嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その38at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その38 - 暇つぶし2ch309:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 02:05:40 7CWE98HW
 労働というのは日本人にとっての義務であり、ある年令に達すると強制的に社会に放り出されるわけだが。
さて、俺の働いている職場のカレーを専門に扱っているお店は客が全くやって来なくなった。
その原因は隣に何の伏線もなくライバル店のブルーが先週に開店されたから。
当初は開店セールが過ぎた頃にはある程度のお客が戻ってくるとお気楽に思っていたが計算が狂ってしまった。
 新しくアルバイトの更紗や刹那を雇ったのにこれでは何の意味もなくなった。

青山次郎、朝倉京子の勝ち誇る高笑いが脳裏に聞こえてくると自然と怒りが沸いてきた。
 とはいえ。

 アルバイトの立場である俺が出来ることは何もない。
唯一、店の最大最悪の危機に対して、皆を引っ張って行くリーダーシップを取るべき存在である店長は。

「ちょうちょ-ちょうちょーちょうちょー。わ~い」
 現実逃避していた。
「ダメだ。こりゃ」
 新たなバイト先か就職先を探した方がいいかもしれない。
 真面目にそう思っている最中に店のドアに飾られている鐘の音が鳴り響いた。
 客が来たと思って、ホールから飛び出してくるとそこには憎きライバル店の
ウエイトレス兼ホールスタッフの朝倉京子の姿がそこに在った。

「あらあら。せっかく、お客として来たんだからさ。もう少し笑顔で迎えてくれないの?」
「客ってか、あんたはただのスパイだろ」
「スパイ? こんな寂れた店にスパイする諜報機関があれば教えて欲しいわ。
とりあえず、私はあなたたちの絶対敗北を見届けるために遅い昼食を食べに来たんだから。
何でもいいから持ってきてくれる?」
「わ、わかりました……」

 一応、お客としてやってきた朝倉京子を邪険して追い出すのは敗北の二文字を認めることだ。
俺は不機嫌な顔を隠して朝倉京子をテーブルに案内する。
 そして、適当なメニューの名前を叫んだ。

「店長っっ!! 貧乳カレーをお願いします!!」

「Oh!! 気合いと私の怨念を込めて作らせて頂くぞよ!!!!」
「ってアンタら……いい度胸じゃない。コロス。コ、コロしてやるわ!!」

 顔を赤面させた朝倉京子が俺の衣服を掴んで、拳を強く握っていた。
ウエイトレスで鍛え上げた腕力は平均年令の女性を僅かに上回ると同時に
欠点を指摘された恥辱の怒りのおかげでそれは更に倍増されていた。
 いざ、殴りかからんとした時に心強い味方が通りすがりとしてやってきた。

「お客さま。水とおしぼりです。
後、カズちゃんの顔に傷の一つでも付けたら。
間違いなく、その場で八つ裂きになりますからね。お気を付けてください。
後、今度から馴々しくカズちゃんと口を聞いたら、問答無用に私がキレます」

「な、何よ。この子は……」
 突如、現われた更紗が黒い殺気を朝倉京子に向けて放っていた。
少しだけ後ろに一歩を下がりたい彼女は誇り高いプライドが邪魔して下がることができない。
表情は少し怯えを含めていたが、傲慢な態度を無理矢理に繕うとしていた。
「さっさと持って来なさいよね!!」
「はいはい」
 黒化した更紗の首っこを猫のように掴んで、俺達はホールに戻って行く。
これ以上、朝倉京子と会話すると更紗が熱いカレーライスを何かの拍子で顔面にぶつけるかもしれない。

それはそれでオレンジの信頼と信用というものを失ってしまうのだ。
 更紗よりも大人しい彼女に料理を運んでもらうしかない。
 俺はその彼女の名前を呼んだ。

310:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 02:08:41 7CWE98HW
「おめぇの出番だ。刹那!!」
「わ、私、頑張って貧乳カレーを運びます」

 おどおどしい態度で刹那は出来上がった貧乳カレーをトレイの上に載せて、貧乳の元へと向かう。
足はびくびくと震えているが、人見知り激しかった刹那はこの仕事をきっかけに対人スキルの方は上がっている。
ただ、不機嫌さを全く隠さない貧乳がホールの方に人を殺せそうな視線を送っているのだ。
その辺にいる見た目だけが格好いいチンピラだったら数秒で睨み負けて、情けない悲鳴を上げて退散するだろう。

「あ、あ、あの貧乳カレーです。冷めない内にどうぞ」
「貧乳言うなぁぁぁぁ!!
 そ・れ・か・ら・。注文を頼んでから、何分待たせるつもりなの? 
私の店じゃあ、この程度のカレーは数分以内に出来上がるわよ」

「ううっ……すみませんですぅ」
 貧乳の罵声に耐え切れずに、半分泣きそうな表情を浮かべた刹那は助けを求めるかのようにホールにいる俺達に視線を向けた。

(刹那ちゃん……ああいう狂暴な人種とか大苦手なんだよね)
(ああ。小さい頃、野良犬に追われたトラウマを思い出すんだろうな)

 と、俺と刹那は親鳥の暖かい目で小鳥の巣立ちを悠長に眺めていた。
又は見捨てたともいう。それから、刹那は朝倉京子の罵声を何分も聞かされるのであった。

 朝倉京子が遅い昼飯をのんびりと食べている時にドアに飾られている鐘の音が鳴り響く。
見知った制服と共に現われたのは毎日顔を合わせている雪菜と……美耶子だった。

「いらしゃいませ。って、雪菜ちゃん。それに美耶子ちゃんがオレンジにやって来るのは私がバイトしてから始めてだよね? だよね?」
「そうですね。桜荘唯一の危険人物の一樹さんがアルバイトしている
お店を荒らしたのは更紗さんがアルバイトする前でしたので、始めてと言えば始めてですね」
「うわっ。同じ空間で暮らしている人たちが自分の職場に来るとなんだか無性にサービスしたくなるよ……」
「雪菜ちゃんと一緒に来る時はいつも店に大赤字無限コンボを喰らわしているのでお気遣いなくですよ」
「まあ、更紗さんも美耶子さんがここに来る意味をおのずとわかってくると思うよ。
雪菜はお兄ちゃんが頑張って労働している姿を見るだけで満足なんだけど。この人は違うからね~」

 毎日のように通ってくる妹分の雪菜は常連客として扱っている為に何の動揺はしなかったが、
美耶子だけはさすがの俺も息を呑む程に驚愕する。
前回の悪夢の出来事を思い出すだけで胃が締め付けられるような痛みに襲われる。多分、神経胃炎だろう。

「じゃあ、二人とも席について。すぐに水とおしぼりを持って行くから」
 更紗が水とおしぼりを取りに行っている間に俺は雪菜と美耶子が着いた席に向かっていた。
今回はどのような意図で来たのか確かめるためである。

「いらしゃいませ。学校帰りの買い喰いは校則とかで禁止されていないのか?」
「あはははあははっ。何を怯えているんですか。一樹さん。
今日は雪菜ちゃんと一緒にカレーというものを食べに来たんですよ。
それにお客を接待する態度じゃあありませんよ」
「では。ご注文の方をどうぞ」

「雪菜ちゃんは何にする?」
「雪菜は当然、極・甘・カレーをお願いします」
「だったら……私は店長が推薦する100倍カレー、30分以内に完食すると賞金一万円が貰えちゃうものをお願いしますね」
「は、は、はい。わかりました」
 悪魔は意味ありげに微笑する。



それはきっと……これから起きる戦いの狼煙なんだろうということで次回に続く。

311:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 02:10:34 7CWE98HW
以上で投下終了です。
さすがにこの時間帯の投稿は眠たくてたまりませんね。
というわけで寝ます。

次回を楽しみに待ってください。
それでは。

312:名無しさん@ピンキー
07/09/16 04:04:45 FsV9FcoI
GJ!!!

313:名無しさん@ピンキー
07/09/16 04:13:43 hw5DSb5a
GJでした!!!!!

314:名無しさん@ピンキー
07/09/16 08:01:31 1P99776x
枯れちゃうんですか?

315:「草」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/16 11:25:14 AUXVMioS
投下します。

316:「草」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/16 11:25:48 AUXVMioS
+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +



「――以上だ。リザニア王の印は既に押されてある。後はお前の認可を貰うだけだが」
「……以上、って久景様」

 旧ジウ、改築を終えて今や完全にヒラサカ城とその名を変えた、城内の王室にて。私からウォーレ
ーンでのハーマインとの取引の報告と、同盟の誓約証を受け取ったユエが、いつもの余裕を失った表
情で信じられないという風にこちらを窺う。

「御言葉ですが…一体、何をお考えなのですか?」

 その呟きに、浮いた感情は全く無い。ただ単純に、自分の前に座っている人間の言っている事が理
解出来ない、納得が行かないといった、不信感を露わにした瞳。
 理由は、言うまでも無くキルキア大陸統一同盟について。

 ”リザニア国、ヒラサカ国間での物資流通、及び軍事面での相互支援。並びに、両国の領土侵略の
禁止。尚、期限は現在暫定的に、キルキア大陸において両国以外の国家が全て無くなるまでとする”

 とどのつまりが、手を取り合って仲良く大陸を支配しましょう、と言う内容。
 他の国を残さず滅ぼした後に互いをどうするか、それについては何も記されてはいない。改めて敵
対するも、同盟関係を続けるも本人達の考え一つとなっているが、

「こんな、みすみす敵に塩を送る様な同盟。こちらへ攻め入れる程に、リザニアの情勢が予想よりも
出来上がっているならばこそ、一時的な和睦としてこの案も認められます。ですが、これはその逆。
放っておけば自ずと崩れてくれるかもしれない強敵の手助けをするなど、わたくしには正気とは思え
ません」
「………」
「焦らずとも、我々は既に正面から他国へ侵略を行えるだけの力を有しております。多少なり時間を
掛けさえすれば、たとえリザニア級の国家がこの先あったとして、然したる障害にならないだけの軍
へ成長する見込みが十分あるのです。
 だと言うのに……久景様は、リザニアへと再び降るおつもりなのですか?」

 もう一度、真剣な眼差しで見つめてくる。大局の流れを決して見誤らぬその目が、今この状態で同
盟を結んだ場合のヒラサカ、ひいては私の行く末を雄弁に語っていた。
 自分の仕える主として信頼しているからこそ、内心の戸惑いをあえて隠そうとはせず、そう口にし
たユエ。そんな部下としての彼女は、やはり心強い存在と言えるだろう。

「…列島の頃は、そこまで後の事を考える余裕も無かった。何せあの頃のあそこはここより余程切迫
していた上、私も口にこそしなかったが、自分が世界で一番優れているなどと言う壮大な勘違いをし
ていたからな」
「久景様?」
「折角の機会だ、お前にははっきり聞いて置いて欲しい」

 机を挟んで真向かいに居るユエに、私も視線を合わせる。
 遍く人民の頂点に立つ者は唯一でなければならない。人の上に立つからには、頂点は相応しい器を
持った者でなければならない。


317:「草」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/16 11:26:22 AUXVMioS
「私は支配者になりたいと思っている。何故だかわかるか?」
「そうした願望が自分にはあるからだと、以前に直接お聞きしました」

 突然の問い掛けに対して、もう随分前になされただろう会話の内容を忘れずに取り出すユエ。確か
に、たまたま機嫌が良かった時にそんな事を話した記憶がある。

「だが、理由はそれだけでは無い。侵略したい、征服したいと思うからには、そこに私個人の理想へ
変えようとする意思がある。付け加えて、私は完璧主義者だ」

 理想水準を満たせないものは自分で矯正し、納得の出来る秩序と完成度を求める。周囲との関係や
人材の教育もまた然り。
 それは、例えばこれまで習得した数々の技術であったり。リザニア所属時における、本来征服とは
縁の遠い筈の様々な行動であったり。――あるいは、列島や大陸の支配であったり。
 無秩序の中にも秩序を見出す。不完全なものがあれば穴埋めをする。満足の行く結果を出そうとあ
らゆる努力を惜しまず費やし、そうして常に成果を上げ続けた。

