【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part9【改蔵】 at EROPARO
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part9【改蔵】 - 暇つぶし2ch458:絶望・草双紙 6/9
07/10/04 20:05:16 phF+9Lop
「…?」
卿が見下ろすと、姫は卿の下半身をじっと凝視されておりました。
「な、何をご覧になっているのですか、姫!」
慌てて卿は足を閉じます。
姫は、ぽつんと呟かれました。
「…穴が、足りない…。」

ずがぼん

卿は、畳に頭がめり込むほどの勢いで、突っ伏しました。
「…先生?」

ひりひり痛む額を押さえながら卿は叫びました。
「だから!!そんな穴なんかありませんから!!!!」
そう言うと、卿は姫を押し倒しました。

せっかく盛り上がっていたところに水を差されてしまい、
卿としては、これ以上は、姫に主導権を握らせるおつもりは
ございませんでした。

「もう、あなたときたら…!
 これが、本来入るべき穴を、今から教えて差し上げますよ…!!」

卿は、その言葉とともに、姫の御み足を高く掲げると、
すっかり潤っているそこに、自身を奥深く突き入れたのでした。

「あああああぁあ!」
姫の目が大きく開かれ、そのお体が海老のようにのけぞります。
「せ、先生…!痛い…!!」
「大丈夫です…もう少ししたら、痛くなくなります…!」

そう答える卿も、いっぱいいっぱいの状態でした。
姫の若々しく発達した筋肉は、卿をぐいぐいと締め付け、
その快感に、今にも迸ってしまいそうになるのです。

卿は、姫と自分自身のために、しばらく深呼吸をすると、
やがてゆっくりと動き始めました。


459:絶望・草双紙 7/9
07/10/04 20:05:58 phF+9Lop
「んっ…む、あぁんっ!」
最初はお辛そうに眉をしかめておられた姫も、だんだんと、
卿の動きに合わせて甘いお声を上げられるようになりました。

「姫…いい…いいですよ…。」
卿が、腰の動きを少し早めました。
「ぁぁぁあああ!」
姫が嬌声を上げて、卿の腕をつかみ、体を起こそうとなされました。
「せ、先生、もうっ!」
「まだ、だめですよ、姫…。」
ところが、卿は、先ほどのことを根に持っているのか、
まだ容赦しようとされません。

「いや…あぁぁ!!」
姫は、もはや半狂乱になり、すすり泣きながら卿の首にしがみつきました。
「せんせ……卿!…卿!!好き…っ、好きじゃ!!大好き…!!
 ずっと、ずっと前から、卿だけが……っ!!!」

姫の叫びに、卿の動きが止まりました。

「…?」
姫が、息を切らしながら、怪訝そうに潤んだ瞳を卿に向けます。
卿は、泣いているような笑っているような不思議なお顔で、
姫のお顔を見つめておいででした。

姫の、たった今の告白は、卿にとって思いもかけない喜びでした。
しかし、卿は、それに対して返す言葉を持ち得ませんでした。
姫と卿との間に立ちはだかる身分という壁は、卿にとって、
余りにも高いものだったのです。

そう、それこそ、「教育」という名目がなければ、
姫に触れることもかなわないほどに…。

卿は、不思議そうに自分を見やる姫を見つめ返すと、
言葉を返す代わりに、想いのたけを体で伝えることにしました。


460:絶望・草双紙 8/9
07/10/04 20:06:41 phF+9Lop
先ほどよりも、さらに、激しく、強く、深く。
まるで、自分の想いをあらわすように、卿は姫に体をぶつけていきました。

「――卿、卿!!」
「――姫!!」

姫と卿とは、同時に昇り詰め、果てたのでございます。



姫は、どうやら気を失われておしまいになったようでした。
卿は、姫の髪をなでながら、
自分がつけた紅い花びらを体中に散らせた姫を眺めておられました。

――これは、お手打ち、ですかね…。

今日の夜、姫が湯殿に入る段になれば、姫の白い体に散るこの跡が、
お女中達に、ばれないわけがありません。
そして、それを誰がつけたのかも…。

――仕方ありませんね、それだけのことをしたのですから…。

卿は苦笑されました。
姫と想いを遂げた今、例え罪人として裁かれても悔いはありませんでした。

と、姫が薄らと目をお開けになりました。
「卿…。」
「姫。お目覚めでございますか。」
「卿、逃げよう。」
「…!?」

卿は、驚いて姫を見つめました。
姫は、今やしっかりと目を見開いて卿をご覧になっておいでです。
「卿、わらわは、卿に教わって分かった。
 このようなことを、卿以外の男とすることなど、わらわにはできぬ。」
「…。」


461:絶望・草双紙 9/9
07/10/04 20:07:20 phF+9Lop
まだ、口がきけない卿に、姫は起き上がると尋ねました。
「それとも、卿は、わらわが嫌いか?」
「そ…。」

不安気な色を見せながらも、想いを込めて見つめて来る姫の眼差しは、
卿の胸の中の不安や恐れ、そしてためらいを溶かしていきました。

卿は思わず手を伸ばし、姫を胸にしっかりと掻き抱きました。
「そんなこと、あるはずがないじゃないですか!
 私は…私は、…ずっと前から、姫をお慕いしておりました!!」
姫は、その言葉に驚いたように目を瞬かれましたが、
次の瞬間、卿を見上げると、心から嬉しそうに笑われました。

「そうとなったら話は早い。行くぞ、卿!!」
姫は手早く着物を纏うと、卿の手を引っ張って立たせました。

「って、えええええ、今ですかーーー!?」
「何を言っておる、善は急げじゃ!!」

姫は、持ち前の運動神経で、卿の手を引いたまま縁側を飛び降りると、
そのまま庭を突っ走って、ひらりと塀を乗り越えました。

最初は、戸惑いながら手を引かれていた卿も、
やがて、笑いながら、姫について走り出しました。



その後のお2人の行方は杳として知れません。

しかし、それから間もなく、江戸の片隅に小さな寺子屋が開かれ、
そこには、すぐに絶望したがる先生と、いつもBL本を抱えている奥方のご夫婦が、
いつまでも仲良く住み暮らしておりましたとさ…。

ということだけを、皆様にお伝えして、
このお話は、これにてお開きということにいたしましょう――。

とっぴんぱらりのぷう



462:絶望・草双紙 9/9
07/10/04 20:12:17 phF+9Lop
以上です。
あれ?先生いつの間に服脱いだんだ?…まあ、いいか…。

自分の中では先生×藤吉さんってCPはなかったんですけど、
パラレルだといけるもんだなあと思ってしまいました。

きっと、この先、
苦労性の寺子屋教師の先生と、世間知らずでおきゃんな奥方の晴美との
若夫婦を中心に繰り広げられる、江戸下町人情喜劇が始まるのですよ。

近所の小間物屋のきっちり娘の千里とか、両国の猛獣遣いあびるとか、
江戸でも有名な仏師の景兄さんとか、地丹が下っ引きで登場したり、とか。
ああ、アホな妄想が止まらなくなってきたのでこの辺で。


463:名無しさん@ピンキー
07/10/04 20:12:46 /1mZHgOf
>462
ワロタ&GJ!

464:430
07/10/04 20:23:36 phF+9Lop
あ、>>462のメル欄、タイトルミスった…orz

465:名無しさん@ピンキー
07/10/04 20:48:24 52hiGSPn
うわあ、いいなあ
面白かったですGJ!

466:名無しさん@ピンキー
07/10/04 22:23:35 rEomIRdW
>>415-419の続きが出来たので投下させて戴きます。
前篇同様5レスです。スレ汚しですがどうかお許し下さい…

467:ぶれた慕情 後篇1/5
07/10/04 22:24:26 rEomIRdW
「先生!」
 息を切らして宿直室の扉を開けると、望はちゃぶ台を前に、湯呑みのお茶
をすすっていた。
 壮絶な女生徒の嵐はもう去っていたらしい。いつも望にくっついている筈
のまといがいないのは、嵐に巻き込まれたためか。

「ふ、風浦さん…!」
 こわばった望の表情は、まるで「最大の敵が現れた」とでも言っているよ
うで、可符香は心にチクリと痛みを感じた。

 それでも笑顔は崩さず、
「やだなぁ、そんなに怯えないで下さいよ。私はただ、先生がみんなから逃
げきれたかどうかを見に来ただけですよ?」
「そんな事を言って…あなたはまた、私の心のスキマにつけこんで酷い目に
あわせようというんでしょう!」

(先生は疲れてるんだ。千里ちゃんのスコップや、まといちゃんの包丁から
逃げきって、クタクタになってるんだ…)

 そうは考えて見たが、望にたいする恋慕の心が最高潮にも達している可符
香にとって、この望の一声はきついものがあった。
「そんな…怒鳴ることはないじゃないですか…私は本当に先生を心配して来
たんですから」
 しゅんとうなだれてしまった可符香の姿に、望はわずかに罪悪感を感じた
が、すぐにハッとして言った。

「もうその手には乗りませんよ!焼け太りの時もそうでした。あなたのその
表情にすっかり騙されて、ひどい目に遭いましたからね!」

 この言葉が可符香にとどめをさした――

468:ぶれた慕情 後篇2/5
07/10/04 22:25:28 rEomIRdW
 誰からも支えられず、震えていた。
 震えを隠すため、ぶれまくった。

 支えてくれるのはこの人しかいない――そう思っていた人から、こうも
続けざまに嫌悪の言葉をかけられたのは、今の可符香にとってこの上なく酷
だった。

「ぁ…」

 かすかな声と共に、一粒の涙が――可符香の頬を伝った。
 自分でも思いがけない事だった。
 可符香の本体が、笑い仮面を破って表へ出てきた瞬間と言っていい。
 ここ何年も…いや、10年近く封じ込めていた涙は、ひとたび流れ始めると
止まらなくなった。

(嫌…先生に涙なんか、見られたくない…!)

 だが、体に力が入らない。可符香は宿直室の畳にがくんと膝をついた。

「ふ。風浦さん!?」

 望は慌てて立ち上がり、放心状態で涙を流しつづける可符香の肩を掴んだ。
 その動作があまりに素早かったためか、ちゃぶ台の上の湯呑みはかなり間
を置いて倒れたかのように思えた。

 可符香の眼からは涙が溢れつづけているが、泣き声といっては嗚咽の声ひ
とつ聞こえない。彼女はただ無表情に、虚ろな瞳を濡らしつづけているのだ。

「せん…せ…い…」
 およそ1分程の沈黙ののち、可符香は口を開いた。
 目の前には夕焼けを横顔に浴びた望が、心配を通り越して尋常ならざる面
持ちでこちらを眺めている。
(いつもはこういう時に、余計な事を言って先生に嫌われちゃうんだよね…
 でも…今度こそ、今度こそは先生を逃さない…!)
 可符香は望の胸に顔をうずめた。

 初めて嗚咽の声が聞こえた。


469:ぶれた慕情 後篇3/5
07/10/04 22:26:04 rEomIRdW
 宿直室の押入れでまどろんでいたひきこもり少女・小森霧は、押入れの外
界のただならぬ気配にハッとして目を覚まし、そっと戸を3センチほど開け
て様子を見て、ドキッとした。
 それは何か、見てはならないものを見てしまったような驚きだった。

 風浦可符香が、糸色先生にすがりついて、しきりにしゃくり上げている。
 驚いているのは望とて同じだった。

「風浦さん…一体どうしたんですか…!?」
 さっきまでこの少女に感じていた苛立ちのような感情はすっかり消え失せ
てしまい、予想外な状況に戸惑うより他ない…そんな様子だった。
「すみません、先生が言い過ぎました。謝ります…だから…そんなに泣かな
いで下さい。風浦さんらしくないですよ…?」
 望がそう言っても、可符香は黙って首を振るばかりだった。

 決着のつかない激闘を終え、宿直室に帰還を果たそうとした常月まといも、
中で風浦可符香が泣き伏しているのを見て、思わずドアの陰に身を隠してし
まった。

 望の胸に押し付けていた頭を離した可符香。シンボルの髪留めでまとめた
前髪も乱れている。
 空を赤く染めていた夕日も既に沈んでいたが、可符香の頬はまだ紅潮して
いた。潤んだ大きな瞳でじっと見つめられ、伏目がちな望も目をそらせなく
なった。

「これが糸色家のお見合いだったらいいのに…」

 可符香が発した言葉は、望の聞きなれた作り物の、明るいトーンではな
かった。それは、可符香が心から思っていることなのだ。


470:ぶれた慕情 後篇4/5
07/10/04 22:26:43 rEomIRdW
 押し入れの中の少女は、赤くなって戸を閉めた。これ以上見てはいけない
ような…そんな気がして、推し入れの中でじっと体をこわばらせた。
 宿直室の扉の外にいる少女もまた、足音をたてないように小走りで走り
去った。これ以上見ていたくない…そう思って。

「先生は悪い先生です…生徒の本心を分かってくれない…」
「風浦さん、あなたは…」
「そうですね…私が駄目なんですよね…こんなに先生のことが好きなのに、
いつもいつも嫌われるようなことばかり。人の弱味につけ込む悪い女なんて
先生は嫌いですよね…」

 ポジティブな電波少女の殻を破って出てきた可符香の本性は、望よりずっ
とよく絶望を知った…心に深い傷を持つ痛々しい乙女だった。
 太宰気取りの通称‘絶望先生’糸色望にもそれが分かり、眼から熱い涙が
どっと溢れてきた。今度は自分から、可符香を引き寄せて強く抱きしめる。
可符香の方でもつよい抱擁に応え、腕を望の背に回して抱きしめる。

 ぶれぶれ人間でもきっと、先生がいたら変わる…

 また可符香の眼から、涙が流れはじめた。
 今度は、人並みの泣き声を伴って…

471:ぶれた慕情 後篇5/5
07/10/04 22:27:21 rEomIRdW
 翌日。
 始業のチャイムと共に教室へ入ってきた望を迎えたのは、真ん中分けの前
髪をすっかり乱し、不安定なる精神状態を表したきっちり少女と、その後ろ
に殺気を放ちながら控える小節あびる、日塔奈美、音無芽留らだった。

「先生…。昨晩は、可符香さんが宿直室に行っていたそうですね…。一体何
をしていたんですか…?」
 静かな調子だが、一音一音に恨みがこもっている。

 教卓の方をちらりと見ると、腫れぼったい眼をしたまといがじっとこちら
を睨んでいる。一睡も出来なかったという様子だ。
 まといに見られてしまったのか――
 
 予期せぬ可符香の闖入。まさに「鳶に油揚げ」で、同じように望を奪い合
う好敵手の千里にまといが告げ口をしたとしても何の不思議はない。

「木津さん、落ち着いて下さい…!昨晩、確かに風浦さんは来ましたよ。で
も、私は何もやましいことはしていませんからね!風浦さんは疲れて寝てし
まったので、添い寝をしただけですからね!」
「へぇ…、可符香さんと一つ布団で…。それで、何もなかったと言い張るん
ですか…?」
 千里の前髪がさらに二房、三房はらはらと乱れる。

「あぁっ!絶望した!PTAやマスコミに散々叩かれるであろう未来に絶望
したぁ!!」
 絶叫する望に、今しも躍りかからんとする女生徒陣。だが、

「本当だよ、千里ちゃん」

 という可符香の声に、皆ぴたりと動きを止めてしまった。

「先生の言う通り……添い寝しか、してもらえなかった……」

 ぽつりと放ったその言葉。千里をはじめとする、望に恋する少女達の耳に
は、とても嘘には聞こえなかった――

472:ぶれた慕情 完
07/10/04 22:28:58 rEomIRdW
 アニメ主題歌「人として軸がぶれている」が可符香の事を歌っているように

473:名無しさん@ピンキー
07/10/04 22:33:04 rEomIRdW
書き込みミスしましたorz

 アニメ主題歌「人として軸がぶれている」が可符香の事を歌っているように思えて
書いてみました。同じ軸がぶれた人間として、どうしてもこの可符香は救われて欲し
かったのでエロも何もない終わり方に…絶望した!

