07/10/03 16:47:11 jnf8X16+
ちょっとここで一段落…
後篇はあと少しで出来ます。
本当に、他の方の作品と見比べて絶望的になってきます…
421:名無しさん@ピンキー
07/10/03 17:28:20 qEJbT4JL
>>420
GJ!カフカが普通より普通っぽいwこれからどうなるのか続きが楽しみだ
>>412
個人的に一番好きなのは173氏(保管庫では7-222ね)の『理不尽な神様』だが
真昼氏のSSが好きなら430氏のが合うんじゃね?
422:名無しさん@ピンキー
07/10/03 17:59:27 dRXZ5Ud3
>>421
サンクス! 430氏読んできます。
423:名無しさん@ピンキー
07/10/03 18:02:52 76BnoOEE
>>413
何視点かは聞き取れなかったけど、君がそれになりきれば全く問題ない。
424:名無しさん@ピンキー
07/10/03 18:07:18 ap+zcvES
そして今日も真昼氏投下を待って正座をするのであった
425:名無しさん@ピンキー
07/10/03 19:29:32 2uEcAx1y
連日投下が義務付けられかねない雰囲気に絶望した!真昼です。期待が…期待が恐れ多くも重い…!
7レスほど消費いたします。ああ…いい加減書き溜めてた分が底を付いてきたぞー。
426:真昼が雪 55
07/10/03 19:30:43 2uEcAx1y
「―そうですか、兄さんに」
記憶の海に溺れていた可符香の思考は、望の声によって浮上した。
望は自らの顎に手を当てて、何事か考え込んでいる。
「それじゃあ、私が明日には入院しなければならない事も、知っているんですね」
「知ってます」
「では何も、怒ることはないじゃないですか」
「怒ってません」
そう、彼女は怒ってなどいない。
ただ、日頃あんなに他人の同情を集める事に必死な彼が、どうして病を隠してまで学校に来たのか。
そしてそれをするだけの価値がある、「やり残した事」が何なのか。
それが気になって仕方がないだけだ。
「先生―先生のやり残した事…もう、やれたんですか」
苦痛を嫌うこの男が、それに自ら進んで耐える事を選ぶほどの事。
気にならない筈が無い。まして、それが心寄せる男の事であれば、尚更だ。
可符香の真剣な問いに、望は柔らかく微笑みながら答える。
「いいえ、残念ながら。何せその相手が、今まで学校に居てくれませんでしたからね。
それに私も、一時限目が終わった後体調を崩しまして……宿直室で休んでいたんですよ」
その際に、交に自分の病の事も伝えてあった。
『叔父さんの馬鹿』
それだけ言って顔を伏せた甥の髪を、ゆっくりと撫でた感触を思い出す。
彼の事は、小森に任せてある。他の生徒たちも、何だかんだ彼の面倒は見てくれるはずだ。
寂しい思いはさせずにすむだろう。
「……人に関係する事なんですか?」
「ええ」
「――誰に、関係する事なんですか?」
望はふと、少し戸惑うように口を噤んだ。
その沈黙に滑り込むように、可符香は重ねて問い掛ける。
「――やり残した事って、なんですか?」
427:真昼が雪 56
07/10/03 19:31:55 2uEcAx1y
問われて、明確にそれが言葉に出来ない事に戸惑う望。
頭の中で伝えたい事を整理しながら、ゆっくりと、口を開いた。
「―伝えたい事があります。貴女に」
「……私に?」
まさか自分に関係する事だとは思っていなかったようだ。
可符香はキョトンと目を丸くして、自分を指差す。
望は頷いた。
「こういう状況で言うのもなんですけどね」
「なん、ですか?」
「好きですよ」
ともすれば、それが告白だと気付かないほどの自然さで、彼は言った。
「…は?」
何を言われたのか咄嗟に理解できず、思考が停止してしまう。
何か、何かとても大変な事を言われた気がするのだが。
「好きなんです。貴女が」
そんな可符香に、今度は染み入るような深い声音で、望は繰り返し愛を伝える。
ああ、告白されたのか、と。
ようやく理解した頃には、身体の方が先に反応したのか、可符香の頬は朱に染まっていた。
「……さ、さらっと言わないで下さい」
「だって、じっくりとっくり愛の告白なんて、照れるじゃないですか」
「これはこれで困ります。言われた方は」
誰かの言葉に、これほど困惑するのは初めてだった。
だって、理由がわからない。
確かに思わせぶりな態度も取った。けれど、まさかアレで好いてもらえるとは思っていない。
彼が自分に好意を示した理由がわからない。その告白は彼女にとっては、あまりに唐突過ぎた。
それも、自らが彼に好意を持っている事を自覚した矢先である。
幸運を通り越して、むしろ何かの罠じゃないかと勘繰ってしまう。
「好きとかじゃないって、こないだは言ってたクセに」
「言いましたね―でも、もう……私から素直にならないと、貴女も素直になってはくれないでしょう?」
ああ、アレは本当にツンデレだったのか。
という事は、今は彼のデレの部分を垣間見ているという事なのだろうか。
思考の端で冷静にそんな事を思いつつも、熱くなる頬はいっこうに冷めてくれない。
「私は貴女に、いつも自然に―あの時見せてくれたような、あんな笑顔で居て欲しいんです」
自分で抑制が効かないような、心の底から込み上げる笑顔。
そんな笑顔が、自然と彼女の顔に浮かぶようになれば、それはどんなに素敵な事だろう。
「……常に爆笑してればいいんですか?」
あまりにも真っ直ぐな望の目に耐えかねたようにそっぽを向いて、照れのあまり軽口を叩く可符香。
その様子が、いつもの余裕綽々なそれより何倍も可愛らしく見えて、望は笑みを隠しきれなかった。
428:真昼が雪 57
07/10/03 19:37:21 BtOwsmAf
「茶々を入れない。そういう事じゃなく、本心から笑っていて欲しいって事ですよ」
「……話が見えてきません。私は先生のやり残した事が聞きたいんです。
それがどうして、そこに繋がるんですか?」
はぐらかされたと取ったのか、不満そうな顔で問い質す可符香の頬は、まだほの赤く染まったままだ。
望は少しだけ困ったように沈黙を挟んでから、
「この間、話しましたよね。貴女の―怖がっているものの事を」
「……私が、逃げてるって話、ですか」
「そう……、あの話を、このまま有耶無耶にしてはいけないと、思ったんです。
風浦さん。貴女が避けているソレは、いずれ――」
「わかってます」
いずれ貴女を、酷く傷つける事になる。
続く言葉は、強く放たれた可符香の声に断ち切られた。
「わかってます…先生。もう、その話には―決着がついちゃってます」
望は驚いて、眼鏡の奥の瞳を見開いた。
可符香はもう、笑顔が歪むのを隠そうともしなかった。
瞳は潤み、唇は震えて―今にも、泣き出しそうだ。
「私もう、あの時先生の言葉を否定できなかったから……。
だから、もう―私先生に、言い負かされちゃってるんです」
糸色医院での葛藤の末に、彼女は自らの故障を認めていた。
だがそれも、こうして改めて望に言われるまで、ハッキリとは認められなかった。
こうして望を前にして、会話を交わし、心の柔らかい部分に触れられて。
彼女はますます言い逃れが出来ない状況に追いやられていた。
どうにか笑顔を崩さずにすむのなら、それにこした事はなかったけれど、どうやらもう無理そうだ。
「私は―きっと、怖がりです…人よりずっと、怖がりです。
必死になって嫌なモノを見ないフリして……そうしないと、駄目になっちゃうから」
子供の彼女にはあまりに凄惨な、父の亡骸を前にして。
いっその事その時、母親のように壊れてしまえたら、楽だったかもしれない。
けれど彼女には、戻りたい日常があった。
毎日一緒に居てくれる、楽しい物語を聞かせてくれる、幼馴染との日常が。
おかしくなっていく日常の中で、彼との時間だけが、彼女に残された幸福だった。
耐えなければいけない。自分までおかしくなってはいけない。
自分は不幸などではない。不幸な事など何一つあるものか。
降りかかる数々の不幸に、幼い少女が耐える為には、そんな歪な自己暗示くらいしかなかった。
その無理矢理さに薄々気付いていたけれど、それでも―直視さえしなければ、彼女の心は耐えられた。
彼の許から、ずっと遠くに引っ越す事になった時は、さすがに挫けてしまいそうだったけれど、
最後に過ごした彼との優しい思い出は、再会を果たすその時まで、彼女を支え続けた。
自分流の世渡りのコツを覚えて、どんどん生きるのが楽になっていった。
軋んでいた心は硬化していって、痛みも麻痺し始めていた。
そんな中で出会った、糸色望という、くだらない男。
そんなくだらないと思っていた男に―自分は今、どうしようもなく恋している。
そしてその想い人は、今――
429:真昼が雪 58
07/10/03 19:38:49 BtOwsmAf
「認めます…私、弱いです。駄目なんです…認めます」
こんなにも弱い自分を、暴き出しておきながら。
「認めますから……、だから――」
――いなく、ならないで下さい――
気が付けば、もう自分はとっくに泣き出していて、いつの間にか暖かな両腕に抱きしめられていた。
ポンポン、と。まるで母親が子供をあやすように、可符香の背中を叩く望。
抱き締められる安心感が、よりいっそう彼女の涙腺を緩ませたのか、
可符香は肩を震わせて、何も言えなくなるほどに泣いている。
望は思っていたよりも随分と小さな少女の身体を、より強く抱きしめた。
「―それで、いいんです」
穏やかな声。
「泣いたって、弱くたっていいじゃないですか。私なんか、毎日泣いてる気がします」
しゃっくり上げる可符香の髪をゆっくりと撫でながら、望はそっと言い聞かせるように言葉を続ける。
「いつか泣き止んで―その先に笑顔があるのなら。
泣く事も悪い事じゃありませんよ、可符香さん」
「―ッお、お願…しま…ッ、わた、私、が…ッ…」
――私が泣き止むまでは、せめて、一緒に居てください。
そう言おうとするも、上手く呼吸が出来なくて、言葉にならない。
日頃泣き慣れない所為か、息継ぎままならないほどだ。
「大丈夫です、大丈夫ですよ」
優しく背中や髪を撫でられると、少しだけ呼吸が楽になった。
それでも涙はあとからあとから湧き上がってきて、絶える事なく彼女の頬を濡らし続ける。
「大丈夫―ずっと、一緒に居ますから」
その言葉が真実だと、今だけは心から信じていたい。
可符香は痛い程に望の身体を抱き締め返した。
このまま彼が、どこにも行ってしまわないようにと。
430:真昼が雪 59
07/10/03 19:40:12 BtOwsmAf
どのくらい咽び泣いていただろうか。
いつしか彼女の嗚咽は小さくなっていき、乱れた呼吸も落ち着きを取り戻していた。
彼女が泣いている間、望はずっとその髪を優しく撫で続けた。
「可符香さん」
可符香を抱きしめる望の腕から、ほんの少しだけ力が抜ける。
涙や鼻水でグチャグチャになった顔を上げて望を仰ぎ見ると、彼は予想以上に優しい表情をしていた。
彼はやおら可符香から身体を放す。
彼女がずっと顔を押し付けていた望の胸元は、涙と―少々不潔ではあるが、鼻水で濡れている。
「っぇく―ごめんなさい、先生」
可符香はそれに気付くと、まだ少し落ち着かない呼吸の隙間をぬう様に謝って、
ポケットからハンカチを取り出し、望の胸元を拭おうとした。
「私より先に、まず自分の顔をお拭きなさい」
延ばしたハンカチを持った手を掴まれて、自分の顔の前まで導かれると、可符香はそれに逆らわず、乱雑に自分の顔を拭った。
彼女が顔を拭いている間に、望は自前のハンカチで胸元を拭う。
涙だけならともかく、さすがに鼻水を付けたままというのは気分の良いものではない。
まぁそれが愛しい少女のものとなれば、汚らしいという気持ちは不思議としないのではあるが。
「可符香さん」
お互いにハンカチを仕舞い終えると、望はポンポンと、可符香側の空いたベッド脇を軽く叩いて見せた。
「ずっと立ったままではなんでしょう?座りませんか」
ずび、と鼻を啜りながら、コクリと頷く可符香。
彼女がベッドに体重を掛けると、僅かにベッドが軋む音がする。
望は彼女が窮屈な思いをしないよう、自分の座る位置を調整しながら、彼女の顔をのぞき見た。
目尻と鼻を赤くして、目はまだ潤んでいる。
そんな自分の顔を見られるのが気まずいのか、可符香は望の視線に気付くと不満気に眉根を寄せて、すぐに俯いてしまった。
その様子が無性に愛らしく思えて、望は思わず可符香の肩を抱き寄せた。
「―何だか先生、気安いです」
「調子に乗ってますか?」
「乗ってます。凄く」
「嫌、ですか?」
可符香は答える代わりに、ゆっくりと望の身体に体重を預けた。
431:真昼が雪 60
07/10/03 19:41:30 BtOwsmAf
二人はしばらく、そのままお互いに触れ合ったまま、何も語らなかった。
次第に可符香の瞼が、うつろうつろと降りてくる。
「眠いですか?」
望の声にハッとなり、慌てて遠くなりかけた意識を戻す可符香。
「だ、大丈夫です」
「無理しなくていいですよ」
そう言うと望は、ゆっくりと可符香の身体を横たわらせて、自分もベッドに身体を預けた。
「いっそ一緒に寝ちゃいましょうか」
「女の子に『一緒に寝よう』なんて、先生破廉恥なんですね」
「破廉恥で結構―ですがまぁ、今は本当に……一緒に寝るだけで十分です」
お互いに至近距離で顔をつき合わせて、二人はクスクスと笑い合った。
まるで猫が甘える時のように、望の胸に顔を寄せる可符香。
望もまた、それを受け入れるように彼女の身体を抱きしめた。
「ああ―こうしてると、何だかとても落ち着きます……」
望の呟きに、それはこちらの台詞だと胸中で呟きながら、可符香はよりいっそう望に身体をすり寄せる。
「そういえば」
「はい?」
「いえね、どうでも良い話なんですけど……貴女、こんな時間にどうやって学校に入って来たんです?」
「……本当にどうでもいいですね」
「答えたくなければかまいませんよ」
「―入り口は一つとは限らないんですよ?先生」
可符香は悪戯っぽく笑って、こしょこしょと望に耳打ちした。
「なるほど、あそこですか。私も使わせてもらおうかなぁ」
「先生宿直室暮らしなんだから、そんなの必要ないじゃないですか―ん?」
ふと可符香の中で、何かが引っかかった。
「そういえば先生、最初並木道で倒れてた時……どうしてあんな時間に学校の外に居たんです?」
「ああ、あれは……お恥ずかしながら、朝帰りってやつですよ。
久しぶりに一人で飲みに行ったんですが、気付いたらゴミ捨て場で寝てまして……」
「先生でもそういう事あるんですね」
駄目な大人、とからかうように可符香が言うと、望は困ったような笑みを浮かべた。
432:真昼が雪 61
07/10/03 19:43:43 BtOwsmAf
次第に可符香の口数は少なくなっていき、眠気が彼女の意識を遠くしていく。
―眠りたくない。その一心で必死に瞼をこじ開けるのだが、それも限界を迎えていた。
そんな可符香の様子に気付いた望は、苦笑しながら可符香の髪を撫で付ける。
「寝てもいいんですよ」
「……でも……」
寝て起きた時、望はもう―きっと自分の傍には居ない。
「―大丈夫ですよ」
そんな可符香の心の声が聞こえたかのように、望は言った。
「ずっと一緒ですから」
その声があまりに優しくて、可符香はまた泣き出しそうになった。
「―先生」
「うん?」
望の着物を掴む可符香の手に、少しだけ力がこもる。
「……言い忘れた事が、ありました……」
眠い。とても眠い。
もう殆ど閉じかけた瞼の隙間から、必死に彼の顔を見ようとするのだが、
彼女の意図に反して、視界はどんどん閉じていく。
(まだ……まだ私、大事なこと―伝えてないのに)
眠ってはいけない。どうしても、言わなければならない事がある。
だというのに、意識はどんどん霞がかかるように、白く―
「私も――先生の事――」
プツン、と。何かの電源が切れるように。
彼女の意識は途切れた。
「――おやすみなさい、可符香さん」
意識のない彼女に、それが聞こえたかどうかはわからない。
だが、自らの腕の中で眠る少女は、その言葉に僅かに瞼を震わせた。
この声が届けばいい―心底そう願いながら、望もゆっくりと瞳を閉じた。
柔らかな体温に包まれて。
彼女はその夜、とても幸せな夢を見た。
433:名無しさん@ピンキー
07/10/03 19:47:13 BtOwsmAf
一区切りです。次の投下はちょいと先になると思われ…まだ書けてないんだもの…。
次はラスト一歩手前くらいまで行けるといいなぁ―いや、自分でハードル上げてどうする。
434:名無しさん@ピンキー
07/10/03 19:54:02 v395rOVM
真昼氏GJ!!
