嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その38at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その38 - 暇つぶし2ch393:名無しさん@ピンキー
07/09/19 06:27:45 03ZKAL6i
一番ヤリGJ!
ファンタジー物は大好きなので続きwktkで待ってます

394:名無しさん@ピンキー
07/09/19 07:32:31 LrN81z1i
sageとトリップ知らないのかな?
2ちゃんの使い方を見れば分かるから、まずそちらを読むことオススメ。

395:名無しさん@ピンキー
07/09/19 07:45:41 4I9XavuC
ご指摘ありがとうございます
今後注意します

396:蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:18:26 4I9XavuC
再び投下します
今朝はありがとうございました

397:蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:20:55 4I9XavuC
 競技が終わり、陽が沈んでも絶壁をくり抜いてできたワイバーン用の馬場は活気に満ちていた。
 ワイバーンの鳴き声。走り回る従業員やスキッダーたち。
 たとえレースが終わってもやることは山ほどある。
 ワイバーンに餌をやったり装備を片付けたりとむしろレース中より忙しい。
 下男を雇えるスキッダーは楽だ。レースが終わればそのまま帰れるのだから。
 だが俺のようなスポンサーつきでようやく参加できている奴にそんな余裕はない。
 ワイバーンの餌や装備の手入れなど、全て自分でやらなければならない。
 とにかくため息が出そうになるのを堪え、俺は備品のチェックに専念しようとした。
 忙しい時は自分の不甲斐なさをあまり考えずに済む。
 ちなみにレースの結果は10人中6位。
 決してよくない結果だがいつものことだった。
「よう、ジース!お疲れ」
 そこへ別のスキッダーが声をかけてきた。
 短く刈られた茶髪に悪戯っぽい笑みが特徴的な青年。
 名はアザラスと言い、同じグレイ・クリフのスキッダーの一人。
 今日のレースでは俺の次、つまり7位だった騎手だ。
「お疲れ……」
 俺は適当に返事をすると再び雑務に戻った。
 アザラスは気にした様子もなく、話続ける。
「このあと友達と飲みにいくんだけどどうだ?」
「おまえ、ワイバーンの世話は終わったのか?」
 俺は呆れ声で返した。
 こいつは負けた割にのん気だなと思った。
「ああ、終わったよ。それよりどうだ?」
「いや、遠慮しておく」
「ん、そうか。んじゃ俺たちは縁者の園亭にいるから、気が変わったらきてくれ」
 そう言い残してアザラスは兜を肩にぶら下げながら去っていった。
 声が大きいためか途中途中、他のスキッダーにも声を掛けているのが聞こえてくる。
 俺はどうにもあの同世代の同僚が苦手だった。気に食わないと言ってもいい。
 一見、愛想がよくて気の良い男だが、ヘラヘラした感じが嫌だった。
 いつも王都リーグに出るだのでかいことを口にしながら、成績は中の下。それでいて、負けてもまるで勝ったかのように明るく振舞っている。
 他の皆が必死になって頑張っている中、どうにも彼の態度は好きになれない。
 貴族だから恐らく勝てなくとも大丈夫なのだろう。
 クリフ・スキッドはとにかくお金のかかる競技だ。誰もがすぐにはじめられるものではない。
 だから多くのスキッダーは貴族だ。もちろん全員という訳ではない。
 俺のように地元の商会の支援を受けてやっている平民のスキッダーもいる。
 但しワイバーンを含め、装備はすべてスポンサーのものであり、成績が悪ければ他のスキッダーと取って代われることもある。
 今回送られてきた新しい鞍だって贈り物ではなく、成績不振の続く俺に喝を入れるためのものだろう。
 このまま結果を残せなかった場合、最悪―
「あー!やめだ!やめ!」
 物事がうまくいかないとどんどん悪い方向に考えてしまう。
 俺の悪い癖だ。
 とにかく来週だ。来週のレースで今日以上の成績を残せばいいだけだ。
 気分を切り替え、俺はとにかく仕事を終わらせることに専念した。
 そして全ての後片付けが終わったあと、アズールの頭を一撫でしてから山を下りた。


398:蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:22:11 4I9XavuC
 麓の街につく頃には夜も更けていた。
 しかしそれでも街の方にはまだまだ活気が残っている。
 グレイ・クリフの街は主にクリフ・スキッドで収入を得ている街だ。
 国土の八割以上が山岳地帯のここアルス王国では珍しいことではない。
 元々資源の少ない土地。他に売り物にできるものは傭兵などの人的資源ぐらいしかない。
 よって観光やクリフ・スキッド関係の事業は特に力が入れられる。
 グレイ・クリフも例にもれず、夜になっても街の宿や酒場の明かりは灯ったままだ。
 夕飯がまだなので立ち寄ろうとも考えたが今日は騒がしい中で食事できる気分ではない。
 帰って適当に果物でもかじるか。
 俺は賑やかな繁華街を抜け、住宅地のはずれにある我が家へとまっすぐ帰った。
「ただいま」
 家の扉を開けるとまだ明かりがついていたことに驚いたがすぐにその理由が分かった。
「おうボウズ。帰ったか」
 そう言いながら熱いフライパン片手に出迎えたのが専業主夫の親父。
 エプロンをつけているものの、体格が大きいためどう見ても料理中、というより刀剣でも鍛えていそうな鍛冶屋にしか見えない。
「おかえりなさい。どうせ夕飯まででしょ?」
 見透かしたように言うのは食卓の上で何かを調合していた我が家の大黒柱にして街の薬師である母。
 そして―
「お久しぶり」
 部屋に響き渡るような澄んだ声。
 古典的な緑色のとんがり帽子に腰まで届く銀色の髪。
 美しいという言葉さえ陳腐に聞こえてしまうほどの端正な顔立ち。
 そして出自を語る細長く尖った耳。
「ひさしぶり、エリシアさん」
 母の隣には微笑を浮かべたエルフの魔術師、エリシアさんが座っていた。

「え?じゃあ俺のこと待っててくれたわけじゃないの?」
 遅い夕飯のあと、みなで食卓を囲んで紅茶をすすっていた。
 ちなみに俺の期待と反して遅い夕飯は何も俺のためではなかったらしい。
「当たり前でしょ。別にレースに勝ったわけでもなし」
「今日はエリシアさんが来てくれたからな。料理には少しこだわってみたんだが、少し遅くなった。おまえはタイミングよく帰ってきただけだ」
 相変わらず息子に対してデリカシーのない両親である。
「お疲れ様ジース君」
 対してエリシアさんの優しい労いはまさに神の贈り物だ。
「ありがとう。そういえばエリシアさんここ数年見かけなかったけど何処かに行ってたの?」
「秘密」
 そう言って人差し指を唇にあてるエリシアさん。
 相変わらず謎の多い女性だ。
 だがこの謎多きエルフの魔術師とはもう何年も家族そろって付き合いがある。
 母は薬師ということもあり、山で採れる様々な植物に詳しかった。
 エリシアさんはそういった植物を母から買うため、何年も前からちょくちょく我が家に訪れていた。
 普通ならお得意様で終わるところだが、母と妙に気が合ったらしく商売以外でも会うようになったとか。
 そんなこんなで俺も幼かった頃にはよく遊んでもらった記憶がある。
 他にも彼女は俺の家庭教師だったことさえあった。
 たいてい平民の子供は10歳前後になると街の神殿で読み書きを覚える。だが当時、神殿への寄付金という名の教育費をケチった親父はエリシアさんに俺の読み書きを教えさせた。
 結果、俺は平民ながら貴族の子弟たちのように、エリシアさんという専属の家庭教師がついていた。
 おかげで共通語に加えエルフ語まで読めるようになった。
 しばらく談笑していると帰る時間なのか、エリシアさんがすっと立ち上がった。
「あら、もうこんな時間。ごめんなさいね、引き止めちゃって」
 母親はすまなそうに言い、親父は俺に顎で扉の方を指した。
「言われなくともちゃんと送っていくさ」
 どうせ言うだろうと思い、俺はすぐさま家の倉庫からたいまつをとりにいった。
「ごちそうさまでした。ごきげんよう」
 エリシアさんは両親と礼を交わすとゆったりと扉を出て行った。
 俺もたいまつに火を灯し、あとに続く。


399:蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:23:25 4I9XavuC
 治安が比較的良好なグレイ・クリフでも夜道は完全に安全というわけではない。
 もっとも『グレイ・クリフの魔女』ことエリシアさんに手を出す輩はいないだろう。
 魔女というのは彼女がこの街に越してきた時ついたあだ名らしい。
 なんでもグレイ・クリフに現れてからたった一日で彼女は街の郊外に五階建ての塔を興した。そのことに驚愕した街の住民つけた名だ。
 だから本当は見送りなんて必要ない。
 例え襲われたって賊程度じゃ簡単に返り討ちだろう。
 そんなことを考えながら隣を歩いていると、彼女の方から声をかけてきた。
「かわったのね」
「え?」
 いつもの淡白なしゃべり方だったので一瞬何のことかと分からなかった。
「あ、ああ。会うのは確か三年ぶりだったからね」
「人間ってすぐかわる」
「さすがにエルフほど長寿じゃないから―」
「そうじゃない」
 彼女は歩みを止めると、俺の眼を見た。
 確かにここ三年で俺の目線はようやくエリシアさんを見下ろす形になった。
 もうすぐ19歳にもなる俺にしてみれば当然なのだが、エルフの彼女からしてみれば大きな変化なのだろう。
「私の髪、触らなくなった」
 彼女は肩から銀の川のように流れる髪を差し出しながら言った。
 口元はわずかに笑っているようにも見える。
「あ、いや……」
 何のことかようやく分かった途端、急に恥ずかしくなった。
「触ってもいいのに……」
 小さい頃から俺にはちょっと変わった癖があった。女性の長い髪を見るとどうしても触りたくなるのだ。特にエリシアさんの綺麗な銀髪は耐え難い魅力を放っているので、よく研ぐように弄っていた記憶がある。
 母からはよく『恥ずかしいからやめなさい』とか『女性の髪を勝手に触るもんじゃない』など叱られてはいた。
 それでもエリシアさん本人からは止められなかったこともあり、気づくとすっかり癖として定着していた。
「さすがにこの歳でそれはマズいかな、と」
 最近になってようやく自分がどれだけ恥ずかしいことをやっていたかに気づいた。
 以来、件のこと思い出すと崖から飛び降りたくなる。
「どうして?」
「どうしてって……それはやっぱり女性の髪を触るのは無礼だし、その」
「でもジース君いつも触ってた」
「それは俺も小さかったし……」
「大きくなったら触っちゃいけないの?」
「大人になったら流石に……」
「ジース君まだ子供」
 変わらず微かな笑みを見せながらエリシアさんはそっと俺の頭を撫でた。
「これでもクリフ・スキッダーなんだけど」
 エルフの彼女から見れば俺なんてまだまだ子供なのは分かる。
 でも19歳にもなって子供の時みたいに頭を撫でられるのは納得がいかない。
「子供」
 彼女はそれでも撫で続けた。
 しかも段々と撫でられるのが気持ちなってくるから危険だ。
「そりゃ今は未熟かもしれないけど、俺だっていつかは―痛ッ!」
 ちょっと不機嫌な顔してみた途端、痛みが走った。
 よく見ると頭を撫でていた手には俺の黒い髪の毛が数本握られていた。
「ふふふ、生意気」
「何するんだよ!」
 頭を押さえる俺をよそに彼女はむしりとった髪の毛を懐から出したビンに入れていた。
「これはお土産」
「は?」
「あとは大丈夫。ありがとう」
 そう言うとエリシアさんはさっさと闇の中に消えていった。
 あまりにも突発的なことだったので一瞬唖然としてしまった。
 追いかけようと思ったが、気づくとたいまつに照らされた小さな空間と、夜空の中でもその存在を誇示する魔女の塔しか見えなかった。


400:蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:24:56 4I9XavuC
投下終了です。
失礼します。

401:名無しさん@ピンキー
07/09/19 20:08:36 fk8Qfl+x
>>400
GJ!!!!
母から買っている植物と、ジースの髪の毛・・・。エリシアさん、一体何を・・・((;゚Д゚)ガクガクブルブル
続きを楽しみに待ってます。

402:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:12:34 W2mx5abe
朝ktkrかと思ってたら夜も来ててビックリしましたぃ。
作者様GJです。

403:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:28:34 sLiuDBYj
筆が早くて感心です。GJ。

404:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:35:37 oDve00IZ
>>400
一日に二度も投下するなよアホ

405:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:52:38 fxhlNnKU
>>400
ふぁんたじぃはええですのう。gj

406:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:00:12 EbKS8aA8
>>400
GJ!!エルフとかイイよね。

407:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:11:19 Irv0zJ1b
>>404
お前は二度と書き込むなよ、な!

408:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:23:46 oDve00IZ
>>407
アンカーすらまともに打てない人に言われたくないな^^;

409:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:28:51 QuR930p/
>407
スルースキルをそろそろ覚えろ

410:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:31:17 ZnpQv3J8
髪触るっていいよね、なんかいい

411:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:34:25 jFlTyVI9
>>407
何故粘着に釣られるのか
何故スルースキルを身につけないのか

412:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:49:57 LDi/NWlo
>>410
お前は俺か

413:名無しさん@ピンキー
07/09/19 23:22:44 WhJ7UuUe
>>400
面白いです。続き楽しみにしてます。

414:名無しさん@ピンキー
07/09/19 23:53:53 qdPmrU4e
リクームやグルドの過去話もよろ

415:名無しさん@ピンキー
07/09/19 23:59:44 STcDgHO8
>>414
それなんてギニュー特選鯛

416:名無しさん@ピンキー
07/09/20 00:27:37 5P4sgfkJ
>>371で紹介されていた「リュンコイスの魔王」をDLしてプレイしている。



まだ途中ではあるが……うん、良い修羅場。

>>366>>369の台詞を見たときには震えたね。
これからの展開が楽しみなので、続きのプレイに没頭します。


417:名無しさん@ピンキー
07/09/20 10:33:14 gbjy4ktp
ツクール2000のランタイムインストしてゲームダウンロードしたのだが
起動アイコンがみつからない・・・

418:名無しさん@ピンキー
07/09/20 14:03:39 ToW4xhgp
exeは共通だから、他所でダウソしる

419:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:27:03 Qg2ZmyZT
>>371

「リュンコイスの魔王」、このスレ的にはかなりオススメ。
純な乙女がキモ姉への対抗心と主人公への激しい愛情から、ヤンデレヒロインにクラスチェンジするところなんか最高。
 ……ラストは色々な意味で衝撃的。

420:名無しさん@ピンキー
07/09/21 03:53:15 6a1UONp1
プレイできてない奴も多そうだけどな

421:名無しさん@ピンキー
07/09/21 05:19:22 gIKo5rS7
できないやつは厨ばかり
ってか、やり方がわからないやつっているの?