474:名無しさん@ピンキー
07/10/04 22:57:44 OLuSbWj1
>>462
ふじよし姫キターーー!
それにしても仕事はええなw 終わり方が良かった

>>473
カフカ切ないよカフカ どうしてカフカはこんなに不幸が似合うのか

475:名無しさん@ピンキー
07/10/05 06:11:05 d79Q60f4
ん?
昨晩は珍しくスレの伸びが悪かったな・・・と思ったがこれが普通なのか
アニメ終わって2週間だしそろそろ沈静化してきたのかね

476:名無しさん@ピンキー
07/10/05 06:21:22 fbRhDlH3
普通って言うなよ…

477:名無しさん@ピンキー
07/10/05 06:50:17 zpSEtdh+
私はいつもここにいます

478:名無しさん@ピンキー
07/10/05 07:13:26 QhmG7iVH
やっぱりアニメ化の影響は大きかったか。
ああ、あの頃は全裸待機も苦ではなかったなあ。

479:名無しさん@ピンキー
07/10/05 07:50:40 ZcVW00hB
>>478
豊作貧乏だったな・・って1晩に2本SS落ちてりゃ充分だとも思うが


480:名無しさん@ピンキー
07/10/05 07:51:39 DpdW5pAJ
以前ココで長編書いてた者ですが、アニメのキャラ付けの影響はありますね。
読む方にも書く方にもアニメの影響は少しながらあるんですかね。

しかし今週の藤吉姫や最近の芽留はやばいですな。


481:名無しさん@ピンキー
07/10/05 09:29:13 HUbT2DuZ
カフカSSが増えたのは完全にアニメの影響だろうね

482:名無しさん@ピンキー
07/10/05 12:16:39 IVBt7Moz
>>462
こういうの好きだなあ
鬱からギャグまで守備範囲の広い430氏の才能に嫉妬

483:名無しさん@ピンキー
07/10/05 13:44:02 awr/i7+h
大草さんの続きまだー?

484:名無しさん@ピンキー
07/10/05 17:32:24 fbRhDlH3
これだからゆとりは…
数日間すらガマンできんのか。
いい作品作るのは大変なんだぞ。
作る人の気持ちを少しは考えろ。

俺は何も作ってないけどね。

485:名無しさん@ピンキー
07/10/05 18:01:31 dwz6z0I8
まあでも待たれないより待たれた方が書く側としても励みになるんじゃ・・・



と、読み専の俺が擁護してみる

486:105
07/10/05 19:24:19 Bdn3yZFz
書き込みが出来る・・・かきこみできるぞおおあああああ1!!
・・・すいませんeo-netは可変アドレスだからホームサーバーが集団拒否うんたらかんたらとかで・・・
平たく言うとアク禁になってました・・。絶望しましたよ、ええ。

というわけでしばらく見ないうちにまた神さまがふえましたねえ・・・。
藤吉さんが可愛くて好きかも。
ツンデレラのSSが一応完成しているのですが、この神ラッシュには迷惑ですかねえ?
次の三択でお願いします

→スルー
→お前にはハッキリ言ってやる必要があるようだな、カエレ!お呼びじゃねえんだよ!!
→別に!投下したきゃ勝手にしたらいいじゃない

>>213
430氏、貴方が正しいんですよ。でもそう言っていていただくとありがたいです・・・。orz
それよりも前スレではろくなあいさつも出来ずに駄文投下してすいませんでした。

某妖怪漫画というのは解りませんが、命兄さんは悩んでいてもカッコイイですねえ
(*‘o‘* )ほわーってかんじです

487:名無しさん@ピンキー
07/10/05 19:26:47 P4D8pPBv
べ、別に投下してほしいなんて思ってないんだからねっ!
誤解しないでよねっ!(ぷいっ)

488:名無しさん@ピンキー
07/10/05 19:35:53 r1GnTy6w
お前にはハッキリ言ってやる必要があるようだな、投下!読みてえんだよ!!


489:名無しさん@ピンキー
07/10/05 19:56:31 ky2Zb/na
俺がどれだけツンデレラの続きを待ってたと思ってるんだ!
続きが気になるので携帯を使ってでも投下してください。

490:名無しさん@ピンキー
07/10/05 20:05:17 A+fAZwa0
困ります!投下して下さらないと困りますッ!!というわけで投下、投下。

491:105
07/10/05 20:20:16 Bdn3yZFz
ううう・・・。コノスレノヒトタチヤサシイ・・・てゆうか世界一優しい!!「神様みたいないいk・・・」人!!
(勝手に改蔵&人間失格わからない人すいません)
では、ツンデレラ続き投下させていただきます。お前の駄文なんて忘れたってのって人は>>194>>195>>196
ごらんくださいまし・・・。もう話の流れは皆さんご承知の上でやるわけですから、エロ無しパロとして、
コメディ的なおもしろみを作るためにずいぶん長く(約700行)なってしまいました。
なので、小出し小出しにしていくことをお許し下さい・・・。
またアク禁の悪夢が帰ってこないよう祈りつつ・・・。

492:ツンデレラ4
07/10/05 20:22:16 Bdn3yZFz
ある日、お城では舞踏会が開かれました。ツンデレラの家も招待を受けましたが、
ツンデレラはドレスはおろか、まともに人前に出られるような服を一つも持ってはいませんでした。
靴も与えられてはおらず、まして装飾品など・・・。
ですから、彼女はお留守番。お城へ向かう継母たちをお見送りします。
継「じゃあ、ツンデレラ。私たちが留守の間、お掃除きっちり頼むわね。」
ア「ラインバックのご飯、忘れないでね」
カ「サボるんじゃないわよー、キャハハ」
ツ「ハイ、ハイ、ハイ、行ってらっしゃいまし・・・・・・・・・・・・・はあ」
三人を乗せた馬車が、一人の影を残してガタゴトと走り出した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ア「クスッ・・・ゴキゲンね」
カ「そりゃあそうよ。今日の舞踏会はいつもと違うのよ。何たってあの王子様が、
国中の女たちを集めて、嫁探ししようってんだから。テンション上げなきゃ!」
ア「その噂本気で信じてるの・・・?」
カ「何よその目は。この噂が嘘だろうと、今日の舞踏会は大変なことになるわ。
どの女の子も、王子様に言い寄っていくに決まってるんだから。戦場よ!」
ア「まあ・・・貴方の言うことも一理あるわねえ」
カ「でしょう!!こうなったら私のフェロモンで王子様をイチコロにしてやるんだから。
そうすれば私は、この国のお后様!!」
継「フフ、頑張ってね。」
ア「(王子様が好きってワケじゃないのね・・・)」
カ「・・なんで無言なのよ、お姉様。イイトコもっていかないでよね」
ア「はいはい・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

493:ツンデレラ5
07/10/05 20:23:03 Bdn3yZFz
家に一人残ったツンデレラは、継母の言うとおり、お屋敷の隅々まできっちりお掃除しました。
長女の言いつけもきっちり守って、庭にペットの虎のラインバックにエサをあげに行きます。
虎をペットにしているだなんて、アラジンのお姫様とここぐらいでしょうか。
ラインバックのエサは、ツンデレラの日々の食事より高級そうです。
ラインバックはこれ見よがしに美味しそうにかぶりつきます。
ツ「ふふっ、おいしいですか?よかったです」
ラインバックは嬉しそうにのどを鳴らしました。
そんな虎の可愛らしい姿に癒されながら、ツンデレラは胸元のポケットから紙を取り出います。
それは、今舞踏会に出席されているであろう王子様の写真でした。
カエレッタに投げつけられたボロボロの紙くずを、きっちり修復したものでしたが、
彼女に返すことが出来ずにいた。それからは、ツンデレラの宝物になっていました。
ツ「あああ・・・、私のような者がねこばばしてしまうだなんて・・・でも・・・」
写真の王子様は、ほっそりとして、育ちの良さそうな顔立ち。色白で、品のいい口元と、綺麗な目をお持ちです。
ツンデレラの心の中に初めて、ワガママな、この写真を自分の物にしたいという、確固たる強いキモチがありました。
そしていつしかこんな風に思うようになりました・・・。
ツ「このお方に、お会いしたい・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

大陽がもう沈んでしまった頃、ツンデレラはまだラインバックと共に庭にいました。
ツ「ああ、でもできませんよね。私みたいな者が舞踏会にいこうだなんて、王子様にお会いしようだなんて、
迷惑ですよね・・・。迷惑ですよ・・・・・・。」
さっきからずっとこうして自分に言い聞かせるようにして、ブツブツと独り言を言う。
しかしいつまでも、心の中の新しい気持ちを、消し去ることが出来ませんでした。
ツ「だめえ!!!何時までたっても、衝動が抑えられないいい!!!!」
ツンデレラはとうとう真っ青になって、狂ったように叫びだした・・・!
ツ「このままでは数多くの方にご迷惑をおかけしますから・・・。・・私はもう、死ぬしかないでしょう・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

494:ツンデレラ5
07/10/05 20:23:57 Bdn3yZFz
お屋敷の庭は裏手の森の方につながっている。
食後に気持ちよさげに寝ころぶラインバックを横目に、ツンデレラは森の方にゆっくりと歩き出した。
ツ「この気持ち、押さえられない・・・。このままじゃあ多大の方にご迷惑おかけしますから・・・。」
ツンデレラは裸足のままで森の中に入っていった。
森の中は暗鬱としていて、枝葉は僅かな月の光さえすくい取っていた。
ツ「ううう・・・暗い。それに、死ぬんだったらロープの一つでも持ってくるんだった・・・。」
暗い森の中をずいぶん進んで、彼女は心身共にボロボロになっていた。
ツ「どこかに死ねる場所はないかしら・・・。?ん?あれは・・・」
ツンデレラの目線の先には、闇の中で輝く光が見えた。しかしそれは家屋からの光とかではなく、
逆光でハッキリしないが、人影のような物が見えた。
ツンデレラはいつの間にか走り出していた。暗い中、激しく憔悴した状態で、誰でもいいからそばにいて欲しかった。
あの人にロープを借りよう。あの人に殺して貰おう。そう考えて走っていた。
ツ「あのッ!!」
謎の人影はゆっくりとこちらを向いた。それはマントに身をくるんだ若い女性だった。
くりくりっとした瞳と、ポニーテールが印象的だ。
手に持っていたのは、てっきり松明だと思っていたが、何か杖のような棒の先端が光っていた。
そんな彼女の出で立ちにツンデレラは二の次を継げない。
ツ「あ・・あの・・・」
謎「?・・・」
困ったような顔をしたツンデレラに、謎の女性が優しく微笑みかける。
謎「どうしたんですか?」
その一言に、ツンデレラは救われた気がした。心に出来ていた隙間を、彼女に埋められていくような感覚。
ツンデレラは無意識に、彼女に泣きつき、事のイッサイガッサイを話していた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

495:ツンデレラ5
07/10/05 20:24:58 Bdn3yZFz
はい、ここで105です。このあとも読み返すと私の趣味全快で・・・。キャラ崩壊気味ですので先に謝りますすいません。
ここらでまあ様子を見るというか・・・。すいませんでした。また明日会えると思いますが、今日はこれで失礼します。


496:105
07/10/05 20:56:55 Bdn3yZFz
っておいいいいいいい名前まなえ欄がああああ絶望したあああ
一週間ぶりに投下するとこれだもう絶望

>>494がツンデレラ6、>>495が105です。スレ汚してすいません
投下し終わったら謹慎します

497:名無しさん@ピンキー
07/10/05 21:10:10 ManXCldw
なんか来週の絶望先生は加賀ちゃんが大変なことになっているらしい

498:名無しさん@ピンキー
07/10/05 21:45:26 qARHurWg
どっちみちセンターカラーだから買うことに変わりはないのだが
wktk

499:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:04:39 mOUdJJ6E
nininiにににににに2222期キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!

500:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:12:57 rmQmuZ8k
>>496
GJ。謎さんが明らかにおっきな草さんな気がするのは気のせいですか。

真昼が雪。これにて完結です。
もう一気に投下させてもらいます、故にちと長いです。10レスほど。

501:真昼が雪 62
07/10/05 22:14:15 rmQmuZ8k

◇ ◆ ◇ ◆

望はせり上がってくる激痛に、堪らず目を覚ました。
「――……ッ!!」
悲鳴を上げそうになるのを必死に堪える。愛しい少女の。優しい眠りを妨げぬように。
望は痛みに身体を震わせながら、可符香の身体を抱きしめる事でそれを凌いだ。
穏やかな彼女の呼吸が、少しずつ望の苦痛を緩和していく。
「――は、ぁ」
苦痛の波も過ぎ去って、涙目になりながら、腕の中の少女の顔を覗き込む。
望の異変には気付かなかったようで、穏やかな表情のまま、静かに寝息をたてている。
望は愛おしげに、小さな微笑を浮かべた寝顔を撫でた。
そっと目尻に溜まった涙を指で拭うと、彼女を起こさないように細心の注意を払いながら身体を起こす。
彼に許された時間は、もう大分オーバーしている。
今頃彼の兄はやきもきしながら、弟からの何らかの連絡を待っているに違いない。
命の様子を想像して失笑しながら、彼はゆっくりとベッドから降りようとした。
と。自らの着物を掴む小さな掌の感触に、思わず動きが止まる。
望は小さく苦笑しながら、そっとその手に自らの掌を重ねた。
「―すみません、可符香さん―」


愛してます。


小さく呟き、そっとその手を解くと。
彼は覚束ない足取りで、保健室を後にした。

後にはただ、独り眠る少女だけが残された。

◇ ◆ ◇ ◆

寒い。
とても寒い。
さっきまで、とても暖かなものに包まれていたはずなのに、今は堪らなく寒かった。
それがとても寂しい事に思えて、彼女は喪失感の中で目を覚ます。
 
もうベッドには、愛しき人の残り香すら、残っては居なかった。

「―せんせ……?」
迷子の幼子のような表情で、ずっと一緒に居るはずだった彼を呼ぶ。
返事はない。
「先生……糸色先生……」
うわ言のように「先生」と繰り返しながら、彼女は覚束ない足取りで、保健室を後にした。
窓から差し込む日の光が、誰も居なくなった室内を、明るく照らしていた。

彼女は迷子のように学校を彷徨う。
時刻は早朝。まだ、部活動のある生徒すら登校してきていない。

教室。誰も居ない。
宿直室。そっと中を窺うと、交と小森が寄り添って眠っていた。
職員室。教職員の何人かは来ていたものの、彼女の求める彼の姿はない。
果ては男子トイレまで赴くも、彼女はとうとう、学校内に彼の姿を見つける事は出来なかった。


502:真昼が雪 63
07/10/05 22:15:42 rmQmuZ8k

先生はどこ?
その答えを知りながら、彼女は彼を探す足を止められない。
気が付けば彼女は校門を越えて、いつも通るあの並木道を歩いていた。
「―あ」
彼女の視界に、一本の大樹が映りこむ。
今は桃色ではなく紅に色づいている、大天使様の木の根元。
そこに眠っている、一匹の名も無き犬の事を、彼女は忘れていなかった。
「お祈り……しなくちゃ」
彼女は小さく盛り上がった土の前に跪く。
あの時逃げ出した、悲しい命の結末に、真正面から向き直る。
可符香はそっと目を閉じて、しばらくその場を動かなかった。
本来ならばあの時、彼と二人で祈るはずだった冥福を、心から願う。
そこに。

「―おはよう、杏ちゃん」
風が、紅葉と共に懐かしい匂いを運んでくる。
背後からかかる声に振り向くと、そこには本を携えて佇む、久藤の姿があった。
「准君」
「何をしてるの?」
久藤はしゃがみ込んだままの可符香のもとまで歩み寄る。
「……お祈りをしてたの」
事の次第を話すと、久藤は黙って頷いた。可符香に倣って静かに目を閉じ、黙祷する。
「―准君。先生に合わなかった?」
自然と、その問いが唇を滑り出ていた。
ああ、今朝そこで会ったよ―何ていう、軽い返事をほんの少しだけ期待して。
日常の象徴である彼の口から、元気な望の姿を見たと聞けたなら、彼女は心から安心できただろう。
だが、それがありえない事という事も、彼女は知っている。
「…………」
久藤は答えなかった。
ただ静かに目を閉じて、すっかり冷たくなった風に、髪を撫でられるままにしている。
「……うん、ごめんね」
くだらない質問をしたと、申し訳無さそうにする可符香に、久藤はそっと首を左右に振った。
「謝る事ないよ」
「……私、何となくだけど知ってるの―先生が今、本当はどこにいるのか」


503:真昼が雪 64
07/10/05 22:17:27 rmQmuZ8k

 
眠る可符香の髪を撫でて、そっと寝床を出て行く望。
愛しい少女に自分の苦しむ姿を見せぬよう、彼はそっと保健室を後にする。
その足で、兄の下に向おうとして――

耐えかねたように、彼は地に膝を付く。


そんなイメージが可符香の脳裏を過ぎる。まるで年老いた猫のようだと、彼女は思った。
「知っているなら、行けばいいんじゃないかな。先生の所へ」
「うん―うん。そう…だけど」
彼が自ら消えた理由を深読みしてしまって、可符香の足は、その場所へ動いてはくれなかった。
可符香は口を閉ざし、俯いたまま黙して語らない。
二人の間に、沈黙が降りた。
カサカサと、地面に積もった枯葉が奏でる音だけが、静寂を満たす。
先に口を開いたのは、可符香の方だった。
「ねぇ准君」
「何?杏ちゃん」

「私ね―先生が好き」

顔を上げて、久藤の目を直視しながら、可符香は言った。
久藤は一瞬、ほんの僅かに悲しげに笑って―すぐにいつもの優しい微笑に戻る。
「そう……良かったね。本当に」
そう言う久藤の声は、本当に嬉しそうだった。
「最初はね、好きじゃなかった。
 ―ううん…きっと、嫌いだった。一目惚れなんて嘘だった」
想いが、言葉になって溢れ出す。
こんな事を彼に言っても、迷惑なだけだとわかってはいたけれど。
彼女の口は止まる事無く、胸中に渦巻く想いを吐き出し続ける。
それは愛の告白であり、懺悔でもあった。

「くだらない人だと思ってたのに……いつの間にか本当に好きになってたんだって、やっとわかった。
 ―そしたらね、先生も……私のこと好きだって、言ってくれて……」
久藤はただ、静かに可符香の言葉に耳を傾ける。
深く深く頷きながら、泣き出しそうな彼女の声を聞いている。
「嬉しかった―抱きしめられて、思いっきり甘えて……幸せだった。
 先生は暖かくて……こんな私でも、優しくなれる気がしたの」
傍に体温を感じるだけで、波打つ気持ちが静かになった。
日頃あんなに落ち着きの無い人なのに、あんなにも穏やかな顔で笑うとは思わなかった。
たった一晩の触れ合いで、これほど愛しさが込み上げるなんて、思わなかった。
「なのに―なのに、幸せなのに」



504:真昼が雪 65
07/10/05 22:18:37 rmQmuZ8k

嘘モノじゃない。勘違いじゃない。自己暗示でもない。
本当の幸せに包まれて、とても優しくなれた。
なのに。


「先生……、居なく、なっちゃう―」


限界まで瞳に溜まっていた涙が、とうとう溢れ出し、彼女の頬を濡らした。
自分がこんなに泣き虫だと―それを気付かせてくれたのもまた、望だった。
ぼろぼろと涙を零す可符香の肩に、久藤はそっと手を回した。

「それは―悲しい事だね……」
それはこの上なく、悲しい事。とても不幸な事だ。

「――うぁ……ッ、わぁぁああ……ッ!」
可符香はもう声すら抑えられなくなって、子供のように泣きじゃくりながら久藤の胸に縋りついた。

彼女は深く傷ついている。どうしようもなく怯えている。
愛しい人を失うという、悲しい現実に、
逃げる事なく、言い訳を並べる事無く、真正面から向き合って。

(そっか……先生、上手くやれたんですね……)
望がそうしたように、縋りつく可符香の髪を撫でながら、久藤は胸中で呟いた。
彼女の嘆く姿はとても痛ましくて、久藤の心も酷く痛む。

けれどその涙の先に――いつかまた、桜の下で微笑む彼女の姿が見える気がした。

大丈夫。
彼女はもう、大丈夫だ。
逃げる事無く、悲しみに正面から向き合って、こうして涙を流せるのだから。
久藤は心から望に感謝して、聳え立つ大樹の先にある空を見上げた。
まるでそこに、望の姿があるように。

◇ ◆ ◇ ◆

今はまだ、貴方に会えるかもしれない。
もしも貴方に出会えても、笑おうとして泣くだろう。
それでも会えるものならば、会って貴方に伝えたい。

あの夜伝えられなかった、「好きだ」というこの気持ち。

◇ ◆ ◇ ◆


505:真昼が雪―エピローグ― 1
07/10/05 22:20:20 rmQmuZ8k

~エピローグ~


大勢の足音が、不規則に入り乱れて廊下を反響する。
各々皆、汗を額に張り付かせながら、我先にと駆けていく。

2のへの生徒たちは、今朝のHRで初めて担任教師の病を知る事となった。
智恵からその話を聞いた生徒たちは誰からともなく席を立ち、教室を飛び出した。
望の病室は、もうすぐそこである。
先頭をきっていた千里はすぐさまドアに飛びつき、
「―先生!!」
悲鳴に近い声を上げながら、勢いよく開け放った。
 
糸色望は、静かに瞳を閉じて、そこに横たわっていた。

弟の眠るベッドの傍に立ち尽くしていた命は、ぞろぞろと病室に入って来る生徒達を驚いたように見つめた。
「あなたたち、授業は――」
そんな無粋な事を言いそうになって、すぐに口を閉ざす。
そう、彼女達にとってそんなものよりも―弟の存在の方が大切だったのだ。
「……先生……」
誰かが、呆然と呟いた。
 
望はそれに答えない。
青白い顔で、深く静かに眠っている。

皆、言葉を失ったように口を噤んだ。
カーテンの揺れる布ずれの音だけが、無言の病室を満たす。



――その無音を打ち破ったのは、マリアの声高な掛け声だった。



「センセー、おっきろー!!」
ッどずんば!
生徒達の隙間をぬうように駆けてきたマリアは、そのままの勢いで望の胸の上に飛び乗った。

「ッうっぶぇ!」

望は途端に目を見開き、喉の奥から潰れた蛙を思わせる奇声を発して痙攣した。
「ああちょっと!」
慌てたような命の声など完璧にスルーして、マリアは何度も何度も望の身体の上で跳ねた。
「起きろ、起きろ、おっきろ~!」

506:真昼が雪―エピローグ― 2
07/10/05 22:21:43 rmQmuZ8k
「ぶ、ぅぶぇ…!」
バタバタとのたうつ望だが、軽い少女一人すら跳ね除けられないほど非力な為、成すがまま悶絶するしかない。
さすがに見かねて、助け舟を出す千里。
「マ太郎。もう起きてるから、降りなさい」
「でも、なんかグッタリしてるヨ」
「それは貴女の所為」
どうやらワザとではなく、本気で気付いていなかったようだ。
千里がマリアをベッドから降ろすと、望は勢いよく咽込んだ。
「ひ、酷いじゃないですか…ッ!病人なんですよ!?」
「元気そうじゃないですか」
涙目で訴えるが、即座に奈美からの普通の突っ込みが入る。
「いや…、わりとそうでもないんだけど」
生徒達のテンションに気圧されたように、おずおずと命が言った。
「ただの胃炎といっても、放っておけば十分危険なんだから」

急性外因性胃炎。
暴飲暴食や、刺激物、アルコール類を飲みすぎた時などに起こる胃炎である。
初期症状は上腹部の痛み、胃の不快感。酷くなると嘔吐、吐血などを引き起こす。

「そうですよ。血だって吐いたんですからね」
「―何でだろ。確かに心配な話なのに、本人が言っちゃうと途端に心配する気が失せるのよね」
あびるの呟きに、芽留は『かわいそぶりっこはいつものことだろ』とメールに打ち込み、それをあえて望の携帯に送信した。
病院内ではくれぐれも携帯電話の電源はお切りください。
「体調管理くらい、きっちりして下さい。大人なんだから」
「ぜ…絶望した。わりと重病なのに少しも心配してくれない生徒達に絶望した…」
望は拗ねたように布団の中に潜り込み、スンスンと泣き出した。
「ふんだ。もう帰ってください、私は病人なんですから」
「どうせカワイソぶるならカーテンの裏とかで、
『何だよ~病人なんだぞぉ、はうはうはう~!』くらいやればいいんですよ、先生」
「それは先生違いです!」
邪な希望を目を輝かせて言う藤吉に、布団から頭だけ出してツッコむ望。

507:真昼が雪―エピローグ― 3
07/10/05 22:23:02 rmQmuZ8k


――そんな喧騒を、ドアの向こうから、笑顔で見つめている少女が一人。


「―あ」
望はその少女の姿を見止めると、顔を引き攣らせて硬直した。
それを胃の痛みによるものだと勘違いした命は、コホンと一つ咳払いして、
「申し訳ないが、そろそろ休ませてやってくれないか?
 まぁ自業自得とはいえ、患者である事にかわりはないからね」
ワイワイと騒ぐ生徒達に、帰るよう促がした。
「貴女も」
「…ちぇ」
いつの間にかベッドの下に潜り込んでいたまといにも釘を刺しておく。
生徒達はしばらく名残惜しそうにしていたが、来た時と同じような騒がしさで病室を後にした。
あの様子では、またぞろ日を改めて来るだろうと、その時の事を考えて命はうんざりと溜息を吐いた。
「絶命先生?騒がしくしないから、あとちょっとだけお話させてくれません?」
「「ひあぁッ!?」」
気配もさせず病室に入り込んできた可符香の声に、ステレオで悲鳴を上げる男が二人。
あわあわと布団の中で冷や汗をかく望に、可符香は眩しいばかりの笑顔を向けた。二度目の悲鳴が上がる。
可符香は今度は命に向き直り、優しい声で問いかけた。
「ね、いいでしょう?」
声は優しいというのに、その質問に拒否権がない事を、命はひしひしと感じていた。
「い、いいですが―それより貴女いつ入って来たんですか。
 あと、私の名前は糸色命ですと何度言えば」
「じゃ、席を外してください。二人で話したい事があるんです」
命の抗議にも耳を貸さず、可符香は有無を言わさぬ態度で命を部屋の外へと押し出した。
「あ、ちょ、ま」

バタン。
命が何か言おうとしたが、かまわずに扉を閉めてその声を遮断する。
扉の閉まる音が何故か冷たく聞こえて、望は身震いした。
「あ、あの…」
恐々声を掛ける。その背が、何かオーラを纏っているような気がしてならない。
「先生?お話、しましょうか」

