嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その38at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その38 - 暇つぶし2ch650:名無しさん@ピンキー
07/09/29 15:36:31 w/tHc1Nd
武士の情け&証拠隠滅だろ

651:名無しさん@ピンキー
07/09/29 15:43:47 jLU/u2M4
昔、かちかち山で
狸がおばあさんを 「ばば汁」 にしておじいさんに食べさせる
というお話があるのだが

652:私たちの愛しいお兄様
07/09/29 17:04:34 8dCIAPc8
あれはキモウトじゃねえだろ

653:名無しさん@ピンキー
07/09/29 18:04:24 PRa+XLSt
キモウトラーメン=兄に食べさせる料理と言う固定観念は間違ってると思う。

逆に考えるんだ。
兄が入ったお風呂の残り湯を出汁に使った、"キモウトが食べるラーメン"もまた"キモウトラーメン"なんだ。
きっと麺には兄の抜け毛とかが練りこんであるに違いない。
他にも叉焼はライバルである幼馴染の肉を使っていて、食べるときに「あたしお肉ダメなの☆」と言って捨てるんだ。

654:名無しさん@ピンキー
07/09/29 18:12:34 mBLpATrr
ラーメンからココまで話が泥沼化するのは修羅場スレだけwwww

655:名無しさん@ピンキー
07/09/29 18:45:45 CyO2bipY
泥棒猫の肉入りラーメンを口に入れて、不味そうに吐き出すんですね。

656:名無しさん@ピンキー
07/09/29 19:10:41 YvR2F/SQ
>>652
自分の名前欄よく見て書き込んだほうがいいぞw

657:名無しさん@ピンキー
07/09/29 19:18:48 AU9KThAc
>>656
ばかだな、そっとしといてやれ…

658:名無しさん@ピンキー
07/09/29 19:35:00 f9DcUwGL
あなたの肉は私が食べてあげる。
でも飲み込んであげないわ。
口に含んでからまずそうに吐き捨てるの。

はいはいねーちんねーちん。

659:名無しさん@ピンキー
07/09/29 19:35:56 jLU/u2M4
キモウトラーメンVSキモアネラーメン

いいや

キモウトラーメンVS木久蔵ラーメン

まさに究極と至高の対決に相応しいメニューだ

660:名無しさん@ピンキー
07/09/29 21:02:00 79KgbmGv
この流れから察するに…
キモ姉妹スレに浮気してるやつは挙手したまえ

661:名無しさん@ピンキー
07/09/29 21:04:11 0MyY+uOz
こことヤンデレとキモスレの掛け持ちだが
ほとんどの住人がそうだじゃないか…?

662:名無しさん@ピンキー
07/09/29 21:07:09 PRa+XLSt
嫉妬・ヤンデレ・キモ姉妹・ほの純・依存 の掛け持ちな私。
ついでに新シャアのお留守番スレも見てる。

663:名無しさん@ピンキー
07/09/29 21:12:39 NNdsViWW
>>662
あれ・・おれがいr・・・

ほの純はないわw

664:かちかち山
07/09/29 21:16:36 Q8tAot43
その年の収穫を終わらせた田舎の風景は、全体的にセピア色がかっている。
穂を刈り取られた田園には規則正しく株が整列し、土手周りの草木は枯れるか黄色く色あせている。
田園の中心にぽつりぽつりと点在する集落のほうでも、機械から発せられる風によって吹き付けられ、溝に溜まった籾殻がアスファルトを黄土色に彩っていた。
この時期には、家々の車庫は作業場に変わる。絶え間なく聞こえる乾燥機の音や、作業着を真っ黒に汚して農具を整備する父親の姿は、子供たちに漫画に登場する秘密工場を連想させた。
小さな集落の片隅にある、錆び色のトタン屋根の作業場の中には、若い男がただ一人、作業着を泥と油まみれにして乾燥機の計器をいじっている。
背の高い、しまった、見るからに頑強そうな体格で、いかにも昔ながらの田舎の大将とでもいうような男である。


665:かちかち山
07/09/29 21:20:19 Q8tAot43
作業場の外から呼ぶ声が聞こえた。
「あなた、今日はそのあたりで切り上げたら?もう晩ご飯出来てるわよ。今日のおかずはうさぎちゃんが頂いてきた秋茄子を使った、あなたの好きなカレーなんだから。」
若い男はなおもボタンに手を這わせ、汗を拭った目元でメーターを睨みつけながら妻の言葉に答えた。
「ああ。もうそろそろ終わる。今、すぐ戻るからな。終わったら風呂入るから、準備しといてくれ。」
それから、彼は工具や掃除道具をいつもの場所に戻し、作業場の外へ出てシャッターを下ろした。ついこの間取り替えたばかりの染み一つ無いクリーム色の新品だ。
作業着のあちこちを叩いてゴミを落としながら、我が家の玄関まで近づいたときに、隣の家の敷地から、突然、恐ろしい叫び声が上がった。
「たぬきか……。」
背筋がぞっとする戦慄、心臓を刺される痛さを感ずるような絶叫が、ごうごうと唸る乾燥機の音に紛れる。
ぱたぱたとスリッパを鳴らしながら男を迎えた女は、目をひそめて呟く。
「お隣のたぬきさん。この間も病院でやらかしたそうよ。家の人たちも大変ね……いい年頃の一人娘が、きちがいだなんて。」
やるせない顔つきで外を眺めていた男が、咎めるような目つきをして女に向き直った。
「おい……。」
「……ごめんなさい。あの人はあなたの幼馴染だったわね。」
妻の返答に満足したのか、男は再び外へ目線をやって、ため息を吐きながら胸ポケットから煙草を取り出し、無精ひげが目立つ口に咥えて火を付けた。
「たぬきのやつは昔は大人しい子だったのに、どうしてああなっちまったんだか……。」
一仕事終えた後の一服は、いつものように泥の味がした。
たぬきとは、男の幼馴染のあだ名である。男はこの少女と小さなころから共にこの田舎で暮らしてきた。
うさぎというあだ名の男の妹との三人一緒になって、今はもう廃校となった小学校へ通い、寂れた集落を声を上げて駆け回り、大人たちに内緒の遊びと称し、他愛の無い悪戯をして怒られたものだ。
男は十八になって上京したが、数年前に両親が不慮の事故で亡くなったことで、長男である彼は古い農家の跡を次ぐために村へ戻ることになる。
妻は都会にいた頃に知り合い、結婚を前提に付き合っていた女性で、男が田舎へ帰ることを期に、ちょうどいい頃合いだということで籍を入れた。
そうして懐かしき故郷に帰ってきたときに、男は気狂いとなった幼馴染みと再開したのだった。

666:かちかち山
07/09/29 21:21:27 Q8tAot43
ある日の昼間、男が仕事をひと段落させていつもするように作業場の外で一服していると、隣の塀の奥にいつもは見慣れない白い寝巻きの姿が見えた。
腰ほどの高さがあるコケの生えた煉瓦の向こうの、遠くを覗き込むようにひょこひょこと上下させている日に焼けてない真っ白な顔を確認すると、男は二カリと中年親父のような笑みを浮かべた。
「ようたぬき、今日は調子がいいのか?」
「……。」
透き通るような肌をした、整った顔立ちの女性は、男が気安そうに声をかけても、黙ったまま、寝ぼけたような半開きの目で男の姿を眺め続けていた。
男はそれを気にしたふうでもなく、言葉を続ける。
「ああ、俺か?ちょうど今あらかた終わって、一休みしてるんだわ。どうだ、お前も一緒に休憩するか?」
「……いいの?」
幼馴染の突然の誘いにたぬきは顔を俯かせて、上目遣いに、機嫌を伺うような仕草でぼそぼそと尋ねた。
男はたぬきの言葉を聞くと、彼女の耳に顔を近づけ、声を潜めて、悪戯っ子が内緒話をするようにつぶやく。
「大丈夫だって。五月蝿いヨメも買い物行ってて今居ねえから。……ちょっと待ってろ、家ん中から菓子でも取ってくる。」
「……。」
たぬきの返事も聞かず男は家へと走り去っていき、彼女はそれを不快に思うでもなく、心配そうな顔つきのまま佇んでいた。


667:かちかち山
07/09/29 21:22:33 Q8tAot43
「なあ、うさぎ。この間買ってきた菓子の場所しらねえか?」
「ちょ、ちょっと兄さん!作業着のまま部屋に入らないでっていつも言ってるじゃない!」
椅子に座ってパソコンと睨み合っていたうさぎが、男の姿を見て金切り声を上げる。仕事の最中だったのだろう、モニターには株式やなにやらの情報が表示されていた。
男は妹の咎めに悪びれる様子も見せずに、繰り返し宝の在処を尋ねる。
「細かいことは気にすんなって、ほら、この前お前が町行ったとき、なんとか屋とかいうところの菓子買ってきただろ?どこに仕舞ったかわかるか?」
「まったく……。」
うさぎはこめかみを押さえて兄の無神経さを嘆いた。彼女の兄は昔からこうだった。自分ひとりで勝手に納得して話を進める性格で、都会にいた頃は銀行に勤めていたとはとても思えない。
兄の無精ひげを生やした端正な顔立ちをじっと眺めていると、うさぎの顔面に血が集まり、ぽうっと赤くなり始めてくる。
だが、それがいい、と愛しい兄の姿から目をそらしつつ、うさぎは心の中でうわごとのように呟いた。
「あのクッキーは台所の棚の、上から二番目に入ってるわ……だけどどうしたの?いきなり来てお菓子が食べたいだなんて。」
「ああ、た……。」
たぬきのやつが、と男は続けようとして、止めた。常日頃からここの集落の住人は幼馴染のたぬきに対して、腫れ物に触れるような態度で接している。
心の病に蝕まれている年頃の女性は、地方の部落という、ある種の家族にも等しい結びつきにある人間たちにとっては厄介者でしかないのだ。
そしてそれは、目の前にいる男の妹にも当てはまる。竹馬の友ともいえるたぬきに対して薄情なことだ、とも思ったが、男は数年の都会生活で、人間とはそういうものだと納得できるくらいには割り切れていた。
竹馬の友という言葉自体、悪意が含まれているものだしな、と男は自分に言い聞かせる。
「いや、なに。ちょいと小腹が減っちまってな。」
「なら、私が何か作ろっか?」
「悪いって。仕事中のお前にそんな手間かけさせられねえよ。」
「そう……じゃあ、私は仕事に戻るから、何かあったらちゃんと言ってね、兄さん。
この前聞いたんだけれど、助次郎さんのところのお爺さん、機械に指を挟まれて大怪我したそうだから、兄さんも気をつけなきゃ駄目よ?」
はいはい、と手をひらひらさせながら男は言い、うさぎの部屋を出た。


668:かちかち山
07/09/29 21:24:23 Q8tAot43
たぬきと並んで塀の上に腰掛け、秋晴れの青空を見上げながら、男は独り言のように呟く。
「この辺りもガキの頃に比べると随分と変わっちまったな……」
「……。」
たぬきは答えないが、気にせず男は続ける。
「なあ、あそこの三次郎さん家、新築したんだってな、三年くらい前に……。」
「……。」
「昔よく行ったな、俺と、お前と、うさぎの三人で。俺が木に登ってよ、柿を落として、それをお前とうさぎが拾って、皆で食ったよな……。」
「……。」
「で、その後あそこん家の爺さんに、三人とも拳骨落とされたんだっけ……。」
「……。」
「あの柿の木も、古い家といっしょに切り倒されちまったみたいだな……。」
「……。」
「……うまいか?」
「……。」
たぬきは黙ったままこくりと頷いて、肯定を示す返事を返す。男にその仕草は見えなかったが、雰囲気で感じ取ったのか、たぬきのほうを向いて、手に持っていた菓子を差し出しながら言う。
「ほら、俺のぶんもやるよ。」
「……。」
「そろそろ仕事を再開しねえと、帰ってきたヨメにどやされちまう。」
男はほとんど手付かずのクッキーの包みをたぬきの手に握らせ、煙草をもみ消し、立ち上がってぱんぱんとズボンを叩いた。
彼が二三歩歩き出しても、たぬきは何も話さずに、顔を下げて手元の包みを眺めたままでいる。
県道を走るダンプカーと、乱暴に空気を吐き出す乾燥機の音だけが響いていた。
男は数メートルほど進んで立ち止まると、片手を上げて、幼馴染に声をかける。
「またな、たぬき。」
「……うん。」













669:名無しさん@ピンキー
07/09/29 21:25:21 Q8tAot43
>>651を読んで電波を受信した。
多分続きます。

670:名無しさん@ピンキー
07/09/29 21:30:49 jLU/u2M4
GJです
まさか、かちかち山でこれだけの作品を書くとは
嫉妬スレは凄いとこですねw

671:名無しさん@ピンキー
07/09/29 22:08:43 hBVtOZLD
GJ!しかしなんてクオリティだ。

672:私たちの愛しいお兄様
07/09/29 22:23:14 8dCIAPc8
自分が書いてたSSのタイトル↑そのまま名前に流用続けていいですか?

673:名無しさん@ピンキー
07/09/29 22:30:27 lNOF2nO8
いや、悪いことは言わないから辞めといた方がいい
投下する時以外は名無しの方がいいよ

674:名無しさん@ピンキー
07/09/29 22:32:46 Bgbc8vrx
同意
そういう行為はあまり好かれないよ

675:名無しさん@ピンキー
07/09/29 22:34:50 sTHtl2A/
YA☆ME☆TO☆KE

676:七誌
07/09/29 22:47:23 8dCIAPc8
はい

677:名無しさん@ピンキー
07/09/29 23:04:55 SYye2m3H
>>676
( ゜д゜)ポカーン

678:名無しさん@ピンキー
07/09/29 23:33:55 sTHtl2A/
だめだこいつ……はやくなんとかしないと……

679:名無しさん@ピンキー
07/09/29 23:35:35 Bgbc8vrx
もう何も突っ込むまい

680:名無しさん@ピンキー
07/09/29 23:42:53 +5B3Kqrg
いや、コイツを『「兄を喜ばせようと色々試すけれど失敗しちゃって涙目な純真な妹」を演じるキモウト』と脳内変換すると萌えるぞ

681:名無しさん@ピンキー
07/09/29 23:45:55 CDEw6LkL
まぁ素だろうし
可愛いもんだ。生温く見守るとしよう

682:名無しさん@ピンキー
07/09/29 23:46:31 k7Bab4yz
突っ込んじゃうぞ~べったりアクセル踏んで~

683:名無しさん@ピンキー
07/09/30 00:39:53 BdTl4Gz+
ちょっと軽めの嵐だと思えばよし
ほっとくのが一番
後々自分の違和感に気付くだろ、たぶん

684:名無しさん@ピンキー
07/09/30 00:49:41 3ignprZr
違和感に気付いたあと恥ずかしさに悶えるがいいさ

685:名無しさん@ピンキー
07/09/30 01:01:15 IzYAPxV4
omaerayasasiina

686:名無しさん@ピンキー
07/09/30 01:13:31 g4uwcyiL
一つだけ言わせてくれ
どうして、キモウトはキモウトと呼ばれるんだ?

