【ひぐらし】07th総合【うみねこ】at EROPARO
【ひぐらし】07th総合【うみねこ】 - 暇つぶし2ch575:名無しさん@ピンキー
07/10/18 22:11:07 yUjEGm/y
>>574
|;・ω・)
|⊂


| )彡サッ
|

576:名無しさん@ピンキー
07/10/18 23:25:04 /EcizlMg
RPG-40 – radziecki, ręczny granat przeciwpancerny o działaniu burzącym. Przebija pancerz o grubości do 75 mm.

577:名無しさん@ピンキー
07/10/18 23:55:58 zU1XKjMZ
>>575
呼ばれてから出てくるまでが早いww
むしろまだいてくれたのか

数ヶ月先でも一年先でも待ってるんで気が向いたら投下してくだせぇ

578:名無しさん@ピンキー
07/10/19 00:48:21 rB1XtyKL
このスレさ
無いのなら作ってしまえホトトギス
的なノリでおk?

579:名無しさん@ピンキー
07/10/19 01:22:14 2gPb1QnA
>>579
もちろんじゃないか

580:名無しさん@ピンキー
07/10/19 01:23:11 2gPb1QnA
ごめんなさい、おもいきりレス番みすりました
578あてです

581:名無しさん@ピンキー
07/10/19 01:46:03 vQeu9Hb8
なら俺はまだ無い圭一×赤坂を書くぜ!

582:名無しさん@ピンキー
07/10/19 02:21:18 rB1XtyKL
なら俺は大石×k…


















既出だと…!?

583:名無しさん@ピンキー
07/10/19 06:57:35 HLVaCylk
>>582
ちなみにトミー×圭一も存在

584:名無しさん@ピンキー
07/10/19 12:53:21 ll/AdgV7
801板で待ってる

585:名無しさん@ピンキー
07/10/19 19:49:21 nCOyK6Iz
大逆転皆殺し編・裸祭りを見たら、
酒の勢いで、部活メンがK1を押し倒すが、齢1000年?を超える人妻羽入が、
皆を(性的な意味で)指導する、というネタが浮かんだw

「わかってない、梨花たちは、まったくもってわかってないのです。
指導なのです、あぅあぅあぅ~~~~!!!!」


……駄作だな。

586:名無しさん@ピンキー
07/10/19 20:25:21 mQ9K3McH
駄作かどうかは俺達が決める!だからまずは書いてみるんだ!

587:名無しさん@ピンキー
07/10/19 20:34:43 MDN50oVO
>>585
駄作

588:名無しさん@ピンキー
07/10/19 20:35:15 B4vSBttE
妄想を具現化する作業に戻るんだ!!

589:名無しさん@ピンキー
07/10/19 21:01:27 rB1XtyKL
そして最後に羽入が逆襲されたりするなら、裸で待ってる

590:名無しさん@ピンキー
07/10/20 03:20:14 nbpWRzWQ
だれか俺の妄想を具現化してくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ

591:名無しさん@ピンキー
07/10/20 03:32:30 p+bzmd7w
  ,.-、  
 (■,,)

592:名無しさん@ピンキー
07/10/20 20:10:44 hTCWVyQ5
>>591
うまそー。
だが今、俺が欲しいのはおにぎりではなく、この心の渇きを癒してくれるSSなんだ。

593:名無しさん@ピンキー
07/10/20 20:18:18 bIlXKGie
  ||\                           /||
  ||:. \____________/  ||
  ||.   | .       ____     .|   :||
  ||:   |      |滅菌オフ|     │   :||
  ||:   | .        ̄ ̄ ̄ ̄     .|   :||
  ||:   |            ;''"゙''" ;''""゙. . ||
  ||:   | 永遠におやすみー ;;''"゙''゙、;;~''"''||
  ||:   |          (^o^)ノ;, ,,.゙~'''"゙''||
  ||:. / ̄(^o^)ノ ̄ ̄ ̄ノ( ヘヘ ,.:;;:,゙,、;~'' ||
  ||/   ノ( ヘヘ   (^o^)ノ   [___]゙'  \||
            ノ( ヘヘ

594:名無しさん@ピンキー
07/10/21 08:03:51 RDPfc9lX
URLリンク(tirasi.ame-zaiku.com)
ひぐらしのSSで「性」っていうSSが軽快で中々面白かった。


595:名無しさん@ピンキー
07/10/21 12:17:11 tmSOxpyY
何かと思って見てみればサガのパロでキャラ当てはめなだけ物か……
と思ってたら上に理想郷で投稿と有り納得。

596:名無しさん@ピンキー
07/10/21 22:10:31 zcUzKvnj
>>590,>>592
妄想を具現化してほしければ妄想を書き出すとか、SSが欲しければシチュを
考えるとかしないと職人さんがどうにもできないと思う。

ところで保管庫を見て思ったんだが、部活メンバーで3Pのエロパロに、
「圭一×レナ&魅音」「圭一×沙都子&梨花」の作品があるなら、
「圭一×梨花&羽入」なんてのもあっておかしくない気がしたんだが、
どう思うよ?



597:名無しさん@ピンキー
07/10/21 22:30:17 Y5jhyo9r
それを言うなら「圭一×魅音&詩音」や「圭一×詩音&沙都子」、
果ては「圭一×大石&熊谷」なんてのがあってもおかしくないんだぜ?

598:名無しさん@ピンキー
07/10/21 23:39:09 ywxfsHZ0
>>597
ちょっと待てwww
最初のは今書いてるからいいとして、最後のはなんだ最後はwww

599:名無しさん@ピンキー
07/10/21 23:44:06 vKo+dx2G
おっ姉妹丼wktk

600:名無しさん@ピンキー
07/10/21 23:49:05 6WbDd/dh
しまいどんに期待

601:名無しさん@ピンキー
07/10/21 23:56:51 HcH+n7hg
姉妹丼ってネタにしやすそうだけど少ないよな。これはwktktmtk

姉妹丼に乗っかって、前に二回くらい書いてくれたカッとなる人のえろちい魅音がまた見たいな。
そして鬼畜王……

602:名無しさん@ピンキー
07/10/22 01:05:21 nU4AymHo
なら俺は「圭一×藍子&レナ」を推薦しよう

603:名無しさん@ピンキー
07/10/22 01:12:53 hNnfYbDs
なら俺は赤坂×梨花・サトコ・羽入だ!

604:名無しさん@ピンキー
07/10/22 01:31:47 fHk0CHW4
それならベルンカステル×白梨花×黒梨花の梨花尽しはどうだ?

605:名無しさん@ピンキー
07/10/22 02:08:05 mhANcpbO
『ソ ウ ル ブ ラ ザ ー』


「あまいあまいあまああああああああいっ!!なんだその半端なバニーっぷりは!!指導指導指導おおおうっ!!」
「んっふっ……ふはぁぁぅう」
「Kもなかなかやりますね……クラウドをあそこまで……!次は是非メイド姿で私に……」
「僕はトミー。フリーの肉便器さ」



反省し過ぎることはないよね

606:名無しさん@ピンキー
07/10/22 09:35:49 NMt3vtBN
>>603
ロリコンきんもー☆

607:名無しさん@ピンキー
07/10/22 09:51:04 weySxOyn
>>605
富竹の自己紹介に吹いた

608:名無しさん@ピンキー
07/10/22 11:02:17 GvhGzQ8A
>>603
東京へ帰れ

609:名無しさん@ピンキー
07/10/22 17:40:38 rFSZyDiV
今更だけどベアトリーチェってダンテの初恋の女性だよな

610:名無しさん@ピンキー
07/10/22 20:27:13 sNy1Q5Hn
圭一×知恵先生のネタを思いついたんだが
知恵先生は生徒に手を出すような人じゃないかなぁ・・・

611:名無しさん@ピンキー
07/10/22 20:28:19 3Wr/0a7O
パラレル設定にすればおk

612:名無しさん@ピンキー
07/10/22 20:28:28 h+hBSCuY
逆転の発想でK1が・・・

613:名無しさん@ピンキー
07/10/22 21:23:49 e0+Okb5J
フワラズの勾玉パワーでとかいっそL5発症とか・・・

614:名無しさん@ピンキー
07/10/22 21:38:09 0ejOBLh9
K1に眼鏡かけさせて先輩と呼ばせればあるいは…

615:名無しさん@ピンキー
07/10/22 21:39:10 kJdfWq5q
うみねこのなく頃に
コミック化けってい☆

URLリンク(rainbow.sakuratan.com)

616:名無しさん@ピンキー
07/10/22 21:56:34 kW1JJ9Pu
うわぁー腐女子くせぇー

617:名無しさん@ピンキー
07/10/22 22:06:28 drsmI01F
一瞬だけ外海かと思った

618:名無しさん@ピンキー
07/10/22 22:20:44 r3Fn0rm6
あおおーっ!!

619:名無しさん@ピンキー
07/10/22 22:51:42 77fOpSP2
手首細いな
モンキーパンチか

620:名無しさん@ピンキー
07/10/23 00:22:19 T8Mht89D
拡げてって 拡げてって 貴方はアナルの花じゃない

後戻りはもう出来ない

さあ掘りましょう そのアナルが (アッー!)
また血塗られてゆくなんて

生温い血が とぐろを巻いたら
それが多分 ***

621:名無しさん@ピンキー
07/10/23 01:06:40 2UheGebf
皆殺しを鈴木次郎さんが書いてくれるなら、文句はないよ。もう。

622:名無しさん@ピンキー
07/10/23 02:08:10 6Q4d1+35
>>614
何かかぁいいモードのレナが猫アルク的な役割になりそうな予感

623:名無しさん@ピンキー
07/10/23 02:56:18 NXC0Llzg
おk
まあエロパロに設定は関係ないか
こういうの書くのは初めてだから時間がかかるかもしれん
少し待っててくれ

624: ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:12:48 yezlBim/
初めて投下させていただきます。

一応、梨花(但し幼女ではない)×赤坂ものです。あんまりエロくないのですが……。

「ベルンカステルの背理」という題名で投下させていただきます。よろしければ、どうぞ。



625:ベルンカステルの背理 ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:13:48 yezlBim/
 ベルンカステルの背理




「また来年の綿流しの日に、ここへ来るよ」
 赤坂は私の頭を撫でながらそう言った。
「……」
 私は黙ったまま、そっぽを向く。
「どうしたの、梨花ちゃん?」
 赤坂がいぶかる。
「私、もう来年には高校生よ」
「……何か気に障ったかな?」
 私は赤坂の顔を見上げた。
「別に……赤坂のせいじゃないけど……」
 そう。赤坂のせいではなく、私が勝手にむくれているだけだ。
 頭に乗せられた赤坂の手。
 彼に触れられるのは心地よいし、少しでも長く触れられていたいと思う。けれども、幼
子にするかのように頭を撫でられると、少し悲しくなってしまう。
 何年たってもお子様扱い。もう「にぱー」だとか「みー」だとか、あえて稚気を装った
言葉を口にしなくてもいいくらいに背も伸びたし、沙都子には敵わないが胸だってそれな
りに大きくなったのだから、一人の女性として見て欲しいと思う―そう思うのは、裏を
返せば、私が赤坂を一人の男性として意識しているからなのだが。
 そんなことを考えていると、
「ああ、そうか。ごめんね。そうだよね、もう気安く触れるのは良くないね」
 と、赤坂がまったく的外れなことを言い、私の頭から手をどけてしまう。触れるのが良
くないのではなく、触れ方が良くなくて私がむくれていることに、彼は気付いてくれない。
「あ……」
 赤坂の手の感触が去ってゆくのに未練を感じながらも、私は何も言うことが出来ず、再
び視線をそらしてしまった。
「本当にすまない」
 無駄なまでに誠実さを感じさせる口調で、彼は謝罪する。
「じゃあ、もう行くよ。またね」
 そう言って赤坂は、背を向けて歩き始めてしまった。彼の背中を見た途端、激しい後悔
が私を苛む。何か大切なものにひびが入ってしまったような、そんな気がした。
 
 違うのに……。そうじゃないのに……。
 
 遠くなってゆく背中を見ながら、私は胸の中でそう言い続けた。

626:ベルンカステルの背理 ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:14:29 yezlBim/

 赤坂と気まずい別れ方をした綿流しの日から、一年が経った。
 
 綿流し前日の深夜。
 
 私は布団の中で、自分の身体を慰めていた。
 シャツをたくし上げ、露になった胸の先端を左手で転がしたり軽く摘んだりする。下着ま
で脱いで、遮る物が何一つなくなった陰部を右手が弄る。
 全身は汗ばみ、息が荒くなっている。時折、足が生まれたての子鹿のようにガクガクと震
えてしまう。
「ああ…っ!」
 不意に大きく喘いでしまう。右手の人差し指が、あずきのように膨らんだ突起へ触れたか
らだ。すでに内股にまで愛液が滴っている。ひょっとしたら、シーツにも染みを作っている
かも知れない。
「……っ」
 私は、中指をおずおずと自身の中へと忍び込ませた。少し進入させた所で一旦指を止め、
指先をかすかに動かし、指の腹で軽く押すように天井を刺激する。
「あ……う……」
 段々と中指の動きに遠慮がなくなってくる。さっきまで慎ましく、軽く押すような動きを
していた指は、いつの間にか、くじるような恥知らずな動きをしている。すでに左手も乳首
を弄うのを止め、股間へと伸びて来て陰核を撫で回していた。
 中指が動くたび、納豆をかき混ぜるような音がしてしまい、羞恥で頬や耳が熱くなってし
まう。でも、指を止めることが出来ない。恥ずかしいと思うのと反比例するかのように、た
だただ指はその動きを速め、荒げてゆく。 
 段々と身体の芯が痺れたような感覚に見舞われる。幼子がイヤイヤをするように頭を振って
しまう。放っておくと叫びそうになってしまうので、シーツを噛んで声を抑えた。それでも唇
の端から、声が漏れ出てしまう。

627:ベルンカステルの背理 ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:15:26 yezlBim/


