07/09/16 11:21:14 Kb4YnXze
しばらくして、体の不調を医者に診てもらった夏妃は、待望の懐妊を告げられた。
その子の父は金蔵なのだろうか。それとも蔵臼なのだろうか。それはたぶん夏妃にもわからない。「あの夜の後、夏妃は懐妊した」。それだけが事実だ。
だが半年後、だいぶ大きくなったお腹を撫でながら、夏妃がこう言っていたのを源次が聞いている。
「この子はきっと女の子です」
その目は母になる者特有のやさしさに満ち溢れていたが、なぜかそれが自分にはおそろしかった、と後になって金蔵は源次から聞かされた。
「この子は、魔女様の思し召しで授かったのですから。魔女になれるのは女だけ―だからきっと、この子も女に違いありません」
あれは母でありながら、魔女の目でした。源次にそう言われ、金蔵は瞑目し、心の中でこう問うた。
愛しき魔女、ベアトリーチェよ。これでお前の願いは叶ったのか、と。
end(7レスでおさまっちゃいました。計算ミス失礼)