目から塩水が出てきた…
435:名無しさん@ピンキー
07/10/03 20:04:14 4Vtm9mzb
真昼さん頼むから俺の可符香を幸せにしてやってくれ
436:名無しさん@ピンキー
07/10/03 20:36:38 KIuioLm8
>>433
無理するな
437:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:30:45 /W/Eh43v
>>433
ご自分のペースで、無理なさらず。
438:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:36:26 OcOubHzF
もうどうせ身バレするんで430ですが、
真昼氏……これは、これは…MADのあのシーンですねぇぇぇぇええ!!
すでに号泣し始めてるんですが。
あの、前回ものすごプレッシャーかけちゃいましたが、
すいませんでした!続きはゆっくり書いてください!!
いつまでもお待ちしますので…って、これもプレッシャーかぁ…。
あと、
>>397
知ってる人がいた…!ちょっと嬉しかったです。
>>412>>421
そ、そ、そうなの!?
439:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:08:31 /W/Eh43v
>>438
私も430氏を勧めますね。
・・・・・・え、と、身バレさせてスマソw
440:名無しさん@ピンキー
07/10/03 23:30:21 pPfTnlJl
読経が聞こえる。
小さな抑揚と短調な繰り返しが、その収容人数には不釣り合いに大きな堂内に、反響しては消える。
地獄の底から聞こえる様でもあり、お迎えの声にも例えられるそれは、私に(錯覚かも知れないが)余裕をくれる。
一人一人が発する、一音一音の文字。
何秒も無い命に海溝の寂寥を乗せて、
消える。
どこまでも、どこまでも、
退廃的なのに、悠久を感じさせる、華美な感情。
感情は淑々と、焼香から伸びる、白い煙となって、
静かに、儚く、確かな存在感を以って、目を閉じている私の境界を消していく。
死人のために創られた言葉は、それを聞かせる対象外の者にも、自ずと、それらに纏わる、又それに見合う空気を創り出させるしい。
例えその対象は、穢れとして忌み嫌われても、経が、この焼香の香りと相俟って一層強めるのは、やはり、この死人の空気なのだ。
幽玄でなお清明な、常世の空気を。
だが、多分、私はこの空気を創ってはいない。
我ながら卑屈に、頭の中でほくそ笑んだ。
不敬とは言わずも、機械的に題目を唱えるだけの自分に、きちんとした信仰心があるかは甚だ怪しい。
自己弁護すると、恐らくここにいる殆どの人間が、かけらの信仰心と儀礼という、絶対の強制力しかここに居る理由を持たない人間ばかりだろうと、私は邪推している。
しかし同時に、改めて宗教に恐怖する。
こんな気の遠くなる程遠い親戚の法事なぞに参加している自分も、彼の強制力に敵わないからこそここにいる。
洗脳にも似た『弔う心』を、私達は幼い頃から教育されてきた
441:名無しさん@ピンキー
07/10/03 23:38:08 pPfTnlJl
うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
誤投下してしまいました!すみません!
未完成の物などでお目汚ししてすみません!
442:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:03:21 iPVjjHFU
未完成とか以前にこれは絶望先生なのか?
あとsageような
443:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:13:14 5TadMmyT
今週は芽留より藤吉さんの姫にやられた
豊作とはいえ藤吉姫ネタはさすがに期待しても来ないかな
444:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:18:43 ixEeFL3J
今週の話は、芽留は口だけ毒舌だと思ってた俺にとっての鬼門
あれが本性だったのか!信じてたのに!きっと根はいい子なんだと信じてたのに!
禁止ワード「だがそれがいい」
445:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:57:09 dYePieKE
世界はすずさまとともに!
446:名無しさん@ピンキー
07/10/04 02:02:17 AbzvlB2/
>>443
晴美姫の姫初めは…さすがに季節はずれか
447:名無しさん@ピンキー
07/10/04 02:21:43 ldpNjvtj
>>442
誤投下って言ってるじゃんか。要するに誤爆、間違いだ。
編集さん。そう言う事だから保管庫に>>440のはいれないでね。
448:名無しさん@ピンキー
07/10/04 04:09:18 RshqSE8L
だがそれがいい
449:名無しさん@ピンキー
07/10/04 04:29:19 GN2DkX/N
可符香好きな俺にとってはこのスレはまるでエルドラドですね
これはもう恋に違いないね!絶対!!
450:名無しさん@ピンキー
07/10/04 09:20:32 tVKpTwWd
ま、恋のきっかけの99%は希望じゃなくて、勘違いだけどね。
451:433
07/10/04 19:28:07 6zdSchYF
>>436,>>437
つくづくスレ住人の優しさに目汁が出る…ありがとうごじゃります。
>>438
>MADのあのシーン~
あばば、そんげな細かトコまで見てくれて嬉しいやら照れるやら。
蛇足ですが他にも元ネタ意識してるシーンがあったりしますが、
話の進行上多少(夕方のシーンが夜になってたり)は違ったりしてるんで、あまり気にせず見てもらえればと
452:430
07/10/04 20:00:46 phF+9Lop
こんばんはです。
>>451
真昼さんだー!
そうか、MAD観ながら読み返してみるのもまた一興ですね。
って、そんなことしたら絶対に泣くけど(・ω・。)
>>443さん
自分も今週の藤吉姫にやられたクチです。
というわけで、先生×藤吉姫です。
思い切りパラレルですので、苦手な方はスルーお願いします。
敬語の使い方がめちゃくちゃですが、気にしちゃいけない。
453:絶望・草双紙 1/9
07/10/04 20:01:52 phF+9Lop
ここは、さるお大名の江戸屋敷。
先日、目黒ですっかりBL本にはまってしまった晴美姫は、
今日も今日とて部屋一杯にBL本を広げ、熱心に鑑賞されておりました。
と、ふすまが開いて
「姫。お作法のお時間です。」
そこに現れたのは、姫の教育係の糸色望卿でございます。
この御方は公卿の家のご出身ながら、公家の常として身代が苦しく、
晴美姫の教育係として、日々の禄を得るお立場にございました。
卿は、姫の部屋に散らかるBL本を見て目を剥きました。
「姫…こ、これは何なんですかあっ!」
「ああ、これは目黒で調達したBL本というものじゃ。
やはりBLは目黒が一番じゃな。」
姫はにっこりと笑顔を浮かべて、卿をご覧になりました。
卿は、姫が見ているBL本のページをちらりと見て、天を仰ぎました。
「絶望した!一国の姫ともあろうお方が、
このような下劣な本を嬉々として読まれていることに絶…」
「のう、卿。」
姫は、卿のお言葉を全く聞いておられないようです。
まあ、卿が絶望されるのはいつものことですから、
今さらいちいち構うのも面倒なのでしょう。
姫は、顔をお上げになると首を傾げて卿をご覧になりました。
「それにしても、男というものは、随分変わったことをするものじゃのう。
卿は、今まで、このようなことは教えてくれなかったではないか。」
「姫。お作法のお時間の間は、先生とお呼びください。」
「では、先生。お尋ねするが、男の人と言うのは、
どうしてこのようなことをするのか?」
卿は絶句されました。
――もしや、姫は閨房のことについて、何もご存知でない?
卿は恐る恐る姫に問いました。
454:絶望・草双紙 2/9
07/10/04 20:02:33 phF+9Lop
「姫…姫は、どうやったらお子ができるか、ご存知ですか?」
姫は、むっとしたように卿をご覧になりました。
「馬鹿にするな、それくらい知っておる。」
卿はほっとすると、目の前の湯飲みをお取り上げになりました。
が、次の姫の言葉に、口に含んだお茶を盛大に噴き出しました。
「子供は、木のまたから生まれてくるのじゃ。」
卿は慌てて畳を懐紙で拭いながら叫びました。
「木のまたって…、どこぞの妖精さんですか!?
それ、洋の東西間違ってますから!!
…というか、姫、それは、本気でおっしゃってるのですか?」
姫はきょとんと卿を見ると、首を傾げました。
「…違うのか?」
その姿は、無邪気にも愛らしく、卿は一瞬くらっときましたが、
それどころではございません。
姫は、いずれはどこかの大名のご正室としてお世継ぎを生さねばならぬ身。
この御年になられれば、閨房での技についても学んでいなければなりません。
――一体、お女中達は何をやっているのですか!!
卿は、腹立たしく思うと同時に、姫がいずれは嫁がれる、というその事実に
胸がきりりと痛むのを感じました。
所詮、自分は貧乏貴族。
お大名の姫に釣り合うような身分ではありません。
しかし…。
姫が、誰とも知れない男に抱かれている姿を想像することは、
卿には耐え難い苦痛でございました。
「先生?どうしたのじゃ?」
姫は、黙り込んでしまった卿に、不思議そうににじり寄り、
襟元をつかんで覗き込みました。
455:絶望・草双紙 3/9
07/10/04 20:03:15 phF+9Lop
「――!!」
卿は、喉元にかかる姫の温かい吐息に、思わず体をのけぞらせました。
姫の眼鏡の奥の瞳はくりっと愛らしく、尖った桃色の唇は艶やかで
姫に想いを抱いている卿にとって、至近距離からの姫のそのお姿は、
脆い理性を吹っ飛ばすのに充分でございました。
――このままでは、姫は、大恥をかかれてしまいます。
私は、姫の教育係なのですから、全てをお教えせねば…!
