07/10/04 04:47:35 bodf+f+c
>>629
ティーダ×ラグナ
「無理しやがって」なカップリングだな。
おそらく世界初じゃね?
631:名無しさん@ピンキー
07/10/04 04:55:03 ZfdF7x7C
年の差いくつなんだろうな
632:名無しさん@ピンキー
07/10/04 04:59:37 2oER+X4H
>>629
ちょっwwwティーダって時空歪める気か?
633:名無しさん@ピンキー
07/10/04 06:59:02 ejYMkWzG
>>632
魔王や闇の書が居れば大丈夫
634:名無しさん@ピンキー
07/10/04 07:00:01 wMau5zh5
ティーダ×ラグナ
誰?
635:38 ◆KHEtQ2j5Nc
07/10/04 07:00:31 WxZGWb87
>>629
ティーダ×ラグナも十分無茶だが、課長のノリにも吹いたw
何故か対抗心が刺激されたので、こちらも埋めとしてこれからの予定を記す。
第10話 SS01温泉でエリキャロエロ
第11~13話 ホテル・アグスタ。ロッサ×はやてエロ、ユノなの告白
第14話 スバティア訓練&スバル正体告白&オリキャラ×スバル告白
第15話 オリキャラ用サポートデバイス支給
第16話 ユノなのエロ
第17話 オリキャラVSスバティア再戦、オリキャラが冥王やるという無茶w
第18話 オリキャラ×スバルエロ
の、全18話になると思われます。
636:名無しさん@ピンキー
07/10/04 07:42:21 Q8l5tpSN
>>635
楽しみに待ってます
637:名無しさん@ピンキー
07/10/04 08:38:46 B5LL9Al0
プレシア×リニス(進行形)
リニス×プレシア
スバル×ギンガ×ノーヴェ・ヴァイス×スバル×ノーヴェ(長編)
ネタは有るけど時間が足りない…
638:名無しさん@ピンキー
07/10/04 09:08:20 Yapnh+4l
>>586
神だ・・・神が降臨してる・・・
639:名無しさん@ピンキー
07/10/04 10:15:53 E3LRMsZy
>>485
GJ!!
フェイトそんがかわいすぐる
エロオとのラブラブ展開希望して待機
640:名無しさん@ピンキー
07/10/04 10:51:46 fbnZc1iV
フェイトさん、このスレではお馬化からぬけだせたようだな。
641:名無しさん@ピンキー
07/10/04 10:53:07 RG78fW2q
自演うぜぇ
642:騎士よ眠れ
07/10/04 14:22:32 r9mC1ptd
続きです
643:騎士よ眠れ
07/10/04 14:24:04 r9mC1ptd
書き忘れましたが、デバイスに関して幾つか独自の二次設定があります
ご了解ください
644:騎士よ眠れ
07/10/04 14:25:04 r9mC1ptd
今日の午前中は休暇を貰い、なのははヴィヴィオの授業参観に赴く為に家を出た。
機動六課の解散から早くも半年程が過ぎ、ミッドチルダにも蒸した暑気に包まれ
る季節が訪れていた。
ヴィヴィオが通う魔法学院には、なのはの他にも多くの父兄が我が子の様子を知
る為に各々の教室へと人並みを形成していた。
正門を潜ったなのはは校舎へと進み、愛娘の下駄箱で履物を換えると、見知った
廊下を悠々と歩いていった。
ヴィヴィオのクラスには、既に半数以上の親御が教室の奥で列を成していた。着
いたなのはは教室には入らず、出入り扉の陰でヴィヴィオの姿を捜す。
授業の内容も上の空で、ヴィヴィオは自分の席でそわそわと後ろを振り返ったり