422:名無しさん@ピンキー
07/09/21 06:08:17 UWyFIJ23
台詞回しがくどすぎて3時間ほどプレイしてダウンした

423:名無しさん@ピンキー
07/09/21 06:09:08 /9J/QbNe
おまいら今日の「暴れん坊将軍」の再放送は必見ですよ。 たとえ三次元でも。

424:a
07/09/21 17:17:29 jbOB5A4f
2007/08/10 17:10:12 oo
私は中3です。3月10日、卒業式でした。
そして、卒業式が終わっていえに帰って、友達と遊びに行っていました。
そしたら!!彼氏に見つかって(?)彼氏の家に急遽行く事になりました。
そして行き成り彼氏は私の胸を触り始めて、ベッドにたおれました。
そしたら制服のスカートをめくり上げて、パンツの中に手を入れて、
チンコの中に指を入れて・・・「クチュクチュクチュ」って。わざといやらしい音を立てて・・・。
そして彼氏はこういいました。「服脱いで」と。
私はビックリしたので「え?」と聞き返しました。私はもちろんエッチはやったことはあります。その彼氏と。ほかの人ともやった事はありますが・・・(藁
そして、彼氏は「オレ、脱いでる所とか写メとるの好きだから」っていいました。
私は納得して、自分でぬぎはじめました。
そして彼氏は私の体で遊び始めました。チンコに指を入れてクチュクチュいやらしい音を出したり、胸をもみもみしたり、なめたり。
そして彼氏は写メもとりまくってました。私のチンコの穴。胸。全体など。
そして彼氏は我慢できなくなったらしく、こういいました。
「オレのズボン脱がせて」と。私は喜んで脱がしました。
ズボンのチャックを開けて、ズボンを下ろして、ガラパンを下ろして。
そしたら彼氏のもうすでに大きくなっているあそこが出てきました。
そして私は彼氏をベッドに寝かし、私はうえにのぼって彼氏のあそこと私のチンコを押さえつけるようにしながら写メをとりました。
とても気持ちよかったです。
この写メを見たい人はこのスレを8箇所に張ってください。
そしたら[               ]←ここにアドレスが出てきます。
それをクリックすると、彼がとった写メすべてのってます。
私がとった写メも、動画も載せてます。
動画はわかりにくいようにしています。
「☆」をクリックすると動画がみれます。
このスレを1箇所にも張らなかった人は、不幸がおこります。
大好きな人が一年以上学校に来なかったり。
嫌いな人があなたの席の隣になったり。
親戚が亡くなったり。
けど本当に写メ、動画ありますので8ヶ所にはってみてください!



425:名無しさん@ピンキー
07/09/21 18:00:18 9w7WPnPx
>>423
暴れん坊将軍には何があったんだぜ?

426:名無しさん@ピンキー
07/09/21 18:14:41 IW6gG1s+
>>419
これは良い嫉妬だな
姉がハンケチを噛み締めながら尾行をしているシーンなどおっきしてしまったよ

あとでかい方のラスボスの最強技がエグ過ぎる
全滅の繰り返しで撃破に3時間かかったorz

427:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:05:25 bs+rZOTd
皆さん乙です。
>>292の続き投下します。

428:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:06:37 bs+rZOTd
 ――おかしい。

 昼休みが始まってもう三十分が経つのに、遼君はまだやってこない。いつもなら昼休み
の連絡放送と昼ごはんの為に、毎日放送室にやってくるのに……。無論私が放送室にいる
のは遼君と昼ごはんを食べるためだけど。

 ぐ~~。

 お腹が間抜けな音を立てて鳴る。遼君が来るまで私も昼ごはんは我慢していた。一体何
があったのだろう? 先生に用事でも頼まれたのだろうか?

「遅いよ、遼君……」

 思わずそう呟いてしまった。一人でいる放送室は静かで寒くて、そして寂しかった。

「はあ………」

 何だか、嫌な予感がする。

 教室にでも見に行ってみようか? でもそんなことしたら遼君に変に思われるだろう
か? でもやっぱり心配だし、行ったほうがいいかな。どういう理由にすればいいだろう?

『放送室に来なかったから心配になって』

 これじゃあ好きだってことがバレバレだ。

『連絡放送サボりやがって何やってんだコラァ!!』

 うん、これはいい。でもいちいちこんなことで教室まで行ったら嫌われるだろうか? ウ
ザイ先輩だなんて思われたら一貫の終わりだ。ああもうどうすればいいんだろう? とにか
く会いたいよ……会いたいよ遼君!!

「ええいもう、行ってしまえ!!!」

 とりあえず教室にいるかどうかだけ見に行ってみよう、それからどうするかはその時考
えればいい!!

「突撃!!」

429:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:08:45 bs+rZOTd

「突撃!!」

 私が放送室を出ようとノブに手をかけたときだった。

「あれ?」

 勝手にドアのノブは回って扉が開かれた。バランスを崩して私は前に倒れる。

「……おわっ、と。大丈夫っすか先輩?」

 バランスを崩した私が倒れこんだその先は、

「りょ、遼君……」

 誰よりも待ち望んだ彼の胸の中で、私はしばらくそのままで居たくなった。でも、その
幸せはやっぱりそんなに長くは続かないようで、

「よいしょっと」

 遼君は私の肩を掴んで、私の体勢を立て直した。

「怪我はないっすか?」
「……うん」

 やさしく笑う遼君。私はどうしようもない幸福感に包まれる。

 ―――だけど、

「し、失礼します」

 ―――だけどその瞬間、私の幸せは音を立てて崩れ去った。








430:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:09:58 bs+rZOTd
「んじゃあ入って」

 僕は綾瀬さんを中に招き入れた。

「し、失礼しま~す」

 綾瀬さんがおずおずと中に入ってきた。少し緊張したその表情も、ああ、ため息が出そ
うになるくらい可愛い。

「……………誰?」

 先輩はポカンとした様子で呟いた。

「あ、こちら今日転校してきた綾瀬楓さんです。学校の案内してたとこなんすよ」
「よ、よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げる綾瀬さん。

「……………先輩?」

 未だにただ立ち尽くす先輩に、心配になって僕は声をかけた。

「……え? あ、ゴメンゴメンちょっとぼーっとしちゃって……」

 申し訳なさそうに笑った後、先輩は「よろしくね」といつものような口調で言った。

 だけど、その昼休みの先輩の様子はどこかおかしかった。






431:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:12:18 bs+rZOTd
 一瞬で分かった、とでも言うべきだろうか。

 あの人は、放送室にいたあの先輩は、確実に中原さんのことが好きだ。

 昼休みが終わって午後の授業が始まっても、私はそのことを思い出していた。

 最初に中原さんと喋っていたときのあの表情、同じく私が入ってきた時のそれ、そして
その後の様子。

『女の勘』とでも言うものなのだろうか、こんなのは初めてだ。

 綺麗な、人だった。

 あの人は私の何倍もの時間を中原さんと過ごしていて、私の知らない中原さんを沢山知
っている。正直、分は悪い。

でも、

「…………負けるわけには、行かないですよね」

 誰にも聞こえないくらいの声で、私は言った。自分自身を鼓舞するために、この戦いに
勝利するために。

 中原さんの後ろ姿を見て、今日何度目か分からないため息をついた。黒板に書いてある
授業内容をノートに写している。

 ああ、これから毎日彼の背中を眺められるなんて、私は何て幸せなんだろう?

 だめだめ、背中なんかで満足してちゃ駄目なんだ。

 もっと、もっと近くに。

 もっと、中原さんの近くに。

 ――そして願わくば………。

 その後のことを考えると、顔が赤くなった。

 これももう、今日何度目か分からない。

 よし、決めた。私も放送部に入ろう。

 まずは、そこからだ。




432:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:14:20 bs+rZOTd


 不安は的中した。当たりも当たり、大当たりした訳だから『女の勘』っていうのもあな
がち間違いじゃないんだろう。

「…………ハア」

 昼休みが終わって始まった午後の授業。今の私には何の教科なのかは分からないし、興
味すらない。

 窓の外を見ながら考えてるのは、もちろん彼のこと。

 あの娘(綾瀬さんっていったっけ)に話しかける遼君の目、それに遼君を見る彼女の目。
頭にこびりついて離れない。

(嫉妬ってやつか………)

 自分がこんなにそんなことをする人間だなんて今まで思ったこともなかった。

 遼君は彼女のことをどう思ってるんだろうか?

 あれだけ可愛い娘だし、嫌いってことはないだろう。でも、でもきっと知り合ってまだ
少ししか経ってないし、好きってことも………希望的観測すぎるだろうか。

 全く彼の気持ちは分からない。

「でも」

 はっきりしてるのは、あの娘が遼君のことを好きだっていうこと。

 あの表情は、あの声は、あの目は、完全に恋をしている。

433:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:14:58 bs+rZOTd

「…………ハア」

 それを考えるだけでまた、胸の中にとんでもなく汚いものが込みあがってくる。

 ――嫌だ。遼君を取られたくない。遼君が私以外の女の子にあんな風に笑うのを見た
くない。

 それに、それにあの娘が私は許せなかった。放送室に、私と遼君の聖域に、入り込んで
きたあの娘が私は許せなかった。

「…………負けるもんか」

 そうだ、負けてたまるか。遼君を好きな気持ちだったら、出会って間もないあんな娘に
なんか負けるはずがない。もう怖がってなんかいられないんだ。『ただの先輩』のままで
いる訳にはいかないんだ。臆病な自分を変えないといけないんだ。

「…………よし!」

 今日は遼君の勉強を見てあげよう。密室二人っきりの放送室、これは私にとっての最大
の武器だ。あわよくば急接近!!

 さあ心は決まった。あとは全力で事にあたるのみ!!

 ノートに大きく太く、『打倒綾瀬楓!!!!』と書いて、私の決断式は完了した。



434:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:17:27 bs+rZOTd
以上で今回分終了です。
やっと嫉妬成分が入り始めたところでしょうか……。
次回もよろしくお願いします。

435:名無しさん@ピンキー
07/09/21 20:37:45 uLTYp2W5
GJ


436:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:20:09 r8gnCUIt
私の親友は少しだけ変わっている。腰まで伸びた栗色の髪に、染み一つない白磁のような肌。長い睫毛と宝石のようにきらきらと輝く大きな瞳。小さく整った頬骨と露に濡れた薔薇の蕾のような唇。
スカートから覗くしなやかな素肌の脚は、言い様のない艶やかさを思わせる。
セーラー服の上に薄い膨みを主張する乳房と、小さくはだけられて薄紅に色付いた鎖骨。
なんと淫靡な姿だろう。ただそこに立っているというだけで見るものに官能的な衝動を催させる、天性の娼婦。
それでもなお、控えめに伏せた目元と穏かな物腰はどこか修道女のような貞淑さを感じさせた。
女の私から見ても、親友の姿は綺麗だ。その上、仕草は可愛くもある。
天は二物を与えずというが、目の前にいる親友の美しさに関してはこれでもかというぐらい甘やかし放題だ。
私だって、容姿に少しは自身がある。何度となく男子から告白されたし、同性から綺麗で羨ましいと言われることなんてしょっちゅうだ。
だけれど、親友はそれ以上に綺麗で可愛い。そんじょそこらのモデルなんか比較にならないくらいスタイルも顔立ちも優れている。
悔しいなんて思う気持ちも萎えるほど別次元の美しさを誇るのだ、親友の容姿は。
しかし、先に述べたように、私の親友は少し変わっている。
具体的にいうならば、体のごく一部分が。観念的にいうならば、その全てが。
アイドルにも負けないくらい綺麗な親友はその見かけに反して、実は男の子なのだ。
そう、男の子。男で雄でMANで♂。生物学上完っ璧な男性。小さい頃一緒にお風呂に入ったときには股座にちゃんとぞうさんがくっ付いていた。



437:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:23:26 r8gnCUIt
「あはは。ずっと夢だったんだ。今みたいにこうして制服着て町を歩くのが。どう?ボクのセーラー服姿、似合ってる?」
「すっごく似合ってる。思わず嫉妬しちゃうくらいに。」
目の前でくるくると廻ってスカートをはためかせている親友の制服姿は、本当に悔しくなるくらい似合っている。
三月十日、卒業式を終えて一旦家に帰ってから、私と親友は町へ繰り出した。
私は私服で、私の親友は前から彼の悲願であった、セーラー服に袖を通して。
幸い、私たちの体格は同じくらいだったので彼が私の制服を着込んでいても違和感はない。
親友は昔から女装が好きだった。いや、女装は彼の趣味だといってもいい。
小学校のころは毎日女の子の姿で登校し、中学ではやはり校則で学生服を着なければいけなかったが、彼の学生服姿はまるで男装の麗人のようで、男子女子の両方に倒錯的な想いを抱かれたりもしていた。
私は彼の趣味に口を出すつもりはないが、やはり女装というのはちょっといただけない。
「なんだかボクたち姉妹みたいだね。ほら、早くいこ!」
「う、うん。」
親友が私の手をとって歩き出す。柔らかい感触に思わず顔が熱くなった。
たしかに私たち姉妹のように見えるかもしれないが、恋人同士には見てもらえないだろうか。
私は女で、彼は男。異性で手を繋いで町を歩くのだから、これは立派なデートじゃないか。
一度意識してしまうと、一気に落ち着きを失ってしまった。心臓の動悸が激しくなる。顔に血が上り、視線が定まらずきょろきょろと動く。
今の私の姿を見る人がいたら、女の子同士腕を組んで顔を赤らめている私を挙動不審に思うだろう。
でも、それも仕方が無い。私は彼に恋をしているのだから。



438:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:25:55 r8gnCUIt
初めに意識したのがいつだったのかは覚えていない。気が付けば、私は親友を好きになっていた。
私たちは幼馴染で、小さいころから良く一緒に遊んでいた。彼は女の子のような容姿に違わず女の子のような性格で、女の子の遊びが好きだった。
親友の趣味と性格は見て通りのああだから周りに馴染めずいつも孤立していて、幼馴染の私くらいしかまともに接しようという人間はいなかった。
そのころの私は時々考えたものだ。私は親友なのだから彼と遊んであげなきゃいけない、私だけが彼を助けてあげられるのだ、と。
それからだろう、私の心の中に彼に対する独占欲ともいえる責任感が目覚めたのは。
年齢が上がるにつれて排他的だった周りの子供たちにも寛容さが生まれ、彼の存在もクラスの輪に馴染み始めてくる。
ちょっと変わった子だけど性格はいいし、何より可愛い美少年。そんな彼がクラスの人気者になるまでにはそれほど時間はかからなかった。
彼は私だけのものではなくなってしまったのだ。

「ぼーっとしてどうしたの?早くたべなきゃアイスとけちゃうよ?」
「あっ……そうだね。ごめん。」
気が付けば、考え事で上の空になっていた私を不信に思い首をかしげる彼が目の前にいた。細かいことは気にしない性格なのか、彼はすぐにまた自分のアイスに舌を伸ばした。
彼の仕草はひとつひとつが艶かしい。垂れてきたクリームをつつ、と充血した舌でなぞり、掬い取る姿に色気を感じる。
彼はそのまま棒状のソレに満遍なく舌を這わせ、頂点に溜まった液体に美味しそうに吸い付いた。
なんという厭らしい仕草だろう。周囲にいる男性は誰しもが彼を凝視している。以前に、耳年増の同級生に見せられたビデオの映像を思い出してむず痒い気持ちになった。



439:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:29:30 r8gnCUIt
「あれ?キミはもしかして……」
突然、横から野太い声が聞こえた。髭の濃い中年がやたら馴れ馴れしい仕草で私たちに近づいてくる。
新手のナンパなのだろうか。それにしても一度鏡で自分の顔を確認してからきて欲しいものだ。私たちの年齢以前に、顔面そのものが条例違反に引っかかっている。
「どうも、こんにちは。こんなところで会うなんて奇遇ですね。」
「いや~、相変わらず可愛いねキミは。その娘もしかして、コレかい?」
ぶよぶよと脂肪が集まった赤ん坊のような小指を立てる肉団子。
「ち、違いますよ。ただの幼馴染ですって。」
どういうことだろう。目の前にいるクリーチャーは彼の知り合いだとでもいうのだろうか。
こんな汚らわしい生き物に視姦されると体じゅうにさぶいぼが出る。中年特有の腐ったチーズのような体臭が鼻をつき、私は目をしかめた。
「あ、この人?父さんの友達だよ。」
どうやら彼の父親の関係者らしい。私は握手を求められたが、こんなおぞましいものに触れるのはごめんなので視線で断ってやった。
私を蚊帳の外にしたまま、彼とニューボーンエイリアンは談笑を続ける。異種族コミュニケーションも大事だが、歩み寄る相手は選んだほうがいいと思う。
あんな青魔法を使いそうな種族は、人間とは決して相容れないだろうから。
こんな街中ではなくエリア51でやるべきである会談をしばらく行うと、目の前のラージノーズグレイは彼の耳元にその汚らしい口元を寄せて、なにやら二三言呟いた。
いったいなにを言われたのだろうか、ジャバ・ザ・ハットの唇が動くにつれ、彼の儚い表情は徐々に歪んでいく。
顔を真っ青を通り超して蒼白にした彼が、私の方に向き直る。
「ちょっと用事が出来ちゃったからさ……先に帰っててもらえる、かな。」
悲しそうにそれだけ言い残して、親友は先ほど現れた髭の中年に手を引かれほいほいついて行ってしまった。
そして私は彼の様子を不審に思い、彼らの後を尾行した。





440:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:32:08 r8gnCUIt
窓から覗く部屋の中に、引き締まった腿と銀色に光る腹が見える。一本の大きな黒い線がその腹を横切っている。
男の腕だ。男は寝台にうずくまって、親友をかかえ、ひしと抱きしめる。そして、男の口は親友の性の口のすぐ近くにあり、彼らは途方もなくおぞましい接吻のために身体を近づけあう。
暗い色の身体がほの白い体の前に跪いているのが見える。
しばらくすると、男が親友の上に身体を横たえ、呻くようになにかを言いながらぴったりと身を寄せる。男は親友を引き裂こうとし、親友の上にのしかかった。
二人は互いの身体のなかに深くはいりこみ、男は快楽へと突き進んでゆく。二人は身体を波打つように動かす。二人の充血した器官が私の目にはいる。
私は、彼ら二人がつくりなす汚らわしく奇怪な交合を目の当たりにした。
男が機械的に何かを繰り返すと、肉の結びつきはぐったりとなった。男はもう堪能しきっていた。
傍観者の私は、一人涙を流した。








441:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:35:45 r8gnCUIt
>>424を見て勢いで書いてしまった。
女装美少年なら萌えると思ったが、自分の文章力では萌えられなかった。今は後悔している。
スレ汚しごめんなさい。吊ってきます。


442:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:57:41 oY6SIra6
これは・・・なんともコメントしずらいな

443:名無しさん@ピンキー
07/09/21 22:00:14 JL9NHrpN
うん、、まぁその、、、なんだ

ガンバレ

444:名無しさん@ピンキー
07/09/21 22:01:06 mBRfhwJ7
もう少し書いてくれればよかったんだがな

445:名無しさん@ピンキー
07/09/21 22:02:11 JUDoFNkX
スレ間違えたかとおもた

446:蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:22:59 OyPy8Vpg
皆さん、こんばんは
続きを投下させていただきます

447:蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:24:13 OyPy8Vpg
 俺の朝は早い。
 まだ朝靄が街を覆い、空が紫かがっている内から家を出る。
 グレイ・クリフでレースが行われるのは週一回だがスキッダーは毎日練習する。
 そして俺の練習は家を出た瞬間からはじまる。
 まずはワイバーンの馬場(竜場とも言う)があるグレイ・クリフ山頂まで走りこみ。
 家から街までは平坦だから楽だ。問題は麓の街から山頂までの道のり。
 アルス王国の者なら誰でも山道は慣れたもの。しかし、走って登るとなると話は別である。
 ペースを考えながら走らないといけないのでなかなか馬鹿にできない鍛錬だ。
 唯一、気に入らないのは山道の幅が狭いこと。
 特に大きな馬車が通れば山腹にへばりついて道を開けなくてはならない。
 そして案の上、今朝走っていたら馬車が来たため一旦道を開けなければならなかった。
 ただ今回ばかりはへばりつくどころか道から外れ、山の斜面にまで退かなければならなかった。
「はあ……はあ……なんだよ。あれ」
 思わず立ち止まってしまうほど派手な馬車だった。
 四頭の黒馬に引かれたワインレッドの車両。所々金の装飾で彩られ、馬車の横腹には翼を生やした狼の紋章が描かれていた。
 貴族の馬車なんてグレイ・クリフじゃ珍しくもないが、あそこまで大きく豪華な馬車は未だ見たことがない。
 以前アザラスの馬車を見たことがあるが今の馬車に比べたらそれこそ小悪魔インプとドラゴンぐらいの差はある。
 まさに権力と財力を誇示するが如く。
 名のある貴族には違いないだろうが、生憎と俺はそういった事柄に興味はない。
 と同時にレースのない日曜の朝に大貴族がグレイ・クリフ山に何の用か、と好奇心が湧く。
 幸い、俺の目的地も恐らくあの馬車と同じだ。
 考え事は山頂に着いてから。
 俺は再び険しい山道を走り出した。

 山頂の洞窟内に到着すると俺は汗をしっかりと拭き取り、クリフ・スキッド用の革鎧に着替える。
 着替え室から竜場に向かい、腹を空かしたアズールにたっぷりと餌をやる。
 朝早いにも関わらず、周りには既に何人ものスキッダーたちが各々の練習の準備をしていた。
 そんな中、俺の走りこみ中の疑問の答えが目に入った。


448:蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:25:15 OyPy8Vpg
 竜場の中でも大きめに作られた奥の区画の一つ。
 そこには見たことのない赤いワイバーン。
 まるで竜神を拝めるかのように赤いワイバーンを世話する茶色い制服の一団。
 一団を護衛するかのように直立不動で立つ完全武装の兵士。
 そして彼らの盾には山を登ってくる際に見たあの馬車と同じ、翼の生えた狼が描かれていた。
 なるほど、と納得した。
 つまり今日からスキッダーがもう一人増えるのだ。
 とてつもなく“高貴”なスキッダーが。
「おはよう諸君!今日も王都リーグ目指して頑張ろうじゃないか!」
 準備をしながらチラチラと高貴な一団を見ていると、全く高貴じゃない貴族が姿を現した。
 アザラスである。
 最初は他の従業員やスキッダーに挨拶して回っていたが、俺の望みとは逆に奴の声がどんどんと近づいてくる。
「おはよう!ジース」
 予想はしていたが、アザラスは最終的に俺の方にやってきてしまった。
 こうなっては適当にはぐらかすしかない。
「おはよう」
「次のレースのため頑張ろうな!」
「ああ」
「次こそは上位にあがろう」
「そうだな」
「ところで見たか?ベイヴェルグ公爵家の連中だぜ」
「ベイヴェルグ?」
 ひたすら生返事で通そうと思っていたが、どうやら好奇心の方が勝ってしまったようだ。
「ん?ジースは知らないのか?」
 一見気さくに笑っているアザラス。その実、眼には自分の知識を披露したいという気持ちがありありと浮かんでいた。
「貴族の名前なんて一々覚えてられん」
「悲しいこと言うなよ」
「んで、そのベイなんとか様はどうなんだ?」
「ああ、そうそう。とにかく地味に影響力が大きい―」
 ベイヴェルグ公爵家。
 公爵という爵位の中でも最も高い位を持っているから偉い、というのは俺でも分かっていた。


449:蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:25:58 OyPy8Vpg
 だがアルス王国の主要穀倉地帯の領主だというのは初耳だった。
 簡単に言うと輸入品か自家栽培でないかぎり、毎日口にする食べ物は高い確率でベイヴェルグ領地産だということだ。
「まったく、これぐらいこの国の人間として知っておけよ」
 アザラスは説明が終わるとやれやれと言った感じに肩を竦めた。
「悪かったな」
 相変わらず気に障る仕草をする奴だ。
 しかしアザラスの言う通りならば、なぜグレイ・クリフにわざわざ公爵家の人間が来るのだろうか。
 確かにグレイ・クリフは週一回必ずレースを組むほどクリフ・スキッドに熱心な街だが、腕の良いスキッダーはたいてい他の主要都市に集まる。
 少なくとも名声を手にしたいのならここより良い場所は幾らでもあるはずだ。
「まあ、大方あの一族の坊ちゃんの道楽かなんかだろ」
 俺の考え事をよそに、アザラスは呆れたような態度で話題を締めくくった。
 自分のことを棚にあげて何を、と言いかけて俺は何とか己の口を塞いだ。
 ここで反応してはこいつとの会話が長引いてしまう。
 とにかく俺の練習が遅れない内にここを出ようと思った瞬間だった。
「恥を知れ!」
 鋭い女の声が竜場内に轟いた。
 アズールでさえ驚いて飛び跳ねたぐらいだ。
 声は話題の主役であったベイヴェルグ家の一団の方向から来ていた。
 そーっと横目で見ると少女がベイヴェルグ家の兵士に向かって何か怒鳴りつけている。
「ん?あんな娘いたか?」
 不思議そうな顔でアザラスが尋ねてきたが俺もあの娘を見るのははじめてだ。
 あの一団に隠れて見えなかっただけだろうか。
 そう思っている内に少女は引きとめようとしているベイヴェルグの家来たちを無視して着替え室の方へと歩きはじめた。
 先ほどの叫び声で気圧されたのか途中スキッダー、従業員問わず全員少女に道を譲ってゆく。
 一瞬だけ情けないな、と思ったがすぐに自分の愚かさを理解した。
「「うおっ」」
 不覚にも隣のアザラスとハモってしまうぐらい少女の姿は美しく、気品があった。
 肩で切り揃えられた金髪。
 研ぎ澄まされた刃物を思わせる切れ長の眼。
 エリシアさんが森のように爽やかでゆったりとした美しさなら、目の前の少女はグレイ・クリフ山の如く壮大で鋭利な美しさだ。


450:蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:28:26 OyPy8Vpg
 それだけではない。
 洞窟内にとどく淡い光でも反射してみせる紅い革鎧と脇に抱えた女神のレリーフが施された兜。
 両方ともワイバーンを一頭買えるぐらいの品なのだろう。
 なにより革鎧の胸部に縫い付けられた紋章。
 彼女がまさしくアザラスの言っていたベイヴェルグ公爵家の“道楽”息子ならぬ娘であると確信した。
 とりあえず俺の好奇心は満たされたので後は自分のことに集中するだけだ。
「よう!俺はドレンの子、アザラス。昨日はいなかったようだけど今朝ついたのか?」
 一方で俺とは行動原理が正反対の奴がさっそく少女に声をかけていた。
 ここまで来ると気さく通り越して、ただの馬鹿である。
「馴れ馴れしい……」
 呼び止められた少女は一端止まると、強烈な視線をアザラスに向けた。
 まるで虫けらでも見ているかのような見下した眼。
 直接見られている訳でもないのに、つい後ずさりしたくなってしまう。
「おいおい、同じスキッダーじゃないか。それにここは闘技場じゃない。競技選手同士もっと気楽にいこうぜ」
 そのままビクついて引っ込むかと思っていたアザラスは意外にも真面目な顔で話していた。
 少しだけ見直したかもしれない。
「ふん、田舎貴族が偉そうに何を申すか!勝負事においては己以外すべてが敵。ましてやクリフ・スキッドはもとはと言えば竜騎兵を鍛えるための演習の一つ。戦へと赴くのと同じ覚悟で挑むのが礼儀」
 もとから不機嫌だったのか、アザラスの態度が癪に障ったのか少女は物凄い剣幕でまくし立てた。
「それを競技?選手同士?笑わせるな!まったく、お前のような輩がよくもスキッダーなどと名乗れるものだ!」
 相手に言い返す隙を与えぬ猛攻である。
 アザラスをはじめ、グレイ・クリフのスキッダーたちは割と気楽である。だからお互い貴族だの平民だのと気にしない。
 それに慣れて忘れていたが、本来貴族様というのはこういうものなのだろう。
「わかった、わかった。俺が悪かったよ。とにかく名前を聞かせてくれないか」
 出だしはよかったがアザラスはすぐに折れた。
 前言撤回。
 やっぱりこいつ駄目だ。
「……私はエラミノの子、ティオーナ。ティオーナ・エラミノ・ベイヴェルグだ」
 アザラスのみならず竜場のいる全員に宣言するかのように彼女は名乗りをあげた。
 まるで他の者に何度も名乗らせるな、と暗に言うような尊大な口ぶりである。
「そ、そうか。よろしくな」
 アザラスは手を差し出すもティオーナは一瞥をくれるだけで歩き去っていった。
「ありゃ乗ってるワイバーンの方が大人しいんじゃないのか?」
 誰かが声を潜めて言った。
 まったくその通りである。
 貴族の女性と言ったらもっと慎ましやかな淑女を想像していた。ティオーナ嬢は貴族女性の幻想を見事なまでに打ち砕いてくれた。
 だがこのままだとあのアザラスでも可哀相に見えてくる。もちろん間違っても俺は奴に同情なんてしてやらない。
 兜を持ち、俺は練習に赴くためさっさと竜場を後にした。


451:蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:30:10 OyPy8Vpg
 投下終了です
 ノリと勢いで書いてるせいか、嫉妬要素まだちょっと先です。
 ほんとうにすみません

452:名無しさん@ピンキー
07/09/21 23:03:34 Nm+jVp7t
いつか嫉妬があるなら問題なしだぜ

453:名無しさん@ピンキー
07/09/21 23:20:39 wDlTuyci
女性キャラの魅力をきちんと描写できていてGJ。
でも個人的には主人公のワイバーンに興味があったり。

454:名無しさん@ピンキー
07/09/22 01:45:34 1IPxH64I
何故か最近毎日沃野の胡桃が夢にでてくるwww

455:名無しさん@ピンキー
07/09/22 02:17:18 pgJyg+rr
>>454
マリー隊長(Ver.bad)と胡桃は最狂
ヒロイン人気投票をしたって勝つに違いない

456:名無しさん@ピンキー
07/09/22 11:28:41 AiiYfJF9
ごめん、話し切って悪いんだけど
↑の方に書いてあるログを読んでもリュンコイスの魔王の起動アイコンがどうしてもわからない。
誰か教えてもらえないだろうか?

457:名無しさん@ピンキー
07/09/22 12:00:55 yi/QmzbJ
>>456
いい加減ググれよクレクレ厨……

ようはツクール2000製RPGをプレイするには、RPG_RT.exeという実行ファイルが必要なんだよ。
ベクターとかで落とせるゲームには最初からこれが入っているんだけど、これみたいな2ch作品は容量削減やウイルス対策やらで実行ファイルを入れてない場合が多い。
だから他のゲームとかから実行ファイル持ってきてやらないとプレイ出来ないんだ。
で、実行ファイルは剣を持ったショタのアイコンなんだけど、バージョンが古いとゲームによっては起動できなかったりするから注意しろよ。
最新版の実行ファイルはURLリンク(park.geocities.jp)で落とせるから
ゲームフォルダ(マップや他のRPG_RTファイルが大量に入ってるところ)にそれをコピーして、最後にショタのアイコンをクリックしてやればゲーム起動が完了ってわけ。

458:名無しさん@ピンキー
07/09/22 12:02:06 ztfA45pU
なぜ本スレに移らないお前ら

459:名無しさん@ピンキー
07/09/22 12:10:14 U4bo3Kpq
>>457
わざわざ説明してあげるお前に脱帽した

460:名無しさん@ピンキー
07/09/22 12:46:37 IPg1m3Ta
スクイズ放送中止だってな

461:名無しさん@ピンキー
07/09/22 13:18:29 avDdhl3Q
こちらでどうぞ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第22章
スレリンク(hgame板)

462:名無しさん@ピンキー
07/09/22 13:55:41 NQ/yrwXh
>>457
良いツンデレだな

463:名無しさん@ピンキー
07/09/22 17:51:57 U4bo3Kpq
>>456
つーか、リュンコイスは修羅場以外は糞ゲーだぞ?専門用語ばっかだし…無意味に言葉を難しくいうのがウザすぎてたまらない。そんなに必死になるなよ

464:名無しさん@ピンキー
07/09/22 20:10:53 +CkQYhHp
草待ちwktk

465:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:33:36 G208EnIY
では投稿致します

466:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:37:35 G208EnIY
 第13話『枯れる桜』

 更紗と刹那が桜荘に来てから2週間。
桜はもうすぐ枯れ落ちて今年の最後の見納めの時に二人の歓迎会の意味を含めて桜荘の恒例のお花見会が開かれた。

毎年、桜荘にある桜は一般にも開放されて多くの人で賑わう。
どこぞの会社の団体がお花見する時にはちゃんと料金を支払って、桜荘の自慢の桜を見物しながら飲み食いをする。
その料金で桜荘の維持費に使われている。

桜荘に人があんまり住んでいないのに奈津子さんたちが生活をしていく理由はそこにある。
多くの会社にバショ代を払ってもらえるおかげであんな豪華な生活を送れるのだと俺は確信した。
 とはいえ。そんな私利利欲塗れの桜が散る風景をこの目に刻み込みながら、

安曇さんの料理を食べるのは悪いことではない。
去年は奈津子さんと俺だけで虚しく酒を飲んで二日酔いに遭うことに比べたら数倍マシである。
 今年のお花見会はちゃんと公言した通りに美耶子や安曇さん。そして、その後に桜荘に住むことになった雪菜。

そして、俺の大切な幼馴染である更紗と刹那。
 皆がようやく揃った、桜荘恒例のお花見会が始まろうとしていた。


「桜荘恒例のお花見会を始めるわよ。
今年は一樹君が公言した通りに桜荘の皆一緒に揃ってお花見をすることができた。
これは私たちにとって喜ばしいことであり、去年までは叶うはずがなかった行事でした。
新たに桜荘の仲間に加わった更紗ちゃんに刹那ちゃんも居るし。
今日のお花見会は私の奢りで盛大に盛り上げましょう!! 
 というわけで乾杯!! 真穂ちゃん、私の秘蔵のお酒を持ってきて。
今日はそう簡単に寝かせてあげないわよ」


「そうですね。奈津子さん。今日は地獄の果てまで御供します。うっっ……」
「真穂ちゃんもついに大人の階段を登り始める時がやってきたのよ」
 と、奈津子さんの挨拶終了後にさっそくパシリとして安曇さんは泣きながら秘蔵のお酒を取りに走りだした。
 桜荘の中でも大きな桜の木の前に場所を陣取り、俺達は安曇さんが懸命に作った料理を並べて、
夜の桜を見上げながら散り行く名残を楽しんでいた。

単純に言えば、花より団子の女性陣は奈津子さんにあっさりと捕まり、アルコ-ル度数が高そうな酒を飲まされている。
俺はちゃんと今年の桜の散る場面を思い出の一つとして刻み込んでいる。
すでに酒臭い女性陣に比べて、ちゃんとお花見をやってますよ俺。

 黙々と美味しいという言葉以外は評価できない安曇さんの料理を食べながら、
無意味にテンションが高い女性陣は五月蝿く騒いでいた。元気でいいことだ。

「で、雪菜は言ってあげたんですよ……私にコクってくるのは2000年早いって。
本当にどうして年頃の男の子は万年発情期なんだろうか?」
「それは男の本性がオオカミさんだからですぅ。
一樹さんが私たちを監禁して凌辱行為に走るのかと
毎日毎日怯えている私は彼氏がいない方が幸せな人生を送れると……」

467:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:39:23 G208EnIY
 と、美耶子は男という生物というよりは俺がどれだけ危険な男であると熱弁していた。
本来なら背後から首を絞めて失神コースの刑は確実なのだが。
二人の頬は真っ赤に染まるぐらいに出来上がっていた。
酔っ払い相手に実力行使すると俺の服に嘔吐物が付着しそうで恐い。
ここは大人しく雪菜と美耶子の会話を聞かなかったことにして、
更紗と刹那の方に近寄ると逆に近寄りづらい雰囲気を醸し出していた。 
二人は顔を俯いて奈津子さんのお酒を少しずつ小さな口で飲みながら、ぼそぼそと呟き始めていた。

「ねぇ、刹那ちゃん」
「なぁに更紗ちゃん」
「私たちってそんなに魅力がないのかな?」
「カズ君。私たちをデートに誘ったり、夜に襲ったりとかしないよね」
「私は桜荘に引っ越してきた時はちょっと期待していたんだよ。
カズちゃんと一緒に暮らせるから、以前みたいな関係に戻れるって思っていたんだけど」
「うんうん」
「カズちゃんは私たちに少しだけ距離を置いているよ」
「やっぱり、カズちゃんが好きだって言った英津子さんの事が忘れなくて……。
でも、英津子さんを徹底的に問い詰めても何にもわからなかったし。カズ君の嘘だったね」
「その英津子さんは問い詰めのせいで人間不振になって、
一人の男の子を監禁して犬プレイさせているらしいよ。羨ましいよ」
 と、二人は痛々しい会話を永遠と続けていた。
やはり、お酒が入ると普段のタガが外れるらしいが、当事者である俺は傍目から聞いているだけで身震いがする。
更紗と刹那に視線を合わせないように俺は二人の会話を全身全霊で耳に傾けていた。

『カズ君の観察日記とかさ……』

『カズちゃんを監禁して、思う存分に甘えたり、』

『カズ君の首輪と鎖を買ってこなきゃ』

『カズちゃんの口に私の唾液を……』

『カズ君のためならなんでも……』

 と、恐ろしい呟きが含み笑いと共に聞こえてきた。お酒を飲む人が変わるのかと長い間幼馴染をやっているけど、
この驚愕の事実を今知った。出来るだけ二人に酒を飲まさないようにしよう。


『恋愛同盟を結成して……本格的にアプローチを』


『あの時の言葉は嘘だったのかな?』

 もう、俺は完全に無視を決め込みこれ以上幼馴染の会話を聞き取るのをやめた。
だって、そうだろう。こんな会話を聞けば幼馴染に拒絶反応の一つや二つぐらい起こるもんである。

468:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:41:09 G208EnIY
 さて、盛り上がってきたお花見会は奈津子さん以外の参加者はすでにノックアウトで倒れていた。
俺は女性陣のスカートの裾から見える下着などを隠しながら、奈津子さんの元で一緒に酒を飲んでいた。
泡を吹いて倒れている安曇さんの髪を優しく撫でている奈津子さんは魔性の女がよく似合っていた。

「こんなに楽しいお花見会は始めてだよ」
「いつもと変わらないと思うぞ。憩いの場で皆で飯を食べるのと殆ど一緒だな」
「確かにそうかもしれないけどね。一樹君と私にとっては違うでしょ。
寂しく二人きりでこうやってお酒を飲み明かした時と比べれば」
「桜荘恒例のお花見会と言っても、去年初めて開かれたし……。
それに安曇さんや美耶子も去年みたいに荒れてもいなかったしな」

「一樹君のフィンガーテクニックのおかげだよ」
「んな猥褻な表現の仕方すんなコラァ」
「でも、一樹君が頑張らなかったら、今日のお花見会はなかったわ。
美耶子も雪菜ちゃんや真穂ちゃんもずっと荒れたままだったでしょ」
「確かにそうだけど……」
 1年前のお花見会は悲惨な物であった。俺は幼馴染の事で酷く憔悴していたし、
嫌々に奈津子さんによって強制的にお花見会に参加させられて、
二人で寂しくお酒を飲み明かした。今思い出すだけでも充分に寒い。


「桜荘に向かって、大声で叫んだでしょ?」
「うっ……当の本人にとっては記憶の彼方に忘却したい事なのに」
「確か、俺が絶対にあいつらを絶望から救ってやるって」
「その場に雪菜が居てくれなかっただけが救いだな。
あいつなら朝を起こす時にマイクで復唱するかもしれんし」
「雪菜ちゃんもその一生モノの名場面を見逃したって言っていたし、
今年の抱負をここで桜荘に向かって叫んでみたら?」

「だが、断る」

 去年みたいな最悪の状況は回避されているし、今年の抱負は正月の時にでも適当に決めておくものである。
それに赤の他人の問題に突っ込むのはどれだけ大変なのかと言うことをこの1年間で思い知ったし。
これ以上何かの問題が発生するというならば、間違いなく舞台から下りる。てか、降板させてくれ。

「今年は去年以上の問題が起きるかもしれないわよ?」
「起きてたまるもんですか」
「あら。そう」
「ちょっと酔いを覚ましてきます」
「酔いの勢いで一般人の人たちを襲ったらダメよ」
「誰が襲うかっての!!」

 と、酔っ払いの絡みから逃げるためにさっさとこの場から離れた。

469:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:43:21 G208EnIY
 酒の勢いが体全身に回っているせいか、歩くだけで足はふらついていた。
さすがは奈津子さんの秘蔵のコレクション。

ラベルのアルコール度数は偽装表示されているんじゃないのかと言うぐらいにきつい。
夜風に当たるために桜荘の敷地で酔いを覚まそうとするが、心地良い睡魔に襲われつつあった。
その辺にある桜の木に背中を預けると俺は安堵の息を吐いた。

 1年間。
 言葉にするとそんなに時間が流れていないかもしれない。
ただ、体感してきた当事者にとっては忙しい日々と多くの苦難を乗り越えてきた。
特に桜荘のいる住人にとって人類が月に上陸するぐらいに大きな進歩があった。

過去の悲しみを乗り越えて成長した少女の姿がここにはある。
 だが……。
 更紗と刹那は過去にあった悲しみを乗り越えたのだろうか?