ゆっくりと振り返る可符香は、この上ない程の笑顔だった。

カーテンの裏で「はうはう」と嘆きたい衝動に駆られつつ、望はコクコクと頷いた。


508:真昼が雪―エピローグ― 3
07/10/05 22:24:20 rmQmuZ8k

◇ ◆ ◇ ◆

「さ、最初に言っておきますが、私は一切嘘なんて吐いてませんからね!」
「じゃあどうして怯えているんですか?」
可符香はあえてゆっくりとした動作で、ベッド脇に手を付いた。
布団で顔の半分を隠している望を、上から覗き込むように見下ろす。
「かかか、可符香さんがオーラで脅迫してるんでしょう!?」
「やだなぁ脅しだなんて。私が怒ってるわけないじゃないですかー」
今まで見たことのない、底知れぬ笑顔で見下ろされて、望は溜まらず悲鳴を上げながら身を竦ませた。
「そうですよねー。先生、一度も不治の病とは言ってませんでしたもんねー。
 エヘヘ、ですよねぇ―ぜーんぶ私の勘違いだったんですねアハハハハハハハハ」
「あうあうあう……」
空虚に笑う可符香の目は、少しも笑っていない。
いっそ布団の中に潜り込んでしまいたいが、何故か視線に射抜かれたように身動きが取れないでいた。
「もしかして最初倒れた時のアレは、胃炎ですらなくて二日酔いだったのかもしれませんねー」
「そ…そうかもしれません、ねぇ…?」

そう……思い返せば、誰も望が「不治の病」などとは言っていない。
望が倒れた後の命との会話も、ただ妙に思わせぶりだっただけで、望の死を匂わせるような事は何一つ言っていなかった。
命に望の容態を聞いた時も、彼はただ「胃をやられている」と答えただけだ。
可符香はそれを聞いて、てっきり胃ガンか何かだと思い込んでいた。
別れ際の言葉は「もう『しばらく』会えなくなるだろうから」とも受け取れる。

「でも……でも先生?
 さすがにあの夜の態度は―思わせぶりすぎじゃないんですか?」
言いながら、可符香はずいと顔を寄せて、望の目を真っ直ぐに見つめた。
「ひぃッ」
睨まれているわけでもないのに、望はその目に底知れぬ恐怖を感じて、思わず悲鳴が漏れてしまう。

今までの事例は、完全に思い込みだったと認められる。
けれどあの夜の望の態度は、どうしても自分を謀ろうとしたようにしか思えない。

509:真昼が雪―エピローグ― 5
07/10/05 22:25:56 rmQmuZ8k
「お、お言葉ですが可符香さん……よく思い出して下さい。
 あの時だって私は、一切嘘なんて言っていませんよ」
「そうですね―でも、わざわざそれを口に出して説明するのが、既に不自然なんですよ」
可符香が「望が死ぬ」と勘違いしている事を知らなかったというなら、
望はただキョトンとして、「何の事ですか」とでも聞いてくるだけだろう。
弁解するという事は、本人にやましい事があったという何よりの証拠だ。
「うぅ……」
今更ながら墓穴を掘ってしまった事を自覚して、望は喉の奥から呻きを上げた。


―ネタばらしをすると、望自身は彼女の勘違いに気付いていなかった。
おそらく彼―久藤准の口添えがなければ、泣きじゃくる可符香に「心配しなくても、ただの胃炎ですよ」とでも言っていたかもしれない。
図書室で倒れた後、実は少し、久藤と打ち合わせをしたのだ。
どうやら久藤も、望が重病を患っていると勘違いしていたようで、望がただの胃炎だと打ち明けると、久藤は逆にそれを逆手に取ろうと考えた。
「サナトリウム文学ですよ、先生」
どうやら可符香も自分と同じ勘違いをしているらしいと久藤に教えられ、そこで望は初めて可符香の心境を知るに至った。
そこで、心は痛むだろうが、最後まで彼女を勘違いさせたままにしてはどうかと、久藤は提案した。
可符香が「大切な人の死」という、この上ない不幸と真っ直ぐに向き合えたなら、
その時こそ彼女の心は、今よりずっと強くなれるだろう。
いわゆるショック療法というやつである。
その後、久藤が並木道で可符香に出会う所まで、彼の筋書き通りだったりする。


その全てを語ってしまえば、おそらく彼女の笑顔の矛先は久藤にも向くだろう。
さすがにそれは忍びなく、望はただ耐え忍ぶしかなかった。
「な―何を言われても、私は悪くなんてありませんッ」
必死に勇気を振り絞り―そのわりに弱弱しい声ではあったが―訴えると、可符香は少し間を置いて、ゆっくりと望から身体を放した。
彼女の纏う雰囲気が、幾分柔らかなものになったように、望には見えた。
プレッシャーから開放されて、ほっと息を吐きながら身体を起こす。
「そうですね……確かに、先生は悪くなんてない」
そう呟く可符香は、さっきまでとはうって変わって、何だか拗ねたように不満顔になっている

510:真昼が雪―エピローグ― 6
07/10/05 22:28:09 rmQmuZ8k
「――心配、しましたか?」
「はい。とっても」
反射的に謝ってしまいそうになる。が、悪くないと言い張った手前それも憚られた。
望は困った末に―そっと可符香の髪を撫でた。
「言ったじゃないですか、ずっと一緒ですよって」
可符香は少しの間、じっと撫でられるがままにしていたが、やがてクシャリと表情を歪ませた。
「はい……はい。先生は―嘘、つきませんでした」
嬉しいと。勘違いで良かったと、今更ながら思い直して。
可符香はまた泣き出しそうな自分の顔を見られないよう、望に抱きついた。
望は少し驚いたが、すぐにその背中に手を回して抱き締め返す。

「先生、私、言いそびれた事があったんです」
「何ですか?」
「私も好きですよ」
まるで望の口調を真似るように、彼女は望の耳元で囁いた。
その吐息がくすぐったかったのか、望の唇からクスクスと笑みが零れた。
「あれ、もしかして私、返事貰ってなかったんでしたっけ?」
「そうです。ですから、今まで先生は片想いだったんですよ」
「うわ、それは……つまり私は、好かれてもいない相手にあれだけの事を?」
「んー、強ち…そうとも言えませんけどね」
一目惚れではなかったものの、きっと自分はもっと以前から―彼の事が、好きだったのだろうから。
あえてそれは言葉にせず、可符香はそっと望から身体を放した。
首の後ろに回していた手を滑らせて、望の両頬に添える。

「じゃあ、両想いになった記念に」

可符香は彼の薄い唇に、そっと口づけた。

望は一瞬、驚いたように目を見開くが―すぐに目を閉じて、間近に感じる少女の香りに酔いしれる。
羽のように軽い口づけ。それだけでも、お互いの体温を感じるには十分だった。



カーテンの隙間から見える外の景色は、少しずつ冬の気配を強くしていく。
やがて雪が降り、景色を白く染めるだろう。
身を切るような寒さを経て、春が来て―雪解けがぬかるみを作り出す。
その泥に足を取られて、転ぶ事もある。どこか擦り剥いてしまう事だってあるだろう。
けれど今の彼女には、その痛みに耐えうるだけの強さがある。
一人で立ち上がれなくても、そっとその手を取ってくれる人がいる。
それはこの上なく幸せな事だ。
この幸せがあるならば、これからの一切の痛みにも、耐えていけるような気がした。



――雪どけを越えれば、今度は真昼に降る雪の季節がやってくる。
   日の光を浴びて輝く、桜吹雪の降る季節が――



―真昼が雪― 完。


511:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:33:46 PFsOgYvM
感動した!
そして笑った!
乙!
GJ!
最大級の賛辞を送りたいけどボキャブラリーがないのでスマソw

あと、勘違いかもしらんけどぱにぽに学級崩壊スレで書いてなかった、昔?

512:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:33:56 rmQmuZ8k
終わったー、そして>>508の名前欄ミスったー。
正しくは真昼が雪―エピローグ― 4です。最後の最後にナンテコッタイ。
まさかこんなスレ容量食いSSになるとは思いもよらず、ご迷惑おかけいたしました。
これにて真昼終了です、自分は読み専に戻ります。多分。
こんなエロなしSSに今までお付き合い下さりありがとうございましたー。うへぇしんどかった。

513:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:35:11 vnWnEy3D
真昼さん、素晴らしい作品をありがとう!
悲しい予感の涙が、嬉しい涙に変わりました!

514:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:35:56 rmQmuZ8k
>>511
SS投下どころか、そもそも文章何てほとんど書いたことありませんでしたがw
ってか反応はえぇぇ!!いや、ほんとこんな長い話に付き合ってくれて感謝ですたい。

515:名無しさん@ピンキー
07/10/05 23:41:00 Eo41T3lU
真昼さん、意外な程爽やかなハッピーエンドが良かったですよ!

てかツンデレラの魔法使いは可符香と思ってたらまさか大草さんとは!

516:名無しさん@ピンキー
07/10/05 23:47:54 NUwfqAEV
>>512
規制解除! よかった、まにあった!
真昼氏、最後の最後は爽やかなエピローグ! ああ・・・よかった・・・・  ちょっと泣き笑い。
文章書いたことないとは思えないデスww  私も氏くらいの文が書ければなぁ・・・・・

ともあれ、お疲れさまです! ありがとうです!

517:名無しさん@ピンキー
07/10/06 00:51:35 39ceEvyX
よかった…、欝エンドじゃなかった……
真昼さんほんとうにお疲れ様でした
しばらくお休みされた後にまた会えるのを楽しみにしています

518:名無しさん@ピンキー
07/10/06 00:59:23 HjqT00kB
真昼氏お疲れ様です!!

ティッシュ隣に置いといたけど、使うことがなくて良かった!!ハッピーエンドで良かった!!

519:名無しさん@ピンキー
07/10/06 02:43:56 PHn34v4E
真昼さん……そ う き た か…!!!
やられた、やられました…!!
でも、死ネタより、こっちの方が何倍も良かったぁぁぁぁぁあ!
やっぱりハッピーエンドのが爽やかで読後感いいですね。
…私が言うのもなんですが。

設定が丁寧で、しかもキャラにぴったりはまっていて、
セリフの言い回しとか状況描写とか、とにかく、毎回毎回、
うまいなぁぁぁとため息つきつつ読ませていただいておりました。
しかも、これだけ長いお話を、書きながら投下で破綻していないのが、
もう、脱帽としかいいようがありません。

保管庫に収納されたら、改めて一気に読みたい作品です。
本当に、素敵なお話をありがとうございました、そして今までお疲れ様でした!!

そして、105さん、ツンデレラ続編…やった!
魔法使いさんは、大草さん…でしたか。
これからの展開を楽しみにしております!

…感想なのに、長すぎ…で、2期って…ホント…?


520:名無しさん@ピンキー
07/10/06 03:42:48 PuZYZKvk
真昼氏GJ&乙。なんかホッとしたというのが正直な感想。
またこのスレに泣かされるのか、て思ってたから。



ツンデレラ、俺も魔女は可符香と思っていた。
なるほど、大草さん起用の理由は『奥様は魔女』か。

521:名無しさん@ピンキー
07/10/06 04:07:32 IfT4Nca7
真昼氏投下超お疲れ様
読んでいた時の不安感を全て吹っ飛ばすようなハッピーエンドでしたよ!
正直このSSまで鬱EDだったら精神的に持たなかった自信がありますね

522:名無しさん@ピンキー
07/10/06 11:01:54 IFdmTk7Z
――雪どけを越えれば、今度は真昼に降る雪の季節がやってくる。
   日の光を浴びて輝く、桜吹雪の降る季節が――

そうか、二期への伏線だったのか…

真昼氏GJ!乙

523:名無しさん@ピンキー
07/10/06 16:34:06 fkZUke15
真昼氏、大長編の執筆本当にお疲れ様でした
鬱エンドも覚悟してましたが、いやはや、そう来るとは!
良かったです本当に………God-Jobとはまさにこのことか

………さぁー、オレも書かなきゃなー………

524:292
07/10/06 17:04:18 Q8UsR7y/
>>105
ツンデレラ、先が気になるわぁ。こういうの凄く好きなんだよねw。

真昼氏という偉大な職人様の後でかなりビビッてます(あんな重厚な文章書けませんがな)が、
>>316で予告したSSを投下してみる。

「まだ恋人関係にない」からスタートだと、非エロが長くなるのに今更気付いた。
4回に分けて投下予定。
長くなった上に、エロは最終章だけになるかも(´・ω・`)・・絶望した!

