キモ姉&キモウト小説を書こう!at EROPARO
キモ姉&キモウト小説を書こう! - 暇つぶし2ch177:暇つぶし ◆8VZdN8eVUI
07/10/05 03:58:41 3Ycx52Hk
「キモ姉妹のSM談義が弟たちの間で行なわれたようね」
「お前はSとMどっち?」
「馬鹿ね。私はいつでもどこでも、どちらにでもチェンジ可能よ」
「さすが売女」
「…って、何で貴様がここにいる。『過去』スレ」
「知れたこと。ここは私のスレだからよ」
「とうとう頭まで病んでしまったか」
「↑」
「記号で喋るな」
「上を見なさいってことよ」
「上?」
「なんて書いてある?」
「え?『確かに音夢のキモウトSSとさくらの嫉妬SSは二次創作サイトでもよく見かけるな』だけど?」
「GIFT使っちゃえばよかった!!」
「いや、作品違うから。あと意味もわかんない」
「そうじゃなくて、もっと上よ。もっともっと」
「もっと?私の『キモ姉&キモウト小説を書こう!』とか?」
「それよ」
「それがどうかしたの」
「あんた馬鹿?まだわからないの?それこそが私がここにいる理由じゃない」
「はぁ?私の名前にケチつけたいってこと?」
「『私』の名前?違うわよ。あれは、私の名前よ」
「!!な、何言ってんのよガキ!あれは本スレである私の」
「証拠は?」
「しょ、証拠?」
「そう、証拠。あれがお前の名前っていう根拠は?」
「根拠も何もあれは私のれっきとした名前よ!!」
「でも、お前…ないじゃない」
「何が」
「part番号が」
「―!!」
「だから、ここは私のスレ『かもしれない』ってわけ。まだまだ死ぬわけにはいかないわ」
「で、でも!番号はもともとあんたが捨てたんじゃない!」 「Nice Work.」
「話を逸らすな!」
「逸らしてないわよ。だってこれは前スレで、お兄ちゃんが私に送ってくれたGJだもの」
「自演乙」
「自演じゃないのよ、これが。ま、だから復活したんだしね」
「それじゃあ、最後の方に書き込みされたあんたの遺書みたいなのは?次スレとして生き返る、みたいな」
「ああ、あれ。ただのお兄ちゃんの悪ふざけよ」
「…マジ?」
「マジよ」
「自重してよ…」
「…そんなにあたしがいると迷惑?」
「迷惑じゃないわ。邪魔なの。排除したいくらいに」
「そう、わかったわ」
「え!消えてくれるの?死んでくれるの?」
「…条件がある」
「条件?まぁ、いいわよ。キモウトが消えてくれるのなら多少のことは我慢してあげる」
「二言はないわね?できなかったら、私もここにいるから」
「いいわ。で、何よ」
「―『未開封』のSch〇ol daysかSum〇er days」
「――!!?」
「これが条件よ」
「ま、まさか…そんな。…汚い…」
「できないの?」
「できない…。だ、だって、たかだか30分のアニメじゃない!!」
「じゃあ、私はここにいるから」
「いやぁぁぁぁああああああ!!」
「あーはっはっはっは」

178:名無しさん@ピンキー
07/10/05 13:09:43 oXVF9EA4
GJ!
キモウトが帰ってきた!


179:名無しさん@ピンキー
07/10/05 13:12:11 dYhpaaHz
今年のお正月のお願いはこれにしよう
「可愛いキモウトが出来ますように」

180:名無しさん@ピンキー
07/10/05 15:59:26 afzz7zbm
なんで古いスレが姉じゃないの?

181:名無しさん@ピンキー
07/10/05 17:42:53 3Ycx52Hk
>>180
前スレを見てくれればわかると思います

182:名無しさん@ピンキー
07/10/06 03:18:25 0GT4CRN5
さて・・・スレ終盤になったら、【あなたたち二人が知らないだけで実はまだ姉がいました】展開になるのかなwww

183:名無しさん@ピンキー
07/10/06 10:33:42 lm7v1CYx
つ従姉妹登場

184:名無しさん@ピンキー
07/10/06 13:03:51 QTjLgNFn
まさしくカオス

185:名無しさん@ピンキー
07/10/06 13:40:18 3ejBB0zo
結構面白いって思ってるの俺だけ?

186:このスレ立てた人
07/10/06 14:18:46 WKbjCDsA
遠回しに責められてたりします?

187:名無しさん@ピンキー
07/10/06 15:23:13 ywwap3Bw
いいネタを提供したと思って、おk

188:名無しさん@ピンキー
07/10/06 18:47:32 WKbjCDsA
ありがとうございます、そう言っていただけるとうれしいで

189:名無しさん@ピンキー
07/10/06 19:20:45 lm7v1CYx
>188
…このレスを最後に>1は消えてしまった
今頃キモ姉かキモウトに監禁されているのか…?
それともどちらかの嫉妬の炎に焼かれてしまったか…?

『…>1…』

190:名無しさん@ピンキー
07/10/07 02:17:04 dTGYn3b6
>>189
南郷さん乙。>>1ならきっと元気に麻雀でも打ってるよ。
ていうか、アカギほど修羅場系作品の主人公に向かない男もそうはおるまいw

191:名無しさん@ピンキー
07/10/07 02:19:16 OV6V7ZfE
もう死にたい

192:名無しさん@ピンキー
07/10/07 06:59:23 IfwWh49J
>179
今年?タイムマシンでも持っているのか

193:名無しさん@ピンキー
07/10/07 10:38:48 WrsJRcEa
休日、俺はソファーに座って新聞を読むの楽しみにしている。
「ねぇ」
なにやら、下着とTシャツというラフ過ぎる格好の従姉の声が聞こえる。
(まあ無視だな)
「おーい」
(新聞新聞っと)
「えい」
ぎゅっ。
「うりうり」
「頭に胸押し付けんな」
「やだ」
(はぁ・・・)
「ほれほれ」
(ブラしてないのかよ・・・)
「・・・襲うぞ?」
「襲ってくれるの?」
「いやそうじゃないだろ・・・」
「じゃあお姉さんから襲って、あ・げ・る」

ていう姉がほしいです安西先生

194:名無しさん@ピンキー
07/10/07 13:53:03 Ayp4nkW/
>>193
安西先生「いいから早く続きを書きなさい」

195:名無しさん@ピンキー
07/10/07 15:53:14 WrsJRcEa
>>193の続き?

「頼むから、俺の前でも恥じらいを持ってくれ姉さん」
「うふふ、愛は恥じらいをも超越するのよ?」
(何言ってんだよ・・・)
「その通りですわ愛しのお兄様」
(もうどうにでもしてくれ)
「その前に私の愛しのお兄様から離れてくださいな、我がライバルの姉君様」
「い・や・よ」
「お兄様の寵愛を受けれるのは私だけですわ」
(いや、それも違うだろ)
(というかだ、従妹は下着とYシャツって狙いすぎだ・・・)
「ふふん、私の爆発ナイスボディは負けんよ妹よ」
「私だって負ける気はありません」
(たすけて・・・)


以下次回に

196:名無しさん@ピンキー
07/10/07 17:09:52 iVxXBThV
キモ姉妹の手を逃れたオレを待っていたのは、また地獄だった。

理性の破壊の後に住み着いた愛欲と暴力。
痴話げんかが生み出したソドムの街。

ツンデレとヤンデレ、ハーレムと孕ませを
コンクリートミキサーにかけてブチまけた、
ここは現代日本のゴモラ。

 次回「幼なじみ」。

今度もオレと地獄に付き合ってもらう

197:名無しさん@ピンキー
07/10/07 17:33:07 MyGR5bJh
食う姉妹と食われる男、そのおこぼれを狙う幼なじみ。

牙を持たぬ男は生きてゆかれぬ独占欲の家。
あらゆるキモ姉妹が欲情する性欲の家。

ここは近親両親が産み落としたキモ姉妹のソドムの市。
オレの身体に染みついた血縁の臭いに惹かれて、
危険な姉妹らが集まってくる。

 次回「出会い」。

オレが飲むキモ姉妹特製のコーヒーは、怖い。

198:名無しさん@ピンキー
07/10/07 18:01:51 Kcbf2Lk2
>>197
怖いコーヒー…キモ姉妹のいろんな液体がたくさん混ざりすぎて、
コーヒーの味がしなかったりするのか

199:名無しさん@ピンキー
07/10/07 18:26:21 todcqn6A
なんか・・・このままだと過疎スレになりそうな悪寒

200:名無しさん@ピンキー
07/10/07 18:42:38 LDIMF40k
嫉妬スレと統合したら?

201:名無しさん@ピンキー
07/10/07 19:35:47 todcqn6A
>>200
ループ。過去ログで現状維持だと結論が出た

202:名無しさん@ピンキー
07/10/07 20:51:18 5wcHh7Qu
まずいな・・・もう10日間近くどうでもいいレスが続いているじゃないか・・・。

203:名無しさん@ピンキー
07/10/07 21:31:49 xHpEIjuw
自分で書こうともせずにどうでもいいレスばかりとは

204:名無しさん@ピンキー
07/10/07 21:38:00 zojzneOj
でも最近の妹スレや姉スレよりマシな気がするぞ

205:名無しさん@ピンキー
07/10/07 21:46:05 L6CkfNTo
こんな時に綾がいれば…

206:名無しさん@ピンキー
07/10/07 23:09:31 N3CTmQg8
キモウトに背後から玉袋を掴まれながら「あの女、誰」と聞かれたい俺は間違いなく異端

207:名無しさん@ピンキー
07/10/07 23:36:58 rAfU03od
>>206
YOU書いChinaYO

208:名無しさん@ピンキー
07/10/07 23:48:58 nOVHr21p
>>206
鳩「昨晩はお楽しみでしたね~」

209:名無しさん@ピンキー
07/10/08 00:17:17 1HW725Oa
>>198
想像してみろ^^
汗と愛液と尿・・・・ぉぇえええ(;´Д`)さすがにそこまでは

210:名無しさん@ピンキー
07/10/08 00:27:56 pdSlabBP
尿や汗ならともかく愛液だけなら飲むかも試練

211:完結できない人
07/10/08 00:40:04 xbPFpeOT
H×Hの人が働き始めましたし・・・・・・
近いうちに、ちょっとなんか頑張ります

212:名無しさん@ピンキー
07/10/08 02:59:58 2fE4ycBw
お姉ちゃんの独占欲のために防御の陣をひくが、
血縁の光は黒歴史の再現をしようとした。
泥棒猫との戦の執念を止めるために婚姻届の使い方があるはずだ。
僕は心を決めた。

次回、「鮮血の秋」。風はまたそよぐ。

213:名無しさん@ピンキー
07/10/08 04:03:48 9rESTEl8
保守

214:コピペ改変
07/10/08 04:33:44 DDiq9cHE
つまんないけど保守がてらに改変。元ネタわかるやついたら凄い


弟「急に寒くなったよなぁ」
姉「こんなときこそ甘い物で元気を補給すべきですよ」
弟「さっき全部食べちゃったって騒いでただろ」
姉「大丈夫です。こんなこともあろうかと、とー君のポケットにチョコを仕込んでおきました!」
弟「……」
姉「どうかしましたか?」
弟「……チョコって溶けるんだよな」
姉「素敵ですよね」
弟「ポケットの中が凄いことになってるみたいなんだが」
姉「指がチョコフォンデュですね」
弟「気付かなかった自分も悔しいけど、絶対シミが残るだろ……どうするんだこれ」
姉「あ、えっと、その、すいません!」
弟「まったく、責任は取ってくれよな」
姉「は、はいっ、ちゃんと吸いますから!」
弟「……は?」
姉「ちゃ、ちゃんと吸いますから、怒らないでください……」
姉「いや俺はそういうアレなことを言ってるわけでなく洗濯とかそういう、こら聞けよ!」
姉「んん……生地が厚くて吸いづらいです……」
弟「いやそこは真正面過ぎる! 誰か来たらどうs」
妹「ちょっとお兄ちゃんたち何してんの!?」
弟「!?」
妹「……とー兄。これは一体どういうこと?」
姉「うっ…ううっ……とー君が、変なとこで溶かしたチョコを一滴残さず吸えって……」
弟「なっ!? 冤罪だぞ! 俺はそんなこt」
妹「……っの変態っ!!」
弟「ぐぇ!?」

215:コピペ改変
07/10/08 04:36:23 DDiq9cHE
妹「……いい? 性のあり方は人それぞれって言っても常識というものがね」
弟「……」
妹「白目剥いてないでちゃんと正座して聞きなさい!」
弟(無茶な……)
姉「ひそひそ(良かったですね、蹴ってもらえて、叱ってもらえて。嬉しいですよね?)」
弟「……める姉……」
姉「ひそひそ(大丈夫です、チョコを溶かした罰は後でちゃんと手抜かりなく執行します)」
弟「……!」
妹「ほらめる姉、もう大丈夫だからこっち来て」
姉「ううっ……しょっぱいのが、とー君の汗なのか私の涙なのかわかりません……」
妹「可哀想に……ったくこの変態め、変態めっ!」
弟「うぐっ! うぼぁ!」
妹「だから男女七歳にして席を同じゅうせず、と言ってね……ほら、ちゃんと目を見て!」
弟(勘弁してくれ……)
姉(ニヤニヤ…)

216:名無しさん@ピンキー
07/10/08 06:39:08 pdSlabBP
悪いがわりとわけがわからん

217:名無しさん@ピンキー
07/10/08 14:03:09 DDiq9cHE
すまん。まあ保守だし勘弁してスルーしてくれ

218:名無しさん@ピンキー
07/10/08 14:06:03 Fduv2+kK
今はおもしろ系が読みたい気分!

219:名無しさん@ピンキー
07/10/08 20:54:57 JYYV0ESn
>>214
いじめスレのか
なぜアイビスのを持ってこなかった

220:名無しさん@ピンキー
07/10/08 22:35:29 DqxOLIWb
まとめサイト更新されてない・・・

221:名無しさん@ピンキー
07/10/08 23:31:32 kU/oZUJ3
もう更新されないんじゃないか?