 否。
 俺が逃げている限りは一生解決できる問題ではない。
二人の想いを真っ正面に受けとめることができない臆病な自分が真っ向から立ち向かわない限り。ずっと。

 でも、解決する方法が一つだけある。
 早く、新しい人を見つければいい。そうなったら、更紗と刹那は俺から離れて新しい男と幸せにできるだろう。

「それでいいの?」

 刹那。

 少女の呟きが聞こえてた。少なくても、桜荘の住人ではない誰かが女の子の声が。
 その声の位置には純白なワンピースを身に纏った少女が立っていた。

「優柔不断で中途半端な人間のやる事全てがあの子達を傷つけてゆく……」
「アンタは誰さ?」
「私はさくら。人間じゃないわ。桜荘の桜の木の精。わかりやすく例えるなら……悪霊。そう、言った方がわかりやすいわ」
「酒を飲みすぎて何か幻覚を見ているのかな。木の精って、どこのマンガの世界だよ」
「ううん。現実とか架空の世界はどうでもいいんだよ」
「えっ?」

「絶望。その言葉を覚えていて。あなたが無意識に避けていた問題が一気に噴出する。
これは避けられない事態。来るべき、幼馴染との破局にあなたの心は耐えられるかしら?」
「何を言ってやがる」
「美耶子、真穂、雪菜の絶望を解き放ったことだけは誉めてあげる。
でも、あなた自身の暗闇の中を彷徨っているのに、二人を暗闇の中から手を差し伸べることができる」
「絶望とか暗闇とか意味わからんことをグタグタと」
「まあ、仕方ないでしょう。私が桜の木から解放される条件の一つに桜荘の住人の幸せと希望。
対局の状況に陥っているのは偶然ではないわ。桜荘には世界に絶望した人間が集まるようになっている」
「類は友を呼ぶって奴か?」
「わかりやすいことわざをありがとう。それと似たような状況が桜荘にも起きているの。
だから、同じく絶望している更紗と刹那がここにやってきたのよ」
「一体、二人はどうして絶望しているんだ?」

「こ、この鈍感野郎っっ!!!!」
 さくらと名乗った少女はどこぞに隠していたわからないが、棍棒を右手に持ち、
手慣れた動作で俺の頭部に叩きつけた。すでに酒の酔いが体に回っていたので
その衝撃と痛みは俺の心地の良い睡魔を与えることになった。

470:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:45:07 G208EnIY
投下終了。
とりあえず、修羅場になるまで果てしなく遠いです

471:名無しさん@ピンキー
07/09/22 23:10:21 L7vY0zU0
GJ。

472:名無しさん@ピンキー
07/09/22 23:12:02 ctMzdWS9
ごめん


   ●464 名無しさん@ピンキー  sage

草待ちwktk
DATE:2007/09/22(土) 20:10:53 ID:+CkQYhHp
 
   ●465 トライデント ◆J7GMgIOEyA   sage

では投稿致します


この流れは吹いた。

473:名無しさん@ピンキー
07/09/23 01:33:45 Nm54MGLP
>>470
(*^ー゚)b グッジョブ!!
俺は焦らしプレイも好きだぜ(*´д`*)
修羅場、期待してます!

474:名無しさん@ピンキー
07/09/23 10:27:44 ruaESdv+
>>470
キモ幼馴染にGJ
首輪と鎖買ってこなきゃで勃起した俺がいる

475:名無しさん@ピンキー
07/09/23 11:30:53 llWVz1T4
七戦姫を全裸で待ちつづけて早一月。
涼しい秋風が身に染みる。

敗者のため、王大人の到着を待っているのはわかっているのだが・・・

476:蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA
07/09/23 12:08:54 6OXSWXAR
皆さん、おつです。
続きを投下させていただきます。

477:蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA
07/09/23 12:09:35 6OXSWXAR
 色鮮やかな旗もなく、野次や賞賛を叫ぶ声もない。
 食べ物を運ぶ給仕もいなければ、優雅に扇子をあおる貴婦人もいない。
 レース当日とは打って変わって無人の貴族専用観客席。
 ここが俺の練習場だ。
 俺は暇が許す限りここで自分の技術を磨いてきた。
 トーンの低いワイバーンの鳴き声が聞こえる。
 振り向くと朝日を背に、北の山腹に沿うように一頭のワイバーンが向かってきた。
 徐々に高度を上げながら迫ってきたワイバーンは観客席真正面付近で一気に急降下する。
 俺は観客席からやや身を乗り出して、その姿を逃すことなくわが眼に刻む。
 山々の外周に沿って飛ぶクリフ・スキッドではこのようなコースのコーナー部分に貴族席が設置される。
 ただ真っ直ぐ飛ぶ直線より遥かにリスクの高い機動をとる曲がり角の方が見応えがあるからだ。
 特にクリフ・スキッドでは高度制限があるため、“コーナー”を飛び越えていくと失格になる。余裕をもって曲がってもコースから外れ、時間がかかる。
 よって一番効率的な曲がり方は山の斜面を掠めるかのように落ちながら曲がること。
 そうすることでワイバーンは素早く曲がりながら、次のストレートでも簡単に高度を稼ぐことができる。
 崖を掠める。クリフ・スキッドの名の由来だ。
 クリフ・スキッドは基本的に直線で高度を稼ぎ、曲がり角で降下し、次の直線で再び高度をあげ、降下する。
 一見単純な繰り返しが非常に難しい。
 俺はスキッダーになってから、いや、なろうと思う以前から絶壁を制覇する技を学ぼうとしてきた。
 人からワイバーンの乗り方なんて一度も教わったことがない。
 全ては観客席から独学で学んできた。
 ある意味、グレイ・クリフで飛ぶスキッダー全員が俺の師匠だ。
 だがそれも限界にきている。
 スポンサーをつけるため、あたかも乗り方を知っていたかのようにみせるのと、観衆の前で実際スキッダーとして活躍するのでは必要な実力が違う。
 だからといって今からコーチなんて雇う時間もお金もない。
 スポンサー側だって俺がいつか成功するまで待っている余裕なんてない。
 スポンサーと言っても地元の雑貨店や個人経営の店が集まった小さな商会である。
 貴族の個人事業ではじまったワイン会社や冒険者ギルドみたいに莫大な資産がある訳ではない。
「はぁ……」


478:蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA
07/09/23 12:10:19 6OXSWXAR
 来週勝てば良い、と気分を切り替えたつもりだったが現実をみればみる程暗い気持ちになってゆく。
 眼で追っていたワイバーンとスキッダーは俺が立つコーナーを抜け、南へ延びる直線へと飛んでいった。
 その先にはグレイ・クリフ山のコースの中でも随一の難所、『牙』が待ち構えている。
 本当はグレイ・クリフ山の峰が繋がっているもうひとつの非常に細長い山だ。
 普通なら飛び越えていけるはずの山稜も高度制限のあるクリフ・スキッドでは別だ。
 グレイ・クリフ山から西に突き出ている『牙』の周りをわざわざ迂回しなければならない。
 向かってゆくスキッダーたちにとってはヘヤピンカーブ同然。
 普通、スキッダーは『牙』を見ると心臓の鼓動が早くなるらしい。
 俺は『牙』を見るたび心が落ち着く。
 なにせ『牙』は俺にとっての原点であり、俺の武器なのだから。
 もちろん『牙』だけでは勝てないから悩んでいるのだが。
「はあ……」
 再びため息が出るが、すぐに持ち直し青空を見据える。
 最低限、練習から何か得なければ練習をしている意味がない。
 
 午前は他のスキッダーの技を盗もうと観客席で過ごし、午後は実際にアズールに乗って午前参考にした様々な技を試してみた。
 結果は可もなく不可もなく。
 俺は相変わらず普通のコーナーが苦手だということが分かっただけだった。
 レースがない日は後片付けも簡単なので、終わったのはちょうど夕暮れ時だった。
 山を降りようと洞窟を出たところで俺は珍しい人と出会った。
「ミリアちゃん?」
「あ!ジースさん!」
 声をかけると、満面の笑みで少女が駆け寄ってきた。
「久しぶりだな。でもどうしてここに?」
 ミリア・ブラム。
 後ろで束ねた長い緑色の髪が特徴的な俺より二つ歳下の女の子。
 スポンサーの一人、ブラム防具店のライアンおやじの一人娘。
 防具店のほうは父親と二人の兄が仕切っていて、普段は道の向かい側の雑貨店で働いている。
「え~と、実は昨日お仕事サボっちゃいまして。それで今日の配達は代わりに私が……」
 少し照れながら身を屈む姿はまるで子犬のように可愛い。
 屈む際に垂れる前髪もつい触ってしまいたくなる。


479:蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA
07/09/23 12:11:16 6OXSWXAR
 豊作祭になれば街の男子が躍りに誘いたくなる娘一位というのも頷ける。
「サボるって、ミリアちゃん。また?」
「だってジースさんの飛ぶところが観たかったんです……」
「それは嬉しいけどさ……何か言われなかったか?」
 一緒に山道を下りながら会話する間もミリアちゃんは俺の周りをくるくると歩く。
 本当に散歩をする子犬みたいに元気な娘だ。
「えへへ、実はおばさんに今度やったらクビにするぞって怒られました」
 彼女に反省の色は全くない。
「えへへって、本当にクビになっても知らないぞ?」
「その時はその時です。それより今日は早いんですね」
「レースがない日はこんなもんさ。まあ、それでも他のみんなよりかは遅いんだけどさ」
「え?どうしてですか?」
「いやさ……俺ほら、負け続けだし。下男とか雇える余裕ないから全部一人でやんなくちゃいけないんだよ」
「えー!ワイバーンのお世話から全部ですか?」
「ま、慣れているから特に問題じゃないさ」
「お父さん、ジースさんの後援者の一人のはずなのに……何もしてないんですね!」
「いや、ライアンさんには俺の相棒を買った時もそうだけどかなり援助してもらってるよ」
 確かに俺が使っている革鎧は防具店の冒険者用のものにベルト用の金具を付け足しただけの物。
 兜に至っては無塗装の鉄兜ときた。
 文句を言いたくなる時もある。
 それでもアズールを買った時、だいぶ投資してくれた恩がある。
「……」
 ミリアちゃんは突然考えるように押し黙った。
「ミリアちゃん?」
 一瞬の静寂のあと、彼女は何か呟いた。
「じ……わた……ゃ……さぃ」
「え?」
「じゃあ、わたしを雇ってください!わたしがジースさんの雑務を引き受けます!」
 突然何を言い出すかと思えば。
 元気なのは良いことだがやっぱりミリアちゃんは子供っぽいところがある。
「気持ちは嬉しいけど、お給料払えないよ?」
「いいんです!わたし、ジースさんのお役に立ちたいんです!」
「だったら尚更タダ働きさせられないな。大体ほぼ毎日働くことになるんだよ?」
「大丈夫です。これでも体力には自信がありますから」


480:蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA
07/09/23 12:11:58 6OXSWXAR
 やや大きな胸を張るミリアちゃん。
 華奢な体の何処からそんな体力が出てくるのか。
 もっと自分が結果を残せていたら、ちゃんとした給料で手伝いを頼んでいたかもしれない。
 だが今は空を飛べているだけでも感謝しなくてはいけない。
 ここは少し意地悪なことを言ってでも諦めてもらわねば。
「じゃあミリアちゃん、ワイバーンの世話の仕方分かる?」
「分かります。お父さんから聞きました。知らないものはすぐに覚えます」
「でも世話って言うと竜場の清掃とかだよ。糞とかもきれいにしなきゃいけないんだよ?」
「大丈夫です」
「臭いよ?」
「問題ありません」
 手強い。
 しかし俺には彼女が諦めざるえない必殺技がある。
「分かった。そこまで言うならライアンさんからちゃんと、許可を貰えたら頼もうかな」
 幾らライアンおやじといえども、可愛い一人娘が竜場で働くことをよしとするはずがない。
「本当ですか?やったぁ!約束ですよ?」
 まだ許可を貰ったわけでもないのに、彼女はピョンピョンと飛び跳ねながら喜ぶ。
「あくまで許可を貰えた場合だけだよ?」
「はい!分かってますよ~」
 とりあえず今は喜ばせておこう。
 どうせ明日辺り、落ち込んだ顔で『無理でした』という台詞を聞くことになるのだ。
 その時フォローを入れてあげればいい。
 俺はミリアちゃんを家まで送り届けたあと、一人酒場に向かった。
 現実的に来週のレースに勝つため、何か考えるためだ。
 結局、何も思いつくことなく帰路につくこととなった。


481:蒼天の夢 04 ◆ozOtJW9BFA
07/09/23 12:13:50 6OXSWXAR
投下終了です。
話数入れるの忘れました。↑のは4話目です。
すみません。


482:名無しさん@ピンキー
07/09/23 13:22:23 q7UtNup2
�シァ�シェ�シ��シ��シ�

遲�縺梧掠縺上※邏譎エ繧峨@縺��シ��シ∫カ壹″繧よ・ス縺励∩縺ォ蠕�縺」縺ヲ縺セ縺呻シ��シ��シ�

483:名無しさん@ピンキー
07/09/23 16:52:14 qXz8kTnm
>>481
GJ!

484:名無しさん@ピンキー
07/09/23 23:09:26 IHXjDsvE
蒼天が来てる!!いつ嫉妬が来るのか、毎回楽しみに待ってますぜ!!

