【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part9【改蔵】 at EROPARO
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part9【改蔵】 - 暇つぶし2ch300:加害妄想教室1
07/09/30 11:34:35 NOR/lYYt
 「困りましたね」
放課後の職員室、望の席のとなりに加賀が座っている。
今月になって、加賀が授業中に加害妄想の発作を起こし、校外に走って逃げて行って
しまう事件がもう3回も起きていた。
 「加賀さんの気持ちも分かりますが、私にも立場がありますし」
望としては、加賀を探しに行くという名目で授業を中断し校外に行くのは別にかまわ
なかったのだが、スクールカウンセラーの新井先生に知られるところとなり、すぐに改
善策を立てないと校長に報告すると脅されていたのだ。
 「すみません。すみません」
加賀としては、ただでさえ他人に迷惑を掛けることが苦痛でたまらないのに、先生に
呼びだされて放課後の時間を使わせている、と考えただけで、自責の念に押しつぶされ
そうである。まともな思考もできるはずがなく、ただうわ言のように「すみません」を
繰り返すばかりであった。
 「でも、すみませんというだけじゃ何も解決しないですよ」
思いがけず厳しい言葉を口にしてしまい、望は自分でも少し驚く。ただでさえ自己主
張の強い生徒ばかりであるへ組の中で、加賀のような生徒はどちらかというと望が贔屓
したくなるタイプであった。しかし何度も探しに行かなければならなかったことと、あ
まりにも無反抗な態度に少し意地悪をしたくなった心を否定することはできなかった。


301:加害妄想教室2
07/09/30 11:35:22 NOR/lYYt
 「どうなんですか? 加賀さん」
加賀の方の反応の方が強烈であった。もちろん先生に迷惑を掛けているという自覚は
ある。だが、一方で先生は自分のことを理解してくれているのではないか、自分を助け
てくれるのではないか、という甘えにも似た気持ちを持っていた。望の言葉を聞いて、
思わず体を震わせてしまった。
「 本当にすみません。迷惑かけてしまってすみません」
辛くて顔を上げることもできない。

 「わかりました。先生、急いでやらなければならない仕事があります。こう見えても
やらなきゃならないことがたくさんあるんです。勤務時間外にもやっていることを考え
ると時給200円くらいですよ。教師なんて楽な仕事だと思っているかもしれませんが」
 「そ、そんなことはありません。」
加賀は泣きそうである。
 「今日は夕方は時間がありますから、悪いけど宿直室に来てくれませんか?」
 「えっ」
加賀は即答できなかった。そもそも校内にいるだけで、他の生徒に迷惑を掛けないか
心配になってしまうため、授業が終わるとすぐに家に帰って部屋に閉じこもりたい方な
のである。
 「もちろん今日あなたの都合が悪いなら、別の日でもかまいませんが」
加賀には自信というものがない、仕方なく「はい」とうなずいた。


302:加害妄想教室3
07/09/30 11:36:40 NOR/lYYt
先生に指定された時間まで時間をつぶす必要があった。最初は図書室で本でも読んで
過そうかと思ったが、もし自分が借りて読んでいる本を他の生徒が読みたかった場合
、迷惑を掛けてしまうのではと考えると恐ろしくなってしまった。
仕方なく、誰もいないといいのだが、と思いながら自分の教室へ戻る。が、残念なこ
とに教室には生徒がまだ残っていた。
 「あら、加賀さん珍しいわね」
最初に声を掛けたのは木津である。加賀は彼女が苦手であった。意地悪をされている
わけではないことは分かっていた。むしろ根は面倒見のいい優しい性格であることは知
っていたが、どうしても言葉に厳しさを感じてしまい、上手に返事が出来ないことで相
手に迷惑を掛けていないか心配になってしまうのだ。
 「はい、すみません」
 「別に謝ることないのに」
 「そ、そうですね。」
自分の席につき、意味もなく机の中にあったノートを広げる。
 「宿題でもやるの?」
 「そ、そんなことはないんですけど」
 「そういえば今日みんなでカラオケに行くんだけど、加賀さんも行かない?」
 「え」
カラオケ、と聞いただけで不安になってしまう。音を外したらどうしよう、誰かの持
ち歌を歌ってしまったらどうしよう、場に合わない歌を選んでしまったらどうしよう、
そう考えてただけで不安で頭が真っ白になってしまった。
 「わたし、わたし・・・」
 「千里とカラオケ行くなんて嫌よねえ」藤吉がふざけていう。「音を外しただけで帰
してくれないし」
 「行きたくないなんて・・・そ、そんなことはないですけど」
木津の好意に迷惑を掛けることを考えるとどう答えればいいのかわからなかった。
 「せっかくだから行こうよ」
 「あ、はい」
加賀は否定できずに答えるが、そこでやっと自分がなぜここで時間をつぶそうとしてい
たかを思い出した。
 「わたし・・・やっぱり無理です。誘ってくださるのはすごく嬉しいんですけど、用事が
あって。嫌なんじゃないですが」なんとか言葉を搾り出す。
 「今日先生と・・・話をしなければならなくて」
 「先生と?」

つづく

303:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:36:42 IqyHaBcU
加賀支援

304:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:38:22 NOR/lYYt
加賀により、S属性が発動してしまった絶望先生という展開になる・・・はず。

305:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:39:42 fYUkVdPg
その流れで一本書いてみたい…
でもやっぱりワンパターンな展開になりそうなんで自重します。

306:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:42:59 fYUkVdPg
安価付け忘れた…
298のことです。

307:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:45:05 NOR/lYYt
>>305
良かったらぜひ書いてください。自分だとなんかギャグみたいになりそうなので(すでになっている)。
続きじゃなくてもいいし、この設定でいいなら勝手に使ってもらってもかまいません。

308:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:46:21 NOR/lYYt
>>306
あ、私のじゃないですね。
勘違いしてすみません。途中で投げ出してすみません。


309:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:47:16 IqyHaBcU
>>304
乙! これは続編に期待せざるを得ない

>>305
「あの時書いておけばと嘆くより、書いて傷つく方がいいでしょう!?」
う・p! う・p!

310:305もとい、42
07/09/30 14:13:05 fYUkVdPg
一週間も立たぬ内に復帰…
堪え性無くてスイマセン。298を元にしたあびる中編投下します。

311:絶望先生の家庭訪問①
07/09/30 14:23:44 fYUkVdPg
木の葉が紅葉に染まる頃となってきた初秋。
鈴木商店高校は2年生の秋のこの時期に家庭訪問を行うのが通例であった。
もちろん2年へ組担任の糸色望も家庭訪問の真っ最中なのである。
「さて、本日の予定は小節さんと小森さんですね、昨日は木津さんと木村さんのおかげて予定が大幅にずれてしまいましたから、さくさくいきたいですね…二人には久藤君を見習ってもらいたいものです」
先日の家庭訪問を思い出しながら、独り言を呟く望。
横目でちらと時計を確認すると職員室を後にした。
外は雨が降っていたため傘をさし小節家へと向かった。

小節家に到着するとあびるの父親とあびるが揃って迎えてくれた。
「はい、先生」
「ありがとうごさいます」
あびるから差し出されたお茶にお礼を言う。
あびると父親が望と対面に座る。
家庭訪問が始まった。
望があびるをみての率直な意見を父親に伝える。
通常の授業態度にもこれといって問題もなく、これからの進路のこともしっかりしている。
生傷か絶えないことや運動神経については父親は理解しているし、少しづつ改善していこうとあびるを交え話し合う。
面談の様子から父子家庭であることから何か問題が生じているということもなさそうで、家庭訪問は一時間後には無事に終了した。
「先生、あびるをよろしくお願いします。」
「ええ、教師として最大限の努力をします」
一通り挨拶を済ませると父親は会社に仕事が残っているというので先に家を出た。
「さて私もこれでお暇しますか」
あびるがじっと望の方をみている。
「どうしました?」
「先生も教師らしいことちゃんとできるんですね。見直しちゃいました。」
「あなたは普段私にどんなイメージをもっていたんですか」
望が苦笑しながら答える。
あびるは少し照れているようだった。
「じゃあ先生、また明日」
「ええ、また明日」
そういって玄関に背を向け傘をさそうとしたその時
『ばしゃぁーーーーん』
家沿いの道路を結構なスピードで走っていた車が水溜まりを弾けさせ、その水が望を直撃した。
「先生!?」
ギャグ漫画のごとく頭の先にまで水浸しになる望。
「ついてないですね」と言いそのまま歩きだそうとする。
「!、先生、そのままじゃ風邪引いちゃうよ。お風呂沸かすから入っていってください。服も乾かしますから」
遠慮しようとした望だったが身体が予想以上に冷たくなっているのを感じて
「それではご好意に甘えさせてもらいますか」
と返事をしたのだった。

312:絶望先生の家庭訪問②
07/09/30 14:40:56 fYUkVdPg
「ふぅ」
湯槽に浸かり冷えた身体を暖める。
小森さんは学校ですから急がなくてもいいですねなどと考えていると、脱衣所の向こうから人の気配がした。
「小節さんですか?」
返事はない。
かわりに布擦れの音が響いてきた。
「え、こ、小節さん?」
「先生、入るよ」
次の瞬間身体に巻かれた包帯を除けば、一矢纏わぬ姿のあびるが浴室に入ってきた。
「こ、小節さん、何を考えて」
慌てる望。
「大丈夫。お父さんともたまに一緒に入るし」
「それとこれとはまた別でしょう!」
「それに…今日の先生格好良かったし…」
「へ?」
「私のことちゃんとみてくれてるんだなって思ったら嬉しくなっちゃった」
「そ、それはクラスを受け持つ担任として…」
あびるが頬を染めて続ける


「先生、私、先生に…惚れちゃったみたい」




313:絶望先生の家庭訪問③
07/09/30 14:43:50 fYUkVdPg
望はその言葉に一瞬思考を止めてしまったがすぐに思考を取り戻し、湯ぶねから飛び出した。
「し、失礼します」
するとあびるが望の腕を反射的に掴んでしまった。
どたーん
望は転んでしまい、痛ててと呟く、軽い痛みはあるがどうやら怪我などでははないようだ。
「小節さん、大丈夫ですか…」
望が顔を上げるとあびるの顔が眼前にあった。
どうやらあびるが望を押し倒した形になってしまったらしい。
「先生、好き…」
『ちゅうぅっ』
あびるの唇が望の唇と重なる、と同時にあびるの舌が望の口内に侵入し甘い音を立てはじめた。
『ちゅ、れろ、ちゅう』
なすがままになる望。
濃厚なキス、教え子との禁断の行為。
望の意識は溶けはじめていた。

一度火がついたあびるは積極的で望は攻められるがままだった。
あびるはいつのまにか絶棒をくわえこみ卑猥な音を立てている
『じゅぶ、じゅぶ、じゅるっ』
「ふ…ぁ」
快感によりもはや望の脳内はとろけきっており何が起こっているのか判断できなくなっていた。
『ちゅ…ぽん』
はち切れんばかりに膨張した絶棒から口を離し大股開きでまたがるあびる
「いきますよ、先生」
あびるの秘所が絶棒をつつみこんでゆく。
「うぁ…」
『…ず、ずぷんっ』
『っ、痛ったぁ』
あびるの秘所から破爪の血が流れだしそれを目にした望が一瞬にして我に返る。
「小節さ…うぁ!」
『じゅぷ、じゅぷん』
一瞬あびるの動きが止まったかと思うと激しく動き始めた。
『痛い、痛い…けど気持ちいい…きもちいいよぉ、せんせい、もっとぉ』
まるで尻尾を愛でるような甘い声で喘ぐあびる。
その声と、強烈な快感で望の意識は再び彼方へと飛んでいく。
『先生、もう、私、私っ…う、く、うぁあああん』
望はあびるの絶叫とともに何か熱いものがほとばしるのを感じたがそれが何かわからぬまま意識を失った。

目を覚ますと望はあびるに膝枕をされていた。あびるが笑顔でやさしく望の髪を撫でていた。

その数秒後、望は意識をはっきりさせるとともに強い背徳感と絶望感に襲われるのだった…


THE END




314:あとがき
07/09/30 14:46:34 fYUkVdPg
長々と失礼しました。
相変わらず前置き長くてエロくなくてスイマセン。
あっさりした短編書きたいと思うのに書けない。
申し訳ないっす。
読んで頂いた方、スルーして頂いた方に感謝の意を表してあとがきにかえさせていただきます。
短編書ける力がほしい…

315:名無しさん@ピンキー
07/09/30 18:02:41 fmbTZEkr
>>314
最後にあとがきを入れるなら、別に話の終わりに「END」ってつけなくていいと思う。
前の長編の「HAPPY END」の一文にはなんだか違和感があったし。

316:292
07/09/30 18:29:59 0mhTAznr
>>304 
好きなシュチエーションなので激しく期待。GJですよ。
>>314
仕事早いなー。乙です。十分エロイw。

新しい選択肢を42様が満たしてくれたので、①で書いてみる。
遅筆なんで1ヶ月近くかかりそうだけどさ。
できるだけ短く・・長くなったら自重するので期待はしないでくれ(´・ω・`)。

317:名無しさん@ピンキー
07/09/30 19:03:52 AMruGbAG
自重なんていわずにできれば長編の方が嬉しいんだぜ。

318:名無しさん@ピンキー
07/09/30 20:30:12 I0y65mlB
千里と芽留の貧乳同盟が胸を大きくすべく
二人がかりで望を襲い胸を愛撫させる

教師と生徒という関係を保とうとするも望も男の性には抗えず
千里と芽留もまた意中の男の愛撫によって火のついた身体は治まらず
脈動する絶棒はふたつの華を赤く散らし



みたいな妄想を思いついたが文にする時間がない

319:名無しさん@ピンキー
07/09/30 20:36:33 wTxay45g
ネタはあるがエロシーンが書けない

320:名無しさん@ピンキー
07/09/30 20:57:01 fmbTZEkr
>>319
今までもそういう作品は幾つかあるし、基本的に無問題。

321:名無しさん@ピンキー
07/09/30 21:11:51 8Vi2yviX
エロイ妄想なら小説にしなくてもとりあえず垂れ流してみれば

322:名無しさん@ピンキー
07/10/01 00:51:54 NSsxm6vq
智恵>カエレ>あびる>奈美>霧>(中略)>千里>マリア>芽留
ぐらいだと思うんだが中略部分がわからん