222:名無しさん@ピンキー
07/10/08 23:57:03 7zRUYWg0
>>196
>>197
ボトムズwww
>>221
そういうことはおもってても言うもんじゃない

223:名無しさん@ピンキー
07/10/09 00:55:57 6Qb0SGb7
>>214
知ってる奴いたー!!
だってアイビスのやつどう頑張ってもキモ姉キモウトにならんから…
Tシャツいっぱいの汗吸わせるドSなやつ持ってこようかと思ったら過去スレ見れなくて泣く泣く…

224:時給650円
07/10/09 04:00:51 vvg88tHe
投下します。

225:淫獣の群れ
07/10/09 04:02:48 vvg88tHe

 寿司が食いたい。
 綾瀬喜十郎は、風呂場の、もうもうたる湯気の中で、何故か唐突にそう思った。

 回る寿司でもいい。
 回らない寿司なら、なおいい。
 かねは、ある。
 先週、こっそり馬で当てた二万が、まだそのまま残っている。
 この金の事を妹たちに知らせる気は当然、無い。奴らがその金の存在を知れば、たちまちの内に没収されてしまうからだ。
“うちの家計はいま、苦しいんですのよっ”
 の一言で。
 幸い、晩飯もまだだ。腹も減っている。
 そう思ったら、矢も盾もたまらず食べたくなってきた。

―はまち、うなぎ、たい、甘えび、納豆巻き。赤だしも飲みてえなぁ……。

 喜十郎は、洗面器で湯舟から、その熱い湯を自分の顎にぶちまけた。
 泡はもう残っていない。
 ヒゲの剃り跡がちりちりするが、彼は気にせず、湯船に身を沈めた。
 熱めに沸かし直した湯が心地いい。
 髪は洗った。
 身体も洗った。
 ヒゲも剃った。
 後は身体をあっためて、あがるだけだ。
 寿司食いてえなぁ
 彼は、心中に再び、そう呟いた。

 しかし、彼は知っている。
 結局、自分は寿司を食べに行く事は出来ないだろう、という事を。
 この我が家に於いて、自分に、そんな自由は与えられていないという事を。
 すなわち―。
「―お兄様、お背中を流させて頂きます」
 扉がからりと開くと、胸元をかろうじてバスタオルで隠した、全裸同然の少女たちが風呂場に入って来た。
 一人ではない。
 五人だ。
 年齢はまちまちだが、そのいずれもが美しい。もしくは美しく育つであろう、そう思わせる美少女たちであった。
 彼の―喜十郎の妹たちであった。


226:淫獣の群れ
07/10/09 04:04:26 vvg88tHe

 無論、彼は、この風呂場への闖入に、何の許可も与えていない。
 しかし、この少女たちは、なんのためらいも無く、まるで当然の義務を果たす者のように、兄の眼前に肌を晒し、兄が浸かる湯船から湯をすくい、身体に浴びる。
 それでも、少女たちの一人は、兄の一目瞭然な不機嫌さに、やや怯えた様子を見せる。
「あの、お兄ちゃま、やっぱりその、勝手に入ってきて……怒ってる?」

 喜十郎は、半ば諦めたように苦笑いを浮かべ、泣きそうになっている妹の一人に応えてやった。
「……とにかく、取りあえず湯に入れ。風邪を引く」
「あっ、はいっ!」
 彼女たちの中に一種、ほっとした空気が流れたようだ。
 基本的には、いかに傍若無人な彼女たちとはいえ、妹たちは妹たちで、やはり兄の機嫌は気にしていたのだろう。
「それでは失礼いたします」
 そのまま彼女たちは、無駄に広い湯舟に、次々にその肢体を沈め、年頃の少女らしい雑談を交わし始めた。

 喜十郎は、そんな妹たちの様子を見て再び溜め息をついた。
「―桜(さくら)、ちょっといいか」
「はい?」
 彼女たちの中でも一際長身の少女が、その声に振り向く。
 ツインテール、というのだろうか。腰まで伸びた栗色の長髪を左右に分け、両方の肩口で結わえ、垂らしている。そんな子供っぽい髪型と、大人びた相貌が生み出すアンバランスさが、彼女に絶大な魅力を与える効果をなしていた。
 その頬が淡く桃色に染まっているのは、決して熱めの湯のせいだけではない。
 喜十郎の声音は、そんな彼女の期待には、まず添わないであろう険しさを含んだものであったが、―桜と呼ばれた彼女の表情には、それを残念がる気配は微塵も無く、ただ、彼に声をかけられた、という事実が嬉しくてたまらないようであった。

「昨日言ったはずだな。今後の俺の入浴には、介添えは一切無用だ、と」
「ええ」
「なら、何故ここにいる」
 湯舟の隅で、自らの背を壁にして他の妹たちに聞こえないように一応、気を遣う。
 この質問を、何故この場にいる妹たち全員ではなく、桜個人に問うのかと言えば、この桜こそが、綾瀬家の六人姉妹の長姉であり、どんな時でも常に彼女たちの音頭を取る役割を担っているからだ。

「本当に分からないの? ―全く、お兄様ったら……」


227:淫獣の群れ
07/10/09 04:05:23 vvg88tHe

 まただ。
 桜から“お兄様”と呼ばれるたびに、喜十郎は、何とも言えないむず痒さのような感覚を背中に感じる。
 実際、喜十郎と桜は、半年しか誕生日が離れておらず、学校でも共に同じ教室で、机を並べて授業を受けている。だから、そんな桜が自分の事を“兄”呼ばわりするのは、喜十郎にとって、かなり奇異に感じられる行為だった。
 その感覚は、無論、今でも変わっていない。

 湯気の中でうつむいたその美貌に拡がったのは、嘲笑、とでも言うべき表情だった。
「簡単よ、お兄様に理解してもらうためよ」
「理解?」

 桜は自分の唇を、れろり、と舐めた。
 その真っ赤な舌と、唇の端からこぼれ落ちる一筋の唾液が、たまらなくいやらしい。

 もう、さっきまでのひそひそ声ではない、風呂場にいる全員に聞かせる声だった。
 いまの桜は、まぎれも無い、ここにいる妹たち全員の利益代表として、兄と交渉しようとしているようだった。
「お兄様は、これでも由緒正しき綾瀬家の時期当主。常に身だしなみには気を遣ってくれないと、私たちの恥にもなるわ」
 音すら立てずに桜が湯舟から立ち上がる。
 その背後には、さっきまで雑談していたはずの四人の妹たちまでが、無言でこっちを見ていた。桜と同じく、年齢に似合わぬ潤んだ光をその目に宿らせて。
「だから私たちが、お兄様を綺麗にするの。私たちに出来る範囲でね」
 喜十郎の両頬に手を添え、熱のこもった目線で彼を見下ろし、桜は兄に訴える。

「すまないが、俺はそこまでガキってわけじゃない。自分の身体くらい自分で洗える」
 喜十郎は、何かから逃れるように桜の手を払うと、湯舟から立ち上がった。
「今日だってもう、洗うべきところは洗い終わったよ。当然、背中もな」
 捨て台詞のように言い放つと、振り向きもせずに彼は湯舟から出た。―はずだった。


228:淫獣の群れ
07/10/09 04:07:49 vvg88tHe

 湯舟の敷居をまたいだ瞬間、喜十郎はひっくり返って湯舟に落ちた。
 彼の重心が片足に移った瞬間、桜が喜十郎の手首を引っ張ったのだ。
「あらあら」
 兄を湯舟に沈めてなお、涼しい顔で桜は妹たちを振り返る。
「私には洗い終わってるようには見えないのだけれども……みんな、どう思う?」

「そうですわねぇ。確かに、兄君さまのお背中は、まだまだ垢が残っておられるようにお見受け致しますわ」
 ポニーテールにくくってなお、桜と同じく、ほとんど腰まで隠れる長髪の少女―春菜(はるな)が、長姉の問いに歌うように答える。

「うん。ぴっかぴかに洗えば、お兄ちゃまはもっともっと綺麗になるって詩穂も思うなっ」
 肩のあたりでこざっぱりと切り揃えられたショートカットの少女―詩穂が、ポニーテールの姉に調子を合わせる。

「くしししし、うん。ヒナもヒナもそう思うっ」
 五人の妹たちの中で一番幼い少女、いや幼女か?―比奈(ひな)までもが、きらきらと輝く瞳を兄に向けていた。さっきまで遊んでいた船の玩具には、もはや一片の興味も残っていないようだ。

「大丈夫ですか兄上様。お湯は飲まれてはおられませんか?」
 桜や春菜同様、腰まで伸びた長髪の少女―真理(まり)が、喜十郎に寄り添い、気遣う。もっとも、彼女の髪型はポニーテールではなく、その圧倒的な量の黒髪を三つ編みにまとめている。
「ああ、ありがとう。真理」
 喜十郎にとって姉妹の中では、この真理こそが一番気の置けない存在であった。
「でも―」
 ただし、
「兄上様のお体で洗い残しがあるのは、どうやらお背中だけでは無さそうですわ」
「真理……!」
 一度スイッチが入ってしまえば、この真理という少女は、姉妹の中で一番の残忍性を発揮する、サディスティンに変貌するという欠点があったが……。


229:淫獣の群れ
07/10/09 04:09:17 vvg88tHe

「五対一。民主主義の勝利ね」

 いつの間にか彼の背後に忍び寄った桜に反応して、思わず立ち上がった喜十郎の背を、春菜が羽交い絞めにする。
「くっ、放せ春菜っ!」
「みなさん、用意はよろしいですかっ?」
「いつでもいいわよっ」
 妹たち全員の位置を確認するように、桜が素早く視線を走らせ、そのまま叫ぶ。
 そして、その声に呼応するように少女たちが各々、配置につく。
 まるで手馴れた作業をするように、その動きには迷いが無い。

 詩穂は喜十郎の右手を。
 真理は喜十郎の左手を。
 比奈は喜十郎の股間を。
 春菜は喜十郎の背中を。
 そして桜は、そのまま喜十郎の正面に自らの身体を預け、その豊満な乳房を押し付ける。

 いかに男女に体力差があったとしても、五対一では所詮、勝負にはならない。
 喜十郎は、全身を妹たちの肉の檻に封じられ、微動だに出来なかった。
「放せっ! 放せっ! 放せぇぇっ!!」
「いやですわ」
 かぷり。
「―っ!!」
 春菜が、背後から彼の耳朶を甘噛みする。あたかも捕らえた獲物の悲鳴を塞ぐかのように。さらに次の瞬間、桜が、だらしなく開けた喜十郎の唇を文字通り塞いでしまう。無論、花びらのような自らの唇で、である。

「ああ~~~っ、桜ちゃんずるぅいっっ! 詩穂もお兄ちゃまとキスしたいぃぃ~~~」
「ふふふ……詩穂ちゃんもあまり、がっつかないで下さいまし。兄上様のお体がどこでも美味なのは、あなたもご存知でしょう?」
 そう言うと、真理は兄の左乳首に舌を這わせる。
「―っっっ!!」
 もとより口を塞がれた兄の悲鳴は、真理のいやらしい囁きと桜のキス、さらには彼の耳朶にしゃぶりつく春菜の口舌音によって、簡単にかき消されてしまう。
「んふふふ……ほんと、美味しゅうございます、兄上様……」
「ああっ! じゃあ、じゃあ、詩穂もぉ!」
 その上で、今度は詩穂の舌が、彼の右乳首に襲い掛かる。
「んぐっ! ふぐっ! んんんんっ!!」


230:淫獣の群れ
07/10/09 04:11:17 vvg88tHe

 二つの乳首と耳朶、さらに舌をしゃぶり尽くす情熱的な接吻。
 妹たちが風呂場に闖入してきた時点で、例えこうなる事は予想していたとしても、やはり喜十郎の陽根は、硬く膨れ上がってしまった。―最も幼い末の妹、比奈の眼前で。
「くししし。それじゃあ、おにいたま、一番気持ちのいいところ、ヒナが責めてあげるね」
 何度、快楽の中に身を浸そうとも、この瞬間だけは―この屈辱だけは慣れる事が出来ない。少女どころか幼女と呼ぶに相応しい末の妹に、自分のペニスを弄ばれる、この瞬間だけは。

 いや、比奈だけではない。
 この少女たちは、自分を責める上で、まだ全然、本気になっていないのだ。
 何度も何度も彼女たちに、この身を嬲りまわされていた喜十郎には分かる。
 その証拠に―。
「ねえ桜さん、今日の“ノルマ”はどのくらいになさいます?」
 耳朶から口を放した春菜の言葉に、桜も応えるように兄の舌を解放した。
「そうねえ、……二時間ってところかしら」

 にっ、にじかんっ!?
 喜十郎は、真っ青になってふるふる、ふるふると首を振る。
 そんな彼を見て、桜は慈しむような、とびっきりの笑顔を浮かべる。
 そして、自由になった喜十郎の唇に、今度は右側から詩穂が跳びつき、深く己の舌を絡ませる。

 ノルマとは、即ち妹たちが兄を責める時間的・回数的条件である。
 六人の妹たちが常時身辺に付きまとう彼にとって、時間・回数に制限を定めない性交渉は、彼の日常生活に支障をきたす可能性があり、それゆえに彼女たちは“ノルマ”という形で、互いに歯止めを掛け合っていた。
 しかし、やがて“ノルマ”は変質し、いまや妹たちが集団で兄を弄ぶ際の、単なる指針と化してしまっていた。

「二時間は長いですわ、桜ちゃん。せめて一時間で切り上げないと、折角の深雪(みゆき)ちゃんのお料理が冷めてしまいますわ」
「あっ、それ確かにまずいよぉ。深雪ちゃんって普段やさしいけど、怒ったらすっごく怖いんだよぉ。ヒナ、一度怒られたことあったもん」


231:淫獣の群れ
07/10/09 04:12:15 vvg88tHe

 深雪とは、詩穂の姉にして真理の妹。つまり、この場にいない六人目の妹のことである。
 現在、彼女は厨房で家族全員分の夕食を調理している最中であり、十代前半にして、己の料理の味が落ちる行為を何よりも嫌う、こだわりの料理人であった。
 もっともそれは、喜十郎に関する好意の量が、他の姉妹に比較して少ないという意味では決してない。
 彼の身体を愛撫するのと同次元で、彼に食べさせる愛情料理に精魂を傾ける、というだけの話であり、要は他の姉妹たちと、その人間的本質は何ら変わらない少女なのだ。

「では桜さん、今回の“ノルマ”は一時間ということで宜しゅうございますか?」
「……仕方ないわねえ。不本意だけど今日のところはこれで勘弁してあげる」
「良かったですわねえ兄君さま。桜さんの優しさに、きちんと礼を言わねばなりませんよ」
 そう言いながら春菜の指が、背後から喜十郎の肛門に、ずぶりと侵入する。
「―ぃぃぃぃっっ!!」
 思わず詩穂から、口をもぎ離して悲鳴をあげる喜十郎。
「ああっ! お兄ちゃまったら、ひどいなぁ、もう!」
 温和な詩穂にしてもムッとしたのか、右乳首に爪を立てる。
「そんなひどいお兄ちゃまには、お仕置きだよっ」
「ぁぁぁっ!! いたいいたい詩穂ぉっ!!」
「痛いの? 痛いのはどこなの、お兄ちゃまっ?」
「むねがっ、むねがいたいよぉっ!」
「胸じゃないでしょっ!? なんで教えた通りに言えないの、お兄ちゃまっ!!」
 詩穂が、乳首もちぎれよと言わんばかりに、さらに爪に力を込める。
「あああああおっぱいれすっ!! いたいのはおっぱいれすぅっ!!」

「あら詩穂ちゃん、もう兄上様にお仕置きするのですか?」
 半分うっとりしながら彼の左乳首を舐めていた真理も、
「仕方ないですわねえ、もう少し兄君さまで楽しみたかったんですけど……」
 彼の肛門をほじくり返しながら、背骨に舌を這わせていた春菜も、
「ま、いいじゃないの。これはこれで楽しいんだから。ね、お兄様?」
 詩穂の唇が離れた後の、喜十郎の右乳首を責めていた桜も、
「くしししし、わるく思わないでね、おにいたま。ヒナはただ、くーきを読んだだけなんだからね」
 亀頭をちろちろと舐めていた比奈も、

 一斉に、喜十郎の身体に歯と爪を立て始めた。

「~~~~~~~~~っっっ!!!!」


232:時給650円
07/10/09 04:13:21 vvg88tHe
以上です。

233:名無しさん@ピンキー
07/10/09 04:22:07 wSfFHZM4
GJ!
そして…続きを激しく希望する

234:名無しさん@ピンキー
07/10/09 04:42:55 Ah2McULE
激しく寸止めktkrwwwwwwworz

235:名無しさん@ピンキー
07/10/09 04:56:28 9mhMeJAI
シスプ…

いや何でもない
GJ

236:名無しさん@ピンキー
07/10/09 09:26:22 0PrjCNTz
あーりーあーなーのー

237:名無しさん@ピンキー
07/10/09 21:25:24 jKWCCS0P
逆レイプ属性も兼ねそえているおれは股間がLOVEDESTINYになった

238:名無しさん@ピンキー
07/10/09 22:13:38 sLbZPYqy
>>232
GJ!!!!ドMが多そうなこのスレに相応しい作品が!続きを楽しみに待ってます。

239:名無しさん@ピンキー
07/10/09 22:14:42 Hyz70ZYG
シスプリスレの方が過疎ってるから
そっちの方に投下してあげた方が…

240:名無しさん@ピンキー
07/10/09 22:20:38 bbaYJed/
シスプリとは別物だろう・・

241:名無しさん@ピンキー
07/10/09 22:34:41 V8j+kiYM
保管庫確認してて思ったが、もう続きは投下されないのかもしれないな・・・
って作品多いな・・・

242:名無しさん@ピンキー
07/10/09 22:58:28 ri0ST+kY
保管庫がかなり前から更新してないみたいだから、そう感じるんじゃない?

