【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part9【改蔵】 at EROPARO
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part9【改蔵】 - 暇つぶし2ch250:藤吉さんと絶望先生
07/09/28 15:20:29 w8yEHlr9
「入れますよ?」
「優しく…してくださいね。」
ずぷずぷと、自分の中を押し広げられていく感覚。
痛みと不安、そして愛する人を受け入れたい、という感情が交錯する。
「は…んぅ…あっ…はっ…」
「藤吉さん…大丈夫ですか?」
「いたっ、痛いです…先生、手…繋いで。」
「すいません、気が利かなくて。」
「ふぅ…ふふふ。」
握られた手に安心したのか、その顔をほころばせた。
少しでもその痛みを和らげようと、侵入を中断し、望は晴美の胸の突起を口に含んだ。
舌の上で転がすたびに、甘いため息が漏れる。
次第に晴美の体もほぐれていった。

251:藤吉さんと絶望先生
07/09/28 15:21:51 w8yEHlr9
「はぁ…動いて…いいですよお。」
望は、こくん、と唾を飲み込んだ。
きつく締め付ける晴美の中を、絶棒がじゅぶじゅぶと音をたてて刺激する。
「痛いけど、ちょっと…キモチイイ…です…」
望の方は、ちょっとどころではない、腰を砕かれそうな快感に襲われていた。

二人の息が荒くなっていく、もはや望の方は限界だ。
「あ…もう駄目です…先に…んっ!」
「ひゃ…先生のが…あったかい…」
びゅるびゅると自身に注ぎ込まれる感覚に痺れ、晴美も絶頂を迎えた。

252:藤吉さんと絶望先生
07/09/28 15:23:37 w8yEHlr9
「あのですね、先生。」
望に腕枕をしてもらいながら、晴美は言う。
「実はもう、うちのクーラー直ってるんですよ。」
「なんとなく、そんな気はしてましたよ。」
「ばればれですか。」
「ええ、楽しかったので黙っていました。」
「もしかして、こういう事期待して、ですか?」
「いや、さすがにそれは。」

「ああ、そろそろ時間ですねえ。お送りします。」
「うわ、今日はいつもより優しい。なんかやらしいですよ、先生。」
「いつもより遅いからですよ…」
なんだか恥ずかしくなって目を逸らす。

253:藤吉さんと絶望先生
07/09/28 15:25:12 w8yEHlr9
「でも、いいですよ、今日は。」
「そんな、遠慮しなくても。」
「違いますよ、今日は友達の家に泊まるって、言ってますから。」
「え?」
「泊めてくださいね、せーんせ。」
甘えた声で告げる。
「え、あ、はい。」
「それじゃ、おやすみなさい。」
ちゅ、とキスをして、そのまま寝転がり目を閉じた。
「本当に遠慮しませんね…」
そう言って苦笑して、望も晴美の横で眠りについた。

254:名無しさん@ピンキー
07/09/28 15:28:42 w8yEHlr9
以上です。

藤吉さんは、末っ子だったり、あの千里と親友してるような子です。
きっと甘え上手ではなかろうか、そんな感じで書いてみました。

255:名無しさん@ピンキー
07/09/28 16:50:54 hWPu8mR6
>>229
> 盛り上がってくると腐したくて仕方が無い人が出てくる。
腐しているというのはさすがに失礼じゃないかな
明らかな荒らしであるなら別だけど
そういう上から目線で他人の書き込みを否定する方が不愉快に感じた

256:名無しさん@ピンキー
07/09/28 17:13:46 wZBvESR1
>>254
乙!
晴美かわいいよ晴美

257:名無しさん@ピンキー
07/09/28 17:17:32 0nlDwV7g
>>254
これは可愛い藤吉さんですね。
GJです。

258:名無しさん@ピンキー
07/09/28 17:18:13 724NEb75
>>254
藤吉さん乙!
いいもの見せてもらいました。なんか新鮮だなー

259:名無しさん@ピンキー
07/09/28 18:08:48 gfMz9Aeg
>>254
これはかわいい藤吉さん、こういうのもいいな

260:名無しさん@ピンキー
07/09/28 18:31:49 cSgMDheK
やばい今>>214読んだ命兄に惚れた
そして>>254を読んでエロよりも前半の日常会話に萌えまくってしまった自分は異端なのだろうか

261:名無しさん@ピンキー
07/09/28 19:29:01 BtD17Vso
>>260
>前半の日常会話に萌えまくってしまった
あ、俺もだw 晴美がすごく楽しそうに先生を弄っているのが目に浮かぶ。

262:名無しさん@ピンキー
07/09/28 20:50:50 YuIDHc3R
>>254
こんな可愛い藤吉さん初めてだ…!何かもう最中も可愛い。
二人揃って可愛い。可愛いしか言えんのか俺。

263:名無しさん@ピンキー
07/09/28 21:20:22 3BwF1Jk6
晴海分、補給完了!
オレも藤吉さんにこんなに萌えたのは初めてだ………おかしいなぁ、眼鏡属性萌えは無いと想ってたんだけどなぁ

264:名無しさん@ピンキー
07/09/28 21:47:41 9YSYZtNT
お行儀良くツンデレラの続きを待っているのであった

265:名無しさん@ピンキー
07/09/28 22:49:04 40gB0XrP
>>254
そんな藤吉さんをアニメや漫画でみてみたいw
GJ!

266:6
07/09/28 22:59:13 3BwF1Jk6
はいどうも。大草さんSSの者です。中編投下しに参りました。
………はい、ごめんなさい。後編じゃないんです。中編です。
前回投下時は、前後編のつもりで前編と書かせて頂いたんですが。
また予想以上に長くなってしまったので、3部構成ということになりました。
無計画ですいません。

ということで、謝罪も済んだところで、投下させて頂きます。
諸注意については>>6参照のこと。

では、どうぞ。

267:徒花:中 1/9
07/09/28 23:00:24 3BwF1Jk6
日曜日。もうすぐ、お昼になる。
「ふん、ふ~ん………♪」
私はいつも通り机に向かい、鼻歌混じりで内職の作業を続ける。
「今日は、結構頑張ったなぁ。」
ついつい、ぽつり、と声が漏れた。眼の前には、今まで見たこともないくらいに沢山の
造花の山があった。これだけ作ったんだから、多少身体がだるいのは仕方ない。
私は椅子に座ったまま、大きく身体を伸ばす。カーテンを閉め切った部屋は、薄暗い。
けど私、どうしてこんな昼間からカーテンを閉めてるんだっけ。まぁ、いいか。
「………お腹空いちゃった。」
そういえば、なんだかまるで、長い間何も食べていないみたいな空腹感がある。そんな
に仕事に熱中するなんて、自分でも珍しいと思う。けれど、私が働いた分だけ家計は
楽になるんだから、頑張らなくちゃ。あの人と、一緒に。

「(………あれ?)」

なんだろう。今、頭の奥の方が、ズキッと痛んだ気がする。
そういえばなんだか、ちょっとだけ気分も悪い気がする。頭が、くらくらする。
どうしたんだろう、寝不足かな。頑張るのはいいけど、気をつけなくちゃ。身体を壊す
わけにはいかないのに。何かあったら、治療費だって馬鹿にならないもの。
「………疲れてるだけよね。ちょっと、無理しちゃったかしら。」
とりあえず、一休みしてお昼にしよう。冷蔵庫に、何か残ってたかしら。そういえば、
夕べのおかずはなんだっけ。嫌だわ、自分で作ったはずなのに、忘れるなんて………。

「………あ、れ………?」

昨日の、おかず?私、昨日………料理なんてしたかしら?
どうしてだろう………なんだか私、ずっと、この部屋に居た気がする。朝から晩まで、
ずっと。なんだか長い間、この部屋から1歩も外に出た覚えが無い気がする。おかしい
な、そんなはず無いのに。ちゃんとあの人を玄関で見送って、帰ってくるのを出迎えて、
台所でお料理して、皆でご飯を食べて………。
「………なんで、思い出せないの………?」
それが、私の日常のはずなのに………どうして、覚えてないの?
それだけじゃない。昨日と今日はずっと家に居たけれど、その前は………学校にだって、
行ったはずじゃない。皆と一緒に登校して、皆と一緒に授業を受けて。いつも通りに、
先生が『絶望した!』って騒ぎ出して、それどころじゃなくなって………。
でも、そんな記憶、無い。私ずっと………机の前で、この造花を作って………。
「………え………何、これ………?」
あれ、どうして………机の上に、こんな、ゴミの山があるの?ノートに切れ端に、丸めた
ティッシュに、破れた布切れ………沢山あった造花は、どこに行ったの?

あれ。けれど………ちょっと、待って。
そんな………そんなの始めから、あるはずないじゃない。

だって、私。
内職なんて、していないもの。

「………わ、た………私………?」

私は、ずっと、この部屋で。
ずっと………独り、で。

ず、っと………。


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268:徒花:中 2/9
07/09/28 23:01:30 3BwF1Jk6
意識の奥底に封印されていた真実をこじ開けられた、麻菜実の精神は。
もはや、自分自身を欺き続けたかつての日常に還ることなど、適わなくなり。
「………や………嫌、っ………。」
ふとした瞬間に………全てを思い出し、悲鳴を上げる。

「いやああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッ!!!!!!!!」

もう何度目かになる絶叫を聞きつけた家族が、階段を駆け上がってくる音が聞こえる。


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数日前………ボクがあの事実を知った日から、1週間ほど経ってから。
大草さんは、学校に顔を出さなくなった。
「(………関係ない。ボクには、関係ないことだ。)」
今日も自分にそう言い聞かせて、極力彼女のことを考えないようにしながら、掌の中
の小説に視線を落とす。残念ながら、内容が頭に入ってくる気配は、無い。
「大丈夫かしら………先生は、風邪って言ってたけど………。」
「こじらせたら、肺炎とかにもなっちゃうしね。お見舞い、行こうか?」
「けど………私ちょっと、怖いかも。ほら、その………旦那さん、とか。」
クラスの女の子が、彼女を気遣う会話をしてくるのばかりが、耳から頭に入ってくる。
「………………。」
もちろんボクだって、彼女が心配じゃないわけがない。あんな話を聞いてしまった後だ、
彼女が家族から真実を聞かされてショックを受けてしまったんじゃないか、という縁起
でもない想像は、否が応にも浮かんできてしまう。
けれど………それでもやはり、ボクは、部外者だ。いくら彼女のことを想っていても、
助けたいと思っていても、家族でも担任でもない、ただの1人のクラスメイト。例えば
本当に、他の皆がお見舞いに行くというなら、多少無理矢理だとしても、彼女に会いに
行く口実もできようというものだが。
「………っ………。」
考えてみれば、皮肉な話だ。
彼女には本当は夫など居なかった、彼女はまだ誰の妻でもなかった。それが、明らかに
なったというのに………ボクは、そのことを知る以前よりも更に、彼女との間に距離を
感じるようになってしまった。
ボクなんかが、自分勝手な恋愛感情や同情で手を差し伸べることなど、許されはしない。
彼女はそれほどに、繊細で壊れやすい、まるで氷の彫像のような存在だ。
もどかしさに、人知れず奥歯を噛み締めてみても、現実は何一つ変化しない。
「………では、この時間で書き終わらなかった人は、明日私に提出してください。」
いつの間にかホームルームの時間も終わり、先生が二言三言の連絡を残して、教室から
去っていく。いつものメンバーの数人がそれを追って廊下に飛び出して、何やらまた
騒ぎが始まったみたいだ。今は、とても首を突っ込む気にはなれないけれど。
他の生徒も、だんだんと散り散りになっていく。ボクは、日直の仕事があるからまだ
帰れない。男女が1人ずつ日直を努める今のシステムだと、比較的人数が少ない男子は
どうしたって、仕事が回ってくる回数が多くなる。
「(………って、常月さんも日直だったじゃないか。)」
ボクはそのことに思い至り、早くも人影のまばらになった教室を見渡す。先生の背中を
追って行った常月さんの姿は、当然のことながら見当たらない。まぁ、あとは机の整頓
と、窓とカーテンのチェックくらいだから、別にいいのだけれど。
「………………。」
そういえば………あの日も彼女が先に帰ってしまって、1人で日直の仕事を片付けたん
だっけ。風浦さんは、今日は皆と一緒に、先生にくっついていったみたいだ。
前から順に、机を整頓していく。その間に教室には誰もいなくなる。窓の鍵は、誰かが
気を利かせてくれたのか、全部閉まっていた。
最後に教室の灯りを消して、ドアを潜る。他のクラスの生徒数人が行き交うだけの廊下
に踏み出し、はぁ、と深い溜め息を吐く。
「(………………。)」
家に帰っても、また、独りで無力感と倦怠感に苛まれるだけだ。
本の返却がてら、また少し………図書室で、時間を潰していこう。

269:徒花:中 3/9
07/09/28 23:02:05 3BwF1Jk6


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望がいつもの面々から解放されたときには、窓の外の景色は夕闇に沈み始めていた。
宿直室に戻り、はぁ、と息を吐く。
「おかえり、せんせ。」
「お帰りなさいませ。」
「………おかえり。」
霧、まとい、そして交が、順に望を迎える。女生徒2人に何かを言うような気力は、今
の望にはもう残されていなかった。
ただでさえ、麻菜実のことが気に掛かっている上に………数日前に、麻菜実の家族から
連絡を受けたその事実を、生徒達には決して悟られないよう、気を遣っているのだ。
「………大丈夫?」
「ご気分が、優れませんか?」
2人が、少し心配そうに望の顔を見上げる。今度は、交は黙ったままだ。
「まぁ、皆さんに付き合った後では、そりゃぁ疲れもしますよ。」
望はそう言って、精神の疲労を誤魔化した。霧とまといは、それであっさり納得する。
内心ほっと胸を撫で下ろしながら、望は、すでに1人分しか空いていないちゃぶ台の前
に、よっこらせ、と腰を降ろした。