687:名無しさん@ピンキー
07/09/30 01:29:05 Rho1PGVk
キらいきらいといつもは言ってるけれど、本当はお兄ちゃんが大好きな妹。
モう、お兄ちゃんへの想いを抑えられない。
ウそよ!本当はあの女と会ってたんでしょ!
トうとうお兄ちゃんが汚されてしまった。こんなに辛いなら、いっそのこと……




Nice boat……

688:名無しさん@ピンキー
07/09/30 01:37:20 g4uwcyiL
かーなーしーみーのーむーこーうーがーわー

689:名無しさん@ピンキー
07/09/30 16:08:14 FfniTEi1
>>686
深きものに似た顔でキモイから

690:名無しさん@ピンキー
07/09/30 21:35:26 H2o9bP3u
かちかち山、馴染み深い童謡がどんな展開を魅せるのか
続きが気になるじゃないか…

691:名無しさん@ピンキー
07/09/30 22:58:34 +qnQB8QD
月末は書き込みが少ないなあ

692:名無しさん@ピンキー
07/10/01 01:38:35 AMfca0n7
ちぬれりゅうの番外編マダー?
俺のはくマダー?

693:名無しさん@ピンキー
07/10/01 02:00:12 KzddYYdk
「職人さんは本当は私の事が嫌いなんでしょう?
  だから私がどんなに職人さんのSSのことを想っているか知っているくせにそんなこと言うんですよね!!
  どんなにSSを読みたいか知っているくせにあんな別のスレといっしょにいるところを
  見せ付けるんですよね!!
  私がSSを読もうとすると月末なんて便利な言葉ではぐらかしているんですよね!!
  SSを与えるだけ与えておいて、平気な顔して放り出すんですよね!!
  そんなことされたら私が絶対に生きていけないのを知っていて、
  あえて置いて行こうとするんですよね!?」

694:名無しさん@ピンキー
07/10/01 03:04:13 hWlKtjZe
「みっともないわね。
 あのねぇ、職人は貴女のモノじゃないのよ。
 ちょっと投下されたからって、あまり図に乗らないでくれない?
 ……はっきり言わないとわからないのね。
 貴女みたいな職人に縋り付いて足を引っ張るだけの輩は迷惑なのよ。
 私なら職人を支えてあげられる。
 少しくらい他のスレの所に行ったって職人には何も言わないわ。
 だって、職人の帰る場所は私のところだから……でも泥棒猫の始末はきちんとしなくちゃね。
 さぁ、神へのお祈りは済ませたかしら?」

なんか違うな。
途中までのイメージは保管庫で読んだ神作品の幼なじみ。
やっぱ職人さんってすげぇ。

695:名無しさん@ピンキー
07/10/01 03:18:10 58w9n9OC
>>694
沃野のことか

696:名無しさん@ピンキー
07/10/01 03:33:11 BotparuD
かちかち山で思い出したが、たぬきが出てくる作品前に無かったっけ?

697:名無しさん@ピンキー
07/10/01 06:29:23 4SlMaEAm
おやまとめが更新されているよ
管理人さん乙であります

698:名無しさん@ピンキー
07/10/01 11:47:29 flzpxkzd
>>696たぬきなべじゃなかった?

699:名無しさん@ピンキー
07/10/01 20:01:56 BotparuD
>>698
ヽ(`Д´)/それだ!
と思ってまとめサイト言って読んでみたけど、別にホンモノのたぬきが出てくる話じゃなかった
あれ~おっかしいなぁ…まぁ、それだけの話なんですが

700:名無しさん@ピンキー
07/10/01 20:53:41 790AqMYG
狐とか猫が化けてるヤツがあるから、それと混同しているんじゃないか?

701:名無しさん@ピンキー
07/10/01 21:13:15 OYl5n6b0
そういや、猫に嫉妬して首を絞めて殺したヒロインもいたな
何の作品だったけ? その後、猫は復讐のために転生するわけだがw

702:名無しさん@ピンキー
07/10/01 21:19:12 hWlKtjZe
愛猫を待つ俺
修羅場前で寸止めですかそうですか

一、二年くらい間が空いても投下して欲しいのは俺だけか?
保管庫の未完作品の続きが読みたくて仕方ないんだが


703:名無しさん@ピンキー
07/10/01 21:29:09 urZihucS
>>701
『煌めく空、想いの果て』でタイトルあってる?

704:名無しさん@ピンキー
07/10/01 21:30:40 ZEo84egX
>>702
こればっかりは黙して待つしかあるめぇ

705:名無しさん@ピンキー
07/10/01 21:40:13 mk3bwiAs
>>701
トライデント氏の「煌く空、想いの果て」でしょう。
そういや定期的に「あの作品なんていうやつだっけ?」って話題になるけど、
俺が名無しで書いた作品は一度も呼ばれたことがない。鬱。

706:名無しさん@ピンキー
07/10/01 21:47:44 pyhszRRV
逆に考えるんだ。
とても印象に残っているので皆が忘れないと考えるんだ

707:名無しさん@ピンキー
07/10/01 21:50:09 /n7HQWz4
>>699
Pet☆Hot☆High-School!じゃね?

708:蒼天の夢
07/10/01 22:07:32 qBBuz7GZ
話の途中、大変申し訳ないです。
投下させていただきます。

709:蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA
07/10/01 22:09:15 qBBuz7GZ
 蒼い秋空の下、レースがはじまった。
 グレイ・クリフではコースの長さから最初に三週した者が勝者となる。
 スタート直後のストレートで順位が変動することは少ない。
 どのスキッダーもコーナーが勝負どころだと分かっている。
 そして最初のコーナーに差し掛かる。
 まるで事前に打ち合わせたようにワイバーンたちは皆翼を僅かに折り、胴体を傾かせ急降下してゆく。
 山の絶壁がどんどん迫る。頬に当たる風が強くなる。
 地上の木々が大きくなり死という概念が現実味を帯びてくる。
 低すぎない高度で手綱を引き絞り、ワイバーンに高度を上げろと指示をだす。
「……っ」
 見上げると、四位にいたワイバーンが俺の正面上を飛んでいた。
 早くも四位に脱落。
 なぜだ。今のコーナーでミスはなかったはず。
 直線になり、どのワイバーンも高度を稼ごうと大きく羽ばたく。
 大丈夫。四位との開きは微々たるもの。次のコーナーで追い抜ける。
 一位も二位もまだ近い。
 すぐに次の曲がり角。
 最初のコーナーと同じように山腹に沿うように降下する。今度はスピードをつけるため、少し角度を急にする。
 コーナーの出口付近で三位のワイバーンを抜く。
 これで三位復帰。と思ったら後ろからきた別のワイバーンに直線で高度を上げている最中に抜かれる。結果、変わらず四位。
 悔しくも今のところ、いつも通りの展開だ。何も失敗をしていないのに抜かれる。
 抜き返したと思ったら他のワイバーンに順位を奪われている。コーナーを抜けるたびに順位が少しずつ低くなっていく。
 気づくとアザラスの青いワイバーンにまで抜かれ、七位。
 吹き付ける風の中でも自分の歯軋りが聞こえてきそうだ。
 しかし、色鮮やかなワイバーンの群れの向こうに『牙』が見えてきた。
 ほぼ直角に近い傾斜。山というよりは絶壁、岩の城壁にちかい。
 生える木々は少なく灰色の岩肌が続いている。
 その名の通り、獣の牙のようである。
 焦りが消え、自信が溢れてくる。静かな高揚感で思考が晴れてくる。
 大丈夫だ。相棒の調子も良い。やれる。
 ワイバーンが羽ばたき、身体が上下するたびに『牙』が近づいてくる。
 既に横手にはグレイ・クリフ山と『牙』を繋ぐ山稜が続いている。


710:蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA
07/10/01 22:10:42 qBBuz7GZ
 山が途切れる時。そこが勝負だ。
 先頭のワイバーンが急旋回を切る。
 後続のワイバーンたちも胴体を真横に倒しながら『牙』を回ろうとする。
 俺はアズールにそのまま速度を維持させる。
 旋回するため減速していたアザラスを一時的に抜く。
 この時、視界の端にあった灰色の岩肌が地平線ととって代る。
「今だ!」
 俺は握っていた手綱の片方だけ斜め下に引っ張り、両足で相棒の胴体にしがみつく。
 アズールの身体が真横に傾く。ここまでは普通だ。
 だが、俺は手綱を引っ張り続ける。
 相棒は身体全体を捻り、天地がひっくり返る。
 背面で飛んでいる状態となった瞬間、今度は手綱を両方、力の限り手元に引く。
 アズールの鋭い顎が大地に向けられる。
 風の音が変わる。
 唸りから咆哮へ。頬に当たる山風はアズールごと殴り飛ばそうとする暴風へ。
 地上の緑がかつてない勢いで迫り、胃が何者かに握られる感覚を味わう。
 歯を食いしばり、手綱を引き続ける。
 激突するかと思われた地面が緩やかに遠ざかる。
 水平飛行に戻り、顔を上げれば目の前にはワイバーンが二頭のみ。
 口元が緩む。一気に三位だ。
 先頭の二頭は旋回時に失った速度を必死に回復している。
 対してこちらは垂直落下で得た速度がまだ残っている。
 俺は『牙』のあとに続く直線で難なく二位のスキッダーと一位のティオーナをごぼう抜きにする。
 ついに一位。もしかしたら今回は勝てるという希望が生まれる。
 幼い頃観た憧れのスキッダーの活躍が脳裏に浮かぶ。
 はじめて忍び込んだ貴族の観客席。
 そこから見上げた先には『牙』で一位を華麗に奪うスキッダーがいた。
 その時、披露した技が今の『スプリット』である。
 『牙』の周りを旋回するのではなく、背面飛行から輪を描くように急降下する。
 一つ間違えば地面に墜落。角度を誤れば『牙』の山腹に激突。自殺行為に等しい機動だ。
 しかし、成功すれば最下位だろうとトップに立てる。
 俺は『スプリット』を見た瞬間からスキッダーになりたいと決心した。
 そして『スプリット』は素人の俺にスポンサーを与え、夢を与えた。
 今回は勝利をももたらしてくれるかもしれない。
 前には誰もいない蒼い天空、灰色の山、緑の大地。スキッダーなら誰もが欲する光景だ。


711:蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA
07/10/01 22:11:53 qBBuz7GZ
 今度こそは勝てる。俺は次のコーナーが迫るのを見ながらそう信じていた。
 だが夢が覚めるように、あるいは美酒の酔いが薄れるように勝利の幻想は、そこで終わった。
 後はいつも通りだった。
 一周目で奪った一位の座は曲がり角の度、遠くなっていった。
 毎回『牙』で奪い返すも、後に続くコーナーで失う。
 本当にいつも通りの展開だった。

 終わってみれば散々な結果だった。
 11位中6位。先週と変わらず。
 一位はなんとティオーナだった。
 新人、しかもグレイ・クリフ山での出場ははじめてだというのにいきなりの優勝。
 酒場での話題はしばらく彼女が独占しそうである。
 だが俺はその逆の意味でスポンサーたちの話題を独占しそうだ。
 これで何度目の敗北だろう。いよいよもって深刻な状況である。
 近日中にスポンサーから解雇宣言されてもおかしくはない。
 そんな俺でもミリアちゃんは竜場に戻るなり笑顔で出迎えてくれた。
 俺が悔しさの余り兜を地面に叩きつけ、喚き散らさなかったのはひとえに彼女のおかげだろう。
 彼女は六位だった俺を優勝したかのように扱ってくれた。
 気を遣われているようで一瞬苛立ったが、すぐに落ち着いた。
 何が気に食わなくてイラついている?しっかりしろ、と己に言い聞かせる。
 イラついているのは自分のせいであって、彼女は何も悪いことはしていない。
 いじけていた俺を心配してか、ミリアちゃんに片付けも自分一人でやるから休んでいてくれと言われた。
 これは流石に断った。
 負けた上に女の子に片付けを全て押しつけたとあっては男として失格だ。
「じゃあ水汲み用のバケツを倉庫から取ってきてくれます?」
「ああ、分かった」
 それでも簡単な仕事を頼んでくれるミリアちゃん。
 彼女の厚意に応えるためにも今は残った仕事を終わらせるのが先だ。
 アズールの世話を彼女に任せ、俺は急いでバケツを取りにいった。
 
 竜場から洞窟内の通路を右に曲がったところに倉庫がある。
 主にワイバーンを世話するための器具が保管してある場所だ。
 俺は整理された室内から難無くバケツを見つけ、部屋を後にした。


712:蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA
07/10/01 22:12:37 qBBuz7GZ
 竜場に戻ろうと通路を歩いていると今日のレースの勝者、ティオーナに出くわした。
 既に着替え終わっているようだ。
 腰に護身用の短剣を帯び、男物の革のズボンと白いシャツという出で立ちだ。
 挨拶しようかとも考えたが先日のアザラスの件もある。
 特に俺は平民だ。プライドの高い彼女からすれば媚を売っているように思われるかもしれない。
 簡単な礼だけして通ろうとした時。
「おい、おまえ」
 予想に反して声をかけられた。
「ん?なんだ―」
 ティオーナの鋭い眼がさらに細められる。
「―ですか?」
「ふん、まあいい……聞きたいことがある」
 心の中で密かにホッとする。
 ついアザラスたちと話す時と同じように対応するところだった。
 慣れとは本当に恐ろしい。
「おまえが『牙』でみせた技。何処で覚えた?」
 珍しい質問だ。
 スキッダーが知っている特徴的な空中機動や技はコーチや師範から習う。あるいは俺のようにライバルたちの飛び方を研究して盗む。
 ファンからの質問ならともかく、答えを知っていそうなスキッダーからというのは意外である。
「どうして気になるのですか?」
「私の質問に答えよ」
 緑色の瞳は貫くように冷たく俺を捉えている。
「……あれは昔憧れていたスキッダーの技を再現してみたものです」
「なんだと?」
「簡単に言うと見様見真似ですよ」
 もっとも、レースで使えるようになったのは何度も死に掛けながら練習した結果だ。
「その技は元々どのスキッダーのものだ?」
「疾風のドノテと名乗っていました。もちろん偽名ですが。それ以上は知りません」
 『スプリット』は凄い技かもしれないが、編み出したスキッダー本人は平凡に毛が生えた程度だった。
 レースにはたまに勝っていたが王都リーグに推薦されるほどでもなかった。
 如何なる時も兜をかぶり、明らかに嘘くさい偽名を名乗っていた。
 今考えると俺も随分と変わったスキッダーに憧れていたものだ。


713:蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA
07/10/01 22:13:18 qBBuz7GZ
「嘘を申すな」
 突然ティオーナの顔から冷淡さが消え、怒気が露になる。
「はい?」
「私を小娘だと思って馬鹿にしているのか!」
「い、いや本当ですって。それに嘘をつく理由がありません」
 ある程度何か気に食わないことを言って怒鳴られるのは覚悟していた。
 しかし、何でよりにもよって他愛のない会話でホラ吹き呼ばわりされるのか。
 大体なぜ怒る必要がある?
「ならば正直に言え。そのドノテというのは何者で、本当はどうやってあの技を習得したのだ?」
「ですから何度も言っているように偽名以外のことは知りませんし、技の方はただの真似事ですって!」
「まだ言うか。ならば」
 鉄の擦れる音と共に彼女は短剣を抜く。
「ちょ、ちょっと」
 喉元に伝わる冷たい感触。
「話す気になったか?」
「本当ですよ!それに何で俺の技なんかに興味があるんですか?」
「おまえには関係ない」
 まるで敵兵でも尋問するかのような口の利き方。
 つまり彼女は『スプリット』の秘密が知りたいのだろうか。だとしたら随分と捻じ曲がった根性をしている。
 自分の観察眼で他人の技を盗むならともかく、脅迫紛いの行為をして手に入れるのは卑怯だ。
 俺は我慢の限界にきていた。負け続けで頭が茹で上がっていたのもある。
「……いい加減にして下さいよ」
 自分が何を言っているのか考えるより先に口が動いていた。
「なに?」
「いきなり剣で脅して。こんなことをして恥ずかしいとは思わないんですか?」
「平民が―」
「平民だろうが貴族だろうが関係ありません。ここまでこき下ろされたら誰だって怒ります!」
 ここは大人しくしているのが賢いやり方なのだろうが、俺にもプライドというものがある。
「それとも何ですか?貴族は平民に何をしても良いと?名誉は平民相手には適応しないと?」


714:蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA
07/10/01 22:13:52 qBBuz7GZ
「黙れ!」
 彼女は短剣を俺の喉元に押し付ける。皮膚が僅かに裂け、血が一筋だけ流れ落ちる。
「ほう?ここで俺を斬って捨てますか?どうぞ。やってみて下さい」
 スキッダーは死と隣合わせの職業だ。
 喉元に刃物など、急降下する時の恐怖に比べればどうということはない。
「くっ」
 貴族といえども年頃の娘だ。自らの手で人を傷つけるのには抵抗があるのだろう。
 短剣に込められた力が少しだけ抜ける。
「とにかく仕事がまだ残っておりますので之にて失礼します」
 俺は短剣を手で払い、歩き出した。
「ま、ま、待て!話はまだ終わっていない」
 彼女は俺の服の袖を掴みながら引きとめようとする。
「あの技をモノにしたいのなら御自分で観察してください。俺もそうして己が技としました。では」
 嫌みたっぷりにエリシアさん直伝の宮廷式のお辞儀をする。
 ティオーナは平民が宮廷式のお辞儀を知っているのがよほど驚きなのか、呆気にとられていた。
 そんな彼女を背に、俺は洋々と竜場へ戻っていった。


715:蒼天の夢 06 ◆ozOtJW9BFA
07/10/01 22:15:46 qBBuz7GZ
投下終了です。
毎回親切なコメントを下さる皆様、ありがとうございます。
お目汚し失礼致しました。


716:名無しさん@ピンキー
07/10/01 22:18:55 J018CxeC
GJ!
これからどうなるか、楽しみで仕方が無い。

717:名無しさん@ピンキー
07/10/01 23:22:02 Mf0MeVl2
蒼天の夢は嫉妬要素どころかラブコメ要素もまだ出てきてないのに毎回面白くて楽しみですよ

718:名無しさん@ピンキー
07/10/01 23:23:11 uH2KaY8n
GJ

順調に種がまかれているようで、私、wktkが止まりませんや

719:名無しさん@ピンキー
07/10/01 23:47:01 cBzP7/3j
なかなかフラグが立ってきたなぁ
元の文章が上手いからこれからの嫉妬や修羅場にwktk
GJ!


720:名無しさん@ピンキー
07/10/02 00:08:58 nFG4d/3U
GJ
これは続く展開に期待せざるを得ない

721:名無しさん@ピンキー
07/10/02 01:23:07 ts2xwM8l
とりあえずフラグが立ってるのは3人かな?
続きも期待してますぜ!!

722:名無しさん@ピンキー
07/10/02 01:35:56 ZJCk0y6m
ひゃっほう! ひゃっほう! ひゃっほう!
フラグ!フラグ!フラァーグ!!
新たなる嫉妬フラグが立ったぁ!
頼む! 早くイベントを進めてくれ!
wktkが! wktkが
 T O M A R A N A I !

723:名無しさん@ピンキー
07/10/02 09:21:11 k5jjGFwB
ところでコーナーで負けるのは技で負けてるのか
ワイバーンの固体性能なのかが気になる。
ここら辺も明かされると期待しております。

724:名無しさん@ピンキー
07/10/02 09:42:44 R78dC90e
ミリアはジースが勝たない方が嬉しいんだろうなー。
健気ではあるけど夢を追う男としては結構ツライものがあるかもしんない。

個人的にはエルフに超期待。
ただ嫉妬スレには『付き合いが古いヒロインはぽっと出のヒロインに獲物を奪われやすい』という法則があるんだよね・・・。


725:名無しさん@ピンキー
07/10/02 11:37:14 7zAXy+yv
ジャニーズの井ノ原スレにヤンデレ多すぎてワロタ

726:名無しさん@ピンキー
07/10/02 11:44:47 7r2yXbju
GJ!!
ところでジースのワイバーンの描写が断然少ないのは今乗ってるワイバーンは一生を通じての本当の相棒じゃないからだろうか?
相棒という言葉に、嫉妬するワイバーンとか思い浮かべたのはここだけの秘密
いやーしかし自分の道を貫く格好良い主人公だな、『牙』での彼は特に格好良い
超難度っぽい『スプリット』は盗めて、普通のコーナーでの技を盗むのには苦労してるのはジースに特に『スプリット』と『牙』への適正がってことだろうか?
あと疾風のドノテって何かありそうな人物だけど、過去の人物だからな、もし登場するとしたらジースと『スプリット』絡みで何かが無いと無理か
ところで既に一人ハードな領域に踏み込んでるエルフの独走っぷりにはwktkなんだぜ

727:名無しさん@ピンキー
07/10/02 17:52:21 j5wInQXj
いいね、いいねー
レースの描写もしっかりしてて読み応えがあるよ
今のところミリアが好き

728: ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 21:50:53 Xx/2BPiJ
投下します

729:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 21:51:51 Xx/2BPiJ

<一>

 右庵は、ある女性と差し向かいで座っていた。
 正面に見える床の間には、見事な水墨画の掛け軸がある。
 脇棚には、花も活けられており、その花瓶についても、右庵には値段の検討もつかない。
 その見事さは、木下の家にある床の間と文字通りの意味で格が違うものだった。

「そっか。紗恵なら丁度いいかと思ったんだけどね」
「申し訳ありません」

 砕けた言葉で接する女とは対照的に、右庵はひどく畏まった様子で謝罪の言葉を繰り返していた。

「謝らなくていいってば。
 悪いのはあの陰険女でしょ」
「…こちらから頼んでおいて、誠に申し訳ありませんでした」

 棘のある言葉に、右庵は座ったまま、今度は頭までも下げる。
 が、その姿勢に当惑したのは、相手の女だった。
 一瞬目を見開いた後、くすくすと口を押さえて女は笑った。

「いいって私は言ったわよ、後一郎」
「…は」
「だから堅くなんなさんなって。あんたと私の仲でしょうが。
 ほら、茶でも飲みなさいな。美味しいのよ、この羊羹」

 勧められた羊羹は、確かに美味そうであった。
 そも、甘いものなど滅多に食べない右庵にも、綺麗に切り分けられ黒い菓子は美味そうに見える。

 右庵の対面に座るのは、彼より頭三つ分ほど背が低い女性だった。
 背丈とその童顔も相まって少女にしか見えないが、彼女はれっきとした大人なのである。
 右庵が嘘を言われ続けたのでなければ、右庵よりも年上のはずである。
 後ろで馬の尾のように垂らした髪も、よく動く瞳も、眩しく輝く白い歯も、どう見ても少女にしか見えないが、紗恵よりも、年上なのである。

 確か、今年でいくつになったのだったか、と右庵は考えるが、思い出せなかった。
 どうにか思い出そうとしたが、その前に思考は言葉で断ち切られた。

「後一郎」
「…は?」
「今何考えてた」
「…いえ、特に何も」
「嘘つくな」

 ふわり、と甘い匂いと頼りなさげな感触が右庵を包む。
 途端、右庵の体は宙を舞った。


730:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 21:53:58 Xx/2BPiJ

<二>

 一件の後、右庵が通された客間には、外で待っていると言っていたはずの千里耳が騎士の格好をして座っていた。

 掛け声が、庭の向こうにある道場から聞こえてくる。
 かなりの声量ではあったが、右庵には気にならなかった。
 とかく、背と臓腑が痛むのである。

「首を捻りでもしたか?」
「…いえ。
 少しばかり背が痛むだけです」
「全く、お前は何かを学ぶということをしないのか」

 そう言った千里耳に右庵は言葉もなかった。

 部屋を訪れた侍女も、笑いをこらえようともせず茶を置き、出て行った。
 あれが何に対しての笑いなのか気づかぬほど自分は愚図ではないと、右庵は考えたかった。

 実のところ、右庵の考えはある一面では当たっている一方、別の意味では的外れであったのだが、彼自身は知る由も無い。 

 一日の勤めが終わった朝、右庵は小久我家の屋敷にいた。
 小久我家は騎士には珍しく、商いを行っている家である。

 騎士というものは一部の例外を除き、商売を禁じられている。
 その例外の一つが、騎士を相手取った商売を行うことであった。

 小久我家は、柔術道場と剣術道場を経営している。
 また、次男は学問、というほどではないが、読み書きや簡単な算術を子供に教えていた。
 これらは全て、騎士の子弟を対象としたものであり、評判も悪くは無い。
 かといって、別段いいというわけでもないが、客がいなくならない、ということはそこそこ優秀ではあるのだろう。

 右庵もまた、幼い頃は剣術、柔術を学ぶためにこの屋敷の門を幾度となくくぐったものである。

「大方、年のことでも言ったのだろう」
「別に口にしたわけではありません」
「お前の言葉は顔に出ているのだ」
「…」


731:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 21:54:30 Xx/2BPiJ

 右庵が黙りこんだのは、決して反論できないからではない。
 思い出したように再び背が痛んだのと、下手なことを言ってまた投げ飛ばされるのが、右庵は恐ろしかった。
 恐らく次は手加減などすまい、と思い、右庵は呑気に茶をあおる千里耳から目をそらした。

 右庵が小久我の屋敷を訪れたのは、長女である幸花に面会するためである。

 幸花は、かつては小久我の柔術道場の師範代であった。
 かつて、というのは右庵が小久我の道場に足しげく通っていた頃の話である。
 あの頃は、幾度となく幸花に投げ飛ばされたものであった。

 今では幸花は武術から離れているらしい。
 何でも右庵が道場をやめてからすぐ、稽古中に膝を痛めたのだという。

「まあよい。
 どうせ縁談を断ったことについては何も言われなかったのだろう?」
「…は」
「それ見ろ。
 心配するだけ損だと言っただろうが」

 縁談をこちらから一方的に断っておいて、悪く思わない方がどうにかしている。
 だが、右庵は考えたことを口にはしなかった。
 別にそんなことは千里耳とて百も承知であろう。

 右庵が小久我の屋敷に、しかも夜ではなく、全ての役目が終わった後、朝に来たのは謝罪のためであった。
 紗恵に持ち込まれた縁談は、幸花が口聞きしてくれたものだったのである。

 本来であれば菓子折りか何か、謝罪の心持を示すものを持って参じるべきだったのであろう。
 とはいえ、縁談を断ることは、一刻も早く知らせなければならなかった。
 右庵の心にはそこまで――つまり、手土産を持参するほどの余裕はなかったのだ。

 役目を終え、急いで向かった小久我の屋敷。
 そこで余裕の無い面持ちで謝罪を繰り返した右庵を迎えたのは、気にするな、という幸花の言葉だった。

「妹の婿探しについては何か言ったのか?」
「…いえ」
「その前に投げ飛ばされたか。噂にたがわぬ乱暴者だな」
「…」

 幸花と右庵は別段親しいわけではなかった。
 なので、幸花の性格云々を論じることができるわけでもない。

 確かに組み手で世話になったことは多々あったが、右庵自身は特に親しさを感じていたわけでもない。
 彼が親しかったのはむしろ、幸花の弟である小久我の次男坊、馨である。
 右庵より四つ年下の彼は、道場に通っていた頃から、人付き合いが苦手な右庵にとっては唯一の友人と言ってもいい人物だった。