485:名無しさん@ピンキー
07/09/24 15:34:03 dd5+HPNy
//////////////∧  / /         ,、 ,、            ヽ
、//////////////∧/ /           厶∨ヘ             l
. \/////////////∨´/      /  /  /    !            l
  \////////////∧l      |  |  |    | /ヽ           !
    \///////////∧     !  !  ハ  l    / /  |  /       ,
\    \//////////∧. l  |  |、__,ィ弋´ |   `/''ナ一!-/   /   /
  \    \,/////////∨、 ヽ ヽ\f乞ヾ、  /ィ乞ミk/ /   /   /
   \    、 ////////∧ヽ  \∨f:::::} `   l:::::::::::レメ   /   / とりあえず、斧で少女を殺す嫉妬SS
     \   ヽ////////∧ \  ヾ 弋ソ    弋:zソ/   /   / は規制するべきかと思いますが
      \   、///////.∧/ \ ゝ    ,      /  /    /
        ヽ  ヽ///////∧    `ヽ、  ーっ  /_'7´    ,.イ|
         ヽ  \//////∧      >、    _,ィ /     / `
          ヽ   ヽ,/////∧/7/!/   `丁  /    //
           \  ヽ/////∧/ ___ ,. イヘ! /  /,イ┐
            ヽ  ヽ/////ヾヽ ヽ:::::::::|´ノ / ,/!//:::::/`ィ─- 、
             ` 丁 ̄∧二∧_\ ヽ::::::ト'´`! / /:::::://´    ヽ
                 | / f'ヽ' ̄_,.).|\ \l'´`l //::::::://       |
                |/  |    ,.)!  \ !_イ/-─' ,イ   /      !
                 r |    ´ 〉\__ヽ/ ̄ ̄/ |  /         |
                 レ'|    ノ!,.ヘ / 7 ̄ ̄ ´ r_'´_,. - 、    ノ
                /__/   //   ヽ |     /´___   `ヽ /
                 /ー/  イヘ,/´__   \   /, -─ー `ヽ  Y

486:名無しさん@ピンキー
07/09/24 19:51:59 x2qjsZn4
>>481
ポニーテールは正義!!
GJ!!

487:名無しさん@ピンキー
07/09/25 09:46:38 d0BfXEFI
過疎化しているからちょっと暴れてもいいですか?

488:名無しさん@ピンキー
07/09/25 10:19:04 d0BfXEFI
: : /  |   l   l: : : :ヽ: : : : |/  /  ヽ ヾ、 \: : ヽ: : : : : : : : : :l ∧ : :〃
: ヽ   l   l   /: : : : />-'  /  ゝヽヽ  ヾ、 ヽ: : ヽ、: : : : : :ヽ : : l l//:
: : :l  l  /.  ,': : : :/   // ̄ ̄`ヽヽ丶ヽ ヾ、_ ): :〉 `ヽ: : : : : :\レ: :
: : :l  l  /   l=/    ∠_〃´ ̄ ` - 、ヽ  lヽ _//"〃  \: : : : : ヽ: : :嫉妬SS誰も投稿されてねぇー
: : l / /     l'´〃  / ̄〃   ●   `liヽ、i ヽ // ノ  ヽ: : : : : :ヽ:
: : : l/  {  /  i    ´l  〃ヾ、       /'  `ヽ    / ゞ__ノ: : : : : : : :}
l: : (ヽ         〈  ll .ヽヾ、   /  /  }   = ニ   {: : :_:_:_:_:_ノ:
ヽ: : 〉、ヽ        ヽ  l   ヽ ヾニ`´ /    /=、、〃 ̄`ー-' ヽ/: : : : : :
 ヽ〈 ヽヽ        ヽ l    )i _ -=゛   /〃  〃   i} `ヽ \:_:_:_ノ
   \ヽ丶       ヽ `ー 、Yl      / i  /〃  ● / ´/ ヽ 〉:_:/
    _l\ヽ        ヽ   /,' ̄ ̄  ̄     l 〃    / /== l /_:_:_:_;
─( /: :(ヽ         }   /,'  _ ,    _ -'i 〈ヽ、_ /`ヽ<__ /: :_; --
\  /: : : : \i        l  /,'ィ=ニー-、     i,--ヽ '   _,-  /ヽ´
ヽ ヽヽ: : : : : /ヽ      //-、   ヽ、ヾヽ ,'  ヽ---ヽ´  ヽ/‐' /
 ヽ l ヽ : : ∧ノ      / lヘ, ´rヽ、_ノ/ '  ゝ   / ` ´   /
  l l /: : /`ヽ、    〉 `ヾヽ、_ { ヽ /     _, イ i / ヾ   /
   l / ̄ ̄`ヽ、 `ヽ、 / \  `ー-ニニ' _ ┬‐ ´    /     /
   /      `ヽ  ヽT´ \  _ ィ´  l   _ - ´      /
 /         \  \ l `Tヽl `ヽ、ハ  /        /

489:名無しさん@ピンキー
07/09/25 10:19:46 d0BfXEFI
: : /  |   l   l: : : :ヽ: : : : |/  /  ヽ ヾ、 \: : ヽ: : : : : : : : : :l ∧ : :〃
: ヽ   l   l   /: : : : />-'  /  ゝヽヽ  ヾ、 ヽ: : ヽ、: : : : : :ヽ : : l l//:
: : :l  l  /.  ,': : : :/   // ̄ ̄`ヽヽ丶ヽ ヾ、_ ): :〉 `ヽ: : : : : :\レ: :
: : :l  l  /   l=/    ∠_〃´ ̄ ` - 、ヽ  lヽ _//"〃  \: : : : : ヽ: : :
: : l / /     l'´〃  / ̄〃   ●   `liヽ、i ヽ // ノ  ヽ: : : : : :ヽ:tついでにスレの住人もいねぇー
: : : l/  {  /  i    ´l  〃ヾ、       /'  `ヽ    / ゞ__ノ: : : : : : : :}
l: : (ヽ         〈  ll .ヽヾ、   /  /  }   = ニ   {: : :_:_:_:_:_ノ:
ヽ: : 〉、ヽ        ヽ  l   ヽ ヾニ`´ /    /=、、〃 ̄`ー-' ヽ/: : : : : :
 ヽ〈 ヽヽ        ヽ l    )i _ -=゛   /〃  〃   i} `ヽ \:_:_:_ノ
   \ヽ丶       ヽ `ー 、Yl      / i  /〃  ● / ´/ ヽ 〉:_:/嫉妬スレの終焉の時がやってきたようだ
    _l\ヽ        ヽ   /,' ̄ ̄  ̄     l 〃    / /== l /_:_:_:_;
─( /: :(ヽ         }   /,'  _ ,    _ -'i 〈ヽ、_ /`ヽ<__ /: :_; --
\  /: : : : \i        l  /,'ィ=ニー-、     i,--ヽ '   _,-  /ヽ´
ヽ ヽヽ: : : : : /ヽ      //-、   ヽ、ヾヽ ,'  ヽ---ヽ´  ヽ/‐' /
 ヽ l ヽ : : ∧ノ      / lヘ, ´rヽ、_ノ/ '  ゝ   / ` ´   /
  l l /: : /`ヽ、    〉 `ヾヽ、_ { ヽ /     _, イ i / ヾ   /
   l / ̄ ̄`ヽ、 `ヽ、 / \  `ー-ニニ' _ ┬‐ ´    /     /
   /      `ヽ  ヽT´ \  _ ィ´  l   _ - ´      /
 /         \  \ l `Tヽl `ヽ、ハ  /        /

490:名無しさん@ピンキー
07/09/25 10:21:15 d0BfXEFI
                    / 三二ニ= 、
                    ,イ/  ,二二ニ ヽ、、
                   ハ{   / >‐-= 、 \_/,イ
                   /´二}  {´ , -‐- 、  \ー'__}
                 //, /`ヽ、V /∠二ミ 、_  _ノ
                {〈 ,{ V´ `ー~´´´´´V/7//
               、__」レ'ノ 〉    ,   _V´}/  と、オレンジ閣下も嘆いております
                ミ三,-r´、≧ミ、 ソムtf我`レ/
                  ヽ!     ´ | ` ̄  .'´ _
                   」、   、j    /,r'´   \
                   {{ }ヽ -ー一  イ>ト     ヽ
                  . ィV__ \ ⌒ /ノ {ヘ     `、
              _.. ‐ ´::ノヘ」|〉ーf=i⌒lレ>/ ', /}   `、
        _.. -‐.::::::::::::::::::::/ \,」 }  !   {(/i   V l    `、‐-    .._
    r<:::::::::::::::::::::::::::::::/  <ヽ.ノ  rk!  .レ'  >'´/ノ     `、:::::::::::::::::`ヽ
    _)::::::ヽ、:r== '"´     ノ  ヽ  し'  ,/ / / ィ´       ヽ::::::::::::::::::/
     ヽ:::::::::::||\ ` ー…― - ⌒ヽ}  -‐ '"´  ´/ノl   , -‐-  .  \:::::::/
      |::::::::::||   ヽ          ( rヘォー─ '7'´ | /.::::::::::::::::::::`丶 `く
      |r=‐’     、====ァフ¬イ    /    レ7ァ:::::::::::::::::::::::::::::::::}\}
     ,イ   ノ  }:  l ト、ー= ノ   /   /  rー{_}必ー- 、::::::::::::::::::::::|
    /:::!  /   |   l | } i、\ _   / _,rーf7__L\:::::::::::::\::::::::::::::::l
  , ´.:::::::|  /    :l    l |ノノ ヽ   `、   _f__ノ>' }`´.`ヾ 、:::::::::::::::::::::::::::l
  /:::::::::,イ /     |   l |   └―‐f~く_ノ/ ァー′. : : : }´ト、::::::::::::::::::::::l
. /.:::::/ }/ /    ト、   l |__rー<辷>ー'´ !   廴:_:_:_:_:_: ノ / ,{::::::::::::::::::::::l
/.::∠. -‐レ'    ノ辷辷辷辷>ーァ'´  ___ノ       __//ノ:::::::::::::::::::::j
/    ,} ,rーァ'´ >ァ==キ≠‐ ´   、          /.:::::::::i::::::::::::(
辷辷辷辷辷r‐'f7´ /             `  ー-ッ─ イ´.:::::::::::::::l, -‐- 、}
      レ' //  /              -‐ァ'"´       |:::::::::::::::::::l    `、
.      / / /  /         _.. - '´   /        |:::::::::::::::::::L -‐- 、丶
    /   {   `丶、    , 、イ´    /             l:::::::::::::::::::::',:::::::::::::::ヽ丶
    `丶、  _.. -‐…、/  | |   /            ,::::::::::::::::::::::`、::::::::::::}  丶
       `´      |   } }  , ´            /.::::::::::::::::::::::::::ヽ:::::::::::|    ヽ
               |   j レ'             /.:::::::::::::::::::::::::::::::::\::::::L

491:名無しさん@ピンキー
07/09/25 11:58:08 RTlEAdpg
AA連投荒らしはアクセス規制対象ですが

492:名無しさん@ピンキー
07/09/25 16:39:09 N5oAgd/Y
どうせ、誰も来ないから別にいいんじゃねぇの?

493:名無しさん@ピンキー
07/09/25 16:51:34 GyD8hnfa
ニートタイムに書き込んでおいてよく言うな…
>487のカキコ時間とか、普通のエロパロのスレだとカキコほとんどないと思うのだが

494:名無しさん@ピンキー
07/09/25 16:53:58 fdzsi/D8
>>493みたいなレス見ると携帯電話って実はほとんど普及してないんじゃないかと考えてしまう。

495:名無しさん@ピンキー
07/09/25 17:09:34 N5oAgd/Y
>>493
ってニートだから今時携帯も持ってないんでしょ
あんまり突っ込むなよ。可哀想だろw

496:名無しさん@ピンキー
07/09/25 17:11:03 GyD8hnfa
>494みたいなレスみると、携帯からAAはるなんて頑張る人がいるもんだなぁと思う

497:名無しさん@ピンキー
07/09/25 17:27:37 ZZTdax+J
まーそんないじめてやるなよ
携帯からAA貼れると思ってた携帯持ってないニートなんだからさ・・・

498:名無しさん@ピンキー
07/09/25 18:01:47 Paf0d8Ex
いや、携帯からAAは貼れるだろ・・・常孝

499:名無しさん@ピンキー
07/09/25 18:06:12 DrgM+6sL
>>498
AAを一文字一文字打ってるとでも思ってるんだろ

500:名無しさん@ピンキー
07/09/25 18:15:02 1DhREY4D
張ってるAAからして既に痛いんだが

501:名無しさん@ピンキー
07/09/25 18:17:30 N5oAgd/Y
それにしても、嫉妬SSと住人が減ったのは
俺以外の>>488-499
がいるせいだろうな

嫉妬SSを書いて、貢献しろw

502:名無しさん@ピンキー
07/09/25 18:30:34 ZZTdax+J
>501 それはネタですか?

503:名無しさん@ピンキー
07/09/25 18:41:02 L0a8h6LH
お前ら釣られすぎだろ・・・
それとも自演で荒らしてるのかはわからんけど

504:名無しさん@ピンキー
07/09/25 18:59:30 U0p5TJTQ
それにしてもスクイズの最終話中止で、ここの作者さんたちもショックを受けてたりしてないだろうか・・・
それが心配だ

505:名無しさん@ピンキー
07/09/25 19:24:56 uWEtyc8F
>>504
つ本スレ

506:名無しさん@ピンキー
07/09/25 19:32:18 JHAkkzZw
お前らは本当に静かに待てんのか、まったく!
>>475を見習え!
……そろそろ凍死してるかもしれないけど。

507:私たちの愛しいお兄様
07/09/25 20:33:14 wZR5WDe1
目覚ましの音で目が覚める。いつもと同じ六時半。
七時に起きれば間に合うけど、いったん起きてトイレに行き、二度寝するため
この時間に起きてるけど今日は珍しく完全に目が覚めたからもう起きよう。
「真奈、加奈。朝だよ。おはよう」
「ん・・・おはよう・・・ございます・・・おに・・・ぃ・・さま」
「おはよう・・ございます。お兄・・様」
この二人は僕と一緒に生まれた一卵性の妹たち。三つ子だった僕らは、母胎内で
負担がかかったらしく、そのせいか、僕以外の二人は小さいときから病弱で、母も
産後の事故で父と共に死んでしまったため、3人で暮らしてきた。

508:私たちの愛しいお兄様
07/09/25 20:41:23 wZR5WDe1
遺族年金もあったし祖父母が資産家だったこともあり三人で生きていく分には
何も不自由はしなかったが、小さいときに父母の愛を知らなかったからか僕に
ずっとべったりで、高校生になった今も布団を並べて一緒に寝たがるほどだ。
もっとも、二人とも高校生とは言え、小さいときから学校にも行ってないので
精神年齢はずっとずっと幼い。小学生ぐらいだろうか

509:名無しさん@ピンキー
07/09/25 20:45:07 U0p5TJTQ
割り込みすまん!!
頼む、sageてくれ!!