メインキャラの胸のサイズの話だけど

323:名無しさん@ピンキー
07/10/01 01:05:26 U8OP/JgC
>>322
単行本派か?
多分あびると奈美の間に晴美が入るはずだぞ。

324:名無しさん@ピンキー
07/10/01 01:11:17 L8NMTWMr
あびる≒藤吉>奈美>霧>大草>可符香>加賀>千里>マリア≒芽留
三珠は加賀さんと千里の中間ぐらいと予想
あびると奈美と藤吉は隠れ巨乳で可符香は平均サイズ、加賀さんがやや小さめだと思ってる

325:名無しさん@ピンキー
07/10/01 01:33:28 U8OP/JgC
メインキャラ中にまといと倫と真夜は入らないそうです

326:奈美の受難
07/10/01 01:41:31 DC4+srnr
「普通っていうなぁ!!」いつもの様に教室に空しい叫びがこだまする。普通少女こと日塔奈美は今日も絶望先生こと糸   色望に『普通』呼ばわりされて憤慨していた。
「はぁ…」放課後奈美は人もまばらになった教室で一人ため息をついて机に突っ伏していた。
−−−−いつも普通普通って先生は私の事−−−−
「どうしたの?奈美ちゃん。」そこへポジティブ少女風浦可符香が今の奈美の様子とはまさしく正反対な陽気な声をかけてきた。


327:奈美の受難
07/10/01 01:42:18 DC4+srnr
「か、可符香ちゃん!?」急に話かけられて声がちょっとうわずる。
−−−さっきまでいなかったはずなのに−−−
そんな疑問も一瞬浮かんだが、可付香の優しそうな笑顔を見ていると、今の自分の悩みを解決してくれる−−−そんな風に奈美は思い始めた。
「ちょっと悩みがね…。ねぇ、可付香ちゃん」
「何?」相変わらず笑みを浮かべている可付香に奈美は思い切って打ち明けた。
「先生を見返したいのッ!」
「はぁ…?」内容の飛んだ話に可付香は話を把握できてないように小首をかしげている。


328:奈美の受難
07/10/01 01:45:00 DC4+srnr
「あ…ご、ごめんね!いきなりこんな事いって。ほ、ほら私いつも先生に……その、ふ…」
「普通。」
「普通っていうなぁ!って、そう。いつもそういわれるじゃない?」
普通−−−自分では言いたくないのか、奈美がためらっているのを見て可付香が言葉を繋げ、脊髄反射でその言葉に反応する。
「だから一度でいいから違う反応を先生にさせてやりたくて…可付香ちゃんならなんかいいアイデア出してくれるかなって。お願い!きょうりょk「もちろん協力しますよぉ!」言い終わる前に可付香が答える。
その目は新しいおもちゃを見つけた子供のような光が帯びていたがそれに奈美は気付かなかった。


329:奈美の受難
07/10/01 01:45:42 DC4+srnr
「ん〜そうですねぇ〜。やっぱり外見から変えるのが一番効果的だと思うんですよねぇ。」
可付香は手を組んで胸の前に置いて明後日の方向を向きながら話し始めた。
こういう時は可付香にエンジンがかかった証拠だ。
「あ、あの…そんなに一生懸命にならなくても…。」
あまりに快く引き受けてくれたためか奈美は多少戸惑っていた。
そのうち可付香はブツブツ呟く様にしゃべり始めた。
「…可付香ちゃん?」
「…ポ……ッカ……来世…肉花……ポジ…ス……プ」
危険そうな単語が途切れ途切れに聞こえてくる。
−−−マズい事になりそう−−−−奈美は直感的に感じた。


330:奈美の受難
07/10/01 01:47:12 DC4+srnr
「か…可付香ちゃん!や、やっぱいいや!迷惑だよね!?」
「何を言っているのですか♪迷惑な訳ありませんよ。よし、決まりました。さぁ!準備しにいきましょう!」
「いやぁぁ!いいってばぁ!」
 可付香にズルズルと引きずられ、廊下を移動する。
−−−−もうどうにでもなれ−−−−−−−
奈美はもはや抵抗するのをあきらめ、涙を浮かべながら引きずれるがままになっていた。


331:奈美の受難
07/10/01 01:48:11 DC4+srnr
しばらく引きずられていると向かい側から藤吉晴美が現われた。腕には重そうな封筒が抱えられている。中身が気になる所だが今はそんな余裕は無い。
間もなく晴美もこちらに気付く。
「あれ?二人ともどーしたの?」
「これから奈美ちゃんを普通じゃなくしちゃうんですよぉ♪」
「へ、変な言い方しないでよ〜!」
涙目で抗議する奈美を横目で見ながら、
「へえ…た、大変ねぇ…。」厄介そうな事は避けようとそのままやり過ごそうとした時、
「まずは服装からだと思うんだけど晴美ちゃんはどう思います?」
服装−−−−その言葉に体がピクリと反応した。


332:奈美の受難
07/10/01 01:49:06 DC4+srnr
「それってコスプレってこと?」晴美の目の色が変わる。
晴美はしばらく奈美をじーっと見つめていると何か思いついたらしく、
ニヤマリと笑った。
「そうねぇ…私も手伝っていいよねぇ?」拒否不能の響きだった。
−−−−あぁ、私はいったい何をされるのだろう。−−−抱えきれない不安を奈美は覚えた。



333:奈美の受難
07/10/01 01:50:22 DC4+srnr
小一時間後、空き教室で二人は奈美を満足そうな顔で眺めていた。
「これでいいかな?」
「そうですね!かわいいですよ!」
「よし!奈美ちゃんおつかれさま〜。」
「うぅ…」
奈美は恥ずかしくて死にそうだった。
たくさんフリルのあるメイド服。簡単に言えばそんな格好をしている。
ぎりぎりまで短くしたスカート。そしてニーソで絶対領域を演出している。
上半身はというと肩は完全に露出されていて、胸元は大きく開かれて胸の谷間が垣間見える。さらに背中は半分以上が露出している。
体を覆う部分もタイトな作りのためボディラインがはっきりと出て普通に大きい胸を強調している。


334:奈美の受難
07/10/01 01:51:34 DC4+srnr
死にたい…」顔を真っ赤にして俯きながら呟く奈美に、
「よく似合ってますよ奈美ちゃん♪」
「ホントホント。それに前から思ってたけどやっぱりこれよく似合うな〜」
と晴美が奈美の頭についているものを撫でる。
「やっぱ奈美ちゃんはワンコよね〜」ホレボレした様に晴美が言う。
奈美は頭に犬耳をつけられていた。
「もうなんなのよ!これぇ!」奈美がポロポロ涙をこぼしながら抗議する。
「普通じゃなくなりたいんでしょう?」
「うっ…そうだけど…」
可付香にそういわれると何も言えなくなってしまう。


335:奈美の受難
07/10/01 01:52:20 DC4+srnr
−−−−確かに自分で望んだ事だけど…これじゃちょっと…−−−
「ねえ」晴美の問いかけに奈美の思考は遮られた。
「ん?なに?」
「なんで普通じゃない様にしようと思ったの?」
−−−−え?
「聞いてないの?」
「ん〜聞こうと思ったんだけどね〜。別にいっかぁって。」
−−−−別にいっかぁって…私これでもかなり悩んでたのに…
「そんなことよりもさぁ。」
−−−−そんなことよりって、何のためにメイド服以外にもあんなのやこんなの着たと思ってるのよ…


336:奈美の受難
07/10/01 01:53:46 DC4+srnr
「他の耳もつけさせてもらっていい?」
「いいわけあるかぁぁ!」そう叫ぶと奈美は晴美に襲いかかった。
「フガー!!」
「ヒィイイ!?」奈美のあまりの勢いに晴美は一瞬ひるんでしまった。
瞬く間に奈美はマウントポジションを取った。
「あうぅ、ど、どうしたの!?奈美ちゃん?」
「どうしたもこうしたもあるかぁぁぁ!晴美ちゃんにはもっと恥ずかしい格好してもらうからねッ!」
「えぇッ!?なんでぇ!?」
「何でとか言うなぁ!!」奈美はスカーフに手をかける。
「あ、やだッ!ちょっ、ちょっと!可付香ちゃん!?奈美ちゃんを止めてッ!!」
しかし可付香はいつの間にかいなくなっていた。そうしてる間に奈美は奪ったスカーフで晴美の両手を縛った。


337:奈美の受難
07/10/01 01:54:34 DC4+srnr
「ッく、痛ッ」
運動神経は晴美の方が断然上なのだろうが今の暴走状態の奈美は第二のバッテリーが発動していた。
身を捩って逃げようと試みる晴美を熱に冒されたような笑みで奈美は見つめる。
「ハァ…無駄よ。晴美ちゃん。フフフ…じゃあこの耳からつけよっか。」
晴美に逃げ道は無かった。このままあんな事やこんな事をされるのかと覚悟を決めかけたとき部屋の部屋のトビラが開かれた。
助かった。晴美はそう思った。トビラを開けた人物を可付香だと思っていたからだ。
しかし、正確には違った。可付香以外にもう一人いた。


338:奈美の受難
07/10/01 01:55:05 DC4+srnr
「あなた達こんな時間まで何をやっているのですか!今日の戸締まりの当番は私なんですよ!
なんで私の時に限ってこんな時間にまで残っているのでしょう…ああもう絶望し…」ここまで言いかけた時やっと望は今の状況を認識し始めた。
「あ、あなた方いったい何を…それに日塔さんその格好は…?」奈美の格好を見て少し頬を赤らめた望むが尋ねた。
「い、いや…これはその、なんて言うか…」
「決して変な事をしてるわけじゃあ無いんですよ。」
いきなりの望の登場に素に戻った奈美がしどろもどろに喋るのを晴美がフォローする。


339:奈美の受難
07/10/01 01:56:06 DC4+srnr
「あははは…そうですよ!なんて事無いですよ!別に何も…」
「そ、そうですよね〜先生驚いてしまいましたよ。これは証拠過多ですよね〜。」
「アハハハハハ……」三人の乾いた笑い声が響く。
「って信じられますかぁ!!さすがに自分に対してこの嘘は厳しいです!絶望した!!生徒達の知らなきゃ良かった秘め事に絶望した!!私は何も見てません!見てませんからぁぁぁ!」そう言うと望はばたばたと廊下を走り去った。
「ど…どうしよう。」二人は顔を合わせて言った。
そこへ今まで傍観していた可付香が近づいてきた。
「おめでとう!奈美ちゃん!」
「へ?」奈美は何の事だかわからなかった。
「これで先生は奈美ちゃんのこと一目置く様になりますよ!普通脱却です!」
「こんなので普通じゃないって思われたく無いよぉ!」と嘆いた。
「普通の反応ですね。」ちょっとつまらなそうに可付香が言う。
「普通って言うなぁぁ!」


340:奈美の受難
07/10/01 02:00:34 DC4+srnr
終わりです。
本当は先生と奈美でエロエロなのを書くつもりでした。
でも出来上がったのを見るとなんかこれ百合気味ですね。
次はちゃんと本筋に沿えるようにできたらいいかと。
長い投稿すみません。異論反論オブジェクションは受け付けます。
ではまた。

341:名無しさん@ピンキー
07/10/01 02:01:26 U8OP/JgC
まず投下予告をしてくれ。でないと色々と困る。

342:名無しさん@ピンキー
07/10/01 02:04:25 H7en+mtv
>>340
乙ですー。
奈美ってホント弄られキャラだなと、つくづく思ったw。

343:名無しさん@ピンキー
07/10/01 02:07:37 Lhss8XkA
>>340
キャラの特徴が良く出てて、普通に面白かったと思う
個人的には先生と奈美でエロエロなのも見てみたかったw

344:名無しさん@ピンキー
07/10/01 02:36:07 NSsxm6vq
>>340
「先生と奈美でエロエロなの」の予告編と受け取ったw
携帯で表示されない記号は使わないでほしいな

>>323
晴美はたまたま手元にあった2巻見て中略部分に含んだ

まといは和服だからわからん…と思ってたけど
1巻51ページの写真見た限りでは奈美>まとい>霧ぐらい?