「ぁ……か……さか」
 
 あかさか―赤坂。
 漏れ出る声は、その名を呼んでいる。ことの始めから、頭の中には赤坂がいた。
 彼が、私の身体へ快感を与えてゆくというふしだらな光景。この身勝手な光景を、私は今ま
でに何度もリピートした。そして、同じ数だけ自慰に耽ってしまっている。
「……っ!」
 やがて、終わりが訪れる。身体の節々に力が入る。全身が小刻みに震える。赤坂のこと以外、
何も考えられなくなってしまう……。
 月明かりの薄暗い部屋の中、しかも目を閉じているはずなのに、眩しいような不可思議な感
覚と、身体の中心から波紋のように広がってゆく甘くてむず痒いような刺激に、全身が翻弄さ
れる。
 ややあって、身体の力が抜けた。同時に、倦怠感と空虚感、そして罪悪感のようなものが全
身を覆い始めた。いつものことだと思いながらも、這い上がるようにやって来るやるせなさに、
心が慣れることはない。
 身体を仰向けたまま、頭だけを窓へ向けた。
 銀色に光る月が、暗い空に浮かんでいる。
 その月を見ているうちに、何とも言えない淋しさが胸に満ちてくる。
 赤坂を……想う。表情や仕草、優しげな眼差しや声は、造作もなく脳裏に思い浮かべること
ができる。だが同時に、その仕草や声が、私一人のものには決してならないという現実が目の
前に立ちはだかる。
 彼には、雪絵という愛する妻がいる。実際に会ったことはないが、一度だけ赤坂に写真を見
せてもらったことがある。美しくて優しそうで、なおかつ聡明そうな女性に見えた。彼の惚気っ
ぷりからしても、二人の間には入り込む隙間などないように感じた。
 考えてみれば皮肉なものだ。かつて私は、雪絵に迫る危険を赤坂に教え、それにより雪絵は
命を落とさずにすんだ。
 もしも……もしも私が黙っていれば、雪絵はこの世におらず、赤坂は一人になっていたはず
なのだ。そうなったら私が―思考が奇妙に捩れてゆく。
 そこまで考えて、大きなため息をついた。
 この「もしも」はそもそも成立しようがない。
 なぜなら、雪絵が死んでしまっていたら、今日の私が存在しえないからだ。昭和58年6月
の迷宮を抜け出し、赤坂に想いを寄せる今の私が存在できるのは、雪絵が生きているからこそ
である。
 だが、その雪絵の存在が、今の私を苦しめる。
 私が脳内で赤坂にされたことを、いやそれ以上のことを雪絵は現実の中でしてもらっている
に決まっている。相思相愛の成熟した男女、ましてや夫婦なのだから、そんなことは自明の理
だと理解はしている。理解はしているが、胸が詰まるような感覚をなだめることが出来ない。
 
 気が付けば、眦から熱い雫がこぼれ、頬を濡らしていた。
 
 最近、こんなことばかり繰り返している。赤坂を想い、自慰に耽り、雪絵に対して不穏な気
持ちを抱き、最後に枕を涙で濡らす。まるで昭和58年の6月に捕らえられていた時のように、
何度も同じことを繰り返している。
 どうしたらいいのか、私には分からない。分からないままに流されては、不埒な快感に溺れ、
淋しさを消そうとあがき、そして結局それは成功しなくて、最後は涙で締めくくる羽目になっ
てしまう。
 胸が締め付けられる。
 また、涙がこぼれ出る。
 赤坂……会いたい……。
 声にならない声で私は言い、そっと涙を指で拭った。

628:ベルンカステルの背理 ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:16:04 yezlBim/
 

 綿流し当日。
 
 昨夜の不埒な夜更かしのせいで、私は少し寝坊してしまった。のろのろと布団から出て顔を洗
うと鏡台の前に座り、化粧を始める。余り濃くならないように注意する。
 最後に鏡台の引き出しの中から、紅皿を取り出した。蓋を開けて小指に紅をつけて唇へ塗る。別
にリップタイプの口紅でも構わないのだが、何となく演舞をする日だけはこの方法で口紅をつける
ことにしている。
 化粧を済ませると、巫女の装束に着替えた。そして髪を丁寧に梳かし、赤と白の組紐と紫色の金襴
で飾り付けられた絵元結(えもとゆい)という髪留めで髪を一つに結わく。
 身支度を終えると、私は大きなため息をついた。
 もうじき、赤坂がやってくる。
 一年振りの再会―でも、どんな顔で会えばいいのか分からない。何を話せばいいのかもよく分か
らない。そもそも、私は一体どうしたいのだろう―それが一番分からない。
 もやもやとした気分のまま家を出て、古手神社の境内へ入った。すでに境内は多くの人で賑わって
いたが、私は何となく祭りを楽しむ気になれなかったので、そのまま村を一望出来る高台まで抜ける
ことにした。あの景色を見れば、このもやもやとした気分も少しは晴れるかも知れない。

 だが、私のそんな期待はあえなく打ち砕かれることになった。

 高台には、先客がいた。
 一組の男女が、村を見下ろしていた。
 女の方はアンバーのワンピースを着ている。髪は肩口の辺りまで伸ばされており、全体的にすらり
とした身体つきで、後姿からでも美人であることが十分に伺える。
 女は隣に立つ男の左腕に、自分の右腕を絡ませていた。
 隣の男は、ベージュのカジュアルジャケットにカーキ色のパンツという格好だった。ふと男が、女
の方へ顔を向けたので、横顔が見えた。その男が誰であるかを判別するのには、横顔だけでも十分だった。
 
 赤坂、だ。



629:ベルンカステルの背理 ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:17:02 yezlBim/

 私の鼓動が、不自然な程に速くなる。一年ぶりの再会。ずっと会いたかった人が、近くにいる。
 けれども……私は心の水面に細波が立つのを覚える。
 その腕にくっついている女は……?
 その疑問に答えるかのように、女が顔を赤坂の方へ向け、私に横顔を見せる。こちらも横顔だけで
分かった―赤坂の妻、雪絵だった。
 考えれば、いや考えなくても分かることだったはずだったのに。赤坂に妻がいるという現実を受け入
れたくない私の頭の中は、その存在を認めたがらなかったのだ。
 雪絵が軽く頤をあげ、目を閉じる―接吻を、ねだっている。
 赤坂は少々戸惑っていたようだが、ややあってゆっくりと顔を近付けた。二人の唇が触れ合う。
 
 私の見ている前で。
 
 心の何処か深い所で、亀裂の入るような音を聞いた。
 
 その時、私の足元で、ざっ、という音がした。無意識の内に私は、地面を蹴っていたらしい。その音に
赤坂が気付き、慌てて顔を離してこちらを向いた。
 赤坂は私の顔を見て驚いたような顔をしていたが、雪絵の方は、私に見られたことなどまったく意に介
していないように泰然自若としており、あまつさえ笑みすら浮かべていた。見られているのを知っていた
かも知れない、と感じるほど雪絵は堂々としていた。
 私は軽く睨むように雪絵の顔を見た―正妻の余裕? それとも赤坂の心の手綱を、完全に握っている
という自負心の表れ? でもね、貴女は知っているかしら。長年愛用しているワイングラスでも、割れる
危うさを常に秘めているものなのよ。


630:ベルンカステルの背理 ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:17:50 yezlBim/

「やあ、久しぶりだね」
 赤坂の声は何処かうわずっているように聞こえた。
「紹介するよ。妻の―」
「妻の雪絵です」
 赤坂の言葉を遮るかのように雪絵が言った。妻、という部分に殊更に力を入れたように、私には感じら
れた。
「あなたが、梨花ちゃん―古手梨花ちゃんね。とても綺麗だわ」
「いえ……雪絵さんの方こそ、とても綺麗です」
 私は『奥さんの方こそ』とは言わず、あえて『雪絵さんの方こそ』で通した。私の口からは意地でも奥
さんなどとは言いたくなかった。
「あら、お上手」
 雪絵がにっこりと笑う。そして、聞いてもいないのに、
「娘を私の両親に預けて来たんですよ。衛さんと二人きりで旅行なんて、新婚旅行以来かしら」
 などと、私の神経を逆撫でするようなことをのたまう。
「一度、見てみたいと思ってたの」
「雛見沢を、ですか?」
「いえ。あなたのことを」
 雪絵の目が、半ばまで閉じられたようになる。
 瞬間、雪絵の周囲の温度が、氷点下まで下がったように感じた。
「衛さんってば、毎年毎年雛見沢に来ているでしょう? そして、帰ってくる度にあなたの話をするの」
「お、おい雪絵……」
 それまで地蔵のように黙り込んでいた赤坂が、及び腰ながらようやく口を開いた。だが、雪絵が半分
閉じたような目で一瞥をくれると、再び地蔵になってしまった。
「やれ梨花ちゃんの演舞が素敵だの、やれ巫女の衣装が似合ってるだの……聞いてないのに、自分から
話すのよ」
「妬いているのかしら?」
 私は鼻で笑うように言って見せた。しかし、そんなことで逆上するような雪絵ではなかった。逆に、
「まさか。自分で言うのもおこがましいけれど……私、寛容ですから」
 と言って、にっこりと花のように微笑んで見せた。しかし、私はその笑みに、おぞましさと得体の知れ
ない不気味さしか感じない。
「衛さん」
 私の方を見据えたまま、雪絵が赤坂に声を掛ける。 
「な、なんだい?」
 いきなり名を呼ばれ、まるで富竹のように赤坂が狼狽する。
「二人とも久しぶりの再会だから、積もる話しもあるでしょう。私は先にお祭りへ行ってますから、
せいぜい旧交でも暖めて下さいな」
「え? あ、ああ……」
「……私と赤坂、二人きりにしていいの?」
 私が問うと、雪絵は先刻と同様に微笑んだ。
「私、寛容ですから。でも20分後には、私の所へ来てくださいね」
 と赤坂に向かって静かに言うと、雪絵は境内の方へと行ってしまった。来てくださいね、と表面上
こそ穏やかなお願いの言葉だが、これは明らかに命令だった。
 ……寛容、ね。とてもそうは見えないけれど。
 後には呆然とした様子の赤坂と、胸中穏やかならぬ私が残された。

631:ベルンカステルの背理 ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:19:00 yezlBim/

「何で黙ってばかりなのよ。徹甲弾って仇名は、羽を生やして何処かへ逃げてしまった?」
 雪絵の姿が見えなくなると、私は軽く赤坂を睨んでそう言った。
「まあ……勘弁してくれないかな」
 赤坂が苦笑して、私を見る。
「雪絵さん、疑ってるわよ。赤坂のこと」
「……そうみたいだね。何処をどうしたら、そういう勘ぐりがでてくるんだろうか」
 赤坂は首を捻り、私はため息をついた―まったく男という生き物は。鈍感でいることに美徳でも感じ
ているのだろうか。呆れてしまうくらいに女心に疎い。昔の圭一の姿が浮かぶ。
「疑われるだけの条件は揃っているわ。足繁く雛見沢に通って、聞かれてもいないのに他の女の話しばかりする」
「あ……」
 赤坂が虚をつかれたような顔になる。
「でもそれだけじゃないわね、多分。何かもう一押しあったはず。去年帰ってからも、雪絵さんに私の話をした?」
「した……ね。ああ、そうだ。梨花ちゃんは覚えているかい? 去年、私が帰る時のやり取りを」
「……ええ。覚えているわ」
 忘れる訳がない。
「頭を撫でたら『もう来年には高校生だ』と言われて、梨花ちゃんがご機嫌斜めになった話をした」
「それから?」
「でも『赤坂のせいじゃない』とも言われた、ということも雪絵に話した」
「……それよ」
 私はため息をついた―まったく女という生き物は。鈍感であることに嫌悪でも感じているかのように
やたらと鋭い。昔のレナの姿が思い出される。
 雪絵は、赤坂のほんの少しの言葉の中から、私が女として、赤坂を意識していることを見抜いたのだ。
いや、見抜いたというより、直感的に感じ取ったのだろう。更に私が高校生になったのを知って、危機感
を募らせた。高校生ともなれば、精神的にはさておき、肉体的には成人した女とさほど差はない―いや、
差がない所か、肉体的に若い女の方が有利とも言える。
 男は若い女の方が好き―とういうのが世間一般の共通認識だからだ。
 そういう訳で、今回初めて赤坂について来たのだろう。

632:ベルンカステルの背理 ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:20:40 yezlBim/

「一体、どういうことなんだい?」
「雪絵さんに悟られたわ……私が赤坂を好きだってことを」
 思わず自分の気持ちを打ち明けてしまう。
「私も梨花ちゃんのことが好きだよ」
 そう言って爽やかに赤坂が微笑むが、明らかに彼は、私が言う『好き』の意味をずれた形で受け止めて
いる。赤坂の鈍さに腹が立ってくる。
「赤坂は……分かってない」
「どういうことだい?」
 赤坂が不思議そうな顔をする。私はイライラしてきた。鈍いにも程がある。何故、ここまできて分から
ないのだろうか。私が女としての好意を赤坂に抱いている、というのは雪絵の言動や話しの流れからして
容易に推察できるだろうに。
 赤坂はまだ合点がいかない、という顔をしている。
 そんな赤坂の顔を見ている内に、私の中で様々な想いが交錯し、ぶつかり合って、とうとう大きく爆ぜた。
「いい加減、気がついてよ!」
 私は大きく叫び、赤坂の胸にすがりついていた。
 もう、止まらなかった。堰を切ったように言葉が溢れ出してしまう。
「私は、貴方のことが好きなの! 一人の女として、貴方のことが好きなの! ずっと貴方を想ってた!
会えなくて淋しかった! 会いたかった! もう子供じゃない! 貴方を想って自分の身体を慰めもした!」    
 かなり恥ずかしいことまでぶちまけて、赤坂の顔を見上げる。涙で彼の顔の輪郭が滲む。
「梨花ちゃん……何を馬鹿な……」
 赤坂が呆然としている。
「馬鹿だって知ってる、分かってる! 赤坂には雪絵さんがいるもの。でも、でも……それでも私は……!」
 赤坂の両手が、私の両肩に静かに置かれた。触れられた部分から、全身に暖かいものが広がってゆく。膝が
がくがくと震える。
「……! あ、あぅ。う、うそ……」
 私は立っていられなくなって、赤坂に身を預けた。頬が熱くなり、呼吸と胸の鼓動が速くなってしまう。
「そ、そんな……」
 今、自分の身に起こっていることが、信じられなかった。
 軽くではあるが、オーガズムを迎えていた。肩に手を置かれているだけなのに……。
「あ、ああ……」
「ど、どうしたんだ! 梨花ちゃん!」
 赤坂の慌てた声が、ぼんやりと聞こえる。
「大丈夫か!? しっかりして」
「……平気よ。ちょっと、イっちゃっただけ」
 私は苦笑しながら、小声でそう言った。こんな時に、私ときたら―それだけ赤坂を求めていたということな
のか。肩に、しかも布越しに触れられているだけでこんなになってしまうのなら、直接触れられたら、一体どう
なってしまうのだろう。想像しただけで頭の芯が痺れてくる……。

「いやらしい雌猫」

 突然、氷刃を思わせる声が聞こえ、私の不埒な想像を断ち切る。まったく気がつかなかったが、いつの間にか
雪絵がすぐ傍らに来ていたのだ。寛容だとか何とか言いながら、実は隠れて見ていたに違いない。
 怒りを湛えた雪絵の顔は、般若の面を思わせた。そして、その般若が両手を伸ばし、私の首に手を掛け、華奢
な腕からは想像も出来ないような力で締め上げる。
「イったですって!? 人の夫を自慰の道具に使うなぁぁぁぁぁぁ!」
 造作の整った顔を嫉妬で歪め、敵意剥き出しの声で雪絵が叫ぶ。
「ぐ……」
 意識が遠くなる。雪絵やめるんだ、と言う赤坂の声が遠くに聞こえ、身体が左右に振られる。必死に雪絵の手
を解こうとするが、万力のように私の首を締める手はびくともしない。
 ややあって私は、意識を失った―意識が飛ぶ寸前、雪絵の死んだような目と、何故か雪絵の背後で何かを言っ
ている羽入の姿が見えた。