「エイブル将軍が私を必要としていた様に、私の中でのキルキアの治世にしても、エイブル将軍と、
リザニア国という優れた素材が必要となっている」

 全力で私と戦い勝利した人物なのだ。求める水準に見合わぬ筈も無い。
 さりとて、支配欲求のもう半分。完全に理屈ではない感情の部分が、人に従うのを決して良しとし
ないのもまた揺るがぬ事実。

 そこだけが、未だ割り切れないでいる。

 完璧さを求める為に征服をする。征服をする為に完璧さを求める。
 どちらかが元となっているのではない。この二つが並立している事こそが、私が大陸制覇を目指す
原動力。キルキア全土を制圧していく事も。その後にある支配も。全ては目的であり、手段なのだ。

「リザニアは他の国よりも優れている。軍事面ではなく、単純に国が豊かという意味でだ。王は良き
政治を行えるだけの器量と人望を併せ持ち、文官連中さえもう少しまともな人材が増えれば文句は無
いだろう。
 正直、あの国による支配であれば、私も特に不満は無い」
「! それは……ですが、ならばなぜ貴方様は、わたくしにヒラサカを立ち上げさせたのですか」

 書状を机に置き、ユエがそう申し立てる。
 不満が無いならそのままリザニアに居れば良い。言ってくれさえすれば、自分達もわざわざこんな
まどろっこしい事はせず、素直にリザニア内における私の軍団としてあったのに。言葉の端から、そ
うした意味合いがありありと読み取れた。
 私の視線はこちらを見るユエを外れ、再び机の上に置かれた紙へと移る。

「その通りだ。実際その同盟を結んでしまえば、ヒラサカとリザニアは事実上の合併をする様なもの
。最初からそうしておけば良かったと言うお前の考えももっともだろう。だから、言うなればこれは
問題の先送りという事になる」

 無論、本当に合わさったわけではない。例えその間に互いが何らかの危機にあったとしても、そこ
を好機と見限り裏切ってしまえばそれまで。
 これだけは断言出来るが、私やハーマインの様な人間は自らの利から離れれば時期を計って必ず相
手を切る。手段は場合により様々だが、その目的で動いた時には、相手はまず間違いなく逃れられな
い状況にある筈だろう。信頼と同じだけの警戒によって、薄皮一枚の協力関係は成り立つ。

 ……が、それでもまだ甘い。

318:「草」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/16 11:26:56 AUXVMioS
「最終的には、あの将軍に全て譲るおつもりなのですか? 大陸東半分を御自分で担当して。この同
盟は、貴方様の決心を付ける為の準備期間だと…」
「それが半分…いや、四分の一くらいか。残りは逆に、リザニアを上手く利用して、直接の衝突を避
けながらヒラサカへと」
「出来るのですか?」

 欺瞞を見透かさんと細められた瞳。

「久景様。貴方様はこんな手段でリザニアを奪えると、本当に御思いなのですか?」
「急ぐなら、この方法以外を取るわけには行かない」

 ならば何故、急ごうとするのですか?
 口に出さずとも、彼女の頭には既に答えが浮かんでいただろう。

「久景様は、変わられました。絡め手を使う事はあっても、昔はもっと強引に全てを支配して来まし
たのに」
「自覚している」

 中途半端。ここに来て、リザニアに対する私の態度はまさしくその一言に尽きる。
 認めてはいても、付こうとはしない。奪うつもりはあるが、拘り過ぎ。

「わたくしは、何があっても貴方様に付き従います」

 そう言ったユエが、誓約証へとペンを走らせた。これで、今ここにヒラサカとリザニアの同盟は締
結された事になる。一人の男の甘さによって。

「いつか決断する日が来た時、どの様に振舞ってもわたくしは構いません」

 徐に立ち上がり、私の背後へと回る。書状を手に持ったまま、ユエは後ろからそっとこちらの頭を
抱き寄せた。暖かな感触が伝わってくるそれは、私が彼女をあやすときに、膝枕の次に良く使ってい
た方法。

「ああ」

 未だに迷っている。決定的な一打を放つ事を。

「済まない、迷惑を掛ける」
「大丈夫です。貴方様の御傍に居られればそれで」

 征服者として、私はおそらく劣化しているのだ。

319:「草」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/16 11:28:16 AUXVMioS
投下終了です。
本当は前回分と合わせて出したかったのですが、ペースが本来のものに
戻ってしまったため短く二つに分かれてしまいました。申し訳ない。

320:名無しさん@ピンキー
07/09/16 11:41:49 vtkv1QV8
一番槍GJ!!

321:名無しさん@ピンキー
07/09/16 12:11:49 q9JAVc5W
これは良いヘタレ
GJ!

322:名無しさん@ピンキー
07/09/16 12:19:55 76CXuacZ
GJ!!
完璧主義者かつ迷いのサンドロ……
どうでもいいけど暴走するかもなリザニア内の女達とかの事は計算に入ってるんだろうか?
いやそれより早くもっと修羅場要員増えないかな~、伏線は沢山出てるので期待が止まらなくて。

323:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:23:07 p/fKM0TD
では投下致します

324:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:25:09 p/fKM0TD

 第12話『オレンジの危機』
 
美耶子たちが注文したメニューをホールの方に伝えるため暗澹たる足取りで向かっていた。
当然であろう。これから始まるのはカレー専門店『オレンジ』の最大最悪の危機。
俺の時給以上の労力と一般人には縁がない常識を疑うような騒動に巻き込まれることとなる。
平穏な生活を望む俺としては何事もないカレー店を経営して、今日一日を無事に終えたいところなんですが……。
 厨房を覗くとまたアホなことをやっている店長の姿を見て、俺は凄まじい程にその大きな尻を蹴りを入れてやりたい気分になるが、
今は戦力を失うが惜しいので。腹の奥底から戦いの狼煙を上げるオーダーを読み上げた。

「オーダーが入ります……。極甘カレーが一つ。そして、100倍カレーが一つ。以上です」
「100倍カレーだって……!!」
「店長。悪魔がデビルの奴が来たんですよ」
「面白い。久々に腕が鳴るぜ……ただ、カレーを作る日々に飽き飽きしていたぞよ。
 貴様らは今この時を持って、悪魔を倒す剣として生まれ変わるぞよ!! 
 クソったれな平穏をぶち壊し、今度こそ我々はデビルに勝つ!! 
奴に奪われた一五万円をこの手に取り戻す!! 貴様らはその覚悟があるか!!」

「カレー!! カレー!! カレー!! カレー!!」
「カレー!! カレー!! カレー!! カレー!!」
「カレー!! カレー!! カレー!! カレー!!」

「野郎ども!! この戦いの目的は何だ!!」
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!! デビルの内臓を食い散らせ!!」
「ヤンマー!! ヤンマー!! ヤンマー!! ヤンマー!!」
「マンボー!! マンボー!! マンボー!! マンボー!!」

「OK! 行くぞ!!」
 店長の号令で俺や更紗や刹那が持ち場に着く。カレーが出来上がるまで待機するだけだが、
厨房にはかつてのない熱気と気合いだけが込められていた。
「アルバイトの研修で意味のわからない叫び声の練習はこのためなの?」
 更紗がぽつりと言う。
「デビルを打ち倒すための儀式みたいなもんらしい」
 だが、俺は知っている。そんなアホみたいな掛け声とは関係なしにデビルである美耶子には15連敗しているという現実。
特に意味はないんだろうなと……。

325:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:28:06 p/fKM0TD
 出来上がったカレーを刹那が美耶子と雪菜のテーブルの元に運ぶ頃には客席はギャラリーで埋まってしまっていた。
恐らく、隣のライバル店ブルーから流れてしまった客層だと思うが、
たった一人の小娘が100倍カレーに挑戦するだけなのに何でこんなに騒動しくなるのであろうか。
「極・甘・カレーと100倍カレーをお持ち致しました。
100倍カレーに挑戦するお客さまへ。
もし、そのカレーを食べて精神が発狂したり、ショックで突然死しても当店は一切責任はありません。
この契約書にサインしてから、私が合図してから30分以内に食べれたら賞金の一万をお渡しいたします。
もし、制限時間内に食べれなかった場合は罰金100万を頂くことになるので出来るだけ制限時間内にお召くださいませ」

 刹那が差し出された契約書に美耶子が躊躇なくサインをした。
100倍カレーに挑戦した勇者達は限りなくいたのだが……誰も罰金の100万円を払う人間はいなかった。
大抵は生死の境界線を彷徨い、五体不満足で日常生活を送ることになるからだ。
 美耶子はたった一人だけ人類が誰もが成し遂げることができなかったオレンジ名物100倍カレーを制した時には英雄と崇められた。
小遣い稼ぎのために100倍カレーに挑戦するだけで人々は恐れ、敬い、その偉業をこの目で見るために自然と集まってくるのだ。

「今日も軽く伝説を達成しましょうか……」
「美耶子さん。負けても勝ってもお兄ちゃんの奢りなんだから。そんなに気負うわなくても」
「あははっ……そうですね。でも、一樹さんの困った顔が見たいので。ここはいつものように完全勝利を目指しますよ」
「伝説に挑戦する前にどれだけ辛いのか私が一口だけ味見していいですか?」
「いいですよ。刹那さん 」
「よし。辛いと言っても人が食べれるものじゃないはずです」
 刹那は100倍カレーをスプーンで口に含んでから数秒後ぐらい経ってから。
その頬は真っ赤に染まって口から炎を吐いた。

「刹那ちゃん?」
 厨房の片隅で大人しく様子を見ていた更紗が刹那の変貌に思わず駆け出しそうになるが、俺は彼女の細い腕を掴んで制止させる。

「もう、刹那は俺が知っている刹那じゃないんだ。
常人が100倍カレーを食べると一般人なんて
一瞬で精神がドス黒い何かに汚染させられるんだ。もう、遅い」

「そんなことって……」
 焦点が合わない虚ろな瞳で刹那は100倍カレーを食べたことによる副作用で口から火炎放射をあちこち吐きまくっていた。
他の客の髪の毛に燃え移ったりするが、そんなことはどうでもいい。
 刹那は店の中央を陣取り、周囲の呼び掛けるように叫んだ。

「カレー専門店にいるオレンジのお客さま皆様。
 お願いがあります。死んで頂けないでしょうか?
 自殺して欲しかったのですけど。駄目ですか?
 ではオレンジの従業員方々、皆殺しにしてください。
 虐殺です」

「するかぁぁぁっっっ!!」
 俺と更紗が速攻で刹那の頭をハリセンでどついた。
「お客さま……どうも、申し訳ありませんでした」
 適当に周囲のお客に頭を下げて、俺と更紗で発狂した刹那を厨房の所にまで連行して行った。
あの100倍カレーを食べた刹那は虚ろな瞳で天井を見上げながら炎を吐く。
俺達が出来ることはその口に水を流すことしかできない。なんて無力なんだ俺達は。

326:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:30:26 p/fKM0TD
「なんなのよ。この店は……」
 朝倉京子が目を丸くしてこの状況を理解できずに驚愕してぼそりと呟いていた。

「うふふふっ……。今日のカレーは美味しいですね。えへへっへっ……」
「美耶子さん。今日も完全に完食コ-スだね。雪菜なら100倍カレーって聞いただけでも卒倒するというのに」
「雪菜ちゃんももう子供じゃないんだから、極甘味ばかり食べないで辛い物を食べて、
今度は一緒に100倍カレーに挑戦するべきです」
「雪菜、遠慮するよ……」
 あの刹那を発狂させた100倍カレーのほとんどを美耶子は平らげていた。
皿にはほんの少しだけ残っており、今回も完食コースなのは間違いなかった。
「何故だ。ワタシが徹夜で考え込んだ対デビル用100倍カレー改がこんなにあっさりと突破されるなんて。
悪夢を見ているのだろうかカズキ」

「クソ店長がどういうスパイスを作ったのかは知らないが。
あんたのポケットマネーから1万円のお札が飛び出すのは確定事項だな」
「カズキのお給料から差し引いてもいいか?」
「あっはははは。余裕ではみがき殺すことになるかもしれないが。それでもいいなら」
「だって、赤字続きのお店を更に傾けるなんて残酷なことを出来るわけがない」
「いや、更紗と刹那と俺の給料は毎月未来永劫支払うことができるのか? クソ店長」
「あきらめやがれですぅ」

 少し色気のあるクソ店長の言葉に静かな怒りと殺意が沸いてくる。
業務用のカレー鍋(中身アリ)を頭にぶちかけても、一体どこの誰が責められようか? 