345:名無しさん@ピンキー
07/10/01 09:21:26 H+ydz9Qv
最近真昼さん来ないねー
続きが気になるよう

346:名無しさん@ピンキー
07/10/01 16:01:56 I6pgEhP9
真昼氏のSSを読んでから改めて氏のMADを見ると
破壊力がすごい・・・目から水が出っ放し

347:名無しさん@ピンキー
07/10/01 16:34:15 aj1EPeZD
>>346
同意。
脳に焼き付いて離れん。

348:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:18:25 HpW7s433
>>346>>347
俺も。目から汁が出てくる

349:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:36:07 aj1EPeZD
最近、可符香・まといss読んで、30倍悲しい読んで、真昼氏MADを見るローテー

350:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:40:35 fVsH/ta0
>>349
なんという鬱ローテーションww

351:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:46:35 UNnVMfoU
あばば何か呼ばれているような気がする、気がするですよ真昼野郎です。
まさかお待ちいただいてるとはつゆ知らず。てか待っててくれる人が居た事に感涙。
またもスレ容量消費させていただきたく参上仕りました。今回は7レスほど。

352:真昼が雪 43
07/10/01 18:47:51 UNnVMfoU

「これで、僕の話はおしまいです」
語り終えた久藤は、ふぅ…と深く息を吐いた。
目を閉じ、じっと聞き入っていた望は、
「―おしまい、ですか」
そう呟いて、椅子から腰を上げた。
「はい。おしまいです」
久藤も立ち上がる。
もうすっかり、下校時刻は過ぎていた。
「随分と…長いようで、短い話ですね」
「ほとんど人伝に聞いた話ですから」
「彼女に問う事は、しなかったのですか」
「僕にその資格はありません」
立ち上がった久藤は、出口ではなく窓へと歩み寄る。
夕闇がさし迫る校庭を見下ろして、寂しげに呟いた。
「彼女と再会して、僕は―心底、何もしなかった子供の自分を呪いました」
「…誰も貴方を責めないと思いますよ、私は」
そんな慰めに意味はないと知りつつも、望はその背に言葉を掛けずにはいられなかった。
日に日に彼女の笑みは、硬度を増していく。
それがいけない事だと肌で感じながらも、それを止める事が本当に彼女の為になるのか、結局彼は最後の最後まで判らずじまいだった。
「彼女は不幸でした。
 だけど、傍で僕がいつものように物語を語っている間、彼女は幸せそうに笑ってくれました。
 それが嘘モノと知ってたのに僕は―その笑顔に、縋ったんです」
問う事で、その笑顔を崩す事が恐ろしかった。
彼女の傍で語り部で居れば、彼女はずっと笑っていてくれる。
『私の事、これからは、風浦可符香って呼んでね』
そう言われた時も、特に理由を聞く事はしなかった。
何も問わずに頷けば、彼女は満足気に微笑んでくれた。
人としての故障ごと、彼女を受け入れる―それが、彼の役割になっていた。

353:真昼が雪 44
07/10/01 18:49:19 UNnVMfoU
「―ひとつ、貴方は勘違いをしています」
「…え」
振り返る久藤の顔は、年相応の少年のように、不安定に揺れていた。
対する望は、まるでいつもと違う、大人のような落ち着きを宿した表情で、言葉を続ける。
「きっと貴方の傍に居る時の彼女は、本当に幸せだったんだと思いますよ。
 だから―貴方の見てきた彼女の笑顔は、嘘モノなんかじゃありません」

「――……」

その言葉に。
何だか救われた気分になってしまって、久藤は不覚にも泣きそうになった。
そんな自分を必死に律して、表情を隠すように俯く久藤。
「…何だか今日の先生は、まるで先生みたいですね」
「日本語がおかしいですよ、久藤君。あと、何だか失礼な事を言われた気がするのは」
「気のせいです」
顔を上げた久藤の表情は、すっかりいつもの微笑に戻っていた。
その笑顔は、いつもより幾分柔らかい。
ああ、彼はこんな笑い方も出来るのか…と内心で歓心しながら、望もフワリと笑い返した。
「それで、先生。僕の話は、何か役に立ちそうですか?」
「さて…それはまだわかりません。けど、聞いて良かったと思います」
踵を返す望。
「引き止めてしまってすみませんでしたね。
 もうこんな時分です―久藤くんも…」

背を向けた望の身体が、ユラリと揺れた。
出口に向う望の歩が、止まる。

「―早く、か…――え―っ、て…っ」

途切れた言葉と共に、望の身体はゆっくりと床に崩れ落ちていた。

「先生―!」
咄嗟に走り寄ってきた久藤に抱き止められたおかげで、寸での所で床との顔面衝突は避ける事が出来た。
が、せり上がってくる嘔吐感と痛みだけはどうしようもない。
荒い呼吸の中で、「大丈夫です、大丈夫です…」とうわ言のように呟き続ける望。
明らかに大丈夫ではないその様子に、久藤はまるで望と痛みを共有しているかのごとく表情を歪ませた。
「先生、とりあえず保健室に行きましょう」
言いながら、望の身体を背負い上げる久藤。
そのあまりに軽い感触に、久藤の内心の不安は煽られるばかりだった。


◇ ◆ ◇ ◆

少女は走る。
呼吸を荒げて、泣き出す直前のような表情で走り続ける。
その様子を、病院の廊下の窓から見下ろして、

「――本当に、酷い男だな…我が弟ながら」

糸色命は、泣き出す直前のような表情で、呟いた。

◇ ◆ ◇ ◆


354:真昼が雪 45
07/10/01 18:50:15 UNnVMfoU

心臓が、肺が、血を巡らす管達が、もう限界だと叫んでいる。
それでも彼女は走るのをやめない。全力で廊下を蹴り、前へ前へと突き進む。
校内はすっかり夕闇に溶け込んでいた。
最近は日が落ちるのが早い。外はすっかり暗くなっているものの、時刻にすればまだ六時前後といったところだろう。
校門は閉まっていた。だが、校門以外にも学校への入り口というものはあるのである。
もちろんソコは一般生徒…どころか、教職員達も知らない秘密のスポットなのだが、今はそんな事はどうでもいい。
とにかく彼女はそこから学校に潜入し、こうして廊下を駆けている。
向う先は―宿直室だった。
その細い足のどこからそんな力が湧いて来るのか不思議になるほどの速度で、彼女は走り続ける。

「―杏ちゃん」

酸欠で霞がかった意識に、ハッキリと響く男子生徒の声。
彼女は咄嗟に立ち止まろうとして、だがすぐに勢いが殺せる訳も無く、そのまま前のめりに倒れそうになる。眼前に迫る、冷たく硬い床。
「わぁ…ッ!」
小さく悲鳴を上げて、襲い来るであろう衝撃に身を竦ませる可符香。
だが、彼女の身体に訪れたのは固い床の感触ではなく、両の腕で包まれる柔らかな感触だった。
「大丈夫?」
恐る恐る目を開き、視線を上げると、そこには心配そうにこちらを覗き込む幼馴染の少年の顔がある。
「准君…」
「危ないよ。急いでいるのはわかるけれど、君が怪我したら先生も、きっと悲しむ」
久藤の口から紡がれた「先生」という言葉に反応して、ハッと目を見開く可符香。

355:真昼が雪 46
07/10/01 18:51:51 UNnVMfoU
「あ、ありがとう准君!でも、私急いで先生に――」
「先生なら、そっちには居ないよ」
自らを支える腕を押しのけようともがきながら、早口にまくし立てる可符香の言葉を、久藤は静かな声音で遮った。
可符香は驚いたように久藤の顔を見上げる。
大きな丸い瞳の中に、久藤の穏やかな微笑みが映り込む。
「どうして…?」
「先生は、保健室に居るよ」
久藤はそっと可符香から身体を離し、すっと保健室の方を指し示す。
「どうして、准君が知ってるの?」
「―急いでるんだろう、杏ちゃん」
可符香の問いに答える事はせず、久藤は可符香に早く行くよう促してみせた。
釈然としないながらも、この質問の優先順位はそう高いものでもない。
可符香はコクリと頷いて、機敏な動作で踵を返す。
「うん…。教えてくれてありがとう、准君ッ」
駆け出しながら礼を言う可符香の背中に、小さく「いってらっしゃい」と声を掛けながら手を振る久藤。
遠く、小さくなっていく可符香の足音の残響を聞きながら、久藤は窓の外へ視線を移した。

ふと。
「―あれ」
頬に濡れた感触を覚えて、そっと掌で撫上げた。
それが涙である事に、しばらく気付くことが出来なくて、呆然とする久藤。
涙は一筋だけ彼の頬を濡らして、顎を伝い落ち、制服に小さな染みを作る。
それはすぐに乾いてわからなくなる程度の、小さな跡。
窓ガラスに映る自分の泣き顔に苦笑しながら、久藤は掠れた声で一人ごちた。

「あぁ…そうか。
 僕も―彼女の事が、好きだったのか」

一瞬の悲しみを、ほんの一滴の涙で洗い流して。
瞬きの後にはもう、彼はいつもの静かな笑みに戻っていた。


356:真昼が雪 47
07/10/01 18:52:56 UNnVMfoU

早鐘を打つ心の臓。そのリズムに合わせて、米神がズキンズキンと痛んだ。
それでも彼女は止まらない。思考に回す労力は、今は走る為に使う。
今までにない程全力で駆けて――久藤と会話して数分も経たぬ内に、彼女はそこに辿り付いた。
保健室。
白く記されたその三文字は、暗闇の中にも溶け込む事無く、彼女の瞳に映し出された。
「っは、っは、っは――ッはぁ」
扉の前で、すっかり熱くなった全身を冷ますように呼吸を整える。
途中で何度も咽こんで、彼女は痛む肺を直接握りつぶそうとするかのように、自らの胸を掴んだ。
熱暴走した身体は、夜気と―それ以外の、徐々に湧き上がる良くない感情に、外と内から冷やされていく。
どうにか呼吸が治まり、胸から手を引き剥がしながら、ゆっくりと瞳を閉じた。
―この先、何があっても声が震えないよう、一度だけイメージトレーニングをする。
「……――」
自慢のアルカイックスマイルを拵えて。
彼女は、静かに保健室の扉を開いた。

糸色望は、まるで人形のような顔色で、そこに横たわっていた。

窓にカーテンはかかっていなかった。月光が、青白く室内を照らしている。 
人が居るならば、いつもはベッドとこちら側を間切る為のカーテンが閉まっている。
だが今は、ベッドの上に人が横たわっているにも関わらず、それは開いたままになっていた。
「――先生?」
声を掛ける。その声が震えていない事に満足しながら、彼女はゆっくりとベッドまで歩み寄る。
「先生。私です―寝ているんですか?」
横たわる彼の隣に立つ。近くで見ると、元来の肌の白さも手伝って、彼の肌は病的に人形じみていた。
触れても、体温がある気がしない。
「先生…」

357:真昼が雪 48
07/10/01 18:54:04 UNnVMfoU
薄い胸が上下して居る―呼吸は、あるようだ。
だがそれだけでは確信を持てずに、薄く開いた唇から漏れる呼吸を確認するために、そっとその上に掌を翳してみる。
掌を擽る僅かな息遣い。本当に、僅かな。
「――先生…」
もう一度、呼んだ。
「先生。起きて下さい……、起きて下さいよ」
翳した掌を、そのまま頬に滑らせる。
返ってくる感触は思いのほか柔らかだった。
マネキンのような硬く冷たい質感を想像していただけに、少し驚いてしまう。
少し考えればそんな筈はないのだが、彼の肌の青白さは、そう思い込んでしまうほど人間味が無かった。
「………」
確かに掌に感じる体温が、じんわりと掌から全身に伝わるような感覚が、可符香を安心させた。
安堵の吐息を吐くと、それに反応したかのように、望はゆっくりと両目を開いた。
「あ―やっと起きましたね」
「……目覚め、の」
「はい?」
ぼんやりと中空を見つめていた彼の目が、優しげな笑みの形を象る。
頬に置かれた小さな掌に、自らの掌を重ね合わせながら、可符香の瞳を仰ぎ見る望。
「目覚めのキスでも、してくれたんですか?」
自らの掌を覆う、以外にも大きく暖かな掌の感触。
それに何故か泣きそうになりながらも、彼女は必死にその感情を笑みの中に押し隠しながら答えた。
「…して欲しかったんですか?」
「ええ、わりと」
「わりと、ですか」
いつもの、何という事のない会話。
可符香はクスリと微笑んで、いつものようにからかう様な口調で返した。
「でも、それじゃ立場が逆じゃありません?
 まぁ確かに先生は、王子様より眠り姫の方が似合ってますけどね」
「それは嬉しくないですねぇ」
「綺麗だって言ってるんですよ」
「―……やっぱり嬉しくないです」
「ふふッ」
じゃれ合うように軽口を言い合う。掌は、重ねたままで。

358:真昼が雪 49
07/10/01 18:55:21 UNnVMfoU
不自然な程に穏やかな空気が、二人の間に流れていた。
いつもの二人ならば、もう少しだけ賑やかな会話になっていただろう。
可符香が望にからかわれ、嘆く望をまた可符香が宥め賺す。
だが今は、まるで望の方が年長のように―事実年長者なのだが―落ち着きを払い、
彼女は認めてはいないものの、逆に少しだけ、可符香の心が乱れている。
いつもとは、立場が逆転していた。

「随分と…急いで来たのですね」
「え?」
「掌が熱いですよ―それに、少し汗ばんでいます」
もう十分に冷えたかと思っていたが、どうやらまだ冷却が足りなかったようだ。
可符香は少しだけ焦ったように手を引いた。その動きに気付いて、望も重ねていた掌を放す。
お互いに名残惜しさを感じながら、二つの手は放れていった。
「気のせいですよ」
すかさず言い返す声音は、まだ震えてはいない。
「そうですか」
特に突っかかる事もせず、望は素直に頷いて見せた。
その顔に浮かぶ楽しげな微笑に、見透かされたような不快感を感じる。
「それで、そんなに急いで来たんですから…何か大事な用があったのでしょう?」
「だから急いでなんて居ませんよぉ。悠々と歩いて来ました。それに、大した用事でもありません」
本当に、いつもと立場が逆だ。
可符香は望にからかわれている事を自覚して、僅かに眉を顰めた。
「拗ねないで下さい、風浦さん」
「からかわないで下さい、先生」
売り言葉に買い言葉。このままでは、ちっとも本題に入れない。
可符香はコホンと小さく咳払いをして、場の空気をリセットした。
「―絶命先生に会ってきました」
命がその場に居たら即座に名称に対して突っ込むだろうが、残念ながら当人はこの場には居ない。
もしかしたら今頃、くしゃみの一つでもしているかもしれない。
脳裏に兄の姿を思い浮かべながら、聞き返す望。
「兄さんに?」
「はい」
「それで、何を話したんです?」
ぐっ、と。可符香は思わず拳を握り締める。
何を…と、聞き返す望の態度に、怒りに似た感情が込み上げる。
何を話したか。そんなもの、一つしかないではないか。
「…先生、倒れましたよね。私の、目の前で」
「―……ええ。あの時は、本当にありが」
「なのに何で、学校に居るんです?」
今更礼を言おうとする望の声を断ち切るように言い放つ可符香。
僅かに、声が震え始めていた。
「お兄さんに聞きました。先生、今すぐ入院しないといけない病気……なんでしょう?」
揺れる瞳を隠すように俯きながら、可符香は病院での命との会話を、思い出していた。


359:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:55:42 nKG6KBr2
原作五十三話
『あれ 不可よ 原作があるじゃないかね』より


「逃げ道なんて、許せません!逃げずにきちんと説明するべきです!」
「まあ、まあ、熱くならないで」

ぽむっ

「あ」

こ、これは…
『もにゅ』
『あん』
なかなか…
『さわ、さわ』
『ん、ふ』
素晴らしい
『きゅ、すりっ』
『ひぁん』
感触ですね




「で、オチは?」
「考えていないみたい」
「投げっぱなしね」
「自分の妄想をぶつけたダケの品のナイ投下ダナ」




360:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:58:44 UNnVMfoU
あ…あれ?おかしいなぁ。今回くらいでエロ突入する予定だったのに、まったくその気配がないよ?
何故だ。何故こうも話がダラダラ長くなるですか。そしてよーわからん所で区切るな自分。
何かまだ無駄に長くなりそうな予感ですか、俺は独りよがりになってないかー。

361:名無しさん@ピンキー
07/10/01 19:02:14 7CK8yPJf
何だか尾崎な真昼氏キタ----!!!
だめだ保健室のシーンで目が洪水になった
でもこの状態で先生エロできるんですか!?