と、次の瞬間。
宿直室に据えられた電話が、けたたましいベルの音を鳴り響かせる。

「………なんですか、一体………。」
すぐさま、いささか不機嫌そうな様子で立ち上がって、望が自分を呼び続ける電話の下
へと向かう。受話器を取ると、その向こうから、職員室に居る甚六の声がした。
「………電話?私に、ですか?はい、解かりました、有難うございます………。」
それは、職員室からの内線だった。どうやら望宛に、電話が来ているらしい。甚六に
一言礼を言ってから、望は電話のボタンを押し、保留されていた電話に出た。
「はい、お電話代わりました、糸色………。」
電話を受けた瞬間、望が挨拶の文句を言い終えるよりも先に、受話器から声がする。
酷く取り乱したその声の主に、望はすぐに思い至った。
「え、と………お、大草さんの、お兄さんですか?」
そこで初めて、受話器の向こう側の麻菜実の兄は、自分の名を名乗った。
「とにかく、落ち着いてください………どうなさいました?」
望は、受話器の向こうから聞こえる声に、時折相槌を打ちながら耳を傾け、そして。

「………抜け出した………!?」

思わず受話器を取り落としそうになりながら、その言葉を復唱した。


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見間違い、だろうか。
「………え………?」
図書室で、時間も忘れて本を読み耽った後。蛍光灯も消えて、廊下はすっかり薄暗い。
けれど………確かに、見えた気がしたんだ。
歩いていく、先。1階から屋上までを繋ぐ、その階段に。
「(………まさか………そんな、はず………?)」
ふわりと、風を孕んで揺れる………彼女とよく似た、黒のポニーテールが。
「………………。」
気のせいかも知れない。窓の外を、何かが飛んでいった、影かも知れない。だいたい、
今日彼女は学校に来ていなかったじゃないか、それがどうしてこんな時間にやって来て、
屋上に向かっているというんだ。そんなこと、あるはずないじゃないか。

270:徒花:中 4/9
07/09/28 23:02:57 3BwF1Jk6
「(………そんな、馬鹿な。)」
そう、見間違いだ。
そうに決まっている。
彼女のことを気にし過ぎて、ありもしない幻覚が見えるんだ。

………そうだと、心に言い聞かせる、けれど。
「………………。」
心に芽生えてしまった、胸騒ぎは………消えてはくれなかった。

内心、自分自身の行動を馬鹿馬鹿しいと思いながらも。
ボクの足は、下駄箱への経路を逸れて、そこに居るはずのない彼女の影を追った。


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「………ちょっと、出てきます。2人は、ここに居てください。」
身だしなみを整える暇も無く宿直室を飛び出そうとする望の姿に、何かただならぬ気配
を感じ、ちゃぶ台に着いた3人は一斉に望に視線を送った。
「先生、私も………!」
「いえ………すいません、今回ばかりは常月さんも、残ってくださいませんか。」
「どうしてですか!?」
「………何かあったの、先生?」
2人が食い下がる。交は、その様子をどこか他人事のように見つめている。
「………交を、お願いします。」
質問には答えず、望は1度だけ微笑んで、足早に今来た廊下を逆戻りしていった。
立ち上がって望の後を追いそうになったまといは、しばしの葛藤の後、苦虫を噛み潰す
ような表情で、再びちゃぶ台に着いた。霧と交は微動だにせず、そのままの格好で座り
続けている。

しばしの、沈黙。そして。
「………行かないの?」
霧が、望以外の人間と話すときの、抑揚に欠ける声で呟く。
身じろぎ一つせずにじっと正座していたまといが、つ、と視線を上げる。
「………こっそり、着いて行くと思ってた?」
「着いて行こうとしたら、止めようと思ってた。」
ごく静かな、しかしそれと解かるものにはひしひしと伝わる熱を孕んだ、声。
しばらくの間、霧と視線をぶつからせてから。まといは、机に突っ伏した。
「………行けるはず、無いじゃない。あんな………。」
「あんな先生、初めて見たから?」
言葉の先回りをする霧に、まといがまた、伏せた視線を上げる。どこか、刺すような
威圧感を帯びたその視線にも、霧は全く動じる気配を見せなかった。
「………そうよ。だから、何?」
ぶっきら棒で、刺々しい声。
「別に………でも………。」
「でも?」
「私も、初めて見たから………あんな笑い方する、先生なんて。」
「っ!」
まといの瞳に、一瞬だけ、驚きの色が現れる。しかし、それを決して言葉や態度に出す
ことはせず、まといはそのまま黙って顔を伏せてしまった。霧の方も、敢えてそれ以上
接触しようとはせず、ずれ掛けた布団を被り直す。沈黙が、再び到来する。
一抹の居心地の悪さを感じながら、交もまた一言も声を漏らさず、座り込んでいた。


//////////////////////////////////////



271:徒花:中 5/9
07/09/28 23:04:18 3BwF1Jk6
麻菜実は、驚くほど冷静に、眼の前に広がる景色を眺めていた。これは、自分が全てを
悟った所為なのか、それとも病院で精神を安定させる薬でも打たれた所為なのか。それ
は解からなかったが、とにかく麻菜実の心は、ほんの数日前の錯乱状態が嘘だったかの
ように、白波の1つも立たない、凪いだ湖面のような落ち着きを取り戻していた。

数日前、長い間自分を騙していた………いや、『騙してくれていた』家族に聞かされた
話を、麻菜実は既に、完全に理解し、受け止めていた。
初めてそれを聞かされ、自分が長い間信じていたものが偽物だったこと、かつての自分
が信じていた男が自分を裏切ったことを認識したとき。麻菜実の心は、その事実を受け
止められず、また病んだ状態に逆戻りしそうになった。部屋に引篭もり、自分の頭が
作り出した幻想の世界の残滓にすがり………しかしそれに陶酔することも許されず。
麻菜実の心は、今度こそ完全に、壊れかけていた。

しかし。今は、違う。
家族の手で、精神に病を患った人間が通う病院に入院することとなり。そこで、数日間
に渡って幾度もカウンセリングを受け、そして、徐々に平静を取り戻した。
受け入れることの出来なかった残酷な過去も、今はどうにか現実として認められるよう
になった。自分はかつて、愛し、信じていた男に騙され、捨てられ、その身に宿していた
新たな命を失った。そして、貴重な青春のうちの長い、長い時間を、自分の病んだ心が
生み出した幻想の為に、費やした。
それが、現実である。そのことを、麻菜実は至極冷静な心で、受け入れていた。

それ故に。
「………………。」
今こうして、日暮れを迎え、誰も居なくなった屋上に足を運んでいるのも。病んだ心に
突き動かされた奇行、というわけではない。

長い偽りの時間の中で、唯一偽りではなかった、この、学校での生活。
数少ない、空想ではない現実の時間を過ごしたこの場所で………自らの命を、絶つこと。
それが、全てを理解し受け止めた、健全な麻菜実の精神が導き出した、結論だった。


//////////////////////////////////////


屋上へと続くドアを開き、ボクはしばしの間、呆然と立ち尽くした。
橙から、灰色を経て濃紺に変わりゆく空を背景に、彼女が立っているその場所は………
ボクとは、フェンス1枚を隔てた、外側の世界だった。
ドアノブの音に、気付いたのか。彼女が、振り返る。彼女は、特に驚く様子も見せず、
ただ、ボクがこの場に居ることが不思議なだけだ、とでも言うような表情で、こちらを
眺めていた。
「………大草、さん?」
「あら………久藤くん。久しぶり。」
まるで、夏休み明けに朝の教室でばったり出くわしたときのような、何食わぬ調子で
彼女が挨拶をする。ボクは、彼女の名前を呼んだだけで、喉が震え上がってしまった。
「な、何………何して、るの………危ないよ、大草、さん。」
情けない声で、ボクは大草さんに呼び掛ける。そんな悠長なことじゃなく、もっと他に
相応しい言い方があるように思えたが、しかし、それをゆっくり考えるには、その状況
は余りに異常過ぎた。

272:徒花:中 6/9
07/09/28 23:05:05 3BwF1Jk6
彼女は柔らかく笑って、言う。
「そうね、危ないわよね………結構、簡単に越えられるもの。このフェンス。」
「そうじゃ、なくて………大草さん、そこで………何を………。」
明らかに平常心を失っているボクに向かい、大草さんは笑顔を作るのを止めて、一転、
どこか申し訳無さそうな表情を浮かべた。
「ごめんなさい………見つかったら、久藤君にも迷惑掛けちゃうわよね。」
「………迷惑………って………?」
「もっと、こっそり独りで行けば良かったわよね………こんな………。」
そして。次の、瞬間。

「最後まで………関係無い友達にまで、迷惑掛けるなんて………。」

彼女の、その台詞を聞いた途端に………ボクの中で、何かが、弾け飛んだ。

手にしていた本を放り投げて、彼女に、いや、彼女とボクを隔てるフェンスに駆け寄る。
そのままの勢いで飛び付くと、そのフェンスは彼女の言った通り、案外簡単によじ登る
ことが出来た。
頭の片隅では無謀なことだと理解しながらも、ボクはそれをひらりと乗り越えて、その
向こう側、僅かに人の身体1つ分と少しの幅しかないスペースに飛び降りる。そして、
片手でしっかりとフェンスにしがみ付いたまま、もう片方の手で、彼女の腕を力の限り
握り締めた。
「え………ッ………。」
ボクの突然の行動と、おそらくは余りに必死な様子を悟った所為だろう。腕を掴まれた
瞬間、彼女の身体が強張るのが解かった。
「………、だ………そんな………大草、さん………!」
自分でも理解のできない、言葉にならない声の断片が、口から漏れる。
突然の事態に眼を白黒させながら、彼女は、がたがたと震えながら自分の腕を掴むボク
の姿を見つめていた。
「………久藤、くん?」
「だめだ、そんな………ダメだよ………こんなの………!!」
「え、どうしたの………腕、痛いよ、久藤くん………。」
そう。ボクは、震えていたんだ。それは、屋上のフェンスの外側、一歩踏み出せば全て
が終わってしまうような場所で、命綱も何も無しで立っているんだ。少しも怖がるなと
いうのが、無理な話だ。こんな場所で少しも震えずに立っていられるなんて、よっぽど
肝の据わった人間か、それともよっぽど頭の悪い人間か。
そうでなければ………落ちても構わない、と思っている人間。そのつもりでここに居る
………例えば、死を覚悟しているような人間くらいのものだろう。
恐怖と、それから極度の緊張と混乱で、喉が震える。思ったような言葉が、出ない。
しかしそれでも、ボクは必死で肺から息を吐き出して………そして。

「………死ぬ、なんて………ダメだ………!!」
「………………ッ!?」

ようやく、その一言を搾り出した。
彼女の表情が、変わる。
「え………なんで………?」
「なんで、も何も………そりゃ、こんな所で………それに………。」
「………久藤、くん………?」

273:徒花:中 7/9
07/09/28 23:06:11 3BwF1Jk6
「………知ってるんだ。大草さんが………君が、こんなことする………理由を。」
「えッ………………!?」
また、表情が変わる。彼女の顔に、驚きの色がありありと浮かび上がった。
それはそうだろう。ボクの口からそんな言葉が出るなんて、思いもしなかったはずだ。
ボクはとにかく、話を続ける。今は、彼女の意識をほんの少しでも逸らせておかない
と、不安で仕方が無かった。
彼女の口調がにわかに強張り始める。
「………どうして、知ってるの?何を知ってるの?」
「君の、過去のことだよ。昔の………辛いことが、あったって。」
「誰から聞いたのよ、そんな話。」
「君の家族が、先生に話してたんだ。ボクは………盗み聞きした。ごめん。」
「………ッ………。」
彼女はしばし、その言葉が信じられないような顔でじっとボクを見つめていたが………
しかしやがて、ボクの言葉に嘘が無いことを悟ったのか、まるで全てを悟ったかのよう
な無気力な表情をし始めた。
「………全部、知ってるのね。何が、あったのか。」
「………たぶん、そうだと思う。」
「じゃぁ………ごめんなさい。手を、離して頂戴。」
彼女の身体が、ぐらり、とフェンスとは逆方向に傾きそうになる。ボクは、少し乱暴に
その腕を引いて、それを引き戻した。彼女は1度がくりと首を揺らしてから、泣いて
いるのか怒っているのか解からないような顔でボクを見つめた。
「お願い………離して。このまま………このまま、行かせて………!」
「………嫌だ。絶対………離さないよ。」
震える喉に精一杯の力を込めて、ボクは威圧するような声で言う。傍から聞けば、それ
でもやっぱり情けない声だったかも知れないけれど。彼女はその言葉に反発するような
強い声で、続けた。
「どうしてよ………全部、聞いたんでしょ?何があったか、知ってるんでしょ?」
「知ってるよ。昔の、恋人のことも………その………子供の、ことも。」
「だったら、なんで離してくれないのよ!!いいから死なせてよッ!!」
遂に、彼女が叫び声を上げた。
「もう嫌なの!!どうしていいか、解からないのよ!!」
「………嫌だ………ダメだ、そんなの………ッ!」
「もう、何も無いのよ!?これから、どうやって………どうやったら、私………ッ!!」
しかし、彼女の言葉の勢いは、長くは続かなかった。程なく彼女は声を擦れさせ、その
ままその狭い空間で、ぺたりと崩れ落ちるようにへたり込んでしまった。片腕をボクに
掴まれたまま、もう片方の掌で顔を覆う。その下から、涙の雫が滴り落ちる。
「あの人も、子供も………全部………誰、も、居なくなって………。」
「………………。」
「それが嫌で、自分で偽者の世界を作って………それも………壊れ、て、ッ………!」
「………ッ………。」
「どうしろって、言うのよ………こんな………こんなに、ボロボロになって………!」
嗚咽交じりの涙声で、彼女は、時折しゃくり上げながら嘆き続ける。
その様子が、余りに辛くて、痛々しくて………居ても立っても、居られなくなって。