633:ベルンカステルの背理 ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:25:07 yezlBim/

 目が覚めると、ベッドの上だった。身を起こして辺りを見回すと、見覚えのある風景だった。どうやらここは入江診療所らしい。
 首がひりひりとする。きっと雪絵に締め上げられたせいだろう。手を当てると包帯の感触がした。どうやら首に包帯が巻かれ
ているらしい。私は首を軽く擦りながら、ベッドの端に腰を掛けた。
 ドアの開く音がした。視線を巡らせると、入江と赤坂が部屋に入ってくるところだった。赤坂は私を見ると、足早に近づいてきた。
「梨花ちゃん、大丈夫かい?」
 心配そうな顔で赤坂が聞いてくる。
「何とか、ね……。ところで雪絵さんは?」
 私のその言葉に、赤坂が顔を曇らせる。
「今は別の部屋で眠っていますよ」
 答え難そうな様子の赤坂の代わりに、入江が答えた。
「そう……。あの後一体どうなったの?」
「……どうやっても雪絵は手を離さなかった。仕方なく、首に当身を入れて失神させた」
 赤坂の顔に苦悩と後悔が滲む。いかに私を助けるためとは言え、雪絵に手を上げたことを心底悔やんでいるのだろう。
「すごい力だったわ。それにあの表情……」
 意識を失う直前に目にした光景が、頭の中に浮かぶ。雪絵の恐ろしく歪んだ顔に、死んだような目。そして何故か羽入の姿。
ここのところ、滅多に私の前に現れなくなった羽入が、何故いきなり出てくる?
「あれ……?」
 何かが引っ掛かる。私は慌てて記憶を巻き戻す。羽入のところ、だ。 私が気を失う寸前、羽入は何か言葉を発していたが、
私には聞こえなかった。ただ、唇の動きは覚えている。私はそれを自分の唇で再現してみた。

 ご…めん……な……さい。ごめ……なさ……い。ごめんなさい。

 口に出して、私はぞっとした。まさか……!
「入江……まさか雪絵さん……雛見沢症候群が発症……したの?」
 入江がなぜ分かったのか、という顔をして私を見た。
「赤坂さんから、雪絵さんの様子を聞きまして、念のためと思い検査をしてみました。ただL3とL4の中間くらい
です。ワクチンの投与を続ければ、何とかなります」
 何とかなる、と入江は言うが、雪絵がその身に爆弾を抱えてしまったことには変わりはない。
「そんな……どうして? 雪絵さんは今日初めて雛見沢に来たのでしょう?」
「私のせいだ……」
 赤坂が苦しそうに言った。
「迂闊だった。私は頻繁に雛見沢に来ていたから……。私から雪絵に感染したんだ」
「ですが、感染しただけですぐに発症する訳ではありませんよ」
 入江が合点がいかないという顔をする。
「精神的に不安定な状態、まあ一番良くないのは疑心暗鬼に陥ることなのですが……そういった状態にならないと
おいそれと発症するものではありません」
「それも、私のせいだ」
 赤坂のその言葉に、私は、はっとした。
「私は毎年、この時期になると雪絵が疑心暗鬼になってしまうようなストレスを与えていた」
「え? それはどういう―」
「入江。お願いだから、それは聞かないで」
 思わず私の声が尖ってしまう。
「は、はあ……」
 入江が口をつぐむ。
 私はベッドから降りた。壁にかけてある時計に目をやる。もうじき演舞が始まる時間だ。
 ―私が赤坂に近づこうとすればするほど、彼は遠ざかってゆく。赤坂を強く想えば想うほど、傍にいられなく
なる。この背理に、私はなす術を持たない。無理に近寄れば、雪絵が壊れてしまう。そうなれば、赤坂も……。
 赤坂が大事だというのなら、彼を悲しみの底へ沈めるようなことだけは、絶対にしてはならない。
「赤坂……」
「何だい、梨花ちゃん?」
「演舞を見て欲しい」
「……」
 赤坂が困った顔をしている。雪絵を一人にしたくないのだろう。当然のことだ―でも、それでも私はあえて言う。
「最後の……お願い」
 声が震えるのが分かる。
「……分かった」
 ややあって、そう短く赤坂が答えた。

634:ベルンカステルの背理 ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:25:54 yezlBim/

 私はこの年の演舞を、きっと死ぬまで忘れることはないだろう。何年もこの演舞を行ってきたが、こんなにも
心の中が澄み切り、集中していたことは過去にない。
  
 赤坂の記憶に焼き付けるためだけに、舞う。
 
 きっと、もう会えないから。
 
 せめて、記憶の片隅にだけでも、私を置いて欲しいから。
 
 雪絵の症状をこれ以上酷くさせないためには―。
 赤坂は二度と雛見沢に来てはならない。
 古手梨花のことを口にしてもいけない。
 古手梨花の影を感じさせてはならない。
 雪絵にとって、雛見沢という土地と、私の存在は災厄でしかない。
 
 今日を境に、私と雛見沢は生まれ変わらなければならない。
 
 赤坂にとって、私と雛見沢は、触れてはならない禁忌へと生まれ変わらなければならない……。
 
 演舞が、静かに終わった。
 
 
 


 演舞が終わり、綿流しが始まる。
 自分の罪を綿にのせ、川に流して許しを請う儀式。
 私と赤坂は河原に立ち、村の人々が綿を次々に流してゆくのを眺めていた。
 私と赤坂は、綿を手に持つことはしなかった。許しは得られても、罪がなくなる訳ではない。
「ここで、さよなら……しましょう」
 川面を流れてゆく綿の群れを見ながら、私は告げた。
「私が言えたことではないけれど……奥さんを、どうかお大事に……」
「……うん」
 どんな表情で赤坂が返事をしたか、私はあえて見なかった。今、顔を見たら、決意が挫けてしまうに違い
なかった。
 赤坂が背を向け、歩き出す。私は振り向いて、赤坂の背中を見つめた。
 ゆっくりと、赤坂の背中が遠くなってゆく。
 追いかけて、すがり付いて、その歩みを止めてしまいたい。
 でも、それは許されないこと。
 それは、私にだけ許されないこと……。
 やがて、赤坂の背中が暗闇の中へ消えてゆく。
 頬を、熱を帯びた雫が滑り降りた。

 さようなら。

 声にならない声で、私は呟いた。



 -了ー

635: ◆e91VJLqnD.
07/10/23 18:28:45 yezlBim/

以上で「ベルンカステルの背理」終了です。失礼しました~。

636:名無しさん@ピンキー
07/10/23 20:26:07 E29fm1G4
>>635
不覚にも泣いた
いい作品をありがとう

637:名無しさん@ピンキー
07/10/23 22:32:08 kbMt49Ju
梨花ちゃまああ!!(T T)
うおお、切ねえぜ。だがGJ

638:名無しさん@ピンキー
07/10/23 23:19:42 lj+ULp61
GJ
いい話だな


639:名無しさん@ピンキー
07/10/24 14:16:35 kMAPM7b0
惨劇を超えても悲しい現実が待っているのか・・・

640:名無しさん@ピンキー
07/10/24 23:55:19 uIL+F4SO
成長した圭梨もの投下してみる。

前からエロは書いてみたかったけど

こんなに難しいとは思わなかったんだぜ(´・ω・`)

641:640
07/10/25 00:04:07 uIL+F4SO
 

梨花ちゃんを押し倒したのは無意識だった。
「えーと、圭一?」 
「いや、これはだな……」
 梨花ちゃんの長い黒髪が畳に触れる面積を増やしている。胸の前を両腕で隠
すようにして俺を見上げている様子は、無意識のままこの体勢にさせてしまっ
た俺にこの先を躊躇させる。
 いや、何を考えてるんだ俺は。
 そもそもなんでこんなことになったんだ。
 思い返してみる。
 久々に会えて嬉しかった。梨花ちゃんの作ってくれた夕食は絶品だった。寄
り添い、梨花ちゃんは高校生活、俺は大学生活をお互いに話しながら時間を過
ごした。そして、ふと会話が途切れたとき、キスをした。
 唇の感触は未だ残っている。梨花ちゃんの柔らかさと、熱さ。
 俺は一瞬何も考えられなくなった。
 気がつくと、この体勢。
「……圭一。何か言いたいことはあるかしら?」
 睨みつけられていた。声色も一段と低くなっていた。
 いつもの如く梨花ちゃんの腹黒変化(彼女に対して使う言葉ではないかもし
れないが)。ならば俺も痛い目(主に精神)を見る前に撤退するべきであって
、これまでもそうしてきたのだが、畳についた手は接着剤でもついているかの
ように離れない。
 背に嫌な汗を流しつつ、沈黙が状況を改善できるはずもないと思い俺は口を
開いた。
「あー、あのさ、俺たち久々に会ったよな」
「そうね。圭一がお金がないとか言って帰郷を遅らせてなかったらもっと早く会えたわ」
「…………」
 ……負けねぇぞ。何にかはよく分かっていなかったが。
「それは謝るよ。悪かった」
「許してあげなくもあるわ」
「…………」
 ……どうすればいい。



642:640
07/10/25 00:06:31 uIL+F4SO
 
 
 俺は今下で仰向けになっている梨花ちゃんをまじまじと見た。
 振り乱された漆黒の髪。電灯の無機質な明かりがその黒髪に反射されたとき
だけとても美しく輝いて見える。緑色のワンピースは年を重ねるごとに大人び
る梨花ちゃんの子どもからのお気に入りの洋服だ。サイズが合わなくなるたび
買いに出たり、作ったりしているらしい。出会ったとき以来、俺の記憶にはこ
のワンピースが存在し、何というか、いけない妄想をしてしまう。こう、胸も
腰もすっかり女性らしく成長した梨花ちゃんの、小悪魔的な笑みと無邪気な笑
みが頭を巡って……。
「梨花ちゃん……」
 いつの間にか口に出していた。
「…………」
 梨花ちゃんは何も言わない。まっすぐに俺を見ている。
 肩紐が腕の方へと寄っているのに今頃気づいた。そうして目に付いたのはブ
ラジャーの紐。透き通るように白い肌が鎖骨のふくらみにおいてより一層の滑
らかさを。胸元から下は俺の影で隠れており、視線をそちらに移すのをやめた
。代わりに、首筋を辿り再び目を合わせる。
 自分が何をしたいのか理解できてきた。
「梨花ちゃんて十六歳だよな?」
「そうだけど?」
「実は俺は二十歳だったりする。」
「? そんなの知ってるわよ」
「ああ、そこで導きだしたい結論がある」
「なによ」
「俺たちはお互いに結婚できる年齢だってことだ」
「……は?」
 ……は? 俺は何を言ってるんだ?
「……もう一回言ってもらっていい? 圭一」
「いやっ…そのっ…ああっと……っと」
 俺が軽いパニックを起こしてもごもごしていると、
「圭一、お願い」
 と梨花ちゃんが縋ってきた。シャツが引っ張られる。
 顔を見た瞬間自分を殴り倒したくなった。言い換えると、覚悟が決まった。
「梨花ちゃんと結婚したい。一緒になりたい」
 ……言った。言ってしまった。
 って指輪も何もなく何を言ってんだ俺はぁっ! 男としてどうなんだこれはっ!
 しかし常日頃考えていたことでもあるから本心であることに変わりはないのだが……。
 というかちょっと待てよ。断られたら俺はどうすればいいんだ。今更ながら
不安になってきた。心臓がばくばく鳴っていて息苦しい。雛見沢の夏夜は涼し
いはずなのにこの汗のかきようはどういうことだよ俺前原圭一。
 そんなことを考えていると、首に手が回されて重みが加わる。
「うおっ」
 梨花ちゃんが抱きついていた。しかしすぐに手を離しばたんと畳みに倒れる。
 そして。
「はいっ」
 と涙を目の端に浮かべながら返事をしてくれた。俺はその笑顔をきっと生涯忘れない。
 心を奪われた。同時に、理性も。
 震える声で梨花ちゃんに言う。
「して……いいか」
 顎に軽く手を添えられ、同じく添えるようなキスをされる。
「圭一の、したいように」
 梨花ちゃんは幸せそうな顔でそう言った。
 
 俺は梨花ちゃんに覆い被さった。



643:640
07/10/25 00:11:34 L0MUtHK8
 

 唇とその奥を執拗にに嘗め回しつつ、梨花ちゃんの首と畳みの間に腕を通し
首筋と耳を指でなぞる。感じるのか、時折びくっと跳ねるのが唇越しに伝わっ
てきた。
「ん…んん……はぁっ……は…あっ……けい、んむっ」
 息苦しさは快感を増長させてくれた。俺は唇を離そうとする暇を与えず貪り
続ける。梨花ちゃんの口内の粘膜が舌にまとわりついて熱かった。そして甘い。
たまにすくった涙を間に紛れ込ませてはさらに水音を梨花ちゃんの家に響かせていく。
 初めはきつく抱きついていたがだんだんと重力に従うように倒れていき、完
全に体重を畳みに預けてからは俺が梨花ちゃんの首を手で支え、ディープキス
を繰り返していた。年下のはずなのにいつもからかわれる俺。そんな関係は心
地よく楽しい日々だった。気に入っていた。けれど、たまには俺だって梨花ち
ゃんを掌の上で転がしてみたいんだ。両の手で包み込めそうなほど細い首は俺
に梨花ちゃんへの征服欲を強めさせていく。
 梨花ちゃんの足がもぞもぞと動いているのを俺の下半身が感じ取ったとき、キスは終わった。
「はあっはあっ、はあっ……」
 脳がしびれる感覚。張り裂けんばかりに膨張したそれは梨花ちゃんの膝がかすかに
触れただけで大きく跳ね上がり、行き場を求めていることを俺に激しく主張する。
 しかし。もう少し我慢してくれよ。
「……は…あ…あ……あ…は……は」
 焦点が合っていない目を俺に向けてくる。息も絶え絶えにかすかに笑っている。
「け、いいち……はげ…し…い……あは…」
 俺にはその様がひどく妖艶に見えて、また唇を重ね合わせたい衝動に駆られ
たのだが、今は次の行為へと進みたかった。けれど頬を伝う唾液だけは舐めて梨花ちゃんの口に戻した。
「服脱がすぞ」
「うん……」 
 思い切り破ってしまいたかったがそれは我慢する。梨花ちゃんのお気に入り
だし、そもそも俺のお気に入りでもあるからだ。裾を上へとずらしていく。ふと
手が止まる。梨花ちゃんの中心部、一番大事なところに目がいき思わず息を呑んだ。
 濡れている。白いパンツに大きな染みができている。
 お腹のあたりでワンピースを脱がすのを止めて、パンツ越しに指を這わせた。
 くちゅ……。
「ひあっ!?」
 梨花ちゃんが即座に反応する。その反応で俺はやめられなくなった。
 水音が耳奥で響いていたキスのときと違って、今度はその音が纏わりつく。
粘りをもって指に絡みつく様子と同じように。おそらく今の俺の目もそうなっ
ているだろう。梨花ちゃんの秘部へと。
「あ、ひっ、ひぅっ…うぅんっ!」
 撫ぜるたびにいやらしい声を出す。そんな梨花ちゃんの様子を窺うと、自分
でワンピースの下の胸を弄んでいるようだった。俺が見ていることに気づいたら
即座に目をそらして手を止める。
「胸も触ってほしいのか?」
「……いちいち、聞かないで……」
 今度はワンピースを完全に脱がし、ブラジャーのホックを外す。乳房全体を、
梨花ちゃんの腕が俺の視界から遮っていたがそっとどかして掌で揉みしだく。
握力を加えるたびに適度な弾力をもって手に柔らかい感触を返してくる。これ
またやみつきになりそうな触り心地だった。
「ふぅ、んぅ……あっ」
 喘ぎ声もしばらくは耳から離れないだろう。
 ……俺、自分を抑えきれるだろうか。大事にしないといけない。
「梨花ちゃん、愛してるからな」
 そしてまたとんでもないことを言ってしまっていた。
「……嬉しい。私も、愛してる、圭一……」
 全然問題なかった。よかった……。