【注意点】
望×あびるで、特に変った属性はないと思いますが、
非エロ長いのはウンザリと言う方はスルー推奨です。

1章はエロ無しで10レスほど消費予定。

525:『猫の瞳』1章前座
07/10/06 17:06:40 Q8UsR7y/
これはあの日本中を引っくり返した戦争が終わった直後のお話。

あるお家に、女の子がいたんだ。
動物好きでね、散々親を説得して、猫をもらったんだよ。

ちっちゃな子猫。
1匹目が、たしか黒い方の猫だったかな。
そのうち、黒い猫がいつも寂しそうにしているんでね、もう一匹もらってきたんだ。

こっちは白い猫だった。これまた小さな子猫でね。

2匹はすぐに仲良くなったらしい。よく一緒に庭でお昼寝してたのを見たものだ。
女の子もたいそう喜んでねえ。
2匹は結婚するんだ、と友達に自慢げに言っていたのをよぅく覚えている。

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

526:名無しさん@ピンキー
07/10/06 17:07:50 Qwx2oqOm
こういうのが読みたい。

高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩
き通すという、鈴木商店高校の伝統行事だった。赤木杏は密かな誓いを胸に抱いて
歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。学校生
活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、杏だけは、
小さな賭けに胸を焦がしていた。

14歳のとき両親殺害の罪に問われ、外界との交流を拒んで孤島の研究施設に閉じこ
もった天才博士糸色命。教え子の風浦可符香とともに、島を訪ねた鈴木商店高校教
諭、糸色望は一週間、外部との交信を断っていた博士の部屋に入ろうとした。その
瞬間、進み出てきたのはウェディングドレスを着た女の死体。そして、部屋に残さ
れていたコンピュータのディスプレイに記されていたのは「すべてが絶望になる」
という意味不明の言葉だった。

「絶望の男は飄然と砂漠の彼方に立ち去った。木津千里はその後を追った」…破滅
後の世界。「絶望の塔」の秘密の鍵を握る男を追い、一人のスコップ使いが今、果
てしない旅に出る。彼らの住む世界は我々の現実世界とどう関わるのか? 絶望の男
は何者なのか?そして「絶望の塔」には一体、何があるのか?壮大な物語が、今、幕
を明ける…。奔放なイマジネーションと超弩級のスケールが錯綜する

527:『猫の瞳』1章①/9
07/10/06 17:08:12 Q8UsR7y/
1章

 秋の日差しが優しく降り注ぐ午後の教室。
 カリカリと黒板に教師が書く音が、静かに響いている。
 2のへ組は師が教え子達へ勉学を伝授し、その好学心に答える真剣な学び家
そのものであった。

 教壇に立つ教師―糸色望―は満足感に浸っていた。
 厳粛な教育現場をリードしているのは自分だという自負と、生徒達に与える自らの
影響力に感動していた。

そう、この一瞬までは―

「先生! 『堂』の字はキチンと左右対称に書いてください!バランスの悪い字は
美しくないです!」

 望はびっくりして後ろを振り返った。
 授業中、髪をきっちり真ん中分けにした少女が、突然立ち上がって発言したのだ。
 しかし、周りの生徒達はほとんど驚いていない。むしろ、またかといった様な
あきらめの表情を浮かべている。
この風景、2のへの組ではもはや日常と化しているのだった。

望は自分の書いた「堂」の字を見た。たしかに、右の方の線が長すぎて不恰好だ。
しかし、それを今この場で言う事なのか。
完全に苦りきって望は少女に言った。

「左右対称が美しいなんておかしいですよ。世の中、非対称で美しい物なんて
一杯あります。大体、左右対称だったら人間の心臓は2つになってしまいますよ」

「心臓が2つになったら、それはそれは便利だと思いますが」
たちまち、真ん中わけの少女に反論を喰らってしまった。

 他の生徒達も、口々に左右対称の是非について語りだす。
 まさに、学級崩壊である。
 そればかりか、生徒達に雪の結晶・平等院鳳凰堂・ユニオンジャックetcの例を
出されてしまい、望はどんどん不利な立場に陥っていった。


528:『猫の瞳』1章②/9
07/10/06 17:09:14 Q8UsR7y/
―ああ、また小芝居が始まった。
 立ち上がった少女の斜め後方に席を陣取っいる女生徒が、そっと嘆息した。

 すっと通った鼻梁、桜色の唇、瑞々しく白い肌、すこし吊りあがった褐色の瞳。
 ツヤのある美しい黒髪は、2つの三つあみに分けられ肩に垂れている。
 完璧なまでに整ったその顔立ちのせいか、どことなく表情が乏しく冷たい印象
を与えている。

 惜しむらくは片方の瞳に眼帯があてられ、頭や手足のあちこちに包帯を巻いて
いることか。
 しかし、その痛々しい姿が更に男を刺激するのだから不思議である。

彼女の名は、『小節あびる』という。

(良くあんな下らない話題で興奮できるなぁ)
 あびるは心底感心して、その立ち上がって発言した少女―木津千里―を見上げた。

 あびるは何故彼女が教師に突っかかるか知っている。
 千里は、教壇の上にいる丸眼鏡の教師が好きなのだ。
 好きだからこそ、構って欲しくてついつい突っ込みを入れてしまうのである。

(先生のどこがいいのだろう?)
 不思議に思いながら、あれやこれやと言い訳をしている教師に目を移した。

 背は高いが、顔は標準並みだし、身体付きはヒョロヒョロしていて頼りない。
 性格は根暗で、情けなくて、ネガティブと3拍子揃っており、そればかりか
すぐに死にたいと自殺狂言をしでかすのだから始末に負えないのだ。

 その男を、千里だけでなく、教師の後ろでウロウロしている常月まといや、
たぶん今頃どこかの教室でTVを見ているであろう小森霧が夢中になっているの
である。学園7不思議としか思えなかった。

 彼は生徒達の集中砲火を浴び、舵を失って沈没寸前の戦艦よろしくふらふら体を
揺らしている。
 馬鹿馬鹿しいと思いつつ、あびるも手を挙げて発言してみる。
「先生、私の三つ編みが左右で長さが違っていたら変でしょう」
「う……。」
 教壇にいる望の顔が硬直し、動きが固まった。

「絶望した!左大臣を作ったら右大臣も作りましょう的な形式主義に絶望した!
学級崩壊にも絶望した!」
 ついに、うわーんと泣き出して教室を飛び出していってしまったのだった。

*********

529:名無しさん@ピンキー
07/10/06 17:09:34 Qwx2oqOm
すまん。割り込んだ。

530:『猫の瞳』1章③/9
07/10/06 17:10:26 Q8UsR7y/
 遠くからカラスの鳴き声が響く真っ赤な空。
 夕日に赤く染め上げられた道路に、一つの影が細く細く伸びている。
 夕暮れの愁う様な雰囲気の中、あびるは帰途を急いでいた。
 あれから望が帰ってきてこなかったせいで、HRは開かれずに終わった。
 今頃、職場放棄を同僚に責められて絶望している頃だろう。

―ざわざわ
 風がそよぐと、周囲の木の葉が一斉にざわめき、枯葉がハラハラと数枚木の
枝から離れて、道路に舞い降りていった。

「ん?」
 不意に誰かに呼ばれたような気がしてあびるは立ち止まった。
 眼帯で隠れていない片方の目がゆっくりと周囲を見渡すが……、誰もいない。

 ふと、塀の上の存在に気付いた。


 一匹の猫がいた。
 真っ白の猫。
 目を閉じてじっとうずくまっている。
 身体中が雪のように白い毛に覆われており、どことなく高貴な雰囲気を漂わせ
ていた。

 ただ、身体が痩せ細っており、栄養状態はあまり良ろしくないようだ。
 体のところどころの毛が剥げて中の肉が剥き出しになっており、多くの傷を
負っていることが見て取れた。

 その猫は明らかに新参ものだった。
 町内のあらゆる猫の尻尾を引っ張った事のあるあびるは、町で活動している
猫全てについて記憶している。彼女の脳内データベースに存在しない猫は、
どこか他からやってきた猫以外にはない。
 首輪がないところを見ると、隣の町から流れてきた野良猫だろうか。

 あびるの視線は自然と、猫の身体の後方に移動する。もちろん、尻尾を確認
するためである。

「あれ」
 あびるは一瞬目を疑った。
 その猫の尻尾は、奇妙な形状をしていたのだ。
 尻尾の先が途中で二股に分かれていて、Yの字になっていた。
 怪我をしているという訳ではない。
 2つに分かれた尻尾は共にふさふさした白い毛並みに覆われ、時折ぴくぴくと
動いている。

531:『猫の瞳』1章④/9
07/10/06 17:11:47 Q8UsR7y/
 これまで見た事もない尻尾を目の前にして、普段はどこか醒めているあびるの
瞳がキラリと光った。
 静かに猫に近づく。
一歩―猫は気付かない

二歩―まだ猫は気付かない

三……突然、猫が顔を上げた。

素早く尻尾を掴もうとした少女の瞳と、白い猫の瞳が交錯した。
あびるは一瞬はっとした。

 ガラスのようにどこまでも透き通った それでいながらどこか憂いを含んだ
その瞳―
 その瞳の奥には、強い悲しみと長い長い辛苦を映し出すかのように灰色の霧が
掛かっているが、その更に奥には猫の強い意思を秘めた光が一点灯っている。

(なんていう奇妙な目をしているの……)
 あびるは尻尾を握るという最重要事項を忘れて、思わず立ち竦んでしまった。

『にゃ~ん』

 猫ののんびりした声に我に返る。
 気付くと、その猫は走り出していた。

「あ、待って!」
 あびるは大急ぎでその後を追いかける。

 建物の隙間を抜け、壁の上をつたり、猫は休まずにどんどん歩いていく。
 痩せ気味の身体に似ず、その動きは軽快だ。
 あまり運動神経の良くないあびるは、見失わないようにするのが精一杯になっていた。

 白い猫はすっと、横道に入る。
 あびるも息を切らせながら、急いでその横道に入った。

「おっと」
 突然横道から出てきた男に軽くぶつかった。
「すいません!」
 素早く謝り、その人物の横をすり抜け猫を追いかけようとする。


532:『猫の瞳』1章⑤/9
07/10/06 17:13:15 Q8UsR7y/
「小節さんではないですか」
 横道から出てきた男から、意外な言葉が掛けられた。
 驚いて立ち止まり、ぶつかった人物を見る。
 それは彼女の担任教師であった。

「糸色先生?」
「何しているんですか? そんなに慌てて」

 望の言葉にハッとして横道の奥を見るが、すでに猫の姿は跡形もなく消えていた。
 一度見失った猫を追跡するのは、不可能といってよい。
 内心舌打ちをしながら、自分の名前を呼んで邪魔をしてくれた男に尋ねた。
「こっちに白い猫が来ませんでしたか」
「猫ですか? さぁ、先生見てませんが」
 望のさして重要とも思わないような軽い返答に、あびるは苦々しい気持ちになった。
 ハァハァと肩で息をして、呼吸を整える。
 教師の方を向いて、理不尽な八つ当たりと知りつつ、責めるような口調で言った。

「先生、私に何か用でもあったんですか」
「い……いえ」
「私が急いでいるのに気付いていたなら、無意味に声を掛けないで欲しいですね」
「すいません……」
 あびるの厳しい言葉に、望は肩を落としてシュンとなってしまった。
 大の大人が寂しそうに俯くのを見て、あびるは慌てて言い直した。
「あ……ごめんなさい。ぶつかったのは私が悪いのです。先生のせいではないです」
「いえ、私もよく周りを見ずに歩いていたので。」
 望はズレた眼鏡を人差し指で上げてから、あびるの方に向き直った。

「猫を追いかけていたのですか?」
「ええ。珍しい尻尾をしていたものですから」
 それを聞いて、望は苦笑した。
「相変わらず尻尾好きですねぇ」
 望は顔を上げて、あびるの顔を見た。

 あびるの瞳と望の瞳が合った。

 人の目を見ない事についてはプロのはずの望が、思わず引きこまれたかの
ようにあびるの瞳を見詰めた。

「やっぱり、左右対称でなくても美しいものがありますよ……」
 何かに操られたかのように、望の唇から言葉が紡ぎだされた。
「え?」

533:『猫の瞳』1章⑥/9
07/10/06 17:14:33 Q8UsR7y/

「あなたの両の瞳は……どんな芸術品よりも……美しすぎます」

 何を言われたか分からず、あびるは一瞬キョトンとしてしまう。
 突如として気付いた。さっきぶつかった衝撃で眼帯が外れてしまったのだろう、
いつの間にか左の瞳が露わになっていた。

 あびるの瞳は左右で色が違う。
 右の瞳は深く落ち着いた褐色の色をたたえる一方で、左の瞳はどことなく
エメラルドを思わせる煌らめくような緑の色をしていた。

 その両目が、キラキラと夕日を反射している。
 それはたしかに少女の整いすぎた美貌に彩りを沿え、神秘的で圧倒的な美しさ
を醸し出していた。

 しかし、あびるは少し眉をひそめると冷たく言った。
「またそうやって、女性が勘違いするような言葉を言って。恥ずかしいですよ?」
「あ……」
 望の顔は、夕日の光に圧倒的な紅潮を加えみるみる赤くなった。
「わ……私は、その……」

「あああぁああ、絶望した!とんでもなくクサい自分に絶望した!!
タイタニック映画を見てそれを真似するバカップルと同レベルの自分に絶望した!」
 望は自らの言動に言いようもない羞恥を感じ、悶え始める。
「死のう」
 ぽつりと呟くと、懐からロープを取り出し自分の首に掛け始めた。

 その様子をじっと見ていたあびるの脳裏に、思わず先の白い猫の事が思い出された。
 やせ細って、体中を傷だらけにした体。
 悲しげで、それでいて猫としての誇りを失うまいとしているような瞳―
「不思議ですね」
 意識せずにあびるは口に出していた。
「何がですか」
望は、一瞬縄を首に巻く手を休める。

「先生は経済的にも恵まれているし、健康状態も、家族関係も良好です。何に絶望
しようと言うのですか。何故死ぬなどと言うのですか」

「え……」
 突然突きつけられた厳粛な命題に、望は戸惑った。

534:『猫の瞳』1章⑦/9
07/10/06 17:15:32 Q8UsR7y/

 自分の過去―絶望する理由としては、否としか言いようがない。
 望には多くのトラウマがあったものの、それは通常の人間であれば誰しも
通るような試練のレベルに過ぎなかった。
 人が本気で絶望に至るような、お涙ちょうだいの悲しい過去なんて微塵たり
とも有りはしないのだ。

 そう、自分でも分かっている。
 単に絶望ごっこをして、被害者ぶって楽しんでいるのである。
 周囲にもその事が分かっていたはずだった。
 だからこそ、周りの人間はどこか哀れっぽく、どこか面白可笑しく彼の狂言に
付き合っていたのだ。
 何故絶望するのかなどと面と向かって言うような無粋な人間は一人もいなかった。

 しかし、目の前の少女はそれを許さず、正面から問いを発している。
 少女時代の純粋さなのか―。

 あたかも軽々しく絶望を口にする者を裁こうとする天使のように、あびるは
夕日を背に凝然と立っていた。
 赤く染まった端整な横顔に、長い睫の影がくっきりと落ち、夕暮れの穏やかな風を受けて、
少女の三つ編みがかすかに揺れる。

 その美しさと厳粛さに、望は震え上がった。
 人の運命を変える出来事が、予想もしなかったある日に突然やって来た時のように、
なすすべをしらずに体を小刻みに震わせていた。

