キモ姉&キモウト小説を書こう!at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう! - 暇つぶし2ch255:名無しさん@ピンキー
07/10/10 23:45:26 p5IVr2sD
「えーと…コロッケかな」
「コロッケね、ん~と材料はあったよね…よし、美味しいの作ってあげる」
俺と一歳しか違わないとはとても思えないような幼い笑顔で答える。
兄としてこんな風に思うのは変かもしれないが妹はかなり可愛らしい。鎧を着て守ってあげたくなるような可愛さを持っている…それだけじゃなく妹の笑顔は人生全てを捨ててでも眺めていたくなるほど愛らしい。
10人に聞いてその中に例外が居なければ10人とも美少女だと思うはずだ。
周り奴によく「お前の妹貸してくれ」とか「妹さんの兄になりたい、代われ」とか言われる。
代われるものなら代わりたいものだ。
俺が家で妹にどんな事をされているかも知らないで…
「今日はお母さん達を気にしないでたくさんいろんなことが出来るね」
一瞬心臓が凍ったような感覚に襲われた。
「あ、あぁ」
「なにしよっかな~?考えただけでうずうずしちゃうね」
「…そうだな」
本当はうずうずではなくひやひやしているのだが…まぁ今のところ妹は上機嫌なようだしばれる事はないか、ほら、もう家の近くだ。このままなら
「ところでお兄ちゃん」
今度は心臓が凍るだけじゃなく鷲掴みにされたような感覚に落ちる。
「な、なんだ」
「私に何か隠してない?」
ばれてないばれてないはずだ。冷静に対処するんだ。
「いや、なにも」
「そうだよね~私に隠し事なんかしないよね~」
「当たり前だろ」
「たとえ憧れの人からラブレター貰っても、私に隠したりしないよね」

256:名無しさん@ピンキー
07/10/11 00:10:44 YYIZD3Zy
>>255
最後の一行がこえぇぇ!

257:名無しさん@ピンキー
07/10/11 00:43:36 CT75sbFl
>>255
これはたまらんwwwwwwwwwwwwww

258:名無しさん@ピンキー
07/10/11 02:28:43 XmgpXboz
>>255の続きです


ぼれている。
何故だかは解らないが確実にばれている。
手紙を貰っただけじゃなく俺が美沙さんに憧れている事まで…。
「隠して…ないよね」
「……………」
俺は答える事が出来なかった。
「一応、念のため、念のためだよ?…鞄の中見せてくれるかな?」
妹は笑顔のまま俺に手を差し出した。
俺が鞄を渡すと信じて疑わない目をしながら。
「…………」
俺は無言のまま妹に鞄を差し出す…手は震え、心臓は相変わらず凍ったままで。
妹は笑顔を崩さないまま俺の鞄を受け取り中を探る。
そして…まるで宝を見つけ出した海賊のような笑みで手紙を取り出した。
「あれ~これは何かなぁ?」
「………」
「成績表か何かかな?読んでみよ」
妹は笑顔で無言のまま手紙を読見始めた。
このまま逃げるか?…いや、逃げたところで…
俺はもう完全に諦めていた。
永遠に思える沈黙の中、妹は読み終えたのか手紙を封筒の中にしまった…笑顔のままで。
だが俺は見てしまった…妹の手が微かに震えているところを。
俺は気づいてしまった…妹を取り巻く雰囲気が変わっていくことに。
妹は手紙を持ったまま鞄だけを俺に返すと笑顔で…仮面のような笑顔で。
「取りあえず…家に入ろ」
そう告げた。
妹が鍵を鞄から取り出し鍵を開け家の中に入っていく。
靴を脱ぐとそのままリビングへと向かっていき、俺は死刑囚のようにその後をついて行く。
「あっ鍵閉めといてね」
今や妹の言葉の一つで俺の心臓は砕けそうだ。
俺は鍵を閉め直すと妹がいるリビングに向かう、足取りは重く、今にも倒れそうな感覚に襲われながら。
妹は薄暗いリビングのソファーに足を組みながら座っていた…その顔は薄暗くてあまりはっきりと見えないが薄く笑っているようだった。
「座ったら?」
俺は言われたまま妹の前に座る…ただし正座をして。
妹に反省の色を見せているわけでも許しを請うつもりでもない…体が勝手に正座をしたのだ。
これからなにが起きて俺がどんな目に合うかはこの体が一番よく知っているからだろう。
この体制なら必然的に俺は妹を見上げる形になり、妹は俺を見下す感じになる。か
見上げて見る妹の顔はまだ笑顔のままだった…相変わらず仮面を貼り付けたような笑顔…それでも十分可愛いく幼さが残っている笑顔だった。

259:名無しさん@ピンキー
07/10/11 02:30:07 XmgpXboz
「どういうことかな?」
「……………」
「あの手紙の事を聞いてるんだよ」
「……………」
「答えてよ」
俺は俯いたまま無言で妹の質問にどう答えるべきか考えてた。
「答えなさいよ!!」
無言のままの俺に痺れを切らしたのか妹が軽く怒鳴った。
その瞬間俺の体は小さく震えた。
妹の顔は先ほどからは想像出来ないような恐ろしい顔をして睨んでいた。
俺は覚悟をして妹の質問に答えることにした。
「今日、放課後にクラスの女子から貰いました」
自分が実の妹に敬語を使っていることになんの違和感も感じなかった。
それが当然であるかのように俺は敬語を使っている。
「憧れの朝橋 美沙さんから貰ったの?」
先ほども思ったがなぜ妹はこの事を知っているんだろう。
美沙さんから手紙を貰ったことはいい、自分で見た、誰かから聞いた…いくらでも知る方法はある。
だが俺が密かに美沙さんに憧れていた事は誰も知らないはずだ。
俺は勇気を振り絞って妹に聞いてみることにした。
「なんで俺が美沙さんに憧れている事を知っているんですか」
「知ってるよ、お兄ちゃんの事ならなんでも知っているよ」
「どうして解ったんですか」
「気になるんだ…まぁ言うなれば女の勘っていうか…妹の勘ってやつかな」
「そんなの…」
「見てれば解るよ、私ならね。悔しかったな~気付いた時は…あの女を殺したくなるくらいにね」
「……………」
「だけどその時は我慢したんだよ~まぁどうせ明日死ぬけど」
「!!…今なんて」
「どうせ明日死ぬ」
「やめてくれ!!」
「………」
「美沙と付き合う事は無い、絶対に…だから美沙を殺すのだけは!!」
もともと彼女と付き合うつもりはなかった。
付き合うということをまず妹は許してくれない。
それが解っていたから俺は彼女を遠くから見つめて密かに憧れていたのだ…好きではなく、憧れで終わらしていのだ。
こうならないようにと…。
「……………」
妹は笑顔のまま俺を見つめていたが急に無表情になり氷のような冷たい声を出した。
「あの女を庇うんだ」

260:名無しさん@ピンキー
07/10/11 03:45:51 +JmGWvOe
>>259
ぎゃああああああ!
また怖い一言で終わってるううう!
GJううう!

261:名無しさん@ピンキー
07/10/11 05:22:29 8hBIu2+5
Gj!!こわい妹とか最高にツボな自分はmなのか?
なにはともあれ次回も期待してます!!

262:名無しさん@ピンキー
07/10/11 11:43:37 h5faQdSX
「成績表か何かかな?読んでみよ」→知ってるのにとぼける

「取りあえず…家に入ろ」→やんわり囲い込む

「妹の勘ってやつかな」→心の中も何でもお見通し

「どうせ明日死ぬ」→泥棒猫の確定死亡宣言

もうホラーです…

263:名無しさん@ピンキー
07/10/11 16:53:32 JCnADy/e
だがそれがいい

264:名無しさん@ピンキー
07/10/11 19:08:32 H1KF8Pe8
こう言うホラー映画を製作してほしい。もちろん二次元でね。(三次元は怖過ぎて萌えるとかそう言う次元じゃない)・・・)。

265:名無しさん@ピンキー
07/10/11 20:51:40 0PQknhP/
しかしぼれているはないわwwwwwwwwwww

266:名無しさん@ピンキー
07/10/11 21:07:13 54ojg85K
>>259
美沙さん\(^o^)/
妹怖いwwww

267:名無しさん@ピンキー
07/10/11 21:28:48 gOm4t05D
何か胸のあたりがゾクゾクするホラーは好きだぜ。

…あれ?そういえばMのキモウトって見た事がないな…

268:名無しさん@ピンキー
07/10/11 22:10:30 xdeckWsa
ひたすら謝るM?のキモ姉ならちょろっと投稿されてたな

269:名無しさん@ピンキー
07/10/11 22:13:23 HFQGSnuM
>>265
お前ぼれてるぞ

270:名無しさん@ピンキー
07/10/11 22:48:37 JCnADy/e
>>267
「ああっ!お兄様、この嫌らしい肉便器を使ってぇ!犯してっ、汚してほしいのっ、
 お兄様だけの私にしてぇぇ!」

…とか?

こりゃただの肉体言語か。難しい。

271:名無しさん@ピンキー
07/10/12 00:09:05 //gkESe1
>>270
うーんなんか違う気がするなぁ…わざと怒られるようなことをするとかじゃまいか?それだとただの肉便器だ

272:名無しさん@ピンキー
07/10/12 00:44:39 GYDXpZDy
外では完璧超人なDV兄貴とか?

273:題未定
07/10/12 00:46:55 zru3YLhT
 月明かりすらない夜。
闇と静寂とに沈んだ住宅街の一角を、僕は一人、幽かな外灯の明かりを頼りに歩いていた。
体中が、鈍い痛みにも近い疲労感に支配されていた。それは、連日休みなく入れているアルバイトから来るものだった。
右手に提げた教材を詰め込んだ鞄が重い。いつもなら英単語帳の一つでも取り出して勉強するところだが、今日はそんな元気もない。
空いた左腕を見つめる。学校指定の半袖のカッターシャツから覗くそれは、今は包帯が幾重にも巻きつけられていた。
バイト先の中華料理屋での失敗が原因だった。包帯を取り外せば恐らく、軽い火傷の傷跡が、露になるだろう。
原因は、ちょっとした気のたるみから来るものだった。
疲労による睡魔から、調理中に誤って自分の左腕に油を掛け、それに火が引火したのである。

クビ・・・・・・かなあ

怪我そのものよりも、そっちの方が問題だった。
個人営業の店であるその中華料理屋は、店主のこだわりが強く、自身が認めた者にしか鍋を握らせる事はしなかった。
バイトを始めて既に二年経つが、鍋を握らせて貰ったのはほんの一ヶ月前でしかない。
最初こそ失敗続きで怒鳴られてはいたが、最近は慣れてきたと思っていたのに・・・・・・。

あの店長の事だから、きっとクビだろうなあ・・・・・・

今回の失敗は技術的問題ではなく、単なる不注意からくるものだった。
そして、店長はそれこそを許さない。料理中に気を抜くということは、店長にとっては料理に対する侮辱だからだ。
恐らく後日、店長から直々に解雇の通達を貰うことになるだろう。

「月給九万と夜の賄いが無くなるのは、痛いな・・・・・・」

今日負ってしまった左腕の火傷のこともある。
恐らく、これが直るまで次のバイトは見つからないだろう。
現状でも、ただでさえ困窮していて、日々の生活にも困る有様だ。
今もこの夜空の何処かで一生懸命働いているはずの母さんが、これを聞いたらどう思うか。
そう思うと、忽ちに頭の中を、自分への憤りと、申し訳なさと、明日からの生活への不安と、憂鬱が塗りつぶしていく。






―だから、僕は

「お久しぶりです。兄さん」

目の前の暗闇に佇んでいた彼女に

「お待たせいたしました。迎えに、来ましたよ」

気づくことが、出来なかった





以上予告です。続きは近いうちに

274:名無しさん@ピンキー
07/10/12 01:06:08 H0w4kzg5
い、いいところできりやがって・・・
GJ

275:名無しさん@ピンキー
07/10/12 03:19:45 //gkESe1
>>273
なんという萌える展開…続き待ってるぜGJ!

276:名無しさん@ピンキー
07/10/12 04:37:26 t7kA2D8K
キモウトに呼ばれる一人称として様々なものがあるが…
住人の個人的意見としてはどれが一番萌える?

ちなみに俺は、『兄さん』

277:名無しさん@ピンキー
07/10/12 06:23:11 Tf8lhAlV
兄さんに同意

278:名無しさん@ピンキー
07/10/12 07:23:22 dLdPyGbW
秋葉のイメージって強いからなぁ・・・

279:名無しさん@ピンキー
07/10/12 08:05:53 fKAHwb2X
俺は音夢だな

280:名無しさん@ピンキー
07/10/12 10:00:12 DS6VWrag
>>270
別にSかMかは問題じゃないんだけど、主人公がキモウトに翻弄されて
ガクブルするだけの話はちょっと飽きてきたかな、かな。
キモウトは高スペックなのが多いけど、それを上回るくらいの懐の深さで
暴走による被害を食い止めつつでもキモウトが憎いわけじゃないから
本気で怒るのもなんかなー、と悩む主人公って感じのコミカルなのが
読んでみたい気がしないでもない。

281:名無しさん@ピンキー
07/10/12 10:05:24 e2p3bdmn
俺としては遠慮無く喰っちゃって修羅場る主人公がいいけどな
あんまそういうのないね

282:名無しさん@ピンキー
07/10/12 10:25:01 Tg0O5ivg
>>276-277
えー・・
何か「兄さん」ってよそよそしい感じがしてなあ・・
やっぱ「お兄ちゃん」が最強だろー

283:名無しさん@ピンキー
07/10/12 14:02:42 JcLTukDB
僕は「にーにー」が一番良いと思います

284:名無しさん@ピンキー
07/10/12 15:38:52 7HZUA8hg
「お兄ちゃん」がいいと思う人は現実的?
「兄さん」がいいと思う人は2次元が好き?
「にーにー」がいいと思う人は2次元&ロリが好き?

285:名無しさん@ピンキー
07/10/12 15:46:48 hWxQqrtd
兄ぃが好きな人は衛好き

286:名無しさん@ピンキー
07/10/12 16:39:31 CeJ8cfvY
兄さんも現実的じゃないか?