644:640
07/10/25 00:22:12 L0MUtHK8


 すでにかたくなっていた乳首を舌の上で転がした。ピンク色の乳輪をぐるり
と舌先で何度もなぞり乳頭へと近づけていく。
「ああぁっ」
 乳頭のぎりぎりまで達してから乳首を口の奥まで含み、乳房全体に重みを加える。頬に当たる柔肌がとても気持ちいい。
そうして思い切り吸い上げる。そ の間もう一方の胸の乳首を休むことなく指で弾き続けていた。時々つまんだり。
「ひぁあっ!」
 本当にかわいい声を出す。頬はすっかり上気しており涙も流れるまま。俺が手を休めるたびに確認する梨花ちゃ
んの表情は常に恍惚としたものであり、間違いなく快感に溺れていた。
 病み付きになっているのではないだろうかという俺の思いつきは、
「圭一……もっと」
 という梨花ちゃんの言葉によって裏づけを得ることになる。
「ああ」
 病み付きになっているのは俺も同じだった。
 濡れて、通常の何倍にも重みを持ったパンツを脱がす。薄い恥毛と秘唇が露になった。 かすかにひくついたよう
に見えたのは空気に直に触れたからか、あるいは恥ずかしさからか……。
「あんまり見ないで……」
 後者のようだった。赤くした顔を下に向けて俺と目をあわそうとしない。
 梨花ちゃんの秘唇はさっき撫で回したせいか軽く開きかけている。奥から きらきら光る液体が漏れてくる
のを見て、これならもう挿入しても問題はないかと思ったが、処女だとイきにくいという話を聞いたことが
あったため愛撫をもう少し続けることにした。 ……しかしそんな俺に抗議するかのように息子ががまん汁を出した。
 一際強く梨花ちゃんの匂いがする。 濃艶さの立ち込めるその一帯にふーっと息を吹きかけた。
「んっ!」
 大陰唇に親指を添えて左右に押し広げる。
「梨花ちゃんのここ、綺麗だな……」
「……っ」
 小さく開いた膣口が目に入って俺はふと思った。こんな小さなところに入るのだろうか。
 指一本は入るが……。ぬちゅ…となんともいえずエッチな音がした。
「ああんっ!?」
 以前怪我したときに、梨花ちゃんに指を舐められたことがあったっけ。それよりも熱く、指先自体が熱を放って
いるかのように感じられる。そのせいか中 の襞を擦るスピードも早くなっていった。最終的にはかき回すと表現したほうが
いい行為にまでなり、梨花ちゃんの嬌声はこれまでになく激しいものへと変化していた。
「ああっ、は、ひゃあっ! ふぅっんっ、ぃひぁっ、ああんっ!」
 処女だとイきにくいと聞いたとき、ならばイかせるにはどうするのかと尋ねたところ、高い確率で女性がオーガズムを迎え
られるという場所を教えてもらった。
 止まらぬ喘ぎ声とだんだんと激しさを増していく呼吸のために揺れる双丘に 意識を向けつつ、俺は包皮から覗く小さな豆、
陰核を口に含み乳首と同じよう に舌先で転がした。
「――っ!!」
 指が膣壁に圧迫される。梨花ちゃんは身体を弓のように反らせて息を吸いな がら声を出そうとする。が、それは当然声に
なるはずもなく。一瞬遅れて至上 の快感に悦ぶ叫びを俺は聞いた。
「あぁあああーっ!」
 ……。
 手首までべっとりと濡れていた。俺の息も荒れている。 もう我慢できなかった。
 虚ろな目とそれに合わず笑みを浮かべている梨花ちゃんに跨る。
「け…い……い…ち」
 呟いた声はおそらく自然に漏れたものだったのだろう。 返事をすることもなく俺はいきり立ったペニスを膣口に押し当てた。
「くっ」
「あっ」
 俺のものは梨花ちゃんの熱さと柔らかさに触れただけで飛び跳ねた。
 双方でコミュニケーションがとれているかのように、ひくひくと動いていた。
「梨花ちゃん、挿れるからな……」
「え…ま、まって……」
「ごめん、もう待てない」
 一気に奥まで突いた。それで梨花ちゃんと一つになった。



645:640
07/10/25 00:37:10 L0MUtHK8
 
 
 全く未知であったものの快感と一つという認識が頭の中で混ざり合ってペニスはさらに膨張する。
絡みつく膣壁をカリで巻き込みながら思い切り引き抜いて、突き上げる。それを繰り返す。俺のものは
梨花ちゃんに優しく包み込まれているはずなのにめちゃくちゃに暴れたがる。この矛盾がまた快感とは別に
脳を刺激する。最強の矛と盾というより最愛の、というべきか。
 一番に愛する人とのセックスがこんなに幸せなものだとは思わなかった。
「ぐっあぁあっ!」
「け、いぃいひぃっ!」
 涙をぼろぼろ流しながら俺の肩をがりがりと爪で削っていく。獣のごとく腰を振り続けていた俺に
とってはそれすらも激しい快感となり、ついに最後の一線を越える。
「で、射精るっ!」
 このまま梨花ちゃんの中で果てたかったが子どもが出来たらまずい。欲しいのは欲しいのだがこれ
からのことを考えると、一時の快楽に完全に溺れることは、よくない。俺も梨花ちゃんもまだ学生なのだから。
一緒に居られるだけでいい、という考えは少し現実を甘く見すぎていやしないだろうか。
 そんな思考が頭を過ぎった。それが最後の理性だった。
「はっあっはああっ」
 精液を吐き出す。梨花ちゃんのおへそでそれはプールを作り、横腹から太ももの付け根へとゆっくり
流れ落ちていった。どれだけ出るんだというぐらいに射精は続いており、俺は、梨花ちゃんのことを
何度も呼びながら梨花ちゃんが俺の精子に汚されていく様を見ていた。
「はっ、はぁっ、はっ…」
 畳に頬を寝かせて呼吸を整えようとする梨花ちゃん。染みができていることから分かるように、
結構な量の唾液か涙かを流したのだろう。少し罪悪感が生まれた。かなりめちゃくちゃなことを
してしまったかもしれない。おまけにまだ収まってない。あれだけ出したにも関わらずだ。
「梨花ちゃん……」
 後頭部に手を滑らせ優しく起き上がらせる。そのままキスをした。先のように激しいものではなく、
これまでの快感の余韻に浸ってゆっくり、じっくりと。完全に力が抜けていたのか、最初は俺だけが
舌を動かしていたが、梨花ちゃんも徐々に舌を絡ませてきてくれた。
「ん……」
 顔を離すと繋がっていた唾液がその力を失くしたように落ちていった。
 梨花ちゃんがとても満足そうに笑っていた。
 ……いささかの小悪魔的な表情も含まれているような気がした。



646:640
07/10/25 00:39:58 L0MUtHK8


「ふふ」
「うあっ」
 情けない声は梨花ちゃんがぺニスの裏筋を撫でた行為による。
「今度は私の番……」
 そう言いながら今度は俺が倒されていく。弱々しくしおらしい表情で、狂ったように
俺に身を預けていた梨花ちゃんの姿はもうなくて。全く逆のお姉さんのような態度と
ふるまいで体勢を変えていった。
 ああ、下から見上げる裸の梨花ちゃんもいい……。
 いつもの二人の関係だった。
「なぁ、気持ちよかった?」
「もう狂いそうだったわ」
「狂ってたと思うけど」
「うるさいわね。私をものにできたからって自惚れないでよね」
 ばしばしと叩いてくる。
「そんなこと言われると自惚れる必要もないよな、ってああ! 気持ちいい!」
 見ると、梨花ちゃんがあそこを俺のものにこすり付けていた。
「ん、ふぅっ…まだ、こんなに硬い、じゃないっ、はぁ…」
「あ、ああ。ごめん」
「謝る必要なんて―あっ。な、ないわよ……。……ねぇ圭一、一つ聞いてもいい?」
 腰を動かすのを止めることなく尋ねてくる。俺は頷いた。
「圭一……エッチ、したかったから結婚、なんて言ったんじゃないわよね」
 それはそう思われても仕方なかった。だから俺はそれを否定する。
「違う。あれは常日頃から思っていた俺の本心だ。将来は梨花ちゃんと結婚したいと思ってたし、梨花ちゃん以外考えられなかった」
「うん」
 梨花ちゃんからのキス。
「でも、その。ごめんな。指輪とか何も用意できてなくて」
 よく考えなくてもかなり情けない男に違いなかった。
「ううん、嬉しかったわ。そういうのはこの先にまた……」
「ああ、約束する」
「ええ。それじゃあ」
「うぅっ!?」
 敏感な性器にまた刺激が与えられる。
「今はこの節操のないおちんちんを、鎮めることからしないとね……ふふ」
 ああ……卑猥な言葉を堂々と言う梨花ちゃん、いい!
 そう、ここからは梨花ちゃんのターン。
 

 ―ぬはぁ!


<了>



647:640
07/10/25 00:42:57 L0MUtHK8
 以上です。
 
 お目汚し失礼しました。
 
 あ、途中投稿の時間空いてすみませんでした。

648:名無しさん@ピンキー
07/10/25 00:43:36 bCk7xKBQ
うおっ

リアルタイムGJ!

649:名無しさん@ピンキー
07/10/25 00:46:47 oz/EIOcO
>>647 GJですぞ!!!!!
圭×梨好きな俺にとっては最高だった
梨花ちゃんのターンも見てみたいのは俺だけ?

650:名無しさん@ピンキー
07/10/25 01:40:40 rftHF9pn
我々はー>>647に抗議するー
何故梨花ちゃまのターンを見せないのかとー
全裸で断固抗議するー

651:名無しさん@ピンキー
07/10/25 02:09:39 pfjFsDhv
>>647
骨の髄からの圭梨好きな俺は貴方のような人を待っていた!いいぞGJ!!
やっぱこの二人はいいわ~、作中の二人と>>647氏の今後に期待する!

652:名無しさん@ピンキー
07/10/25 09:43:27 plxk87HY
久々に圭梨分を補給できた
ところで梨花ちゃまのターンは(ry

653:名無しさん@ピンキー
07/10/25 10:54:54 7rMl8W48
>>647
GJだけど一つだけ。
16歳の梨花ちゃんはまだ処女だよね?w
絶対イタイわこれー、と思ってしまった私は馬鹿ですかorz

654:名無しさん@ピンキー
07/10/25 11:31:54 J0N+CmLo
梨花と沙都子の初体験っていつごろになりそうなんだろうな

655:名無しさん@ピンキー
07/10/25 15:42:41 FmGIAbBz
already.

そんな100年も同居してて性的悪戯のひとつやふたつしないわけないじゃないですか

656:名無しさん@ピンキー
07/10/25 16:49:17 7Z8ESpbp
毎日に決まってんだろ

657:名無しさん@ピンキー
07/10/25 21:51:10 L0MUtHK8
>>647です。
感想感謝!(^人^)
梨花ちゃんのターン、妄想してたら書きたくなってきたので書く。
ただ遅筆なんだ。てか保管庫に入れてくれた人ありがとうw見て吹いたw

>>653
梨花ちゃんのターンで。
無理やりっぽくなるかもだけど。

658:名無しさん@ピンキー
07/10/25 23:42:31 PAW7jpDP
>>647GJ
高校生の梨花ちゃまハァハァ

659:名無しさん@ピンキー
07/10/26 00:48:15 V11+Cv18
>>657
久々の圭梨ありがとん
GJだぜ☆

660:名無しさん@ピンキー
07/10/26 01:23:27 /8MtXMyS
>>647
GJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJGJ!!!!!!!!!!!
ものっそい萌えた!やはり圭梨はええのうww梨花受けもたまにはええのうww乙だぜー

661:名無しさん@ピンキー
07/10/26 08:41:26 qBBJoSWt
…あれ?
沙都子はターンエンド?

