07/09/22 22:04:21 QK20MM+m
(後日談)
=================
以上が私のカウンセリグ室で彼女が語った全てである。
彼女を襲った2人についてだが、
その後の通報で警察が駆けつけたときには、2人とも頭部に極めて
強い衝撃を受けており、今では廃人同然の暮らしをしているという。
その後、風浦可符香は妊娠が発覚して高校を退学し、私のカウンセ
リングは終わった。
それからも、度々手紙のやり取りをしていたが、
なんでも男児を出産後、大検を取得し、大学に進学したとのことだった。
数年後、たまたま成長した彼女に会う機会があった。
=================
満開の桜並木とピンク色の花びらの舞散る中を、
私は彼女―風浦可符香―と彼女の息子と一緒に歩いていた。
すでに桜は開花時期を過ぎ、その多くが散り始めていた。
彼女の息子は5歳位になっただろうか。
桜の木の下を「あれは、桃色ドラゴン、あれは、桃色新幹線、
あれは、桃色しっぽ」と名づけながら駆け回っている。
「・・そう、今は高等学校の国語の教員をしているの。」
「はい。まだ2年目ですから駆け出しですけど。」
彼女はすっかり大人びていたが、トレードマークの髪飾りを
いまだ付けていた。
「夢の中で『先生』は教科書に書いてある事を教えてくれたん
じゃないんです。
世の中にある現実やそれを見た時の人の心の変動。
そういった生の声や経験を教えてくれていたんだと思うんです。」
「生の声や経験・・・。」
私は噛み締めるように繰り返してみた。
521:後日談②
07/09/22 22:05:13 QK20MM+m
「悲しさとか、苦しさとか、絶望に思えることって世の中に一杯ある。
残念ですけれど、それは確かに存在しているんです。
その事に正面から向き合って、乗り越えていくことを学ぶのもきっと
大事な事なんですよ。
私はまだ未熟だけど、そういう事も含めて教えていける先生になり
たいんです。」
彼女は変わっていた。
彼女の目線は真っ直ぐに前を向いて。
あらゆる現実と戦い、そして乗り越えていく強い意志を持っていた。
いろいろ聞きたいことはある。
あの子の父親は誰なのか。
糸色望という人物は、戸籍に残っているのか。
あれから絶望先生には会ったのか・・・・etc
でも、そのような事はほんの小さな事柄に今は思える。
(敵わないな・・。)
かつての自分は、彼女を救うことが出来なかった。
カウンセラーとして相談を受けていたのに。
私は彼女の前向きさをそのまま信じ込んでいただけだった。
だが、確かに彼女は乗り越えたのだ。
圧倒的な絶望を―。
「私も『絶望先生』みたいになれるかしら。」
ふと、呟くと、彼女は少し驚いたように私を見た。
そして、にっこり笑う。
「なれますよ。智恵先生は、人の弱さが分かる素晴らしい人ですから。」
522:後日談③
07/09/22 22:05:51 QK20MM+m
その時、強い風が吹き、さぁーーーーーーと桜が舞い散った。
桜吹雪が一斉にあたりを覆う。
「あぁーーー。桃色うすい君の花びらが散っちゃたーーー!!」
泣きべそをかいて、男の子が私達の方へ駆け戻ってきた。
「おかあさまーー。桃色うすい君がはげになっちゃうよーー。
ぜつぼうしたーー。」
彼女はちらりと私を見て、軽く微笑んだ。
「いつの間にか、あんな言葉覚えているんです。不思議でしょう?」
彼女はそっと前かがみになると、息子の涙を指で拭いてやり、優しく
語りかけた。
「望、桜の花びらが散ってしまうのは悲しいことよ。
でも桜は花びらを散らした後、また新しい芽吹きのためにしっかりと
準備して生きていくの。そしてまた、美しい花を咲かすのです。」
「そっか!!また、会えるんだね!!」
その時、彼は微かにしかしはっきりと母親の隣を見て頷いた。
彼女の隣には、和服姿の男性の姿が寄り添うように微笑んで立っていた。
慌てて目を凝らす―と、もう彼女の隣には誰もいなかった。
―季節がめぐり時が移ろう中で、人も変わり、成長していく。
一方で、変わらぬものも確かに存在するのだ。
それは、人の教えであったり、想いであったりするのだろう。
桜の舞う季節の中…、私はむしょうに嬉しくなって涙を流していた。
<終わり>
523:146
07/09/22 22:08:26 QK20MM+m
<あとがき>
読んでくださった方、スルーしてくださった方、皆様に感謝いたします。
幽霊とか・・・妄想全開だ。
可符香だと、どうしても最後は桜のシーンになってしまう上に、使い古・・
いやいや弁解はすまい。
更なる欝展開を期待していた方には申し訳ない。
救いなく堕ちて嬲られるポジティブ少女・・・うーん、何だかドキドキしてきた。
誰か、書いて?w
まあ、色々突っ込みどころはあると思いますが、
「やだなぁ、霊界の神秘ですよぉ」でお願いしたいです。
>>238さんの言うとおり、>>99で望×芽留を書いた者と同一人物です。
後から読み直すと闇鍋で釣れそうなほど、恥ですなあ(奥義ってなんだよ;)。
今回は長くならないように!と思ってたのに、結果は・・ああ、絶望した!!
