07/10/10 22:34:00 mZMxPOdw
目を覚ますと、俺は布団から手を突き出しながら何かを掴もうとしていた。はて?何をやりたかったんだ?
とてもいい夢を見ていた気がするが、その輪郭は起きた瞬間に急速にぼやけ、残念ながら何一つ覚えていない。
なんだか物凄くもったいないことをした気分でベッドの上に起き上がって首をかしげていると、妹がバーンとドアを開けた。
「キョンくん~あさだよ~!ってあれ?起きてる!!」
「おう、おはよ。おいおいなんだよ、俺が起きてるのがそんなに珍しいか?」
不発に終わったボディープレスが惜しいのか、驚いて毛を逆立てたシャミセンのような表情の妹が心配げに問いかけてきた。
「キョンくん泣いてるよ?だいじょうぶ?こわい夢でも見たの?」
なに!?慌てて顔に手をやると、自分でもびっくりするくらいの涙が、まるで滝のように流れ落ちている。
おいおいどうしちまったんだ俺?さっきの夢は、とても楽しかったはずだろ?
我が鳥頭は、すがすがしいくらいにスッパリと内容を忘れているが、涙なんかを流したら誰かを侮辱してしまう気がして、俺は慌てて顔を拭った。
「心配してくれてありがとな。でも、見たのは怖い夢じゃないんだ。親友がな、ケラケラ笑いながら背中をパーンって叩いてくれた夢だ」
ま、詳細は覚えてないけどな。なんだかそんな夢だった気がするのさ。
こうして自分でも気味が悪いほどのすっきりした朝を迎えた俺は、定時よりだいぶ早く起きてきた息子を訝しがるお袋の追求を適当に受け流しつつ、
久しぶりに心ゆくまで朝食を楽しみ、普段よりかなり早めにチャリをこぎだした。
気分爽快。このところの寝不足が嘘のように体が軽く、このまま42.195kmだって走れそうなほどだ。
どこまでも続く青空の下、ペダルを踏む足に力を込めて、意味もなく加速してみる。
その横では、爽やかな朝の風を受けて、黄色いチューリップが楽しげに揺れていた。
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おわり