662: ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:08:26 wjRfaFDd
567で圭一×沙都子を投下すると予告していたものです。
 
遅くなりましたがようやく作品が完成しました。

しかし、ちょっとした短編並みの分量になってしまい、SSを超えてしまっている気がします。

冗長な文体、ご容赦下さい。では、「トラップバスター」と言う題で投下させて頂きます。

663:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:09:46 wjRfaFDd
トラップバスター

 秋の夕日に照る山もみじ・・・。
 日本の自然は、特に秋のそれは美しい。
 夏の盛りに青々と茂っていた木の葉が、寒さの訪れと共に色褪せ、やがて地面に落ちて土に還る。
 自然のサイクルの中で、木の葉に現れる色合いの変化。緑から黄色、そして紅に染まるその様子は、少女が着物を着せ替えしている姿に例えて良いのかもしれない。
 
 『ちょ、ちょっとアンタ!何見てんのよっ、このヘンタイ!!』

 だとすると、秋の山を訪れて紅葉を楽しむ旅人は、皆すべからく少女の着替えをのぞきに来るヘンタイとも言える。
 突然の来訪者に戸惑い、慌てて身を隠し、モノを投げつけるその様子は、まさにツンデレ。時折落ちてくる木の葉や木の実も、このように考えると趣があるものだ。
 だが膨らんだ妄想を愉しむ余裕は無かった。
 俺は今、古手神社の裏山を歩いている。獣道という言葉が相応しい、細く傾斜のついた道を。
 只でさえ息の上がる山道に、今日に限って夏を思い出したかのような真昼の熱気。しかも俺の背中には、どデカいリュックサックが負ぶさっている。
 終戦直後の買い出しみたく、丸々と太ったその中身は、これでも減ったほうだ。
 だが、これまでの疲れのせいで、最初よりも重く感じてしまう。俺は手頃な木の枝を杖の代わりにして、歩みを進めていた。
 そんな俺とは対照的に、軽やかに先を進む人影があった。
 俺よりも頭二つ分ほど小柄で、黒いカチューシャが乗った短髪を小刻みに揺らし、鼻歌まで歌っている。
 桃色の袖無しシャツに紺色の半ズボンを身に纏ったその人影は、まるで踊るかのように華麗なターンを決め、俺に向き直った。
 「あら、圭一さん。お疲れでして?」
 すました様子で八重歯を見せて、北条沙都子が笑いかける。
 「へっ、馬鹿野郎。俺を誰だと思ってるんだ?天下の前原圭一様だぜ・・・。」
 挑発的な瞳に、こちらも空元気で答えてやろうと思ったが、やはり最後は息が切れそうになる。
 言い終えると、自然に肩で息する。思ったよりも体力の消費は激しいようだ。
 「をーっほっほっほ。圭一さん、最近なまっているではありませんこと~♪」
 沙都子の笑い声が聞こえる。顔を地面に向けていても、片手を腰に、もう一つの手を口元に当てて高笑いしている姿が目に浮かんだ。
 「て、てめぇ、沙都子・・・。俺にだけ荷物を背負わせて、どの口がそういうこと言ってやがるんだ・・・。」
 重装備の俺とは違い、沙都子は手荷物一つ持っていない。そりゃあ、疲れ具合も違うというものだ。
 「やれやれですわ。不甲斐なさを荷物のせいにするのは、男らしくありませんわよ。」
 「・・・その荷物を背負わせてんのはどこのどいつだよ。」
 「言い訳はもっと男を下げましてよ~♪」
 この外道め。日曜日の朝っぱらから俺を呼び出して言う台詞がそれかい。
 俺は激しく後悔した。あぁ、あの時沙都子の口車に乗らなければ・・・。



664:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:11:13 wjRfaFDd


 深夜番組を愉しんで昼前まで寝るつもりだった俺を、お袋が起こしに来たのは午前の七時過ぎ。沙都子からの電話を取り次ぎに来たのだった。
 寝ぼけ眼のまま電話口に出た俺の耳に聞こえたのは、「圭一さんっ、助けて下さいましッ!!」という沙都子の悲痛な叫び声だった。
 「どうしたんだよ、一体!?」
 「圭一さん、緊急事態ですわ!今すぐ私たちの、梨花の家に来て下さいましッ!」
 「だからどうしたんだよ沙都子。説明してくれないと分かんねぇぞ。」
 「あ~、う~。口で説明するには難しいですわね。ともかく来て頂ければお分かりになりますわッ!」
 「う、う~ん。いきなり言われてもな・・・。」
 正直、乗り気になれなかった。学校でのトラップ攻撃に慣れ親しんでしまったせいか、どうしても沙都子からの誘いには裏があるように感じてしまう。具体的な内容が説明出来ないとなると尚更だ。
 しかし、次に沙都子が発した台詞により、俺の顔色は一変した。
 「お願いですの、梨花が、梨花がぁ・・・。」
 「えっ、梨花ちゃんがどうかしたのか?」
 現在、沙都子と梨花ちゃんは二人で共同生活をしているはずだ。時折羽入や詩音が遊びに来るものの、お泊まりでもしてない限り、こんな時間帯に留守であるはずがない。
 嫌な予感がした。
 鷹野さん率いる山狗との戦いは終わったものの、「東京」の過激派が未だ梨花ちゃんを狙っている可能性が無いとは言えない。
 いや、仮面ライ○ーでもよくあるパターンじゃないか。倒した組織の残党が新たな敵として現れ、平穏だった日常に終わりが告げられる・・・。
 「レナさんや、魅音さん。詩音さんにも相談出来なくて・・・。圭一さんにしか頼める人が思いつきませんの。お願いです、圭一さん。助けて・・・!」
 電話口の沙都子の声は、何時しか涙声になっていた。
 くそぅ、何てことだ。まさか特撮やアニメのような展開がこの雛見沢に降りかかってくるとは!
 「わかったぜ、沙都子。今からそちらに向かう!」
 「・・・!本当ですの!?」
 「あぁ、待っていろ、1500秒、いや1000秒も掛からずに辿り着いて見せる!だから俺を信じて待っていてくれ!」
 「圭一さぁん・・・。圭一さんならそう言ってくれると信じていましたわ・・・。」
 沙都子の声が終わるのを待たずに、俺は受話器を置いて駆け出した。部屋着から着替えると、お袋に外出を告げ、食卓の上から食パン一枚を掴んでくわえる。
 靴を履き、玄関の傘立てに置かれている傘から手頃な一本を取り出して背中に挿し込む。金属バットやゴルフクラブには及ばないが、獲物の代わりにはなるだろう。
 自転車に跨りスタンドを蹴飛ばすと、全速力で古手神社へと向かった。
 もの凄い勢いでショートカットを繰り返す。漕ぎ過ぎで腿が痛くなるが、お構いなしだ。
 ・・・何か、前にも同じような事をしていたような気がするが、今はそんなことを考えている暇はない。
 その甲斐あってか、普段よりも三分の二は早い時間に神社へと辿り着く。放り投げるように自転車を石段の下に停め、石段を駆け上がる。神社の境内を過ぎれば、二人の住処である物置小屋はもうすぐだッ!
 「沙都子ぉぉぉっ!」
 小屋の前に沙都子の姿を見かけ、俺は叫んだ。
 敵は何処だ?いや、それよりも梨花ちゃんはどうなったんだ!?いやいやいやいや、沙都子の無事を確認するのが先決だ!
 「あっ、圭一さん。」
 俺に気づき、沙都子が振り向く。
 が、俺を見るとぎょっとした表情を浮かべ、一瞬怯えたような表情になった。畜生、間に合わなかったか?
 「大丈夫かぁっ!」
 刀を抜くようにして傘を背中から取り出し、横に構える。ほんの少し格好を付けた形だ。
 覚悟完了。さぁ、「山狗」の残党か、「番犬」の別働隊か、それとも北の国からの工作員か・・・。
 この前原圭一の輝きを恐れぬならば、かかってこい!!

 

665:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:18:37 wjRfaFDd
 「・・・って、戦う覚悟だったんだぞ俺は。」
 「それは圭一さんが勝手に勘違いしただけの話ですわよ。全く、どこをどう聞けばそんな話になるんですの。」
 「おい。あの言い草なら、誰が聞いても異常事態だと思うぞ。」
 先程の場所からほど近い場所にある木陰で、俺達はシートを広げて座っていた。
 業務用の二畳シートの上には、俺と沙都子の姿と、リュックから取り出された弁当包みがあった。
 「まぁ、私の説明不足もほんの少しありましたけど・・・。」
 「ほんの少しかぃ!」
 何事もなかったかのように、すました顔で包みから弁当箱を取り出していく沙都子を見ていると、怒りよりも呆れてしまう。
 こっちがどんな思いで飛ばしてきたのか分かっているのかよ・・・。
 「お前ぇが『梨花がぁ、梨花がぁ』って言うから、俺はてっきり・・・。まさか『梨花がお出かけだから、トラップ作りを手伝ってほしいのですの』って言われるとは思わなかったからなぁ!」
 沙都子が俺を呼び出した理由。それはトラップ作りの手伝いだった。
 何でも、今日は梨花ちゃんが羽入と興宮へ買い物へ行ったので、休日の日課であるトラップ作りの手伝いがいなかったらしい。
 「ごめんあそばせ。圭一さんならば、そのくらい察して頂けると思っていましたから~♪」
 「くそ、絶対ワザとだろ。」
 「あらあら。男が細かいことを気にしていては、器が問われますわよ~。」
 ぐぐぐぐぐ・・・。
 言いたいことは山ほどあるが、ここで言い争いをしても不毛なだけだ。俺は松○梅のCMに出てくる七曲警察署刑事課長のように、ぐいと、注いでおいた水筒のお茶を飲み干した。
  

666:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:19:40 wjRfaFDd

 「ほらほら、これでも食べて機嫌を直して下さいませ。」
 不機嫌な俺の表情を見て取ったのか、沙都子が蓋を開けた弁当箱をこちらに差し出す。
 「おっ、こいつは・・・。」
 弁当箱からは柔らかいクリームソースの匂いがした。表面に狐色が混ざった白色の絨毯が箱の表面を覆い、その間から肌色をした細い管がひょっこりと顔を出している。
 芸術の国フランスの家庭料理と情熱の国イタリアの魂の融合!その名もマカロニ・グラタンだッ!!
 「この程度で驚くのは、早ぅございましてよー!」
 次々と開けられていく弁当箱の蓋。それと共に中身が姿を顕す。
 「をほほほほ、こちらは特製の和風ハンバーグ。あちらはポテトサラダでございますわよ~☆」
 こ、こいつはすげェ!普段みんなと学校で突っつきあうそれよりもレベルが高いんじゃないか!?
 あまりの眩しさに、俺は仰け反らざるを得なかった。
 「お、おい、沙都子。この弁当、どうしたんだ・・・?」 
 「虚弱体質の圭一さんにはこのくらい食べて頂かないと働いてくれそうにないですから、ほんの少しだけ奮発したんでございますことよ~♪」
 普段は嫌味に聞こえる沙都子の謙遜だが、このお弁当に関しては謙遜のし過ぎだろう。
 形こそいびつではあるが、丁寧に丸められたハンバーグ。野菜分は少ないものの、彩りのあるポテトサラダ。流行りの冷凍食品やレトルト食品には絶対に出せない「まごころ」ってやつが込められている。
 「これ、自分で全部作ったのか?」
 「ま、まぁ・・・。ちょっとだけ梨花に手伝ってもらったくらいですわ。」
 なるほど、梨花ちゃんも絡んでいるならこの完成度も理解できる。だが、それ以上に心の込もった料理を作ってきてくれた沙都子の心遣いが嬉しかった。
 「ありがとな、沙都子。」
 俺は笑顔を作って沙都子の頭に手を伸ばす。ぽむ、ぽむと軽く触れた後、優しく撫で回した。
 「あ・・・。」
 悪戯心に満ちていた沙都子の瞳が急に細くなり、嬉しさに満ちた光を湛える。
 俺の手が肌を揺らす間、沙都子は両手を胸元に置いてうっとりとした表情をしていた。指が何度目かの往復を終えた時、桜色をしたその唇がかすかに動いた気がした。
 「そ、それよりも、せっかく作ったので食べては頂けませんこと?冷めてしまいますわよ。」
 一段落したところで急に沙都子が頭をどけ、慌てて箸を持ち出す。
 弁当はとっくに冷めているのにと茶化そうとしたが、その仕草があまりに愛らしいので、俺は箸を受け取ると「いっただききまぁ~す!」と大きな声で手を合わせた。
 全く、俺も単純だ。他のヤツがすれば嫌なことも、沙都子が同じ事をするならばそれを許してしまう。
 いなくなった聡史の替わりにこいつの面倒を見ている内、情が移ったのだろうか。それとも、一人っ子の俺が欲しかった妹ってやつを沙都子に投影しているのだろうか。
 厳密に言えば、違う。
 沙都子とこう一緒にいると、ほんの少し心音が上がってしまう。こいつの前で本当の自分を晒け出すのが恥ずかしくて、憎まれ口が先に出てしまうのだ。
 幼稚園のころ、同じ組で一番仲の良かった女の子に抱いていた感情。それに似ている。
 自分にかまって欲しくて、誰よりも自分を見て欲しくて、色々な悪戯をした。不器用だったから、素直に「僕と仲良くして下さい」という言葉が言えなかったんだ。
 悪戯が過ぎて、その子が泣いて先生に告げ口して怒られて、それで終わっちまったんだよな。
 おいおいおいおい、前原圭一。つまりそれってことは、俺、沙都子の事を・・・?
 あぁ、くそ。沙都子はあくまで部活の仲間だろうが。それに生意気この上ないし、偏食家でおこちゃまで、腹黒で、スタイルだってレナや魅音にも劣るし。
 でも、それでいて甘えん坊で家庭的で、素直じゃないけど誰よりも気の置けなくて、あの膨らみかけの胸やちょこんと突き出たお尻も可愛くて・・・。
 うをををを。何を言ってるんだ俺はァッー!
 ええぃ、考えるのが面倒になってきた。とりあえずこの飯を食べよう。そうすれば、混乱した俺の頭も少しはKOOLになるはずだ。
 頭の中に浮かんだこの妙な感情を忘れるべく、俺はがつがつと音を立て、沙都子の弁当を頬張り続けた。


667:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:20:25 wjRfaFDd
  
 嬉しかった。
 圭一さんが私のお弁当を喜んで食べてくれている。それはもうもの凄い勢いで、次々に口に運んでいる。
 私の分が無くなってしまうのではないかと心配になってしまう程だ。
 でも何よりも嬉しかったことは、圭一さんが私のお弁当を褒めた時に、優しく頭を撫でてくれたことだ。
 こう、まるでにーにーのように優しく、その温かい手で私の頭をよしよしと。
 思わず泣きそうになってしまった。そして久しぶりに「にーにー」と呟いてしまった。
 
 にーにーがいなくなって一年と数ヶ月。私を取り巻く環境が大いに変わった日々であった。
 にーにーの家出と共に叔母が惨殺死体で発見され、叔父も祟りを恐れたのか興宮へと逃げ去ると、一人残された私は梨花と共に生活を営むこととなったのである。
 子供二人の生活というものは経済的な負担を想像以上に強いられるものだったが、私たちの窮状を見かねた監督、入江先生の新薬試験に協力することでお金をもらい、何とか日々の生活を送れるようになった。
 叔父、北条鉄平によって身も心もボロボロにされていた私だったが、梨花やこれまでも部活で面倒を見てくれていた魅音さんやレナさんに助けられ、どうにか叔父夫婦に引き取られる前までの生活に戻れたのだと思う。
 知恵先生を始めとするクラスのみんなや、にーにーを慕っているという園崎詩音さんに梨花の親戚という羽入さん・・・。
 みんながいなければ、私はこうまで笑顔になることは出来なかっただろう。
 そして、圭一さん。
 転校して日が浅いはずなのに、いつの間にかみんなの中心に居て、人を引きつける力強さ、いわゆるカリスマというものを持っている人だ。
 これまでに私の周りには居なかったタイプの人間でもある。
 私は基本的に男という人種を嫌っている。
 お母さんをセックスの対象としか見て無くて、弄んで捨てて、与し易いと思えば擦り寄ってくる。
 物心付いた時から襖の向こうでにーにーと身を寄せ合い、母親の喘ぎ声を終わるのを待っている生活を送れば、男というものがどんなに汚らわしい存在か、自然と理解できてしまうだろう。
 それを言えば圭一さんも同類に入る。だから、私は都会から男の子が転校してくると聞いた時に、軽い拒否感を覚えた。
 転校初日にトラップを仕掛け、痛めつけてやろうと思った。そうすればこのクラスに溶け込もうとは思わなくなるだろうし、少なくとも私を敵と認識し、近づいては来なくなるはずだった。
 転校の挨拶の前に襲いかかるトラップに、為す術無く圭一さんは沈んだ。
 これで良し。度肝を抜かれて、私たちには関わり合いになりたくないと思うはずだ。私の世界をかき乱そうとは思わないはずだ。
 「な、なんだこりゃぁ・・・。」
 「をーっほっほっほっ。ざまーありませんこと~♪」
 あっけに取られている圭一さんに、私はトラップの仕掛け主として正体を現した。
 さあ私を憎んで、嫌って、そして私に近づかないで-。
 そんな覚悟だった。どんな罵声も覚悟していた。しかし
 「こいつは、てめぇの仕業か~。」
 つかつかと近づいてきた圭一さんに、私は身構えた。一瞬、鉄平の醜悪な顔が重なって見えたのだ。
 しかし、圭一さんは目の前で顔を近づけると
 「へへっ、面白ぇじゃねぇか。こんな歓迎、初めてだぜ。」
 と、言って、満面の笑顔を作ってくれたのだ。
 これまでにトラップを喰らった人間とは、全く違う反応。私にとっても、こんな経験は初めてだった。
 ほんの少し、ちくりと。今までに無い感情が私の心に灯った瞬間だった。