「う……生まれつき……なんですよ。こういう……性分なのです」
どうにか声を振り絞って望は言った。

 夕焼けの中に降り立った天使は、じっと望の赤く染まった顔を見ていたが、
不意にその構えを解いて「そうですか」とそっけなく言った。

「失礼な事を聞いてすいませんでした。それでは」
 くるりと背を向けると、あびるは静かに立ち去った。
その後姿を、望はいつまでも見詰め続けていた。

*********

その夜、望は一人悶々としていた。
目を閉じると、あびるの夕暮れに染まった姿が思い出されてならないのだ。

胸は異様に高鳴り、強い焦燥感に苛まされる。
望は布団を狂おしく抱きしめる以外に術がなかった。

*********

535:『猫の瞳』1章⑧/9
07/10/06 17:16:38 Q8UsR7y/
次の日―

 HRが終わり、クラスの皆が部活動や帰宅の用意をするのをぼーっと眺めながら、
あびるは考え事にふけっていた。

 昨日の白猫の事を考えていたのだ。
 あの奇妙な尻尾を引っ張りたいのは当然の事として、猫の不思議な瞳がどうしても
頭から離れなかった。

「どうしたの、あびるちゃん。ボーとして」
 友人の日塔奈美が、声を掛けて来た。
 少し、微笑んで奈美のほうを向く。
「昨日、変った猫に会ったんだけどね。尻尾を握る前に逃げられちゃった」
 それを聞くと、奈美はクスクス笑い始めた。
「相変わらずだなあ。ぼんやりしてるから、恋でもしたのかと思ったのに」
「恋?」

   あびるだって、お年頃の女の子。
   恋も2回ほどしたことがある。
   初恋は、小学生低学年の時。相手は熊のきぐるみだった。
   立派な尻尾とフサフサした毛並みに惚れこんだのだが、ある日『中身』を
   見てしまい、一瞬で恋が冷めた。
   2度目は、中学生1年の頃。相手はU動物園のフェレットで、何度か恋文を
   書いたが彼には読めなかったようだ。
   種族の壁を感じ、恋を諦めた。

 奈美は普通の女子高生らしく、恋の話が大好きである。
「そんなのじゃないけどね。尻尾が2つに分かれている猫なの。珍しいでしょ?」
 一目惚れなのかな?と内心呟きつつ、あびるは説明する。
「へー。尻尾が2つ??」
 奈美も少し興味が出てきたらしく、身を乗り出してきた。
「まあ、たぶん遺伝子かなにかの異常だと思うけど」
「奇形ってやつね」
 動物の中にも、遺伝子の突然変異で奇妙な特徴を有する個体が稀に生まれる。
 生物でならった朧げな知識が、奈美の頭に浮かんだ。

「そんな、それは奇形なんかじゃないですよ!猫又です!」
 突然、2人の後ろから甲高い声が聞こえた。

「あ、可符香ちゃん」
 奈美が顔を上げて、少し困ったような表情をした。
 後を振り向くと、2人の友人である風浦可符香が立っていた。

536:『猫の瞳』1章⑨/9
07/10/06 17:17:18 Q8UsR7y/
 綺麗な前髪に、2本のピンをクロスさせて指しており、その瞳はクリクリと
悪戯っ子のように動いている。
 黙っていれば、文句なしの美少女だ。黙っていれば、だが。

「猫又?」
 あびるは、少し首を傾げて聞いた。
「そう、猫又。猫が20年間交尾をしないと、猫又といって強い妖力を持った
妖怪になるの。猫又の特徴は、尻尾が2股に分かれている事なんです」

「交尾って……」
 周りに男子生徒がいるにも関わらず、可符香の全く頓着していない様子を見て
奈美は顔を赤らめた。

「あびるちゃんには、これを上げましょう」
 そう言うと、可符香はどこからかコンニャクを出してきた。
「何コレ?」
「これを口にくわえると、猫又と話せるようになるんです!」
(それって、ドラえ●んの翻訳コンニャクじゃないの?)
 奈美は突っ込みを入れようとしたが、あびるは真剣な表情でそのコンニャクを
受け取った。

―まさか、あびるちゃん信じている!?
 奈美の額に、縦線が走る。大変な事になりそうな予感がする。

「さ、私に全てを委ねて。あびるちゃんは、猫又に恋しちゃったんですよ。
猫ちゃんに相応しい女になる方法、教えてあげますよぉ?」

 可符香は獲物を誘うサキュバスのような妖艶な動きで、あびるの頬を撫でた。
 あびるはまじまじと可符香を見た。
 屈託のない微笑みを浮かべながら、その瞳はどことなく深みを増してあびるを
見ている。
 女神の笑顔というのはこういうのをいうのだろうか。
 あらゆる悩みを氷解し、すべての煩悩を赦す。そのような素晴らしい笑顔。

 奈美は、息を止めて2人を見詰めた。

「ねえ……可符香ちゃん?」
「はい」
 ニコニコしながら、あびるの言葉の続きを待つ可符香。その目はキラキラと
期待に輝いている。

 あびるは整ったあごを少し上向きに上げて言った。
「可符香ちゃんの髪って、横から見ると鉄腕アトムみたいじゃない?」
「えぇええ!?」
 突然とんでもない事を言われた可符香は、ワタワタし始めた。
 額に縦線を走らせて、スカートのポケットから鏡を取り出す。
「そ……そんなこと…ない…です…よぉ…ぉ……」
「そうですか? それは失礼。このコンニャク、ありがとう。頂くね」
 軽く会釈して、あびるは席を立った。

 教室を出るところでチラと後を振り返ると、可符香は鏡に自分の横顔を映して、
髪をしきりに弄りながら奈美になにやら言っている。
 ちょっと涙ぐんでいるのが可愛い。

「猫又って言うのも、悪くないけどね」
 あびるはふっと薄く笑って、可符香のくれたコンニャクをポケットにしまう
のだった。

(1章終わり)

537:292
07/10/06 17:19:17 Q8UsR7y/
>>529
いえいえ、お気にせず。

投下完了。続きはまだテロップだけしかできてないので、結構かかるかも・・。
お目汚し失礼しました。

538:名無しさん@ピンキー
07/10/06 17:26:47 nHuLweDQ
>>537
乙! これから話がどう展開するのか、wktkしながら待ってるぜ。

あと、これは本編から外れたどうでもいいことなんだろうけど、
ユニオン・ジャックって地味に左右対称じゃないんだぜ。

539:名無しさん@ピンキー
07/10/06 18:27:13 mGjdyKfA
>>537
文章が恐ろしく美しい。話の合間に挟まれる会話が上手い…。
これは続きwktkして待つしかないですよ。GJです。

540:105
07/10/06 21:57:12 gTbOr5TN
NOOO!!真昼氏の神SSが終了し、H×HのT樫先生と同時に292氏が本気を出された!!
・・・いや、嬉しいんですけどね、あまのじゃくなんですよ私・・・。本当に嬉しいんですけど、
あまりに神過ぎると、自分のゴミさがわかるわけですよ・・・。
電車に乗ったら両隣をお相撲さんに座られたみたいな・・・、いや、違いますねえ・・・。
神様の後光が、隠れていたゴミ虫を照らし出したみたいな、そう、そんな感じ!

絶望してもしょうがないです。SS投下します。続きが気になるなんていっていただけると嬉しい半分、
プレッシャー半分・・・、自分は何を言い出すのでしょう・・・。本当に嬉しいくせに、電脳世界でも
どうしようもないんですね・・・。とにかく有り難いです。
くどいようですが諸注意を・・・。①皆さんもうおわかりの「謎の女性」のイメージが激しく壊れます。ご注意下さい。
②今日投下する範囲は作者の「ご都合主義」が満載です。せっかくうまくいってる話をつまらなくしている気がします。
③ここから先は、作者の趣味がにじみ出ています。趣味というのは、話や会話の流れといったものから、嗜好的なモノまで。
④シンデレラの世界さえぶっ壊してます。NiceBoat、いやもはやナイスでさえありません
⑤エロ無しです。
では始めます。

541:ツンデレラ7
07/10/06 21:58:39 gTbOr5TN
謎「はいはい、辛かったですねえ」
すべてを話し終えて、未だ泣きじゃくるツンデレラを、自分の子供のように抱きしめてあやす。
謎「じゃあツンデレラ、あたしが何とかしてあげるわ」
ツ「・・?」
謎「自己紹介がまだだったわねえ。私オーク・サー・マナミ。マナミでいいわ」
ツ「はあ、マナミさん、ですか・・・。」
マ「そう、それでね、私、奥様で魔女なの」
ツ「はあ、奥様で、魔女・・・。えええっ!!いけませんよ!!
他人にそんなこと言っちゃあ!!魔女狩りにあいますって!!」
マ「魔女狩りて・・・、時代設定どうなってるのよ・・・」
ツ「それは、‘むかーしむかしのあるところ’ですから・・・」
マ「・・・まあいいわ。大事なのは私が魔女だって事。今から貴方にぴったりの洋服をそろえたげる・・・。
このステッキでね!」
取り出したるは、先ほどから光っているただの棒。光っていること以外は、とりとめのないただの棒。
ツンデレラはリアクションに困っていた。
マ「ああ~、その顔は信じてないわねえ」
ツ「ええっ、すっすいません。・・・でも、そうじゃなくてあの、何でそんな良くしてくれるのかなあって・・・?」
マ「ああ、それわね、あなたが本当にいい人なのを、私が知っているからよ!」
ツ「わ、私が・・・?そんな、とんでもありません!!私なんて生きt」
マ「さあ目をつぶって!いくわよ~、え~いビビッテバビッテヒデブ!!」
ツンデレラをいっこうに無視し、マナミのあやしい呪文とともに、ツンデレラの衣服が光って消えた。
近年削除、変更されそうな、魔法少女モノにありがちな変身である。
あっという間にツンデレラは、いっぱしのお姫様になっていた。
マ「まあ!ツンデレラ!素敵!とっても素敵よ!!」
ツ「わあ、すごい!本当にスゴイです!!」
マ「あなた、これから愛リーンって名乗ったらいいわ!」
ツ「アイリーン?何ですかそれ?」
ツ「・・・そうよね誰も「シンデレラ」(1950年2月15日、ディズニー、アイリーン・ウッズ主演)
なんて知らないわよね・・・分からないネタで御免なさい・・」
ツ「そ、そんなことないですよ!」
マ「・・ありがとう。
ところで一つだけ条件があるの。というのはね、時間制限。十二時の鐘と共に、この魔法は解けてしまうわ」
ツ「ええっ!・・・でも、仕方ありませんよね・・・」
マ「御免なさいね、それからがお楽しみなのに・・・」
ツ「とんでもございません!!それより私なんかがそんなことを不躾と抜かしてしまってすいません!!」
マ「いや・・・言い過ぎだから」
ツ「いいえ!!そもそも私なんかが王子様に会おうだなんて事が・・・」
マ「いいから、謝らないでーっ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

542:ツンデレラ8
07/10/06 22:00:27 gTbOr5TN
ツンデレラはなぜだか立派な服装になってよりいっそうおどおどしている気がする。
マ「何か頼りないわねえ・・・。まりあーっ!」
マナミがステッキの光でMARIAと書くと、そこから可愛らしい、いかにもな妖精が現れた。
ツ「え、ええっ!?」
マ「紹介するね、まりあよ。妖精だから、貴方以外の魂のステージの低い人には見えないし聞こえないわ。」
ま「ヨロシク。アナタハダレ?」
ツ「ツ・・・ツンデレラよ。まりあちゃん」
ま「ワカッタ。ツンデレだネ」
マ「ツンデレ‘ラ’よ、まりあ」
ま「ツンデレーラ?」
マ「・・・なんだか逆に不安になってきた・・・。でももう時間がないわ。急いでお城に行かなきゃ!
・・・って、その格好じゃあ走れないか・・・うん?」
真奈美の目には草藪を揺らしている影が見えた。
マ「・・ツンデレラ・・・落ち着いて聞いてね・・・」
ツ「はい、何でしょうか・・・」
マ「虎がいるわ。」
ツ「へ?」
マ「今から捕まえるからジッとしててっんね!!」
そう言うとおもむろにステッキを振りかざし、影を浮き上がらせる。それは・・・
ツ「ラインバック!!どうしてここへ!?」
マ「へ・・・?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

マ「そう、きっと貴方のことを心配してくれたのね。いい子じゃない」
マナミの呪縛から解き放たれたラインバックだったが、その後も実におとなしく、まるで猫のようだ。
マ「!ちょうどいいわ!貴方、ツンデレラを助けてあげて!」
ツ&ラ「?」
マ「ツンデレラをお城まで送ってあげて欲しいの!お願い!」
ラインバックは唸って答えた。
マ「ありがと~。コレも貴方の人徳(?)のお陰だわ。じゃあ早速、ビビンババピンパフーっ!!」
あっという間にラインバックはLamborghini Murcielago(ランボルギーニ・ムルシエアゴ)になってしまいました。
ツ「って、スポーツカーだなんて、時代設定どうなってるんですか!!?」
マ「時代設定?‘むかーしむかしのあるところ’、でしょ?」
ラインバックが楽しそうに轟音をあげた。マナミもとびきりの笑顔で言います。
マ「さあ、ツンデレラ、まりあも、早く乗って!それからラインバック、後は頼んだよ。
貴方だけが頼りなんだからね」
運転席にツンデレラが乗り込み、その肩にまりあがちょこんと座る。ラインバックはいつでも発進できる。
ツ「あの、本当にありがとうございました!!なんとお礼を言ったらいいのか・・・。こんな私に・・・」
マ「いいからいいから!お礼を言うのはこっちの方なんだから!それよりあなたはもっと自信を持ちなさい!」
ツ「本当にありがとう!!じゃあ私、行ってきます!!!!」
ラインバックが狭い森の中を器用に走り去った・・・。
マ「・・・ふう、あ~あ、山菜採りに来たのに、すっかり遅くなっちゃいました。早く帰らないとっと」
一人の女性は、魔法のようなモノか、消え去ってしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

543:ツンデレラ9
07/10/06 22:02:59 gTbOr5TN
お城では今までにないくらいの派手な舞踏会が開かれていました。
その様子に、若い女性たちはピリピリムード。お目当ての王子様の姿はまだ見えません。
カ「ほらお姉様、ご覧くださって。今日が王子様の婿選びの日だってみんな解っているわ。
そんなにのんきに構えているの、お姉様くらいよ」
ア「そう、でもそんなにたくさんお皿を構えているのも、貴方くらいよ」
カエレッタの前には、見事なまでの宮廷料理がたくさん乗った皿がありました。
カ「う・・・、だって美味しいんだもの。食べないとモッタイナイじゃない。日本人合理性に欠けてるよ」
継「いいけど、ほどほどにね。王子様が来たら、走ってでも捕まえなきゃダメよ。」
カ「ハイお母様」
ア「・・・」
継「あら、アビィさん。どうしたの?」
ア「ハイお母様。私王子に興味ありませんの」
継&カ「!!!」
継「まあ!なんということを!・・でも、どうしてなの!?」
ア「だってまだ・・・・・・、フラグたってないもの」
継&カ「はぁ?」
カ「・・・よくわかんないけど、後出ししたって遅いんだからね」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

そのとき、三人から一番遠い扉の方から、大きな歓声が上がったのです。
継「王子だわ!いつもはこちらの方からいらっしゃるのに・・・」
カ「言ってる場合じゃないわお母様、行ってきます!!」
そう言い残し、カエレッタは一人で飛び出していった。
継「私たちも行くのよ!可能性は一人でも多い方がいいんだから!!」
継母は長女の腕を掴んで強引に後を追いかけます。軽く痛みを覚えました。
ア「(可能性というのはどういう事だろうか・・・。いや、既に解っていることを解らないフリして考えるのはよそう・・。)」
軽く痺れを感じました。痺れは痛みより涙を誘うものでした・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


544:105
07/10/06 22:05:01 gTbOr5TN
はい、ここらで105です。ツンデレラは一応完成しているんですが、ここは最後までどうにか変更したかった
部分だったので、(結局変更はありませんでした)皆さんの正直な感想が心配でなりません。
続きの舞踏会は明日開かれると思います。
明日はきっとこのゴミ虫が、おすもうs・・、じゃなくて神様とともに踊れます様に・・・、
っていやいやいやいやいやいやいやいやいやいや・・・・・・恐れ多いわあ!!(ピンツッコミ)
明日はきっと神様のSSが、ゴミ虫が見えなくなるくらいに光り輝きますように。

545:名無しさん@ピンキー
07/10/06 22:23:15 JjsWZU9z


546:名無しさん@ピンキー
07/10/06 22:39:20 3QWONL6K
>>544
乙!随所に仕込まれた小ネタに思わずニヤニヤしちまったww
配役もいいねえww 次回の投下にも期待してるぜ!

