07/09/25 18:47:00 FvPzu3n5
「先生はまだ宿直室に寝泊りしているんですか?」
「まさか。さすがに新しく家を借りていますよ」
「交君は?」
「交は親と一緒に地元に帰ってます。もう小学4年生ですからね」
「それじゃあご実家でやっとお兄さん夫婦と暮らしているわけですね。良かったで
すね」
一時間ほど喋ったあと、二人は喫茶店を後にした。
都電の駅が近づき、また明日、と別れの挨拶をしたあと、少し迷ってから木津がぽつ
んと言った。
「先生・・・結婚は・・・まだ考えてないんですか?」
「毎年見合いの話はありますけど」
「そうなんだ。じゃあ、私にもまだチャンスがあるかな?」
笑いながら、声だけは努めて真面目に、望は言った。
「木津さん、私はちゃんとした社会人でないと結婚の対象としては考えませんよ。そ
ういう妄想は教育実習が終わって無事に教員になれてから考えたらどうですか?」
「そうですね。」
「最近は教師も狭き門です。こんな楽な仕事そうそう空きがでるもんじゃありません
からね。教育実習が終わったぐらいで安心しちゃだめですよ」
「はい、私も絶望先生のような立派な先生になれるようがんばります!」
少しふざけてそう言うと、木津は改札をこえて駅の中に消えていった。
それを見ながら望は、自分が教師になってよかったと思っている事に気づいた。
(木津さんたちのおかげで、私も昔ほど絶望しなくて済むようになったのかもしれま
せんね・・・)
そんなことを考えながら、望は自宅に向かって歩き出した。
おわり