【涼宮ハルヒ】谷川流 the 52章【学校を出よう!】at EROPARO
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 52章【学校を出よう!】 - 暇つぶし2ch400:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:16:34 UNrIsoAb
 おっと。
 回想にかまけて我が妹を放っておいてしまった。
 妹は俺が気付くのを待っていたのか、椅子に座ってくるくると回りながら、ごはんーごはんー ほかほかごはんー♪
 よーくかんでーぜーんぶたーべーよー♪ と幼児番組で流れるような歌を歌っている。
 嗚呼、妹よ。君は来年、中学生の筈だよな?
 だのになぜ、もしもお前の横に大きな犬の着ぐるみとかが居たら、さぞかしお似合いだろうな、とか思えるんだろうね?
「はやく行かないとごはんさめちゃうよー」
 分かった分かった。
「はんばーぐーにー、れんこんさーん♪ くずきりしおさばやきなすびー♪ かくしあじにはあわもりだー♪」
 どういう献立の歌だ。
 と、俺がベッドから立ち上がっても、何故か妹は椅子に座ったままである。
「行くぞ」
「いこー!」
「いや、だから行くぞ」
「つれてって」
 妹は足をぱたぱたさせながら両手をばんざいしている。
「……」
 俺は考えるのをやめ、妹の両脇に手を差してだっこした。
「ふみゅ」
正面同士で抱き合う形のために胸を圧迫されたのか、腹を押すと音の鳴るぬいぐるみの様な声を出す妹。
「苦しいか?」
「んーん。きもちいいの」
 意味が分からん。
 肩にあごを乗せてだらりと弛緩している妹を抱きかかえたまま、俺は部屋を出た。
 さっきまであれだけ騒いでいた妹だが、だっこされた途端に静かになる。
 呼吸も何かとてもゆっくりだ。
 眠いのか? と思える様な呼吸である。
 ところで今の妹の格好、シャミセンに似ているよな。奴も抱き上げると餅が伸びたみたいになるし。
 で、どうでもいいが妹よ、洗濯板とはこの事だな。
「ひどーい! キョンくんのえっちー。でも、もっと大きくなったらさわりごこちよくなるもんねー。ちゃんと
もませてあげるからまっててね」
 さらりと爆弾発言を放つ妹であった。
「わたしがいったらー、ミヨキチもそうしたいようなかおしていたからーだからー、いっしょにさわってね」
 寝言は寝て言えまちがっても両親の前でそういう話をするな思いこみでも聞き間違いでも何でもいいからとにかくとにかく言うなよ!
 黙れ、とばかりに妹を抱きかかえる腕に力を込めたが、「んにゃん」とむしろ艶のある声をあげやがった。
 ま、どうせ戯言だ。すぐ忘れるさ。
 俺はため息と共に台所へと向かう事にした。
「ふーなずし、おーしずし、かりふぉるにあろーるー…♪」
 だから力が抜けるから、耳元でその阿呆ソングを歌うなと言うに。
 まぁ、さっきまでの声と比べると、歌詞はともかく歌い方は子守歌の様な静かな口調なのが幸いだが。
 その後の夕食は、当たり前だが普通だった。
 食い慣れた、しかし飽きの来ない母親の料理を食べながら平和な時が流れる。
 俺はいつ頃から、こういった日常の平穏に涙が出そうな程敏感になったのかね。
「そうだ、キョンくん、ひとつおねがーい」
「何だ? ピーマンは食ってやらんぞ」
「たべてほしいけどぉ、ちがうよー」
「じゃ何だ?」
「あのね、ミヨキチのおかあさんがね、このまえころんであしをこっせつしちゃったの」
 そう言いながらさりげなくピーマンをよこすな。
「そりゃ大変だ。大丈夫なのか?」

401:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:17:49 UNrIsoAb
 俺はピーマンを箸に取り、警戒心のかけらもなく開いている妹の口につっこんだ。
「うん、だからね、あさっておみまいにいくんだもぐもぐ、にがいー」
「あさって、と言うと土曜日か。そうか、お前はミヨキチに普段からお世話になっているんだから、ちゃんとお見舞いするんだぞ」
「うん! それでね、どんなおみまいをもっていったらいいか、しらべてほしいのもぐもぐ…やっぱりにがいー!」
「俺が? まぁいいが、自分で調べた方がいいんじゃないか?」
「ううん、それでね、キョンくんからってことでわたすの。ミヨキチもミヨキチのおかあさんもよろこぶよもぐもぐ…たべちゃった」
 そりゃ良かったじゃないか。
「…つまり、俺にお見舞いを買ってこいと?」
「えへへー」
 妹がお願い、と首をかしげて手を合わせる。
「…まぁ、他でもないミヨキチの事だからな。それくらいなら俺もむしろ喜んで選ばせて貰うさ」
「キョンくんありがとー! ミヨキチもよろこぶよ! …けふ」
 ああ、良かったな。よろしく言ってくれ。それとげっぷはもう少し目立たない様にやりなさい。
「えー、それはへんだよー」
「何がだ?」
「いっしょにいくんだから」
「は?」
「えー、ミヨキチのおかあさんのおみまいだよ? キョンくんもいかなくちゃおかしいよぉ! おかしいおかしいー!」
 何がだよ! いや、まぁミヨキチも母親が入院しているなら不安だろう。
 俺が行っても言葉をかける事くらいしか出来ないが、それでもいいなら喜んで付き合うぞ。
「わーい! キョンくんとおでかけー!」
「お見舞いだろうが」
「てへ」
 ところで妹よ、お前の言動は何となくだが、漢字が一文字も含まれて無い様な気がして聞き取りにくい。
 ちゃんと相手が聞き取れる様に発音しないとコミュニケーションとか色々困るぞ。
「キョンくんがわかればいいもーん」
 良くねぇよ。
 それと母上。貴女も笑ってないでもう少しこの戸籍年齢に対して肉体、精神年齢共に未熟な妹に少しでも危機感を持ってください。
 いや、あんたが居るからいいわよ、じゃなくて。
 と、この様な感じで放課後の超局地的ハリケーンから精神的サルベージを経て、疲れ果てた心を落ち着かせ明日への滋養
を得る為の筈の我が家の夕食は、まるで学校で駄目な親子に説教する教師みたいな空気になり、その後の風呂もようやく本当に
一人になれるかと思いきや、妹がものすごく当然の様に予告無く入って来て、体を洗うだの洗ってだのくすぐったいだのここ堅く
なっているよだのあげくの果てにはのぼせたとか言ってよりかかってくるわそれを抱きかかえてあがらせて体拭いてやって下着は
おろかパジャマまで着せるわベッドに寝かせてやるわ思い出したくないがさびしいからおやすみのちゅーしてとか言い出してなんとか
おでこで許して貰ったとか色々あって、結局風呂ですら俺が落ち着く事は無かった。
 誰か頷いてくれ。
 風呂って普通一人で入るよな?
 な?
 俺はため息と共にベッドに倒れ込む。
 ああ、俺の高校生活に置いて本当の安息時間はとうとう睡眠時のみになってしまったのだろうか。
 神よ、これは何のカルマなのだ?
 前世の俺は釈迦か仏陀かガンジーか何かか?
 ならば、なんとしてもこの最後の安息時間だけは守らなくてはならない。
 なんとしてもだ。
 だから次の日の朝、目が覚めたとき顔の横に妹のだらけきった寝顔がくっついていて俺の口から頬にかけてべったりとよだれが
ついていたのも、小さい手がパジャマの中に突っ込まれ、早起きなアレをホールドしていたのも、足がカニばさみみたいに俺の足に
絡んでいたのもきっと夢に違いないのだ。

 夢なんだよっっっっっっ!

402:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:18:58 UNrIsoAb
 疲労を癒す最終手段である睡眠が、起きた瞬間に回復量以上の疲労を伴う場合、それは睡眠の意味を成すのだろうか教えて偉い人、
と考えつつ俺は妹を引き剥がし、無我の境地で着替えを済ませ、下へと降りた。
 その間、終始熱い視線を感じたのも絶対に気のせいだろう。
 朝食の席に座ると妹が後からやって来た。
「おはよーキョンくん。いいあさだね」
 そのにこにこお日様笑顔が俺は怖いよ。
 結局授業中が比較的だが落ち着く時間となってしまった俺は、何の気まぐれか授業に集中していた。
 おかげで、頭脳が栄養を欲しがっているのか昼の弁当が妙に美味い。
 ハルヒも弁当であり、団長と弁当付き合うのは団員として当然だとか言う事で、何故か机をひっくり返しての弁当時間となった。
 そして、ハルヒは今日の授業中の俺の事を言い、どうしたの? どっか悪いの? とか聞いてくる。
 普通なら失礼だな、と言う所だが、奇遇だな。俺も同じ事を自分に聞きたいよ。
 人格障害はシャレにならないわよ、と言っていたが、んな事は分かっているよ。
 つうかあれは、発症している本人がそもそも自分がそうだと気付かず、ともすれば気遣う人に対して何故か敵意を向けやすいのが
やっかいなのであって、客観的にそれに気付く様なら心配はない。
 つまり俺はそういう心配はないのだ。
「でも…ちょっと疲れてはいない?」
 ハルヒの眉毛が少し下がっている。
 お前は本っ当にどうでもいい事にも無駄に鋭いな。
 そうやって周囲に向かって何か面白い事はないか、とか電波を飛ばしている訳か。
「電波とか言わないでよ! …それに、どうでもいい奴だったら、体調なんて気付きたくもないし…ぶつぶつ…」
 何か言ったか?
「うるさい! 今日はあんたが掃除当番でしょ! さっさと掃除してさっさと部室来なさい!」
 へいへい。ところで掃除の前にまだ午後の授業があるんだが。
「よ、よけいなつっこみはいいの! 食べ終わったらさっさと机戻しなさいよ! いつまで顔見て無くちゃいけないのよ!
 ごご、誤解されるでしょ!」
 俺は何にだ、と呟き机を戻す。
 谷口曰くいつも通りの痴話喧嘩が終わった後、かくして午後も滞りなく時が進む。
 その後、俺は掃除を終わらせてから部室へと向かった。
 まったく、何の因果か体が完全に日々の行動として覚えちまっているね。
 今日はたぶん俺が最後だろうが、部屋へ入る前のノックは忘れない。
 朝比奈さんは時々狙っているかの様な嬉しいボケをかましてくれる。
 いつかの下着姿目撃時は、足がもつれたのか何故かこっちに倒れ込んで、俺に覆い被さる様になっちまったうえに下着を
隠そうとした手がうっかり俺の股間を触り、危うく理性が飛ぶところだった。
 だがその後、ヘラクレスも真っ青な英雄的精神力で朝比奈さんから離れた俺を、賞賛するどころか逆にヘタレを見る様な
じと目で見ていた気がするのだが何故だろうね?
「はーい、どうぞ」
 今日も鈴の様な声が耳に心地よい。
「こんにちは、朝比奈さん」
「こんにちは。お茶煎れますね。コーヒーと緑茶、どちらがいいですか?」
「ありがとうございます。今日はコーヒーでお願いします」
「分かりましたぁ、お待ちくださいご主人様」
 何か変な本読んだのかこの人は。
 それとご主人様のところを妙に強調するのは危険ですよ。
 だが、ああ、この笑顔のためにきっと俺は、SOS団と言う最前線に毎日通っているのだろうなぁ、などと考えながら定位置に
座ると、対面のにやけ面がボードゲームを取り出して『やらないか?』とばかりに微笑んだ。
 相手はしてやるから、そのノンケも食っちまいそうな微笑みを何とかしろ。
「お待たせしましたぁ」
 朝比奈さんが、清楚で上品なティーカップに香りの良いコーヒーを注ぎ、俺の前に置いてくれた。
 ああ、至福とはこの事。
「いつもすいません、それにいつもながらカップも清潔で、本当にすばらしいですね」

403:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:19:56 UNrIsoAb
 水が出て排水できるだけの最低限の機能しか無い水場なのに、ティーカップ、ティースプーン共に曇り一つ無い完璧な
磨きが成されている事は実際驚嘆に値する。
 そんな俺に、朝比奈さんは当然です、と小鳥の様に首をかしげて微笑む。
 朝比奈さん、貴女の微笑みは一つ一つが歴史に残すに値する美しさですよ。
 ふと古泉の茶碗を見ると、最初はコーヒーが入っているのかと思ったのだが、実は茶渋が積み重なってお茶が黒く
見えていただけだったと言う事実は気にしないでおこう。
 そして長門はと言えば、今日も今日とて昨日と一ミリも位置がずれていないのではと思わせる窓際の定位置で、相変わらず
分厚いハードカバーの本を清流のせせらぎの様に淀みない流れで読みふけっている。
 何とはなしに顔を見ていると、不意に長門が顔を上げる。
 あ、すまんな、視線が気になったか?
「……」
 長門はゆっくりと首を横に振り、そのまま今度は俺の顔を見つめ続けた。
 あ、いやそんな風に見つめられても困る。読書を続けてくれ。
「……」
 言ってからも尚十秒ほど俺を見詰め続けてから、長門はようやく本に視線を落とした。
 いや、読書のじゃまをしたのは悪かったと思っているから、そんな悲しそうな表情で顔を落とさないでくれ。
 そう言えば、長門って悪魔超人も裸足で逃げ出す完璧超人なのに、実は寒がりらしいんだよな。
 少し前、まだ雨が降ると肌寒くなるくらいの季節だった頃、雨が降り、俺と長門しか部室に居なかった日、不意に長門が
俺の横に座って寒い、と言ってきた。
 ガウンを貸すかと言うと、貴方が寒い、とか言っていきなり俺の上に座って読書を始めた時は驚いたね。
 どうしていいか分からず、暖かいか? と聞いたら背中が温かい、と答えたから役には立ったんだろう。
 あいつ、冷え性かも知れん。
 しかも少し経ったら、今度は前が寒いと言って、躊躇無く両足を割って俺に跨り、正面切って俺に抱きついてきたのは驚いた。
 両腕を首に回し、顎を肩に載せて背中に回した手で本を読むという離れ業には何とも困ったものだった。
 いや、何にと言うか、つまり、いくら俺が長門に対しては紳士でありたいと思っていても、こうも無防備にくっつかれては…何と
いうか、一人相撲ではあるのだが気分が少しは変になる訳でだ、失礼をしない様、少しでも腰を下げようとするのだが、
よほど寒いのか長門の足は俺の足にからみついてびくともしない。
 と言うか長門さん、寒いという割には密着している部分が汗ばむくらい熱い気がするんですけど。
 そしてなんか熱の気流に乗ってほんわかと、男心をくすぐるいい香りがするんですけど!
 そして股間の部分を! 股間の部分を時折動かすのは勘弁してください! もう少しでもう少しです!
 俺はひたすら煩悩退散悪霊退散やっぱり頼れる陰陽師に悪しき心を浄化してと願い続けた。
 暫くして俺もやっと落ち着いた頃、長門は体が温まったのか不意に体を離し、定位置の椅子へ戻った。
 俺は内心汗だくで自分の精神力を褒めていたのだが、その時ほんの微かに、いくじなしと言う声が聞こえたのは気のせいだろう。
 と、回想はこれくらいにしよう。
 万が一この回想が誰かの変な能力と言うか勘と言うか邪悪アンテナで受信された日には大変な事になる。主に俺が。
 と、長門の様なおとなしめな女の子に見詰められるってのは悪くない事の筈だが、あの瞳に見詰められるとどうにもこうにも
緊張するね。
 いや、ヘタレとか言うなよ。俺はあいつには本当に頭が上がらないんだ。
 さて、今日のハルヒはと言うと団長席で今日もインターネットと睨めっこだ。
 眉をしかめたり時折不敵に笑ったりと見ていて飽きないと言えば飽きないが、何を考え、何を言い出すか分からないので素直に
笑えないのがハルヒクォリティ。
 少しは下げてもいいんですよ?
「何か気になりますか?」
 古泉がそっと耳打ちする様に問いかける。
 だから顔を近づけるな。
「いやな、恐山こそ回避したがまた何かトンデモ探検プランをぶち立てたりしないかと不安なだけだ」
「それは確かに恐ろしいですね」
 どう見てもそういう顔をしていないぞおい。
「キョンくん、コーヒーのおかわりはいかがですか?」
 ありがとうございます朝比奈さん。
 いつもながらヴィーナスが泣いて逃げ出す愛らしい笑顔ですね。