忙しなくしていた。なのはの姿に気付くと、彼女の不安げな表情は俄然と嬉しさで赤らんだ。
授業参観で実施される内容は作文だった。各生徒、自由な題目で書き上げた作文
を起立して朗読している。
なのはは他の生徒の声を聞きながら、不意に物思いに耽った。
充実した毎日。何の憂いも無い生活。世界のあらゆる幸福よりも満たされた人生が、
今のなのはにはあった。
しかし、何故かしらそんな彼女の心には、冗談の様にぽっかりと穴が空いた気持
ちが刻まされていた。
余りにも順調過ぎる日々に、精神的な麻痺が起こっているのだろうか。教導官と
しての業績は申し分なく、再三繰り返される本局からの昇進の勧誘も、まだ個人的
な踏ん切りがつかずに保留を続けている。
平穏としていて、何もかもが満足で、彼女は恵まれた楽園にも似た現在に、だか
らこそ自由を奪われていた。
ヴィヴィオを一人の母親として育てる決心を固めた日から、何か自分の中の歯車
が噛み合わなくなった感覚が次第に強まっている。
それは母としての務めという人生で初めての義務でもあった。
今まで彼女が背負ってきた管理局の局員としての責任は、彼女自身が意識せずと
も何とか遂行していける類のものだった。
しかし、今回は決定的に具合が違う。意識も無意識も無い、もっと別の次元の強
固な制約が、新たになのはを縛り付けていた。
その事に不平不満を抱いているわけではないが、我武者羅に自分の全てをヴィヴ
ィオに捧げられる程、彼女の人生経験は今の生活に余裕を持てるだけの広さを持っていなかった。
なのは自身、最も多感な時期に少し両親との距離が開いてしまった事もあり、見
本という見本も無い状態で手探りの試行錯誤に追われる時が多い。
確かにヴィヴィオが日々育っていくのを見守るのは楽しくもあり充実感を得られ
るのだが、育児がそんな個人的な感情だけで完了出来る筈も無かった。
仕事、家事、育児、それだけを一日に費やせるならばまだ気楽なものだった。社
会人である以上、彼女を取り巻く環境は否応にも避けられない行事や予定を強いてくる。
疲労を認めたくないと思えば思うほど彼女はそんな自分を突きつけられ、ふと漏
らす物憂げな溜め息さえ最近では急激に増えてしまった気がする。
645:騎士よ眠れ
07/10/04 14:25:59 r9mC1ptd
周囲の知友各位はなのはの実際的な労苦を慮っては何かと気を遣ってきてくれるが、
蓄積された日々の鬱積はそんな温かい善意さえも億劫にさせてしまう。
一日、いや一時間だけでも、自分以外の何者も存在しない世界で慰労したいという、
厭世主義とも思える逃避的な思考がなのはの中で鎌首をもたげる。
心の陰影を浮かべる瞼に視線を感じたなのはは、ヴィヴィオがじっと自分を見つ
めている事に気付いて反射的に微笑みを取り繕う。
だがしかし、ヴィヴィオは何時もの様に無垢な笑顔を返してはくれなかった。顔
の向きを直す間際、明確に彼女の横顔は微かな寂しげな頬を垣間見せていた。
これでは駄目だと心中で自分を叱咤し、なのははヴィヴィオが作文を
朗読する番まで顔を上げて静かに待った。
「では次、高町ヴィヴィオさん」
教師の指示に従い、ヴィヴィオは緊張を隠し切れない動きで席を立つ。机の上に
広げていたノートを両手に持ち、ゆっくりと自分で書き連ねた文章を口に出していった。
「わたしのママは、時空管理局の教導官というお仕事をしています。毎日色んな人
に魔法を教えたりするお仕事です。他にも、テレビに出たり、偉い人と会ったり、
色んなお仕事をしています。わたしもママがお仕事をしているところを見に行く事
があります。お仕事をしている時のママは、とても格好よくて、わたしも何時かマ
