとやっとけよ!」
「まあまあ、その方法も確実とは言えませんし、十中八九閉鎖空間が生まれますから今まで黙っていたんです。しかし涼宮さんは女性のあなたが気に入ったらしく
 なかなか戻りそうな様子ではなかったので森さんに相談したところ明日まで待ってくれと頼まれたんです。」
「俺を女装させたいが為に!?そこは断ってくれよ!」
「あなたはあの微笑の前に逆らうことができますか?」
「……俺が悪かった。」
「いえ、わかってもらえて幸いです。」

朝、森さんに化粧される時に「さすがにそれは…」と断ろうとしたら「しないとダメです。」
と虎も逃げ出すようなオーラで微笑まれたからな。

「しかしな、今はおまえといるからいいが、午前朝比奈さんとパートナーだったろ?びっくりするくらいナンパされてな。
 ウザいったらなかったぞ。」
「それだけあなたと朝比奈さんが魅力的だということですよ。」
「アホか。はぁ…しかしモテ期ってのは人生で三度あるっていうじゃないか。その大事な一つで男からモテるってどうなんだ?
 そもそも戻ったあとで俺にモテ期ってくるのか?」
「…それ、本気で言ってるんですか?」
「あたりまえだ。おまえみたいなツラがいい奴にモテ期もなにもないだろうがな。」
「ふぅ…これは手に負えませんね。」
古泉は肩を竦めながら溜息をついた。
溜息をつきたいのは俺のほうなんだがな。所詮ハンサムボーイにはわからないことなのさ。



404:モテ男の女型化
07/10/14 12:26:15 htTQsUZ7
「やあキョン、こんな短期間でこんなにも変わるとは、さすがに驚きを隠せないね。」
あても無くブラブラしてたら突然声をかけられ、振り向くと佐々木が微笑んで見ていた。
なんで俺ってわかったんだ?
「わたし達の情報網だってすごいんです。侮っちゃいけないのです!」
橘もいたのか。古泉は相変わらずニヤケ顔だからほっといても大丈夫だろう。
「俺が女として生まれたらこうなってたらしいぞ。きついだろ?ほんと男で良かったよ。」
「あれ?私のことはスルーなのですか?」
「男で良かったのは同意って言うか男でなくちゃ困るね。それはおいといて今の君はそこら辺の女優より格段に綺麗だよ。」
「そこら辺に女優はいないと思うがな。あんまりからかわないでくれ。」
「僕は正直に言ってるよ。キョンはあらゆる意味でもっと自覚したほうがいいね。」
何を自覚しろってんだ。
「僕っ子と俺っ子…この組み合わせは最強なのです…しかも片方はお姉さま系…
 佐々木さん!!やっぱり涼宮さんの力は佐々木さんのほうが相応しいのです!そしてその力でキョンさんと姉妹に!」
「しかし今のキョンが古泉君といるとまさにベストカップルだ。なんだか妬けちゃうよ。」
「あれ?佐々木さんもスルーなのですか?」
「それは光栄ですね。」
「気持ち悪いこと言うな!」
橘が不穏なこと言ってたが佐々木が空気を読んでくれたようだ。だいたい俺っ子てなんだよ…
「―――あなたは――嫁……なの?―――」
ぅお!いたのか昆布娘!
「――それとも―――私が……嫁?―――」
相変わらず何を言ってるのか全然わからない。佐々木も大変だなこんな連中と一緒だと。
「そうでもないな。なかなか愉快な人達だ。少なくとも退屈はしないね。
 それでは僕らは用事があるのでこれで失礼するよ。次会うまでには男に戻ってくれてるとありがたいな。
 僕には女性を愛でる趣味はないからね。それじゃ。」
「あ!待ってください、佐々木さん!女同士も案外悪くないのですよ!」
なにやら佐々木が爆弾発言をした気がするが橘のせいでよく聞き取れなかった。