362:名無しさん@ピンキー
07/10/01 19:06:18 rUUCBm0b
>>360
もうエロでなくても感動一直線でおkだ!
超GJ!

363:名無しさん@ピンキー
07/10/01 19:11:42 An7k8UxR
>>360
うん、もう無理にエロ入れなくてもいい感じ
エロは他の職人さんで補充するから
真昼氏にはこのまま感動路線を突っ走って欲しい

364:アヒル
07/10/01 19:15:54 UNnVMfoU
投下して、初めて気付く、誤字脱字。アオォオオ…!ちょっとこればっかりは直さなあかんばい!

真昼が雪49より。
×可符香が望にからかわれ、嘆く望をまた可符香が宥め賺す。
○望が可符香にからかわれ、嘆く彼をまた可符香が宥め賺す。

読み返して投下しろっつーのド畜生。

365:名無しさん@ピンキー
07/10/01 19:36:00 Qqkf+1o5
>359

GJ、こういう身軽な話は好きだ。
次回作にも期待。

366:名無しさん@ピンキー
07/10/01 20:07:54 HpW7s433
不覚にも准君の所でグッと北

真昼氏GJ!!

367:名無しさん@ピンキー
07/10/01 20:30:21 UhPp5s2H
真昼さんに一生ついていこうと決めました

368:名無しさん@ピンキー
07/10/01 20:53:56 zWVlYJ05
>>360
真昼氏…こ、呼吸困難…。
本当に、全員キャラが深くて、そして話の作り方が上手い!!
じわじわとクライマックスが近づいてきた感じですね。

もう、この先、毎日正座待機ですよ!
いや、別に義務を感じさせているわけではっ!
めちゃくちゃ期待してるけどっ!!


369:名無しさん@ピンキー
07/10/01 21:37:47 dxQ1HysN
>>360
先生のもとへ駆ける可符香にグッときました・・・・・・・・・・!
何かもう、この不器用な二人を見ていられない・・・
期待してます・・・!




>>368
・・・・・・もしかして430氏ですか? いえ、なんとなくw

370:名無しさん@ピンキー
07/10/01 23:57:09 zWVlYJ05
>>369
何故分かる!?
絶望した!語彙が少なくてすぐに身バレする自分に絶望した!


371:名無しさん@ピンキー
07/10/02 01:03:50 qJuqNU3G
SSみたいな比較的長文を書くと、文章のクセをすぐ掴まれちゃうよね。
俺も見破られているかな。この2行じゃ無理だと思うけど。

372:名無しさん@ピンキー
07/10/02 01:29:36 H4mOQZnR
>>340奈美が逆襲と珍しい展開に驚いたが普通に戻ったラストは安心感があって良いですね

373:名無しさん@ピンキー
07/10/02 01:58:10 dcaWJPQi
>>371
藤吉さんと絶望先生書いた人じゃないのか?

374:42
07/10/02 03:49:58 V64ThWgj
こんな真夜中になんですがあびる短編投下します。
一応、前回とつながってます。

375:ある日曜の昼下がり
07/10/02 04:07:39 V64ThWgj
「先生、居る?」
よく晴れた日曜の朝、あびるは望に会いに学校へ来ていた。
宿直室のドアを開けるとスヤスヤと眠っている望の姿があった。
「あ、寝てる」
お昼寝中だろうか?あびるは忍び足で望に近づいてゆく。
とその時――
『ぐにゃり』
ふとした拍子にバランスを崩したあびるは望の「そこ」を踏みつけてしまった。
「わっ」
足をM字にして倒れこんでしまったあびる。
あ、先生は…気がついてないみたい。
「痛く…なかったのかな」
望は未だ熟睡している。
ふっ、あびるの足裏に先程の感触がよみがえる。
あびるは顔を紅潮させながら自然と望の股間に手を伸ばしていた。

『しゅ、しゅ』
『はぁっ、は、ぁっ』
息を荒くしながら絶棒を左手でしごいていく。
右手は自然と自らの秘所にあてがわれていた。
『ん、ふぅ』
あびるは絶棒が大きくなったのを確認すると靴下を脱ぎ足裏を望の絶棒にそえる。
『ぴとっ…』
なんか…あったかい…
『しゅ、しゅっ』
どこかで得た知識なのかそれともあびるの欲求なのかあびるは自らの足の裏で望の絶棒をしごきはじめた。
ああ、私、足なんかで先生のを…
『ん、ふう』
さっきまで望の絶棒をしごいていた左手は秘所をまさぐっている。
せんせい、あびるは悪い娘です…先生が寝ている間にこんなこと…
『しゅ…しゅっ、こすっ』
『ん、はぁ』
息はますます荒くなり、興奮してゆくあびる。
『じわっ』
足裏にぬるっとした感触。
絶棒の先端からねっとりとした液体が滲み出てくる。
とその時。
「…う、ぅん?」
「あ、わ!」
「~~ん?…っ」
はっ、と我に返る。
急いで下着をはき、望に乱暴にパンツと袴をはかせると、あびるらしからぬスピードで部屋から逃げ出した。



「ぅ…うん、よく…寝ましたねぇ。」
ぼんやりしたと意識が徐々にはっきりとしてくる。
「やはり昼寝は良いものです…?」
ふと股間に妙な感触を感じとる。
「な、まさか…」
股下に目線を移す。
その瞳にはっきりと映るその光景に望は絶望を覚えるのであった。


THE END…


376:名無しさん@ピンキー
07/10/02 08:09:54 RIrltjW8
MADでもSSでも絶望先生には何故死ネタが多いのか朝から考えてみた
先生が色白で線が細くてイケメンなことと
生徒と教師という涙腺系の関係
そして兄が医師というところ
考えたらサナトリウム文学にぴったりのシチュエーションの宝庫じゃないか
そんな設定でギャグを書いてるクメタンはやはりすごいと思った
そしてそんな自分は死ネタMADもSSも大好きです
真昼氏の続きを心よりお待ちしております

377:名無しさん@ピンキー
07/10/02 19:14:19 ogNUkoiT
第四集「津軽通信教育」で先生はテクニシャンになっている。
この設定で智恵先生を弄ぶ話はないものか

378:名無しさん@ピンキー
07/10/02 19:43:23 ZTZOvMw6
連日失礼いたしやす、真昼の奴です。やたら小出しにして申し訳ない。
ホントにちょびっとの投下になりますが、話の区切りを考えるとどうしても短くなってもーて。
5レスほど失礼させてもらいますー。

379:真昼が雪 50
07/10/02 19:46:21 jl7W5YLF

◇ ◆ ◇ ◆

望の授業が終わった後。
可符香はすぐに命の病院へ向った。もちろん、望の病態を詳しく聞くためである。
昨夜の思わせぶりな会話についても、問い質すつもりでいた。
―糸色命は、ああ見えて意外と過保護な所のある男だ。
だからたいした病気でないにも関わらず、用心にと、弟に入院を勧めたに違いない――
病院に着くまでの間に考えた、彼女お得意のポジティブな遁辞は、こんなところだ。
命の病院は相変わらず患者も疎らで、二人で話をする時間は簡単に取れた。

「先生の病態はどうなんですか?」
挨拶もそこそこに本題に入る可符香。その様子に深刻なものを感じ取り、命は真剣な表情で頷く。
「―正直なところ…良くは、ないよ」
「そんなのわかってます。どの程度、良くないんですか」
曖昧な態度の命に、可符香は容赦なく質問を浴びせる。
その頬を、一筋の冷や汗が流れるのを、命は見逃さなかった。
(―ああ、彼女は…。知るのが怖い、のか)
それにも関わらず、少女は必死にここに立ち、返答を待っている。
縋るような眼差しに答えるように、命は口を開いた。
「…早急に入院が必要な程、だ」
「じゃあどうして、先生は学校に来てるんです?」
「それは――」
言い淀む命に、可符香は反論を許さない。非難するような強い口調でたたみ掛ける。
「お医者さんなら、患者さんを治す事を優先するべきじゃないんですか。
 弟さんが大事なら尚の事です。どうして―先生の我侭なんかを、聞いたりしたんですか」
「ど、どうして君が…」
昨夜の事を知っているんだ。そう問い質そうとするも、
「そんな事どうでもいいんです」
ピシャリと言い放った可符香の眼光に二の句が告げなくなり、思わずすくみ上がる。
幼い少女の眼光に圧倒されている自分を、命は自覚せざる得なかった。
「それで先生は―……何の病気に、罹ってるんですか…?」
だが、次に彼女から紡がれた言葉は、先ほどまでの勢いが嘘のように、恐々と発された。
スルスルと萎むように、可符香の瞳に力が無くなっていく。
「―胃を、大分やられていてね…。
 最近食欲が無かったり、お腹を痛がったりしては、いなかったかい?」

紅葉の上に倒れ付す、望の姿を思い出す。そういえば、腹部を押さえていた。
昨日、倒れる直前に取った昼食は、殆ど食べられずに残していた。
彼が倒れた時、肩に触れて初めて、元々細い身体が更に一回り小さくなっている事に気付いた。
思い出してみれば、何故気付かなかったのか不思議な程に、思い当たる節がありすぎる。

愕然とする可符香の様子から察したのか、命は眼鏡の奥の瞳を曇らせた。 

380:真昼が雪 51
07/10/02 19:47:46 jl7W5YLF
「血を吐くまで……どうしてあいつも、気付かなかったんだかな」
その言葉が、まるで自分に向けられたものであるように聞こえて、可符香は胃の奥がきゅうと痛むのを感じた。
だがこの痛みの、何倍もの苦しみを望は味わった―いや、今も味わっているのかもしれない。
「あ、あはは…コーヒーじゃ、なかったんですね…」
乾いた嘲笑で自身を傷つける可符香の様子に、命は痛ましげに眉根を寄せた。

初診の時。それと、昨日望の付き添いに病院を訪れた時。合わせて二度程しか会っていない少女。
本来ならば彼女と望は、教師と生徒という間柄に過ぎない筈だ。
けれど、あまりに必死な彼女の様子は、二人がそれだけの関係ではない事を物語っているように思える。
いくら担任が倒れたとはいえ、それが自らの目前だったとはいえ。
わざわざ学校を早退してまで容態を訪ねに来るのには、何か特別な理由があるとしか思えない。
その『特別な理由』を―自分は聞く権利がある。
それに、昨夜望が残した意味深な言葉。

『やり残した事がある』

確信などない。だがその言葉が、この少女に繋がるような気がしてならなかった。
「風浦、可符香さん」
「はい」
頷く彼女の瞳は、今だ不安げに揺れている。
「貴女は望の生徒さんだ。それに、昨日は望を助けてくれた恩もある。
 けれど―…何故君は、そんなにまで望を気にかけてくれるんだ?」
「それは」

ソレハ、センセイニ、コイヲシテイルカラデス。

彼女が彼を気にかける理由。今まで、ずっとそうだと信じてきた理由。それを口に出せばいい。
そうすれば、命は何の疑いもなく首を縦に振って、自分の質問に何でも答えてくれるだろう。
けれど何故だろう。彼女の唇は、その言葉を紡ぐ事を拒否していた。
笑みの形に強張って、ピクリとも動いてくれない。
(…あれ?)
唇どころか喉も凍りついたようで、無理矢理声を出そうとするも、掠れた呼吸が虚しく漏れるだけだった。
「どうしました?」
「…ぁ、…ァ」
呼吸すら危うくなる。冷や汗が顎を伝って、制服のスカートに染みをいくつか作り出す。

今までならば、すんなりと言えた。彼を監視するその理由。
それは、彼女の中で紛れもない真実であったからだ。
なら今は?
それを言葉に出来なくなったのは―自分の中で、それが真実ではなくなったと、言う事なのか。

381:真昼が雪 52
07/10/02 19:49:28 jl7W5YLF
そんな筈はない。そんな筈はない。
今だこの胸に痞える、以前より何倍も肥大したこの感情は、恋以外の何物でもない。
それ以外のモノとなると―彼女にとって、酷く都合が悪くなるから。

やだなぁ、怖いわけないじゃないですか。
やだなぁ、憎いわけないじゃないですか。
やだなぁ―決して、苛立ちなんかじゃありませんよ。

だってそれらは全て、自分の中にあってはならない感情だから。
そう。いつだって彼に抱いてた、この混沌とした感情は――


『貴女はいつも、何を恐れているのですか』


彼女の心に、深く深く棘のように刺さった、望の言葉が蘇る。
刺し傷が、ズクンズクンと痛みだす。
今まで見てみぬフリをしてきた全てを、無理矢理見せつけようとする残酷な言葉が、痛みと共に蘇る。


『貴女は怖がりだ。人よりもずっと、怖がりだ。
 だからそんなに必死になって、ネガティブな事を否定するんじゃないですか。
 そうでもしないと――耐えられないから』

ああ、そういえば。
――あの時自分は彼の言葉を、少しも否定出来なかったじゃないか。
ようするに、この、恋とは名ばかりの、感情は。

「 あ はは 」

小さな乾いた笑いが、喉から滑り出た。
何かを諦めたように、強張っていた肩から力が抜ける。
何事か呼びかけている命の声を、遠く遠くに聞きながら、可符香は妙に穏やかな心地でいた。
(そうだ…もう、あの時とっくに、言い負かされていたんだ)
せっかく死に物狂いで築き上げた、風浦可符香という人物像を壊された事へのショックよりも、