404:名無しさん@ピンキー
07/09/14 19:20:03 BXStt/dW
疲労を癒す最終手段である睡眠が、起きた瞬間に回復量以上の疲労を伴う場合、それは睡眠の意味を成すのだろうか教えて偉い人、
と考えつつ俺は妹を引き剥がし、無我の境地で着替えを済ませ、下へと降りた。
 その間、終始熱い視線を感じたのも絶対に気のせいだろう。
 朝食の席に座ると妹が後からやって来た。
「おはよーキョンくん。いいあさだね」
 そのにこにこお日様笑顔が俺は怖いよ。
 結局授業中が比較的だが落ち着く時間となってしまった俺は、何の気まぐれか授業に集中していた。
 おかげで、頭脳が栄養を欲しがっているのか昼の弁当が妙に美味い。
 ハルヒも弁当であり、団長と弁当付き合うのは団員として当然だとか言う事で、何故か机をひっくり返しての弁当時間となった。
 そして、ハルヒは今日の授業中の俺の事を言い、どうしたの? どっか悪いの? とか聞いてくる。
 普通なら失礼だな、と言う所だが、奇遇だな。俺も同じ事を自分に聞きたいよ。
 人格障害はシャレにならないわよ、と言っていたが、んな事は分かっているよ。
 つうかあれは、発症している本人がそもそも自分がそうだと気付かず、ともすれば気遣う人に対して何故か敵意を向けやすいのが
やっかいなのであって、客観的にそれに気付く様なら心配はない。
 つまり俺はそういう心配はないのだ。
「でも…ちょっと疲れてはいない?」
 ハルヒの眉毛が少し下がっている。
 お前は本っ当にどうでもいい事にも無駄に鋭いな。
 そうやって周囲に向かって何か面白い事はないか、とか電波を飛ばしている訳か。
「電波とか言わないでよ! …それに、どうでもいい奴だったら、体調なんて気付きたくもないし…ぶつぶつ…」
 何か言ったか?
「うるさい! 今日はあんたが掃除当番でしょ! さっさと掃除してさっさと部室来なさい!」
 へいへい。ところで掃除の前にまだ午後の授業があるんだが。
「よ、よけいなつっこみはいいの! 食べ終わったらさっさと机戻しなさいよ! いつまで顔見て無くちゃいけないのよ!
 ごご、誤解されるでしょ!」
 俺は何にだ、と呟き机を戻す。
 谷口曰くいつも通りの痴話喧嘩が終わった後、かくして午後も滞りなく時が進む。
 その後、俺は掃除を終わらせてから部室へと向かった。
 まったく、何の因果か体が完全に日々の行動として覚えちまっているね。
 今日はたぶん俺が最後だろうが、部屋へ入る前のノックは忘れない。
 朝比奈さんは時々狙っているかの様な嬉しいボケをかましてくれる。
 いつかの下着姿目撃時は、足がもつれたのか何故かこっちに倒れ込んで、俺に覆い被さる様になっちまったうえに下着を
隠そうとした手がうっかり俺の股間を触り、危うく理性が飛ぶところだった。
 だがその後、ヘラクレスも真っ青な英雄的精神力で朝比奈さんから離れた俺を、賞賛するどころか逆にヘタレを見る様な
じと目で見ていた気がするのだが何故だろうね?
「はーい、どうぞ」
 今日も鈴の様な声が耳に心地よい。
「こんにちは、朝比奈さん」
「こんにちは。お茶煎れますね。コーヒーと緑茶、どちらがいいですか?」
「ありがとうございます。今日はコーヒーでお願いします」
「分かりましたぁ、お待ちくださいご主人様」
 何か変な本読んだのかこの人は。
 それとご主人様のところを妙に強調するのは危険ですよ。
 だが、ああ、この笑顔のためにきっと俺は、SOS団と言う最前線に毎日通っているのだろうなぁ、などと考えながら定位置に
座ると、対面のにやけ面がボードゲームを取り出して『やらないか?』とばかりに微笑んだ。
 相手はしてやるから、そのノンケも食っちまいそうな微笑みを何とかしろ。
「お待たせしましたぁ」
 朝比奈さんが、清楚で上品なティーカップに香りの良いコーヒーを注ぎ、俺の前に置いてくれた。
 ああ、至福とはこの事。
「いつもすいません、それにいつもながらカップも清潔で、本当にすばらしいですね」

405:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:20:58 UNrIsoAb
「…そ、そんな事…いけないです、私…」
 あ、うっかり声にしてしまった。
 途端にサクランボの様に頬を染めるマイエンジェル。
 だがまぁ、事実なのでいいだろう。
 と、ボードを見るとポーンの駒を持つ古泉の手が空中で止まり、すかした笑顔の口元が引きつっている。
 窓辺から冷気を感じるかと思えば長門が再び俺を見詰めていたし。
 いや、今の長門の視線は見詰めていると言うよりはっきり言えば睨んでいる、だ。
 なんか知らないけどすいませんすいません勘弁してください。なんか体の表面に冷気で霜が張りそうです。
 同時に、パソコンのモニターに隠れて顔は見えないがハルヒからは火炎放射器もかくやと言わんばかりの強烈な熱波が
放たれている。
 ああ! なんだってこの部室はこれだけの奇人変人の集まりだってのに一般人選手権世界代表の俺のどうでもいい一言でこうも
居心地が悪くなるのかね!
 何が気に入らないのか知らんが言いたい事は口に出して言いなさい! 善処するから!
 あ、いやいや、ハルヒや古泉はともかくとして長門や朝比奈さんは奇人でも変人でもないぞ。
 これほんと。
 と、俺は今度こそモノローグで弁明しつつ、ただひたすら熱波と冷気に耐える事にした。
 うん、それ無理。
 現状の打破が必要だ。
 俺は当てにはならないと思いつつも昨日の古泉の科白、そして妹がおとなしくなる俺なりの対処について考えた。
 丁度いい。なら実践で試すか。
 それに、そろそろ調べ物をしなくちゃならんしな。
 先ほどと比べればだが、時間が過ぎ、幾分殺気が和らいだ中、俺は丁度チェックメイトとなったチェスのテーブルから立つ。
 古泉はさすがですね、と肩をすくめて笑う。
 お前は本気にしろ手抜きにしろもう少し負けたという自覚をアピールしろ。
「さてハルヒ、ちょっと席変われ」
「嫌よ」
 ハルヒは視線も上げずにモニタを見つめながらマウスをガチャガチャといじっている。
 もう少し優しくやらんとそのうち机かマウスが削れるぞ。
 しかも、何を見ているのかと画面を見れば、コスプレのネットショップときた。
 朝比奈さんの衣装をまた増やす気かお前は。
「どうでもいいな。どけ」
「聞こえなかった? 嫌って言ったの。それにどうでもいいとは何よ」
 ところで話すときは相手の目を見なさい。お母さんかお父さんから習わなかったか?
「どうでもいいからどうでもいいと言った。ちょっとだからどいてくれ。あんまり我が儘ばっかり言うとどかすぞ」
「できるもんならやってみなさいよ」
 意地でも俺を見ない気か。
 了解。
 俺は牡蠣が岩にへばりつく様に椅子にくっついているハルヒを椅子ごとがたりと引いた。
 突然の事にハルヒが慌て、流石に俺を見る。
「ちょ、ちょっとキョン! 何するのよ!」
 どかすんだよ。
 意地になっているときのハルヒはクレヨン王国の王女より聞き分けがない。なら強硬手段しかなかろう。
 俺は睨み付けるハルヒの視線を無視して、膝の後ろと背中に手をつっこむ。
 ハルヒはびくりと手足を縮めて身を強張らせるが、逆に持ちやすくなった。
 そして俺はそのままハルヒを持ち上げる。
「ひゃ」
 ハルヒにしては可愛い声を出す。
 それと、意外に軽いな。
 胸のあたりまで持ち上げたところで、手の位置を直すためにちょいとハルヒの体を浮かせ、しっくりくる場所へ手の
位置を変えた。

406:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:22:51 UNrIsoAb
 その間、ハルヒは口を開けたまま、大きな目をさらにくりくりにして俺を見詰め続けている。
 ふむ、やはりこうすると何故か静かになるな。
 これは意外に有効かも知れん。
 確か、暴れる動物も似た様な方法でおとなしくなるってのを聞いた事があるぞ。
 硬直しているハルヒを俺が座っていた椅子に降ろす。
 このスムーズな移動、妹で慣れていて良かった、と言うべきだろうかね。
「ほれ、古泉とゲームでもしていろ」
 見ると、何か顔が赤らんでいるハルヒは、口をぱくぱくとさせていた。
 魚みたいだな。
 俺は無意識に、妹にやるみたいに頭をぽんぽんとなで、パソコンの前に座った。
 …何か静かだな。
 ふと顔を上げると、古泉はいつものスマイルを凍り付かせ、朝比奈さんは顔を真っ赤にしてうつむいていた。
 長門と言えば、何故だか知らんが非難、と言うよりうらやましげとでも表現するのが合いそうなビームを俺に送っている。
 そしてハルヒは先ほど降ろした姿勢のまま、机を見つめて固まっているし。
 はて? 何か特別な事でもあったか?
 だが、空気は別にやばそうな雰囲気にはなっていないな。
 少なくとも先ほどまでの視線は誰からも感じられない。
 まぁ、行動は成功と思っていいだろう。
 俺は捜し物を始めた。
 さて、お見舞いにいい品物は…と。
 俺はしばらくの間、近くの商店でも手に入りそうなお見舞い品の品定めを続けた。
「ハルヒ、終わったぞ」
 正味三十分程だろう。
 やはり無難なところで和菓子に決め、後は花屋でアレンジフラワーでも見繕うとしよう。
 俺は、うん、と背伸びして周囲を見た。
 長門は本を読み、朝比奈さんは刺繍をしている。
 古泉は詰め将棋か。
 ん? ハルヒと遊んでないのか?
 俺はブラウザをたたみ、ハルヒを見る。
 …なにやってんだ?
 あいつは、おそらく俺が席に移したときと同じであろうポーズのまま、銅像みたいに固まっていた。
 やれやれ、とハルヒに声をかける。
「……」
「おい、ハルヒ」
「え? あ、な、なによ! やるっての!」
 何をだ。
 それと赤面しつつ狼狽しながら睨むという器用な顔芸はよせ。それとファイティングポーズをとるな。
「終わったって言ったんだ。もう戻っていいぞ」
「…団長が、平団員に言われてハイそうですか、なんて出来るわけないでしょ!」
 どういう理屈だ。席を返すと言っているんだぞ俺は?
 どうやら無理矢理移動させられた事が気に入らないってところか?
 だが俺も用が済んだのにあの席に座りっぱなしと言うのも具合が悪い。
「ハルヒ、万歳!」
「えぁ? は、はい!」
 突然の命令に驚いたのか、簡単に手を挙げちまった。
 俺は再びハルヒの背中と膝の裏に両腕を滑り込ませ、そのままハルヒを持ち上げる。
 気のせいか、持ちやすい様に体を丸めている様な感じだ。
 バランス良くするために抱き位置を調整してから、ほんの数歩の移動を開始。
「ほれ」
 そしてハルヒは、めでたく元の団長席に収まっていた。

407:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:24:09 UNrIsoAb
「……」
 だが、さらに顔を赤くして縮こまるハルヒ。
 ネットサーフィンを再開しようともせず、スカートの上で手をいじっている。
 静かなのはいいが、あんまり静かだと逆に不安なのは、俺がこいつの暴走パワーに毒されているせいかね。
 さて、菓子を確保しなくちゃならん。
「俺、ちょっと用があるから今日は帰る」
 言って立ち上がった時。
「キっ…キョン!」
 ハルヒが俺を呼び止めた。
「どうした?」
「あ、その…ええと…あ、明日十時! いつものところで待ち合わせよ! 遅れたら死刑でそのあとお昼奢り!」
 死体からも搾取する気かお前は。
「何? ちょっと待て! 探索は日曜だろうが!」
「勿論そうよ! 明日は下調べよ! 下調べ!」
 ハルヒは変にふんぞり返りつつ、窓の外を見ながらまくし立てる。
 だから話す時は相手を見なさい。
「なんだそれは?」
「まぁ、他の団員は邪…色々忙しいだろうから、あたしとキョンのふたりき…ふ、不本意だけどね! でもせっかくだから
赤い扉…じゃなくて喫茶でゆったりお茶して、ちょっといい雰囲気の映画見て、そのあとウインドショッピングしてから
静かな公園とか歩いているうちに自然と手をつないでそれで二人っきりの白樺の遊歩道を歩いていたらいつの間にか夕方になって
心細くなったあたしの手を生意気だけどあんた優しくにぎってくれてふと周囲を見回すとどピンクのいかがわ…めるへんちっくな
ホテルが手招き…」「明日は俺も用がある」
「え!?」
 首がごき、と音を立てそうな勢いでハルヒが振り向いた。
 それとこのあたりの気候と風土じゃ白樺は群生出来ない。
「だから悪いが下調べなら一人で行ってくれ」
「……」
「それじゃ」
 さて、なんか空気が振動している気がするので早急に帰るとしようか。
「………ナンノヨウ?」
 おや、地獄の釜が開いて、底から亡者のうめき声と共に鬼の声がする。きっと気のせいだ。
「イッタイナンノヨウカシラ…………?」
 あれれ? アーリマンの炎の吐息が耳を焦がしているよ?
 何か襟がちぎれそうな勢いで引っ張られているせいで息が苦しい気がするなぁ?
「アンタノチハ……ナニイロカシラ?」
 おや? 死亡確定?
「ち、ちょっと待てハルヒ。人の心を取り戻せ!」
 俺は首周りの尺を縮めようとしているハルヒの両腕をつかんで宥める。
「なな…何よ何よ何よっ! ああ、あたしがせっかく一緒にデートち、違う! え、円滑に不思議探索する為に下調べを
しようって言ったのに、それなのに、それなのに! そんな、雨に濡れて寂しくて悲しくて心細くて、でも泣く体力も
残っていなくて、ぴすぴす鼻を鳴らすくらいしか出来ずに震える可哀想な子犬を見下してゴミが、みたいな邪悪な視線で
あざ笑う様な真似が出来るなんて!」
「悪鬼か俺は」
「だ、だってだって…だって…たまには一緒に…いっしょにぃ…」
 両腕を捕まれたままイヤイヤする様に手を振り回す。
 俺が手を放したらだだっ子パンチになるなこれは。
 俺はため息を一つつく。
 駄目だこりゃ。
 悪い方向で頑固が発動している。
 まったく、一度決めると梃子でも動かないのがこいつだからな。

408:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:25:14 UNrIsoAb
 多分、新しい場所に行くのが楽しみだから、行けるところには行きまくろうと思っているんだろうね。
 こいつはこういうイベントは大好きだからなぁ。
 だが、生憎明日ばかりは君の思うとおりにはいかせられないのだルパン君。
 と言う事で仕方ない、よけいな茶々が入らない様に、言っておくとするか。
「見舞いに行くんだよ」
「え?」
「知り合いが入院してな、明日、その見舞いに行くんだよ。だから、分かるな? ハルヒ」
「……」
 意外に礼儀は正しい奴だ。
 さっきまでの真っ赤な顔がしゅん、とうなだれ、心なしか体まで縮こまった気がする。
「お見舞い…それなら…仕方ないわよね」
 そういう事だ。
 いい子だから日曜まで待ってくれ。
 どうせその日も喫茶代は俺持ちだろうから、それまで我慢してくれ。
「き、喫茶代目当てなんかじゃ…!」
 分かった分かった。
 そういう事で、お先させて貰うぞ。
「……」
 ハルヒはすっかり黙り、朝比奈さんがお大事にと見ず知らずの相手にまで気遣ってくれ、古泉はさよならと手を振り、
長門はちらりとこちらを見上げていた。
 そんじゃ日曜日にな。
 廊下に出た時、丁度携帯が鳴る。
 家からだ。
「はい」
「やっほー、キョンくーん」
 お前か。どうした?
「あのね、おみまいどうなったかなっておもったの」
「安心しろ。ちゃんと買って帰る」
「ありがとー。ミヨキチもよろこぶよ。そうそう、おみまいだけかってキョンくんこない、なんてことはないよね? ね?」
「大丈夫だよ。そういえば、ミヨキチの母さんって好き嫌いは大丈夫か? 菓子にする事にしたんだが」
「へーきだよ。ミヨキチのおかあさんあまいものすきー。あたしもすきー」
「そうか、ならいい。それじゃな」
「はーい。あなた、よりみちしないでまっすぐかえってきてねー」
 見舞いを買うんだっての。
 俺は携帯を切って校舎を出た。
 その時俺は知らなかった。
 俺は知らなかったんだよ。
 廊下は結構声が響くもので、それでいつの間にか扉からちらりとこっちを覗いていたハルヒの耳に、ぎりぎりでミヨキチの
名が聞こえていた事は、俺は知らなかったんだよ…。

「へー、くりーむまっちゃようかんに、ゆずのゼリーだぁ! おいしそー! …おいしそうだなぁ…」
 商店街でお見舞いの菓子を買い、帰ってから妹に見せた第一声がそれだった。
 素直でいいのだが、おかえり位言いなさい。
「あ、おかえりーキョンくん。ごはんにする? おふろ? それともあ・た・し?」
 それはセクシーポーズのつもりか? どう見ても背中がかゆい様にしか見えんぞ。
 俺はむくれる妹を後にして靴を脱いだ。
 そうそう、この袋はお見舞いと同じものがバラで入っている。あとで食べろ。
 そう言い、俺は箱とは別の袋を妹に渡した。
「きゃー! キョンくんだいすきー!」
 分かり易い奴だ。

409:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:26:13 UNrIsoAb
 そして次の日。
 俺はまたしても羽交い締めに近い状態で俺を縛り付けて寝ていた妹を引き剥がし、ベッドに転がしたままちょっといい服を
選んで着替えを始める。
「えへへ~ミヨキチもほれなおしちゃうかな~?」
 寝ぼけ眼で寝ぼけた事を言う。
 ところで妹よ、パジャマでお見舞いに行く気か? さっさと顔を洗って着替えてきなさい。
「ふぁ~い…」
 ここで脱ぐな。
 朝から兄の部屋から下着姿で出てくる妹なんぞ母親に見られたら卒倒されるわ。
 十分後。
 妹は黄色のシャツにミニのデニムスカートで装いを整える。
 さて、ミヨキチの母のお見舞いに行くのは妹から聞くと午後一時の約束となっているらしい。
 それまでゆっくりするかと思ったが、妹がついでにお出かけとせがむので、仕方なく少し早めに出る事にする。
「おっでかっけおっでかっけキョーンくんとおっでかっけ~♪」
 幼児向け楽曲ばかりだが、歩く音楽プレイヤーの様な妹を携帯し、俺は家を出た。
 まずはいつもの商店街へでも行こうとしていた矢先、携帯が鳴った。
 こういう時に鳴る携帯ってのは…。
 俺は嫌な予感を感じつつ相手を見る。
 古泉だ。
「…はい」
「おはようございます。すがすがしい朝ですね」
 モーニングコールを頼んだ覚えもないし、そもそも時間が遅いぞ。
「いえいえ、勿論大事な話です。よろしいですか?」
 聞かない訳にはいかないんだろうな。
 丁度、児童公園の前だった。
 俺は妹に少し公園で遊んでいてくれと促し、側のベンチに座った。
「らじゃー!」
 妹よ。快諾してくるのはいいのだが次の瞬間、公園で遊ぶ小学校低学年や未就学児達と見分けがつかない位に馴染んで
遊び始めているのはどうかと思うぞ。
「で、今度は何だ?」
「落ち着いていますね」
「嫌でも慣れるわ。勿論、厄介事が起きるという発言に慣れているのであって厄介事には慣れてないぞ」
「それだけ落ち着いて居れば大丈夫ですね。では本題です。実は、昨夜けっこう大規模な閉鎖空間が起きていたのです」
 マジな声だ。
「それを今頃伝えるのか?」
「昨夜は徹夜でしてね、体力が何とか話せるまで回復したのが先ほどだったのです」
「森さんとか他の人は?」
「考えはあったのですが、これに関しては本来僕たちの仕事です。どうしようもない場合を除いては貴方にご迷惑をかける
訳にはいきません。出来る事は自分で、ですよ」
「…お前は、無事か?」
 機関もそれなりに節度はある訳だ。少し見直したぞ。
「ありがとうございます。幸い五体満足です」
「なら良かった。で、一体原因は何だ? 明日はハルヒの大好きな不思議探索だ。ハルヒの奴にそんな強烈なストレスが
溜まっていたとは思えないぞ」
「昨日の部活動前半まではそうだったのですがね」
「……」
 何度と無くつぶやいた科白を言いそうになる。
 少し無言になっていると、公園の方から妹の元気な黄色い声が他の児童と一緒に聞こえてくる。
 俺は大きなため息を一つこぼしてから、つぶやく様に言う。
「あいつは、そんなに不思議探検の下調べがしたかったのか?」

410:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:28:21 UNrIsoAb
 が、今度は向こうがしばし無言となる。
 何故か、受話器の向こうでいつも通りの肩をすくめているポーズが見える様だ。
「いやはや、何とも僕の口からは言いかねますが、当たらずも遠からずと言ったところです」
「なんだそりゃ」
 更に奴の引きつった顔までが想像できてしまう。
 受話器の向こうの感情を読むのは長門だけで勘弁して貰いたいのだが。
「それはどうぞご自分で考えてください。それより、今日のお見舞いはどちらへですか?」
 …古泉になら言ってもいいか。
「ほう、ミヨキチさんのお母さんの…。なるほどなるほど。それでですか」
「一人で納得するな」
「いくぞー! てめーはおれをおこらせたぁっー! おらおらおらおらららららぁっー!」
「何か、楽しげな声が聞こえますね」
「気にしないでくれ。それよりさっきの納得は何に対してだ?」
「貴方は、勘が鋭い時とそうでない時の差が少々激しいようですからね。それを鍛えるためにもどうぞご自分で謎を
解いてください」
 …さりげに失礼な事を言う。
「それと、もう一つ」
 まだあるのか。っつーか、結局大事な事は何も話してないぞお前。
「どうせすぐ分かります。僕が言えるのは、寂しい子犬はとにかくかまって欲しいものなのですよ、と言う事です」
 似た様な科白を昨日聞いたぞ。
「それなら大丈夫ですね。では、御武運を。それと、犬は一匹とは限りませんよ」
「…良く分からんが覚えておく」
「ばぁーくねーつ! ごっどふぃん」「そろそろ行くぞ」
 俺は電話を切り、すっかり熱中している妹をこっちの世界に戻すと病院へ向かって歩き出した。
「えへへー、おもしろかった!」
 それは良かったが、ちょっと汗ばんでいるぞ。
「うん、レッドのひっさつわざがやっぱりいちばんハデで…」
 そう言う事じゃない。
 これ以上汗をかかせると見舞いに行くというのに失礼になる。
 俺はハンカチを妹に渡し、早々に病院へ向かう事にした。

「あ、お兄さん、こんにちは! 今日は母のお見舞いの為にわざわざありがとうございます!」
 病院に着くと、正面玄関に既にミヨキチが待っていた。
 ミヨキチは白で薄手のワンピース姿。
 やや短めのスカートだが彼女の場合は健康的で微笑ましい。
 何気なくボディラインがうっすらと透けており、年齢にしては放漫な胸も美しいラインでワンピースを
形取っている。
 嗚呼、うちの洗濯板に少し分けてもらえないものかね。
「やっほー、ミヨキチ」
 二人は手と手を取ってきゃーきゃーと鳴いている。
 こうやってみるとミヨキチも妹と大差ないのだな。
 ミヨキチの母親の状態は良好の様で、検査に問題がなければ、後はギプスが取れれば退院だそうだ。
 ミヨキチから紹介された時、ちょっと値踏みされる様な視線で見られたのは何故だろう。
 そしてふぅん、と言う様な微笑みを返されたのも何故だろうね。
 ミヨキチもお前のお母さんなんだから、その間俺の後ろで何故かどきどきするのは止めなさい。
 さて、花と菓子折を渡し、少々の会話の後に見舞いも無事終わる。
 俺は病室を出てミヨキチとは別れたと思ったのだが、少ししてミヨキチが俺達を追いかけてきた。
 そして。
「あの、この後お暇ですか?」
 ミヨキチが聞いてきた。

411:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:29:08 UNrIsoAb
 いや、特には用はないと言うと、ミヨキチは頬を染めてもじもじとしながら、お見舞いに来てくれたお礼にどこかで
お茶をしませんか、と聞いてきた。
 母親に付いていなくていいのかと聞いたが、母親もずっと病室じゃ息が詰まるだろう、と送り出してくれたらしい。
 優しい娘の母親はやっぱり優しいのだな。
 俺は気持ちよく頷いた。
 ミヨキチは奢ると言ったが流石に小学生に奢らせる訳にはいかない。
 俺達三人がスタバでお茶していたとき、ミヨキチが切り出した。
「あの、実は映画のチケットがあるんです。この後お暇なら、是非お付き合いをお願いしたいんです! …出来れば末永く」
 文章の尻の方で出てきた意味はさておき、ミヨキチは俺の顔を真正面にとらえ、強い希望を思わせる瞳で言ってきた。
 ずここー。
 そんな真摯な空気も読まず、妹は空のカップからストローで間抜けな音を出す。
 力が抜けた俺は思考能力も落ちたらしく、いいよ、と言ってしまった。
 今考えれば妹も俺の性格を見抜いて狙ったとしか思えないし、このとき俺がもう少し意志をしっかり持ち、チケットの
期限はまだあるから来週、とせめて一週延ばしていれば、後の修羅場にもならなかったのかも知れないと思う。
 もっとも、後の祭りは祭りであり何一つ変わる訳ではない。
 その時の俺は、そう言うしか無かったのだ。