そして。
「………ッ………!」
気が付けば。
「………っ………?」
ボクの腕は………フェンスを離れ、彼女の身体を、抱き締めていた。


274:徒花:中 8/9
07/09/28 23:07:06 3BwF1Jk6
彼女の嗚咽が、止む。
自分自身と、彼女と、その両方の震えを抑え込むように。自ら死を選ぶまでに追い詰め
られてしまった彼女を、必死で、こちら側に引き止めるように。
力一杯抱き締めた身体は、ボクが思っていた以上に華奢で、弱々しくて………そして、
ボクと同じ様に、小刻みに震えていた。
「………ぁ………ぇッ………?」
彼女の、か細い声が聞こえる。何かを言おうとしているけれど、しかし、上手く声が
出てくれない。さっきのボクが、そうだったように。
頭の中で、様々な言葉が、台詞が、ぐるぐると渦を巻く。彼女に伝えたいこと、彼女
に聞いて貰いたいこと。彼女と出会い、この学校で同じ時を過ごし、そして、彼女の
真実を知って、彼女が学校に姿を見せなくなったこの数日間の間に想ったことの全てが
想い返される。
けれど結局………最後に口を突いて出てきたのは。
「………大草さん。」
気が利かない、飾り気も何もあったものではない。
「ずっと………君のことが、好きでした。」
「………っ………!?」
何の変哲も無い、三文小説のような、愛の告白だった。
しばしの、沈黙。どこか遠くから、踏み切りの警報が鳴る音が聞こえた。
「………ぇ………な、ん………久藤、くん?」
余りに突然の、何の前触れも無い告白。事情が飲み込めないのか、それとも言葉の意味
を理解するのに手間取っているのか。彼女はボクの耳元で、まだ、言葉にならない声を
発し続けていた。
「ごめん、こんな………こんなときに、急に。けど………。」
「なんで………なんで、私なんか………こんな………。」
「………とにかく………ダメだ。こんなこと、して欲しく、ないんだ。」
「………どう、して………。」
お互いに、気持ちの整理など出来るはずもなく。ただ、心に浮かんだ言葉の断片の中
から、少しでもまともな形をしているものを掬い上げていく。決して会話にはなって
いなかったが、しかし………ボクは、彼女の震える腕が少しずつ自分の身体にすがって
くるのを、感じた。
より一層強く、彼女を抱き寄せる。
「けど、私………今まで、ずっと………。」
「………………。」
「………今まで、皆と、一緒に居たのは………。」
やがて彼女の言葉は、時を経るに連れてだんだんと確かなものになっていく。そして、
その言葉から、ボクは彼女の言わんとしていることを、悟った。

それは………こうして彼女に会うまで、少なからず、ボクも感じていたことだった。
彼女は今まで、自分の心が自己防衛の為に作り出した、幻想の中で生きてきた。彼女は、
確かにボク達と同じ時間を過ごしていたが、しかし、彼女が見ていた世界は、ボク達が
見ていたそれとは違う世界だった。
そんな世界の中で、何の疑いも抱かずに、平穏に暮らしていた彼女。そして………今、
こうしてボクの眼の前に居る、全てを知り、それまで信じていた世界が偽物だったこと
に気付いてしまった彼女。
果たして………それは、両方とも同じ彼女であると、言えるのだろうか。彼女が真実を
知り、自らの正体に気付いたとき、2年へ組のクラスメイトの大草麻菜実という少女は、
果たして実在し得るのだろうか。
それは、ボクが彼女の真実を知った後、彼女に対しそれまで以上の距離を感じていた
原因の1つでもあった。再び彼女がボクの眼の前に姿を現したとき、彼女が、ボクが
ずっと恋焦がれてきた彼女とは別の誰かになってしまっていたら。そんな不安に苛まれ
たことは、1度や2度ではない。

しかし………ボクはもう、気付いていた。それが、全くの杞憂だったことに。
「違うよ。」
「え………………?」

275:徒花:中 9/9
07/09/28 23:08:10 3BwF1Jk6
彼女が、死を決意していることを悟ったとき。ボクの身体は、ボクの意識がそう命じる
よりも早く、彼女をここに引き止める為に駆け出していた。
そして、今。こうして、腕の中に居る彼女の嘆きを聞く度に、彼女が死を口にする度に、
ボクの胸は、まるで万力にでも締め上げられているような痛みを覚えた。
彼女に、死んで欲しくない。そんな決断を、して欲しくない。
愛する人がそんなにも傷付いている姿を、どうして、黙って見ていることができようか。
「………好きなんだよ。大草さんが………今、ここに居る、君が!」
「ッ!!」
「今までのことなんて、関係無い………君は、君だ………!」
そう。ボクは、全てを知り、この世界に絶望した彼女を………引き止めたいと、思った。
今でも、彼女への愛は、消えていない。それが、今ここに居る彼女が、紛うことなく、
ボクがずっと恋焦がれてきた彼女自身であることを証明している。
「死んで欲しくないんだ………君が居なくなるなんて、考えられない!嫌なんだ!!」
彼女を掻き抱いたまま、吠えるように愛を叫ぶ。彼女の腕は震えながら、いつの間にか
ボクの背中に回されていた。

「………ぁ………ぅ、ぇ………ッ………!」
彼女がまた、何事かを呟く。なんと言っていたのかは、よく、解からなかった。
「だから………ダメ、だよ………戻ろう、大草さん。」
ボクは声量と声のトーンを落として、彼女の耳元でそう呟く。
ぐずぐずとすすり上げながら、彼女がゆっくり、小さく頷いたのが、解かった。

276:徒花:中
07/09/28 23:10:11 3BwF1Jk6
(続く)

今回はここまでです。2回も引っ張って本当にすいません。近いうちに書き上げて戻ってきます。
ここまでお付き合い下さった方、並びに完膚なきまでにスルーしてくださった方、本当にありがとうございました。
礼、多謝、土下座。

277:名無しさん@ピンキー
07/09/29 10:30:31 XxlQM8Iv
今夜も良作揃いだったみたいだね。
最近朝が楽しみだ。

278:名無しさん@ピンキー
07/09/29 14:32:23 qzJkSWr5
>>153の夢の描写って多分EDのシーンをモデルにしてるんだよな

279:名無しさん@ピンキー
07/09/29 15:25:34 Qvu0Nw4d
>>278
EDって、アニメ? 
どこだろ? 

280:名無しさん@ピンキー
07/09/29 15:40:14 z6Qh4zVB
先生が教え子達に妊法を使って大騒ぎな内容のもの希望。

281:名無しさん@ピンキー
07/09/29 15:45:57 xgSqtEXx
妊法ってヤるわけじゃないからつまらんじゃんw

282:名無しさん@ピンキー
07/09/29 15:49:59 qzJkSWr5
>>279
大体53秒辺りから
URLリンク(jp.youtube.com)

283:名無しさん@ピンキー
07/09/29 15:57:54 Qvu0Nw4d
>>282
あ、なるほど。そうかも。
確かに悪夢っぽいシーンだ。
何度も見てると、不安定になりそうだww

284:名無しさん@ピンキー
07/09/29 17:12:08 2H1KQqAc
>>281
ヤらないとは誰も言ってないぞ。

285:名無しさん@ピンキー
07/09/29 17:51:37 6SjuiFVI
妊法はあまりにスピードが速すぎて目に見えないだけじゃないかと想像する。
もう早漏なんてレベルじゃない。

286:名無しさん@ピンキー
07/09/29 19:45:35 qzJkSWr5
>>285
瞬射と申したか

287:名無しさん@ピンキー
07/09/29 23:50:14 Nrsr5abH
倫「お絶望なさいましたか!?アニメがアレでも焼け太らなくてお絶望なさいましたか!?お兄さま」
望「うるさいですよ倫!」
「」
望「だいたい、おまえはいつも焼け太りだの凶作リッチだの
  セレブ死にだのとその手のことしか言えないのですか!」
あびる「全部自分が言ったことじゃん」
望「金持ちであることをひがむ以前に、そもそもおまえは金持ちらしくありません!」
奈美「十分お金持ちっぽいけど…執事いるし」
望「本当の金持ちはこんなことをしますよ!」

●縦ロール&高笑い
●中学生なのに自動車通学
●ベイビーとかハニーとかセニョリータとか言う
●カードばかり使うから現金を見たことがない
●白ラン着用

倫「ムッ ならお兄様、例えば亀に乗ればよろいしのですね?」
望「か…亀?」
倫「金持ちは奇妙な挨拶をしたり、頭に尖りがあったり、
  亀に乗って移動したりするものでしょう?」
マ太郎「マタ極端ナノ出シテキタナオイ」
倫「この私の足で、亀を踏みつければ宜しいのですね?
  亀の頭を足でグリグリしてやれば宜しいのですね!?」
禿「ぜ…是非踏んで下さい!このボクの亀を!」
あびる「やだ…誰もいないのにまた声がした」
望「の…乗るのと踏むのは違います!なんですか頭って!」
マ太郎「亀ノ頭ヲ踏ンダラ何カ悪イノカ?」
可符香「亀が驚いて頭が何倍にも大きくなっちゃうのよ」
マ太郎「オー」

マ太郎「マリアセレブノ遊ビ覚エタヨ!」
マ太郎「亀踏ミ!」
ズゴッ
望「ぐわっ」
可符香「蹴り上げたら踏みじゃないでしょ」

288:名無しさん@ピンキー
07/09/30 00:02:27 PuFyxTQq
>>278
言われて気がつきましたが・・・確かに似てるかも・・・・
実際、書いた時は違うイメージで起こしましたが・・・・・・・
無意識にはあったのかもです。

・・・ちょっと月末・月初で、ss書けなくて、気晴らしに雑談に来てしまいました。
失礼しましたー・・・・

289:名無しさん@ピンキー
07/09/30 00:02:52 fYUkVdPg
>>287
懐かしいキャラだしてきましたな。
ほのかにエロいし、おもろいw

290:名無しさん@ピンキー
07/09/30 00:42:16 vcqSa4rv
>>287
うまいなw
亀云々の元ネタがどうしてもはっきり思い出せない…。
おべんちゃら君だっけ…違う気がする…。

291:名無しさん@ピンキー
07/09/30 00:46:33 U2JuLC5c
>>287「驚いて亀がおっきくなっちゃうのよ」
て(笑)
センスあるなあ

292:名無しさん@ピンキー
07/09/30 01:16:30 0mhTAznr
おぼっちゃま君だったけ?自分も微妙。
どっちにしろ笑ったw。
>>276さんの大草SSも佳境に入ってきて期待~。

ところで、前スレ(前々スレ?)であびるSSのリクがあったと思うけど、
①まだ恋人関係にない→なんだかんだで仲良くなる→先生主導で突入
②既に恋人同士→あびるハッスルで先生受け
のどっちのほうが需要あるんだろ?

293:名無しさん@ピンキー
07/09/30 01:35:16 fmbTZEkr
オラとしては①の方が何だか良い感じがする

294:名無しさん@ピンキー
07/09/30 02:53:37 O9nMEyGk
しかし②もなかなか悪くない

295:名無しさん@ピンキー
07/09/30 03:20:47 GMHAz8pb
1,2レスで収まる短くキレのあるネタは良い、こういうのももっと見たい
>>276
大草さん好きながらも、両手骨折で入院して大草さんが訪ねてくる、くらいしか思い付けません
そんな自分にはまさに希望の星、後編も期待させてもらいます

あと自分は、藤吉さんと絶望先生書いた者なんですが、今更なんでスカートにしたと大後悔
藤吉さんにはハーフパンツだろうよと、ハーフパンツだったことにしてください
でも、藤吉さんじゃウケが悪いかと心配でしたが、可愛いといってもらえて幸せでした

296:名無しさん@ピンキー
07/09/30 03:33:21 qIawMX0W
>>292
普段Sだけどベッドだと受けなあびるで

297:名無しさん@ピンキー
07/09/30 08:41:46 PuFyxTQq
>>295
遅レスですが、藤吉さん可愛かったっす!
BL好きだから難しいだろなーと思ってたら、あっさりとw
すました顔で先生に甘える藤吉さんがすごくいいっす。


298:名無しさん@ピンキー
07/09/30 10:13:05 AMruGbAG
>>293
③まだ恋人関係にない→なんだかんだで仲良くなる→あびるハッスルで先生受け

299:名無しさん@ピンキー
07/09/30 10:15:51 fmbTZEkr
>>298
ん、それが一番しっくり来る。

300:加害妄想教室1
07/09/30 11:34:35 NOR/lYYt
 「困りましたね」
放課後の職員室、望の席のとなりに加賀が座っている。
今月になって、加賀が授業中に加害妄想の発作を起こし、校外に走って逃げて行って
しまう事件がもう3回も起きていた。
 「加賀さんの気持ちも分かりますが、私にも立場がありますし」
望としては、加賀を探しに行くという名目で授業を中断し校外に行くのは別にかまわ
なかったのだが、スクールカウンセラーの新井先生に知られるところとなり、すぐに改
善策を立てないと校長に報告すると脅されていたのだ。
 「すみません。すみません」
加賀としては、ただでさえ他人に迷惑を掛けることが苦痛でたまらないのに、先生に
呼びだされて放課後の時間を使わせている、と考えただけで、自責の念に押しつぶされ
そうである。まともな思考もできるはずがなく、ただうわ言のように「すみません」を
繰り返すばかりであった。
 「でも、すみませんというだけじゃ何も解決しないですよ」
思いがけず厳しい言葉を口にしてしまい、望は自分でも少し驚く。ただでさえ自己主
張の強い生徒ばかりであるへ組の中で、加賀のような生徒はどちらかというと望が贔屓
したくなるタイプであった。しかし何度も探しに行かなければならなかったことと、あ
まりにも無反抗な態度に少し意地悪をしたくなった心を否定することはできなかった。


301:加害妄想教室2
07/09/30 11:35:22 NOR/lYYt
 「どうなんですか? 加賀さん」
加賀の方の反応の方が強烈であった。もちろん先生に迷惑を掛けているという自覚は
ある。だが、一方で先生は自分のことを理解してくれているのではないか、自分を助け
てくれるのではないか、という甘えにも似た気持ちを持っていた。望の言葉を聞いて、
思わず体を震わせてしまった。
「 本当にすみません。迷惑かけてしまってすみません」
辛くて顔を上げることもできない。