 

668:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:21:40 wjRfaFDd
 「ん?どうしたんだ、沙都子?」
 物思いに耽っていた私は、圭一さんの声で我に返った。
 圭一さんはお弁当を半分ほど平らげ、水筒の蓋に注いだお茶を飲み干したところだった。
 「な、何でもございませんわ、おほほほ・・・。」
 見つめられてしまっているのに気づくと、自然と頬が紅くなる。いけない、いけない。またその優しい瞳に引き込まれるところだった。
 照れ隠しに、おかずに箸を伸ばす。梨花から教えてもらった和風ハンバーグを一つ摘んで、口に運んだ。
 「しっかし、いつもこんな事してんのか?トラップ作り・・・。」
 「えぇ。モグ・・・。特に、ング・・・。こないだ・・・ハグ。使ってしまいましたから。」
 「食い終わってから喋れよ。」
 この間と言ってもしばらく経つが、私が山に仕掛けていたトラップは、鷹野さん率いる「山狗」との戦いでそのほとんどを失っていた。
 数年がかりで作り上げた私の作品が、半日足らずで役目を終えたというのは皮肉だが、自衛隊を相手にして私たちの命を救ってくれたのだから充分すぎる働きをしてくれたものである。
 「でもすげえよな、本物の軍隊を翻弄してたし。『番犬』の人も、外国の戦場でしかお目にかかれないシロモノだって言っていたからな。」
 「をほほ、それは私が作り上げた作品ですから。そこんじょそこらのものと一緒にしては、困りますわぁ~♪」
 本職の軍人すら手玉に取る私のトラップ。
 2年前、私が叔父夫婦に引き取られて虐待を受けていた時期、偶然出会った人に教えてもらったものだ。
 名前は何と言っていたのだろうか・・・。
 ゴウ?ゴウジ?確か名前のどこかにGの付く人で、外国人のような名前をしていたと思うが、詳しくは思い出せない。
 その人はこの山で組木をアスレチックのようにして、黙々と訓練をしていた。何でも次の仕事のために、ナマった体を鍛えていたらしい。
 無口で人を寄せ付けない雰囲気のある人だったが、私が地元の抜け道などを教えると気を許し、ほんの少し身の上話もしあう仲になった。 
 話の中で、私が叔父夫婦に虐待されていることをしった彼は、私に簡単なトラップ作りの方法と、その心得を教えてくれた。私の持論である「トラップは心理の裏の裏をかく」というのも、彼の言葉だ。
 予定が急に繰り上がり、彼がこの山から姿を消したのは、その翌日のことだった。
 「ふ~ごちそうさま。美味かったぜ。」
 いつの間にか、圭一さんが食事を平らげていた。綺麗にご飯粒一つ残していない。
 ご飯を作る側としては、こんなに嬉しいことはない。最近、都会では食事を少し残すのがエレガントだという風潮らしいが、作りすぎ不味すぎならばいざ知らず、作り手に対する冒涜としか思えない。
 「あらあら、がっつかれまして。もう少しエレガントに食べられないものですかね?」
 それでも、つい憎まれ口が出てしまう。いけないとは分かっているが、圭一さんの前ではどうしても言葉が意地悪なものになる。
 「美味いんだからしかたねぇだろ。あ~。食った食った・・・。」
 満足げにお腹を抱える圭一さんを見ると、こちらまで幸せな気分になってしまう。
 私は笑い出してしまいたくなる気持ちを押し隠し、すっかり空になった弁当箱の片づけを始めた。

 

669:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:22:34 wjRfaFDd

 「ふぅ。ここを、こうすればいいのか?」
 「えぇ、こちらの柏の幹にロープを仕掛けて頂ければ、今日は終わりですわ。」
 思ったよりも早く、今日のトラップ作りは終わった。重い物を運ぶという点においては男の子だけあって、私や梨花よりも遙かに能率が良い。
 私は圭一さんがロープをしっかりと張るのを見届けると、切り株に立て掛けておいたリュックからタオルを取り出し、圭一さんに手渡した。
 「おっ、サンキュな。」
 「帰りも背負って頂くのですから、お駄賃代わりですわ。」
 「もう弁当箱の空しか入ってねぇから、自分で持てよ・・・。」
 「をーっほっほっほ。私、箸よりも重たい物は持ったことがありませんことよ~♪」
 「さっき丸太ん棒抱えていたのはどこのどいつだよ。」
 愚痴を言いながらも、リュックを背負ってくれるあたり、圭一さんは本当に人が良い。
 本当に、口の悪ささえ無ければにーにーそのものなのに。いや、これは言い過ぎか。
 「さてと、帰るとするか。誰かさんのせいで汗だくだから、早くウチでひとっ風呂浴びたい気分だぜ。」
 「それには私も同感でしてよ。ベタ付いて仕方ありませんもの。」
 秋の半ばとはいえ、重労働をしていた私たちの体は汗にまみれていた。確かに、帰宅して早めのお風呂に浸かるのも良いだろう。
 「よっと・・・。忘れ物はないか。おや?」
 辺りを見回していた圭一さんが、何かを見つけて立ち止まった。
 目を凝らさなければ分からないと思うが、木立の合間からうっすらと、朱色をした二本の柱が見える。裏山から奧に連なる山脈へと続く、古びた吊り橋であった。
 「へー、こんな橋があったのか。トラップ作りに夢中で気づかなかったぜ。」
 「あら、圭一さんはご存じありませんでしたの?確か県境へと続いていたはずですわよ。」
 「面白そうだな。ちょっと見に行ってみようか?」
 「私は何度か渡ったことがありますけど、仕方ありませんわねぇ。」
 先程までの疲れ切った顔はどこへやら、圭一さんは目を輝かせて吊り橋へと向かっていった。男の子というものは、どうしてこう吊り橋とか断崖とか危険な場所が好きなのだろう。
 私は呆れた顔をして、走り去る圭一さんの後を追いかけた。
 
 

670:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:23:18 wjRfaFDd
 
 「うおっ、こりゃ結構高いな・・・。」
 谷河内から興宮に流れるこの川の渓谷は、驚くほどに深い。
 高所恐怖症の人でなくても、切り立った岩壁や清流に所々顔を出している岩を見ると、恐ろしさを感じるに違いないだろう。
 おまけに、予算不足か計算ミスか、この橋は良く揺れるし脇のロープの縛りも甘い。そのためか、向こう岸に渡る数十メートルの間が非常に遠く感じられた。
 「あらあら、流石の圭一さんも怖じ気付いてしまいましたこと?」
 欄干に手を掛けて下を眺める圭一さんを、いつもの癖で挑発してしまう。
 「へっ、橋があれば渡りたくなるのが男ってモンだぜ。噂じゃあ、来年公開されるあの考古学者の冒険映画の続編にも、吊り橋のシーンがあるって話だしな。」
 それに乗る形で、圭一さんが吊り橋に足を踏み出す。ぎしり、と綱が軋む音がして橋桁が揺れた。
 「へぇ、意外に揺れるな・・・。」
 中程まで来ると、圭一さんはロープに手をかけ下を覗き込んでいた。静かに後を付いてきていた私の心に、ふと悪戯心が宿る。そっと圭一さんの背後に近づき、無防備な背中に向けて手を伸ばそうとした。
 わっ、とでも言って驚かすつもりだった。驚いた圭一さんの顔を見たいと思っただけだったのだ。
 だから私の手が、圭一さんの背中に触れた瞬間。あの忌まわしい記憶が蘇るとは、想像だにしなかったのである。

 『死んじゃえぇぇ!!人殺しぃぃぃぃっっっ!!!!』

 え、え、え?
 何これ?
 こんなこと私はしていない。圭一さんを橋の上から突き飛ばすなんて、そんなこと・・・。

 (何をおっしゃっているのですか北条沙都子ッ!)
 (忘れてしまいましたの!?あなたが圭一さんに何をしたのかを!!)
 
 あああああああああ!
 やめて、やめてっ!思い出させないでぇッ!!
 圭一さんはここに居るんだ。だからするはずない、私が圭一さんを殺すなんてするはずがないぃぃッ!!

 (あは、あははははははは。本当にお目出度い人ですわね、あなたは。)
 (覚えていないのでいらっしゃいますこと?ここではない、どこか、しかし現実にあった世界のことを)
 (いいこと?あなたは圭一さんを橋の上から突き飛ばして、殺した。)
 (地獄を見せられていたあなたのために誰よりも尽くし、励まし、鉄平を殺すことまでした圭一さんを)
 (疑って、恨んで、最後には自分自身が生き残るために、殺した。)
 (本当は覚えているんでおいででしょう?自分が勘違いによって圭一さんを殺してしまったことを)

 いやああああああああああああああ!!!
 覚えている。私は覚えているッ!
 圭一さんに殺されると思った。「自分が呪った人間が死んでいる」との言葉を真に受けて、そして梨花が腹を割かれて殺されているのを見て。
 だからこの橋に誘い出した。背中を向けさせて橋から突き落とした。
 最後まで呪いの言葉を浴びせかけて。

 (それだけじゃありませんことよねぇ。あなたは三年前も殺していたんでしたわねぇ)
 (お義父様とお母様を、展望台の上から突き飛ばして、殺した)
 (あなたと仲良くなりたいために、家族旅行に連れて行ってくれたのですのよねぇ)
 (あなたに嘘を付かれてから、あなたに好かれようと、懸命に自分を変えようとしていたお義父様を)
 (自分を殺そうと思っている?を~っほっほっほ。そんな馬鹿げた妄想で殺されてしまったのですねぇ。可哀想なお義父様とお母様)
 
 うあ、うあ、うあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
 殺した、私が殺したッ!
 無防備な両親を、背中から、無慈悲に突き飛ばして、殺したッッ!!
 私がお義父様に意地悪したから、仲良くしようとして遠くに連れて行ったことを、私を殺す算段をしているのだと思って、先手を打った!!
 
 (ああ、そうだ。にーにーもあなたのせいでいなくなったんですっけ)
 (そうそう、叔母様のイジメからあなたを守るために庇ったから、疲れ果てて)
 (酷い人ですわね、あなたは。この人殺し。)
 (何が死んじゃえ、人殺しですの?あなたこそが、人殺しではなくて!?)

 えぁ、おぅ、を、をををををを。
 あああああああああああああっっ!!!
  
 

671:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:23:57 wjRfaFDd
  
 最初は、俺が振り向いた顔があまりにも恐ろしかったので、沙都子が驚いたのだと思った。
 そりゃあ、橋の上で突然背中に触れられたら誰だって驚いた顔をするだろう。
 しかし、沙都子の様子を見ると、その様子は俺の顔だけに驚いたものではないのだと、すぐに分かった。
 「さ、沙都子・・・?」
 俺は両手で顔を覆った沙都子の肩に手を置いた。その瞬間
 「ご、ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい圭一さんっ!!」
 俺の手が、強く打ち払われた。数秒遅れで痺れるような痛みが掌に伝わる。
 「ど、どうしたんだよ。いきなり?」
 沙都子の気に障ることでもしたのだろうか?俺は努めて優しく声をかけた。
 しかし、沙都子は俺を見据えたまま首を振るだけで、徐々に後退りを始めていた。あの、ごめんなさいという謝罪の言葉を繰り返しながら。
 「おい、沙都子。一体どうしたんだよ?俺、何かしたのか?」
 「け、圭一さん。近づかないで、私に近づかないで下さいましッ!」
 「ご、ごめんよ。気に障ったことをしちまったのか?」
 「違いますの、圭一さんは何も悪くございませんの・・・。悪いのは私なんですのッ!!」
 話が噛み合わない。俺は沙都子に何が起こったのか理解できず、戸惑うことしか出来なかった。しかし、次に発した言葉は、俺の混乱を更に加速させるものだった。
 「ごめんなさい、ごめんなさい圭一さん。圭一さんを殺した私を、どうか許して下さいましッ!!!」
 はぁ?沙都子は何を言っているんだ。俺を、殺して、ごめんなさいだと・・・?
 「ば、馬鹿言うなよっ!俺は生きてここにいるだろっ!?訳が分かんねぇよっ!!」
 本当に訳が分からない。何かの拍子で、沙都子は錯乱してしまったのだろうか。
 俺は沙都子に駆け寄り、その肩を強く掴んだ。「しっかりしろ!」と声をかけたかったのだが、その前に沙都子の叫び声が、俺の言葉を遮った。
 「い、嫌あぁあぁぁあぁぁぁッッ!!」
 想像以上の力で、沙都子は俺の手を振りほどく。あまりに勢いが付いたため、それが腿に当たって激しく音を建てた。
 「だ、駄目です圭一さん。私に近づくと、私はあなたに酷いことをする!だから私に近づかないで!!」
 「お、おい。俺は何もしない。何もしないんだ。だから落ち着いてくれよ。」
 「私がするのですッ!このままでは私はもう一度圭一さんを殺してしまうッ!いや、みんなを殺してしまうんだ。梨花も、詩音さんも、魅音さんもレナさんも羽入さんも、お義父様とお母様を殺した時のようにィッ!!」
 一際大きく叫んで沙都子が踵を返し、全速力で元来た方向へ掛けだす。
 「おいッ!待てよ沙都子!!」
 あまりにも一瞬のことで、伸ばした俺の手は空を切った。急な動きに橋が揺れ、バランスを崩した俺と沙都子との距離が開く。
 橋を渡り終えた時には、沙都子の姿がようやく見えるような状況だった。



672:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:25:20 wjRfaFDd
「沙都子、沙都子ぉーっ!」
 山道を全速力で追いかける。俺と沙都子との距離は、橋からわずかに縮まっていた。
 しかし、この場所は沙都子の庭みたいな場所であり、おまけに自衛隊お墨付きのトラップがあちこちに仕掛けられている。
 言うなればここは地雷原。文字通り「地雷を踏んだらさよなら、さよなら、さよなら・・・。」だ。
 だが、地雷の炸裂は意外に早くなってきた。それも、前を走る沙都子の身に。
 「あッ!」
 叫び声を上げて、沙都子が地面に激しく叩き付けられた。ほんの少し道を外れた所に仕掛けられたロープに足を取られたのだった。
 「お、おい。大丈夫か!?」
 「ひッ、圭一さん!・・・あああ、ごめんなさい。ごめんなさい!!」
 助けようと駆け寄った俺を見ると、沙都子はもつれる足で立ち上がり、さらに走り出した。衝撃のせいで血が滲み出ている膝小僧が痛々しい。
 だが俺は、沙都子が自分で作ったトラップに引っかかった事に衝撃を覚えていた。
 この地雷原を誰よりも理解しているはずの沙都子が、混乱のために恰好の餌食となっている。普段言っていたじゃないかよ『相手が混乱すればするほど、トラップは華麗に決まるものですわ~♪』って!
 沙都子、お前が混乱しちゃ駄目だろ・・・!
 俺の心配をよそに、沙都子は次々とトラップに引っかかっていった。
 丸太落としのロープに足を引っかけて下敷きになりそうになるわ、落とし穴に寸手の所で落ちそうになるわ、胡椒入りの袋の直撃を受けるわ・・・。
 竹林に偽装した武者返しのトラップに掛かりかけた時は、流石に肝を潰した。誰だよ、あんな竹の槍襖みたいなモンを教えたヤツは!刺されば下手すりゃ死ぬぞ!!
 