287:名無しさん@ピンキー
07/10/12 16:45:21 Tf8lhAlV
妹ならお兄ちゃん、もしくは兄ちゃん派だが、キモウトなら話は別だと思うの

288:名無しさん@ピンキー
07/10/12 19:14:37 a8A4ewZs
>>259の続きです


庇う…確かに俺は美沙さんを庇ったのかもしれない。
でも、それは好きだから庇ったんじゃない…こんな事に巻き込まれて死んでしまうのがかわいそうだと思ったからだ。
いくらなんでも妹の気持ち…嫉妬が理由でその人生を終わらしてしまうのはあまりに残酷だ。
「何度も言うけど…俺は美沙さんのことは好きでもなんでもないんです…これからは憧れの気持ちすら抱きません!」
「…………」
「何をされても無視します!…だから!!」
「いいね…必死になって私にお願いするお兄ちゃんのその顔」
「ぇ………」
「なんとも言えないエクスタシーを感じちゃうよ」
いつの間にか妹の顔は紅潮し、微笑んでいた…愛おしそうな目をしながら…。
「見てるだけでゾクゾクしちゃう…聞いてるだけで感じちゃう………まじたまんない。
…ふふ、やっぱり私はお兄ちゃんのことが好き…溜まらないくらい大好き」
妹は初恋をした少女のような顔をし俺に告白している…その姿はどこか手紙を渡してきたときの美沙さんとタブって見えた。
しかし、次の瞬間…妹は俺を睨んで立ち上がり叫んだ。
「心の底から…殺したいくらい愛してる!!」
俺は呆けたまま妹を見上げる事しか出来なかった…。
「好き!大好き!愛してる!!けどお兄ちゃんはあの女に憧れてる、庇った!!
許せない…愛しているからこそ…だからこそ許せない!!
お兄ちゃんを憧れさせ、お兄ちゃんに告白したあの女も!あの女に憧れ、あの女を庇ったお兄ちゃんも!!
そして何よりそんな状況になるのを許してしまった自分を…許せない!!!」
「っ………ごめん」
「お兄ちゃんを殺して…私も死のうかな」
「なっ!?」
「嘘だよ。殺したいくらい愛してるのは本当だけど…殺しても死んでも二度とお兄ちゃんと会えなくなるだけだし、いろんな事が出来なくなっちゃうもん」

289:名無しさん@ピンキー
07/10/12 19:16:54 a8A4ewZs
「それなら」
「けどあの女は別」
「!?」
「死んでしまっても私達には関係ない…でしょ?」
「けど」
「まだ庇うの!?いい加減にしてよ!!私がどれくらい頭にきていると思うの!?」
「…………」
「好きで好きで好きで溜まらない人が自分以外の人を気にする…それがどれくらい辛くて悔しいか解る!?
告白されて嬉しそうに…車の上で裸になって前周りが出来そうなくらい浮かれてる顔を見た私の気持ちが解る!?
それに、私がどれくらいお兄ちゃんの事が好きだか解ってる!?
お兄ちゃんが大好き!!愛してる!!お兄ちゃんの全てを愛してる!!
その目も、その耳も、その口も、その声も、お兄ちゃんの体の先から先まで愛してる!!
私のこの体はお兄ちゃんを愛するためだけにある!!

お兄ちゃんを惑わすものは全部壊してやる!!殺してやる!!
お兄ちゃんと私以外なら誰が死んでも構わない!!」
今妹が言ったことは全部本気だ…妹の顔がそれを物語っている。
妹を止めることはもう出来ないのか?………いや、止めてみせる…人殺しなんかさせない!!
「何でも言うことを聞きます」
「……………」
「何でもします」
「……………」
「だから誰も殺さないで下さい」
俺は…もう、後戻りは出来ない所まで来ていたんだ…。
だから最後まで行くしかないんだ…。
「俺は一生あなたの奴隷になります」
妹と最期ま
「今さらなに言ってるの?
元々お兄ちゃんは私の奴隷じゃない」
…え?
「これからもずっと…ず~と私の物だよ」
「………」
「永遠に…私だけの物」
俺は今から奴隷になろうとしたがそれは違っていた。
俺は既に奴隷となっていたんだ…。
そして、これから、ずっと…永遠に妹の物。
…俺はもう何も出来るこは無い…。
「なんでもするって言ったからには何でもしてもらうよ」

290:名無しさん@ピンキー
07/10/12 20:14:33 0beq1wuX
>>282
むしろそのよそよそしさがたまらん。
>>289
>車の上で裸になって前周りが出来そうなくらい
なんで分かるんですカー!

291:名無しさん@ピンキー
07/10/12 20:40:16 UqJBmEfm
>>289
怖ぇぇ


外では猫かぶってて兄さん
二人のときは兄貴
仲良く暮らしてたとこに泥棒猫が邪魔しに来たときはお兄ちゃん

292:名無しさん@ピンキー
07/10/12 21:55:30 AkjMWiQi
保守

293:時給650円
07/10/12 21:57:31 AkjMWiQi
>>249
続きを投下します。

294:淫獣の群れ(その3)
07/10/12 22:00:04 AkjMWiQi

「にいさまったら遅いですの……。んもうっ! 桜ちゃんたちったら、にいさまで遊び過ぎですのっ!!」

 ダイニングキッチンで、ぷりぷりと可愛い怒りの湯気を上げているのは、深雪(みゆき)。
 六人姉妹の四女であり、一家の家計と食事を一手に担当する、綾瀬本家の母親代わりである。
 そう。
 いま現在、この家には彼女たちの両親―綾瀬家の本来の家長である和彦夫妻―は、ここにはいない。
 いかに伝統ある旧家とはいえども、単なるサラリーマンでしかない和彦は、社内派閥闘争のあおりを食らって、博多支社に左遷されてしまっており、妻(つまり姉妹たちの母)も、そんな夫の道行きに同道し、家を出ていた。
 単なる単身赴任ではない。
 完璧なる左遷だ。
 東京本社へはいつ帰って来れるか分からない。
 和彦が、喜十郎の養子縁組を急いだのは、綾瀬家家名存続問題よりも、頼りになる男が一人、“兄”として、娘たちしかいない家にいて欲しかったのかも知れなかった。

「これ以上、ぐずぐず煮込んでたら、折角の味が落ちてしまうですのっ」
 そう言いながら、コンロの火をさらに小さくする。七人分の夕食を煮込んでいる大鍋は、彼女の140センチの矮躯にはあまりにも大きく見える。しかし深雪にとっては、そんな作業も一向に苦にはならない。
 彼女にとって、料理というのは単なる趣味やルーチンワーク以上の価値をもつ行為であり、その情熱は、あたかもアスリートが自分の専門競技に傾けるそれに似ており、実際、彼女のその身には、莫大な料理の才能が埋蔵されていた。
 つまり深雪にとって、日常の食事当番は一日の面倒事ではなく、彼女自身の調理技術の研鑚の場であったのだ。
―彼女の“兄”、喜十郎が来るまでは。

 彼自身が記憶しているか否かは分からないが、そもそも深雪に料理の楽しさを教えたのは、喜十郎だった。
 ある日、風邪で寝込んでいた彼女たちの母親に代わって、仕事で帰宅が遅くなった和彦を含めた、その晩の家族全員の夕食を二人―たまたま本家に来ていた喜十郎と深雪―で作ったのが、彼女の料理人生の出発点となった。
 当時は、ただの従兄妹でしかなかった喜十郎の存在が、深雪にとって大きくクローズアップされたのもそれからであり、その喜十郎が“兄”として我が家に来た、その日から深雪の料理は家族全員のためではなく、彼個人のためのものとなったのだ。
 その“兄”が今、自分の料理を食べる前に、自分以外の姉妹に『食べられて』いる。

―深雪の心中は、穏やかではなかった。


295:淫獣の群れ(その3)
07/10/12 22:03:13 AkjMWiQi

 喜十郎は、未だ腰を降ろすことも許されず、湯舟に立たされていた。
 しかし、男独りを五人がかりで取り巻いていた少女たち、という構図は、いささかなりとも変化があった。

「あ、だめぇ、おにいたまったら、ちゃんと自分の足でたたないとダメなのっ」
「んふふふふ……兄上様、しゃんとしないと、またお仕置きですわよ」
 喜十郎の身体を前後に挟むように、比奈と真理が自らの胸を押し付け、こすり合わせている。

「らめらっ、もうでる、でちゃうよっ!」
 押し付けられる白絹のような妹二人の肌、その快感をさらに増幅させるのは、二人の胸と彼の肌との間に生み出される泡沫―ローション代わりに使用されているボディソープ。
「ダメよ比奈ちゃん、兄上様をイカせては何にもならないわ」
「あっ、そうか」
 真理の放ったツルの一声に、陽気な末っ子はひょいっと、“兄”から身体を放す。
「ああああああっ、もう、もうイカせて下さいっ! おねがいですっ!!」
 優に一回りは年下の妹に長兄は懇願する。
 聞き入れてもらえる事など決してない、と分かっていながら。
「くしししし、あぶなかったね、おにいたま。もう少しで出ちゃうとこだったね」
「あああああ……イカせて、イカせてください……なんでもしますから……」
「本当にいいのですか兄上様? 射精なされば、その分お仕置きはひどくなるのですよ?」
「ひどくともいいっ! ひどくていいから……出させてくらさい……ぁぁぁ……もう、もう我慢出来ない……」
 むせび泣きながら妹たちに訴える喜十郎の表情を見ても、真理の瞳に宿った情欲の光は、やはりいささかも衰えない。むしろ、その輝きは増すばかりだ。
 そんな真理の表情に、いよいよ喜十郎の涙は水かさを増す。


296:淫獣の群れ(その3)
07/10/12 22:04:48 AkjMWiQi

「―ダメよお兄様っ!」
 悶え苦しむ彼の背に、長姉の鉄鞭の如き声が飛ぶ。
「忘れたの? お兄様がイっていいのは、私たち全員の許可を取ってからだって事を」

 いま桜は、詩穂・春菜と並んで自慢の長髪を洗っていた。
 彼女たちが入浴してから、そろそろノルマの一時間が経つ。
 喜十郎を風呂場から引っ張り出す時は、すなわち自分たちも風呂から上がる時間である。
 なんのかんの言っても年頃の少女である。入浴には、人一倍時間をかけたい。
 しかし、かといって自分たちの身体を洗う時に喜十郎をほったらかしにするつもりも、彼女たちは無かった。
 つまり、妹たちが“兄”を風呂で愛撫する場合、どうしても複数の女手が必要だった。

「兄君さま、これはワタクシたちからの躾なのです。兄君さまをこの綾瀬本家に相応しい殿方に教育するためのシツケ。ですから、これはどうしても耐えて頂かなければなりません」
 春菜が、桜の尻馬に乗っかる形で言葉を継ぐ。
 だが、その真剣な語気に反して、彼女の眼は笑っている。
(我ながら、よくもまあ、こんなムチャクチャな理屈を、ぬけぬけと真顔で言えるものだわ……。)
 腹の底で春菜がそう思っているのは、いかにも見え見えだった。

「だからお兄様、あと三日我慢すればいいのよ。土曜になれば、腰が抜けるくらい搾ってあげるから」
「でも、お兄ちゃま、土曜日になったら、泣きながらいつも逆のこと言うよね? もう出ませんから勘弁して下さいって」
「平日に禁欲した分を週末に吐き出す。いかにも健康的だと思いませんか、兄君さま?」
「―だ、そうですわ兄上様。私としても心苦しいのですが、やはり兄上様の御要望にはお応えできません」
「くしししし、おにいたまもおとこのこだったら、がまんしようね?」

 喜十郎は、あからさまな嘲笑を隠そうともしない妹たちを、何も言えずに眺めていた。

 結局、彼が風呂から出ることを許されたのは、それから十分後、彼女たちの闖入からきっかり一時間後だった。


297:淫獣の群れ(その3)
07/10/12 22:07:08 AkjMWiQi

 夜中に不意に目が覚めた。

(寒い……。)
 まぶたを覆う眠気より、全身を包む寒気の方が強い。
 可苗は、羽毛布団を肩まで引っ張り上げると、再び意識を闇の底に沈めようとする。
 するが―遠い。
 眠ろうとすればするほど、闇は意識から遠ざかってゆく。
 原因は分かっている。
 さっきまで見ていた夢。
(お兄ちゃん……!)
 心のうちでそっとつぶやいた瞬間、可苗の眠気は弾け飛んだ。

 がばっ!
 布団を蹴りはがし、上体を起こすと、まぶたを開く。
 二段ベッドの上階から身を乗り出し、部屋の一角に視線を送る。
 暗闇の先にある兄の机、兄の本棚、兄の洋服箪笥。
 かつて兄が存在していた空間。
 比喩ではない。―可苗は暗中であっても、この部屋のどこに何があるか、全て把握している。
 この部屋は、彼女の実兄たる喜十郎がいなくなるまで、ともに寝起きしていた―いわば、彼女にとっての楽園に等しい一室だったのだから。
 部屋数の乏しい公営団地。2LDKのこの我が家が、可苗は大好きだった。
 少なくとも、兄が家を出てしまうまでは。

 蹴り剥がした布団を手に取り、そっと匂いをかぐ。
 そこに存在するのは、微かな、しかし、彼女以外の確かな体臭。
(……お兄ちゃんの匂いが、薄くなってきてる)
 そう、かつて彼女の兄は眠りの際に、この二段ベッドの上階で、この布団を使用していた。
 喜十郎がこの家を後にしたとき、せめて可苗は、彼の匂いに包まれて眠りたかった。
 そうでもしなければ、兄の居ない、この広大な六畳間の一室で、到底独りで夜を過ごすことなど不可能であったろう。しかし、その残り香も、
(いや、お兄ちゃんの匂いが消えちゃう! いや、いや、いやいやいやいや!!)
 今では、可苗の寂寥感を助長する働きしか為しえない。
(補給しなきゃ! 早く『お兄ちゃん分』を補給しなきゃ、可苗どうにかなっちゃう!)

