【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part8【改蔵】at EROPARO
【絶望先生】久米田康治エロパロ総合 Part8【改蔵】 - 暇つぶし2ch318:名無しさん@ピンキー
07/09/20 20:04:53 g/u0uelJ
>>147
これは、ききます・・・・・  残業続きで弱ったところに、トドメを刺されそうに。
・・・301の小ネタって・・・・・173氏? 本人じゃないですよねw
最終章は明日か明後日の夜でしょうか・・・・・  いまから心の準備を・・・・

しかし、描写が上手いです・・・・・・

余談ですが、読んでて、悪役二人の生い立ちや人生がどんどん浮かんでくるのって、
やはり私がズレてるからですかね・・・・・・・w 失礼。

319:名無しさん@ピンキー
07/09/20 20:38:25 ODih/T2o
可符香SSもアニメ11話も鬱で絶望した!

どっちも救いのある最後をキボンヌ!!

320:名無しさん@ピンキー
07/09/20 21:32:47 9VeFKagF
>>316-317
板違いだと言ってるんだ。
キャラ萌えでやれ。
ココでいうな。
キモいんだよ。

321:名無しさん@ピンキー
07/09/20 21:33:01 Sm6o5BY4

ええと、望×智恵完成しましたんで手直しが終わったら投下します。
ですが、その前に注意をいくつかさせてもらいます!
1、最初に言ったように私に文才はありませんなので。、いたらない部分はスルーしてください!!
2、智恵のキャラが壊れ、勝手な過去や、家がちょっとした金持ちなどという。オリジナル設定てんこもり
  です!そんなの俺の智恵先生じゃねえ!って方はスルーライフで
3 智恵だけじゃなく、他のキャラもぶっ壊れてます。ご注意を
4、勝手なオリジナルキャラも登場します。話にあまり関わりませんがご注意を
5、このスレにあるカウンセリングって作品と最初が酷似してますが、すぐにちがう展開に
  なるんで、ご容赦を・・・(まあ、あんな神作品と比べる人は皆無でしょうが)
6、自分エロ書くのはこれが始めてです。濃厚なのを期待する方は飛ばしてやってください!
7、かなり長いです。ご容赦を・・・・
8、途中で直すところを見つけて、投下が途切れることもあります。お許しを

ええ、色々言いましたが、最後に一番大切なことを!
期待すんなよ!!なんにも期待すんなよ!!
以上!!


322:恋の物語1
07/09/20 21:38:25 Sm6o5BY4

新井智恵の日課はカウンセリング室の受付箱を見ることから始まる。
とは言っても、いつも押しかけてくるのは決まっていて、その本人は担任その人なので、
カードなど出しはしない。生徒は生徒で悩みが少ないのか、あまりカウンセリングを頼み
には来ない、しかも来るにしてもカードを出さないことも多いだから箱はだいたい空っぽ。
従って、見ることに意味はほとんどないが、職業柄か、つい、いつも覗いてしまう。
「まあ、今日も何もあるわけないか・・・・」
そう、つぶやきながら中を見ると、一枚だけ珍しくカードが置いてある。
「へえ・・・・誰かしらね」
そういいカードの名前を見てみると、小節あびると氏名欄にあり、用件のほうは、
「そちらでお話します」と書かれ、時間の方は放課後と書かれている。
「あの子が?」
多少変わった趣味を除けば、成績優秀で性格のほうも悪くない彼女に一体なんの悩みが
あるのかさっぱり検討がつかない・・・そう思いかけたところでふと恐ろしい考えに行き着く、
(まさか・・・つい父親を・・・?)
彼女はいつも全身を怪我している、それは同居している父親からのDVによるものではないか、
そう考え、前に一度調査をした結果、本人の趣味、動物の尻尾を引っ張ることによって受ける
反撃だったと判明した。だが、彼女を調査していた時にもうひとつの恐ろしいことがわかった。
なんと、彼女自身が父親に暴行を加えていたのだ。
別にそれは父親が憎いからとかではなく体が勝手に動いてしまうそうだ。
(ひょっとしたら・・・それに耐え切れなくなって)
これは大事になるかもしれない。そんな考えを抱きながら、智恵は放課後を待った。



323:恋の物語2
07/09/20 21:39:19 Sm6o5BY4

放課後のチャイムが鳴り終わって数分後に、扉をノックする音が聞こえた。
「どうぞ」
なかば緊張気味にそう声をかけると、扉が開かれ、おさげを揺らし松葉杖をつきながらあびる
が部屋へと入ってきた。
「よく来たわね。さ、座って」
黙ってコクリとあたまを下げると、あびるは黙って、椅子に腰掛ける。確かに彼女は口が少なく
無表情なほうだが、今回は少し異常だ。今は無表情というより、引き締まって緊張している。
これはいよいよ大変だ。と心の中で思ったが、顔にはまったく出さず勤めてにこやかにたずねる。
「で、なにかしら?話したいことって・・・」
そう問い掛けられ、あびるは口を開こうか思案するような素振りをみせたが、意を決したかのように
ゆっくりと声をだす。
「実は・・・」
「実は?」
あびるのあまりの緊張に思わず声を硬くしてしまいながらも、繰り返したずねる。
「私・・・」
「私?」
もう覚悟はできた。昏睡にしたか、どこか骨折でもさせたか、はたまた
「好きな人が出来たんです!」
「は!?」
考えていたのとまったく違う答えに思わず間の抜けた声をだしてしまう。
「そ、そんな顔しないでください!」
あびるは彼女らしくなく声を荒げ抗議する。
「ごめん・・・・ちょっと予想してない答えだったんで、ついね・・・・でも、よかったわね」
謝りながらも智恵は微笑ましい気持ちになるのを感じた。
こんな彼女でも、ちゃんと人並みに恋が出来たのだ。これなら、父親にかんするDVもおさまるかも
しれない。
「それで、私・・・人を好きになるのとか始めてだから・・・ちょっと相談にのってもらいたくて」
「ええ、私でよければなんなりと」
せっかく彼女が人並みになりかけているのだから、しっかりと手助けしてやらねばならない。
どこぞの教師の自殺を引き止めるより、よほどカウンセリングらしい仕事に思わず声が弾む。
そんな智恵の調子に戸惑いながらもあびるは話を続ける。
「実はその人、他の人にもよくモテるんです」
「へえ・・・・」
なるほど、それなりに容姿はいい人間のようだ。だとすれば、ライバルも多いのだろう。
「それじゃ、積極的にアピールしなくちゃね」
「はい、そうなんですけど、他の人たちの方がすごくて、しかも私より前からその人を狙ってたらしい
 んです」
ここまで聞いて、ふと、智恵は一人の男の姿を想像し、急いでかき消す。いくらなんでもありえない。
が、
「その人たちのアピールがすごいんです。一人はその人のあと四六時中ついてまわってるし、一人は
 同じ場所に同居みたいに住んでるんです」
ここまで言われれば、該当する人間なんてもう一人しかいない



324:恋の物語3
07/09/20 21:40:33 Sm6o5BY4

「ひょっとして、もう一人はもの凄くきっちりしてて、近寄りがたいような子?」
やはり図星だったのか、あびるの表情が固まる。
「なんで・・・わかったんですか?」
認めたくない、認めたくないが、これでもう誰かは確定した。それでも最後のあがきのような形で
確認する。
「ねえ、それってもしかして、あなたの担任の先生?」
その言葉を聞いた瞬間、あびるの顔がほんのり紅く染まる。
間違いない、糸色望だ。
「どうして・・・どうしてわかるんですか?」
蚊の鳴くような声で聞いてくるあびるに、智恵は苦笑するしかなく、とりあえず聞き返す。
「ええと、先生をどうして好きになったの?」
そう聞かれた途端、あびるはさらに顔を紅くして、首を振る。
「い、言えません!」
「そう・・・」
別段、追求する気はなかった。どうせ、おおかた、また何かの手違いだろう。今までの事例だって
みんなそうだ。
(それにしても、それでなんでこんなに生徒にもてるのかしら)
積極的に生徒を口説くわけでもないのに、何故かよく生徒にモテる。
確かに容姿はいい、いつも着ている和服姿も様になっている。なにより高校の教師だけあって、頭も
いい。だが、それらを差し引いてなお余りあるのが性格である。とにかく超のつくネガティブ思考
の持ち主で、ことあるごとに死にたがる。だが、よくよく観察してれば、それら全ては未遂に終わって
いて、死ぬ気があるとは到底思えない、そういう意味のないことを繰り返す。まあ、簡単な話が
変人の部類に入る。それが糸色望、通称「絶望先生」だ
だが、それでも生徒にモテているのが現実だ。(本人はまったく喜んでいないが)
中には結婚前提で付き合っているなどと、シャレにならない者までいる。
(でも・・・・あの小節さんが、ここまでになるなんて・・・一体何したのかしら・・・まさか!)
「あの・・・先生?」
いやな想像をしていたところで急に声をかけられ、慌てて現実に戻る。まさか面と向かって
そんなことを聞くわけにはいかないので、とにかく今は望の常識を信じることにした。
「あ、ああ・・・・ごめんね、そうか・・・そうよね・・・他の人のアピール激しいもんね」
あれは最早激しいなどというレベルを超え犯罪の域に達している気もするが、
「そうなんです、だから、私じゃついていけない気がして」
正直ついていってもらったら困る。超怒級の曲者揃いのあのクラスの数少ないまともな人間を
減らしたくない。が、一応恋はしているのだ。相手が誰であれ、一応初恋の手助けはしてやり
たい。
「そうね・・・だったら、あなたは逆をいったらどう?」
「逆?」
「ええ、そこまで存在を誇示するんじゃなくてさりげなく近寄るの、そうね、食事に誘うとか・・・」
智恵はとにかくあびるまで過剰なアピールに走らないようにそれなりの助言をしてみると、
あびるは嬉しそうに微笑み何か、ごそごそ口の中でつぶやき始めた。
「そっかぁ・・・じゃあ、あの店に一緒に食事に・・・」
そうひとしきりつぶやいた、さっぱりした。もとに無表情な顔に戻って、ぺこりと頭を下げ、
「ありがとうございました」
と短く言った。
「いえいえ、どういたしまして、頑張って!」
頑張りすぎられてもこまるけどね、と小さく付け足したが、どうやら聞こえなかったらしく。そのまま
部屋から出て行きかけ、ふと思い出したように、立ち止まると振り返り言った。
「きっと、先生と先生の彼氏って仲いいんでしょうね、先生恋するのうまそうだし」
「え・・・ま、まあね」
「一回会ってみたいですね。それじゃ」
最後に一礼するとあびるはドアを閉めて出て行った。
「恋するのが、うまそうか・・・」
自分しかいなくなった部屋であびるに最後に言われた言葉を繰り返し口に出して言うと、
自虐的に微笑み、
「そうでもないのよね・・・」
と小さくため息混じりにもらした



325:恋の物語4
07/09/20 21:45:03 Sm6o5BY4

「智恵・・・智恵!ついたわよ!起きなさいよ」
「うん・・・あびるちゃん・・・大事なのはさりげなさよ・・・」
「なに寝ぼけてんの、起きなさい!」
思いっきり頭をひっぱたかれて、やっと目が覚める。
「夢・・・か」
つい数日前の出来事を夢でみていたのだと、気づき、そして、今の状況を確認する。
確かハンドベル仲間の友人達に飲みに誘われたのだった。車に乗せられ揺られているうちに眠って
しまったらしい。
「まったく、夢でも仕事してたの、口が仕事口調だったわよ・・・仕事しすぎるとはやく老けちゃ
 うわよ」
「大きなお世話よ!」
そう言い合いながら、店に入ると、
「おっそーい!」
「遅刻よ、遅刻!」
などと、先についていた仲間たちの出迎えが待っていた。




そのまま、宴会へと流れ込み、騒ぎがつづいたが、急に一人が時計を眺め慌てたように
「いっけない!そろそろ帰らないと、彼が帰ってきちゃう!」
「ええ、いくらなんでも早いでしょ!?ねえ、みんな!」
思わず智恵はそう叫び、周囲に同意を求めるが、他もそれぞれ、帰る準備を始めている。
「ごめん!私も彼が帰ってくるから、今日は一緒に過ごしたいの」
「私も・・・」
「そ、そう・・・」
そういわれてはどうしようもないので、仕方なく、宴会は思ったより早くお開きとなった。


326:恋の物語5
07/09/20 21:45:44 Sm6o5BY4


「ねえ、智恵・・・・」
「ん?」
なにか一抹の寂しさを抱えながら、助手席で、きだるげに座っていた智恵は突然の呼びかけに
驚いたように、首をおこした。そんな彼女をみながら、友人は言った。
「あんたさぁ・・・いつまで、そうやって色気ない生活続けるの?」
「何よ・・・突然」
不意の質問に驚いたかのように首をかしげ、とぼけようとしたが、友人はそれを許さずさらに続ける。
「あんた、わかってる?みんな大体、彼氏作って、なかには来年には結婚するような子だって
 いんのよ?」
「へ、へえ!?誰、言ってくれたらよかったのに!」
追求を逃れるのは無理そうなのでせめて話をそらそうとするが、それでも友人はごまかされずに
続ける。
「智恵、あんた、顔とかスタイルとか悪くない・・・ううん、すっごくいいんだから、せめて、彼氏
 作んなさいよ」
友人は決してうわべだけでなく、心の底から心配してくれている。
それはわかっている。が、それとこれとは別問題だ。
それに少し、誤解があった。智恵とて、異性と付き合ったことはある。
もちろん体を重ねたことも何度かあった。だが、続かないのだ。
あのころの智恵はとにかく、勉強一筋だった。夢であった教師になるため、必要だったこととはいえ、
勉強に打ち込めば、必然的に異性との交流は少なくなる。
そうなれば、当然相手は面白くなくなり、はじめはよかった仲もしだいに悪くなってくる。
なかには夢と自分とどっちが大事なんだ。などとわけのわからないことを言ってくる者もいた。
そうなると当然喧嘩になり、そのまま別れてしまうばかりだった。
だが、相手は何も悪くない、両立できなかった自分が悪いのだ。そうわかっていても、同じこと
を繰り返してしまう。そうやっているうちに、ここまで来てしまった。
皮肉なことに目指し、たどり着いた先は空虚なものだった。最近では、時間を持て余すことが多く、
あのころはなんだったのか、と真剣に悩むことすらある。今ならうまく恋も出来そうなものだが、
幾度もの出会いと別れを繰り返すうち、異性と付き合うことそのものが恐怖となっていた。
(恋がうまいだなんて、ありえないわ・・・)
数日前のあびるの言葉を思い出し、自虐的にそう考えていたところに友人が再び声をかけてきた。
「ちょっと、聞いてる?」
「聞いてるって・・・」
「あんた・・・まじめに考えといたほうがいいわよ・・・あんまりしぶってたら、本格的に行き
 送れて、天涯孤独とかそういうことにもなりかねないわよ」
「天涯孤独・・・ねえ・・・」
それも仕方ないと思った。ここまでうまく異性と付き合ってこなかったのだから、今ごろまた恋が
したいなどと思っても失敗することを恐れ、またうまくいかないに決まってる。