マのような人になりたいと思っています。家に居る時のママは、優しくて、わたし
はどっちもママも大好きです。そんなママに、わたしはこの作文でありがとうと伝えたいです。
ありがとうと、もう一つだけ伝えたい事があります。なのはママ、会いたい人が
いる時は、すぐにその人の所に行ってあげてください」
ヴィヴィオにとっては何気無い段落だったのだろう。しかしなのはは、そのヴィ
ヴィオの言葉に暗く沈んだ胸を衝撃で穿たれた様に一瞬だけ姿勢を揺らした。
「最近のママは元気がありません。どうして元気が無いのか、わたしはわからない
けれど、わたしはママが会いたい人に会えないから元気が無いのかなと思います。
この前、電話をしている時のママは凄く辛そうでした。そんなママを見るわたしも、
何だか鼻が痛くなって、そんなママを見たくなくて、どうしていいかわかりませんでした。
なのはママはずっと格好いいわたしのママでいて欲しいです。わたしはお空を羽
ばたいている時のママが一番好きです。だから、なのはママは何時までもわたしの
大好きななのはママでいてください。なのはママが居ない家は少し寂しいけれど、
わたしは全然平気です。空を見上げれば、なのはママが何時もそこからわたしを見
守っていてくれる気がするからです。なのはママ、会いたい人がいるなら会いに行
っていいんだよ。帰ってきたら、また楽しいお話を沢山聞かせてね」
「ヴィヴィオ……」
作文中で取り上げられた電話─恐らくは以前に断った筈の、新発見の次元世界
の調査隊出向の件で来た電話だろう。
あの時は就業中に教習生の不手際で少し事後処理に歩き回ったのもあり、つい語
勢を強めて厳しく応対してしまった苦い記憶がある。
子供特有の他人の顔色に敏感な感性で、鋭く現在の精神状態を見抜かれていたのだろうか。
なのははヴィヴィオの朗読を最後まで聞き、嘘の様に胸のしこりが抜けていくのを実感した。
ヴィヴィオは今年が学院生の一年目だ。そしてなのはも今年で母親一年目なのだ。
646:騎士よ眠れ
07/10/04 14:26:51 r9mC1ptd
何事も完璧じゃなくて当然で、この先時には親として手痛い失敗をしてしまう事
もあるだろう。
しかし今はそんな不安もなのはは素直に肯定出来た。それらの体験を積み重ねて、
親子で一緒に学んでいけばいいだけの事だったのだ。
なのははそっと眼を閉じ、自分が今最も何がしたいのか、何処に行きたいのかを沈思した。
調査隊への出向要請。彼女は漠然と感じた違和感で一度はそれを拒んだ。
先程の作文に込められたヴィヴィオの想いが、複雑な事情を覗かせるその違和感
へと一歩踏み出す勇気を与えてくれたような気がした。
先日、一緒に視聴した教育番組でユーノがゲスト出演した時、ヴィヴィオが唐突
に漏らした「この人誰?」という反応も気懸りだ。
なのははそんなヴィヴィオに驚いて、普段から自分と遊んでくれるユーノだと諭
したが、当のヴィヴィオはまるで画面に映るユーノが偽者のように顔を背けて「違
うもん」と膨れ面を見せた。
当時は気の所為だと決めて深く考えないようにしたが、後々振り返ってみると確
かにあの時のユーノには所々に不思議な点があった。
付き合いの長さから来るものだろうか、何処と無く画面で司会者と話す彼に対して、
ユーノ本人ではない感じがあった。
消息を絶ったザフィーラ、ヴィータの異変、あの時のユーノの違和感、意図的に
情報規制で存在が沈黙している次元世界の詳細……一見全てが無関係に見える中で、
目に見えない細い因果の糸がそれらの事柄を連関させている気がしてならない。
「何か、あったんだ。ユーノ君、ザフィーラさん……フェイトちゃん……」