今後は自重します・・。
一応題名を付けてみたり。
『可符香+絶望:その心は?』
ひねりもオチもないんだ、許して欲しい。
524:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:08:27 zAwuGhKy
やべえ
リアルタイムで追っててうるうるしっぱなしだった
こんな素敵な話を読ませてくれて、ありがとう
525:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:10:32 TZcdWCIl
初めてリアルタイムで読んだ。
最後のシーンに鳥肌たったよ。GJ!
526:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:13:17 PnXA2rH0
ごめんなさいぃぃぃ!
カキコかぶった! 日陰者やってしまいました!
こんないい話に横槍して申し訳ない。orz
あらためて乙です! GJ!
527:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:14:12 7tKUie6n
カフカ3連発だな。
ギャグ、シリアス、感動系と全部違った味わいでよかった!
みんなGJ!
そろそろ新スレ立てないとヤバイんだが、自分は規制でたてられない。
誰か頼む。
528:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:22:44 Cj+7R/qZ
倫×望とか望総受け読みたいです。。。
それか、あびる×望ですね
529:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:23:27 AeTL+wLp
可符香好きの俺にはたまらん夜だ
救いのあるラストにしてくれてありがとう
530:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:24:26 V/a2xR1f
感動した!文化レベル高すぎます!!この板でこんなクォリティの高い作品に出会えるなんて!真昼が雪の方といい430氏といい…ええい!このスレは化け物か!?
531:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:30:08 rJOOZHPc
乙、GJ!
大正時代にTVはなかったなんて無粋なつっこみする気も引っ込むほど
いい作品読ませてもらいましたw
532:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:36:44 xPZbs1qg
>>531
同感だな。
>>498の
>肩に手を回と、返ってくる感触で、以前よりも彼が随分痩せている事に気が付いた。
の「回す」の部分に脱字があることや
>>520の後日談の部分で
「カウンセリング室」じゃなく「カウンセリグ室」になってることなんか
全く気にならないほどいい作品だった
533:名無しさん@ピンキー
07/09/22 22:37:25 E355r+oL
桃色うすいがハゲになるてwwwwwwwww
534:名無しさん@ピンキー
07/09/23 00:29:35 FRKZdo26
>>523(146)
絶望的なエンディングも覚悟して読んでいただけに、可符香が救われたときの感動がハンパじゃなかったです
冗談抜きに眼の奥がじんわり来てます………ラストから後日談にかけて、本当に素敵でした
本当にありがとうございました
535:名無しさん@ピンキー
07/09/23 01:04:14 byx08FFx
感動もエロもギャグもネタも充実してて、凄のね。
536:名無しさん@ピンキー
07/09/23 01:15:20 l5Olmzew
うお、皆すげーぜ!
謹んでGJを進呈します!
そして気が付けば容量が瀬戸際であるw
537:名無しさん@ピンキー
07/09/23 01:48:20 UfIxzbYB
皆がよく使っていたが自分で使う事には躊躇いがあった表現がある
可符香SS三連発を読んで今こそ言おう
神だ
538:名無しさん@ピンキー
07/09/23 01:51:55 bO9qWXmd
絶望ガールズが真夜にアナル拡張されるSSはまだですか?