「……さて僕達もそろそろ戻りましょうか。」
「そうだな。」

佐々木達を見送りつつ俺達は駅前へと戻った。


―――


405:モテ男の女型化
07/10/14 12:27:02 htTQsUZ7
「先ほど手をうちました。これで男に戻れると思います。」

帰宅して風呂に入ってると古泉から連絡があった
「そうか、すまんな。しかし何をしたんだ?なんか嫌な予感がするんだが。」
「明日になればわかると思いますよ。あとのことはあなたにお任せします。」
「あとのことってのが非常に意味深だな。」
「深い意味はありません。あなたならなんとかしてくれるでしょう…っと、すいません案の定閉鎖空間が発生したようですね。」
「何をしたんだいったい…まあいい怪我しないように頑張れよ。」
「そんな色っぽいハスキーボイスで言われると俄然やる気がでますね。それでは。」
アホかとツッコム前にきりやがった。
やれやれ俺ものぼせない内に風呂からでようかね。

…う~む、自分の体なのに未だに直視できんな。俺もまだまだ純粋だね。
それよりも名残惜しい気分にならない内にさっさと着替えて寝よう。起きたら男だ。


「キョン君おはよー!あ!男に戻ってる!!」
妹の体を張った目覚ましで起こされた。よかった、ちゃんと元に戻ったか。
「あんたやっぱり女のほうが良かったわね。もったいない。」
おふくろが非常に傷つくことを言ってきた。
でも「キョン君は男のほうがいいよー!」と妹がまた抱きついてきたので良しとしよう。
妹よ今度デラックスパフェ食わせてやる。
「キョン君だいだいだいすきー♪」ふむ、キスするのはいいが舌をいれてくるな。
よし今日は気分がいいので早めに学校に行くかね。

いつもより爽快に早朝ハイキングをして教室に入るとすでにハルヒがいた。
「よう、久しぶりだ…な。ハルヒ?」
「そうね。ちょっと団室までついてきなさい。」
なんだろう非常に怒ってらっしゃる。
「よし!断る。」
「………」
ぶん殴られた。


406:モテ男の女型化
07/10/14 12:27:47 htTQsUZ7
曳きづられながら団室につくとなぜか他の団員がいた。
「昨日古泉君から聞いたわ。あんた隠してることがあるでしょう。」
まさかハルヒにばらしたのか?いや、みんなの表情からそれはなさそうだな。
「何をだよ。別に何も隠してないぞ。」
「とぼける気?古泉君…」
「ええ、では。森さんから聞いたのですが、活発で非常にかわいらしい女性とあなたがそれはそれは仲むつまじく手を繋いで歩いていたのを目撃したと。」
「おい…まさかおまえ…」
「はい、ご想像の通りです。森さんは仕事の関係でそちらにいたそうです、いや~偶然ですね。」
白々しいわ!あとのことってこれのことか!無茶だろ!!
「さあどーゆーことか説明してもらおうかしら?」
「知らん!事実無根だ!そんなことはいっさいなかった!」
「嘘おっしゃい!その女のどこが良かったのよ!目!?鼻!?口!?この浮気者!!!」
「だから知らんと言っとるだろうが!浮気者って意味わからんぞ!」
「なによ!どうせ昨日別れるときもテールランプ五回点滅さして、
 ‘今は離れ離れになるけど次に会うときはエアーズロックに行って世界の中心でアイを叫んだけものになって帰ってくる。そして結婚しよう。愛してる。’
 てサインだしたんでしょ!?正直に言いなさいよ!」
「五回点滅だけでそんな壮大なサインあるか!!そこは‘あいしてる’だけでいいだろ!」
「やっぱりしてたんじゃない!」
「バイクも車も持っとらんわ!」
「う~キョンが訳のわからない女にとられちゃう!キョンはあたしのなのに~あたしのなのに~~」
ハルヒが故障した!
「あ~ん…キョンは…ヒッ…あた…ッのなの…に…うあ~ん。」
「す、涼宮さん!落ち着いて!キョン君はなにもしてませんから!」
「……そう、古泉一樹が言ってるのは間違い。」
おぉ!この為の朝比奈さんと長門か!助かった!
「……ホント?有希?」
「そう、彼と手を繋いでたのは私。」
長門!?
「ぇえ!?長門さんなんですか!?」
ぇえ!?朝比奈さん!? 
「ぅあ~ん、キョンが~キョンが~」
「長門さんズルイですよぅ!!」
「……彼は私のもの。」
なんだこのカオスな状況は。どうにかしろ古泉!おまえにも責任はあるぞ!