―この世で孤独死できる生き物はただ二つ、ウサギと人間だけだ。
 かつて兄がふざけ半分に言っていた言葉が、可苗の肩に、真剣な説得力を持って圧し掛かっていた。



298:淫獣の群れ(その3)
07/10/12 22:09:22 AkjMWiQi

(何で、何でお兄ちゃんは、可苗の前からいなくなっちゃったの?)
 その明確な解答は、彼女には分からない。
 ただ一つ感じるのは、兄が、喜十郎が自分を捨てた事。

 本家の六人姉妹たちには、不思議と憤りは感じない。
 むしろ、同志のようなシンパシーさえ覚える。
 現在にいたるまで、喜十郎が学校でモテたという話は聞いたことも無かったからだ。
 妹として、そして女として可苗は、喜十郎の魅力に気付かない彼のクラスメートが不思議で仕方なかった。
 だから本家の姉妹たちが、喜十郎にくびったけになっているという話を聞いて、嫉妬と同時に安堵さえ覚えた。兄の魅力に気付ける女性は、自分だけではなかったのだという安心感に。
 逆に、喜十郎の本心が分からなくなった。
 わからない分、裏切られたと思った。

 彼女は、枕もとの携帯電話を手探りで掴むと、ディスプレイを開いた。
 暗闇に、兄の笑顔が待ち受けとして浮かび上がる。
 目覚まし代わりに使用している、と両親には言っているが、本当は違う。
 例え夜中であっても、兄から来るかもしれない電話・メールに、リアルタイムで返答するためだ。そのため彼女は入浴中であっても、この防水加工の携帯を手放さない。
 自分を裏切った。そう思えば思うほど、可苗は喜十郎が恋しくなった。
 その想いには、いつ芽生えたのかもしれない、重く濃い、血混じりの感情が多分に入り混じっている。
 殺意―とさえ呼んでもいいかも知れない。
 その重い感情は、つねに彼女が兄を見る眼差しに陰をつくりだし、彼が自分を『裏切った』後は、さらに深く暗く、可苗の心中に沈殿した。

―兄を犯したい。犯しながら殺したい。

 鎖で縛り付けた兄と騎乗位で情を交わしながら、首を絞める。そして失神した兄を人工呼吸で蘇生させ、再び首を絞める。そしてまた、人工呼吸で蘇生させる……。

 このシチュエーションを浮かべながら自慰を行う限り、可苗にイケない夜は無かった。
 ただの嗜虐性とは全く異なる、結果的には殺人すら許容する黒い情欲。
 その興奮には、血の禁忌に関わる要素が多分に含まれている。
 本来、決して許されざる相手だからこそ―その許されざる恋人に、許されざる行為を施すという興奮……。

 それこそは元来、従兄妹でしかない本家の姉妹たちには最も希薄な感情であり、そういう情の強(こわ)さこそが、―そういう感情を含む視線を実妹が兄に向ける、という事実こそが、喜十郎をして可苗から背を向けさせる最大の要因となった。
 しかし、可苗にはそれが分からない。
 分からないからこそ、許せない。
 許せないと思えば思うほどに、喜十郎への想いは深まる。
 情欲と殺意は矛盾しない。―それが可苗の“兄”に対する独占欲だった。


299:時給650
07/10/12 22:13:43 AkjMWiQi
投下終了です。
>>289さん
若干イモウトかぶってますね。悪意はありませんので、勘弁を。

300:名無しさん@ピンキー
07/10/12 22:51:29 7tJawlog
なんだかその……「萌え」よりも「気の毒」の比率の方が占める割合を増やしてきているような……

301:名無しさん@ピンキー
07/10/12 23:17:34 h3DNEqJX
お兄さん逃げ道無さ過ぎでカワイソス

302:名無しさん@ピンキー
07/10/13 16:32:21 mcZx6dl3
兄が哀れすぎて・・・・・・(´;ω;`)

303:時給650円
07/10/13 19:22:36 Vo4mpZoE
続きを投稿します。

304:時給650円
07/10/13 19:24:10 Vo4mpZoE

 身体が重い。
 まるで全身の血管に鉛が詰まってしまっているようだ。

「あら、にいさま、起こしてしまいました?」
 窓から入る眩しいばかりの朝日に、思わず薄目を開けた喜十郎の目に入って来たのは、彼の傍らで、コキコキと首を鳴らす深雪だった。
 目が覚めたのは、深雪の気配のせいではない。朝日の眩しさが、まぶた越しに彼の眼を直撃しただけだ。

「ああ、おはよう深雪。今朝も早いね」

 とは、彼は言わなかった。
 正直、口を開くのも億劫だったからだ。
 目だけ動かして時間を確認する。
 壁の時計は、午前六時を少々回ったところを指している。
 まあ、一家の朝食を作る深雪が、ベッドを降りる時間という時点で、うすうす現在時刻の見当はついてはいたのだが、普通の学生が起床するには、やや早い。

「んんん~~~~」
 彼の股間を枕代わりにしていた比奈が寝返りを打つ。
 股間だけではない。腹部に詩穂が、左肩に桜が、右足に真理が、―半裸の妹たちが、それぞれ自分の体重を彼に預けて眠っている。そして深雪はおそらく喜十郎の右上腕あたりを抱き枕にしていたのだろうか。いや、春菜の姿が無い。
「春菜ちゃんなら、薙刀部の朝練のために、一時間ほど前に起きてしまわれたようですの」
 むふん、と笑みを見せた深雪が、キングサイズのベッドから降りる。
「―よく、分かるね。俺がいま思ったことが?」
「にいさまの考える事なんて、姫はぜ~んぶ、お見通しですのっ」
(なるほど、その誇らしげな笑顔はそういう事か)
 もっとも、さっきの台詞は、本当は少し皮肉な意味を込めたつもりだったんだが、気付かれなかったようだ。

「姫は、これからシャワーを浴びて、お食事の準備をしますけど、にいさまは起きられるんですの?」
「……いや、もちっと……寝る」
「そうですの。でしたらまた、いつもの時間に起こしに来ますですの」
 ショーツ一枚の深雪は、そのはしたない姿を恥じる事も無く、軽い足取りで部屋から出て行った。


305:淫獣の群れ(その4)
07/10/13 19:29:30 Vo4mpZoE

(姫……か)

 その、深雪独特の一人称も、彼女が幼い頃から親戚づきあいしていた喜十郎には、別段奇異には感じない。むしろ、彼女が自分の事を『にいさま』呼ばわりする事の方が、はるかに違和感がある。
(教えてやった方がいいのかな。“姫”って、処女膜の隠語なんだぜって)
 取り留めの無い事を考えながら、喜十郎は再びまぶたを閉じる。

―しかし、そんな事を聞かされた彼女が、どんな反応をするのか、何となくは見当がつく。
『姫のばーじんを味見したい。にいさまはそうおっしゃるんですのね!?』
 むふんむふんと、得意げに鼻を鳴らし、目を輝かせて有頂天になる姿が、手に取るように想像がつく。
(このまま叔父さんが帰って来なけりゃ、いずれは、やっちまう事になるんだろうな)

 喜十郎とて、聖人君子でもなければ不能でもない。
 眼前で女が股を開けば、ムスコも固くなる。開いた股がヌレヌレだったら、そこに突っ込みたくもなる。そういう意味では、彼も普通の、年齢相応の男子に過ぎない。
 桜や春菜、そして真理といった比較的年齢の近い妹とは、そんな風に誘われて―というよりは半ば逆レイプに近かったが―やる事は済ませてしまっていた。しかし年少組の詩穂、深雪、比奈の三人とはまだ、いたしていない。
 彼なりの良心もあった。まだ小学生の比奈は当然としても、外見的にいかにも幼さの残る詩穂や深雪(一応二人とも中学生ではある)に手を出すのは、やはり躊躇われた。
 もっとも、縛られて抵抗できなくなった上で、自発的に股間に乗っかって来られたら、喜十郎本人には対処の仕様も無い。
 しかし、その辺は、姉妹のリーダー格の桜も納得しているのだろう。少なくとも現段階でこの二人に、破瓜を迎えさせる気は無いようだった。

 しかし、その三人と何もしていない清い関係かと問われれば、彼としても口を閉ざさざるを得ない。ただ挿入していないというだけで、年少組との同衾など、ほぼ連日の事だったからだ。
 もっとも、それは年少組の三人だけの話ではない。
 喜十郎がこの家で住むようになって以降、いや、少なくとも彼女たちが自分の事を“兄”だと認めて懐くようになって以降は、六人の“妹”が彼の寝床に潜り込まない晩は、ほぼ絶無に等しかった。

 昨夜にしてもそうだ。
 湯あたりと過剰な愛撫によって、ほとんど半失神状態で風呂から上がり、食欲などカケラも無い状態で、深雪の創作料理をたいらげ、その脚で寝室に直で連行され、六人がかりで責めに責められた。
 それでいて結局、一度の射精すら許可されず、やっと夜明け近くになって眠る事が許された。
 それも、次々と体重を浴びせ掛けてくる六人の“妹”の身体の下敷きになって、である。
―もっとも、彼女たち一人一人は、行為後の心地良い疲労感とともに、傍らの男に己の体重を預けているに過ぎないのだが……。
 そんな状態で数時間まどろんだところで、一体どれほど彼が肉体を休める事が出来るだろう。
 現に、喜十郎の全身は、慢性的な疲労に綿のように包み込まれ、最近では朝勃ちすら力が無い。
(辛抱たまらん)
 口にこそ出さないが、喜十郎の精神は、かなりのところまで追い詰められていた。


306:淫獣の群れ(その4)
07/10/13 19:32:33 Vo4mpZoE

 結局、喜十郎の意識が、そのまま泥のような眠りに身を任せることは無かった。
 人の心身は、骨の髄まで疲労に侵されると、もはや眠る事すら出来なくなる。喜十郎は、かつて何かの小説で読んだ記述を思い出していた。
 妹たちを目覚めさせないように気を付けながら、ごそごそと起き出す。
 全裸の肉体からはツンと酸臭が鼻につく。
 顔をしかめながら、そのまま引出しからトランクスを一枚引っ張り出し、シャワーに向かう。もう深雪も風呂場から出た頃合だろう。

「―だめだよぅ、お兄ちゃま」
「えっ!?」
 と声を立てる暇すらなかった。
 眼前に、ふわりと白い布切れが舞い降りる。
 詩穂自身の汗と唾液と愛液にまみれ、ごわごわに黄ばんだショーツ。
「今日からお兄ちゃまは、詩穂の下着を穿いて生活するんだよぉ」
 にぱっ、と詩穂が明るい笑顔を見せる。
 昨夜は汗まみれになって、あれほど乱れたにもかかわらず、寝癖一つ、髪に残っていない。
「……それとも、忘れたフリしてまた詩穂に、お仕置きされたかったのかなぁ?」
 無垢な笑顔が、瞬時にして上目遣いの淫蕩な嘲笑に変化する。

 喜十郎は引きつった笑顔を浮かべながら、
「わざとじゃないよ。……朝だからボッとしてたんだ。ごめん」
 精一杯言い訳をする。言い訳といっても、忘れていたのは本当だから、素直に謝るしかないが。
 このとき、もし詩穂の機嫌が悪かったら、今のことを口実に、またどれほどのお仕置きを喰らうかもしれない。だから、最大限口の利き方には気をつけねばならない。しかし、運良く彼女の機嫌は上々だった。


307:淫獣の群れ(その4)
07/10/13 19:33:41 Vo4mpZoE

「んふっ、だったら許してあげる。―ねえ、お兄ちゃま、一緒にシャワーあびよっ」
 そう言うが早いか、詩穂は疲労など微塵も感じさせない動きで、ベッドから降りた。無論、彼女も、その肌を隠す一枚の布すら身に纏ってはいない。
「一緒に、か?」
 反射的に訊き返した瞬間、“妹”の笑顔が途端に曇る。
「え、お兄ちゃま、詩穂と一緒にシャワー入るの嫌なの……?」
「あ、いや、確認しただけだよ、うん。―それならそれで、その、お願いがあるんだけど……」
 そう言いながら、喜十郎は詩穂を廊下に引っ張り出す。あまり騒がれて、まだ寝ている他の妹たちまで起きて来られては、何かと面倒だからだ。
「うん、いいよっ! 詩穂、お兄ちゃまの言う事なら何でも聞いちゃうっ!」
「何でもっ? じゃあ、この下着の件―」
「却下」
「……少しは考えようよ」
「だぁからぁ、詩穂が出来る範囲ならって話だよぉ」
 この下着強制の一件は、すでに詩穂一人の手を離れて、姉妹全員のお仕置きという形に移行している。つまり彼女一人の権限ではもうどうしようもない。それに、詩穂個人としても、“兄”が自分の下着を穿いて真っ赤になっている姿を見たかった。
「で、お願いはもういいの? お兄ちゃま」
「うん、その、……一緒にシャワー浴びるなら、その……」
「―?」
「やらしいことは、もうナシで頼むぜ」
 羞恥で耳まで真っ赤にして、そっぽをむいたまま、彼は呟くように言った。

 ぷっ!
 その瞬間、詩穂は、汗臭い“兄”の胸に飛び込んで、必死に笑いをこらえていた。
「詩穂、……?」
 くっ、くっ、くっ、くっ、くっ……!
 この“兄”には、こういう可愛いところがある。
 こういうポイントが、彼女たちにとっては、またたまらないツボであり、彼女たち自身の嗜虐性を120%引き出すことになるのだが、喜十郎本人はあまり気付いてはいなかった。
「いいよぉ、今朝はお兄ちゃまの言うこと聞いてあげる」
「はっ、助かるよ」
「その代わり、お兄ちゃま、―その後で、詩穂のお願いも聞いてねっ」
「……お手柔らかに頼みます」
「さぁ~~、どうしよっかなぁ」


308:淫獣の群れ(その4)
07/10/13 19:34:53 Vo4mpZoE

 詩穂は“兄”の腕を取ると、デート中の恋人のようにしがみ付き、いたずらっぽく彼を見上げる。
「詩穂、今日の放課後に、クレープ食べたいなぁ」
「ひょっとして、大黒屋の、あのバカ高いヤツか?」
「うんっ!」
「確かアレ、一個千円くらいするっていう……」
「詩穂の分だけじゃダメだよ。お兄ちゃまと二人分だよっ」
「あの、いまオレ、バイトの給料日前なんだけど……」
「うんっ、詩穂応援するねっ!」
 その明るい笑顔に、喜十郎もつられて苦笑する。
「仕方ないな、もう」

 何のかんの言って、喜十郎は、この“妹”たちと過ごす一時がキライではない。
 その一人一人は決して悪い“妹”ではない。年齢相応の魅力的な少女に過ぎないからだ。
 まあ、あくまでその底なしの性欲さえなければ、の話ではあるが……。

―ジリリン、ジリリリン、ジリリリリン!

 目覚し時計のような、けたたましい音を出して電話が鳴る。
 うるさいのも道理というべきか、綾瀬家の卓上電話はプッシュホンなどではなく、昔ながらの黒電話であった。
 人数分のフレンチトーストを作っていた深雪が、わたわたと受話器を取る。
「はい、もしもし、綾瀬でございますの。―あら、かあさま? こんな朝早くからどうなさったんですの? ―えっ、ええっ、本当ですのっ!?」

「……? どうしたの深雪?」
 今頃起きてきたのか、寝癖頭の桜が目をこすりながら、居間に顔を出す。
 喜十郎と詩穂は、まだ風呂場から出てこない。
 真理は低血圧なので、少なくとも、深雪が起こしに行くまで起きる事は無いし、比奈は洗面所で顔を洗いながら、自作の唄を歌っている。
「はい、分かりましたですの。では、失礼しますですの」
 深雪が受話器を静かに置く。


「かあさまが、帰って来るんだそうですの……博多から……」
「ええっ!!?」



309:時給650円
07/10/13 19:36:55 Vo4mpZoE
今回の投下はここまでです。

310:名無しさん@ピンキー
07/10/13 19:44:21 lVzPQ55h
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!11


311:名無しさん@ピンキー
07/10/13 23:38:05 Xj/WBrGR
芋虫に群がる蟻が思い浮かんだ

312:名無しさん@ピンキー
07/10/14 04:11:25 Sb9VOzV2
かあさまも凄そうだな・・・wGJ!!!!!!

313:名無しさん@ピンキー
07/10/14 12:14:42 c350r/Xz
>>309
gj
取り敢えず一つ聞いていいか?


亞里亞は出ないのか?





亞 里 亞 は 出 な い の か ?