それを暴いた人間が、彼で良かったという安心感が、彼女を満たしていた。


――そう、人はそれを、恋と呼びます。

 
見開いた瞳に光が灯る。青ざめた頬に赤みが差した。

ようやく彼女の中で、糸色望への恋が、始まった。


382:真昼が雪 53
07/10/02 19:51:02 jl7W5YLF

気がつくと、可符香はベッドの上で横になっていた。
一瞬状況が飲み込めず、真っ白い天井をぼんやりと仰ぎ見る。
「目が覚めましたか?」
隣で聞こえた声にハッとして身体を起こすと、そこには心配そうにこちらを見る命の姿があった。
ここは診察室で、自分は彼に話を聞きに来ていたのだ。
しかし何がどうして、ベッドに寝転がったりしていたのだろう。
「あの、私」
「疲れていたようだね―話の途中で気を失ってしまったんだよ、君は」
言われてぼんやりと思い出す。どうやら葛藤に耐え切れず、意識を失ってしまったようだ。
「す、すみませんでした」
「いいんですよ。どうせ患者さんも来ませんから」
フッと影のある笑い方をする命。どうやら、彼女が寝ている間も来客はなかったようだ。
「どのくらい寝ていたんですか?私」
時計を見てみると、結構な時間が経ってしまっていた。もう夕方になろうとしている。
「気にしないで下さい……あぁ、随分と顔色は良くなったようですね」
可符香の顔を覗き込んで、ホッと息を吐く命。
「……それで、どこまで話しましたっけね」
「あ…ッ!」
言われてハッとなる可符香。
彼女の中で導き出された結論を、今ならば口に出来る。

――そう、それを人は、恋と―― 

「―ぁあ…。そうです」
ふっと、可符香の瞳に力が宿る。薄い唇から漏れた声は、喜びで上ずっていた。

「私―私、先生の事が……好きなんです」

頬を桃色に染めて、潤んだ瞳で言うその表情は、まさに恋する乙女のそれであった。
思わずその台詞が、自分に向けられたものだと錯覚して、不覚にも照れてしまう命。

383:真昼が雪 54
07/10/02 19:52:20 jl7W5YLF
だがすぐにそれが弟に向けられたものと思い直し、一瞬でも高揚してしまった自分を叱り付けながら、命は気まずげに咳払いをした。
「そう…そうか…。そんな所だとは思ってたよ」
可符香はもう落ち着いたようで、さっきまでの不安定な様子とは一変して、真っ直ぐな瞳で命を見つめている。
「絶命先生は、先生がどうして入院を延ばしたのか知ってますか?」
「―人をおちょくる余裕は出てきたというわけですね」
さっき僅かにでも少女にときめいてしまった自分を内心で自嘲しながら、命はズレてもいない眼鏡を人差し指で直した。
「私も理由は聞いていないよ。やり残した事がある……としか」
「―そうですか」
可符香はやおらベッドから降り立ち、ペコリと一つお辞儀した。
「ありがとうございました。絶命先生」
「だからッ!―あーもう、こんな時まで……!」
反射的に噛み付きそうになるのを必死に自制して、ブンブンと頭を振る事でどうにか耐え忍ぶ。
「直接望に聞くなら、早めに行った方がいい。――もう……」
出口に向う少女の背中に、最後に掛けた命の言葉は、彼女を焦らせるには十分なものだった。


――もう、会えなくなるかもしれないから。


バタンッ。
扉が閉まる音と同時に、彼女が廊下を駆け出す気配。
足音が遠ざかったのを確認すると、命も静かな足取りで診察室を出る。
窓から下を見下ろすと、さっきまで自分をおちょくっていた少女とは思えない、必死な表情で掛けていく可符香の姿が見えた。

「――本当に、酷い男だな…我が弟ながら」

 その姿が見えなくなるまで、命はじっと、廊下に立ち尽くしていた。

 ◇ ◆ ◇ ◆


384:名無しさん@ピンキー
07/10/02 19:56:26 jl7W5YLF
短くてすみませんです…それにしてもやたら野郎率が高いSSだと最近気付いた。
何だかエロは無理に入れなくても大丈夫との声がありましたので、お言葉に甘えさせてもらいます。
さすがにこの状況でエロスは不自然やもしれんなぁと思っておりましたので。

385:名無しさん@ピンキー
07/10/02 20:07:50 E7JLkbVg
真昼さん連日乙です。

やだなぁ、エロは次のSSで入れればいいじゃないですかぁ。
真昼で号泣した後でラブエロお待ち申し上げます。



386:名無しさん@ピンキー
07/10/02 20:37:08 dcaWJPQi
新谷さん曰く、ノーマルでは先生攻めの方がすっごい萌えるらしいです。

387:名無しさん@ピンキー
07/10/02 20:40:44 x6ad+7U0
キミキスのちょっとおまけ劇場を観て、「先生とってもとっても大好き部」という電波を受信したんだけど、どうする?

388:名無しさん@ピンキー
07/10/02 20:49:32 dcaWJPQi
>>387
やるだけやってみようよ。と言ってみる。

389:名無しさん@ピンキー
07/10/02 21:15:02 +/CQLpsv
>>378
・゜・(PД`q。)・゜・
もうここんとこずっとこんな感じ
小出しでもいいから連日投下希望!

390:名無しさん@ピンキー
07/10/02 22:08:43 H4mOQZnR
相変わらず真昼さんの描写力は凄いし次どうなるか気になるぜ

それとツンデレラ続きはマダーーー?

391:名無しさん@ピンキー
07/10/02 22:18:29 x6ad+7U0
>>388 わっかたがんばってみる

392:名無しさん@ピンキー
07/10/02 23:23:01 h7u+bw0X
昼飯が食えなかったのは猫のせいだけじゃなかったのか!伏線だったのか…!!


真昼氏乙です!!続き楽しみにしてます!

393:名無しさん@ピンキー
07/10/02 23:24:36 dcaWJPQi
>>392
猫じゃなくて犬。

394:名無しさん@ピンキー
07/10/03 00:03:53 rjHMEq1w
>>390
待て、鬼畜先生の続きがまだだ


真昼氏GJ

395:名無しさん@ピンキー
07/10/03 00:24:11 zV1gS2Iz
>>394

鬼畜先生て、もしや前々スレだか前々々スレだかのあの鬼畜OP先生か?
あれは俺もずーーーーっとまとい編を待っているんだが・・・職人さんはまだこのスレにいるのだろうか

396:名無しさん@ピンキー
07/10/03 01:44:23 76BnoOEE
>>395
以前のスレでも言ったけどそんなに読みたきゃ直接要求して来いよ
↓のが作者のブログで作品載ってるから。
URLリンク(fujo.blog.shinobi.jp)

397:名無しさん@ピンキー
07/10/03 02:48:43 uZZrnJgG
>369
ちくしょう!気づかなかった!読みなが甘いのか。後
>219
ああ…なんだ…風が…やんだじゃねぇか…
いや言いたかっただけ

398:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:30:35 ccc4T3n1
週慢で出ていた加賀さんの話題に刺激されて軽いのを一本。
加賀さんと先生、あと可符香の3人のちょいエロコメです。いや、ただのコメかも…
少年誌に載せれる程度のことしかしてませんので、エロを期待する方、ごめんなさい。

399:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:31:41 ccc4T3n1
扉の前で、すーっと深呼吸をする。一回、二回…
大丈夫、ただの日直としてのお仕事なんだから。
粗相のないように、失礼のないように、落ち着いて…
「お邪魔します…」
ガラリと宿直室の扉を開けると、糸色先生の顔が見えて、少し心拍数が上がった。

ここが、先生のお部屋…

「加賀さん?」
「は、すいません!すいません!ぼーっとしちゃって!これ、課題です!」
ずばっ、と集めた課題のプリントの束を渡した。
「はい確かに。ありがとうございます。」
「そんな、恐縮です!すいませんすいません!お邪魔しました!」
また、先生とうまく話せなかった。頭が真っ白になっちゃって…
そんな情けなさから逃げ出すように、踵を返したとき。
後ろで、ゴホッ、という音がした。

400:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:32:44 ccc4T3n1
信じたくなかったけど、確かに聞こえてしまった。
振り返って見ると、先生がその口に手を当てている…やっぱり先生の咳だったんだ。
「もしかして私、くさいですか!?」
「はい?」
「だって先生、今、ゴホッって…すいません!すいません!」
「いや、そんなわけ…」
「こんな体で、先生のプライベートな場所に侵入して、異臭騒ぎを起こしてしまって!」
嫌われてしまう、いや、もう嫌われてしまったかもしれない。
今度は、まさに逃げ出すために、先生に背を向ける。
そのまま駆け出そうとした私の体を、がしっと抱きしめられた。
正面から。
「何言ってるんですか。愛ちゃん、全然くさくなんてないじゃないですか。」
「あなた…いつの間に現れたんですか?」
あまりに突然な登場に、私も先生も驚かされた。

401:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:33:55 ccc4T3n1
「くさいどころか…すんすん…愛ちゃん、すっごい良い匂いですよ。」
「やっ…嗅がないでください!くさいですから、私くさいですから!」
私の首に顔を近づけて、くんくんと嗅いでいる。
息がかかって、むずかゆいし、恥ずかしい。
「ほんとに良い匂いなのにー…あ、先生も嗅いでみてくださいよ。」
先生に?そんなの考えただけでも、どうにかなってしまいそうだ…
「だめ、だめです!先生にそんなこと!」
「でも、においの感じ方って男女で違うらしいですし、男の人の意見も聞かないと。」
「…え、いやでもそれはちょっと…身動きの取れない嫌がる女生徒を嗅ぐ変態教師、と世間に…」
「そうですかぁ…先生ってば、愛ちゃんのにおい、嗅ぎたくないんだって…」
頭の中に大音量で、ガーン!と言う音が鳴り響いた。
「…」
「あ、愛ちゃん黙っちゃった…傷つけちゃいましたね、先生。」
「私のせいなんですかあ!?」

402:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:34:27 lPK6XN2i
くさっ!

403:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:34:58 ccc4T3n1
「さあ、先生!愛ちゃんのためですよ!」
そう言って、私の後ろ頭の結んで房になった部分を押し上げる。
そこを嗅いで、ということらしい。
どうあっても離してくれそうになかったので、私は、もう抵抗するのは諦めていた。
「ああ、PTA様に見つかりませんように…加賀さん失礼します。」
ひあ、と声が漏れた。そんな私を見ている彼女は、なんだかいつもより嬉しそうだ。
くんくんと鼻を鳴らす音と、うなじの辺りの空気の流れを感じ、顔が紅潮する。
恥ずかしすぎて、視界がチカチカした。でも、先生は…先生は、なんて言ってくれるんだろう?
怖いけど、後ろから聞こえる声に耳を澄ました。

「うん。くさいだなんて、とんでもありません。良い匂いですよ。」

「…愛ちゃんの匂い…先生好きだって…よかったね…」
耳元で、私だけに聞こえるように小声で囁かれた。
「おお、愛ちゃんの力が抜けていく!」
二人の言葉を受けて、足に力が入らなくなってしまった。そのまま畳にへたり込む。

404:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:36:08 ccc4T3n1
「落ち着きましたか?」
「愛ちゃん大丈夫?」
座りこんでしまった私に、二人が声をかけてくれた。
先生は、ちょっとだけ顔が赤くなっていた。
「あ…はい、大丈夫です。すいません、ご迷惑をおかけして。」
「愛ちゃん、咳なんかであんな気にしなくていいんだよ。」
「そうですよ、私が保証します。」
さっきの先生の言葉のおかげか、二人の言葉が素直に入ってくる。
「ありがとうございます。」
「うんうん、愛ちゃんは良い匂い。」
また、くんくんと嗅がれる。くさくないにしても、やっぱり恥ずかしい。
「…すんすん……あれ?愛ちゃん…愛ちゃんの手、カニのにおいがする。」

予想外の発言に、私と先生は一瞬言葉を失った。

405:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:37:02 ccc4T3n1
昼食に食べたカニだろうか、きっと私なんかが、たらばがにを食べたから、バチが当たったんだ。
「すいません!すいません!カニくさくてすいま」
はぷっ。
「ひゃん!」
唐突に指をくわえられた。
「ちょ、あなたいきなり何やってるんですか!?」
「カニの味がするかなー、って。しませんでしたが…もう一度やってみます。」
かぷっ、ちゅぅー。
「だめ、だめです!私の指なんて、カニのにおいのするような不潔な…やっ…あぁ…」
「そんなカニの味なんてするわけ」
「あ!今、一瞬カニの味がした気がします!」
「ええー!?」
「あ、疑うんですねー。なら先生も試してくださいよ。」
先生に指を?そんなの考えただけでも、どうにかなってしまいそうだ…

なんだか、似たような情景をほんの少し前に見た気がする。

406:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:37:52 ccc4T3n1
……
宿直室の畳の上に、望と可符香が座りこんで話している。
「愛ちゃんは、くさくない、汚くない、って言いたかっただけなのに、大変な事になりましたねえ。」
「煽ったのはあなたでしょうが…」
二人の視線の先で、愛は望の左手を握り、左半身を下にして寝ていた。
先ほどまでに比べ、衣服が乱れている。靴下は脱がされたようで裸足だ。
「そういう先生だって、夢中になってたじゃないですか。」
「…カニを食べるときは無口になる、とでも言いましょうか…」
適当なことを言って誤魔化した。
「その例えはどうかと思います。でも、愛ちゃん…可愛かったですからねえ。
 もう途中から、ずっと先生の指くわえて離さないし、先生が間違い犯しちゃったのも仕方のないことです。」
「やっぱり間違いなんですか、コレ…」
いわゆるどよんど、と呼ばれる空気が流れる。視線を落とし、望はため息をついた。
「でも、これでもう愛ちゃんは大丈夫ですね。加害妄想に取り付かれても、先生がいますから。」
「そうだといいんですが…」
「やだなあ、気付いてなかったんですか?愛ちゃんったら、さっきからずっと寝たフリしてるんですよ。」
びくっ、と愛がその身を小さく震わせた。

407:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:38:55 ccc4T3n1
「え?」
「先生に甘えてるんですよお。もう、身も心も預けんばかりにべったりと。」
言われて愛を見やると、相変わらず目は閉じていたが、少し顔が赤くなっていた。
「さて、私はお先に失礼しますね。さようなら先生、甘えんぼの愛ちゃん。」
愛の頬を、指でふにゅっと押しながら、別れの挨拶をして、可符香は帰っていった。


宿直室には、未だ寝たフリをする愛と、そんな彼女にどうすべきか迷う望が残された。
愛は、望のお気に入りの生徒である、いや、もはやそれ以上だ。
だが、本当に自分でいいのだろうか…それ以前に、可符香が言ったことも確証がない。
眉間にシワを寄せて悩んでいると、繋いだ愛の手が少し震えたような気がして、彼女を見た。
愛のハの字の形をした眉が、先ほどより角度が上がっている気がする。
その不安そうな顔を見ていると、自然に顔が緩んでしまった。
天井を見上げ、ふぅ、と息を吐き、数秒の間目をつぶる。
そして、望は決意を固めた。

408:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:42:32 ccc4T3n1
おしまい。

タイトル入れるの忘れてました。ていうか付けてませんでした。
とりあえず、「クンクンカフカ」で。

409:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:56:50 lPK6XN2i
『蟹好戦 下から目線ですみません』の方がいいなあ。

410:名無しさん@ピンキー
07/10/03 04:04:41 eYkwyLFA
早起きしてみるもんだなぁ…GJ。ほのかにエロいんだけど不思議と和んだ。
ところで愛ちゃんは昼飯に蟹持参したのかと、どーでもいい事が気になったり。

411:名無しさん@ピンキー
07/10/03 09:22:38 OyQOYB9q
先週、今週のマガジンで、再び俺の中の芽留萌えに火がついた
というわけで、芽留SS希望

412:名無しさん@ピンキー
07/10/03 13:13:36 dRXZ5Ud3
言わなくても済む事なんだろうけど言わせてくれ。
漏れ、エロパロSSをナメてた。完全にナメてた! 
軽く見てた!もっと早く見にこればよかったと今後悔してる
真昼さんすごいよ、泣けてくる・・・・・orz

いままでのss、保管庫にあるんよね?
こんな漏れに住人さんたちオススメのssって何か教えてもらえんでしょうか?

413:名無しさん@ピンキー
07/10/03 15:14:29 hG2WNR97
臼井君視点で先生と生徒たちの酒池肉林が読みたい

414:名無しさん@ピンキー
07/10/03 16:35:49 jnf8X16+
可符香神作品が豊作リッチな今…スレ汚しにしかならないでしょうが、一本望×可符香
を投稿させて戴きます。エロなしで絶望的ですがご容赦下さい…どうか…

415:ぶれた慕情 前篇1/5
07/10/03 16:37:12 jnf8X16+
恋が壊れるには、ほんの少しの時間があれば十分です――


 こんな言葉を彼女が教科書の片隅に書いているのを誰かが見たら、さぞ驚
く事だろう。何しろ、彼女は超ポジティブ思考の持ち主とされている風浦可
符香なのだから。

 彼女が授業中に、こんな絶望的な落書きをしているのはおかしいと思うか
もしれないが、これも彼女一流のポジティブシンキングと考えられる。

 なぜなら、彼女は恋の崩壊を切望しているからだ。

 彼女の属するクラス――2年へ組にいる多くの女子は恋をしている。そ
れも、共通の相手に。
 風浦可符香は、それらの恋が壊れてしまえば良いと、いつも思っていた。
 彼女もまた、皆と同じ相手――担任の糸色望に恋をしていたから。

416:ぶれた慕情 前篇2/5
07/10/03 16:38:10 jnf8X16+
 可符香の恋は、誰よりも早かった。
 前髪のトンネルを開けられ望と対面したひきこもり少女より、心中の告白
をされたストーカー少女より、寝台を共にしただけで結婚を迫る几帳面粘着
質少女より…
 そう、桃色ガヴリエルの下で初めて出逢った時からずっと、恋をしている
のだ。

 しかし、幼い頃から沢山辛い目に遭い、いつしか自分の心を閉ざして別の
自分で表面を覆った彼女は、まともな愛情表現が出来なくなっていた。

 好きなものにいたずらがしたくなって、すぐに炎ざたを起こしてしまう三
珠真夜や、嫉妬のあまり猟奇的な行動に走ってしまう木津千里以上に、可符
香の愛情表現は下手だった。
 その結果、可符香は電波化し、いつしかクラスの黒幕的存在として、密か
に皆から恐れられるようになってしまった。

 無論、恋しい糸色望からも、である。

「あなたは本当に、心のスキマに入り込むのが上手ですねえ」
 望にそう言われた時、彼女はいつも通りの作った笑顔で応えた。だが心の
中では、彼女は幾筋もの涙を流していた。それを、言った当人の望はおそら
く気付いていないだろう。

417:ぶれた慕情 前篇3/5
07/10/03 16:38:51 jnf8X16+
「可符香さん、大丈夫…?なんだか顔色がすぐれないようだけど…。授業も
上の空だし…。」
 前の席からの声。木津千里が心配そうに、振り返ってこちらを見ている。
普段は本当に委員長キャラなのだ。
 可符香は筆箱でそっと教科書の端の落書きを隠し、
「いやだなぁ、私が体調を崩す訳がないじゃない」
 いつもの笑顔で答えた。
「そう…?それならいいんだけど…。本当に調子が悪かったら、無理しちゃ
駄目よ。」

 また黒板の方へ向き直った千里の、流れるようなストレートの黒髪をぼん
やりと眺め、可符香は泣きたい気持ちになった。どうしてこんなにも、素直
になれないのか…

 泣きたい気分だが、彼女の表面を覆って乗っ取ったかのような笑い仮面の
瞳からは、涙など流れてこない。

(千里ちゃん…私、本当は重い病気なの…
 お医者様でも、草津のお湯でも治らない……)

418:ぶれた慕情 前篇4/5
07/10/03 16:42:00 jnf8X16+

人として軸がぶれている。

だから報われない。

日に日に想いはつのるばかり。

明るく振る舞っているのもそろそろ辛くなってきた――

 下校の時刻を迎えた。
 ショート・タイムの終わりを告げる鐘が鳴ると共に、望はそそくさと教室
を出て行った。先程、可符香に優しい言葉をかけてくれた千里も、先生恋し
さのため危険な人になる頃だからだ。
 ストーカー少女・常月まといは驚くほどあざやかに望の背中にくっついて
するりと教室を抜け出した。望も気付いていない程だろう。

(1秒でも長く、先生の顔を見ていたい…)

 そうは思うのだが、今の可符香にはとても絶望先生取り合いバトルに付き
合う気力はない。
 しょんぼらと鞄を抱えて下駄箱へ向った。

「あっ…」
 可符香は思わず立ち止まって声をあげた。しかし、その声はかすれるよう
に小さく、おそらく下駄箱の前で靴を履き替えていた日塔奈美には聞こえな
かったろう。

(あのアピール合戦には参加しないんだ。やっぱり普通…?)
 などと考えていると、可符香に気付いた奈美は弾んだ声で言った。
「あ、カフカちゃん。一緒に帰ろ♪」
「ぇ…あぁ、うん…」

419:ぶれた慕情 前篇5/5
07/10/03 16:42:55 jnf8X16+
 夕日がガードレールをオレンジ色に染める黄昏時。可符香は普通少女・日
塔奈美と肩を並べて歩いていた。

「ねえ…カフカちゃん」
 ふいに奈美が口を開いた。
「カフカちゃんは…好きな人とかいるのかなぁ…?」
 あまりに普通の女子高生らしい質問に、カフカはおもわずクスッとした。
「奈美ちゃんは先生のことが好きなんだよね?」
「えっ…やだ…そんな…」
 夕日の射す中でも分かるほどに顔を赤らめて否定する奈美。本当に標準的
な反応だ。

「奈美ちゃんはいいな、普通の恋愛ができて…」
「ふつ…」
 奈美は普通という言葉に反応したが、可符香の様子がいつもと違うのに気
がついて、お決まりの台詞を出しかけて止めた。そう、普段の周囲を疲れさ
せるような元気さが、今日の可符香には見られない。
「カフカちゃん…?」
 心配そうな奈美の眼と、憂いを含んだ可符香の瞳がかち合った。

 その時、可符香には何故だか、白無垢の花嫁衣裳を着た奈美の姿が見えた。
 可符香の心のどこかに、「先生はこの普通少女に傾くかもしれない」とい
う不安があったのかもしれない。実際、自分が男だったとして、あのクラス
の女子の中から、一番嫁に貰いたい人を選ぶことになったら、可符香はおそ
らく、他のどこか問題のある人たちより、奈美を選ぶだろう。大草さんも良
いかもしれないが、彼女は既に人妻だ。

 可符香は固まったように立ち止まった。いや、事実、表情は固まっていた。

「カフカちゃん?どうしたの…?」
「…忘れてた……私、こっちに用があったの!」
 可符香はあくまで明るく、右へ曲がる道を指差し、
「じゃあ!」と、奈美に手を振って走り出した。

 何が何だか分からず、ぽかんとしている奈美を振り向きもせず、可符香は
一心不乱に走った。
 今、奈美と歩いてきた通りの一本脇の道に入り、学校へ向う。

(先生……先生………会いたい!)

420:名無しさん@ピンキー
07/10/03 16:47:11 jnf8X16+
ちょっとここで一段落…
後篇はあと少しで出来ます。

本当に、他の方の作品と見比べて絶望的になってきます…

421:名無しさん@ピンキー
07/10/03 17:28:20 qEJbT4JL
>>420
GJ!カフカが普通より普通っぽいwこれからどうなるのか続きが楽しみだ


>>412
個人的に一番好きなのは173氏(保管庫では7-222ね)の『理不尽な神様』だが
真昼氏のSSが好きなら430氏のが合うんじゃね?

422:名無しさん@ピンキー
07/10/03 17:59:27 dRXZ5Ud3
>>421
サンクス! 430氏読んできます。

423:名無しさん@ピンキー
07/10/03 18:02:52 76BnoOEE
>>413
何視点かは聞き取れなかったけど、君がそれになりきれば全く問題ない。

424:名無しさん@ピンキー
07/10/03 18:07:18 ap+zcvES
そして今日も真昼氏投下を待って正座をするのであった

425:名無しさん@ピンキー
07/10/03 19:29:32 2uEcAx1y
連日投下が義務付けられかねない雰囲気に絶望した!真昼です。期待が…期待が恐れ多くも重い…!
7レスほど消費いたします。ああ…いい加減書き溜めてた分が底を付いてきたぞー。

426:真昼が雪 55
07/10/03 19:30:43 2uEcAx1y

「―そうですか、兄さんに」
記憶の海に溺れていた可符香の思考は、望の声によって浮上した。
望は自らの顎に手を当てて、何事か考え込んでいる。
「それじゃあ、私が明日には入院しなければならない事も、知っているんですね」
「知ってます」
「では何も、怒ることはないじゃないですか」
「怒ってません」
そう、彼女は怒ってなどいない。
ただ、日頃あんなに他人の同情を集める事に必死な彼が、どうして病を隠してまで学校に来たのか。
そしてそれをするだけの価値がある、「やり残した事」が何なのか。
それが気になって仕方がないだけだ。
「先生―先生のやり残した事…もう、やれたんですか」
苦痛を嫌うこの男が、それに自ら進んで耐える事を選ぶほどの事。
気にならない筈が無い。まして、それが心寄せる男の事であれば、尚更だ。
可符香の真剣な問いに、望は柔らかく微笑みながら答える。
「いいえ、残念ながら。何せその相手が、今まで学校に居てくれませんでしたからね。
 それに私も、一時限目が終わった後体調を崩しまして……宿直室で休んでいたんですよ」

その際に、交に自分の病の事も伝えてあった。

『叔父さんの馬鹿』

それだけ言って顔を伏せた甥の髪を、ゆっくりと撫でた感触を思い出す。
彼の事は、小森に任せてある。他の生徒たちも、何だかんだ彼の面倒は見てくれるはずだ。
寂しい思いはさせずにすむだろう。

「……人に関係する事なんですか?」
「ええ」
「――誰に、関係する事なんですか?」
望はふと、少し戸惑うように口を噤んだ。
その沈黙に滑り込むように、可符香は重ねて問い掛ける。

「――やり残した事って、なんですか?」


427:真昼が雪 56
07/10/03 19:31:55 2uEcAx1y

問われて、明確にそれが言葉に出来ない事に戸惑う望。
頭の中で伝えたい事を整理しながら、ゆっくりと、口を開いた。
「―伝えたい事があります。貴女に」
「……私に?」
まさか自分に関係する事だとは思っていなかったようだ。
可符香はキョトンと目を丸くして、自分を指差す。
望は頷いた。
「こういう状況で言うのもなんですけどね」
「なん、ですか?」