407:モテ男の女型化
07/10/14 12:29:15 htTQsUZ7
「こ、こんなことになるとは…す、涼宮さん落ち着いて僕の言ったことを思い出してください!」
「…ヒッ…ゥ…?」
「活発で非常にかわいらしい女性…つまり涼宮さんのような人です!彼も涼宮さんに会えなくて寂しかったんですよ!」
「……!?」
何を勝手なこと言ってるんだ!
「…でも…有希が…。」
「冷静に考えてください。彼が向こうに行ってる間長門さんはずっとこっちにいたんですよ?彼と一緒にいるのは不可能なんです!」
なぜ俺を睨む、長門よ。
「じゃ、じゃあキョンは…」
「ええ、涼宮さんのものです。」
「なんでだよ!!おまえまで狂ったのか!?」
なんて言ってる間にハルヒが「キョン~」と俺に向かって飛んできたのだが
朝比奈さんが「させません!」と妙に腰が入った体勢でブロッキングしていた。
朝比奈さんって実は強いのか?
「め~がっさ~!キョン君の匂いがするにょろ!!」
ドカンと扉が開けられ鶴屋さんが飛び込んできた。
「ふふぅ…最近キョン君に会ってなかったからね。覚悟するにょろよ。」
鶴屋さんが俺に抱きつこうとしたのを「させない。彼は私が守る。」と長門が立ちふさがった。
「ほほぅ。有希っこ…第2ラウンドだね。いくにょろよ!」
長門と鶴屋さんのカンフーを見ながら思う。どうすんだよこの状況。
「あなたも大変ですね。」
「居たんですか、黄緑さん。」
「驚かないんですね。それとわざと名前間違えました?」
どうしてわかったんだろう。
「この状況で驚くほうがむずかしいですよ。」
「そうですか。それよりそろそろ授業ですよ。なので今は誰もいない保健室に私といきませんか?」
「なのでの意味がまったくわかりません。遠慮しときます。」
「あら、冷たいんですね。」

はぁ、登校するまで気分良かったんだけどな。一気に疲れた。
「まあまあ、男に戻れたのですからいいじゃないですか。」
「そうかもしれんが、おまえこれどうするつもりだ?」
「……どうしましょう?」
古泉はお手上げってな感じで肩を竦めた。俺もお手上げだよ。

……帰ろうかな。

「キョン~キョン~キョン~」

ハルヒに抱きつかれた。



おわり

408:名無しさん@ピンキー
07/10/14 12:30:16 htTQsUZ7
以上です。
ではでは。

409:名無しさん@ピンキー
07/10/14 12:46:10 soSks00A
まさかホントに続いてたとは!乙!

強気みくるいいなw

410:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:08:43 9wEfv7UJ
くっ…なんという破壊力のあるSSだ…
クラスの女子達に笑ったw
GodJobと言わせていただきたい

411:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:23:18 4ogXxHly
やや腐臭が漂うんで酢が

412:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:31:30 sVLa5fHv
GJ
こういうのもっと頼むw

413:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:31:57 GjxrU7Su
このシリーズ続いたりは・・・しないのか?

414:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:52:09 hqD6wC9m
全員暴走してる!