 右庵が都廻に、馨が学問所の師範になった後も、友人としての付き合いは続いていた。
 そして数ヶ月前。馨からの相談を右庵が解決した際、右庵はその見返りをしたいと言ってきた馨に、紗恵の嫁入り先探しを頼んだのである。
 結果として、友人の姉として、多少の交流はあった幸花が縁談を持ってきたのだった

 とはいえ、最初に幸花が仲介してくれた縁談は、三ヶ月前に破談となった。
 それ以上迷惑をかけるつもりは右庵にはなかったのだが、幸花は再び、紗恵の婿探しをしてくれたのである。

 そして、今回もまた、右庵が一方的に断ってしまった形となった。
 それだけの恩がある相手である。
 投げ飛ばされる程度、右庵にはどうということはなかった。


732:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 21:55:00 Xx/2BPiJ

「まあ奴も焦っているのだ。
 察してやれ」

 耳だけで聞いた千里耳の言葉と同時、からり、と小気味よい音とともに襖が開く。
 庭から右庵が目を戻すと、襖を開いたのは、小久我の幸花その人であった。
 しかし、十五に及ばぬほどにしか見えぬ容姿の彼女は、ひどく不機嫌に右庵の名を呼んだ。

「後一郎」
「…は」
「そいつこっから追い出しなさい」
「…は?」

 突拍子も無い言葉である。
 右庵は思わず眉をしかめたが、かまわず横にいる千里耳が挑発するように言葉をかけた。

「嫌だ、と言ったら?」
「とりあえずどっから忍びこみやがったのよ、この女は」
「…?」

 そもそも、ここに千里耳を通したのは屋敷の者ではないのだろうか。
 だというのに、何故、忍び込んだ、などという言葉を幸花は用いたのか。
 突然物言いが変わった幸花と、自分が置かれた状況を訝しげに思いつつ、右庵は、隣にいた千里耳に目をやる。

 果たしてそこにいたのは、美しい面持ちの騎士ではなく、艶やかな遊女だった。

 眩暈を覚えたのは、右庵が小心者だからでは決してないだろう。
 もしかしたら、いきなり叩き出さなかった分、幸花も大物なのかもしれない。
 とはいえ、そうだったところで、何が変わるわけでもなかった。

「女がこんなところに忍びこめるとは思わないけど」
「ふん、狐一匹捕らえられぬようでは、小久我の屋敷もしれたものだな」
「…どこから説明すればよいのかわかりませぬ…」
「付き合う女は考えたほうがいいわよ、後一郎。
 紗恵といい馨といい、あんたの周りはただでさえおかしな奴らばかりなんだから」
「まさに然りだな」
「…」

 どう説明するべきか、とそう考えたところでやっと右庵は思い出した。
 右庵の記憶が確かならば、幸花は今年で三十になるはずであった。


733:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 21:56:19 Xx/2BPiJ

<三>

 屋敷が立ち並ぶその通りは、人の気配も少ない。
 騎士屋敷は普通の民家とは違い、ひどく庭が広く、そのため屋敷と屋敷の間隔がかなり開いている。
 その上また、一般の民はなかなか立ち入ったりなどもしないため、自然人通りも少なくなるのである。

「…別に送っていただく必要はなかったのですが」
「あんたが悪いんでしょうが」

 結局、十夜の婿探しについても軽く頼んだ後、右庵は小久我の屋敷を後にした。
 そんな右庵に、幸花は、そこまで送る、といってついてきたのである。

 別に送ってもらわなくともよい、と言ったのだが幸花はそれを聞かなかった。
 幸花は右庵より年上であり、そもそも、かつて柔術道場の師範代だった彼女は、右庵にとって目上の人物でもあった。
 断ることもできず、とりあえず近くまで送ってもらうことになったのだ。

「こっちは食事まで用意したってのに」
「…それはまた何故」
「少しは考えろ馬鹿」
「…」

 ぷう、と頬を膨らませたその姿はやはり、十もせいぜい半ばまでの少女にしか見えなかった。
 こう並んで歩くと、兄と妹、あるいは親と子のようにも見えるのではないか、と右庵は心の内でそう考えた。

 右庵は一瞬だけ視線を移す。
 幸花の膝は、痛めたとはいえ歩くのには不便はない様子であった。
 そして、視線を前に戻そうとすると、不意に幸花と目があう。
 どうやら、自分が脚のことを気にかけたのがわかっていたらしい。

「…失礼しました」
「気にすること無いわよ。
 私だって余裕がなけりゃあんたを送ろうなんて考えないし」

 明るく幸花は笑う。
 それは、果たして本物の笑いなのか、取り繕った笑いであるのか、右庵には検討もつかない。
 ただ、曖昧な表情を浮かべ、わかりました、と言うのみである。

「それにしても、あんな女が騎士だとは…世も末よね。
 多分ああいう格好してた方が、町の人から話を聞くにはちょうどいいんでしょうけど」
「…」

 実際は騎士かどうかなど、右庵も知らない。
 ただ、仕事上の上役も同然の相手なので、そう納得してもらった方が都合よくはあった。

 千里耳とは、屋敷の門をでたところで別れた。

 何か用事があるのか、それとも何の意味もないのか。

 考えたところで意味はないのだが、それに思索をしてしまうのが常ではあった。
 千里耳の行動は支離滅裂ではあるが、彼女なりの意思がどこかに介在しているように右庵には思えた。

 そんなことを考える暇があるなら、また別のことをしろ、と十夜や紗恵なら言うだろうか。


734:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 21:57:29 Xx/2BPiJ

「後一郎?人の話聞いてる?」
「…は」
「やっぱ聞いてなかったか」

 ぴくり、と右庵は体を震わす。
 もしやと思ったが、流石に往来で人を投げ飛ばすことは幸花もしなかった。
 今度は不機嫌を隠す様子もなく、幸花は再び右庵に話しかけた。

「聞いといてよね…全く」
「は」
「弟になんかいい人ができたみたいなのよ」
「…は」
「あ、やっぱりその様子だと知ってたねあんた」
「…そのうち馨自身が話すと思ってたのですが」
「やっぱりそうなんだ」
「…」

 幸花は、確信を得たようにうなずく。
 自分は相手の誘導に乗ってしまい、幸花に確信を与えてしまったらしい、と右庵が気づくのにはほんの少しだけ時間がかかった。
 同時、右庵の背が若干丸まる。
 それは、彼の気勢を表しているかのようだった。

「そんなんで都廻ねえ…」
「…面目ありません」
「私は向いてないような気もするけどね。
 後一郎は力はあるけど筋は甘いし」
「…」

 幸花が言ったことは、右庵にとっても気にしているところではあった。
 右庵はさらに気分が落ち込ませたが、知らぬ顔で幸花は話を続けた。

「あー、けど馨もそんな年か。
 十八だもんね…色づくのも当然といえば当然よね」
「…」

 実は、馨が件の女と仲が良くなったのはここ最近の話ではない。
 とはいえ、右庵はそのことを話すつもりは毛頭なかった。
 話すべきでない、と考えると自然と口が重くなる。
 口が重くなり、周りの音が聞こえるようになったとき、不意にその音は右庵の耳にはいった。
 どうやら、幸花も右庵と同様、その音に勘付いたようだった。

「これ、笛?
 どこの大道商人かしら」
「いえ、これは」

 珍しく、右庵がすばやく相手の問いに答える。

「祭囃子です」


735:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 21:58:15 Xx/2BPiJ

<四>

「へえ…?
 この辺りで祭りなんてあったっけ」
「火山の社が今日だったかと」

 王都では、何かにつけて祭をする。
 大きな祭りならともかく、小さな祭りは王都のそこかしこで毎日のように開催されていた。

 人が集まれば、揉め事から犯罪まであらゆることが起きる。

“祭りなり 都廻も 御役御免”

 大騒ぎをする場で何かと規則を持ち出すのは無粋、という見方もあるだろう。
 しかし、それでも都廻は祭りの監視に幾人かの騎士と、そして手先である軽犯罪者達を送りこんでいるのが常であった。
 たとえその場で取り締まることができなくとも、情報は残る。
 そして、一度どこかで罪を犯した者はまた同じ罪を犯す。

 それが故に、都廻、それも情報を司る任についている右庵にとっては、王都と周りの村で行われる祭の日時場所を知っているのは当たり前のことであった。

「…」

 しかし、右庵の頭に過ぎったのは、都廻の仕事にかかわることではない。
 幼い頃の光景だった。


736:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 21:59:05 Xx/2BPiJ

――兄様、兄様!飴です!

 祭囃子が聞こえる中、幼い妹の手を握り。
 振り回されるのは自分の方。

――ほら、あんた達!はぐれないはぐれない!

 道場で幼い子供達に指導をする、年上の女性に追いかけられて。

――十夜ちゃんと後一郎さんは仲がいいなあ。
――馨んとことは大違い。
――うるさいなあ。僕だってあんな乱暴な…痛っ!

 仲間の声が遠くに聞こえる。
 それも間もなく聞こえなくなり。
 慌てて自分は道を戻る。

――きゃあ!?に、兄様?

 幼い妹を腕に抱き。
 大人達の足元を走り抜ける。

――おーい!ああ、いたいた!!私があんたらのお守り任されてんだからね!

「おーい?」

 あれは、すでに十年以上の前のこと。

――後一郎!あんたもしっかりしなさい!!男でしょうが!

 記憶の中と同じ声。変わらぬ顔に呼びかけられて、回想はそこで途切れる。
 ただ、一つだけくっきりと思い出せたものはあった。

「後一郎?」
「…すいません。
 少しばかり考え事を」

 口では幸花の相手をするものの、右庵の頭はまだ別のことを考えていた。
 昔は仲が良かった兄妹が、仲たがいし口も聞かぬ関係になる。
 そんなことは珍しくもなんともない。
 むしろ、妹と会話ができる程度には、自分は恵まれているのだろう。

 だが、そうやって納得できるのはあくまで共にいられるからなのかもしれない。
 果たして、十夜と別れる時、自分はそれでいい、と言えるのだろうか。

 かつて見た、そして今となっては見ることが叶わぬ、十夜の笑顔。
 それは、右庵の頭に焼きつき、そしてどうしようもない虚しさを呼び寄せるのである。


737:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 22:00:11 Xx/2BPiJ

<五>

「ここら辺でいいかしらね。
 私はそろそろ戻るわよ?」
「…は」

 幸花が足を止めたのは、三軒も進めば木下の屋敷につこうか、というところであった。
 三軒、と言っても普通の長屋や町屋敷とは違う。
 庭も広大な騎士屋敷の話であり、結構な距離はあった。
 とはいえ、ここまでの足労に礼ができないのは、右庵にとって心苦しかった。

「…茶と菓子ぐらいなら出せますが」

 あまりにも婉曲な言葉に、一瞬幸花はわけのわからない、というような表情をした。
 が、すぐに意を得たのか、右庵の肩をたたこうとする。
 結局背の低い彼女は右庵の肩に手が届かず、代わりに背を叩いた。

「気にしなさんな。
 私、っていうか、馨が受けた恩に比べりゃこんぐらいどうってことないわよ。
 あんたもとっとと帰んなさい」
「…申し訳ありません。
 十夜の件も、どうか宜しくお願いいたします」
「はいはい。
 まあ、悪いと思うなら今度は朝飯でも食べていきなさい。ばれないようにね」
「…は?」

 首をひねる右庵を尻目に、後ろ向きに手を振って、幸花は来た道を引き返していく。

「ま、夜叉と面と向かって戦うつもりなんざありゃしないし」
「…は?何か…」

 聞こえたわけのわからない言葉に思わず、右庵は幸花の背に声をかけてしまった。
 が、幸花は気にした様子もなく、振り返って童のように笑みを浮かべる。
 その振り返った姿も、右庵が幼い頃から全く変わらないように見えた。

「なんでもないよ」

 笑いながら、幸花は言う。
 ふと、右庵は違和感を覚えた。


738:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 22:00:56 Xx/2BPiJ

 人気がない。
 騎士屋敷、それも庭に対面した辺りであるのだから当たり前ではあるのだが、何故か体が震えた。

「…ねえ、後一郎」
「…は」

 右庵は、心が身構えている、と感じた。
 自分が口にする言葉も固く、どこか幸花の笑みに薄気味の悪いものが混じったように見えた。

「後一郎は、何であの二人の婿探しをしてるのかしらね?」
「…?」

 幸花の言った意味が右庵にはわからなかった。
 何を、という前に、もう一度幸花の口が開く。

「貴方…本当は、二人を屋敷から追い出したいんじゃないのかしら」
「…は?」

 響いた言葉は、右庵の頭に染み込む。
 得体の知れない悪寒に襲われ、体が震える。

 言った相手は自分の世話になった、年上の女性。
 自分に規範を叩き込み、武の基礎を教えた女性。
 彼女の言うことは、いつでも正しかった。
 彼女は、自分自身でも気付かないことを指摘したこともあった。

 それでも、まさか、と右庵は言葉を返そうとする。
 だが、乾いた喉からは言葉は出ない。

「…」

 自分が、木下の屋敷から姉と妹を追い出そうとしている。
 言われてみれば、それは理にかなっているのではないか。

 幼い頃仲が良かった妹も。
 昔から冷たかった姉も。

 自分には嫌悪や苛立ちをぶつけてくるだけ。

 あの二人を追い出せば、あるいは。
 自分は心安らかに暮らせるのではないか。

「…ご冗談を」

 無理やり声を捻り出したものの、頭の中で巡る声は消えない。

「そうね、冗談よ」

 そうだ、そんなはずはない。
 二人の幸せのためにやっていることだ。

 だが。幸せ、と言うが。
 そもそも、あの二人は自分のことを嫌っているのではないか。
 そうであれば、わざわざ彼女らの幸せを願う必要はないのではないか。


739:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 22:02:49 Xx/2BPiJ

「じゃあね、また会いましょ、後一郎」
「…は」

 もう話すことはないのか、幸花は、歩みを速めて右庵の前から去ってゆく。

 だが、右庵は別れの挨拶もそぞろに、表情を取り繕うことで精一杯だった。

 家族は守るべき存在のはずである。
 自分が彼女らをどう思おうとも、彼女らが自分をどう思おうとも、守らねばならぬ。
 いつまでも守ることができずとも、少なくとも、彼女らを守ってくれる男を見つけなければいけない。

 だから婿探しをしているのだ。
 決して、二人を追い出したいからではない。

 自分にそう言い聞かせ、右庵は、かは、と息を吐き出す。
 そこで、やっと人心地がつけた。

 青が見える空には陽が上り、雲も少ない。
 天気は、右庵の心とはさかしまに穏やかだった。


740:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 22:04:41 Xx/2BPiJ

<六>

 朝。
 少女が屋敷の間の道を行く。
 歩みは崩れず、しかし医者が見れば、左の膝が悪いことに気づくかもしれない。
 と、彼女は疲れたのか、足を止めた。

「でもね。もし冗談じゃなかったとしたら」

 幸花は、最後に一度だけ視線を背後に向ける。
 後一郎はすでに、自分の屋敷についている頃だろう。

「私も膝の借りを返せるというものね」

 童の顔、華奢な体躯、軽やかな声。
 だが、その顔は。
 歳に相応しく、相克する激情と理性が渦巻いていた。 


741:或騎士之難儀5 ◆CjaIRU0OF.
07/10/02 22:05:29 Xx/2BPiJ
以上で投下終了です。

742:名無しさん@ピンキー
07/10/02 22:12:00 4Yyk/KnY
腹黒い幸花さんGJ!