327:恋の物語6
07/09/20 21:46:31 Sm6o5BY4

「そうだ!!」
「ど、どうしたのよ!?」
突然の大声に驚く智恵にかまわず友人は顔を輝かせ言った。
「いるじゃない!あんたの身近に手ごろな人!」
「え?」
いきなり、そんなことを言われても誰のことやらさっぱりわからない。
「ほら、こないだ演奏会にあんたが演奏会に誘った。あんたと同じ学校の教師!」
「ええ!?糸色先生!?」
「そうそう!その人よ!」
「何をいきなり・・・」
確かに、前の演奏会で一人でも多く客を招けと言われ、何気なく望に招待券を渡した。
あのとき、もの凄く恐縮しながら、和服でたずねてきたときにはどうしようかと思ったが、
なかなか評判がよく友人達からもてはやされていたのを覚えている。
「あの人すごくかっこよかったじゃない!みんなからの人気も高かったし、和服を着てるのも
 最初はどうかなって思ってたけど、しばらくしたら妙になじんで見えて・・・うんうん、
 かっこよかった!あと年下ってのもポイント高いわよね!」
それは、あなたが、あの人の内面を知らないからよ。と言ってやろうかと思ったが、別に彼女が
この先の人生で彼にかかわることはまずないだろうから、あえて黙っておいた。
「知ってる。あの後、あの人にメルアド教えてって子結構いたのよ!」
それは初耳だった。なるほど、あのあとしばらく望の姿が見えなかったと思ったら、そんな事情
があったのか。
「それでね、彼はどうしたと思う?」
「どうしたの?」
「全部、断わってたのよ!」
さすがにこれには驚いた。あの人のことだから、全員に教えているだろうと思っていたのだが、
まさか、自分のメルアドを忘れたなんてことがあるはずはないだろうし。
「それでね、ここからは私の推測なんだけど、彼、あなたに気があるんじゃないかな」
「ちょっと、ちょっと!なんでそうなんのよ」
あまりに突拍子もない話の飛び方に思わず素っ頓狂な声をあげてしまう。
「だって、普通アドレスぐらい教えたっていいはずでしょ、それを教えないってことは、私の
 推測だけど、あなたに知られたくなかったんじゃない?」
いくらなんでもそれは推測を通り越して妄想だ。あきれてどういったものかと迷っていると、
友人は興味深そうに、
「それで、あんたはどう思ってんの?」
と、聞いてきた。
「え・・・・」
「一緒の職場で働いてんだし、なんかの感情くらいあるのかしら?」
「それは・・・・」
予想もしない質問に口ごもってしまう。と、そのとき目前に智恵の住んでいるアパートが見えてきた
ため、ちょうどいい口実を見つけたとばかりに、
「ここでいいわ、あとは歩いて帰れるから、ありがとう」
と車を止め、ドアから外へと出る。
「え?ここでいいの?」
「うん、ちょっと、歩きたいから・・・・」
本当は今の会話から逃げるためだが、まさか正直にも言えない。友人は胡散臭そうな顔をしながらも、
うなずくと、最後に
「今の話、よく覚えておいてね」
そう言い残し、エンジン音と共に走り去っていった。
一人取り残された智恵は、ぐったりと疲れた気分になりながら、目の前のアパートに向かって歩き
出した。



328:名無しさん@ピンキー
07/09/20 21:47:22 rK8bZCfD
んと、sageた方がいいかもしんない

329:恋の物語7
07/09/20 21:48:03 Sm6o5BY4

(なにかの感情?そんなものあるわけない)
次の日、智恵は一人カウンセリング室でモヤモヤした気分に囚われながら、本日で何度目かの
自問自答を繰り返していた。
(大体、糸色先生も私にそんな気を持ってるはずがないじゃない・・・)
そう考えるたびに、昨日の友人の言葉が木霊する。
(あの人、アドレスを教えなかったのよ・・・ひょっとして、あなたに知られたくなかったん
 じゃない?)
妄想に決まっている、だが、どこか説得力のあるその言葉が頭から離れない。
(でも・・・もし、もし、本当だとしたら?)
そこまで考えては、ありえないと打消し、また考え、とその繰り返しから抜け出せない。
思えば、異性に関してこんなに悩んだのはいつ以来だろう。
と、その時、コンコンと扉をノックする音がした。
慌てて時計を見ると、いつのまにか放課後になっている。
(いやだわ・・・今日一日なにやってたのかしら)
おそらく、上の空でボーっとしながら過ごしていたのだろう。
(こんなことじゃいけないわね!)
と、無理に気持ちを切り替えると、事務的な口調で
「どうぞ」
と短くいい、入ってきた人物の顔を見た途端、再び、気持ちを切り替えさせられてしまった。
「申し訳ありません・・・・予約もなしに・・・」
入ってきた人物、糸色望本人はいつもどおりの和服をまといよろめくようにカウンセリング室に
入ってきた。



330:名無しさん@ピンキー
07/09/20 21:52:42 g/u0uelJ
望×智恵 支援!

331:恋の物語8
07/09/20 21:53:31 Sm6o5BY4

(なんで、よりにもよってこんなときに・・・)
思わず、心の中でそう思ってしまったが、別にいつものことなので、望を攻めるのは間違いと
言うものだろう。
(まあ、いつもどおりにやれば問題ないわ・・・)
そう考えとりあえず椅子をすすめ、適当に机の上にお茶を並べる。
「すいません、いつもいつも・・・」
そう言いつつ望はくずれるように椅子に座った。
「それで、なんで今日は死にたくなったんですか?」
「実は・・・」
いつものように、どうでもいい、いきさつを語る望の言葉を聞きながら。智恵は再び昨日の友人
の言葉を思い返した。
(あんたはどう思ってんの?なんか感情とかないの?)
(どう、思ってるって・・・)
智恵は自分の目の前に座っている糸色の姿をまじまじと見つめる。
まず、肌は抜けるように白い、日焼けなど体験したことが無いような肌。
そして、華奢な体まさにぽっきりと折れてしまいそうにも見える。
そして、最後に顔はまさに端整と言うのをそのまま具現化したような顔をしている。
まさに完璧と言っていいだろう。が、
(けど・・・・性格がねえ・・・)
今言っている、泣き言と情けない表情がそれら全てを台無しにしてしまっている。
(けど、じゃあ、なんで私はこんなに真剣に話を聞いてあげてるんだろう)
仕事だからと、言えばそれまでだが、なぜか、彼の話は親身になって聞いてしまう。
「・・・と、いうわけなんですよ!・・・智恵先生?」
「は、はい!それは大変ですね!」
呆けていて、よく話を聞いていなかった智恵は突然現実に引き戻され、適当に相槌をうち、
慌てて、湯飲み茶碗に手を伸ばす。
が、あせって伸ばしたては勢いづいて思わず茶碗を弾き飛ばしてしまい、そのまま机の下に
落下してしまう。
幸い結構丈夫な茶碗であったようで、茶碗自体は割れなかったが、中に入っていた茶は床に
広がってしまった。
「ああ、私ったら!!」
「大丈夫ですか?お茶かかってませんか?」
「ええ、なんとか・・・・きゃああああああ!!」
智恵は、心配そうに身を乗り出してきていた望を思わず突き飛ばしていた。
「うわぁあ!!」
と、なんとも情けない声をあげ、望は後ろへと弾き飛ばされる。
「な、なにを・・・?」
思いっきり打ち付けたらしい腰をさすりながら、望は涙声で訴えてきた。
「え、あ、ご、ごめんなさい!つ、つい・・・」
取り成そうとするが、気が動転して、うまくしゃべれない。
「あ、あの掃除しなくちゃならないんで、その話はまた明日に!!」
「ええっ!!」
話についていけず困惑した声を上げる望の背を押すように外に追い出すと、そのまま、
扉を閉めてしまった。
閉め出され、廊下に放り出された望は何がなんだかわからないままにとりあえず。
「絶望した!ぜんぜんわからない話の流れに絶望した!!」
と叫ぶと、目に涙を溢れさせながら走り去っていった。



332:恋の物語9
07/09/20 21:54:32 Sm6o5BY4

(私ったら・・・・何やってるのかしら)
とぼとぼと家路につきながら、智恵はため息をついた。
動転した気を鎮めてから、謝ろうと廊下を覗くとすでに望は姿を消していた。
(わたしも、あんな言葉をいつまでも気にするなんて・・・)
これで望からは奇人という印象をうけるかもしれない、そう考えると何故かずっしりと気が
重くなった。
(明日はちゃんと謝らなきゃ・・・)
そう考えながら、アパートの自分の部屋にたどり着くと、中に入り何をするでもなく、
床に倒れこみ、そのまま眠ってしまった。


それからしばらくして、電話の鳴る音に目が覚めた。
時計を見ると、結構眠ってしまったようで、夜も大分遅い。
(誰かしら・・・こんな夜に・・・)
不信に思いつつも智恵は電話をとった。



333:恋の物語10
07/09/20 21:55:50 Sm6o5BY4
「ああ・・・ついに、智恵先生にまで嫌われてしまいました。私は一体どうすれば・・・」
望は暗い夜道をとぼとぼと歩きながら、途方に暮れたように呟いた。
自殺願望を持っている(本人の思い込み)望にとって、智恵は唯一自分の悩みを解決してくれる。
いわば、心のより所だった。
だが、今日、その人からも冷たくあしらわれてしまった。(あくまで本人の思い込み)
「ふ・・・どうやら神様はそろそろ私に死ねと言うようですね・・・」
神が聞いたら絶対に違うと言うようなことを勝手に並べ、覚悟を決めたように、今自分の渡って
いる橋の欄干に足をかけた。
「思えば、儚くつまらない人生でしたね・・・」
と、わりかし、マジっぽい言葉を呟く姿は様になっているが、肝心の足をかけている橋が小さく
しかもすぐ下に流れている水路も浅く小さいもので、これどうやったら死ねるの?的な場所でそ
んなことをやってもはたから見れば、ただの変な人にしか見えない。
そんな場所でも、この男根っからのチキンなので、足をかけた姿勢のまま、ちらりと後ろを振り
かえるが、こんな時間帯に出歩くような人はいない、唯一、尻の穴に棒を突き刺された犬が
胡散臭そうな表情を陰気な顔に浮かべこっちを見ている。
「う・・・」
唯一、いつも自分を止めてくれる、ストーカー少女まといも実家に帰るとかで今はいない。
あのような言葉を吐いて、そのまま何もせずに立ち去ったのでは、自分の中の何かが崩れ去り
そうな気がする。
「むむ・・・」
足を橋の欄干にかけたまま考え込む姿は最早無気味さすら漂ってくる。
おそらく人がいたとしても、これを見たら決して止めはしないだろう。
そうすること数分、突然、
「そうだ!」
といきなり叫び声を上げる。
ここまで来るともはや奇人である。もしおまわりさんが通りかかったら間違いなくお世話に
なっていただろう。
「智恵先生が私を嫌ったということは、それなりに何か私が迷惑をかけてしまったに違いあり
 ません!それなのに死んで逃げようなどとは考えが甘すぎます!」
はるか昔に、天動説を覆す発言をコペルニクスもびっくりの逆転の発想を咄嗟に導きだすと、晴れ晴れ
とした顔で欄干から足を下ろす。
「いやぁ、よかった、よかった。危うく死んで逃げるなどという安易な考えに走ってしまうところ
 でした。ちゃんと、智恵先生に謝らなくては・・・」
自分の間違いに気づいたというより、今の状況から逃れられたことを喜んでいるようにしか
見えない。
と、その時、望は自分が空腹だったということに気づく。
思えば、晩御飯を食べていない。
「せっかく、間違いに気付けたんです。豪勢な物でも食べますか」
態度を一転させて歩き去っていく望の後ろ姿を犬はあほらしそうに眺めていた。

334:名無しさん@ピンキー
07/09/20 21:58:24 Sm6o5BY4
ええと、ここまでで自信がなくなってきたので、一時投下を停止します。
一応手直しもしたいんで・・・ここまでで我慢しておいてください。
手直しが終わったら残り投下しにきます。(みなさんがよろしければですが)

335:名無しさん@ピンキー
07/09/20 22:01:19 t1wQRs2V
GJだがsageを薦めておく

336:名無しさん@ピンキー
07/09/20 22:02:00 9VeFKagF
人の話を聞け。
まずはsageからだ。

337:名無しさん@ピンキー
07/09/20 22:03:49 g/u0uelJ
今日は生殺し記念日ですか?ww

338:名無しさん@ピンキー
07/09/20 22:05:01 DikqolDq
>この男根っからのチキンなので、
あらぬ読み方をしてしまった。本筋以外を気にする自分に絶望した!
本筋的には続きに期待。

339:名無しさん@ピンキー
07/09/20 22:05:19 pCkYQCtk
なんだ最近このスレでは焦らしプレイが流行っとるんか

340:名無しさん@ピンキー
07/09/20 22:15:54 t1wQRs2V
なんか対極ってほどじゃないけど方向性の違う二本で面白かった・・・
いや、まだ完結してないから「かった」は間違いか
こういうの見ると自分も書きたくなるが気後れしてしまってなかなか書けないw
何はともあれお二方ともお疲れ&乙

341:名無しさん@ピンキー
07/09/20 22:24:36 n7lRF80y
>>272で投下宣言やらかした者ですが、半分ほど書けたので
自分もボチボチと投下させていただきます。お二人の作品の後で恐縮ですが。