415:名無しさん@ピンキー
07/10/14 14:43:25 RjuEzBeQ
>>408 GJ!! 続いてほしいが、もう変身するネタがないな。
無理やり考えるとするならば、ロリ化か動物化のどちらかな?


416:名無しさん@ピンキー
07/10/14 14:52:22 49oGpqKp
きょこたんの扱いはどこに出ても相変わらずだなwww
次のネタはアレか。いよいよ「巨大な毒虫」か。

417:名無しさん@ピンキー
07/10/14 14:54:48 9wEfv7UJ
ロリ化は
高校生→思春期前
男→女
と2段変化を要するから面倒だな。それにハルヒがロリを望むとも思えんし
動物だと学校に行けんわなw


418:名無しさん@ピンキー
07/10/14 14:56:29 9wEfv7UJ
思春期前とは限らないか。ちょっと語弊がありました。
連レスすまん。

419:名無しさん@ピンキー
07/10/14 15:07:39 iY+CTmGM
どうでもいいが、「」の中に句点を入れるな。

420:名無しさん@ピンキー
07/10/14 15:27:34 1XyMXHKz
面白かったです!!
次は成人化がみたいな

421:名無しさん@ピンキー
07/10/14 15:44:43 y3u65fuT
>>326
>JUNMENかよ。俺のコート確か丸井だぞ?

JUNMENは押しも押されもせぬ丸井系な件w
つまり、何も問題もないんじゃ(ry

422:名無しさん@ピンキー
07/10/14 18:10:25 9Swv9kXN
面白かった。女の子たちがいいね

423:名無しさん@ピンキー
07/10/14 18:46:54 N6eLRea6
よし、妹。自重しなくていい。もっとやr(ry

424:名無しさん@ピンキー
07/10/14 18:49:55 GjxrU7Su
誰か居ないと思ったらミヨキチが居ないのか。

425:名無しさん@ピンキー
07/10/14 22:24:40 nS990FkM
そうか、次はキョンがミヨキチにんなるのか

426:名無しさん@ピンキー
07/10/14 22:48:53 WbIcUoWY
そうか、次はキョンとシャミセンが入れ替わるのか

427:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:36:44 dB/Mw/DN
キョンがにゃーにゃーいいながらすりすりするわけですな

428:名無しさん@ピンキー
07/10/15 02:27:33 4/pXkdGW
そのキョンinシャミ略してキャミはハルヒが妹からの奪取に成功すると

429:名無しさん@ピンキー
07/10/15 02:33:54 fU+sFOFo
「あんたが妹ちゃんみたいに可愛かったらいいのに」

妹と入れ替えだろ

430:名無しさん@ピンキー
07/10/15 02:35:53 4/pXkdGW
キョン化した妹が妹化したキョンと…

疲れているようだ、お休み

431:名無しさん@ピンキー
07/10/15 02:56:20 LGZHWRyE
妹inキョンの体って凄い兵器だよな

キョンの体で「わーい、ハルにゃん」と抱きついたり、
「みくるちゃんがいい!」とか言い切っちゃうんだろ

432:名無しさん@ピンキー
07/10/15 08:49:19 IfRCxX7j
【・・・・・・・・】(・・・・・・・・)
天才岸本が考案したNARUTO世界で生きていくための基本スキル。
マンガの売りは短期間での提供力だとほざく岸本が更に短期間で作品を完成させるために、
台詞を考える時間を省いた結果生まれた天才的発明。
これによりネーム作成時間が飛躍的に短縮され、さらに短期間での作品提供を可能にした。


やっぱり長門はタダ者じゃなかった

433:名無しさん@ピンキー
07/10/15 19:45:14 B0vzsHcu
両袖、胴体部分、裏地、襟はじゃんけんの続きを書いてみた。
今回はちょっとエロありだが相変わらず馬鹿話。