 最近の映画館はだいたい座席を決めてから入館するところがほとんどで、俺達も席を探す手間無く三人一緒に座る事が出来た。
 巨大スクリーンは前の方で見ると迫力があるのだが、いかんせん視界がいっぱいいっぱいで疲れる。
 だが、ミヨキチが選んだ後方だと視界に余裕があり、落ち着いて見られるのがいい。
 映画の内容は額に傷がある魔法使いのトラックに変形出来る金属生命体が東京タワー完成間近の下町で涙あり笑いありの
人情話を繰り広げながら地球に迫る隕石を破壊してその後記憶を取り戻したヒロインと結ばれ、ハッピーエンドというものだった。
 シナリオ作った奴は手を後ろに組んで歯を食いしばれ。
 そしてミヨキチもなぜこれを選んだのか今度ゆっくりと問いただしたい。
 映画開始直前、室内が暗くなり始めてから後ろの方に数人座ったらしき音がする。
 最初の十分くらいはコマーシャルだから問題ないな。
 眼鏡をかけた渋いおっさん声の魔法使いが流れ星となって地球に飛来し、首都のど真ん中に落ちるシーンから映画は始まった。
 焼け野原となった跡地に復興の印としてタワーを建てるのが本筋らしい。
 …主人公が全ての元凶じゃねぇか。
 呆れて声も出ない中、ミヨキチが急に俺の腕を掴み、顔を腕に埋めてきた。
 シーンは主人公のどアップでのセリフシーン。
 ふむ、これほど子供が恐がりそうな強面の主人公っつーのも珍しいな。なんか顔の横でディスクみたいなのが回転しているし。
 不意に、妹も手を掴んで顔をすり寄せてきた。
 が、こいつの場合は怖いと言うよりミヨキチがそうしているのを見て対抗したと言うところだろう。顔笑ってるし。
 怖いのを必死で我慢しているミヨキチが健気で愛おしくすら思え、ミヨキチを見詰める。
 すると、視線に気付いたのかミヨキチが顔を上げた。
「あ…」
 暗闇でも分かるほど顔が紅く染まる。
 だが、ミヨキチは何故か申し訳なさそうな顔を見せてから無言で俺の腕を引き寄せ、抱き枕の様に体を巻き付かせた。
 ちょっと待ち給えミヨキチクン。
 その様に腕をお抱きにあらせられると必然的に腕が貴女の胸に押しつけられ、更に貴女様の股間に手が…て言うか何で
スカートめくれてマスカ!?
 何か見えてますよ!
 ってあああその激柔の白い布に手が手が手が!
 そして何故股間にある俺の手に君は自分の手を添え、更に股間に押しつけますか!?
 そしてなんですりすりと動かしますか!?
「ミヨ…」
 流石に待てと言いかけたが、ミヨキチの指が俺の口をそっと塞ぐ。
 ち、ちょっと舐めちゃったんですけど。
「…今、声を出すと、大変な事になると思います」
 ミヨキチは女の瞳でつぶやいた。

412:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:30:31 UNrIsoAb
 君、小学生だよね?
 て言うか分かってやっているね? やっぱり。
 そして。
「はぁ、ん…」
 更にあろう事かなんつう声を出しますか!
「んにゅう…」
 気が付くと反対側の手で妹も同じ事してやがった。
 なんと言うシンメトリカルドッキング。
 ちょっと待て。
 今この場面を誰かに見られたら俺は間違いなく前科者になるぞ。
 もしかして君たち二人はどっかから派遣された刺客か何かか?
 そして席の後ろから、なんかギリギリと、ものすごい歯ぎしりの音がするんですけど。
 椅子がめきめきと音立てていますよ。
 それに何か浴び慣れた冷凍光線と熱線を感じるんですけど。
 もうなんか、脳髄が最大級の危険信号を垂れ流しているんですけど。
 俺、大ピンチの最中、両指の先に明かな湿り気を感じ始めた。
「お兄さん…わたし…」
 艶っぽいなんてもんじゃない声でミヨキチがつぶやく。
「にゃあん、なんかへん…」
 ブルータス、お前もか。
「わたし…もう…」
 ミヨキチの手が俺の手を白い布壁から純粋無垢なる聖域に誘おうとしたその時。
「モウ、ナニカシラ?」
「!!!」
「!!!」
「!!!」
 半ば予想していたのだが、俺を含めて三人が固まる。
 この映画館のシートは頭の上まで背もたれがある大きなシートだ。
 その後ろから声がするという事はシートの上に誰かが居るという事である。
 俺、ミヨキチ、妹はスローモーションの様な動きでシートの上の方に振り向く。
 そこには伝説の鬼が居た。
 しかも、三人…。
 鬼の一人は大きな吊り目をさらに吊り上げ、両手をシートに食い込ませ、牙でも生えそうな勢いで歯を食いしばる。
口の端から血が流れていませんか?
 もう一人の鬼は全くの無表情。いや、ありとあらゆる負の感情を暗黒の瞳に凝縮し、絶対零度の視線で俺の体を穿っている。
 そしてもう一人は、その怒りに満ちた大きな瞳から涙をぼろぼろと零しながらも、嫉妬と言う名の灼熱のオーラを放っていた。
 あまりにも驚いたため、逆に誰も声を出さなかったのは不幸中の幸いだろう。
「とりあえず…オ モ テ ニ デ ロ」
 その言葉に逆らえる筈はなかった。
 流石にその後俺にしがみつく事は出来なかったのか、代わりに妹としっかり手をつないで、これから売られる子羊の様に
二人は怯えていた。
 怯えている様に、俺には見えた。
 果たして俺は映画館から出た後にまともに太陽を見る事が出来るのかと思ったのだが、事態は意外と言う他無い展開を迎える。

「キョンの死刑はとりあえず置いておいて」
 とりあえずですか。
 映画館から数分のところにかろうじて人目を避けて話が出来る程度の大きさの小さい公園があった。
 ハルヒは俺の耳を掴んで脇に追いやり、俺の後ろで小さくなっていた二人の前に立つ。
 閻魔大王も頷く雄々しさだ。
「ミヨキチ…ちゃん? それと、今回ばかりは妹ちゃんにも言うわよ」

413:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:31:59 UNrIsoAb
 二人はびくりと強張らせ、つなげていた手を強く握り合う。
「……」
 だが、ハルヒの口からはすらりと二の句が出なかった。
 何か、言葉を必死に選んでいると言う風だ。
 ところで、この間も俺は安心できる訳ではない。二人が気がかりなのも当然だが、俺自身にも長門と朝比奈さんの視線が
未だ突き刺さったままなのだ。
 それどころか、俺の背中に無言で二人が近づき、素晴らしいシンクロで俺の背中を抓る。
 おおお、お二人とも、本当に申し訳ありませんが肉ちぎるのだけは勘弁してくださいね。抓られた瞬間に痛すぎて痛覚が
逝っちゃってます。
 二人を睨み付けていたハルヒの顔が、不意に俺を見る。
「キョン! あんたジュース買ってきなさい! 人数分よ! 落としたらもったいないからゆっくり歩いて買ってきなさい!」
 …離れろ、と言う事か。
 変な事はしないだろう。
 二人が流石に不安そうな顔をしたが、大丈夫だ、と少し笑うと二人は表情を明るくした。
「早くいきなさいっっっっ!」
 逆鱗に触れた。
 俺はゆっくりと、かつ急いで歩くという器用な歩き方でその場を離れる。

 …キョンの奴は行ったわね。
 あたしは一つ大きく深呼吸する。
 それだけでミヨキチと妹ちゃんは少し肩を縮めた。
 威嚇する気はする気だけど、そんなに怖いかしら?
 さて、どうしてやろうか。
 あたしは最初、二度と近づけない位に脅しをかけようかと思った。
 そもそもなんでこの子達があたしがやるはずだった二人っきりデー…下調べを、しかもあたしのプラン通りにやっているのよ!
 キョンは、あたしの大事なひ…え、SOS団にとって大事なヒラ雑用部員なんだからっ!
 でも…。
 言葉が、出ない。
 普段なら淀みなく言葉が出るのに、どうしても言葉を選んでしまう。
 あいつの悪口をある事無い事言えばいいのよ。
 二度と近づきたくないと思わせる破廉恥で外道な事を言えば…。
 でも、口に出る前に全部消えてしまう。
 今、それを言ったら、あたしは負ける気がした。
 この、年端も行かない子供に、あたしは負ける気がした。
 キョンを、本当に取られる気がした。
 だってこの子の瞳は、先生だって腰が引けるあたしの睨みの前でも、真っ直ぐにあたしの瞳を見詰め返している。
 その力強さは、そのままキョンへの想いに思えた。
 その瞳は逆にあたしを貫く。
 あたしはもう誤魔化せなかった。
 あたしは、ミヨキチに嫉妬している。
 キョンと仲良くしている事を嫉妬していると、はっきり認めた。
 でも嫌。
 キョンはあたしのもの。
 キョンもあたしだけを見ていればいい。
 もう、頭からそれが離れない。
 だから、あたしは逆の事をした。
「…キ、キョンは…」
 自分でも口から出るまで考えもしなかった単語が出る。
「誰にでも、優しいのよ」
 ミヨキチがはっと顔を上げる。

414:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:32:42 UNrIsoAb
「人を傷つける様な真似を、絶対にしないのよ」
 あたしは卑怯な事をした。
 ミヨキチを叩きのめすんじゃなく、それよりもっと酷い事を言っている。
 あんたはキョンにとって特別じゃない。
 あたしはそう言っていた。
 そうすれば、諦めると思った。
 卑怯だと言う考えより、それでミヨキチがキョンを諦めてくれる事を望む気持ちの方が百倍も強かった。
 言わずにいられなかった。
 あたしの気持ちだって、キョンへの想いは、独占欲は、それくらい誰にも負けていない。
 そう思ったから。
「そう」
 いつの間にか有希もあたしの側に居た。
「彼は、大河。私の悩みも、苦しみも、全て受け止め、そして、彼という大河の一部にしてしまう。全てを預ける事が出来る。
そして、誰に対しても」
 口から出た言葉は助け船。
 でも、感謝より先に驚愕が出た。
 有希があたしと同じ事をしている。
 つまり、それは…。
「キ、キョンくんは、どんなドジな人も見捨てません。無視じゃないです。見守ってくれるんです。励ましてくれるんです。
絶対に飽きて放り出したりなんてしないんです。誰もが、寄りかかれる人なんです」
 みくるちゃんまで…!
 そのまま、みんなが黙りこくってしまう。
 この瞬間、年齢も団員も関係なく、全員が全員、『敵』になってしまったんだ。
 あたしだけがミヨキチに勝てばいいどころじゃないんだ。
 目眩がしていた。
 その時。
「それなら、誰でも可能性があるんですね?」
 あたしは耳を疑った。
「お兄さんが誰にでも優しい人であるのなら、つまり誰もがお兄さんに愛される権利があるんですね?」
「あ、愛!?」
 声が裏返りそうになった。
 有希とみくるちゃんも同じように驚いている。
 この子は…なんて強いんだろう。
 思わず認めそうになってしまった。
 そして、墓穴を掘ったのはあたしだったと気付く。
 あたしは、あの言葉でこの子を同じスタートラインに自ら立たせてしまったんだ。
 ただの友達のお兄さんから、下手をすれば手が届くラインに。
 気が付くと、妹ちゃんも目を輝かせていた。
 ちょっと待って。
 貴女は身内でしょ?
 …いや、この妹ちゃんの場合油断は出来ないわ。
 逆に身内という利点を生かして抜け駆けを考えるかも知れない。さっきだって映画館で…。
 ふと、あたしは怒りの発火点を思い出した。
「ああああああ、あんたたちっっっっ!」
 思い出した! あれよ! 映画館での二人のアレよ!
「ひっ!」
 ミヨキチと妹ちゃんは落ち着くかと思っていた場の空気が戻ってしまったことで流石に身をすくめる。
「あんたたち! 映画館でなんてコトしていたのよっ!」
「…あ」
 二人も思い出したのだろう。

415:朴念仁の愛され方
07/09/14 19:33:24 UNrIsoAb
 ぼっと顔を赤らめる。
 ふ、普通なら可愛いで済むわよ。でも、その赤ら顔の原因を考えたらそれで済ませられないわ。
 て言うか済まさいでか!
「…怖くて、しがみついていただけです」
「う、うん。そうだよハルにゃん」
 そー来たし。
「…ならいいわ」
 あたしはにやりと笑う。
「明日、映画見に行く予定だから、あたしも怖がっちゃおっと」
「だ…!」
 ミヨキチと妹ちゃんが同時に言いかけて口をぱくぱくさせている。
 駄目、なんて言えないわよねー。
 スタートラインに立たせてしまったなら立たせてしまったで、遠慮無くいくわよ。
「怖い映画は好き」
「わ、わたしもですぅ…」
 しまった、こっちもだった。
「……」
 三者会談どころか五者会談で視線が交錯し合う。
 どうしよう、と思っていたら、元凶のバカが両手にジュースを抱えて戻ってきたわ。
「これでいいか? それと、話はどうなった?」
 何他人事みたいに言っているのよ! あんたの撒いた種よ! …多分。
「…話は、終わったか?」
 何とも肩身の狭そうな顔で聞いてくるキョン。
 でも許してなんてあげない。
 あんたには色々と決めて貰う事があるんだから。
 あたしは周囲を見回してからすう、と深呼吸した。
 自分の顔がいつもの顔になっていくのが自分で分かる。
「キョン!」
「…何だ」
「明日の不思議探索は、ミヨキチと妹ちゃんも連れて行くわよ!」

 つづく?

416:名無しさん@ピンキー
07/09/14 19:34:19 UNrIsoAb
以上、おそまつ。
途中一カ所重複申し訳ない。


417:名無しさん@ピンキー
07/09/14 19:41:44 IwXm2yYW
これはGJ!
頼む続いてくれ
それにしても妹黒いなwwwwwww

418:名無しさん@ピンキー
07/09/14 19:51:57 lFcoMl8U
GJ
続きに期待

419:名無しさん@ピンキー
07/09/14 19:53:14 aByY5kb9
GJ!

寝起きのよだれに何かを感じずにはいられないな
続きを楽しみに待ってます

420:名無しさん@ピンキー
07/09/14 19:56:39 n+4BdaSU
GGGJ!!!
続きwktkしながら待ってますぜ

421:名無しさん@ピンキー
07/09/14 20:01:46 11GfZWP7
ある意味かなりエロいぞ!オティンティンおっきしたじゃないかGJ

422:名無しさん@ピンキー
07/09/14 20:17:28 qiQRPn+q
GJ。
とりあえずキョン妹には時止めのス〇ンドとM〇を生身で倒せる身体能力が(ry

423:名無しさん@ピンキー
07/09/14 20:24:18 X92AuUIr
>>416
GJ!
俺、こういうの大好き

424:名無しさん@ピンキー
07/09/14 20:59:39 nGgDPtuG
>>416
GJ!
全裸で続きを待つぜw

ところで妹ってミヨキチのこと「ミヨキチ」って呼んでたっけ?

425:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:01:40 TlZ84nfn
内容の割に長すぎて途中で萎えた。ゴメン

426:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:08:27 mgAP5som
>>416
二涼辺の作者じゃないよね?
なんか修羅場大好きな所が似てる気がしたw
まあともかくGJ!!

427:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:27:55 dyGw/nxs
>424
確か、「分裂」まででは不明。そもそも、妹とミヨキチが会話した部分が記述されていない。
ただ、「ミヨキチ」という呼称は妹及びその友人との交流を通してキョンが認識しているのは推測できるので、
そう呼んでいても不自然はない、という程度だろう。

大体、そんなこといったらSS的に常識化している「古泉同性愛者説」や「SOS団内恋愛禁止規則」の方が
無茶な気もするぞ。特に前者、本編の記述ではラノベに造詣のない自分には妄想にしか思えんし。

428:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:34:00 11GfZWP7
あたしはミヨちゃんと想像しているの。てへ☆

429:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:37:26 3+K/o4D7
>>427
え、団内恋愛禁止ってSSのオリジナルだっけ?


430:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:55:36 mgAP5som
>>427
妹のミヨキチへの呼称はミヨちゃんがデフォだと思ってた俺がいるw
てかそもそもミヨちゃんってのはどこが発端なんだっけ?
アニメでも妹とミヨキチの会話は無いしな。

431:名無しさん@ピンキー
07/09/14 22:11:52 CH+lzavJ
>>429
いや、あれは公式だったと思うぞ。
……たぶん。

432:名無しさん@ピンキー
07/09/14 22:14:03 b22qg6Yz
古泉同性愛者説は、公式であって公式でない

433:名無しさん@ピンキー
07/09/14 22:56:18 z0zEJ+0D
>>432
流本人が禁則事項です☆って言ってたからな

>>416
何という修羅場ww
キョンは間違いなく5人に精力を余すところ無く吸い取られるなw

434:名無しさん@ピンキー
07/09/14 23:04:16 kAVSV1Dp
こーゆーのを待っていたwwww



「ミヨちゃん」のが違和感ないよね


435:名無しさん@ピンキー
07/09/14 23:29:56 dyGw/nxs
うろ覚えで妙なことをいってすまん。
ただ、一言だけいわせてくれ。
誰が上手いことをいえと >>432

436:名無しさん@ピンキー
07/09/14 23:53:36 BS0E17GL
一番妹ちゃんがかわいいと思った俺は、入院したほうがいいですか?それとも入所?
あと、「末永く」とか言う小学生は嫌だろw

437:名無しさん@ピンキー
07/09/14 23:57:47 kAVSV1Dp
普通なら追い付かない程フラグ立ってるのに、物凄い勢いで叩き潰すキョンwwwwww

438:名無しさん@ピンキー
07/09/15 00:40:42 HSGk9quZ
>>436
まぁ妹ちゃんは公式のキャラソンでもガチのブラコンぶりを披露してるからな…
もしこのままキョンが誰ともくっ付かないまま歳を取ったら、ちとヤヴァいことになるやもしれん。

具体的には妹ちゃんが高校生になった時位か(キョンが21)。

439:名無しさん@ピンキー
07/09/15 01:30:31 dG2GktWz
ってか古泉がホモなのって規定事項じゃないのん?

440:名無しさん@ピンキー
07/09/15 01:41:09 YfFMOX1G
ひさびさに投下があっておじさんは嬉しいよ。

441:名無しさん@ピンキー
07/09/15 01:52:05 GQot8HZG
あくまでもネタ、な。

442:名無しさん@ピンキー
07/09/15 06:45:05 q1XRECap
●<僕がホモなのは演技です。実際には両刀ですよ。

443:名無しさん@ピンキー
07/09/15 08:34:38 YXpV5Ibl
あっそ

444:名無しさん@ピンキー
07/09/15 08:37:40 4whVzr6k
>>443
苦戦のようですががんばってください

445:名無しさん@ピンキー
07/09/15 08:49:50 3tIZVFN8
妹は原作でそこまでブラコンしてなかったと思う
キャラソン聞いて?と思ったし

446:名無しさん@ピンキー
07/09/15 10:13:32 7IQL+e4H
まぁ、あの年で兄とあそこまで仲がいい妹ってのはあんまりいないな。
大抵はある程度距離置くもんだし。

447: ◆LeyXT4003g
07/09/15 12:14:43 QsMZdBgn
>>416
読み出しの5行までは、うわー上手じゃーん!って思えたんだけどさー。
だいじなコトを地の文で流して書いちゃったり、ワザとらしくイキナリ回想させちゃったり、
もー少しコーセーってもん考えて書いてほしーなー。
それに何?この主人公。
「お前はイブの予定決まってる?」
「バレンタインて何の日?」
なーんて言ってニヤニヤしてる、ヤラセで嫌味なヤツじゃんかー。
主総受けの設定って、嫌いじゃない、ううん積極的に好き、ゴメン大好きなんだけどー、
ヒロインにも、じぶん自身にも、読者にも平気でウソついちゃってるような人って、朴念仁とは違くない?どこが『大河』なのさ?
そんなキャラクターに変えちゃったのかなあと思ったりしたけど、なーんかそんな気配ないっぽくて、
なんでこんなヒトにこのコたちはキュン死になんだろーって呆れちゃうのね。
ユーモアとかパロディとか、細かいところはスッゴク充実してただけに、なんかガッカリ。
続くみたいだから褒めたげたかったけど、そーゆー気分ちょっとなれなかった。
だけどね、気を悪くしないで。みんなGJしてるんだから、ヘンなのは俺なんだろーとオモ。
「本当は俺、わかってたんだ」なんてセリフをラストで使いたかったのなら、ゴメンナサイ。
えっちけー。驚愕したポイント!
>ミヨキチもお前のお母さんなんだから、その間俺の後ろで何故かどきどきするのは止めなさい。
これ、普通に書いたんだったら、あなたスゴイ!(『お前の』はイラナいし『何故か』はワザとらしくてもっとイラナいケド)

448:名無しさん@ピンキー
07/09/15 12:19:24 s1LFmbLZ
>>447
それはナイわwwwwww

449:名無しさん@ピンキー
07/09/15 12:31:58 bPrQ886M
久々だなwww

450:名無しさん@ピンキー
07/09/15 12:48:49 8TKGRyGu
>>447
おまえがイラナいwww

451:名無しさん@ピンキー
07/09/15 12:49:50 JPlOR+KX
>>447
語彙と文章構成力を鍛えましょう

452:名無しさん@ピンキー
07/09/15 13:08:40 tqpEWSvJ
>>447
これでSSも書いているって言うんだから、どんな恐ろしい代物を書いているのか想像もつかないよ。

453:名無しさん@ピンキー
07/09/15 13:13:03 iNb3hpDk
>>447見えないんだけど
一時期沸いたいちゃもんつけの人かな

454:名無しさん@ピンキー
07/09/15 14:01:54 YfFMOX1G
感想にレスする必要はないのよ皆様。

455:名無しさん@ピンキー
07/09/15 14:24:20 45ZaXshT
何か当初に比べて朝比奈さんのクオリティが大分落ちてるなと思う今日この頃

456:名無しさん@ピンキー
07/09/15 15:29:05 GQot8HZG
もうすぐフォロー朝比奈さん書きが来るから大丈夫だよ。

457:名無しさん@ピンキー
07/09/15 15:38:31 ubLUrHMu
涼宮さん、「赤い扉」じゃなくて「赤の扉」ですよ?

458:名無しさん@ピンキー
07/09/15 17:16:44 S8VsF2AV
朴念仁の愛され方が日常会話に見える自分は末期なのかな?

459:名無しさん@ピンキー
07/09/15 18:01:49 48MVCGV3
大量ですね?www

460:名無しさん@ピンキー
07/09/15 18:07:49 tqpEWSvJ
>>454
こういうのを感想とは言わない。

461:名無しさん@ピンキー
07/09/15 18:16:34 mteojgB8
批評として成り立ってないだけで感想とするなら別に問題ないんじゃない?

462:名無しさん@ピンキー
07/09/15 19:08:15 +rHxohdo
嫌味にならない若干肯定してる部分のある否定的な文章は難しい
だから気に入らない作品はスルー、に皆なると思うんだけど
まあ作者がどう思うかなので、周りがあまりどうのこうの言わない方がいいんでないの
この場合わざわざトリップまで付けてる訳だし

463:名無しさん@ピンキー
07/09/15 19:10:58 tqpEWSvJ
>>447は批評でも感想でもない、ただの煽り。
わざわざ自分のレスで周りの人間の感情を逆撫でしようとしている。

そうでなければ、通常はあんな煽り口調にはならんよ。

464:名無しさん@ピンキー
07/09/15 19:14:06 W+uf1fEB
すいません、 通りますよ

⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ
ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ⌒ヽ
⌒ヽ ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ヽヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ヽヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ
ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ヽヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ヽヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ⌒ ヽ
/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ⌒ヽ
ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ/⌒ヽ⌒ヽ
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/⌒/⌒ヽ /⌒ヽ  /⌒ヽ /⌒ヽ /⌒ヽ  /⌒ヽ /⌒ヽ  /⌒ヽ /⌒ヽ  /⌒ヽ  /⌒ヽ  /⌒ヽ /⌒ヽ  /⌒ヽ
  / ´_ゝ`)/ ´_ゝ`)/ ´_ゝ`) ´_ゝ`)/ ´_ゝ`)/ ´_ゝ`)/ ´_ゝ`)/ ´_ゝ`)  ´_ゝ`)/ ´_ゝ`)/ ´_ゝ`)/ ´_ゝ`) ´_ゝ`)/ ´_ゝ`)
  |    / |    / |    / |    / |    / |    / |    / |    / |    / |    / |    / |    /|    / |    /
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  // | |  // | |  // | |  // | |  // | |  // | |  // | |  // | |  // | |  // | |  // | |  // | |  // | |  // | |
 U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U  U U  U  U  U


465:名無しさん@ピンキー
07/09/15 20:03:41 buWOqsLo
>>453
俺もあぼ~んになってる

466:名無しさん@ピンキー
07/09/15 20:28:13 OryENJL1
ここのSS見てたらなんか書きたくなってきたわ。
暇になったら取りかかることにするよ。

467:名無しさん@ピンキー
07/09/15 22:11:22 5s4Aouac
>>464
そこ犬の糞が落ちてるぞ

468:名無しさん@ピンキー
07/09/15 23:10:00 JPlOR+KX
>>464
久々にみた

469:頭悪い長門
07/09/16 03:49:35 OIbL7DOB
「涼宮ハルヒとわたしは普通の人間じゃない」
 いきなり妙なことを言い出した。
「なんとなく普通じゃないのは解るけどさ。お茶かと思ったら白湯を出されたしな」
「白湯ってなに?」
「……お湯のことだ」
「茶葉を入れ忘れた。迂闊」
 なんと言うか……。思ったよりボケ気質だったんだな。
「それほどでもない」
 褒めてない。それで? 涼宮とお前が普通じゃなくて、それでどうした。
「……」
 おいィ?
「うまく言語化できない。情報の伝達にアレが生じるかもしれない」
 アレってなんだ。前置きの段階で言語化に失敗するなよ……。と思わず嘆息。
「端的に言えばわたしは宇宙人。涼宮ハルヒは神、いわゆるゴッド」
 えーと、もう帰っていいかな。

470:名無しさん@ピンキー
07/09/16 06:19:34 dS30sNdx
>>469
長門頭悪すぎwww

471:名無しさん@ピンキー
07/09/16 11:03:39 8eTefJM0
>>469
ちょっと続きが読みたいね

472:名無しさん@ピンキー
07/09/16 12:19:41 YSA52iDs
3歳児が2ちゃんなんかやるからだw

473:名無しさん@ピンキー
07/09/16 14:51:34 VIA3f1Jl
うわ…
佐々木厨厨のこと言っただけでなに佐々木スキー扱いしてるんだよ…
佐々木みたいな男口調の女なんか好きじゃないし

474:名無しさん@ピンキー
07/09/16 14:52:06 VIA3f1Jl
うわ…
佐々木厨厨のこと言っただけでなに佐々木スキー扱いしてるんだよ…
佐々木みたいな男口調の女なんか好きじゃないし

475:名無しさん@ピンキー
07/09/16 14:52:41 VIA3f1Jl
連レスしてた
スマソ
自重するわ

476:名無しさん@ピンキー
07/09/16 14:53:09 nzuKR5xt
>>475
何こいつ…
きめぇ…

477:名無しさん@ピンキー
07/09/16 14:55:15 3omG8fiF
>>475
息するのも自重しろ

478:名無しさん@ピンキー
07/09/16 15:06:33 K3jVPcPP
>>473-475
消えろゴミクズ

479:アスタリスク ◆MQvo6f6euI
07/09/16 15:16:23 /G+jflIM
ID:9A2df8P2
ID:DRABWVG1
ID:B64R8Bzy
ID:/fV1hpPb
ID:WEh8OwYi
ID:TlZ84nfn
ID:W+uf1fEB
ID:VIA3f1Jl
ID:nzuKR5xt
ID:3omG8fiF
ID:K3jVPcPP

480:名無しさん@ピンキー
07/09/16 16:00:14 2enU96Ak
そんな事よりウチの妹が馬鹿でさぁ~

481:名無しさん@ピンキー
07/09/16 17:53:54 GWUd6g94
そんな事よりウチのキョンが馬鹿でさぁ~

482:名無しさん@ピンキー
07/09/16 18:15:43 F43B6QSo
そんな事よりウチのみくるが空気でさぁ~

483:名無しさん@ピンキー
07/09/16 18:25:34 00nqrsfT
そんな事よりウチの朝倉が不憫でさぁ~

484:名無しさん@ピンキー
07/09/16 18:28:16 MrIWYLhz
そんな事よりウチの古泉がゲイでさぁ~

485:名無しさん@ピンキー
07/09/16 18:32:23 GXY3kTso
そんな事よりウチのシャミセンがぬこでさぁ~

486:名無しさん@ピンキー
07/09/16 18:39:58 1Hwf0mCa
そんな事よりウチの佐々木がササッキーでさぁ~

487:名無しさん@ピンキー
07/09/16 18:47:25 MrIWYLhz
そんな事より>>416の続きが楽しみでさぁ~

488:名無しさん@ピンキー
07/09/16 18:48:13 hV7gjrWr
そんなことより>>475
何こいつ…
きめぇ…

489:名無しさん@ピンキー
07/09/16 18:59:50 jW5PeJpS
そんな事よりウチのわかめが喜緑でさぁ~

490:名無しさん@ピンキー
07/09/16 19:35:15 5ASY0jFp
そんな事よりウチの九曜がコンブでさぁ~

491:アスタリスク ◆MQvo6f6euI
07/09/16 19:38:27 /G+jflIM
ID:hV7gjrWr

492:名無しさん@ピンキー
07/09/16 19:40:41 f2zvdtU9
喜緑さんの憂鬱の続きマダー

493:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:29:09 DsBjtJr0
そんな事よりウチの谷川が続き書けなくてさぁ~

494:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:29:56 FN00y+6c
それは……禁則事項。

495:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:54:56 F43B6QSo
そんな事よりウチの会長が掘られてさぁ~

496:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:50:55 fsXU0d6y
流され過ぎだろっ!!
そろそろ誰か突っ込めよっ!!

497:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:56:29 Y/eVyXVK
●>それでは僕が……

498:名無しさん@ピンキー
07/09/16 23:27:44 584069dL
やめて
おしりが
いたい

499:名無しさん@ピンキー
07/09/17 00:43:02 oN/z2sH0
私の背後に立たないほうがいい…

500:名無しさん@ピンキー
07/09/17 00:59:13 6h1wtdcB
「あっ…ああっ…橘さ…ぁん…ゆるっ…んぁっ…して…」
「何を言ってるんですか~これは佐々木さんが神様にならないなんて言い出すからしてるんですよ~」
そう言って橘さんは私の捻挫した手首を少しいじる。
少し痛がる私を面白がって鎖骨に舌を這わせてくる。
「痛っ…んんんっ…あっ…耳は!だっ!あっ!」
そして耳の中に舌を入れてくる。



駄目だ…佐々木と橘とか難しすぎだろ…

501:名無しさん@ピンキー
07/09/17 01:03:16 pDoNSVqK
>>500
おっきしたんだが……
続きを期待

502:名無しさん@ピンキー
07/09/17 01:49:09 lx2dfH6z
キョンが失明する話の名前って何だっけ

503:名無しさん@ピンキー
07/09/17 01:50:14 ETbMfmVf
エクスカリバー

504:名無しさん@ピンキー
07/09/17 01:51:26 0HqV1Seg
二度目の選択

505:名無しさん@ピンキー
07/09/17 01:57:41 nf+RIib3
>>503
おまい!なんという事を

506:名無しさん@ピンキー
07/09/17 05:55:30 3NlaJJyt
最近ハルヒ見始めたばかりで基本的な質問していいかな?
なんでハルヒはキョンを選んだの?

507:名無しさん@ピンキー
07/09/17 05:58:44 DepeNzo/
今のところは中学の時のジョンスミスが関係してると考えるのが普通
タイムパラドックスだからなんか微妙な結論ではあるけどな

508:名無しさん@ピンキー
07/09/17 06:04:16 3NlaJJyt
ジョンスミスって誰だー????????
小説は読んだことないんだよ・・・

509:名無しさん@ピンキー
07/09/17 06:08:31 oGUlGuq8
なんという…!

510:名無しさん@ピンキー
07/09/17 06:09:58 DepeNzo/
アニメでもそのうち出てくんじゃない?
ひとまずSOS団の中に一般人でしかないキョンがいるのかっていうのは
物語中の最大の謎っていう位置づけでいいんじゃないかな

511:名無しさん@ピンキー
07/09/17 06:11:23 3NlaJJyt
>>510
それは第二期で出てくるの?

512:名無しさん@ピンキー
07/09/17 06:11:56 9gf5hRiF
なんだ俺寝惚けてるな。2行目
     「SOS団の中に」→×
「どうしてSOS団の中に」→○

513:名無しさん@ピンキー
07/09/17 06:13:19 oGUlGuq8
第二期もどうなってるのかわからんがアニメだけでなく小説のほうを三巻まで読むといい

514:名無しさん@ピンキー
07/09/17 07:16:39 F/cMRSIU
取り敢えず原作読んでない奴は消失まで読め。話はそれからだ

515:名無しさん@ピンキー
07/09/17 07:58:11 kTgoCjkR
ジョンスミス知らないやつはこのスレ来るなよ…

wikiでも見てろっての

516:名無しさん@ピンキー
07/09/17 09:37:26 nf+RIib3
何という高度な釣りだ…



517:名無しさん@ピンキー
07/09/17 10:03:02 D+atfJUY
>>508……まさかこれほどとは……大した奴だ……

518:名無しさん@ピンキー
07/09/17 10:43:58 UYWHxVBT
ここは谷川流エロパロスレだからな。
保管庫もラノベに分類されてるし。
原作読んで無いなら来んな

519:名無しさん@ピンキー
07/09/17 11:30:40 6jL7XsUP
>>508
お前、原作読まずにここのSS読んだら意味解らんの多いだろ…
そして、ネタバレの宝庫だぞ…

520:名無しさん@ピンキー
07/09/17 11:56:43 zKYSRMin
476 名前: イラストに騙された名無しさん [sage] 投稿日: 2007/09/17(月) 05:54:21 ID:fj+XT7wp
最近ハルヒ見始めたばかりで基本的な質問していいかな?
なんでハルヒはキョンを選んだの?
477 名前: イラストに騙された名無しさん [sage] 投稿日: 2007/09/17(月) 05:56:08 ID:vEDS9lKj
>>476
七夕、ジョン・スミス、きまぐれオレンジロード
478 名前: イラストに騙された名無しさん [sage] 投稿日: 2007/09/17(月) 06:05:53 ID:vEDS9lKj
>>476
好きになるのに理由は一つじゃないが、「退屈」に収録の「笹の葉」を読むと良い。
479 名前: イラストに騙された名無しさん [sage] 投稿日: 2007/09/17(月) 06:07:36 ID:fj+XT7wp
>>477>>478
ちなみにアニメしか見たことないんだよ・・・

480 名前: イラストに騙された名無しさん [sage] 投稿日: 2007/09/17(月) 06:13:45 ID:vEDS9lKj
>>476
アニメでは、その謎が伏線として、第二期につながるのです。


521:名無しさん@ピンキー
07/09/17 12:40:18 4Q8hzhg2
ハルイがそう思いこんでるのに溜息でなぜキョンがキレたかの方が謎だ
キョン自信には力が効かなかったりするん?

522:名無しさん@ピンキー
07/09/17 13:03:32 vlDVNjKY
キョンはハルヒと絡み合うためだけに存在します。

523:名無しさん@ピンキー
07/09/17 13:27:44 6jL7XsUP
>>521
●<原作のとある短編の、僕のとある台詞に、あなたが探している答えに近いものがあるはずです

524:名無しさん@ピンキー
07/09/17 14:11:11 lC25T1FD
最近のこのスレの低迷ぶりは慚愧に耐えないの。

525:名無しさん@ピンキー
07/09/17 14:53:46 MmHl6adM
個人的にはそうでもない

526:名無しさん@ピンキー
07/09/17 15:03:25 cGXTx72Q
●が出てきてからウザくてしかたないね
面白いつもりなんだろうな、本人達だけは

527:名無しさん@ピンキー
07/09/17 15:07:24 nf+RIib3
スルーできないのか?

528:名無しさん@ピンキー
07/09/17 15:10:42 whWlUYs5
ところで、今書いてるのが確実に20レス越えるのですが、ここって連投規制どれくらいでしたか?

529:名無しさん@ピンキー
07/09/17 15:12:54 MD2ok8JG
すきにしたまへ

530:名無しさん@ピンキー
07/09/17 15:26:23 ETbMfmVf
すきにしたま屁

531:名無しさん@ピンキー
07/09/17 15:33:29 6jL7XsUP
※エロあり注意です




「にゃあ……にゃ、みゃ、にゃああああぁぁぁ!!」
 ガスン。
 その小さな躯体には到底似合わない大振りのアレを、更にその数十倍、いや、数百倍のサイズはあろうかという未知の穴に突っ込もうと、我が家の三毛猫は必死にもがいている。
 いっぽう挿れられている側はといえば、雄叫びなのか何かの擬音なのかよく解らない音色を発し、その半透明の体を細かく痙攣させている。
「みゃあ……みゃあ……にゃあ……にゃあ……」
 特に名古屋の人が吹き替えを申し出たというわけではなく、なんとなくそんな鳴き声がこだまする灰色空間。空間は灰色だが、あの周辺だけがやたらとピンクに染まっている。ついでに言えば愛する三毛猫のお相手の身体はクリアブルー。
 その穴ももちろん半透明であり、ピストン運動の際に内部の状況が余すところ無く目で確認できるのが妙にエロい。
 だらしなく涎を垂らしながら、目を細めてお互いを確認し合う。片方は目があるのかどうかも解らんが。
 なんだか頭が痛くなってきた。
 そうこうしているうちに、いよいよ限界が近づいてきたのか、運動の周期が徐々に短くなり、終わりが近いことを俺に感じさせる。
「にゃっ、にゃっ、にゃっ、にゃっ」
 という恐らく喘ぎであろう鳴き声に呼応するように、穴を貸している巨大な人型野郎も激しく雄叫びをあげる。もの凄い音量だ。きっと今ごろ何かの大群がこちらへ向かっているに違いない。
「そろそろ、頃合でしょうか」
 そう言って古泉が久方ぶりに赤い玉に変化し、雄叫びの発生源へと突進を始めた。
 そしてまもなく、その巨人は色々と切断されて崩れ落ち、ついでに空にヒビが入って明るい空を取り戻した。
「……古泉」
「なんでしょう」
「……いや、いい」
「ええ、何も言わない方がいいでしょう」





532:名無しさん@ピンキー
07/09/17 15:46:19 uQiMMNyh
エロパロ板でエロあり注意って・・・

533:名無しさん@ピンキー
07/09/17 16:07:33 XTGzjjvY
哀れ
シャミセン打ち止めか……

534:名無しさん@ピンキー
07/09/17 16:11:37 uQiMMNyh
どうでもいいけど猫が交尾してる時の声はアオーーアオーーと聞こえる

535:名無しさん@ピンキー
07/09/17 19:10:24 csoLMD9l
キョンと禁則事項中のハルヒも凄い鳴き方するらしいね。

536:名無しさん@ピンキー
07/09/17 19:57:34 x10l75Cz
慚愧ってなんて読むの?

537:名無しさん@ピンキー
07/09/17 20:14:44 YYPHlkAt
>>536
鶏肉の料理だっけ?

538:名無しさん@ピンキー
07/09/17 20:19:58 D+atfJUY
赤パンのレスラーだよ

539:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:01:18 GXmbp0YK
残った金のことだな

540:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:05:15 MD2ok8JG
鰤のあれだよ

541:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:29:26 xczlW4e0
もうこのスレ終わったな……

542:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:45:06 V2xr3UyU
新作が投入されないからな

543:52-265
07/09/17 22:02:59 whWlUYs5
投下します。
エロなし。21レス予定。
続き物です。



544:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:05:09 whWlUYs5
Prologue.

 最初に、朝倉涼子の事を少しだけ語ろうと思う。
 まあ、俺はあまり彼女の事を知っているわけではないので『少しだけしか語れない』と言った方が正しいのかもしれないが、そんな事は語られる側からすれば些細な違いというやつであろう。

 ――さて、朝倉涼子の事、だ。

 喜緑江美里と長門有希の小さい頃からの親友(本人達談、やや疑わしい)であり、谷口いわくトリプルエーランクであり、我等がクラスの誇るべき(?)委員長であり、済し崩し型SOS団準団員でもある少女。
 喜緑が引き起こす様々な事件に、自分から飛び込んでいるとしか思えないほど高確率で巻き込まれ、涙ぐんでいる姿が印象に残っている。


 俺達の味方、というか喜緑達にとっては同志だった………はずだ。

 ただ、気付かなかっただけ。

 ただ、二人とも、気付けなかっただけ。


 その結果、彼女は最期に、俺達に、世界に喧嘩を売った。
 それでも彼女は最期まで、強くて、弱い、俺達の大事な友人だった。

 結局の所、俺が語れる事といえばこれくらいしかないのだ。



 話は変わるが、昔読んだ漫画で登場人物(多分主人公の子孫か何かだったと思うが、うろ覚えですまん)が、東京まで行くのに飛行機を使おうが新幹線を使おうが、東京につくという結果に変わりはない、というような内容の事を喋っていた。
 納得できない、つーか、したくない。
 いや、別にそのセリフに異議を唱えようってわけじゃない。結果が全てという意見も、この現代社会においては殊更に、おそらく間違いではないのだろう。

 ただ、使われなかった乗り物の事を、ちょっとでもいいから覚えておいて欲しい。


 俺は、そう思っている。

 ――そう、俺は、願っている。



―――――――――――
喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
―――――――――――





545:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:06:30 whWlUYs5
1.