卿は、とっさに都合のいい言い訳を考えると、姫に向き直りました。
「姫。あのような技は、本来、男同士で行なうものではありません。」
姫は驚いたような顔をされました。
「そうなのか?」
「ええ…もとは、男と女の間で行なうものなのですよ…。
…教育係である私が、責任をもってあなたにお教えいたしましょう。」
そう言うと、卿は姫の艶やかな唇に口付けをされました。
「ん…っ!」
姫の目が驚いたように見開かれます。
しかし、繰り返し、卿に念入りに口付けられていくうちに、
その目はトロンと蕩けてまいりました。
卿は、そんな姫を愛おしそうに見下ろすと、囁きました。
「今のが、口付け、というものです。」
「くちづけ…。気持ちいいものじゃな。」
姫は、うっとりと呟きました。
「もっと、気持ちのいいことを教えて差し上げますよ…。」
卿は、そう言うと姫をゆっくりと畳の上に押し倒しました。
しゅるしゅると帯の解かれる音が部屋に響きます。
卿は、手馴れた様子で、1枚1枚姫の着物を脱がしていきました。
襦袢1枚になった姫を見て、卿は感嘆のため息をつきました。
――こんなにも、お美しい体だったのですね…。
456:絶望・草双紙 4/9
07/10/04 20:03:49 phF+9Lop
いつもは幾重もの着物に包まれた姫の肢体は、
豊かな胸とくびれた腰、そして臀部に続くなだらかなライン、
いずれも男の情欲を誘うに充分な魅力を持っておりました。
「姫…お美しい…。」
卿が思わず漏らした呟きに、姫は真っ赤になりました。
「な、な、何を言うのじゃ。恥ずかしいから、あまり見るでない。」
そういうと、両手で胸元を隠すようなしぐさをされました。
卿は、その手を捉えると、左右に広げ、畳に押し付けました。
「いけません、姫…。
閨の中では、殿方には、全てをさらけ出さねばいけないのです。」
卿は姫の両手を抑えたまま、姫の胸元に唇をお寄せになりました。
「ん…っ」
胸元を強く吸われて、思わずというように姫が声を漏らします。
次の瞬間、それに驚いたように、再びお顔を赤くされました。
「いいんですよ、姫。こういうときは、お声を上げるものです。」
そう言うと、卿は、姫の襦袢の袷を左右に押し開き、
その桃色の胸の先端を口に含み、軽く舌で転がしました。
「あぁっ…、先生…!!」
姫が体をしならせます。
姫は、奥で育ったにもかかわらず、体が柔らかく動きもしなやかで、
卿は、その反応にすっかり夢中になっておしまいになりました。
気がつけば、姫の襦袢はすっかり肌蹴てしまい、腰巻も緩んで、
姫が身もだえするたびに、白く滑らかな腿が見え隠れします。
卿が、堪らず、むしりとるように腰巻を取り去ると、
今だかつて誰も触れたことのない未踏の地が、姿を現しました。
「…。」
卿は、緊張の余り生唾を飲み込むと、そこに顔をお近づけになりました。
そして、優しく、ゆっくりと、舌を伸ばされました。
457:絶望・草双紙 5/9
07/10/04 20:04:31 phF+9Lop
「はぁ…っ!」
姫は、エレキテルに触れたように体をお震わせになりました。
きっと、今だかつて体験したことのないような感覚だったのでしょう。
しかし、卿は、姫の反応に頓着することなく、舌をお遣い続け、
それと平行して、指を姫の中に差し入れ、動かしました。
「あ…っ、あっ、ああああ!」
姫が再び体をそらせて、そのまま雷に打たれたように固まりました。
同時に、卿の指には温かいものが溢れてまいりました。
姫は、すっかり上気した顔で息を切らされております。
卿は、肘をついて体を起こすと、姫にお尋ねになりました。
「どうですか?姫…?」
姫は、ぼんやりと卿を見返すと、口の中で呟きました。
「すごく、気持ち良かった…。」
卿は、嬉しそうに、にっこりと微笑みました。
と、姫がいきなり、がばりと起き上がりました。
「わらわばかり気持ちよいのは不公平じゃ。」
そうおっしゃると、姫はやおら、卿の股間に顔を埋めたのでした。
「本で読んだ。こういうことをすると、殿方は気持ちよいのじゃろう?」
「ひ、姫!?」
卿も、驚いて体を起こされましたが、
すでに姫のお口は卿をしっかり捉えられておりました。
「…むぅ、ん…。」
高貴な姫の愛らしいお口が、自分のものを咥え込んでいるという事実に、
卿は陶然となりました。
しかも、姫は、BL本でいろいろと知識を仕入れておられたらしく、
初めての割には巧みな舌遣いをお持ちだったのです。
「う、あぁ…。」
卿は、余りの気持ちよさに思わず声を上げてしまいました。
と、姫がふいに、卿から口を離しました。
458:絶望・草双紙 6/9
07/10/04 20:05:16 phF+9Lop
「…?」
卿が見下ろすと、姫は卿の下半身をじっと凝視されておりました。
「な、何をご覧になっているのですか、姫!」
慌てて卿は足を閉じます。
姫は、ぽつんと呟かれました。
「…穴が、足りない…。」
ずがぼん
卿は、畳に頭がめり込むほどの勢いで、突っ伏しました。
「…先生?」
ひりひり痛む額を押さえながら卿は叫びました。
「だから!!そんな穴なんかありませんから!!!!」
そう言うと、卿は姫を押し倒しました。
せっかく盛り上がっていたところに水を差されてしまい、
卿としては、これ以上は、姫に主導権を握らせるおつもりは
ございませんでした。
「もう、あなたときたら…!
これが、本来入るべき穴を、今から教えて差し上げますよ…!!」
卿は、その言葉とともに、姫の御み足を高く掲げると、
すっかり潤っているそこに、自身を奥深く突き入れたのでした。
「あああああぁあ!」
姫の目が大きく開かれ、そのお体が海老のようにのけぞります。
「せ、先生…!痛い…!!」
「大丈夫です…もう少ししたら、痛くなくなります…!」
そう答える卿も、いっぱいいっぱいの状態でした。
姫の若々しく発達した筋肉は、卿をぐいぐいと締め付け、
その快感に、今にも迸ってしまいそうになるのです。
卿は、姫と自分自身のために、しばらく深呼吸をすると、
やがてゆっくりと動き始めました。
459:絶望・草双紙 7/9
07/10/04 20:05:58 phF+9Lop
「んっ…む、あぁんっ!」
最初はお辛そうに眉をしかめておられた姫も、だんだんと、
卿の動きに合わせて甘いお声を上げられるようになりました。
「姫…いい…いいですよ…。」
卿が、腰の動きを少し早めました。
「ぁぁぁあああ!」
姫が嬌声を上げて、卿の腕をつかみ、体を起こそうとなされました。
「せ、先生、もうっ!」
「まだ、だめですよ、姫…。」
ところが、卿は、先ほどのことを根に持っているのか、
まだ容赦しようとされません。
「いや…あぁぁ!!」
姫は、もはや半狂乱になり、すすり泣きながら卿の首にしがみつきました。
「せんせ……卿!…卿!!好き…っ、好きじゃ!!大好き…!!
ずっと、ずっと前から、卿だけが……っ!!!」
姫の叫びに、卿の動きが止まりました。
「…?」
姫が、息を切らしながら、怪訝そうに潤んだ瞳を卿に向けます。
卿は、泣いているような笑っているような不思議なお顔で、
姫のお顔を見つめておいででした。
姫の、たった今の告白は、卿にとって思いもかけない喜びでした。
しかし、卿は、それに対して返す言葉を持ち得ませんでした。
姫と卿との間に立ちはだかる身分という壁は、卿にとって、
余りにも高いものだったのです。
そう、それこそ、「教育」という名目がなければ、
姫に触れることもかなわないほどに…。
卿は、不思議そうに自分を見やる姫を見つめ返すと、
言葉を返す代わりに、想いのたけを体で伝えることにしました。
460:絶望・草双紙 8/9
07/10/04 20:06:41 phF+9Lop
先ほどよりも、さらに、激しく、強く、深く。
まるで、自分の想いをあらわすように、卿は姫に体をぶつけていきました。
「――卿、卿!!」
「――姫!!」
姫と卿とは、同時に昇り詰め、果てたのでございます。
姫は、どうやら気を失われておしまいになったようでした。
卿は、姫の髪をなでながら、
自分がつけた紅い花びらを体中に散らせた姫を眺めておられました。
――これは、お手打ち、ですかね…。
今日の夜、姫が湯殿に入る段になれば、姫の白い体に散るこの跡が、
お女中達に、ばれないわけがありません。
そして、それを誰がつけたのかも…。
――仕方ありませんね、それだけのことをしたのですから…。
卿は苦笑されました。
姫と想いを遂げた今、例え罪人として裁かれても悔いはありませんでした。
と、姫が薄らと目をお開けになりました。
「卿…。」
「姫。お目覚めでございますか。」
「卿、逃げよう。」
「…!?」
卿は、驚いて姫を見つめました。
姫は、今やしっかりと目を見開いて卿をご覧になっておいでです。
「卿、わらわは、卿に教わって分かった。
このようなことを、卿以外の男とすることなど、わらわにはできぬ。」
「…。」
461:絶望・草双紙 9/9
07/10/04 20:07:20 phF+9Lop
まだ、口がきけない卿に、姫は起き上がると尋ねました。
「それとも、卿は、わらわが嫌いか?」
「そ…。」
不安気な色を見せながらも、想いを込めて見つめて来る姫の眼差しは、
卿の胸の中の不安や恐れ、そしてためらいを溶かしていきました。
卿は思わず手を伸ばし、姫を胸にしっかりと掻き抱きました。
「そんなこと、あるはずがないじゃないですか!
私は…私は、…ずっと前から、姫をお慕いしておりました!!」
姫は、その言葉に驚いたように目を瞬かれましたが、
次の瞬間、卿を見上げると、心から嬉しそうに笑われました。
「そうとなったら話は早い。行くぞ、卿!!」
姫は手早く着物を纏うと、卿の手を引っ張って立たせました。
「って、えええええ、今ですかーーー!?」
「何を言っておる、善は急げじゃ!!」
姫は、持ち前の運動神経で、卿の手を引いたまま縁側を飛び降りると、
そのまま庭を突っ走って、ひらりと塀を乗り越えました。
最初は、戸惑いながら手を引かれていた卿も、
やがて、笑いながら、姫について走り出しました。
その後のお2人の行方は杳として知れません。
しかし、それから間もなく、江戸の片隅に小さな寺子屋が開かれ、
そこには、すぐに絶望したがる先生と、いつもBL本を抱えている奥方のご夫婦が、
いつまでも仲良く住み暮らしておりましたとさ…。
ということだけを、皆様にお伝えして、
このお話は、これにてお開きということにいたしましょう――。
とっぴんぱらりのぷう
462:絶望・草双紙 9/9
07/10/04 20:12:17 phF+9Lop
以上です。
あれ?先生いつの間に服脱いだんだ?…まあ、いいか…。
自分の中では先生×藤吉さんってCPはなかったんですけど、
パラレルだといけるもんだなあと思ってしまいました。
きっと、この先、
苦労性の寺子屋教師の先生と、世間知らずでおきゃんな奥方の晴美との
若夫婦を中心に繰り広げられる、江戸下町人情喜劇が始まるのですよ。
近所の小間物屋のきっちり娘の千里とか、両国の猛獣遣いあびるとか、
江戸でも有名な仏師の景兄さんとか、地丹が下っ引きで登場したり、とか。
ああ、アホな妄想が止まらなくなってきたのでこの辺で。
463:名無しさん@ピンキー
07/10/04 20:12:46 /1mZHgOf
>462
ワロタ&GJ!
464:430
07/10/04 20:23:36 phF+9Lop
あ、>>462のメル欄、タイトルミスった…orz
465:名無しさん@ピンキー
07/10/04 20:48:24 52hiGSPn
うわあ、いいなあ
面白かったですGJ!
466:名無しさん@ピンキー
07/10/04 22:23:35 rEomIRdW
>>415-419の続きが出来たので投下させて戴きます。
前篇同様5レスです。スレ汚しですがどうかお許し下さい…
467:ぶれた慕情 後篇1/5
07/10/04 22:24:26 rEomIRdW
「先生!」
息を切らして宿直室の扉を開けると、望はちゃぶ台を前に、湯呑みのお茶
をすすっていた。
壮絶な女生徒の嵐はもう去っていたらしい。いつも望にくっついている筈
のまといがいないのは、嵐に巻き込まれたためか。
「ふ、風浦さん…!」
こわばった望の表情は、まるで「最大の敵が現れた」とでも言っているよ
うで、可符香は心にチクリと痛みを感じた。
それでも笑顔は崩さず、
「やだなぁ、そんなに怯えないで下さいよ。私はただ、先生がみんなから逃
げきれたかどうかを見に来ただけですよ?」
「そんな事を言って…あなたはまた、私の心のスキマにつけこんで酷い目に
あわせようというんでしょう!」
(先生は疲れてるんだ。千里ちゃんのスコップや、まといちゃんの包丁から
逃げきって、クタクタになってるんだ…)
そうは考えて見たが、望にたいする恋慕の心が最高潮にも達している可符
香にとって、この望の一声はきついものがあった。
「そんな…怒鳴ることはないじゃないですか…私は本当に先生を心配して来
たんですから」
しゅんとうなだれてしまった可符香の姿に、望はわずかに罪悪感を感じた
が、すぐにハッとして言った。
「もうその手には乗りませんよ!焼け太りの時もそうでした。あなたのその
表情にすっかり騙されて、ひどい目に遭いましたからね!」
この言葉が可符香にとどめをさした――
468:ぶれた慕情 後篇2/5
07/10/04 22:25:28 rEomIRdW
誰からも支えられず、震えていた。
震えを隠すため、ぶれまくった。
支えてくれるのはこの人しかいない――そう思っていた人から、こうも
続けざまに嫌悪の言葉をかけられたのは、今の可符香にとってこの上なく酷
だった。
「ぁ…」
かすかな声と共に、一粒の涙が――可符香の頬を伝った。
自分でも思いがけない事だった。
可符香の本体が、笑い仮面を破って表へ出てきた瞬間と言っていい。
ここ何年も…いや、10年近く封じ込めていた涙は、ひとたび流れ始めると
止まらなくなった。
(嫌…先生に涙なんか、見られたくない…!)
だが、体に力が入らない。可符香は宿直室の畳にがくんと膝をついた。
「ふ。風浦さん!?」
望は慌てて立ち上がり、放心状態で涙を流しつづける可符香の肩を掴んだ。
その動作があまりに素早かったためか、ちゃぶ台の上の湯呑みはかなり間
を置いて倒れたかのように思えた。
可符香の眼からは涙が溢れつづけているが、泣き声といっては嗚咽の声ひ
とつ聞こえない。彼女はただ無表情に、虚ろな瞳を濡らしつづけているのだ。
「せん…せ…い…」
およそ1分程の沈黙ののち、可符香は口を開いた。
目の前には夕焼けを横顔に浴びた望が、心配を通り越して尋常ならざる面
持ちでこちらを眺めている。
(いつもはこういう時に、余計な事を言って先生に嫌われちゃうんだよね…
でも…今度こそ、今度こそは先生を逃さない…!)