 「わかりました。先生、急いでやらなければならない仕事があります。こう見えても
やらなきゃならないことがたくさんあるんです。勤務時間外にもやっていることを考え
ると時給200円くらいですよ。教師なんて楽な仕事だと思っているかもしれませんが」
 「そ、そんなことはありません。」
加賀は泣きそうである。
 「今日は夕方は時間がありますから、悪いけど宿直室に来てくれませんか?」
 「えっ」
加賀は即答できなかった。そもそも校内にいるだけで、他の生徒に迷惑を掛けないか
心配になってしまうため、授業が終わるとすぐに家に帰って部屋に閉じこもりたい方な
のである。
 「もちろん今日あなたの都合が悪いなら、別の日でもかまいませんが」
加賀には自信というものがない、仕方なく「はい」とうなずいた。


302:加害妄想教室3
07/09/30 11:36:40 NOR/lYYt
先生に指定された時間まで時間をつぶす必要があった。最初は図書室で本でも読んで
過そうかと思ったが、もし自分が借りて読んでいる本を他の生徒が読みたかった場合
、迷惑を掛けてしまうのではと考えると恐ろしくなってしまった。
仕方なく、誰もいないといいのだが、と思いながら自分の教室へ戻る。が、残念なこ
とに教室には生徒がまだ残っていた。
 「あら、加賀さん珍しいわね」
最初に声を掛けたのは木津である。加賀は彼女が苦手であった。意地悪をされている
わけではないことは分かっていた。むしろ根は面倒見のいい優しい性格であることは知
っていたが、どうしても言葉に厳しさを感じてしまい、上手に返事が出来ないことで相
手に迷惑を掛けていないか心配になってしまうのだ。
 「はい、すみません」
 「別に謝ることないのに」
 「そ、そうですね。」
自分の席につき、意味もなく机の中にあったノートを広げる。
 「宿題でもやるの?」
 「そ、そんなことはないんですけど」
 「そういえば今日みんなでカラオケに行くんだけど、加賀さんも行かない?」
 「え」
カラオケ、と聞いただけで不安になってしまう。音を外したらどうしよう、誰かの持
ち歌を歌ってしまったらどうしよう、場に合わない歌を選んでしまったらどうしよう、
そう考えてただけで不安で頭が真っ白になってしまった。
 「わたし、わたし・・・」
 「千里とカラオケ行くなんて嫌よねえ」藤吉がふざけていう。「音を外しただけで帰
してくれないし」
 「行きたくないなんて・・・そ、そんなことはないですけど」
木津の好意に迷惑を掛けることを考えるとどう答えればいいのかわからなかった。
 「せっかくだから行こうよ」
 「あ、はい」
加賀は否定できずに答えるが、そこでやっと自分がなぜここで時間をつぶそうとしてい
たかを思い出した。
 「わたし・・・やっぱり無理です。誘ってくださるのはすごく嬉しいんですけど、用事が
あって。嫌なんじゃないですが」なんとか言葉を搾り出す。
 「今日先生と・・・話をしなければならなくて」
 「先生と?」

つづく

303:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:36:42 IqyHaBcU
加賀支援

304:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:38:22 NOR/lYYt
加賀により、S属性が発動してしまった絶望先生という展開になる・・・はず。

305:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:39:42 fYUkVdPg
その流れで一本書いてみたい…
でもやっぱりワンパターンな展開になりそうなんで自重します。

306:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:42:59 fYUkVdPg
安価付け忘れた…
298のことです。

307:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:45:05 NOR/lYYt
>>305
良かったらぜひ書いてください。自分だとなんかギャグみたいになりそうなので(すでになっている)。
続きじゃなくてもいいし、この設定でいいなら勝手に使ってもらってもかまいません。

308:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:46:21 NOR/lYYt
>>306
あ、私のじゃないですね。
勘違いしてすみません。途中で投げ出してすみません。


309:名無しさん@ピンキー
07/09/30 11:47:16 IqyHaBcU
>>304
乙! これは続編に期待せざるを得ない

>>305
「あの時書いておけばと嘆くより、書いて傷つく方がいいでしょう!?」
う・p! う・p!

310:305もとい、42
07/09/30 14:13:05 fYUkVdPg
一週間も立たぬ内に復帰…
堪え性無くてスイマセン。298を元にしたあびる中編投下します。

311:絶望先生の家庭訪問①
07/09/30 14:23:44 fYUkVdPg
木の葉が紅葉に染まる頃となってきた初秋。
鈴木商店高校は2年生の秋のこの時期に家庭訪問を行うのが通例であった。
もちろん2年へ組担任の糸色望も家庭訪問の真っ最中なのである。
「さて、本日の予定は小節さんと小森さんですね、昨日は木津さんと木村さんのおかげて予定が大幅にずれてしまいましたから、さくさくいきたいですね…二人には久藤君を見習ってもらいたいものです」
先日の家庭訪問を思い出しながら、独り言を呟く望。
横目でちらと時計を確認すると職員室を後にした。
外は雨が降っていたため傘をさし小節家へと向かった。

小節家に到着するとあびるの父親とあびるが揃って迎えてくれた。
「はい、先生」
「ありがとうごさいます」
あびるから差し出されたお茶にお礼を言う。
あびると父親が望と対面に座る。
家庭訪問が始まった。
望があびるをみての率直な意見を父親に伝える。
通常の授業態度にもこれといって問題もなく、これからの進路のこともしっかりしている。
生傷か絶えないことや運動神経については父親は理解しているし、少しづつ改善していこうとあびるを交え話し合う。
面談の様子から父子家庭であることから何か問題が生じているということもなさそうで、家庭訪問は一時間後には無事に終了した。
「先生、あびるをよろしくお願いします。」
「ええ、教師として最大限の努力をします」
一通り挨拶を済ませると父親は会社に仕事が残っているというので先に家を出た。
「さて私もこれでお暇しますか」
あびるがじっと望の方をみている。
「どうしました?」
「先生も教師らしいことちゃんとできるんですね。見直しちゃいました。」
「あなたは普段私にどんなイメージをもっていたんですか」
望が苦笑しながら答える。
あびるは少し照れているようだった。
「じゃあ先生、また明日」
「ええ、また明日」
そういって玄関に背を向け傘をさそうとしたその時
『ばしゃぁーーーーん』
家沿いの道路を結構なスピードで走っていた車が水溜まりを弾けさせ、その水が望を直撃した。
「先生!?」
ギャグ漫画のごとく頭の先にまで水浸しになる望。
「ついてないですね」と言いそのまま歩きだそうとする。
「!、先生、そのままじゃ風邪引いちゃうよ。お風呂沸かすから入っていってください。服も乾かしますから」
遠慮しようとした望だったが身体が予想以上に冷たくなっているのを感じて
「それではご好意に甘えさせてもらいますか」
と返事をしたのだった。

312:絶望先生の家庭訪問②
07/09/30 14:40:56 fYUkVdPg
「ふぅ」
湯槽に浸かり冷えた身体を暖める。
小森さんは学校ですから急がなくてもいいですねなどと考えていると、脱衣所の向こうから人の気配がした。
「小節さんですか?」
返事はない。
かわりに布擦れの音が響いてきた。
「え、こ、小節さん?」
「先生、入るよ」
次の瞬間身体に巻かれた包帯を除けば、一矢纏わぬ姿のあびるが浴室に入ってきた。
「こ、小節さん、何を考えて」
慌てる望。
「大丈夫。お父さんともたまに一緒に入るし」
「それとこれとはまた別でしょう!」
「それに…今日の先生格好良かったし…」
「へ?」
「私のことちゃんとみてくれてるんだなって思ったら嬉しくなっちゃった」
「そ、それはクラスを受け持つ担任として…」
あびるが頬を染めて続ける


「先生、私、先生に…惚れちゃったみたい」




313:絶望先生の家庭訪問③
07/09/30 14:43:50 fYUkVdPg
望はその言葉に一瞬思考を止めてしまったがすぐに思考を取り戻し、湯ぶねから飛び出した。
「し、失礼します」
するとあびるが望の腕を反射的に掴んでしまった。
どたーん
望は転んでしまい、痛ててと呟く、軽い痛みはあるがどうやら怪我などでははないようだ。
「小節さん、大丈夫ですか…」
望が顔を上げるとあびるの顔が眼前にあった。
どうやらあびるが望を押し倒した形になってしまったらしい。
「先生、好き…」
『ちゅうぅっ』
あびるの唇が望の唇と重なる、と同時にあびるの舌が望の口内に侵入し甘い音を立てはじめた。
『ちゅ、れろ、ちゅう』
なすがままになる望。
濃厚なキス、教え子との禁断の行為。
望の意識は溶けはじめていた。

一度火がついたあびるは積極的で望は攻められるがままだった。
あびるはいつのまにか絶棒をくわえこみ卑猥な音を立てている
『じゅぶ、じゅぶ、じゅるっ』
「ふ…ぁ」
快感によりもはや望の脳内はとろけきっており何が起こっているのか判断できなくなっていた。
『ちゅ…ぽん』
はち切れんばかりに膨張した絶棒から口を離し大股開きでまたがるあびる
「いきますよ、先生」
あびるの秘所が絶棒をつつみこんでゆく。
「うぁ…」
『…ず、ずぷんっ』
『っ、痛ったぁ』
あびるの秘所から破爪の血が流れだしそれを目にした望が一瞬にして我に返る。
「小節さ…うぁ!」
『じゅぷ、じゅぷん』
一瞬あびるの動きが止まったかと思うと激しく動き始めた。
『痛い、痛い…けど気持ちいい…きもちいいよぉ、せんせい、もっとぉ』
まるで尻尾を愛でるような甘い声で喘ぐあびる。
その声と、強烈な快感で望の意識は再び彼方へと飛んでいく。
『先生、もう、私、私っ…う、く、うぁあああん』
望はあびるの絶叫とともに何か熱いものがほとばしるのを感じたがそれが何かわからぬまま意識を失った。

目を覚ますと望はあびるに膝枕をされていた。あびるが笑顔でやさしく望の髪を撫でていた。

その数秒後、望は意識をはっきりさせるとともに強い背徳感と絶望感に襲われるのだった…


THE END




314:あとがき
07/09/30 14:46:34 fYUkVdPg
長々と失礼しました。
相変わらず前置き長くてエロくなくてスイマセン。
あっさりした短編書きたいと思うのに書けない。
申し訳ないっす。
読んで頂いた方、スルーして頂いた方に感謝の意を表してあとがきにかえさせていただきます。
短編書ける力がほしい…

315:名無しさん@ピンキー
07/09/30 18:02:41 fmbTZEkr
>>314
最後にあとがきを入れるなら、別に話の終わりに「END」ってつけなくていいと思う。
前の長編の「HAPPY END」の一文にはなんだか違和感があったし。

316:292
07/09/30 18:29:59 0mhTAznr
>>304 
好きなシュチエーションなので激しく期待。GJですよ。
>>314
仕事早いなー。乙です。十分エロイw。

新しい選択肢を42様が満たしてくれたので、①で書いてみる。
遅筆なんで1ヶ月近くかかりそうだけどさ。
できるだけ短く・・長くなったら自重するので期待はしないでくれ(´・ω・`)。

317:名無しさん@ピンキー
07/09/30 19:03:52 AMruGbAG
自重なんていわずにできれば長編の方が嬉しいんだぜ。

318:名無しさん@ピンキー
07/09/30 20:30:12 I0y65mlB
千里と芽留の貧乳同盟が胸を大きくすべく
二人がかりで望を襲い胸を愛撫させる

教師と生徒という関係を保とうとするも望も男の性には抗えず
千里と芽留もまた意中の男の愛撫によって火のついた身体は治まらず
脈動する絶棒はふたつの華を赤く散らし



みたいな妄想を思いついたが文にする時間がない

319:名無しさん@ピンキー
07/09/30 20:36:33 wTxay45g
ネタはあるがエロシーンが書けない

320:名無しさん@ピンキー
07/09/30 20:57:01 fmbTZEkr
>>319
今までもそういう作品は幾つかあるし、基本的に無問題。

321:名無しさん@ピンキー
07/09/30 21:11:51 8Vi2yviX
エロイ妄想なら小説にしなくてもとりあえず垂れ流してみれば

322:名無しさん@ピンキー
07/10/01 00:51:54 NSsxm6vq
智恵>カエレ>あびる>奈美>霧>(中略)>千里>マリア>芽留
ぐらいだと思うんだが中略部分がわからん


メインキャラの胸のサイズの話だけど

323:名無しさん@ピンキー
07/10/01 01:05:26 U8OP/JgC
>>322
単行本派か?
多分あびると奈美の間に晴美が入るはずだぞ。

324:名無しさん@ピンキー
07/10/01 01:11:17 L8NMTWMr
あびる≒藤吉>奈美>霧>大草>可符香>加賀>千里>マリア≒芽留
三珠は加賀さんと千里の中間ぐらいと予想
あびると奈美と藤吉は隠れ巨乳で可符香は平均サイズ、加賀さんがやや小さめだと思ってる

325:名無しさん@ピンキー
07/10/01 01:33:28 U8OP/JgC
メインキャラ中にまといと倫と真夜は入らないそうです

326:奈美の受難
07/10/01 01:41:31 DC4+srnr
「普通っていうなぁ!!」いつもの様に教室に空しい叫びがこだまする。普通少女こと日塔奈美は今日も絶望先生こと糸   色望に『普通』呼ばわりされて憤慨していた。
「はぁ…」放課後奈美は人もまばらになった教室で一人ため息をついて机に突っ伏していた。
−−−−いつも普通普通って先生は私の事−−−−
「どうしたの?奈美ちゃん。」そこへポジティブ少女風浦可符香が今の奈美の様子とはまさしく正反対な陽気な声をかけてきた。