学生時代なら少年法というものがあったのでやりたい放題にできるわけだが、
社会人ならここは大人しく我慢しておく必要がある。
 さてと、視点を美耶子の方に戻すと彼女の中心に盛大な拍手と声援が店内を包み込んだ。

どうやら、あの100倍カレーを見事に完食したようである。

「さすがはデビル……あの人外カレーを16回も完食するとは……。

この街に新たな歴史が刻まれた。デビル・ミヤコに栄光あれーーー!!」

「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
 オレンジ店内はデビルコールに一色されていた。
それは店内にいる客だけではなく、外にいる見物客たちも大声で美耶子を讃えるように大声でデビルの名前を叫んでいる。
「ど、どうも。応援ありがとう!! 今度も私はきっと頑張って完食してみせます!!」

「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
 一番の最高の盛り上がりに客達は喉の奥底から吐き出される声は鼓膜が破れそうなに情熱が篭もっていた。
「ど、ど、どうして。カレー一つでこんなに盛り上がれるのよ……」
 耳を抑えながら、カレーをひたすら寂しく食べていた朝倉京子の呟きは……。
まあ、誰にも聞こえないだろうな。

327:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:32:35 p/fKM0TD
 美耶子が100倍カレーを完食してからのオレンジ店は正に大繁盛であった。
招き猫的存在の美耶子が閉店するまで雪菜と一緒に居てくれたおかげで彼女を拝もうとする客で後が絶えなかった。
おかげで隣のブルーが開店した以来でウチの売り上げはいつもの数倍以上の利益を得ることとなったのだ。
 カレー専門店オレンジの救世主的存在になった美耶子を労わるために閉店した店で祝賀会が開かれることとなった。
と言っても、残り物のカレーを皆で食べるだけなのだか。

「今日はもうカレーなんて見たくないんだけど」
「刹那ちゃん。100倍カレー改のことは記憶の彼方に忘れてさ、
これはカズちゃんが愛情を込めて作ったカレーライスだと思えば。きっと、大丈夫だよ」
「う、うん。そうだよね。カズ君が作ったカレーならきっと食べれるはず」
「刹那さん、よっぽどあのカレーのせいでカレー自体にトラウマが……」
「一樹さんの唾液入りのカレーだと私は食べれないんですけどね」

 と、女性陣は呑気に談笑しながらカレーを食べていた。
俺はホールの方で皿を洗っているわけだが、その量は気が遠くなるような膨大な量であった。
こんな小さな店に最新型の食器洗い機ははなく、節約の為に手洗いで今まで過ごしてきたわけだが。

この量を一人で洗うとなると、家に帰れるのは日付が変わる頃であろうか。
クソ店長は明日の仕込みをするので手伝うことができないし、刹那と更紗に手伝わせるのは俺のプライドが許さない。
というわけで一人で皿を洗っているわけだが、全てを終わらせるにはまだまだ遠い。

 人が丁寧にカレーの汚れが拭き取っている最中にクソ店長が鼻歌を歌いながら、こっちへとやって来た。
何か嫌味とか言えば、瞬時に俺の蹴りが奴の尻へ飛ぶであろう。

「よう。カズキ」
「何ですか。クソ店長」
「あの子はこの1年間で随分と元気になったぞよ」
「美耶子のことか?」
「最初に100倍カレーを無理矢理に挑戦させた頃と比べると今は人を引き寄せるようないい笑顔をしてる」
「うん? そうか。俺は小悪魔が何かを企んでいる笑顔のように見えるんだが」
「カズキの目は節穴か? 引きこもりだったミヤコが最初にここに来た時に比べるとな」
「んなことはわかってる」
 美耶子が外の世界に羽撃くきっかけはたった小さな思いやりであり、笑顔を取り戻したのは桜荘の皆の生活のおかげである。
一応、美耶子の件に関してはクソ店長もそれなりに貢献しているので、何かと気にかけているのであろう。

「あんたのカレーのおかげでもあるけどな」
 俺は人生で生まれて初めて、このクソ店長を誉めた。
お互い顔を見合わせながら苦笑すると自分の仕事に戻っていた。

328:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:36:29 p/fKM0TD
以上で投下終了です。

329:名無しさん@ピンキー
07/09/16 19:45:06 7N/7EH5s
まーたトライデント氏か、もういいよ

330:名無しさん@ピンキー
07/09/16 19:51:03 iAx/O3Zj
ツマンネ

331:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:06:44 YDtBB3/J
>>328
投下GJ!!

332:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:12:07 fRmFicEO
GJ!!ヤンマーマンボー吹いたwwww

333:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:28:07 e54PHnev
トライデント氏の作品はどうでもいいから
さっさと草を投下してくれないか?
いい加減に古参が威張って投下するのはやめて欲しいよね
引き際を考えてくれ

334:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:35:21 oc6hGqQv
嫉妬スレの終焉の時がやってきたな
神もいないし、スレの住人も愛想がついていなくなった
管理人の阿修羅に関しては3ヶ月も更新をサボったナマケモノ

もう、いいだろ。こんなスレは荒らしに食われて終了でいいよね?

335:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:51:23 7DmuslIR
だが断る!!!

336:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:55:56 1Qj/lTPQ
転帰予報の続きがすっごく気になる、早く投下ができるように頑張ってください!!

337:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:56:27 oc6hGqQv
自作自演で盛り上がるなよw

338:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:13:03 /GJ2C4i9
このスレ、さぁいよいよ来るぜ!ってところで筆を置いちゃう作品も結構あるからなー。
雨の音も、もう一人のヒロインが出てくる直前で止まってるし、
転帰予報も姉妹が覚醒したところで止まってるんだよな。
俺ぁ待ってますよ!

339:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:13:18 oc6hGqQv
私にGJと言わせたいなら
ツンデレ嫉妬少女を連れて来い
あのパルフェやらき☆すた以上のツインテールのツンデレだ

そして、最高のツンデレ海原雄山を超えることが出来たら
GJと叫ぼう

340:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:25:56 rxQs0bXg
話し切って悪いが、
ひぐらしのレナがヤンデレって思ってる奴多すぎないか?というか、詩音とかまで…ただの痛い子じゃん。すぐヤンデレな小説があると、テラひぐらしとかいうやついるけど…ヤンデレが好きな奴としてはなんか嫌なんだよな…。


過去に話されてると思うが言わせてくれ。スルーしておK

341:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:36:22 pUBVmJAf
>>340
とりあえずお前はヤンデレスレに帰れ

342:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:50:25 0JDOEqnF
愛あってこその狂気なのに、愛のない狂気なんて基地外以外の何者でもない
けど、このスレは嫉妬がメインだから、>>1さえ読めばヤンデレブームに流されてるだけのやつもスレ違いの発言はあまりしないだろ
最初、ろくに知らないのに流行に便乗する業者がいるから、そういうのが出てくるかもしれん。だが、ヤンデレがツンデレみたいに流行れば、ヤンデレの副産物として修羅場も流行するかもしれないし、そうなれば未完作品の作者が帰ってきてくれるかもしれない

343:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:56:14 Z0AZ+aIf
ヤンデレの流行の起爆剤は孝之と誠にかかっている

344:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:06:52 dmV8Bqk9
う、うろたえるなっ。嫉妬スレ住人はうろたえないっ!!

というか二三ヶ月ぐらいのんびり待とうぜ?ちょっとせっかち過ぎだよみんな。

345:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:09:10 zqmexN6M
とりあえずヤンデレ云々の話はヤンデレスレでやろうぜ?
嫉妬・修羅場とヤンデレは似て非なるものだと思うし

346:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:15:22 q9JAVc5W
これは良い住人点呼
ノシ


347:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:34:00 U0c2e/XM
ノシ

のんびり待ってるんで作者の皆様頑張って!!

348:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:43:31 TmDAAG58
とりあえず前スレ埋めようぜ

349:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:59:56 PtxtNgMv
前スレまだ埋まってなかったのかw

350:名無しさん@ピンキー
07/09/16 23:36:52 svVVP9n0
>>339
ツンデレ(のみ)はスレ違いだと承知しているがこれだけは言わせろ

最強のツンデレはオーガ

351:名無しさん@ピンキー
07/09/16 23:58:40 nXNkw26D
貴様はッ!!
中国拳法を嘗めたッ!!

352:名無しさん@ピンキー
07/09/17 00:33:58 HbeDmgAe
ツンデレキャラの嫉妬はOKじゃないのか_?
作品にするのは難しそうだな

ちゃんとツンとデレをやらないとツンデレにならないし
更に嫉妬と修羅場をやらなきゃね・・・・。

353:名無しさん@ピンキー
07/09/17 00:54:01 Wwek8nlD
このスレ、ツンデレっぽいのも結構いたんじゃなかったかな。特に幼馴染系で。
厳密にはツンではなくデレ隠しって状態か。
いきなり好きです付き合ってください、とはっきり言ってくる状態から始めると、
主人公をド外道にする以外の道を塞がれがちだろうし。

354:名無しさん@ピンキー
07/09/17 01:05:01 UbOy+I4Z
まぁ、ここはあくまで嫉妬・三角関係・修羅場っていうシチュエーションのスレだからな
キャラがツンデレだろうが素直クールだろうが素直シュールだろうが
三つのどれかのシチュエーションに当てはまっていれば何でもいいと思う、個人的には
まぁ、行き過ぎてる場合には単体のスレでやったほうがいいとは思うが

355:名無しさん@ピンキー
07/09/17 01:23:57 slqTC318
紗恵さんなんかおもくそツンヤンデレじゃないか

356:名無しさん@ピンキー
07/09/17 12:57:28 RtRON2RN
嫉妬と修羅場があればなんでもおいしく頂きますとも

357:名無しさん@ピンキー
07/09/17 15:49:46 n9s9MnX3
世界一嫉妬深いってのはいったいどんな人間なんだろうな
「男君が呼吸しているときに口の中に入っていく酸素が憎い!」

…くらいの思考の持ち主なのか

358:名無しさん@ピンキー
07/09/17 17:37:37 JWt8h2p3
>>357
そこまで行くと狂気だな
まぁ俺はおいしく頂くが、嫉妬かといわれると微妙かも (´・ω・`)

>>353
外道以外にも朴念仁だとか主人公が受け体質でもいけそうだぜ
受け体質だと主人公が萌えキャラになったりするが|ω・`)

359:名無しさん@ピンキー
07/09/17 17:56:42 jHQs/wbB
>>357
もはやそこまで逝くと、何かの経絡秘孔を突かれたとしか思えないw
想いが満たされないとボン!

(((( ;゚Д゚)))

360:名無しさん@ピンキー
07/09/17 18:12:29 UbOy+I4Z
せめて「男君の愛用してる○○(物)が憎い!」ぐらいにしておこうぜ
あれ?大して変わらない気が・・・

361:名無しさん@ピンキー
07/09/17 20:43:45 9/9p1TLD
いつになったら、本スレが復活するの?