やたらダラダラしてるだけで長編って程じゃないです多分。
望×可符香で、捏造設定の嵐。
キャラ同士の呼び方とかわっかんねぇ。
12レスほど消費させてもらいますが、全然エロに到達する気配なし。
SS投下は初めてなので読み難いでしょうが、ご指摘下されば出来る範囲で
直していきたいので、よろしくです。

342:真昼が雪 1
07/09/20 22:26:10 n7lRF80y

 この恋が始まるには、ほんの少しの希望が必要です。

 春―四月。
 桃色の花弁が舞い散る並木道を、軽やかな足取りで進む。
 朝日を受けて白く輝く花弁は、まるで真昼に降る雪のようだ。
 眩しそうに目を細めながら空を仰ぐ少女は、朗らかな笑みを浮かべていた。
 何という事のない朝の風景を、この上ない幸せと感じているように。
 確かに少女は今、この上なく幸せだった。
 彼女のトレードマークである髪留めが、日差しを受けて輝いている。
 同様に、彼女の大きく丸い瞳も。
「あ――」
 一際強く春風が通り過ぎ、少し短めのスカートを翻らせる。
 首筋を撫ぜる風と花弁の感触に、少女は擽ったそうに首を竦ませた。
 思わず目を閉じる。
「ふふ」
 止めていた歩を進めようと、両目を開き、顔を上げた。
 その目に――宙に浮かぶ男が映る。
「…え?」
 宙に浮いているように見えたのは一瞬の事。
 桃色ガブリエル。
 彼女がいつかそう名付けた桜の木の下に、その男は吊り下がっていた。
 男と木の枝を繋ぐ縄が、ギシギシと音を立てる。
 その姿に。

「―――い」
 嫌、と。
 声は出ず、ただ唇がその呟きをかたどった。
 笑顔が、凍りつく。
 
 ぶら下がる男。縄の軋む音。
 いつか見た映像が重なって、彼女の立つ現実が崩れる音がする。

 見上げるしかなかった、幼子の自分。引き攣る頬。剥がれない笑顔。

 ――いや、それはもう実際にあってしまった事だから、
 思い出す事自体は問題ではないのだ。
 問題なのは、彼女はその記憶を僅かでも「悪いモノ」として思い出した。
 一瞬でも湧き上がったネガティブな感情。
 それを認めてはいけない。認めては、彼女の全てが駄目になる。


343:真昼が雪 2
07/09/20 22:28:15 n7lRF80y

「――いけません!!」
 男に対して、そして何より自分に対して叫びながら、地面を蹴る。

 ――そう。あれは不幸な事などではなかったのだ。
 内心で呟く。泣き叫ぶ幼子の自分に、言い聞かせるように。

 思い切り男の足に飛び掛ると、頭上から奇妙な呻きが降ってくる。
「命を粗末にしてはいけません!」
「○×△◇∀♀%※!!」
 無我夢中でしがみ付く。ギシリと、男と木を繋ぐ縄が悲鳴を上げた。
 やがて縄は二人分の体重に耐え切れず引き千切れ、
 二人はそのまま地面に転がった。
 慌てて起き上がり顔を上げると、男は意識が戻ったのか、
 激しく咽込んでいる。
 喘息のように荒く息を付きながら勢い良く上げた顔は、
 控えめに言っても美しい部類に入るであろう。
 つり上がった目には涙が浮かんでおり、
 本人は睨んでいるつもりでも迫力がない。
 男は狭まった気管から、無理矢理掠れた声を張り上げた。
「死んだらどーする!!」
「え?」
 まさかの抗議に、きょとんと目を丸くする。
 さっきまで間違いなく首を吊っていた人間には、
 あまりに似つかわしくない台詞である。
「あ」
 すぐにその事に気付いたのか、男は気まずげに少女から視線を外した。
 かと思えば、妙に芝居がかった口調で「また死ねなかった」と呟き、
 その責任を彼女に押し付けるかのような発言をする。
(あ、そっか…この人)
「死ぬ気、なかったんですよね?」
「死ぬ気まんまんで――」
「ですよね!」
 まだ何か言おうとする男の言葉を遮って、彼女はすっくと立ち上がった。

 そうしてこの世界の輝かしさを、身振り手振りも交えつつ語りながら、
 彼女は胸の奥に痞える、妙な感情を感じていた。
 それは、彼女が認めたくない類の感情。

 ――何でこんなくだらない人に、驚かされなくちゃいけないんだろ――

 物事をネガティブにしかとれない男。
 物事を何でもポジティブにとらなければ『ならない』少女。
 
 出会ってはいけない二人が出会ったのは、今から少し前の話。


344:真昼が雪 3
07/09/20 22:30:27 n7lRF80y

 秋―神無月。
 可符香はいつもの登校路を、軽い足取りで歩いていた。
 色とりどりに染まった葉が舞う並木道は、美しく彼女の視界を彩る。
「小さい秋♪小さい秋♪小さい秋、見つけ――」
 調子外れな鼻歌を口ずさみながら歩いていた可符香だったが、
 不意にその足を止めた。鼻歌と一緒に、落ち葉を踏みしめる音も止まる。
 残念ながら、彼女が見つけたのは小さい秋ではなかったようである。
「小さ…くないけど、糸色先生みーつけたー♪」
「歌ってないで、少しは心配して下さい…」
 敷き詰められた落ち葉の上にうつ伏せに倒れた望は、
 能天気な歌声に弱弱しく訴えた。
 小走りに駆け寄り、望の顔を覗き込むように、
 膝を抱えてしゃがみ込む可符香。
「今日も身長伸ばしてたんですか?熱心ですね」
「二重に違います」
 答えながら、伏せていた顔を上げようとする望だったが、
 ふと戸惑ったように硬直した。
「ん?」
「あの…風浦さん。その姿勢で目の前に居られると困るのですが…」
 言いながら、すぐに顔を伏せる望。
 その指摘にようやく、彼の目前にスカートから覗く自分の下着が
 晒されている事に気付いた。それでもあっけらかんとしたもので、
 彼女は微笑みを絶やす事なく言ってのける。
「やだなぁ、気にする事ないですよ。これは所謂、見せパンですから」
「見せられるほうの身にもなってください!」
「嫌なんですか?」
「嫌じゃな――いや、嫌です!」
 うっかり本音を口走りそうになるも、
 すんでの所で問題発言と気付き、自粛する事に成功。
 可符香曰く見せパンをなるたけ見ないよう注意しつつ、
 台詞の勢いに合わせるように身体を起こそうとした。
 だが、今度は腹部に走る鋭い痛みに硬直し、
 腕で半身を支えるような姿勢で居るのが精一杯だった。
 眉間に皺を寄せ、腫れ物に触れるようにそっと下腹部を撫でる望。

345:真昼が雪 4
07/09/20 22:33:37 n7lRF80y
「んん?先生、もしかして体調が悪いんですか?」
「もしかしなくても体調不良です…。
 わかったならこれ以上疲れさせないで下さい」
 グッタリとした様子で項垂れる望の顔は、いつもよりも更に青白い。
 額には薄っすらと汗が滲み、髪がペッタリと顔に張り付いていた。
 本当に辛そうなその様子に、さすがにこれ以上からかうのはやめにして、
 そっと肩に手を掛ける可符香。
「立てますか?無理そうなら、学校まで行って人を呼んで来ますけど」
「いえ…もう、どうにか動けそうです」
 可符香に肩を貸してもらいつつ、危なげながら立ち上がる。
 それだけの動作で随分と疲れたのか、
 大きく息を付く望の顔を仰ぎ見る可符香。
「貧血か何かですか」
「さぁ…何でしょうかね。最近ちょっと不摂生な生活だったもので」
「駄目ですよ、交君も居るのに」
「私ではなく交の心配ですか」
「ちゃんとしたご飯を食べさせないのも、十分虐待になるんですよ?」
「うっ…!ぜ、絶望した…。
 ちょっとした放任すらネガレクト扱いする世間に絶望したッ!」
「わかったら、ちゃんと食べて下さいね。
 ほら、隣の女子大生に夕飯を分けてもらうとか」
「あ、いいですね。それを機に距離を…、
 って何で貴方がそんな事まで知っているんですか」
 話しているうちに少しずつ体調も戻り、
 礼を言いつつゆっくりと可符香から身体を離す望。
「ありがとうございます。もう大丈夫です」
「授業、できそうですか?」
「この分なら大丈夫でしょう。ですが、些か遅刻してしまいましたね」
 懐中時計を懐から取り出して時間を確認すると、
 もうとっくにHRは始まってしまっていた。
「すみません、遅刻させてしまって」
「大丈夫です。先生が出席簿に丸を付けてくれればいいんですから」
 人差し指と親指で丸の形を作りながら、悪戯っぽく笑う教え子に苦笑する。
 小さな共犯関係に、
 何とも言えないくすぐったさを感じながら、二人はゆっくりと歩き出した。

 二人が出会った並木道は、すっかりその表情を秋の色彩に変えて、
 歩み去る二人を見守るように見つめていた。


346:真昼が雪 5
07/09/20 22:35:53 n7lRF80y

「おはようございます」
「先生!いい加減きっちり時間――」
 2のへの教室に足を踏み入れた瞬間、予想通り千里の罵声が飛んでくる。
 が、威勢よく発した声は、何故か徐々に尻すぼみになっていった。
「はい?」
 とうとう黙ってしまった千里の視線を辿ると、
 そこには望の後から教室に入ってきた可符香の姿。
 見つめられている本人は、いつもの笑顔で小首を傾げたりしている。
「あぁ…!」
 別方向から、愕然としたかのような声。
 声の主は、教卓に立つであろう愛しき教師を待っていた、まといであった。
 まるで大事な物を奪われたかのように悲痛な顔で、
 教卓から顔を覗かせている。
「ど、どうしました?お二人とも。
 私が遅刻してくるなんて珍しい事じゃ無いんですし、
 今更そんなに驚かなくても」
「やっぱり自覚あるんだ」
 やる気なさそうに呟くあびる。相変わらず盛大に包帯だらけである。
「…どうして可符香さんと先生が一緒に登校して来るんです…?」
「それも、遅刻までして」
 何やら目つきが怪しくなっている千里。彼女に続いて呟くまといも、
 明らかに目が座っている。説明を求められる事は意外でも何でもない。
 だが、この様子はいったいどういう事だろう。
 内心で首を傾げつつも、求められたならば答えようと口を開く望。
「あ、あぁ…それはですね」

「やだなぁ。身体を寄せ合ったり、私が先生に下着を見られたりしただけで、
 特に何もなかったから大丈夫よ」


347:真昼が雪 6
07/09/20 22:37:53 n7lRF80y
 望の言葉を遮るように。
 人差し指を立てて、悪意など欠片も滲ませない声で可符香は言った。
 その表情は満面の笑みである。
 望は二の句が告げず、顔色を青ざめさせながら可符香に振り返る。
「あ、あ、あ…貴方はまたそういう事を…!」
「でも、本当の事ですし」
「拾うポイントが悪すぎるんです!
 だいたい下着は私が故意に見たわけじゃありません!」
「別に無理矢理だなんて言ってないですよ。結果的には合意の上ですよね」
「当たり前です、人聞きの悪い!」
 口を開けば開くほど事態が悪化している事に気付かない哀れな教師に、
 他のクラスメイト達は内心で同情するしかなかった。
「先生」「先生」
 静かなのに妙に凄みの効いた声が教室に響く。
 吐息が耳朶に触れる程の距離で囁かれ、望はビクリと身を強張らせた。
 右側に千里。左側にはまといが。
 一人の声でも恐ろしいのに、ステレオで聞かせられては硬直するしかない。
(というか、いつ近寄って来たんですか、二人とも…)
 椅子の引く音や、教卓の動く音くらいしそうなものだが、
 二人は今の今まで望にその気配を気取らせずに接近してきていた。
 もちろん可符香に弁解するのに必死になっていたのもあるが。
 さっきまで同情の目を向けていたクラスメイト達は、
 いつの間にか教室外に非難している。
 あろう事か、直前まで会話していたはずの可符香すら、
 一瞬目を放した隙に消えていた。
「あ、あ…あ」
 理不尽だ。
 そう訴えようと口を開くも、喉の奥で声が凍り付いて、言葉にならない。
 
 その後の描写はとてもオンエアに耐えうるものではなかったので、
 割愛させていただく。


348:真昼が雪 7
07/09/20 22:44:26 n7lRF80y

「貴方は私に、何か恨みでもあるんですか?」
 あびるよろしく包帯だらけになった望は、放課後の保健室で憮然と呟いた。
 もはや『赤い』としか言い表せない物体に成り果てた彼は、
保健室に担ぎ込まれ手当てを受けた。
 それからずっと眠り続け、目覚めた時には既に、
 開いたカーテンから夕日が射し込み、室内を照らしている時分だった。
 随分と長い事眠ってしまったらしい。
 目を覚まして開口一発の恨み言に、
 様子を見に来ていた可符香は笑顔で答える。
「やだなぁ。可愛さ余ってなんとやら、ですよ」
「やっぱり憎いんじゃないですか!」
「冗談です。私に嫌いなものなんて、あるわけないじゃないですかぁ」
 無邪気に言って、
 何食わぬ顔でベッド脇までパイプ椅子を引っ張ってくる可符香。
 その発言に妙に納得してしまって、思わず口を噤む望。
 確かに彼女が何かを嫌悪する様子は想像出来ない。
 キモい試しの時ですら、いつもの笑顔を崩さずに、
 あろう事か倫をからかって遊んでいた。
 キモい!と泣きながら走り去る可符香を想像しようとしたのだが、
 あまりに想像し難く、つい難しい顔になる。
「はい、先生」
 ふいに、頬に硬く熱い何かが押し当てられた。
「あっつ!」
「はい、これでも飲んで機嫌直してください」
 反射的に頬を押さえながら身を引く望に、改めて差し出されたのは、
 缶入りのお汁粉だった。
「…わざわざ、外で買って来たのですか?」
「はい。もう結構寒いから、喜んでもらえると思って」
 笑顔で差し出されるお汁粉をおずおずと受け取りながら、
 すっかり毒気を抜かれたように礼を言ってしまう望。
 可符香は笑顔で頷いて、自分用であろうホットのお茶を鞄から取り出し、
 一口啜った。それに釣られる様に望も、プルタブを開けてお汁粉を口に
 含もうとする…のだが、