539:名無しさん@ピンキー
07/09/23 01:55:38 UfIxzbYB
良かった、
圧倒的な絶望を乗り越えられて本当に良かった
540:名無しさん@ピンキー
07/09/23 02:00:05 lpBHRHiP
>>538
百合スレいってリクしろよ
541:名無しさん@ピンキー
07/09/23 02:18:53 YWGqIsKn
>>538
アニメも終わっちゃったし、君も自分で書いて投下してみてはどう?
僕も書くから君も書け。
542:名無しさん@ピンキー
07/09/23 02:36:53 G+kkmW40
泣かないぞと思ってたのに涙が溢れて戸惑った…
しかし桃色うすい君で盛大に吹いて鼓膜吹っ飛ぶかと思った
絶望した!個人の感情までも多忙にさせる作者に絶望した!
543:名無しさん@ピンキー
07/09/23 06:09:12 z3W4j4hR
望があびるの家に誘われて尻尾料理をご馳走になると同時にあびるもご馳走になるという話を思い浮かんだが、書けない。
自分で書けといわれて書いてスルーされたのがトラウマ。
544:名無しさん@ピンキー
07/09/23 06:49:48 JhhEPFDK
スレ、1ヶ月持たなかったね・・・
アニメが終わっても、この勢いが続くことを祈る・・・!
545:名無しさん@ピンキー
07/09/23 07:19:31 V9KhkUUs
こうして並ぶと色んな可符香観が見れて面白い
546:名無しさん@ピンキー
07/09/23 09:40:49 l1dU++wT
>>146氏のSSに萌と絶望を同時に叩きつけられたんだぜ…二重の意味で。
えー、真昼を書いてる奴です。
…>>146氏と微妙に、いやむしろ思い切りかぶっとる所がごぜぇます。
書き溜めている段階ですでにそうなってたんでパクりじゃないと言い張りたい…!
あえてどこが、とは書きませんが、今後投下する分で>>146氏のパクり部分らしき所を見つけても、
可哀相な奴を見る目で視姦するか、スルーするかしてくだされ…。
というか、この分だと本当に次レスまで駄文ポータビリティしてしまいそう。
こんなもんにもホワイトライをくれる皆様に励まされつつ、執筆中でございます。
547:名無しさん@ピンキー
07/09/23 10:19:01 lpBHRHiP
元ネタが元ネタだから被るのは仕方ないって。
その辺りは全員わかってくれると思う。
548:名無しさん@ピンキー
07/09/23 10:30:46 VTGSkIYH
次スレはまだか~
549:名無しさん@ピンキー
07/09/23 10:49:54 7siGGXge
次スレ
スレリンク(eroparo板)
おっきした。空気嫁ずに勃ててごめん。
550:前スレ851
07/09/23 10:53:43 P2jpoyHF
146さんの読みましたが、どう転がっていくのか予想できない強烈なドライブ感とか
笑いの小ネタとかいいですね。面白かったです。
あと先生が何故和服なのか、説明がついているのがいいなあ。
551:名無しさん@ピンキー
07/09/23 12:49:21 PESxYJ8+
今このスレが、エロパロで一番熱い!
552:名無しさん@ピンキー
07/09/23 15:11:03 Tx+2iKhX
10巻の投稿イラストで
真夜が「満月の夜にまた会おうか」ってセリフがあるけど
これやっぱり元ネタはKOFのバイスかな?
553:名無しさん@ピンキー
07/09/23 15:27:44 0RKpmk06
てか、まさかアニメ最終話に「赤木」が居るとは・・・・・・
554:名無しさん@ピンキー
07/09/23 16:07:03 bekHLYFk
それは本当の赤木じゃないかwww
555:名無しさん@ピンキー
07/09/23 16:28:37 gIijnZn8
っでも、他の3人の組み合わせのネタを考えれば赤城だけど、
実際は名簿にも載ってる赤木だから紛らわしいな。
556:名無しさん@ピンキー
07/09/23 20:35:51 bBpbx1zq
単純なスタッフのミスだろう
557:名無しさん@ピンキー
07/09/23 21:18:18 lpBHRHiP
あそこのアニメでそこまで単純なミスは起こさないだろ。
558:名無しさん@ピンキー
07/09/23 21:43:35 V9KhkUUs
アニメは可符香のキャラが既に間違いだらけだろ
559:名無しさん@ピンキー
07/09/23 21:46:53 O+jT0Ygy
アニメの可符香はただの電波ちゃんに終わっちゃった気がしないでもない。
てか、自分で言っておいてアレだけど、そろそろスレ違いじゃね?