揺るぎ無い想いを含んだなのはの声は、誰に聴かれる事も無く少しざわついてい
る教室の物音に掻き消された。
授業参観が終わり、学院を去るなのはの顔には、新たな戦場に旅立つ歴戦の魔導
師の風格が備わっていた。
/
「聖都は既に跡形も無く消滅しているみたいですね」
ユーノは動き易い軽装の姿で、広々とした荒野に視界を一巡させた。
リーゼアリアの努力で、古代ベルカ世界の主要都市近辺の地理はある程度確認が
取れている。
管理局の刺客から身を潜める一方だったザフィーラも、大人しく彼と合流して行
動を共にするようになっていた。
ザフィーラは嘗て自分達が暮らしていた湖畔の家があった場所も寄ってみたが、
当時の面影等何一つ無い水溜りと藪があるだけだった。
「夜天の書の仕様プログラムだ。あれさえ発見出来ればヴィータを救える。現に主
の夜天の書の制御から離れている彼女に手を施すには、それしか効果的な方法は無
い。幾らその場凌ぎの処置を行ったとて、同じ事の繰り返しに過ぎん」
「えぇ……調査隊の本隊が到着する迄には、何としても仕様プログラムを見つけ出
して持ち帰らないと。もう先遣部隊は本局から出動したとロッテから連絡があったし……」
「今さっき着いたよ」
死角から届けられた怜悧な声に、ユーノとザフィーラは咄嗟に身を翻す。
647:騎士よ眠れ
07/10/04 14:27:45 r9mC1ptd
二人の視線の先に、金の長髪を持つ女性と、鮮やかな橙色の髪を背中に流している女性が立っていた。
上空から降下してきたのか、衣服や頭髪が悠然と靡いている。
「思った以上に早かったねフェイト……久し振り」
ユーノの朗々とした仕草を見て、フェイトの容貌が複雑な心中で渋くなる。
フェイトから見たユーのは、自分の置かれた立場を全く考慮していない、場違い
とさえ思える能天気な態度だった。
「ユーノ、ザフィーラ、早くこんな真似は止めて一緒に帰ろう。今ならまだ間に合うから……」
説諭の口火を切ったフェイトの傍で、先遣部隊の現地要員として同行してきたテ
ィアナも同意の意を示す。しかしユーノは沈着とした動作で首を横に振った。
「ごめんフェイト、それは出来ないんだ。たとえ管理局にとって不都合な史実が残
る世界だとしても、調査隊の好きにさせるわけにはいかない」
フェイトは切羽詰った顔をして、反射的にユーノ達へと一歩歩み出していた。
「お願いユーノ、私と一緒に来て。そこまで言うなら調査隊の本当の目的も知って
いるんでしょ? この世界を焦土に変えるんだよ。このままこの世界に留まってい
たら、二人だって不慮の事故で片付けられてしまう……私はそんな事、絶対に見過ごせない」
「ユーノ先生、ザフィーラさん、何をそんなに執着しているのかわかりませんけど、
どの道この世界にいると危険なんです。フェイトさんの気持ちも汲んであげて……」
「断る」
確固たる覚悟の重厚な声色が、ザフィーラの勇猛な口腔から放たれた。ティアナ
は眼の前の守護獣から感じられる迫力に気圧され、続けるべき言葉を飲み込んでしまった。
機動六課時代では見る事の出来なかったザフィーラの明白な意思表示に、ティア
ナはその貫禄のある雰囲気で一瞬にして硬直させられた。
今まではザフィーラ自身の印象も薄かった為に、だからこそ衝撃も一際強かった。
しかし彼女は更に思い出す。正式にランクを所有していないが、ザフィーラの魔導
師ランクは自分よりも格上の推定AAランク相当という事実を。
「時間が無いから今はまだ何も話せないけれど……大丈夫だよフェイト、僕達は何
も時空管理局に逆らおうとしているんじゃない。ただ真実を知りたいだけなんだ。