510:名無しさん@ピンキー
07/09/25 21:44:26 Hwwvw6Vc
sage方はメル欄に半角でsageと入力するだけだよ

511:私たちの愛しいお兄様
07/09/25 22:42:58 wZR5WDe1
幼いころ。まだ僕らが一緒に風呂に入っていたときだった。
ちょうど僕が頭を洗っていて目をつぶっていたとき、双子の片割れ、加奈が
湯船から出ようとして脚を滑らせ、溺れかけた。幸い、真奈がすぐに気付き
僕もすぐに気付いたので事なきを得たがそれから加奈は風呂恐怖症になり以降
は中二までずっと一緒に入っていた

512:私たちの愛しいお兄様
07/09/25 22:46:06 wZR5WDe1
さすがに、中三にもなると、一緒に入ることを止めようと提案したが、怖がる
加奈を放っておけず、隣に住む幼馴染が一緒に入ってくれたが

513:私たちの愛しいお兄様
07/09/25 22:51:17 wZR5WDe1
幼馴染が夏休みやゴールデンウィークに旅行に行ったりして
不在だった日には僕が仕方なく一緒に入った。
そういう時は真奈も必ず『お兄様が加奈と入るなら私も一緒に入る』
と言ってくるので、高校に入ってからも何回か三人で入っている。

514:『私たちの愛しいお兄様』の作者
07/09/25 22:53:34 wZR5WDe1
つまらなくてスミマセン。何しろ初めてのSS投下なのでして。
それと、今更ながら主人公と幼馴染の名前募集してます。
誰かいい名前無いでしょうか?

515:私たちの愛しいお兄様
07/09/25 22:57:54 wZR5WDe1
あと、加奈真奈は依存系にします。
病弱かつ親無しという設定上、異論は認めません

516:名無しさん@ピンキー
07/09/25 23:03:46 UNQh7dQX
色々言いたい事はあるのだけれど、とりあえずageないで頂きたい。

517:名無しさん@ピンキー
07/09/25 23:08:26 YVQ3QTFx
上げると注目されて嫉妬した泥棒猫にミキサーでこれ以上は言えません

518: ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:43:28 9PfEhUDt
投下します。

519:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:44:06 9PfEhUDt
 

 俺がまだ小さかった頃、偶然に妹の日記帳を見てしまった事がある。

 その日は家族で大掃除をしていて、年一つ離れた妹の希(のぞみ)と同じ部屋だった俺は、希が別の場
所を掃除している間、一冊のノートを発見した。
 どうせ授業で使う教科別のノートだろうと、手に取りさっさと机に戻そうとしたが、「こくご」「さん
すう」「りか」「しゃかい」と、他のノートにはしっかりマジックで教科名が書かれているのに対し、こ
の見た感じ使い古された風なノートには、教科どころか名前すら書いてなかったのだ。

 まるで、誰にも知られたくない秘密が記されているかのように。

 ただ未使用なだけかもしれない。でも、そうでないかもしれない。
 子供心に興味が沸いた俺は、おそるおそる表紙をめくってみた。一体どんな内容がその中にあるのだろ
うと。


「○月×日 今日は良いてんきでした。おにわのアサガオもげんきいっぱいです。となりでこーくんもわ
 らってます。だからわたしもにこにこです。」

「○月×日 雨がざーざーふってました。がっこうはおやすみになって、とくになにもありませんでした
 。おしまい」

「○月×日 こーくんがわたしのハンバーグをたべてしまいました。おとうさんはおこってこーくんをぶ
 って、こーくんがエンエンないちゃって、それみてわたしもないちゃいました。」


 そこまで読んで、小さかった俺はすぐに興味を無くしてしまった。
 てっきり正義のヒーローの正体だとか、悪の秘密基地だとか、宝物の隠し場所なんかが書かれているの
だとばかり思っていて、開けてみればごく普通の日記だったのである。
 勝手に人の物を見ておいてなんだが、当時はなんだ、とがっかりしたものだ。
 他のページをパラパラとめくってみても、目当てのものは無く、ずらっとその日の出来事が書かれてい
るだけ。
 仕方が無いのでノートを閉じると、元の掃除中である乱雑なスペースへこっそりと戻しておいた。

520:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:44:46 9PfEhUDt
――――――――――――――――――――――――――



 ………で、今。高2になった俺の目の前には、あの時と同じく無題無記名のノートが一冊。

「ぬぅ、装丁まで同じとは見上げた初志貫徹っぷり」

 思わず感嘆の声を上げる。妹の部屋で。

「木を隠すなら森の中…しかし最初から分かってるなら意味は無いな」

 肘をつく机の上には、同じ柄の「国語」「数Ⅰ」「物理」「化学」などなど、各教科のノートがずらり
と並んである。何も書かれていないのは手に持っている一冊だけ。
 一見予備とも思えるそのノートは、おそらく妹の日記帳。

 いっそのこと「世界史」とでも書いておけば、絶対手に取らないと思うんだが…。

 世界史と題された日記帳。壮大だなオイ。

 まあ、そんなどうでもいい思考はさておき。

「……気になるじゃないのさ」

 希は、まだ部活から帰って来ない。
 お互い部屋を別々に分けてから八年、高校に入ってからはあまり入る事の無かった妹の部屋。貸してた
本を取りに来なければ、こうして探索作業に耽ることも出来なかっただろう。

 面白半分、ネタ半分。

 昔と違って、今や俺の興味は日記そのものに向けられている。

「これで何も書いてなかったりしたら一人上手もいいとこだな俺」

 思わず苦笑。しかし好奇心旺盛な兄としては、この機会を見過ごすわけには行かないわけで。
 そう、本棚から机へ視界がスライドしてしまったが運の尽き。後は心行くまま気の向くままに。
 もしも中二頃に見つけていたら、ファンシーなポエムでも読む事が出来ただろうか。いや、ひょっとし
たらまだ現役の妖精さん日記が見れるかもしれない。
 そう考えると顔がニヤける。こう、嫌な感じに。

「どれ、それじゃひとつ見てみるか」

 あの俺の後ろをぴょこぴょこ付いてくる小動物的かつ甘えたがりの駄目妹が、どんな面白い事を書いて
いるのか。もしくはまた脳天気であっぱらぱーな内容なのか。
 ノートを開く。ページをめくる。


 ……
 ………
 …………


「……予備かよッ!!」

 表紙・裏表紙はもちろん、ノートは最初から最後まで全面真っ白だった。

521:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:45:28 9PfEhUDt
「まさか炙り出しじゃないだろうな…?」

 いつの間にそんな忍者みたいな真似をと思いつつ、試しにライターの火を当ててみる。何度やっても字
は出ずにそのまま数ページほど燃えた。
 悔しいので日にかざしてみたり、虫眼鏡でパスポートの中から「JAPAN」の五文字を探すがごとく
じっくりと見てみたが、やはりページには何も書かれてはいなかった。

 何やら無性に敗北感を覚える。いっそ落書きしてやろうかと思ったそのとき、

「ちぃ! 帰って来たか」

 玄関の方からドアの開く音と「ただいまー」という声が聞こえてくる。
 そのまま廊下を歩き、自分の部屋に向かうべく、トントンと階段を上ってくる気配。

 仕方ない、ここは撤退あるのみよ。

 速やかにノート等の処理を済ませ、希が階段から顔を見せる前に、逆にこちらから爽やかスマイルでも
って出迎える。

「やあ、おかえり」
「ただいまこーくん、お母さん達は?」
「今日も仕事で帰れないってさ」

 言って、部屋へ戻ろうとするところで、

「あっ、こーくんこーくん」

 唐突に希に呼び止められる。

「何?」
「あとでそっちの部屋行っていい? 部活で作ったクッキーがあるの」
「いいね、ありがたく頂こう」

 一緒に食べよ? と目で訴える希に対し、軽く頷く。そういえばもうじき小腹の空いてくる時間だ。

「うんっ! お茶も入れてくるから待っててね」

522:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:46:05 9PfEhUDt
 嬉しそうに部屋へ戻っていく。その後ろ姿を見ながら俺はふと、あるアイディアが浮かんだ。
 すでに部屋に入り鞄を置いているだろう希に声をかける。

「あー…希」
「なにー?」
「俺まだレポート終わってないから、三十分くらい待っててくんない?」
「わかったー」

 何も知らない様子で出された提案を了承する希。相変わらず疑う事を覚えん奴よ。
 その声を最後まで聞かず、俺は急いで自分の部屋のドアを開けて、適当な未使用のノートを速やかに机
の上に引っ張り出した。
 手にはマジック。他にもシャーペンと消しゴムも忘れない。

 キュッ、キュキュー

 素早く、しかし丁寧に題を書く。「Diary」。流石にこの年で読めないって事は無いだろう。
 制限時間は三十分。だがそれだけあれば問題ない。

「舐めよってからに……目にもの見せてくれるわ妹よ」

 別に向こうは何もしてないというか、ぶっちゃけ俺の勘違いだが。そんなものは兄のプライドの前には
些細なものに過ぎん。
 だって悔しいじゃないの。こう、兄的に。
 ゆえに、そんな偉大なる兄の面子を保つ為ならば、こんなアホらしい行為の一つもやってのけるのだ。

 マジックからシャーペンに持ち替える。最初のページに踊るように文章が書き込まれていく。


「「◇月◇日 今日は――」

523:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:46:42 9PfEhUDt
――――――――――――――――――――――――――



「んー…」

 台所の食器棚からお盆を取り出し、そこへ調理部で焼いたクッキーの皿と、入れたてのお茶…こーくん
はコーヒーや紅茶よりも日本茶が好きみたい…を、お気に入りの湯飲み二つと一緒にのっける。
 居間の時計は、さっき上の廊下で約束してからぴったり三十分経ってた。

「もう、行ってもいいよね…?」

 お茶がぬるくなっちゃったらもったいないし。
 わたしはお盆を持つと、二階のこーくんの部屋へ向かって階段を上り始めた。


 こーくんはわたしの一つ上のお兄ちゃんだ。


 中学生になってから、お父さんとお母さんは仕事が忙しくてお家を空けることが多くなったけど、その
代わりにこーくんがわたしの面倒を見てくれた。
 いじわるでわりと面倒くさがりのこーくん。でも、わたしが料理を覚えるまではちゃんと毎日二人のご
はんを作ってくれる。お洗濯だって、わたしがパンツを洗われるのを恥ずかしがって自分でやるようにな
るまでは、こーくんがやってくれていた。
 小学生の頃はお風呂も一緒に入って、わたしにシャンプーかけたり身体を洗ってくれたりもした。夜に
なって、さびしくてこーくんと一緒の布団で眠るのは……今でもときどきやってる。最近はおねがいして
も断られるけど、こーくんが疲れて寝ちゃったりしてるときに、こっそり布団に潜り込んでぎゅーって抱
きつくと、こーくんの匂いがわたしに染み付いて、すごく安心できる。

 普段はふざけあったりからかったりして、たまにはいじめられて泣かされそうになるけど、でもでも、
ほんとはわたしのことをとっても大事にしてくれてるこーくん。
 家事を教わりたいと言ったら、「お前にできるかあ?」なんて笑いながら、でもとっても丁寧に教えて
くれた。
 冬に風邪を引いたときは、学校が終わったらすぐに帰ってきてくれて、あれこれお説教しながらそれで
も優しくわたしのお世話をしてくれた。
 こーくんの手作りのおかゆ、頼んだら少し嫌そうな顔をしたけど、ちゃんとふーふーして食べさせてく
れた。こーくんの息のかかったおかゆ。食べながらドキドキし過ぎてまた熱が上がっちゃった。

「こーくんこーくん、もう入っていいー?」
「おお、悪いな。こっちもさっき終わったとこだ」

 ドア越しに「んー」って気だるそうな、背筋を伸ばす声が聞こえてくる。
 よかった、タイミングばっちりだったみたいだ。

「それじゃ、お邪魔しまーす」
「いつも勝手に入ってくるくせによく言う」

524:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:47:26 9PfEhUDt
「い、いつもじゃないよ。ちゃんとノックしてるもん」
「まあいい、それよか早く食べよう。頭動かしてたら甘い物食べたくなってきた」
「うんっ! まってて、今お茶注ぐから…」

 それから、こーくんとわたしは二人でクッキーをおいしく食べた。
 がんばって作った、チョコとバニラを市松模様に分けたクッキーを、お茶をすすりながらこーくんが「
けっこう美味いのな」って褒めてくれる。それだけでわたしは幸せな気分になった。

「たくさんあるから、いっぱい食べてね♪」
「ああ、と……いかん、その前にちょっとトイレ。少し茶を飲み過ぎたかも…腹下した」

 苦い顔をして立ち上がるこーくん。たしかにお茶にはそういう作用もあるっていうけど、もっとこう、
女の子の前なんだから、もう少し気を使ってもいい気がする。

「妹相手に気ぃ使ってどうするよ」
「なっなんで考えてることわかるのっ」
「顔見りゃわかる。お前はそういうのがわかりやすい」

 おかげでいじり甲斐がある、そう言ってこーくんは部屋を出て行った。

 ……そんなにわかりやすいかな、わたし。

 友達からもよく言われる言葉だ。
 だからいっつもトランプとかで負けちゃうのかな。ポーカーとかババ抜きだとか、こーくんは大体ニヤ
ニヤ笑っててちっとも考えが読めない。それで毎回わたしがババを引かされるんだ。