 幸か不幸か、トラップのおかげで沙都子の足が遅くなってきた。かつて山狗のリーダーと魅音が一騎打ちをしたあの小屋の近くで、俺は沙都子に近づくと、ラグビーのタックルをするような感じでその腰に飛びついた。
 ザッ、と音を立てて、二人の体が地面に倒れ込む。庇うように沙都子の体を抱え込むと、埃を吸い込まないよう、背中を地面に付けるようにした。
 「いっ、嫌あぁぁっ!!離して、離してェッ圭一さんッッ!!」
 戒めから逃れようと、沙都子は手足と体を必死で動かした。それを押さえるため俺は沙都子の手首を掴み、足を膝で押さえて馬乗りの形になった。
 「くうっ!」
 それでも、沙都子の爪が俺の手首辺りに食い込む。激しく立てられた爪が肌を抉る嫌な感触がした。
 しかし離すわけには、これ以上沙都子をトラップの海に放つわけにはいかない。俺は痛みに耐えながら沙都子を正気に戻すべく、声を掛けた。
 「へへっ、捕まえたぜ。もう、逃げられねぇぞ・・・。」
 落ち着かせるために、努めて普段通りを装う。その甲斐あってか、沙都子の焦点が俺の目に合わさった。

 
 

673:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:26:18 wjRfaFDd

 捕まってしまった。
 私は必死に圭一さんの手に爪を立て、この場を何とか逃げようとした。
 だって、そうしないと私は圭一さんを殺してしまうのだ。今は良くても私という存在がある限り、私に関わった人は不幸になる。
 両親も!にーにーも!梨花も!みんなも!そして圭一さんも!!
 私は狂ってしまって、いずれみんなを殺してしまうんだぁぁ!
 「へへっ、捕まえたぜ。もう、逃げられねぇぞ・・・。」
 そんな私に、普段と変わらぬ圭一さんの声が聞こえた。何故?私に抵抗されて、爪を立てられて痛くてたまらないはずなのに、どうして?
 私は圭一さんの顔を覗き込んだ。遊んでいる時と同じ、悪戯っぽくて優しい顔。
 だが、口元が歪んでいる。耐えているのだ。私によって与えられている痛みに、耐えているのだ・・・!
 「けい、いちさん。」
 指から力を抜く。爪の間に圭一さんの血肉がこびり付いた感触がある。
 「いきなり、どうしたんだよ。闇雲に走っちゃ危ねぇぞ。」
 言われてみて初めて、体のあちこちに鈍痛があるのを感じる。覚えているはずのトラップの位置が思い浮かばず、引っかかってしまった時に出来た傷の痛みだ。
 「だ、駄目ですわッ。私に近づいては!私は圭一さんを殺したくないんですのッ!!」
 「いい加減にしろ沙都子ッッ!俺を殺すとか、近づけば不幸になるとか何言ってんだよ!!」
 「・・・私は覚えているんですの。ここではない、でもここに良く似た世界で、私は圭一さんを殺してしまった!この手で、お義父様とお母様にしたように、突き飛ばしてッ!!」
 「え?何だって・・・!?」
 圭一さんの目が驚きに見開く。
 何という、失言。私が一生抱え続ければならない罪が、圭一さんに知られてしまった。
 人類最大の罪悪、親殺しの罪。
 「嫌ああああああああああっっっ!!!」
 私は思い切り体を動かす。思いもよらない言葉に衝撃を受けたのか、圭一さんの膝からは力が抜けており、案外簡単に足が外れた。
 その足が、正確には膝が偶然にも圭一さんの鳩尾に入る。
 「ぐふっ!」
 圭一さんの両手から力が抜ける。私はその手を振り解くと崩れ落ちる圭一さんを尻目に、元来た道へと駆け出した。
 もう、終わりだ。
 私が一番秘すべき罪を、一番知られたくない人に知られてしまった。それはこれまでの関係の終わり、「友人としての沙都子」から「罪人としての沙都子」への変化を圭一さんに強いること。
 ごめんなさい、圭一さん。私はこれから罪を償いに行きます。
 関わった人間を不幸にする、本当の「オヤシロさまの使い」は消えるべきなのです。
 もう一度あなたを不幸にする前に、私は自分自身に決着を付けます。
 にーにー。もう一人の私のにーにーを守るために、私に力を貸して・・・。  
 
  




674:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:27:01 wjRfaFDd
  
 迂闊だった。俺ともあろうものが、あんな事でショックを受けるなんて・・・。
 リュックを捨て、痛む腹を押さえながら、俺は沙都子の追跡を再開していた。
 沙都子は元来た道を戻っている。その歩みは遅いが俺も先程の一撃で力が出ず、追い掛ける速度は沙都子とさほど変わらない。
 
 『ここに良く似た世界で私は圭一さんを殺してしまった!』
 『お義父様とお母様にしたように突き飛ばしてッ!』

 さっき沙都子が言った言葉が蘇る。
 ここと良く似た世界・・・。前に梨花ちゃんが言っていた別世界での出来事ということか?
 今、俺達の目の前にあるように、本来世界というものは一つしかないものだ。この世界での出来事は歴史となり、この世界での死はそのまま存在の永遠の喪失となる。
 しかし梨花ちゃんによれば、世界というものは一種のゲームにおける選択の内、最終的に選択されたものの積み重ねなのらしい。
 親父の持っている「信長の野○」(今年の四月に発売)というゲームに例えてみよう。あのゲームはプレイヤーの選択と、コンピューターがランダムに選択した行動により展開が様々に変化する。
 それでいて途中経過を記録することができ、結果に満足のいかないプレイヤーは保存した記録から世界のやり直しが可能となるのだ。
 ここで問題となるのは、プレイヤーが記録しなかった世界はゲームの登場人物にとって存在しない世界となるが、当のプレイヤーにとっては、かつて存在した世界として記憶に残っているのだということである。
 梨花ちゃん(もしくはその上の存在)をプレイヤーとするならば、俺達のようなゲームの世界の登場人物が、起こりえなかった世界の記憶を持つことは本来ありえない話なのだ。
 そのありえないことが、沙都子に起こっているということなのか・・・。
 もしもそれが幸せな世界の記憶だったら、沙都子にとって幸福だったのだろう。しかし、蘇ってしまったのは俺を殺したという悪夢のような世界の記憶。
 胸が痛んだ。俺にも忘れたい、思い出したくもない忌まわしい記憶がある。
 無力な幼女達を狙った連続襲撃事件。その記憶を無理やり蘇らされる羽目になるなんて、考えたくもない。
 加えて、別の世界での記憶は両親を突き飛ばして死に追いやったという、封印されていた記憶まで揺り起こしてしまった。
 二年目の綿流しの祟りと言われるあの出来事について、俺は断片的な情報しか知らない。しかし、梨花ちゃんや大石さん、監督に赤坂さん達の話を総合して考えると理解できる。
 その真相は、雛見沢症候群による疑心暗鬼が引き起こした悲しく、残酷な事件。
 沙都子は自分の身を守ろうとしただけのことだった。しかしその目的は、両親を死に追いやるという最悪の形で敢行されてしまったのだ。
 気づけば、俺の目に涙が浮かんでいた。
 遠い、うっすらとしか覚えていない記憶。
 俺にもそういうことがあったのかもしれない。殺されると思って、俺を救おうとした仲間を逆に殺してしまった喜劇にも似た悲劇。
 思い出せないが、知っている。俺はその悲しみを!辛さを!苦しみを知っている!!
 「そうなんだよな、お前が一番、辛いんだよな。沙都子・・・。」
 多分、沙都子の悲しみを癒せるのは俺しかいない。いや、俺が癒す、救う、絶対に助け出して見せるッ!!
 沙都子に殺されたという世界の俺も、同じことを考えるはずだろう。例えもう一度殺されるのだとしても、あいつの笑顔を守るためならば、惜しむものはないッ!!
 
 

675:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:28:37 wjRfaFDd
 吊り橋に戻った頃には、俺と沙都子の距離は大分縮まっていた。しかしあと一歩のところで、橋桁への進入を許してしまう。
 橋の真ん中に至った所で沙都子はこちらに向き直り、脇のロープを握り締めた。俺との距離はあと三歩といったところか。
 「圭一さん。もう来なくてようございましたのに・・・。」
 沙都子が力なく笑った。その笑顔には全く精気が無くて、まるで人形のような瞳をしている。
 「でも、最期の最期で、圭一さんのお顔が見れて幸せでしたわ。本当に、良かった。」
 目を閉じて、すっ、と沙都子がジャンプする。その動作はまるで垣根を乗り越えるようで、本当にあっけなかった。
 「さよなら、にーにー。」
 消える間際の沙都子の声が、俺がお前のにーにーだと認めてくれたその声が、幸せそうに響いた。

 
 

676:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:29:16 wjRfaFDd

 ほんの少しの浮遊感。あとは自然落下に任せてはい、おしまいのはずだった。
 しかし、最後までロープを掴んでいた左手が離れるのが一瞬遅くて、その手首が強い力で引っ張られた。
 「に、にーにーッ!!」
 死ぬまで開くことがないと思っていた私の目に映ったのは、信じられない光景だった。
 脇のロープを右手で掴み、圭一さんが私の手首を堅く握り締めている。身を乗り出すという段階ではない、私と同じように全身がロープの外にあったのだ。
 「くっ、間一髪ってとこかな・・・。」
 手を伸ばしただけでは届かないと思ったのだろうか、圭一さんはロープの隙間から飛び込んだのだ。一歩間違えば自分が飛び降りる羽目になるというのにッ!
 「駄目です、手を離して下さいましッ!このままではにーにーが・・・。」
 「い~や、駄目だ。上がる時は沙都子、お前と一緒だぜ。」
 重いわけではないが、私の体重は圭一さんの半分以上はある。この状況が長く続くわけが無かった。
 私は圭一さんの手を振り解こうとした。私が落ちることで、圭一さんの負担を軽くする必要があった。
 しかし、圭一さんの手は堅く握られており、放す気配も無い。逆に私が暴れることで圭一さんが力尽き、巻き込む恐れがあった。
 やむなく、私は抵抗を止めて圭一さんに身を任せた。
 「どうして、どうしてッ!私みたいな疫病神、死んだ方が良いのですわッ!!」
 「馬鹿野郎。沙都子が死んだらなぁ、みんなが悲しむんだよ。何より一番、俺が悲しい。」
 「駄目ですわ、私が生き残ったら圭一さんに、にーにーに不幸が降りかかる。そんなのは嫌なんですのッッ!」
 「沙都子。お前ぇ、勘違いしてねぇか・・・。」
 「え?」
 「お前がいなくなること以上の不幸なんて、俺にはないんだよォッ!!」
 咆哮と共に、私は物凄い力で圭一さんに引っ張り上げられた。徐々に私の体が持ち上がっていき、圭一さんの胸元まで引き上げられる。
 「つ、掴まれ、沙都子・・・。」
 圭一さんの言葉に、思わず手を圭一さんの首に回す。厚いとはいえない圭一さんの胸元に顔を沈めると、柔らかな香りがした。
 「けっ、これ以上上げるのは、無理みてぇだ。『火事場のクソ力』って訳にはいかねぇなぁ・・・。」
 「も、もう充分でございますわ、にーにー。私をお離し下さいまし!それなら、にーにーだけは助かりますわ!」
 「ば~か。俺は欲張りなんだよ。俺も沙都子も助からねぇと、満足出来ねぇんだよ。」
 そこまで言うと、圭一さんは顎で橋桁を指して私に昇るよう促した。
 死ぬのは構わないが、圭一さんを巻き込む訳にはいかない。仕方なく私は圭一さんの体をよじ登ると、ロープを潜って橋桁に辿り着いた。
 「さっ、圭一さん。手を・・・。」
 すぐに圭一さんに振り返る。圭一さんは両手でロープを握っていたが、その手が既に震えていた。残された時間は少ないのだ。
 手を伸ばした時、私は圭一さんが微笑んでいるのに気づく。諦観の入ったその笑みに、私は不吉な感触を覚えずにはいられなかった。
 「沙都子、お前じゃ支えきれねぇだろ。それにもぅ、手の感覚が無ぇんだ。」
 残酷な宣告だった。私を支えるのにすら苦労した圭一さんだからこそ分かる冷静な分析。
 「そ、そんなッ!圭一さん!何とかならないのですのッ!?」
 「無茶言うなよ。これでも、無理してるんだぜ・・・。」
 苦しげな圭一さんの声、伸ばしても決して受け取ろうとはしない、頑なに閉じられたその両手。全てが私の心を突き刺す。
 「あああああっ!私のせいで、私のせいでこんなぁ・・・。」
 「泣くなよ、沙都子。俺が消えても、笑っててくれ。新しい生活を迎えて、笑ってくれ。それだけは、約束してくれ・・・。」
 思い出す。最期の、あの時の圭一さんの言葉を。私に突き落とされて、殺される直前にも私のことを思ってくれていた圭一さんの言葉を。
 私の心がこれ以上傷つかないように、怖がらせないように、落ちる時まで笑っていた圭一さんの顔を。
 繰り返すのか、私は。圭一さんを目の前で失うことを。両親を失うことを繰り返すのか!?
 もう嫌だ!もう、自分の目の前で人が死んでいく様を見ることは、もう嫌だぁぁぁぁっ!!
 「うわあぁぁぁぁぁぁっ!!」
 圭一さんの手が離れた瞬間。私はロープに足を絡め、圭一さんの右手をしっかりと掴んだ。
 圭一さんが私に離すよう叫ぶが、聞こえない。離すもんか、絶対に離すもんか。
 「もうにーにーを殺すものかぁぁッ!二度と、私は二度と失わないんだああっ!!」
 どんなことがあってもこの手を離さない。疑うのならば試してみろ、この北条沙都子の覚悟を試してみろォォッ!!