560:名無しさん@ピンキー
07/09/23 21:56:16 rnD+STlY
い、いやだなぁ、最終回だなんて。
来週も再来週も、深夜のお茶の間にぶれぶれコールに決まってるじゃないですかぁ…。
561:名無しさん@ピンキー
07/09/23 21:58:37 rnD+STlY
sage忘れ謝罪
562:名無しさん@ピンキー
07/09/23 22:08:38 R2NiOH/7
残念ながら、すべての物語には最終回があるのです。
そして今回、さよなら絶望先生はその最終回を迎えたのです。
563:名無しさん@ピンキー
07/09/23 22:15:08 rnD+STlY
「アヌメの」な。
564:名無しさん@ピンキー
07/09/24 00:02:35 2DolnYFx
>>549
乙
565:名無しさん@ピンキー
07/09/24 00:03:02 PESxYJ8+
あと17kb……
次の作品が事実上ラストかな。wktk
566:名無しさん@ピンキー
07/09/24 01:06:54 RkfyS4ZB
100話を読んでから霧に目覚めた俺に霧SSを!
567:名無しさん@ピンキー
07/09/24 01:39:01 0SfJ8eoV
>>566
速 さ が 足 り な い
568:名無しさん@ピンキー
07/09/24 02:22:04 MreX8Duk
今旬なのはあびるだろ
569:名無しさん@ピンキー
07/09/24 02:49:38 Pj/QKRBm
>>567
クー○ーの兄貴乙
570:名無しさん@ピンキー
07/09/24 03:01:30 WWfty1WW
正直あびるが一番かわいい
571:名無しさん@ピンキー
07/09/24 03:02:23 WWfty1WW
俺のID草生えすぎだな
572:名無しさん@ピンキー
07/09/24 03:28:30 O4zhkeMm
>>570-571
なんかきっちり半笑いできそうだな
573:名無しさん@ピンキー
07/09/24 04:28:22 eQlTHVhO
最高の作品だった
可符香好きの俺には嬉しいところ
気づいたんだ、俺は可符香が好きなんだがこの一キャラだけじゃなく
絶望先生とセットなのが好きなんだと
単体でも好きだけどさ。だから霊の絶望先生が出てきたときには感動で
画面が見えない状況だぜ
574:430
07/09/24 12:06:01 GH3wLlpc
新スレが立ったと聞いてノコノコやってきました、
自称埋め職人の430です。
まさか、1ヶ月経たずに埋め作業が再び巡ってくるとは思いませんでした。
すごすぎる。
というわけで、とりあえず、埋め用小ネタを1本。
この名曲を聴いていて、こんな妄想話が浮かぶあたり、
自分の頭も、だいぶ末期の状態のようです。
基本、先生と倫ちゃんしか出てきません。
赤木杏のシリーズとは違う世界のお話です。
575:主よ、人の望みよ喜びよ 1/4
07/09/24 12:07:26 GH3wLlpc
――子供の頃、兄に教会に連れて行ってもらったことがある。
色とりどりのステンドグラスを通る、柔らかい光に包まれた空間に、
パイプオルガンの音色が響いていた。
美しい曲だ、と思った。
兄に曲名を尋ねると、「主よ、人の望みよ喜びよ」と言う曲だと教えてくれた。
――題名に兄の名が入ったこの曲は
そのときから、私の、一番のお気に入りになった――
* * * * * * * *
コンコンとノックの音がする。
「倫、入りますよ。」
ドアを開けて、小さな控え室に望が入ってきた。
「あら、お兄様。ここは、夫となられる方以外の殿方は立ち入り禁止ですわよ。」
「兄妹で固いこと言いっこなしですよ。」
望は部屋を見回した。
「…花嫁が一人きりですか?手伝いの者は?お母様は?」
「……皆、用事で、ちょっと出ています。」
「なんですか、それは。まったく、なんてことですかね。」
ぶつぶつ言いながら、望は妹の姿の晴れ姿を眺めると、眩しそうに目を細めた。
「………きれいですね、倫。」
「ありがとう、お兄様。お兄様も、洋装姿、お似合いですわよ。」
「さすがに、教会に紋付袴は似合わないですからね。」
倫が首をすくめて笑った。
「それにしても、お兄様が素直に褒めてくださるなんて。
雨が降らなければいいのですけど。」
576:主よ、人の望みよ喜びよ 2/4
07/09/24 12:08:08 GH3wLlpc