434:両袖、その少し後の話
07/10/15 19:45:54 B0vzsHcu
両袖、その少し後の話


「……」
「……」
「……」
 いや…別に有希が三人いるとかじゃないわよ。
 あたし達三人、有希とみくるちゃんは一着のさえないコートを中心に三すくみで、何故か丁寧に正座していた。
 まるで三国同盟ね。
 Gacktは最初どうかと思ったけど、みんな演技が大仰だから馴染んでいたのがすごかった。
 で、場所は有希の家。
 時間は馬鹿キョンからコートを貰った帰り。
 パンツ? あんなの今だけなんだから、コンビニで十分よコンビニで。時間がもったいないわ。
「で、二人とも、もう一度言っておくけど、そもそもこれはキョンがあ・た・し、に自ら着させてくれたコートなのよ。つまり、あたしに
主権があるわ」
「で、ですから! そっ! それだけじゃ、独り占めの理由にはにゃりません!」
 珍しくみくるちゃんがまた反論する。
 可愛いけど生意気だわ。上級生だけど。
「それは貴女の思いこみ。私が転んでも彼は同じ事をしてくれた。それどころか、私だったら彼は更に、体を心配して家まで負ぶってくれた筈。
そして彼の広くて心地よい背中のおおらかさについ眠ってしまった私を彼は合い鍵を使って部屋まで運び、そっと布団に眠らせてからおやすみの
優しく、そして長いキスをして静かに帰る。私は目覚めた時に独りの寂しさについ涙を零してしまうが、ふと枕元を見るとそこには指輪の入った
小さな箱がおいてあり、手紙には結…」
 ちょっと待ちなさいよ! むきー! 有希まで反論? て言うか人の発言を思い込みとか言ってあんたの後半文章も激しく思いこみじゃない!
 合い鍵なんて渡してないでしょ! そもそもここオートロックだし! 安っぽい携帯小説サイトにでも投稿する気? 語る気? キョンは
確かにみんなに優しいけど、あたしに他の人が越えられない壁十枚分は優しいのよ!
『>』が百個は並ぶわよ!
「とにかく! こんなさえない地味コートが手元にあってもどうにもならないでしょ? だからあたしが回収してあげようって言っているの!」
「なら、そんなさえないコートは貴女の手元にあるのは似合わない。地味な私にこそそれは似合う。朝比奈みくる、あなたにもこのコートは
体型的にも絶対に合わない。私の体型なら問題ない」
 あたしに口撃した後、返す刀でみくるちゃんにも口撃とはやるわね。しかも所々に自虐が入っている辺りが、少し反論しづらい雰囲気を作って
いるわ。流石本の虫。
「う~~」
 みくるちゃんはもう返す言葉が無いみたい。
 …違うわね。反論したら怖いのと可哀想なのがごちゃ混ぜって表情だわ。
 そんな押し倒したくなっちゃう涙目で有希を見ている。
 …多分、睨んでいるつもりなんだろうな。
「……」
「……」
「……」
 はぁ。
 結局、膠着状態に戻ってしまった。
 仕方ないわね。
 あたしの燃え尽きる程ヒートなハートには及ばないにしても、二人の気持ちも分かったわ。
「山分けしましょ」
「え?」
「……」
 みくるちゃんは頭に?を浮かべ、有希は珍しくぶん、と音が聞こえるくらいの勢いで頷いた。
「え? やまわ…えぇえっ!? いいんですか?」
 七秒掛かって理解したみたいね。
 いいのよ、あたしも名誉あるSOS団の超団長。
 広い心と隙あらば抜け駆けの精神で、謀反を企てようとした部員にも平等に権利をあげるわ。
 …あんまり否定すると、分が悪くなりそうだし。
「う、嬉しいんですけど…」
 踏ん切りはすぱっと付けた方がいいわよ。三方一両損! ちょっと違うかもしれないけど気分はそんなもんよ。
 あたしがここまで気持ちをあけっぴろげにしたんだから!
「有希! 切るものある?」