743:名無しさん@ピンキー
07/10/02 22:21:58 bvPBF7XN
GJ!
この黒さが堪らない。


744:名無しさん@ピンキー
07/10/02 23:08:58 ZwEPeOJ1
ひたすら待ってた甲斐があったぜ、GJ!

745:名無しさん@ピンキー
07/10/02 23:10:56 BxQ5mzrx
膝の借りってなんだろう…
とっても気になるよね!?

746:名無しさん@ピンキー
07/10/02 23:29:31 xss7lQIW
気持ちって伝わらないものだな。
現実のツンデレは好きな人に嫌われてくだけなんだろうね。
かなしいねGJ。

747:名無しさん@ピンキー
07/10/03 00:53:16 S8geNuWV
>>741
新キャラキタ━━━(゚∀゚)━━━ !!!!!
幸花も他の3人と負けず劣らず腹黒くていい感じです。
次の投下もwktkして待ってます!!

748:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:03:46 PIjBTwYu
投下します。

749:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:05:32 PIjBTwYu
 神経が興奮したままだったのだろうか、幸いなことに今朝の目覚めは早かった。
 時刻は5時前。窓の外は夜のようにまだ暗い。
 この時間なら二人ともまだ目を覚ましてはいないだろう。
 身体を起こそうとして………すぐに思い直してまた横になる。
 起きて何かしようという気力が湧かない。幸い、登校時間にも二人を起こすまでにも時間はまだ十分にある。
 今はまだ二人、特に雨音ちゃんとは顔を会わせたくない。
 今はとにかく時間が欲しい、状況を整理する時間が………。
 暗い部屋の中、僕は再び目を閉じる。

 天野雨音
 僕の妹。正確には義妹ということになるのだろうか?
 まあ、いいや。
 とにかく雨音ちゃんはイモウト。大切な家族だ。
 顔は贔屓目に見ても可愛いと思うし、学校での人気がそれを証明している。
 学業や運動、家事においても死角はない。
 周囲にはやや冷たいと思われている節があるけれど、
 実際には恥ずかしがりやで少々口下手な、心優しい自慢の妹。

 そう、妹。
 それが僕にとっての雨音ちゃんだった。
 それ以上も、それ以下もない。


750:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:06:07 PIjBTwYu
 そう遠くない、いつか。
 卒業して、大人になって、社会に出て、いろいろな経験を積んで、
 少しずつ離れ離れになるかもしれないけれど、機会があればこの家に帰ってきてくだらない話をしては絆を暖めあう。
 そんな家族の情景。
 未来の予想図。
 いつか現れるであろうその恋人に嫉妬しないかと言われれば、正直なところ自信を持って頷けないかもしれない。
 雨音ちゃんはとても大事な妹だから。
 けれど、その時が来たときのための覚悟はしてきたつもり。
 笑顔で雨音ちゃんを送り出す。
 それが兄として僕がしてあげられる、数少ないことのひとつ。
 そんな幸せな、どこかで聞いたような光景を思い描いていた。

 でも、雨音ちゃんはそうではなかった。

 外からやってきた作りモノの家族。
 家族としての兄。けれど、血の繋がらない異性。
 昨日の出来事で雨音ちゃんが僕の事をどのように見ているかを知ってしまった。
 ずっと雨音ちゃんは異性として僕を見てきたらしい。
 それも――仕方ないことなのだろう。
 僕がこの家にやってきた頃には雨音ちゃんにも自我が芽生えていて当たり前の年齢だし、
 突然現れた同年代の僕を家族だと認識すること自体に無理があったのかもしれない。
 きっと雨音ちゃんの中での僕の立場は微妙なものだった。
 社会的には仲の良い兄妹。実質的には同じ屋根の下に住む同年代の異性。
 過去の出来事も尾を引いている。
 罪悪感と良心の呵責。
 僕がここにいる限りそれは毎日のように雨音ちゃんを責め立ててゆく。
 それらの重圧に雨音ちゃんの心は次第に侵食されて、いつしか耐え切れなくなって――歪んだ。
 その結果が依存症。
 僕は医者ではないけれど、昨日のあれはおそらくその類ではないだろうかと推測する。
 いま思えばその兆候は前々からあったのかもしれない。
 過剰なまでのスキンシップや何かと世話を焼こうとする言動。
 度が過ぎるそれらの行動は、雨音ちゃんからのサインだったのかもしれない。

 けれど僕はそれに気付けなかったし、気付こうともしなかった。
 もっと言ってしまえば気付くのが怖かった。

 僕にとって家族を手放すことは何よりも耐え難かったから。
 たとえそれが名ばかりで形すら保てないただの言葉であっても、僕にはそれしかなかった。
 何も持っていない僕のたった一つ、守りたいもの。
 それは今でも変わらない。
 気付いてしまえば、僕らはきっと家族ではいられなくなってしまう。




751:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:07:08 PIjBTwYu
 目蓋を開くとぼやけた意識が目を覚ます。
 何も変わっていない。
 考えているだけじゃ何も変わらない。けれど、考えずにはいられない。

 雨音ちゃんにどう応えたらいいのか? 

 自分でもわからない。
 嬉しいか? と問われれば間違いなく嬉しい。
 けれど、それ以上に戸惑っている。
 雨音ちゃんは僕を兄さんと呼んでくれる。
 だから僕は今まで雨音ちゃんをそういうフィルター越しに見てきた。
 今になって異性として見て欲しいと言われても困ってしまう。
 僕はいきなりを意識を切り変えられような器用な人間じゃない。
 そんな目で見られても………

 ?

 ふとした違和感。
 そう、もう一つ考えなければならないことを忘れている。
 もう喉のすぐ手前まで来ているのに思い出せない。
 昨日の雨音ちゃんの瞳、それによく似た瞳を僕はどこかで見ている。

 忘れたのか、天野八雲!?
 山岡さんはもう一人のこともブラコンだって言っていなかったか!?
 雨音ちゃんと同じように接してきた人物がもう一人いただろう!?
 だったら――

 バカな考え。
 それは無い。
 何を期待してるんだ。
 雨音ちゃんにあんなこと言われたから、思考回路が調子に乗ってしまっている。
 ただ自惚れ。ちょっとモテた気になってるだけ。
 今の僕の頭では雨音ちゃんだけで手一杯。
 そうやって言い訳をしながら、一瞬先に見えた幻影を無理やり拒否する。
 考えない。考えたくない。
 そんなものまで背負えない。
 そんな僕の抵抗をものともせずに意識は確信へと突き進む。
 おぼろげだった虚像、徐々にその輪郭が見え隠れする。

「考えるなっていってるだろ!!」

 イメージを振り払うように跳ね起きていた。
 両手が汗でベタベタする。
「………………はぁ」
 今朝はもう二人とは顔を会わせられそうにない。

752:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:08:16 PIjBTwYu
 とても朝食を摂るような気分ではないが、せめて二人の為になるべく物音を立てないように食事を用意すると、
 目覚まし時計を片手に玄関正面の階段へとやってくる。
 タイマーを二人を起こす時間にセットして、足音を殺して階段を上る。

 二階の廊下、二つ並んだの部屋の奥、姉さんの部屋のドアが少しだけ開いていた。
 間隔は3~5㎝くらい。カーテンを締め切って照明を消しているのだろう。
 その僅かな隙間から部屋の様子を窺い知ることは出来ない。
 部屋の入り口に生まれた微かな隙間、その向こうは光を寄せ付けない暗闇。
 指を差し込める程度の小さな隙間が僕を誘っている。
 姉さんがじっと息を潜め、僕がその隙間に指を掛けるのを待っている。
 意識が暗闇に引きずり込まれ、研ぎ澄まされた聴覚が姉さんの意思を拾い上げる。

 ハ ヤ ク  オ イ デ ヨ




 雨音ちゃんのことで神経が昂ったままなのだろう。
 こんなもの僕のくだらない妄想だ。
 心の中だけとはいえ姉さんを妙に勘ぐったりして、そういうのは失礼だと思う。
 だから………
 二人が起きてこないように細心の注意を払いつつ、
 僕は二階の廊下に目覚まし時計を設置し、踵を返して階段を降りる。

 背中越しに聞こえた舌打ちのような幻聴は無視した。

753:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:08:50 PIjBTwYu
「いってきます」
 誰にも聞こえないようにそう呟く。
 宿題はまだ部屋に残したまま。
 あまり気分のいいものでもないが、お手上げなのだからしょうがない。
 鞄を片手に玄関のドアノブに手を掛けた瞬間、鋭い声に射抜かれた。

「おはよう、兄さん。何か忘れていませんか?」

 寝間着姿の雨音ちゃんが階段の上から、玄関の僕を見下ろしていた。
「――おはよう。忘れ物はしてないと思うけど」
「いいえしていますよ。今まで兄さんの声で起こされてきた私が、
 こんなもので起こされたら機嫌が悪くなるとは思いませんでしたか?」
 雨音ちゃんが階段の上に設置された目覚まし時計をつま先で軽く蹴ると、
 目覚まし時計だったモノが騒音と破片をばら撒きながら足元まで転がってきた。
「これからは私が兄さんを起こしに行きます。だから、もうそんなものは必要ありませんよね」
 そう言って雨音ちゃんはにっこりと笑う。
「……リ、リビングに朝食があるから食べてきなよ」
「今日はいりません」
「朝ごはんを食べないと元気が出ないよ」
「だったら兄さんもいっしょに食べましょう。兄さんも食べてないんでしょう?」
 どうしてわかるのだろう?
 僕の怪訝な表情を読み取ると雨音ちゃんは無言で台所の方向を指差す。
「台所にも水切り台にも兄さんの食器はありませんよね」
 見てきたわけでもないはずなのに自信に満ちた声で雨音ちゃんはそう告げる。
 まるで僕のことは何でもお見通しだと言わんばかりの表情で。
「僕は行きがけにコンビニかどこかで買って食べるよ。二人の分はちゃんと用意してあるから――」
「だったら私もそうします。冷蔵庫に入れておけば問題はありませんし」

 どうあってもついて行く。
 そういうつもりらしい。

「姉さんは?」
「姉さん……ですか?」
 雨音ちゃんの気配が鋭くなる。
「姉さんはどうするの?」

「――放っておきましょう」

 冷たく言い放つ雨音ちゃんに少し違和感を覚える。
 まるで姉さんなんかどうでもいいといった雰囲気。
 何かが違う。
「どうしてそんなこと言うんだよ? いつもなら……」
「いつもなら、兄さんが起こしているでしょう?」
 痛い所を突かれて僕は口をつぐむ。
 その間にも雨音ちゃんは軽い足取りで階段を降りてきて僕のすぐ傍までやってくる。

「それに私、昨日言いましたよね? 『お願いですから、私を置いて行かないで』って……」

 僕の手を握り締め雨音ちゃんは耳元で囁く。

「着替えてきます。待っていてくれますよね?」

 答えを聞かずに雨音ちゃんは自分の部屋へと戻って行く。
 僕は、待つしかなかった。




754:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:10:26 PIjBTwYu
 二人で玄関を出ると雨音ちゃんは僕の手を引くように歩き始める。
 僕がいて、雨音ちゃんがいる。
 そんな日常に縁取られた朝。
 それでも――何かが足りない。
 右手が妙に軽い。ずっと腕に掛かっていた重力が急に軽くなったような感覚。
 けれど、その重みがとても懐かしい。
 僕が右側に気を取られていると、雨音ちゃんが制服の袖をぐいっと強めに引っ張る。

「どうかしたの?」
「いえ……」

 雨音ちゃんは何も言わずに僕の腕を取る。
 歩を進めるたびに次第に体の密着度が上がってゆき、雨音ちゃんと僕はまるで寄り添いあうような形になる。
 腕に接触している柔らかいナニカ。理性の軋む音が聞こえる。

「ちょっ! ちょっと、これはまずいよ!!」
「まずいですか?」

 そう言いながらも雨音ちゃんは僕の腕に一層強く胸を押し付ける。
 異性との一時的接触、特に女性から男性へ向けての接触は男性にとってはある種の暴力といっても過言ではない。
 触れ合う部分が緊張により硬直し、徐々に左半身の自由を奪われてゆく。
 女の子特有の柔らかい匂いが理性を刈り取ってゆく。
 呼吸が不規則になって、だんだん思考力まで散漫になってくる。
 昨日まではこんなことなかった。
 どんなにじゃれ合っていたって笑って済ませられた。
 それなのに今日は………。