547:305
07/10/06 22:52:50 Qej4s3IG
えーと、お疲れ様です。
しばし、皆さんの文章力に愕然と・・・・・・・・
レベル高いぃぃ・・・・ 

・・・・・神ssが続いた後に何ですが・・・・・ 
久しぶりに奈美の短編を作ってみましたので、投下させて頂きたいなと――
奈美×先生で、エロ無しです。
では  m(_ _)m

548:名無しさん@ピンキー
07/10/06 22:55:05 3QWONL6K
投・下! 投・下!

549:奈美:恩着せのススメ   1/4
07/10/06 22:56:20 Qej4s3IG

「ん! 出来た! 我ながら上出来~」
奈美は楽しそうな声を上げて、頭の三角巾をほどいた。
キッチンのテーブル上に置かれたオーブンプレートの上には、握りこぶしくらいのサイズ
のシュークリームが行儀良く並んでいる。
奈美は銀色のボールを手に取り、ヘラで少し残ったクリームをすくって口にくわえた。
「・・・ああ・・・・とろける~  やっぱりちゃんとバニラビーンズを使って正解だわ。」
目を閉じ、うっとりした顔でひとり言を言う。
「・・・・・そうやって、また・・・」
「ひっ!?」
突然、後ろからかけられた声に、奈美はボールを落としそうになる。
振り向くと、開け放してある窓から先生が顔を半分のぞかせていた。
「先生? なんでそこに?」
「・・・また、恩を着せようというのですね! 感謝の言葉を求めて!」
問いかけには答えずに放たれた先生の言葉に、奈美は一気に脱力した表情になった。
先生は少し立ち位置を変えた様で、上半身が窓から確認できる。
奈美は少し怒ったような顔をして、先生に背を向けた。
「別に、先生にあげるなんて言ってませんよー!」
「・・・・え?」
その言葉に先生は首をかしげる。
「無いんですか? 私には?」
「そーです・・・・・・って・・・」
奈美は先生の言葉に少し口元を緩ませ、意地悪そうな笑みを先生に向ける。
「・・・もしかして、期待してるんですかぁ~?」
しかし先生は表情を変えず、
「汚名を返上する気、満々にみえたのですが?」
「何の汚名だぁ!!」
奈美はヘラでボールをガンガン叩きながら叫ぶ。
そっぽを向いた先生の口元がニヤリとしている。
ふと、何かを思いついたように、奈美はテーブルの紙皿に数個置いてあったシューを一個
掴み、足音も荒く先生の目の前に行く。
「はい! しかたないから1個あげます!」
先生は奈美の方に向き直り首をかしげた。
「何だか、催促したみたいな流れになってしまいましたね。」
「・・・ってゆうか催促しに来たよね・・・? まあいいや・・・・。はい、先生! あーん!」
そう言って奈美は、先生の口の高さにシューを持って行く。
一瞬、手を差し出そうとしていた先生は、少し眉を寄せ、口を開けた。
「召し上がれ!」
すかさず、奈美が先生の口にシューを半分程押し込む。
先生はもごもごと、口を動かす。
「おいしいですよね?」
奈美は先生の顔をのぞきこみながら尋ねた。
先生の口の動きが止まった。―ちょっと考えるような顔をみせて、再び咀嚼を開始する。
そして、何かに気が付き、半分かじりかけのシューを手に取り確かめてみる。
「・・・・・これは・・・・・中までみっちり、全部、シュー皮・・・・! 失敗作ですか!?」
奈美はクスクスと笑い出す。
「この前のお返しですよー! 結構ショックだったんですからね!」
嬉しそうに言う奈美に、先生は表情を止めたまま、奈美の顔を見る。
「・・・・・・え?」
「仕返しのやり方もホント普通ですね。」
「普通って言うなあ!!」
先生は残りのシューをかじりながら遠い目をする。

550:奈美:恩着せのススメ   2/4
07/10/06 22:59:41 Qej4s3IG
「・・・・・まあ、中に針とか硫酸とか入ってたりしないですからね。」
ぽつりと呟いた言葉に、奈美の顔が引きつる。
「そんな危ない事しませんよぉ・・・・・・!」
「もちろん分かってますよ。あなた普通ですから。」
「だから、言うなぁ!!」
奈美は叫んでから大きく溜め息を付き、側にあったイスに腰を下ろす。
「・・・・あー・・・なんか立ちくらみした・・・」
先生は残りのシューを飲み下して口を開いた。
「いやぁ、普通がいいです。普通に夜更かししたり、普通に寝坊したり、普通に遅刻したり、
普通に宿題忘れたり・・・・・」
先生の並べる言葉に、奈美は肩をピクピクさせている。
「・・・・あと、普通に甘いもの食べ過ぎたり、普通にダイエットしなきゃと思ったり・・・・・」
奈美の顔がギクッと引きつり、赤くなる。
「なんで知ってるんですかぁ!?」
「・・・それは、緊急連絡網に――」
「ええ!? やめてよぉ!?」
立ち上がって絶叫する奈美に、先生はニヤリとして見せた。
「先生が流しました。」
「流すなあ!! って、全然緊急じゃないだろ!?」
奈美は一気に叫ぶと、少し涙目になって恨めしそうに先生を睨む。
「何でいつも私ばっかりイジるんですかぁ・・・・・  この前だって、食べてみてくれるだけで済んだのに、わざ
わざ引っ掻き回さなくても―― まあ・・・そりゃ、私も恩着せがましかったかもですけど!」
先生は少し真剣な顔をして腕を組んだ。
あごのあたりを指で掻きながら、短く唸るのが聞こえた。
「・・・先生?」
「ちゃんと、受け取って・・・・・美味しく頂いていたら―― その後どうなりましたかね?」
思ってもみなかった問いに奈美は眉を寄せた。
「それはぁ・・・・・・・えーーと、ほら! 『美味しい』って言われると嬉しいじゃないですか! 今度も張り切って、
もっと凝ったものを作ってみたくなりますよ?」
先生は一つうなずいた。
「・・・その後はどうでしょう?」
「そ・・・そのあと? それは、また先生に食べてもらいますよ・・・・・・・」
奈美は少し赤くなりながら答える。
そして、ハッと気がついたように口を尖らせた。
「何でそんな事聞くんですかぁ・・・・・・・」
先生は短く息を吐き、自嘲気味に笑みを浮かべた。
「・・・そして、スコップやら、包丁やらが、どこからともなく飛んでくる訳ですよ。」
奈美は小さく呻いて、瞬間的に顔を雲らせた。
先生を取り合っているクラスメイト達の顔が次々と浮かび、引きつった表情のまま、苦笑を浮かべる。
「あ―  そっか・・・。先生が命狙われちゃいますねぇ・・・・・・・」
「それだけなら・・・まだ、いいんですがね・・・」
先生はぽつりとつぶやいた。
奈美は小首をかしげる。
「それだけ・・・・・って。先生、命の危険があっても平気なんですか?」
先生は即座に首を振った。
「平気な訳が無いでしょう! まだ私だけの方が・・・・・・・・・いえ、まあ、いいです。」
ぽかんとした顔をしている奈美を見て、先生は苦笑した。
「おっと・・・・・・・そろそろ帰って・・・・・戸締りをしないといけませんね。」
「・・・・へ? 戸締り? ・・・まだ昼過ぎですけど。」
奈美の言葉に、先生はいつもの悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「ええ。しっかり戸締りをしますよ。・・・感謝強盗が来る予感がしてますから。」
「・・・・・・・・・・!」
奈美は頭痛でもしているように、片手で自分の額を押さえてうつむいた。
大きく溜め息をついて顔を上げると、すでに窓からは先生の姿は消えていた。

551:奈美:恩着せのススメ   3/4
07/10/06 23:02:58 Qej4s3IG

「何しに来たんだぁ! ああ、もう、ムカツク!!」
ドンドンと床板を踏み鳴らしながら、洗い物をシンクに持って行き、スポンジを握り締めると、力を込めて
洗い始めた。
食器や調理器具の硬い音が騒がしく鳴り出す。
ガチャガチャと洗い物をしながら、涙がにじんできた目をこすり・・・・・・・水が少し目にしみてしまい、余計
に涙が出てきてしまった。
「・・・どーせ、私は、恩着せがましいよ!  感謝だってされたいんだぁ! ・・・いいよ! 先生にはどうせ
分かってもらえないんだからさ!!」
片手で目を押さえながら、大声で悪態をつく。
水を止めて、洗い物を水切りカゴに移すと奈美はまた溜め息をついた。
「・・・・・すね方も普通ですね。」
奈美はハッと窓を振り向き、窓からのぞいている先生の顔を見付ける。
「普通っていうなぁ!!  って、まだいたんですかぁ!?」
真っ赤になって窓に駆け寄ると、先生はすばやく身を翻し、逃げてしまった。
先生の走る足音が離れていく。
奈美は窓をピシャリと閉め、力が抜けたのか椅子に座り込み、テーブルに突っ伏してしまった。
「・・・・・先生のバカ・・・・・」
顔を伏せたまま、くぐもった声でそれだけつぶやいた。


しばらくの後、奈美はゆっくり顔を上げた。
頬のテーブルに付いていた部分が赤くなっている。
(・・・・・・ホントは用意してあるけどさぁ。まあ、作っちゃったし。)
少し乱れた髪を押さえつけて、奈美は立ちあがりエプロンを外した。
エプロンを適当に畳み、椅子の背もたれに掛けると、奈美は傍らのキッチンラックにまとめてある紙袋を
探り始めた。
(しっかし先生もモテすぎて大変だよねぇ・・・・・・、みんなで争いまくってるもんな・・・・・・。 ―まあ、私
はとても入っていけないけどさ。)
ちょうどいいサイズの紙袋を取り出したところで、奈美の頭に、ふと、浮かんだものがあった。
(・・・まさか・・・・ね。・・・・・考えすぎだよね? ・・・いやでも・・・・・)
一度、頭に浮かんだ考えはなかなか消えず、奈美はのろのろと、一番、形のいいシューを紙袋に入れる。
(―それだけならまだいいって、先生が・・・・。・・・じゃ、先生は私に・・・・・・・? そ・・・それじゃあ、いつも
の悪態は、そのため・・・・・・・・?)
じわじわと胸の内に広がる考えをまとめながら、奈美は紙袋の口を閉じた。
自然と鼓動が早くなってくるのが自分でも分かった。
(・・・・・憶測・・・・・でしかないけど。・・・なんか、いいな、この気分・・・・)
奈美は両手で持った紙袋を見つめ、微笑を浮かべた。
「よしっ! ・・・泣かされに行ってやるかな。」
奈美は笑いながら目を閉じ、紙袋に軽く唇を触れさせた。
唇が触れたところで、
「・・・ばっ・・・・! 何やってんの私は!? 中学生男子か!?」
少し赤くなって、今触れた場所を手で払った。




552:奈美:恩着せのススメ   4/4
07/10/06 23:09:20 Qej4s3IG


「お邪魔しますよー」
「あああっ!! 感謝強盗がお見えになった!」
「なぜ丁寧語っ!? なんか余計に腹立つ!!」
奈美は宿直室の入り口に立つと、先生に紙袋を差し出した。
先生は無表情で受け取ると紙袋を開いた。
「自信作なんですよ? さ、どうぞ。」
奈美にうながされ、先生はシューを頬張る。
「・・・・もちろん北海動産の生クリーム使って、バニラビーンズは本場フランス産なんですよ!
卵黄だって、平飼いの自然卵で・・・・・・」
延々と説明する奈美を見ながら、先生はゆっくりとシューを咀嚼し、飲み込んだ。
奈美は笑顔で先生に尋ねる。
「どうですか? おいしかった?」
「・・・・・・・・・良いと思いますよ。」
奈美の表情が固まる。
「え・・・ええ? 感想、それだけ!?」
「いや・・・・そう言われても・・・」
「・・・ほかに、あるでしょう? なにかもっとこう、しっくりとくるのが――」
奈美の言葉に、先生は「ああ!」と、何かに気が付いたように手を打った。

「普通でした。」
「・・・普通って言うなぁ!!」

奈美は先生に向かって叫んで、部屋を飛び出してしまった。
「・・・・・・・もう、ぜーっっったいに、先生には何も作ってあげないからね!」
廊下の先から奈美の叫び声が聞こえてきて、先生は苦笑した。
「・・・やっぱり、普通ですね。」
誰にとも無くそうつぶやいて、先生は一瞬嬉しそうな表情を浮かべた。
先生は苦笑を浮かべたまま、聞こえなくなるまで、奈美の足音を見送っていた。

553:305
07/10/06 23:13:31 Qej4s3IG
お粗末でした。

原作で、奈美といる時の先生が、一番、素の状態に見える私ですww
見てると癒される・・・

554:名無しさん@ピンキー
07/10/06 23:21:54 u9udLP1p
ドSだな。
絶望放送を思い出したよ。

555:名無しさん@ピンキー
07/10/06 23:26:18 zKatFj+c
あぁー良いなこういう微笑ましいの。超GJです。
ぷりぷり怒る奈美に萌えつつ、判りにくいツンデレな先生にも萌えてもうた。

556:名無しさん@ピンキー
07/10/06 23:38:55 0Vifx3Vd
GJ!!
原作をうまく絡めてるな~。
やっぱり先生はツンデレ受けだなw

557:名無しさん@ピンキー
07/10/06 23:44:55 lFL1bBiV
あびるが怖い

558:名無しさん@ピンキー
07/10/06 23:46:36 u9udLP1p
>>557
それはつまりアレか?
今週の落語ネタのつもりか??