望は、ムッと頬を膨らませた。
「私だってTPOは心得てます。こんな日に絶望的なことなんかいいませんよ。」
そう言いつつ、望は、真面目な顔になった。
「それに……。花嫁姿のあなたは、本当に、美しいですよ。」
倫は、望の言葉に一瞬目を見開くと、無言で目を伏せた。
2人の間に沈黙が落ちる。
化粧台の上のCDデッキから流れる曲が、一際大きく感じられた。
望がふと微笑んだ。
「倫は、この曲が本当に好きなんですね。」
「…ええ…とても…。」
「意外でしたけどね…お前が賛美歌なんて。」
望はしばらくその美しい旋律に耳を傾けていた。
倫は、そんな望を眺めていたが、そっと望に語りかけた。
「お兄様。」
「はい?」
「覚えてますか?子供の頃、2人で教会に行ったときのことを。」
「ええ、覚えてますよ。帰りに迷子になって、えらく叱られましたっけ。」
「…あのときに、初めて、私はこの曲を聴いたのですわ。」
「……。」
「お兄様が、曲名を教えてくださいました。」
「………そう、でしたかね………。」
2人の間に、再び沈黙が落ちた。
望が、コホンと咳払いをした。
「そろそろ、時間ですね、私はお暇しなければ…。」
「お兄様!」
帰ろうと背を向けた望を、倫が呼び止めた。
倫に向けられた望の背中がこわばった。
577:主よ、人の望みよ喜びよ 3/4
07/09/24 12:08:52 GH3wLlpc
倫は、望の背中に向けて、はっきりとした声で告げた。
「お兄様…。私、お兄様が、好きでした。」
「……。」
「子供の頃から、誰よりも、一番、お兄様のことが、大好きでした。」
望は、振り返らない。
倫の声がひび割れた。
「分かっています。今さらそんなことを言っても、詮無いことだと。
でも…私が嫁ぐ前に…他人の者になる前に、言っておきたかったのです。」
遠くの方から、人の声が聞こえてきた。
望が、前を向いたまま呟いた。
「…皆が、帰ってきたようですね。…いったい何をしていたんだか…。」
「………皆には、私が用事をいいつけたのです。
お兄様が……いらしてくれるような、気がして………。」
「――!」
望が、倫を振り向いた。
望と倫の目が合う。
2人は、そのまましばらく無言で見つめ合っていた。
バッハの対位法を生かした旋律が、2人の間に満ちて行く。
倫は、望の目を食い入るようにして見つめていたが、やがて、
ほっと息をついた。
そして――天使のような笑みを浮かべた。
望は、ただ倫の笑顔を呆けたように見つめているだけだった。
大勢の足音が近づいてきている。
望は、声を絞り出すようにして尋ねた。
「倫、あなたは、幸せになるのですよね…?」
578:主よ、人の望みよ喜びよ 4/4
07/09/24 12:09:31 GH3wLlpc
倫は、望に晴れ晴れとした笑顔を向けた。
「――ええ、お兄様、心配なさらず。
私、ちゃんとあの人を愛しております。」
「……。」
そのとき、控え室のドアが開き、大勢の人間がどやどやと入ってきた。
「んまー、倫ちゃんきれいだこと!花婿さんは果報者だわぁ~!」
「あら、望さん、どちらにいたかと思えばこんなところに。」
「倫、そろそろですよ、お父様がお待ちです。準備はできてますか?」
部屋の中は一気に賑やかになった。
倫は立ち上がると、あでやかに微笑んだ。
「はい、お母様。」
母親に伴われて倫は控え室を後にする。
「それでは、ごきげんよう、お兄様…。」
倫は、望の顔を見ずにその横を通り過ぎると、式場へと向かった。
「望さん、あなたも親族なんだから早くいらっしゃいね!」
親戚の叔母が望に声をかけたが、望はあいまいに頷いただけだった。
望は、皆が出て行った控え室に、1人ぽつんと残っていた。
ふと、デッキの上のCDケースに目が行き、望はそれを取り上げた。
倫は、このCDを、随分と聴き込んだのであろう、
古びたケースは傷だらけになっていた。
望は、CDケースを胸に握り締めると、呟いた。
「倫…。どうか、幸せに……。」
遠くで、祝福を告げる鐘の音が鳴り響く中、
神に捧げる賛美歌の流れる部屋で、望は、いつまでも立ち尽くしていた。
579:430
07/09/24 12:10:52 GH3wLlpc
花嫁を見送る父とか兄とか、いいなぁ、と思います。
微妙に、173氏の「理不尽な神様」倫編の影響を受けているやも。
あの話、ど真ん中直球にツボだったんですよね…。
それと、遅ればせながら真昼氏!