「どうかしましたか? 顔が赤いですよ」

 雨音ちゃんは甘えるように少し悪戯っぽい表情を浮かべる。
 ここまでされて気づかないほど鈍くない。
 雨音ちゃんの狙いは僕の妹である『雨音ちゃん』を女性としての『雨音』に書き換えること。
 そして僕はその姦計に見事に絡めとられている。
 昨夜のキスから僕の雨音ちゃんを見る目は少し変わってしまったらしい。


 雨音ちゃんを意識し始めている。
 ――その感情に僕は怯えた。



755:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:10:58 PIjBTwYu
 女の子に欲情したことが無いといえば嘘になる。
 でも、妹に欲情するなんてまともじゃない。
 一瞬でもそんな感情を雨音ちゃんに向けてしまった自分に激しい自己嫌悪。
 少なくとも、みっともないと思えるくらいには。

「姉さんはちゃんと起きれたかな?」

 なんだか変な方向へ進みつつある状況を打開するため、姉さんの名前を出してみる。
 もうそろそろ起きていないと学校に遅刻してしまう時間、話を切り出すタイミングにしてもなかなかよい時間帯。

「兄さん」

 僕に寄り添っていた雨音ちゃんは制服の裾を強く握ったまま急に立ち止まる。

「………そんなに姉さんがいないと寂しいですか?」

 どうしてそんなことを聞くのだろう?
 雨音ちゃんの意図する所が判らない。

「寂しい、ってわけじゃないけど………心配じゃないの?」
「どうして心配なんですか?」
「どうしてって、姉さんだから……」
「答えになってません」
「なんで? 心配するのはあたりまえだよ。僕達の姉さんなんだから………」

 何か、話が噛み合っていない。
 違和感の中、雨音ちゃんはじっと黙ったまま俯く。

「………兄さんは私のキモチを知ってるはずです」
 
 それは、つまり……。
「もしかして………ヤキモチ妬いてくれてるの?」

 その瞬間、俯いたままの顔が朱に染まって、制服の袖が破れそうなほど強く引っ張られる。
「そ、そんなに引っ張ったら伸びちゃうよ!!」
 要望は聞き入れられず、雨音ちゃんは僕を引っ張るようにツカツカと歩き出す。

「………………バカ」

 短く雨音ちゃんの唇が震える。
 その一言も聞き取れぬまま、僕は雨音ちゃんに引きずられるように歩き出す。
 なんだか顔が合わせられない。
 雨音ちゃんは学校に着くまで一度も顔を合わせようとはしなかった。
 僕も雨音ちゃんの顔が見れなかった。

 早起きした今朝の通学路には、まだ誰も居なくて――それだけが救いだった。





756:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:12:26 PIjBTwYu

「………どうしてこうなったんだろう」

 午前中の授業なんかそっちのけでずっと考えていたのがこれ。
 ずっと考えて、答えなんかこれぽっちもわからなくて、
 次第に思案するのにも疲れてきて、昼休みになる頃には投げ出した。

 今は逃げるように教室から校舎裏の自転車置き場へと退散し、一人で昼食を楽しんでいる。
 朝食を抜いていたせいか胃に物を入れている間は何も考えずにいられた。
 
「う~~~ん」
 と、食後の伸びを一つ。

 これからの時間は考えるフリをすることにする。
 考えまいとすると、逆に二人の事が頭から離れなくなるから、考えるフリをする。
 不思議とフリならばあまり疲れない。

 何を見るわけでもなくぼんやりと校舎を眺めていると、一階の渡り廊下に見知った人物を見つける。
「吉住、何やってるんだろ?」
 落ち着かない様子で辺りを見回しながら早足で歩いている。
 何か探し物でもしているように見えなくも無い。
「………まぁ、関係ないか」
 疲れている時の思考なんてこんなものだろう。
 今の僕には他人に思考を割けるほどの余力が無かった。

 辺りを見回していた吉住が僕を見つけると、厳しい表情で真っ直ぐに最短距離を詰めてくる。
「探したぞ天野!! お前に聞きたいことがある!!」
「何?」

「晴香先輩の本命って誰だ!!」

「……何? 藪から棒に」
「って、知らないのかよ!! かぁ~!! 情報に疎いにもほどがあるぞ!!
 今、学校中の野郎達がお前を探して教室に押しかけてきてるって言うのに!!」
 興奮した吉住が手近にある自転車のサドルをバシバシ叩く。
「どういうこと?」
「いいか、今日の中休みに先輩がまた告られたんだよ」
 誰に?
 よりも先に、告白されたって事は姉さんはちゃんと学校に来てたんだ。
 などと、なんとなく場違いな安心が頭を占領する。
 なにしろ……
「いつものことだろ」
「そう、いつものことなんだけどな。そして玉砕する所までいつもどおり。
 しかしな、『ごめんなさい』から先がちょっと違ってきたんだわ」
「?」

「いつもは『今は付き合うつもりがありません』の一点張りだった先輩が、
 『好きな人がいます』って言ったんだよぉぉぉ!!」

 誰のものかわからない自転車を蹴りつけて吉住が吼える。

 好きな人――本命。
 それは初耳だった。

「それを聞きにわざわざこんな所まで探しに来たの?」
「それ以外の理由でこんな所まで来るわけねぇだろ。大体、なんでこんな所にいるんだよ。妹ちゃんが探してたぞ」
「……ちょっと、一人で考え事したくなってさ」
「そんなくだらねぇ悩みなんかよ・り・も!! ………誰なんだよ?」
 午前中から悩み抜いていることを、くだらないの一言で済まされるのは癪ではあるが、
 興奮している吉住には何を言っても意味が無さそうだった。

757:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:13:40 PIjBTwYu
「そんなのわかるわけないだろ」

 わかるわけない。
 高校に入ってからはずっと姉さんの傍にいたけれど、姉さんはそんな素振りを見せたことがない。
 ――ない、はずだ。

「お前が知らなかったら誰が知ってるんだよ!!」
「知らないよ」
「もったいぶらないで教えてくれよ!! 本当に知らないなら頼むから聞いてみてくれよ!!」
 普段通りならばそれも構わないけれど、今はタイミングが悪い。
「無理だよ………いま、僕ら喧嘩してるから」
「喧嘩? お前と先輩が?」
「そう」
 吉住は信じられないものを見たというような顔と
 これは面白そうなものを見つけたといった表情を隠しもしなかった。
「あの仲良し姉弟が喧嘩なんて珍しいな。何があった?」
「ちょっとした事で口論になって……怒らせるようなことを言っちゃったみたいなんだ」
「なんて言った?」
 確か……。
「『ブラコンって言われてるから自重しようよ』とか、
 『そろそろ彼氏でも作ったら?』みたいな事をもうちょっと荒い言葉で言った気がする」
「――なるほどな」
「何がなるほどなんだよ?」
 吉住は呆れたような、それでもどこか嬉しそうな顔つきで腕を組む。
「お前さぁ、本当に乙女心のわからないニブチンだな。いいか!?
 先輩は弟のお前に『彼氏でも作れ』って言われたから、意地を張って『好きな人がいる』って言っちゃったんだよ」
「――そういうもんなの?」
「そういうもんだ」
 そう語る吉住は自信溢れる様子だった。
「じゃあ、姉さんは……」
「ああ、多分本命なんていなくて……俺達は男子はお前らの姉弟喧嘩に踊らされてたってことだ」

 となると、今朝からの妙な妄想は全部僕の自意識過剰ということらしい。
 ほっとするのと同時に、勘違いだと気がついて無性に恥ずかしくなる。

「さっさと謝っちまえよ」
 軽い調子で吉住は言った。
「お前、先輩と喧嘩したからこんな所でウジウジ悩んでたんだろ?」
 それも悩みの一端を担っていない事もないのだけれど、説明できないので誤魔化すように頷いておく。
「確かにお前の言うとおり、先輩はかなりのブラコンだと思う。
 だけど、お前がそれをマズイと思ってて、お前がそう思ってることが伝わってるならそれでいいんじゃねぇの?
 ほら、先輩も可愛い弟にいきなりそんなこと言われたもんだからびっくりしただけだって」

 びっくりしただけ。
 そう思いたい。


758:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:14:17 PIjBTwYu
「でも、姉さんが本当のことを言っていたら?」
「だったら、一件落着じゃないか。お前の望みどおりに先輩にも彼氏が出来て、ブラコンも解消。
 この学校の男子で先輩の告白を断る奴なんていねぇって。もしそんな奴がいればブッ殺す」

「そっか……」
 何だろう、この感情は。
 なんというか……モヤモヤする。

「でも、妹ちゃんの方はどうすんだ? あっちも……言っちゃ悪いけどブラコンの相が出てるぞ」
「………」
「なんだよ? 変な顔して」
「え、いやぁ、なんでもないよ。あはは……」
 笑って誤魔化す。
 だってそれしか出来ない。
「そこで相談なんだけどな……お前の妹のブラコンを俺が解消してやらないことも無いぞ。
 もしも、先輩の本命が俺だった場合は先輩の申し出を受けて慎んでお付き合いさせてもらうつもりだが、
 確率的に言うとその可能性は残念ながら低めだからな……こんなことは言いたくねぇが
 先輩もそろそろ卒業しちまうし――」

 長くなりそうだな、と思ったタイミングで予鈴が鳴る。
 時計を見ると、5限目が始まってしまっていた。

「この続きは放課後だな」
 もう遅刻が確定しているので、別段急いだ様子も無く吉住は歩き出す。
 その背中に一言、投げつけておく。
「なんか、ありがとな」
「ある意味他人事だからな。言うだけはタダだ」
 気楽にそう言ってくれるのが、ありがたかった。





759:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:15:31 PIjBTwYu
「天野、看板用の絵の具が足りないんだけど?」
「部材を買いに行ってる山岡さんたちがもうすぐ帰ってくるから、ポスターの方を手伝ってあげてよ」

 放課後の教室は日を追う毎に活気を増してゆく。
 クラスのみんなも方向性さえ決まってしまえば、進んで協力してくれるようになった。
 動き始めは上手くいかなかったけれど、このペースで進んでくれればなかなかいいものが出来ると思う。
 何しろ学園祭まで、あと2週間はある。

「天野くん、黒板はどうする? 当日はメニューとか書いておいた方がいいのかな?」
「う~ん。そんなにいろいろメニューがあるわけじゃないから、今作ってくれてるメニュー表だけでもいいと思う。
 黒板は………壁紙で隠してしまったほうが清潔感があるかも。その辺りは女子のほうでも話し合ってみてよ」

 惜しむらくは企画の段階からみんなの意見を取り入れたものを作りたかった。
 今回の企画やデザイン、方向性は多少なりとも喫茶店のことを知っている僕が急ごしらえした当たり障りの無いもの。
 学生がやるのだから、もう少しお遊び要素の強いものをみんなで意見を出し合いながらやってもよかったかもしれない

とも思う。
 始めからきちんと準備を進めていれば、もっと色のある模擬店になっていたかもしれない。
 そういう意味合いで最初の一週間分損をしてしまっている気がしないでもない。
 もっとも、始めからそうことが出来ていたのなら僕の出番など端から無かったかもしれないけれど……。

「そういうのは僕じゃなくて、実行委員の新田君に聞いてくれたほうが……」
「いいの、いいの。あいつ実行委員くせにいつも山岡さんに仕事押し付けて帰ってたのに、
 みんなが上手く動き出したら急に実行委員みたいな顔して出て来るんだもん。
 あんな奴の言う事なんか聞く奴いないって」
「そうそう。天野くんの方が頼りになるし、私ちょっと見直したかも」

 みんなの天野君を見る目も少しづつ変わってきている。と、山岡さんは言ってくれた。
 それを今、実感として味わっている。
 新田君には悪いけれど、みんなに頼りにされるのは――悪い気分はしない。

「なぁ、天野。こっちはど~すんの?」
「ちょっと待ってて、こっちが終わったら行くから」

 それに、こうやって忙しい間は少しだけ二人のことを忘れていられる。

「天野く~ん。天井の寸法を測るのを手伝ってくれませんか?」
 山岡さんがメジャー片手に机の上で手招きしている。
「いいよ」
 と、返事して、手近な机に脚を掛け、
 山岡さんから手渡されたメジャーの端を固定しながら両腕を高く突き上げる。
「あれ? 天野くん、その肩の傷……」
「え?」
 今朝強く引っ張られた所為か手を掲げた拍子にYシャツの左肩が少し破けてしまっていた。
 真っ白いシャツの切れ目から赤黒い傷痕が顔を覗かせている。
 どうやら両腕を挙げたときに捲れあがってしまったらしい。
「昔の怪我、今はなんとも無いよ」
 シャツを手繰り寄せて、傷痕を隠しながらなんでもない風に言ってみせる。
「本当に?」
「うん。本当に」
 話を打ち切って作業に取り掛かる。
 あまりこの話題は長引かせたくなかった。

「ねぇ、天野君。まだ何か私に隠してること、ない?」

 僕を心配する声。
 同時に、僕を疑う声。


760:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:17:01 PIjBTwYu
 隠してることは――ある。
 けれど、それはもう昔の話。
 今更、蒸し返す様な話じゃない。
 たとえそれが優しさであっても、誰かに立ち入らせていい話でもない。
 そこは触れられたくない、触れさせるわけにはいかない心の境界。

「ないよ」

 きっぱりと言い切った。
 正直すぎる表情で悟らせないように全神経を張り巡らせて、努めて普通の顔を作る。

「――そうですか」

 今まで聞いたことも無いようなひどく冷たい声。
 正直、別人が発した声と疑ってしまいたくなるような感覚。

「少し、付き合ってもらえますか?」
 作業が終わるのと同時にそう聞いてくる山岡さんはいつもどおりの山岡さんで、先ほどの一瞬が嘘のようだった。
「えっと……別に構わないけど……」
「じゃあ、ちょっとついてきてください」
 山岡さんは教室から廊下へと僕を連れ出す。
「お二人の件はどうなりましたか?」
 興味たっぷりといった口調で山岡さんは僕に問う。
 どうやら教室のみんなには聞かれないように気を利かせてくれたらしい。
「昨日話してみたら……やっぱり喧嘩になっちゃって……」
 それから僕は昨日の出来事をかいつまんで山岡さんに話した。
 もちろん、とても話せるような内容ではない部分は断片的な情報を繋ぎ合わせて、
 それらしく聞こえるように誤魔化して伝える。
 分かっていた事だけれど、昨日の記憶を辿って行くうちにだんだん気持ちが萎えてくる。
「わかりました」
 ひとしきり話を終えると、山岡さんは少し考えるように目を閉じて、
「天野君には辛いかもしれませんが、このまま距離を取って様子を見ましょう」
 そう提案した。