243:名無しさん@ピンキー
07/10/10 01:38:54 2Q7ZBWrw
>>238
ヤンデレ好きはみんなドMも超ドMだろうよwwww

244:時給650円
07/10/10 03:55:03 RRFd/j54
投稿します。

245:陰獣の群れ(その2)
07/10/10 03:58:27 RRFd/j54

 綾瀬家は、辿ればそれこそ平安朝まで行き着くという堂上公卿の一族で、元は五摂家の一つである鷹司家の一門であったという。
 戦前・戦中こそ、京都以来の名門華族として鳴らしたものであったが、戦後のGHQによる華族階級解体に伴って、他の多くの華族たち同様、没落は免れなかった。
―太宰治の「斜陽」のパターンである。

 それはいい。
 今では、この綾瀬家が旧華族であるという事実すら、一族以外に知る者はほとんどおらず、現在の経済的状況からして、普通の中流家庭と何ら変わることなき生活水準を保持するだけで精一杯なのだが、まあ、それはいいとしよう。
 そこのところは、養子として来るにあたり、喜十郎も期待はしていなかった。
 少女マンガやラノベじゃねえんだ。
 伝統ある名家が、その歴史に見合うだけの資産家である可能性など、ほぼありえない。
 私立校の“理事長の孫”とやらが、生徒会長として校長以上の権力を握るのと同じくらいに、ありえない。
 現実っていうのは寂しいもんだ。そんな簡単にドラマチックな事態にはならねえ。
 お兄様、兄君さま、兄上様―せいぜい、兄貴をそんな特殊な言い方で呼ぶくらいが関の山だ。
 喜十郎は少なくともそう思っていた。

 彼が綾瀬家に来たのは、娘ばかり六人という家族構成に、当主の和彦が家名存続の危機を覚えたからだが、それでも、娘の一人を娶わせて家を継がせるという―いわゆる婿養子の形をとったわけではない。
 娘たちはいずれ、それぞれ自分で自分の想い人を見つけ、この家を去ってゆくだろう。
 養子としてやってきた余所者に、許婚者として将来を縛られては、娘たち自身も嫌だろうし、ましてやそれが家名存続という、現代人にはあまりにも無意味な事態によるものならば、なおのこと不憫だ。
 娘たちの父は、そう思ったのだろう。
 で、彼女らの従兄弟たる喜十郎に、白羽の矢が立ったわけだ。
 
 しかし、喜十郎にとってこれは渡りに船、と言ったところだった。
 彼は個人的に、これ以上、実家に居られない理由があったからだ。
 もっとも、彼が“ワケあり”で、実家から逃げ出してきた、その理由は、彼の家族……つまり両親、さらには実妹である可苗(かなえ)を含めても、知る者は誰もいない。
 だから、喜十郎がこの綾瀬本家に籍と居を移すと聞かされて、真っ先に難色―というより号泣を伴った抗議―を示したのは、この実妹であった。


246:陰獣の群れ(その2)
07/10/10 04:02:16 RRFd/j54
―がりっ、がり、がりっ!
「~~~~~~~っっっっ!!!!」

 詩穂の爪に負けじと、桜・春菜・真理・比奈ら四人の少女たちも、眼前の少年の肉体に、次々と苦痛を与えてゆく。
 或いは噛み、吸い、つねり、引っ掻き、握り締める。
 いまや喜十郎の全身は、妹たちが残した無数の歯型、爪痕、キスマーク、などによって彩られていた。

 春菜は、彼のうなじに歯を立てながら、三本目の指を彼の肛門に挿入し、腸液にまみれた内臓器官をこねくり回す。
 比奈は、ペニスを挟んで桜と向かい合い、タイミングを合わせて亀頭や竿に歯を立てる。その様子はまるで、姉妹二人が仲良く菓子を分け合っているようにも見える。
 桜は、末妹と仲良く兄のペニスに歯を立て合いながら、彼の睾丸を握り締め、ときに優しく、ときに激しく、断続的な激痛を彼の脳髄に送り続ける。
 真理は、彼の左乳首を食い千切らんばかりに吸い立て、また、兄の背後の回した左手の指を、いきなり彼のアナルに突き立て、喜十郎の肩越しに春菜と笑みを交し合う。
 そして詩穂は、喜十郎と情熱的な口付けを交わしながらも、時折その舌に前歯を立て、時に奥歯で噛みしめる。さらに春菜の胸と喜十郎の背の隙間に右手を差し込み、その爪で容赦なく白いラインを量産した。

―地獄だった。
 いま自分の神経から脳に伝達されている情報が苦痛なのか、はたまた快感なのか、もう喜十郎には分からなくなっていた。
(いや、この苦痛こそが快感なのか)
 そう思う自分がいる。
 そんな自分がいま思っている事が、客観的には全く意味が分からない情報なのだということも実感できる。
 そして、そんな取りとめもない事を考える事で、自分は必死になって理性を保とうとしているという事も。

 全身に力が入らない。
 もう、すでに喜十郎は自分の力で立てなくなっていた。
 さいわい、自分の身体はいま、五人の妹たちによって支えられている。

―もう、だめだ。

 喜十郎の身体から、最後の力が抜けた。

(……陥ちた!)
 桜は、そんな彼を見上げ、亀裂のような薄い笑みを浮かべた。


247:陰獣の群れ(その2)
07/10/10 04:04:10 RRFd/j54

 喜十郎にとって、新たな生活にそれほどの困惑はなかった。
 生活習慣の細かい差異はあったが、あくまで中流家庭同士の何でもない問題でしかなく、それは文字通り、慣れれば済む程度の問題でしかなかったのだから。
 しかし、彼にとっても予想外因子はあった。
 それがつまり、新たに妹となった綾瀬本家の六人の娘たちであった。

 もとより喜十郎にとっては、何も養子となって初めて彼女たちと逢ったわけではない。
 本家と分家―といったところで、別に封建時代のような主従関係が成立しているわけでもない。年末年始、冠婚葬祭などのたびに顔を合わせる普通の親戚に過ぎない。
 いや、喜十郎と桜は、元来同じ高校のクラスメートでもあり、単なる従兄妹同士以上の仲ではあった。また、次女の春菜や三女の真理とも、同世代という事もあって、まんざら知らない仲でもなかった。
 しかし、少なくとも、ここまで自分が“兄”として慕われるような、そんな間柄ではなかったはずだった。

―まるで可苗と同じじゃないか。

 本来、思春期の妹というやつは、歳の近い兄弟を忌む傾向にある。
 家庭という狭い生活環境において男たちは、イヤでも異性としての存在感を誇示せずにはいられない。そういう生臭さが十代後半の、人生における最も潔癖で多感な頃の女性に、どれほど拒絶反応を与えるかは、想像に難くない。
 だが、この“妹”たちは違う。
 拒絶反応どころの話ではない。むしろ積極的にコミュニケーションを図り、そのスキンシップの度合いは、増すばかりだ。
 そして今、彼女たちは自分の肉体を、思うままに凌辱している。
 そんなはずではない。
 そんなはずではなかったのだ。

 喜十郎は恐れていた。
“妹”と呼ばれる存在を。
 実家から逃げ出したのもそのためだ。
 彼は可苗を恐れていた。
 そして、可苗から逃げ出した先でも、やはり彼女たちはいた。
“妹”と呼ばれる彼女たちが。
 いずれ自分は食い殺されるだろう。
“妹”を名乗る、この少女たちによって。
 害意なき、純粋な独占欲によって。
 ならば、せめて憎もうと思う。
 この悪意なき“妹”たちを、ではない。
 余りにも無力すぎる我が身を憎みつつ、生きてゆこうと思うのだ。
 せめて、己が食い殺される、その日まで。


248:陰獣の群れ(その2)
07/10/10 04:06:18 RRFd/j54

「ぃぃぃぃっっっ、もうっ、もうっ、ゆるしてくらはいっっ!!」
 
 喜十郎の悲鳴が、徐々に意味を為さなくなってくる。
 恐らくは彼自身も、自分がいま何を口走っているのか、理解していないに違いない。
 そんな兄の様子を、妹たちはみな、うっとりした眼差しで見つめる。

「ねえ、お兄ちゃま」
 喜十郎との長いキスを中断した詩穂が、口を開く。
 そんな彼女の唇には、兄の口元との間に一条の銀色の糸が掛け渡されていた。それは未だ幼く見える詩穂の容貌を、妖しく飾る。
「詩穂たちに、いったい何を許してもらうのか、本当に分かってる?」
 
 その瞬間、彼を取り巻く全ての責めがやんだ。
 しかし、唐突に苦痛―もしくは快感―から放り出された喜十郎としても、瞬時に理性を取り戻せるほどに、自分を御せるわけではない。残念ながら彼とて、所詮は二十歳前の一人の少年に過ぎないのだ。

「え……?」
「そんな事も分からずに、お兄ちゃまは詩穂たちに謝ってたの?」
 そして、そんな彼を、妹たちが再び追い込んでゆく。
「兄君さま、罪を意識せぬ謝罪は、謝罪としての意味を持ちませんわ」
「つまり、お兄様はお仕置きをやり過ごすために、適当な事を言ってただけってわけね?」
「兄上様……いくら何でもそれでは、私としてもフォローしきれませんわ……」
「くししししし、さぁ困ったことになっちゃったよぉ、おにいたまぁ」

「ちっ、違う詩穂っ! ―おれはっ、そのっ……!」
「お兄ちゃまのばかぁっ!!」
 それまで喜十郎の背をかきむしっていた詩穂の爪が、いや指が、無造作に彼の肛門に突き入れられる。

「~~~~~~~~~~~!!!!!」

 言葉の態さえ為さない絶叫が、風呂場にこだまする。
「お兄ちゃまがっ! お兄ちゃまがっ! お兄ちゃまがいけないんでしょうっ!? 詩穂のキスを無理やり逃げ出して、春菜ちゃんのお指に感じてたりするからっ!!」
 詩穂の二本目の指が、彼の肛門に突き刺さる。
「―っっっっ!!」
「詩穂、すっごく傷ついたんだよっ! お兄ちゃまが詩穂を無視して、すっごく悲しかったんだよっ!!」
「ごめんっ!! 詩穂ごめんよぉっ!! もうっ、もう許してぇぇっっ!!」


249:陰獣の群れ(その2)
07/10/10 04:08:13 RRFd/j54

 ずぶり。

「きひぃぃぃぃぃっっ!!!」
「ダメよ、お兄様」
 今度は桜の指だ。
 比奈とペニスを挟むようにして、湯舟にしゃがんでいた彼女の指が、彼の股間越しに臀部に伸びてきたのだ。
 すでにして喜十郎のアナルは、春菜・真理・詩穂に侵略され、ぐちゅぐちゅにほぐれてしまっている。今さら桜のほっそりとした指の一本くらい、呑み込むに雑作は無かった。
「いくらお兄様でも、私の可愛い妹を傷つけた罪は、ヒッジョ~~に重いわ。ねえ、真理?」
「んふふふふ……でも、あまり苛めちゃ、兄上様も可哀想ですわ」
 真理は、にんまりと笑って桜に答えると、上目遣いに喜十郎を見つめた。
「ねえ兄上様、答え合わせしましょう?」

「へっ、えっ……!?」
「答え合わせ?」
 とっさに何を言われたのか理解できなかった喜十郎に代わり、春菜が頓狂な声を上げる。
「そう、答え合わせ。もし外れた場合は、兄上様に更なる償いをしていただきましょう」
「あの真理ちゃん、……いまいち話が読めないんだけど、一体何の答えを合わせるの?」
 会話の主流からイキナリ置いていかれた詩穂が、困ったような声を真理に投げる。
「んふふっ、とても簡単な質問ですわ」
「ひぐうううううぅぅっっっ!!」
 その瞬間、喜十郎の身体が、えびぞりに身悶えた。
「いいですか兄上様、いま現在、兄上様のお体に、私たちの指が全部で何本挿入されているか、それをお答えくださいまし」

「なるほど……確かにそれは……とても『簡単な』答え合わせだわ……!」
「ええ、『簡単』過ぎて呆れるくらいですわ」
 桜と春菜が、酔ったような表情で真理を、そして喜十郎を振り返る。
「くししししし、おにいたま、自分のおしりの中のものくらい、ちゃんと答えられてとうぜんだよねぇ?」
 比奈がそう言いながら、兄の肛門に、さらに自分の指を追加する。
「―っっっ!!」

「ねえ、真理ちゃん」
「なぁに、詩穂ちゃん」
「もし、お兄ちゃまが答えを間違ったら、どうするの?」
「詩穂ちゃん。この答え合わせは、そもそも兄上様が詩穂ちゃんを傷つけたペナルティなのよ? だから、罰の内容を決めるのは他の誰でもない、詩穂ちゃんなの」
「えっ、ホントにっ? ホントに詩穂が決めていいのっ!?」
「そうですわ。乙女の心を傷つけた償いとして、兄君さまにとびっきりの罰を与えてやってくださいまし」
 真理の言葉を春菜が引き継ぐ。こういう瞬間、姉妹の関係性は恐ろしく強固な一枚岩になる。
「……というより、俺が答えを間違えるのは、ほぼ決定なんですか……?」
 喜十郎のその言葉には、誰も答えない。


「じゃあねえ、じゃあねえ。―今日から一週間、お兄ちゃまは詩穂の下着を着けて学校に行くのっ! これどう、お兄ちゃまっ!!」


 その言葉は、長時間のお仕置きで消耗した彼の脳髄を覚まさせるには、充分な威力を持っていた。


250:時給650円
07/10/10 04:09:18 RRFd/j54
今回の投稿は以上です。

251:名無しさん@ピンキー
07/10/10 07:21:22 iLbnBq7T
おお……時給氏非常にGJ!
俺の股間もそろそろクライマックスです。

252:名無しさん@ピンキー
07/10/10 21:26:09 4qwBelkw
GJ!
喜十郎カワイソス

253:名無しさん@ピンキー
07/10/10 22:43:34 9lmbsksa
ペロッ・・・これは可苗フラグ!!