362:↓みない方が良いです;;すみません。
07/09/17 21:19:57 tleaoYnA
URLリンク(pink.gazo-ch.net)

363:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:24:07 Tr/lqLpJ
なんかね、このスレの怖いとこは2日ぐらい見て無かっただけで大変なことになるのよね。

364:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:47:01 kgP1yiRu
とりあえずsageろ

365:名無しさん@ピンキー
07/09/17 23:58:11 9/9p1TLD
泥棒猫が始末されると三味線になるらしいが

366:名無しさん@ピンキー
07/09/18 00:26:29 C0lioQ2e
>>304ですが未だに原因がわかりません

スレチですが誰かわかりませんか?

携帯から失礼します

367:名無しさん@ピンキー
07/09/18 00:33:06 kyNOWJ8P
ロザライン:
私、昨日の夜は寝ずにずっと貴方を待っていたのよ?
ロザライン:
ほら、見なさい。私の目、真っ赤でしょう。昨日から姉
さん一睡もしてないのよ?
ロザライン:
瞼の下にはおっきな隈が出来ちゃって、朝仕事に行くと
きそれを隠すために厚化粧をしなくちゃいけなくなって、
ロザライン:
職場にいったらいったでああロザライン警視もとうとう
嫁き遅れを気にする年になったんだなハハハと無能な部
下たちに陰口を叩かれて
ロザライン
聞こえてんのよこの陰険野郎と逆上したせいで書記のオ
バサン連中がにやにやしてだいたいアンタこそ売れ残り
じゃないのと名前の後ろに嬢をつけて皮肉ったら
ロザライン:
取っ組み合いの喧嘩になって回りの馬鹿どもはそれを止
めもせずはやし立てて婆さんの癖に意外と力が強くて三
人がかりで間接を極められ痛みに喘いで参った参ったと
ロザライン:
苦渋をなめる結果になりそれが上司の目にとまって呼び
出されて見逃す代わりに性的嫌がらせをしようとしてき
たけど股間に蹴りいれてやって
ロザライン:
またその件でもっとえらい人に呼び出されて君減給ねと
事務的に言い渡された後ろに股間に氷嚢を当てた上司が
いたから睨み付けてやったら悲鳴を上げて逃げていって
ロザライン:
私の顔がそんなに恐いのかと化粧直しにいったお手洗い
の鏡をみるとさっき拭った時に口紅が滲んで般若もかく
わという顔で部署に戻ってもいらいらして
ロザライン:
仕事が手につかなくてあの俗物どもがまたロザライン嬢
のヒステリーかやれやれだぜなんて寝言をほざきやがる
ものだからババアどもがにやにやして
ロザライン:
散々な仕事をがんばって定時で終わらせて家に帰ってき
ても誰もいなくて昨日の夕食だったスープを見たら悲し
くなってきてそれも悪くなってたから捨てるはめになり
ロザライン:
そのうち涙があふれてきて聞いてるのヨセフ職場で受け
た屈辱も家で一人暮れていた悲しみもみんなみんなヨセ
フ貴方のためなのよわかる?
ロザライン:
それを貴方は謝りもせず必死に言い訳を考えているみた
いでなにか驚いたとおもったら急にだらしない顔になっ
て本当に聞いているのヨセフ
ロザライン:
どうせこのあいだのルーなんとかっていう売女のことで
も考えていたんでしょうけどみんな姉さんにはお見通し
なのよ


368:名無しさん@ピンキー
07/09/18 00:35:05 kyNOWJ8P
ロザライン:
昔の貴方はもっと素直で姉さんのいうことをよくきくい
い子だったのに今の弟ときたらちゃんと私の目を見なさ
いヨセフ
ロザライン
だいたい貴方はいつもそうね口ばかり達者になってそれ
で利口になったつもりなの?今の貴方をみたらジュリア
ン小父さんだってきっと草葉の陰で泣いてるでしょうね
ロザライン:
それもみんなあのフレデリックとかいういかがわしい男
と付き合った影響なのかしらまったく外でどんな悪さを
覚えてくるのやら姉さん心配で心配で夜も眠れないわ
ロザライン:
貴方の交友関係には口出しはしませんけどねもっと分別
をもって行動してくれなきゃいけないのよ分別よ分別わ
かる?
ロザライン
何よその目は男友達は良いとしても女に関しては私にも
口出しする権利はあるわ女ってものはとてもとても恐い
ものなのよといつも言ってるじゃない
ロザライン:
ああいった身持ちの軽い輩はヨセフみたいに純粋無垢な
若い燕をかどわかそうと必死なのよだって貴方の顔は女
の子みたいに可愛いですものね
ロザライン:
それで貴方が節操なく笑顔を振りまくものだから自分に
気があるのだと勘違いした馬鹿な雌犬どもが薄汚い尻尾
を振って恥も外聞のなく無様に媚びへつらうの
ロザライン:
そんな貴方の身と貞操を守るために私がどれだけ苦労し
たか酒場なんて浮浪者と娼婦の溜まり場へ行くことはラ
イオンの群れの中へ子ウサギを放すことに等しいわよ
ロザライン:
なのに貴方ときたら私がどれだけ泣いて懇願しても言う
ことなんか聞きやしないいいえお水はいらないわヨセフ
はそこに座って姉さんの話をちゃんと聞きなさい
ロザライン:
とにかく私が言いたいことはただ一つなのよ……
ロザライン:
私を一人にしないで!どこにもいかないで!
ロザライン:
何もいわずにいなくなったりしないと約束して!
ロザライン:
なぜかって?愛してるからに決まっているじゃない!
ロザライン:
そうよ愛しているのよ!弟に対する家族愛なんて陳腐な
ものじゃなくて、一人の男性としてあなたを愛してるの
よ!
ロザライン:
世界のなによりだれよりどんなことよりもヨセフが好き
なの!大好きなの!あなたさえいれば私はなにもいらな
いの!
ロザライン:
ヨセフが望むなら私はなんだってやってあげる!国王暗
殺だって眉一つ動かさずやってのけるから!

369:名無しさん@ピンキー
07/09/18 00:37:29 kyNOWJ8P
ロザライン:
あなたも私を愛して!姉としてでも、ロザラインという
恋人としてでもいい、何でもいいから私を愛してちょう
だい!
ロザライン:
だからもう、一人にしないで……
ロザライン:
むかしみたいに、私の傍からいなくなったりしないで…

ロザライン:
私だけを見て!他の女なんかみないで!他の女のところ
なんかいかないで!
ロザライン:
なにがあってもずっとわたしといっしょにいてください







某フリーRPG、主人公の姉の台詞からコピペ
ほぼ原文ママ
どうみてもキモ姉です本当に(ry

370:名無しさん@ピンキー
07/09/18 01:12:49 5FLmMN9h
そこまで書き込んでおいて「某」とかぼかすんじゃねえ
いや、教えてください

371:名無しさん@ピンキー
07/09/18 01:30:56 kyNOWJ8P
>>370
URLリンク(park.geocities.jp)
ここのゲサロ4ってところにある「リュンコイスの魔王」って作品
RPGツクール製だから色々準備しないといけないので注意


キモ姉の他にヤンデレ化するヒロインが出てくる
ここの住人なら知ってると思ったけど
やっぱマイナーなのかこれ

372:名無しさん@ピンキー
07/09/18 02:04:22 MwUjg0ya
自分の中でだけ常識

373:名無しさん@ピンキー
07/09/18 02:54:52 Zdh6+YPc
                       _,.-‐"':" ̄~゙'ヽ、       __
      _,---‐" ̄\         /          ``ー‐-、   ノ   \
    /        ヽ      ;"                ) /      \
   /   ぐ .し   |      /                |ノ/        \
  /    ら .ら     |     |                 )/.|   ・  オ   |
  |    .い な    |     |          ,;';;,,    /ノ |   ・   レ   |
  |     ・  い    |    |::::.................:::::::::;;,'^;、::::::'''..,,_;、丿 |   ・   に   |
  |     ・  作    |    /:::::::::::::::::::::::::::;"゙, /゙~゙`''::;'゙;     |  ・   だ.  |
  |    あ  品    |    `、;;::::::::::::::::;/ ),;'   :.'.,、   |  ・   っ  |
  |    る       |  ,へノ   `'''''"´   .:;     .:::_ヽ  |  ・   て   |
  |    ・        Y   \       .::;     ::::ゝ    .|  ・         |
  |    ・       ∧    \     ::::::、   .:;`     |         |
  |    ・       |ヽ丶    \;;  :::;;;;::..,,、. ::i       |          |
  |    ・       | `       \;;;;/    `゙"       \

374:名無しさん@ピンキー
07/09/18 03:35:20 ebXJVIJ9
ってか、キャラの初期位置が設定されてない、ってでてきてできないんだけど…

375:名無しさん@ピンキー
07/09/18 04:37:24 hjpU5zgf
俺もよくやり方がわからんな

376:名無しさん@ピンキー
07/09/18 05:36:54 vMV5mKGX
RPGと言えば懐かしのエストポリス伝記1のルフィアがなかなかに良かった。

377:名無しさん@ピンキー
07/09/18 19:45:25 W38s6/2T
なんかネットをテーマとした嫉妬を見たい
俺には文才が無いから無理だお

378:名無しさん@ピンキー
07/09/18 20:34:44 KZxwxSmo
>>357
その娘最終的には
「男君が埋められる土が憎い」とか、
「男君の骨が収められる骨壺が(ry」とか言い出しそう。
行き着く先はカニバリズム。

379:名無しさん@ピンキー
07/09/18 20:40:44 pCAFlMdM
ここってエロパロ板だよな?
誰もエロ書いてないみたいだがこのスレじゃ御法度なのか?

380:名無しさん@ピンキー
07/09/18 20:56:30 seiIWJ28
>>379
まずは保管庫に行って、ここにどんなSSが投下されたのか確認する事をお勧めする

381:名無しさん@ピンキー
07/09/18 20:57:11 JWVxXnz8
別にそんな事はないです。嫉妬、修羅場がメインならどっちでも。
優先順位の問題。

382:名無しさん@ピンキー
07/09/18 21:02:04 KPsrrQLi
エロありなしとかにこだわり始めるスレは大抵廃れる

383:名無しさん@ピンキー
07/09/18 21:14:24 2lQsVaVG
エロシーンと修羅場は直接からめにくいしな
ワンパターンになる


384:名無しさん@ピンキー
07/09/18 21:17:48 7nbcJKUG
>>379
修羅場で抜ける俺には関係のない話だ

385:名無しさん@ピンキー
07/09/18 21:36:26 Bpf2v0qf
359
女装したケンシロウみたいな女が、
神谷明の声で357の台詞を
言ってる所を想像した。

386:名無しさん@ピンキー
07/09/19 00:27:39 HPCpQSSH
エロってなにさ!
世の中にはネクロフィリアだっているんなら。
少女が嫉妬にもだえる様や、凶暴な純愛ってだけおったつ変態紳士だっているんだぜ。