559:名無しさん@ピンキー
07/10/07 00:31:53 pXdAGVwD
百合向けの「ハル×チリ」を考えてたら「バル(ボラ)×チリ」という
妄想が浮かんで来てしまった私は病んでるかもしれん。

560:名無しさん@ピンキー
07/10/07 00:32:31 Omxf4OFf
それ以前にココで百合は鬼門だ。

561:名無しさん@ピンキー
07/10/07 00:54:23 pXdAGVwD
>>560
あぁ、スマン表現の仕方がマズかった。
「バル×チリ」の方はノーマル(広義的な近親相姦?)だからw

562:名無しさん@ピンキー
07/10/07 02:03:36 glnR7Nq0
別に鬼門ではないと思う。あっちは保管庫とかないし、こっちに比べると何時消えても
おかしくないような不安定なスレ。
投下する者の好みでしょ。

563:名無しさん@ピンキー
07/10/07 02:46:23 Omxf4OFf
保管庫がないなら作ればいいだけの話じゃないのか?
このスレの初めのほうでも百合に対しては余りいい評価ないぞ。
むしろ批判の方が多かった。

564:名無しさん@ピンキー
07/10/07 03:00:47 hF+w9rdd
>>526
>こういうのが読みたい。
最後の奴は元はなんだっけ?

絶望メンバーによる夜のピクニックは何かすごそう。

565:名無しさん@ピンキー
07/10/07 03:02:13 hF+w9rdd
>>563
別にマジパロだってなんだってあるんだから百合も許容していい気がするけど。
あまりいい評価ないって具体的なレスあったっけ?

566:名無しさん@ピンキー
07/10/07 03:10:37 8dgTjMhe
批判というか、百合専用のところがあるから
こっちじゃなくて、そっちでやったほうが向こうもうれしいだろう
って感じじゃないの?要約すると

567:名無しさん@ピンキー
07/10/07 03:11:47 RuuWWbJS
エロでもない鬱系は許されても百合はダメとか意味わからんけどな。
苦手な場合はスルーして下さい何てよくある言葉ですが百合は無条件でNGなわけ?


とは言いつつノーマルな方が好きなんだがね。

568:名無しさん@ピンキー
07/10/07 03:14:25 5ZW57kOi
百合専用スレがあるなら、ここでやらなくても
そっちでやった方がいいんじゃね?ってことでしょ
別に「批判」も「無条件でNG」もしていないような

>>564
ぐぐったところ、スティーヴン・キングの「暗黒の塔」シリーズ1巻だそうな>最後の奴

569:名無しさん@ピンキー
07/10/07 03:37:33 hF+w9rdd
ならそっちがあるよ、ぐらいの情報提供でいいじゃない?
こっちに投下したい人がいるならそれでOKじゃないかと。向うに保管庫がないのが嫌だというの
だって立派な理由じゃないかな。なければ作れ、とまでいうのはどうかと。

>>564
サンクス。そうかスコップ・スリンガーってわけですね。
書いてみたいが、難しそうだ・・・。

570:名無しさん@ピンキー
07/10/07 03:38:22 hF+w9rdd
↑失礼。アンカー付け間違えました。
>>568さんへでした。

571:名無しさん@ピンキー
07/10/07 04:20:42 uInE6G4B
>>567
「私藤吉ですけど百合なんて見たくないんで他でやってくだしあ」
の意だろ。

572:名無しさん@ピンキー
07/10/07 04:35:56 YP1OTjeH
百合でも最初に注意書きすりゃここに投下しても良いって事でFA?

ところで女体化で百合ってのはどうすりゃ…いやごめん何でもない。

573:名無しさん@ピンキー
07/10/07 04:41:01 KOzW4vso
それはこっちな気がするなぁ
あっちの人たちの趣向とはずれてるような・・・よく知らんけど

574:名無しさん@ピンキー
07/10/07 07:29:33 /5cMqXgy
男同士が投下されたら数字板池というだろ?
女同士でも同じ事。それがわからない百合厨は死ねと。

575:名無しさん@ピンキー
07/10/07 08:42:36 Omxf4OFf
>>569
過去に二回も行って両方とも無視されたがな。
それどころか2度目には非難されてる。

576:名無しさん@ピンキー
07/10/07 08:47:36 TWeRSp1t
なんか最近周期的に荒れてんな。
2期も決まったことだし皆でまったり職人さんのSSを読みながら感想を言い合おうぜ!

577:名無しさん@ピンキー
07/10/07 10:22:46 pTEg2Hcv
別に百合でもBLでも明確にスレ違いってわけじゃないだろ。
俺様が気に入らないから、って理由だけでしょ。
そりゃ無視されるだろ。

578:名無しさん@ピンキー
07/10/07 10:59:27 mj256DTK
>>577
いやスレ違いだと思うよ…常考

579:名無しさん@ピンキー
07/10/07 11:15:48 Omxf4OFf
BLは普通に自重されてる。
じゃなきゃ今頃ここはそんなんばっかりだっての。
基本読者は腐女子の方が多いから。

580:名無しさん@ピンキー
07/10/07 12:17:59 BLeHapAA
>>544「奥様は魔女」だから大草さんだったのか(笑)
マリアが妖精とか予想外な面白さがありますね

581:名無しさん@ピンキー
07/10/07 12:24:47 g/OCx67Y
ここはBLに過剰に反応する住人が多いからな
BLはほんのネタ程度でも叩かれてるぞ


582:名無しさん@ピンキー
07/10/07 14:20:28 7xV6kOTQ
少しぐらいなら百合はあってもいいような気がするがな…


例えるならエロ漫画雑誌やエロDVD雑誌のように
メインは男と女の絡みだけどごく一部の作品は百合、みたいな

583:名無しさん@ピンキー
07/10/07 14:24:53 Omxf4OFf
百合スレが無かったらここまで文句は出なかったろうけどな。
既にあるからこそ問題なんだよ。

584:105
07/10/07 14:41:35 5bIXtunv
百合会議でスレが良い感じに乱れてきましたかね。これくらいが私には心地良いです。105です。
お昼時からお見苦しいSSが投下されます。今晩予定が入ってここにこれなくなるかも知れないので、
(多分大丈夫とは思いますが)心配性な、いやハートまで虫な私は今投下します。
エロ無しです。キャラ崩壊はあります。では・・・。

>>580さん、マリアには「ツンデレだネ」って言わせたかっただけです。あと、後で出ますがハッキリ物を言う点も
採用の理由です。変な配役してんじゃねえよって思われましたらすいません。

585:ツンデレラ10
07/10/07 14:42:43 5bIXtunv
階段を一歩一歩下りてくるのは、将来この国の王となる、ノゾム王子。
色白いすっとした顔立ちをまっすぐ持ち上げて、フロアを見る。
もちろん、王子らしく行き交う人とのあいさつも欠かしません。
そうこうして王子が大部屋の中央に来るまでに、周りには王子を一目見たいと言うよりむしろ見て貰いたいという
‘自称将来のお后様’であふれかえりました。
ゼ「あ、あの、みなさん、落ち着いてください・・・?」
王子の声など聞こえてないといったように、会場はもう大混乱です。
そこに一人、老紳士風の男が、この混乱を解せぬかのようにスルリと割って入りました。
老「みなさん、ご静聴下さい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
あれだけざわついていた会場をこの男は一言で静まりかえしました。
老「失礼しました。私こちらにおわします王子の召使い、ギャリソンと申します。本日はお集まりいただき誠に光栄でございます」
時t・・・、もといギャリソンは形通りのあいさつを淡々と述べました。
ギ「さて、本日はただの舞踏会ではないことを、その様子では皆様ご存知のことかと思われます」
その言葉に、静かだった会場がザワ・・・っとなる。
ギ「いかにも、今日王子は嫁を探しに参った次第でございます。十二時になりましたら、イトシキ族見合いの儀を始めます!」
‘イトシキ族見合いの儀’というのは面白いことが好きなこの国の王様が考えたモノで、
目があったら即結婚という、まあ見合いでも何でもないモノなのですが、
歴代のお后様の何人かがこの方法で決まっていたものですから、国中の人が知っていました。
ギ「ですから、十二時までは普通のダンスパーテイとさせていただきます!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

586:ツンデレラ11
07/10/07 14:43:29 5bIXtunv
ギャリソンが仕切ってから、普通のダンスパーティが行われました。
といったものの、ノゾム王子のお相手にと、順番待ちをする女の子たちが後を絶ちません。
ダンス中も、ノゾム王子に積極的に話しかける女性ばかり。王子は会場の女性たちをのべつ幕なく相手をするのでした。
その一人一人に丁寧に返すものの、心から楽しんでいるのかはわかりません。
ギャリソンもその一人一人にチェックを入れます。
ノ「(私は、消極的な子の方がいいんですがねえ・・・いや、そんな人、いるわけがない・・・)」
王子の周りにはいつも積極的な人間ばかりでした。そのくせ、みな王子に対して遠慮がちな態度です。
あるいは、口下手な人は、無理にでも話しかけようとしました。
王子は、そんな人たちに、うんざりだったのです。
ノ「はあ・・・。」
女「あら王子様、私程度では、お楽しみ頂けませんか?」
自分を卑下したコトバでしたが、その態度には自信で満ちていました。
ノ「いいえ。・・ただ貴方の魅力の前に、力が抜けてしまったのですよ」
女「勿体ないお言葉、カエレッタは嬉しゅうございます」
さりげないアピールも忘れない。別に、この女性が悪いというわけではないのですが、
言うなれば王子は、運命というモノを求めていました。
ノ「(今夜の見合いの儀・・、けして目を合わせずに、時間制限の朝を迎えてみせる・・・。なあに、私はこの日のために、
特訓として一週間誰とも目を合わせずに生活してきたんです。やってやるよL・・・もとい父上!)」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
パーティもそろそろ後半になってきた頃、王子の周りにまた人が訪れていまし7た。みんな十二時の鐘の音と共に、
王子と目を合わせようという魂胆です。王子のダンスも、小さく踊るしかないようです。
・・・そんなとき、この部屋の一番小さな扉、といっても縦横3mくらいのものから、背の低い女性警備員が走って現れました。
鋭い目つきを持ったその女性が、息を切らしながらあたりをギロリト見渡しました。
ギャリソンが対応します。彼はこの宮殿の中でも古株なのでしょうか。
ギ「何ですはしたない・・・。ここはダンスパーテイ会場なのですよ・・!」
その警備員にギャリソンが詰め寄って、彼女の耳打ちをかがんで受け取る。
ギ「・・・・・・・・!!なんと・・・あいわかった・・・。」
ギャリソンはそのまま警備員が来た扉から出て行ってしまいました。代わりに、目つきの悪い警備員が残りました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

587:ツンデレラ12
07/10/07 14:44:15 5bIXtunv
パーティが終盤となってきた頃、王子の周りはいよいよ女性だらけになりました。
人がいっぱいでホールはまるで芋を洗うよう、中国的に言えば餃子を茹でるよう、ム○カ的に言えば人がゴミのようだあ!です。
そんなにぎゅうぎゅうでモミクチャですから、あちこちで怒号が聞こえたりする始末。
女1「何でお母様までここにいるのよう!!」
女2「何でって、この見合いの儀はねえ、老若男女はおろか、人間じゃなくたってその対象になるのよ。
なら、歳は離れていても、私にだってチャンスはあるの!!今度こそ私は、王子と結婚してやるんだからあ!!」
女2「うううお母様あ!!!」

この混乱の中、王子はもう踊ってなんかいられません。
ノ「うう・・・ギャリソン!いないのかギャリソンん!!」
返事はありませんでしたが、そのとき、爆発音のような激しい轟音が、どこからともなく聞こえてきました。
一体何事でしょうか。地震の様でもありますが、揺れは一切ありません。音は鳴りやまず、むしろこちらに迫ってくる感じです。
ノ「その扉だ!離れろお!!」
王子が指さした扉は先ほどギャリソンが出て行ったものです。そこからどんどんと音の発生源が近づいてくるのが解ります。
しかし何でしょうか、この今までに聞いたことのない爆音は!?人々は恐ろしくなったようで、
とたんに、そこから出来るだけ離れようと、もう押せや退けやの大パニック!王子も何もあったモンじゃあないようで、
ノ「お、押さないでください!わわ、!引っ張らないで!!あぶ!!」
王子は転んでしまいました。その後何人に踏まれてしまったか解りません。
ノ「(・・・・・・・・・・だから貴族は嫌いなんだ。とても付き合いきれない・・・。
ああ、結婚・・・。結婚するなら、昔、まだ5歳か6歳だった頃に街であったあの女の子がいい・・・。
きっと百姓の娘なのだろう、服とも布とも分からぬものを着ていた・・・、可哀想に・・・もう死んだのかもしれぬ。
私は、たまにそんな彼女のことを思い出して、たまらない気持ちになる。
けれども、君たち貴族は、そんな彼女の心を絶対理解できないばかりか、軽蔑しているんだろう?
人から尊敬されようと思わない人と結婚したい。けれども、そんないい人たちは、僕と結婚できやしない。
僕は、王子だ。貴族だ。だからいやなんだ。・・・決めた、この見合いの儀、誰かと結婚することになったら死のう。)」
うずくまる王子を見ていたのは一つの鋭い目だけでした。
その目の持ち主が王子に駆け寄ろうとした瞬間、爆音の正体はいよいよ扉を破りました。
警「おっ・・王子ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!」
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