私もマイリストに入れてます!大好きです!
この先の展開を考えると、既に胸がつぶれそうです。
MADに文章に、多才なあなたに脱帽…。
>>146氏
…感動しました。素晴らしいです。GJです。
芽留SSとはまた違った雰囲気で、同じ人と知ってびっくり。
引き出し多いなぁ…。
580:名無しさん@ピンキー
07/09/24 20:34:28 y1wqRhRm
>>430
何と美しい話…GJですぜ。
こんなレベルの方に褒められるともう悶絶するしかなくなる真昼の者です。
というかMADのおかげで妙な過大評価を受けている気がしないでもない今日この頃。
自分も他の方みたく、文章の力で誰かの涙や感動を誘う作品を書いてみたいものです。
では、次スレでも心より>>430氏の作品をお待ちしておりますー。
581:名無しさん@ピンキー
07/09/24 21:46:19 I12pJkvp
そして俺は真昼氏の作品もお待ちしているであります
582:名無しさん@ピンキー
07/09/25 00:27:50 1E/fG1kr
埋め職人さん乙!
そして自分も埋め
583:名無しさん@ピンキー
07/09/25 00:54:23 Q88ORIU2
面白い。自作も期待。
584:名無しさん@ピンキー
07/09/25 01:02:05 CJxodO5Q
書きたいと思いつつ投下する勇気が無い自分に絶望しながら埋め
585:名無しさん@ピンキー
07/09/25 01:09:54 3hTiD5oB
Part6 7ヶ月
Part7 1ヶ月
Part8 2週間
アニメ化で職人様が増えることを期待してはいたが、これほど目に見えてスレの速度が上がるとは思わなんだ。
一体このスレに何が起きているのか考えつつ、そして迸る430氏の文才に圧倒されつつ……
埋め
586:名無しさん@ピンキー
07/09/25 01:13:53 2OjyKm1m
>>430
埋めSSのLVではない透明感。凄すぎ。GJ。
久米田康治先生の作品が大昔から読んできたが、
アニメのOPでいきなりエロが目覚めた・・。
埋め
587:名無しさん@ピンキー
07/09/25 05:46:26 ksCYO78S
埋め加勢
>>584
投下せよ
588:名無しさん@ピンキー
07/09/25 06:25:17 UleW5BKA
タバコを横咥えにした智恵先生は萌えるなあと思いつつ埋め
589:名無しさん@ピンキー
07/09/25 17:00:55 7oYV2taG
アニメ同様、三珠さんSSで終われたら真夜ラーとして恐悦至極ですが・・・。
前にスレを汚して精神的にケガした>>105です。空気読まずに埋め灯火。
私はいつも、彼を痛めつけることを考えている。
それが私の愛。でも・・・。
教室はまだHR中だというのに大変賑やかであった。
ガヤガヤと騒がしいのは、高校生の中でも、彼らは‘幼い’ということか。
委員長、もとい委員長というあだ名さえ持つ木津千里が、うるさいクラスをまとめ上げる。