 様子を見ろって言ったり、仲直りしろって言ったり、
 みんな言うことが違うから、どれを信じていいか分からなくなってくる。
 それでも……

「ううん。帰ったら、姉さんともう一度ちゃんと話してみようと思う」
「どうしてですか?」
 慌てた様子で山岡さんがこちらを睨む。
 まるで、火に油を注ぐようなものだと言いたそうな表情だった。
「昨日は僕も姉さんも興奮してて、お互いが言いたいこともちゃんと言えないままだったから……。
 でも、今日なら少しは落ち着いてきちんと話せるかもしれない」
「私は反対です。昨日と同じ結果になるのがオチですよ。
 それに、昨日の今日でこちらからノコノコ出向いていったら、
 『やっぱりすぐに謝りに来た』ってお姉さんに思われます」
 山岡さんが厳しい表情で僕を見据える。
 おそらく、正しい事を言っているのは山岡さんの方だと思う。
 わかっていても、期待してしまうから……。
「辛いのは分かりますけど、いつまでもお姉さんや妹さんばかりに構っていたら二人のためになりません。
 天野君の所為で二人が自立できなかったら、それは不幸なことです」


761:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:17:49 PIjBTwYu

 僕が理由で二人が不幸になる。

 そんなのは嫌だ。
 そんなことになったら――僕はきっと自分で自分が許せない。

「二人のためです。我慢しましょう」

 無条件にアゴが引かれる。
 そんなこと言われたら頷くしかない。
 
「そんな暗い顔をしなくても大丈夫です。きっとそのうちお二人も気がつく時が来ますよ。
 いつまでも兄弟といっしょにはいられないって……」

 山岡さんは当たり前のことを当たり前に言っただけ。
 それなのに――

「教室に戻ろ、あんまり抜けてたら迷惑がかかっちゃう」

 その当たり前に一番気が付いていなかったのは、他でもない僕だった。



762:転帰予報 ◆JyN1LsaiM2
07/10/03 01:19:01 PIjBTwYu
 ここまでです。
 更新が遅くなってしまい申し訳ありません。

 >>741
 毎回楽しみに読ませてもらっています。
 複雑な人間関係、ぞくぞくしてます。 

763:名無しさん@ピンキー
07/10/03 01:27:59 YRur45zR
転帰予報リアルキタァー(゜∀゜)ーー!!!!
GJですよ!! 
次回も楽しみに待っていますよ

764:名無しさん@ピンキー
07/10/03 01:55:54 tjeZKIjY
GJ!!
今日はいい夢が見れそうだ

765:名無しさん@ピンキー
07/10/03 01:58:33 VfGnuCPA
>>762
久しぶりに「可愛いラブコメチックなヤキモチ」が見れた、登校中の雨音かわいいよ雨音。

でも「山岡さん、邪魔だあ!」とかも思ってしまった俺はやはり根っからの姉スキー
出番なかったけど、お姉ちゃんガンガレ

766:名無しさん@ピンキー
07/10/03 01:59:49 aU0Yx8rI
>>762
今までは二人の姉妹のせいで霞んでいたけど、そろそろ片鱗を見せ始めた山岡さんにがんばれと言いたい!
今まで回想メインだったからそう思うのかも知れないけれど、毎回これくらいのボリュームと進行で投下して
くれると読む方としては嬉しいですね。

面白かった。 続き楽しみです。

767:名無しさん@ピンキー
07/10/03 03:45:51 jYIO1bWX
八雲ちゃんはもしかして無意識下で姉に惚れてるのか!?
こいつはますます次回が楽しみだぜ・・

768:名無しさん@ピンキー
07/10/03 04:46:03 T2EOjto4
みんなGJ



或る騎士~読んでるとどうしても藤沢周平が浮かぶな

769:名無しさん@ピンキー
07/10/03 08:32:53 eRJZiXdx
投下ラッシュキター
GJ!!

770:名無しさん@ピンキー
07/10/03 08:47:35 fpVrRFX3
邪魔すんなよ、山岡!
って俺も思ってしまった。
姉妹にがんばってほしいな。

771:名無しさん@ピンキー
07/10/03 10:35:10 mSOjqfts
大好きな作品が二つも読めるなんて・・・。素晴らしい10月の始まりだ。乙です!!!!

772:名無しさん@ピンキー
07/10/03 16:34:13 wgtLHr2D
俺は断然山岡さんに頑張ってほしいけどね
山岡さん自身を気に入ってるからってのもあるけど、
トンビに油揚げをさらわれた姉妹による強烈な修羅場展開の方が個人的にもこのスレ的にも美味しいし

773:名無しさん@ピンキー
07/10/03 18:23:21 i1qkTNPM
山岡って聞くと士郎さんしか連想できないから困る

774:名無しさん@ピンキー
07/10/03 19:04:33 MxmI6bYG
俺なんかさらに唐沢としあきの顔が思い浮かぶよ。

775:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/10/03 20:37:03 72yI3eKr
では投下致します

776:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/10/03 20:40:27 72yI3eKr
 第15話『回想1』

「あっはっはははっは」
 胸を張り、声を高らかに上げて、俺はひたすら笑い続けていた。
 奈津子さん以外の酔い潰れてしまった桜荘のお花見会から1週間の月日が経っていた。
朝起きると自分だけで外で寝ていていた。おかげで少し体調を崩してしまったが、今日は楽しみに待っていた日であった。
 今日は営業を勝手ながら休業しているカレー専門店オレンジのテーブルの上で俺は喜びの余りに高笑いをしている。

「待ちにまった、今日は給料日。というわけでここに集まっている諸君は俺に何かを美味しい物を奢ってくれ」
 と、後ろを向いて告げる。同じ、テ-ブルに大人しく座っている3人をしっかりと見据えて、
「というわけでおまえらも100円ショップの買い出しに手伝うように」
「どうして、全然無関係な私まで連れて来られるわけ? あんた、何様のつもり?」
 朝倉京子が鋭い視線を向けながら、刺々しい口調で告げていた。
「今回はライバル店とかオレンジとか関係ない。
ある程度、顔と認識がある奴をそれなりに脅してこの場に集合させた。これから始まる戦いに敗北は許されるわけないからな」

「マジで言っているのかよ」
 朝倉京子はうんざりとした表情を浮かべていたが、俺は気にすることなく今回の100円ショップの買い出しに熱意を込めて、
ここに集まった皆に説明する。

「あのクソ店長が美耶子の賞金を支払うから俺の給料を払えないと血迷った戯言を言ってきたので、
そこにゴミグスのように転がっていた物体へと転化した。残り代金1万。
正に1ヵ月1万円生活をリアルでするはめになろうとは。安曇さんが大学関連で帰宅が遅くなって、
夕食が作れない日があれば見事に餓え死ぬぞ」


「お兄ちゃん……そこまでして食費を削って私の生活費と学費を払わなくても……」
「う~ん。一樹さんにはもっと惨めで貧乏な生活を送って欲しいんですが。
1ヵ月1万円は私にとっては多すぎると思いますよ。
一樹さんは1ヵ月5円だけでやっていけます。私が保障するので、きっと大丈夫……ですから」
 と、横から声をあげたのは、心配そうに見つめる雪菜といつものように毒舌の口調で俺を精神的に追い詰める美耶子だった。
彼女たちを呼び出したのは昨日いきなり決定した創立記念日で学校が休みだからである。(いわば、サボリ)

「俺の給料を奪った張本人がどの口で言うのかな?」
「ふぇ~ん。い、痛い。痛いですぉ。これは間違いなくイケメンで勝ち組のエリートだった彼が実はDV男だったオチですね。
私を精神支配して風俗に売るつもりなんですね」

「どうして、そこまで猛烈に下ネタに走るんだよ」
 美耶子の柔らかい頬を引っ張るが、本人は嫌がるどころか更に痛々しい妄想を口にするのはやめた。
さすがにこれ以上をやってしまうと俺のアイコラ画像を画像掲示板にうpされてしまう可能性があるからな。
「で、白鳥さんと進藤さんはオフなの?」
 と、騒動しい騒ぎにうんざりしている朝倉京子がここにはいない更紗と刹那の名前を口にした。

「二人は今日オフなんだ。てか、俺が休ませた。まさか、100円ショップで女々しく生活用品とカップラーメンを買っている姿を見れば、
いろんな意味で卒倒するだろうに」
「むしろ、1ヵ月1万円で過ごすこと自体が馬鹿馬鹿しいわよ」
「むっ。男の一人暮しはこんなもんですよ」
 安曇さんが夕食を作るまでは俺の食生活を悲惨すぎた。
家事一般は家を出るまでは親任せだったし、親がいない時に更紗と刹那の手料理ばかり食べていた、
天国のような環境にいたのだから仕方ない。

安曇さんや二人に頼りすぎるのは人として情けないため、出来るだけ自立しようとする
俺の健気な努力ぐらいは認めてくれてもいいだろうに。
 ただ、朝倉京子という女にとっては男の生物は性欲の塊で常に獣だと思っている節がある。
そんな、貧乳に男の独り暮らしの孤独と寂しさと苦労と虚しさを知れと言っても理解不能であろう。

777:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/10/03 20:43:09 72yI3eKr
「さてと、そろそろ戦場に駆け出すとするか」
 改めて、俺は笑顔を浮かべた。
「あ、あの、お兄ちゃん。学園の制服姿じゃあ普通にサボってきたの丸わかりなんだけど?」
「気にするな。少年少女が19時以降になるとカラオケ店に入ることができないような条令は、
俺が100円ショップでイヤホンをあるだけ買い漁る前には無力!!」

「一樹さん。最近では学園に行っている時間帯に歩いているだけで補導されてしまう条令が可決されるそうですよ。
まさにひきこもりにとっては開店前のゲームショップで並ぶのはいいカモになっちゃいました」
「あっはははっは。そんなもの。100円ショップで売られている有毒性の物質が摘出されたアルミ鍋に比べたら、
東方は赤く燃えてるぐらいに大したことじゃあない」
「うわっ……さすがは一樹さん。今の言葉を美耶子ちゃんメモにちゃんと記録しなくちゃ。 
一樹さん観察帳。ヘタレワーキングケアフリータがまたおかしな事を言ってきた。対処方法。
★ミキサーに入れて、粉々にして生き血はお姉ちゃんに飲ます。っと」

 と、バカな会話を繰り広げながらオレンジの外へと出た。朝倉京子、美耶子、雪菜を引き連れて街の外を歩いていると
周囲の男性たちから冷たい視線が送られてくる。。
一応、可愛い女の子3人を引き連れているからな。
羨望な眼差しで見られるのは仕方ないことだが、現実はそう甘くない。
俺はいつ爆発してもおかしくない時限爆弾を背負いながら、
街道を恐る恐ると頭の髪の毛が抜け落ちるぐらいに神経を使いながら歩いていた。

「どうして、私まで深山一樹のくだらない買い出しに付き合っているんだろうか」
「そりゃ、お前がオレンジの100倍カレーのネタをパクって、美耶子に一瞬にして無限コンボを喰らったせいだろうに」
 オレンジで異常に盛り上がった100倍カレーの似たようなネタを企画立案実行に移した
青山次郎と朝倉京子はオレンジより客を呼べると思っていたのだが、
美耶子があっさりと100倍カレーを平らげてしまったおかげで無駄に高額だった賞金を支払うことに。
それから、毎日嫌がらせのように美耶子は100倍カレーに挑戦して、カレー専門店ブルーの経営は見事に傾いた。

 あの女が伊達にデビルという称号で呼ばれているわけじゃない。
ただ、狡猾で腹黒い美耶子は今回の買い出しを条件に賞金をチャラにするという取引を申し込んだ。
しぶしぶと朝倉京子は条件を呑んで、現在に至る。

「だって。だって。だって。まさか、美耶子が挑戦するなんて誰も思わないじゃない。
てっきり、オレンジの疫病神であって、ブルーに来るなんて全然思わなかったもん」
「あのデビルはからかいやすい相手ならどんな嫌がらせにも労力と残業を惜しまない相手だぞ。
常にデビルの攻撃から警戒しないと」

「今度からそうするわ。デビル立ち入り禁止だけじゃあ甘いから、
デビルスレイヤー深山一樹の強制的呼び出しを発動トラップでも作っておかないと」
 なんだそれ。

778:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/10/03 20:44:38 72yI3eKr
 朝倉京子が危ないことを思いつかない前に俺はさっさと戦場の元に走りだそう。
100円ショップはカレー専門店オレンジから500Mぐらいに離れた場所で営業している。
すでに半分以上の道程は喋りながら過ごしてきたので走ればすぐに辿り着くだろう。
「じゃあ、先に戦場に特攻してくるぅぅぅ!!」
 目先の目的に頭が一杯だったのであろう。
俺はマンホールの蓋が開いていることに気付かずに最初の一歩を踏み外して、奈落の底に落ちた。

 それは唐突な出来事だったかもしれない。
何故、この時に限ってマンホールの蓋が開いているんだと行政の怠慢さに国家賠償請求で訴え殺したい。
ただ、わかっていたのは誰かの悪戯というよりも、あのお花見会で見た夢。
 さくらと名乗った少女の幻影が脳裏をよぎる。
 もし、彼女の仕業だったとしたら、マンホールの蓋ぐらい開けて、俺は落とすぐらいは可能であろう。
相手は桜の精。
人間外の相手なのだから、物理法則を完全無視にしてこの状況を作り込むぐらいは簡単なのであろう。
 やれやれ。下水道の中は異臭がするレベルじゃないんだよ。
どうせ、やるならば、大根で頭部を殴ってもらった方が精神的負担は小さい。
 ともあれ、頭を強く打ったので俺の意識は暗黒へと落下していく。

779:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/10/03 20:46:54 72yI3eKr
 と、彼は咄嗟に慌てて上体を起こした。夢から覚めた衝撃で状況を把握しようと左右に視線を振った。
だが、ここはよく見慣れた自分の家。
そう、引っ越す前の自分の部屋だと気付くと安堵の息を吐いた。あの夢に見ていた事は何かの悪い夢だったのだ。
「どうしたの。カズちゃん」
 と、更紗がにっこりと笑顔を見せている。

「カズ君が少し昼寝すると言ってから1時間以上も経っているんだよ」
 刹那も起き上がった俺に対して優しい笑顔を浮かべていた。
 そう、この情景には見覚えがあった。ベットから起き上がると
二人は受験勉強のために机に教科書やノートを載せて勉強していた。
大学受験のために3人で俺の部屋で勉強していた……幼馴染の絆が壊れていなかった頃である。

「俺は寝ていたのか? ゆ、夢を見ていたんだ。思い出せないけど、とても嫌な夢」
「カズちゃん、寝言で何かうなされていたらしいけど。どんな夢を見ていたの?」
「それが意味わからないんだ。なんか、俺が原因で更紗と刹那が喧嘩を始めて、

幼馴染の絆が木っ端微塵なぐらいに修復不可能になるまで砕かれてさ……
桜荘というボロアパートに逃げるんだけどさ。
そこに意味のわからない女の子達といつまでも馬鹿騒ぎをしているんだ。

それに俺はそこでカレー店のアルバイトをやっていて、店長とかいう変態の尻をいつまでも蹴り続けるんだ。
本当にそんなことがあるわけないのに」
 と、呼吸をすることを忘れて、俺は夢で見た恐ろしい事を更紗と刹那に告げていた。
 更紗と刹那は少し険しい表情を浮かべて、とあることに動揺していた。

「カズちゃんが女の子達と……」
「いつまでも、馬鹿騒ぎ……」
 二人とも暗い雰囲気を背負って、俺の元にやってきた。
「そんなの絶対に悪い夢だからさっさと忘れた方がいいよ。
カズちゃんと私と刹那ちゃんの幼馴染同士の絆はそう簡単に崩れないん
だから。私が絶対に保証するから。そんな夢の内容はさっさと忘れること。いいっ!!」

 忘れると言っても、あの夢は現実感がありすぎて、俺の頭に印象深く残りすぎた。
しばらくの間はその件で憂欝になるであろう。

「カズ君。女の子達といつまでも馬鹿騒ぎしている夢を見たと言っていましたね。
多分、大学受験の勉強ばかりやっているから欲求不満になっていると思うよ。
今度の休日に更紗ちゃんとカズ君と私でデートに行きましょう。それなら、嫌な事だって忘れるでしょ」

「刹那ちゃん。それナイスアイデア。3人デートしましょう」
「ああ。いいかもな」
 刹那が優しく手を握り、俺の頭を更紗が優しく撫でる。昔の自分ならそれだけ顔を真っ赤にして
振り払って虚勢の一つでも言っているのであろう。
だが、俺は二人の好意に甘えていた。もう、それが永遠と失われてしまうことを知っているから。
「カズちゃん」
「カズ君」

「ずっと、3人一緒だよ」

「ああ……」
 その言葉を告げる前に目の前の二人は消えていた。
 暗闇の視界に彷徨うと今度は新たな光の元へと意識はそこに辿り着いていた。

780:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/10/03 20:50:12 72yI3eKr
「どうしたんだよ。深山。あんまり飲んでないじゃないか」
 次、意識が目覚めるとそこは宴会場であった。声をかけたのはクラスの中でも仲が良かった
旧友の薔薇野がそこに居た。
どうやら、今度は学園時代のクラスの卒業記念として皆で飲み会に行った時のものである。
1年前の事なのに凄く懐かしいと思えた。

「うるせー。そんな気分にならないんだよ。てか、未成年でこんな宴会場を貸し切って飲んで喰えの騒ぎが学園にバレたら
卒業資格を失うんじゃねぇのか?」
「ここは学園のOBが経営している飲み屋だから大丈夫だろ」
「はい~。そうですか」
「それに深山。白鳥さんと進藤さんを放置して大丈夫なのか? 
ほら、あそこでさ。女癖が悪い二人に捕まって、無理矢理に酒を飲まされてるぞ。
宴会を終わった後でラブホに連込んで襲われるぞ。
で、ヤってしまった写真で女の子を脅して嫌々に付き合うつもりなんだぜ」
「俺の知ったことじゃない」
「おい。深山。学園でも評判の良かった美少女の二人を狙っている男子なんていくらでもいるんだぞ。
二人が襲われてもいいのかよ?」
「もう、俺達は幼馴染でもなければ赤の他人だ。
更紗と刹那が他の男性と肉体関係を結んだとしても、何の関係もないんだよ。
それに明日は新たな場所に旅立つ予定だから、この後の二次会にも参加しないぜ。
まあ、勝手にやってくれと」

「見損なったぞ。深山。あれだけお前を慕っていた二人をこんな風に見捨てるなんて。
何で、いつから、そんな最低野郎になり下がったんだよ」
「俺が聞きたいよ。んなこと」
 薔薇野は今にも殴りかかりそうな勢いで俺の胸倉を掴むが、
この飲み会の場を、クラスメイト達の最後の交流を壊すことを恐れて、あっさりと離した。
それ以上に彼の憤慨している表情を浮かべて、俺の席から離れて行った。
 一人になった俺は静かに酒を呑んだ。酒の味はわからない。

とりあえず、美味しくないってことだけは確かだ。
学園を卒業したとは言え、大人は何でこんなもんを美味しいそうに飲むんだろうね。
しばらく、肴と酒を交互に飲み食いをして気分を落ち着かせる。
 更紗と刹那は青い顔をしながら、女癖が悪い男達に捕まって、無理矢理に酒を勧められていた。
恐らく、焼酎のようなアルコール頻度が高い酒であろう。
そんな酒の品種の名前を知らない彼女たちが、

恐らく、同じクラスメイトでもほとんど話したことがない男と絡まれているだけでも恐怖に等しいであろう。
ただ、男達の目的も知らずに酒さえ飲めば解放されると信じて、自嘲的な表情を浮かべて我慢して飲んでいる姿は滑稽であった。
 ふと、更紗と刹那と視線が合った。
 助けを求めるような子犬のような瞳で

(カズちゃん)
(カズ君)

(助けて)
 と、切実に訴えていた。俺は思わずその意図がわかってしまうので慌てて二人から視線を外した。
それが二人にどんな絶望を与えてしまったのか。知りたくもなかった。
 更紗と刹那をあんな形で振ってしまった俺が助ける資格なんてもうない。

 他の男が二人の体を目的で近付いて来ても、それは更紗と刹那とその男達との問題であって、
俺はその問題に触れることさえ許されない。無関係な人間なんだから。
 もし、そいつらが更紗と刹那を幸せに出来るならば、女癖の悪い男達でも別に構わないじゃないか。
他の男たちに無理矢理犯されてもさ……かえって免疫力がつく。

 悲観的に物事を考えて自嘲じみた笑みを浮かべると俺はコップに入ったお酒を飲み込んだ。

(ごめん。更紗。刹那。助けられなくて)

781:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/10/03 20:52:40 72yI3eKr
以上で投下終了です。

782:名無しさん@ピンキー
07/10/03 20:55:02 5WFtaGmB
GJ!
・・・しかし一樹、最低だな

783:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 21:14:55 Zteekryw
タイトルは某アニメOP歌詞のパクリですが、中身はまったく関係ないので。

784:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 21:15:48 Zteekryw
スミマセンsage忘れました

785:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:18:11 eRJZiXdx
GJ!だけど、>>782に同意かな
主人公の独り善がりでも、傷つくのはヒロインだし、男の強姦は「魂の殺害」って呼ばれてるほどえげつないらしいよ

786:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 21:21:05 Zteekryw
「す、好きです・・・わ、私と付き合ってください・・・」
彼女の名は大空翼。僕のクラスメートだ。
「え、僕なんかでいいんですか?」
何とも情けない台詞だが、仕方ない。だって、生まれてはじめて告白されたのだ。しかも、こんな可愛い子から
齢16にして彼女いない暦=年齢、つまり、もてない男だった僕がいきなり告白されたら思うのはまず
①罰ゲーム
②美人局
③誰かが隠れて笑ってる
のどれかだろう

787:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:22:45 aU0Yx8rI
>>781
死亡フラグ乙

788:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 21:26:27 Zteekryw
まず、①か③だろう。実際①は以前食らったし(気付いていたので腹は立っても傷つかなかった)。
そもそも彼女との接点が無さすぎである。部活も委員会も違うし席も遠いしそもそもしゃべった事あったっけ。
しかし、彼女の顔が真っ赤なのとクラスの中で孤立している彼女がそんなゲーム参加するとも思えないし。疑うのも悪いし。


789:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 21:28:24 Zteekryw
トイレ行くから投下中断。スマソ

790:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 21:31:03 Zteekryw
再開。

791:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 21:40:07 Zteekryw
「は、はい・・・その、神山君じゃないと、ダメなんです・・その、私」
「あ、あのさ、間違ってたらゴメン・・・その、誰かに罰ゲームとかで言わされてるんだったら、正直にって?怒らないからさ」
突如、彼女の顔の赤が、羞恥のそれから怒りと悲しみのそれへ変わり、
「ば、罰ゲームなんかじゃありません!!わ、私がどれだけ勇気を振り絞ったと思ってるんですか!!」
物静かな彼女らしからぬ大声で怒鳴られたそして、我に返ったように
「あ、私・・・急に怒鳴ったりしてごめんなさい」
「い、いえ、いいんです。僕も言い方が悪かったとこがあるし」


792:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 21:41:44 Zteekryw
今、家が大きく揺れたので地震情報見るので投下中断します。ごめんなさい。

793:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:44:51 Gp2qnZ8K
また例の人か?
そうだとしたら、改善が全くされていないような・・・

794:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:48:04 6dV4NAsd
さらに改悪、既に(前回の時点でもだが)荒らし

さっさとNG登録してスルーが吉

795:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:48:41 goyd/7SP
>>792とりあえずメモ帳とかに書き溜めてから投下してください

>桜荘、量が多すぎて正直読むのが面倒い
でも面白そうな気がして気になる
これまでのダイジェストとか纏めがあったりするとありがたいと、つい思ってしまう

796:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:57:44 QKdKgFM0
見なかったことにしようじゃないか

797:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:58:33 W5lSAxmP
>>795
>>779の14行目から17行目が粗筋

798:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:06:55 dnGUq8gV
桜荘の文章の量は多いのか?
ラノベを読んでいるから、そんな風には思えないのだが
ネットの横書きは読むのは辛い

嫉妬スレの本を出版してくれ
4000円ぐらいなら俺は喜んで買いますよ

799:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:09:50 Gp2qnZ8K
酉つけてくれないかな
いちいちNG登録すんの面倒なんだが
まあ、酉のつけかたも知らなさそうだけどさ

800:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:10:27 2oLPISD4
>>798
過去の作品を全部収録したとすると辞典みたいなサイズになりそうだなw

801:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:10:53 dnGUq8gV
>>792
この人は荒らしなのか?

802:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:13:38 dnGUq8gV
>>800
嫉妬スレ辞典
引けば、いろいろと単語が出てきそうだ

で、450KBを超えたので誰か次スレを立ててくれ

スレの番号は39ではなくて、スレ その40だから
理由はこのスレを立てた人が事情を知らずに立てたけど
ここは事実上のその39なんだよな

803:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:21:11 T7C3oTM/
さくらはいらないと申したか

804:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:24:39 2fmV9Sj3
次スレは40ってことでいいのね。
まあ40個目のスレだからその方がいいね。

805:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:28:59 PO6eHqSg
39・40合併号
なんてどうよ?

806:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 22:34:41 Zteekryw
ゴメンナサイ、メモ帳の文字全部間違って消しちゃったんです。

807:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:35:02 eRJZiXdx
>>802
理由は知ってたけど、38っていう数字を飛ばすのもアレだからという理由だったはず

808:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 22:35:48 Zteekryw
メモ帳に一から書き直します

809:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:46:40 dnGUq8gV
>>808
メモ帳に吹いたw

携帯で書いているかは知らんが
真面目に原稿用紙350枚ぐらい書く気はないのかな?

810:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:48:07 aU0Yx8rI
スレ終盤のくだらない語呂合わせ論争が無くて良いね >その○○

811:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:52:13 euOPhldW
あの流れも好きだったけどなぁ

812:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:54:25 en4Mt5QZ
>>803
実の娘はあうあうだろ……
と前スレの良SSを読んで妄想したのは俺だけではないはず
光源氏計画

813:名無しさん@ピンキー
07/10/03 23:00:30 PO6eHqSg
立てようとしたら

ERROR:新このホストでは、しばらくスレッドが立てられません。
またの機会にどうぞ。。。

勘弁してくれorz
誰かかわりに立ててくれるのであればリンク先を修正した新スレ用テンプレ張りますが?

814:一万年と二千年前から愛してる
07/10/03 23:17:56 Zteekryw
お詫びと言ってはなんですがURLリンク(blog98.fc2.com)

815:名無しさん@ピンキー
07/10/03 23:19:15 xl3WCQoH
40ん(しおん)とか?

816:名無しさん@ピンキー
07/10/03 23:58:27 S8geNuWV
次スレです
皆で仲良く楽しく使ってくださいね
スレリンク(eroparo板)

817: ◆kQUeECQccM
07/10/04 00:00:57 /NvkzUMj
どーも、お久しぶりです。妹愛の人です。
あれからもう1年半も経つんですね。
最近はずいぶんヤンデレもメジャーになり、
nice boat.やらなんやらすごいですね。

さて。
続編、投下しても怒られませんか?


818:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:02:22 YwYOnZKk
>>817
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!


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