314:名無しさん@ピンキー
07/10/14 12:29:51 aXthQgOI
にーやー

に ー や ー

に  ー  や  ー

315:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:46:36 zyNCrXwp
アイヤ-

316:名無しさん@ピンキー
07/10/14 17:52:41 0u4FTMV/
チョイヤッチー

317:名無しさん@ピンキー
07/10/14 18:26:20 FDQP5Ggu
あ、哀れすぎる………全俺が泣いた

318:時給650円
07/10/14 20:10:23 fSR9jaTJ
続きを投下します。

319:時給650円
07/10/14 20:11:43 fSR9jaTJ

「喜十郎、ちょっといい?」
 昼休み、いつもツルんでいる仲間たちと学食に向かおうとしている喜十郎を、桜が呼び止めた。

 ちなみに桜は、学校では彼のことを『お兄様』とは決して呼ばない。
 彼女自身、喜十郎と従兄妹同士であるということは、このクラスの者であれば、誰でも知っているし、何より、彼と親しく口を利く者たちは、性別を問わず彼を『喜十郎』と呼ぶからだ。
(その、サムライのような彼の名前は、これまでの学生生活を通して、ほとんど仇名を必要としなかった)
 さらに桜は、現在の彼と自分たち姉妹の“関係”―養子縁組、同居の事実、さらに肉体関係など―が、外部に洩れる事を極度に恐れていた。
 今の生活と、彼女自身の妹たちを守るためだ。
 だから、この高校に通学している春菜や真理にも、中等部の深雪や詩穂にも、その連絡は徹底してある。
 しかし、いまの桜の眼差しは、単なる親戚兼クラスメートのものではない真摯さを伴っていた。
(何だってんだ、一体)
「ああ、悪いなお前ら、今日はオレ、学食はパスだわ」
 わざとらしく勝ち誇ったような笑顔で、背後の級友たちに軽口を叩く。

「おいおい喜十郎、まじかよテメエ」
「男の友情より、イトコのネエチャンを取ろうってか!?」
「単なる“イトコのネエチャン”じゃねえ。ミス3Bの誉れも高き、綾瀬桜のお誘いだ。お前らだったら断るか?」
 そう言いながら、桜の後を追って教室の扉に向かう。
「断るわきゃねえだろっ」
「でも、イトコだろお前ら」
「イトコとベンチに並んで座って、母ちゃんの弁当食うのか?」
「不潔だっ、不潔だぜテメエらっ」

「―うるさいわよっ あんたたちっ!!」

 扉から顔だけ出して、教室に轟くような桜の怒声。
 数秒間、昼休みに似合わぬ静寂が教室を覆ったのは、言うまでもない。


320:淫獣の群れ(その5)
07/10/14 20:13:51 fSR9jaTJ

「……すげえ声だな、お前。放送部に入ってもやってけるんじゃないか?」
「これでも一応、演劇部部長だからね。腹式発声なら誰にも負けないわ。それよりもアンタ……」
「?」
「深雪が作ったお弁当、お母さんのだって言ってんの?」
「仕方ねえだろ。それが一番波風立たないんだから」
「だったら、あんな連中なんかと、お昼食べなきゃいいじゃない。それも、わざわざ学食行ってまで」
「人間関係を軽視してたら、今のご時世、高校生なんざやってらんねえだろ?」
「イジメられるって言うの? アンタが?」
「美人で優しい、ミス3Bには分からん苦労さ。―さて」
 喜十郎はそこで不意に口を閉ざし、ジロリと桜を見た。

「本題に入れよ、桜」

 それまでの、お茶らけたクラスメートの顔の下から、頼り甲斐のある“兄”の顔が現れる。
 桜は、そんな二面性をあらわにした瞬間の喜十郎が、決して嫌いではなかった。
「―ええ、大変なのよ、お兄様」


「帰ってくるって……叔父さんたちが?」
「ええ……いえ、正確には違うわ」
 風吹きすさぶ高等部旧校舎の屋上。しかし、まだまだ肌寒い季節ではないため、逆にその風通しが心地いい。ここは、綾瀬家六人姉妹たちの秘密の集合場所でもあった。
 ちなみに、こんな場所へと通じる合鍵を持っているのは、小中高一貫教育のこのマンモス校でも、おそらく桜ただ一人に違いない。
「帰ってくるのはお母様一人だけ。お父様はまだしばらく博多にいるみたい」
「ふ~~ん。……で?」
「で? じゃ無いわよ、お兄様っ!」
 
 桜の態度は、すでにしてクラスメートから“妹”のそれへとシフトチェンジしている。
 喜十郎は、深雪の弁当を食べながら桜の話を聞いていたが、いま一つ彼女の話が分からない。
「だからさ、イマイチ話が読めないんだよ。叔母さんが博多から帰ってくる。しかも、深雪の聞いたところによると―」
 喜十郎はそこで言葉を切って、自販機で買ったホットの緑茶を一口ぐびりと飲み、食べ終わった弁当を流し込む。―で、また話を続けた。
「その帰宅は一時的なものではなく、一定期間にわたるものらしい。少なくとも二週間から一ヶ月」
「もっと伸びる可能性もあるわ」
「だからさ」
 喜十郎は、やれやれという表情で、アスファルトに硬い視線を送る桜に尋ねる。
「一体それの何が問題なんだい? さっきから聞いてたら、まるでお前、自分たちの母親が帰ってくるのが困るみたいな口調だぜ」
「困るのよっ!!」


321:淫獣の群れ(その5)
07/10/14 20:15:28 fSR9jaTJ

 そこでようやく、喜十郎も事態の深刻さに気付き始めた。

「困るような……何かがあるんだな……?」
 桜は、ノリこそ軽いが、そう簡単に冷静さを失う少女ではない。
「叔母さんが帰ってきたら、お前たちの―いや、オレたちの存亡に関わるような、何かがあるんだな……?」
 桜は静かに頷いた。
「なんだ? 一体何だそれは?」
「お母様は……」
「叔母さんは……?」

「―潔癖症なの」

……アノ、サクラサン……ナンデスカ、ソレ……?
 こんなに散々ビビらせといて、それがオチ?
 喜十郎としては、桜ではなく、むしろ不思議と叔母の方に怒りが沸いたが、しかし同時に興味も沸いた。

「……説明しろよ桜。ただの潔癖症っていうだけなら、お前がそんなに怯えるわけがねえ」
「潔癖症って言っても、他人の後のトイレに入れないとか、そういうんじゃないわ」
「当たり前だ。そんな下らねえオチなら、オレは今すぐ学食に行くぜ」
「人の性的な行為が許せない性質(たち)らしいの。だから、私も昔、初めてオナニーを見つかった時は、こっぴどく折檻されたわ……」
「で?」
「で、じゃないわっ! いまの私たちの関係がバレたら、一体どうなると思うのっ!?」
「そりゃ……まずいだろうな」
「まずいなんてもんじゃないわ。まずいなんてもんじゃないわよっ……!!」
 桜は、それこそ親指の爪をかじりながら、目を血走らせている。
「でもさ、そんなもん、それこそ見つからなきゃいいだけだろ?」
「何言ってるのよっ! あんな狭い家で、一体どうやってバレずにヤれって言うのよっ!!」
「いや、だからさ―」
 喜十郎は、ことさら彼女を落ち着かせようとオーバーアクションを取る。
「バレずにヤるのが不可能なら、しばらくヤらなきゃ済む話じゃないか。どうせ、最悪でも一ヶ月くらいで、九州に帰っちまうんだろ?」
「―冗談言わないでっっ!!」


322:淫獣の群れ(その5)
07/10/14 20:16:59 fSR9jaTJ

 桜の剣幕に、思わず腰を引いてしまう喜十郎。しかし、未だに彼は桜が本当に言わんとする言葉の見当がついていない。

「いや、でもさ……」
「一ヶ月もガマン出来るわけないでしょうっ!! 二日三日だって、お兄様ナシじゃ怪しいもんだわっ。何でそんな事も分かんないのよっ!!」
「―さくら……!」
「私たちはねえ、私たちはもうねえ、お兄様中毒なのよ。もうお兄様のいない生活なんて考えられないんだから。―責任とってよっ! 取りなさいよっ!!」

 そう叫んだ桜は―怒りか、もしくは照れか―うなじまで真っ赤になっていた。
 一人の男としてそこまで言われては、喜十郎としても嬉しくないわけが無い。だが、空気的に素直に喜んでいい雰囲気でもない。現に、桜の言い分は支離滅裂もいいところだ。
「いや、でも……責任とか言われたってさ……」
「責任取れないとは言わさないわよ……! 私たちをこんな身体にしたのは、お兄様なんだからねっ」
(何を言ってやがる、オレを無理やり逆レイプしたのは、お前らのクセに)

 迂闊にも一瞬ムッとした表情が、桜にも丸見えだったのだろう。
「いま、オレのせいじゃないとか考えてたでしょう……!!」
「うっ、いや、……その……」
「いい? どう思おうとお兄様には責任があるの。日本では、男女関係の責任は男性が取る事に決まってるんだからね。―だから、お兄様には絶対に協力してもらうわ……!!」
「協……力?」
「そうよ」
 そこまで言って桜は、いつもの淫靡な“妹”の笑みを浮かべ、“兄”のブレザーからのぞくタイを掴み、引っ張った。

「お母様を出し抜くためには、もう手段は選べないわ。トイレだろうと玄関先だろうと、風呂場だろうと食事中だろうと、スキさえあれば―ヤれると踏んだときには、必ず協力してもらうわ」


323:淫獣の群れ(その5)
07/10/14 20:18:42 fSR9jaTJ

 そう言って桜は、喜十郎の唇との最後の距離をゼロにする。
 タイを引っ張られているため、喜十郎は自分からキスを拒めない。

 ひとしきりキスを味わった桜は、彼を解放すると、
「例えば、それが学校だったとしても、ね」
 そう囁いて、スラックスの隙間から、股間に手を突っ込んだ。
「うっ!?」
「あら―えらいのね、お兄様。ちゃんと詩穂のパンティを穿いてるなんて……」
「桜……その……」
「なぁに? お兄様」
「スキあらば、いつでもどこでもって、―それで見つかったらオレたち……?」
「タダじゃ済まない、でしょうね。少なくともお兄様は、我が家からお払い箱って事になるでしょう」

 その瞬間、フラッシュバックのように喜十郎の脳裡に浮かんだのは、自分を見下ろす可苗の姿だった。

「じょっ、冗談じゃねえっ!!」
 喜十郎は、反射的に桜を突き飛ばす。
「きゃっ!?」
“兄”の予期せぬ反撃に、桜は思わずひっくり返った。
「そんなお前らの、そんな―ワガママのために、いちいち追い出されてたまるかっ!」
「おにいさま……?」
 桜は驚いていた。
 常ならぬ彼の剣幕に、ではない。
 かつて自分たちに、何をされても直接的な暴力で反撃した事の無い“兄”が、『お払い箱』という言葉に、そこまで過剰な反応を示した。それが意外だったのだ。

「帰りたくない、の……?」

 その瞬間、哀れなくらい喜十郎の顔が歪んだ。
「そうなのね? 帰りたくない。実家に帰れないワケがあるのね?」
 桜は立ち上がった。そして、ゆっくり喜十郎に歩を進める。
「私たちに何をされても、お兄様が全然逆らわなかったのは、本当はそのためなのね?」
「違うっ!! 違うっ!! 違うっ!!」
「隠しても無駄よっ!!」


324:淫獣の群れ(その5)
07/10/14 20:20:16 fSR9jaTJ

 その瞬間、勝負はついた。
 彼は期せずして弱味を匂わせ、彼女は、抜け目無くそれを嗅ぎとった。
 誰のせいでもない。眼前の女の鋭さを侮った喜十郎自身のミスだ。

「お兄様が、一体何で帰りたくないのか、……そんな事はどうでもいいわ」
「桜……」
「ただ、そこまでして帰りたくないなら、私たちは協力し合うべきだと思わない?」
「脅迫する、つもりか……?」
「とんでもない!」
 その瞬間、桜は、自分のスカートをまくり上げ、喜十郎に自分のショーツを見せつけた。
「さあ、お兄様、―舐めて頂戴」

「……さ、くら?」
「お兄様がいなくなれば、お兄様中毒の私たちは困ったことになるわ。でも、一緒に住んでないからって、いざとなれば逢いに行く事は出来るわ。お兄様のご実家でも、どこかの公園でもね。でも、お兄様は違う……!」
 取り憑かれたように喋りつづける桜の頬は、真っ赤に興奮している。
しかし、それはさっき、同じく『お兄様中毒である自分たち』をカミングアウトした時に比べて、明らかに別種の紅潮だった。

 もう、喜十郎は何かを言う事すら出来ない。いや、桜の唇から放たれる言葉に、動く事すら出来ない。
(やめろっ! もう言うなっ!! もう聞きたくないっ!!)
 心の中で、悲鳴だけが半鐘のように鳴り響く。
「お兄様はご実家に帰れない。帰りたくない。―だったら、そのために最大限必要な事はしておくべきじゃない? 例えば……」
(もう、もうっ、勘弁してくれっっっ!!)
「―例えば、お兄様と私たちの関係を知る者、または当事者たちを、つねに上機嫌でいさせるための、そんな努力とかね……!」



―ぴちゃ、くちゃ、ぺちゃ……。
「―あ、もしもし、深雪? ―うん、私、桜―ぁぁぁ―ええ、お兄様も協力―してくれるって―くぅぅぅ、そこっ、そこっ!―え、ああ、今ね、ふふふ、お兄様がキョ、ウ、リョ、ク、してくれてるところ……ふふ、ぁっ、いいっ―」

 電話中の桜の、膝上スカートは不恰好にふくれあがり、その中に誰かが入り込んでいるのが分かる。そして、その“誰か”が、何をしているのかも……。
「んふふっ、そうよお兄様……あと三分でイカせなさい。さもないと、午後の授業に間に合わないわ……! ―あああっ、そうっ、そこそこっ、―ぁぁぁっ、あああああっ!!」

 桜の嬌声は、風にかき消されて、校内の誰の耳にも届いてはいなかった。


325:時給650円
07/10/14 20:22:25 fSR9jaTJ
今回はここまでです。

326:名無しさん@ピンキー
07/10/14 20:23:15 B4yN47Gj
乙!

327:名無しさん@ピンキー
07/10/14 20:26:21 nbGhsNAw
なんというリアタイ
GJ!

328:名無しさん@ピンキー
07/10/14 20:42:54 n8Vjntx5
乙です

329:名無しさん@ピンキー
07/10/14 21:25:54 E3orzUlf
乙です。…しかし兄貴カワイソス

330:名無しさん@ピンキー
07/10/14 22:36:04 ph8pFXus
乙です

「責任取れないとは言わさないわよ……! 私たちをこんな身体にしたのは、お兄様なんだからねっ」
どう考えても自分達の蒔いた種です。本当に(ry
兄貴カワイソス

331:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:22:09 efzpEKcW
どんだけ不幸なんだよ兄貴

332:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:46:05 ibsNQi/i
GJ!!
一人や二人でも十分にキモいのに、キモウト×7ともなるとキモいとか言ってる場合ではなないな…
下手すると過労死しそうな兄貴カワイソスw

333:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:48:24 +YDlAt4W
居候してればいずれ過労死
かと言って実家に帰ったら実妹のSATSUGAIとか
逃げ場なさ杉だろ常識的に考えて・・・w

334:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:53:53 vOEqfsPa
つ泥棒猫の家

335:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:58:31 pSQ9TC1y
海外へ高跳びとか

336:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:59:34 JlOVRECo
乙です

みんなにちょい質問
執筆初めてで
当然遅筆で
でも話がグダグダと長くって
予定としてエロ要素が無いor薄くて
キモウト度も薄くて
でも妹スレにはふさわしくない

っていうすんごい微妙な物が生まれるかもしれないんだけれど
もしできてしまったらここに張ってみてもいいかな?ていうか張りたい
一応今可否を聞いておきたいです

337:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:04:54 vOEqfsPa
聞くくらいなら書くな、以上

338:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:11:40 XSMD4cnf
誘い受け不要

339:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:15:29 YzIs4uZI
今投下してヒンシュクをかうのが怖いというのなら、次スレがたった後にここに投下するのはどうだろう。
さすがに作品を見ずしての合否の判断は難しい、てか不可能だし。

340:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:16:27 B88mhBvz
書きあがったあと「今から投下します。」でいい。
気になるなら始めて書いたのでよろしくお願いします。とも付けて、それでいいから。
張りたいなら張ればいいじゃないか。

341:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:18:21 zaomwxZy
当スレは誰でもウェルカム
来るもの拒まず去るもの追わずが基本・・・・

342:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:34:52 n9OeXBOP
追いかけたら投下してくれるのならば、いくらでもって追いかけるのだがw
ここの姉妹は特にそういう猟犬めいたことが得意そうだ。彼女とのお泊まり旅行、視界を横切る姉妹の影!

343:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:52:51 ONStwd3C
>>337-341
OK了解

344:携帯から思いつき
07/10/15 02:16:28 ONStwd3C
もう、そう生徒も見あたらない夕方の校門
玄関から近づいてくる女生徒一人
この見慣れたシルエットは妹の香織だ
「おっ、関心関心!今日はちゃんと待っててくれたんだね?」
「ああ…まあ昨夜は死にかけたしな」
朝までナイフ持って追いかけ回された事を思い出し身震いが走る
「流石に連日は勘弁っ…て、お前!血が出てるじゃないか!?」
香織の小さな胸から上が
べっとりと血に染まっている事に気づき駆け寄る
「あはっ♪心配してくれるんだ?でも大丈夫、返り血だよ」
「またかよ…びっくりさせるなよ、ていうかせめて着替えてから出てこい」
ひとまずの安堵で、ため息がもれる
「いや、もう玄関だったからね、豚が一匹馬鹿言い出してさー」
なるほど遠く見える玄関には倒れた女が確認できた
「明人さんを紹介してくれーって…何考えてんだか」
「お前はまた…俺の貴重な恋人候補を…」
手を地に着いてうなだれる
多分、あの子は香織の友達『だった』陽子とか言っただろうか
結構可愛かったのに…
「だからさ、そういうのは私にしろってさんざ言ったじゃん…あ、『加減はしといた』から救急車いらないよ」
119を入力した携帯電話を取り上げられる
「俺も、妹にしか見られないって言ったろ」
「ふーん…まあいっか、いつか世界中の女殺したらさ、流石に私を抱いてくれるよね?」
「マジな目で言うなよな恐ろしい」
「じゃあそうなる前に私を好きになれば?」
はぁ…と大きなため息がこぼれる
なんだかんだで香織を拒絶しきれない俺のこの今が
いつかは彼女を受け入れるだろう事を予言してくれやがる
「まいったなぁ…」
我ながら、情けなくって涙が出るよ
でも、それより今は
玄関のあの『死体』と
香織の制服をなんとかしないと
『大事な妹』がポリ公にパクられちまう
今日もまたこれから忙しくなりそうだ

345:名無しさん@ピンキー
07/10/15 02:16:51 0fCQTGJq
ふぅ・・・疲れるな
誘い受けする時点で、それがどういうことになるのか考えようよ・・・
まぁ、ほじくりかえすのもかわいそうか

346:時給650円
07/10/15 03:57:06 D8b/QqQN
本日二回目ですが、投下します。
休日の晩は妙に筆の進みが早いので、ご勘弁を。

>>313
展開次第では出します。
多分、他の『妹』たちも。

347:時給650円
07/10/15 03:59:13 D8b/QqQN

「お兄ちゃま、これ、ホントにおいしいねぇ」
 詩穂が満面の笑みを浮かべて、コアラのように“兄”の腕にしがみつく。
「―だな。千円も取りやがるだけのことはある、かな?」

 その日の放課後、喜十郎と詩穂は、通学路の人気スポットの一つである『大黒屋』で並ぶこと20分、ようやく“妹”目当てのジャンボクレープを手に入れ、そのまま同じ学校の生徒が寄り道でにぎわう商店街を歩いていた。
 桜とあんなことがあった後なので、正直に言えば買い食いなどする気分ではなかったのだが、まあ、そんなクサクサした気分で帰宅するのも、喜十郎としては躊躇われた。
 それに“妹”たちを、無用に挑発する行為は、これまで以上に避けねばならない。約束をすっぽかすなど、もってのほかだ。
 まあ、シラフの時の詩穂は、妹たちの中でもかなりの癒し系である。
 ヘコんだ時に、女の子に癒されるというのも、決して悪い気分ではない。

 詩穂と喜十郎の片手には、それぞれジャンボサイズのクレープが握られていた。
 まあ、女の子が甘い物好きなのは当然だからいいとしても、喜十郎自身は自他共に許す辛党であるため、このパフェ並みにごてごてに膨らんだクレープは、彼にとっては結構きびしい。かといって―
『そんなに美味けりゃオレの分やるから、お前食え』
 などと、ムードぶち壊しの一言を、この喜色満面の“妹”に言えるほど、彼は残酷ではない。

 しかしこの、一見バカップルにしか見えないくっつき方で歩くのも、実際つらい。
 それが、いつクラスの悪友たちに出くわすかもしれない、この商店街では特にだ。


348:淫獣の群れ(その6)
07/10/15 04:01:07 D8b/QqQN

「取り合えず詩穂、歩きにくいし、少し離れないか?」
「ええ~~~~っ、お兄ちゃまは、詩穂とくっつくのがいやなのぉ?」
「いや、そうじゃなくてさ、その、何だ―制服にクリームが付いちまったら、困るだろ?」
「却下」
「……少しは考えようよ」
「いいもぉん。クリームが付いたんなら、詩穂がキレイにしてあげるだけだもぉん」
 そう言うが早いか、詩穂は“兄”の腕をさらに引き寄せ、同時に自分も背伸びをする。
 そして―彼の頬に付着していた抹茶クリームを、れろり、と舐め取った。

「こんな風に、ね」
「……しほ……」
「えへへへへ……お兄ちゃまも、詩穂が汚れたらきれいにしてくれる?」
 真っ赤になりながら、上目遣いに尋ねるその“妹”の表情は、風呂場やベッドでは見せない、年齢相応の可愛げに満ち溢れていた。
「うん……まあ、考えとくよ……」
 その愛嬌のカタマリのような笑顔を前に、こんな気の利かない返事しか返せない自分が、喜十郎は非常にうらめしかった。



「お兄ちゃん―?」

 血が凍った。
 それまで汗ばみそうだった蒸し暑さが、一斉に冷えた。
 
「かなえ……?」


 次の瞬間には、胸元にタックルを受けていた。
 喜十郎の眼に焼きついたのは、背までなびいた黒髪と、左右に一本ずつの三つ編み。
 その人間サイズの柔らかい弾丸を反射的に抱きとめ、勢いで倒れそうになるのを踏ん張り、こらえ、持ちこたえる。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃんっっ!!」
「―かなえ……どうしたんだ、お前……?」
「どうしたじゃないよっ! どうした……じゃ……ぅぅぅっ……!」
 そのまま身体を預けて泣き出してしまう可苗。おろおろしながら、そんな彼女と周囲を見回す喜十郎。そんな二人をぽかんと見つめる詩穂。
 商店街の通行人たちも、足こそ止めねども、その視線を思わず向けてしまう光景。

 やがて、喜十郎の目付きが変わった。
 その瞳から怯えと驚きは消え、覚悟と冷静さを取り戻した“兄”の相貌に戻った。
 その瞬間を、通行人を含む夥しい注視の中で、詩穂だけが気付いていた。


349:淫獣の群れ(その6)
07/10/15 04:03:59 D8b/QqQN

「―詩穂」
「うっ、うん」
「悪いがデートはここまでだ」
「ええっ!?」
「こいつを家の方まで送っていかなきゃならねえ」
「でっ、でも、お兄ちゃま……」
「覚えてるだろ? オレの妹の可苗だ」
 喜十郎は、そっといとおしむように、泣きじゃくる可苗の頭を撫でる。
「帰ったら、深雪に伝えといてくれ。……今日は多分、メシはいらねえ」
「お兄ちゃま……」
 なおも、詩穂は喜十郎に何か言わんと食い下がるが―。

「ほら可苗! もう泣くなったら、恥かしい!」
 もはや“兄”の眼が詩穂に向けられる事は無かった。
「……だってぇ……だってぇ……お兄ちゃぁあん……」
 詩穂が気付いた時は―可苗が、さっきまでの詩穂以上の密着度と甘えた態度で“兄”にくっつき―二人の姿は、商店街の人ごみの向こうに消えていた。
 そして可苗は、最後まで詩穂に一瞥すら向けなかった。


「うおっっっ!?」
 素っ頓狂な声を出して、通行人の一人が転倒する。
 思わず振り返った詩穂が見たのは、その通行人に踏まれ、足を滑らせた原因であろう物体―可苗を抱きとめる瞬間に“兄”が反射的に手放した、大黒屋のジャンボクレープ……。


 詩穂は、その無残に踏み潰されたクレープに、胸の奥にズキリと、電流を流されたような痛みを感じた。


350:淫獣の群れ(その6)
07/10/15 04:05:55 D8b/QqQN

 綾瀬可苗―綾瀬六人姉妹の従姉妹にして、綾瀬喜十郎の実妹。
 中学三年生、つまり本家でいえば、深雪と同い年(15歳)ということになる。

 この少女は、およそ人類が羨むべきほぼ全てに恵まれて、この世に生を受けた。
―美貌、頭脳、身体能力、性格、雰囲気、要領、手先の器用さ……。
 数え上げれば切りが無い。
 完璧超人とは、この少女を指すのであろう。可苗を普通に知るほぼ全ての人々が、この意見に異を唱えない。
 無論、六人姉妹だとて、個々のレベルは高い。
 男から見たとき、同世代の少女たちと比較しても、その魅力のハイレベルさは歴然だ。
 しかし、それでも総合評価では……やはり可苗に一歩譲らざるを得ないだろう。
 それほど可苗は、バランスの取れた、いわば反則的に“何でもアリ”の少女だった。

 その美貌は、彼女の通う女子校で『開校以来の美少女』と謳(うた)われ、
 その頭脳は、学年総合成績五番以下に落ちたことが無く、
 その身体能力は、体育祭・球技大会で花形となり、
 その性格は、あくまで大人しく、控え目で、自発的に目立つ事をよしとはせず、
 その雰囲気は、公卿の末裔に相応しく、所作の一つ一つに匂うような気品があり、
 その器用さは、ピアノの全国コンクールで入賞したほどであり、
 その要領よさは、それほどの完璧な自分でありながら、クラス内に一人の敵をも作る事は無い。
 
 無論、喜十郎としても、そんな可苗がキライというわけではない。
 むしろ、出来過ぎの妹として、何度も鼻高々な思いをした事もあるし、彼女自身よく気の回る、いい妹であった。そんな彼の実妹への評価は、基本的に今でも変わらない。

―ただ、恐いだけだ。
 
 何もかも完璧にこなす美貌の妹。
 だが、いつからだろう。日常生活に於いて、彼女からの目線を常に感じるようになったのは。
 ただの視線ではない。
 暗く、濃く、重く、深い、粘液質な視線。
 それを家にいる間中、喜十郎は常に感じるようになった。
 やがて下着やTシャツが無くなり、携帯のデータが覗かれ、弁当に異様な唾液臭を感じるようになった時、喜十郎は初めて気付いた。

 かつてクラスの女子が言っていた、自分の父親への愚痴。
『いや、だってぇ、あたしの事マジキモい目で見るんだよ、うちのオヤジィ。もう、死ねって言うか、死んでいいよって言うか、頼むから死んで下さいって言うかさぁ。とにかく実の娘に、あのキモいオヤジ目線はねえだろっていうかぁ……(繰り返し)』


351:淫獣の群れ(その6)
07/10/15 04:08:51 D8b/QqQN

―あの、クラスの女子が言ってたのは、まさしくコレのことなんだ……。
 性欲混じりの、暗く重い、他者のまなざし。

 最初、彼は信じられなかった。
 あの可苗が……あの、何でも出来る可愛い妹の可苗が……!?
 いくら何でも、そんなまさか?
 だが、喜十郎が期せずして目撃した光景が、それまでの疑惑を全て裏付けてしまう。


「お兄ちゃん……お兄ちゃん……お兄ちゃん……お兄ちゃん……」
 そう念仏のように呟きながら、手にしたアイスピックで、飼い猫のヴァニラ(そう、我が家は団地住まいのクセに猫を飼っていた)を、穴だらけにして殺していた、あの光景。
 ヴァニラは泣き叫べないように口に猿ぐつわ代わりのハンカチをかまされ、素早く逃げられないように後ろ足をズタズタにされ、それでも不十分だと思ったのか、ヴァニラは首からTシャツを被せられ、ロクに動けなくされていた。
 そのシャツは―無くなったはずの喜十郎の白無地のTシャツだった。
 その目は血走り、その口元は歪んだ笑みが張り付き、その右手に握ったアイスピックには一分の躊躇いすらなく、その左手は―フリル付きスカートの中に潜り込んで、湿った音を響かせていた。
「お兄ちゃん……お兄ちゃん……お兄ちゃん……お兄ちゃん……お兄ちゃん……」
 そう、唱えながら。
 そして白無地のシャツが、ピックの刺し傷で紅に染まった頃、可苗はヴァニラの首をフローリングに押し付け、
「―あああっ、お兄ちゃぁぁんっっ!!」
 そう叫んで、へし折った。 
 その当時、彼は未だに童貞だったが、素人目に見ても、彼女がエクスタシーを迎えたのが分かった。


 そして、喜十郎は、自分が理解したと思っていた事が、全く違うという事実に気が付いた。
 ただの性欲ではなかったのだ。
 殺意すら混じった所有欲。
 キモウトなんて生やさしいもんじゃない。このままじゃ、いつか必ず殺される。
 それは確信だった。
 本能が告げる身の危険だった。
―この家を出よう。
 喜十郎が心に誓ったのは、このときだった。

 その彼が、その妹を伴い、家に帰る。
 もはや二度と帰ることは無い、そう思って後にした、かつての我が家に。


352:時給650円
07/10/15 04:10:50 D8b/QqQN
今回はここまでです。

353:名無しさん@ピンキー
07/10/15 04:13:29 Qhkaa8yx
こんな時間になんというGJ

354:名無しさん@ピンキー
07/10/15 04:27:06 j/6CQayH
残業のせいで非常にむしゃくしゃしていたが
ほぼリアルタイム投下に遭遇して疲れもふっとんだ。

作者さんGJ

355:名無しさん@ピンキー
07/10/15 07:06:37 T8OX/gwE
最近の楽しみになりつつあるね。GJ!!
出来れば早いうちにまた頼みます!