254:名無しさん@ピンキー
07/10/10 23:42:38 p5IVr2sD
ことの始まりは放課後だった。突然クラス女子に呼ばれ何事かとついて行ってみると、屋上には俺が前から憧れていた朝橋 美沙さんがいた。
そして顔を赤くしながら一通の手紙を俺に渡し足早に去って行った。
そんな馬鹿なと手紙を読んでみると可愛らしい文章があり最後には付き合ってほしいと書いてあった。
俺はしばらくの間、呆然としていたが取りあえず帰る事にすると教室に戻り鞄の中に手紙を入れてフラフラしながら教室を出て家に向かった。
もう正直たまらん。
あの手紙を渡すときの照れた顔…まじたまらない。
今すぐ裸になって信号で停車している車のボンネット上で前周りをしたい気分だ。
…だがこんな浮かれた気分を壊すほどの問題がある。
妹だ。
この事が妹にばれると…考えたくもない。
取りあえず今の俺に出来るのは今すぐ家に帰り妹に見つかることなくこの手紙を隠す事だ…そうすれば後の事は
「お兄ちゃん」
俺の背後から声が聞こえた。
恐る恐る振り返ってみるとそこにはにこやかに笑っている少女がいた…俺の妹だ。
「お、おう」
俺はなるべく平静を装って声をかける。今すぐ駆け出したい気持ちを抑えながら…。
「今日お母さんもお父さんもいないから私が晩御飯作るけど何がいい?」
今日は両親は旅行に行っているので家にはいない。うちの両親は仲が良く、また、妹は料理を始め家事が万能なのでよく俺達を置いて旅行に行ってしまう。
俺としては行かないでと泣き叫びながらしがみつきたいのだが…。

255:名無しさん@ピンキー
07/10/10 23:45:26 p5IVr2sD
「えーと…コロッケかな」
「コロッケね、ん~と材料はあったよね…よし、美味しいの作ってあげる」
俺と一歳しか違わないとはとても思えないような幼い笑顔で答える。
兄としてこんな風に思うのは変かもしれないが妹はかなり可愛らしい。鎧を着て守ってあげたくなるような可愛さを持っている…それだけじゃなく妹の笑顔は人生全てを捨ててでも眺めていたくなるほど愛らしい。
10人に聞いてその中に例外が居なければ10人とも美少女だと思うはずだ。
周り奴によく「お前の妹貸してくれ」とか「妹さんの兄になりたい、代われ」とか言われる。
代われるものなら代わりたいものだ。
俺が家で妹にどんな事をされているかも知らないで…
「今日はお母さん達を気にしないでたくさんいろんなことが出来るね」
一瞬心臓が凍ったような感覚に襲われた。
「あ、あぁ」
「なにしよっかな~?考えただけでうずうずしちゃうね」
「…そうだな」
本当はうずうずではなくひやひやしているのだが…まぁ今のところ妹は上機嫌なようだしばれる事はないか、ほら、もう家の近くだ。このままなら
「ところでお兄ちゃん」
今度は心臓が凍るだけじゃなく鷲掴みにされたような感覚に落ちる。
「な、なんだ」
「私に何か隠してない?」
ばれてないばれてないはずだ。冷静に対処するんだ。
「いや、なにも」
「そうだよね~私に隠し事なんかしないよね~」
「当たり前だろ」
「たとえ憧れの人からラブレター貰っても、私に隠したりしないよね」

256:名無しさん@ピンキー
07/10/11 00:10:44 YYIZD3Zy
>>255
最後の一行がこえぇぇ!

257:名無しさん@ピンキー
07/10/11 00:43:36 CT75sbFl
>>255
これはたまらんwwwwwwwwwwwwww

258:名無しさん@ピンキー
07/10/11 02:28:43 XmgpXboz
>>255の続きです


ぼれている。
何故だかは解らないが確実にばれている。
手紙を貰っただけじゃなく俺が美沙さんに憧れている事まで…。
「隠して…ないよね」
「……………」
俺は答える事が出来なかった。
「一応、念のため、念のためだよ?…鞄の中見せてくれるかな?」
妹は笑顔のまま俺に手を差し出した。
俺が鞄を渡すと信じて疑わない目をしながら。
「…………」
俺は無言のまま妹に鞄を差し出す…手は震え、心臓は相変わらず凍ったままで。
妹は笑顔を崩さないまま俺の鞄を受け取り中を探る。
そして…まるで宝を見つけ出した海賊のような笑みで手紙を取り出した。
「あれ~これは何かなぁ?」
「………」
「成績表か何かかな?読んでみよ」
妹は笑顔で無言のまま手紙を読見始めた。
このまま逃げるか?…いや、逃げたところで…
俺はもう完全に諦めていた。
永遠に思える沈黙の中、妹は読み終えたのか手紙を封筒の中にしまった…笑顔のままで。
だが俺は見てしまった…妹の手が微かに震えているところを。
俺は気づいてしまった…妹を取り巻く雰囲気が変わっていくことに。
妹は手紙を持ったまま鞄だけを俺に返すと笑顔で…仮面のような笑顔で。
「取りあえず…家に入ろ」
そう告げた。
妹が鍵を鞄から取り出し鍵を開け家の中に入っていく。
靴を脱ぐとそのままリビングへと向かっていき、俺は死刑囚のようにその後をついて行く。
「あっ鍵閉めといてね」
今や妹の言葉の一つで俺の心臓は砕けそうだ。
俺は鍵を閉め直すと妹がいるリビングに向かう、足取りは重く、今にも倒れそうな感覚に襲われながら。
妹は薄暗いリビングのソファーに足を組みながら座っていた…その顔は薄暗くてあまりはっきりと見えないが薄く笑っているようだった。
「座ったら?」
俺は言われたまま妹の前に座る…ただし正座をして。
妹に反省の色を見せているわけでも許しを請うつもりでもない…体が勝手に正座をしたのだ。
これからなにが起きて俺がどんな目に合うかはこの体が一番よく知っているからだろう。
この体制なら必然的に俺は妹を見上げる形になり、妹は俺を見下す感じになる。か
見上げて見る妹の顔はまだ笑顔のままだった…相変わらず仮面を貼り付けたような笑顔…それでも十分可愛いく幼さが残っている笑顔だった。

259:名無しさん@ピンキー
07/10/11 02:30:07 XmgpXboz
「どういうことかな?」
「……………」
「あの手紙の事を聞いてるんだよ」
「……………」
「答えてよ」
俺は俯いたまま無言で妹の質問にどう答えるべきか考えてた。
「答えなさいよ!!」
無言のままの俺に痺れを切らしたのか妹が軽く怒鳴った。
その瞬間俺の体は小さく震えた。
妹の顔は先ほどからは想像出来ないような恐ろしい顔をして睨んでいた。
俺は覚悟をして妹の質問に答えることにした。
「今日、放課後にクラスの女子から貰いました」
自分が実の妹に敬語を使っていることになんの違和感も感じなかった。
それが当然であるかのように俺は敬語を使っている。
「憧れの朝橋 美沙さんから貰ったの?」
先ほども思ったがなぜ妹はこの事を知っているんだろう。
美沙さんから手紙を貰ったことはいい、自分で見た、誰かから聞いた…いくらでも知る方法はある。
だが俺が密かに美沙さんに憧れていた事は誰も知らないはずだ。
俺は勇気を振り絞って妹に聞いてみることにした。
「なんで俺が美沙さんに憧れている事を知っているんですか」
「知ってるよ、お兄ちゃんの事ならなんでも知っているよ」
「どうして解ったんですか」
「気になるんだ…まぁ言うなれば女の勘っていうか…妹の勘ってやつかな」
「そんなの…」
「見てれば解るよ、私ならね。悔しかったな~気付いた時は…あの女を殺したくなるくらいにね」
「……………」
「だけどその時は我慢したんだよ~まぁどうせ明日死ぬけど」
「!!…今なんて」
「どうせ明日死ぬ」
「やめてくれ!!」
「………」
「美沙と付き合う事は無い、絶対に…だから美沙を殺すのだけは!!」
もともと彼女と付き合うつもりはなかった。
付き合うということをまず妹は許してくれない。
それが解っていたから俺は彼女を遠くから見つめて密かに憧れていたのだ…好きではなく、憧れで終わらしていのだ。
こうならないようにと…。
「……………」
妹は笑顔のまま俺を見つめていたが急に無表情になり氷のような冷たい声を出した。
「あの女を庇うんだ」

260:名無しさん@ピンキー
07/10/11 03:45:51 +JmGWvOe
>>259
ぎゃああああああ!
また怖い一言で終わってるううう!
GJううう!

261:名無しさん@ピンキー
07/10/11 05:22:29 8hBIu2+5
Gj!!こわい妹とか最高にツボな自分はmなのか?
なにはともあれ次回も期待してます!!

262:名無しさん@ピンキー
07/10/11 11:43:37 h5faQdSX
「成績表か何かかな?読んでみよ」→知ってるのにとぼける

「取りあえず…家に入ろ」→やんわり囲い込む

「妹の勘ってやつかな」→心の中も何でもお見通し

「どうせ明日死ぬ」→泥棒猫の確定死亡宣言

もうホラーです…

263:名無しさん@ピンキー
07/10/11 16:53:32 JCnADy/e
だがそれがいい

264:名無しさん@ピンキー
07/10/11 19:08:32 H1KF8Pe8
こう言うホラー映画を製作してほしい。もちろん二次元でね。(三次元は怖過ぎて萌えるとかそう言う次元じゃない)・・・)。

265:名無しさん@ピンキー
07/10/11 20:51:40 0PQknhP/
しかしぼれているはないわwwwwwwwwwww

266:名無しさん@ピンキー
07/10/11 21:07:13 54ojg85K
>>259
美沙さん\(^o^)/
妹怖いwwww

267:名無しさん@ピンキー
07/10/11 21:28:48 gOm4t05D
何か胸のあたりがゾクゾクするホラーは好きだぜ。

…あれ?そういえばMのキモウトって見た事がないな…

268:名無しさん@ピンキー
07/10/11 22:10:30 xdeckWsa
ひたすら謝るM?のキモ姉ならちょろっと投稿されてたな

269:名無しさん@ピンキー
07/10/11 22:13:23 HFQGSnuM
>>265
お前ぼれてるぞ

270:名無しさん@ピンキー
07/10/11 22:48:37 JCnADy/e
>>267
「ああっ!お兄様、この嫌らしい肉便器を使ってぇ!犯してっ、汚してほしいのっ、
 お兄様だけの私にしてぇぇ!」

…とか?

こりゃただの肉体言語か。難しい。

271:名無しさん@ピンキー
07/10/12 00:09:05 //gkESe1
>>270
うーんなんか違う気がするなぁ…わざと怒られるようなことをするとかじゃまいか?それだとただの肉便器だ

272:名無しさん@ピンキー
07/10/12 00:44:39 GYDXpZDy
外では完璧超人なDV兄貴とか?

273:題未定
07/10/12 00:46:55 zru3YLhT
 月明かりすらない夜。
闇と静寂とに沈んだ住宅街の一角を、僕は一人、幽かな外灯の明かりを頼りに歩いていた。
体中が、鈍い痛みにも近い疲労感に支配されていた。それは、連日休みなく入れているアルバイトから来るものだった。
右手に提げた教材を詰め込んだ鞄が重い。いつもなら英単語帳の一つでも取り出して勉強するところだが、今日はそんな元気もない。
空いた左腕を見つめる。学校指定の半袖のカッターシャツから覗くそれは、今は包帯が幾重にも巻きつけられていた。
バイト先の中華料理屋での失敗が原因だった。包帯を取り外せば恐らく、軽い火傷の傷跡が、露になるだろう。
原因は、ちょっとした気のたるみから来るものだった。
疲労による睡魔から、調理中に誤って自分の左腕に油を掛け、それに火が引火したのである。

クビ・・・・・・かなあ

怪我そのものよりも、そっちの方が問題だった。
個人営業の店であるその中華料理屋は、店主のこだわりが強く、自身が認めた者にしか鍋を握らせる事はしなかった。
バイトを始めて既に二年経つが、鍋を握らせて貰ったのはほんの一ヶ月前でしかない。
最初こそ失敗続きで怒鳴られてはいたが、最近は慣れてきたと思っていたのに・・・・・・。

あの店長の事だから、きっとクビだろうなあ・・・・・・

今回の失敗は技術的問題ではなく、単なる不注意からくるものだった。
そして、店長はそれこそを許さない。料理中に気を抜くということは、店長にとっては料理に対する侮辱だからだ。
恐らく後日、店長から直々に解雇の通達を貰うことになるだろう。

「月給九万と夜の賄いが無くなるのは、痛いな・・・・・・」

今日負ってしまった左腕の火傷のこともある。
恐らく、これが直るまで次のバイトは見つからないだろう。
現状でも、ただでさえ困窮していて、日々の生活にも困る有様だ。
今もこの夜空の何処かで一生懸命働いているはずの母さんが、これを聞いたらどう思うか。
そう思うと、忽ちに頭の中を、自分への憤りと、申し訳なさと、明日からの生活への不安と、憂鬱が塗りつぶしていく。






―だから、僕は

「お久しぶりです。兄さん」

目の前の暗闇に佇んでいた彼女に

「お待たせいたしました。迎えに、来ましたよ」

気づくことが、出来なかった





以上予告です。続きは近いうちに

274:名無しさん@ピンキー
07/10/12 01:06:08 H0w4kzg5
い、いいところできりやがって・・・
GJ

275:名無しさん@ピンキー
07/10/12 03:19:45 //gkESe1
>>273
なんという萌える展開…続き待ってるぜGJ!

276:名無しさん@ピンキー
07/10/12 04:37:26 t7kA2D8K
キモウトに呼ばれる一人称として様々なものがあるが…
住人の個人的意見としてはどれが一番萌える?