「みんな静かに!こんなんじゃいつまでもHR出来ないじゃない!!」
クラスメイトの面々も、彼女の一声で静まりかえる。
「ありがとうございます、木津さん」
(しかし、本当の委員長はどこいったんでしょうねえ)
何時までたっても教師らしくなれない男が生徒に礼をすませると、早々に連絡事項をあげる。
「・・・ですから、明日は・・・。」
この男、糸色望を見つめる視線は幾つもあった。
この男、ぷれいぼーいにつき、っというわけではないのだが、女生徒からの人気は異常なほどで、
生徒にストーカーされたり、求婚されたりしているのである。
そんな中、彼に熱い視線を落とす女性に、三珠真夜がいた。
しかし彼女は求婚を迫ったりするワケではない。ただ純粋に好きなだけなのだ。
しかしだからといって問題がないわけではない。ただ・・・。
HRも終わって、放課後になり、早々に帰る生徒、教室に残る生徒、格々色々である。
教台には糸色望が、女生徒たちに囲まれて、帰るに帰れない状況である。
「・・・・・・・・・・・・」
「先生、バルバル星との交信に成功したチームが、
今日ガルボア共和国から来日するんですって!だから・・・」むぎゅうっと
「先生、今日こそきっちり印鑑をいただきます!だから・・・」むぎゅうっ
「先生、この後お食事行きませんか?というのも・・・」むぎゅっ
「先生も一緒にさ、みんなでカラオケいこ~よ~。」
「奈美ちゃんってば、相変わらず・・・」
『発想が普通なんだよ!』
「普通って言うなあ!!」
本来ならば、男として女性に挟まれるというのは、苦々しくも嬉しい状況なのだが、
彼には疲れの表情が浮かんでいた。
「まあまあみなさん、もっと仲良く行きましょう、仲良く。」
「やだなあ先生、みんな仲良しですよ。ねえ?」
「う?うん」
「そうそう」
「仲良しだよ、ね?」
『オレにはそうはみ』
「ほおら先生、みんな仲良しぃ!」
「・・・・・・・・・・・・・」
そんな様子を、少し離れて見る目があった。
いかにも悪そうなその目つきの持ち主も、糸色望争奪戦に加わりたかったが、
彼女は基本シャイなのか、人の騒がしいトコロは好きではなかった。
真夜は焦っている。ただ、愛しい彼に、どうやって自分の愛を伝えるかを考えていた。
競争率の激しい彼に、自分をいかにアピールするか。
激しいアピール合戦を繰り広げた際に、学校に火をつけた真夜だったが、
そのせいで新しい校舎にはスプリンクラーが設置されてしまった。(なんと!)
590:名無しさん@ピンキー
07/09/25 17:02:25 7oYV2taG
その間にも愛しき望に対して、女生徒たちのアピールはどんどん加熱している。
もうこうなったら、自分も参加せざるを得ない。しかし、どうやって・・・?
真夜に残される手は、バットや刃物での凶器攻撃だが、ここ数日オンエアされないバトルにて、
ライバルたちの強さは身に染みている。出来れば戦いたくはない。なら、どうやって・・・?