356:名無しさん@ピンキー
07/10/15 13:53:28 Jeib+y7B
兄がM!キモウトもM!
……そんな話は想像できないな。

357:名無しさん@ピンキー
07/10/15 14:08:06 PEcAwpG7
なんていうかもう兄貴に幸せになってほしくてたまらない
そしてぬこカワイソス

358:名無しさん@ピンキー
07/10/15 16:36:17 b/Or1HaX
ヴァニラ・アイス

359:名無しさん@ピンキー
07/10/15 16:37:54 85S2QjRp
キモ兄・キモ弟

360:名無しさん@ピンキー
07/10/15 16:45:44 LNzfENEI
前門のキモウト、後門もキモウト

361:名無しさん@ピンキー
07/10/15 16:51:06 +mXPAnbE
猫を殺す理由がわからない

362:名無しさん@ピンキー
07/10/15 17:20:43 ZLlLfPVG
ぬこを兄貴に見立てて殺しながらオナニー

363:名無しさん@ピンキー
07/10/15 19:34:29 txVqjxfu
投下します。

364:籠の鳥
07/10/15 19:36:29 txVqjxfu
前日

 万歳をするような恰好で、慎は寝台に縛り付けられていた。
腕には手錠、脚には荒縄、口には猿轡といったふうに、慎はすっかり拘束されていた。
腕を動かそうとすると、鉄の鎖がじゃらじゃら音を立てた。ばたついて戒めを解こうとしても、きつく締められた縄が食い込んだ。ならばと顔を真っ赤にして叫んでみるが、くぐもった音がむなしく響いた。
拘束は完璧だった。体の抵抗は全てそれらによって阻まれた。
ぼやけた視界の中には見慣れた天井があり、頭の後ろには馴染んだ枕の感触があり、肺には綿を押し込まれたような窮屈さがあった。
完全に目が覚めると、彼は身動ぎすることを止めて、いくぶん落ち着いた頭で今の状況について考え始めた。
今日はいつものように学校へ行き、退屈な授業を受け、放課後には部活動に出て、疲れきった体を引き摺って家に帰った。
帰宅した自分を妹の真由が迎え、汗臭い体を風呂で洗い、真由の作った食事をいつものように兄妹二人だけで食べた。
けれど、そこから先が思いだせない。夕食の後の記憶がすっぱりと頭から抜け落ちていた。
食事の途中で眠ってしまったのだろうか、ハンバーグのかけらが口に残っていた。
挽肉と玉ねぎを飲み込んだとき、痛んだ蝶番がぎいぎい音を立てた。慎はただ一つ自由の利く首筋を精いっぱいのけぞらせて、いま正に開こうとする扉をにらみ付けた。


365:籠の鳥
07/10/15 19:39:27 txVqjxfu
「あはっ。おにいちゃん、やっと起きたんだね」
ふわふわとくせの付いた栗色の髪を手櫛で撫でつけながら、妹がそこに立っていた。
真由は風呂から上がったばかりのようで、寝台のそばへ歩み寄るにつれ、柑橘系のやわらかな香りが慎の鼻をくすぐった。
少女はくすくす笑いを漏らしてから、両手で枕元に寄りかかった。そしてにらめっこをするように兄の顔面を覗き込み、ささやくような声色で言った。
「ねえ、おにいちゃん。わたしのこと、好き?」
鈴を鳴らしたみたいな可愛らしい声は、慎にはまったく聞こえていなかった。彼は小人国で目覚めたガリヴァの心境で、自分を縛りつけた下手人は妹だという、誰でも簡単に考え付くだろう推測を信じられずに錯乱しきっていた。
むうむうと苦しそうに唸っている慎が落ち着くまで、真由は辛抱強くじっと黙りこくり、息切れを起こして静かになった兄の耳元に桜色の唇を寄せて、もう一度、はっきりと聞こえる声でささやいた。
「わたしのこと、好き?」
慎は再び暴れだした。今度は口だけではなく、体じゅうを用いて不埒な妹に抗議した。
悪ふざけにしても、縛り付けるなんてやりすぎだと、慎は出来るかぎりの力を目元に込めて、真由をにらみつけた。
ぎしぎしがちゃがちゃと全身で不愉快な音を鳴らしても、少女は顔を緩ませたまま、兄の瞳を覗き込んでいた。
「そっかぁ。おにいちゃんは、わたしのこときらいなんだね」
しばらくすると、妹はそう言って立ち上がった。そのまま寝台から離れてすたすたと出口まで歩いてゆき、扉の取っ手を掴んだ。
そうして兄に背を向けたままの姿勢で、
「じゃあ、おやすみなさい」と最後に呟き、真由は明かりを消して部屋を出た。
部屋には真由が出て行ったあとも唸り声が響いていたが、一時間も経つと静かになった。
泣き喚く幼子と同様に、慎は疲れて眠ってしまっていた。




366:籠の鳥
07/10/15 19:42:33 txVqjxfu
初日

 慎は窓から射す朝日で目を覚ました。寝台の上の自分は、昨日のままだった。
これが夢なら覚めてくれと、慎は頬を抓ろうとした。しかし硬く冷たい金属の輪っかがそれを阻んだ。彼は泣きたくなった。
「おはよう。おにいちゃん」
日差しが強くなってきたときに、真由が部屋に入ってきた。心底嬉しそうな顔が憎たらしくて、慎はじろりと妹をにらんだ。
それでも真由は微笑み顔を崩さずに、昨晩と同じ問いを兄に投げかけた。
「ねえ。わたしのこと、好きになった?」
慎は縛り付けられたまま、頭突きをするように首を跳ね上げて、妹に唸り声を浴びせた。きりきりと限界を訴える首と腹筋を無理矢理黙らせて、一所懸命叫び続けた。
苦しそうな赤ら顔を眺めて、少女はため息を吐いた。仕方が無いと言わんばかりで、その仕草の中には罪悪感の欠片も見当たらなかった。
真由は駄々っ子を諭す母親のように、優しい手つきで兄の髪を撫でた。そして枕元にある目覚まし時計を裏返して、慎からそれを見えなくした。
次に、眩しくなってきた日光から兄を守るためにカーテンを閉めた。シーツの皺を整えるなど簡単なベッドメイクも行った。
指を挟まれる危険を考えたのか、脚に巻かれた縄と、寝台の柱に嵌められた手錠には手をつけなかった。
「それじゃあ、わたし学校行ってくるからね。ちゃんと大人しくしててよ、おにいちゃん」
妹はそれだけ言い残して、縛られた慎をほったらかして部屋を出ていった。

 カーテンが締め切られた薄暗い部屋の中で、ちっく、たっく、ちっく、たっくと、秒針はけなげに時を刻み続けていた。
しかし、慎はもはや時間の感覚があやふやになっていた。音だけが聞こえて、時間はわからなかった。あの時計を正面に向けてくれるのなら、貯金全部はたいてやってもかまわないとさえ、慎は思っていた。
妹が出て行って何時間たったのだろうか。頭の中で音を数えて時間を計ってみるが、三百も続かないうちに、他の物事が割り込んで邪魔をしてしまう。
脚に食い込んだ縄が痛い、無理矢理固定された肩の筋肉が引きつり始めている、よだれでびちゃびちゃになった口枷のタオルが生臭い、真由はどうしてこんな仕打ちをするのだろうか。
とにかく体を動かして、思いきり新鮮な空気を吸い込みたかった。そのためなら、卑屈な飼い犬のように媚を売ってでも、枷を外してもらおうと慎は考えていた。


367:籠の鳥
07/10/15 19:44:41 txVqjxfu
 むせ返るような臭気が部屋に充満していた。真由は困ったような顔をして慎の股座をまさぐっていた。粗相をやらかしてしまった兄に、甲斐甲斐しく奉仕していた。
こうなることを事前に予期していたのだろう、無骨な大人用紙おむつを脇に置いて、しょうがないなあおにいちゃんはと、楽しげに独り言を漏らしながら、少女は兄の股間と、シーツにこびりついた茶色い塊をふき取っていた。
びっしょりと濡れた寝巻きと下穿きを脱がされて、慎は下半身をむき出しにしたまま目を瞑って顔を背けた。
漏らしてしまった水分が冷たくなり始めたとき、慎は半ばやけになっていた。
ぜんぶ妹がいけないのだ、俺がどうしたとしてもすべてあいつの責任で、俺の名誉には傷一つつかないのだと自分を納得させて、どうせなら盛大にやらかしてやろうということで、今度は産気づいた固体のほうを排泄するべく力んだという次第だった。
開き直った慎はこうして羞恥心に耐えるようなそぶりを見せたまま、反撃の機会を窺っていた。
汚物の処理をするには、脚の縄を解く必要がある。妹の気が緩んだ隙を狙って、思いっきり蹴飛ばしてやろう。慎はそう企んでいた。
やたら一物を撫でる真由の手つきに鳥肌が立ったけれど、呻き声を漏らさないよう、歯を食いしばって耐えた。


368:籠の鳥
07/10/15 19:49:01 txVqjxfu
「はい、これでおしまい。次はお漏らしなんかしちゃ駄目だよ」
ぽんぽんと、紙おむつで膨らんだ股間を軽く叩いて、真由は終了を宣言した。
慎はすかさず真由の顔面に蹴りを見舞った。躊躇しようなんてこれっぽっちも思わなかった。
蹴飛ばされた妹は、あうと小さくうめき声を漏らして床に倒れ込んだ。脚に感じる衝撃は予想したほど重くなかった。
妹は小さな体を丸めて、鼻から血を流していた。痛いよ、痛いよとしゃくり上げながら、蹴られた鼻を押さえていた。
ぐすぐすとすすり泣く妹の姿に慎が罪悪感を覚え始めたとき、真由は目元に涙を溜めたままふらふらと立ち上がった。様子が少しおかしかった。
「ひどいよ。おにいちゃん。蹴るなんて、ひどすぎるよ」
ゆらゆら左右に揺れながら近づいてくる妹の姿に、慎は得体の知れない恐怖を覚えた。体じゅうに戦慄が走り、爪のなかまで寒気がして、ぶんぶんと振り回していた脚はぴくりとも動かなくなった。
少女の目元は前髪で隠れていた。鼻から口元にかけては、拭ったせいで滲んだ血液が赤い化粧を施していた。唇はせわしなく小さな動きをくりかえして、おにいちゃんおにいちゃんと機械的に言葉を漏らし続けていた。
時折、栗色の髪の隙間から覗く目元が蛍光灯の光に照らされ、大きな、ぎょろついた、充血しきった目玉が鈍く輝いた。
痛々しい妹の姿をとても見ていられなくなって、慎はぎゅっと目を瞑った。後ろめたいからではなく、恐ろしいからだった。
真っ暗な世界のなかで、妹の言葉だけが、壊れた玩具のように響いていた。
音はだんだんと大きくなり、ついに鳥肌が妹の体温を感じ取ったとき、突如鋭い痛みが襲ってきて慎は目を見開いた。
ぱちぱちぱち、という爪きりを続けて鳴らしたような音が聞こえたのに数瞬遅れて、全身に針を突き刺される痛みが這い上がってきた。
「おにいちゃんがいけないんだからね」
意識を手放す直前、慎の目にスタンガンを構えた真由の姿が映った。少女は涙をぼろぼろと流していた。
翌朝、目覚めた慎の脚は再び縄できつく縛られていた。シーツは清潔なものに取り替えられ、寝巻きは新しいものに変えられていた。しかし、妹はいつになっても現れなかった。
その日も慎は寝台に縛り付けられたまま、薄暗い部屋に監禁されていた。



369:名無しさん@ピンキー
07/10/15 19:51:25 txVqjxfu
以上です。一応続きます。

370:名無しさん@ピンキー
07/10/15 20:30:37 D8b/QqQN
このペースで、あと30日くらい続いて欲しかったりする。

371:名無しさん@ピンキー
07/10/15 20:48:01 FEttGcAJ
実際監禁されるってどんな感じか試してみようぜ

~ルール~
・自分の部屋から出てはいけない
・可能なら手足を拘束する
・パソコン・携帯は禁止
・食事等の世話は姉もしくは妹に頼む
・実験は外部に極秘とする
・実験の期間は妹もしくは姉に委ねる

372:名無しさん@ピンキー
07/10/15 20:54:17 0fCQTGJq
そうゆうのはどうせまた、いつものキモ兄達がワンパターンを繰り返すだけだぞ
それより、そろそろ保管庫をどうにかしないとな…

373:名無しさん@ピンキー
07/10/15 20:57:02 jtgrkemr
そろそろ姉が欲しいぜ・・・

374:時給650円
07/10/15 22:26:11 D8b/QqQN
>>351
続きを投下します。

375:淫獣の群れ(その7)
07/10/15 22:27:48 D8b/QqQN

「ねえ、あの……母君さま、どうしてこんなに突然帰ってらしたんですか?」

 一瞥して不機嫌と分かる母……道子に、おそるおそる春菜が尋ねる。
「―ふう、まったく……!」

 普段は、“兄”と“妹”七人で仲良く食卓を囲む六畳の居間に、座布団を枕代わりに、だらしなくテレビを観ている一人の女性。―外貌を一瞥しただけでは、とても六人もの娘を産んだ四十過ぎの中年女性に見えない。それほど彼女は若々しかった。
 その母が、溜め息と共にジロリと鋭い目を向けると、正座をした薙刀部副主将の春菜がびくりと怯んだ。

「春菜ちゃん、あなたで三人目よ。その質問を母さんにしてきたのは」
「え、あの、そうなのですか……?」
「なんなの一体? 母さんが帰ってきたのがそんなに嫌なの、あなたたちは?」
「でっ、でもっ、やっぱり気になるじゃないですか。―博多で、何かあったのかなって」
「その件に関しては、夕食時に家族全員揃ってから言います! あんまり思い出させないで、不愉快なんだからっ」
「は、はい……」
 久しぶりに会ったはずの娘に、ひとしきり怒りをぶつけた後、道子は、ぐびりと卓上の麦茶を飲み、再び寝そべった。
―いや、違う。
「母君さま、これ、まさかお酒ですか……?」
「そうよ。春菜ちゃんも飲む?」
「何を言われるんですっ! まだ、日も沈んでない時刻なのに!」
 春菜は、そう言うが早いか、テーブルからグラスを取ろうとする。
 しかし、母は春菜より早くグラスを取り、舞うような動きでひょいひょいと娘の手を躱すと、一気にグラスを空けてしまった。
「ああああっ、母君さまっ!」
「あんたに日舞を教えたのは母さんなのよ。まだまだ見くびっちゃダメよ」
「でもそんな、はしたない……」
「大丈夫よぉ、この程度の量じゃ、まだ酔わないわ」
 そう言ってけらけら笑う母親に、春菜は複雑な表情を見せる。

(一体、母君さまに何があったのかしら……?)
 いくら何でも、娘の眼前で昼間から酒を飲んで、それを恥じないような母ではなかった。
 長姉・桜の独特の気位の高さは、この母親譲りなのだと知人全てが納得する―少なくとも自分の知る母は、そういう女性だったはずだ。
 春菜は、博多で何があったのかを聞くことに、とてつもなく嫌な予感を覚えていた。