僕が所属している学会にも時空管理局の緘口令が通達されてね、仕方無く僕だけザ
フィーラの協力をしに来ているんだ」
ユーノが毅然とした口調で述べる。しかしその説得だけでは、フェイトの職務へ
の厳格な責任感を溶かす事は叶わなかった。
「お願いユーノ、お願いだから……。こんな事していたらなのはだって悲しむよ。
これ以上問答を続けるなら、私も相応の手段を選ばなくちゃならないんだよ。そん
なの嫌だよ……だからユーノ、本当にお願い……」
フェイトは弱々しく顔を下に伏せ、血色のいい唇に白い歯を立てる。ティアナも
同様に、上官の葛藤を肌で感じて苦しげに押し黙る。
このまま互いに水掛け論が継続されれば、先行した二名はユーノとザフィーラに
対し強硬手段を用いなければならない。
調査隊本隊の到着まで愚劣な問答に終始し、挙句に二人を無駄死にさせる位ならば、
実力行使も厭わずに二人を引っ張ってでも連れて帰るべきだ。
だが、フェイトにそんな冷酷な行為が可能かどうかといえば話は違った。
ユーノにバルディッシュを向ける自分を想像しただけで、足腰に激しい痙攣が発
生してしまう。
648:騎士よ眠れ
07/10/04 14:28:37 r9mC1ptd
二人の視線の先に、金の長髪を持つ女性と、鮮やかな橙色の髪を背中に流している女性が立っていた。
上空から降下してきたのか、衣服や頭髪が悠然と靡いている。
「思った以上に早かったねフェイト……久し振り」
ユーノの朗々とした仕草を見て、フェイトの容貌が複雑な心中で渋くなる。
フェイトから見たユーのは、自分の置かれた立場を全く考慮していない、場違い
とさえ思える能天気な態度だった。
「ユーノ、ザフィーラ、早くこんな真似は止めて一緒に帰ろう。今ならまだ間に合うから……」
説諭の口火を切ったフェイトの傍で、先遣部隊の現地要員として同行してきたテ
ィアナも同意の意を示す。しかしユーノは沈着とした動作で首を横に振った。
「ごめんフェイト、それは出来ないんだ。たとえ管理局にとって不都合な史実が残
る世界だとしても、調査隊の好きにさせるわけにはいかない」
フェイトは切羽詰った顔をして、反射的にユーノ達へと一歩歩み出していた。
「お願いユーノ、私と一緒に来て。そこまで言うなら調査隊の本当の目的も知って
いるんでしょ? この世界を焦土に変えるんだよ。このままこの世界に留まってい
たら、二人だって不慮の事故で片付けられてしまう……私はそんな事、絶対に見過ごせない」
「ユーノ先生、ザフィーラさん、何をそんなに執着しているのかわかりませんけど、
どの道この世界にいると危険なんです。フェイトさんの気持ちも汲んであげて……」
「断る」
確固たる覚悟の重厚な声色が、ザフィーラの勇猛な口腔から放たれた。ティアナ
は眼の前の守護獣から感じられる迫力に気圧され、続けるべき言葉を飲み込んでしまった。
機動六課時代では見る事の出来なかったザフィーラの明白な意思表示に、ティア
ナはその貫禄のある雰囲気で一瞬にして硬直させられた。
今まではザフィーラ自身の印象も薄かった為に、だからこそ衝撃も一際強かった。
しかし彼女は更に思い出す。正式にランクを所有していないが、ザフィーラの魔導
師ランクは自分よりも格上の推定AAランク相当という事実を。
「時間が無いから今はまだ何も話せないけれど……大丈夫だよフェイト、僕達は何
も時空管理局に逆らおうとしているんじゃない。ただ真実を知りたいだけなんだ。
僕が所属している学会にも時空管理局の緘口令が通達されてね、仕方無く僕だけザ
フィーラの協力をしに来ているんだ」
ユーノが毅然とした口調で述べる。しかしその説得だけでは、フェイトの職務へ