可符香は望の胸に顔をうずめた。
初めて嗚咽の声が聞こえた。
469:ぶれた慕情 後篇3/5
07/10/04 22:26:04 rEomIRdW
宿直室の押入れでまどろんでいたひきこもり少女・小森霧は、押入れの外
界のただならぬ気配にハッとして目を覚まし、そっと戸を3センチほど開け
て様子を見て、ドキッとした。
それは何か、見てはならないものを見てしまったような驚きだった。
風浦可符香が、糸色先生にすがりついて、しきりにしゃくり上げている。
驚いているのは望とて同じだった。
「風浦さん…一体どうしたんですか…!?」
さっきまでこの少女に感じていた苛立ちのような感情はすっかり消え失せ
てしまい、予想外な状況に戸惑うより他ない…そんな様子だった。
「すみません、先生が言い過ぎました。謝ります…だから…そんなに泣かな
いで下さい。風浦さんらしくないですよ…?」
望がそう言っても、可符香は黙って首を振るばかりだった。
決着のつかない激闘を終え、宿直室に帰還を果たそうとした常月まといも、
中で風浦可符香が泣き伏しているのを見て、思わずドアの陰に身を隠してし
まった。
望の胸に押し付けていた頭を離した可符香。シンボルの髪留めでまとめた
前髪も乱れている。
空を赤く染めていた夕日も既に沈んでいたが、可符香の頬はまだ紅潮して
いた。潤んだ大きな瞳でじっと見つめられ、伏目がちな望も目をそらせなく
なった。
「これが糸色家のお見合いだったらいいのに…」
可符香が発した言葉は、望の聞きなれた作り物の、明るいトーンではな
かった。それは、可符香が心から思っていることなのだ。
470:ぶれた慕情 後篇4/5
07/10/04 22:26:43 rEomIRdW
押し入れの中の少女は、赤くなって戸を閉めた。これ以上見てはいけない
ような…そんな気がして、推し入れの中でじっと体をこわばらせた。
宿直室の扉の外にいる少女もまた、足音をたてないように小走りで走り
去った。これ以上見ていたくない…そう思って。
「先生は悪い先生です…生徒の本心を分かってくれない…」
「風浦さん、あなたは…」
「そうですね…私が駄目なんですよね…こんなに先生のことが好きなのに、
いつもいつも嫌われるようなことばかり。人の弱味につけ込む悪い女なんて
先生は嫌いですよね…」
ポジティブな電波少女の殻を破って出てきた可符香の本性は、望よりずっ
とよく絶望を知った…心に深い傷を持つ痛々しい乙女だった。
太宰気取りの通称‘絶望先生’糸色望にもそれが分かり、眼から熱い涙が
どっと溢れてきた。今度は自分から、可符香を引き寄せて強く抱きしめる。
可符香の方でもつよい抱擁に応え、腕を望の背に回して抱きしめる。
ぶれぶれ人間でもきっと、先生がいたら変わる…
また可符香の眼から、涙が流れはじめた。
今度は、人並みの泣き声を伴って…
471:ぶれた慕情 後篇5/5
07/10/04 22:27:21 rEomIRdW
翌日。
始業のチャイムと共に教室へ入ってきた望を迎えたのは、真ん中分けの前
髪をすっかり乱し、不安定なる精神状態を表したきっちり少女と、その後ろ
に殺気を放ちながら控える小節あびる、日塔奈美、音無芽留らだった。
「先生…。昨晩は、可符香さんが宿直室に行っていたそうですね…。一体何
をしていたんですか…?」
静かな調子だが、一音一音に恨みがこもっている。
教卓の方をちらりと見ると、腫れぼったい眼をしたまといがじっとこちら
を睨んでいる。一睡も出来なかったという様子だ。
まといに見られてしまったのか――
予期せぬ可符香の闖入。まさに「鳶に油揚げ」で、同じように望を奪い合
う好敵手の千里にまといが告げ口をしたとしても何の不思議はない。
「木津さん、落ち着いて下さい…!昨晩、確かに風浦さんは来ましたよ。で
も、私は何もやましいことはしていませんからね!風浦さんは疲れて寝てし
まったので、添い寝をしただけですからね!」
「へぇ…、可符香さんと一つ布団で…。それで、何もなかったと言い張るん
ですか…?」
千里の前髪がさらに二房、三房はらはらと乱れる。
「あぁっ!絶望した!PTAやマスコミに散々叩かれるであろう未来に絶望
したぁ!!」
絶叫する望に、今しも躍りかからんとする女生徒陣。だが、
「本当だよ、千里ちゃん」
という可符香の声に、皆ぴたりと動きを止めてしまった。
「先生の言う通り……添い寝しか、してもらえなかった……」
ぽつりと放ったその言葉。千里をはじめとする、望に恋する少女達の耳に
は、とても嘘には聞こえなかった――
472:ぶれた慕情 完
07/10/04 22:28:58 rEomIRdW
アニメ主題歌「人として軸がぶれている」が可符香の事を歌っているように
473:名無しさん@ピンキー
07/10/04 22:33:04 rEomIRdW
書き込みミスしましたorz
アニメ主題歌「人として軸がぶれている」が可符香の事を歌っているように思えて
書いてみました。同じ軸がぶれた人間として、どうしてもこの可符香は救われて欲し
かったのでエロも何もない終わり方に…絶望した!
474:名無しさん@ピンキー
07/10/04 22:57:44 OLuSbWj1
>>462
ふじよし姫キターーー!
それにしても仕事はええなw 終わり方が良かった
>>473
カフカ切ないよカフカ どうしてカフカはこんなに不幸が似合うのか
475:名無しさん@ピンキー
07/10/05 06:11:05 d79Q60f4
ん?
昨晩は珍しくスレの伸びが悪かったな・・・と思ったがこれが普通なのか
アニメ終わって2週間だしそろそろ沈静化してきたのかね
476:名無しさん@ピンキー
07/10/05 06:21:22 fbRhDlH3
普通って言うなよ…
477:名無しさん@ピンキー
07/10/05 06:50:17 zpSEtdh+
私はいつもここにいます
478:名無しさん@ピンキー
07/10/05 07:13:26 QhmG7iVH
やっぱりアニメ化の影響は大きかったか。
ああ、あの頃は全裸待機も苦ではなかったなあ。
479:名無しさん@ピンキー
07/10/05 07:50:40 ZcVW00hB
>>478
豊作貧乏だったな・・って1晩に2本SS落ちてりゃ充分だとも思うが
480:名無しさん@ピンキー
07/10/05 07:51:39 DpdW5pAJ
以前ココで長編書いてた者ですが、アニメのキャラ付けの影響はありますね。
読む方にも書く方にもアニメの影響は少しながらあるんですかね。
しかし今週の藤吉姫や最近の芽留はやばいですな。
481:名無しさん@ピンキー
07/10/05 09:29:13 HUbT2DuZ
カフカSSが増えたのは完全にアニメの影響だろうね
482:名無しさん@ピンキー
07/10/05 12:16:39 IVBt7Moz
>>462
こういうの好きだなあ
鬱からギャグまで守備範囲の広い430氏の才能に嫉妬
483:名無しさん@ピンキー
07/10/05 13:44:02 awr/i7+h
大草さんの続きまだー?
484:名無しさん@ピンキー
07/10/05 17:32:24 fbRhDlH3
これだからゆとりは…
数日間すらガマンできんのか。
いい作品作るのは大変なんだぞ。
作る人の気持ちを少しは考えろ。
俺は何も作ってないけどね。
485:名無しさん@ピンキー
07/10/05 18:01:31 dwz6z0I8
まあでも待たれないより待たれた方が書く側としても励みになるんじゃ・・・
と、読み専の俺が擁護してみる
486:105
07/10/05 19:24:19 Bdn3yZFz
書き込みが出来る・・・かきこみできるぞおおあああああ1!!
・・・すいませんeo-netは可変アドレスだからホームサーバーが集団拒否うんたらかんたらとかで・・・
平たく言うとアク禁になってました・・。絶望しましたよ、ええ。
というわけでしばらく見ないうちにまた神さまがふえましたねえ・・・。
藤吉さんが可愛くて好きかも。
ツンデレラのSSが一応完成しているのですが、この神ラッシュには迷惑ですかねえ?
次の三択でお願いします
→スルー
→お前にはハッキリ言ってやる必要があるようだな、カエレ!お呼びじゃねえんだよ!!
→別に!投下したきゃ勝手にしたらいいじゃない
>>213
430氏、貴方が正しいんですよ。でもそう言っていていただくとありがたいです・・・。orz
それよりも前スレではろくなあいさつも出来ずに駄文投下してすいませんでした。
某妖怪漫画というのは解りませんが、命兄さんは悩んでいてもカッコイイですねえ
(*‘o‘* )ほわーってかんじです
487:名無しさん@ピンキー
07/10/05 19:26:47 P4D8pPBv
べ、別に投下してほしいなんて思ってないんだからねっ!
誤解しないでよねっ!(ぷいっ)
488:名無しさん@ピンキー
07/10/05 19:35:53 r1GnTy6w
お前にはハッキリ言ってやる必要があるようだな、投下!読みてえんだよ!!
489:名無しさん@ピンキー
07/10/05 19:56:31 ky2Zb/na
俺がどれだけツンデレラの続きを待ってたと思ってるんだ!
続きが気になるので携帯を使ってでも投下してください。
490:名無しさん@ピンキー
07/10/05 20:05:17 A+fAZwa0
困ります!投下して下さらないと困りますッ!!というわけで投下、投下。
491:105
07/10/05 20:20:16 Bdn3yZFz
ううう・・・。コノスレノヒトタチヤサシイ・・・てゆうか世界一優しい!!「神様みたいないいk・・・」人!!
(勝手に改蔵&人間失格わからない人すいません)
では、ツンデレラ続き投下させていただきます。お前の駄文なんて忘れたってのって人は>>194>>195>>196を
ごらんくださいまし・・・。もう話の流れは皆さんご承知の上でやるわけですから、エロ無しパロとして、
コメディ的なおもしろみを作るためにずいぶん長く(約700行)なってしまいました。
なので、小出し小出しにしていくことをお許し下さい・・・。
またアク禁の悪夢が帰ってこないよう祈りつつ・・・。
492:ツンデレラ4
07/10/05 20:22:16 Bdn3yZFz
ある日、お城では舞踏会が開かれました。ツンデレラの家も招待を受けましたが、
ツンデレラはドレスはおろか、まともに人前に出られるような服を一つも持ってはいませんでした。
靴も与えられてはおらず、まして装飾品など・・・。
ですから、彼女はお留守番。お城へ向かう継母たちをお見送りします。
継「じゃあ、ツンデレラ。私たちが留守の間、お掃除きっちり頼むわね。」
ア「ラインバックのご飯、忘れないでね」
カ「サボるんじゃないわよー、キャハハ」
ツ「ハイ、ハイ、ハイ、行ってらっしゃいまし・・・・・・・・・・・・・はあ」
三人を乗せた馬車が、一人の影を残してガタゴトと走り出した。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ア「クスッ・・・ゴキゲンね」
カ「そりゃあそうよ。今日の舞踏会はいつもと違うのよ。何たってあの王子様が、
国中の女たちを集めて、嫁探ししようってんだから。テンション上げなきゃ!」
ア「その噂本気で信じてるの・・・?」
カ「何よその目は。この噂が嘘だろうと、今日の舞踏会は大変なことになるわ。
どの女の子も、王子様に言い寄っていくに決まってるんだから。戦場よ!」
ア「まあ・・・貴方の言うことも一理あるわねえ」
カ「でしょう!!こうなったら私のフェロモンで王子様をイチコロにしてやるんだから。
そうすれば私は、この国のお后様!!」
継「フフ、頑張ってね。」
ア「(王子様が好きってワケじゃないのね・・・)」
カ「・・なんで無言なのよ、お姉様。イイトコもっていかないでよね」
ア「はいはい・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
493:ツンデレラ5
07/10/05 20:23:03 Bdn3yZFz
家に一人残ったツンデレラは、継母の言うとおり、お屋敷の隅々まできっちりお掃除しました。
長女の言いつけもきっちり守って、庭にペットの虎のラインバックにエサをあげに行きます。
虎をペットにしているだなんて、アラジンのお姫様とここぐらいでしょうか。
ラインバックのエサは、ツンデレラの日々の食事より高級そうです。
ラインバックはこれ見よがしに美味しそうにかぶりつきます。
ツ「ふふっ、おいしいですか?よかったです」
ラインバックは嬉しそうにのどを鳴らしました。
そんな虎の可愛らしい姿に癒されながら、ツンデレラは胸元のポケットから紙を取り出います。
それは、今舞踏会に出席されているであろう王子様の写真でした。
カエレッタに投げつけられたボロボロの紙くずを、きっちり修復したものでしたが、
彼女に返すことが出来ずにいた。それからは、ツンデレラの宝物になっていました。
ツ「あああ・・・、私のような者がねこばばしてしまうだなんて・・・でも・・・」
写真の王子様は、ほっそりとして、育ちの良さそうな顔立ち。色白で、品のいい口元と、綺麗な目をお持ちです。
ツンデレラの心の中に初めて、ワガママな、この写真を自分の物にしたいという、確固たる強いキモチがありました。
そしていつしかこんな風に思うようになりました・・・。
ツ「このお方に、お会いしたい・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
大陽がもう沈んでしまった頃、ツンデレラはまだラインバックと共に庭にいました。
ツ「ああ、でもできませんよね。私みたいな者が舞踏会にいこうだなんて、王子様にお会いしようだなんて、
迷惑ですよね・・・。迷惑ですよ・・・・・・。」
さっきからずっとこうして自分に言い聞かせるようにして、ブツブツと独り言を言う。
しかしいつまでも、心の中の新しい気持ちを、消し去ることが出来ませんでした。
ツ「だめえ!!!何時までたっても、衝動が抑えられないいい!!!!」
ツンデレラはとうとう真っ青になって、狂ったように叫びだした・・・!