376:淫獣の群れ(その7)
07/10/15 22:29:17 D8b/QqQN

「そんな事より、あの子はどう?」
 けらけら笑いから、にやにや笑いへと表情を変化させ、道子は傍らのスルメをかじる。
「あの子?」
「とぼけないで。あなた達の新しい“お兄ちゃん”よ」

「あ、あにぎみ、さま……?」
「そう、その兄君さまよ。仲良くやってる?」
「え、―ええ。それはもう、力の限り」
「ふ~~ん。“力の限り”ねえ?」
 マンガの中の酔っ払いのように、道子はスルメを咥えたまま、春菜の隣ににじり寄ってくる。

「深雪も真理も桜も、母さんが不機嫌そうな顔をすると、途端に質問攻めの口を閉ざしたけれど、……“お兄ちゃん”の事を訊いた瞬間に揃って、同じ反応をしたわ……」
「同じ、反応、でございますか……?」
「そう、目を白黒させて、耳まで赤くしてそっぽ向いて、……深雪なんか汗までかいてたし」
「はぁ……」
「いまの春菜と全然おんなじ」
「―っ!」
「好きなの?」

 その瞬間、春菜は何も言えなかった。何も言えないという事が、どれほど母に、雄弁に解答を語る事になるか理解していてなお、それでも春菜は何も言えなかった。
「くすくすくす……ほんと、姉妹ねえアンタたち」
 母は、何もかも分かったような表情でスルメを噛み千切ると、
「そうやって、何も言えなくなっちゃうとこまで、全部一緒だなんてね」
「……あまり、いじめないでくださいまし……」
 首まで紅潮させて俯く春菜を、意地悪な母は心底楽しそうにからかい続ける。
「そうねえ、この詳細は、喜十郎君本人から聞いた方が面白そうだもんねえ」
「はっ、母君さまっ、それは―!」

「ただいま……」
 その時だった。姉妹の四女・詩穂が帰って来たのは。
 これ以上、この話題を続けたくなかった春菜は、思わずホッとして、玄関先まで迎えに出る。
「おかえりなさい詩穂ちゃん。冷蔵庫にプリンがあるわよ」

「―いらない」



377:淫獣の群れ(その7)
07/10/15 22:30:56 D8b/QqQN

「何か、久しぶりだな」

 相変わらず、妙な振動がするエレベーターで六階まで昇る。
 箱の中に漂う薄いカレー臭も、あの頃のままだ。
―可苗は、さっきまでの詩穂以上に喜十郎にべったりくっつき、下手をすればカップルというより、容疑者を連行する婦人警官のような体勢にすら見える。
 当然、可苗にしても喜十郎にしても、そんな警官と容疑者のような暗い顔はしていない。
 むしろ逆だ。
 可苗は、ここ数日の陰鬱感がウソのようなあどけなさで兄を見上げ、喜十郎も、そんな妹を笑顔で見下ろしている。
……しかし、彼女には分かっていた。
(お兄ちゃんの身体、すっごく緊張してる。全然リラックスしてない……!)

「とうちゃ~~く」
「何か妙な感じだな。自分の家が懐かしいなんて」
「んふふふ……なんならもう一回帰っといでよ、お兄ちゃん。可苗は大歓迎しますよ?」
「そうだな。もし、あの家追い出されたら、また厄介になるか」

 もしもの話ではない。
 最悪そういう事態が、普通に起こりかねない現状に、喜十郎は非常に困惑していた。
(桜のばかたれが……)
 いや、もう、本家のことなど考えている余裕は無い。
 そんな事は、無事あの家に帰りつけてから考えればいい話に過ぎない。
 しかし、今もってなお、喜十郎の心中にあるのが、この妹に対する恐怖感のみであるかというと、そんな事は無い。
 その点、まだ喜十郎は少しは楽観的であった。

 いくら何でも今日イキナリ可苗が凶刃を繰り出すとは、さすがに思っていない。
 それに、夕方も六時を過ぎれば母が仕事から帰ってくる。そうなれば、狭い公団住宅の中で、妹が騒ぎを起こす事は不可能だ。この団地の壁の薄さは喜十郎もよく知っていた。
 何より、未だに喜十郎は、この妹に対する兄妹愛を持ち続けていた。
 確かに飼い猫ヴァニラの殺害シーンを目撃した時は、それなりに衝撃を受けたし、身の危険を覚えもした。だがそれでも、―それだけで、永年生活を共にした“綾瀬可苗”という一人の人間に、憎悪や嫌悪感を抱けるかと問われれば、それはまた別の話だった。


378:淫獣の群れ(その7)
07/10/15 22:33:41 D8b/QqQN

 鍵を開けて、団地独特の重い鉄のドアを開ける。
 そのまま懐かしの自室に入る。
 可苗と二人で使っていた、六畳間。
「やっと一人部屋が出来て、お前も嬉しいだろう?」
 そう言って、キャスターつきのイスに座り、かつて勉強に使った学習机に向かってみる。

 ちなみに、この机は本家の一戸建てには持って行けなかった。
 一軒家とはいえ、娘が六人もいる本家では、喜十郎に個室を与えるほどの空間的余裕は持ち合わせていなかったからだ。
 わざわざ養子として呼んでおきながら、部屋一つもらえない待遇に、
(バカにしてやがる)
 と思わぬでも無かったが、無論そんな事はおくびにも出さない。
 何しろ部屋割り的には、娘六人が四畳半二部屋に押し込められているような実態だ。個室を寄越せなどと、そんな図々しい事を、とても言えるわけは無い。
 だから彼は、必要最低限の荷物しか、本家に持って行かなかった。
 そのため、机のみならず、本棚やCDボックス、コンポ、パソコンなど、自費で買った家具のほとんどを妹にくれてやり(もっとも彼が、所有権を手放す前からパソコンやコンポなどは共有扱いではあった)、冬物衣服なども大半が置きっ放しであった。

「嬉しいくないって言えば、嘘になるけど……お兄ちゃんがいなくて、可苗やっぱり寂しいです」
 そう言いながら、可苗はキッチンから二人分の紅茶とクッキーを運んできた。
 トレイからそれらを兄の机に下ろし、自分の学習机からキャスター椅子を持ち出し、兄の隣に座った。

「お兄ちゃんは、可苗がいなくて寂しくないんですか?」

 この瞬間、喜十郎は正直、やられた―と思った。
「寂しいよ。決まってるだろ?」
 そう問われれば、こう答えるしかない。綾瀬喜十郎という人間は、そんな質問を、適当に茶を濁して返答できるほど器用ではない。何より、茶を濁した返事で、可苗の機嫌を損なう事こそ最も避けねばならない。
 しかし、こう答えれば、可苗がその言葉にどう反応するかも、喜十郎には分かっている。
「じゃあ、もっともっと遊びに来て下さいっ、お兄ちゃんっ!!」
「……ああ、そうだな」
「それなら今週のいつなら空いてますか? 可苗、何曜日でもいいですよっ!」
 やっぱり、予想通りになった。こういう具体的な問い方をされてしまうと、
『また今度』とか、
『次に空いてる日』とかいった、ぼやかした言い方が出来なくなってしまう。
 そして結果は明白だ。
「じゃあ、今度の……火曜でどうだ?」
 この約束が成立すれば、取り合えず火曜日までは生き延びれる。少なくとも今日は無事に帰してもらえる。そう考えれば少しは救いになる。
「はいっ、じゃあ月曜の夜にまたメールしますねっ!」
「ああ……うん」
 これで忘れたフリをしてすっぽかす事も、出来なくなった。


379:淫獣の群れ(その7)
07/10/15 22:35:09 D8b/QqQN

「可苗、スッゴク楽しみにして待ってますからねっ」
「いや、待て。どうせなら」
―外で会おう。今度オープンした水族館に一緒に行こう。
 と、喜十郎は約束した。
 親すらいない密室の団地の中で逢うよりは、まだ野外の方が安全であろう。そう思った彼の、せめてもの抵抗だった。しかし可苗は、喜十郎の本心を知ってか知らずか、あっさり、その提案をはねつける。
「だって、友達の噂じゃあ、あそこ、あんまり面白くないらしいんですもの」
―だから可苗、クッキーとお紅茶淹れて待ってます。……ううん、やっぱりそれよりも、
 どうせなら自分が、迎えに行く。その方が少しでも長く喜十郎といられるから、という内容の台詞を、可苗は嬉々として喋った。―底意の全く見えない、天使のような笑顔のままで。

(冗談じゃない)
 そんなマネをされたら、本家の姉妹たちに何をされるか分からない。
 何しろ彼女たちは、姉妹間においてこそ争いもせず彼を共有財産扱いにしているが、それ以外のいわば共通の敵に関しては、絶対に退かず、容赦もない。
……あるいは可苗ならば、あの六人を向こうに回して戦えるかも知れない。
 だが、どちらが勝つにしろ、喜十郎がタダで済むはずはない。下手をすれば、七人が一致団結して、彼を“飼い”にかかる可能性すらある。―そうなれば、もう確実に助からない。

「いや、いいよ。お前の学校からだと遠回りになるだけだし、それだったら家で待っててくれた方がいい。そっちの方が―」
 家に帰ったとき、『ただいま』って言えるだろ? と、喜十郎は媚びるような目線で言う。
「わあああっ、いい! お兄ちゃん、それってすっごく素敵ですっ!!」
 可苗の無邪気な喜びっぷりを見て、内心あれだけ彼女を警戒していた喜十郎も、妙に嬉しくなった。
(と言うより、こんなに素直で可愛い妹の一体何を、オレはビビってたんだろう?)
 思わず、そう感じてしまったのだ。
 永年、彼女と過ごした“兄”としての、無意識に身内を庇う習性が出てしまった、というべきか。
―ヴァニラの件は、あれはやっぱり何かの間違いじゃないのか? 少なくとも、やっぱり可苗が意味もなく、あんな気違いじみたマネをするわけがない……。
 とにかく、喜十郎はそのまま眼前の紅茶を手に取った。

 その瞬間、可苗の瞳が目ざとく光ったのを、喜十郎は気付かない。



380:淫獣の群れ(その7)
07/10/15 22:36:46 D8b/QqQN

「どうしたの詩穂ちゃん。何かあったの?」

 詩穂は、登校時のはしゃぎっぷりからすれば、まるで別人のような意気消沈ぷりだった。
 どんなに部活でドジをしても、おやつがある、と聞かされれば、たちまちの内に元気を取り戻すのが、詩穂という少女のはずなのだ。
「そういえば詩穂ちゃん、今日はやけに帰りが早いけど、チアリーダー部は?」
「……」
 詩穂はうつむき加減のまま、無言で春菜の隣を通り過ぎる。
「―詩穂ちゃん……?」

「今日は詩穂の部活はお休みよ」
 その声を聞いた途端、びくんと詩穂が動きを止める。
 そう言いながら階段を下りてきたのは、桜だった。
「私が竜崎に連絡したの。今日の詩穂は二日目で調子が悪いから欠席させてあげてって」
 竜崎とは、中等部チアリーダー部のキャプテンであるが、演劇部部長である桜の大ファンであり、チア部員である詩穂を通じて、姉を紹介させたという経緯があった。―そのため、桜の名を持ち出されると、竜崎は詩穂に何も言えなくなってしまうのだ。
「どういうことですの、桜ちゃん?」
 いまいち事態が把握できない春菜に、今度は階段から、また違う声が聞こえてきた。

「―つまり今日、詩穂ちゃんは、桜ちゃんの協力の下、部活をサボって今までどこかに行っていたわけですね? 今朝の朝食時のはしゃぎっぷりからして、おそらく兄上様がらみではないかと思われますが。いかがですか……?」
 声とともに、真理がホームズよろしく顎に手を当てて階段を下りてくる。
「まっ、真理ちゃん?」
「すごい真理、大正解よ。―さすがに文型科目学年一位だけのことはあるわね」
 ぱちぱちぱちと拍手をする桜。しかし、詩穂の顔色はさらに暗くなるばかりだ。
「そう言えば詩穂ちゃん、兄君さまは? 真理ちゃんの推理通りなら、一緒に帰ってきてもよさそうなものだけど……」

 この一言が引き金になった。
 ぱんぱんに膨らんだ水風船は、針の一刺しでたやすく破裂する。
「ふえええええんっっっ!!!」

「どっ、どうしたのっ、詩穂っ!?」
「しっ、詩穂ちゃんっ!?」
「あのっ、詩穂ちゃんっ、私、何かまずいこと言いましたっ!?」
 三人の姉はおろおろして、詩穂の周囲をくるくる回るが、悲しいかな、何の慰めにもなっていない。
「―お兄ちゃまが、お兄ちゃまが……」
「お兄様が!? お兄様がどうかしたのっ!?」
「もしや兄君さまの御身に何か危険が!?」
「桜ちゃんっ、春菜ちゃんっ、いけませんわ、落ち着いてくださいっ!」

「詩穂っ、お兄ちゃまに、見捨てられちゃったよぉぉぉっ!!」


381:淫獣の群れ(その7)
07/10/15 22:38:43 D8b/QqQN

 夕日の逆光で真っ赤に染まった一室で、少女が西日に劣らぬ真っ赤な携帯で、話をしていた。
「―ええ、そうですママ、いま言った通りです。―はい、パパには私から連絡しておきます」

「―ですから今日は、帰ってこないで下さい」

「―だから、だから言ってるでしょっ! これ以上、可苗とお兄ちゃんの邪魔をしないでっ!!」

「―ヴァニラみたいになりたくないでしょ? ……ねえママ?」

「はい。―ありがとう。……ごめんねママ……こんな娘で……」

 いま、可苗の眼前に、愛しくてたまらない一人の男が座っている。
 眠っているわけではない。かといって起きているわけでも無さそうだ。

 さっき飲ませた紅茶に、―いや、それだけではない。クッキーの一個一個にも、薬は盛っておいた。
 ただの睡眠導入剤ではない。
 心を静め、筋肉の緊張をほぐし、意識を保ったまま、それでいて記憶には残させない。
―いわゆる『催眠術』というべきものを、非常にかかりやすくするための薬剤。いわば、催眠誘導剤とでもよぶべき薬。
 もちろん、そこいらの薬局で売っているブツではない。
 もちろん、誰もが簡単に買える値段ではない。
(でも、その価値はありました。……お兄ちゃんが、ここにいてくれる……)

「―さあ、お兄ちゃん。ここはお風呂です。早く、その着ているものを全て脱いでしまいましょう」


 うつろな表情で、フラフラと立ち上がる兄を見て、早くも実の妹は、軽い絶頂を迎えていた。


382:時給650円
07/10/15 22:40:16 D8b/QqQN
今回はここまでです。

383:名無しさん@ピンキー
07/10/15 22:40:46 JMiE64a7


384:名無しさん@ピンキー
07/10/15 22:41:46 9XSK6cnq
>>382
実妹って怖いものと思い知りました。GJ!