の厳格な責任感を溶かす事は叶わなかった。
「お願いユーノ、お願いだから……。こんな事していたらなのはだって悲しむよ。
これ以上問答を続けるなら、私も相応の手段を選ばなくちゃならないんだよ。そん
なの嫌だよ……だからユーノ、本当にお願い……」
フェイトは弱々しく顔を下に伏せ、血色のいい唇に白い歯を立てる。ティアナも
同様に、上官の葛藤を肌で感じて苦しげに押し黙る。
このまま互いに水掛け論が継続されれば、先行した二名はユーノとザフィーラに
対し強硬手段を用いなければならない。
調査隊本隊の到着まで愚劣な問答に終始し、挙句に二人を無駄死にさせる位ならば、
実力行使も厭わずに二人を引っ張ってでも連れて帰るべきだ。
だが、フェイトにそんな冷酷な行為が可能かどうかといえば話は違った。
ユーノにバルディッシュを向ける自分を想像しただけで、足腰に激しい痙攣が発
生してしまう。
649:騎士よ眠れ
07/10/04 14:29:41 r9mC1ptd
/
軌道衛星上に待機している艦内に一時帰還したフェイトは、一目散にデバイスの
メンテナンスルームへと急行した。
ティアナはフェイトの決然とした雰囲気に口を挟む余地すら無く、戦々兢々とし
て後を追った。
折り良く、メンテナンスルームにはフェイトの長年の補佐官であり、デバイス関
連の専門家であるシャリオが整備作業で部屋を使用していた。
彼女はフェイトの中ではかなり険しい顔で入室してくるのを、半ば呆然として眺めていた。
「シャリオ、突然で悪いけどバルディッシュとクロスミラージュの調整をお願い」
「え、えぇ……」
操作盤の席から立ち、シャリオは目線でティアナに事態の経緯を求める。しかし
返ってきたのは肩を竦めるティアナの素振りだけだった。
「私のバルディッシュには非殺傷設定用の基部を取り外して、その空いた部位に機
動性向上の部品を入れて欲しいの。後、出力面はデバイスの耐久限界ギリギリまで
引き上げて。それとゲマトリアサポートシステムを組み込んでくれると完璧だよ」
「ゲマトリアサポートシステムって……それ、本局指定の運用許可システムから削
除された奴じゃないですか。それに他の仕様変更も、そんなガッチガチの戦闘用の
調整で一体どんな戦場に行く気なんですか」
シャリオはフェイトの異常な要請に眉を顰め、有無も言わずに承諾する事を躊躇った。
「何ですか、ゲマトリアサポートシステムって」
ティアナが互いの想いで見詰め合う二人の横から介入し、初耳のデバイス機能の
内容を質問した。シャリオが取り敢えず疑念を置いて、ティアナへの解説に移る。
「簡単に言って、カートリッジ方式の特性を恒常的に維持するシステム。八神部隊
長がお持ちだった夜天の書の魔力蒐集機能から着想を得たもので、同じ様に大量の
魔力を記述して保存する端末を数個デバイスに組み込んで、その魔力を消費して術
士の戦力を補強するの。カートリッジは一発一発使い捨てだけど、こちらは一つの
記述用端末に保蔵出来る魔力量が段違いで、次期主力デバイスの基本機能に採用さ
れる予定……だったんだけど」
「扱いも難しいし、想定外の強化率に本局が試験データ採取直後に運用禁止の決定
を出した禁忌のシステム。それに現時点の規格だと、Sランク以下相当のデバイス
は出力に耐え切れずに破砕してしまうから……」
「そんなシステムを導入して、フェイトさん何をするつもりなんですか。まさかフ
ェイトさん……」
フェイトの一連の行動の真意を突くティアナに、フェイトは静謐な顔付きの儘で
ティアナへ沈黙の返答を渡した。
「……クロスミラージュにはリンカーコアコネクトシステムをお願い」