ツ「このままでは数多くの方にご迷惑をおかけしますから・・・。・・私はもう、死ぬしかないでしょう・・・・・・。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
494:ツンデレラ5
07/10/05 20:23:57 Bdn3yZFz
お屋敷の庭は裏手の森の方につながっている。
食後に気持ちよさげに寝ころぶラインバックを横目に、ツンデレラは森の方にゆっくりと歩き出した。
ツ「この気持ち、押さえられない・・・。このままじゃあ多大の方にご迷惑おかけしますから・・・。」
ツンデレラは裸足のままで森の中に入っていった。
森の中は暗鬱としていて、枝葉は僅かな月の光さえすくい取っていた。
ツ「ううう・・・暗い。それに、死ぬんだったらロープの一つでも持ってくるんだった・・・。」
暗い森の中をずいぶん進んで、彼女は心身共にボロボロになっていた。
ツ「どこかに死ねる場所はないかしら・・・。?ん?あれは・・・」
ツンデレラの目線の先には、闇の中で輝く光が見えた。しかしそれは家屋からの光とかではなく、
逆光でハッキリしないが、人影のような物が見えた。
ツンデレラはいつの間にか走り出していた。暗い中、激しく憔悴した状態で、誰でもいいからそばにいて欲しかった。
あの人にロープを借りよう。あの人に殺して貰おう。そう考えて走っていた。
ツ「あのッ!!」
謎の人影はゆっくりとこちらを向いた。それはマントに身をくるんだ若い女性だった。
くりくりっとした瞳と、ポニーテールが印象的だ。
手に持っていたのは、てっきり松明だと思っていたが、何か杖のような棒の先端が光っていた。
そんな彼女の出で立ちにツンデレラは二の次を継げない。
ツ「あ・・あの・・・」
謎「?・・・」
困ったような顔をしたツンデレラに、謎の女性が優しく微笑みかける。
謎「どうしたんですか?」
その一言に、ツンデレラは救われた気がした。心に出来ていた隙間を、彼女に埋められていくような感覚。
ツンデレラは無意識に、彼女に泣きつき、事のイッサイガッサイを話していた。
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495:ツンデレラ5
07/10/05 20:24:58 Bdn3yZFz
はい、ここで105です。このあとも読み返すと私の趣味全快で・・・。キャラ崩壊気味ですので先に謝りますすいません。
ここらでまあ様子を見るというか・・・。すいませんでした。また明日会えると思いますが、今日はこれで失礼します。
496:105
07/10/05 20:56:55 Bdn3yZFz
っておいいいいいいい名前まなえ欄がああああ絶望したあああ
一週間ぶりに投下するとこれだもう絶望
>>494がツンデレラ6、>>495が105です。スレ汚してすいません
投下し終わったら謹慎します
497:名無しさん@ピンキー
07/10/05 21:10:10 ManXCldw
なんか来週の絶望先生は加賀ちゃんが大変なことになっているらしい
498:名無しさん@ピンキー
07/10/05 21:45:26 qARHurWg
どっちみちセンターカラーだから買うことに変わりはないのだが
wktk
499:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:04:39 mOUdJJ6E
nininiにににににに2222期キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
500:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:12:57 rmQmuZ8k
>>496
GJ。謎さんが明らかにおっきな草さんな気がするのは気のせいですか。
真昼が雪。これにて完結です。
もう一気に投下させてもらいます、故にちと長いです。10レスほど。
501:真昼が雪 62
07/10/05 22:14:15 rmQmuZ8k
◇ ◆ ◇ ◆
望はせり上がってくる激痛に、堪らず目を覚ました。
「――……ッ!!」
悲鳴を上げそうになるのを必死に堪える。愛しい少女の。優しい眠りを妨げぬように。
望は痛みに身体を震わせながら、可符香の身体を抱きしめる事でそれを凌いだ。
穏やかな彼女の呼吸が、少しずつ望の苦痛を緩和していく。
「――は、ぁ」
苦痛の波も過ぎ去って、涙目になりながら、腕の中の少女の顔を覗き込む。
望の異変には気付かなかったようで、穏やかな表情のまま、静かに寝息をたてている。
望は愛おしげに、小さな微笑を浮かべた寝顔を撫でた。
そっと目尻に溜まった涙を指で拭うと、彼女を起こさないように細心の注意を払いながら身体を起こす。
彼に許された時間は、もう大分オーバーしている。
今頃彼の兄はやきもきしながら、弟からの何らかの連絡を待っているに違いない。
命の様子を想像して失笑しながら、彼はゆっくりとベッドから降りようとした。
と。自らの着物を掴む小さな掌の感触に、思わず動きが止まる。
望は小さく苦笑しながら、そっとその手に自らの掌を重ねた。
「―すみません、可符香さん―」
愛してます。
小さく呟き、そっとその手を解くと。
彼は覚束ない足取りで、保健室を後にした。
後にはただ、独り眠る少女だけが残された。
◇ ◆ ◇ ◆
寒い。
とても寒い。
さっきまで、とても暖かなものに包まれていたはずなのに、今は堪らなく寒かった。
それがとても寂しい事に思えて、彼女は喪失感の中で目を覚ます。
もうベッドには、愛しき人の残り香すら、残っては居なかった。
「―せんせ……?」
迷子の幼子のような表情で、ずっと一緒に居るはずだった彼を呼ぶ。
返事はない。
「先生……糸色先生……」
うわ言のように「先生」と繰り返しながら、彼女は覚束ない足取りで、保健室を後にした。
窓から差し込む日の光が、誰も居なくなった室内を、明るく照らしていた。
彼女は迷子のように学校を彷徨う。
時刻は早朝。まだ、部活動のある生徒すら登校してきていない。
教室。誰も居ない。
宿直室。そっと中を窺うと、交と小森が寄り添って眠っていた。
職員室。教職員の何人かは来ていたものの、彼女の求める彼の姿はない。
果ては男子トイレまで赴くも、彼女はとうとう、学校内に彼の姿を見つける事は出来なかった。
502:真昼が雪 63
07/10/05 22:15:42 rmQmuZ8k
先生はどこ?
その答えを知りながら、彼女は彼を探す足を止められない。
気が付けば彼女は校門を越えて、いつも通るあの並木道を歩いていた。
「―あ」
彼女の視界に、一本の大樹が映りこむ。
今は桃色ではなく紅に色づいている、大天使様の木の根元。
そこに眠っている、一匹の名も無き犬の事を、彼女は忘れていなかった。
「お祈り……しなくちゃ」
彼女は小さく盛り上がった土の前に跪く。
あの時逃げ出した、悲しい命の結末に、真正面から向き直る。
可符香はそっと目を閉じて、しばらくその場を動かなかった。
本来ならばあの時、彼と二人で祈るはずだった冥福を、心から願う。
そこに。
「―おはよう、杏ちゃん」
風が、紅葉と共に懐かしい匂いを運んでくる。
背後からかかる声に振り向くと、そこには本を携えて佇む、久藤の姿があった。
「准君」
「何をしてるの?」
久藤はしゃがみ込んだままの可符香のもとまで歩み寄る。
「……お祈りをしてたの」
事の次第を話すと、久藤は黙って頷いた。可符香に倣って静かに目を閉じ、黙祷する。
「―准君。先生に合わなかった?」
自然と、その問いが唇を滑り出ていた。
ああ、今朝そこで会ったよ―何ていう、軽い返事をほんの少しだけ期待して。
日常の象徴である彼の口から、元気な望の姿を見たと聞けたなら、彼女は心から安心できただろう。
だが、それがありえない事という事も、彼女は知っている。
「…………」
久藤は答えなかった。
ただ静かに目を閉じて、すっかり冷たくなった風に、髪を撫でられるままにしている。
「……うん、ごめんね」
くだらない質問をしたと、申し訳無さそうにする可符香に、久藤はそっと首を左右に振った。
「謝る事ないよ」
「……私、何となくだけど知ってるの―先生が今、本当はどこにいるのか」
503:真昼が雪 64
07/10/05 22:17:27 rmQmuZ8k
眠る可符香の髪を撫でて、そっと寝床を出て行く望。
愛しい少女に自分の苦しむ姿を見せぬよう、彼はそっと保健室を後にする。
その足で、兄の下に向おうとして――
耐えかねたように、彼は地に膝を付く。
そんなイメージが可符香の脳裏を過ぎる。まるで年老いた猫のようだと、彼女は思った。
「知っているなら、行けばいいんじゃないかな。先生の所へ」
「うん―うん。そう…だけど」
彼が自ら消えた理由を深読みしてしまって、可符香の足は、その場所へ動いてはくれなかった。
可符香は口を閉ざし、俯いたまま黙して語らない。
二人の間に、沈黙が降りた。
カサカサと、地面に積もった枯葉が奏でる音だけが、静寂を満たす。
先に口を開いたのは、可符香の方だった。
「ねぇ准君」
「何?杏ちゃん」
「私ね―先生が好き」
顔を上げて、久藤の目を直視しながら、可符香は言った。
久藤は一瞬、ほんの僅かに悲しげに笑って―すぐにいつもの優しい微笑に戻る。
「そう……良かったね。本当に」
そう言う久藤の声は、本当に嬉しそうだった。
「最初はね、好きじゃなかった。
―ううん…きっと、嫌いだった。一目惚れなんて嘘だった」
想いが、言葉になって溢れ出す。
こんな事を彼に言っても、迷惑なだけだとわかってはいたけれど。
彼女の口は止まる事無く、胸中に渦巻く想いを吐き出し続ける。
それは愛の告白であり、懺悔でもあった。
「くだらない人だと思ってたのに……いつの間にか本当に好きになってたんだって、やっとわかった。
―そしたらね、先生も……私のこと好きだって、言ってくれて……」
久藤はただ、静かに可符香の言葉に耳を傾ける。
深く深く頷きながら、泣き出しそうな彼女の声を聞いている。
「嬉しかった―抱きしめられて、思いっきり甘えて……幸せだった。
先生は暖かくて……こんな私でも、優しくなれる気がしたの」
傍に体温を感じるだけで、波打つ気持ちが静かになった。
日頃あんなに落ち着きの無い人なのに、あんなにも穏やかな顔で笑うとは思わなかった。
たった一晩の触れ合いで、これほど愛しさが込み上げるなんて、思わなかった。
「なのに―なのに、幸せなのに」
504:真昼が雪 65
07/10/05 22:18:37 rmQmuZ8k
嘘モノじゃない。勘違いじゃない。自己暗示でもない。
本当の幸せに包まれて、とても優しくなれた。
なのに。
「先生……、居なく、なっちゃう―」
限界まで瞳に溜まっていた涙が、とうとう溢れ出し、彼女の頬を濡らした。
自分がこんなに泣き虫だと―それを気付かせてくれたのもまた、望だった。
ぼろぼろと涙を零す可符香の肩に、久藤はそっと手を回した。
「それは―悲しい事だね……」
それはこの上なく、悲しい事。とても不幸な事だ。
「――うぁ……ッ、わぁぁああ……ッ!」
可符香はもう声すら抑えられなくなって、子供のように泣きじゃくりながら久藤の胸に縋りついた。
彼女は深く傷ついている。どうしようもなく怯えている。
愛しい人を失うという、悲しい現実に、
逃げる事なく、言い訳を並べる事無く、真正面から向き合って。
(そっか……先生、上手くやれたんですね……)
望がそうしたように、縋りつく可符香の髪を撫でながら、久藤は胸中で呟いた。
彼女の嘆く姿はとても痛ましくて、久藤の心も酷く痛む。
けれどその涙の先に――いつかまた、桜の下で微笑む彼女の姿が見える気がした。
大丈夫。
彼女はもう、大丈夫だ。
逃げる事無く、悲しみに正面から向き合って、こうして涙を流せるのだから。
久藤は心から望に感謝して、聳え立つ大樹の先にある空を見上げた。
まるでそこに、望の姿があるように。
◇ ◆ ◇ ◆
今はまだ、貴方に会えるかもしれない。
もしも貴方に出会えても、笑おうとして泣くだろう。
それでも会えるものならば、会って貴方に伝えたい。
あの夜伝えられなかった、「好きだ」というこの気持ち。
◇ ◆ ◇ ◆
505:真昼が雪―エピローグ― 1
07/10/05 22:20:20 rmQmuZ8k
~エピローグ~
大勢の足音が、不規則に入り乱れて廊下を反響する。
各々皆、汗を額に張り付かせながら、我先にと駆けていく。
2のへの生徒たちは、今朝のHRで初めて担任教師の病を知る事となった。
智恵からその話を聞いた生徒たちは誰からともなく席を立ち、教室を飛び出した。
望の病室は、もうすぐそこである。
先頭をきっていた千里はすぐさまドアに飛びつき、
「―先生!!」
悲鳴に近い声を上げながら、勢いよく開け放った。
糸色望は、静かに瞳を閉じて、そこに横たわっていた。
弟の眠るベッドの傍に立ち尽くしていた命は、ぞろぞろと病室に入って来る生徒達を驚いたように見つめた。
「あなたたち、授業は――」
そんな無粋な事を言いそうになって、すぐに口を閉ざす。
そう、彼女達にとってそんなものよりも―弟の存在の方が大切だったのだ。
「……先生……」
誰かが、呆然と呟いた。
望はそれに答えない。
青白い顔で、深く静かに眠っている。
皆、言葉を失ったように口を噤んだ。
カーテンの揺れる布ずれの音だけが、無言の病室を満たす。
――その無音を打ち破ったのは、マリアの声高な掛け声だった。
「センセー、おっきろー!!」
ッどずんば!