ちなみに俺は、『兄さん』

277:名無しさん@ピンキー
07/10/12 06:23:11 Tf8lhAlV
兄さんに同意

278:名無しさん@ピンキー
07/10/12 07:23:22 dLdPyGbW
秋葉のイメージって強いからなぁ・・・

279:名無しさん@ピンキー
07/10/12 08:05:53 fKAHwb2X
俺は音夢だな

280:名無しさん@ピンキー
07/10/12 10:00:12 DS6VWrag
>>270
別にSかMかは問題じゃないんだけど、主人公がキモウトに翻弄されて
ガクブルするだけの話はちょっと飽きてきたかな、かな。
キモウトは高スペックなのが多いけど、それを上回るくらいの懐の深さで
暴走による被害を食い止めつつでもキモウトが憎いわけじゃないから
本気で怒るのもなんかなー、と悩む主人公って感じのコミカルなのが
読んでみたい気がしないでもない。

281:名無しさん@ピンキー
07/10/12 10:05:24 e2p3bdmn
俺としては遠慮無く喰っちゃって修羅場る主人公がいいけどな
あんまそういうのないね

282:名無しさん@ピンキー
07/10/12 10:25:01 Tg0O5ivg
>>276-277
えー・・
何か「兄さん」ってよそよそしい感じがしてなあ・・
やっぱ「お兄ちゃん」が最強だろー

283:名無しさん@ピンキー
07/10/12 14:02:42 JcLTukDB
僕は「にーにー」が一番良いと思います

284:名無しさん@ピンキー
07/10/12 15:38:52 7HZUA8hg
「お兄ちゃん」がいいと思う人は現実的?
「兄さん」がいいと思う人は2次元が好き?
「にーにー」がいいと思う人は2次元&ロリが好き?

285:名無しさん@ピンキー
07/10/12 15:46:48 hWxQqrtd
兄ぃが好きな人は衛好き

286:名無しさん@ピンキー
07/10/12 16:39:31 CeJ8cfvY
兄さんも現実的じゃないか?

287:名無しさん@ピンキー
07/10/12 16:45:21 Tf8lhAlV
妹ならお兄ちゃん、もしくは兄ちゃん派だが、キモウトなら話は別だと思うの

288:名無しさん@ピンキー
07/10/12 19:14:37 a8A4ewZs
>>259の続きです


庇う…確かに俺は美沙さんを庇ったのかもしれない。
でも、それは好きだから庇ったんじゃない…こんな事に巻き込まれて死んでしまうのがかわいそうだと思ったからだ。
いくらなんでも妹の気持ち…嫉妬が理由でその人生を終わらしてしまうのはあまりに残酷だ。
「何度も言うけど…俺は美沙さんのことは好きでもなんでもないんです…これからは憧れの気持ちすら抱きません!」
「…………」
「何をされても無視します!…だから!!」
「いいね…必死になって私にお願いするお兄ちゃんのその顔」
「ぇ………」
「なんとも言えないエクスタシーを感じちゃうよ」
いつの間にか妹の顔は紅潮し、微笑んでいた…愛おしそうな目をしながら…。
「見てるだけでゾクゾクしちゃう…聞いてるだけで感じちゃう………まじたまんない。
…ふふ、やっぱり私はお兄ちゃんのことが好き…溜まらないくらい大好き」
妹は初恋をした少女のような顔をし俺に告白している…その姿はどこか手紙を渡してきたときの美沙さんとタブって見えた。
しかし、次の瞬間…妹は俺を睨んで立ち上がり叫んだ。
「心の底から…殺したいくらい愛してる!!」
俺は呆けたまま妹を見上げる事しか出来なかった…。
「好き!大好き!愛してる!!けどお兄ちゃんはあの女に憧れてる、庇った!!
許せない…愛しているからこそ…だからこそ許せない!!
お兄ちゃんを憧れさせ、お兄ちゃんに告白したあの女も!あの女に憧れ、あの女を庇ったお兄ちゃんも!!
そして何よりそんな状況になるのを許してしまった自分を…許せない!!!」
「っ………ごめん」
「お兄ちゃんを殺して…私も死のうかな」
「なっ!?」
「嘘だよ。殺したいくらい愛してるのは本当だけど…殺しても死んでも二度とお兄ちゃんと会えなくなるだけだし、いろんな事が出来なくなっちゃうもん」

289:名無しさん@ピンキー
07/10/12 19:16:54 a8A4ewZs
「それなら」
「けどあの女は別」
「!?」
「死んでしまっても私達には関係ない…でしょ?」
「けど」
「まだ庇うの!?いい加減にしてよ!!私がどれくらい頭にきていると思うの!?」
「…………」
「好きで好きで好きで溜まらない人が自分以外の人を気にする…それがどれくらい辛くて悔しいか解る!?
告白されて嬉しそうに…車の上で裸になって前周りが出来そうなくらい浮かれてる顔を見た私の気持ちが解る!?
それに、私がどれくらいお兄ちゃんの事が好きだか解ってる!?
お兄ちゃんが大好き!!愛してる!!お兄ちゃんの全てを愛してる!!
その目も、その耳も、その口も、その声も、お兄ちゃんの体の先から先まで愛してる!!
私のこの体はお兄ちゃんを愛するためだけにある!!

お兄ちゃんを惑わすものは全部壊してやる!!殺してやる!!
お兄ちゃんと私以外なら誰が死んでも構わない!!」
今妹が言ったことは全部本気だ…妹の顔がそれを物語っている。
妹を止めることはもう出来ないのか?………いや、止めてみせる…人殺しなんかさせない!!
「何でも言うことを聞きます」
「……………」
「何でもします」
「……………」
「だから誰も殺さないで下さい」
俺は…もう、後戻りは出来ない所まで来ていたんだ…。
だから最後まで行くしかないんだ…。
「俺は一生あなたの奴隷になります」
妹と最期ま
「今さらなに言ってるの?
元々お兄ちゃんは私の奴隷じゃない」
…え?
「これからもずっと…ず~と私の物だよ」
「………」
「永遠に…私だけの物」
俺は今から奴隷になろうとしたがそれは違っていた。
俺は既に奴隷となっていたんだ…。
そして、これから、ずっと…永遠に妹の物。
…俺はもう何も出来るこは無い…。
「なんでもするって言ったからには何でもしてもらうよ」

290:名無しさん@ピンキー
07/10/12 20:14:33 0beq1wuX
>>282
むしろそのよそよそしさがたまらん。
>>289
>車の上で裸になって前周りが出来そうなくらい
なんで分かるんですカー!

291:名無しさん@ピンキー
07/10/12 20:40:16 UqJBmEfm
>>289
怖ぇぇ


外では猫かぶってて兄さん
二人のときは兄貴
仲良く暮らしてたとこに泥棒猫が邪魔しに来たときはお兄ちゃん

292:名無しさん@ピンキー
07/10/12 21:55:30 AkjMWiQi
保守

293:時給650円
07/10/12 21:57:31 AkjMWiQi
>>249
続きを投下します。

294:淫獣の群れ(その3)
07/10/12 22:00:04 AkjMWiQi

「にいさまったら遅いですの……。んもうっ! 桜ちゃんたちったら、にいさまで遊び過ぎですのっ!!」

 ダイニングキッチンで、ぷりぷりと可愛い怒りの湯気を上げているのは、深雪(みゆき)。
 六人姉妹の四女であり、一家の家計と食事を一手に担当する、綾瀬本家の母親代わりである。
 そう。
 いま現在、この家には彼女たちの両親―綾瀬家の本来の家長である和彦夫妻―は、ここにはいない。
 いかに伝統ある旧家とはいえども、単なるサラリーマンでしかない和彦は、社内派閥闘争のあおりを食らって、博多支社に左遷されてしまっており、妻(つまり姉妹たちの母)も、そんな夫の道行きに同道し、家を出ていた。
 単なる単身赴任ではない。
 完璧なる左遷だ。
 東京本社へはいつ帰って来れるか分からない。
 和彦が、喜十郎の養子縁組を急いだのは、綾瀬家家名存続問題よりも、頼りになる男が一人、“兄”として、娘たちしかいない家にいて欲しかったのかも知れなかった。

「これ以上、ぐずぐず煮込んでたら、折角の味が落ちてしまうですのっ」
 そう言いながら、コンロの火をさらに小さくする。七人分の夕食を煮込んでいる大鍋は、彼女の140センチの矮躯にはあまりにも大きく見える。しかし深雪にとっては、そんな作業も一向に苦にはならない。
 彼女にとって、料理というのは単なる趣味やルーチンワーク以上の価値をもつ行為であり、その情熱は、あたかもアスリートが自分の専門競技に傾けるそれに似ており、実際、彼女のその身には、莫大な料理の才能が埋蔵されていた。
 つまり深雪にとって、日常の食事当番は一日の面倒事ではなく、彼女自身の調理技術の研鑚の場であったのだ。
―彼女の“兄”、喜十郎が来るまでは。

 彼自身が記憶しているか否かは分からないが、そもそも深雪に料理の楽しさを教えたのは、喜十郎だった。
 ある日、風邪で寝込んでいた彼女たちの母親に代わって、仕事で帰宅が遅くなった和彦を含めた、その晩の家族全員の夕食を二人―たまたま本家に来ていた喜十郎と深雪―で作ったのが、彼女の料理人生の出発点となった。
 当時は、ただの従兄妹でしかなかった喜十郎の存在が、深雪にとって大きくクローズアップされたのもそれからであり、その喜十郎が“兄”として我が家に来た、その日から深雪の料理は家族全員のためではなく、彼個人のためのものとなったのだ。
 その“兄”が今、自分の料理を食べる前に、自分以外の姉妹に『食べられて』いる。

―深雪の心中は、穏やかではなかった。


295:淫獣の群れ(その3)
07/10/12 22:03:13 AkjMWiQi

 喜十郎は、未だ腰を降ろすことも許されず、湯舟に立たされていた。
 しかし、男独りを五人がかりで取り巻いていた少女たち、という構図は、いささかなりとも変化があった。

「あ、だめぇ、おにいたまったら、ちゃんと自分の足でたたないとダメなのっ」
「んふふふふ……兄上様、しゃんとしないと、またお仕置きですわよ」
 喜十郎の身体を前後に挟むように、比奈と真理が自らの胸を押し付け、こすり合わせている。

「らめらっ、もうでる、でちゃうよっ!」
 押し付けられる白絹のような妹二人の肌、その快感をさらに増幅させるのは、二人の胸と彼の肌との間に生み出される泡沫―ローション代わりに使用されているボディソープ。
「ダメよ比奈ちゃん、兄上様をイカせては何にもならないわ」
「あっ、そうか」
 真理の放ったツルの一声に、陽気な末っ子はひょいっと、“兄”から身体を放す。
「ああああああっ、もう、もうイカせて下さいっ! おねがいですっ!!」
 優に一回りは年下の妹に長兄は懇願する。
 聞き入れてもらえる事など決してない、と分かっていながら。
「くしししし、あぶなかったね、おにいたま。もう少しで出ちゃうとこだったね」
「あああああ……イカせて、イカせてください……なんでもしますから……」
「本当にいいのですか兄上様? 射精なされば、その分お仕置きはひどくなるのですよ?」
「ひどくともいいっ! ひどくていいから……出させてくらさい……ぁぁぁ……もう、もう我慢出来ない……」
 むせび泣きながら妹たちに訴える喜十郎の表情を見ても、真理の瞳に宿った情欲の光は、やはりいささかも衰えない。むしろ、その輝きは増すばかりだ。
 そんな真理の表情に、いよいよ喜十郎の涙は水かさを増す。


296:淫獣の群れ(その3)
07/10/12 22:04:48 AkjMWiQi

「―ダメよお兄様っ!」
 悶え苦しむ彼の背に、長姉の鉄鞭の如き声が飛ぶ。
「忘れたの? お兄様がイっていいのは、私たち全員の許可を取ってからだって事を」

 いま桜は、詩穂・春菜と並んで自慢の長髪を洗っていた。
 彼女たちが入浴してから、そろそろノルマの一時間が経つ。
 喜十郎を風呂場から引っ張り出す時は、すなわち自分たちも風呂から上がる時間である。
 なんのかんの言っても年頃の少女である。入浴には、人一倍時間をかけたい。
 しかし、かといって自分たちの身体を洗う時に喜十郎をほったらかしにするつもりも、彼女たちは無かった。
 つまり、妹たちが“兄”を風呂で愛撫する場合、どうしても複数の女手が必要だった。

「兄君さま、これはワタクシたちからの躾なのです。兄君さまをこの綾瀬本家に相応しい殿方に教育するためのシツケ。ですから、これはどうしても耐えて頂かなければなりません」
 春菜が、桜の尻馬に乗っかる形で言葉を継ぐ。
 だが、その真剣な語気に反して、彼女の眼は笑っている。
(我ながら、よくもまあ、こんなムチャクチャな理屈を、ぬけぬけと真顔で言えるものだわ……。)
 腹の底で春菜がそう思っているのは、いかにも見え見えだった。

「だからお兄様、あと三日我慢すればいいのよ。土曜になれば、腰が抜けるくらい搾ってあげるから」
「でも、お兄ちゃま、土曜日になったら、泣きながらいつも逆のこと言うよね? もう出ませんから勘弁して下さいって」
「平日に禁欲した分を週末に吐き出す。いかにも健康的だと思いませんか、兄君さま?」
「―だ、そうですわ兄上様。私としても心苦しいのですが、やはり兄上様の御要望にはお応えできません」
「くしししし、おにいたまもおとこのこだったら、がまんしようね?」

 喜十郎は、あからさまな嘲笑を隠そうともしない妹たちを、何も言えずに眺めていた。

 結局、彼が風呂から出ることを許されたのは、それから十分後、彼女たちの闖入からきっかり一時間後だった。


297:淫獣の群れ(その3)
07/10/12 22:07:08 AkjMWiQi

 夜中に不意に目が覚めた。

(寒い……。)
 まぶたを覆う眠気より、全身を包む寒気の方が強い。
 可苗は、羽毛布団を肩まで引っ張り上げると、再び意識を闇の底に沈めようとする。
 するが―遠い。
 眠ろうとすればするほど、闇は意識から遠ざかってゆく。
 原因は分かっている。
 さっきまで見ていた夢。
(お兄ちゃん……!)
 心のうちでそっとつぶやいた瞬間、可苗の眠気は弾け飛んだ。

 がばっ!
 布団を蹴りはがし、上体を起こすと、まぶたを開く。
 二段ベッドの上階から身を乗り出し、部屋の一角に視線を送る。
 暗闇の先にある兄の机、兄の本棚、兄の洋服箪笥。
 かつて兄が存在していた空間。
 比喩ではない。―可苗は暗中であっても、この部屋のどこに何があるか、全て把握している。
 この部屋は、彼女の実兄たる喜十郎がいなくなるまで、ともに寝起きしていた―いわば、彼女にとっての楽園に等しい一室だったのだから。
 部屋数の乏しい公営団地。2LDKのこの我が家が、可苗は大好きだった。
 少なくとも、兄が家を出てしまうまでは。

 蹴り剥がした布団を手に取り、そっと匂いをかぐ。
 そこに存在するのは、微かな、しかし、彼女以外の確かな体臭。
(……お兄ちゃんの匂いが、薄くなってきてる)
 そう、かつて彼女の兄は眠りの際に、この二段ベッドの上階で、この布団を使用していた。
 喜十郎がこの家を後にしたとき、せめて可苗は、彼の匂いに包まれて眠りたかった。
 そうでもしなければ、兄の居ない、この広大な六畳間の一室で、到底独りで夜を過ごすことなど不可能であったろう。しかし、その残り香も、
(いや、お兄ちゃんの匂いが消えちゃう! いや、いや、いやいやいやいや!!)
 今では、可苗の寂寥感を助長する働きしか為しえない。
(補給しなきゃ! 早く『お兄ちゃん分』を補給しなきゃ、可苗どうにかなっちゃう!)