327:奈美の受難
07/10/01 01:42:18 DC4+srnr
「か、可符香ちゃん!?」急に話かけられて声がちょっとうわずる。
−−−さっきまでいなかったはずなのに−−−
そんな疑問も一瞬浮かんだが、可付香の優しそうな笑顔を見ていると、今の自分の悩みを解決してくれる−−−そんな風に奈美は思い始めた。
「ちょっと悩みがね…。ねぇ、可付香ちゃん」
「何?」相変わらず笑みを浮かべている可付香に奈美は思い切って打ち明けた。
「先生を見返したいのッ!」
「はぁ…?」内容の飛んだ話に可付香は話を把握できてないように小首をかしげている。


328:奈美の受難
07/10/01 01:45:00 DC4+srnr
「あ…ご、ごめんね!いきなりこんな事いって。ほ、ほら私いつも先生に……その、ふ…」
「普通。」
「普通っていうなぁ!って、そう。いつもそういわれるじゃない?」
普通−−−自分では言いたくないのか、奈美がためらっているのを見て可付香が言葉を繋げ、脊髄反射でその言葉に反応する。
「だから一度でいいから違う反応を先生にさせてやりたくて…可付香ちゃんならなんかいいアイデア出してくれるかなって。お願い!きょうりょk「もちろん協力しますよぉ!」言い終わる前に可付香が答える。
その目は新しいおもちゃを見つけた子供のような光が帯びていたがそれに奈美は気付かなかった。


329:奈美の受難
07/10/01 01:45:42 DC4+srnr
「ん〜そうですねぇ〜。やっぱり外見から変えるのが一番効果的だと思うんですよねぇ。」
可付香は手を組んで胸の前に置いて明後日の方向を向きながら話し始めた。
こういう時は可付香にエンジンがかかった証拠だ。
「あ、あの…そんなに一生懸命にならなくても…。」
あまりに快く引き受けてくれたためか奈美は多少戸惑っていた。
そのうち可付香はブツブツ呟く様にしゃべり始めた。
「…可付香ちゃん?」
「…ポ……ッカ……来世…肉花……ポジ…ス……プ」
危険そうな単語が途切れ途切れに聞こえてくる。
−−−マズい事になりそう−−−−奈美は直感的に感じた。


330:奈美の受難
07/10/01 01:47:12 DC4+srnr
「か…可付香ちゃん!や、やっぱいいや!迷惑だよね!?」
「何を言っているのですか♪迷惑な訳ありませんよ。よし、決まりました。さぁ!準備しにいきましょう!」
「いやぁぁ!いいってばぁ!」
 可付香にズルズルと引きずられ、廊下を移動する。
−−−−もうどうにでもなれ−−−−−−−
奈美はもはや抵抗するのをあきらめ、涙を浮かべながら引きずれるがままになっていた。


331:奈美の受難
07/10/01 01:48:11 DC4+srnr
しばらく引きずられていると向かい側から藤吉晴美が現われた。腕には重そうな封筒が抱えられている。中身が気になる所だが今はそんな余裕は無い。
間もなく晴美もこちらに気付く。
「あれ?二人ともどーしたの?」
「これから奈美ちゃんを普通じゃなくしちゃうんですよぉ♪」
「へ、変な言い方しないでよ〜!」
涙目で抗議する奈美を横目で見ながら、
「へえ…た、大変ねぇ…。」厄介そうな事は避けようとそのままやり過ごそうとした時、
「まずは服装からだと思うんだけど晴美ちゃんはどう思います?」
服装−−−−その言葉に体がピクリと反応した。


332:奈美の受難
07/10/01 01:49:06 DC4+srnr
「それってコスプレってこと?」晴美の目の色が変わる。
晴美はしばらく奈美をじーっと見つめていると何か思いついたらしく、
ニヤマリと笑った。
「そうねぇ…私も手伝っていいよねぇ?」拒否不能の響きだった。
−−−−あぁ、私はいったい何をされるのだろう。−−−抱えきれない不安を奈美は覚えた。



333:奈美の受難
07/10/01 01:50:22 DC4+srnr
小一時間後、空き教室で二人は奈美を満足そうな顔で眺めていた。
「これでいいかな?」
「そうですね!かわいいですよ!」
「よし!奈美ちゃんおつかれさま〜。」
「うぅ…」
奈美は恥ずかしくて死にそうだった。
たくさんフリルのあるメイド服。簡単に言えばそんな格好をしている。
ぎりぎりまで短くしたスカート。そしてニーソで絶対領域を演出している。
上半身はというと肩は完全に露出されていて、胸元は大きく開かれて胸の谷間が垣間見える。さらに背中は半分以上が露出している。
体を覆う部分もタイトな作りのためボディラインがはっきりと出て普通に大きい胸を強調している。


334:奈美の受難
07/10/01 01:51:34 DC4+srnr
死にたい…」顔を真っ赤にして俯きながら呟く奈美に、
「よく似合ってますよ奈美ちゃん♪」
「ホントホント。それに前から思ってたけどやっぱりこれよく似合うな〜」
と晴美が奈美の頭についているものを撫でる。
「やっぱ奈美ちゃんはワンコよね〜」ホレボレした様に晴美が言う。
奈美は頭に犬耳をつけられていた。
「もうなんなのよ!これぇ!」奈美がポロポロ涙をこぼしながら抗議する。
「普通じゃなくなりたいんでしょう?」
「うっ…そうだけど…」
可付香にそういわれると何も言えなくなってしまう。


335:奈美の受難
07/10/01 01:52:20 DC4+srnr
−−−−確かに自分で望んだ事だけど…これじゃちょっと…−−−
「ねえ」晴美の問いかけに奈美の思考は遮られた。
「ん?なに?」
「なんで普通じゃない様にしようと思ったの?」
−−−−え?
「聞いてないの?」
「ん〜聞こうと思ったんだけどね〜。別にいっかぁって。」
−−−−別にいっかぁって…私これでもかなり悩んでたのに…
「そんなことよりもさぁ。」
−−−−そんなことよりって、何のためにメイド服以外にもあんなのやこんなの着たと思ってるのよ…


336:奈美の受難
07/10/01 01:53:46 DC4+srnr
「他の耳もつけさせてもらっていい?」
「いいわけあるかぁぁ!」そう叫ぶと奈美は晴美に襲いかかった。
「フガー!!」
「ヒィイイ!?」奈美のあまりの勢いに晴美は一瞬ひるんでしまった。
瞬く間に奈美はマウントポジションを取った。
「あうぅ、ど、どうしたの!?奈美ちゃん?」
「どうしたもこうしたもあるかぁぁぁ!晴美ちゃんにはもっと恥ずかしい格好してもらうからねッ!」
「えぇッ!?なんでぇ!?」
「何でとか言うなぁ!!」奈美はスカーフに手をかける。
「あ、やだッ!ちょっ、ちょっと!可付香ちゃん!?奈美ちゃんを止めてッ!!」
しかし可付香はいつの間にかいなくなっていた。そうしてる間に奈美は奪ったスカーフで晴美の両手を縛った。


337:奈美の受難
07/10/01 01:54:34 DC4+srnr
「ッく、痛ッ」
運動神経は晴美の方が断然上なのだろうが今の暴走状態の奈美は第二のバッテリーが発動していた。
身を捩って逃げようと試みる晴美を熱に冒されたような笑みで奈美は見つめる。
「ハァ…無駄よ。晴美ちゃん。フフフ…じゃあこの耳からつけよっか。」
晴美に逃げ道は無かった。このままあんな事やこんな事をされるのかと覚悟を決めかけたとき部屋の部屋のトビラが開かれた。
助かった。晴美はそう思った。トビラを開けた人物を可付香だと思っていたからだ。
しかし、正確には違った。可付香以外にもう一人いた。


338:奈美の受難
07/10/01 01:55:05 DC4+srnr
「あなた達こんな時間まで何をやっているのですか!今日の戸締まりの当番は私なんですよ!
なんで私の時に限ってこんな時間にまで残っているのでしょう…ああもう絶望し…」ここまで言いかけた時やっと望は今の状況を認識し始めた。
「あ、あなた方いったい何を…それに日塔さんその格好は…?」奈美の格好を見て少し頬を赤らめた望むが尋ねた。
「い、いや…これはその、なんて言うか…」
「決して変な事をしてるわけじゃあ無いんですよ。」
いきなりの望の登場に素に戻った奈美がしどろもどろに喋るのを晴美がフォローする。


339:奈美の受難
07/10/01 01:56:06 DC4+srnr
「あははは…そうですよ!なんて事無いですよ!別に何も…」
「そ、そうですよね〜先生驚いてしまいましたよ。これは証拠過多ですよね〜。」
「アハハハハハ……」三人の乾いた笑い声が響く。
「って信じられますかぁ!!さすがに自分に対してこの嘘は厳しいです!絶望した!!生徒達の知らなきゃ良かった秘め事に絶望した!!私は何も見てません!見てませんからぁぁぁ!」そう言うと望はばたばたと廊下を走り去った。
「ど…どうしよう。」二人は顔を合わせて言った。
そこへ今まで傍観していた可付香が近づいてきた。
「おめでとう!奈美ちゃん!」
「へ?」奈美は何の事だかわからなかった。
「これで先生は奈美ちゃんのこと一目置く様になりますよ!普通脱却です!」
「こんなので普通じゃないって思われたく無いよぉ!」と嘆いた。
「普通の反応ですね。」ちょっとつまらなそうに可付香が言う。
「普通って言うなぁぁ!」


340:奈美の受難
07/10/01 02:00:34 DC4+srnr
終わりです。
本当は先生と奈美でエロエロなのを書くつもりでした。
でも出来上がったのを見るとなんかこれ百合気味ですね。
次はちゃんと本筋に沿えるようにできたらいいかと。
長い投稿すみません。異論反論オブジェクションは受け付けます。
ではまた。

341:名無しさん@ピンキー
07/10/01 02:01:26 U8OP/JgC
まず投下予告をしてくれ。でないと色々と困る。

342:名無しさん@ピンキー
07/10/01 02:04:25 H7en+mtv
>>340
乙ですー。
奈美ってホント弄られキャラだなと、つくづく思ったw。

343:名無しさん@ピンキー
07/10/01 02:07:37 Lhss8XkA
>>340
キャラの特徴が良く出てて、普通に面白かったと思う
個人的には先生と奈美でエロエロなのも見てみたかったw

344:名無しさん@ピンキー
07/10/01 02:36:07 NSsxm6vq
>>340
「先生と奈美でエロエロなの」の予告編と受け取ったw
携帯で表示されない記号は使わないでほしいな

>>323
晴美はたまたま手元にあった2巻見て中略部分に含んだ

まといは和服だからわからん…と思ってたけど
1巻51ページの写真見た限りでは奈美>まとい>霧ぐらい?

345:名無しさん@ピンキー
07/10/01 09:21:26 H+ydz9Qv
最近真昼さん来ないねー
続きが気になるよう

346:名無しさん@ピンキー
07/10/01 16:01:56 I6pgEhP9
真昼氏のSSを読んでから改めて氏のMADを見ると
破壊力がすごい・・・目から水が出っ放し

347:名無しさん@ピンキー
07/10/01 16:34:15 aj1EPeZD
>>346
同意。
脳に焼き付いて離れん。

348:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:18:25 HpW7s433
>>346>>347
俺も。目から汁が出てくる

349:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:36:07 aj1EPeZD
最近、可符香・まといss読んで、30倍悲しい読んで、真昼氏MADを見るローテー

350:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:40:35 fVsH/ta0
>>349
なんという鬱ローテーションww

351:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:46:35 UNnVMfoU
あばば何か呼ばれているような気がする、気がするですよ真昼野郎です。
まさかお待ちいただいてるとはつゆ知らず。てか待っててくれる人が居た事に感涙。
またもスレ容量消費させていただきたく参上仕りました。今回は7レスほど。

352:真昼が雪 43
07/10/01 18:47:51 UNnVMfoU

「これで、僕の話はおしまいです」
語り終えた久藤は、ふぅ…と深く息を吐いた。
目を閉じ、じっと聞き入っていた望は、
「―おしまい、ですか」
そう呟いて、椅子から腰を上げた。
「はい。おしまいです」
久藤も立ち上がる。
もうすっかり、下校時刻は過ぎていた。
「随分と…長いようで、短い話ですね」
「ほとんど人伝に聞いた話ですから」
「彼女に問う事は、しなかったのですか」
「僕にその資格はありません」
立ち上がった久藤は、出口ではなく窓へと歩み寄る。
夕闇がさし迫る校庭を見下ろして、寂しげに呟いた。
「彼女と再会して、僕は―心底、何もしなかった子供の自分を呪いました」
「…誰も貴方を責めないと思いますよ、私は」
そんな慰めに意味はないと知りつつも、望はその背に言葉を掛けずにはいられなかった。
日に日に彼女の笑みは、硬度を増していく。
それがいけない事だと肌で感じながらも、それを止める事が本当に彼女の為になるのか、結局彼は最後の最後まで判らずじまいだった。
「彼女は不幸でした。
 だけど、傍で僕がいつものように物語を語っている間、彼女は幸せそうに笑ってくれました。
 それが嘘モノと知ってたのに僕は―その笑顔に、縋ったんです」
問う事で、その笑顔を崩す事が恐ろしかった。
彼女の傍で語り部で居れば、彼女はずっと笑っていてくれる。
『私の事、これからは、風浦可符香って呼んでね』
そう言われた時も、特に理由を聞く事はしなかった。
何も問わずに頷けば、彼女は満足気に微笑んでくれた。
人としての故障ごと、彼女を受け入れる―それが、彼の役割になっていた。

353:真昼が雪 44
07/10/01 18:49:19 UNnVMfoU
「―ひとつ、貴方は勘違いをしています」
「…え」
振り返る久藤の顔は、年相応の少年のように、不安定に揺れていた。
対する望は、まるでいつもと違う、大人のような落ち着きを宿した表情で、言葉を続ける。
「きっと貴方の傍に居る時の彼女は、本当に幸せだったんだと思いますよ。
 だから―貴方の見てきた彼女の笑顔は、嘘モノなんかじゃありません」

「――……」

その言葉に。
何だか救われた気分になってしまって、久藤は不覚にも泣きそうになった。
そんな自分を必死に律して、表情を隠すように俯く久藤。
「…何だか今日の先生は、まるで先生みたいですね」
「日本語がおかしいですよ、久藤君。あと、何だか失礼な事を言われた気がするのは」
「気のせいです」
顔を上げた久藤の表情は、すっかりいつもの微笑に戻っていた。
その笑顔は、いつもより幾分柔らかい。
ああ、彼はこんな笑い方も出来るのか…と内心で歓心しながら、望もフワリと笑い返した。
「それで、先生。僕の話は、何か役に立ちそうですか?」
「さて…それはまだわかりません。けど、聞いて良かったと思います」
踵を返す望。
「引き止めてしまってすみませんでしたね。
 もうこんな時分です―久藤くんも…」

背を向けた望の身体が、ユラリと揺れた。
出口に向う望の歩が、止まる。

「―早く、か…――え―っ、て…っ」

途切れた言葉と共に、望の身体はゆっくりと床に崩れ落ちていた。

「先生―!」
咄嗟に走り寄ってきた久藤に抱き止められたおかげで、寸での所で床との顔面衝突は避ける事が出来た。
が、せり上がってくる嘔吐感と痛みだけはどうしようもない。
荒い呼吸の中で、「大丈夫です、大丈夫です…」とうわ言のように呟き続ける望。
明らかに大丈夫ではないその様子に、久藤はまるで望と痛みを共有しているかのごとく表情を歪ませた。
「先生、とりあえず保健室に行きましょう」
言いながら、望の身体を背負い上げる久藤。
そのあまりに軽い感触に、久藤の内心の不安は煽られるばかりだった。


◇ ◆ ◇ ◆

少女は走る。
呼吸を荒げて、泣き出す直前のような表情で走り続ける。
その様子を、病院の廊下の窓から見下ろして、

「――本当に、酷い男だな…我が弟ながら」

糸色命は、泣き出す直前のような表情で、呟いた。

◇ ◆ ◇ ◆


354:真昼が雪 45
07/10/01 18:50:15 UNnVMfoU

心臓が、肺が、血を巡らす管達が、もう限界だと叫んでいる。
それでも彼女は走るのをやめない。全力で廊下を蹴り、前へ前へと突き進む。
校内はすっかり夕闇に溶け込んでいた。
最近は日が落ちるのが早い。外はすっかり暗くなっているものの、時刻にすればまだ六時前後といったところだろう。
校門は閉まっていた。だが、校門以外にも学校への入り口というものはあるのである。
もちろんソコは一般生徒…どころか、教職員達も知らない秘密のスポットなのだが、今はそんな事はどうでもいい。
とにかく彼女はそこから学校に潜入し、こうして廊下を駆けている。
向う先は―宿直室だった。
その細い足のどこからそんな力が湧いて来るのか不思議になるほどの速度で、彼女は走り続ける。

「―杏ちゃん」

酸欠で霞がかった意識に、ハッキリと響く男子生徒の声。
彼女は咄嗟に立ち止まろうとして、だがすぐに勢いが殺せる訳も無く、そのまま前のめりに倒れそうになる。眼前に迫る、冷たく硬い床。
「わぁ…ッ!」
小さく悲鳴を上げて、襲い来るであろう衝撃に身を竦ませる可符香。
だが、彼女の身体に訪れたのは固い床の感触ではなく、両の腕で包まれる柔らかな感触だった。
「大丈夫?」
恐る恐る目を開き、視線を上げると、そこには心配そうにこちらを覗き込む幼馴染の少年の顔がある。
「准君…」
「危ないよ。急いでいるのはわかるけれど、君が怪我したら先生も、きっと悲しむ」
久藤の口から紡がれた「先生」という言葉に反応して、ハッと目を見開く可符香。

355:真昼が雪 46
07/10/01 18:51:51 UNnVMfoU
「あ、ありがとう准君!でも、私急いで先生に――」
「先生なら、そっちには居ないよ」
自らを支える腕を押しのけようともがきながら、早口にまくし立てる可符香の言葉を、久藤は静かな声音で遮った。
可符香は驚いたように久藤の顔を見上げる。
大きな丸い瞳の中に、久藤の穏やかな微笑みが映り込む。
「どうして…?」
「先生は、保健室に居るよ」
久藤はそっと可符香から身体を離し、すっと保健室の方を指し示す。
「どうして、准君が知ってるの?」
「―急いでるんだろう、杏ちゃん」
可符香の問いに答える事はせず、久藤は可符香に早く行くよう促してみせた。
釈然としないながらも、この質問の優先順位はそう高いものでもない。
可符香はコクリと頷いて、機敏な動作で踵を返す。
「うん…。教えてくれてありがとう、准君ッ」
駆け出しながら礼を言う可符香の背中に、小さく「いってらっしゃい」と声を掛けながら手を振る久藤。
遠く、小さくなっていく可符香の足音の残響を聞きながら、久藤は窓の外へ視線を移した。

ふと。
「―あれ」
頬に濡れた感触を覚えて、そっと掌で撫上げた。
それが涙である事に、しばらく気付くことが出来なくて、呆然とする久藤。
涙は一筋だけ彼の頬を濡らして、顎を伝い落ち、制服に小さな染みを作る。
それはすぐに乾いてわからなくなる程度の、小さな跡。
窓ガラスに映る自分の泣き顔に苦笑しながら、久藤は掠れた声で一人ごちた。

「あぁ…そうか。
 僕も―彼女の事が、好きだったのか」

一瞬の悲しみを、ほんの一滴の涙で洗い流して。
瞬きの後にはもう、彼はいつもの静かな笑みに戻っていた。


356:真昼が雪 47
07/10/01 18:52:56 UNnVMfoU

早鐘を打つ心の臓。そのリズムに合わせて、米神がズキンズキンと痛んだ。
それでも彼女は止まらない。思考に回す労力は、今は走る為に使う。
今までにない程全力で駆けて――久藤と会話して数分も経たぬ内に、彼女はそこに辿り付いた。
保健室。
白く記されたその三文字は、暗闇の中にも溶け込む事無く、彼女の瞳に映し出された。
「っは、っは、っは――ッはぁ」
扉の前で、すっかり熱くなった全身を冷ますように呼吸を整える。
途中で何度も咽こんで、彼女は痛む肺を直接握りつぶそうとするかのように、自らの胸を掴んだ。
熱暴走した身体は、夜気と―それ以外の、徐々に湧き上がる良くない感情に、外と内から冷やされていく。
どうにか呼吸が治まり、胸から手を引き剥がしながら、ゆっくりと瞳を閉じた。
―この先、何があっても声が震えないよう、一度だけイメージトレーニングをする。
「……――」
自慢のアルカイックスマイルを拵えて。
彼女は、静かに保健室の扉を開いた。

糸色望は、まるで人形のような顔色で、そこに横たわっていた。

窓にカーテンはかかっていなかった。月光が、青白く室内を照らしている。 
人が居るならば、いつもはベッドとこちら側を間切る為のカーテンが閉まっている。
だが今は、ベッドの上に人が横たわっているにも関わらず、それは開いたままになっていた。
「――先生?」
声を掛ける。その声が震えていない事に満足しながら、彼女はゆっくりとベッドまで歩み寄る。
「先生。私です―寝ているんですか?」
横たわる彼の隣に立つ。近くで見ると、元来の肌の白さも手伝って、彼の肌は病的に人形じみていた。
触れても、体温がある気がしない。
「先生…」

357:真昼が雪 48
07/10/01 18:54:04 UNnVMfoU
薄い胸が上下して居る―呼吸は、あるようだ。
だがそれだけでは確信を持てずに、薄く開いた唇から漏れる呼吸を確認するために、そっとその上に掌を翳してみる。
掌を擽る僅かな息遣い。本当に、僅かな。
「――先生…」
もう一度、呼んだ。
「先生。起きて下さい……、起きて下さいよ」
翳した掌を、そのまま頬に滑らせる。
返ってくる感触は思いのほか柔らかだった。
マネキンのような硬く冷たい質感を想像していただけに、少し驚いてしまう。
少し考えればそんな筈はないのだが、彼の肌の青白さは、そう思い込んでしまうほど人間味が無かった。
「………」
確かに掌に感じる体温が、じんわりと掌から全身に伝わるような感覚が、可符香を安心させた。
安堵の吐息を吐くと、それに反応したかのように、望はゆっくりと両目を開いた。
「あ―やっと起きましたね」
「……目覚め、の」
「はい?」
ぼんやりと中空を見つめていた彼の目が、優しげな笑みの形を象る。
頬に置かれた小さな掌に、自らの掌を重ね合わせながら、可符香の瞳を仰ぎ見る望。
「目覚めのキスでも、してくれたんですか?」
自らの掌を覆う、以外にも大きく暖かな掌の感触。
それに何故か泣きそうになりながらも、彼女は必死にその感情を笑みの中に押し隠しながら答えた。
「…して欲しかったんですか?」
「ええ、わりと」
「わりと、ですか」
いつもの、何という事のない会話。
可符香はクスリと微笑んで、いつものようにからかう様な口調で返した。
「でも、それじゃ立場が逆じゃありません?
 まぁ確かに先生は、王子様より眠り姫の方が似合ってますけどね」
「それは嬉しくないですねぇ」
「綺麗だって言ってるんですよ」
「―……やっぱり嬉しくないです」
「ふふッ」
じゃれ合うように軽口を言い合う。掌は、重ねたままで。

358:真昼が雪 49
07/10/01 18:55:21 UNnVMfoU
不自然な程に穏やかな空気が、二人の間に流れていた。
いつもの二人ならば、もう少しだけ賑やかな会話になっていただろう。
可符香が望にからかわれ、嘆く望をまた可符香が宥め賺す。
だが今は、まるで望の方が年長のように―事実年長者なのだが―落ち着きを払い、
彼女は認めてはいないものの、逆に少しだけ、可符香の心が乱れている。
いつもとは、立場が逆転していた。

「随分と…急いで来たのですね」
「え?」
「掌が熱いですよ―それに、少し汗ばんでいます」
もう十分に冷えたかと思っていたが、どうやらまだ冷却が足りなかったようだ。
可符香は少しだけ焦ったように手を引いた。その動きに気付いて、望も重ねていた掌を放す。
お互いに名残惜しさを感じながら、二つの手は放れていった。
「気のせいですよ」
すかさず言い返す声音は、まだ震えてはいない。
「そうですか」
特に突っかかる事もせず、望は素直に頷いて見せた。
その顔に浮かぶ楽しげな微笑に、見透かされたような不快感を感じる。
「それで、そんなに急いで来たんですから…何か大事な用があったのでしょう?」
「だから急いでなんて居ませんよぉ。悠々と歩いて来ました。それに、大した用事でもありません」
本当に、いつもと立場が逆だ。
可符香は望にからかわれている事を自覚して、僅かに眉を顰めた。
「拗ねないで下さい、風浦さん」
「からかわないで下さい、先生」
売り言葉に買い言葉。このままでは、ちっとも本題に入れない。
可符香はコホンと小さく咳払いをして、場の空気をリセットした。
「―絶命先生に会ってきました」
命がその場に居たら即座に名称に対して突っ込むだろうが、残念ながら当人はこの場には居ない。
もしかしたら今頃、くしゃみの一つでもしているかもしれない。
脳裏に兄の姿を思い浮かべながら、聞き返す望。
「兄さんに?」
「はい」
「それで、何を話したんです?」
ぐっ、と。可符香は思わず拳を握り締める。
何を…と、聞き返す望の態度に、怒りに似た感情が込み上げる。
何を話したか。そんなもの、一つしかないではないか。
「…先生、倒れましたよね。私の、目の前で」
「―……ええ。あの時は、本当にありが」
「なのに何で、学校に居るんです?」
今更礼を言おうとする望の声を断ち切るように言い放つ可符香。
僅かに、声が震え始めていた。
「お兄さんに聞きました。先生、今すぐ入院しないといけない病気……なんでしょう?」
揺れる瞳を隠すように俯きながら、可符香は病院での命との会話を、思い出していた。


359:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:55:42 nKG6KBr2
原作五十三話
『あれ 不可よ 原作があるじゃないかね』より


「逃げ道なんて、許せません!逃げずにきちんと説明するべきです!」
「まあ、まあ、熱くならないで」

ぽむっ

「あ」

こ、これは…
『もにゅ』
『あん』
なかなか…
『さわ、さわ』
『ん、ふ』
素晴らしい
『きゅ、すりっ』
『ひぁん』
感触ですね




「で、オチは?」
「考えていないみたい」
「投げっぱなしね」
「自分の妄想をぶつけたダケの品のナイ投下ダナ」




360:名無しさん@ピンキー
07/10/01 18:58:44 UNnVMfoU
あ…あれ?おかしいなぁ。今回くらいでエロ突入する予定だったのに、まったくその気配がないよ?
何故だ。何故こうも話がダラダラ長くなるですか。そしてよーわからん所で区切るな自分。
何かまだ無駄に長くなりそうな予感ですか、俺は独りよがりになってないかー。

361:名無しさん@ピンキー
07/10/01 19:02:14 7CK8yPJf
何だか尾崎な真昼氏キタ----!!!
だめだ保健室のシーンで目が洪水になった
でもこの状態で先生エロできるんですか!?

362:名無しさん@ピンキー
07/10/01 19:06:18 rUUCBm0b
>>360
もうエロでなくても感動一直線でおkだ!
超GJ!

363:名無しさん@ピンキー
07/10/01 19:11:42 An7k8UxR
>>360
うん、もう無理にエロ入れなくてもいい感じ
エロは他の職人さんで補充するから
真昼氏にはこのまま感動路線を突っ走って欲しい

364:アヒル
07/10/01 19:15:54 UNnVMfoU
投下して、初めて気付く、誤字脱字。アオォオオ…!ちょっとこればっかりは直さなあかんばい!

真昼が雪49より。
×可符香が望にからかわれ、嘆く望をまた可符香が宥め賺す。
○望が可符香にからかわれ、嘆く彼をまた可符香が宥め賺す。

読み返して投下しろっつーのド畜生。

365:名無しさん@ピンキー
07/10/01 19:36:00 Qqkf+1o5
>359

GJ、こういう身軽な話は好きだ。
次回作にも期待。

366:名無しさん@ピンキー
07/10/01 20:07:54 HpW7s433
不覚にも准君の所でグッと北

真昼氏GJ!!

367:名無しさん@ピンキー
07/10/01 20:30:21 UhPp5s2H
真昼さんに一生ついていこうと決めました

368:名無しさん@ピンキー
07/10/01 20:53:56 zWVlYJ05
>>360
真昼氏…こ、呼吸困難…。
本当に、全員キャラが深くて、そして話の作り方が上手い!!
じわじわとクライマックスが近づいてきた感じですね。

もう、この先、毎日正座待機ですよ!
いや、別に義務を感じさせているわけではっ!
めちゃくちゃ期待してるけどっ!!


369:名無しさん@ピンキー
07/10/01 21:37:47 dxQ1HysN
>>360
先生のもとへ駆ける可符香にグッときました・・・・・・・・・・!
何かもう、この不器用な二人を見ていられない・・・
期待してます・・・!




>>368
・・・・・・もしかして430氏ですか? いえ、なんとなくw

370:名無しさん@ピンキー
07/10/01 23:57:09 zWVlYJ05
>>369
何故分かる!?
絶望した!語彙が少なくてすぐに身バレする自分に絶望した!


371:名無しさん@ピンキー
07/10/02 01:03:50 qJuqNU3G
SSみたいな比較的長文を書くと、文章のクセをすぐ掴まれちゃうよね。
俺も見破られているかな。この2行じゃ無理だと思うけど。

372:名無しさん@ピンキー
07/10/02 01:29:36 H4mOQZnR
>>340奈美が逆襲と珍しい展開に驚いたが普通に戻ったラストは安心感があって良いですね

373:名無しさん@ピンキー
07/10/02 01:58:10 dcaWJPQi
>>371
藤吉さんと絶望先生書いた人じゃないのか?

374:42
07/10/02 03:49:58 V64ThWgj
こんな真夜中になんですがあびる短編投下します。
一応、前回とつながってます。

375:ある日曜の昼下がり
07/10/02 04:07:39 V64ThWgj
「先生、居る?」
よく晴れた日曜の朝、あびるは望に会いに学校へ来ていた。
宿直室のドアを開けるとスヤスヤと眠っている望の姿があった。
「あ、寝てる」
お昼寝中だろうか?あびるは忍び足で望に近づいてゆく。
とその時――
『ぐにゃり』
ふとした拍子にバランスを崩したあびるは望の「そこ」を踏みつけてしまった。
「わっ」
足をM字にして倒れこんでしまったあびる。
あ、先生は…気がついてないみたい。
「痛く…なかったのかな」
望は未だ熟睡している。
ふっ、あびるの足裏に先程の感触がよみがえる。
あびるは顔を紅潮させながら自然と望の股間に手を伸ばしていた。

『しゅ、しゅ』
『はぁっ、は、ぁっ』
息を荒くしながら絶棒を左手でしごいていく。
右手は自然と自らの秘所にあてがわれていた。
『ん、ふぅ』
あびるは絶棒が大きくなったのを確認すると靴下を脱ぎ足裏を望の絶棒にそえる。
『ぴとっ…』
なんか…あったかい…
『しゅ、しゅっ』
どこかで得た知識なのかそれともあびるの欲求なのかあびるは自らの足の裏で望の絶棒をしごきはじめた。
ああ、私、足なんかで先生のを…
『ん、ふう』
さっきまで望の絶棒をしごいていた左手は秘所をまさぐっている。
せんせい、あびるは悪い娘です…先生が寝ている間にこんなこと…
『しゅ…しゅっ、こすっ』
『ん、はぁ』
息はますます荒くなり、興奮してゆくあびる。
『じわっ』
足裏にぬるっとした感触。
絶棒の先端からねっとりとした液体が滲み出てくる。
とその時。
「…う、ぅん?」
「あ、わ!」
「~~ん?…っ」
はっ、と我に返る。
急いで下着をはき、望に乱暴にパンツと袴をはかせると、あびるらしからぬスピードで部屋から逃げ出した。



「ぅ…うん、よく…寝ましたねぇ。」
ぼんやりしたと意識が徐々にはっきりとしてくる。
「やはり昼寝は良いものです…?」
ふと股間に妙な感触を感じとる。
「な、まさか…」
股下に目線を移す。
その瞳にはっきりと映るその光景に望は絶望を覚えるのであった。


THE END…


376:名無しさん@ピンキー
07/10/02 08:09:54 RIrltjW8
MADでもSSでも絶望先生には何故死ネタが多いのか朝から考えてみた
先生が色白で線が細くてイケメンなことと
生徒と教師という涙腺系の関係
そして兄が医師というところ
考えたらサナトリウム文学にぴったりのシチュエーションの宝庫じゃないか
そんな設定でギャグを書いてるクメタンはやはりすごいと思った
そしてそんな自分は死ネタMADもSSも大好きです
真昼氏の続きを心よりお待ちしております

377:名無しさん@ピンキー
07/10/02 19:14:19 ogNUkoiT
第四集「津軽通信教育」で先生はテクニシャンになっている。
この設定で智恵先生を弄ぶ話はないものか

378:名無しさん@ピンキー
07/10/02 19:43:23 ZTZOvMw6
連日失礼いたしやす、真昼の奴です。やたら小出しにして申し訳ない。
ホントにちょびっとの投下になりますが、話の区切りを考えるとどうしても短くなってもーて。
5レスほど失礼させてもらいますー。

379:真昼が雪 50
07/10/02 19:46:21 jl7W5YLF

◇ ◆ ◇ ◆

望の授業が終わった後。
可符香はすぐに命の病院へ向った。もちろん、望の病態を詳しく聞くためである。
昨夜の思わせぶりな会話についても、問い質すつもりでいた。
―糸色命は、ああ見えて意外と過保護な所のある男だ。
だからたいした病気でないにも関わらず、用心にと、弟に入院を勧めたに違いない――
病院に着くまでの間に考えた、彼女お得意のポジティブな遁辞は、こんなところだ。
命の病院は相変わらず患者も疎らで、二人で話をする時間は簡単に取れた。

「先生の病態はどうなんですか?」
挨拶もそこそこに本題に入る可符香。その様子に深刻なものを感じ取り、命は真剣な表情で頷く。
「―正直なところ…良くは、ないよ」
「そんなのわかってます。どの程度、良くないんですか」
曖昧な態度の命に、可符香は容赦なく質問を浴びせる。
その頬を、一筋の冷や汗が流れるのを、命は見逃さなかった。
(―ああ、彼女は…。知るのが怖い、のか)
それにも関わらず、少女は必死にここに立ち、返答を待っている。
縋るような眼差しに答えるように、命は口を開いた。
「…早急に入院が必要な程、だ」
「じゃあどうして、先生は学校に来てるんです?」
「それは――」
言い淀む命に、可符香は反論を許さない。非難するような強い口調でたたみ掛ける。
「お医者さんなら、患者さんを治す事を優先するべきじゃないんですか。
 弟さんが大事なら尚の事です。どうして―先生の我侭なんかを、聞いたりしたんですか」
「ど、どうして君が…」
昨夜の事を知っているんだ。そう問い質そうとするも、
「そんな事どうでもいいんです」
ピシャリと言い放った可符香の眼光に二の句が告げなくなり、思わずすくみ上がる。
幼い少女の眼光に圧倒されている自分を、命は自覚せざる得なかった。
「それで先生は―……何の病気に、罹ってるんですか…?」
だが、次に彼女から紡がれた言葉は、先ほどまでの勢いが嘘のように、恐々と発された。
スルスルと萎むように、可符香の瞳に力が無くなっていく。
「―胃を、大分やられていてね…。
 最近食欲が無かったり、お腹を痛がったりしては、いなかったかい?」

紅葉の上に倒れ付す、望の姿を思い出す。そういえば、腹部を押さえていた。
昨日、倒れる直前に取った昼食は、殆ど食べられずに残していた。
彼が倒れた時、肩に触れて初めて、元々細い身体が更に一回り小さくなっている事に気付いた。
思い出してみれば、何故気付かなかったのか不思議な程に、思い当たる節がありすぎる。

愕然とする可符香の様子から察したのか、命は眼鏡の奥の瞳を曇らせた。 

380:真昼が雪 51
07/10/02 19:47:46 jl7W5YLF
「血を吐くまで……どうしてあいつも、気付かなかったんだかな」
その言葉が、まるで自分に向けられたものであるように聞こえて、可符香は胃の奥がきゅうと痛むのを感じた。
だがこの痛みの、何倍もの苦しみを望は味わった―いや、今も味わっているのかもしれない。
「あ、あはは…コーヒーじゃ、なかったんですね…」
乾いた嘲笑で自身を傷つける可符香の様子に、命は痛ましげに眉根を寄せた。

初診の時。それと、昨日望の付き添いに病院を訪れた時。合わせて二度程しか会っていない少女。
本来ならば彼女と望は、教師と生徒という間柄に過ぎない筈だ。
けれど、あまりに必死な彼女の様子は、二人がそれだけの関係ではない事を物語っているように思える。
いくら担任が倒れたとはいえ、それが自らの目前だったとはいえ。
わざわざ学校を早退してまで容態を訪ねに来るのには、何か特別な理由があるとしか思えない。
その『特別な理由』を―自分は聞く権利がある。
それに、昨夜望が残した意味深な言葉。

『やり残した事がある』

確信などない。だがその言葉が、この少女に繋がるような気がしてならなかった。
「風浦、可符香さん」
「はい」
頷く彼女の瞳は、今だ不安げに揺れている。
「貴女は望の生徒さんだ。それに、昨日は望を助けてくれた恩もある。
 けれど―…何故君は、そんなにまで望を気にかけてくれるんだ?」
「それは」

ソレハ、センセイニ、コイヲシテイルカラデス。

彼女が彼を気にかける理由。今まで、ずっとそうだと信じてきた理由。それを口に出せばいい。
そうすれば、命は何の疑いもなく首を縦に振って、自分の質問に何でも答えてくれるだろう。
けれど何故だろう。彼女の唇は、その言葉を紡ぐ事を拒否していた。
笑みの形に強張って、ピクリとも動いてくれない。
(…あれ?)
唇どころか喉も凍りついたようで、無理矢理声を出そうとするも、掠れた呼吸が虚しく漏れるだけだった。
「どうしました?」
「…ぁ、…ァ」
呼吸すら危うくなる。冷や汗が顎を伝って、制服のスカートに染みをいくつか作り出す。

今までならば、すんなりと言えた。彼を監視するその理由。
それは、彼女の中で紛れもない真実であったからだ。
なら今は?
それを言葉に出来なくなったのは―自分の中で、それが真実ではなくなったと、言う事なのか。

381:真昼が雪 52
07/10/02 19:49:28 jl7W5YLF
そんな筈はない。そんな筈はない。
今だこの胸に痞える、以前より何倍も肥大したこの感情は、恋以外の何物でもない。
それ以外のモノとなると―彼女にとって、酷く都合が悪くなるから。

やだなぁ、怖いわけないじゃないですか。
やだなぁ、憎いわけないじゃないですか。
やだなぁ―決して、苛立ちなんかじゃありませんよ。

だってそれらは全て、自分の中にあってはならない感情だから。
そう。いつだって彼に抱いてた、この混沌とした感情は――


『貴女はいつも、何を恐れているのですか』


彼女の心に、深く深く棘のように刺さった、望の言葉が蘇る。
刺し傷が、ズクンズクンと痛みだす。
今まで見てみぬフリをしてきた全てを、無理矢理見せつけようとする残酷な言葉が、痛みと共に蘇る。


『貴女は怖がりだ。人よりもずっと、怖がりだ。
 だからそんなに必死になって、ネガティブな事を否定するんじゃないですか。
 そうでもしないと――耐えられないから』

ああ、そういえば。
――あの時自分は彼の言葉を、少しも否定出来なかったじゃないか。
ようするに、この、恋とは名ばかりの、感情は。

「 あ はは 」

小さな乾いた笑いが、喉から滑り出た。
何かを諦めたように、強張っていた肩から力が抜ける。
何事か呼びかけている命の声を、遠く遠くに聞きながら、可符香は妙に穏やかな心地でいた。
(そうだ…もう、あの時とっくに、言い負かされていたんだ)
せっかく死に物狂いで築き上げた、風浦可符香という人物像を壊された事へのショックよりも、

それを暴いた人間が、彼で良かったという安心感が、彼女を満たしていた。


――そう、人はそれを、恋と呼びます。

 
見開いた瞳に光が灯る。青ざめた頬に赤みが差した。

ようやく彼女の中で、糸色望への恋が、始まった。


382:真昼が雪 53
07/10/02 19:51:02 jl7W5YLF

気がつくと、可符香はベッドの上で横になっていた。
一瞬状況が飲み込めず、真っ白い天井をぼんやりと仰ぎ見る。
「目が覚めましたか?」
隣で聞こえた声にハッとして身体を起こすと、そこには心配そうにこちらを見る命の姿があった。
ここは診察室で、自分は彼に話を聞きに来ていたのだ。
しかし何がどうして、ベッドに寝転がったりしていたのだろう。
「あの、私」
「疲れていたようだね―話の途中で気を失ってしまったんだよ、君は」
言われてぼんやりと思い出す。どうやら葛藤に耐え切れず、意識を失ってしまったようだ。
「す、すみませんでした」
「いいんですよ。どうせ患者さんも来ませんから」
フッと影のある笑い方をする命。どうやら、彼女が寝ている間も来客はなかったようだ。
「どのくらい寝ていたんですか?私」
時計を見てみると、結構な時間が経ってしまっていた。もう夕方になろうとしている。
「気にしないで下さい……あぁ、随分と顔色は良くなったようですね」
可符香の顔を覗き込んで、ホッと息を吐く命。
「……それで、どこまで話しましたっけね」
「あ…ッ!」
言われてハッとなる可符香。
彼女の中で導き出された結論を、今ならば口に出来る。

――そう、それを人は、恋と―― 

「―ぁあ…。そうです」
ふっと、可符香の瞳に力が宿る。薄い唇から漏れた声は、喜びで上ずっていた。

「私―私、先生の事が……好きなんです」

頬を桃色に染めて、潤んだ瞳で言うその表情は、まさに恋する乙女のそれであった。
思わずその台詞が、自分に向けられたものだと錯覚して、不覚にも照れてしまう命。

383:真昼が雪 54
07/10/02 19:52:20 jl7W5YLF
だがすぐにそれが弟に向けられたものと思い直し、一瞬でも高揚してしまった自分を叱り付けながら、命は気まずげに咳払いをした。
「そう…そうか…。そんな所だとは思ってたよ」
可符香はもう落ち着いたようで、さっきまでの不安定な様子とは一変して、真っ直ぐな瞳で命を見つめている。
「絶命先生は、先生がどうして入院を延ばしたのか知ってますか?」
「―人をおちょくる余裕は出てきたというわけですね」
さっき僅かにでも少女にときめいてしまった自分を内心で自嘲しながら、命はズレてもいない眼鏡を人差し指で直した。
「私も理由は聞いていないよ。やり残した事がある……としか」
「―そうですか」
可符香はやおらベッドから降り立ち、ペコリと一つお辞儀した。
「ありがとうございました。絶命先生」
「だからッ!―あーもう、こんな時まで……!」
反射的に噛み付きそうになるのを必死に自制して、ブンブンと頭を振る事でどうにか耐え忍ぶ。
「直接望に聞くなら、早めに行った方がいい。――もう……」
出口に向う少女の背中に、最後に掛けた命の言葉は、彼女を焦らせるには十分なものだった。


――もう、会えなくなるかもしれないから。


バタンッ。
扉が閉まる音と同時に、彼女が廊下を駆け出す気配。
足音が遠ざかったのを確認すると、命も静かな足取りで診察室を出る。
窓から下を見下ろすと、さっきまで自分をおちょくっていた少女とは思えない、必死な表情で掛けていく可符香の姿が見えた。

「――本当に、酷い男だな…我が弟ながら」

 その姿が見えなくなるまで、命はじっと、廊下に立ち尽くしていた。

 ◇ ◆ ◇ ◆


384:名無しさん@ピンキー
07/10/02 19:56:26 jl7W5YLF
短くてすみませんです…それにしてもやたら野郎率が高いSSだと最近気付いた。
何だかエロは無理に入れなくても大丈夫との声がありましたので、お言葉に甘えさせてもらいます。
さすがにこの状況でエロスは不自然やもしれんなぁと思っておりましたので。

385:名無しさん@ピンキー
07/10/02 20:07:50 E7JLkbVg
真昼さん連日乙です。

やだなぁ、エロは次のSSで入れればいいじゃないですかぁ。
真昼で号泣した後でラブエロお待ち申し上げます。



386:名無しさん@ピンキー
07/10/02 20:37:08 dcaWJPQi
新谷さん曰く、ノーマルでは先生攻めの方がすっごい萌えるらしいです。

387:名無しさん@ピンキー
07/10/02 20:40:44 x6ad+7U0
キミキスのちょっとおまけ劇場を観て、「先生とってもとっても大好き部」という電波を受信したんだけど、どうする?

388:名無しさん@ピンキー
07/10/02 20:49:32 dcaWJPQi
>>387
やるだけやってみようよ。と言ってみる。

389:名無しさん@ピンキー
07/10/02 21:15:02 +/CQLpsv
>>378
・゜・(PД`q。)・゜・
もうここんとこずっとこんな感じ
小出しでもいいから連日投下希望!

390:名無しさん@ピンキー
07/10/02 22:08:43 H4mOQZnR
相変わらず真昼さんの描写力は凄いし次どうなるか気になるぜ

それとツンデレラ続きはマダーーー?

391:名無しさん@ピンキー
07/10/02 22:18:29 x6ad+7U0
>>388 わっかたがんばってみる

392:名無しさん@ピンキー
07/10/02 23:23:01 h7u+bw0X
昼飯が食えなかったのは猫のせいだけじゃなかったのか!伏線だったのか…!!


真昼氏乙です!!続き楽しみにしてます!

393:名無しさん@ピンキー
07/10/02 23:24:36 dcaWJPQi
>>392
猫じゃなくて犬。

394:名無しさん@ピンキー
07/10/03 00:03:53 rjHMEq1w
>>390
待て、鬼畜先生の続きがまだだ


真昼氏GJ

395:名無しさん@ピンキー
07/10/03 00:24:11 zV1gS2Iz
>>394

鬼畜先生て、もしや前々スレだか前々々スレだかのあの鬼畜OP先生か?
あれは俺もずーーーーっとまとい編を待っているんだが・・・職人さんはまだこのスレにいるのだろうか

396:名無しさん@ピンキー
07/10/03 01:44:23 76BnoOEE
>>395
以前のスレでも言ったけどそんなに読みたきゃ直接要求して来いよ
↓のが作者のブログで作品載ってるから。
URLリンク(fujo.blog.shinobi.jp)

397:名無しさん@ピンキー
07/10/03 02:48:43 uZZrnJgG
>369
ちくしょう!気づかなかった!読みなが甘いのか。後
>219
ああ…なんだ…風が…やんだじゃねぇか…
いや言いたかっただけ

398:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:30:35 ccc4T3n1
週慢で出ていた加賀さんの話題に刺激されて軽いのを一本。
加賀さんと先生、あと可符香の3人のちょいエロコメです。いや、ただのコメかも…
少年誌に載せれる程度のことしかしてませんので、エロを期待する方、ごめんなさい。

399:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:31:41 ccc4T3n1
扉の前で、すーっと深呼吸をする。一回、二回…
大丈夫、ただの日直としてのお仕事なんだから。
粗相のないように、失礼のないように、落ち着いて…
「お邪魔します…」
ガラリと宿直室の扉を開けると、糸色先生の顔が見えて、少し心拍数が上がった。

ここが、先生のお部屋…

「加賀さん?」
「は、すいません!すいません!ぼーっとしちゃって!これ、課題です!」
ずばっ、と集めた課題のプリントの束を渡した。
「はい確かに。ありがとうございます。」
「そんな、恐縮です!すいませんすいません!お邪魔しました!」
また、先生とうまく話せなかった。頭が真っ白になっちゃって…
そんな情けなさから逃げ出すように、踵を返したとき。
後ろで、ゴホッ、という音がした。

400:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:32:44 ccc4T3n1
信じたくなかったけど、確かに聞こえてしまった。
振り返って見ると、先生がその口に手を当てている…やっぱり先生の咳だったんだ。
「もしかして私、くさいですか!?」
「はい?」
「だって先生、今、ゴホッって…すいません!すいません!」
「いや、そんなわけ…」
「こんな体で、先生のプライベートな場所に侵入して、異臭騒ぎを起こしてしまって!」
嫌われてしまう、いや、もう嫌われてしまったかもしれない。
今度は、まさに逃げ出すために、先生に背を向ける。
そのまま駆け出そうとした私の体を、がしっと抱きしめられた。
正面から。
「何言ってるんですか。愛ちゃん、全然くさくなんてないじゃないですか。」
「あなた…いつの間に現れたんですか?」
あまりに突然な登場に、私も先生も驚かされた。

401:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:33:55 ccc4T3n1
「くさいどころか…すんすん…愛ちゃん、すっごい良い匂いですよ。」
「やっ…嗅がないでください!くさいですから、私くさいですから!」
私の首に顔を近づけて、くんくんと嗅いでいる。
息がかかって、むずかゆいし、恥ずかしい。
「ほんとに良い匂いなのにー…あ、先生も嗅いでみてくださいよ。」
先生に?そんなの考えただけでも、どうにかなってしまいそうだ…
「だめ、だめです!先生にそんなこと!」
「でも、においの感じ方って男女で違うらしいですし、男の人の意見も聞かないと。」
「…え、いやでもそれはちょっと…身動きの取れない嫌がる女生徒を嗅ぐ変態教師、と世間に…」
「そうですかぁ…先生ってば、愛ちゃんのにおい、嗅ぎたくないんだって…」
頭の中に大音量で、ガーン!と言う音が鳴り響いた。
「…」
「あ、愛ちゃん黙っちゃった…傷つけちゃいましたね、先生。」
「私のせいなんですかあ!?」

402:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:34:27 lPK6XN2i
くさっ!

403:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:34:58 ccc4T3n1
「さあ、先生!愛ちゃんのためですよ!」
そう言って、私の後ろ頭の結んで房になった部分を押し上げる。
そこを嗅いで、ということらしい。
どうあっても離してくれそうになかったので、私は、もう抵抗するのは諦めていた。
「ああ、PTA様に見つかりませんように…加賀さん失礼します。」
ひあ、と声が漏れた。そんな私を見ている彼女は、なんだかいつもより嬉しそうだ。
くんくんと鼻を鳴らす音と、うなじの辺りの空気の流れを感じ、顔が紅潮する。
恥ずかしすぎて、視界がチカチカした。でも、先生は…先生は、なんて言ってくれるんだろう?
怖いけど、後ろから聞こえる声に耳を澄ました。

「うん。くさいだなんて、とんでもありません。良い匂いですよ。」

「…愛ちゃんの匂い…先生好きだって…よかったね…」
耳元で、私だけに聞こえるように小声で囁かれた。
「おお、愛ちゃんの力が抜けていく!」
二人の言葉を受けて、足に力が入らなくなってしまった。そのまま畳にへたり込む。

404:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:36:08 ccc4T3n1
「落ち着きましたか?」
「愛ちゃん大丈夫?」
座りこんでしまった私に、二人が声をかけてくれた。
先生は、ちょっとだけ顔が赤くなっていた。
「あ…はい、大丈夫です。すいません、ご迷惑をおかけして。」
「愛ちゃん、咳なんかであんな気にしなくていいんだよ。」
「そうですよ、私が保証します。」
さっきの先生の言葉のおかげか、二人の言葉が素直に入ってくる。
「ありがとうございます。」
「うんうん、愛ちゃんは良い匂い。」
また、くんくんと嗅がれる。くさくないにしても、やっぱり恥ずかしい。
「…すんすん……あれ?愛ちゃん…愛ちゃんの手、カニのにおいがする。」

予想外の発言に、私と先生は一瞬言葉を失った。

405:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:37:02 ccc4T3n1
昼食に食べたカニだろうか、きっと私なんかが、たらばがにを食べたから、バチが当たったんだ。
「すいません!すいません!カニくさくてすいま」
はぷっ。
「ひゃん!」
唐突に指をくわえられた。
「ちょ、あなたいきなり何やってるんですか!?」
「カニの味がするかなー、って。しませんでしたが…もう一度やってみます。」
かぷっ、ちゅぅー。
「だめ、だめです!私の指なんて、カニのにおいのするような不潔な…やっ…あぁ…」
「そんなカニの味なんてするわけ」
「あ!今、一瞬カニの味がした気がします!」
「ええー!?」
「あ、疑うんですねー。なら先生も試してくださいよ。」
先生に指を?そんなの考えただけでも、どうにかなってしまいそうだ…

なんだか、似たような情景をほんの少し前に見た気がする。

406:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:37:52 ccc4T3n1
……
宿直室の畳の上に、望と可符香が座りこんで話している。
「愛ちゃんは、くさくない、汚くない、って言いたかっただけなのに、大変な事になりましたねえ。」
「煽ったのはあなたでしょうが…」
二人の視線の先で、愛は望の左手を握り、左半身を下にして寝ていた。
先ほどまでに比べ、衣服が乱れている。靴下は脱がされたようで裸足だ。
「そういう先生だって、夢中になってたじゃないですか。」
「…カニを食べるときは無口になる、とでも言いましょうか…」
適当なことを言って誤魔化した。
「その例えはどうかと思います。でも、愛ちゃん…可愛かったですからねえ。
 もう途中から、ずっと先生の指くわえて離さないし、先生が間違い犯しちゃったのも仕方のないことです。」
「やっぱり間違いなんですか、コレ…」
いわゆるどよんど、と呼ばれる空気が流れる。視線を落とし、望はため息をついた。
「でも、これでもう愛ちゃんは大丈夫ですね。加害妄想に取り付かれても、先生がいますから。」
「そうだといいんですが…」
「やだなあ、気付いてなかったんですか?愛ちゃんったら、さっきからずっと寝たフリしてるんですよ。」
びくっ、と愛がその身を小さく震わせた。

407:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:38:55 ccc4T3n1
「え?」
「先生に甘えてるんですよお。もう、身も心も預けんばかりにべったりと。」
言われて愛を見やると、相変わらず目は閉じていたが、少し顔が赤くなっていた。
「さて、私はお先に失礼しますね。さようなら先生、甘えんぼの愛ちゃん。」
愛の頬を、指でふにゅっと押しながら、別れの挨拶をして、可符香は帰っていった。


宿直室には、未だ寝たフリをする愛と、そんな彼女にどうすべきか迷う望が残された。
愛は、望のお気に入りの生徒である、いや、もはやそれ以上だ。
だが、本当に自分でいいのだろうか…それ以前に、可符香が言ったことも確証がない。
眉間にシワを寄せて悩んでいると、繋いだ愛の手が少し震えたような気がして、彼女を見た。
愛のハの字の形をした眉が、先ほどより角度が上がっている気がする。
その不安そうな顔を見ていると、自然に顔が緩んでしまった。
天井を見上げ、ふぅ、と息を吐き、数秒の間目をつぶる。
そして、望は決意を固めた。


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