349:真昼が雪 8
07/09/20 22:45:48 n7lRF80y
「糖類(砂糖、トレハ糖)、小豆、食塩、増粘剤(キサンタンガム)、
 乳化剤、環状オリゴ糖、pH調整剤、安定剤(セルロース、カラギンナン)
 …色々入ってるんですねー」
 唐突に読み上げられる、何かの原材料名。
「げ、原材料名を読み上げないでください!非通知で、非通知でお願いします!」
 もちろんそれは、今しがた望の飲もうとしたお汁粉のそれである。
 いつかプリンの材料表記に絶望させられた事を否が応にも思い出し、
 堪らず悲鳴を上げた。
「だったら貴女の飲んでるそれは…!」
 負けじと望も可符香の飲んでいるお茶を引ったくり、原材料を読み上げる。が、
「…玄米、緑茶、発芽玄米、はと麦、ビタミンC…」
「特に聞き覚えのないものは入ってないですね」
「ワザとでしょう、絶対ワザとでしょう!」
「やだなぁ、偶然ですよぉ」
 良いようにおちょくられ、悔しさのあまりお汁粉を突っ返し、
 わぁわぁと咽び泣く糸色教師、2○歳。
「やっぱり貴女、絶対私に恨みがあるんでしょう、そうなんでしょう…!」
 その様子が可笑しいのか、可符香はニンマリと笑みを深めた。
「だからありませんよ。
 ほら、好きな子ほど意地悪したくなるって言うじゃないですか」
「嫌がらせって自覚はあるんですね、やっぱり」
「意地悪、ですよ」
「教師を弄んで楽しいですか…!」
「愛あればこそ、です。嫌われるよりいいじゃないですか」
 教師どころか大人としての面子も立たない。
 グズグズと鼻を啜りつつ、眼鏡を外して目元を拭っていると、


「うん。嫌いなんて、そんな事思わない」
 不意に呟いた可符香の声は、驚くほど低く、静かだった。
 今まで聞いた事もないような声色に驚いて、思わず顔を上げる。



350:真昼が雪 9
07/09/20 22:47:19 n7lRF80y


「そうです。これは恋とか、そういったものなんです」
 彼女の表情を窺おうとするも、眼鏡を掛けていない事に気付きハッとなる。
 その上ついさっきまで泣いていた所為で、余計に視界が不明瞭だ。

「だから私、先生の事がきっと、大好きなんですよ」
 不自然な程に落ち着いた声音。
 いつも明朗に喋る普段の彼女と、あまりにかけ離れている、低い声。
 彼女はいったいどんな顔で、その言葉を紡いでいるのか。
 望は何故だかまた泣き出しそうになって、ぐっと息を詰まらせた。


 慌てて眼鏡を掛けなおし、可符香の顔を見つめるも、
 そこにはさっきまでの様子が嘘のように、いつもの笑顔があるだけだった。
「先生はモテモテですよねー」
 無邪気に笑う可符香にどう反応していいものか迷い、曖昧に笑って誤魔化す
 事しか出来ない。先ほどの事を問い質しては、いけないような気がした。
 僅かに迷った末、ふざけた調子で言う可符香のノリに合わせる事にする。
「あ、貴女までそんな冗談はやめて下さいよ」
 ただでさえ今日は、恋愛絡み…と言えるのかどうかわからないが、
 とにかく女性関係でああいう目にあったのだ。
 その衝撃といったら、思い出すだけで発狂ものだ。
「ディープラブはもううんざりです。というか、アレが愛とは思えません」
「えー?愛ですよ。海より深い愛です」
「深すぎます。むしろ、深々と刺さってます。いろんなものが」
 服の下の包帯を擦りながら、痛みを思い出して身震いする。
 その様子を可笑しそうに笑って、可符香は椅子から立ち上がった。

351:真昼が雪 10
07/09/20 22:49:44 n7lRF80y

「それじゃあ、私はそろそろ御暇しますね」
「ああ、そうですね。最近は日が落ちるのも早いですから。
 …っと、何なら送って行きましょうか」
 今まさに扉に手を掛けて退室しようとしていた可符香は、
 珍しく苦笑しながら振り返る。
「怒ってたんじゃないんですか?」
「これでも先生ですからね、生徒の安否くらいは気にかかるんですよ。
 それに、クラスから失踪者が出た日には、私が迷惑するんですから」
「でも、今の先生じゃ不審者が出ても成す術ないと思いますよ?」
「大丈夫です、声量には自信がありますから」
「悲鳴要員ですか」
 クスクスと可笑しそうに笑って、それでも彼女は首を左右に振った。
「先生は大人しく寝てて下さい」
「ですが…」
「じゃあ、僕が送っていきますよ」
 尚も食い下がる望の台詞を遮るように、扉の外から男子生徒の声が響く。
 一瞬どこからの声かわからず、キョトンとする望。
 可符香が平然と扉を開くと、
 そこにはいつものように本を片手に携えて佇む、久藤の姿があった。
「久藤君…来ていたのですか?」
 目を丸くしながら問いかける。彼はいつもの薄い笑顔で望を一瞥して、
「ついさっき通りかかって。そうしたら、何だか揉めているようだったから」
 そう言うと可符香に向き直り、自分でいいかと問いかける。
 笑顔で頷く可符香。
「良かった、久藤君なら安心です。お願い出来ますか?」
「はい、大丈夫です。僕も声量には自信がありますから」
 冗談っぽく言ってお辞儀をし、踵を返す久藤。
 その後に続いて保健室を出る可符香は、
 最後に小さく「さよーなら」と言い残し、扉を閉めた。

 二人分の軽い足音のが遠ざかるのを聞きながら、
 しばらく望は、ぼんやりと扉の方を見つめていた。
「好き…ねぇ…」
 無意識に呟いて、ゆっくりと布団に身を沈める。

 その夜は、彼女の夢を見た。


352:真昼が雪 11
07/09/20 22:51:45 n7lRF80y

 ◇ ◆ ◇ ◆

「可符香ちゃんは、先生の事が好きなんだね」
 緋色に染まっていた世界は、徐々に黒に侵食されつつあった。
「聞いてたの?」
「うん、ごめん」
 チカリ、と街灯が灯る。
 民家からは夕食の香りが漂い、一日の終わりを感じさせる。
 闇に溶けつつある住宅地を、
 僅かな光で照らそうとする灯が、何だか滑稽に見えた。
「謝る事ないよ。
 うん、私先生の事、好きだよ」
 軽やかな足取りで少しだけ前を行く少女の様子を、
 笑顔の中に複雑な感情を湛えて見つめる久藤。
「この胸の中に痞える感情は、恋に違いないから」
 胸に手を当てて、まさに恋する乙女を体現するようなジェスチャーで語る可符香。
 夢見るように瞼を閉じるその様子は、
 ときめきに胸を焦がしているようにしか見えない。
「いつから好きなの?」
「出会った時から」
 自信満々に断言する、その瞳に迷いはない。
「へぇ…もし良かったら、聞いてみたいな。二人の出会い話」
「童話にでもしてくれるの?」
 クスクスと笑った後、いいよ、と頷いて。
 四月の二人の出会いを身振り手振りを加えつつ、実に大仰に話し始める。
「――こうして二人は運命的な出会いを果たしました。
 私はそれから、胸に疼くこの不思議な感情に心を焦がすようになったのです。
 そう、人はそれを恋と呼びます」
 神妙に聞き入っていた久藤は、ピクリと瞼を震わせた。
「さっきも言ってたけど…疼きって?」
「だから、恋だよ」
 答える可符香の表情は、背を向けているため窺い知れない。
 久藤は二人の出会いのシーンを、なるたけ詳しく想像してみる。

353:真昼が雪 12
07/09/20 22:53:29 n7lRF80y

 新学期。桜の花弁が降る爽やかな朝。
 その清々しい景色を、確実に壊したであろう、首を吊る男。
 もしかしてそれは、彼女にとって完全な不意打ちだったのではないか。
 彼女は滅多な事では心乱さない――そういう評価を人から受けている。
 だが正しくは違う。心乱される事が嫌いだから、
 必死に全てを掌握しようと動くのだ。
 何があっても驚かないように、怖くないように、予防線を張ろうとする。
 最近では知ることを楽しんでいる節もあるが、
 彼女の「全てを知りたい」という願望の始まりは、ある種の恐怖からだった。
 もはや殆どのシチュエーションには耐えうるであろう彼女だったが、
 望はあまりにピンポイントに、彼女の不意を突いたのではないか。

 今ではすっかり、彼の首吊りは恒例である。
 けれど初めてそれに遭遇した彼女は、いったい何を思い出したのだろう。
 恐ろしいと思っただろうか。それとも。

「――怒った、のかな…」
「え?」
 無意識の呟きに、きょとんとした顔で振り返る可符香。
 その笑顔に曇りなど見受けられない。
「何でもないよ」
「変なの」
 カサリカサリと、彼女が枯葉を踏む音がリズムを刻む。

(…杏ちゃん、それは)

『恋だよ』
 望と出会った瞬間、胸に痞えた感情を、彼女はそう表現した。
(それはきっとまだ、恋とは呼べないよ)
 心に浮かんだネガティブな感情。彼女が全力で否定しなければならないもの。


 やだなぁ、この気持ちはきっと恋ですよ。
 ――決して、苛立ちなんかじゃありません。



354:名無しさん@ピンキー
07/09/20 22:53:38 rkFNiDh7
初めてリアで読んだ!!
GJ!!ワクテカしてます!!

355:341
07/09/20 23:02:01 n7lRF80y
盛り上がりもなくここで一区切りさせていただきます。予想外のスレ消費に吃驚。
改行がよくわからず読み辛い事に…申し訳ない…。
もしご迷惑でなければ後日続きを投下させていただきたくー。
今後の展開は糞ツマラナイですよ!と、予防線を張ってみる。

356:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:02:52 jEe74NwT
>>355
GJです!
早く続き読みたいな

357:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:05:00 otKRNYTh
>>355
最近投下されたものの中で一番、文章に厚みがあって読み応えがあった。
とにかくすごい面白かった。続き期待してます。

358:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:37:09 rK8bZCfD
真昼が雪って・・・真昼が雪って・・・まさかニコの・・・あれじゃないよね?
だったら泣くぞ!泣くぞ!!絶対泣くからな!!!<(T◇T)>わぁああああ!


359:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:43:46 pCkYQCtk
杏ちゃん?

360:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:47:32 8gUZJFDL
>>355
なんという神作品…!いいもん読んだよ、ありがとう

361:名無しさん@ピンキー
07/09/21 00:00:47 nYbEN0gt
どうも、sageの意味がわからなかった愚か者です。もうしわけありませんでした。
一応意味を調べたので、あってるか送ってみます。                   

362:恋の物語11
07/09/21 00:04:15 nYbEN0gt


「とは言ったものの・・・・」
手持ちの所持金は四千円ちょっと、豪華なものを食べられるはずもない。
「絶望した!!寒い自分の財布の中に絶望した!!」
とりあえず叫んでもお金が増えるはずもなく、空腹と虚しさがつのるばかり。
「仕方がない・・・・ここにしますか・・・」
と、ふらりと立ち寄った場所、それは、ちょくちょくお世話になっている居酒屋だった。
何度か死のうと思った時、ここに寄ると何故か心が落ち着くのだった。
まあ、本人に死ぬ気がないのだから、あんまり特別な意味はないのだが。
「まあ、豪勢とは行かないまでも・・・お金の心配はないでしょう・・・」
などといいながら、中に入ると、やはり、いつもどおりすいている。
いらっしゃいという声に適当に返し。座る席を探していると。焼酎のとっくりが並べられている
席が目に入った。
(おや、これは・・・)
望は何度かここに来てわかっていた、こういう客は大体がなにか嫌なことから逃げるために
酒をあおってるのだ。
普段ならこの人も大変なんだなと、適当に流すのだが、今日は何故か妙に親近感が沸く。
(私も同じだからでしょうかね・・・)
どんな人か見てみようと、前に回りこんで、思わず息を呑んでしまった。
「ち、智恵先生!?」





363:恋の物語12
07/09/21 00:05:39 nYbEN0gt

「あらぁ!糸色センセじゃありませんかぁ、奇遇れすねえ!」
普段からは想像もつかないようなろれつの回らない喋り方に思わず面食らいながらもとりあえず、
目の前の席に座ると、とりあえず聞く。
「あのどうしたんですか?智恵先生がこんな所にいるなんて・・・」
「あらしが、こんな所にいちゃらめなんれすかぁ!!」
「いえ、そうじゃ、ありませんけど・・・」
あまりの剣幕に思わずたじろく、酒には慣れてないのか、相当な酔い方だ。
一体何があったのか悩む望を智恵は尻目にケラケラと笑い声を上げ、さらに続ける。
「今日は糸色センセの言葉がよ~くわかりましたよぉ!本当に世の中絶望的なことばーっかり
 れすねぇ!それなのにあらしったら偉そうに説教なんてしちゃってぇ!ああ、おかしい!」
これはひどい、何があったか知らないが、これはやめさせなければならない、下手にやけに
なって慣れない酒を飲み続けていると下手をすれば命にかかわる。
自分の自殺方法として考えていたのだから、その恐ろしさはよくわかっている。
だが、智恵は再びとっくりを掴み中身を注ごうとする。慌てて望はその手を掴み止める。
「何すんれすかぁ!楽しみを邪魔しないでくらさいよ!!」
そういって手を振り解こうと暴れたその瞬間
「智恵先生!!」
と、思わぬ大きな声が望の口から発せられ智恵の手がビクッと震え力が弱まる。
それを確認すると、望は声を和らげると言葉を続ける。
「酒に逃げるなんて、あなたらしくないですよ・・・それは私のような人間のやることです。
 智恵先生はそれを止めてくれるのが仕事じゃないですか」
そう諭すように言う望の顔をぼんやり眺めていた智恵は突如
「ヒック・・・う、ウッ!ウッ!私だって・・・私だって!!」
としゃくりあげ、そのまま、目から涙を溢れ出させはじめ、そのまま、テーブルに突っ伏す。
「え、えええ!?」
望は驚いたかのように慌てて智恵の背中をさする。
いきなり泣き出されてはそれも当然の反応だ。
どうしたものかと、悩んだ末、一応謝ることにした。
「ごめんなさい、私としたことがデリカシーのないことを、本当にすいません」
が、反応がない、怒っているわけではなさそうだ。
「智恵先生?」
声をかけても無反応、そこで耳を近づけてみると、かすかに寝息が聞こえてくる。
「眠ってしまわれましたか・・・」
とりあえず自棄酒を止められれたことに安堵したその時、もっと重大なことに気付く。
「お勘定・・・どうすればいいんですか?」