387:名無しさん@ピンキー
07/09/19 05:47:58 r6RySyRL
変態じゃないよ変態という名の紳士だよ

388:名無しさん@ピンキー
07/09/19 05:52:15 4I9XavuC
新参ものですがよろしく御願いします。
投下させていただきます。

389:蒼天の夢 01 ◇4I9XavuC
07/09/19 05:56:09 4I9XavuC
 洞窟の中は所々から入り込んでくる陽光でほんのり明るかった。
 光と一緒に入ってくる歓声から推測するに今日の客入りも上々だ。
 そんな普段、気にもしないことを気にするあたり、今の自分の余裕のなさが伺えた。
「はぁ……」
 俺はため息をつきながら真新しい鞍を見つめた。
 まだ一度も使われていない鞍からは渋い革の匂いがしていた。どんな生き物のための鞍でも最初はこの匂いがする。
 そして、使われてゆくごとにどんどん変わってゆく。
 馬の鞍は汗臭くなる。
 ラクダの鞍は硫黄臭くなるそうだ。
 だが、ワイバーンの鞍は錆びた鉄のような臭いに変わる。
 なぜそういう臭いになるのかは分からない。
 どうなるにせよ、臭いが変わる頃には自分はもうこの鞍を使ってないだろう。そう自嘲気味に思いながら目の前に横たわる大きな水色の胴体に鞍を載せた。
 一瞬、胴体がくすぐったいように微かに震えた。
 長く、大きな胴体だ。なめらかな曲線を描き、そこからはトカゲのような鋭利な首と頭、力強い二本の足、鞭のような尾、そして蝙蝠のような、しかし蝙蝠のそれよりも美しく優雅な翼が生えていた。
ワイバーンと呼ばれる魔獣である。
 その姿は二本足なのを除けばドラゴンに非常に似ていた。
 しかし、ワイバーンはドラゴンより二周りも小さく炎も吐かず、知能も低い。
体も筋肉の塊のようなドラゴンと比べるととてつもなく細く、学者たちからはドラゴンの退化した姿などと言われている。
俺は鞍を固定する四本のベルトを締め、鞍を掴んで何回か揺らしてみた。
 びくともしない。
 鞍を確認し終えると、床においてあった兜をかぶり、しっかりと紐を結ぶ。
「おい、ジース早くしろ!」
「今いく」
 洞窟にぽっかり開いた大きな出口。そこにいた誘導員にこれ以上せかされないよう、手綱を水色のワイバーンにくわえさせ出口へと俺の“相棒”を引いていった。
 外に出た瞬間、新たな歓声が沸き起こる。
 快晴の下、断崖絶壁に建てられたいくつもの観客席からは色鮮やかな旗が振られ、応援歌が響いていた。
 俺たちはちょうど観客席から見下ろされる場所にある崖から突き出たプラットフォームに出ていた。
「そりゃ負け役がいないとレースにならないしな……」
 俺はそう呟きながらワイバーンに騎乗した。
 そして飛行中落ちないためのベルトを自分の体と鞍に固定すると、力いっぱい叫んだ。
「アズ―ル!」
 名を呼ぶと相棒は今まで折りたたんでいた水色の翼を広げた。
 再び歓声が上がる。
 貧弱とされるワイバーンたちはたった一つだけ、遠い親戚のドラゴンを凌駕する力を有していた。
 それは空を飛ぶことである。
 天を舞う時だけはワイバーンたちは他の生き物の追従を許さぬ美しさと強さを発揮する。
 鈍重なドラゴンより速く、綺麗なだけのペガサスより鋭く彼らは飛ぶ。
 そんなワイバーンの空中機動を一番よく見られるのがクリフ・スキッドと呼ばれる競技である。
 主に山や絶壁沿いのコースを飛び、一番速いワイバーンを競うという単純だが危険なレースだ。毎年多くの人間とワイバーンが勝利を得るため空へ舞い上がり、散ってゆくスポーツ。
 それでも参加しようと志す者は後を絶たず、ここ数年クリフ・スキッドの人気は衰えるところを知らない。
 俺もそうやって魅せられた連中の一人だ。
 アズールは二、三回大きく羽ばたくと、二本の足に力をこめた。準備が整った、の合図だ。
 俺は大きく息を吸い込むと相棒のわき腹を蹴った。
そして今日もスキッダーと呼ばれるワイバーンの騎手として、蒼い空にわが身を相棒と共に委ねた。


390:蒼天の夢 01 ◇4I9XavuC
07/09/19 05:57:59 4I9XavuC
 狭い店内には時計の音しかしなかった。
 既に十一時を回っているのに客が一人もこない。
 けどそれも当然だ。
 ここ、グレイ・クリフの住人なら今のわたしみたいに店番でもしてなければ土曜は絶対、街をうろついていたりしない。
 そんなことをするのはせいぜい郊外の塔に住んでいるあの忌々しいエルフ魔女ぐらい。
 土曜はみな、街の名の由来となる山、グレイ・クリフに上りクリフ・スキッドを観るのが普通だ。何せクリフ・スキッドはこの街の主要事業であり、それがなかったらそもそもこの土地に街を興そうなんて誰も考えなかっただろう。
 かく言うわたしも行きたくてうずうずしている。
 特に今日のレースはどうしても見たい。
 今日はわたしの憧れるスキッダーが出場しているからだ。
 彼の名はジース・グリン。
 グレイ・クリフの地元スキッダーの一人だ。今のところ大した成績はあげていないけど彼は間違いなく近い将来、王都のリーグ戦に出られるほどの大物スキッダーになるに違いない。
 わたしはそう確信している。
 彼がみたい。彼の飛ぶ雄姿がみたい。彼の勝利する瞬間がみたい。
 そんな気持ちだけがどんどん大きくなってゆく。
 そう思うと、いてもたってもいられなくなった。
 はっと周りを見回す。わたし以外にこの店には誰もいない。店主のおばさんもどうせクリフ・スキッドを観にいっているはず。
 一度決断すると行動は早かった。
 わたしはカウンターの引き出しから羽ペンを取り出すと、すばやく紙に―

 “急用ができたのですこし店をあけます  ミリア”

 と書き残し、店の扉に『閉店』と書かれた札を下げグレイ・クリフ山へと走り出した。
 
 わたしがグレイ・クリフ山の山頂についた時にはレースがはじまる直前だった。
 さすがは普段使わない山頂と麓を往復する馬車に乗っただけのことはある。賃金は高いけど自分で山道を登るよりは遥かにはやい。
 わたしは急いでチケットを買い、それから竜券を買った。
 もちろん賭けるのはジースさんだ。
「ミリアちゃん、毎回言うのもなんだがそいつに賭けたって金をどぶに捨てるようなもんだよ」
 竜券を握りしめるわたしを見て売り場のおじさんが呆れた声でいった。
「いいんです!それにお金のために買ってるわけじゃないですし」
 そう、わたしは彼のレースを観にくるたびジースさんに賭けている。だけど別にお金のためじゃない。
「そりゃ毎回10ギード程度じゃ万が一勝っても大した金にゃならないが……」
 売り場のおじさんは首をかしげながら言う。
「いや、俺が言うのもなんだけどそれだったら貯めたほうがいいじゃないか?おまえさん以外にジースに賭けてるやつなんてほとんどいないぞ?」
「これは私のこだわりなんです。ほっといてください」
 わたしがジースさんに賭けているのは本当にただのこだわり。わたしなりの彼への想いを表現する方法にすぎない。それにわたし以外に彼に賭けている人がいないのなら好都合だ。
 正直、彼にはわたし以外賭けてほしくない。
 わたしだけでいい。
 彼のファンはわたし一人でいいのだ。
 すると突然、山頂に角笛の雄雄しい音が響きレース開始を告げていた。
「あ!レースはじまっちゃうからおじさんまたね!」
 わたしはおじさんの返事も待たずに急いで観客席へと向かった。
 遅れてきたので観客席はすでに満席だった。
 座れないのは残念だけど、ジースさんが観られるのなら立っているのも苦じゃない。
 それにこの観客席の位置は自分にとってある意味、特等席だ。
 本当の特等席はスタート地点やコーナー付近。それも貴族などお金持ち専用の席だ。わたしみたいな平民はたいてい山がまっすぐ横に伸びているところ、つまり直線コース近くの席しかとれない。
 だけど直線はスキッダーたちがワイバーンの高度を上げる場面なので観客たちのすぐ目の前を通過する場所だ。つまり一番ジースさんをよく見られるのがこの直線沿いにつくられた席なのだ。
 わたしは適当な場所に移動するとワイバーンたちがやってくるだろう方角に目を向けた。
 彼の姿をこの目に焼きつけるため。


391:名無しさん@ピンキー
07/09/19 06:00:35 4I9XavuC
投下終了です
まだ続きます。失礼します

392:名無しさん@ピンキー
07/09/19 06:27:07 sLiuDBYj
とりあえずsageませう

393:名無しさん@ピンキー
07/09/19 06:27:45 03ZKAL6i
一番ヤリGJ!
ファンタジー物は大好きなので続きwktkで待ってます

394:名無しさん@ピンキー
07/09/19 07:32:31 LrN81z1i
sageとトリップ知らないのかな?
2ちゃんの使い方を見れば分かるから、まずそちらを読むことオススメ。

395:名無しさん@ピンキー
07/09/19 07:45:41 4I9XavuC
ご指摘ありがとうございます
今後注意します

396:蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:18:26 4I9XavuC
再び投下します
今朝はありがとうございました

397:蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:20:55 4I9XavuC
 競技が終わり、陽が沈んでも絶壁をくり抜いてできたワイバーン用の馬場は活気に満ちていた。
 ワイバーンの鳴き声。走り回る従業員やスキッダーたち。
 たとえレースが終わってもやることは山ほどある。
 ワイバーンに餌をやったり装備を片付けたりとむしろレース中より忙しい。
 下男を雇えるスキッダーは楽だ。レースが終わればそのまま帰れるのだから。
 だが俺のようなスポンサーつきでようやく参加できている奴にそんな余裕はない。
 ワイバーンの餌や装備の手入れなど、全て自分でやらなければならない。
 とにかくため息が出そうになるのを堪え、俺は備品のチェックに専念しようとした。
 忙しい時は自分の不甲斐なさをあまり考えずに済む。
 ちなみにレースの結果は10人中6位。
 決してよくない結果だがいつものことだった。
「よう、ジース!お疲れ」
 そこへ別のスキッダーが声をかけてきた。
 短く刈られた茶髪に悪戯っぽい笑みが特徴的な青年。
 名はアザラスと言い、同じグレイ・クリフのスキッダーの一人。
 今日のレースでは俺の次、つまり7位だった騎手だ。
「お疲れ……」
 俺は適当に返事をすると再び雑務に戻った。
 アザラスは気にした様子もなく、話続ける。
「このあと友達と飲みにいくんだけどどうだ?」
「おまえ、ワイバーンの世話は終わったのか?」
 俺は呆れ声で返した。
 こいつは負けた割にのん気だなと思った。
「ああ、終わったよ。それよりどうだ?」
「いや、遠慮しておく」
「ん、そうか。んじゃ俺たちは縁者の園亭にいるから、気が変わったらきてくれ」
 そう言い残してアザラスは兜を肩にぶら下げながら去っていった。
 声が大きいためか途中途中、他のスキッダーにも声を掛けているのが聞こえてくる。
 俺はどうにもあの同世代の同僚が苦手だった。気に食わないと言ってもいい。
 一見、愛想がよくて気の良い男だが、ヘラヘラした感じが嫌だった。
 いつも王都リーグに出るだのでかいことを口にしながら、成績は中の下。それでいて、負けてもまるで勝ったかのように明るく振舞っている。
 他の皆が必死になって頑張っている中、どうにも彼の態度は好きになれない。
 貴族だから恐らく勝てなくとも大丈夫なのだろう。
 クリフ・スキッドはとにかくお金のかかる競技だ。誰もがすぐにはじめられるものではない。
 だから多くのスキッダーは貴族だ。もちろん全員という訳ではない。
 俺のように地元の商会の支援を受けてやっている平民のスキッダーもいる。
 但しワイバーンを含め、装備はすべてスポンサーのものであり、成績が悪ければ他のスキッダーと取って代われることもある。
 今回送られてきた新しい鞍だって贈り物ではなく、成績不振の続く俺に喝を入れるためのものだろう。
 このまま結果を残せなかった場合、最悪―
「あー!やめだ!やめ!」
 物事がうまくいかないとどんどん悪い方向に考えてしまう。
 俺の悪い癖だ。
 とにかく来週だ。来週のレースで今日以上の成績を残せばいいだけだ。
 気分を切り替え、俺はとにかく仕事を終わらせることに専念した。
 そして全ての後片付けが終わったあと、アズールの頭を一撫でしてから山を下りた。


398:蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:22:11 4I9XavuC
 麓の街につく頃には夜も更けていた。
 しかしそれでも街の方にはまだまだ活気が残っている。
 グレイ・クリフの街は主にクリフ・スキッドで収入を得ている街だ。
 国土の八割以上が山岳地帯のここアルス王国では珍しいことではない。
 元々資源の少ない土地。他に売り物にできるものは傭兵などの人的資源ぐらいしかない。
 よって観光やクリフ・スキッド関係の事業は特に力が入れられる。
 グレイ・クリフも例にもれず、夜になっても街の宿や酒場の明かりは灯ったままだ。
 夕飯がまだなので立ち寄ろうとも考えたが今日は騒がしい中で食事できる気分ではない。
 帰って適当に果物でもかじるか。
 俺は賑やかな繁華街を抜け、住宅地のはずれにある我が家へとまっすぐ帰った。
「ただいま」
 家の扉を開けるとまだ明かりがついていたことに驚いたがすぐにその理由が分かった。
「おうボウズ。帰ったか」
 そう言いながら熱いフライパン片手に出迎えたのが専業主夫の親父。
 エプロンをつけているものの、体格が大きいためどう見ても料理中、というより刀剣でも鍛えていそうな鍛冶屋にしか見えない。
「おかえりなさい。どうせ夕飯まででしょ?」
 見透かしたように言うのは食卓の上で何かを調合していた我が家の大黒柱にして街の薬師である母。
 そして―
「お久しぶり」
 部屋に響き渡るような澄んだ声。
 古典的な緑色のとんがり帽子に腰まで届く銀色の髪。
 美しいという言葉さえ陳腐に聞こえてしまうほどの端正な顔立ち。
 そして出自を語る細長く尖った耳。
「ひさしぶり、エリシアさん」
 母の隣には微笑を浮かべたエルフの魔術師、エリシアさんが座っていた。

「え?じゃあ俺のこと待っててくれたわけじゃないの?」
 遅い夕飯のあと、みなで食卓を囲んで紅茶をすすっていた。
 ちなみに俺の期待と反して遅い夕飯は何も俺のためではなかったらしい。
「当たり前でしょ。別にレースに勝ったわけでもなし」
「今日はエリシアさんが来てくれたからな。料理には少しこだわってみたんだが、少し遅くなった。おまえはタイミングよく帰ってきただけだ」
 相変わらず息子に対してデリカシーのない両親である。
「お疲れ様ジース君」
 対してエリシアさんの優しい労いはまさに神の贈り物だ。
「ありがとう。そういえばエリシアさんここ数年見かけなかったけど何処かに行ってたの?」
「秘密」
 そう言って人差し指を唇にあてるエリシアさん。
 相変わらず謎の多い女性だ。
 だがこの謎多きエルフの魔術師とはもう何年も家族そろって付き合いがある。
 母は薬師ということもあり、山で採れる様々な植物に詳しかった。
 エリシアさんはそういった植物を母から買うため、何年も前からちょくちょく我が家に訪れていた。
 普通ならお得意様で終わるところだが、母と妙に気が合ったらしく商売以外でも会うようになったとか。
 そんなこんなで俺も幼かった頃にはよく遊んでもらった記憶がある。
 他にも彼女は俺の家庭教師だったことさえあった。
 たいてい平民の子供は10歳前後になると街の神殿で読み書きを覚える。だが当時、神殿への寄付金という名の教育費をケチった親父はエリシアさんに俺の読み書きを教えさせた。
 結果、俺は平民ながら貴族の子弟たちのように、エリシアさんという専属の家庭教師がついていた。
 おかげで共通語に加えエルフ語まで読めるようになった。
 しばらく談笑していると帰る時間なのか、エリシアさんがすっと立ち上がった。
「あら、もうこんな時間。ごめんなさいね、引き止めちゃって」
 母親はすまなそうに言い、親父は俺に顎で扉の方を指した。
「言われなくともちゃんと送っていくさ」
 どうせ言うだろうと思い、俺はすぐさま家の倉庫からたいまつをとりにいった。
「ごちそうさまでした。ごきげんよう」
 エリシアさんは両親と礼を交わすとゆったりと扉を出て行った。
 俺もたいまつに火を灯し、あとに続く。


399:蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:23:25 4I9XavuC
 治安が比較的良好なグレイ・クリフでも夜道は完全に安全というわけではない。
 もっとも『グレイ・クリフの魔女』ことエリシアさんに手を出す輩はいないだろう。
 魔女というのは彼女がこの街に越してきた時ついたあだ名らしい。
 なんでもグレイ・クリフに現れてからたった一日で彼女は街の郊外に五階建ての塔を興した。そのことに驚愕した街の住民つけた名だ。
 だから本当は見送りなんて必要ない。
 例え襲われたって賊程度じゃ簡単に返り討ちだろう。
 そんなことを考えながら隣を歩いていると、彼女の方から声をかけてきた。
「かわったのね」
「え?」
 いつもの淡白なしゃべり方だったので一瞬何のことかと分からなかった。
「あ、ああ。会うのは確か三年ぶりだったからね」
「人間ってすぐかわる」
「さすがにエルフほど長寿じゃないから―」
「そうじゃない」
 彼女は歩みを止めると、俺の眼を見た。
 確かにここ三年で俺の目線はようやくエリシアさんを見下ろす形になった。
 もうすぐ19歳にもなる俺にしてみれば当然なのだが、エルフの彼女からしてみれば大きな変化なのだろう。
「私の髪、触らなくなった」
 彼女は肩から銀の川のように流れる髪を差し出しながら言った。
 口元はわずかに笑っているようにも見える。
「あ、いや……」
 何のことかようやく分かった途端、急に恥ずかしくなった。
「触ってもいいのに……」
 小さい頃から俺にはちょっと変わった癖があった。女性の長い髪を見るとどうしても触りたくなるのだ。特にエリシアさんの綺麗な銀髪は耐え難い魅力を放っているので、よく研ぐように弄っていた記憶がある。
 母からはよく『恥ずかしいからやめなさい』とか『女性の髪を勝手に触るもんじゃない』など叱られてはいた。
 それでもエリシアさん本人からは止められなかったこともあり、気づくとすっかり癖として定着していた。
「さすがにこの歳でそれはマズいかな、と」
 最近になってようやく自分がどれだけ恥ずかしいことをやっていたかに気づいた。
 以来、件のこと思い出すと崖から飛び降りたくなる。
「どうして?」
「どうしてって……それはやっぱり女性の髪を触るのは無礼だし、その」
「でもジース君いつも触ってた」
「それは俺も小さかったし……」
「大きくなったら触っちゃいけないの?」
「大人になったら流石に……」
「ジース君まだ子供」
 変わらず微かな笑みを見せながらエリシアさんはそっと俺の頭を撫でた。
「これでもクリフ・スキッダーなんだけど」
 エルフの彼女から見れば俺なんてまだまだ子供なのは分かる。
 でも19歳にもなって子供の時みたいに頭を撫でられるのは納得がいかない。
「子供」
 彼女はそれでも撫で続けた。
 しかも段々と撫でられるのが気持ちなってくるから危険だ。
「そりゃ今は未熟かもしれないけど、俺だっていつかは―痛ッ!」
 ちょっと不機嫌な顔してみた途端、痛みが走った。
 よく見ると頭を撫でていた手には俺の黒い髪の毛が数本握られていた。
「ふふふ、生意気」
「何するんだよ!」
 頭を押さえる俺をよそに彼女はむしりとった髪の毛を懐から出したビンに入れていた。
「これはお土産」
「は?」
「あとは大丈夫。ありがとう」
 そう言うとエリシアさんはさっさと闇の中に消えていった。
 あまりにも突発的なことだったので一瞬唖然としてしまった。
 追いかけようと思ったが、気づくとたいまつに照らされた小さな空間と、夜空の中でもその存在を誇示する魔女の塔しか見えなかった。


400:蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:24:56 4I9XavuC
投下終了です。
失礼します。

401:名無しさん@ピンキー
07/09/19 20:08:36 fk8Qfl+x
>>400
GJ!!!!
母から買っている植物と、ジースの髪の毛・・・。エリシアさん、一体何を・・・((;゚Д゚)ガクガクブルブル
続きを楽しみに待ってます。

402:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:12:34 W2mx5abe
朝ktkrかと思ってたら夜も来ててビックリしましたぃ。
作者様GJです。

403:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:28:34 sLiuDBYj
筆が早くて感心です。GJ。

404:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:35:37 oDve00IZ
>>400
一日に二度も投下するなよアホ

405:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:52:38 fxhlNnKU
>>400
ふぁんたじぃはええですのう。gj

406:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:00:12 EbKS8aA8
>>400
GJ!!エルフとかイイよね。

407:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:11:19 Irv0zJ1b
>>404
お前は二度と書き込むなよ、な!

408:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:23:46 oDve00IZ
>>407
アンカーすらまともに打てない人に言われたくないな^^;

409:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:28:51 QuR930p/
>407
スルースキルをそろそろ覚えろ

410:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:31:17 ZnpQv3J8
髪触るっていいよね、なんかいい

411:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:34:25 jFlTyVI9
>>407
何故粘着に釣られるのか
何故スルースキルを身につけないのか

412:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:49:57 LDi/NWlo
>>410
お前は俺か

413:名無しさん@ピンキー
07/09/19 23:22:44 WhJ7UuUe
>>400
面白いです。続き楽しみにしてます。

414:名無しさん@ピンキー
07/09/19 23:53:53 qdPmrU4e
リクームやグルドの過去話もよろ

415:名無しさん@ピンキー
07/09/19 23:59:44 STcDgHO8
>>414
それなんてギニュー特選鯛

416:名無しさん@ピンキー
07/09/20 00:27:37 5P4sgfkJ
>>371で紹介されていた「リュンコイスの魔王」をDLしてプレイしている。



まだ途中ではあるが……うん、良い修羅場。

>>366>>369の台詞を見たときには震えたね。
これからの展開が楽しみなので、続きのプレイに没頭します。


417:名無しさん@ピンキー
07/09/20 10:33:14 gbjy4ktp
ツクール2000のランタイムインストしてゲームダウンロードしたのだが
起動アイコンがみつからない・・・

418:名無しさん@ピンキー
07/09/20 14:03:39 ToW4xhgp
exeは共通だから、他所でダウソしる

419:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:27:03 Qg2ZmyZT
>>371

「リュンコイスの魔王」、このスレ的にはかなりオススメ。
純な乙女がキモ姉への対抗心と主人公への激しい愛情から、ヤンデレヒロインにクラスチェンジするところなんか最高。
 ……ラストは色々な意味で衝撃的。

420:名無しさん@ピンキー
07/09/21 03:53:15 6a1UONp1
プレイできてない奴も多そうだけどな

421:名無しさん@ピンキー
07/09/21 05:19:22 gIKo5rS7
できないやつは厨ばかり
ってか、やり方がわからないやつっているの?