 SOS団が結成されて少したち、夏という季節を迎えて地球温暖化の影響を実害として感じられるようになってきたある日の夜、『もう時間も遅いことだしそろそろ寝ようか』と自分の部屋に戻った俺は、ベッドの上で正座している無口な文学少女を発見した。

「………何してんだ、長門?」
「ずっと、あなただけを待っていた」
「すげー素敵なセリフだ!」
 お前が不法侵入者じゃなかったら、だけどな。今のお前は素敵というか素で俺の平和を脅かす敵なだけだ。
 ただまあ、いつもと変わらないその様子に、体の力は『そんなに心配する事も無いか』と風船がしぼむくらいの勢いで半分ほど抜けていったのであるが、ぷしゅー。
 そんな俺に向けて、長門は正座したまま三つ指ついて、
「やさしく、して」
 と、深々と頭を下げた。
「………ちなみに、それは何だ?」
「こうするのが礼儀だ、と聞いた」
「誰に?」
「喜緑江美里」
 溜息と共に力を全開で抜ききった、つーか抜けていった。ぷしゅー、もしくは、ぱーん。
 ………お前、友達選べよ、マジで。


 さて、どうやら長門は俺に話があるらしく不法侵入という犯罪行為に走ったらしい。
「ばれなければ犯罪ではない、とも聞いた」
「変な事ばっかり学ぶなよ。つーかお前、俺にばれてるからな」
「ついうっかりばれてしまった場合も、慌てず騒がず口封じを、と」
「イヤだ! お前のうっかりで俺は封じられるのか!」
 いかん、これ以上つっこむと身の危険に赤信号点灯、交通事故へとまっしぐらだ。とっとと話題を変える事にしよう。
 
「つーか、それって学校では出来ない話なのか?」
「………あ」
 目を少しだけ丸くしている。普段のこいつから考えると、どうやら凄く驚いているらしいな。
「何だ、その今気付きましたっていう感じの『………あ』は?」
「………ユニーク」
 普段の無表情に戻ってそんな事を言う長門。生放送でセリフをかんだニュースキャスターのごとく、もの凄い今更感が周囲に漂った。
「そんな使い古された言葉では、お兄ちゃん騙されませんよ」
 そんな今更フィーリングにいつまでも流されるままの俺だと思ったら大間違いである。
「………お兄ちゃんに、会いたかったから」
「いやーん! お兄ちゃん騙されましたー!」
 ………騙されついでに流される、いつも通りの俺である。

「で、話って何だ?」
 このままだとグダグダなまま、ゲームオーバーになってしまう。………こらそこ、『それもいつも通りだ』なんてつっこまない!
「わたしと、喜緑江美里の事」
 理想と現実のギャップに苦悩する俺を無視して長門の話は続く。
 こいつと喜緑(ついでに朝倉もなのだが)は現在、同じマンションの別の部屋でそれぞれ一人暮らしをしているらしい、ちなみにこれは谷口情報だ。
 しかし、話題が家庭の事情みたいなものになってくると俺なんかが聞いていいものなのかどうかってのが、………なあ。
「問題無い。そもそもあなたが考えているような話ではない」
 俺の気遣いを切り捨て御免と言わんばかりに一刀両断しながら、彼女はこんなトンでも話を語り始めた。
「わたしはこの銀河を統括する情報統合思念体によって造られた………」




546:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:08:10 whWlUYs5
 全てを話し終えた長門は、それでも正座を崩す事無く、ただじっと俺のほうを見つめている。どうやら俺の反応を待っているようだ。
「あー、長門よ」
「………何?」
「ようするに、お前は自分の事を宇宙人だと思っているわけだな?」
「厳密には違う。だがしかし、この星の言葉を使うならば、それが一番近しい表現だといえる」
 ちなみに、こいつの任務は喜緑江美里を観測してその結果を親玉の情報ナントカカントカに送る事、らしい。
 どうやら喜緑のヤツは宇宙に君臨する親玉からも一目おかれる存在らしい。
 いや、ほんと凄いね。はびこってるね、………妄想が。
「それで俺にどうしろっていうんだ」
 溜息交じりの問いに、口調の変わらない単調な答えが返ってくる。
「あなたはあなたの思うままに行動すれば良い」
 分かったよ。んじゃとりあえず、1、1、9、と。
「ゆきりんビーム」

 何の音もしなかった。
 ただ、俺の携帯が半分に切れ、床に転がった。

「え!」
 驚いて顔を長門の方に向ける。
 彼女は左手で作ったVサインもどきを左目に当てた格好で、こちらをじっと見つめていた。
「今のは?」
「ただの超振動性分子カッター」
「ビームじゃねーのかよ!」
 いや、ツッコミどころはそこじゃないよな。
 携帯は『切断面をくっつけたら普通に通話できるようになるのでは』と思えるほど滑らかに切られている。
 超振動性分子カッター? What?
 目から出した? How?
 パニックに陥りながらも長門を注視する。
「………?」
 長門は左手を目に当てたまま首を横にカクリと動かした。おそらくは『何?』という事なのだろう。正直言ってその仕草は、
「あー、可愛いなあこんちくしょう!」
 脳内回路が大混線におちいってたせいか、抑制機能が働かず、思った事がすぐ口に出た。

「………!」
「………え」

 音もなく、俺の髪の毛が何本か、床にパラリと舞い落ちた。
「………あのー、長門様」
「………少しだけ、興奮した」
「いやーん! お兄ちゃん、命が命が大ピンチですよー!」

 長門は左手を目に当てたまま(要するに発射準備OKなまま)、俺に向かってこう言った。
「信じて」
 俺が何を言えばいいか分からず黙っていると、長門はそれをどうとったのか、視線を床に転がっているマイ携帯の残骸へと向けた。
 携帯は目に見えないほどの大きさに細切れにされ、どこからか吹き込んできた風とともに消滅した。
 そのまま、また俺に視線が向く。
「これで最後、………信じて」
「いやーん! お兄ちゃん、めっちゃ脅されてますよー!」

 こうして俺は長門が、まあ宇宙人かどうかは置いておいて、なにやら底の知れない力を持っているという事を、文字通り体で分からされたのである。………やれやれ。




547:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:09:49 whWlUYs5
 あ、それと、風と共に消えたマイ携帯は長門がちゃんと再構成(?)してくれた。
 見た目は変わりないんだが………なんか変な機能つけてないだろうな。
「特には」
 そうか? まあ、ならいいんだがな。
「ちなみに、4、6、4、9、の順にボタンを押すと三秒後に盛大に自爆し、半径1キロが焦土と化す」
「つけまくりじゃねーか!」
「………駄目?」
「不便すぎるだろうが!」
 電話番号とかメルアドとか、4649が含まれているものって結構多いだろ。まあ、登録済みのヤツなら電話帳を使えばいいんだけどな。
「理解した」
 そう言って長門は俺の携帯を手に取り、カセットテープを逆回しにしたような音を目で追えないほどの高速で動く口から出した。

「終わった」
 ………そうか。まあ、普通の携帯に戻っているんなら、その手段にツッコむ事はしないけどな。
「4649を含む電話番号にかけた時は、半径10キロが、どっかーん」
「悪化したー!」
「送信相手のメルアドに含まれていた場合、日本列島が、どっかーん」
「さらに悪化したー!」


 それと、今までの苦労がまだ入り口にしか過ぎなかったって事も、いろんな意味で理解させられた。
「………ユニーク」
「は、ははは」


 ………泣きてえ。





548:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:15:58 whWlUYs5
2.

 翌日。
 これからの自分の身の振り方とか長門との付き合い方とかを延々考えつつ、結局答えが出ないまま朝を迎えた俺は、寝不足の頭をメトロノームのように左右にふらつかせながらも、奇跡的に事故る事無く自転車で駅前へと向かっていた。
 SOS団の団活動の一環として喜緑のヤツが主張している事の一つに、休日に行う不思議探索という物があり、本日はその一回目である。
 動物園の動物なみにやる気の出ない団活動ではあるが、さすがに初回から遅刻というわけにはいかんだろう。………つーか、んな事したら後で喜緑にどんな目にあわされるかわからんからな。


 俺と同じ考えだったのかどうかは分からないが、俺が駅前についた時、俺以外の団員と何故か正式団員ではないのに出席率九割(強制連行含む)を超える朝倉の計五人はすでに集合していた。
「遅いですよ、罰金ですね」
 いやいやいや、確かに最後になったのは認めるが、それでもまだ集合時間よりは前だぞ。
「昔の人は良い事を言いました」
 何だ?
「この宇宙ではわたしが法律です」
「それ明らかに今お前が作ったセリフだろ! しかも全然良い事じゃねぇし!」
 その後行われた多数決という数の暴力により、結局俺のおごりという事で決着し、適当に選んだ喫茶店に入る事になった、………やれやれ。


 おごりはSOS団メンバー全員と何故かいる朝倉の分、あわせて6人分か………さらば諭吉、こんにちは一葉&英世。
「この店で一番高いデザートを持ってきてください」
「あ、あたしもそれで」
 ………さらば一葉、こんにちはニュー英世。
「………おかわり」
 さらばラスト英世。
「………そして誰もいなくなった」
 俺の財布がミステリーである。
「おや、喜緑さんが探していた不思議というものがこんな所にありましたよ」
「本当ですね。犯人の一刻も早い逮捕を心よりお祈り申し上げます」
「犯人はお前等じゃー!」
 まあ、犯人を見つけたところで解決するものでもないけどな。
 借金生活に突入しなかっただけましと泣き寝入り、………せにゃならんのか?
「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」
「………おかわり」
「あ、あたしもー」
「ふふふ、足りない分はツケという事で。………トイチですが」
「お前等みんな敵だー!」
 愉快なワクワク借金生活スタートである。………ああ、厄日だ。


「さて、では三組に分かれましょう」
 こんな風な温かい会話と共に、全員が俺という会社を経営破綻に追い込んだ後で、喜緑がこんな事を言いだした。
 どうやら不思議探索とやら物量作戦で行われる事になったらしい。
「あ、それであたし呼ばれたんだ」
 ………朝倉よ、お前は理由も知らずに付いてきたのか?
 どこからつっこもうか考えているうちに話が進んでしまい、とりあえずグー、チョキ、パーで分かれる事になった。

 結果、
 グー:俺、朝比奈さん
 チョキ:長門、喜緑、朝倉
 パー:古泉
 と、なった。



549:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:17:35 whWlUYs5
「朝比奈さん、よろしくお願いしますね」
「あ、はい、こちらこそ。いたらない点も多いかと思われますが、末永くお願いいたします」
 なにやら癒される事極まりないレスポンスを返す朝比奈さん。
「………二人とも。分かっているとは思いますが、これは遊びではありませんからね。もし遊んでいたら………うふふ」
「………早く、来る」
 無駄に不穏当な言葉を残しながらも長門に首根っこをつかまれ引きずられていく喜緑。
「えへへ、三人でお出かけっていうのも久しぶりだよね」
 それに付いていく朝倉。
「じゃ、俺達も行きますか」
「そうですね」
 そんな微笑ましい三人娘を見送った後で、俺達も出発する事にした。

「ららら、ろんりーちゃっぷりーん」
 ………後ろから聞こえてきた耳に絡みつくような物悲しい歌声は、聞こえなかった事にした。



 さて、女の子と一緒に行動する時、普通の男という生き物はどんな事を感じるものなのだろうか?
 しかも相手が超のつく美少女である。谷口いわくテリブルエーである。
 一般論としてはある種の高揚感と独占欲を感じる人が多いらしいし、先の質問の答えも大体それと似たようなものになるだろうと思う。
 しかし、俺が感じたのはそんな思春期チックなものではなく、こう、哲学チックというか、電波チックというか、とにかくそんな感じの複雑なものであった。
 それは、彼女が俺にした話が、昨夜の長門と同じように『この人脳内のネジが二・三本吹っ飛んでるんじゃないのか?』と疑わせるような内容だったからである。


「実はわたしはこの時代の人間ではありません。もっと未来から来たの」
 休憩のために座り込んだせせらぎが聞こえてくるほど川に近いベンチの上で、朝比奈さんはいきなり俺に対してこんな事を言い出した。
「はあ、そうですか」
「あー、信じてないでしょう」
 確かに昨日までの、こういうのは漫画やアニメの中だけの話だ、と思っていた俺なら信じてなかったのかもしれない。
 しかし、昨夜文字通り常識というものを細切れにされた今の俺には彼女の言葉を頭から否定することはできないのである。
 まあ、かといって『ああ、それはなんと素晴しい事でしょう』などと全肯定する気もおきないので、必然、このような曖昧な返答になってしまうのであるが………。
 信じるべきか、疑うべきか、それが問題だ。
「むー、じゃあ証拠を見せてあげます」
 そんな俺の古典文学的な煩悶など届くはずも無く、朝比奈さんは可愛らしいとしか表現のしようが無いふくれっ面のまま俺を引きずるようにして歩き出した。
 なんつーか、引きずられるのに慣れてきた自分が少し憂鬱だね。


 程なくして着いたのは見覚えの無い高層マンションの側面であった。
「で、ここで何をする気なんですか?」
「あたしはこれからここで起こることを言い当てます」
 どうやらそれが、自分が未来人である事の証明になると思っているらしい。
 俺をここに連れてきたのが彼女である以上、いくらでも事前に小細工する事は可能なわけであり、たとえ見事言い当てたとしてもそれが証明になるかと問われれば疑問詞をつけざるを得ないのではあるが、………まあ良いか。
 目に炎を灯しながら頑張っている人間に、消火器をぶっかけるほど鬼じゃないしな。それが朝比奈さんならなおさらだろう。




550:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:20:15 whWlUYs5
 朝比奈さんは腰に手を当てて、『えっへん』といわんばかりに胸を張りながら、こんな事を予言した。

「いいですか、今から49秒後、このマンションの13階から植木鉢が落ちてきて、たまたま通りかかった犬さんの頭を直撃します」


「………」
 もの凄く本当は残酷な童話系統な内容だった。
「って、大惨事じゃないですかー!」
 いや、今気付いたんかい。
 ………あ、なんかちょうど子犬がこっちに歩いてくるぞ。
「あ、あ、こっち来ちゃ駄目ですー」
 朝比奈さんが大げさな手振りで追い払おうとするが、人に慣れているのか子犬はそれをかまってくれていると勘違いしたらしく、ワンワンと元気よく鳴きながら喜び勇んで彼女のほうに走り寄ってきた。


「あ、あぶなーい!」
 どちらかというと危ないのはさっきから挙動不審なあなたのほうですよ、という俺のツッコミを無視して、子犬に走りよる朝比奈さん。
 慌てて追いかける俺。

 ――結局、間に合う事はなかった。

 朝比奈さんが子犬の元までたどり着こうかとしたその刹那、
 ぐしゃっ、という生理的に聞きたくない感じの音とともに、朝比奈さんの頭に植木鉢がクリティカルヒットした。

 ………いや、あんたに当たるんかいっ!


「ふぎゅるっ!」
 変なうめき声とともに動かなくなる朝比奈さん。
 ………うーん、太陽がまぶしい、もう夏だねー。
「ってか、大惨事じゃねーか!」
 急いで彼女に駆け寄る俺。子犬は音に驚いて逃げ出していた。恩知らずめ、しょせんは畜生か。
 ってそんな事考えてる場合じゃないよな。えーと、こういう時は、………あー、どうすりゃ良いんだよ!
「とりあえず落ち着いたらいいんじゃないでしょうか」
 起き上がってきた朝比奈さんに諭される。
 うん、そうだな。朝比奈さんの言う通り、落ち着いて考えてみよう。

 ポク、ポク、ポク、チーン

「………埋めるか?」
「いやいやいや」
 朝比奈さんにつっこまれる。
「ならば焼くか?」
「もっと駄目でしょ!」
 朝比奈さんに怒られる。
「じゃあどうすればいいんですかっ!」
 さっきからわがままばっかり言わないでください、朝比奈さん!
「ええー、逆ギレー!」

 あれ、ちょっと待てよ。
 俺の目の前には可愛い係数無限大な自称未来人の先輩が、怪我一つなく存在している。
 ………つーか、朝比奈さん、生きてる?



551:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:22:35 whWlUYs5
「朝比奈さん。平気なんですか、頭」
「もー、心配しすぎですよー。13階から落ちてきた植木鉢が頭に直撃するくらいでしたら、人間意外と何とかなるものですよ」
 ………それはもはや生物学的に人間ではないのではないだろうか?
「さ、これであたしが未来属性を持ってるって、理解してくれましたよね」
 そうですね、どうやら不死身属性をお持ちのようですね。
「あーもう、どうしたら信じてくれるの?」
「いや、あのですね」
 ため息を一つ。

 ああ、本当に馬鹿馬鹿しい。
 長門の事にしてもそうだ。『どう付き合えばいいか』なんて、そんな事は悩むほどの事じゃあないし、そもそも俺はそれが出来るほどたいした脳みそなんか持ち合わせちゃいない。
 いろんな事が吹っ切れた俺は、その感謝も込めてこの上級生の質問に真面目に答える事にした。

「正直、どうでも良いんですよ」
「え?」
「あなたが、たとえ未来人だろうが宇宙人だろうが、その他の何者であろうが、俺にとって、それはどうでもいい事なんです」
 そう、彼女等がどんな存在であろうが一般人の俺に出来る事なんか何も無いし、する気もない。
 俺は俺のまま、変わらずにいる、と真剣な顔で、目をそらさずに言い切った。
「まあついでに言いますと、あなたは俺の尊敬できる(?)先輩です。それで良いじゃないですか」
「………ごめんなさい。凄く良い事を言っているとは思うんですけど、途中の(?)って何なんですかー?」
「まあ、『もう少し頑張りましょう』って事で」
「うー」
 子供っぽいふくれっ面はそれでも、俺の信頼できる先輩の顔だった。



 午後からは朝倉と一緒になった。
 長門と喜緑と朝比奈さんが同じ組になったらしく、やれ衣装だとかアピールだとか俺にとってはこれからの学生生活について頭を抱えたくなるような内容を相談しつつ、わいわい騒ぎながら歩いていった。
「んじゃ、行くか」
「うん」
 さて、そんな不吉な話は聞こえなかった事にして、午後の部開始と行きますか。

「あろーおーん、ぼくーらはー………」
 ………こっちも聞こえなかった事にしよう。


 午後の部が始まり、先程の川に近い道を歩きながら朝倉に問いかけた。
「お前も俺に何か言う事があるんじゃないか?」
「んー、別に、無いよ」
 普通の、だからこそ想定外の返事がきた。
 てっきりこいつは異世界人か超能力者かのどちらかだと思っていたのにな。
「今は、ね」
 ………思いっきり不安なセリフだよな、それ。
 彼女はただ笑うだけで、それ以上何かを言ってくる事はなかった。
 だったら、まあいいか。
 どうせ俺に出来る事といえば、こいつが何かを言ってくるまで待つだけだろうしな。
 特にやる事が無くなったので、川原で独り水切りをしながら『向こう岸まで届いたぜ、ひゃっほーう!』などと乾いた笑い声をあげていた古泉を誘って、喫茶店でどうでもいい事をダベりながら時間を潰す事にした。


 結局、午後はどの班もめでたい事に特に何も無く、今日も一日平和(?)に終わるのであった。
「駄目じゃないですか!」
「何がだよ、喜緑?」
「もっとこう、無いと駄目でしょう。興奮といいますか、血肉和気あいあいみたいな」
「おお、大惨事じゃねーか、色々と」




552:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:24:24 whWlUYs5

3.

 (前略)古泉は超能力者(自称)らしい。(後略)
「ははは、これはまた、………そろそろ泣いてもいいですか?」
「俺の見てないところでな」
 しかしまあ、これで自称を含めるとあいつが言っていたうち異世界人を除くすべてが集まった事になる。しかも全員が、多少の違いはあれ、世界は喜緑を中心に回っていると主張してやがる。
 って事はそのうち異世界人も出て来るんだろうなぁ。誰だよ? 少なくとも俺は全く何の不思議属性も無い一般人のはずだぞ。
「さて、それも彼女が望めば、どうなる事やら」
「やかましい」

 まあ、こんな感じで色々と厄介事は出てきたが、それ以外はおおむね平和な日々だったと思う。


「なあ、何なんだ、この巨大カマドウマは?」
「………情報生命体の亜種」
「で、どーすんだよ」
「ふふふ、どうやらここは僕の「あたしの出番ですね」
「おい古泉、セリフをとられたくらいで両膝抱えて塞ぎこむな、キモい。………ってか朝比奈さーん、何でカマドウマに走り寄ってるんですかー! 危ないですよー!」
「任せてくださーい! こんな図体だけ大きい虫さんなんてあたしの中を流れるこの素晴らしき未来的パワーを使って、ぷちっと………」ぷちっ
「ぷちっと踏み潰されたー! 朝比奈さーん!」
「………ユニーク」
「ふふふふふ、そうですか、そんなに僕はキモいですか。けど最近の扱いを考えますと、いくら温厚な僕でもこう、堪忍袋の緒とかいうやつが、ぷちっと………」ぷちっ
「ぷちっと踏み潰されたー! 古泉―!」
「………ユニーク」


 おおむね、愉快な日々だったと思う。


「おう、古泉。今日は部活休みだぞ。ちょっと喜緑のバカが教師に捕まってな」
「なるほど、それでわざわざ待っている、とそういうわけですか」
「別に、たまたま暇だっただけだ」
「ラブラブですね」
「日本人なら日本語をしゃべれ」
「ははは、ところで他の三人はその事を知っているんですか?」
「ああ、携帯で伝えた」
「………あのー、それなら僕も携帯にかけてもらえればありがたかったのですが」
「いや、俺がお前の携帯に電話をかけることは金輪際無いから」
「………もしかして僕、嫌われてます」
「違う。こっちにも色々理由があるんだよ」
「いいんですよ、気を遣っていただかなくったって、ね」
「あー、もう! ほら、一緒に帰ってやるから、泣くなへこむな俯くな!」
「うふふ」
「うおっ喜緑、もう終わったのか?」
「わたしを置いて帰ろうとした事については後で小一時間問いただすとして、とりあえず一つだけ質問があります」
「別にお前を待つ気なんて最初から無かったけどな。………いや、すまん、嘘だ。だからそんな泣きそうな顔をするな! あーと、質問だったな。お兄さんもう何でも答えちゃうぞー!」
「あ、じゃあ聞きますけど、どっちが『攻め』ですか?」
「やかましい! つーか結局泣きまねかい! うわっ、もう満面の笑顔だよ、こいつ」
「萌えました?」
「萎えました!」




553:名無しさん@ピンキー
07/09/17 22:27:29 YYPHlkAt
一応支援

554:名無しさん@ピンキー
07/09/17 22:27:33 V2xr3UyU
しえ

555:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:28:17 whWlUYs5
 おおむね、素晴らしい日々だったと思う。


「また遅刻ですか。罰金ですよ」
「いや、ちょっと待て。信じられないかもしれないが、俺の話を聞いてくれ」
「何ですか?」
「重い荷物を持っているおばあさんを助けてあげようとしたら、そのおばあさんがそのまま俺の自転車を乗り逃げしやがったんだ」
「ああ、わたしの依頼通りに動いてくれたようですね。さすがおキヌさん(96)」
「お前の仕業かい! つーか誰だよ、おキヌさん(96)って!」
「妨害工作は基本戦術の一つでしょう」
「俺におごらせる事はお前にとっちゃ戦争なのかよ」
「あら、彼女の食事代くらい彼氏が出すもの、でしょう?」
「はあ、とっとと行くぞ」
「え、あ、えと、うん」
「否定しなかったわね(ひそひそ)」
「ああう」
「当然だ、という事でしょうか?(ひそひそ)」
「ううー」
「ご馳走様ですー(ひそひそ)」
「あーうー」
「………ユニーク(ぼそり)」
「………ふ、ふっふふふ」
「おい、喜緑何真っ赤な顔して立ちすくんでるんだ、風邪か?」
「ウニャーーーーー!!!」
「痛い痛い痛い! 蹴るな殴るな引っかくな! ………あ、あと、『ウニャー』って意外と可愛いな」
「ウニャニャニャニャーーーーーー!!!」
「悪化したー!」


 おおむね、安穏な日々だったと思う。


「短冊ねー、お前らは何を書いたんだ」
「これ」
「………『ユニーク』って、お前は何を願っているんだ?」
「僕はこうですね」
「………『必殺技がほしいです』………すまん、正直、いじりにくい。朝倉はどうだ」
「え、いや、あたしは、そのー」
「『必殺技がほしいです』って書いてありますね」
「かぶってる! こっちもすげーいじりにくいー!」
「あ、えっと、あたしはこうですよー」
「………『世界人類が平和でありますように』、うん、癒されるね」
「うふふ、わたしはこうですよ」
「………『世界人類がわたしに跪きますように』、うん、頭痛いね」
「萌えました?」
「萎えました!」


 おおむね、幸福な日々だったと思う。


 でも、それを良しとしなかったやつがいた。

 ――それが、朝倉涼子だったんだ。





556:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:38:34 whWlUYs5
4.

 事件は学校で起こった。
 いや、今から考えるとそれは事件というよりは事故とか天災とかそういったものに近かったのではあるが、当事者である俺達にとってはどちらも大差ない事である。

 その事件は、学校も半日授業になりそろそろ夏休みの足音が聞こえてくるそんな頃、俺の靴箱に一通の手紙が入っていたという状況から始まる。
 『放課後、誰もいなくなったら教室まで戻ってきて』
 『はてさて、これは誰からの手紙なのだろうか?』などという無駄な思考に身を任せる必要もなく、その手紙の文末にはご丁寧にも印鑑つきで『朝倉涼子』と署名が入っていた。

 正直、『油断』、というものはあったと思う。

 俺の周囲に居る異質なやつらは、確かに変人ではあるのだが皆、………まあ、悪い奴らではないわけで、これまで俺は致命的、というか『あ、こりゃ死んだな』と思えるような出来事は経験していなかったのだ。
 だから俺は、誰かに相談するという事を考えもせずに、放課後遅くみんなが帰ってから、そのまま自分のクラスに戻って教室のドアを、開けた。



 夕焼けに染まる教室で、
 全身を夕日に赤く染められながら、

 生まれたばかりのわが子を抱き上げる聖母マリアのような微笑の中に、
 神託を受けたジャンヌダルクのような決意と凛々しさを持ち合わせながら、

 ――朝倉涼子が、そこにいた。



「入ったら?」
「ん、ああ」
 一瞬だけ放心状態であった事を悟られないように努めて普通に教室に入る、………もうバレバレかもしれんが。
「つーか、いたずらじゃなかったんだな」
「そ、実は差出人はあたしなのでした。どう、意外だった?」
「いや、お前、名前書いてたし」
「ああ、そっか。この世界だと、そうしたんだった」
 ??? 何を言ってるんだ、こいつ。
「というか、この世界でも、こうしちゃうんだね」
 何だろう、今の朝倉は笑っているはずなのに、何故か追い詰められた手負いの獣を連想させる。

「なあ、何か変だぞ。大丈夫か、お前?」
「言いたい事があるの。あの時、言わなかった事」

 俺の質問を無視して、夕焼けに染まった彼女は俺の元にゆっくりと歩いてくる。
「喜緑さんや長門さんも頑張ってくれたんだけどね、予定より一ヵ月ほど引き伸ばすのが精一杯だったみたい」
 黒髪をきらきらと輝かせる赤い光に、幻想的な何かを感じて頭がまたぼんやりしてくる。

「『彼』を傷つけたあたしを『神様』は許さない。だけど、あたしは生きていたい」
「何の話だよ」
「世界を壊そうと思うの」
「後悔するぞ、そりゃ」

 ぼんやりした頭では何も考えられず、ただ反射で飛び出しただけの俺のセリフに、『いいのよ』と、彼女は綺麗に笑った。
「あたしはいつだって、やらずに後悔するより、やってから後悔する道を選ぶ。だから………」
 その笑顔に引っ掛かりを覚え、ただでさえ少ない思考力をそっちに向けてしまった俺は、次の彼女のセリフを危うく聞き逃すところだった。


「お願い。死んで」


557:喜緑江美里の告白~the melancholy of fake star~
07/09/17 22:43:25 whWlUYs5


 避けられたのは偶然でしかない。もう一度やれといわれてもそこには元俺という名の残骸しか残らないはずだ。
 俺の頭があった位置を、朝倉が手に持ったサバイバルナイフが、一切の慈悲なく通過していった。



 ………え?

 意味不明、驚天動地、とにかくわけが分からない。
 俺は何でまた放課後の教室で友達にナイフを突きつけられているんだ。
 朝倉は立ち上がって笑顔のままこちらを見ている。
 ジョークか? んなわきゃない。
 今の一撃は俺が避けなきゃ確実に体の一部がさようならしてしまうくらいの勢いがあった。

 それに何より、あの笑顔は、ない。

 やっと気付いた。

 あんな笑顔は朝倉の、いつも俺達に見せていた、本当の笑顔じゃない。


 つまり、

「もう、避けないで欲しいんだけどな」

 要するに、

「あたしのために、死んで、お願い」

 朝倉涼子は、本気で俺を殺す気なのだ。


 一瞬にしてパニックに陥る俺。当然だろう。俺の脳内マニュアルには教室でクラスメイトに殺されそうになった時の対処法なんて無いからな。
 とにかく逃げようと振り返ったら、教室のドアと窓がすべて壁に変わっていた。
「………あ?」
 上下左右前後全てを壁に覆われ、光が差し込むはずなんて無いのに、夕日が室内を赤く染めている。
 状況と状態のあまりの不自然さに一瞬だけ我を忘れた俺に、朝倉が神速をもって突きかかってきた。



 ――あ、死んだ。



 どう考えても避ける事が出来ない必中の距離、速さ。
 『結局こいつも何か変な力を持っていたんだなぁ』という手遅れっぽい考えと共に廻りだす走馬灯。
 最後に浮かんできたのは何故か喜緑の、俺を引きずって行く時の本当に楽しそうな笑顔だった。
 それを最低だ、と考え、最高だ、と想い、
 せめてそれを奪う存在から目だけは離すまいと、ナイフに視線を向けようとしたその時、

 朝倉が轟音と共に横から突っ込んで来た長門の蹴りによって吹き飛ばされた。






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