「むー…なんか面白くない」

 バフッ、と手元のクッションを抱え込む。
 言われた通りのむっつり顔のまま、わたしは閉められたドアをじっと睨んだ。

 どうにかしてこーくんを驚かせたりできないだろうか。

 わたしに騙されて、いかにもしてやられた、って感じの顔をさせてみたい。
 今までに何度も試してはみたことなんだけど、いじわるでそういうことに関して鋭いこーくんは、すぐ
に見抜いて逆にわたしがびっくりさせられちゃうのである。
 たとえば、いじめられた仕返しに、夕ご飯のときこーくんの麦茶にこっそり醤油を入れておいたとき。
 目を放した隙に、いつの間にかわたしとこーくんのコップがすり替わってたのに気付いたのは、醤油の
苦味にわたしがむせ込んだあとだったり。

「う…思い出しただけで苦い」

 それを見てこーくん、「俺をハメようなんて十年早い」って大笑いしてたっけ。

 あのときの悔しさもまとめて晴らすため、わたしはこーくんの部屋に使えそうなものはないか探してみ
る。なにか、こーくんが恥ずかしがったり悔しがったりするようなもの。

「自作の詩集だとかあったら、きっとこーくんも一発だよね」

525:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:48:23 9PfEhUDt
 机に向かってポエム作りに熱中して、うっかり朗読なんか始めちゃうこーくん。
 
 …ちょっと、家族としての付き合い方を考えそうになる。

「うう…それはそれでイヤかも。……あ」

 机に整理されてある本とかノートなんかを一つ一つ手に取って確認してると、そのうちの一冊がわたし
の目に入った。なんでもないただの大学ノートの表紙に、マジックできれいに書かれた「Diary」の
五文字。

 こーくんの、日記だ。

「ほんとにあった…」

 なんだか妙に緊張してくる。
 詩集じゃなかったけど、まさかこーくんが日記を付けているなんて。
 どう見てもそんなのめんどくさい、って、そのまま寝ちゃいそうな感じなのに。そんな、そんなこーく
んが、日記。

 ドクン、ドクン…

「あ、う……ええっと」

 胸のあたりがドキドキしてきた。落ち着かない。
 こーくんがどこかに隠れてないか、まわりをキョロキョロ見回す。どこにもいない。きっとまだトイレ
の中だ。


 …………見ても、いいよね?


「ここ、こーくん、だって…わた、わたしの見たこと、あるもん。お、おたがいさま、だよね…」

 あのときは小学生だったけど。

 上手く舌が回ってくれない。口から出た言い訳もカミカミになる。
 こんなの、中学生の頃にこっそり忍び込んだこーくんの部屋の隅から、Hな本を見つけたとき以来だ。

 トイレから帰って来ないうちに、早く見ちゃわないと。

 覚悟を決めて、わたしは日記の表紙をめくった。


「◇月◇日 今日は良い一日だった。放課後に生徒会室で資料を片付けてたら、書記の一瀬(いちのせ)
 と雑談で盛り上がって、結構良い感じの雰囲気になった。
 どれぐらい良いかっていうと、勢いでこんな日記を始めてみるくらいだ。
 いつもは口数の極端に少ない一瀬も、意外とノリ良くこっちの話題に乗ってくれて、案外話しやすい奴
 だという事がわかった。
 ただ雑務をこなすってだけじゃ退屈だったし、これからもちょくちょく話し相手になってもらおう。」


 なんだか考えてたよりも丁寧に日記が書かれてる。こーくんのことだから一行二行だと思ってたけど。
 でも、それ以上に気になったのは。


526:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:49:11 9PfEhUDt


「◇月◇日 雨が降って体育が室内の男女混合でバレーをする事になった。男子一同、俄然やる気を出し
 ていたのだが、顔面不如意な運動音痴ことO宮が、ここぞとばかりに張り切る様は、さながら諸行無常
 を感じざるを得ない。

 世の中顔だ。顔。」

「◇月◇日 会長に押し付けられた雑務をするべく生徒会室へ来たら、今日も一瀬がいた。どうやらこい
 つも雑用係としてほぼ毎日頑張っているらしい。健気な事だ。俺も内申目当てに頑張ろう。
 今日は何と向こうから話しかけてきた。これまでは「ええ」だの「はい」だのしか言わず、あとは事務
 的な会話のみだったのに、これは大きな進歩だ。」

「◇月◇日 我らがB組のハート様ことT下が、隣のクラスの女子に告白。2秒でフラれた。罰ゲームで
 はなく本気の告白だっただけに、どうにも救えない有様だ。
 性格は良い奴なんだけどな。顔と身体がハート様じゃしょうがない、デブ専なんてのは都市伝説だ。
 家に帰ると、珍しく希が将棋で勝負を挑んできた。さっきまでテレビで名人戦を見てた影響だろう。飛
 車角落ちで負かしたら、向こう一週間の夕飯を引き受けるというので全力で負かしてやった。
 兄より優れた妹などいねぇ。」

「◇月◇日 放課後、今日も生徒会室で一瀬と雑務三昧。何となく企業「8:2の法則」が頭に浮かんで
 くる。俺らは二割の働きアリかと思えなくもないこの現状。
 実際のアリは八割が真面目だというのに。ひたすら他の役員どもが憎い。
 入りたての頃も思ってたが、こいつはやはり仕事の出来る奴だ。こっちの割とアバウトな要求にもすぐ
 に対応してくれるので、一緒に仕事をする側としては大変やりやすい。
 そこんとこの要領の良さを、うちの妹にも分けてやりたいものだ。」


 ……だれだろう、この「一瀬」さんって。


 大体、二日に一度ぐらいに、「一瀬」っていう人の名前が出てくる。それも、ちょっと仲良さそう。
 文の内容から見て、多分、女の子なんじゃないかと思う。

 こーくんの日記に、たくさん出てくる、仲の良い、女の子。

「……うー」

 なんか、ヤな感じ。
 別に、こーくんだって好きな人ぐらいいるだろうし、いなくても興味ぐらい持つと思う。それに、ほん
とはそんなんじゃなくって、ただの仲の良い後輩ってだけなのかもしれない。

 ページをめくる。
 日付は一番新しい、昨日の出来事。


「◇月◇日 一瀬と付き合う事になった。


 目に入ったのは、そこまで。続きを読まずにノートを閉じる。

527:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:50:38 9PfEhUDt
「…………」

 きゅん、て、胸が苦しくなる。
 今までずっと一緒にいたこーくんが、いきなり遠くへ離れて行っちゃうみたいな感覚。

「……だ…だいじょう、ぶ。こーくんだって、男の人なんだもん。そりゃ、そうだよ…」

 声が震えるのがはっきりわかる。
 どうしてここまで不安な気持ちになるのか、ちっともわからないよ。

 ジャー…

 ドアの向こうから、トイレの水を流す音が聞こえてくる。
 はっ早く、こーくんが帰ってくる前に、元に戻さなきゃ…。

 ガチャッ

「悪いな、茶が冷めちゃったか?」
「う、ううんっ。全然平気だよ」

 そのあと食べたクッキーとお茶の味は、よくわからなかった。


528:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:52:01 9PfEhUDt
――――――――――――――――――――――――――



 …おかしいな。

 客の居なくなった部屋で一人、腕組みして首を傾げる。
 皿一杯に盛られていたクッキーを平らげると、希はそれ以上長居しようとはせず、そそくさと部屋へ
戻って行った。いつもならその後もまったりとどうでもいい会話をするところなのだが。
 ……というか、

「ちゃんと読んだよな? あれ?」

 視線の先には、先ほどの意趣返しのようにノートに紛れ込ませた日記。製作時間二十八分。
 そのやたら青春臭い内容が書かれた最新の日付のすぐ下には小さく、「以上、フィクションです」の
一言。

 ちょっとしたお茶目なジョークである。

 確かに俺は学校の生徒会副会長で、放課後はよく書記の一瀬という後輩と生徒会の雑務なんぞをやっ
てたりするが、あいつとの関係はいたってドライだ。
 日記序盤の方に書いてあるやり取りで概ね正しい。
 が、それだけだと何の面白味も無いので、所々に脚色を入れて最終的には告白までさせるという荒業
をしてみた。冴えない兄だと思ってたのにいつの間にそんなモテ路線!? と動揺を誘ったところでオ
チを持ってくる作戦だったのだが、ひょっとしたら不発に終わったんだろうか? 今日読んでなくても
、機会を狙って読ませようと思っていたが。
 いかん、何だかスベった空気がプンプンする。

「いや、一応ノートを開いた痕跡はあるんだよな」

 偽の日記帳を開く。
 念の為にノートの最初のページに、こっそり挟んでおいた髪の毛が無くなっている事から考えて、お
そらくはこれをきちんと見たはずなのである。
 だというのに、何故かターゲットたる希はまったくのノーリアクション。

 もしや見ておいて敢えて無反応という高度な反撃か!?

「や、でもあいつだしなぁ」

 出来なさそうである。
 その後、夕飯のときも希はどことなくよそよそしい態度で、布団に入って寝るときも理由はわからな
いままだった。


529:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:52:41 9PfEhUDt
――――――――――――――――――――――――――



 次の日、携帯のアラームで目を覚まし、簡単な朝食を済まして歯を磨き、一通り身だしなみを整え、
いつも通りに門限から少し早めの時間に登校する。
 希は、運動系の部活にある朝練や、俺のように生徒会等、面倒な委員の仕事があるわけではないので
、大体は俺が朝食を食べ終える頃に、のそのそと二階から降りてくる。
 ただ、昨日から引き続いて、今朝もあまり俺と目を合わそうとはしなかった。
 そのくせ、俺の視界から外れるとこちらをじぃっと監視しているような気配を感じる。

「なあ、どうかしたか?」
「ひぇっ!? …なっ、なんでもないっ! なんでもないから!」
「ふーん」

 前に向き直る。と見せかけてさらにくるりと振り返る。

「わぁ!?」
「何見てんのよ」
「みみみ見てないよっ! もう、いいから早く行きなよっ!」

 本当に見てやがった。何をしてるんだコイツは。
 ひょっとしたら、昨日俺がやったイタズラが関係してるのかもしれないと、本人に尋ねてみたくなっ
たが、この様子だとまともに取り合ってくれるか微妙だ。

「あ、そ…んじゃ、先行くからな。ちゃんと鍵は閉めておくように」
「う、うん。行ってらっしゃい」

 希の態度が気にはなるが、どうせそう深い意味はないだろうと結論付け、俺は家を出た。



「よう、お互い苦労するな」
「菅田先輩…どうも。今日は早いですね」

 HR終了のチャイムが鳴り、家へと帰宅する生徒と、グラウンドで部活を行う運動部やその他、学校
へ残る者達に分かれる時間、放課後。
 校舎の最上階に位置する生徒会室の窓から見下ろす景色には、そんな生徒達の姿があちらこちらに映
っている。
 その生徒会室の備品として置かれている長テーブルの端、どっさりと積まれた各方面からの依頼書や
ら報告書やらを、一人黙々と片付けている女子に声をかけた。

「何か、いつも先を越されてる気がするが、…チャイムと同時にダッシュでもしてるんか」
「していません」


530:「Passion fruits」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/25 23:53:18 9PfEhUDt
 彼女が、昨日の捏造日記に出てきた、生徒会書記であり、俺の後輩の一瀬秋子(いちのせ あきこ)そ
の人である。

「一年の教室は三階で、先輩は二階から来たんですから、単純な位置関係の問題です」
「まあ、そうだが」

 それも考慮して、わざわざ今日は急いでここまで来たんだが、…くそ、何か負けた気分だ。

「今日は野球部から予算向上の申請と、新聞部・放送部合同の企画についての意見書が出てます」

 あっさりと会話を打ち切ると、一瀬は資料を片手に、軽く髪をかき上げながら至って事務的な口調で
報告する。
 平均よりほんの少し高めの背に、平均を大きく突き放した美貌。見た目に重過ぎないよう梳いた、背
中まで届く長い黒髪は、そのまま彼女のイメージにぴたりと当てはまっていた。
 傍から見れば冷静沈着、寡黙なドライガールだが、これでも話は打てば返すし、割と冗談も通じるの
である。
 それでも他人に対し基本的には固い感じだが、そこは味と思えば問題無い。むしろ最初はそれでも、
多少懐いてくれてるだろう今の状態は、一男子として、多少の達成感と優越感を覚えるというものだ。

「あー、野球部ねー…あそこは他の部費食い潰してる連中とは違って結構頑張ってる方だし、今年は大
会出場もありえそうだから、くれてやっても特に問題は無いな」
「ちなみに、向こうの予算上乗せ要求額は―」
「…そりゃ高い、半分にしといてくれ」
「わかりました」

 そして、容姿や性格に加えて、仕事の優秀さにおいてもまた、面倒な事務作業をする上で俺の大きな
救いになっている。実は俺にベタ惚れだったとか、アホな展開は抜きに、その点は実際にあの日記に書
いた通りだ。
 指示を出さなくてもちゃっちゃと片付けてくれるし、難題を押し付けてもそれほど苦も無くこなして
しまう大変有能なガールだ。
 これでも自称・出来る男の俺だが、今や彼女の助け無しに、この腐敗しきった生徒会の仕事を捌き切
る事は出来ないだろう。
 他の役員達がほとんど仕事を放ったらかしているのも、あるいはこうして、たった二人でも生徒会を
回せてしまえているからなのかもしれない。
 事実、生徒会長は顔と愛想だけ良いただのアイドルで、成績は優れていても実務にそれが伴わないタ
イプだ。それでもプライドだけは人一倍高く、たまに顔を出せばこっちのやる事にあれこれと口を出し
てくるのだから、質の悪い事この上無い。
 残りの会計、書記補佐らも、それに感化されてか会長に取り入って一緒にサボタージュを決め込む始
末。
 生徒会の執り行う会議や、生徒集会等のイベントでしか顔を合わせないこいつらは、内申報告のとき
にでも手痛い目に遭わせてやろうと思う。
 で、そういった経緯の元、俺と一瀬の二人で、日夜こうした書類、ときとして直談判しに来る生徒等
と格闘しているのだが……。


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