(ああ、火をつけたい、火を、火、火、火・・・・・・)
「そうだわ!!」
何か思いついたらしい彼女は、教卓の前まで詰め寄る。
「あら、三珠ちゃん。」
彼女は何か、緊張した面持ちで、じっと先生を見ている。
そんなことはお構いなしに、この男はこのシチュから抜け出すイイチャンスだと思い、
髪の長い二人の女生徒に両腕を引きつけられたまま、顔をグイと突き出す。
「どうしました?三珠さん?」
こんな状態ながら、無理して優しく生徒に微笑む彼は、やはり教師なのだと思った。
その笑顔に、真夜も微笑み返す。こちらは無理のない、望の状況を面白がったような、無垢な子供の笑い方。
その表情に、望は呆気にとられて、見入ってしまう。思わず、動けなくなる。
真夜はその顔を自らの小さな手で挟んで、昼寝の際枕を見つけた猫のように、
嬉しそうに、ゆっくりと、永い接吻をした。
顎の感触や男の温もりはいつまでも味わっていたいものだったが、そうもいかなかった。
クラスは大騒ぎーーーーーーーーーーより早く、望の背後から、刃物が飛んできた。
真夜はその小さな体を俊敏に動かし、ソレは男の顔をかすめて流れ星のように光って消えた。
「ヒイイイ!!!」
「よくも、よくも私の先生ををおおお!」
真夜に襲いかかる影は一つではなかった。刃物も釘も包帯も、何でも飛んでくる。
しかし鋭い目で見切って、ヒョイヒョイとかわしていき、廊下に出て、走っていった。
「待てーーーーーー!!」
教室に残された人間たちも、大騒ぎである。
「オイ、見たか今の?」
「ああ、センセイはちげーなぁ(笑)」
「・・・あたしだってまだだったのに・・・」
『聞こえてるぞ、ブス』
「先生!今のは何なんですか!?きっちり説明してください!!!!!!」
「えっ、えええええーーーーーーーーー!!!!?」
「場合によっては、訴えるよ!!」
「先生を殺して、私も死ぬ!!!」
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
走り去る女生徒の表情は笑顔で、紅潮していた。
彼女は「火をつける」ことに成功したようだが、この喜びはまた別のトコロから来ているんだろう。
心臓の鼓動は早くなる一方だが、必死で走っているからと言うことだけではないだろう。
「火をつけ」たことでこれからはより一層厳しい戦いになるだろう。
しかし頑張れ真夜!負けるな真夜!その愛証明してみせるまで!!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー糸冬ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
何とか入って安心した!!またアイマショウ!!
591:名無しさん@ピンキー
07/09/25 17:20:55 xlyWB+Cb
>>589-590 GJでした。ところで、
>髪の長い二人の女生徒
と、ありますが、一人は千里として、もう一人は誰ですか?
592:名無しさん@ピンキー
07/09/25 18:51:26 AoWgV7+N
期待梅
593:430
07/09/25 19:51:36 QB316Zob
おお、本日も地味に埋め作業~と思って来たら埋め同志が!!
真夜、かわええですね~。
前305さんの真夜といい、彼女の可愛さを再認識するこのごろです。
そして、このカオス感が原作っぽくてよい感じ。
あと3KB、アニメと同様に真夜で終われそう…かな?
594:名無しさん@ピンキー
07/09/25 21:42:49 1E/fG1kr
430氏の埋め小ネタ投下を待っていたのだがこれは投下しないということなのか?
なら埋め
595:名無しさん@ピンキー
07/09/25 22:20:42 lt/O6vx2
>>591
あびるじゃね?
596:名無しさん@ピンキー
07/09/25 22:27:58 vhjcTW2M
きっちりと埋めましょうか
梅梅梅梅梅まくって~
そういえばあびるだんだん髪が短くなってるよね
597:名無しさん@ピンキー
07/09/25 22:29:56 xlyWB+Cb
>>595 あー、なるほど。確かに髪長いわ。
598:430
07/09/25 23:22:52 QB316Zob
>>594
分かりにくい書き方で失礼しました。
SSの容量が残スレ容量をオーバーしたので、
新スレの埋めの際にでも投下させていただきます。
新スレも、すぐに埋まりそうな勢いだし…!
599:名無しさん@ピンキー
07/09/26 00:05:41 GTx/Y/sT
キッチリ埋め
600:名無しさん@ピンキー
07/09/26 00:09:29 RjxP+AVu
きつちり埋め埋め埋め埋め埋め埋め埋め
601:名無しさん@ピンキー
07/09/26 04:03:06 FBXq3ZrO
さよなら埋め先生
602:名無しさん@ピンキー
07/09/26 09:02:09 PnNy6ga5
>>598
埋めの際とか言わずに今すぐ新スレに落してくれていいのに
603:名無しさん@ピンキー
07/09/26 14:40:42 KxfxOWXl
梅ないでよ
604:名無しさん@ピンキー
07/09/26 21:13:18 40FLGLde
いや、埋めるね!
605:名無しさん@ピンキー
07/09/27 00:47:43 y4e8H/v+
しあわせ、
と一〇〇書いてください
だれでも簡単に
しあわせになれるものです
寺山修司
「寺山修司少女詩集」より
606:名無しさん@ピンキー
07/09/27 01:05:08 c3SWsPoT
しあわせ しあわせ しあわせ しあわせ しあわせ
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