―この世で孤独死できる生き物はただ二つ、ウサギと人間だけだ。
 かつて兄がふざけ半分に言っていた言葉が、可苗の肩に、真剣な説得力を持って圧し掛かっていた。



298:淫獣の群れ(その3)
07/10/12 22:09:22 AkjMWiQi

(何で、何でお兄ちゃんは、可苗の前からいなくなっちゃったの?)
 その明確な解答は、彼女には分からない。
 ただ一つ感じるのは、兄が、喜十郎が自分を捨てた事。

 本家の六人姉妹たちには、不思議と憤りは感じない。
 むしろ、同志のようなシンパシーさえ覚える。
 現在にいたるまで、喜十郎が学校でモテたという話は聞いたことも無かったからだ。
 妹として、そして女として可苗は、喜十郎の魅力に気付かない彼のクラスメートが不思議で仕方なかった。
 だから本家の姉妹たちが、喜十郎にくびったけになっているという話を聞いて、嫉妬と同時に安堵さえ覚えた。兄の魅力に気付ける女性は、自分だけではなかったのだという安心感に。
 逆に、喜十郎の本心が分からなくなった。
 わからない分、裏切られたと思った。

 彼女は、枕もとの携帯電話を手探りで掴むと、ディスプレイを開いた。
 暗闇に、兄の笑顔が待ち受けとして浮かび上がる。
 目覚まし代わりに使用している、と両親には言っているが、本当は違う。
 例え夜中であっても、兄から来るかもしれない電話・メールに、リアルタイムで返答するためだ。そのため彼女は入浴中であっても、この防水加工の携帯を手放さない。
 自分を裏切った。そう思えば思うほど、可苗は喜十郎が恋しくなった。
 その想いには、いつ芽生えたのかもしれない、重く濃い、血混じりの感情が多分に入り混じっている。
 殺意―とさえ呼んでもいいかも知れない。
 その重い感情は、つねに彼女が兄を見る眼差しに陰をつくりだし、彼が自分を『裏切った』後は、さらに深く暗く、可苗の心中に沈殿した。

―兄を犯したい。犯しながら殺したい。

 鎖で縛り付けた兄と騎乗位で情を交わしながら、首を絞める。そして失神した兄を人工呼吸で蘇生させ、再び首を絞める。そしてまた、人工呼吸で蘇生させる……。

 このシチュエーションを浮かべながら自慰を行う限り、可苗にイケない夜は無かった。
 ただの嗜虐性とは全く異なる、結果的には殺人すら許容する黒い情欲。
 その興奮には、血の禁忌に関わる要素が多分に含まれている。
 本来、決して許されざる相手だからこそ―その許されざる恋人に、許されざる行為を施すという興奮……。

 それこそは元来、従兄妹でしかない本家の姉妹たちには最も希薄な感情であり、そういう情の強(こわ)さこそが、―そういう感情を含む視線を実妹が兄に向ける、という事実こそが、喜十郎をして可苗から背を向けさせる最大の要因となった。
 しかし、可苗にはそれが分からない。
 分からないからこそ、許せない。
 許せないと思えば思うほどに、喜十郎への想いは深まる。
 情欲と殺意は矛盾しない。―それが可苗の“兄”に対する独占欲だった。


299:時給650
07/10/12 22:13:43 AkjMWiQi
投下終了です。
>>289さん
若干イモウトかぶってますね。悪意はありませんので、勘弁を。

300:名無しさん@ピンキー
07/10/12 22:51:29 7tJawlog
なんだかその……「萌え」よりも「気の毒」の比率の方が占める割合を増やしてきているような……

301:名無しさん@ピンキー
07/10/12 23:17:34 h3DNEqJX
お兄さん逃げ道無さ過ぎでカワイソス

302:名無しさん@ピンキー
07/10/13 16:32:21 mcZx6dl3
兄が哀れすぎて・・・・・・(´;ω;`)

303:時給650円
07/10/13 19:22:36 Vo4mpZoE
続きを投稿します。

304:時給650円
07/10/13 19:24:10 Vo4mpZoE

 身体が重い。
 まるで全身の血管に鉛が詰まってしまっているようだ。

「あら、にいさま、起こしてしまいました?」
 窓から入る眩しいばかりの朝日に、思わず薄目を開けた喜十郎の目に入って来たのは、彼の傍らで、コキコキと首を鳴らす深雪だった。
 目が覚めたのは、深雪の気配のせいではない。朝日の眩しさが、まぶた越しに彼の眼を直撃しただけだ。

「ああ、おはよう深雪。今朝も早いね」

 とは、彼は言わなかった。
 正直、口を開くのも億劫だったからだ。
 目だけ動かして時間を確認する。
 壁の時計は、午前六時を少々回ったところを指している。
 まあ、一家の朝食を作る深雪が、ベッドを降りる時間という時点で、うすうす現在時刻の見当はついてはいたのだが、普通の学生が起床するには、やや早い。

「んんん~~~~」
 彼の股間を枕代わりにしていた比奈が寝返りを打つ。
 股間だけではない。腹部に詩穂が、左肩に桜が、右足に真理が、―半裸の妹たちが、それぞれ自分の体重を彼に預けて眠っている。そして深雪はおそらく喜十郎の右上腕あたりを抱き枕にしていたのだろうか。いや、春菜の姿が無い。
「春菜ちゃんなら、薙刀部の朝練のために、一時間ほど前に起きてしまわれたようですの」
 むふん、と笑みを見せた深雪が、キングサイズのベッドから降りる。
「―よく、分かるね。俺がいま思ったことが?」
「にいさまの考える事なんて、姫はぜ~んぶ、お見通しですのっ」
(なるほど、その誇らしげな笑顔はそういう事か)
 もっとも、さっきの台詞は、本当は少し皮肉な意味を込めたつもりだったんだが、気付かれなかったようだ。

「姫は、これからシャワーを浴びて、お食事の準備をしますけど、にいさまは起きられるんですの?」
「……いや、もちっと……寝る」
「そうですの。でしたらまた、いつもの時間に起こしに来ますですの」
 ショーツ一枚の深雪は、そのはしたない姿を恥じる事も無く、軽い足取りで部屋から出て行った。


305:淫獣の群れ(その4)
07/10/13 19:29:30 Vo4mpZoE

(姫……か)

 その、深雪独特の一人称も、彼女が幼い頃から親戚づきあいしていた喜十郎には、別段奇異には感じない。むしろ、彼女が自分の事を『にいさま』呼ばわりする事の方が、はるかに違和感がある。
(教えてやった方がいいのかな。“姫”って、処女膜の隠語なんだぜって)
 取り留めの無い事を考えながら、喜十郎は再びまぶたを閉じる。

―しかし、そんな事を聞かされた彼女が、どんな反応をするのか、何となくは見当がつく。
『姫のばーじんを味見したい。にいさまはそうおっしゃるんですのね!?』
 むふんむふんと、得意げに鼻を鳴らし、目を輝かせて有頂天になる姿が、手に取るように想像がつく。
(このまま叔父さんが帰って来なけりゃ、いずれは、やっちまう事になるんだろうな)

 喜十郎とて、聖人君子でもなければ不能でもない。
 眼前で女が股を開けば、ムスコも固くなる。開いた股がヌレヌレだったら、そこに突っ込みたくもなる。そういう意味では、彼も普通の、年齢相応の男子に過ぎない。
 桜や春菜、そして真理といった比較的年齢の近い妹とは、そんな風に誘われて―というよりは半ば逆レイプに近かったが―やる事は済ませてしまっていた。しかし年少組の詩穂、深雪、比奈の三人とはまだ、いたしていない。
 彼なりの良心もあった。まだ小学生の比奈は当然としても、外見的にいかにも幼さの残る詩穂や深雪(一応二人とも中学生ではある)に手を出すのは、やはり躊躇われた。
 もっとも、縛られて抵抗できなくなった上で、自発的に股間に乗っかって来られたら、喜十郎本人には対処の仕様も無い。
 しかし、その辺は、姉妹のリーダー格の桜も納得しているのだろう。少なくとも現段階でこの二人に、破瓜を迎えさせる気は無いようだった。

 しかし、その三人と何もしていない清い関係かと問われれば、彼としても口を閉ざさざるを得ない。ただ挿入していないというだけで、年少組との同衾など、ほぼ連日の事だったからだ。
 もっとも、それは年少組の三人だけの話ではない。
 喜十郎がこの家で住むようになって以降、いや、少なくとも彼女たちが自分の事を“兄”だと認めて懐くようになって以降は、六人の“妹”が彼の寝床に潜り込まない晩は、ほぼ絶無に等しかった。

 昨夜にしてもそうだ。
 湯あたりと過剰な愛撫によって、ほとんど半失神状態で風呂から上がり、食欲などカケラも無い状態で、深雪の創作料理をたいらげ、その脚で寝室に直で連行され、六人がかりで責めに責められた。
 それでいて結局、一度の射精すら許可されず、やっと夜明け近くになって眠る事が許された。
 それも、次々と体重を浴びせ掛けてくる六人の“妹”の身体の下敷きになって、である。
―もっとも、彼女たち一人一人は、行為後の心地良い疲労感とともに、傍らの男に己の体重を預けているに過ぎないのだが……。
 そんな状態で数時間まどろんだところで、一体どれほど彼が肉体を休める事が出来るだろう。
 現に、喜十郎の全身は、慢性的な疲労に綿のように包み込まれ、最近では朝勃ちすら力が無い。
(辛抱たまらん)
 口にこそ出さないが、喜十郎の精神は、かなりのところまで追い詰められていた。


306:淫獣の群れ(その4)
07/10/13 19:32:33 Vo4mpZoE

 結局、喜十郎の意識が、そのまま泥のような眠りに身を任せることは無かった。
 人の心身は、骨の髄まで疲労に侵されると、もはや眠る事すら出来なくなる。喜十郎は、かつて何かの小説で読んだ記述を思い出していた。
 妹たちを目覚めさせないように気を付けながら、ごそごそと起き出す。
 全裸の肉体からはツンと酸臭が鼻につく。
 顔をしかめながら、そのまま引出しからトランクスを一枚引っ張り出し、シャワーに向かう。もう深雪も風呂場から出た頃合だろう。

「―だめだよぅ、お兄ちゃま」
「えっ!?」
 と声を立てる暇すらなかった。
 眼前に、ふわりと白い布切れが舞い降りる。
 詩穂自身の汗と唾液と愛液にまみれ、ごわごわに黄ばんだショーツ。
「今日からお兄ちゃまは、詩穂の下着を穿いて生活するんだよぉ」
 にぱっ、と詩穂が明るい笑顔を見せる。
 昨夜は汗まみれになって、あれほど乱れたにもかかわらず、寝癖一つ、髪に残っていない。
「……それとも、忘れたフリしてまた詩穂に、お仕置きされたかったのかなぁ?」
 無垢な笑顔が、瞬時にして上目遣いの淫蕩な嘲笑に変化する。

 喜十郎は引きつった笑顔を浮かべながら、
「わざとじゃないよ。……朝だからボッとしてたんだ。ごめん」
 精一杯言い訳をする。言い訳といっても、忘れていたのは本当だから、素直に謝るしかないが。
 このとき、もし詩穂の機嫌が悪かったら、今のことを口実に、またどれほどのお仕置きを喰らうかもしれない。だから、最大限口の利き方には気をつけねばならない。しかし、運良く彼女の機嫌は上々だった。


307:淫獣の群れ(その4)
07/10/13 19:33:41 Vo4mpZoE

「んふっ、だったら許してあげる。―ねえ、お兄ちゃま、一緒にシャワーあびよっ」
 そう言うが早いか、詩穂は疲労など微塵も感じさせない動きで、ベッドから降りた。無論、彼女も、その肌を隠す一枚の布すら身に纏ってはいない。
「一緒に、か?」
 反射的に訊き返した瞬間、“妹”の笑顔が途端に曇る。
「え、お兄ちゃま、詩穂と一緒にシャワー入るの嫌なの……?」
「あ、いや、確認しただけだよ、うん。―それならそれで、その、お願いがあるんだけど……」
 そう言いながら、喜十郎は詩穂を廊下に引っ張り出す。あまり騒がれて、まだ寝ている他の妹たちまで起きて来られては、何かと面倒だからだ。
「うん、いいよっ! 詩穂、お兄ちゃまの言う事なら何でも聞いちゃうっ!」
「何でもっ? じゃあ、この下着の件―」
「却下」
「……少しは考えようよ」
「だぁからぁ、詩穂が出来る範囲ならって話だよぉ」
 この下着強制の一件は、すでに詩穂一人の手を離れて、姉妹全員のお仕置きという形に移行している。つまり彼女一人の権限ではもうどうしようもない。それに、詩穂個人としても、“兄”が自分の下着を穿いて真っ赤になっている姿を見たかった。
「で、お願いはもういいの? お兄ちゃま」
「うん、その、……一緒にシャワー浴びるなら、その……」
「―?」
「やらしいことは、もうナシで頼むぜ」
 羞恥で耳まで真っ赤にして、そっぽをむいたまま、彼は呟くように言った。

 ぷっ!
 その瞬間、詩穂は、汗臭い“兄”の胸に飛び込んで、必死に笑いをこらえていた。
「詩穂、……?」
 くっ、くっ、くっ、くっ、くっ……!
 この“兄”には、こういう可愛いところがある。
 こういうポイントが、彼女たちにとっては、またたまらないツボであり、彼女たち自身の嗜虐性を120%引き出すことになるのだが、喜十郎本人はあまり気付いてはいなかった。
「いいよぉ、今朝はお兄ちゃまの言うこと聞いてあげる」
「はっ、助かるよ」
「その代わり、お兄ちゃま、―その後で、詩穂のお願いも聞いてねっ」
「……お手柔らかに頼みます」
「さぁ~~、どうしよっかなぁ」


308:淫獣の群れ(その4)
07/10/13 19:34:53 Vo4mpZoE

 詩穂は“兄”の腕を取ると、デート中の恋人のようにしがみ付き、いたずらっぽく彼を見上げる。
「詩穂、今日の放課後に、クレープ食べたいなぁ」
「ひょっとして、大黒屋の、あのバカ高いヤツか?」
「うんっ!」
「確かアレ、一個千円くらいするっていう……」
「詩穂の分だけじゃダメだよ。お兄ちゃまと二人分だよっ」
「あの、いまオレ、バイトの給料日前なんだけど……」
「うんっ、詩穂応援するねっ!」
 その明るい笑顔に、喜十郎もつられて苦笑する。
「仕方ないな、もう」

 何のかんの言って、喜十郎は、この“妹”たちと過ごす一時がキライではない。
 その一人一人は決して悪い“妹”ではない。年齢相応の魅力的な少女に過ぎないからだ。
 まあ、あくまでその底なしの性欲さえなければ、の話ではあるが……。

―ジリリン、ジリリリン、ジリリリリン!