生徒達の隙間をぬうように駆けてきたマリアは、そのままの勢いで望の胸の上に飛び乗った。
「ッうっぶぇ!」
望は途端に目を見開き、喉の奥から潰れた蛙を思わせる奇声を発して痙攣した。
「ああちょっと!」
慌てたような命の声など完璧にスルーして、マリアは何度も何度も望の身体の上で跳ねた。
「起きろ、起きろ、おっきろ~!」
506:真昼が雪―エピローグ― 2
07/10/05 22:21:43 rmQmuZ8k
「ぶ、ぅぶぇ…!」
バタバタとのたうつ望だが、軽い少女一人すら跳ね除けられないほど非力な為、成すがまま悶絶するしかない。
さすがに見かねて、助け舟を出す千里。
「マ太郎。もう起きてるから、降りなさい」
「でも、なんかグッタリしてるヨ」
「それは貴女の所為」
どうやらワザとではなく、本気で気付いていなかったようだ。
千里がマリアをベッドから降ろすと、望は勢いよく咽込んだ。
「ひ、酷いじゃないですか…ッ!病人なんですよ!?」
「元気そうじゃないですか」
涙目で訴えるが、即座に奈美からの普通の突っ込みが入る。
「いや…、わりとそうでもないんだけど」
生徒達のテンションに気圧されたように、おずおずと命が言った。
「ただの胃炎といっても、放っておけば十分危険なんだから」
急性外因性胃炎。
暴飲暴食や、刺激物、アルコール類を飲みすぎた時などに起こる胃炎である。
初期症状は上腹部の痛み、胃の不快感。酷くなると嘔吐、吐血などを引き起こす。
「そうですよ。血だって吐いたんですからね」
「―何でだろ。確かに心配な話なのに、本人が言っちゃうと途端に心配する気が失せるのよね」
あびるの呟きに、芽留は『かわいそぶりっこはいつものことだろ』とメールに打ち込み、それをあえて望の携帯に送信した。
病院内ではくれぐれも携帯電話の電源はお切りください。
「体調管理くらい、きっちりして下さい。大人なんだから」
「ぜ…絶望した。わりと重病なのに少しも心配してくれない生徒達に絶望した…」
望は拗ねたように布団の中に潜り込み、スンスンと泣き出した。
「ふんだ。もう帰ってください、私は病人なんですから」
「どうせカワイソぶるならカーテンの裏とかで、
『何だよ~病人なんだぞぉ、はうはうはう~!』くらいやればいいんですよ、先生」
「それは先生違いです!」
邪な希望を目を輝かせて言う藤吉に、布団から頭だけ出してツッコむ望。
507:真昼が雪―エピローグ― 3
07/10/05 22:23:02 rmQmuZ8k
――そんな喧騒を、ドアの向こうから、笑顔で見つめている少女が一人。
「―あ」
望はその少女の姿を見止めると、顔を引き攣らせて硬直した。
それを胃の痛みによるものだと勘違いした命は、コホンと一つ咳払いして、
「申し訳ないが、そろそろ休ませてやってくれないか?
まぁ自業自得とはいえ、患者である事にかわりはないからね」
ワイワイと騒ぐ生徒達に、帰るよう促がした。
「貴女も」
「…ちぇ」
いつの間にかベッドの下に潜り込んでいたまといにも釘を刺しておく。
生徒達はしばらく名残惜しそうにしていたが、来た時と同じような騒がしさで病室を後にした。
あの様子では、またぞろ日を改めて来るだろうと、その時の事を考えて命はうんざりと溜息を吐いた。
「絶命先生?騒がしくしないから、あとちょっとだけお話させてくれません?」
「「ひあぁッ!?」」
気配もさせず病室に入り込んできた可符香の声に、ステレオで悲鳴を上げる男が二人。
あわあわと布団の中で冷や汗をかく望に、可符香は眩しいばかりの笑顔を向けた。二度目の悲鳴が上がる。
可符香は今度は命に向き直り、優しい声で問いかけた。
「ね、いいでしょう?」
声は優しいというのに、その質問に拒否権がない事を、命はひしひしと感じていた。
「い、いいですが―それより貴女いつ入って来たんですか。
あと、私の名前は糸色命ですと何度言えば」
「じゃ、席を外してください。二人で話したい事があるんです」
命の抗議にも耳を貸さず、可符香は有無を言わさぬ態度で命を部屋の外へと押し出した。
「あ、ちょ、ま」
バタン。
命が何か言おうとしたが、かまわずに扉を閉めてその声を遮断する。
扉の閉まる音が何故か冷たく聞こえて、望は身震いした。
「あ、あの…」
恐々声を掛ける。その背が、何かオーラを纏っているような気がしてならない。
「先生?お話、しましょうか」
ゆっくりと振り返る可符香は、この上ない程の笑顔だった。
カーテンの裏で「はうはう」と嘆きたい衝動に駆られつつ、望はコクコクと頷いた。
508:真昼が雪―エピローグ― 3
07/10/05 22:24:20 rmQmuZ8k
◇ ◆ ◇ ◆
「さ、最初に言っておきますが、私は一切嘘なんて吐いてませんからね!」
「じゃあどうして怯えているんですか?」
可符香はあえてゆっくりとした動作で、ベッド脇に手を付いた。
布団で顔の半分を隠している望を、上から覗き込むように見下ろす。
「かかか、可符香さんがオーラで脅迫してるんでしょう!?」
「やだなぁ脅しだなんて。私が怒ってるわけないじゃないですかー」
今まで見たことのない、底知れぬ笑顔で見下ろされて、望は溜まらず悲鳴を上げながら身を竦ませた。
「そうですよねー。先生、一度も不治の病とは言ってませんでしたもんねー。
エヘヘ、ですよねぇ―ぜーんぶ私の勘違いだったんですねアハハハハハハハハ」
「あうあうあう……」
空虚に笑う可符香の目は、少しも笑っていない。
いっそ布団の中に潜り込んでしまいたいが、何故か視線に射抜かれたように身動きが取れないでいた。
「もしかして最初倒れた時のアレは、胃炎ですらなくて二日酔いだったのかもしれませんねー」
「そ…そうかもしれません、ねぇ…?」
そう……思い返せば、誰も望が「不治の病」などとは言っていない。
望が倒れた後の命との会話も、ただ妙に思わせぶりだっただけで、望の死を匂わせるような事は何一つ言っていなかった。
命に望の容態を聞いた時も、彼はただ「胃をやられている」と答えただけだ。
可符香はそれを聞いて、てっきり胃ガンか何かだと思い込んでいた。
別れ際の言葉は「もう『しばらく』会えなくなるだろうから」とも受け取れる。
「でも……でも先生?
さすがにあの夜の態度は―思わせぶりすぎじゃないんですか?」
言いながら、可符香はずいと顔を寄せて、望の目を真っ直ぐに見つめた。
「ひぃッ」
睨まれているわけでもないのに、望はその目に底知れぬ恐怖を感じて、思わず悲鳴が漏れてしまう。
今までの事例は、完全に思い込みだったと認められる。
けれどあの夜の望の態度は、どうしても自分を謀ろうとしたようにしか思えない。
509:真昼が雪―エピローグ― 5
07/10/05 22:25:56 rmQmuZ8k
「お、お言葉ですが可符香さん……よく思い出して下さい。
あの時だって私は、一切嘘なんて言っていませんよ」
「そうですね―でも、わざわざそれを口に出して説明するのが、既に不自然なんですよ」
可符香が「望が死ぬ」と勘違いしている事を知らなかったというなら、
望はただキョトンとして、「何の事ですか」とでも聞いてくるだけだろう。
弁解するという事は、本人にやましい事があったという何よりの証拠だ。
「うぅ……」
今更ながら墓穴を掘ってしまった事を自覚して、望は喉の奥から呻きを上げた。
―ネタばらしをすると、望自身は彼女の勘違いに気付いていなかった。
おそらく彼―久藤准の口添えがなければ、泣きじゃくる可符香に「心配しなくても、ただの胃炎ですよ」とでも言っていたかもしれない。
図書室で倒れた後、実は少し、久藤と打ち合わせをしたのだ。
どうやら久藤も、望が重病を患っていると勘違いしていたようで、望がただの胃炎だと打ち明けると、久藤は逆にそれを逆手に取ろうと考えた。
「サナトリウム文学ですよ、先生」
どうやら可符香も自分と同じ勘違いをしているらしいと久藤に教えられ、そこで望は初めて可符香の心境を知るに至った。
そこで、心は痛むだろうが、最後まで彼女を勘違いさせたままにしてはどうかと、久藤は提案した。
可符香が「大切な人の死」という、この上ない不幸と真っ直ぐに向き合えたなら、
その時こそ彼女の心は、今よりずっと強くなれるだろう。
いわゆるショック療法というやつである。
その後、久藤が並木道で可符香に出会う所まで、彼の筋書き通りだったりする。
その全てを語ってしまえば、おそらく彼女の笑顔の矛先は久藤にも向くだろう。
さすがにそれは忍びなく、望はただ耐え忍ぶしかなかった。
「な―何を言われても、私は悪くなんてありませんッ」
必死に勇気を振り絞り―そのわりに弱弱しい声ではあったが―訴えると、可符香は少し間を置いて、ゆっくりと望から身体を放した。
彼女の纏う雰囲気が、幾分柔らかなものになったように、望には見えた。
プレッシャーから開放されて、ほっと息を吐きながら身体を起こす。
「そうですね……確かに、先生は悪くなんてない」
そう呟く可符香は、さっきまでとはうって変わって、何だか拗ねたように不満顔になっている
510:真昼が雪―エピローグ― 6
07/10/05 22:28:09 rmQmuZ8k
「――心配、しましたか?」
「はい。とっても」
反射的に謝ってしまいそうになる。が、悪くないと言い張った手前それも憚られた。
望は困った末に―そっと可符香の髪を撫でた。
「言ったじゃないですか、ずっと一緒ですよって」
可符香は少しの間、じっと撫でられるがままにしていたが、やがてクシャリと表情を歪ませた。
「はい……はい。先生は―嘘、つきませんでした」
嬉しいと。勘違いで良かったと、今更ながら思い直して。
可符香はまた泣き出しそうな自分の顔を見られないよう、望に抱きついた。
望は少し驚いたが、すぐにその背中に手を回して抱き締め返す。
「先生、私、言いそびれた事があったんです」
「何ですか?」
「私も好きですよ」
まるで望の口調を真似るように、彼女は望の耳元で囁いた。
その吐息がくすぐったかったのか、望の唇からクスクスと笑みが零れた。
「あれ、もしかして私、返事貰ってなかったんでしたっけ?」
「そうです。ですから、今まで先生は片想いだったんですよ」
「うわ、それは……つまり私は、好かれてもいない相手にあれだけの事を?」
「んー、強ち…そうとも言えませんけどね」
一目惚れではなかったものの、きっと自分はもっと以前から―彼の事が、好きだったのだろうから。
あえてそれは言葉にせず、可符香はそっと望から身体を放した。
首の後ろに回していた手を滑らせて、望の両頬に添える。
「じゃあ、両想いになった記念に」
可符香は彼の薄い唇に、そっと口づけた。
望は一瞬、驚いたように目を見開くが―すぐに目を閉じて、間近に感じる少女の香りに酔いしれる。
羽のように軽い口づけ。それだけでも、お互いの体温を感じるには十分だった。
カーテンの隙間から見える外の景色は、少しずつ冬の気配を強くしていく。
やがて雪が降り、景色を白く染めるだろう。
身を切るような寒さを経て、春が来て―雪解けがぬかるみを作り出す。
その泥に足を取られて、転ぶ事もある。どこか擦り剥いてしまう事だってあるだろう。
けれど今の彼女には、その痛みに耐えうるだけの強さがある。
一人で立ち上がれなくても、そっとその手を取ってくれる人がいる。
それはこの上なく幸せな事だ。
この幸せがあるならば、これからの一切の痛みにも、耐えていけるような気がした。
――雪どけを越えれば、今度は真昼に降る雪の季節がやってくる。
日の光を浴びて輝く、桜吹雪の降る季節が――
―真昼が雪― 完。
511:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:33:46 PFsOgYvM
感動した!
そして笑った!
乙!
GJ!
最大級の賛辞を送りたいけどボキャブラリーがないのでスマソw
あと、勘違いかもしらんけどぱにぽに学級崩壊スレで書いてなかった、昔?
512:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:33:56 rmQmuZ8k
終わったー、そして>>508の名前欄ミスったー。
正しくは真昼が雪―エピローグ― 4です。最後の最後にナンテコッタイ。
まさかこんなスレ容量食いSSになるとは思いもよらず、ご迷惑おかけいたしました。
これにて真昼終了です、自分は読み専に戻ります。多分。
こんなエロなしSSに今までお付き合い下さりありがとうございましたー。うへぇしんどかった。
513:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:35:11 vnWnEy3D
真昼さん、素晴らしい作品をありがとう!
悲しい予感の涙が、嬉しい涙に変わりました!
514:名無しさん@ピンキー
07/10/05 22:35:56 rmQmuZ8k
>>511
SS投下どころか、そもそも文章何てほとんど書いたことありませんでしたがw
ってか反応はえぇぇ!!いや、ほんとこんな長い話に付き合ってくれて感謝ですたい。
515:名無しさん@ピンキー
07/10/05 23:41:00 Eo41T3lU
真昼さん、意外な程爽やかなハッピーエンドが良かったですよ!
てかツンデレラの魔法使いは可符香と思ってたらまさか大草さんとは!
516:名無しさん@ピンキー
07/10/05 23:47:54 NUwfqAEV
>>512
規制解除! よかった、まにあった!
真昼氏、最後の最後は爽やかなエピローグ! ああ・・・よかった・・・・ ちょっと泣き笑い。
文章書いたことないとは思えないデスww 私も氏くらいの文が書ければなぁ・・・・・
ともあれ、お疲れさまです! ありがとうです!
517:名無しさん@ピンキー
07/10/06 00:51:35 39ceEvyX
よかった…、欝エンドじゃなかった……
真昼さんほんとうにお疲れ様でした
しばらくお休みされた後にまた会えるのを楽しみにしています
518:名無しさん@ピンキー
07/10/06 00:59:23 HjqT00kB
真昼氏お疲れ様です!!
ティッシュ隣に置いといたけど、使うことがなくて良かった!!ハッピーエンドで良かった!!
519:名無しさん@ピンキー
07/10/06 02:43:56 PHn34v4E
真昼さん……そ う き た か…!!!
やられた、やられました…!!
でも、死ネタより、こっちの方が何倍も良かったぁぁぁぁぁあ!
やっぱりハッピーエンドのが爽やかで読後感いいですね。
…私が言うのもなんですが。
設定が丁寧で、しかもキャラにぴったりはまっていて、
セリフの言い回しとか状況描写とか、とにかく、毎回毎回、
うまいなぁぁぁとため息つきつつ読ませていただいておりました。
しかも、これだけ長いお話を、書きながら投下で破綻していないのが、
もう、脱帽としかいいようがありません。
保管庫に収納されたら、改めて一気に読みたい作品です。
本当に、素敵なお話をありがとうございました、そして今までお疲れ様でした!!
そして、105さん、ツンデレラ続編…やった!
魔法使いさんは、大草さん…でしたか。
これからの展開を楽しみにしております!
…感想なのに、長すぎ…で、2期って…ホント…?