ゲマトリアサポートシステム以上の曲者の名を持ち出され、更にそれを部下のデ
バイスに追加するよう頼んでくるフェイトに、シャリオは眼鏡の奥の眼を瞠る。
「……本気ですか?」
650:騎士よ眠れ
07/10/04 14:30:38 r9mC1ptd
「お願い。あの三人に勝って本局に連れ戻すには、そうするしか方法は無いの。本
隊が到着した時点で全てが終わるんだ」
自分を見つめるフェイトの瞳に、不動の決意が光沢となって潤んでいるのをシャ
リオは認めた。
先程同様にティアナが説明を求める顔をしてきたので、シャリオは重い口を開いた。
「いい、ティアナ。リンカーコアコネクトシステムは、名前の通り魔導師のリンカ
ーコアを魔力に変換する為のデバイス機能よ。もう想像出来ると思うけど、純粋な
魔力の源泉であるリンカーコアを消費する事に大きな危険が伴うのは確か。だけど
このシステムを巧く活用すれば、魔導師は飛躍的に戦力を増強させる事が可能なの。
ティアナが作動させた場合、きっと魔導師ランクは軽くS+ランク辺りまで引き伸
ばせる筈よ。勿論、単純な魔導師としての実力じゃなくて、厳密な魔導師ランクの
定義に基づいた上でね。このシステムで、貴方は一時的にしろストライカーに匹敵
する実力を得られるの」
ティアナは自身の実力とは程遠い魔導師ランクを耳にして、そのシステムに対す
る驚愕を隠し切れなかった。
(恐らく、シグナムはレヴァンティンにゲマトリアサポートシステムとリンカーコ
アコネクトシステムを双方組み込んだ状態で挑んでくる。それでも私は負けられない。
ううん、絶対に負けたくない……!)
フェイトは我知らず、限界近くの握力で掌を握り締めていた。思い沈むフェイト
の横で、シャリオとティアナが打ち合わせを続けている。
「でもこっちは個人差が激しいの。確証があるのは、ミッドチルダ生まれの人間の
リンカーコアとは相性が余り良くない事。それとは逆に、ベルカ人とは本当に相性
抜群。年代を遡っていく程に適性は高くなっていく事も判明しているの。古代ベル
カ人ともなれば、数倍、数十倍のキャパシティを弾き出せる位にね。あと余談だけ
ど、最も相性がいいリンカーコアは、魔法文化の無い管理外世界の人間のものって
いうのがあるわ。たとえば、地球出身のなのはさんや八神部隊長がそれに該当する
わね」
「はぁ……」
現実感の欠如した説明だったが、ティアナは最早自分が立つこの場所は嘗て無い
程に慄然とした状況に突入している事は察せられた。
そして、フェイトは敵の数が三人と明瞭に言った。ユーノとザフィーラの他に、
残る一人があの荒野に潜伏していたのだろう。
フェイトの様子が豹変したのも、その敵の存在が原因というのがティアナ個人の
推測では濃厚だった。
「シャリオさん、あたしのクロスミラージュにもフェイトさんが言った通りの調整
をお願いします」
「……わかったわ。今になって言うのもあれだけど、二人とも無茶だけはしないで
くださいね。艦長は二人の報告があるか、本隊が合流するまではここで待機を続け
るって仰っているんですし」
シャリオは前に立つ二人の固い意志にそれ以上他言を挟まず、彼女達を信じて作業を開始した。
フェイトはメンテナンスルームを出ると、多少和やかに崩れた顔で傍に続くティアナを見た。
「戦うのが辛いなら、ここで待っていてもいいんだよ」
今更なフェイトの気遣いに、ティアナは怯えも無く頭を振った。
「言葉で伝わらない思いは、デバイスで伝える……それがあたし達、機動六課の流儀ですから」
ティアナの意志を改めて確認し、フェイトも相棒を信じる思いで微笑み、ゆっくりと頷いた。