364:名無しさん@ピンキー
07/09/21 00:06:13 ZJdtfucO
まさかの投下再開ktkr

365:恋の物語13
07/09/21 00:07:08 nYbEN0gt

これは夢だ。
自分でわかるのは奇妙なことだが、なぜかはっきりそうわかる。自分は薄ぼんやりとしたもやの
中に立っている。
と、突如、声が聞こえてくる。
「もう、智恵とはやってけないよ!」
忘れもしない、初恋の人の声。
「お前はそうやって、勉強ばっかり、ちょっとは俺のこともかんがえろよ!!」
そんなことわかっている。それでもがむしゃらに夢を追うことしか自分にはできなかった。
「はじめはそんなことなかったじゃないか!なんで付き合いはじめて急に!!」
付き合い始めたからこそ、はやく夢をかなえてほめてもらいたかった。ただそれだけ
「いいよ!どうせ、お前はそっちが大事なんだろ!俺がいちゃ邪魔なんだ!!」
そんなことない、私にはあなたが必要なんだ!そう叫びたいが声が出ない。
「じゃあな!せいぜい、いい先生になれよ!!」
走り去る音が響く、引き止めたいが体が動かない、そのまま急に周りが暗く染まり、自分を
覆っていく。
その時
「智恵先生!!智恵先生!!」
暖かい声が頭に響き、


366:恋の物語14
07/09/21 00:10:12 nYbEN0gt

「気がつかれましたか?うなされてましたが」
気付けば心配そうに振り返ってこちらを見ている、望の顔が目に入った。
(振り返ってる?)
そこで初めて智恵は自分の状況に気付く、智恵は望におぶわれていた。
「え?え?ええええ!!」
驚いて思わず、体を揺り動かしてしまう。
「うわっと!動かないでください!こけたらどうするんですか?」
「あ、ああ、すいません・・・」
思わず謝ってしまい、そこで改めて記憶の糸を手繰り寄せ、居酒屋に入りとっくりを二本目を
飲んだ後からの記憶がプッツリと途切れている。
「ひょっとして・・・私、酔っ払ってたんですか?」
「そんなことありません!あれはちょっと飲みすぎてただけです!」
否定の仕方からどれだけ、自分が酔っ払っていたかが、伺い知れる。
そういえば、勘定はどうしたんだろうか。払った記憶はないが、
「あの、勘定は・・・」
「ああ、安心してください!私が払っておきましたから、なに、私お金は困ってないですから!」
望は胸を張って言うがお金に困ってない人間ならあんな場所に来ないだろう。
申し訳なさでいっぱいになりながら、顔を伏せた智恵に慌てたように望は話をそらす。
「ああ、そういえば、智恵先生のアパートってこっちですよね。送っていきますよ」
そこまで言って、心配そうに続ける。
「それとも・・・私じゃ、迷惑ですか・・・」
「いえ・・・ありがたいですけど・・・私、重くないですか?」
「そんな!とんでもありません!これでも力があるんですよ!」
どうみても無理が見え見えだ。だが、降ろされた所で、歩けず迷惑をかけるのが関の山だ。
ならば、今は好意に甘えるとしよう。



367:名無しさん@ピンキー
07/09/21 00:12:18 nYbEN0gt
ええと、今日はここまでにします。申し訳ありません。
後は明日全部投下しますんで、お許しを、それからsage忘れてすいませんでした。   

368:名無しさん@ピンキー
07/09/21 00:17:02 ZJdtfucO
>>367
間違いが発覚したので正解ですよ!
乙!wktkしながら待ってるんだぜ!

369:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:02:39 goYl6MsV
予告していた准×倫

前置き
・某職人さんの設定を借りています(望×可符香及び准×倫は既に確定しています)
・エロは滅多に書かないので苦手です。期待している人はごめんなさい
・呼び方等変な場所がありましたら笑いつつ指摘してください
・原作を七巻までしか読んだことがないので変な場所があるかもしれません。笑いつつ指摘してください

はじまりはじまり


370:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:03:17 goYl6MsV

「先生、来ないね」
「倫ちゃんも居ないよ」

~誓い~

一時間目の授業が始まった。いや、始まるはずの時間だ。
今日は糸色兄妹が来ていない。
来ていないならまだしも代わりの先生すら来ない、というより先生が休みだとかそういうことすら伝えられていない。
つまり、先生が学校に来ているかすら皆分からないのである。
先生が居なければ授業も出来ないわけで、今このクラスは何をするわけでもなく皆でぼーっとしていた。

「何で先生は来ないのよ!!」

委員長が叫んでいる(本当は委員長ではないですけど)
一時間目がはじまる予定の時刻からたっぷり十分が過ぎてからの一言だった。

「………そういえば、去年はこの時期に見合いがあったよね」

奈美の一言に教室、特に女子たちの周りの空気が凍った。

371:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:04:14 goYl6MsV

お見合い……糸色家のお見合いについては杏ちゃんから聞いていた。
変な方法だし、領地の人まで強制参加というなんとも迷惑な行事なんだろう。
そういえば皆はまだ先生と杏ちゃんの関係を知らないんだっけ。
杏ちゃんは……こんなときでも笑っているなぁ。でも周りの空気がいつもより重い。
女子たち………絶望少女たちがあわただしく教室を出て行く、もし今日見合いが有るとしたら今から行けば間に合うだろう。
自分は当然行くつもりは無い、先生のお見合いに興味は無いからだ。
………領地の人まで強制参加?
それってもしかして………
気がついたら教室を飛び出していた。

「倫ちゃん……」

なぜ気がつかなかったのだろうか、糸色倫もその対象の中に含まれていたことに。



372:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:05:14 goYl6MsV

なんとか皆に追いついて先生の故郷まで来ることが出来た。
電車の中は暗い空気で満ちていたのだがこれをチャンスだと思ったらしく途中から木津さんの闘志で溢れていた。
ほんらいライバルであるはずの常月さんが居ないからよけいやる気が出ているらしい、
………先生が居ないところに常月さんが居るわけが無いのだが。
というより既に杏ちゃんに負けているのを知らないのが本人にとって幸福なことだろう。

駅から出るとリムジンが用意されていた、皆は経験済みなのでためらいも無く乗り込んでいく。
最後に乗り込んだ僕は柔らかい座席に腰を下ろした。
車が動き出し糸色家へと向かう、振動が少ないあたりが流石高級車だ。
車内は静かだったがどこかピリピリとした空気なので心が落ち着かない。
これからの修羅場を思い浮かべると胃が痛くなってきた。


373:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:06:16 goYl6MsV

糸色家につくとチャラチャラした格好の先生が庭で本を読んでいた。
大きな木下で本を読んでいた先生はこちらの姿を確認するなり青ざめた顔でどこかへ逃げようとした、
しかし木津さんと小節さんにまわりこまれてしまい逃げ場を失った。

「な、なんで貴方たちが居るんですか!?」

「先生今日こそきっちりとしてもらいますからね!!」

木津さんが叫ぶと周りの女子も口々に叫びだした。
ふと、杏ちゃんを見るとまだ笑っていた……口元だけが。
やはり……修羅場となるのだろうか。



374:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:07:25 goYl6MsV

女子は大きな部屋に男子は………と言っても僕だけだったが小さな部屋に通された。
小さいと言っても女子の部屋と比べたらの話であって、思わず叫びたくなるほどの広さはある。
畳にねっころがり先ほどの執事の言葉を思い出した。
『倫お嬢様は誰とも会いたくないとおっしゃっています』
会えないわけではなく会いたくない、心の距離がとても遠く感じてしまった。



ガラッとふすまが音を立てて開いた、顔を横に向けると横向きの先生の顔……自分が横向きなのだが。

「いやぁやっと開放されましたよ」

と言いつつ先生は隣にねっころがった。チャラチャラした格好なので実にこの部屋と合っていない。


375:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:08:05 goYl6MsV
「少し君と話がしたくてここへきたんですよ」

僕と話す事………二つしか思いつかない。

「杏ちゃんと倫ちゃん……どっちですか?」

「倫の方です」

やはり、僕がここへ来た理由も分かっているのだろう。
僕は倫を他の男に渡すつもりは無い。

「倫はこの時期になるといつも部屋に篭るんですよ、そしてボディーガードを部屋の周りに配置して誰も近づけないようにするのですよ」

それを聞いたときにからだを二つの感情が駆け巡った。
一つは倫を他の男に絶対に取られないという安堵感、もう一つは………悔しさだった。
他の男をに取られない代わりに倫を僕のものに出来ないと言う悔しさ。

376:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:08:56 goYl6MsV

「……………」

何も言葉が出ない。
今口を開くと泣き出してしまう気がした、自分と倫との距離がとても遠くて、その距離を思うと泣き出してしまいそうだった。
実際の距離ではなく心の距離がとても遠くて………

「久藤くんはこんな話を聞いたことがありますか?」

最後の言葉から五分ほど立ってから先生が口を開いた。

「とある人が自分の好きな人とその人の兄さんが町を歩いているのを見かけたんです。
でもその人は兄さんの存在を知らなくて、あまりに仲がよいものだから恋人なんだと思ってしまうのですよ。」

先生が起き上がって蚊取り線香に手を伸ばした、気づくと耳元を蚊が飛んでいる。

377:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:09:33 goYl6MsV

「で、そのあとその人は自分が好きだったスポーツ……野球を止めるんですよ、
元々はその好きな人がマネージャーをやっていたからはじめたんですけどね。
その人に恋人が居るならやってても意味が無い、と思ったわけですよ。
で帰り道にってその人は好きな人に合い流れで好きな人の家に行くんですよ、そして兄さんだったってことを知る。」

蚊取り線香にライターで火をつけると煙が出てきた。
それを台にセットすると先生はこちらを向いて胡坐をかいた。

「そのことをその兄さんに話すとこう言われるんですよ『お前は野球をなめている』ってね、
そして更にこう言われるんですよ『男なら欲しいものは障害があっても絶対に取る』とね」

先生はそこまで言うと立ち上がって廊下に向かった。

「あとは貴方しだいですよ」

そう言うと先生は襖を閉めてどこかへ行ってしまった。

378:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:11:05 goYl6MsV

「そんな事言ったって、いったいどうすればいいんだよ」

そう呟いて体を起こすと視界に紙切れが写った。
糸色家の地図………しかもなぜか天井裏の地図だった。

「先生………ありがとう」

時間を確認すると。あと3時間ほどで見合いは始まるようだ、
それまで、来るときにあわてて詰め込んだバッグの中を整理することにした。
と、言ってもスクールバッグなのでそんなに入っているわけではない。
中のものを取り出していくと、底に小さな箱が有る事にに気がついた。



379:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:12:06 goYl6MsV

天井裏に上がると真っ暗だったが、小型のペンライトを持っていたので問題は無かった。
地図で自分の居る場所を確認し、ゆっくりと進んでいく。
時間は有る、迷わなければ大丈夫だ。
………十分ほど進み、とある部屋の上で動きを止めた。
地図に赤丸がして有るのでここに間違いは無い。
一枚だけ動く板が合ったのでそれをどかして下に降りた。
どさっと音がしたがボディーガードは部屋から離れた位置にいるらしくてばれてはいないようだ。

大きな屏風が合り部屋を二つに区切っていた。
自分は入り口側に居る、とすれば当然倫は反対側に居る。


380:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:12:51 goYl6MsV

「倫ちゃん」

「なぜ、ここに居る」

向こう側から聞こえる声は重かった。
怒っては無いようだが相手を威圧する迫力があった。

「倫ちゃんに会いに来ただけだよ」

「………今が見合いの時間だと言うことを知っての上でか?」

「うん、倫ちゃんを僕のものにしたかったからね」

部屋を沈黙が支配した。
小さなため息を吐いて屏風の反対側へと向かう、そこにはきつく目を閉じて正座をしている倫ちゃんが居た。


381:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:13:26 goYl6MsV

「………僕じゃ嫌なの?」

たっぷり一呼吸置いてから倫は口を開いた。

「……怖いのだ………捨てられるのが」

捨てる?僕が……倫ちゃんを?