385:名無しさん@ピンキー
07/10/15 23:07:27 9XSK6cnq
続けて失礼。
>>373が姉分が欲しいって言うから書いてみた。

386:僕(たち)の愛しいお姉ちゃん
07/10/15 23:09:10 9XSK6cnq
朝、起こしてくれる幼なじみとは、男にとってファンタジーだ。
物語中の彼女たちは、優しい声で、綺麗な容姿をしていて、何の理由もなく自分と親しく、尽くしてくれる存在である。
が、同時に我々は本能的に知っている。そんな都合のいい女がいるはずがない、と。
現実には、寝坊したところで家族の誰かに叩き起こされるのがオチだ。
それを思えば、憎たらしい仇敵である目覚ましにも愛着がわくというもの。
間違って母親に起こされるくらいなら、這いつくばってでも自分で起きたほうがマシである。
もしくは起きる努力を放棄するとか。

 今ここに、目覚ましとの戦いに勝ち、惰眠という代価を手に入れた少年がいる。名を上野雅樹という。
時間は7時50分。
彼の住む、この閑静な高級住宅街から彼の通う高校までは15分ほどなので、そろそろ起きる限界なのだが。
「Zzz~~~」
日光が部屋に入り込み、外から子供の声が聞こえはじめても一向に起きる気配がない。

387:僕(たち)の愛しいお姉ちゃん
07/10/15 23:10:32 9XSK6cnq
コンコン。ノックの音がする。
「マサ、入るよ」
そう言って入ってきた制服姿の少女は、雅樹の姉であり、名前は澄子という。
背中まである艶やかな長髪、きっちり着込んだブレザー。
古めかしい名がよく似合う、たおやかな容姿をしているのだが…。
げしっ。
「起きなさい、このゴクツブシ」
…彼女はサディストだった。躊躇なく弟の腹を踏み付ける。
「いつまでも寝てるから毎日忙しくなるんでしょ、根性なしめ」
彼女は口も悪かった。普段は猫を被っているが、本性を見た人間は例外なくヒいてしまうと言う。
…真性のマゾヒスト以外は。
雅樹の2つ年上の澄子は、両親が家を空けている上野家において、小さいころからよく弟の面倒をみていた。
が、同時にフラストレーションの発散も弟を通じて行われ、時に理不尽な怒りをぶつけたこともある。
今では家の中での刺々しい態度は落ち着いたが、その名残としてサド分は残っている。

388:僕(たち)の愛しいお姉ちゃん
07/10/15 23:13:47 9XSK6cnq
罵倒しながら足で揺さ振っていると、雅樹に反応があった。
雅樹は薄い掛け布団をめくり、上半身をゆっくり起こす。
「朝~?スミ姉」
「………!!」
いつもなら、起きた途端に愚図だのオナニーのしすぎだのとまくし立てる姉が黙ったままでいることに、雅樹は困惑した。
─罵られないと、朝って気分になれないんだけどナ…。
彼は真性のマゾヒストなのだった。足で起こされるのを気持ちいいと思っているあたり。

そう思っていると、澄子が左手で目を覆いながら、雅樹の下半身を指差した。
「…それ」
─何だよ、サンライズなら毎日見て…って!?
「…?、あ、ああ~~~~っ!」

ポロリしてました。

スウェットのズボンから見事に彼自身があまさず露出していた。
昨夜、新天地を開発すべくブリッジオナニーに挑戦して力尽きた結果である。
結局、新技『レインボーブリッジ噴水』はモノに出来なかったが。

389:僕(たち)の愛しいお姉ちゃん
07/10/15 23:16:10 9XSK6cnq
澄子はうつむいてしまい、雅樹からは姉の顔色が見えない。
が、場の雰囲気が読めない彼の彼自身は、硬度を失う気配がなかった。
「あ、あの、スミ姉…」
「…」
「その…」
「……」
「い、いかんスミ姉!妊娠するッ!」
何をとち狂ったか、姉に抱き着き、彼自身を押し付けながら盲言を吐き始める寝起きバカ一代。
「…は?」
「ヘビの脱皮!ヘビの脱皮!」
「~~~ッッ」
繰り返すが、彼はマゾヒストである。気まずさを紛らわせる手段が他に思い浮かばなかったのだ。
─さあ、はやく俺を罵ってくれ。それでチャラにしよう。
ペニスを姉に擦り付けながら、そういう計算が彼にはあった。

だが。

「…いいの?」
「へ?」
童のような姉の声に、雅樹は間の抜けた声を漏らす。

澄子が顔を上げた。恐いほどの真顔。
「…あの、そろそろ出てってくれないか?ホントに赤ちゃん出来ちゃうよ?」
「うん」
澄子は雅樹の背にそっと両腕を添えた。弟の逃げ場所を奪うように。絡めとるように。
「…ありゃ?」
「逆にさ、私が部屋を出ていかなければ、マサと子作りするってことだよね?」
「へ?」

390:僕(たち)の愛しいお姉ちゃん
07/10/15 23:19:33 9XSK6cnq
ここに来て、雅樹も違和感の原因に気付いた。姉の笑顔だ。
猫を被っているときの微笑とも、弟をいたぶっているときの嘲笑とも違う笑顔。

目が、濁っているのだ。

ニタァ、と口元が三日月を描いた。
「え、待ってあの「私はッ!」」
「私は待ってたんだよ、マサ」
「なっ…」
雅樹は凍りついた。冗談で抱き着いていた腕から力が抜ける。が、澄子との距離が離れることはない。
澄子は左手で弟の頬を撫で、右手で彼の露出している、硬度を失いつつあるペニスを優しくさすった。
「ごめんね、今まで痛いことしたり酷いこと言ったりして」
「…」
「一人前にしてやるとか、バカみたい。マサを繋ぎ止めたくてそんなことして」
「……」

391:僕(たち)の愛しいお姉ちゃん
07/10/15 23:20:50 9XSK6cnq
「でも、もういいよね、いくじなしのマサがようやく手を出してくれた…とっくに一人前だったんだね。
 これからは何でもマサの言うとおりにしてあげる。まず最初は子作りだよね、いいよ、今すぐ作ろ?
 二人で混じりっけのない、濃ゆ~い血の子供を作ろ?お姉ちゃん子供三人くらい欲しいなぁ。
 マサが好きだったら、ボテ腹セックスもいいかなぁ。お腹の子がアレだけど…いいよね、マサのためだもん。
 あぁもうお姉ちゃん濡れてきちゃった。早くシよ?ね、二人でどろどろに溶け合ってひとつになろ?
 あ、でもその前にちゃんとマサの口から聞きたいな。聞かせてくれるよね?あ、い、の、こ、く、は、く」

雅樹の知る姉はそこにはいなかった。話し方も、一人称も、人格さえ別人のように思えた。
ベッドに押し倒され、唇を奪われる。
そして、視界いっぱいに広がるブレザーの胸元を見ながら、雅樹は思った。

─幼なじみじゃなくても、家族に起こされるのも悪くないな…。

『クス…』

392:名無しさん@ピンキー
07/10/15 23:25:13 9XSK6cnq
投下終了。

初めて書いたんで出来はご容赦を。

タイトルは悪ノリで付けました。多分もう書かないんで勘弁してやってください。

393:名無しさん@ピンキー
07/10/15 23:39:48 TOPAFx+b
GJ

しかし何故この内容で僕「たち」なのでしょうか?

394:名無しさん@ピンキー
07/10/15 23:55:38 9XSK6cnq
>>393
他スレからタイトルをパクったのと、姉分を求める住人が他にもいるかなと思ったからです。

が、普通に要りませんでしたね…。保管庫に掲載される機会があれば、『僕の愛しいお姉ちゃん』に改題よろしくお願いします。

395:名無しさん@ピンキー
07/10/16 00:00:18 aKfMi13K
つまりキモ姉は人類の共有財産というわけか。
その心意気や良し!


もちろん弟君はキモ姉ひとりの所有物なわけだが。

396:名無しさん@ピンキー
07/10/16 00:27:24 Bsi2wH/y
>>382GJ!


397:名無しさん@ピンキー
07/10/16 00:51:31 i+ULj8Gp
>>369>>382>>392
GJ!!!!一夜に三作も・・・素晴らしすぎる・・・悶絶しました。

398:名無しさん@ピンキー
07/10/16 00:56:29 gONiRnhW
>>392
GJ
しかし蛇の脱皮って懐かしすぎるwwwwwwwwww

399:名無しさん@ピンキー
07/10/16 01:59:05 9Cx1ESRT
もう書かないとは、残念だ

400:373
07/10/16 08:54:58 OUin+4mM
>>392

良くぞ・・・良くぞ書き込んでくれ申した・・・!!!!



401:名無しさん@ピンキー
07/10/16 10:10:16 96bX5VYc
綾シリーズってもう終わったのか?
途中までしか読んでないんだが……

402:名無しさん@ピンキー
07/10/16 10:25:35 /hnDSSkM
いや、終わってないよ。
続きがどうなるのかすごく気になるところで終わってる

綾に限らず、そういう作品多いよな

403:名無しさん@ピンキー
07/10/16 16:36:51 pbocDobZ
>>402
終わってるのか終わってないのかどっちだよw

まだ連載中ですので次の綾をお待ちください

404:名無しさん@ピンキー
07/10/16 22:47:43 rlb+GZVi
この間の過疎が嘘のようだ!

405:時給650円
07/10/17 13:35:15 hcXIdfW8
>>381の続きを投下します。

406:淫獣の群れ(その8)
07/10/17 13:37:40 hcXIdfW8

「可苗ちゃんに、お兄様とのデートを邪魔されたぁ!?」
「……うん」

 泣きじゃくる詩穂を、なだめすかせ、落ち着かせ、ようやく事情を聞いたときは、もう詩穂の帰宅から三十分近くが経過していた。
 それも、二階の自室にいた深雪や比奈、さらには居間で酔っ払っていた姉妹の母親の道子までが、必死になって彼女を慰めたからこそ、三十分で済んだと言えなくもない。
―が、ようやく泣き止んだ詩穂が口にした、あまりに予想外なコトの顛末に、そこにいた全員が、やや呆気にとられていた。
「あの……可苗ちゃんって、確か兄上様の妹の―」
「確か深雪ちゃんと同い年、でしったけ?」
「ええ、確かそうですの」

「―そんな余計な事はいいのよっ!」

 ひそひそ声で可苗の情報を確認しあっていた真理と春菜・深雪を、桜が一喝する。
「可苗の歳がいくつかなんて、この際どうだっていいのよ……! 問題は、そんな事じゃないのよ……!」
 目を血走らせ、今にも正拳突きで壁をブチ破りそうな殺気を放っている桜。
 そんな長姉のあきらかな憤怒に、誰も言葉を発することすら出来ない。だが、当事者である詩穂を含めた妹たち全員が、ブチ切れモードの桜に違和感を覚えていた。


407:淫獣の群れ(その8)
07/10/17 13:41:27 hcXIdfW8

「何をそんなに怒ってるの、桜?」

 その意見をイキナリ代弁したのは、この場に於ける、彼女の妹たちではない唯一の存在。
―すなわち、彼女たちの母・道子だった。
 桜にしては迂闊だったというべきだろう。感情に任せて、この場に母がいた事をすっかり忘れてしまっていたのだ。
「べっ、べつに私は、怒ってなんか……」
「それで誤魔化してるつもりなの?」
 呆れたように母は言う。
「喜十郎君からすれば、可苗ちゃんは妹よ。それも、あなたたちみたいな、お義理の妹じゃない。本物の―実の妹さんなのよ。その子がいきなり抱きついてきて、泣きじゃくったっていうなら、おうちに送ってあげるくらい、当然じゃないの」

(“お義理の妹”!?)
 その表現には、この場に居合わせた“妹”たち全員がカチンときたが、それでも母の言いたいことは、至極まっとうだと思わざるを得ない。
 詩穂には可哀想だが、綾瀬喜十郎という“兄”は、泣きじゃくる実の妹をほったらかしてデートを続けるような男ではない。逆に、そういう他人に対する優しさや思いやりなら、人一倍持ち合わせているはずだ。
―だから、今回の彼のその行動自体は、“妹”たちが持つ“兄としての喜十郎”のイメージに何ら矛盾するものではない。それは、詩穂とて(冷静になってみれば)納得できる。
 そんな喜十郎の人品骨柄に、一番惹かれていたのが、他でもない桜だったはずなのだ。

「なのにどうして、あなたはそんなに怒り狂っているの? 母さん全然納得いかないんだけど」
「―だから、私は怒ってなんか……」
「答えられない理由があるの?」

 桜としても、その当然すぎる疑問に答えたい。 
 もし、この場に居合わせたのが“妹”たちだけだったら、桜はアッサリ泥を吐いたろう。
 喜十郎が、昼休みに見せた、あの狼狽。
 この家から追い出される事を異常なほど恐れていた、彼の態度。
 それを逆手に取り、無理やり約束させた『協力』。
 そんな約束をしてまで、実家に帰ることを拒んだ“兄”が、……実の妹のためとはいえ、そんなやすやすと、実家に帰宅するだろうか?
 その疑問が、凄まじいばかりの嫌な予感を呼び起こす。
―もしかしたら、お兄様はもう、帰って来ないかも知れない。
 そういう思いが、桜をイラつかせる。


408:淫獣の群れ(その8)
07/10/17 13:46:33 hcXIdfW8

 だが、母親のいるこの場でだけは、何ら口を開くことは出来ない。
 もし彼女が、いま自分自身が抱いている疑問を口に出すためには、必ず触れざるを得ない話柄があるからだ。
 つまり、喜十郎と“妹”たち全員の、ただれた肉体関係。
 そして、それを母親に知られるという事は……。

「お母様。何を勘違いしているのか知らないけど、私はただ、詩穂を独りで置いてけぼりにした、お兄様の態度が気に食わないだけ」
―それ以外に他意はない。そう言い張る長女を、じっと、見透かすような眼差しで見つめると、やがて母は諦めたように溜め息を吐いた。
 こうなってしまうと、我が子ながら、テコでも桜は自分の意見を曲げなくなってしまう。―母だけに、道子はそれを十分理解していたからだ。

「まあいいわ。じゃあ、そういう事にしてあげる。―でもいい機会だから、この際あなたたちには、ハッキリ言っておくわ」
 道子は、さっきまで酔っ払っていたとは到底思えぬ、凛とした態度で娘たちを見回すと、
「あなたたちが喜十郎君を“兄”として、どれほど慕っているか。……それはよく分かったわ。彼を選んだ母さんたちも、実際それはそれで鼻が高い思いよ。でもこれ以上、―彼に甘えるのはもうおよしなさい」

(え?)
 という表情で、母を見る詩穂と比奈。
 二人には、母が何を言いたいのか見当がつかないようだが、他の“妹”たちは違う。彼女たちが、母の帰宅を恐れたのは、まさしく今から彼女が言わんとする、その言葉を聞くのを、是が非でも回避したかったからだ。

「喜十郎君は、もうあなたたちの単なる従兄妹じゃないわ。もうあなたたちのお兄さんなの。例え義理とはいえ、兄と妹が関係を結ぶようなことは、断じてあってはならないの。いわんや彼が……この伝統ある綾瀬本家の惣領であるなら、特にね」



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