 目覚し時計のような、けたたましい音を出して電話が鳴る。
 うるさいのも道理というべきか、綾瀬家の卓上電話はプッシュホンなどではなく、昔ながらの黒電話であった。
 人数分のフレンチトーストを作っていた深雪が、わたわたと受話器を取る。
「はい、もしもし、綾瀬でございますの。―あら、かあさま? こんな朝早くからどうなさったんですの? ―えっ、ええっ、本当ですのっ!?」

「……? どうしたの深雪?」
 今頃起きてきたのか、寝癖頭の桜が目をこすりながら、居間に顔を出す。
 喜十郎と詩穂は、まだ風呂場から出てこない。
 真理は低血圧なので、少なくとも、深雪が起こしに行くまで起きる事は無いし、比奈は洗面所で顔を洗いながら、自作の唄を歌っている。
「はい、分かりましたですの。では、失礼しますですの」
 深雪が受話器を静かに置く。


「かあさまが、帰って来るんだそうですの……博多から……」
「ええっ!!?」



309:時給650円
07/10/13 19:36:55 Vo4mpZoE
今回の投下はここまでです。

310:名無しさん@ピンキー
07/10/13 19:44:21 lVzPQ55h
GJ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!11


311:名無しさん@ピンキー
07/10/13 23:38:05 Xj/WBrGR
芋虫に群がる蟻が思い浮かんだ

312:名無しさん@ピンキー
07/10/14 04:11:25 Sb9VOzV2
かあさまも凄そうだな・・・wGJ!!!!!!

313:名無しさん@ピンキー
07/10/14 12:14:42 c350r/Xz
>>309
gj
取り敢えず一つ聞いていいか?


亞里亞は出ないのか?





亞 里 亞 は 出 な い の か ?

314:名無しさん@ピンキー
07/10/14 12:29:51 aXthQgOI
にーやー

に ー や ー

に  ー  や  ー

315:名無しさん@ピンキー
07/10/14 13:46:36 zyNCrXwp
アイヤ-

316:名無しさん@ピンキー
07/10/14 17:52:41 0u4FTMV/
チョイヤッチー

317:名無しさん@ピンキー
07/10/14 18:26:20 FDQP5Ggu
あ、哀れすぎる………全俺が泣いた

318:時給650円
07/10/14 20:10:23 fSR9jaTJ
続きを投下します。

319:時給650円
07/10/14 20:11:43 fSR9jaTJ

「喜十郎、ちょっといい?」
 昼休み、いつもツルんでいる仲間たちと学食に向かおうとしている喜十郎を、桜が呼び止めた。

 ちなみに桜は、学校では彼のことを『お兄様』とは決して呼ばない。
 彼女自身、喜十郎と従兄妹同士であるということは、このクラスの者であれば、誰でも知っているし、何より、彼と親しく口を利く者たちは、性別を問わず彼を『喜十郎』と呼ぶからだ。
(その、サムライのような彼の名前は、これまでの学生生活を通して、ほとんど仇名を必要としなかった)
 さらに桜は、現在の彼と自分たち姉妹の“関係”―養子縁組、同居の事実、さらに肉体関係など―が、外部に洩れる事を極度に恐れていた。
 今の生活と、彼女自身の妹たちを守るためだ。
 だから、この高校に通学している春菜や真理にも、中等部の深雪や詩穂にも、その連絡は徹底してある。
 しかし、いまの桜の眼差しは、単なる親戚兼クラスメートのものではない真摯さを伴っていた。
(何だってんだ、一体)
「ああ、悪いなお前ら、今日はオレ、学食はパスだわ」
 わざとらしく勝ち誇ったような笑顔で、背後の級友たちに軽口を叩く。

「おいおい喜十郎、まじかよテメエ」
「男の友情より、イトコのネエチャンを取ろうってか!?」
「単なる“イトコのネエチャン”じゃねえ。ミス3Bの誉れも高き、綾瀬桜のお誘いだ。お前らだったら断るか?」
 そう言いながら、桜の後を追って教室の扉に向かう。
「断るわきゃねえだろっ」
「でも、イトコだろお前ら」
「イトコとベンチに並んで座って、母ちゃんの弁当食うのか?」
「不潔だっ、不潔だぜテメエらっ」

「―うるさいわよっ あんたたちっ!!」

 扉から顔だけ出して、教室に轟くような桜の怒声。
 数秒間、昼休みに似合わぬ静寂が教室を覆ったのは、言うまでもない。


320:淫獣の群れ(その5)
07/10/14 20:13:51 fSR9jaTJ

「……すげえ声だな、お前。放送部に入ってもやってけるんじゃないか?」
「これでも一応、演劇部部長だからね。腹式発声なら誰にも負けないわ。それよりもアンタ……」
「?」
「深雪が作ったお弁当、お母さんのだって言ってんの?」
「仕方ねえだろ。それが一番波風立たないんだから」
「だったら、あんな連中なんかと、お昼食べなきゃいいじゃない。それも、わざわざ学食行ってまで」
「人間関係を軽視してたら、今のご時世、高校生なんざやってらんねえだろ?」
「イジメられるって言うの? アンタが?」
「美人で優しい、ミス3Bには分からん苦労さ。―さて」
 喜十郎はそこで不意に口を閉ざし、ジロリと桜を見た。

「本題に入れよ、桜」

 それまでの、お茶らけたクラスメートの顔の下から、頼り甲斐のある“兄”の顔が現れる。
 桜は、そんな二面性をあらわにした瞬間の喜十郎が、決して嫌いではなかった。
「―ええ、大変なのよ、お兄様」


「帰ってくるって……叔父さんたちが?」
「ええ……いえ、正確には違うわ」
 風吹きすさぶ高等部旧校舎の屋上。しかし、まだまだ肌寒い季節ではないため、逆にその風通しが心地いい。ここは、綾瀬家六人姉妹たちの秘密の集合場所でもあった。
 ちなみに、こんな場所へと通じる合鍵を持っているのは、小中高一貫教育のこのマンモス校でも、おそらく桜ただ一人に違いない。
「帰ってくるのはお母様一人だけ。お父様はまだしばらく博多にいるみたい」
「ふ~~ん。……で?」
「で? じゃ無いわよ、お兄様っ!」
 
 桜の態度は、すでにしてクラスメートから“妹”のそれへとシフトチェンジしている。
 喜十郎は、深雪の弁当を食べながら桜の話を聞いていたが、いま一つ彼女の話が分からない。
「だからさ、イマイチ話が読めないんだよ。叔母さんが博多から帰ってくる。しかも、深雪の聞いたところによると―」
 喜十郎はそこで言葉を切って、自販機で買ったホットの緑茶を一口ぐびりと飲み、食べ終わった弁当を流し込む。―で、また話を続けた。
「その帰宅は一時的なものではなく、一定期間にわたるものらしい。少なくとも二週間から一ヶ月」
「もっと伸びる可能性もあるわ」
「だからさ」
 喜十郎は、やれやれという表情で、アスファルトに硬い視線を送る桜に尋ねる。
「一体それの何が問題なんだい? さっきから聞いてたら、まるでお前、自分たちの母親が帰ってくるのが困るみたいな口調だぜ」
「困るのよっ!!」


321:淫獣の群れ(その5)
07/10/14 20:15:28 fSR9jaTJ

 そこでようやく、喜十郎も事態の深刻さに気付き始めた。

「困るような……何かがあるんだな……?」
 桜は、ノリこそ軽いが、そう簡単に冷静さを失う少女ではない。
「叔母さんが帰ってきたら、お前たちの―いや、オレたちの存亡に関わるような、何かがあるんだな……?」
 桜は静かに頷いた。
「なんだ? 一体何だそれは?」
「お母様は……」
「叔母さんは……?」

「―潔癖症なの」

……アノ、サクラサン……ナンデスカ、ソレ……?
 こんなに散々ビビらせといて、それがオチ?
 喜十郎としては、桜ではなく、むしろ不思議と叔母の方に怒りが沸いたが、しかし同時に興味も沸いた。

「……説明しろよ桜。ただの潔癖症っていうだけなら、お前がそんなに怯えるわけがねえ」
「潔癖症って言っても、他人の後のトイレに入れないとか、そういうんじゃないわ」
「当たり前だ。そんな下らねえオチなら、オレは今すぐ学食に行くぜ」
「人の性的な行為が許せない性質(たち)らしいの。だから、私も昔、初めてオナニーを見つかった時は、こっぴどく折檻されたわ……」
「で?」
「で、じゃないわっ! いまの私たちの関係がバレたら、一体どうなると思うのっ!?」
「そりゃ……まずいだろうな」
「まずいなんてもんじゃないわ。まずいなんてもんじゃないわよっ……!!」
 桜は、それこそ親指の爪をかじりながら、目を血走らせている。
「でもさ、そんなもん、それこそ見つからなきゃいいだけだろ?」
「何言ってるのよっ! あんな狭い家で、一体どうやってバレずにヤれって言うのよっ!!」
「いや、だからさ―」
 喜十郎は、ことさら彼女を落ち着かせようとオーバーアクションを取る。
「バレずにヤるのが不可能なら、しばらくヤらなきゃ済む話じゃないか。どうせ、最悪でも一ヶ月くらいで、九州に帰っちまうんだろ?」
「―冗談言わないでっっ!!」


322:淫獣の群れ(その5)
07/10/14 20:16:59 fSR9jaTJ

 桜の剣幕に、思わず腰を引いてしまう喜十郎。しかし、未だに彼は桜が本当に言わんとする言葉の見当がついていない。

「いや、でもさ……」
「一ヶ月もガマン出来るわけないでしょうっ!! 二日三日だって、お兄様ナシじゃ怪しいもんだわっ。何でそんな事も分かんないのよっ!!」
「―さくら……!」
「私たちはねえ、私たちはもうねえ、お兄様中毒なのよ。もうお兄様のいない生活なんて考えられないんだから。―責任とってよっ! 取りなさいよっ!!」

 そう叫んだ桜は―怒りか、もしくは照れか―うなじまで真っ赤になっていた。
 一人の男としてそこまで言われては、喜十郎としても嬉しくないわけが無い。だが、空気的に素直に喜んでいい雰囲気でもない。現に、桜の言い分は支離滅裂もいいところだ。
「いや、でも……責任とか言われたってさ……」
「責任取れないとは言わさないわよ……! 私たちをこんな身体にしたのは、お兄様なんだからねっ」
(何を言ってやがる、オレを無理やり逆レイプしたのは、お前らのクセに)

 迂闊にも一瞬ムッとした表情が、桜にも丸見えだったのだろう。
「いま、オレのせいじゃないとか考えてたでしょう……!!」
「うっ、いや、……その……」
「いい? どう思おうとお兄様には責任があるの。日本では、男女関係の責任は男性が取る事に決まってるんだからね。―だから、お兄様には絶対に協力してもらうわ……!!」
「協……力?」
「そうよ」
 そこまで言って桜は、いつもの淫靡な“妹”の笑みを浮かべ、“兄”のブレザーからのぞくタイを掴み、引っ張った。

「お母様を出し抜くためには、もう手段は選べないわ。トイレだろうと玄関先だろうと、風呂場だろうと食事中だろうと、スキさえあれば―ヤれると踏んだときには、必ず協力してもらうわ」


323:淫獣の群れ(その5)
07/10/14 20:18:42 fSR9jaTJ

 そう言って桜は、喜十郎の唇との最後の距離をゼロにする。
 タイを引っ張られているため、喜十郎は自分からキスを拒めない。

 ひとしきりキスを味わった桜は、彼を解放すると、
「例えば、それが学校だったとしても、ね」
 そう囁いて、スラックスの隙間から、股間に手を突っ込んだ。
「うっ!?」
「あら―えらいのね、お兄様。ちゃんと詩穂のパンティを穿いてるなんて……」
「桜……その……」
「なぁに? お兄様」
「スキあらば、いつでもどこでもって、―それで見つかったらオレたち……?」
「タダじゃ済まない、でしょうね。少なくともお兄様は、我が家からお払い箱って事になるでしょう」

 その瞬間、フラッシュバックのように喜十郎の脳裡に浮かんだのは、自分を見下ろす可苗の姿だった。

「じょっ、冗談じゃねえっ!!」
 喜十郎は、反射的に桜を突き飛ばす。
「きゃっ!?」
“兄”の予期せぬ反撃に、桜は思わずひっくり返った。
「そんなお前らの、そんな―ワガママのために、いちいち追い出されてたまるかっ!」
「おにいさま……?」
 桜は驚いていた。
 常ならぬ彼の剣幕に、ではない。
 かつて自分たちに、何をされても直接的な暴力で反撃した事の無い“兄”が、『お払い箱』という言葉に、そこまで過剰な反応を示した。それが意外だったのだ。

「帰りたくない、の……?」

 その瞬間、哀れなくらい喜十郎の顔が歪んだ。
「そうなのね? 帰りたくない。実家に帰れないワケがあるのね?」
 桜は立ち上がった。そして、ゆっくり喜十郎に歩を進める。
「私たちに何をされても、お兄様が全然逆らわなかったのは、本当はそのためなのね?」
「違うっ!! 違うっ!! 違うっ!!」
「隠しても無駄よっ!!」


324:淫獣の群れ(その5)
07/10/14 20:20:16 fSR9jaTJ

 その瞬間、勝負はついた。
 彼は期せずして弱味を匂わせ、彼女は、抜け目無くそれを嗅ぎとった。
 誰のせいでもない。眼前の女の鋭さを侮った喜十郎自身のミスだ。

「お兄様が、一体何で帰りたくないのか、……そんな事はどうでもいいわ」
「桜……」
「ただ、そこまでして帰りたくないなら、私たちは協力し合うべきだと思わない?」
「脅迫する、つもりか……?」
「とんでもない!」
 その瞬間、桜は、自分のスカートをまくり上げ、喜十郎に自分のショーツを見せつけた。
「さあ、お兄様、―舐めて頂戴」

「……さ、くら?」
「お兄様がいなくなれば、お兄様中毒の私たちは困ったことになるわ。でも、一緒に住んでないからって、いざとなれば逢いに行く事は出来るわ。お兄様のご実家でも、どこかの公園でもね。でも、お兄様は違う……!」
 取り憑かれたように喋りつづける桜の頬は、真っ赤に興奮している。
しかし、それはさっき、同じく『お兄様中毒である自分たち』をカミングアウトした時に比べて、明らかに別種の紅潮だった。

 もう、喜十郎は何かを言う事すら出来ない。いや、桜の唇から放たれる言葉に、動く事すら出来ない。
(やめろっ! もう言うなっ!! もう聞きたくないっ!!)
 心の中で、悲鳴だけが半鐘のように鳴り響く。
「お兄様はご実家に帰れない。帰りたくない。―だったら、そのために最大限必要な事はしておくべきじゃない? 例えば……」
(もう、もうっ、勘弁してくれっっっ!!)
「―例えば、お兄様と私たちの関係を知る者、または当事者たちを、つねに上機嫌でいさせるための、そんな努力とかね……!」



―ぴちゃ、くちゃ、ぺちゃ……。
「―あ、もしもし、深雪? ―うん、私、桜―ぁぁぁ―ええ、お兄様も協力―してくれるって―くぅぅぅ、そこっ、そこっ!―え、ああ、今ね、ふふふ、お兄様がキョ、ウ、リョ、ク、してくれてるところ……ふふ、ぁっ、いいっ―」

 電話中の桜の、膝上スカートは不恰好にふくれあがり、その中に誰かが入り込んでいるのが分かる。そして、その“誰か”が、何をしているのかも……。
「んふふっ、そうよお兄様……あと三分でイカせなさい。さもないと、午後の授業に間に合わないわ……! ―あああっ、そうっ、そこそこっ、―ぁぁぁっ、あああああっ!!」

 桜の嬌声は、風にかき消されて、校内の誰の耳にも届いてはいなかった。


325:時給650円
07/10/14 20:22:25 fSR9jaTJ
今回はここまでです。

326:名無しさん@ピンキー
07/10/14 20:23:15 B4yN47Gj
乙!