 
 

677:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:30:02 wjRfaFDd
 
 必死になって俺を支える沙都子を見て思う。
 出来るじゃないかよ。お前、人を救おうとしているじゃないか、罪を償おうとしているじゃないかよ・・・。
 しかし、人間の力には限界がある。苦痛に顔を歪める沙都子に、その限界が近づいているのは明らかだった。
 「畜生ォォッ!誰か、俺はどうでもいいッ!沙都子を、沙都子を助けてくれぇっ!!」
 来るはずの無い助けを求める声が、山中に響く。神様でも、悪魔でも、オヤシロさまでもいい!誰か沙都子を助けてくれぇ・・・。
 全てのものに俺が祈った瞬間。奇跡が起きた。
 「どうしたんだっ!」
 近くで響く、力強い男の声。さらに俺が叫ぶと、まるで機関車が走るような地響きが近づいてきた。
 「「富竹さんっ!!」」
 まさか、ありえない。沙都子を抱え上げた姿を見るまでは信じられなかったが、その頼りなさそうな顔は正しく富竹ジロウさんだ。
 「沙都子ちゃんは大丈夫、次は圭一くんだね。三四さん!手を貸してっ!」
 信じられないことに、鷹野さんまでそこにいた。俺達との戦いの後、行方知れずになっていたのに、どうして・・・?
 「よっと・・・。もう、大丈夫だね。驚いたよ、こんな所で二人がぶら下がっているなんて。」
 橋桁に足が付いて始めて、俺は自分が助かったことを実感した。腰が抜けたような気がして思わずその場に座り込む。
 少し向こうでは、鷹野さんが沙都子の介抱をしていた。沙都子自身も突然の再会に戸惑っているようで、目を白黒させている。
 「本当に、有難うございます、富竹さん。もし、富竹さん達がいなかったら・・・。」
 「いやぁ、人の命を救うのが自衛官の使命だからね。礼には及ばないよ。」
 照れ隠しに笑う富竹さんに、この場所にいる理由を聞いてみた。何でも、鷹野さんのリハビリを兼ね、偶然この辺りを散策していたらしい。
 戦いが終わった後、鷹野さんには雛見沢症候群の発症が認められたらしく、現在は入江診療所で秘密裏に治療を受けているということだった。
 謹慎に近い形で外出もほとんど許されていないそうだが、富竹さんが来た時は尋問のためという名目で、このように気分転換をかねて遠出をすることが許されているそうだ。
 理由はともかく、本当に助かった・・・。
 「そうね。罪というものを償うことなんて、本当は出来ないのかもしれない。」
 富竹さん持参の魔法瓶に入っていたコーヒーを飲んでいると、鷹野さんと沙都子の話が聞こえてきた。
 鞄の中から消毒液を探す富竹さんを尻目に、その話に耳を傾けてみる。
 「罪を償っても死んだ人は、お義父様もお母様も帰ってきませんわ。それならば、私はどうすれば許されるんですの・・・!」
 「ねぇ、沙都子ちゃん。罪の償いと言うものは、許されるためにするものなの?」
 「それは、違うのですか?」
 「許されないならば、罪を償う必要はないの?私は許されなくても、罪は償い続ける必要があると思うの。許すべき人がいないならば、尚更の事とおもうわ。」
 「許されることがないと分かっていてもですの?」
 「ええ。沙都子ちゃん、私の手はあなた以上に血みどろよ。直接手を下さなくても、多くの人の命を私は奪った。死刑台に登れと言われても、何の弁解の余地はないわ。」
 「死刑台・・・。」
 「でも、死んで許されるほど、私の罪は甘くない。それこそ百回死んでも足りないかもしれないわ。それでも沙都子ちゃん、私は自分が断罪されるその日まで生きてやろうと思うの。」
 「許されなくても、生きるのでして・・・?」
 「私を殺したいという人がいたら、いつでもこの命を差し出す覚悟は出来ている。でもその直前まで、私は自分が選んだ贖罪の道を進んでいくつもり。」
 「許されるためではなく、償うために生きるということですの?」
 「それはとても険しい道よ。でも、私は一生この十字架を背負って生きる。私のしたことで罵倒を受けるならば甘んじて受けるし、牢屋にだって死刑台にだって行っても良い。それでも」
 ふと、鷹野さんが富竹さんを見る。その目はとても優しくて、俺達と戦った時からは考えられないほど澄んだ瞳だった。
 「私を支えてくれる人が、大切な人が求める限り、私は自分からその命を投げ出そうとは思わない、どんな罪悪感に苛まれても、人としての生を全うしていこうと思うの。」
 「・・・・・・。」
 「自分の罪に背を向けないで、ずっと見つめていくのは辛いことよ。でもね、一人では重すぎる荷物も、傍にいてくれる人が居ればきっと耐えられるから。」
 鷹野さんの目が俺に向けられる。何を言いたいのかが痛いほど伝わり、俺は鷹野さんに力強く頷き返した。


 

678:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:30:52 wjRfaFDd

 送ろうかという富竹さん達の誘いを丁重に断り、俺達は小屋の前まで戻ってきた。捨てたリュックを取りに戻る必要があったし、今は落ち着く時間が必要だった。
 小屋の扉を開けると、埃っぽい臭い。元々は営林署の機材置き場だったというこの小屋は、今現在使われていないため沙都子の別荘のようになっていた。
 備え付けの毛布を敷き、並んで座る。見渡すと、四畳半ほどある室内に、トラップに必要な機材や備蓄用のお菓子等が置かれている。
 それ以外は証明用だろうか、古びたカンテラが棚に座っていた。
 「大丈夫か、沙都子。」
 富竹さん達と別れてから思うことがあったのか、沙都子はあまり喋らなかった。もしかして痛みがぶり返したのかと心配になる。
 「私は大丈夫ですわ。それよりも。」
 沙都子は俺の手首を見た。爪で抉られた傷が、生々しく残っている。
 「あ、ああ。これか。んなもん、唾つけときゃすぐ治るよ。それよりも、俺は・・・。」
 「唾を付ければ治るんですの・・・?」
 沙都子の膝の事を言おうとしたのだが、俺の言葉を遮って沙都子が俺の手を取る。顔が間近に迫って、心音が高鳴った。
 「って、おわっ、沙都子ッ!?」
 手首にわずかな刺激と、そして湿り気を帯びた粘着感があった。沙都子が俺の傷口に唇をつけ、舌を這わせたのだった。
 ちろちろと、赤く染まった傷口に桜色をした沙都子の唇が重なり、舌がそれを優しく舐める。
 手首に対するキス。一つ一つ丹念に舐め取る沙都子の唇にはとても色気があって、俺はしばらく放心していた。
 「ん・・・。私のせいで、こめんなさい、圭一さん・・・。」
 贖罪の言葉を告げながらの口付け。ぞわぞわと背中から背徳感が込み上げてくる。
 「気にするなよ。俺だって沙都子に、怪我、させてる・・・。」
 俺は沙都子に膝を立てさせた。すりむいた膝小僧は鷹野さんに消毒してもらっているが、包帯も絆創膏もしていないためか、また赤く滲んでいた。
 その膝に、沙都子がしたように口付ける。やはり刺激があるのか、沙都子がわずかに声を漏らす。
 普段は嫌悪感しか覚えない血の味だが、沙都子のものだと思えば甘さすら感じる。ほんの少し吸血鬼の気分が理解できる気がした。
 薄暗い小屋の中で傷口を舐めあう俺達。それは体だけじゃくて、心の傷を舐めあうということでもあった。
 「沙都子。もう、死ぬなんて言うなよな。」
 傷口を舐めながら、沙都子に囁く。
 「さっきも言ったけど、お前がいなくなること以上の不幸は俺にないんだからよ・・・。」
 「・・・私にとっても、圭一さんがいなくなること以上の不幸はありませんでしてよ。」
 「ははっ、じゃあお互いいなくならなきゃ問題ないってことだ。」
 傷口から唇を離して、沙都子を見つめる。沙都子はまだ手首へのキスを続けていたが、俺の視線に気づいてキスを止め、目を伏せた。
 「でも、私は親殺しの犯罪者で、雛見沢症候群の患者で、とんでもない人間なのですわ、こんな人間-」
 「馬鹿っ!」
 沙都子の自己嫌悪をこれ以上聞きたくなくて、俺は沙都子を抱きしめた。思ったよりも小さな、それでいて柔らかな体が密着する。
 「あ・・・。」
 電撃に遭ったかのように、沙都子の体が震えた。拒否ではなく、嬉しさで、自分を受け止めてくれる人を見つけた喜びによって。
 「お前がどんな人間でも、俺はお前の傍にいる。お前が泣いていても、俺がすぐ笑わせてみせる。駄目なんだ。俺はお前が笑っていないと駄目なんだ。」
 「圭一さん。私、生きていてもいいんですの?私笑っていてもいいんですの?」
 「ああ、どんな奴がお前を罵ろうとも、お前を不幸にしようとも、俺だけは傍にいるぜ。だから沙都子、俺だけのためでもいいから、生きると言ってくれないか。」
 「圭一さん、圭一さんッ!!私、生きます。お義父様やお母様、にーにーに謝りながらでも生き続けてやりますわっ!う、うぅ・・・うわああぁぁぁぁぁん!!」
 堰を切ったかのように、沙都子はこれまで我慢していた涙を流した。こんな小さな体でとても重たい十字架を背負っていたんだ。我慢した。よく我慢したんだよな、沙都子。
 俺は泣くだけ泣いた沙都子の涙を拭い。思い切りその頭を撫でてやった。
 その、撫でられて微笑む沙都子の顔があまりにも可愛いかったから、何の予告もなしに、俺は沙都子の唇にキスをしてしまったんだ・・・。


 
 

679:トラップバスター ◆CoudB9M4c2
07/10/26 11:31:36 wjRfaFDd
 
 ファースト・キスがこんな形で奪われるとは思ってもいなかった。もっと、こう、優しく。お互いの了解を得て行うものだと思っていた。
 萎んだゴムのように圭一さんの唇は私の唇に絡みつき、不器用に動く。全然ロマンチックじゃない、無骨そのもののキス。
 でも、嫌じゃない。シチュエーションに違いこそあれ、相手は私の理想とする人だったのだから。
 
 良かった。相手が圭一さんで。そして、圭一さんが私の罪を全て知っても私を受け入れる人で良かった。
 鷹野さんが語ってくれた罪に対する償いの姿勢。許されるために償うのではなく、償うという覚悟を貫いて生きるということ。
 本当に辛い、苦難の道。きっと私の人生が終わるまで続く終わりの見えない旅。
 でも、その旅を支えてくれる人がいる。一緒に十字架を支えてくれる人がいる。それは罪深い私に起こった奇跡。
 私はこれからも周りの人を不幸にする運命なのかもしれない。だが、圭一さんが傍に居れば、その運命すら打ち破って見せてくれる気がする。
 
 「圭一さん。も、もう少しだけ下ですわ・・・。」
 日が傾きかけてきた頃、私は一糸纏わぬ姿で圭一さんを受け入れようとしていた。
 背中には乱雑に脱ぎ捨てられた私と圭一さんの服と下着があり、目の前には分身に手を当てて私自身に沈み込もうとする圭一さんの姿がある。
 「こ、ここか・・・。」
 何度目かの挿入に失敗し、圭一さんは焦りの色を隠せないようだった。朱色に染まった太い圭一さんの分身が、何も生えていない私の恥丘を滑っていた。
 「大丈夫ですわ、こうすれば・・・。」
 自分でも驚くほど淫らに、男性を受け入れる部分に指を当てて広げる。何も隠すものがない私の女性自身が圭一さんに晒されていると思うと、形容しきれない快感が私の中に込み上げてくる。
 『時には情婦のように』という歌があるが、私は圭一さんのための娼婦になることに、何の抵抗も無かった。
 「いくぞ、沙都子・・・。」
 痛みと共に、圭一さんが侵入してくる感触があった。ほんの少し、先端が埋没しただけで全身を引き裂かれるような衝撃がある。
 「だ、大丈夫か。沙都子!?」
 「く、思ったよりは痛くございませんわね・・・。もっと、奧によろしいですわよ・・・。」
 嘘だ。母がこんなものを好んでいたとは信じられないくらいに痛い。
 圭一さんが私の奥底に入り込むため腰を進めるが、その度に激痛が走る。見ると私と圭一さんが繋がっている部分からは、うっすらと血が滲んでいた。
 「おい、我慢するなよ。痛いんだろう!?」
 「だ、大丈夫ですわ。この程度の痛みなんて、痛みなんて・・・。」
 歯を食いしばりながら答える。圭一さんのためなら自分の全てを捧げる覚悟はとっくに出来ていた。圭一さんが望むなら、命だって差し出しても構わないんだから・・・ッ!
 だが圭一さんは、私の膣内からゆっくりと分身を引き抜いた。粘液と血液の混じったものが、夕日を受けて輝く糸を引く。
 「け、圭一さん・・・。」
 私では、幼い私の体では圭一さんを満足させることが出来なかったのだろうか?
 落胆に私の顔が曇る。そんな私の頭に、圭一さんの右手が伸びた。
 「沙都子、俺も初めてだからよく分かんないけど、こういうのってお互いが気持ち良くならないと駄目だと思うんだ。」
 いつものように、温かい手の平が私の頭を優しく撫でる。それだけで、私は全身が悦びで満たされていくのを感じた。
 圭一さんは、母を抱いていた男達とは違った。あの連中ならば、欲望のためなら相手の事も考えず、ただ腰を振り続けただろう。
 しかし、圭一さんは快楽を目前にしても私のことを気に掛けて、その欲望を抑えた。
 男の欲望を嫌と言うほど知らされた私だから、その決断にどれだけの重さがあったのかが分かる。
 思春期の男子というものについては雑誌くらいでしか知らないが、女の子の事が欲しくて欲しくて、たまらなくなるらしい。
 そんな時に、目の前に自分から求めてくる女の子が居る。それは空腹時にご馳走を出されたようなものだ。
 しかもそれは初めての体験。誰もが夢見る大人の世界への甘く、甘美な扉だ。
 だが、後少し進めば得られる快感を前にして、圭一さんは行為の中止を選んだ。自分の欲望よりも、相手の身を案じる道を選んでくれたのだ。
 本当に、圭一さんの心遣いが嬉しい。でも、私だって相手に悦んでもらいたいんだ・・・。
 
 
 


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