「お兄様がよく言っておる『男なんて獣ばかりです、遊んだら捨てるような酷いやつもいるんですよ』と、
……だからこれ以上深入りするのが怖いのだ」

捨てられるのが怖い……たしかにそういう奴は居る、でも僕は………

倫に駆け寄ると口づけをしてそのまま舌を入れた。

「!!!」

倫ちゃんは酷くびっくりしたようだったがめだけは閉じたままだ。

「愛してるよ……倫」


382:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:14:28 goYl6MsV

耳元で呟くと倫の体がビクッとはねた。
着物の隙間から手を入れて双丘の先を触ると既に固くなっていた。

「かわいいよ、倫」

そう言い口づけをすると倫の体の力が抜けていった。
力の抜けた倫から服を脱がすことは簡単だった。
帯をはずし邪魔な布も全部剥ぎ取ると白い体が姿を表した。

「最初の頃より大分大きくなったね」

胸に舌を這わせながら言った。
目をつぶって必死に耐えている少女をみると背筋がぞくぞくした。
左手で胸を弄りつつ右手を股間へと持っていく。
少女の秘部に指を這わせるとしっとりと濡れていた。
そして二本の指を入れて動かしだすと、声を上げないようにしていた倫も声を上げてしまう。


383:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:15:15 goYl6MsV

「きゃぁっ!!」

それでもしっかりと目は閉じられている。
しかし、指を動かしていると声も段々大きくなってきた。
最後に強く中を引っかくと今まで出一番大きな声を上げて倫が大きく跳ねた。

「あああっっっっっ!!」

その時、しっかりと閉じられていた目を倫は開けてしまった、僕は倫の顔をずっと見ていたので目が合った。

「これで、僕のものだね」

そう言ってズボンのジッパーを下げて自分のものを出した、そして倫の入り口にあてがうと一気に挿入した。

「んぁぁああぁぁぁっっっ!!!!」

倫は目を見開いて叫んだ、口づけをしつつ腰を動かすと、ストロークのたびに倫の体は大きく跳ねた。
最近してなかったからか自分も倫もすごい感じている。
倫の締め付けはいつもよりすごかった。

384:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:15:56 goYl6MsV

「倫……もう出そうだけど……どうしたい?」

倫は僕の顔を見ると笑いながら言った。

「わ…たしは……んっ……お前の…ものに……あっ……なったのだぞ……」

それを聞いた僕は思いっきり突き上げた。

「んぁぁぁっっっっっ!!」

倫が大きくのけぞった、それと同時にすごい締め付けが自分の分身を襲った。
その締め付けに耐えられず倫の中に全てを解き放った。


385:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:16:54 goYl6MsV


朝、目が覚めると体が動かなかった。
隣を見ると愛しき少女の顔があり、自分が抱きしめられているということに気がついた。
額にキスをしてそっと抱きしめた、このぬくもりを幸せというのだろう。
抱きしめているともぞもぞと倫が動き出した。

「おはよう」

そう言うと眠たそうな声で返事が返ってきた。
時計を見ると十二時前だった、そういえばおなかがすいている。

「とりあえずご飯食べよう」

そう言って起き上がると少女も続いて起き上がった。
服を着るとポケットに何か入っている、取り出してみるとバッグの底にあった箱だった。


386:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:18:23 goYl6MsV

「倫ちゃんこれあげる」

そういって箱を差し出すと倫はうれしそうに受け取った。
倫が開けると小さなサファイアのついた指輪が入っていた。

「学生だからそんなものしか買えなかったけど、とりあえず受け取ってね。
稼げるようになったらちゃんとしたの買ってあげるから。」

なんとなく恥ずかしくなって部屋から出ようと廊下へ向かおうとした時に後ろから抱きつかれた。

「ありがとう」

このぬくもりを幸せというのだろう。


終わり


387:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:19:01 goYl6MsV

准君は最中だけ呼び捨てになればいいと思います
さて次は独自十年後設定話です。
エロなしですよ、つーかオマケかな


388:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:19:13 u1PyB6ur
人のフンドシ借りた作品だから60点。

指摘する点

倫はお見合いの回の2年後に学校に編入して来たので
「去年の時期」と言う部分は無理がある。

389:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:19:41 goYl6MsV
十年後

ピンポーン
「「倫おばさん!!」」

チャイムと同時に元気な声が聞こえて台所に居た倫は玄関へと向かった。

「おはよう好(よし)、叫(さけぶ)。可符香は来てないのか?」

「おかあさん?僕たち走ってきたから、後から来るよ」

兄である叫が答える。それは自分の兄の幼い頃とそっくりだった。

「あっ俊!!」

妹の好が元気な声で言った。それは元クラスメイトとそっくりだった。
後ろを見ると自分の息子が本を持って立っていた。

390:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:20:17 goYl6MsV

「好!!叫!!久しぶりだな」

息子が近づいてきた。

「遊びに行こうよ!!」

「お母さん遊びに行って来て良い?」

「ええ、いいわよ」

そう言って微笑むと3人は元気に笑いながら駆けていった。

「「「行って来ます!!!」」」

見えなくなるまで見届け、台所へ戻ろうとすると新たな人影が見えた。

391:名無しさん@ピンキー
07/09/21 01:20:58 goYl6MsV

見えなくなるまで見届け、台所へ戻ろうとすると新たな人影が見えた。

「おはよう倫ちゃん!!」

「おはよう義姉さん」

玄関に立っていた可符香はいつもと変わらず元気だった。

終わり




叫→絶叫

好→絶好

俊→准の濁点を取った

名前考えるのめんどかったよ

以上です。

392:前スレ851
07/09/21 02:07:00 lZuVScEz
予告していた、ハル×チリです。ただ、ソフトエロ? な内容です。
文句は受け付けません(嘘)。
こういうのってこういう内容でいいのでしょうか? 仕事があるのにこんなこと
やっていていいのでしょうか? 我ながら絶望的です。

知らんよ、もう。

題して、「パジャマパーティ」です。

393:パジャマパーティー(1/8)
07/09/21 02:07:37 lZuVScEz
 晴美の家についたのは、ちょうど8時くらいだった。この辺りは昔からの住宅地で、
晴美の家もかなり古い木造住宅だ。駅からも歩いて数分と便利なところにある。
 今日は文化祭の展示物を作る、というのは口実で、半分は晴海とおしゃべりをするた
めにやってきたのだ。
 玄関でインターフォンのボタンを押すと、がたがた2階から降りてくる音が聞こえ、
インターフォンで応答することもなしに晴美が扉を開けた。ちょうど彼女の部屋から
ここが見えるのだろう。
 「晴美、ケーキ買って来たよ。」
 「ふーん そうなんだ」
 「もう、お礼ぐらい言いなさいよ。」
 晴美はいつもこんなふうだ。私も彼女も末っ子で妹だが、彼女の方は三人の兄の後に
続いて生まれた女の子のせいか、おっとりした性格だ。私がお姉さんタイプと言われる
のとは大違いである。



394:パジャマパーティー(2/8)
07/09/21 02:08:27 lZuVScEz
 「あがって、今日誰もいないから」
 両親は旅行で、まだ家を出ていない兄の一人も今日はどこかへ出かけているらしい。
別に大騒ぎをするわけじゃないけど、気楽でいい。
 晴美が入れた紅茶を飲みながら、買ってきたケーキを食べた。私はチーズケーキで晴
美に買ってきてあげたのはタルトだ。中学生の頃からの友達だから、彼女が何が好きな
のかは良く知っている。
 ただ、今日とは逆に彼女が買ってくるときには私の好みを忘れて自分の好きなタルト
を二つ買ってきたりする。私がそういうきちんと切れない、形が崩れてしまうものが嫌
いだというのをちっとも覚えてくれないのだ。
 ま、悪気はないんだろうけど。


395:パジャマパーティー(3/8)
07/09/21 02:09:13 lZuVScEz
 文化祭の展示物は私が文章を考え、晴美がイラストを書くというものだ。私達の班が
担当したものは世界史に関するものだ。私の好みで「文化大革命と四人組」というもの
になった。本当は「ポルポト大虐殺の真相」にしたかったのだが、それは文化的過ぎる
ということで却下されてしまった。
「もうちょっと面白いものやればいいのに。毎年糸色先生のクラスの出し物ってつまら
ないことで有名らしいよ」晴美が言う。
「なんか先生のこだわりがあるみたいだから、しょうがないよ。」

 0時を過ぎるころには、予定していた作業もあらかた終わり、晴海がイラスト描いて
いる横で、私は彼女の本棚にぎっしり詰まっている同人誌を手にとってぱらぱらめくっ
てみた。
 「よくこんなくだらないもの読むわねえ」我ながらひどいことを言う。
 「そんなこと言わなくてもいいじゃない!」
 晴美が漫画好きだったのは昔からだが、最近の彼女の創作物は、私にはさっぱり理解
できない。私も知らないことはない漫画の登場人物が、もともとのストーリーや性格を
無視してあれこれ組み合わされて、みたいな内容だ。
 「無理やりよね、これ」もともとはギャグ漫画なのに、その登場人物を使ってエロパ
ロディにしているものをみてそういった。
 「そういうの流行っているらしいよ」流行っている、というのがどこでの話なのか私
にはさっぱりわからない。


396:パジャマパーティー(4/8)
07/09/21 02:10:02 lZuVScEz
 さらに2時間ほどが過ぎ、さすがにおしゃべりにも疲れてきて、今日は寝ることにした。晴美が押入
れから布団を出して敷き、私は部屋の隅に用意してあった来客用の布団を自分で敷いた。
 私は寝巻きとして使うためのトレーナーにパンツに着替えていた。彼女はジャージの
上下という格好だ。
 「いつもその格好で寝てるの?」私は聞いてみた。
 「そうだね、夜はほら、遅くまで原稿書くこと多いから、この格好のまま寝ちゃうこ
とが多いよ」
 「パジャマくらい着なさいよ」
 「んー、なんか面倒なのよね」
 学校でもそうだが、どうもファッションとか格好にはあまりこだわりがなさそうだ。
髪の毛だってぼさぼさ気味の時があるくらいなのだ。ただ、こんな格好でもスタイルがいいのは良くわかる。
 もうちょっと気を使えばずっと綺麗になるのに、私はいつもそう思っていた。
 運動神経はいいし、顔もスタイルも女の子としてのポテンシャルはとても高いと思う
のだ。特に私は体つきについてはコンプレックスを抱いてさえいた。自分で認めるのは
悔しいけれど、この歳になると、どうしようもなく差をつけられていることが良くわかる。


397:パジャマパーティー(5/8)
07/09/21 02:11:04 lZuVScEz
 洗面を済ませ、布団に入る。もちろん急に寝られるわけもなく、おしゃべりが続いた。
ようやく話題も途切れかけたころ、晴美が唐突にいった。
 「千里ってさあ、本当に先生のことが好きなの?」
 「えっ」
 急にそんなことを言われても答えようがない。
 「先生もさ、あれでいろいろ行動しているっていうか、隅に置けない性格だよね」
 まあそれについては私もわかっている。教室で先生を狙っているのが一人二人じゃない
ことはみんなが知っていることだ。私が出遅れているというか、先生にとってはどちらかと
いえばやっかいな存在であることにも気づいていないわけじゃない。

398:パジャマパーティー(6/8)
07/09/21 02:11:40 lZuVScEz
 「そういう晴美はどうなのよ? 誰か好きな人いるの?」正直なところ、親友の割に
はこういう話題について触れることはほとんどなかった。
 「私? 私は・・・そういうのないね。だって・・・」そこで言葉が切れた。
 「まあ、少なくとも先生は好みじゃないみたいね」
 「うん、千里には悪いけど、そうね」
 
 並んで横になりながら、しばらく沈黙が続いた。
 
 ふと横を見ると、晴美は肘を付き、頭を支えた状態でこっちをみていた。薄暗い中でも私の顔をじっと見つめているのが良くわかる。
 「千里ってさあ・・・こんなことされたら、嫌かな・・・?」
 晴美の顔が近づくのを感じ、何をしようとしているのかわかった時には、もうどうし
ようもなかった。
 彼女の唇が私の唇に押し当てられ、私はあまりの驚きに声を出すことすらできずにい
た。全身がこわばるほど緊張しながら、抵抗することできず、その状態を受けて入れて
しまっていた。
 しばらくその状態は続き、私もそれを望んでいることがわかった。
 「千里が嫌じゃなかったら、私欲しい」
 私は何もいわず、それが拒絶のサインでないことはすぐに伝わったようだった。晴美
はもう一度唇を重ねてきた。さっきよりもずっと激しく、長く。私もさっきとは違って
ぎこちなく唇や舌を動かしていた。


399:パジャマパーティー(7/8)
07/09/21 02:12:11 lZuVScEz
 「こんなことしたら・・・駄目だよ晴美」
 「私、言えなかったけど、千里のことね、ずっと・・・」
 いつもののんびりした晴美とは違っていた。私はすっかり晴美にリードされ、される
がままになっていた。
 私は形ばかり少し拒絶しようとした。でも結局は裸にされ、彼女も服を脱いで抱き合った。素肌が触れる感触は、私が想像していたものよりずっとずっと気持ちが良かった。
 「晴美って綺麗な体してる」私はそういって、晴美の豊かな胸に手を触れてみる。こ
れに比べると私の体はとても貧弱だ。そう考えると恥ずかしくなった。
 「あたしって、この歳にしては・・・」
 「そんなことないよ、千里だってスタイルいいよ」
 晴美の手が私の体をまさぐり、私はその気持ちよさに目を閉じてしまう。全身が熱を持
ったみたいに感じられる。
 さらに晴美の手や唇で愛撫され、じっくりと上り詰めるような快感に身を任せた。
 晴美に促され、私も晴美に同じことをしてあげる。

 * * *
 



400:パジャマパーティー(8/8)
07/09/21 02:12:52 lZuVScEz
 「綺麗な髪だよね」ことが終わり、晴美が私のすぐ横にくっつくように横になり、指
で私の髪の毛をくるくる巻いて遊んでいる。少しけだるく、しかし満足感があった。
 「そんなに触っちゃだめだよ」私の髪は不安定なのだ。「明日の朝ひどいことになっちゃうから」
 「それは面白そうだ」晴美が笑い、私もつられて笑った。
 「また・・・いいかな?」晴美が聞いた。
 「だめだよ、こんなこと」私は答えたが、その声に説得力がないことは自分でも良くわかっていた。

おしまい


401:名無しさん@ピンキー
07/09/21 03:48:01 0Db793sY
>393ー400
GJ!! 何気なく、それでいてエロいよ!
藤吉さん百合属性ktkr

402:名無しさん@ピンキー
07/09/21 07:03:15 bLvDhS2p
智恵先生は原作でも糸色先生の本命なだけに楽しみ

403:名無しさん@ピンキー
07/09/21 07:53:07 XJaNMyOY
智恵先生は恋愛というよりもアイドルとして見られてる気がする

404:名無しさん@ピンキー
07/09/21 08:04:23 zSQ/5PEY
そろそろ「愛しの先生が振り向かない」と言うのがでてきてもおかしくない

405:名無しさん@ピンキー
07/09/21 08:15:28 7GycaItc
何だこれええええええええええええええ!!!
出掛けにちょっと読んで行こうって量じゃNEEEEEEE!!!
なんだよそう言うときに限って今日は飲み会で遅くなるよ
お母さん僕はエロパロのために飲み会を断るべきでしょうか

>>404
まといSSなんかはけっこうそんな感じだけどな

406:名無しさん@ピンキー
07/09/21 13:39:37 n8xQJmh7
神ラッシュキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!

みんなGJ!!