435:両袖、その少し後の話
07/10/15 19:46:41 B0vzsHcu
 有希は音も立てずに立ち上がり、台所へと向かった。
 台所でなんか小声がぶつぶつ聞こえた気もするけど、あの子も独り言なんて言うのかしら?
「…これ」
 で、有希が戻ってきて…ってあんた、それ、もしかしてメスじゃないの? なんでそんなもんがある訳!?
 有希が持ってきたのはカッターでもはさみでもなく、おそらくは手術用の本物のメス。
「…これが一番綺麗に切れる」
 それはそうだけど。
 有希は元の位置に座り、メスを目線の高さに構える。
 なんだか、果物とか切ってもくっつけたら元通りになりそうな輝き。
 まさかお金燃やした炎で鍛えたとか言わないわよね?
 有希は中央の不干渉地帯に鎮座していたキョンのコートを手に取り、真剣なまなざしでメスを構えた。
 あ…自分で言ってなんだけど、ちょっとコートが可哀想…。
「大丈夫。痛くはしない」
 そう言い、コートの肩口にメスを滑り込ませた。
 有希はバイオリンを弾く様な滑らかな動作でメスを滑らせる。
 驚いたのは、あたしはてっきり縫い目から布を切り分けるだけかと思っていたけど、有希はそうじゃなくて、縫い目の糸のみを切っていた事。
 数分後、コートはまるで縫製前の状態みたいに綺麗に分解されていた。
 それは左右の腕と胴体、裏地、コート特有の大きな襟の合計五つに分けられた。
「…縫ったら、元に戻りそうですぅ」
 みくるちゃんが感嘆の声を上げる。
 あたしは綺麗に切り分けられた、位にしか見えないけど、お裁縫が好きだから分かるんだろうな。
 …って、なんで五つなのよ! 三つでいいじゃないの!
「部分によりレアさが違う」
「! レアさ! 確かにそうですぅ」
 あ。
 そうだわ! そうよ! 流石有希だわ!
 部位によって残り香の量や質が違うのよ。
 単純に面積では割りきれない黄金比を見失うところだったわ!
 ダヴィンチも大あわてよ。
 ちなみに、あたし的見地から言えば、キョンの髪のにおい、首筋のにおいを最も濃く残している襟が最も貴重な部位。
 そこの香りをかげば、キョンのあったかい首筋にかじりついているのと同じ気持ちになれるし、ほんわりと残る髪の香りをかげば、この胸に
キョンの頭を抱きしめている気分になれるもの。
 魚で例えれば、本鰹のカマトロってところね。あたしの好みだけど。
 次になんと言っても裏地よ。
 胸、背中とキョンの胴体の香りを一心に受けた裏地は肌触りの良さを生かして抱きついてよしシーツにしてよしと大きさを生かした楽しみ方が
出来るわ。
 肉で例えるなら米沢牛のA-5かしら。ただ、個人的には霜降りの肉って油まみれで好きじゃないけど、価値的にね。
 次は両腕。
 言っておくけどこの順位はあくまでも順位を付けたらと言う意味であって、実際はどれも拮抗しているんだからね。
 で、この筒に手を入れれば、まるでキョンの腕に抱かれている様な気分になれるし、アームウォーマーとしてそのまま外にも着ていけ…ないか。
でも部屋でならOKね。
 たくましい両腕に抱かれて眠るなんて中々無い贅沢よ。
 次に裏地を抜いた胴体部分。
 裏地程の魅力は無いけど、キョンの体を一番多く包み込んできた部分であり、それはつまりキョンの体に包まれているのと同じって事だわ。
裏地よりもしっかりしている分抱擁されている気分が高まるし、外見的にも鏡に映して見ればまるでキョンのコートの中に入れて貰っている様な
気分になれるわ…。
 例えるなら…もういいわ、くどいし。
 じゅる。
 あたしじゃない涎の音がした。
 桃色のトリップ空間から戻ると、みくるちゃんと有希がお預け中のわんこみたいな表情で涎を垂らしていたわ。
 有希のこんな顔珍しいわねって、はっ!? あたし、もしかして声に出していた?
「キョンの髪のにおい…から丸聞こえでした」
「臨場感たっぷり」
「……」