「好きですよ」
ともすれば、それが告白だと気付かないほどの自然さで、彼は言った。

「…は?」
何を言われたのか咄嗟に理解できず、思考が停止してしまう。
何か、何かとても大変な事を言われた気がするのだが。
「好きなんです。貴女が」
そんな可符香に、今度は染み入るような深い声音で、望は繰り返し愛を伝える。
ああ、告白されたのか、と。
ようやく理解した頃には、身体の方が先に反応したのか、可符香の頬は朱に染まっていた。
「……さ、さらっと言わないで下さい」
「だって、じっくりとっくり愛の告白なんて、照れるじゃないですか」
「これはこれで困ります。言われた方は」
誰かの言葉に、これほど困惑するのは初めてだった。
だって、理由がわからない。
確かに思わせぶりな態度も取った。けれど、まさかアレで好いてもらえるとは思っていない。
彼が自分に好意を示した理由がわからない。その告白は彼女にとっては、あまりに唐突過ぎた。
それも、自らが彼に好意を持っている事を自覚した矢先である。
幸運を通り越して、むしろ何かの罠じゃないかと勘繰ってしまう。
「好きとかじゃないって、こないだは言ってたクセに」
「言いましたね―でも、もう……私から素直にならないと、貴女も素直になってはくれないでしょう?」
ああ、アレは本当にツンデレだったのか。
という事は、今は彼のデレの部分を垣間見ているという事なのだろうか。
思考の端で冷静にそんな事を思いつつも、熱くなる頬はいっこうに冷めてくれない。
「私は貴女に、いつも自然に―あの時見せてくれたような、あんな笑顔で居て欲しいんです」
自分で抑制が効かないような、心の底から込み上げる笑顔。
そんな笑顔が、自然と彼女の顔に浮かぶようになれば、それはどんなに素敵な事だろう。
「……常に爆笑してればいいんですか?」
あまりにも真っ直ぐな望の目に耐えかねたようにそっぽを向いて、照れのあまり軽口を叩く可符香。
その様子が、いつもの余裕綽々なそれより何倍も可愛らしく見えて、望は笑みを隠しきれなかった。

428:真昼が雪 57
07/10/03 19:37:21 BtOwsmAf
「茶々を入れない。そういう事じゃなく、本心から笑っていて欲しいって事ですよ」
「……話が見えてきません。私は先生のやり残した事が聞きたいんです。
 それがどうして、そこに繋がるんですか?」
はぐらかされたと取ったのか、不満そうな顔で問い質す可符香の頬は、まだほの赤く染まったままだ。
望は少しだけ困ったように沈黙を挟んでから、
「この間、話しましたよね。貴女の―怖がっているものの事を」
「……私が、逃げてるって話、ですか」
「そう……、あの話を、このまま有耶無耶にしてはいけないと、思ったんです。
 風浦さん。貴女が避けているソレは、いずれ――」

「わかってます」

いずれ貴女を、酷く傷つける事になる。
続く言葉は、強く放たれた可符香の声に断ち切られた。
「わかってます…先生。もう、その話には―決着がついちゃってます」
望は驚いて、眼鏡の奥の瞳を見開いた。
可符香はもう、笑顔が歪むのを隠そうともしなかった。
瞳は潤み、唇は震えて―今にも、泣き出しそうだ。
「私もう、あの時先生の言葉を否定できなかったから……。
 だから、もう―私先生に、言い負かされちゃってるんです」
糸色医院での葛藤の末に、彼女は自らの故障を認めていた。
だがそれも、こうして改めて望に言われるまで、ハッキリとは認められなかった。
こうして望を前にして、会話を交わし、心の柔らかい部分に触れられて。
彼女はますます言い逃れが出来ない状況に追いやられていた。
どうにか笑顔を崩さずにすむのなら、それにこした事はなかったけれど、どうやらもう無理そうだ。

「私は―きっと、怖がりです…人よりずっと、怖がりです。
 必死になって嫌なモノを見ないフリして……そうしないと、駄目になっちゃうから」

子供の彼女にはあまりに凄惨な、父の亡骸を前にして。
いっその事その時、母親のように壊れてしまえたら、楽だったかもしれない。
けれど彼女には、戻りたい日常があった。

毎日一緒に居てくれる、楽しい物語を聞かせてくれる、幼馴染との日常が。

おかしくなっていく日常の中で、彼との時間だけが、彼女に残された幸福だった。
耐えなければいけない。自分までおかしくなってはいけない。
自分は不幸などではない。不幸な事など何一つあるものか。
降りかかる数々の不幸に、幼い少女が耐える為には、そんな歪な自己暗示くらいしかなかった。
その無理矢理さに薄々気付いていたけれど、それでも―直視さえしなければ、彼女の心は耐えられた。
彼の許から、ずっと遠くに引っ越す事になった時は、さすがに挫けてしまいそうだったけれど、
最後に過ごした彼との優しい思い出は、再会を果たすその時まで、彼女を支え続けた。
自分流の世渡りのコツを覚えて、どんどん生きるのが楽になっていった。
軋んでいた心は硬化していって、痛みも麻痺し始めていた。

そんな中で出会った、糸色望という、くだらない男。
そんなくだらないと思っていた男に―自分は今、どうしようもなく恋している。

そしてその想い人は、今――


429:真昼が雪 58
07/10/03 19:38:49 BtOwsmAf

「認めます…私、弱いです。駄目なんです…認めます」

こんなにも弱い自分を、暴き出しておきながら。

「認めますから……、だから――」


――いなく、ならないで下さい―― 


気が付けば、もう自分はとっくに泣き出していて、いつの間にか暖かな両腕に抱きしめられていた。
ポンポン、と。まるで母親が子供をあやすように、可符香の背中を叩く望。
抱き締められる安心感が、よりいっそう彼女の涙腺を緩ませたのか、
可符香は肩を震わせて、何も言えなくなるほどに泣いている。
望は思っていたよりも随分と小さな少女の身体を、より強く抱きしめた。
「―それで、いいんです」
穏やかな声。
「泣いたって、弱くたっていいじゃないですか。私なんか、毎日泣いてる気がします」
しゃっくり上げる可符香の髪をゆっくりと撫でながら、望はそっと言い聞かせるように言葉を続ける。
「いつか泣き止んで―その先に笑顔があるのなら。
 泣く事も悪い事じゃありませんよ、可符香さん」
「―ッお、お願…しま…ッ、わた、私、が…ッ…」
 
――私が泣き止むまでは、せめて、一緒に居てください。

そう言おうとするも、上手く呼吸が出来なくて、言葉にならない。
日頃泣き慣れない所為か、息継ぎままならないほどだ。
「大丈夫です、大丈夫ですよ」
優しく背中や髪を撫でられると、少しだけ呼吸が楽になった。
それでも涙はあとからあとから湧き上がってきて、絶える事なく彼女の頬を濡らし続ける。

「大丈夫―ずっと、一緒に居ますから」

その言葉が真実だと、今だけは心から信じていたい。
可符香は痛い程に望の身体を抱き締め返した。
このまま彼が、どこにも行ってしまわないようにと。


430:真昼が雪 59
07/10/03 19:40:12 BtOwsmAf


どのくらい咽び泣いていただろうか。
いつしか彼女の嗚咽は小さくなっていき、乱れた呼吸も落ち着きを取り戻していた。
彼女が泣いている間、望はずっとその髪を優しく撫で続けた。
「可符香さん」
可符香を抱きしめる望の腕から、ほんの少しだけ力が抜ける。
涙や鼻水でグチャグチャになった顔を上げて望を仰ぎ見ると、彼は予想以上に優しい表情をしていた。
彼はやおら可符香から身体を放す。
彼女がずっと顔を押し付けていた望の胸元は、涙と―少々不潔ではあるが、鼻水で濡れている。
「っぇく―ごめんなさい、先生」
可符香はそれに気付くと、まだ少し落ち着かない呼吸の隙間をぬう様に謝って、
ポケットからハンカチを取り出し、望の胸元を拭おうとした。
「私より先に、まず自分の顔をお拭きなさい」
延ばしたハンカチを持った手を掴まれて、自分の顔の前まで導かれると、可符香はそれに逆らわず、乱雑に自分の顔を拭った。
彼女が顔を拭いている間に、望は自前のハンカチで胸元を拭う。
涙だけならともかく、さすがに鼻水を付けたままというのは気分の良いものではない。
まぁそれが愛しい少女のものとなれば、汚らしいという気持ちは不思議としないのではあるが。
「可符香さん」
お互いにハンカチを仕舞い終えると、望はポンポンと、可符香側の空いたベッド脇を軽く叩いて見せた。
「ずっと立ったままではなんでしょう?座りませんか」
ずび、と鼻を啜りながら、コクリと頷く可符香。
彼女がベッドに体重を掛けると、僅かにベッドが軋む音がする。
望は彼女が窮屈な思いをしないよう、自分の座る位置を調整しながら、彼女の顔をのぞき見た。
目尻と鼻を赤くして、目はまだ潤んでいる。
そんな自分の顔を見られるのが気まずいのか、可符香は望の視線に気付くと不満気に眉根を寄せて、すぐに俯いてしまった。
その様子が無性に愛らしく思えて、望は思わず可符香の肩を抱き寄せた。
「―何だか先生、気安いです」
「調子に乗ってますか?」
「乗ってます。凄く」
「嫌、ですか?」
可符香は答える代わりに、ゆっくりと望の身体に体重を預けた。

431:真昼が雪 60
07/10/03 19:41:30 BtOwsmAf

二人はしばらく、そのままお互いに触れ合ったまま、何も語らなかった。
次第に可符香の瞼が、うつろうつろと降りてくる。
「眠いですか?」
望の声にハッとなり、慌てて遠くなりかけた意識を戻す可符香。
「だ、大丈夫です」
「無理しなくていいですよ」
そう言うと望は、ゆっくりと可符香の身体を横たわらせて、自分もベッドに身体を預けた。
「いっそ一緒に寝ちゃいましょうか」
「女の子に『一緒に寝よう』なんて、先生破廉恥なんですね」
「破廉恥で結構―ですがまぁ、今は本当に……一緒に寝るだけで十分です」
お互いに至近距離で顔をつき合わせて、二人はクスクスと笑い合った。
まるで猫が甘える時のように、望の胸に顔を寄せる可符香。
望もまた、それを受け入れるように彼女の身体を抱きしめた。
「ああ―こうしてると、何だかとても落ち着きます……」
望の呟きに、それはこちらの台詞だと胸中で呟きながら、可符香はよりいっそう望に身体をすり寄せる。

「そういえば」
「はい?」
「いえね、どうでも良い話なんですけど……貴女、こんな時間にどうやって学校に入って来たんです?」
「……本当にどうでもいいですね」
「答えたくなければかまいませんよ」
「―入り口は一つとは限らないんですよ?先生」
可符香は悪戯っぽく笑って、こしょこしょと望に耳打ちした。
「なるほど、あそこですか。私も使わせてもらおうかなぁ」
「先生宿直室暮らしなんだから、そんなの必要ないじゃないですか―ん?」
ふと可符香の中で、何かが引っかかった。
「そういえば先生、最初並木道で倒れてた時……どうしてあんな時間に学校の外に居たんです?」
「ああ、あれは……お恥ずかしながら、朝帰りってやつですよ。
 久しぶりに一人で飲みに行ったんですが、気付いたらゴミ捨て場で寝てまして……」
「先生でもそういう事あるんですね」
駄目な大人、とからかうように可符香が言うと、望は困ったような笑みを浮かべた。


432:真昼が雪 61
07/10/03 19:43:43 BtOwsmAf

次第に可符香の口数は少なくなっていき、眠気が彼女の意識を遠くしていく。
―眠りたくない。その一心で必死に瞼をこじ開けるのだが、それも限界を迎えていた。
そんな可符香の様子に気付いた望は、苦笑しながら可符香の髪を撫で付ける。
「寝てもいいんですよ」
「……でも……」
寝て起きた時、望はもう―きっと自分の傍には居ない。
「―大丈夫ですよ」
そんな可符香の心の声が聞こえたかのように、望は言った。

「ずっと一緒ですから」

その声があまりに優しくて、可符香はまた泣き出しそうになった。
「―先生」
「うん?」
望の着物を掴む可符香の手に、少しだけ力がこもる。
「……言い忘れた事が、ありました……」
眠い。とても眠い。
もう殆ど閉じかけた瞼の隙間から、必死に彼の顔を見ようとするのだが、
彼女の意図に反して、視界はどんどん閉じていく。
(まだ……まだ私、大事なこと―伝えてないのに)
眠ってはいけない。どうしても、言わなければならない事がある。
だというのに、意識はどんどん霞がかかるように、白く―


「私も――先生の事――」


プツン、と。何かの電源が切れるように。
彼女の意識は途切れた。

「――おやすみなさい、可符香さん」
意識のない彼女に、それが聞こえたかどうかはわからない。
だが、自らの腕の中で眠る少女は、その言葉に僅かに瞼を震わせた。


この声が届けばいい―心底そう願いながら、望もゆっくりと瞳を閉じた。


柔らかな体温に包まれて。
彼女はその夜、とても幸せな夢を見た。



433:名無しさん@ピンキー
07/10/03 19:47:13 BtOwsmAf
一区切りです。次の投下はちょいと先になると思われ…まだ書けてないんだもの…。
次はラスト一歩手前くらいまで行けるといいなぁ―いや、自分でハードル上げてどうする。

434:名無しさん@ピンキー
07/10/03 19:54:02 v395rOVM
真昼氏GJ!!
目から塩水が出てきた…

435:名無しさん@ピンキー
07/10/03 20:04:14 4Vtm9mzb
真昼さん頼むから俺の可符香を幸せにしてやってくれ

436:名無しさん@ピンキー
07/10/03 20:36:38 KIuioLm8
>>433
無理するな

437:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:30:45 /W/Eh43v
>>433
ご自分のペースで、無理なさらず。


438:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:36:26 OcOubHzF
もうどうせ身バレするんで430ですが、
真昼氏……これは、これは…MADのあのシーンですねぇぇぇぇええ!!
すでに号泣し始めてるんですが。
あの、前回ものすごプレッシャーかけちゃいましたが、
すいませんでした!続きはゆっくり書いてください!!
いつまでもお待ちしますので…って、これもプレッシャーかぁ…。

あと、
>>397
知ってる人がいた…!ちょっと嬉しかったです。

>>412>>421
そ、そ、そうなの!?


439:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:08:31 /W/Eh43v
>>438
私も430氏を勧めますね。

・・・・・・え、と、身バレさせてスマソw

440:名無しさん@ピンキー
07/10/03 23:30:21 pPfTnlJl


読経が聞こえる。


小さな抑揚と短調な繰り返しが、その収容人数には不釣り合いに大きな堂内に、反響しては消える。
地獄の底から聞こえる様でもあり、お迎えの声にも例えられるそれは、私に(錯覚かも知れないが)余裕をくれる。
一人一人が発する、一音一音の文字。
何秒も無い命に海溝の寂寥を乗せて、
消える。
どこまでも、どこまでも、
退廃的なのに、悠久を感じさせる、華美な感情。
感情は淑々と、焼香から伸びる、白い煙となって、
静かに、儚く、確かな存在感を以って、目を閉じている私の境界を消していく。
死人のために創られた言葉は、それを聞かせる対象外の者にも、自ずと、それらに纏わる、又それに見合う空気を創り出させるしい。
例えその対象は、穢れとして忌み嫌われても、経が、この焼香の香りと相俟って一層強めるのは、やはり、この死人の空気なのだ。
幽玄でなお清明な、常世の空気を。
だが、多分、私はこの空気を創ってはいない。
我ながら卑屈に、頭の中でほくそ笑んだ。
不敬とは言わずも、機械的に題目を唱えるだけの自分に、きちんとした信仰心があるかは甚だ怪しい。
自己弁護すると、恐らくここにいる殆どの人間が、かけらの信仰心と儀礼という、絶対の強制力しかここに居る理由を持たない人間ばかりだろうと、私は邪推している。
しかし同時に、改めて宗教に恐怖する。
こんな気の遠くなる程遠い親戚の法事なぞに参加している自分も、彼の強制力に敵わないからこそここにいる。
洗脳にも似た『弔う心』を、私達は幼い頃から教育されてきた

441:名無しさん@ピンキー
07/10/03 23:38:08 pPfTnlJl
うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
誤投下してしまいました!すみません!
未完成の物などでお目汚ししてすみません!

442:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:03:21 iPVjjHFU
未完成とか以前にこれは絶望先生なのか?
あとsageような

443:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:13:14 5TadMmyT
今週は芽留より藤吉さんの姫にやられた
豊作とはいえ藤吉姫ネタはさすがに期待しても来ないかな

444:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:18:43 ixEeFL3J
今週の話は、芽留は口だけ毒舌だと思ってた俺にとっての鬼門
あれが本性だったのか!信じてたのに!きっと根はいい子なんだと信じてたのに!

禁止ワード「だがそれがいい」

445:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:57:09 dYePieKE
世界はすずさまとともに!

446:名無しさん@ピンキー
07/10/04 02:02:17 AbzvlB2/
>>443
晴美姫の姫初めは…さすがに季節はずれか

447:名無しさん@ピンキー
07/10/04 02:21:43 ldpNjvtj
>>442
誤投下って言ってるじゃんか。要するに誤爆、間違いだ。
編集さん。そう言う事だから保管庫に>>440のはいれないでね。

448:名無しさん@ピンキー
07/10/04 04:09:18 RshqSE8L
だがそれがいい

449:名無しさん@ピンキー
07/10/04 04:29:19 GN2DkX/N
可符香好きな俺にとってはこのスレはまるでエルドラドですね
これはもう恋に違いないね!絶対!!

450:名無しさん@ピンキー
07/10/04 09:20:32 tVKpTwWd
ま、恋のきっかけの99%は希望じゃなくて、勘違いだけどね。


451:433
07/10/04 19:28:07 6zdSchYF
>>436,>>437
つくづくスレ住人の優しさに目汁が出る…ありがとうごじゃります。

>>438
>MADのあのシーン~
あばば、そんげな細かトコまで見てくれて嬉しいやら照れるやら。
蛇足ですが他にも元ネタ意識してるシーンがあったりしますが、
話の進行上多少(夕方のシーンが夜になってたり)は違ったりしてるんで、あまり気にせず見てもらえればと

452:430
07/10/04 20:00:46 phF+9Lop
こんばんはです。

>>451
真昼さんだー!
そうか、MAD観ながら読み返してみるのもまた一興ですね。
って、そんなことしたら絶対に泣くけど(・ω・。)

>>443さん
自分も今週の藤吉姫にやられたクチです。
というわけで、先生×藤吉姫です。
思い切りパラレルですので、苦手な方はスルーお願いします。

敬語の使い方がめちゃくちゃですが、気にしちゃいけない。


453:絶望・草双紙 1/9
07/10/04 20:01:52 phF+9Lop
ここは、さるお大名の江戸屋敷。
先日、目黒ですっかりBL本にはまってしまった晴美姫は、
今日も今日とて部屋一杯にBL本を広げ、熱心に鑑賞されておりました。

と、ふすまが開いて
「姫。お作法のお時間です。」
そこに現れたのは、姫の教育係の糸色望卿でございます。

この御方は公卿の家のご出身ながら、公家の常として身代が苦しく、
晴美姫の教育係として、日々の禄を得るお立場にございました。

卿は、姫の部屋に散らかるBL本を見て目を剥きました。

「姫…こ、これは何なんですかあっ!」
「ああ、これは目黒で調達したBL本というものじゃ。
 やはりBLは目黒が一番じゃな。」
姫はにっこりと笑顔を浮かべて、卿をご覧になりました。

卿は、姫が見ているBL本のページをちらりと見て、天を仰ぎました。
「絶望した!一国の姫ともあろうお方が、
 このような下劣な本を嬉々として読まれていることに絶…」
「のう、卿。」
姫は、卿のお言葉を全く聞いておられないようです。
まあ、卿が絶望されるのはいつものことですから、
今さらいちいち構うのも面倒なのでしょう。
姫は、顔をお上げになると首を傾げて卿をご覧になりました。

「それにしても、男というものは、随分変わったことをするものじゃのう。
 卿は、今まで、このようなことは教えてくれなかったではないか。」
「姫。お作法のお時間の間は、先生とお呼びください。」
「では、先生。お尋ねするが、男の人と言うのは、
 どうしてこのようなことをするのか?」

卿は絶句されました。

――もしや、姫は閨房のことについて、何もご存知でない?

卿は恐る恐る姫に問いました。


454:絶望・草双紙 2/9
07/10/04 20:02:33 phF+9Lop
「姫…姫は、どうやったらお子ができるか、ご存知ですか?」
姫は、むっとしたように卿をご覧になりました。

「馬鹿にするな、それくらい知っておる。」
卿はほっとすると、目の前の湯飲みをお取り上げになりました。
が、次の姫の言葉に、口に含んだお茶を盛大に噴き出しました。
「子供は、木のまたから生まれてくるのじゃ。」

卿は慌てて畳を懐紙で拭いながら叫びました。
「木のまたって…、どこぞの妖精さんですか!?
 それ、洋の東西間違ってますから!!
 …というか、姫、それは、本気でおっしゃってるのですか?」

姫はきょとんと卿を見ると、首を傾げました。
「…違うのか?」
その姿は、無邪気にも愛らしく、卿は一瞬くらっときましたが、
それどころではございません。

姫は、いずれはどこかの大名のご正室としてお世継ぎを生さねばならぬ身。
この御年になられれば、閨房での技についても学んでいなければなりません。

――一体、お女中達は何をやっているのですか!!

卿は、腹立たしく思うと同時に、姫がいずれは嫁がれる、というその事実に
胸がきりりと痛むのを感じました。

所詮、自分は貧乏貴族。
お大名の姫に釣り合うような身分ではありません。
しかし…。
姫が、誰とも知れない男に抱かれている姿を想像することは、
卿には耐え難い苦痛でございました。

「先生?どうしたのじゃ?」
姫は、黙り込んでしまった卿に、不思議そうににじり寄り、
襟元をつかんで覗き込みました。


455:絶望・草双紙 3/9
07/10/04 20:03:15 phF+9Lop
「――!!」
卿は、喉元にかかる姫の温かい吐息に、思わず体をのけぞらせました。

姫の眼鏡の奥の瞳はくりっと愛らしく、尖った桃色の唇は艶やかで
姫に想いを抱いている卿にとって、至近距離からの姫のそのお姿は、
脆い理性を吹っ飛ばすのに充分でございました。

――このままでは、姫は、大恥をかかれてしまいます。
   私は、姫の教育係なのですから、全てをお教えせねば…!

卿は、とっさに都合のいい言い訳を考えると、姫に向き直りました。

「姫。あのような技は、本来、男同士で行なうものではありません。」
姫は驚いたような顔をされました。
「そうなのか?」
「ええ…もとは、男と女の間で行なうものなのですよ…。
 …教育係である私が、責任をもってあなたにお教えいたしましょう。」
そう言うと、卿は姫の艶やかな唇に口付けをされました。

「ん…っ!」
姫の目が驚いたように見開かれます。
しかし、繰り返し、卿に念入りに口付けられていくうちに、
その目はトロンと蕩けてまいりました。

卿は、そんな姫を愛おしそうに見下ろすと、囁きました。
「今のが、口付け、というものです。」
「くちづけ…。気持ちいいものじゃな。」
姫は、うっとりと呟きました。

「もっと、気持ちのいいことを教えて差し上げますよ…。」
卿は、そう言うと姫をゆっくりと畳の上に押し倒しました。

しゅるしゅると帯の解かれる音が部屋に響きます。
卿は、手馴れた様子で、1枚1枚姫の着物を脱がしていきました。
襦袢1枚になった姫を見て、卿は感嘆のため息をつきました。

――こんなにも、お美しい体だったのですね…。


456:絶望・草双紙 4/9
07/10/04 20:03:49 phF+9Lop
いつもは幾重もの着物に包まれた姫の肢体は、
豊かな胸とくびれた腰、そして臀部に続くなだらかなライン、
いずれも男の情欲を誘うに充分な魅力を持っておりました。

「姫…お美しい…。」
卿が思わず漏らした呟きに、姫は真っ赤になりました。
「な、な、何を言うのじゃ。恥ずかしいから、あまり見るでない。」
そういうと、両手で胸元を隠すようなしぐさをされました。

卿は、その手を捉えると、左右に広げ、畳に押し付けました。
「いけません、姫…。
 閨の中では、殿方には、全てをさらけ出さねばいけないのです。」
卿は姫の両手を抑えたまま、姫の胸元に唇をお寄せになりました。

「ん…っ」
胸元を強く吸われて、思わずというように姫が声を漏らします。
次の瞬間、それに驚いたように、再びお顔を赤くされました。

「いいんですよ、姫。こういうときは、お声を上げるものです。」
そう言うと、卿は、姫の襦袢の袷を左右に押し開き、
その桃色の胸の先端を口に含み、軽く舌で転がしました。

「あぁっ…、先生…!!」
姫が体をしならせます。

姫は、奥で育ったにもかかわらず、体が柔らかく動きもしなやかで、
卿は、その反応にすっかり夢中になっておしまいになりました。

気がつけば、姫の襦袢はすっかり肌蹴てしまい、腰巻も緩んで、
姫が身もだえするたびに、白く滑らかな腿が見え隠れします。

卿が、堪らず、むしりとるように腰巻を取り去ると、
今だかつて誰も触れたことのない未踏の地が、姿を現しました。

「…。」
卿は、緊張の余り生唾を飲み込むと、そこに顔をお近づけになりました。
そして、優しく、ゆっくりと、舌を伸ばされました。


457:絶望・草双紙 5/9
07/10/04 20:04:31 phF+9Lop
「はぁ…っ!」
姫は、エレキテルに触れたように体をお震わせになりました。
きっと、今だかつて体験したことのないような感覚だったのでしょう。

しかし、卿は、姫の反応に頓着することなく、舌をお遣い続け、
それと平行して、指を姫の中に差し入れ、動かしました。

「あ…っ、あっ、ああああ!」
姫が再び体をそらせて、そのまま雷に打たれたように固まりました。
同時に、卿の指には温かいものが溢れてまいりました。

姫は、すっかり上気した顔で息を切らされております。
卿は、肘をついて体を起こすと、姫にお尋ねになりました。
「どうですか?姫…?」
姫は、ぼんやりと卿を見返すと、口の中で呟きました。
「すごく、気持ち良かった…。」
卿は、嬉しそうに、にっこりと微笑みました。

と、姫がいきなり、がばりと起き上がりました。
「わらわばかり気持ちよいのは不公平じゃ。」
そうおっしゃると、姫はやおら、卿の股間に顔を埋めたのでした。
「本で読んだ。こういうことをすると、殿方は気持ちよいのじゃろう?」
「ひ、姫!?」
卿も、驚いて体を起こされましたが、
すでに姫のお口は卿をしっかり捉えられておりました。

「…むぅ、ん…。」
高貴な姫の愛らしいお口が、自分のものを咥え込んでいるという事実に、
卿は陶然となりました。
しかも、姫は、BL本でいろいろと知識を仕入れておられたらしく、
初めての割には巧みな舌遣いをお持ちだったのです。

「う、あぁ…。」
卿は、余りの気持ちよさに思わず声を上げてしまいました。
と、姫がふいに、卿から口を離しました。


458:絶望・草双紙 6/9
07/10/04 20:05:16 phF+9Lop
「…?」
卿が見下ろすと、姫は卿の下半身をじっと凝視されておりました。
「な、何をご覧になっているのですか、姫!」
慌てて卿は足を閉じます。
姫は、ぽつんと呟かれました。
「…穴が、足りない…。」

ずがぼん

卿は、畳に頭がめり込むほどの勢いで、突っ伏しました。
「…先生?」

ひりひり痛む額を押さえながら卿は叫びました。
「だから!!そんな穴なんかありませんから!!!!」
そう言うと、卿は姫を押し倒しました。

せっかく盛り上がっていたところに水を差されてしまい、
卿としては、これ以上は、姫に主導権を握らせるおつもりは
ございませんでした。

「もう、あなたときたら…!
 これが、本来入るべき穴を、今から教えて差し上げますよ…!!」

卿は、その言葉とともに、姫の御み足を高く掲げると、
すっかり潤っているそこに、自身を奥深く突き入れたのでした。

「あああああぁあ!」
姫の目が大きく開かれ、そのお体が海老のようにのけぞります。
「せ、先生…!痛い…!!」
「大丈夫です…もう少ししたら、痛くなくなります…!」

そう答える卿も、いっぱいいっぱいの状態でした。
姫の若々しく発達した筋肉は、卿をぐいぐいと締め付け、
その快感に、今にも迸ってしまいそうになるのです。

卿は、姫と自分自身のために、しばらく深呼吸をすると、
やがてゆっくりと動き始めました。



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