407:名無しさん@ピンキー
07/09/21 13:46:33 crNY9Ylb
これだけのラッシュで、まだ前半くらいだよね?
嬉しい事にww

408:名無しさん@ピンキー
07/09/21 14:12:57 HQeFNLoB
思わせぶりな焦らしプレイは好きじゃない
173氏のようにそれが一つの作品の形として昇華されているならともかく

409:名無しさん@ピンキー
07/09/21 14:48:29 9KGmxuNU
ハルチリエロいよハルチリ

410:名無しさん@ピンキー
07/09/21 15:44:40 95iLAHtT
こりゃ今夜も祭り期待しちゃっていいのかな

411:名無しさん@ピンキー
07/09/21 16:41:32 uXkvlu/E
過疎ってる他ジャンル出身の人間としては
こちらの盛況振りが嬉しくもあり羨ましくもあり…

412:名無しさん@ピンキー
07/09/21 16:55:50 nYbEN0gt
どうも、すいませんでした。昨日投下しきれなかった分投下します。
へんに投下遅らせてすいませんでした。

413:恋の物語15
07/09/21 16:57:18 nYbEN0gt

しばし、お互い無言のまま、時間がすぎ、望の下駄がアスファルトを打つ音だけが響く。
言わなければならないことを言うタイミングをつかめず、智恵は黙ったままだったが、
いいかげんに言わなければならないと口を開く
「「あの」」
驚いたことに望も同時に口を開く、はもった気まずさに、再び沈黙が場を支配するが、
どうせ、黙っていたらこのまま時間ばかりが過ぎてしまう。
そう考えた智恵は先に言葉を続ける。
「昼間はすいませんでした・・・あのときはちょっと違うことを考えていたので、
 いきなり先生がそばに来たのにびっくりしてしまって」
「え!?そ、そうだったんですか!?」
驚いたように望は素っ頓狂な声を上げ、そのあと安堵したようにため息をついた。
「いや、そうだったんですか、てっきり、私が何か智恵先生の怒りに触れるようなこと
 をしでかしたのかと心配してたんですよ」
いかにも、望らしい考えの飛躍に思わず智恵は苦笑してしまう。
「そんなわけないじゃないですか、そこまで私は急に態度を変えたりしませんよ」
「そうですよね、ハハハハ・・・」
言いたいことを言ってしまうと、また沈黙が戻ってくる。
何か話題を振らないと気まずい。
だが、どんな話をふればいいかわからない。
学校のこと、生徒のこと、どれもありきたりすぎる気がする。
と、不意に口から勝手に言葉が出てくる。
「糸色先生・・・あなたは恋をしたことがありますか?」
「え?」
(な、何聞いてるのかしら、私は?)
そう思っても、口に出してしまったからには、もう遅い、なぜそんなことを聞くのかなんて言わ
れたらどうしよう。が、望は考え込むような顔をしたあと、少し照れくさそうに言った。
「ええ・・・・まあ、それなりに」
「へえ・・・・」
普通に答えてくれたのに安心した反面、なぜかモヤッとした感情が胸に残った。そんな
智恵を知ってか知らずか望は続ける。


414:恋の物語16
07/09/21 16:58:04 nYbEN0gt

「今私が教えてる生徒ぐらいの時でしたか、まあ、なんていうか、よくもてましてね、
 こっちも若気の至りってやつか、色々ありましたよ・・・長くは続かなかったですけど」
「そうなんですか?」
「ええ、なんていうか、昔っから性格にも色々問題がありましたから」
懐かしそうに語る望に智恵は何故か自分を重ねていた。
(私とおんなじか・・・)
そう考え、そして、そう考えたときつい聞いてしまった。
「もし、付き合っていた女の人が自分に構ってくれないで、自分の将来のためだけに勉強
 ばかりに集中してたら、どう思いましたか?」
(ああ、やっぱり、まだ酔っ払ってるわ、なんでこんなこと・・・)
「それはちょっと、つらいですね・・・」
「え・・・そ、そうですよね!」
自分で何気なく振った話題のはずが、答えを聞いた途端急に胸が重くなる。
こんなことなら聞くんじゃなかった。と後悔の念に囚われる。
「でも・・・」
不意に望は振り返り、にっこりと微笑む。
「きっとその人は、尊敬できると思います」
「な、なぜ?」
「だって、恋人なんて大切な人が出来てもそれを差し置いて夢を追い続けるなんて、
 それって素晴らしいことなんじゃないですかね」
思わず、思わず、その時の顔に見惚れてしまった。
弱弱しい、それでも包み込まれるような暖かさを持つその顔に、それを
「あ・・・アパートが見えてきましたよ」
という声で正気にかえらされた。
いつの間にか、自分のアパートが見えていた。
「ここから、歩けますか?」
「え、ああ、はい、もう大丈夫」
それを聞き、望はゆっくりと智恵を背中から降ろす。
少しふらついたが、それでももうしっかり立てる。
「それじゃ、私はここで・・・」
望は智恵に背を向けると、ゆっくりと去ってゆく、その背を智恵は引き止めたいと願った。
何故か、まだこの人と離れたくないと、心がそう言っている。
が、引き止める理由など何も無い。
仕方なく、後ろ髪をひかれる思いで智恵も望に背を向けようとしたその時、
不意に望がよろめき倒れる。
「ど、どうしました?」
慌てて智恵が駆け寄ると、望はよろよろと立ち上がり言った。
「なんでもありません。ちょっと、めまいがしただけです」
そう言った途端、望の腹が音を立てて鳴った。
「ひょっとして、お腹すいてるんですか?」
「ええ・・・まあ・・・」
恥ずかしそうに望はボソリと呟いた。


415:恋の物語17
07/09/21 16:59:12 nYbEN0gt

(ええと・・・・なんでこんなことになったんでしょう)
望は智恵の部屋の一室に正座しながら、今の状況を整理する。
あのあと、ここまで運んでくれたお礼に何かごちそうすると言われた。
ただ、それだけのことだ。ちょうど、財布の中身は尽きていたし、ありがたい申し出ではある。
だが、問題なのは、
(ひょっとして・・・この部屋、私と智恵先生の・・・・二人っきり!?)
驚愕の事実が頭をよぎり、さらに考えが巡る。
(てことは、あんなことや、こんなことも!?)
ひそかに想いを寄せていた智恵の部屋に入ってしまったことで、ついそんな妄想が浮かんで
しまった。そのとき、
『いけません!あなたは、やさしい智恵先生の申し出をそんな形で裏切るというのですか?』
と、望の脳内に小さな望に天使の羽がはえたような男が話し掛けてくる。
(そ、そうだ!?私はなんてことを!)
そう思い直しかけた瞬間
『いいじゃねえか、犯っちまえよ!今ならうやむやで流れるかも知れねぇぜ!!ケケケ』
と、なんかの連載漫画を書いてる作者に触覚が生えたような男が逆に語りかけてくる。
(た、確かに今なら!)
『馬鹿なことを!惑わされてはいけません!!』
『うるせえんだよ!!』
と、二人の男は取っ組み合いをはじめ、ジャ○プなら一週は引っ張れるであろう死闘のすえ、
『絶望ヘブン!!』
なんて、安い三流漫画家でも書かないであろう必殺技で天使の勝利に終わった。
(あ、危ないところでした・・・危うく理性を失うところでした・・・」
などと考え、また自分の意志が守られたことを実感した。


(私は何をやってるのかしら・・・)
ありあわせの物を炒めながら、智恵はため息をついた。
らしくない、それはわかっている。
が、望が自分と同じ部屋にいる。そう考えると、妙に心が弾む。
(やっぱり、私は・・・)
自分の中でひとつの結論が出かけている。
それを考えると動機が激しくなる。が
突如、ついさっきの電話の内容を思い出してしまい、一気に気が重くなる。
(そうだ・・・・私は)
悲しさに思わず涙が出た。
しかし、今ごろ泣いても遅い、望に見られたら余計な気を使わせてしまう。
急いで涙を拭うと、炒め物を皿によそうと、望の待つ部屋へと向かった。


416:恋の物語18
07/09/21 17:00:19 nYbEN0gt


「ごちそうさまでした。いやあ、智恵先生以外と料理できたんですね!」
「それはどうも・・・」
使っている材料はありあわせだったが、褒められれば悪い気はしない。
なにより、望に言われると、何倍も嬉しく感じる。
「では、そろそろ、おいとまします」
そういい、立ち上がろうとする望を智恵は反射的に止めてしまっていた。
「待って!」
「え?」
不思議そうな顔でこちらを見る望の視線に、しまったと思いつつも何とか理由を作る。
「ほ、ほら、食後すぐに動くと体に悪いっていうじゃないですか!だからちょっと休んで
 いったほうが・・・」
智恵の言葉は望の視線に圧され、尻すぼみになって消えていった。
そんな智恵を見ながら、望は短く、しかしはっきりと言う。
「どうか、したんですか?」
「え?」
「今日の智恵先生は変です。なんていうか、いつもの大人っぽさが無い、なにか、
 何か、あせっている気がするんです」
的確に言われ、言葉を失う智恵を正面から見据え、望はゆっくりと言った。
「話してみてくれませんか?力にはなれないかもしれませんが、話すことで楽になれる
 かもしれません」
正直、話したいかどうかはわからなかった。だが、望の顔を見てると言葉が勝手に出てくる。
「実は、私の両親は、それなりに古い家柄なんです。糸色先生に比べれば全然無名なんです 
 けどね」
「それは、初に聞きます・・・・」
「それで今日両親から電話があったんです」
智恵はそこで顔を曇らせた。
「両親は家を続けさせることを第一に考える人たちです。それが、一人娘の私がいつまで
 結婚もしないものだから、今日電話で見合いの話を持ち出されたんです」
「そうだったんですか・・・・でもそれは、それで、ひょっとしたら、会ってみたらいい人
 かもしれませんし」
「ええ、きっと、父や母が見定めたんだからいい人なんでしょう・・・けど、もし結婚したら
 そちらの家にいって・・・・教師をやめろというんです」
突然のことに望は言葉を失う。
「父も母も私のことを考えてくれてました。私の教師になる夢だって、あの二人が支えてくれ
 てたんです。だから・・・だから・・・二人をガッカリさせたくなくてどうしていいか・・・」
最後のほうは涙で言葉が詰まって言い切れない。みっともないとわかっていても涙は止まって
くれない。そんな智恵をみながら望むはポツリと呟く。
「智恵先生、今の仕事はお好きですか?」
「え?」
「好きなんですか?」
「もちろんです・・・」
確かに、本職の教師ではない、時間も有り余る。
だが、今が恐らく一番楽しい、生徒たちの悩みを聞くこと、一緒に悩むこと、
それはとてもすばらしいことだ。
それに・・・いい人とも出会える。
「だったら・・・・それをご両親に伝えてください。もし、本当に智恵先生のことを考えて
 くれる人たちなら、家なんかより、あなたの幸せをかんがえてくれるはずです」
「糸色先生・・・・」
「もし、信じてもらえなかったら、私たちに言ってください。クラスみんなでも言いに
 行きますよ。智恵先生は最高の先生だって!」
そういうと、ゆっくりと言葉を繰り出す。
「忘れないでください。生徒たちも、そして私も、智恵先生あなたが大好きですから」
「あ・・・ありがとうござま・・・」
最後のほうは言葉にならず、ただ、涙を目に溜めたまま、望の胸に飛び込んでいた。



417:恋の物語19
07/09/21 17:02:05 nYbEN0gt

しばらく、そうした姿勢でいると、そのうち望はあることに気付く。
(む、む、むね・・・むねが!)
智恵の豊満な胸が望の胸板にあたり、その柔らかさと暖かさが伝わってくる。
すると当然、望の男としての部分が反応してしまう。
(な、なんたることですか!絶望した!正直すぎる自分の体に絶望した!!) 
心のなかでそう叫ぶがどうしようもない。さっきまでは空腹のため何もなら
なかったが満たされた体はとどまることを知らない。
「あら?」
智恵が驚いたかのような顔で、体を離し、望の下半身に目をやる。
「ち、違います!こ、これは・・・食欲が満たされたショックです!」
無理がありすぎる言い訳をしながら、このすぐ後にアパートを追い出される自分を
想像していた。
(ああ・・・終わりましたね・・・)
まあ、仕方が無い、しばらく夢のような時間を味わえただけでよしとしよう。
そう考えた望は、次の智恵の言葉を待った。
「糸色先生・・・」
(ああ、さよなら幸せな時間・・・)
「私で・・・いいんですか・・・」
「へ?」
思わぬ言葉に思わず間の抜けた声を出してしまう。
「私みたいな女で先生は満足していただけますか?」
「あ、あの・・・」
わけがわからず、呆然としたまましどろもどろに言葉を詰まらせる望に智恵は真っ赤に
なりながら続ける。
「やっぱり、だめですよね・・・わ、私は・・・糸色先生の教えている生徒さんたちみたい
 に若くありませんし・・・それに行き遅れているような女なんです・・・・」
「そ、そんなことありません!」
思わず望は大声をあげてしまう。
「ち、智恵先生は、まだまだお若いし充分魅力的です。私が保証します!」
「それだったら・・・」
智恵はゆっくりと目を閉じる。
「糸色先生のお好きなようになさってください・・・」

(こ、これは思いもしない状況です!ど、どうしましょう?)
慌てふためく望の脳内に再び良心が登場。
『だめです!今きっと智恵先生は酔っ払ってらっしゃるに違いありません!』
(そ、そうです!?私でいいはずが・・・)
『ケッケッケ!何いってやがる!酔っ払ってようがなんだろうが向こうがいいって言ってん
 じゃねえか!犯っちまえ!!』
と反対側から悪心の声が響いてくる。
『またあなたですか!性懲りもなく!』
『今度はさっきのようにいかねえぞ!!』
もうこれジャ○プだったらあきられるんじゃね?と言う戦いが再び繰り広げられる。
が、もともと悪心というより、性欲に近い物なんで、望の空腹が満たされた今では、
さっきとは桁が違った。
『喰らえ!ゴォ・トゥ・絶望!!』
もう突っ込むことすらめんどくさい必殺を受け、望の良心もとい、理性は消し飛んだ。



418:恋の物語20
07/09/21 17:05:17 nYbEN0gt

「ち、智恵先生!!」
息も荒く、望は智恵を畳の上に押し倒す。
が、それでも、最後の最後に確認のような形で聞く。
「ほ、本当にいいんですか?」
智恵はコクリと無言で頷くと、付け足すように小さな声で言う。
「でも・・・出来たら優しく・・・お願いします・・・」
「わかりました・・・・」
経験はあるであろう智恵が恥らう姿に望は愛しさを感じ、ゆっくりと顔を近づけ、唇を重ねる。
柔らかい感触を口に感じながらも、舌を入れるとそれに応えるかのように智恵も恐る恐る舌を
出してくる。
お互いの舌が絡まり、気付けば濃厚な口付けを交わしていた。
「うんんっ・・・!むぐ、ぅぅ!」 、
智恵が苦しそうに喘ぎだしたので、口を離すと、唾液が糸を引くように残る。
智恵は息を切らせながら、トロンとした目で望を見つめ
「お上手・・・なんですね・・・」
と途切れ途切れに言うその様子がさらに望の欲情を掻き立てる。
が、この男それなりに経験が多いので、一度行為に突入すれば勝手に体はスムーズに次の
行動に移る。
手馴れた手つきで智恵のスーツのボタンを外していく、その様子を抵抗するでもなく見ていた
智恵はか細い声で
「灯りは消していただけませんか?」
「どうして・・・ですか?」
「だって、見えて・・・」
「見たいんです」
智恵に最後まで言わせず望がさえぎる。
「智恵先生の体を、この目でしっかり・・・駄目ですか?」
望の真剣な目で射すくめられ、智恵は観念したかのように、再び目をつむる。
「わかりました・・・どうか、先生のお好きに・・・」
「ありがとうございます・・・」
そう礼を言うと、再びボタンを外していく。
そして、最後のボタンを外し、スーツを左右に開いたとき
望は思わず息を呑んだ。
(な、なんて大きさなんですか!)
黒いブラで押さえられているというのにそれは圧倒的な質量と威圧感を持ってそこにあった。
(あの方たちにも引けはとってませんよ・・・)
この間見たおっぱいW杯の女性達に勝るとも劣らないそれに、望は思わず我を忘れてしまう。
「そ、そんなにジッと見ないで・・・」
智恵の懇願するような声で我に帰ると素直に賞賛の言葉を述べる。
「すごいです・・・智恵先生・・・」
「そ、そんな・・・大きすぎて気持ち悪いでしょう」
「いえ、そんなことありません・・・」
改めてみてもすごいものである。だが、それをさらにいやらしく見せているのが、やはり下着
だろう。智恵の白い素肌に黒い下着は驚くほどあっている。
(取ってしまうのがもったいないですね・・)
だが、取らなければ、さきに進めない。望はブラを取るべく、智恵の背中に手をまわす。
すると、智恵も望の和服のボタンを外し、肌を露出させる。
「何を?」
「先生も脱いでください・・・私だけなんて不公平です」
智恵らしくもない子供っぽい発言に思わず胸が熱くなる。

419:恋の物語21
07/09/21 17:06:00 nYbEN0gt

「わかりました・・・」
そう言うと荒らしく和服を脱ぎ捨てる。
「へえ・・・先生って結構しっかりした体なんですね・・・」
決して筋肉質ではない、だが、しっかりとした体を智恵は驚いたかのように見つめる。
「まあ・・・それなりには・・・」
そう口数少なく言うと、今度こそ智恵の背中に手を回す。
それを手伝うかのように智恵は体をそえびぞりにして手を回しやすいように手伝う。
すると、体が密着し、衣服ごしにはわからなかったお互いの体温が伝わってくる。
(糸色先生の体・・・・温かい)
いつまでも、そうしていたかったが、背中でホックが外れる感覚がしたと同時に再び、
体が崩れてしまう。
「外したら、やっぱりすごいですね・・」
押さえつけられていた乳房ははじけるように広がり、なおかつ弾力性があるのを見せ付ける。
もはや押さえがきかず、手にしていた下着を投げ捨て、その胸にむしゃぶりつく。
「あ・・・」
智恵が驚いたような声をあげるが、構わず望はそのまま乳房を吸い上げ、舌で乳首を刺激
し、さらに空いた手でもう片方の乳房を揉みしだく。
「あっ、あぁんっ、あく・・・あっ、そ、そんなに激しく・・・あっ、や、やんっ・・・あうっ
 うくっ、んっ、んんんンっ・・・!」
巧みな望の攻めに声を押さえようも無い。それでもはしたない声を出すことに羞恥を
感じる。それを見透かしたように望は
「智恵先生あなたの声を聞きたいんです。遠慮しないでください」
と一言いうと、ゆっくりと口を下へと下げていく。そして、時には強く吸い上げ、時には
舌の先だけで撫でるように、智恵の体を愛撫していく。
その緩急のつけ方に智恵は休む間もなく快感にさらされ続ける。
「だめっ、だめぇっ・・・あっ、ああぁっ、や、やぁっ・・・ああぁんっ!」
と、達する寸前、急に望は愛撫を止める。


420:恋の物語22
07/09/21 17:07:00 nYbEN0gt

「あ、あぁ・・・どうしてぇ・・・」
戸惑ったような智恵の声を無視すると、望はそのまま、スカートへと手をかけると一気に引き
下ろし、投げ捨てる。
「そろそろ・・・こっちもいい頃かと思いましてね・・・やっぱり・・・」
下腹部の下着は黒い布地越しにもわかるほど、そこは濡れていた。
「智恵先生・・・こんなに感じてくれてたんですね・・・」
「いやぁ!見ないでぇ・・・見ないでください・・・」
身をよじって悶えようとした途端、望は下着越しに舌を這わせる。
新たな快感に智恵はなすすべもなく、再び嬌声を上げさせられる。
(す、すごい・・・反応ですね・・・直接やったらどんなことになるんでしょう)
好奇心に耐え切れなくなり、望は下着に手をかけ、脱がしにかかる。
それを反射的に感じたか、智恵も足を曲げ手伝い、ついに望の眼前に智恵の秘部がさらされる。
(ああ・・・先生に見られてる・・・)
そう意識しただけで、さらに多くの愛液が溢れ出す。
(下着越しでもあんなに良かったのに・・・直接されたら・・・)
が、次に望がとった行動はそれをはるかに上回るものだった。
望は智恵の腰を掴むと、舌をとがらせ割れ目へと差し込みそのまま舌を動かす。
「そ、そんな・・そんなこと、だめっ、だめぇっ・・あっ、ああぁっ、や、やぁっ・・やだ・・
 私・・・もう、もうっ・・・ああぁんっ!」
グチュグチュとさっきとは比べ物にならないほどの卑猥な音と快感が襲ってくる。
(だ、だめ・・・これ以上されたら・・・)
頭はすでにまともに働かない、体だけが快楽でふるえ反り返り。
次の瞬間、視界に白い光が明滅し、絶頂の時が訪れる。

(やりすぎましたか・・・・)
望は智恵の様子を見ながら、口を秘部から離す。
ふと、智恵の顔を見ると、目はうるみ、口からはよだれが零れ落ちている。
そのあられもない様子に、最早、望の絶棒も限界だった。
(つらいとは思いますが・・・我慢してください。智恵先生・・・)
そう心で謝ると、袴を脱ぎ、絶棒を取り出し、智恵の太ももを掴むと一気に秘部を貫く。
「あ・・・あぁ・いやぁあ・・・!!」
達したばかりで感度がさらに敏感になったところに、肥大した望の絶棒で貫かれ、
智恵は悲鳴を上げ、頭を振る。
(ちょっと・・・気持ちよすぎますよ・・・)
智恵の中は思ってた異常に締め付けが強く、肉壁が絶妙な刺激を与えてくる。
長くは持ちそうにもない。
もはや、望はテクニックも何も関係なくひたすらに腰を叩きつける。
だが、今の智恵にはそれだけで充分な快楽だった。
「智恵・・・先生・・・すごく・・・いいですよ・・・くッ!」
「お願い・・・智恵って・・・智恵って・・・呼んでくださいッ!あああぁ!!」
突如の申し立てに返事をする代わりにさらに腰を激しく振る。
「イッて・・・イッて下さい智恵!!私も・・・私も、もう!」
「の、望さん・・・私・・・あなたが・・・好きで・・・ああぁああ!」
言葉は最後まで言えず、嬌声に変わってしまう。
「はぁ、はぁ・・・あ、あぁん、あふっ、あはぁっ・・・もう、らめぇ!!また、また
 イっちゃうゥううう!!あああぁ!!」
そう叫び、智恵は最後に離れようとしていた望の腰に足を巻きつけていた。
つぎの瞬間、智恵は自分の中に熱い何かが迸るのを感じていた。


421:恋の物語23
07/09/21 17:08:00 nYbEN0gt

「すいません!すいません!私としたことが、中に出してしまうなんて!」
再び服を来た望は頭をこすりつけるようにしてそう繰り返す。
「別に私がやったことなんですから・・・」
「いえ、しかし、私がやってしまったことなんです。こうなったら死んで責任を・・・」
どこから取り出したのか首吊り縄を持って外に飛び出していこうとする。
まったくさっきまでとは別人である。
「糸色先生!!」
声をきつめて、そう一喝すると、望はビクリと立ち止まると、恐る恐るこちらを振り返る。
「安心してください。私は今日は安全な日です」
「し、しかし私はそれを確認しなかったんですよ。これは許されることではない・・・」
あくまで、ネガティブに物事を考える望に、智恵はため息をついた。
「いいですか・・・よく考えてください。私とあなたはあんなことをしたんですよ?
 それなのに、その関係を今さら捨てて逃げるおつもりですか?」
「そ、それは・・・」
詰まる望にさらに智恵は畳み掛ける。
「そういうことのほうがよっぽど許されないことじゃないんですか?糸色先生」
「はい・・・おっしゃり通りです」
立場、いつもと全く同じに戻っている。その空気に懐かしさを覚えつつも顔にはそれを
微塵も出さず厳しい顔で望に命じる。
「いいですか、とりあえず今から帰る途中決して死にたいなんて思わないで、まっすぐ帰って
 ください。もし、自殺なんてしかけたら許しませんよ」
「はい・・・」
望は気圧されたように、ドアに手をかけ、そして思い出したかのように振り返ると
「やっと、元の智恵先生に戻ってくれましたね。私、弱い智恵先生も好きですが、
 やっぱり、その顔が一番好きですよ」
「え?」
言葉の意味が瞬時には咄嗟に理解できず、一瞬考えこんだ隙に望は姿を玄関から出て行っていた。
それと同時に智恵は顔が真っ赤になるのを感じた。


422:恋の物語24
07/09/21 17:09:56 nYbEN0gt

次の日・・・
「先生!どういうことことかキッチリ説明してください。
「そうです、先生、私実家に帰ってる間何があったんですか?」
ものすごい剣幕のストーカー少女常月まといとキッチリ娘の木津千里に詰め寄られながら、
望は悲鳴に近い声を上げる。
「だから、何もしてませんって!」
「嘘ついても駄目です!霧ちゃんから聞いてますよ、昨日、先生夜遅くに帰ってきたそう
 じゃないですか!!霧ちゃんが気になって、先生の様子見に言ったら香水のにおいが
 したって」
「彼女勝手に部屋に進入したんですか!?」
千里の言葉に驚愕したような声をあげ、話を反らそうとするが相手が悪すぎる。
「さあ、説明を!きっちりと!」
「先生、全てを打ち明けてください!!」
万事休す、絶対絶命、を体現したような状況に望は脳内に語りかける。
(こういうときこそあなた達の出番です!)

『いやあ・・・たまにはああいうのも必要ですね!』
『いやいや、お前がいてくれなきゃ、暴走してたよ!ありがとな!!』
(ちょっと、あんたら何勝手雪解けしてんですか?)
もはや、頼れる者は誰もいない、とその時。
「やだな、先生はそんな事をするわけないじゃないですか!」
(この声は!?)
振り向いた先にx字がたの髪留めをした少女がにこにこ笑いながら立っていた。
「先生は、立派なお方です。女性とそんなふしだらなことするわけ無いじゃないですか!」
ポジティブ少女こと風浦可符香は力強くそう断言する。
(あ、ありがたい!さすが、風浦さん!!)
いつも遠慮したい彼女のポジティブ精神だが、今回ばかりはありがたいことこの上ない。
「じゃ、じゃあ、先生は何してたって言うのよ!」
あまりの明るさにひるみながらも千里は食い下がる。
「それは決まってるじゃないですか!先生はいつも激務でお疲れです。きっと羽を伸ばして
 たんですよ!!」
(す、すごいです!私ではいえないことをスラスラと!!)
あまりの流暢な喋り方に望は知らず知らずに引き込まれていき・・・
「そして、その途中で、傷ついた女性を発見し、体を使って慰めてあげてあげたんです!
 すなわちボディカウンセリングですよ!!」
「そうそう!!あれだけ傷ついてらっしゃったら、そうするしかなかったんですよ」
つい返事してしまった。
(あッ!!)
気付いた時にはもう遅い、千里の目がゆっくりと殺意を帯びていき、どこからともなく
スコップがあらわれる。
「先生・・・じゃあ私はスプラッターカウンセリングやってみます」
「か、カウンセリングつけりゃいいってもんじゃありません!!」
「先生、もう・・・私達が結ばれるには心中するしか・・・」
「あ、あなたもどっからそんな包丁を!!」
二つの巨大な殺気に望は最後の頼みのように脳内に叫ぶ。
(どうすりゃいいんですか!!)
『もう、逃げるしかないですね』
『そうだな』
「ちくしょおお!!」
ありがたいお告げを受け望は一言叫ぶと脱兎のごとく走った。
「待てええ!!」
二人も即座に対応し、飛び出していく。そして、一人取り残された可符香は底冷えした目でニ
ヤリと笑った。



423:恋の物語25
07/09/21 17:12:11 nYbEN0gt

(大切なのはさりげなさ・・・さりげなさ・・・)
おまじないのように唱え、緊張のあまり手に持ってるテールスープの店のチケットを握り締め
ながら、あびるは意中の人の姿を探していた。
(みんなには負けられない・・・ちゃんと誘うんだ・・・)
その様子を頭の中で想像しながらうっとりしていると、
「うわぁあああ!!」
と叫びながら、探し求めていた人物が正面から走ってくる。
(やった!なんて好都合!!)
心の中でそう叫ぶと緊張で振るえながらも、チケットを差し出しいう。
「せ、先生・・・・今度私と一緒に・・・」
最後まで言い終わる前に望は横を猛スピードで走り抜けていった。
「え・・・・」
あっけに取られていた次の瞬間、
「うなぁああああああ!!」
まるで般若の如き形相の千里と
「先生、私と結ばれましょう!!」
などと、わけのわからないことを叫ぶまといが望を追って走り去っていった。
その後ろ姿を見ながら、
「やっぱりアピールがすごいな・・・」
と気圧されたように呟き、顔を伏せる。が、
「でも、私も負けない!」
とあびるは力強く顔を上げると、望の後を追った。
「先生、待って~!!」



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