520:名無しさん@ピンキー
07/10/06 03:42:48 PuZYZKvk
真昼氏GJ&乙。なんかホッとしたというのが正直な感想。
またこのスレに泣かされるのか、て思ってたから。
ツンデレラ、俺も魔女は可符香と思っていた。
なるほど、大草さん起用の理由は『奥様は魔女』か。
521:名無しさん@ピンキー
07/10/06 04:07:32 IfT4Nca7
真昼氏投下超お疲れ様
読んでいた時の不安感を全て吹っ飛ばすようなハッピーエンドでしたよ!
正直このSSまで鬱EDだったら精神的に持たなかった自信がありますね
522:名無しさん@ピンキー
07/10/06 11:01:54 IFdmTk7Z
――雪どけを越えれば、今度は真昼に降る雪の季節がやってくる。
日の光を浴びて輝く、桜吹雪の降る季節が――
そうか、二期への伏線だったのか…
真昼氏GJ!乙
523:名無しさん@ピンキー
07/10/06 16:34:06 fkZUke15
真昼氏、大長編の執筆本当にお疲れ様でした
鬱エンドも覚悟してましたが、いやはや、そう来るとは!
良かったです本当に………God-Jobとはまさにこのことか
………さぁー、オレも書かなきゃなー………
524:292
07/10/06 17:04:18 Q8UsR7y/
>>105
ツンデレラ、先が気になるわぁ。こういうの凄く好きなんだよねw。
真昼氏という偉大な職人様の後でかなりビビッてます(あんな重厚な文章書けませんがな)が、
>>316で予告したSSを投下してみる。
「まだ恋人関係にない」からスタートだと、非エロが長くなるのに今更気付いた。
4回に分けて投下予定。
長くなった上に、エロは最終章だけになるかも(´・ω・`)・・絶望した!
【注意点】
望×あびるで、特に変った属性はないと思いますが、
非エロ長いのはウンザリと言う方はスルー推奨です。
1章はエロ無しで10レスほど消費予定。
525:『猫の瞳』1章前座
07/10/06 17:06:40 Q8UsR7y/
これはあの日本中を引っくり返した戦争が終わった直後のお話。
あるお家に、女の子がいたんだ。
動物好きでね、散々親を説得して、猫をもらったんだよ。
ちっちゃな子猫。
1匹目が、たしか黒い方の猫だったかな。
そのうち、黒い猫がいつも寂しそうにしているんでね、もう一匹もらってきたんだ。
こっちは白い猫だった。これまた小さな子猫でね。
2匹はすぐに仲良くなったらしい。よく一緒に庭でお昼寝してたのを見たものだ。
女の子もたいそう喜んでねえ。
2匹は結婚するんだ、と友達に自慢げに言っていたのをよぅく覚えている。
☆★☆★☆★☆★☆★☆★
526:名無しさん@ピンキー
07/10/06 17:07:50 Qwx2oqOm
こういうのが読みたい。
高校生活最後を飾るイベント「歩行祭」。それは全校生徒が夜を徹して80キロ歩
き通すという、鈴木商店高校の伝統行事だった。赤木杏は密かな誓いを胸に抱いて
歩行祭にのぞんだ。三年間、誰にも言えなかった秘密を清算するために―。学校生
活の思い出や卒業後の夢などを語らいつつ、親友たちと歩きながらも、杏だけは、
小さな賭けに胸を焦がしていた。
14歳のとき両親殺害の罪に問われ、外界との交流を拒んで孤島の研究施設に閉じこ
もった天才博士糸色命。教え子の風浦可符香とともに、島を訪ねた鈴木商店高校教
諭、糸色望は一週間、外部との交信を断っていた博士の部屋に入ろうとした。その
瞬間、進み出てきたのはウェディングドレスを着た女の死体。そして、部屋に残さ
れていたコンピュータのディスプレイに記されていたのは「すべてが絶望になる」
という意味不明の言葉だった。
「絶望の男は飄然と砂漠の彼方に立ち去った。木津千里はその後を追った」…破滅
後の世界。「絶望の塔」の秘密の鍵を握る男を追い、一人のスコップ使いが今、果
てしない旅に出る。彼らの住む世界は我々の現実世界とどう関わるのか? 絶望の男
は何者なのか?そして「絶望の塔」には一体、何があるのか?壮大な物語が、今、幕
を明ける…。奔放なイマジネーションと超弩級のスケールが錯綜する
527:『猫の瞳』1章①/9
07/10/06 17:08:12 Q8UsR7y/
1章
秋の日差しが優しく降り注ぐ午後の教室。
カリカリと黒板に教師が書く音が、静かに響いている。
2のへ組は師が教え子達へ勉学を伝授し、その好学心に答える真剣な学び家
そのものであった。
教壇に立つ教師―糸色望―は満足感に浸っていた。
厳粛な教育現場をリードしているのは自分だという自負と、生徒達に与える自らの
影響力に感動していた。
そう、この一瞬までは―
「先生! 『堂』の字はキチンと左右対称に書いてください!バランスの悪い字は
美しくないです!」
望はびっくりして後ろを振り返った。
授業中、髪をきっちり真ん中分けにした少女が、突然立ち上がって発言したのだ。
しかし、周りの生徒達はほとんど驚いていない。むしろ、またかといった様な
あきらめの表情を浮かべている。
この風景、2のへの組ではもはや日常と化しているのだった。
望は自分の書いた「堂」の字を見た。たしかに、右の方の線が長すぎて不恰好だ。
しかし、それを今この場で言う事なのか。
完全に苦りきって望は少女に言った。
「左右対称が美しいなんておかしいですよ。世の中、非対称で美しい物なんて
一杯あります。大体、左右対称だったら人間の心臓は2つになってしまいますよ」
「心臓が2つになったら、それはそれは便利だと思いますが」
たちまち、真ん中わけの少女に反論を喰らってしまった。
他の生徒達も、口々に左右対称の是非について語りだす。
まさに、学級崩壊である。
そればかりか、生徒達に雪の結晶・平等院鳳凰堂・ユニオンジャックetcの例を
出されてしまい、望はどんどん不利な立場に陥っていった。
528:『猫の瞳』1章②/9
07/10/06 17:09:14 Q8UsR7y/
―ああ、また小芝居が始まった。
立ち上がった少女の斜め後方に席を陣取っいる女生徒が、そっと嘆息した。
すっと通った鼻梁、桜色の唇、瑞々しく白い肌、すこし吊りあがった褐色の瞳。
ツヤのある美しい黒髪は、2つの三つあみに分けられ肩に垂れている。
完璧なまでに整ったその顔立ちのせいか、どことなく表情が乏しく冷たい印象
を与えている。
惜しむらくは片方の瞳に眼帯があてられ、頭や手足のあちこちに包帯を巻いて
いることか。
しかし、その痛々しい姿が更に男を刺激するのだから不思議である。
彼女の名は、『小節あびる』という。
(良くあんな下らない話題で興奮できるなぁ)
あびるは心底感心して、その立ち上がって発言した少女―木津千里―を見上げた。
あびるは何故彼女が教師に突っかかるか知っている。
千里は、教壇の上にいる丸眼鏡の教師が好きなのだ。
好きだからこそ、構って欲しくてついつい突っ込みを入れてしまうのである。
(先生のどこがいいのだろう?)
不思議に思いながら、あれやこれやと言い訳をしている教師に目を移した。
背は高いが、顔は標準並みだし、身体付きはヒョロヒョロしていて頼りない。
性格は根暗で、情けなくて、ネガティブと3拍子揃っており、そればかりか
すぐに死にたいと自殺狂言をしでかすのだから始末に負えないのだ。
その男を、千里だけでなく、教師の後ろでウロウロしている常月まといや、
たぶん今頃どこかの教室でTVを見ているであろう小森霧が夢中になっているの
である。学園7不思議としか思えなかった。
彼は生徒達の集中砲火を浴び、舵を失って沈没寸前の戦艦よろしくふらふら体を
揺らしている。
馬鹿馬鹿しいと思いつつ、あびるも手を挙げて発言してみる。
「先生、私の三つ編みが左右で長さが違っていたら変でしょう」
「う……。」
教壇にいる望の顔が硬直し、動きが固まった。
「絶望した!左大臣を作ったら右大臣も作りましょう的な形式主義に絶望した!
学級崩壊にも絶望した!」
ついに、うわーんと泣き出して教室を飛び出していってしまったのだった。
*********
529:名無しさん@ピンキー
07/10/06 17:09:34 Qwx2oqOm
すまん。割り込んだ。
530:『猫の瞳』1章③/9
07/10/06 17:10:26 Q8UsR7y/
遠くからカラスの鳴き声が響く真っ赤な空。
夕日に赤く染め上げられた道路に、一つの影が細く細く伸びている。
夕暮れの愁う様な雰囲気の中、あびるは帰途を急いでいた。
あれから望が帰ってきてこなかったせいで、HRは開かれずに終わった。
今頃、職場放棄を同僚に責められて絶望している頃だろう。
―ざわざわ
風がそよぐと、周囲の木の葉が一斉にざわめき、枯葉がハラハラと数枚木の
枝から離れて、道路に舞い降りていった。
「ん?」
不意に誰かに呼ばれたような気がしてあびるは立ち止まった。
眼帯で隠れていない片方の目がゆっくりと周囲を見渡すが……、誰もいない。
ふと、塀の上の存在に気付いた。
一匹の猫がいた。
真っ白の猫。
目を閉じてじっとうずくまっている。
身体中が雪のように白い毛に覆われており、どことなく高貴な雰囲気を漂わせ
ていた。
ただ、身体が痩せ細っており、栄養状態はあまり良ろしくないようだ。
体のところどころの毛が剥げて中の肉が剥き出しになっており、多くの傷を
負っていることが見て取れた。
その猫は明らかに新参ものだった。
町内のあらゆる猫の尻尾を引っ張った事のあるあびるは、町で活動している
猫全てについて記憶している。彼女の脳内データベースに存在しない猫は、
どこか他からやってきた猫以外にはない。
首輪がないところを見ると、隣の町から流れてきた野良猫だろうか。
あびるの視線は自然と、猫の身体の後方に移動する。もちろん、尻尾を確認
するためである。
「あれ」
あびるは一瞬目を疑った。
その猫の尻尾は、奇妙な形状をしていたのだ。
尻尾の先が途中で二股に分かれていて、Yの字になっていた。
怪我をしているという訳ではない。
2つに分かれた尻尾は共にふさふさした白い毛並みに覆われ、時折ぴくぴくと
動いている。
531:『猫の瞳』1章④/9
07/10/06 17:11:47 Q8UsR7y/
これまで見た事もない尻尾を目の前にして、普段はどこか醒めているあびるの
瞳がキラリと光った。
静かに猫に近づく。
一歩―猫は気付かない
二歩―まだ猫は気付かない
三……突然、猫が顔を上げた。
素早く尻尾を掴もうとした少女の瞳と、白い猫の瞳が交錯した。
あびるは一瞬はっとした。
ガラスのようにどこまでも透き通った それでいながらどこか憂いを含んだ
その瞳―
その瞳の奥には、強い悲しみと長い長い辛苦を映し出すかのように灰色の霧が
掛かっているが、その更に奥には猫の強い意思を秘めた光が一点灯っている。
(なんていう奇妙な目をしているの……)
あびるは尻尾を握るという最重要事項を忘れて、思わず立ち竦んでしまった。
『にゃ~ん』
猫ののんびりした声に我に返る。
気付くと、その猫は走り出していた。
「あ、待って!」
あびるは大急ぎでその後を追いかける。
建物の隙間を抜け、壁の上をつたり、猫は休まずにどんどん歩いていく。
痩せ気味の身体に似ず、その動きは軽快だ。
あまり運動神経の良くないあびるは、見失わないようにするのが精一杯になっていた。
白い猫はすっと、横道に入る。
あびるも息を切らせながら、急いでその横道に入った。
「おっと」
突然横道から出てきた男に軽くぶつかった。
「すいません!」
素早く謝り、その人物の横をすり抜け猫を追いかけようとする。
532:『猫の瞳』1章⑤/9
07/10/06 17:13:15 Q8UsR7y/
「小節さんではないですか」
横道から出てきた男から、意外な言葉が掛けられた。
驚いて立ち止まり、ぶつかった人物を見る。
それは彼女の担任教師であった。
「糸色先生?」
「何しているんですか? そんなに慌てて」
望の言葉にハッとして横道の奥を見るが、すでに猫の姿は跡形もなく消えていた。
一度見失った猫を追跡するのは、不可能といってよい。
内心舌打ちをしながら、自分の名前を呼んで邪魔をしてくれた男に尋ねた。
「こっちに白い猫が来ませんでしたか」
「猫ですか? さぁ、先生見てませんが」
望のさして重要とも思わないような軽い返答に、あびるは苦々しい気持ちになった。
ハァハァと肩で息をして、呼吸を整える。
教師の方を向いて、理不尽な八つ当たりと知りつつ、責めるような口調で言った。
「先生、私に何か用でもあったんですか」
「い……いえ」
「私が急いでいるのに気付いていたなら、無意味に声を掛けないで欲しいですね」
「すいません……」
あびるの厳しい言葉に、望は肩を落としてシュンとなってしまった。
大の大人が寂しそうに俯くのを見て、あびるは慌てて言い直した。
「あ……ごめんなさい。ぶつかったのは私が悪いのです。先生のせいではないです」
「いえ、私もよく周りを見ずに歩いていたので。」
望はズレた眼鏡を人差し指で上げてから、あびるの方に向き直った。
「猫を追いかけていたのですか?」
「ええ。珍しい尻尾をしていたものですから」
それを聞いて、望は苦笑した。
「相変わらず尻尾好きですねぇ」
望は顔を上げて、あびるの顔を見た。
あびるの瞳と望の瞳が合った。
人の目を見ない事についてはプロのはずの望が、思わず引きこまれたかの
ようにあびるの瞳を見詰めた。
「やっぱり、左右対称でなくても美しいものがありますよ……」
何かに操られたかのように、望の唇から言葉が紡ぎだされた。
「え?」
533:『猫の瞳』1章⑥/9
07/10/06 17:14:33 Q8UsR7y/
「あなたの両の瞳は……どんな芸術品よりも……美しすぎます」
何を言われたか分からず、あびるは一瞬キョトンとしてしまう。
突如として気付いた。さっきぶつかった衝撃で眼帯が外れてしまったのだろう、
いつの間にか左の瞳が露わになっていた。
あびるの瞳は左右で色が違う。
右の瞳は深く落ち着いた褐色の色をたたえる一方で、左の瞳はどことなく
エメラルドを思わせる煌らめくような緑の色をしていた。
その両目が、キラキラと夕日を反射している。
それはたしかに少女の整いすぎた美貌に彩りを沿え、神秘的で圧倒的な美しさ
を醸し出していた。
しかし、あびるは少し眉をひそめると冷たく言った。
「またそうやって、女性が勘違いするような言葉を言って。恥ずかしいですよ?」
「あ……」
望の顔は、夕日の光に圧倒的な紅潮を加えみるみる赤くなった。
「わ……私は、その……」
「あああぁああ、絶望した!とんでもなくクサい自分に絶望した!!