436:両袖、その少し後の話
07/10/15 19:47:41 B0vzsHcu
 えーと、と、とりあえず、ローテーションって事でどうかしら?
「かわりばんこって事ですか?」
「悪くない」
「そうそう、いいでしょ? 両腕、裏地、胴体をかわりばんこにして、一番香りがいい襟はその都度じゃんけんで占有って事でどう?」
「が、頑張って勝ちます!」
「正々堂々と」
「よーし! それじゃー合意と見なしていいわね? せーの!」
「「「じゃーんけーん」」」
「あ」
 みくるちゃんの声であたしは拳を振り上げたまま仰け反ってこけそうになった。
「何? 今更ルール変更は無しよ!」
「い、いえ…さっき言おうとして忘れて…それに今更遅い事なんですけど…」
「だから何よ」
「…このコート、キョン君からいただいたんでしたっけ?」
「「あ」」
 珍しく有希とハモったわ。
「……」
「……」
「……」
「じ、事後承諾って事でいいんじゃない?」
「でで、でも…キョン君には…どうやってお詫びしたらいいんでしょう…?」
「べ、別に、キョンになんて、あ…あやまらなくても…でも…もしも怒ったらどうしよう…? お前なんか嫌いだっていわれたら…きらわ…き…
ひっく…うぅ…いや…うぐぅ…」
「お、落ち着いてください! キョン君は非道い事なんて言いません! えっと、えっと…」
「証拠隠滅」
「「え?」」
 …ぐす、今日は良くハモるわね。
「やってしまった事は仕方がない。ある高名な哲学者も言っている。『バレなければ嘘ではない』と」
 その言葉が哲学者かどうかはともかく、今となっては有希に全面賛成だわ。
 でも…どうしよう。
「彼には別のコートを買って渡す。このコートは汚れた等の理由を付けて渡さなければいい。それに、彼は許してくれる。間違いなく」
 …普段の無垢なイメージからは考えられない冷徹な表情と判断ね。これならモリアーティ教授も逃げ出すんじゃないかしら? 
 みくるちゃん? そのちゃうねん、みたいな手の動きはなに?
「で、でも…私、恥ずかしいんですけど…今、持ち合わせが…」
「う…あ、あたしだってそうよ。無くはないけど、コート買う程のは…」
「今回は任せて」
 有希がどこからか、きらりと輝くゴールドカードを取り出した。
 有希! あんた輝いているわ!
「その代わり、最初に襟を得るのは私」
 有希! あんたちゃっかりしているわ!
 その後、次回不思議探索のペア優先くじ引き工作や、帰りに二人きりになる割合、使ったストローの割り当てとか様々な取引の後、今回の
割り振りはあたしが裏地、みくるちゃんが両袖、有希が胴体と襟になった。
 香りが逃げない様にジップロックに入れて、さぁ、これからコートの買い出しだわ!
 そのあと解散して、心ゆくまでオナ…想いにふけるわよ!
「「すーはーすーはー」」
「…ってこら! みくるちゃん! こんなところでおっぱいいじりはじめないの! 有希も下着に手入れない!」
「……」
「もう、駄目です…」
 み、みくるちゃん! 有希!
 ああっ! みくるちゃん、そんな、女同士だからって、待って待って! セーター脱ぎ始めちゃだめ!
 有希は…ああっ! もう下着脱いでるじゃない!
 だ、駄目! だめよ、こんな、こんな、女の子同士だからって…その…男の子の…で、こんな風に乱れるなんて…。
「貴女の想いはその程度?」
 有希が呟いた。
 あたしは息をのむ。


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch