キモ姉&キモウト小説を書こう!at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう! - 暇つぶし2ch650:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/27 21:20:21 xKJDTlqP
「ねぇ修くん、すっごく気持ち良いよ~、入ろうよ~」
「あ~もう!入らないってば!」
「あぁ!お姉ちゃんにそういう口の聞き方して良いと思ってるの?」
「…」
「無視するなぁ~!」
「…」
「修くん…上がったらお仕置決定だね」
「ごめんなさい!」
「許してあげないもん。決定事項だもん」
「謝ってるじゃんよー」
「誠意が感じられないから駄目」
「背中洗ってあげるからさ」
「…それはお願いするけど、まだ許さないからね?」
「はぁ…とりあえず入るよ」
「どぞどぞー。ってなんで服脱いでないの?」
「だって背中洗うだけだし」
「濡れちゃうよ?」
「どうせ理緒姉が上がったら風呂入るもん」
「ぶ~…」
「ほら、洗うから座って」
「は~い」
コシコシ…コシコシ…
「…」
コシコシ…コシコシ…
「んっ…」
コシコシ…コシコシ…
「あんっ…」
コシコシ…
「んんっ…」
「理緒姉…変な声出すの止めてくれ」
「だって修くんの洗い方気持ち良いんだもん…」
「ちょっと強くするよ」
ゴシゴシ…
「痛いたいたい!酷いよ修くん…」
「仕方ないだろ?それに強くしないと綺麗にならないぜ?」
「もうちょっと優しくしてよ…」

651:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/27 21:23:25 xKJDTlqP
「じゃあ変な声出さないでくれよ」
「だって出ちゃうんだもん…」
「我慢してよ」
「分かったよぅ」
コシコシ…
「…っ!」
コシコシ…
「っ!?っ!」
「…止めて良い?」
「ふぁ…なんで?」
「俺の精神衛生上良くないから」
「じゃあ次は前洗ってよ~」
「前は自分で洗えるでしょ?」
「お~ね~が~い~」
「駄目だって…」
「じゃあ足だけで良いから」
「ん…仕方ないなぁ…」
「お願いね?」
ゴシゴシ…ワシワシ…
「ひゃ…ん」
ゴシゴシ…
「はんん…」
「我慢してって…あ…う…」
「修くん…どうしたの?」
「理緒姉…その…見えて…」
「あっ…」
「ごめん…見るつもりは無かったんだけど…」
「うん…」
「俺…もう出るよ…」
「待って!」
腕を掴まれる。
その瞬間理緒姉の体がバランスを失う。
「あっ…きゃっ!」
「危ない理緒姉っ!」
転ぶ刹那なんとか理緒姉をかばおうとする。
ガターン!
……つっ!
後頭部がズキズキとする。
理緒姉は平気なのだろうか。
「ん…大丈夫?修くん…」
「軽く頭を撃ったみたいで、視界がはっきりしない…理緒姉は大丈夫?」
「私は全然大丈夫。ただ…」
「ただ?」

652:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/27 21:24:10 xKJDTlqP
「修くんに抱きついちゃってる」
「!?」
てことはこのやけに柔らかいものは…
「お姉ちゃんの…おっぱいだね」
心を読まれたっ?
やべ…意識したら下半身が…
「あっ…」
屹立したペニスが理緒姉に当たる。
なんとか、なんとか落ち着けないと。
大丈夫、服は着てる。
「修くん…立っちゃってる?」
「…うん」
改めて言われると途端に恥ずかしさが増してくる。
「お姉ちゃん…我慢できなくなっちゃいそう…」
「だ、駄目だ!それは絶対駄目だって!」
「んん…でも、あそこがすごく熱くて…」
「そうだとしても…それはやっちゃいけない。俺と理緒姉は…」
「家族じゃない…」
「…え?」
「ずっと…内緒にしてたけど。私と修くんは血が繋がって無いのよ」
「そんな…じゃあ…なんで…」
「修くんは…私のお母さんが再婚した人が連れてきた連れ子だったの」
「…」
「修くんはまだ1歳位だったから覚えて無いのも無理はないの」
「じゃあ…俺と理緒姉は…」
「義理の姉弟なの」
「…そんな…嘘だ…嘘だろ?理緒姉…」
「嘘じゃないわ…」
本当は嘘。私と修くんは本当の姉弟。
だけど、確認する手段はほとんど無い。


653:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/27 21:28:45 xKJDTlqP
だからこそ、この嘘は限り無く真実味を帯びる。
両親が居ないからこそ言える嘘。
修くんを手に入れる為のカードのうちの一枚。
それを…今切る。
更に畳みかける。
「だから…私と修くんは…恋人にもなれるし、SEXしても問題無いの…」
「……うっ…あっ…」
「泣かないで修くん。私達は、本当の姉弟の様に居れば良い。でも、恋人にもなれる。だから…愛し合おう?」
「理緒…姉…」
「私は姉であって姉じゃない。だから…ほら。私を、愛して下さい」
そう言って、修くんの顔にまたがる。
修くんは…おずおずと舌を動かし始める。
「あっ…くぅんっ!」
なに、これ…すごく気持ち良い…
自分でするのなんて比べものにならない…!
「はぁん!もっと…もっとぉ!」
すごい…すごい!
修くんの舌が…私のあそこをなぞって…入って…
「んんんっ!私も…修くんのを愛してあげる…」
くるりと向きを変えて修くんのペニスに触れ、擦りあげる。
「すっごく熱くなってるね…」
「理緒姉…気持ち良い…」
「理緒姉じゃなくて…理緒って呼んで?」
「理緒…気持ち良い…」
「うん、私も…すごく気持ち良い…」
「理緒のここ、柔らかくて熱い…」

654:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/27 21:29:23 xKJDTlqP
「はあぁ…もう、我慢できない…修くんの童貞、私にちょうだい…!」
とうとう、修くんのが私の中に…
ゆっくりと手に持ったそれを目指して、腰を降ろす。
ズプッ…ズズッ
「ん…くぅっ…」
痛い…痛いっ!
裂かれる様な痛み…
こんなに痛いなんて…!
でも、嬉しい。ずっと夢見てた…
修くんに、私の処女を捧げるこの瞬間を。
「修くん…動いて?」
ズズ…ズズッ
痛いけど…ちょっとずつ良くなってきた…
「理緒…理緒…!」
「んっうんっ!修くん、キス…して?」
お互いにお互いの唇を貪る様に重ねる。
「理緒っ…!もう…出そう…」
「良いよ。私の中にいっぱい出して?」
「くっ…!」
「ふぁぁっ!出てる、熱いのがいっぱい出てるよぉ!」
どぷどぷと中に入ってくるのが分かる…
すごい…入りきらなくて溢れてきちゃってる…
「はぁ…はぁ…」
少し腰を浮かせるとずるりと抜ける。
その後に続くように白濁がどろっと出てくる。
もったいない…!
瞬時にそう考えて手で白濁をすくう。
それを慈しむ様に口に含み味わう。
くちゅ…くちゅ…
こく、こく…
おいしかった…
「理緒…」
修くんはうわ言の様に呟くと眠ってしまった。

655: ◆/waMjRzWCc
07/10/27 21:31:24 xKJDTlqP
今回の投下を終了します。
姉がとうとう行為まで及んでますが、まだ終わりません。

656:名無しさん@ピンキー
07/10/27 23:15:39 imcNbI4K
GJです
あっさり結ばれちゃった気がするけど
他のカードにも期待

657: ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 00:51:52 3oGV0AWj
微エロ投下します。

658:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 00:52:50 3oGV0AWj
午前四時。
小鳥が目覚めの囀りを始め、外の世界には朝の清浄な空気が広がっていく。
そこから窓一枚隔てた支倉家の一室には、澱んだ、いやらしい空気が満ちていた。
「あ、あ! んん! あ! お兄ちゃん……! お兄ちゃん!」
雨戸の隙間から差す光に、室内の輪郭がぼんやりと浮かぶ。
薄暗い部屋のベッドの上で、少女の白い体が艶かしく跳ねた。
「ん、ん……! お兄ちゃん……」
ベッドの端に両足首をくくりつけられ、手は後ろ手に縛られて寝そべる陽一。
その男性自身を己の身の内に受け入れて、身悶えする妹。
昨晩からずっと、綾は陽一と繋がったまま、ひたすらに快楽を貪っていた。
「ん……! あは……お兄ちゃん、また出してくれたわね」
既に何度子宮に陽一の精を受けたかもわからない。
綾が腰を動かし、陽一のペニスが赤く腫れたようになった綾の秘所を出入りする。
そのたびに、二人の結合部からは、愛液に混じって白く泡立った精子があふれ出した。
「ふふ……お兄ちゃんがたくさん出したから……私のあそこの中精子で一杯になっちゃって……動くたびに出てきちゃうわね」
幾分かぎこちなさの取れた動きで腰を前後に震わせる。
ぐじゅ、ぐぼ、ぐぽ、と膣内で愛液と精液をかき回すいやらしい音が鳴った。
「お兄ちゃん、聞こえる? すごくエッチな音がしてるわ……」
「う……」
「ねえ、気持ちいい? 気持ちいいわよね? こんなに私の中に出しているんだもの。気持ちいいはずよね?」
激しく身体を揺すり、さらに淫音は勢いを増す。
幼さの残る秘所がこれでもかというくらいに割り開かれ、綾はのけぞって身体を震わせた。
「あ、いい! いい! お兄ちゃん……私……気持ちいい……!」
息も絶え絶えに陽一の唇に吸い付き、キスを繰り返す。
「ねえ、お兄ちゃんも動いて……二人でもっと気持ちよくなりましょう?」
綾の情熱的な訴えに、陽一は苦しそうな、悲しそうな表情のままで、ピクリとも動かない。
しばらく陽一が動き出すのを待ったが、やがて綾はもどかしげに腰を引き上げると、勢い良く振り下ろした。
肉棒が膣襞をえぐりながら、一気に最奥まで突き立てられる。
数時間前まで処女だった綾の肉体は、いまや貪欲なまでに陽一の身体に快楽を求めていた。
「あぁ……ん……ふ、くぅ……! あん! あっ……!」
激しく腰を振り、陽一に何度も口付けを求める。
それはまさに、十数年間抑え込んできた想いが爆ぜて現れた姿だった。
「お、お兄ちゃん! 気持ちいい! あそこ気持ちいいよ! お兄ちゃんっ!」
「綾……」
「これで私……お兄ちゃんの一番近くに……ん、あああ! あぁあ~!」
綾は理知的な瞳を蕩けさせ、涎を垂らしながら大きく喘ぐ。
陽一の上に倒れこむようにして、乳首を擦りつけた。

659:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 00:53:35 3oGV0AWj
「ね、お兄ちゃん、これからは……ん! わ、私と二人で生きていこうね。二人きりで……私、お兄ちゃんと一緒なら、大丈夫だから……」
舌足らずな声で、綾は言った。
「お兄ちゃん、約束して……私以外見ないって。何があっても私を一番に考えてくれるって……約束して……!」
陽一に抱きつき、間近で瞳を合わせながら綾は腰だけをかくかくと動かす。
浅ましくも性欲を満たすためだけの動きを、妹が自分に対してしている―
陽一は何度目とも知れない絶望に打ちひしがれた。
「お兄ちゃん……そんなに悲しそうな顔をしないで。お願いだから約束してちょうだい」
「約束……」
「そうでなきゃ、私また誰かを傷つけちゃうかもしれない。我慢できなくなっちゃうかもしれないの」
頬を紅潮させて綾は言った。
「ねえ、お願い。お兄ちゃんがずっと私の傍に居てくれるなら、私、元の自分に戻れるから……」
「元の……綾に……?」
陽一の目に涙が浮かんだ。
「……約束する」
「お兄ちゃん……?」
「それでお前が元に戻ってくれるのなら……いくらでも約束する。ずっと傍に居るから……お前以外は見ないから……だから……」
「お兄ちゃん……!」
歓喜に打ち震えながら、綾は陽一にキスをし、舌を絡め合わせた。
「ん……! お兄ちゃん……! お兄ちゃぁん!」
「綾……!」
綾の膣壁がぐねぐねと蠢き、陽一のペニスを絞り上げる。
耐え切れず、陽一は綾の中に精を吐き出してしまった。
「ん……熱いよ……お兄ちゃん……」
うっとりと呟いて、綾が腰を上げる。
ちゅぽ、と音を鳴らし、肉棒が綾の秘所から糸を引いて離れた。
激しい交わりに、綾の秘所は痛々しいほどに赤く充血し、ぱっくりと穴を開けてしまっている。
「ふふ……お兄ちゃん……気持ちよかったよ……」
外気に触れた膣口がヒクヒクと震え、大量に吐き出された精液がドロリと流れ出た。
自分の秘所から兄の精液が滴り落ちる様を、綾はうっとりと眺めていた。

660:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 00:54:19 3oGV0AWj
「ちゃんとハンカチとティッシュは持った?」
「ああ」
「あ、こら! 寝癖が直し切れてないわよ」
「仕方ないだろ。朝、あまり時間無かったんだから」
「ほら、ネクタイも曲がってる!」
朝の昇降口で、綾は陽一の身だしなみのチェックをしていた。
てきぱきと制服を整えながら、ぼんやりとする兄の胸を叩き、喝を入れる。
つい二時間前まで、陽一の上でよがり声を上げていた少女の姿はそこには無かった。
「ほら! もう学校なんだから、いつまでも寝ぼけてちゃだめよ! お兄ちゃんが情けないと、私まで恥をかくんだからね!?」
「あ、ああ……すまん」
その変わりように、陽一はひょっとして自分は夢を見ていたのではないかと思ってしまう。
数時間前までのことは、自分の浅ましい性欲の見せた夢だったのではないかと。
「何よ、じっと見て」
「いや……その……世話をかけて悪いなあと……」
「悪いことなんて無いわよ。私はお兄ちゃんの女なんだから」
「ん……」
やはり、つい数刻前まで、自分はこの妹と体を重ねていたのだ。
綾の言葉に、改めて全ては現実にあったことなのだと思い知らされ、。
「はいはい、落ち込んだ顔しない!」
「ああ……すまん」
「ま、仕方ないけどね。お兄ちゃん、根が真面目だから。でもあまり暗い顔してると、何かの拍子に私たちのことが他の人にばれちゃうかもしれないからね。ちゃんと普段通りにしてなさいよ」
昇降口を抜けていく生徒たちに聞こえぬよう、小声で言う。
そして、タイミングを見計らって、素早く陽一の頬にキスをした。
「! あ、綾……!」
「ふふ。まあ、私は別にばれてもかまわないんだけどね。お兄ちゃんは困るでしょ?」
「それは……」
「はい、身だしなみオッケー。じゃ、昼休みに会いましょ。居眠りなんてしちゃだめだからね?」
軽く笑って手を振り、綾は一年の教室に向かった。
その後ろ姿を、陽一は見送る。
本当に、いつも通りの綾だった。
抱き合っていた時とはまったく別の、厳しくしっかりした妹の顔。
表面上はいつもと変わらぬように見える兄妹。
しかし、二人の関係の根底には、もう戻れない感情の楔が埋め込まれていた。
一晩中触れ合った、妹の肌の感覚。
そして先ほどのキス。
激しい罪悪感と後悔が胸のうちに澱となって溜まっていく。
陽一は死人のような顔で教室に向かった。
今はただ休みたかった。

661:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 00:56:14 3oGV0AWj
徹夜ではあったが、綾はすこぶる調子が良かった。
何しろ、夢にまで見た最愛の人との一夜だったのだ。
肉体は疲れていたが、精神はかつてないほど高揚していた。
(ロマンチックとかそういうのとはほど遠いけど、まあ良しとすべきよね)
陽一が望んで自分と契ったわけではないことは、重々承知していた。
あの約束にせよ、あくまで家族としての愛情が先にあってのことだとわかっている。
それでも綾の表情は晴れやかで、時折鼻歌を歌ったりして、小夜子のみならずクラスの皆を驚かせた。
(そう……私はお兄ちゃんを愛しているわ。家族として、一人の異性として。お兄ちゃんは違う。それはわかってる……でも、いつか愛してもらえればそれでいいわけだし、ここまで来たら慌てることも無いわよね)
十年以上待ってこれから先待てないということはない。
陽一に近づく女が消えて、陽一に一番近しい女となった以上、少しずつ二人で幸せになっていけばそれでいいのだ。
「とすると、お兄ちゃん以外のことをこれから先どうするか、ね……」
教師の話を適当に聞き流しながら、真っ白なノートにペンを走らせる。
宇喜田縁、四辻夕里子、森山浩史、佐久間愛、生徒たち―
書き連ねられる名前は、綾にとっての駒だった。
これらを操り、動かし、時に排除し、今に至る。
今、この駒たちを自分に都合の良い形にし、全てを終わらせなければならない。
邪魔をする者は消え、疑う者も無く、兄と平穏に暮らしていけるように。
(今までのことについては、すでに処理は決まっている……)
森山浩史の名前の上に、大きくバツをつける。
(でも、これから……縁と夕里子はどうする? このまま放っておいて大丈夫なの? それとも、消すべきなの?)
夕里子は転校するという話だった。
昨日の家でのやりとりもあるし、陽一に今後も近づくとは考えにくい。
(消すことはないのかしら? だとしたら……)
人を一人殺すにはリスクが伴う。
夕里子に関しては、社会的地位もあいまって、それは非常に高い。
判断の失敗は絶対に許されない。
一度手に入れた幸せを手放すことは、絶対にしたくなかった。
「ん……夕里子さんがいい人だったら、残しておきましょ」
夕里子の名前に丸をつけ、綾はノートを閉じた。

その放課後、綾は電車を乗り継いで隣県の町にやって来た。
駅のトイレで制服から私服に着替え、容姿をごまかせるよう軽く変装をしておく。
夕暮れ時の賑やかな駅前の商店街を、目立たぬよう一人歩いた。
寂れた住宅地の端の、古い家の戸を開け、入っていく。
薄暗い木造の家の中。
綾が一歩進むごとに、廊下が軋んだ音を立てる。
家の奥に進み、居間の戸を開けると、ねっとりと体に絡み付くような空気が流れ出した。
強烈な腐臭が部屋の中には満ちていた。
腐臭の源は、上品な敷物の上に倒れた、人間の死体だった。
首を大きく裂かれ、そこからのぞいた肉はとろけたようになって黒く変色している。
この家の元々の住人で、人生の余暇を楽しむだけだった老婦人。
自分の家だと偽って森山浩史を連れ込み、その目の前で殺して見せたものだった。
「問題なし、と」
腐臭に表情を動かすこともなく、綾は居間を通り、さらに家の奥へと進んで、トイレの前で足を止めた。
ゆっくりと戸を開ける。
下半身を裸にして、全裸で便座に座らせられた森山浩史の姿がそこにはあった。


662:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 00:58:33 3oGV0AWj
森山は、顔には目隠しと猿轡、上半身はロープで何重にも縛られて、手すりに固定されている。
両脚は便座を跨いだ体勢のまま折りたたまれ、便器の後ろで足首をしっかりと結ばれていた。
「う……」
戸が開けられたのを感じて、小さくうめき声をあげる。
「はぁい、森山君。元気にしてた?」
「ぅう……」
元気なわけがない。
殺人を見せつけられ、完全に萎縮してしまった森山を、こうして縛って監禁した後、綾は最低限の食事しか森山に与えていなかった。
助けを呼んだり、脱出を試みたりといったことが無いようにだった。
二日ほどは小さくうめき声を上げていた森山も、体力が失われると、おとなしく便座に座るだけとなった。
綾は森山を排泄のみしか許されない、ただ生きているだけの存在として、この一週間飼いならしていた。
「今日はね、あなたにいいお話があるのよ」
「……」
「おうちに帰してあげるわ。嬉しいでしょ?」
「……! う……! ぅう~!」
弾けるように身を乗り出して、森山はうめき声をあげた。
「よしよし、喜んでもらえて何よりだわ。でもね、ただで帰すわけにはいかないのよ」
笑って、綾は森山の顔面に巻かれた目隠しを外す。
衰弱しきって萎んだ眼孔。怯えをはらんだ眼差しが綾を捉えた。
「私の言うこと……聞けるわよね?」
銀に光る包丁の刃を見せつけて問う綾に、何度も繰り返し森山は頷く。抵抗の意思は全く無かった。
「……今から縄を解いてあげるわ。あなたの着ていた服も用意してあるから、体を拭いたらすぐに着替えなさい」
また頷いて了解の意を伝える森山に、綾は続けた。
「やることは簡単よ。手紙を一枚書いてくれればいいわ。そうしたら、温かいご飯を食べさせた後でおうちに帰してあげるからね」
言って綾は、森山の身体の自由を奪っていた縄を切っていった。
手紙の文面は実に単純なものだった。
『夕里子さん、愛さん、ごめんなさい』
一行―わずか一行で十分だった。
数週間ぶりに服を着て、震える手で言われるままに書き終えた森山に、綾は死体の転がる居間で料理をふるまった。
普通なら食べることを躊躇してしまう状況だったが、一週間で飢えに飢えた森山は、己の欲望に忠実だった。
「どんどん食べてちょうだいね」
テーブルに肘をついて自分を見つめてくる美少女。
そのにこやかな表情に、森山は思わず、つい先ほどまで自分がその少女に殺されかけていたことを忘れそうになる。
それほどに、綾の笑顔は穏やかなものだった。
「そ、その、いいんですか?」
「え? 何が?」
「こんなに優しくしてもらって」
あまりの扱いの差に、そんなとんちんかんな問いを口にしてしまう。
綾は笑い飛ばすことも無く、丁寧に答えた。
「優しくしない理由もないわ。私はこれで情が深いのよ」
「……?」
「これから死にゆく人間にはね」
「え……?」
腹を空かしている時、体の養分の吸収はこの上なく早い。
森山は視界がぐらぐらと揺れるのを感じた。

一度意識を失わせれば後は簡単だった。
風呂場に森山を運び込み、タイル張りの浴槽の中に座らせる。
予め用意しておいたポリタンクの蓋を開け、森山の体に灯油をかけていった。
冬に備えてだろう、この家の倉庫に収められていたものだった。
ポリタンク丸々四つ分の灯油が浴槽に溜まり、森山の下半身を浸すまでになっていた。
「これで全部燃えてくれるかしら」
監禁の跡を残すわけにはいかない。森山の体は、そのままでは絶対に残してはいけないものだった。
「ついでに家も燃やしておいた方がいいわよね」
脱衣場とその前の廊下にまで、残った灯油を撒いておく。
「ありがとう、森山君。何もしなくても、あなたは十分な働きをしてくれたわ」
満足げな笑みとともに、綾はライターを脱衣場に投げ入れ、強い熱気が現れるのを背に感じながら廊下を走り、家を出た。
燃え広がるのにそんなに時間はかからないだろうし、そうなると人が集まってくる。
炎は綾がこの家に出入りした証拠をあらかた消し去ってくれるが、その炎を生み出したことで別の証拠を残しては本末転倒であり、人に見られることは何としてでも避けねばならなかった。
夕闇に紛れるように、綾は初冬の風の吹き荒ぶ町を離れた。

663:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 00:59:52 3oGV0AWj
「ただいま」
日の落ちた後、支倉家には明かりも無く、薄暗い屋内に綾の声が響いた。
「お兄ちゃん……帰ってないのかしら」
二階に上がり、陽一の部屋を覗くと、ベッドに横たわって寝息を立てる陽一の姿があった。
「何だ……寝ちゃってたのね。せっかく、思い切り甘えてやろうと思ったのに……」
拗ねるような呟きが宵闇に冷えた部屋の空気に溶ける。
「つねって起こしてちゃおうかしら」
陽一の頬に手を伸ばして、少し考えてまた手を引いた。
「まあいいわ。許してあげる。お兄ちゃんも疲れているでしょうしね」
仰向けに、少し眉を寄せて眠る陽一の顔を見ているだけで、胸の奥が熱くなる。
綾の頬は赤く染まり、口元は笑みとも緊張とも取れる、微妙なほころびを見せていた。
自分は今、ひどく間抜けな顔をしているんだろうな―
そう思うと、何とも情けない気持ちになる。
「変よね。今更ドキドキすることもないのに」
何度もキスをした。
肉体関係も持った。
それでも、陽一の顔を間近で見ると、胸を高鳴らせずには居られなかった。
「もう……お兄ちゃん、何もかけないで寝てると風邪ひいちゃうわよ」
ベッドの隅に置かれていた毛布を広げ、かけてやる。
陽一の眠りを妨げることがないように、と思っていたが、堪えきれずにそのまま抱きついてしまった。
「お兄ちゃん……」
陽一の胸に顔をうずめ、体をすり寄せる。
熱い。
胸の中が熱い。
喜びで全身が満たされていく。
「お兄ちゃん……好き……! 大好き……! やっぱり私、お兄ちゃん無しには生きられないわ……!」
情熱的な囁きに、陽一はしかし、深い眠りの渕から目覚めることは無い。
「私、頑張るからね。お兄ちゃんが幸せになるよう、頑張るから。何でもやってみせるから」
陽一にとって不利な人間は消してきた。
陽一に近づくくだらない女も消してきた。
これまでで一番の障害だった夕里子についても、森山という存在を使って周囲を人質に取り、最終的に陽一に近づけないようにした。
森山を殺した今、その枷が外れる可能性もあるが、あれだけの人を犠牲にして、人間関係をボロボロにして、彼女の精神が耐えられるとは思えない。
夕里子の家庭も、これだけ問題を起こした付き合いを許すことはないだろう。
その証に、夕里子は近いうちに転校することが決まっている。
ただ一人、縁だけはさらに陽一と夕里子の仲を後押しするかも知れないが、夕里子の精神への負担と周囲の人間からの圧力は、夕里子から縁への信頼で秤をつりあわせるにはあまりにも重くなっている。
恐らくは、昨日の試みが最後の策と見てよい。
夕里子はもう陽一から離れ、縁は何も手出しができなくなる。
そして何より、陽一は綾だけを見ると言った。
その動機は綾が真に望むものとは異なるが、自らの意志で綾の傍に居ると決めたのだ。
「私の勝ちね……」
陽一の頬に指先を滑らせながら、うっすらと微笑み、目を細める。
成果は十分。
後処理についても、自殺に見せかけて殺したものは、とりあえず問題は無い。
加害者を必要とする佐久間愛の件は、森山に罪を着せて処理をした。
結果はこれからだが、ミスをした覚えが無い以上、十中八九うまくいくだろう。
「となると、後はお兄ちゃんの名誉ね……」
夕里子を陥れる過程において、陽一を巻き込む形でその評判を下げてしまった。
陽一は現在二年生。
あと一年以上、この状態で学園生活を送るのは、不便であり苦痛だろう。
「でも、それも大丈夫。今の状況なら、夕里子を使うことができるものね」
兄の温かみを、体臭を、十分に堪能して、綾は身を起こした。
「さて、せっかくお兄ちゃんが寝ているんだから、携帯電話のチェックでもさせてもらおうかしら」
履歴を見るが、縁からも夕里子からも、連絡は無かった。

664:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 01:00:35 3oGV0AWj
「よしよし。後は、と……」
床に置かれた陽一の鞄を開き、教科書とノートを全て取り出す。
小さく歌いながら、綾はそのページを開いた。
「ん……?」
幾分か時間が経って、綾の歌声に陽一が目を覚ます。
暗い部屋の中で、陽一のノートを素早くめくり続ける綾の姿が目に入った。
「な、何してるんだ……?」
「あら、お兄ちゃん、起きたのね。疲れは取れた?」
「まあ……楽にはなったけど、何してるんだよ、綾……」
「お兄ちゃんの教科書とノートを見てるのよ」
さも当然とばかりに言う綾に、陽一は首を捻った。
「いや……だから何でそんなことを……楽しいもんじゃないだろ、勉強道具なんて見たって」
「ううん、大切なことよ。お兄ちゃんの愚痴とか、悩みとか、どこかに書いてあるかもしれないでしょ? 字の形を見れば、元気かどうかわかるじゃない?」
「え……」
「お兄ちゃんが困ってたら、すぐに助けなきゃいけないもの」
話しながら、綾の視線は既に陽一の方には無かった。
高速でめくられていく見開きのページに、神経を集中させているのがわかる。
「綾……」
陽一は掠れた声で話しかけた。
「そんなこと……しなくていい」
「え?」
「俺は大丈夫だから、そんなことしなくていいよ」
「ふふ……お兄ちゃん、遠慮しないで。私たちは誰よりも近くに居る二人なんだから。お兄ちゃんのために私が何かするのは、当たり前のことなんだから」
会話の最中も、綾はページをめくる手を止めない。
二人の間の空気を、紙の擦れる音が微かに揺らした。
「頼む……綾、やめてくれ。お前だって疲れてるだろ? お前は、あれから寝たのか?」
「寝てないわよ。寝るよりも大事なことだもの」
黒髪を揺らして振り返り、綾は美しく微笑んだ。
「お兄ちゃん、責任感が強くて、頑張り屋さんだから、何かあっても私に隠そうとするもの。それじゃ駄目なのよ。寄り添う二人は、隠し事なんてしていたら駄目なの。互いの全てを知って、支え合わなきゃいけないのよ」
笑顔で頷く綾は、本当に美しかった。
あまりにも美しく、妖しく、狂気の影の滲む少女の姿があった。
「綾……」
やはりおかしい。
穏やかな雰囲気の底に感じる、粘つくような何か。
(いつからだ? そもそもにして世話焼きな部分はあったが……やはり森山に犯されてから……?)
綾がボロボロになって帰ってきた夜のことが、頭の中に蘇る。
陽一の胸に、刺すような痛みが走った。
「お兄ちゃん、どうしたの? 苦しそう……やっぱり何か悩みがあるの?」
「……あるとしたら、お前のことだよ」
「私の?」
きょとんとした顔で綾は尋ねる。
「休んでくれよ。俺のことはそんなに心配しなくてもいいからさ。綾が俺を心配してくれるように、俺も綾が心配なんだ」
陽一の言葉に、綾は不満げに唇を尖らせたが、すぐに諦めたようにため息をついた。
「わかったわよ」
ほっとした表情を見せる陽一に、「ただし」と綾は続けた。
「そんなに私が心配なら、今後一切隠し事は無しよ。何かあったらすぐに私に話して、私を頼ってね。他の人には話して、私には話さないなんて、絶対に無しよ?」
「ああ、わかったよ」
「本当の本当よ? 約束破ったら……酷いからね」
冷たく響く妹の声に背筋を震わせながら、陽一は黙って頷いた。


665:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 01:01:42 3oGV0AWj
次の日、学校は隣県の町の火事の話題で持ちきりだった。
四辻夕里子を狙っていたストーカー、森山浩史の焼け爛れた遺体が発見されたからだ。
家もあらかた焼け落ちて、同様に焼けた住人の遺体も見つかった。
さらに、外の郵便受けから遺書めいたものが発見され、警察では自殺か否かを調べている最中だという。
(さすがに警察も、あれだけとなると慎重を期す、か……)
四辻家からの圧力もあるのかもしれないが、警察も面倒ごとを引っ張るような真似はしないだろう。
一連の事件はこれで全て解決―
誰もが望んでいることであり、流れの向かいやすい方向であるはずだった。
教室に入り、自分の席に荷物を置いた綾は、すぐ後ろの席でうなだれる小夜子に声をかけた。
「沈んでるわね。どうしたの?」
「綾……」
「森山浩史の話?」
「ん……」
小夜子は小さく頷いた。
「良かったじゃない。これで夕里子さんも安心して眠れるってもんでしょう」
「それは……そうなんだけど」
おや、と綾は内心驚いた。
小夜子の瞳に浮かんでいたのは、紛れも無い怒りの色だったからだ。
「……遺書が見つかったって話は聞いてる?」
「まあ、聞いているわ」
「その内容……ユリねえから聞いたんだけどね、謝ってたんだって。ユリねえと、佐久間さんに」
机に置かれた小夜子の両手が、ぎゅっと握られた。
「何なんだろうね? 謝るくらいなら、最初からしなければいいのに。今更謝られたって、佐久間さんの心の傷は消えないし、佐久間さんのお母さんは生き返らないし、ユリねえが失ったものだって返ってこないのに……」
「……小夜子は、犯人に、どうして欲しかったの?」
意識せずに口を出た言葉だった。
何を意味の無いことを聞いているのだろう―思いながら、綾は小夜子の返答を待った。
「森山浩史……あんな人は……」
小夜子は、憎しみの塊を吐き出すように、その言葉を口にした。
「生まれてこなければ良かったのに」
綾はただ静かに、親友の言葉を受け止めた。

666:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 01:04:36 3oGV0AWj
放課後、綾は夕里子を屋上に呼び出した。
あんなことがあった矢先で、萎縮しながらやって来た夕里子を、綾は笑顔で迎えた。
「こんにちは、夕里子さん。調子はどうですか?」
「え、ええ、まあ……普通ですね」
「先日は見苦しくも取り乱したところを見せてしまって、すみませんでした」
丁寧に頭を下げる綾に、夕里子も「私こそ……」と頭を下げた。
やはり夕里子は綾に対する恐怖感があるらしく、瞳はどうにも落ち着かない。
が、そんなことには一切かまわず、綾は本題を話し始めた。
「夕里子さん、転校するんですよね」
「え、ええ……まあ……そうなりますね」
「ずばり聞きますけど、お兄ちゃんのことは、まだ好きですか?」
「そ、それは……」
怯えた様子を見せながら、夕里子は小さく頷いた。
「そう、それは良かった。お願いがあるんですよ、夕里子さんに」
「お願い、ですか……?」
ええ、と綾は力強く頷く。
「知っての通り、夕里子さんとお付き合いして、色々と巻き込まれたおかげで、お兄ちゃんの校内での評判はあまりよろしくありません」
「はい……すみません」
「級友が脅迫されているのを見捨てて、恋愛に狂った馬鹿二人と、好き勝手に言われています」
「すみません……」
ただ謝る夕里子に、綾は謝らないでくださいと厳しい声で言った。
「謝られても何も変わりません。お兄ちゃんを今でも好きで、申し訳ないと思っているのだったら、行動で示してください」
「行動で?」
「お兄ちゃんがこれから先、この学校で普通に過ごしていけるよう、動いて欲しいんですよ」
「それは全然かまわないけど、どうしたらいいのですか?」
夕里子の問いに、綾は不敵な笑みを浮かべた。
「簡単です。夕里子さんが全部の罪を背負ってくれればいいんですよ」
「え……?」
「お金でもそれ以外でも何でもいいです。夕里子さんが何かを盾にお兄ちゃんを脅迫して、強引に付き合わせていたことにしてください。
夕里子さんの家はこの辺りでは力のある家のようですし、その一人娘が、わがままから男を無理矢理自分のものにしようとしていたというのは、そこらの生徒なら信じそうなお話でしょう」
あまりの提案に、さすがに夕里子も戸惑ってしまう。
「ちょ、ちょっと待ってください。私、陽一さんとは……」
「わかっています。お互い合意で付き合っていたんですよね。でも、お兄ちゃんを救うためにはこの嘘が必要なんです。お兄ちゃんがこれから平穏に過ごすには、夕里子さんが全ての元凶だということにするしか無いんです」
綾は屋上の床に膝をつき、夕里子に頭を下げた。
「お願いします。夕里子さんは別の学校に行って新しい生活を始められるでしょう。でもお兄ちゃんは……ここにずっと残ることになるんです。お兄ちゃんの……愛する人の幸せを願うなら……どうか夕里子さん本人の口で、この嘘を広めてください」
「そんな……」
綾は正座をし、顔を下げたままで、懇願を繰り返した。
ストッキングを通して、冷たい石の感触が脚に、体に伝ってくる。
正直辛くはあったが、この程度でうまく説得できるなら安いものだった。

667:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 01:05:30 3oGV0AWj
綾は動かなかった。
夕里子が了承するまで動かないつもりだった。
「陽一さんの……ため……」
やがて、夕里子は小さく呟き、頷いた。
「……わかりました。わかりましたから、顔を上げてください。立ち上がってくださいな」
「夕里子さん……」
感謝の念を込めて、綾は夕里子の名を呼ぶ。
(さすが……人格者ね)
なかなか殺すことができず、これまで散々手を焼かせられたが、それも今では怪我の功名と言えるだろう。
綾にとって最善の状況で終わらせるための、重要な駒となってくれたのだから。
「ありがとうございます。本当に……ありがとうございます」
「いえ。私、陽一さんにも綾ちゃんにも、たくさん迷惑をかけてしまいましたから。これで少しでも償いになるなら幸いです」
「その……お兄ちゃんに知られたら、多分全部無駄になってしまうと思うので……くれぐれも内密にお願いします。
もしもお兄ちゃんや縁さんに知られてしまったら、夕里子さん自身の意志で、お兄ちゃんのためにしたいからしてるんだと言ってください」
「ええ、かまいませんよ」
申し訳ないとばかりに、綾は眉根を寄せた。
「勝手を言ってすみません。私が勧めたとわかれば、お兄ちゃんはきっと止めるでしょうし……正直私がお兄ちゃんに怒られたくないというのもあります」
「そんな、気にしないでください。それも含めての償いですから」
端正な顔に悲しげな笑みを浮かべて、夕里子は綾の手を握った。
「私が居なくなった後、陽一さんと綾ちゃんが、これまで通りの生活に戻れることを願います」
本当にいい人だと、綾は思った。
兄のことがなければ、きっと大好きになれただろうに、と。

小夜子がその騒ぎに気付いたのは、五時半を回った頃、図書室の閉館の準備を進めている時だった。
「まったく、ちゃんと片付けていきなさいよね……」
ぼやきながら、机の上に残された本を書架に戻す。
窓のカーテンをまとめようとして、中庭に人が集まっているのに気がついた。
「あれ……? 何かあったのかな?」
図書室の前を何人か生徒が走り過ぎる。
「誰か飛び降りたらしいぜ、屋上から」
「え、マジかよ」
そんなやり取りが聞こえ、小夜子は思わず眼下の人の集まりを凝視してしまった。
次々と集まる生徒たちを教師が遠ざけ、人の輪ができている。
その中央、校舎から数メートル離れた芝生の上に、人が一人倒れていた。
遠目にその顔ははっきりと見えないが、芝生に広がるスカートの裾から、女生徒だとわかる。
そして、その特徴的な栗色の髪に気付いたとき、小夜子は小さく悲鳴をあげていた。

668:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 01:06:39 3oGV0AWj
病院には続々と人がやってきた。
夕里子の両親、小夜子の両親、他何人もの親戚たち。
佐久間愛の事件以来遠ざかっていた級友たちもやってきて、小夜子に夕里子の容態を聞いた。
さらに、綾と陽一、縁も姿を現した。
「小夜子……夕里子さんは……?」
「……手術中……どうなるかわからないって……」
目に涙を浮かべながら、小夜子は答えた。
「しっかりしなさい。泣いたところでどうにもならないんだから。泣くぐらいなら祈らなきゃ。夕里子さんが助かるように」
綾の言葉に、小夜子はいくらか気持ちを落ち着ける。
一番混乱しているのは綾自身だった。
(何故……? 何故今になって……全てがうまくいきかけていたのに)
夕里子の自殺は全く予測していなかった。
陽一の名誉回復の策が取れなくなったのはまだいい。
問題は、自分が夕里子と接触した直後に自殺を図っているということだった。
(口頭で呼び出したから、私と夕里子が直前に話をしていたという証拠は何も無い。でもそれは、誰にも見られていなければの話……)
今回は、ただ頼むだけだったので、接触の際特に注意は払わなかった。
おまけに放課後だったとはいえ、校内は基本的に人の密度が高い。
思わぬところで見られている可能性は大いにあった。
(言うか言わざるか……どうしようかしら?)
直前に会っていたことで綾が不利になるパターンは二通り。
綾との接触が自殺の引き金になったと思われることと、綾が夕里子に直接的に危害を与えたと思われることだった。
前者は、周囲から陽一への印象がさらに悪くなるということ以外、まったく問題は無い。
何が自殺の原因かなどというのは、所詮推測の域を出ることはできないのだ。
後者は、陽一と共に過ごせなくなる以上、大いに問題があった。
(つまり考えるべきは、後者と見られる可能性を減らすこと。怪しいと思われる言動をとらないことだわ)
数秒で思考をまとめ、綾は口を開いた。
「私……今日の放課後、夕里子さんと話をしたのよ……」
綾が選んだのは、夕里子と話した内容を適当に変えて、それ以外は全て話す暴露戦術だった。
黙っていて後で指摘され、変に疑われるよりかはずっといい。
「話したのは……今後どうするのかとか、そんなことだったんだけど……私、ひょっとしたら夕里子さんを傷つけることを……?」
ふむ、と隣で聞いていた縁が頷いた。
「それはわからないけど、とりあえずお巡りさんに話した方がいいんじゃないかな?」
「はい……そうですね」
綾は縁の目を見た。
さすがに縁はいつもの笑みは浮かべず、不安そうな表情を見せている。
しかし、瞳の色はあくまで揺らがず、清水を湛えているがごとく静かだった。

669:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 01:07:21 3oGV0AWj
「縁さんは、夕里子さんの自殺の原因に心当たりはありますか?」
「無いよ」
「では、夕里子さんが自殺するかもしれないと、考えたことはありましたか?」
「それも無いよ。だから驚いてる」
縁の後に小夜子が続いた。
「私も……ユリねえはどんなことがあってもそんなことはしない人だと思ってたから……だからまだ信じられなくて……」
「これまでの事件の重圧に耐え切れなくなって、ということも考えられるけど」
小夜子は綾の言葉にぶんぶんと首を横に振った。
「ううん。ユリねえはすごく責任感の強い人だもん。死んで逃げるなんてことはしないよ」
「そう……そうよね」
縁の時は頷きもしなかったが、綾は小夜子の言を無条件で受け入れた。
そもそも、あの約束を交わした後で自殺をするのはおかしいのだ。
あるいは、あの時の夕里子の様子はあくまで表面上のもので、陽一と綾への当てつけに自殺して見せたとも考えられた。
(でも、だとしたら、私たちを批判する遺書を残していてもおかしくはないわ。当てつけとしての効果を期待するなら、少なくとも私はそうする……あるいは、単純な話……)
誰かに殺された。
まだ夕里子は死んではいないが、その言葉が頭に浮かんだ。
(殺す……まさか……私以外にそこまでできる人間が居るというの?)
誰が、何のために?
佐久間愛の関係者か、それとも―
綾は縁を見た。
恐らくは兄を好きであろう、今まで散々邪魔をしてくれた女、宇喜多縁。
しかし、夕里子を殺したとして、縁にどんな得があるのか、結びつかなかった。
(駄目だわ。考えがまとまらない。ああ、駄目……ちょっと予定外のことが起きたくらいでこんな……)
懸命に心を落ち着かせる。
何よりもまずは、自分の身を守ることを考えなければならない。
恐らくは自分が、夕里子が自殺を図る前に最後に話した人間なのだ。
「小夜子、警察の人も病院に来てるのよね?」
「う、うん……」
「とりあえず、話をしてくるわ。私が居なくなっても泣くんじゃないわよ?」
「うん……ありがとう」
それから日が変わるまで、綾は警察に事情を聞かれることとなった。

670:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 01:08:08 3oGV0AWj
次の日、学校は休校となった。
病院で一夜を明かした後、家で短い眠りをとり、小夜子は午後の日差しの中を歩いていた。
目指す先はとある喫茶店。
縁から電話で指定された先だった。
こじんまりとした店の、古びた扉を開け、すぐに見つけた三つ編み少女の対面に座る。
「何ですか、用事って」
「うん、まあ、色々あるんだけどね。まずは夕里子ちゃんが助かったこと、おめでとうと言っておくね」
「……まだ、予断を許さない状態らしいですけど」
あはは、と縁は朗らかに笑った。
「それでも、昨日の夜死んじゃってるよりかはずっといいよ。うん、良かった良かった」
「はあ……まあ……確かに良かったことは良かったと思いますけど……」
さて、と手を軽く打って、縁は話を切り出した。
「今日こうして来てもらったのはね、ちょっと聞いてもらいたい話があるからなんだ」
「はい。私でよければ聞きますよ」
「うん、小夜子ちゃんにこそ聞いてもらいたい話。と、その前にちょっとお尋ねするけど……」
縁はティーカップに軽く口をつけ、小首を傾げて小夜子を見つめた。
「この街で年にどれだけ人が死んでいるか、知ってるかな、小夜子ちゃん?」
戸惑う小夜子に、縁はあくまで笑顔だった。

671:黒の綾 ◆5SPf/rHbiE
07/10/28 01:09:08 3oGV0AWj
今回の投下は以上です。

672:名無しさん@ピンキー
07/10/28 01:12:48 MBtyOQqA
やべえ・・・
お兄ちゃん遅すぎる覚醒か・・・?

673:名無しさん@ピンキー
07/10/28 01:15:57 LApaLlpF
綾をリアルタイムで見れるとは…なんという至福…

GJ以外の何者でもない…

しかしホント縁はなに考えてんだ?

674:名無しさん@ピンキー
07/10/28 01:26:09 sA6Gzwr1
ますます楽しみになってきた

675:名無しさん@ピンキー
07/10/28 01:28:42 sv+01+yL
>>671
GJ!
全裸待機してて正解だったぜ。これでやっと服が着れる。

676:名無しさん@ピンキー
07/10/28 01:38:36 K5RnCHGt
最後の縁の言葉はもはやホラーだなw

677:名無しさん@ピンキー
07/10/28 01:41:50 SneHBCA8
とうとう縁が動いたのか…?
綾マジ頑張れ

678:名無しさん@ピンキー
07/10/28 01:48:07 uMa8sIlf
すいません、スレではなく保管庫の方で作品をチェックしているものですけれど、
保管庫は更新なされないのですか。

679:名無しさん@ピンキー
07/10/28 01:55:28 8XxNtlN0
ユリコさんは緑が落としたんだよ明らかに…

680:名無しさん@ピンキー
07/10/28 02:54:12 Vq+xzU5Q
ついに縁たん覚醒・・・あな恐ろしや・・・

681:名無しさん@ピンキー
07/10/28 03:40:00 xY3x+j15
久しぶりに綾が来てた(・∀・)

682:名無しさん@ピンキー
07/10/28 03:56:18 gzUcy6tb
>>678
URLリンク(www7.atwiki.jp)
第二ができてた

683:名無しさん@ピンキー
07/10/28 08:17:59 CXim9SwJ
綾きたああああああGJ!
綾の腐れ外道っぷりに磨きがかかってていいwww
それと縁こええwww
兄貴もがんばれ! 真相に気づけ!

684:名無しさん@ピンキー
07/10/28 08:18:42 CXim9SwJ
ageちゃったorz

685:名無しさん@ピンキー
07/10/28 09:46:23 uE+cIbJv
腐れ外道とはよく言ったものだが、まさしくその通りだな
いや、最大級のほめ言葉だ

686:名無しさん@ピンキー
07/10/28 10:15:27 TX+AGSiz
綾が来るとこのスレはいつも活気付くな

687:名無しさん@ピンキー
07/10/28 10:17:49 xahzfDap
もう綾シリーズは書籍化してもいいと思う

688:名無しさん@ピンキー
07/10/28 11:21:55 Fr9uLrMp
読んでる最中呼吸をしていた気がしないぜ・・・

689:名無しさん@ピンキー
07/10/28 12:30:36 UstsiHES
綾キテタ━━(゚∀゚)━━ッ!!
小夜子フラグキタ━━(´・ω・`)━━ッ!!

しかし・・・今更ながら、縁は兎シチューにびびってた頃とはえらい違いだなw

690:名無しさん@ピンキー
07/10/28 12:34:16 vlaU4UpY
同意。
完全に綾世界に飲み込まれてタッス。

691:名無しさん@ピンキー
07/10/28 12:44:14 SneHBCA8
綾中出しさせすぎだろ!大丈夫なのか?
安全日でもヒットする事もあるのに・・・

692:名無しさん@ピンキー
07/10/28 13:12:18 hRsKverx
縁……血に慣れたか…

693:名無しさん@ピンキー
07/10/28 13:18:06 Ueft7sWD
それすらも策略…

694:名無しさん@ピンキー
07/10/28 13:24:46 dowxZ+l1
縁がハイレベル過ぎて付いていけない。
いつの間にか綾越えたな。
あんた最高だよ。

695:名無しさん@ピンキー
07/10/28 13:45:46 zZPGj4d1
綾キテターーーーーーーー!!!

さぁこれからどうなる・・・!?

696:名無しさん@ピンキー
07/10/28 15:26:26 S5IABKeg
んー・・・これはどういう展開に?
緑の行動が不気味だな・・。何故綾じゃなく小夜子に接触を・・・

697:名無しさん@ピンキー
07/10/28 15:52:32 H565kphX
綾クオリティ高すぎる……
先が読めなさすぎ
まじでGJ

698:名無しさん@ピンキー
07/10/28 18:16:14 e20NBmB5
綾シリーズはキモ姉妹スレにおいてのノントロ

699:名無しさん@ピンキー
07/10/28 18:55:34 oBudR9Rz
スルー

700:名無しさん@ピンキー
07/10/28 21:01:32 AW5g6KNP
>>699
君はスルー検定三級だな失格!!

701:名無しさん@ピンキー
07/10/28 21:36:06 YuJaL9zg
>>700
それ面白くないからそろそろ止めたほうがいいよ。

702:名無しさん@ピンキー
07/10/28 22:19:32 i5rclLul
>>691確か安全日ってもとから信憑性が低いものじゃなかったっけ?

703: ◆/waMjRzWCc
07/10/28 22:56:50 W1pCMZEK
綾がハイレベルすぎて気が引けてますが投下します。

704:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/28 22:57:51 W1pCMZEK
私は、夢を見た。
修くんの事を考えながら寝ると、ほぼ必ず見る夢。
つまり毎日見ている様なものだ。
私はまだ小学生で、でも意識は今の自分。
すぐにその時の私の意識と同化する。
修くんに初めて好きな人ができた時の事。
私は心の中で深く暗い感情を覚える。
でも、表面上はそれを見せずに、全く逆の事を言う。
「頑張ってね」
だなんて言いたくもない。
だから、付き合うと分かった後で、私は行動した。
修くんにバレない様にその子に近付き、まずは説得してみる。
その子はただ「別に遊んであげてるだけ」と答えた。
「特に好きな訳じゃない」とも言った。
その時から少しの間記憶が無い。
ただ、気が付くとその子は泣きながら私の前に倒れていた。
おそらく私はその子の処女を奪ったのだろう。
その子は、股の間から血をしたたらせていたからだ。
それに、私の手には血の付いた棒が握られていた。
殺さなくて良かった。
彼女には、噂を広めて貰わないと。
「これ以上何かされたくなかったら、周りの皆に修くんに遊ばれて、ふられたって言ってね?」
そう言うとその子はただ泣きながら小さく何度もうなずくだけだった。

705:名無しさん@ピンキー
07/10/28 23:07:23 ftFwJvnO
兎シチューは奇襲だったからな、普通に驚いたんだよ
それで綾に対する認識を改めた、友達の妹から恋敵へ

706:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/29 00:05:05 W1pCMZEK
すぐに噂は広まって、修くんがいじめられている事が分かった。
修くんがかわいそうだとは思った。
けれどこれは修くんの為にした事なんだよ?
あのままじゃきっと、もっと酷い傷をおわされていた。
だから、私が守ってあげた。
私は修くんの事を愛しているから。
修くんは人と話さなくなった。
でも、私とだけは話してくれる。
私の事を信用してくれてる。
修くんは私だけのものだ。
もう二度と、一瞬たりとも修くんを離したりしない。
離れられない檻を作ろう。
全てから修くんを守り、全てから修くんを遠ざける。
ただ、私と修くんだけが入る檻を…
そう決意をして、また朝を迎える。
側には修くんが居て、私を起こしてくれる。
はずだった。
「修くん…?」
起きた時間は7時。
まだ学校に行く時間ではない。
けれど、家の中のどこを探しても修くんは見つからなかった。
なんで?どうして?
なんで私の側にいてくれないの?
どうして私から離れるの?
携帯に電話をしても繋がらない。
修くん、どこに居るの?
私を一人にしないで!
気が付けば私は着替えもせず外に飛び出していた。
修くん、修くん…
お願いだから私の側に居て…!

707: ◆/waMjRzWCc
07/10/29 00:06:19 lI/qGMZs
投下終了します。


708:名無しさん@ピンキー
07/10/29 00:22:15 i7LA8Nw7
>>707
乙です。
さて、これからどんなドロドロが展開されるのか・・・。

>>702
そう、というか信憑性以前の問題で効果自体ない。
安全日だとか膣外射精、コーラで避妊できると考えている若者のなんと多いことか。

709:名無しさん@ピンキー
07/10/29 00:27:10 jeKWw1QJ
>>707
乙なんだぜ!

コーラ避妊って信じてる奴いるのか?
一種のギャグ、冗談だと思ってたぜ

710:名無しさん@ピンキー
07/10/29 00:30:18 duki+PUn
オギノさんも迷惑してるみたいだね。

711:名無しさん@ピンキー
07/10/29 01:04:08 dSvusbKX
避妊にはまったくなっとらんが、一応確率的には下がるだろ

712:名無しさん@ピンキー
07/10/29 01:06:57 NjrihAor
>>707
乙~
しかし小学生の時にやられた子かわいそうだなw

713:名無しさん@ピンキー
07/10/29 02:58:12 aEdorUGm
まあ、当たるか当たらないかの2つしかないんだから確率って言うのはどうかと・・・

714:名無しさん@ピンキー
07/10/29 04:11:24 xtEI+uOp
>>711
>避妊にはまったくなっとらんが、一応確率的には下がるだろ

生物学というか保健体育というか、勉強しておけ。

>>713
>まあ、当たるか当たらないかの2つしかないんだから確率って言うのはどうかと・・・

数学というか統計学というか、勉強しておけ。

715:名無しさん@ピンキー
07/10/29 05:17:44 atAYVX6Y
>>707
もっと書きためてから投下してくれ

716:名無しさん@ピンキー
07/10/29 07:14:03 HrwE44hi
>>707
乙でした

俗に言う危険日に中田氏でも妊娠する確立は3割程度なそうな

717:名無しさん@ピンキー
07/10/29 07:23:23 FGR1gk7S
>>716
>俗に言う危険日に中田氏でも妊娠する確立は3割程度なそうな

確立ねぇ・・・

718:名無しさん@ピンキー
07/10/29 11:00:44 Pynxh/8l
どっちにせよ、綾は中出し妊娠オールオッケー
望むところよお兄ちゃん、てな感じなんだろうな

719:名無しさん@ピンキー
07/10/29 13:50:53 hlOBJD1q
綾がガチで妊娠したら陽一は自殺する気が

720:名無しさん@ピンキー
07/10/29 16:17:41 dJ0Qc+CP
自殺しようとする患者を手錠でベットに縛り付けることがある
だからお兄ちゃんが自殺しようとするものならそれを口実に監禁して目の前で大きくなっていくお腹を見せ付ける
さらに目障りだった緑の処刑ショーや出産ショーまでやってくれればお兄ちゃんの精神も崩壊です
と妄想

721:名無しさん@ピンキー
07/10/29 17:49:18 jLm2Sy6/
そこまでやったらもはや地獄絵図
完全にアウトw

722:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/10/29 18:14:48 7mLJx4m4
ナガレを切って投下します。

723:三者面談その4 ◆oEsZ2QR/bg
07/10/29 18:16:04 7mLJx4m4
「せ、先生……?」
 白いカーテンで仕切られたベッドの上。シーツの上で横たわる僕を高倉先生が見下ろしていた。
「気がついた? 誠二くん」
 まどろみから覚めた僕に気付くと先生はえへへと長いまつげを揺らして猫のみたいににっこりと笑う。
 なんだかおなかが重いなぁ、と思ったら先生は膝立ちで僕の体を跨いでいた。そのせいで先生のタイトスカートはぴんぴんに横に引っ張られていた。
「あ…、あれ? な、僕、なにかしましたっけ?」
 えーっと、記憶を思い返してみる。確か、姉さんに手のひらで打たれたことは覚えて……、
 そうだ、ぶたれてぶたれて打たれまくった。家にいた頃のように。いや、むしろそれまで以上に多かった。何度も何度も。
意識がおかしくなるくらいぶたれたのは久しぶりかもしれない。これだけぶたれたのは何年ぶりだろうか、えーっと……?
 ふわり。先生の手のひらがやさしく僕の頬を撫でた。
「まだ、痛むかしら?」
「あ、いえ」
 痛みは感じられない。でも、あの時のぶたれた感触は容易に思い出せる。それを思い出せば、心を伝わって頬に痛みが蘇りそうだった。
「腫れています?」
「ううん。大丈夫。綺麗なままよ」
 よかった。おたふく風邪みたいに腫れ上がってたらクラスメイトに見せられなくなる。僕は安堵の息をついた。
「お姉さんに何度もぶたれたって聞いたわ。大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
 慣れてますから、そう続けようとして一瞬で飲み込んだ。
「先生。いま、何時ですか?」
 いま僕がいるのは保健室だということは理解できていた。時ノ瀬先生がボロボロになった僕を運んでくれた後、ベッドに寝かせてくれたのだ。
 ビンタぐらいで寝かせるなんて、あまり聞いたことない話だけど、時ノ瀬先生の風貌(Tシャツに白衣に裸足でサンダル履きそして土足)が許されている時点でもうアレなので、そこらへんは変に納得してしまう。この先生にこの処置あり。
 そうして、ベッドに入れられた僕はお言葉に甘えてそのまま寝付いてしまったみたいで。そして、気がついたときには先生に跨がれていたというわけである。
 というわけって?
「んーっと、四時前ぐらいだわ」
 先生が腕に巻いた小さな腕時計を見て答えてくれた。大体六時間目終わってHR終わって何分かぐらいだから……。僕かなり寝てるぞ。
 あー……、そっか。昨日先生のうちに泊まって寝不足だったからだ。……だって先生激しいんだもん。
「じゃあ、もう放課後なんですね」
 僕が体を起こそうとすると先生は潤んだ瞳でえへへと笑い、僕の両肩を掴んだ。僕の体はぐいと体重を押し込まれ、そのままパイプベッドの白いシーツに体を戻してしまう。パイプベッドの揺れる音にあわせてギシシと軋む音が響く。
「待って」
「あれ、先生?」
 僕が疑問の声をあげると、先生はまた僕の頬を撫で始める。なんだか、肌質やかすかに生えた産毛をさわさわと撫ぜうっとりとした顔になっていく。かすかに口元からじゅるりと唾液をすする音が聞こえた。
「本当に綺麗なまま……」
 すりすりと僕の頬を先生は優しく丁寧に撫ぜ続けている。くすぐったくて僕は体をよじって逃げようとするが先生に跨がれてるのでうまく動けない。
というか先生が僕の下腹部に腰を下ろしていて、ぷっくり膨らんだスカートの中身が当たってる。あそこに……。
「せ、先生っ」
 汗がぶわっと噴出す。せ、先生。まさか、こんなところで!?
「ねぇ、もうすぐ職員会議だからさ。その前に一回だけいいでしょ?」
 ねとつく視線を僕の体に彷徨わせ、先生の細指が僕のカッターシャツのボタンに伸びた。ぷちりと音がして首元のボタンがひとつづつ外されていく。
 第三ボタンまで外されたとき、ようやく僕は声を出した。
「だ、ダメですよ! 先生っ」
「なんで?」
「学校の保健室じゃないですか!」
「燃えるでしょ?」
「ダメダメ、危なすぎますよ!」
「10分で済ませるんだから大丈夫よ」
「だって、保健室ですよ! 誰か来たらどうするんです」

724:三者面談その4 ◆oEsZ2QR/bg
07/10/29 18:17:03 7mLJx4m4
 というか、こんな状況なのに誰か保健室にいないのか? 養護の時ノ瀬先生がいるはずですよ!
 しかし、そんな僕の心情とは裏腹に先生は終始落ち着いていた。なにか絶対に大丈夫という確信を持っているみたいだった。
僕のカッターシャツのボタンを全て外し終えた先生は、楽しげに口笛を吹いて僕の胸をはだけさせた。タンクトップごしに先生のひとさし指がつつくように動いて
「まぁ、口ではそんなこと言いながらも、こっちはそう思ってないみたいだけど」
 うわぁ、ありがちな台詞と返す間もなく、先生は押し付けているタイトスカートの中にある膨らみを下着の布ごしにゴシゴシと僕のズボンを擦るように蠢かせる。
 先生のスカートはズボン越しの僕の熱を持った棒に狙いを定めていた。そりゃあ、僕もいっぱしの男子学生であるわけで、さっきからずっと押し付けられている先生の柔らかな感触に、舌のほうも反応してしまっていた。
 先生はそれに気付くと、頬をピンク色に染めてはぁはぁ熱い吐息を混じらせ、腰の重力移動を強くする。ぐにっぐにっと先生の大事なふくらみに潰される刺激に僕の下の棒はどんどんと熱を上げて膨らんでいった。
「ふふふ。こんなに大きくなっちゃ私が帰ってくるまで待てないよねぇ? 誠二くんは動かなくていいから。ぜーんぶ先生に任せてね」
 先生の体が浮いて、棒にかかっていた柔らかな圧力が消える。見下ろしてみると僕のズボンは明らかに縦に一本膨らんでいた。先生の細長い指が僕のズボンのジッパーを抓むとゆっくりと手を下ろしていった。
 ちーーっ。
「ちょっちょっ!」
 慌ててズボンを抑える。しかし、先生はそのズボンを抑える僕の姿に妙に萌えたらしく、鼻息をぷすぷすと荒くし、口元をにんまりと歪めて意地悪く笑った。なんだか背中から黒い翼のシルエット見えそうだ。
「そうやって抵抗する姿も可愛いんだから……。もぅ、いただきまーす♪」
「やめんかい」
 その言葉と同時に白いカーテンが勢いよく開かれた。
 まさか、バレた!? 体が恐怖に硬直する。
 カーテンを開いたのは時ノ瀬先生だった。ぼさぼさにうねる長い髪と『定期預金』と描かれたTシャツに白衣といういつもの格好で、呆れた顔でベッドで倒れている僕らを見下ろしていた。
「せ、せんせいっ!?」
「ったく、人が人払いしてやって見舞わせてやってるのに、調子に乗りおって……。私のベッドで狼藉を働くな」
「むぅー、時の字のいぢわる」
 体中の毛穴という毛穴から冷や汗を噴出している僕とは反対に、高倉先生はまるで悪戯をしている現場を母親に見られた子供のような態度で、僕から体を離さないまま時ノ瀬先生に不満の声をあげた。
「あ、言っとくけど時ノ瀬先生は私たちのコト知っているから。大丈夫」
 高倉先生は僕の様子に気付いて、軽く説明してくれた。本当かと思い、時ノ瀬先生へ視線を移すと、時ノ瀬先生は呆れた顔で僕らを見ていた。視線が少し痛い。
「ほら、良子先生。さっさと職員会議にでも行け。10分で済ませるとか言ってたがもう時間無いぞ」
「え、あ。本当だわ」
 先生が保健室にかかった時計に視線を移すと、軽く驚いていた。先生の腕時計にズレがあったのかな。
「ごめんね。誠二くん。つづきは帰ってからね♪」
 僕のおでこを人差し指でつんと突いて言い聞かせる高倉先生。でもどっちかといえば僕が先生に突っつく方じゃないのかな。この立場だと。
 そんな風に思いつつ体を起こすと、先生はベッドから降りてぶぅぶぅと時ノ瀬先生に文句を垂れていた。しかし時ノ瀬先生は文句が言える立場かと一喝して、出入り口に顎を向けて外へ促した。
 僕もベッドから降りる。確かに、時ノ瀬先生がちゃんと人払いしていたようで保健室には僕以外生徒の姿は無い。白いカーテンがさっと窓を遮っていて、きちんと外からを見えないようにされていた。
 よかった。本当によかった。危ない危ない。
 時ノ瀬先生と高倉先生はまだうだうだ愚痴っぽく話していた。その二人の横を通り過ぎる。僕のカバンはここには無い。さすがにカバンまでは持ってきてくれなかったらしい。じゃあ、あとで教室に取りに帰らないと。
「じゃあ、またね。」
 ちゅっ。
 出入り口へ向かう高倉先生とのすれ違いざまに、お互いの唇が軽く合わさった。啄ばむようなキス。
 ばいばいのキス。
 僕の頬がぽぽぽっと熱をあげる。
 高倉先生はそんな僕にニコリと子供みたいに笑うと、ばいばいと手を振って保健室から出て行った。
 はぁ、とため息。

725:三者面談その4 ◆oEsZ2QR/bg
07/10/29 18:17:44 7mLJx4m4
「良子先生の世話は大変だろう? 君なぁ」
 そんな僕の肩をやさしく叩く時ノ瀬先生。そういえば、時ノ瀬先生は僕と高倉先生の関係を知っているんだ。僕は誰にも喋ってないから……、高倉先生が喋ったのだろう。
 ん、じゃあ仲いいのかな…?
「あの、時ノ瀬先生……」
「良子先生とは大学の頃の友人だよ」
 時ノ瀬先生はすぐに察したのか、すぐにイロイロと教えてくれた。
 時ノ瀬先生いわく。高倉先生とは大学の頃の先輩後輩の間柄だったらしい。高倉先生が先輩で時ノ瀬先生が後輩。なんだか雰囲気的には立場逆のような気がするけど、そうらしい。
 で。たまたま同じ学校に来て、僕のことについては高倉先生はよく時ノ瀬先生に相談していたとのこと。相談と言っても愚痴や僕に対するのろけが主だったらしい。
 それにしても、普通生徒と付き合っているとか言われたら止めたりとか反対したりとかしないんだろうかと思ったが、
「良子先生は頑固でな。一度これと決めたら神に咎められようが、曲げん。私の反対なんてどうせ無駄だよ」
 と、先生は苦笑した。
 でも、僕らの関係を秘密にしてくれたり、保健室に運んで人払いして高倉先生と二人っきりにしてくれたりと、かなり気を回してくれている部分、時ノ瀬先生は高倉先生を嫌ってはいないよう。
 時ノ瀬先生はパイプ椅子に腰掛けると、白衣のポケットからタバコを一箱取り出した。保健室で喫煙はダメなんじゃないかという僕の視線を無視して、先生は一服を始める。
 ぷはぁーっと、先生が吐いた白い煙は天井まで昇り、通風口へ吸い込まれていった。
「先生。僕を保健室まで運んでくれたのは先生なんですよね?」
「ああ。たまたまそこを通ったときに、やったらばちーんばちんと叩く音がしてな。女子生徒がキャットファイトでもしているのかと思って覗いてみたんだよ。あ、もちろんキャットファイトでも注意するつもりでだぞ」
 すると中に居たのは延々と抵抗もせずに頬を叩かれている僕だった。
「こりゃ珍しいと思ってしばらく様子を見てたんだよ」
 早く止めてください。
「最初は恋人が浮気していた怒られているのかと思ったんだが……。だんだん妙な雰囲気になっていてな。しかも叩かれている奴を見ると、良子先生がいつも話している君だったんだ。そこでさすがにおかしいと感じて止めに入った」
「じゃ、叩かれているのが僕だったらまだ見てるつもりだったんですか……?」
「そこはノーコメントだ」
 ぐりっ。
 時ノ瀬先生が携帯灰皿の中にタバコを押し込んだ。ほとんど吸ってないのに。贅沢な吸い方だなぁ。
「ところで……。沢木誠二くん」
「はい」
「君のお姉さんについて聞かせてくれないかな?」
「え?」
 先ほどまでの野暮ったい表情から一転、真剣なまなざしを僕に向けて放ち先生は言った。
「姉さんのことですか?」
 ああ。と頷く。
「どうしてです?」
「カウンセリングみたいなものだよ。答えなくなかったら答えなくて良いからちょっと質問に付き合って欲しい」
 はぁ。僕は軽く頷いた。
「今日君の頬を叩いていたのは君の姉さんでいいのだな?」
「はい。僕の姉さんです」
 千鶴姉さん。僕よりずっと優秀でずっと凄い姉さん。
「ああいうのはしょっちゅうなのか?」
「しょっちゅう……?」
「ビンタだよ」
 ばしーんっ。
 ああ、僕の頬にあの感触が蘇ってきた。鋭い痛みの連続。
「えーっと、あんなにぶたれたのは久しぶりですね」
「ふむ。ぶたれることは日常茶飯事なのかい?」
「いや、無意味にぶたれることは無いです」
 そうか、と先生は呟く。
 そのまま先生は考え込むように口元に指を当てて、黙る。ペンをくるくると回し、とんとんと机を叩き、時折なにかううんと呟く。
 僕は不安になって声をかけた。先生はそれに頷き、ぼりぼりと頭を掻く。
「……実はな、君の姉さんのことについていろいろと良子先生とも話しているんだが」
「え?」
 高倉先生が? 僕の姉さんのことについて?
 たしか、高倉先生と姉さんがきちんと顔を合わしたのはあの三者面談のときだ。いや、学校ではなんどか顔を合わしているはずだけど、ちゃんと面と向かって話したのはそこが最初だと……、先生はそう言っていた。
 それ以降、先生が姉さんのことを話題にしたことは無い。いや、僕が姉さんのことを話そうとすると嫌がり、話題に上らないように阻止された。
 ……待てよ。そういえば、先生は三者面談の時、はじめて逢って話しをしたって言ってたよな……。

726:三者面談その4 ◆oEsZ2QR/bg
07/10/29 18:18:27 7mLJx4m4

 三者面談で初めて話す先生が進路について指導するって、なにかおかしくないかな?

それに、先生は姉さんのことについて話題に出すのも拒否するのに、あの時は積極的に姉さんを呼ばせるようにセッティングしていた。姉さんと僕と先生、あの三人が集まるように動いていた。
 先生いわく、三者面談に僕を呼んだのは「君のお姉さんを説得できるのは誠二くんだけだから」と言っていたけど。僕が姉さんを説得なんて出来るわけが無いのにね……。
 なんだか、引っかかる。
「…………」
 あ、しまった。考え事に夢中で時ノ瀬先生のこと忘れていた。慌てて意識を先生に戻す。
「……先生?」
 しかし、先生は無言のまま僕を見つめているだけだった。いまなにか話しました? いや、話してない。さすがに意識は無くても言葉が発せられていたかどうかはわかるし。
 時ノ瀬先生は僕を見つめ、10秒ほど無言のまま止まり、なにかを言いたげに口を開こうとするが、すぐに閉じて、ふるふると頭を横に振る。そして、雰囲気に似合わない小さなため息をつくと、
「すまん。やっぱり今のは忘れてくれ」
「ええ?」
 言いかけてやめるって。
 僕がそう言おうとするが、先生も申し訳ないといった顔ですまんと呟く。
「もう少し時間が経ったら言おう。ちょっと、私の口からは言いづらいことなのだ」
 先生は左手を頭にあてて、本当にばつが悪そうに言った。いつもクールな先生とは違う、なにか納得のいかなさだけが残される。
 僕は文句をいいたくなったが、ここは空気を読んで素直に頷いた。

 教室でカバンを回収する。机の上には今日配られていたらしいプリントが数枚置いてあった。なんてことない、ボランティア参加のお知らせだ。
 学校の周りの掃除何とか空き缶拾いとか、先生も参加するのかな?
 とりあえず折りたたんでカバンの中に入れておいた。
 ……ん、そういえば。携帯電話が無い。
 ポケットを探るとあるはずの四角い感触。それがぽっかりとなくなっている。あれ? いつのまに……? 思い出してみれば、保健室に居たときから僕のポケットにその感覚は無かった。
 じゃあ、どこに? 落としたのかな……。記憶をたどる、たどる、たどる…。あの時にはあった、あのときにはあった……、最後に……。
 あ、姉さんにビンタされた時。あの時に腰が砕けた拍子に、ポケットからすべり落ちたのかもしれない。
 カバンを掴むと、僕は教室を出て、あの空き教室まで移動する。まだ姉さんがいるかと思って警戒していたが、さすがにあれから何時間も経っている。
 おそるおそる中を覗くと、姉さんはおろか誰の姿も無い。もぬけの殻。ホッと息を吐く。
 明り取り用の窓のみの暗い空き教室の床を僕は見て周る。目立つ色だからすぐ見つかるはずだけど……。何かをカツンと蹴った。床を滑って良く光るなにか。

 あ、あった!

 この携帯電話には僕と先生のメールのやり取り(ラブメール多し)が入ってるんだ。
 一応ロックはかけているけど、バレたら先生はこの学校を去らなきゃいけない。よく考えればそう簡単に無くすわけにはいかない物だ。
 それを右手で拾い上げる。
 が、僕の携帯電話は持ち上げた途端、折りたたみ式携帯電話のディスプレイ部分がぼろりと落下した。
「え?」

 カツン、コロコロコロ……。

 僕の携帯電話はボロボロに折り潰されていた。
(続く)

727:赤いパパ ◆oEsZ2QR/bg
07/10/29 18:19:32 7mLJx4m4
インターバル的に。
姉が出てきませんが、次回突入させる予定です。
次回投下は未定。あまり期待せずにお待ちください。

728:名無しさん@ピンキー
07/10/29 18:49:17 ddYUFKmC
GJ!
姉KOEEEEE

729:名無しさん@ピンキー
07/10/29 22:28:01 NjrihAor
これは続きが気になる・・・
GJと言わざるを得ない

730:名無しさん@ピンキー
07/10/29 23:06:24 //NyTWH8
おお…!
次回は姉さんの狂乱か…!?


731:名無しさん@ピンキー
07/10/30 01:51:05 YuxBncCs
綾と桜と千鶴姉の御姿を見たい…
絵師さん来てくれないかなあ

732:名無しさん@ピンキー
07/10/30 04:26:46 iXWQVQpr
とってもGJ!
携帯電話を姉のいるところで落としてさらにそれが壊されてるってことはきっと・・・
どんな折檻がくるかと思うとwktkが止まらないww

733:名無しさん@ピンキー
07/10/30 11:04:37 3aaqztma
>>732
このドMがwwww


・・・俺も楽しみだけどな!!(*´Д`)ハァハァ

734:無形 ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 12:34:24 d/Dwn6Zq
投下します

735:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 12:36:40 d/Dwn6Zq

※※※

雨が似合う。
僕にとっての姉は、そういう人だ。
勿論、憂鬱な雰囲気を連想するとかではなく、落ち着いた幽玄な空気を纏っている様が雨の持つ独特な
世界観と合致するという意味で。
姉のいる和室―障子張りの窓から見える暗い空は、だから憂鬱には見えない。
静かな風景は、僕にとっては好ましく、美しく映えるのだ。そして姉は、それに近似した雰囲気を持っ
ている。
「しろ姉さんは、着物を着たら似合いそうだよね」
姉のいる和室。
僕はそこに在る独特な空気を纏った姉にそんな事を云ってみる。
「ん?」
と云ってこちらを向いた肉親は、幽邃な瞳を細めて、口元をオメガみたいに歪めて見せた。
「クロは私の着物姿が見たいの?」
硯と筆を傍らに、姉は微笑む。
「似合うかな、と思っただけだよ。ここ、和室だしさ。しろ姉さん、そういうの好きだろう?」
若い女性にしては珍しく着付けも出来るのだし。
「ん・・・」
姉は瞳を閉じて、幽かに頷く。
「確かに和装は嫌いじゃない。寧ろ好ましいと思うわ。けれど、現在の洋服に比べれば合理性で劣る。
兎角、手間がかかることが問題ね。だから特別着る気は無いのだけれど―」
開眼し、瞳だけで僕を見る。
「クロがそう望むなら、これからは和装にしても良いわ。着物も何着か持っているし」
「胴衣もあるしね」
「あんなものでは外には出られない」
そう云って姉は笑った。
(袴姿、綺麗なんだけどな)
僕は肩を竦めた。
会話が途切れると、姉は作業を再開する。
大きな色紙に筆を走らせ、
『蠢  如  木  鶏』
シュントシテモッケイノゴトシ。
相変わらずの達筆でそう記す。
「達生篇?」
「聊斎志異」
「ああ―促織か」
姉は頷きながら筆を置く。
「今度は誰に頼まれたのさ?」
「同門の後輩。自宅の道場に飾るそうよ」
満足いくものが書けたのか、姉の表情は明るい。
書画の道に通ずるみっつ上の肉親は、知己やその縁故筋から一筆頼まれることが多い。今回の色紙も
そのひとつだろうとは聞くまでも無く分かった。
「クロ、私はこれを届けに往ってくるけど、貴方は今日はどうするの?」
「ん~?特に予定は無いなぁ。部屋で本でも読もうかな、と」
「そう」
姉は少し考えるような仕草で頷いて、
「出来るだけ早く帰ってくるから、そうしたらお話でもしましょう?」
柔らかく微笑む。対する僕は僕は首を捻る。
「しろ姉さん」
「何?」
「同門の後輩って、女の人?」
「・・・・・・」
姉の動きが止まった。
こういう場合、大抵姉は「一緒に来る?」と僕を誘う。
それが無い時は共通する条件があるのだが・・・。
(それが何かは敢えて云うまい)
僕が黙視していると、姉は顔を左右する。

736:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 12:39:11 d/Dwn6Zq
「・・・違うのよ。あの娘は武芸一本やりで男嫌いなところがあるから、クロを連れ往っても仕方ない
と判断しただけ。他意はない」
何がどう違うのかはわからないが、姉に同行を求める意思が無いなら突付いても仕方ない。
彼女の通っていた道場は基本的に男子禁制の場所だったから、聞くまでも無く対象は女性だろうと思っ
ていたけど。
筋道立てて僕を連れて行かない理由を話す肉親の姿は、なんだか悪戯を見つかった子供の云い訳みたい
に感じらて、微笑ましかった。
と、ポケットに入れていたケータイが鳴った。
「ごめん姉さん、ちょっと外すね」
和室を出て、自分の部屋へ。
歩きながら画面を見ると―
「絵里ちゃん?」
五代絵里。
意外な人物の名があった。
この間の五代邸来訪の際にアドレスの交換はしたのだけれど、連絡は一度も取っていなかった相手だ。
何にせよかかって来た事は事実。僕はケータイを耳に当てる。
「もしもし」
「あ・・・五代、です。くろさん、ですよね?」
電波越しの甘い声。
それは紛うことなく五代絵里のそれであった。
「うん。そうだよ。絵里ちゃんだよね」
「はい。絵里です。突然お電話しちゃいましたけど、今、大丈夫でしたか?」
「うん。大丈夫だよ。暇を持て余していたところ」
「良かった・・・」
ホッとしたような声。
如才無いと云うのではなく、本当にこちらに気を砕いているのだろう。そう感じられる声と気配。
「急に電話をしたので、迷惑になってないか不安だったんですが・・・」
「いやいや。電話くらいで迷惑とか思わないから気にしなくて良いよ。それで、どうしたの?」
「はい。え、と・・・」
沈黙。
それは多分、逡巡。
何か云い難い事なのだろうか。
「この間の・・・くろさんの・・・・絵のことです」
「絵?僕の描いた?」
「はい」
返事の声は強い。
「―この間、私が何回も見たいって云ってしまったたじゃないですか。あの時はしろさんも褒めるく
らいの絵ですし、どうしても見たかったんですが、今になって思うと随分失礼なことを云ってしまった
と。それでお詫びの電話をしようと思ったんです」
「ああ・・・」
僕は頭を掻いた。
「そのことは別に良いよ。と、云うか、描いたんだよね、一枚」
「え・・・っ」
驚いたような、それでいてどこか高揚感を感じさせる気配が届く。
「こないだ云ったように、僕の絵は大したことは無い。それを判って貰うには実物を見てもらうのが一
番良いかなと思ってね」
百聞は一見に如かず。
そう考えて描いてみたものの、五代邸を訪れる理由も無く部屋の隅に放置されていたのだが。
「あ・・・あのぅ・・・」
「ん?」
「やっぱり見たいって云ったら、クロさんは怒りますか・・・・?」
その言葉を聞いて、僕は噴出してしまった。
「素直だね、絵里ちゃんは」
「あぅ。ごめんなさい」
「いや、いいよ。あんなものいつまでも部屋にあっても邪魔なだけだし。絵里ちゃんが見たいなら好き
なだけ見ると良いよ」
用が済んだらさっさと処分できるのだ。
「絵里ちゃんのトコって日曜も部活あるの?あいてる日があればその日にでも見せるけど?」
「あ、あのっ、それじゃあ、今日とかはダメですか?」

737:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 12:41:45 d/Dwn6Zq
「今日?」
僕は外を見る。雨は相変わらず降っている。
「僕は平気だけど」
「それなら、私が伺います。それで大丈夫ですか?」
「ん~。いや。僕がそっちに往くよ」
「でも、外は雨です。元元無茶を云ったのは私の方ですし、御足労願うわけにも・・・」
「良いんだよ」
僕は外を見たまま目を細める。
「雨の日に外を歩くの、好きなんだ」
これは気遣いとかじゃなく、本当のこと。
「だから絵里ちゃんの都合の良い時間にそっちに往くよ。いつなら大丈夫?」
「くろさん・・・有難う御座います」
私はいつでも大丈夫です。
絵里ちゃんは嬉しそうにそう云った。
多分、受話器の向こう側には笑顔があるのだろう。そこまで歓迎されるのは嬉しいのだが、これが暫く
後には失望に変わると思うと少し気が重い。けれどずっと期待されるよりはマシだろう。
じゃあ今から往くね。
そう云おうとした瞬間。
「―え?」
僕の掌から、ケータイが消えていた。
「では、これから伺わせて貰うわね」
「ね、姉さん!?」
いつの間にそこにいたのか。
僕のケータイを耳に当てた姉が、絵里ちゃんにそう返していた。
「しろさん、いらっしゃったんですか?」
絵里ちゃんも突然返事をよこした人物に驚いている。
「ええ勿論。私はいつでもクロの傍にいる。―じゃあ、すぐに往くから」
姉はそう云って通話を終了させた。
「しろ姉さん」
僕が口を開きかけると、姉はそれを無視してどこかへ電話をかける。
慣れた手つきだ。知人の類だろうか。
「生駒(いこま)。私だ。突然で悪いけど、今日はそちらにいけなくなった。・・・ええ。ええ。
・・・そう。緊急の用事。絶対に外せない懸案だ。ええ。色紙自体は書き上がっているから、近日中に
渡せると思う。ええ。それじゃあ」
ピッ。という、電源を切る音。
状況が飲み込めずに見ていると、姉はこちらを向いて、
「どういうことか説明してくれるかしら」
なんて云って微笑んだ。
いや、それは僕の科白だろうに。

「ふぅん」
説明を受けた姉はそっぽを向いたまま、そんなふうに呟いた。
憮然とした顔をしている。何か気に触ったのだろうか?
「しろ姉さん、何でそんなに機嫌悪いのさ?」
「別に悪くない」
けんもほろろだ。
元来、鳴尾しろと云う女性は感情の抑制が上手く、その行動形式は合理的で無駄が無い。形而上、形而
下問わず、巧みな取捨選択と遮断能力が具備されており、表情の変化も社交辞令を除けば、ほぼ無い人
物だ。だからこんなふうに“拗ねる”事は珍しいのだが―
「クロが私以外のために絵を描くなんて・・・」
などとぶつぶつ云っている。
何で絵を描くと不機嫌になるのか理解できないが、触れないほうがいい気もする。藪を突付いて蛇を出
す趣味は僕には無い。
雨降る道を傘さして歩く。
使用される雨具は一つだけ。
僕と姉は同じ傘を使い、それ故だろう、姉は僕の身体にぴったりとくっついて離れない。
濡れては困るものを運搬しているのだから傘は2つあったほうが良いに決まっているが、
「傘を2つも出す必要は無いでしょう。1つで充分」
なんて云い切られてしまえば、惰弱な弟としては抗う術も無い。

738:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 12:44:20 d/Dwn6Zq
(これって、相合傘になるんだよなぁ・・・)
ツンと澄ました顔をする実姉の横顔を見ながら心で呟いた。
姉の腕は僕の片腕にしっかりと巻きついて、離れる気配も無く、照れている様子も無い。
(姉弟なんだから当たり前か)
意識する僕のほうがどうかしているのだろう。
姉の態度も雰囲気も、“これが当然”と云わんばかりのもので、自然体である。
姉は凛とした美人だ。
当然人目を惹く。
それはこの場合、僕に衆目が集まることと同義であって・・・。
「・・・しろ姉さん」
「・・・何」
今だ機嫌は悪そうだ。
「その・・・手、離さない?」
それでも怯まず提案してみると。

ぎゅっと。

姉は殊更力を込めた。
何も云わない。
こちらも向かない。
気配と態度のみでの拒絶だった。
もう一度問うてみた所で、返ってくるのは峻拒だけだろう。
姉はこうと決めたら我を曲げない。
そして僕には捻じ曲げる力も術もないのだ。
(我慢するしかないのかなぁ)
吐息をひとつ。
尤も姉にこうされているのは別段嫌ではない。余人の視線が嫌いなだけだ。
(だけど声を掛けられるわけでもないし)
耐えられなくは無い。
僕は自分にそう云い聞かせた。

※※※

僕の住む街は海と山に挟まれた一応の大都市である。
地形的には坂が多く、台地や丘も多い。
海沿いには、大きな公園があって、カップルなんかの定番のデートスポットになっている。
山のほうに目を転じれば、そこには大きな神宮がある。
神破(みわ)神宮と云うのが一般的な名称で、『陰影』を神様として祀っている。
一応は無格社だけど、その権勢はかなり大きいのだと聞いたことがある。
神宮そのものは山4つに及ぶ巨大な敷地を持っていて、宮内は内宮(ないくう)、外宮(けくう)に別
れており、更にその中には上社と下社があるらしい。
内宮に務めるものは神破の血縁の人間に限り、外部からきた人間は外宮に務める。
その外宮には大きな道場があって、武技や作法を教えてくれる。内宮にも類似した施設はあるみたいだ
けど、そちらで学べるのは神破の縁故だけだと云う話。
姉はその外宮の道場、神迎(しんけい)流・練舞館(れんむかん)の所属で、奥許しを受けている。
その為だろう、嘗ては外宮の禰宜さんから、神人にならないかと勧められたらしい。
けれど、歴史研究の夢のためにそれを断った。
その神破山を囲むように、街には大小の丘があって、そちらには教会その他の宗教施設がある。
海に近い丘の上には大きな管風琴のある教会があるし、他の丘には私設の大きな図書館があったり、寺
院や魔女のお屋敷や、古い塔なんかもある。
塔は街中にも一つあるけど、こちらは繁華街の一部で、タワーと表記したほうが正しいだろうか。街の
名を冠するそのタワーは展望台兼デパート兼ホテルになっていて、特に頂上近くの上層階にあるレスト
ランは、料理も眺めも良質である。
街の中にもある程度の区切りがあって、特に雪見台(ゆきみだい)と呼ばれる地域はお金持ちや名族な
んかが多く住んでいる。
雪見の中にも序列その他があるみたいだけど、「外」に住んでいる僕には関係のない話。
五代絵里の住む家屋は、その雪見の中にあった。

相対的に見て、そこそこの大きさの門の前へやって来る。

739:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 12:46:39 d/Dwn6Zq
姉とは相変わらずの相合傘。
勿論、手もしっかりと繋がれている。
そろそろ五代邸に着くのだし、離した方が良い。
道中、そう提案したけれど、返ってきたのは矢張り無言の拒絶だけであった。
「クロ」
呼び鈴に手を伸ばしかけた僕を姉が呼び止める。
その顔は正面を向いており、僕を見てはいない。
「この間も云ったけれど、女の子の名を気安く呼んでは駄目よ?たとえ相手が年下であったとしても、
自らが望んだとしても、名前で呼ぶなんて絶対に駄目」
凛とした、真剣な瞳だ。
雨の良く似合う自慢の肉親は、心底僕にそう戒めているのだとわかった。
「絵・・・、じゃなくて、五代さんがそう望んでも?」
「ええ、勿論」
「・・・・」
姉の云うことは古風だけど正論なのだろう。
けれど、と僕は思う。
ケースバイケース。
人それぞれのような気がする。
五代絵里とはそれほど話していないけれど、彼女は名前で呼んであげるほうが打ち解けてくれるタイプ
のように感じられた。
姉にそれを説明して、果たして納得してくれるだろうか?
「それでも礼儀を守るほうが大切」
そんな風に首を左右する気がする。
(打ち解けることなんて、しろ姉さんにとっては、二の次・三の次なんだろうしなあ・・・)
堅さと、そして美しさが直結した人なのだから。
それが、鳴尾しろと云う世界。
鳴尾しろと呼ばれる風景。
雨霞の中に溶け込んで、それでも尚、存在感を放つ巌のような在り方。
畢竟するに、自然体。
僕とは違う。
(そう―違うんだ)
僕は僕らしくあれば良し。
(あとで怒られそうな気がするけどね)
苦笑をしながら、呼び鈴に手を伸ばす。

――――――――――――――――――

小さい頃。
私は、絵が嫌いだった。

画家を目指した父は、夢破れて後、それでも絵画に拘泥を続けた。
       絵。
                         絵。
                  絵。
           絵。
来る日も。
来る日も。
来る日も。
来る日も。
時に自ら筆を取り。
時に夢成した人の賞翫をし。
喜び、落ち込み、心惑わされて。
家よりも。
友よりも。
なによりも絵に魅入られ。
自らの娘に、見知らぬ人物の見知らぬ作品を語り続ける。
そんな環境が嫌だったのか。
それともそんな父をみるのが嫌だったのか。
どちらかなんて、今もわかっていないけれど。

740:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 12:49:17 d/Dwn6Zq
多分、五代絵里と云う人格は、絵と、それに付随する世界を憎んでいたのだろう。

“その日”も、絵に囲まれた退屈な一日だった。
父の勤務する芸大の展覧会。
そこの学生や教員、そしてその縁故のプロやアマの、文字通り玉石混交の宴。
無感動な私はその中にいた。
ある人がある絵を褒め。
ある人がある絵を批評する。
感嘆する者。
付き合いで居るだけの者。
暇つぶしに来た者。
自分の絵の評価を遠巻きに気にしている者。
様様な人。
様様な顔。
そして、絵。
その空間も、私にとっては退屈でしかなかった。

来客・知人の挨拶に追われる父から離れ、一人で鑑賞して廻る。
否。
その時の私は、多くの絵や人人を視界に入れながら、唯会場を歩いていただけだった。
他人ばかりの街並みを独りで歩く時のように。
背景を気にすることも無く。
風景を目にすることも無い。
右から左。
後ろから前へと。
画廊は唯の通り道でしかなく。
私はそこに居るだけでしかない。
だから、“そこ”で足を止めたのも、偶然か気まぐれに属するものだったのだと思う。

『不滅のクロ』

それが、その絵の題名だった。
「なに、これ・・・・」
黒。
一面の黒。
大きな額の中には、真っ黒な何かがあった。
白が無い。
いや、一部はある。
だけど、それは明らかなマイノリティ。
真っ黒な四角のなかに、無数の白線が抱かれるように、軋むようにあるだけだった。
普通、白い世界に赤や青や黄色があって、風景を。人を形作ると云うのに。
四角い世界は黒く塗りつぶされ、残った白が“線”となる。
(これ・・・逆だ)
『白』に色を塗るのではなく。
『白』を残すことで世界を表現しているんだ。
「・・・・」
私は見入っていた。
唯、逆転させるだけ。
それならば特に目を引かなかっただろう。
私の“無関心”に飲み込まれ、虚無の中に消えるだけ。
けれど。
けれどこの絵には、人を惹きつける魅力があった。

華―

そう呼ぶには少し違和感があるけれど。
不思議な何かが絵の向こう側にあるのだ。
それは私だけではないようだ。
漆黒の周囲には、街灯に集る羽虫のように、多くの人が立ち止まる。

741:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 12:52:06 d/Dwn6Zq
それで気づいた。
(この絵、良い出来なんだ・・・)
往き交う人人なんて気にしてなかったけど。
視界を広げれば、黒い世界に目を向けている者のなんと多いことか。
大多数の支持がイコールで良作ではない。
けれど、良いものは多くの人に響く。
それもまた、事実。
黒の前にいる人人は、皆感嘆の相好を浮かべていた。
だから。
だから、唯独り。感心でも関心でもない表情で『不滅のクロ』を見つめるその少女は異質だったのだろ
う。
凛然とした―姿そのものが荘厳な風景画の様な女性。
知性と、意志の強さを感じさせる瞳。
静かで、でも力強い空気を纏った、随分と大人びた少女。
「――」
私は、そちらにも見蕩れた。
容姿ではなく。
“在り方”として美しい。
唯、そこに在る。
それだけで魅力を感じさせる女性だったから。
「あの・・・」
どうしてだろう。
私はその女性に声を掛けていた。
「何か?」
女性は優美に私を見つめる。
「この絵、どうですか?」
私が描いたわけでもないのに。そんなことを尋ねていた。
「ん・・・」
女性は微笑すると、『不滅のクロ』に目を遣った。
「まあまあ、かな。モチーフが良かったからかもしれないけれど」
「モチーフ?」
「ええ。題材。気持ちを乗せるなら、それが一番大切」
女性はこちらを向かない。微笑したまま、黒い絵画を見つめている。
「・・・これって、カップルですよね?」
黒の中の白は、一組の男女のように。
「カップル?そう。そう見えるの」
くすくすと女性は笑う。
嬉しそうにも見え、滑稽さを嘲笑うかのようにも見える。心底の読めない笑みだ。
私は頷きながら話題を変える。唐突にすぎるかな、と自分でも思うけど。
「これって、なんで2色なんでしょうか?」
この絵画には、白か黒しか無い。
意匠としてそうである、と云われてしまえばそれだけなのだろうけど、この絵には何か、それ以上の意
図を感じる。
「陰陽、光陰は総ての基礎。別に不思議は無いわ」
「でも」
私は首を傾げる。
「多くの色って、必要じゃありませんか?表現の都合上」
「そう云う場合もあるというだけの話。“この世界”はね、これで充分。―しろに必要なのはクロ
だけで。クロに必要なのは、しろのみ。それで良い」
他はいらない。女性はそう結んだ。
「2色なのに、世界を表現できるんですね」
「2色だから、世界を表現できる」
女性は首を振る。
「では作者は、2色で世界を表せたってことでしょうか?」
「或は、描き手の心象には、2色しかないのかもしれない」
不思議な表情で女性は瞳を伏せた。
刹那。
「至路」
連れがいたのだろうか。
一間程離れた距離から誰かが女性を呼ぶ。

742:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 12:54:37 d/Dwn6Zq
(しろっていう名前なのか)
女性は自らの名前を呼んだであろう人物に歩み寄った。
「ああ、朝歌先輩。どうでした?ここは」
「抽象的な概念は、私には向かない」
「そうでしょうね。この絵はどうです?」
「Rorschach test」
「まあ、間違いではありません」
女性はそう云って笑ってから、先輩と呼んだ人物を巡回路の向こうへ促した。
「じゃあ、私は往くわね」
そして、こちらに振り返る。
「貴女には、この絵はどう見えるのかしらね」
「・・・・私には、女性が男性を抱きしめているように見えます」
「抱きしめる、か。なるほどね」
しろと呼ばれた女性は僅かに頷いたようだった。
「貴女の数だけ、答えはあるのだと思う。作者が何を描いたとしてもね」
女性は手を振って、その場から歩き去った。
「・・・・」
私は『不滅のクロ』を見つめる。
漆黒に蝕まれ、捩れた白い線の集合のみで描き込まれた抽象画。
そこには多分、理解を超えた魅力が具備されているのだろう。
(もしかしたら)
「絵って、凄いものなのかも」
初めてそう思えた。
詩と絵画は自らが心を向けなければ響いてこないもの。
父はそう云った事がある。
私はその時、その意味がわかったのだと思う。
「他の絵も、見る気になれば見えてくるものなのかな?」
そう思うと、無味無感想な背景でしかなかった展示物が途端に色付いて見えた。
目に入るものはこんなに華やかだったのか。
あの絵も。
その絵も。
まるで違うもののように見える。
(凄い・・・。絵って凄い・・・!)
その時、私は素直に感動したのだと思う。
そのきっかけをくれた女性はもう見えない。
だから、津梁となった黒の絵画を見上げる。
「・・・・・」
綺麗な絵。
そう思っていたけれど。
周囲から抜きん出ているその漆黒は、魅力だけではない、『妖気』のようなものを纏っている様に見え
た。
女性が男性を抱きしめている。
私はさっきそう云ったけど。
改めてみた暗黒の世界は。
女性が男性の首を絞めているようにも見えたのだ。

――――――――――――――――――

目の前には、小動物を連想させる小柄な少女。
真横には、物心つく前から共に在る実姉。
ここは五代邸の応接室。
以前にも来た、あの場所だ。
違いと云えば五代先生の姿が無く、代わりに姉が居ることと他人の絵ではなく、自分の絵を持って来た
ことだろうか。
甘い声と愛くるしい容姿を持った年下の少女は爛爛とした瞳を僕と僕の荷物に向けている。
対して真横の姉は醒めた瞳でどこかを見ていた。それなのに、身体は押競饅頭みたいにぴったりと僕に
くっついて、ぐいぐいと押して来ている。
(今回もこうか)
なんて僕は思う。

743:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 12:57:24 d/Dwn6Zq
姉はこういった席で数人がけの椅子やソファに座ると、意識的か無意識的か、こうやってくっついて来
ることが多い。動きに対して表情は凛としたそれなので、妙にアンバランスだ。
絵里ちゃんは目の前の姉弟を不審に思わないのだろうか。
一つの傘で手を繋いで遣って来て、ピッタリとくっついて座る―
僕が第三者であれば「ドン引き」しているであろう光景なのに、何も云わない。
それどころかその片割れにして主原因の鳴尾しろと款談している。
「私、ずっと兄弟に憧れてたんです。だから、しろさんとくろさんが凄く羨ましくて」
私の兄弟の理想像なんです。
真っ直ぐな瞳でニコリと笑う。
外連の無い純白な笑顔。
思ったことを素直に外に出せることが、五代絵里と云う少女の魅力であり、本質。
瞬時に推考を練り、フィルタを掛けて言葉を外に出す姉や、内に籠もったまま周囲に流される僕とはま
ったくタイプの違う人間だ。
五代絵里の言葉に、鳴尾しろは「ええ」、「そう」、「ありがとう」、と、優美な笑顔で応じている。
それは、社交辞令に作り笑いで返すのと似た感覚。
けれども普段の姉は、心の底から褒められようとも「貴方の評価に興味は無い」とバッサリ斬り捨てる
人なので、これでも気を使っている方だと云える。
次いで、対面に坐す少女の“純粋”は、姉の外観にも到達する。
「しろさんって、とてもお綺麗です」
憧憬でも阿諛でもない。
先程の瞳と同じ。
唯、そこにあるものを認める言葉。
それを鳴尾クロの実姉にぶつける。
対する姉は矢張り変わらず。
心動かされる事も無く、
「光栄ね」
と、薄く笑った。
「くろさんはどうですか?しろさんのことを、お綺麗だと思いませんか?」
「ん?」
諦観していた僕は急に水を向けられて、少し驚く。
「うん。しろ姉さんは綺麗だよ」
特に考えることも無い。思ったことを口にした。
したら―
「な、ななな、な・・・急に何を云うの・・・っ。綺麗なんて身内に云われても、す、少し、も・・・
嬉しくないんだからね・・・・!!」
茹蛸が隣に発生していた。
「急にも何も、普通の会話の流れだったじゃないか」
「ち、違う。そうじゃなくて、そうだけど、夜討ち朝駆けには、慣れているけど、急には対処出来ない
っていうか、とにかく違うのよ」
支離滅裂だ。姉はどうしたのだろう?
「しろ姉さん、どうしたのさ?」
間近にある肉親の顔を覗きこむ。
すると。
「な、何でそんな近くに顔を寄せているのよ・・・~~~~~」
異なことを云う。
くっついて座ったのはそちらではないのか?
「わ、わかったわ。御小遣いが欲しいのね。はじめからそう云えば良いのに」
赤い顔でプイとそっぽを向く。
唐突すぎてついていけない。
「小遣いの無心なんてしてないんだけど」
僕の顔には?マークしか浮かばない。
首を捻りながら対面に顔を戻すと、五代絵里がくすくすと笑っていた。
「しろさんとくろさんって、本当に仲が良いんですね。素敵です」
「いや、確かに仲は良いけどさ・・・」
この状況は何なんだ?
再びの傾首。
「平静、平常心、平城京・・・」
あちらを向いたままの姉はぶつぶつと何かよくわからないことを呟いている。
「ん~と、しろ姉さんが壊れたみたいなんで、僕の用件・・・って云うか、本題を済ませておくね」

744:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 13:00:47 d/Dwn6Zq
はい、と包みを渡す。
その中には勿論、鳴尾クロと云う人間の『弱さ』が仕舞われている。
「は、拝見します・・・・!」
包みを受け取った絵里ちゃんは、ワクワクを隠せない様子で微笑んだ。
この笑顔が今から引きつった作り笑いに変わるのか。
そう思うと少し辛い。
包みを解く五代絵里の動きがスローに見える。
こういった時間は刹那であっても長く感じるものだ。
書き殴りの水彩画は、すぐに他家の空気に晒される。
絵の閲覧を望んだ美術部員は、愛くるしい笑顔を消していた。
無。
そこに表情は無く。
目の前の四角い弱さに心が移ろう。
「・・・・・・」
彼女は無言。
「・・・・・・」
僕も沈黙。
「和同開珎、万年通宝、筑波万博・・・」
一人だけぶつぶつ。
五代絵里は動かなかった。
カチカチと時計の針の進む音と、誰かの呟きだけが時の流れを教えていたけれど、小動物のような少女
は、置物のように―否、目の前の弱さに魂を吸い取られたかのように、微動だにしなかった。
(褒め言葉でも捜しているのかな・・・・?)
どうかな、なんて聞く気は僕には無い。
あまり良い出来でなかったことは描いた本人が良くわかっている。
だから、唯静かに。
目の前の少女の言葉を待った。
「・・・・っ・・・・っ・・・・・」
変化があったのは少女の手。
少しずつ、だけど確実に、彼女の手は震えていた。
「・・・絵里ちゃん?」
たまらず声を掛ける。
「―え?」
泣いていた。
表情が変わらぬまま、少女はポロポロと大きな涙を流していたのだ。
「な、何で泣くのさ!?」
「ぅ・・・・っぐ・・・」
驚く僕と、首を振る少女。
「違、うんです。この絵・・・見ていたら、・・・感動して・・・」
「え?その絵で?」
「は、はい・・・」
五代絵里は涙を拭う。
「綺麗な景色を見ていると、心が震えて、涙がでるでしょう?・・・・それと、同じなんです。この絵
が、凄く綺麗で・・・それで・・・それで・・・」
「・・・・」
綺麗?
僕の絵が綺麗?
そんなこともあるものか。
蓼食う虫も好き好きだろうが、また首を捻る。
「幻想的で、凄く深くて、私、上手く言葉に出来ないですけど、唯、涙ばかりが溢れてきて・・・」
「・・・・」
飾らないことが彼女の本質。
ならば、少なくとも気に入って貰えたということだろうか。
「え~と、取り敢えず御気に召したみたいで良かったよ」
僕はホッと一息を吐き、苦笑い。
「取り敢えずなんてとんでもない!凄く、気に入りました・・・・!」
感受性が豊かな娘なのだろう。これくらいでも喜んでくれるのか。
「あ、あの・・・くろさんっ・・・!」
絵里ちゃんは身を乗り出す。
「こ、この絵、どうかされる予定はありますか・・・?」

745:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 13:03:02 d/Dwn6Zq
「ん?どうかって、何?」
「その、誰かに差し上げるとか、手放したくないとか、そう云う、の、です・・・!」
今だ涙ぐんでいるのか。喋り方がぎこちない。
僕は頭を掻く。
予定なんてあろうはずもない。
見せるだけ見せたら、さっさと処分するつもりだったのだから。
「もし、もしも、予定が無いのでしたら、この絵を、わ、私に―」
「ごめんなさいね」
凛。
そう評すべき声が響く。
「悪いのだけれど、その絵は私が貰うことになっているの」
振り向いた先には、いつも通りの姉が在った。
先程の茹蛸ではない。
玲瓏な巌のような姿の実姉がそこに居た。
「しろ、さん」
姉は雅に微笑んで、五代絵里の掌中から絵を取り上げる。
「しろ姉さん、一体どう云う―」
つもりなのか。
云いかけて僕の動きは止まる。
唯微笑んでいるだけ。
それだけなのに、姉からは云い知れぬ何かが滲んで見えた。
異論は許さない。
そんな気配に僕は支配されて、沈黙した。
「本当にごめんなさいね。クロは―クロの絵は私のものなの。貴女には、渡せない」
「・・・・あ」
五代絵里は引きつった笑顔をつくる。
それは、僕が予想したそれではなくて、大切な玩具を取り上げられた子供が気丈に我慢するかのような
表情だった。
「そ、そうだったんですか。すみません、厚かましい事を云ってしまって・・・」
身を乗り出していた五代絵里は力なく腰を下ろす。
(なんだか可哀想だな・・・・)
弱った小動物みたいに、凄く儚く、小さく見える。
(このままじゃ可哀想だしな)
僕は少女に目をやった。
「あのさ、絵里ちゃん」
もう一度くらいなら。
「今度は君のために、一枚描こうと思うんだけど」

746:永遠のしろ ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 13:05:47 d/Dwn6Zq

※※※

「うわ、寒いな・・・」
肩を丸め、両手に息を吐きかける。
街の夜はかなり冷え込んでいる。
僕が居るのは『困り果てる両面宿儺』像の前。時刻は6時を少し廻ったあたり。
駅ビルとバスターミナルの間にあるこの像は、多くの人の待ち合わせに使われている。
ここに居るということは、僕も他の人人と同じ。
待ち人がある。
と、云っても、呼ばれたのは僕だ。
姉は門限に厳しい。
だから普段はこんな時間に外には出ないのだが。
数時間前の五代邸。
あれ以来、姉はずっと機嫌が悪くて、一言も口をきいてくれない。
何が逆鱗に触れたのかはわからないけど、酷く不機嫌だった。
(絵里ちゃん、って、名前で呼んだことを怒っているのかな?)
それとも他に何かあるのか。僕にはわからなかった。
姉はいつも的確だ。
だから僕に非がある可能性が高い。
けれどよくわかっていないことで頭を下げるのは失礼だろう。
だからそれを考える時間が欲しかった。
知己から外食の誘いがあったのは、ちょうどそんな時。
それでここにいる。
「少し早かったかな」
待ち合わせは6時半。まだ20分はある。普段なら待つことは苦にしないけれど、こう寒いと少し堪え
る。
(コーヒーでも買ってこようかな)
そう思った瞬間。
ふわりと。
暖かくて柔らかい何かが僕に纏わりついた。
「早いですね、クロくん」
綺麗な声。
それは、待ち人のもの。
「あ、甘粕(あまかす)先輩」
「他人行儀名呼び方は駄目ですよ?」
そんなふうに云いながら、優しい笑顔の美人が僕に抱きついていた。
甘粕櫻子(あまかす さくらこ)。
姉と同じ大学に通う人物で、古い知り合い。
特徴は表情で、いつもにこやかに笑っているので、その瞳を見たことが無い事。
怒るときも困るときも、ニコ目のままである。
彼女は美人で名高い甘粕6人姉妹の4女で、残りの姉妹5人もその瞳は見えない。
半数がニコ目で、残り半分が眠ったかのように閉じた目をしているためだ。
母性本能豊かな人で、スタイルも良い。知人曰く、「無駄にいやらしい体つき」。それを裏付けるかの
ように、見た目も感触も“むちむち”している。
そして。
そして、かつて僕に告白した相手だ。
告白と云っても、男女の間のそれではない。
あの日あの時、この人はこう云ったのだ。

「―私の弟になってくれませんか?」と。

747:無形 ◆UHh3YBA8aM
07/10/30 13:08:37 d/Dwn6Zq
投下ここまでです。
次回は永遠の続きにするか、キモウトものにするか、決めかねています。
気長にお待ちいただけると幸いです。
では、また。

748:名無しさん@ピンキー
07/10/30 13:32:48 iL6ZGKtk
なんかペルソナ思い出した
不滅の黒 永遠の白 ってあったよね

749:名無しさん@ピンキー
07/10/30 13:56:45 Sk/5gYsd
>>747
是非に永遠の、の続きにしてください。
早く続きが読みてぇぇぇぇぇえええええ!!

750:名無しさん@ピンキー
07/10/30 16:54:20 in3rh++k
>>747
永遠のGJ!!

ぜひこのままキモ姉でお願いしますw

751:名無しさん@ピンキー
07/10/30 17:02:14 heJSCeqg
おお…夢にまで見た無形氏の永遠のしろの続きを見られるなんて…
これは某少年誌で一年半ぶりに再開したマンガを見た感覚に似てる。

752:名無しさん@ピンキー
07/10/30 17:04:57 vmgw4y5X
>>747
おいおい、俺らをいつまで全裸にしていれば気が済むんだい?
せっかく服を着られたのにまた脱いじまったぜ?

753:名無しさん@ピンキー
07/10/30 17:58:20 QRENtAzH
>>747 GJ!
玲瓏、阿諛、賞翫、峻拒
普段使わない言葉なんで調べないと判んなかった…
博識ですなぁ

754:名無しさん@ピンキー
07/10/30 19:16:07 10t7MSmi
>>747GJ!!
ずっと続きを期待して待っていました。
よかったら次も永遠の、のつづきをお願いします!!

755:名無しさん@ピンキー
07/10/30 20:17:48 DdcXTQWv
女性が男性の首を絞めているように見えたって表現をした絵里ちゃんは任せられんな

756:名無しさん@ピンキー
07/10/30 21:00:17 huDg5dRl
>>747
これはGJと言わざるを得ない!!
早く続きが読みたいです!!

757:名無しさん@ピンキー
07/10/30 21:08:09 COUQzDzK
待ってました!!新キャラも登場しますますwktkがwww
続きでもキモウト物でも全裸で待ち続けます、Gj!!

758:名無しさん@ピンキー
07/10/30 21:35:55 Ygjf88wc
俺を悶死させる気か・・・
マジでGJ

759:名無しさん@ピンキー
07/10/30 22:13:56 USZpNFxf
綾、永遠の白…
大御所が来てくれて神GJ!
次は、次は…!!

760:名無しさん@ピンキー
07/10/31 00:09:08 UHGRDr8P
大御所って、それじゃあ既に引退したことになるぞw

761: ◆/waMjRzWCc
07/10/31 00:39:22 Y+rVCzl4
続き投下します。
正直投下すると悪いかなと思いつつ。

762:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/31 00:41:19 Y+rVCzl4
その日俺は朝早く、理緒姉を起こさない様に家を出た。
いつ寝たのかは全く記憶に無いが、その前にした事ははっきりと覚えてしまっている。
もちろん言われた言葉も。
俺と、理緒姉は姉弟ではなかった…
正直、立ち直れない位のショックをうけた。
なぜ、今まで話してくれなかったのか。
なぜ、あのタイミングで話されたのか。
頭の中が混乱して、何も考えられないうちに、理緒姉の中に入れてしまった。
しかも、そのまま中で…
あんな事をしてしまった以上もう家には居られないと思った。
たとえ行く場所が無くても、俺は出て行かなければならない。
今俺は公園のベンチに座っている。
学校に行く気にはなれないし、かと言って行く場所のあてもない。
だから、こうしてとりとめも無い事を考えながらただ座って居る。
携帯電話の電源は入れる気にならなかった。
おそらく理緒姉から電話が来るだろうし、話してしまったら理緒姉に言いくるめられてしまうだろう。
昨日の話について聞きたい気持ちも有った。
だが、今聞いても無駄だろうと思う。
思考回路は回っているようで、回っていない。
とりあえず、制服では無いから補導される事は無いだろう。

763:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/31 00:44:34 Y+rVCzl4
そう考えて、俺は公園を後にし、町の中をふらふらと歩いた。
理緒姉は…もう起きたかな…
俺の事探してたりするのかな…
でも…
気付けば俺はまた公園に戻って来ていた。
もう夕方だ。
そこで、少女が泣いていた。
膝を抑えてる所を見ると転んだのだろう。
「君…大丈夫?」
「ぐすっ…痛いよぅ…ふぇぇん…」
なんとはなしにポケットを探る。
絆創膏が入っていた。
なんでこんなの持ってるんだ…?
まぁ、ちょうど良い。
「君、ちょっと痛いけど我慢してね」
「お兄ちゃん、なにするの…?」
近くの水道まで連れて行き、軽く傷口を洗う。
「うぅ…痛いよぅ…」
「もうちょっと我慢してくれ」
洗い終わり、水気を取った傷口に絆創膏をはりつける。
「ぐすっ…お兄ちゃん、ありがとう」
「どういたしまして」
「お兄ちゃん、お名前はなんて言うの?」
「織部修だよ」
「修お兄ちゃん、ありがとう!」
「そんなに何回も礼を言われる事じゃないよ」
「でも、お母さんもお姉ちゃんもお礼はちゃんと言いなさいって言うもん」
「お姉ちゃんが居るんだ…」
「うん!とっても優しいんだよ?」
心にズキリとした痛みを感じた気がした。

764:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/31 00:45:19 Y+rVCzl4
お姉ちゃん…か。
「そういえば君の名前を聞いてなかったね。君の名前はなんて言うの?」
「私?私の名前は冬華っていうの」
「冬華ちゃんか。良い名前だね」
「えへへ…ありがとう。春華お姉ちゃんと同じ華が入ってるの!」
「え…?春華って…もしかして君の名字は羽居なのか?」
「そうだけど…修お兄ちゃんどうして分かったの?」
「あ、いや、なんとなくそんな気がしただけだよ」
「修お兄ちゃんすごいね!良く分かったね~」
まさか羽居に妹が居るとは…しかも小学生?
知らなかった…
「ねぇ、修お兄ちゃん暇なの?」
「ん?暇と言えば暇だけど…」
「修お兄ちゃん、私と遊ぼうよ!」
「え…う~ん…」
「お願い!私、お姉ちゃんが帰ってくるまでお家に誰も居なくて一人ぼっちで…寂しいの」
「もうお姉ちゃんも帰ってくる時間じゃないか?」
「ううん。お姉ちゃん、いつも帰ってくるの遅いよ。だから修お兄ちゃん、遊んで?」
う~ん…まぁやることも無いし、良いか。
冬華ちゃんを一人にするのも気が引けるし…俺はロリコンではないが冬華ちゃんは可愛いと思う。
なんというか、無垢で、純真な感じと言えば良いのだろうか。


765:理緒の檻 ◆/waMjRzWCc
07/10/31 00:45:59 Y+rVCzl4
「分かった。お姉ちゃんが帰ってくるまでは遊んであげる」
「やたー!修お兄ちゃん、優しいね!」
俺は…優しくなんかない。今だって理緒姉に心配をかけているのだろうと分かっててこうしているのだから。
「冬華ちゃん、何して遊ぶの?」
「う~んとね…修お兄ちゃん、ブランコ押して!」
「了解。じゃあ冬華ちゃん、乗って?」
「うん!」
冬華ちゃんが乗ったブランコをゆっくりと揺らし始める。
「冬華ちゃん、しっかり掴まっててね。少しスピードを上げるよ」
自分が座って漕いだらこの位だろうか。
そういえば昔からブランコにはあまり乗った覚えがない。
あの子が良く乗っていたからだろうか?
自分でも気付かないうちにトラウマになっていたのかもしれなかった。
「すご~い。修お兄ちゃん、力持ちだね!」
「これ位普通だと思うけど…それに冬華ちゃん軽いし」
そんな会話をしていた時だった。
「…見つけた」
後ろからゾクリとする様な声が聞こえた。
ブランコを止めて後ろを振り向く。
そこには、寝巻のままの理緒姉が立っていた。
「理緒…姉…」
「一緒に、帰りましょう?」
「もし、嫌だと言ったら?」
「引きずってでも連れていくわ」


次ページ
最新レス表示
レスジャンプ
類似スレ一覧
スレッドの検索
話題のニュース
おまかせリスト
オプション
しおりを挟む
スレッドに書込
スレッドの一覧
暇つぶし2ch