タイタニック映画を見てそれを真似するバカップルと同レベルの自分に絶望した!」
望は自らの言動に言いようもない羞恥を感じ、悶え始める。
「死のう」
ぽつりと呟くと、懐からロープを取り出し自分の首に掛け始めた。
その様子をじっと見ていたあびるの脳裏に、思わず先の白い猫の事が思い出された。
やせ細って、体中を傷だらけにした体。
悲しげで、それでいて猫としての誇りを失うまいとしているような瞳―
「不思議ですね」
意識せずにあびるは口に出していた。
「何がですか」
望は、一瞬縄を首に巻く手を休める。
「先生は経済的にも恵まれているし、健康状態も、家族関係も良好です。何に絶望
しようと言うのですか。何故死ぬなどと言うのですか」
「え……」
突然突きつけられた厳粛な命題に、望は戸惑った。
534:『猫の瞳』1章⑦/9
07/10/06 17:15:32 Q8UsR7y/
自分の過去―絶望する理由としては、否としか言いようがない。
望には多くのトラウマがあったものの、それは通常の人間であれば誰しも
通るような試練のレベルに過ぎなかった。
人が本気で絶望に至るような、お涙ちょうだいの悲しい過去なんて微塵たり
とも有りはしないのだ。
そう、自分でも分かっている。
単に絶望ごっこをして、被害者ぶって楽しんでいるのである。
周囲にもその事が分かっていたはずだった。
だからこそ、周りの人間はどこか哀れっぽく、どこか面白可笑しく彼の狂言に
付き合っていたのだ。
何故絶望するのかなどと面と向かって言うような無粋な人間は一人もいなかった。
しかし、目の前の少女はそれを許さず、正面から問いを発している。
少女時代の純粋さなのか―。
あたかも軽々しく絶望を口にする者を裁こうとする天使のように、あびるは
夕日を背に凝然と立っていた。
赤く染まった端整な横顔に、長い睫の影がくっきりと落ち、夕暮れの穏やかな風を受けて、
少女の三つ編みがかすかに揺れる。
その美しさと厳粛さに、望は震え上がった。
人の運命を変える出来事が、予想もしなかったある日に突然やって来た時のように、
なすすべをしらずに体を小刻みに震わせていた。
「う……生まれつき……なんですよ。こういう……性分なのです」
どうにか声を振り絞って望は言った。
夕焼けの中に降り立った天使は、じっと望の赤く染まった顔を見ていたが、
不意にその構えを解いて「そうですか」とそっけなく言った。
「失礼な事を聞いてすいませんでした。それでは」
くるりと背を向けると、あびるは静かに立ち去った。
その後姿を、望はいつまでも見詰め続けていた。
*********
その夜、望は一人悶々としていた。
目を閉じると、あびるの夕暮れに染まった姿が思い出されてならないのだ。
胸は異様に高鳴り、強い焦燥感に苛まされる。
望は布団を狂おしく抱きしめる以外に術がなかった。
*********
535:『猫の瞳』1章⑧/9
07/10/06 17:16:38 Q8UsR7y/
次の日―
HRが終わり、クラスの皆が部活動や帰宅の用意をするのをぼーっと眺めながら、
あびるは考え事にふけっていた。
昨日の白猫の事を考えていたのだ。
あの奇妙な尻尾を引っ張りたいのは当然の事として、猫の不思議な瞳がどうしても
頭から離れなかった。
「どうしたの、あびるちゃん。ボーとして」
友人の日塔奈美が、声を掛けて来た。
少し、微笑んで奈美のほうを向く。
「昨日、変った猫に会ったんだけどね。尻尾を握る前に逃げられちゃった」
それを聞くと、奈美はクスクス笑い始めた。
「相変わらずだなあ。ぼんやりしてるから、恋でもしたのかと思ったのに」
「恋?」
あびるだって、お年頃の女の子。
恋も2回ほどしたことがある。
初恋は、小学生低学年の時。相手は熊のきぐるみだった。
立派な尻尾とフサフサした毛並みに惚れこんだのだが、ある日『中身』を
見てしまい、一瞬で恋が冷めた。
2度目は、中学生1年の頃。相手はU動物園のフェレットで、何度か恋文を
書いたが彼には読めなかったようだ。
種族の壁を感じ、恋を諦めた。
奈美は普通の女子高生らしく、恋の話が大好きである。
「そんなのじゃないけどね。尻尾が2つに分かれている猫なの。珍しいでしょ?」
一目惚れなのかな?と内心呟きつつ、あびるは説明する。
「へー。尻尾が2つ??」
奈美も少し興味が出てきたらしく、身を乗り出してきた。
「まあ、たぶん遺伝子かなにかの異常だと思うけど」
「奇形ってやつね」
動物の中にも、遺伝子の突然変異で奇妙な特徴を有する個体が稀に生まれる。
生物でならった朧げな知識が、奈美の頭に浮かんだ。
「そんな、それは奇形なんかじゃないですよ!猫又です!」
突然、2人の後ろから甲高い声が聞こえた。
「あ、可符香ちゃん」
奈美が顔を上げて、少し困ったような表情をした。
後を振り向くと、2人の友人である風浦可符香が立っていた。
536:『猫の瞳』1章⑨/9
07/10/06 17:17:18 Q8UsR7y/
綺麗な前髪に、2本のピンをクロスさせて指しており、その瞳はクリクリと
悪戯っ子のように動いている。
黙っていれば、文句なしの美少女だ。黙っていれば、だが。
「猫又?」
あびるは、少し首を傾げて聞いた。
「そう、猫又。猫が20年間交尾をしないと、猫又といって強い妖力を持った
妖怪になるの。猫又の特徴は、尻尾が2股に分かれている事なんです」
「交尾って……」
周りに男子生徒がいるにも関わらず、可符香の全く頓着していない様子を見て
奈美は顔を赤らめた。
「あびるちゃんには、これを上げましょう」
そう言うと、可符香はどこからかコンニャクを出してきた。
「何コレ?」
「これを口にくわえると、猫又と話せるようになるんです!」
(それって、ドラえ●んの翻訳コンニャクじゃないの?)
奈美は突っ込みを入れようとしたが、あびるは真剣な表情でそのコンニャクを
受け取った。
―まさか、あびるちゃん信じている!?
奈美の額に、縦線が走る。大変な事になりそうな予感がする。
「さ、私に全てを委ねて。あびるちゃんは、猫又に恋しちゃったんですよ。
猫ちゃんに相応しい女になる方法、教えてあげますよぉ?」
可符香は獲物を誘うサキュバスのような妖艶な動きで、あびるの頬を撫でた。
あびるはまじまじと可符香を見た。
屈託のない微笑みを浮かべながら、その瞳はどことなく深みを増してあびるを
見ている。
女神の笑顔というのはこういうのをいうのだろうか。
あらゆる悩みを氷解し、すべての煩悩を赦す。そのような素晴らしい笑顔。
奈美は、息を止めて2人を見詰めた。
「ねえ……可符香ちゃん?」
「はい」
ニコニコしながら、あびるの言葉の続きを待つ可符香。その目はキラキラと
期待に輝いている。
あびるは整ったあごを少し上向きに上げて言った。
「可符香ちゃんの髪って、横から見ると鉄腕アトムみたいじゃない?」
「えぇええ!?」
突然とんでもない事を言われた可符香は、ワタワタし始めた。
額に縦線を走らせて、スカートのポケットから鏡を取り出す。
「そ……そんなこと…ない…です…よぉ…ぉ……」
「そうですか? それは失礼。このコンニャク、ありがとう。頂くね」
軽く会釈して、あびるは席を立った。
教室を出るところでチラと後を振り返ると、可符香は鏡に自分の横顔を映して、
髪をしきりに弄りながら奈美になにやら言っている。
ちょっと涙ぐんでいるのが可愛い。
「猫又って言うのも、悪くないけどね」
あびるはふっと薄く笑って、可符香のくれたコンニャクをポケットにしまう
のだった。
(1章終わり)
537:292
07/10/06 17:19:17 Q8UsR7y/
>>529
いえいえ、お気にせず。
投下完了。続きはまだテロップだけしかできてないので、結構かかるかも・・。
お目汚し失礼しました。
538:名無しさん@ピンキー
07/10/06 17:26:47 nHuLweDQ
>>537
乙! これから話がどう展開するのか、wktkしながら待ってるぜ。
あと、これは本編から外れたどうでもいいことなんだろうけど、
ユニオン・ジャックって地味に左右対称じゃないんだぜ。
539:名無しさん@ピンキー
07/10/06 18:27:13 mGjdyKfA
>>537
文章が恐ろしく美しい。話の合間に挟まれる会話が上手い…。
これは続きwktkして待つしかないですよ。GJです。
540:105
07/10/06 21:57:12 gTbOr5TN
NOOO!!真昼氏の神SSが終了し、H×HのT樫先生と同時に292氏が本気を出された!!
・・・いや、嬉しいんですけどね、あまのじゃくなんですよ私・・・。本当に嬉しいんですけど、
あまりに神過ぎると、自分のゴミさがわかるわけですよ・・・。
電車に乗ったら両隣をお相撲さんに座られたみたいな・・・、いや、違いますねえ・・・。
神様の後光が、隠れていたゴミ虫を照らし出したみたいな、そう、そんな感じ!
絶望してもしょうがないです。SS投下します。続きが気になるなんていっていただけると嬉しい半分、
プレッシャー半分・・・、自分は何を言い出すのでしょう・・・。本当に嬉しいくせに、電脳世界でも
どうしようもないんですね・・・。とにかく有り難いです。
くどいようですが諸注意を・・・。①皆さんもうおわかりの「謎の女性」のイメージが激しく壊れます。ご注意下さい。
②今日投下する範囲は作者の「ご都合主義」が満載です。せっかくうまくいってる話をつまらなくしている気がします。
③ここから先は、作者の趣味がにじみ出ています。趣味というのは、話や会話の流れといったものから、嗜好的なモノまで。
④シンデレラの世界さえぶっ壊してます。NiceBoat、いやもはやナイスでさえありません
⑤エロ無しです。
では始めます。
541:ツンデレラ7
07/10/06 21:58:39 gTbOr5TN
謎「はいはい、辛かったですねえ」
すべてを話し終えて、未だ泣きじゃくるツンデレラを、自分の子供のように抱きしめてあやす。
謎「じゃあツンデレラ、あたしが何とかしてあげるわ」
ツ「・・?」
謎「自己紹介がまだだったわねえ。私オーク・サー・マナミ。マナミでいいわ」
ツ「はあ、マナミさん、ですか・・・。」
マ「そう、それでね、私、奥様で魔女なの」
ツ「はあ、奥様で、魔女・・・。えええっ!!いけませんよ!!
他人にそんなこと言っちゃあ!!魔女狩りにあいますって!!」
マ「魔女狩りて・・・、時代設定どうなってるのよ・・・」
ツ「それは、‘むかーしむかしのあるところ’ですから・・・」
マ「・・・まあいいわ。大事なのは私が魔女だって事。今から貴方にぴったりの洋服をそろえたげる・・・。
このステッキでね!」
取り出したるは、先ほどから光っているただの棒。光っていること以外は、とりとめのないただの棒。
ツンデレラはリアクションに困っていた。
マ「ああ~、その顔は信じてないわねえ」
ツ「ええっ、すっすいません。・・・でも、そうじゃなくてあの、何でそんな良くしてくれるのかなあって・・・?」
マ「ああ、それわね、あなたが本当にいい人なのを、私が知っているからよ!」
ツ「わ、私が・・・?そんな、とんでもありません!!私なんて生きt」
マ「さあ目をつぶって!いくわよ~、え~いビビッテバビッテヒデブ!!」
ツンデレラをいっこうに無視し、マナミのあやしい呪文とともに、ツンデレラの衣服が光って消えた。
近年削除、変更されそうな、魔法少女モノにありがちな変身である。
あっという間にツンデレラは、いっぱしのお姫様になっていた。
マ「まあ!ツンデレラ!素敵!とっても素敵よ!!」
ツ「わあ、すごい!本当にスゴイです!!」
マ「あなた、これから愛リーンって名乗ったらいいわ!」
ツ「アイリーン?何ですかそれ?」
ツ「・・・そうよね誰も「シンデレラ」(1950年2月15日、ディズニー、アイリーン・ウッズ主演)
なんて知らないわよね・・・分からないネタで御免なさい・・」
ツ「そ、そんなことないですよ!」
マ「・・ありがとう。
ところで一つだけ条件があるの。というのはね、時間制限。十二時の鐘と共に、この魔法は解けてしまうわ」
ツ「ええっ!・・・でも、仕方ありませんよね・・・」
マ「御免なさいね、それからがお楽しみなのに・・・」
ツ「とんでもございません!!それより私なんかがそんなことを不躾と抜かしてしまってすいません!!」
マ「いや・・・言い過ぎだから」
ツ「いいえ!!そもそも私なんかが王子様に会おうだなんて事が・・・」
マ「いいから、謝らないでーっ!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・