327:名無しさん@ピンキー
07/10/14 20:26:21 nbGhsNAw
なんというリアタイ
GJ!

328:名無しさん@ピンキー
07/10/14 20:42:54 n8Vjntx5
乙です

329:名無しさん@ピンキー
07/10/14 21:25:54 E3orzUlf
乙です。…しかし兄貴カワイソス

330:名無しさん@ピンキー
07/10/14 22:36:04 ph8pFXus
乙です

「責任取れないとは言わさないわよ……! 私たちをこんな身体にしたのは、お兄様なんだからねっ」
どう考えても自分達の蒔いた種です。本当に(ry
兄貴カワイソス

331:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:22:09 efzpEKcW
どんだけ不幸なんだよ兄貴

332:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:46:05 ibsNQi/i
GJ!!
一人や二人でも十分にキモいのに、キモウト×7ともなるとキモいとか言ってる場合ではなないな…
下手すると過労死しそうな兄貴カワイソスw

333:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:48:24 +YDlAt4W
居候してればいずれ過労死
かと言って実家に帰ったら実妹のSATSUGAIとか
逃げ場なさ杉だろ常識的に考えて・・・w

334:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:53:53 vOEqfsPa
つ泥棒猫の家

335:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:58:31 pSQ9TC1y
海外へ高跳びとか

336:名無しさん@ピンキー
07/10/14 23:59:34 JlOVRECo
乙です

みんなにちょい質問
執筆初めてで
当然遅筆で
でも話がグダグダと長くって
予定としてエロ要素が無いor薄くて
キモウト度も薄くて
でも妹スレにはふさわしくない

っていうすんごい微妙な物が生まれるかもしれないんだけれど
もしできてしまったらここに張ってみてもいいかな?ていうか張りたい
一応今可否を聞いておきたいです

337:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:04:54 vOEqfsPa
聞くくらいなら書くな、以上

338:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:11:40 XSMD4cnf
誘い受け不要

339:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:15:29 YzIs4uZI
今投下してヒンシュクをかうのが怖いというのなら、次スレがたった後にここに投下するのはどうだろう。
さすがに作品を見ずしての合否の判断は難しい、てか不可能だし。

340:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:16:27 B88mhBvz
書きあがったあと「今から投下します。」でいい。
気になるなら始めて書いたのでよろしくお願いします。とも付けて、それでいいから。
張りたいなら張ればいいじゃないか。

341:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:18:21 zaomwxZy
当スレは誰でもウェルカム
来るもの拒まず去るもの追わずが基本・・・・

342:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:34:52 n9OeXBOP
追いかけたら投下してくれるのならば、いくらでもって追いかけるのだがw
ここの姉妹は特にそういう猟犬めいたことが得意そうだ。彼女とのお泊まり旅行、視界を横切る姉妹の影!

343:名無しさん@ピンキー
07/10/15 00:52:51 ONStwd3C
>>337-341
OK了解

344:携帯から思いつき
07/10/15 02:16:28 ONStwd3C
もう、そう生徒も見あたらない夕方の校門
玄関から近づいてくる女生徒一人
この見慣れたシルエットは妹の香織だ
「おっ、関心関心!今日はちゃんと待っててくれたんだね?」
「ああ…まあ昨夜は死にかけたしな」
朝までナイフ持って追いかけ回された事を思い出し身震いが走る
「流石に連日は勘弁っ…て、お前!血が出てるじゃないか!?」
香織の小さな胸から上が
べっとりと血に染まっている事に気づき駆け寄る
「あはっ♪心配してくれるんだ?でも大丈夫、返り血だよ」
「またかよ…びっくりさせるなよ、ていうかせめて着替えてから出てこい」
ひとまずの安堵で、ため息がもれる
「いや、もう玄関だったからね、豚が一匹馬鹿言い出してさー」
なるほど遠く見える玄関には倒れた女が確認できた
「明人さんを紹介してくれーって…何考えてんだか」
「お前はまた…俺の貴重な恋人候補を…」
手を地に着いてうなだれる
多分、あの子は香織の友達『だった』陽子とか言っただろうか
結構可愛かったのに…
「だからさ、そういうのは私にしろってさんざ言ったじゃん…あ、『加減はしといた』から救急車いらないよ」
119を入力した携帯電話を取り上げられる
「俺も、妹にしか見られないって言ったろ」
「ふーん…まあいっか、いつか世界中の女殺したらさ、流石に私を抱いてくれるよね?」
「マジな目で言うなよな恐ろしい」
「じゃあそうなる前に私を好きになれば?」
はぁ…と大きなため息がこぼれる
なんだかんだで香織を拒絶しきれない俺のこの今が
いつかは彼女を受け入れるだろう事を予言してくれやがる
「まいったなぁ…」
我ながら、情けなくって涙が出るよ
でも、それより今は
玄関のあの『死体』と
香織の制服をなんとかしないと
『大事な妹』がポリ公にパクられちまう
今日もまたこれから忙しくなりそうだ

345:名無しさん@ピンキー
07/10/15 02:16:51 0fCQTGJq
ふぅ・・・疲れるな
誘い受けする時点で、それがどういうことになるのか考えようよ・・・
まぁ、ほじくりかえすのもかわいそうか

346:時給650円
07/10/15 03:57:06 D8b/QqQN
本日二回目ですが、投下します。
休日の晩は妙に筆の進みが早いので、ご勘弁を。

>>313
展開次第では出します。
多分、他の『妹』たちも。

347:時給650円
07/10/15 03:59:13 D8b/QqQN

「お兄ちゃま、これ、ホントにおいしいねぇ」
 詩穂が満面の笑みを浮かべて、コアラのように“兄”の腕にしがみつく。
「―だな。千円も取りやがるだけのことはある、かな?」

 その日の放課後、喜十郎と詩穂は、通学路の人気スポットの一つである『大黒屋』で並ぶこと20分、ようやく“妹”目当てのジャンボクレープを手に入れ、そのまま同じ学校の生徒が寄り道でにぎわう商店街を歩いていた。
 桜とあんなことがあった後なので、正直に言えば買い食いなどする気分ではなかったのだが、まあ、そんなクサクサした気分で帰宅するのも、喜十郎としては躊躇われた。
 それに“妹”たちを、無用に挑発する行為は、これまで以上に避けねばならない。約束をすっぽかすなど、もってのほかだ。
 まあ、シラフの時の詩穂は、妹たちの中でもかなりの癒し系である。
 ヘコんだ時に、女の子に癒されるというのも、決して悪い気分ではない。

 詩穂と喜十郎の片手には、それぞれジャンボサイズのクレープが握られていた。
 まあ、女の子が甘い物好きなのは当然だからいいとしても、喜十郎自身は自他共に許す辛党であるため、このパフェ並みにごてごてに膨らんだクレープは、彼にとっては結構きびしい。かといって―
『そんなに美味けりゃオレの分やるから、お前食え』
 などと、ムードぶち壊しの一言を、この喜色満面の“妹”に言えるほど、彼は残酷ではない。

 しかしこの、一見バカップルにしか見えないくっつき方で歩くのも、実際つらい。
 それが、いつクラスの悪友たちに出くわすかもしれない、この商店街では特にだ。


348:淫獣の群れ(その6)
07/10/15 04:01:07 D8b/QqQN

「取り合えず詩穂、歩きにくいし、少し離れないか?」
「ええ~~~~っ、お兄ちゃまは、詩穂とくっつくのがいやなのぉ?」
「いや、そうじゃなくてさ、その、何だ―制服にクリームが付いちまったら、困るだろ?」
「却下」
「……少しは考えようよ」
「いいもぉん。クリームが付いたんなら、詩穂がキレイにしてあげるだけだもぉん」
 そう言うが早いか、詩穂は“兄”の腕をさらに引き寄せ、同時に自分も背伸びをする。
 そして―彼の頬に付着していた抹茶クリームを、れろり、と舐め取った。

「こんな風に、ね」
「……しほ……」
「えへへへへ……お兄ちゃまも、詩穂が汚れたらきれいにしてくれる?」
 真っ赤になりながら、上目遣いに尋ねるその“妹”の表情は、風呂場やベッドでは見せない、年齢相応の可愛げに満ち溢れていた。
「うん……まあ、考えとくよ……」
 その愛嬌のカタマリのような笑顔を前に、こんな気の利かない返事しか返せない自分が、喜十郎は非常にうらめしかった。



「お兄ちゃん―?」

 血が凍った。
 それまで汗ばみそうだった蒸し暑さが、一斉に冷えた。
 
「かなえ……?」


 次の瞬間には、胸元にタックルを受けていた。
 喜十郎の眼に焼きついたのは、背までなびいた黒髪と、左右に一本ずつの三つ編み。
 その人間サイズの柔らかい弾丸を反射的に抱きとめ、勢いで倒れそうになるのを踏ん張り、こらえ、持ちこたえる。
「お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃん! お兄ちゃんっっ!!」
「―かなえ……どうしたんだ、お前……?」
「どうしたじゃないよっ! どうした……じゃ……ぅぅぅっ……!」
 そのまま身体を預けて泣き出してしまう可苗。おろおろしながら、そんな彼女と周囲を見回す喜十郎。そんな二人をぽかんと見つめる詩穂。
 商店街の通行人たちも、足こそ止めねども、その視線を思わず向けてしまう光景。

 やがて、喜十郎の目付きが変わった。
 その瞳から怯えと驚きは消え、覚悟と冷静さを取り戻した“兄”の相貌に戻った。
 その瞬間を、通行人を含む夥しい注視の中で、詩穂だけが気付いていた。


349:淫獣の群れ(その6)
07/10/15 04:03:59 D8b/QqQN

「―詩穂」
「うっ、うん」
「悪いがデートはここまでだ」
「ええっ!?」
「こいつを家の方まで送っていかなきゃならねえ」
「でっ、でも、お兄ちゃま……」
「覚えてるだろ? オレの妹の可苗だ」
 喜十郎は、そっといとおしむように、泣きじゃくる可苗の頭を撫でる。
「帰ったら、深雪に伝えといてくれ。……今日は多分、メシはいらねえ」
「お兄ちゃま……」
 なおも、詩穂は喜十郎に何か言わんと食い下がるが―。

「ほら可苗! もう泣くなったら、恥かしい!」
 もはや“兄”の眼が詩穂に向けられる事は無かった。
「……だってぇ……だってぇ……お兄ちゃぁあん……」
 詩穂が気付いた時は―可苗が、さっきまでの詩穂以上の密着度と甘えた態度で“兄”にくっつき―二人の姿は、商店街の人ごみの向こうに消えていた。
 そして可苗は、最後まで詩穂に一瞥すら向けなかった。


「うおっっっ!?」
 素っ頓狂な声を出して、通行人の一人が転倒する。
 思わず振り返った詩穂が見たのは、その通行人に踏まれ、足を滑らせた原因であろう物体―可苗を抱きとめる瞬間に“兄”が反射的に手放した、大黒屋のジャンボクレープ……。


 詩穂は、その無残に踏み潰されたクレープに、胸の奥にズキリと、電流を流されたような痛みを感じた。


350:淫獣の群れ(その6)
07/10/15 04:05:55 D8b/QqQN

 綾瀬可苗―綾瀬六人姉妹の従姉妹にして、綾瀬喜十郎の実妹。
 中学三年生、つまり本家でいえば、深雪と同い年(15歳)ということになる。

 この少女は、およそ人類が羨むべきほぼ全てに恵まれて、この世に生を受けた。
―美貌、頭脳、身体能力、性格、雰囲気、要領、手先の器用さ……。
 数え上げれば切りが無い。
 完璧超人とは、この少女を指すのであろう。可苗を普通に知るほぼ全ての人々が、この意見に異を唱えない。
 無論、六人姉妹だとて、個々のレベルは高い。
 男から見たとき、同世代の少女たちと比較しても、その魅力のハイレベルさは歴然だ。
 しかし、それでも総合評価では……やはり可苗に一歩譲らざるを得ないだろう。
 それほど可苗は、バランスの取れた、いわば反則的に“何でもアリ”の少女だった。

 その美貌は、彼女の通う女子校で『開校以来の美少女』と謳(うた)われ、
 その頭脳は、学年総合成績五番以下に落ちたことが無く、
 その身体能力は、体育祭・球技大会で花形となり、
 その性格は、あくまで大人しく、控え目で、自発的に目立つ事をよしとはせず、
 その雰囲気は、公卿の末裔に相応しく、所作の一つ一つに匂うような気品があり、
 その器用さは、ピアノの全国コンクールで入賞したほどであり、
 その要領よさは、それほどの完璧な自分でありながら、クラス内に一人の敵をも作る事は無い。
 
 無論、喜十郎としても、そんな可苗がキライというわけではない。
 むしろ、出来過ぎの妹として、何度も鼻高々な思いをした事もあるし、彼女自身よく気の回る、いい妹であった。そんな彼の実妹への評価は、基本的に今でも変わらない。

―ただ、恐いだけだ。
 
 何もかも完璧にこなす美貌の妹。
 だが、いつからだろう。日常生活に於いて、彼女からの目線を常に感じるようになったのは。
 ただの視線ではない。
 暗く、濃く、重く、深い、粘液質な視線。
 それを家にいる間中、喜十郎は常に感じるようになった。
 やがて下着やTシャツが無くなり、携帯のデータが覗かれ、弁当に異様な唾液臭を感じるようになった時、喜十郎は初めて気付いた。

 かつてクラスの女子が言っていた、自分の父親への愚痴。
『いや、だってぇ、あたしの事マジキモい目で見るんだよ、うちのオヤジィ。もう、死ねって言うか、死んでいいよって言うか、頼むから死んで下さいって言うかさぁ。とにかく実の娘に、あのキモいオヤジ目線はねえだろっていうかぁ……(繰り返し)』



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