422:名無しさん@ピンキー
07/09/21 06:08:17 UWyFIJ23
台詞回しがくどすぎて3時間ほどプレイしてダウンした

423:名無しさん@ピンキー
07/09/21 06:09:08 /9J/QbNe
おまいら今日の「暴れん坊将軍」の再放送は必見ですよ。 たとえ三次元でも。

424:a
07/09/21 17:17:29 jbOB5A4f
2007/08/10 17:10:12 oo
私は中3です。3月10日、卒業式でした。
そして、卒業式が終わっていえに帰って、友達と遊びに行っていました。
そしたら!!彼氏に見つかって(?)彼氏の家に急遽行く事になりました。
そして行き成り彼氏は私の胸を触り始めて、ベッドにたおれました。
そしたら制服のスカートをめくり上げて、パンツの中に手を入れて、
チンコの中に指を入れて・・・「クチュクチュクチュ」って。わざといやらしい音を立てて・・・。
そして彼氏はこういいました。「服脱いで」と。
私はビックリしたので「え?」と聞き返しました。私はもちろんエッチはやったことはあります。その彼氏と。ほかの人ともやった事はありますが・・・(藁
そして、彼氏は「オレ、脱いでる所とか写メとるの好きだから」っていいました。
私は納得して、自分でぬぎはじめました。
そして彼氏は私の体で遊び始めました。チンコに指を入れてクチュクチュいやらしい音を出したり、胸をもみもみしたり、なめたり。
そして彼氏は写メもとりまくってました。私のチンコの穴。胸。全体など。
そして彼氏は我慢できなくなったらしく、こういいました。
「オレのズボン脱がせて」と。私は喜んで脱がしました。
ズボンのチャックを開けて、ズボンを下ろして、ガラパンを下ろして。
そしたら彼氏のもうすでに大きくなっているあそこが出てきました。
そして私は彼氏をベッドに寝かし、私はうえにのぼって彼氏のあそこと私のチンコを押さえつけるようにしながら写メをとりました。
とても気持ちよかったです。
この写メを見たい人はこのスレを8箇所に張ってください。
そしたら[               ]←ここにアドレスが出てきます。
それをクリックすると、彼がとった写メすべてのってます。
私がとった写メも、動画も載せてます。
動画はわかりにくいようにしています。
「☆」をクリックすると動画がみれます。
このスレを1箇所にも張らなかった人は、不幸がおこります。
大好きな人が一年以上学校に来なかったり。
嫌いな人があなたの席の隣になったり。
親戚が亡くなったり。
けど本当に写メ、動画ありますので8ヶ所にはってみてください!



425:名無しさん@ピンキー
07/09/21 18:00:18 9w7WPnPx
>>423
暴れん坊将軍には何があったんだぜ?

426:名無しさん@ピンキー
07/09/21 18:14:41 IW6gG1s+
>>419
これは良い嫉妬だな
姉がハンケチを噛み締めながら尾行をしているシーンなどおっきしてしまったよ

あとでかい方のラスボスの最強技がエグ過ぎる
全滅の繰り返しで撃破に3時間かかったorz

427:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:05:25 bs+rZOTd
皆さん乙です。
>>292の続き投下します。

428:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:06:37 bs+rZOTd
 ――おかしい。

 昼休みが始まってもう三十分が経つのに、遼君はまだやってこない。いつもなら昼休み
の連絡放送と昼ごはんの為に、毎日放送室にやってくるのに……。無論私が放送室にいる
のは遼君と昼ごはんを食べるためだけど。

 ぐ~~。

 お腹が間抜けな音を立てて鳴る。遼君が来るまで私も昼ごはんは我慢していた。一体何
があったのだろう? 先生に用事でも頼まれたのだろうか?

「遅いよ、遼君……」

 思わずそう呟いてしまった。一人でいる放送室は静かで寒くて、そして寂しかった。

「はあ………」

 何だか、嫌な予感がする。

 教室にでも見に行ってみようか? でもそんなことしたら遼君に変に思われるだろう
か? でもやっぱり心配だし、行ったほうがいいかな。どういう理由にすればいいだろう?

『放送室に来なかったから心配になって』

 これじゃあ好きだってことがバレバレだ。

『連絡放送サボりやがって何やってんだコラァ!!』

 うん、これはいい。でもいちいちこんなことで教室まで行ったら嫌われるだろうか? ウ
ザイ先輩だなんて思われたら一貫の終わりだ。ああもうどうすればいいんだろう? とにか
く会いたいよ……会いたいよ遼君!!

「ええいもう、行ってしまえ!!!」

 とりあえず教室にいるかどうかだけ見に行ってみよう、それからどうするかはその時考
えればいい!!

「突撃!!」

429:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:08:45 bs+rZOTd

「突撃!!」

 私が放送室を出ようとノブに手をかけたときだった。

「あれ?」

 勝手にドアのノブは回って扉が開かれた。バランスを崩して私は前に倒れる。

「……おわっ、と。大丈夫っすか先輩?」

 バランスを崩した私が倒れこんだその先は、

「りょ、遼君……」

 誰よりも待ち望んだ彼の胸の中で、私はしばらくそのままで居たくなった。でも、その
幸せはやっぱりそんなに長くは続かないようで、

「よいしょっと」

 遼君は私の肩を掴んで、私の体勢を立て直した。

「怪我はないっすか?」
「……うん」

 やさしく笑う遼君。私はどうしようもない幸福感に包まれる。

 ―――だけど、

「し、失礼します」

 ―――だけどその瞬間、私の幸せは音を立てて崩れ去った。








430:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:09:58 bs+rZOTd
「んじゃあ入って」

 僕は綾瀬さんを中に招き入れた。

「し、失礼しま~す」

 綾瀬さんがおずおずと中に入ってきた。少し緊張したその表情も、ああ、ため息が出そ
うになるくらい可愛い。

「……………誰?」

 先輩はポカンとした様子で呟いた。

「あ、こちら今日転校してきた綾瀬楓さんです。学校の案内してたとこなんすよ」
「よ、よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げる綾瀬さん。

「……………先輩?」

 未だにただ立ち尽くす先輩に、心配になって僕は声をかけた。

「……え? あ、ゴメンゴメンちょっとぼーっとしちゃって……」

 申し訳なさそうに笑った後、先輩は「よろしくね」といつものような口調で言った。

 だけど、その昼休みの先輩の様子はどこかおかしかった。






431:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:12:18 bs+rZOTd
 一瞬で分かった、とでも言うべきだろうか。

 あの人は、放送室にいたあの先輩は、確実に中原さんのことが好きだ。

 昼休みが終わって午後の授業が始まっても、私はそのことを思い出していた。

 最初に中原さんと喋っていたときのあの表情、同じく私が入ってきた時のそれ、そして
その後の様子。

『女の勘』とでも言うものなのだろうか、こんなのは初めてだ。

 綺麗な、人だった。

 あの人は私の何倍もの時間を中原さんと過ごしていて、私の知らない中原さんを沢山知
っている。正直、分は悪い。

でも、

「…………負けるわけには、行かないですよね」

 誰にも聞こえないくらいの声で、私は言った。自分自身を鼓舞するために、この戦いに
勝利するために。

 中原さんの後ろ姿を見て、今日何度目か分からないため息をついた。黒板に書いてある
授業内容をノートに写している。

 ああ、これから毎日彼の背中を眺められるなんて、私は何て幸せなんだろう?

 だめだめ、背中なんかで満足してちゃ駄目なんだ。

 もっと、もっと近くに。

 もっと、中原さんの近くに。

 ――そして願わくば………。

 その後のことを考えると、顔が赤くなった。

 これももう、今日何度目か分からない。

 よし、決めた。私も放送部に入ろう。

 まずは、そこからだ。




432:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:14:20 bs+rZOTd


 不安は的中した。当たりも当たり、大当たりした訳だから『女の勘』っていうのもあな
がち間違いじゃないんだろう。

「…………ハア」

 昼休みが終わって始まった午後の授業。今の私には何の教科なのかは分からないし、興
味すらない。

 窓の外を見ながら考えてるのは、もちろん彼のこと。

 あの娘(綾瀬さんっていったっけ)に話しかける遼君の目、それに遼君を見る彼女の目。
頭にこびりついて離れない。

(嫉妬ってやつか………)

 自分がこんなにそんなことをする人間だなんて今まで思ったこともなかった。

 遼君は彼女のことをどう思ってるんだろうか?

 あれだけ可愛い娘だし、嫌いってことはないだろう。でも、でもきっと知り合ってまだ
少ししか経ってないし、好きってことも………希望的観測すぎるだろうか。

 全く彼の気持ちは分からない。

「でも」

 はっきりしてるのは、あの娘が遼君のことを好きだっていうこと。

 あの表情は、あの声は、あの目は、完全に恋をしている。

433:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:14:58 bs+rZOTd

「…………ハア」

 それを考えるだけでまた、胸の中にとんでもなく汚いものが込みあがってくる。

 ――嫌だ。遼君を取られたくない。遼君が私以外の女の子にあんな風に笑うのを見た
くない。

 それに、それにあの娘が私は許せなかった。放送室に、私と遼君の聖域に、入り込んで
きたあの娘が私は許せなかった。

「…………負けるもんか」

 そうだ、負けてたまるか。遼君を好きな気持ちだったら、出会って間もないあんな娘に
なんか負けるはずがない。もう怖がってなんかいられないんだ。『ただの先輩』のままで
いる訳にはいかないんだ。臆病な自分を変えないといけないんだ。

「…………よし!」

 今日は遼君の勉強を見てあげよう。密室二人っきりの放送室、これは私にとっての最大
の武器だ。あわよくば急接近!!

 さあ心は決まった。あとは全力で事にあたるのみ!!

 ノートに大きく太く、『打倒綾瀬楓!!!!』と書いて、私の決断式は完了した。



434:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:17:27 bs+rZOTd
以上で今回分終了です。
やっと嫉妬成分が入り始めたところでしょうか……。
次回もよろしくお願いします。

435:名無しさん@ピンキー
07/09/21 20:37:45 uLTYp2W5
GJ


436:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:20:09 r8gnCUIt
私の親友は少しだけ変わっている。腰まで伸びた栗色の髪に、染み一つない白磁のような肌。長い睫毛と宝石のようにきらきらと輝く大きな瞳。小さく整った頬骨と露に濡れた薔薇の蕾のような唇。
スカートから覗くしなやかな素肌の脚は、言い様のない艶やかさを思わせる。
セーラー服の上に薄い膨みを主張する乳房と、小さくはだけられて薄紅に色付いた鎖骨。
なんと淫靡な姿だろう。ただそこに立っているというだけで見るものに官能的な衝動を催させる、天性の娼婦。
それでもなお、控えめに伏せた目元と穏かな物腰はどこか修道女のような貞淑さを感じさせた。
女の私から見ても、親友の姿は綺麗だ。その上、仕草は可愛くもある。
天は二物を与えずというが、目の前にいる親友の美しさに関してはこれでもかというぐらい甘やかし放題だ。
私だって、容姿に少しは自身がある。何度となく男子から告白されたし、同性から綺麗で羨ましいと言われることなんてしょっちゅうだ。
だけれど、親友はそれ以上に綺麗で可愛い。そんじょそこらのモデルなんか比較にならないくらいスタイルも顔立ちも優れている。
悔しいなんて思う気持ちも萎えるほど別次元の美しさを誇るのだ、親友の容姿は。
しかし、先に述べたように、私の親友は少し変わっている。
具体的にいうならば、体のごく一部分が。観念的にいうならば、その全てが。
アイドルにも負けないくらい綺麗な親友はその見かけに反して、実は男の子なのだ。
そう、男の子。男で雄でMANで♂。生物学上完っ璧な男性。小さい頃一緒にお風呂に入ったときには股座にちゃんとぞうさんがくっ付いていた。



437:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:23:26 r8gnCUIt
「あはは。ずっと夢だったんだ。今みたいにこうして制服着て町を歩くのが。どう?ボクのセーラー服姿、似合ってる?」
「すっごく似合ってる。思わず嫉妬しちゃうくらいに。」
目の前でくるくると廻ってスカートをはためかせている親友の制服姿は、本当に悔しくなるくらい似合っている。
三月十日、卒業式を終えて一旦家に帰ってから、私と親友は町へ繰り出した。
私は私服で、私の親友は前から彼の悲願であった、セーラー服に袖を通して。
幸い、私たちの体格は同じくらいだったので彼が私の制服を着込んでいても違和感はない。
親友は昔から女装が好きだった。いや、女装は彼の趣味だといってもいい。
小学校のころは毎日女の子の姿で登校し、中学ではやはり校則で学生服を着なければいけなかったが、彼の学生服姿はまるで男装の麗人のようで、男子女子の両方に倒錯的な想いを抱かれたりもしていた。
私は彼の趣味に口を出すつもりはないが、やはり女装というのはちょっといただけない。
「なんだかボクたち姉妹みたいだね。ほら、早くいこ!」
「う、うん。」
親友が私の手をとって歩き出す。柔らかい感触に思わず顔が熱くなった。
たしかに私たち姉妹のように見えるかもしれないが、恋人同士には見てもらえないだろうか。
私は女で、彼は男。異性で手を繋いで町を歩くのだから、これは立派なデートじゃないか。
一度意識してしまうと、一気に落ち着きを失ってしまった。心臓の動悸が激しくなる。顔に血が上り、視線が定まらずきょろきょろと動く。
今の私の姿を見る人がいたら、女の子同士腕を組んで顔を赤らめている私を挙動不審に思うだろう。
でも、それも仕方が無い。私は彼に恋をしているのだから。



438:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:25:55 r8gnCUIt
初めに意識したのがいつだったのかは覚えていない。気が付けば、私は親友を好きになっていた。
私たちは幼馴染で、小さいころから良く一緒に遊んでいた。彼は女の子のような容姿に違わず女の子のような性格で、女の子の遊びが好きだった。
親友の趣味と性格は見て通りのああだから周りに馴染めずいつも孤立していて、幼馴染の私くらいしかまともに接しようという人間はいなかった。
そのころの私は時々考えたものだ。私は親友なのだから彼と遊んであげなきゃいけない、私だけが彼を助けてあげられるのだ、と。
それからだろう、私の心の中に彼に対する独占欲ともいえる責任感が目覚めたのは。
年齢が上がるにつれて排他的だった周りの子供たちにも寛容さが生まれ、彼の存在もクラスの輪に馴染み始めてくる。
ちょっと変わった子だけど性格はいいし、何より可愛い美少年。そんな彼がクラスの人気者になるまでにはそれほど時間はかからなかった。
彼は私だけのものではなくなってしまったのだ。

「ぼーっとしてどうしたの?早くたべなきゃアイスとけちゃうよ?」
「あっ……そうだね。ごめん。」
気が付けば、考え事で上の空になっていた私を不信に思い首をかしげる彼が目の前にいた。細かいことは気にしない性格なのか、彼はすぐにまた自分のアイスに舌を伸ばした。
彼の仕草はひとつひとつが艶かしい。垂れてきたクリームをつつ、と充血した舌でなぞり、掬い取る姿に色気を感じる。
彼はそのまま棒状のソレに満遍なく舌を這わせ、頂点に溜まった液体に美味しそうに吸い付いた。
なんという厭らしい仕草だろう。周囲にいる男性は誰しもが彼を凝視している。以前に、耳年増の同級生に見せられたビデオの映像を思い出してむず痒い気持ちになった。



439:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:29:30 r8gnCUIt
「あれ?キミはもしかして……」
突然、横から野太い声が聞こえた。髭の濃い中年がやたら馴れ馴れしい仕草で私たちに近づいてくる。
新手のナンパなのだろうか。それにしても一度鏡で自分の顔を確認してからきて欲しいものだ。私たちの年齢以前に、顔面そのものが条例違反に引っかかっている。
「どうも、こんにちは。こんなところで会うなんて奇遇ですね。」
「いや~、相変わらず可愛いねキミは。その娘もしかして、コレかい?」
ぶよぶよと脂肪が集まった赤ん坊のような小指を立てる肉団子。
「ち、違いますよ。ただの幼馴染ですって。」
どういうことだろう。目の前にいるクリーチャーは彼の知り合いだとでもいうのだろうか。
こんな汚らわしい生き物に視姦されると体じゅうにさぶいぼが出る。中年特有の腐ったチーズのような体臭が鼻をつき、私は目をしかめた。
「あ、この人?父さんの友達だよ。」
どうやら彼の父親の関係者らしい。私は握手を求められたが、こんなおぞましいものに触れるのはごめんなので視線で断ってやった。
私を蚊帳の外にしたまま、彼とニューボーンエイリアンは談笑を続ける。異種族コミュニケーションも大事だが、歩み寄る相手は選んだほうがいいと思う。
あんな青魔法を使いそうな種族は、人間とは決して相容れないだろうから。
こんな街中ではなくエリア51でやるべきである会談をしばらく行うと、目の前のラージノーズグレイは彼の耳元にその汚らしい口元を寄せて、なにやら二三言呟いた。
いったいなにを言われたのだろうか、ジャバ・ザ・ハットの唇が動くにつれ、彼の儚い表情は徐々に歪んでいく。
顔を真っ青を通り超して蒼白にした彼が、私の方に向き直る。
「ちょっと用事が出来ちゃったからさ……先に帰っててもらえる、かな。」
悲しそうにそれだけ言い残して、親友は先ほど現れた髭の中年に手を引かれほいほいついて行ってしまった。
そして私は彼の様子を不審に思い、彼らの後を尾行した。





440:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:32:08 r8gnCUIt
窓から覗く部屋の中に、引き締まった腿と銀色に光る腹が見える。一本の大きな黒い線がその腹を横切っている。
男の腕だ。男は寝台にうずくまって、親友をかかえ、ひしと抱きしめる。そして、男の口は親友の性の口のすぐ近くにあり、彼らは途方もなくおぞましい接吻のために身体を近づけあう。
暗い色の身体がほの白い体の前に跪いているのが見える。
しばらくすると、男が親友の上に身体を横たえ、呻くようになにかを言いながらぴったりと身を寄せる。男は親友を引き裂こうとし、親友の上にのしかかった。
二人は互いの身体のなかに深くはいりこみ、男は快楽へと突き進んでゆく。二人は身体を波打つように動かす。二人の充血した器官が私の目にはいる。
私は、彼ら二人がつくりなす汚らわしく奇怪な交合を目の当たりにした。
男が機械的に何かを繰り返すと、肉の結びつきはぐったりとなった。男はもう堪能しきっていた。
傍観者の私は、一人涙を流した。








441:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:35:45 r8gnCUIt
>>424を見て勢いで書いてしまった。
女装美少年なら萌えると思ったが、自分の文章力では萌えられなかった。今は後悔している。
スレ汚しごめんなさい。吊ってきます。


442:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:57:41 oY6SIra6
これは・・・なんともコメントしずらいな

443:名無しさん@ピンキー
07/09/21 22:00:14 JL9NHrpN
うん、、まぁその、、、なんだ

ガンバレ

444:名無しさん@ピンキー
07/09/21 22:01:06 mBRfhwJ7
もう少し書いてくれればよかったんだがな

445:名無しさん@ピンキー
07/09/21 22:02:11 JUDoFNkX
スレ間違えたかとおもた

446:蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:22:59 OyPy8Vpg
皆さん、こんばんは
続きを投下させていただきます

447:蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:24:13 OyPy8Vpg
 俺の朝は早い。
 まだ朝靄が街を覆い、空が紫かがっている内から家を出る。
 グレイ・クリフでレースが行われるのは週一回だがスキッダーは毎日練習する。
 そして俺の練習は家を出た瞬間からはじまる。
 まずはワイバーンの馬場(竜場とも言う)があるグレイ・クリフ山頂まで走りこみ。
 家から街までは平坦だから楽だ。問題は麓の街から山頂までの道のり。
 アルス王国の者なら誰でも山道は慣れたもの。しかし、走って登るとなると話は別である。
 ペースを考えながら走らないといけないのでなかなか馬鹿にできない鍛錬だ。
 唯一、気に入らないのは山道の幅が狭いこと。
 特に大きな馬車が通れば山腹にへばりついて道を開けなくてはならない。
 そして案の上、今朝走っていたら馬車が来たため一旦道を開けなければならなかった。
 ただ今回ばかりはへばりつくどころか道から外れ、山の斜面にまで退かなければならなかった。
「はあ……はあ……なんだよ。あれ」
 思わず立ち止まってしまうほど派手な馬車だった。
 四頭の黒馬に引かれたワインレッドの車両。所々金の装飾で彩られ、馬車の横腹には翼を生やした狼の紋章が描かれていた。
 貴族の馬車なんてグレイ・クリフじゃ珍しくもないが、あそこまで大きく豪華な馬車は未だ見たことがない。
 以前アザラスの馬車を見たことがあるが今の馬車に比べたらそれこそ小悪魔インプとドラゴンぐらいの差はある。
 まさに権力と財力を誇示するが如く。
 名のある貴族には違いないだろうが、生憎と俺はそういった事柄に興味はない。
 と同時にレースのない日曜の朝に大貴族がグレイ・クリフ山に何の用か、と好奇心が湧く。
 幸い、俺の目的地も恐らくあの馬車と同じだ。
 考え事は山頂に着いてから。
 俺は再び険しい山道を走り出した。

 山頂の洞窟内に到着すると俺は汗をしっかりと拭き取り、クリフ・スキッド用の革鎧に着替える。
 着替え室から竜場に向かい、腹を空かしたアズールにたっぷりと餌をやる。
 朝早いにも関わらず、周りには既に何人ものスキッダーたちが各々の練習の準備をしていた。
 そんな中、俺の走りこみ中の疑問の答えが目に入った。


448:蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:25:15 OyPy8Vpg
 竜場の中でも大きめに作られた奥の区画の一つ。
 そこには見たことのない赤いワイバーン。
 まるで竜神を拝めるかのように赤いワイバーンを世話する茶色い制服の一団。
 一団を護衛するかのように直立不動で立つ完全武装の兵士。
 そして彼らの盾には山を登ってくる際に見たあの馬車と同じ、翼の生えた狼が描かれていた。
 なるほど、と納得した。
 つまり今日からスキッダーがもう一人増えるのだ。
 とてつもなく“高貴”なスキッダーが。
「おはよう諸君!今日も王都リーグ目指して頑張ろうじゃないか!」
 準備をしながらチラチラと高貴な一団を見ていると、全く高貴じゃない貴族が姿を現した。
 アザラスである。
 最初は他の従業員やスキッダーに挨拶して回っていたが、俺の望みとは逆に奴の声がどんどんと近づいてくる。
「おはよう!ジース」
 予想はしていたが、アザラスは最終的に俺の方にやってきてしまった。
 こうなっては適当にはぐらかすしかない。
「おはよう」
「次のレースのため頑張ろうな!」
「ああ」
「次こそは上位にあがろう」
「そうだな」
「ところで見たか?ベイヴェルグ公爵家の連中だぜ」
「ベイヴェルグ?」
 ひたすら生返事で通そうと思っていたが、どうやら好奇心の方が勝ってしまったようだ。
「ん?ジースは知らないのか?」
 一見気さくに笑っているアザラス。その実、眼には自分の知識を披露したいという気持ちがありありと浮かんでいた。
「貴族の名前なんて一々覚えてられん」
「悲しいこと言うなよ」
「んで、そのベイなんとか様はどうなんだ?」
「ああ、そうそう。とにかく地味に影響力が大きい―」
 ベイヴェルグ公爵家。
 公爵という爵位の中でも最も高い位を持っているから偉い、というのは俺でも分かっていた。


449:蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:25:58 OyPy8Vpg
 だがアルス王国の主要穀倉地帯の領主だというのは初耳だった。
 簡単に言うと輸入品か自家栽培でないかぎり、毎日口にする食べ物は高い確率でベイヴェルグ領地産だということだ。
「まったく、これぐらいこの国の人間として知っておけよ」
 アザラスは説明が終わるとやれやれと言った感じに肩を竦めた。
「悪かったな」
 相変わらず気に障る仕草をする奴だ。
 しかしアザラスの言う通りならば、なぜグレイ・クリフにわざわざ公爵家の人間が来るのだろうか。
 確かにグレイ・クリフは週一回必ずレースを組むほどクリフ・スキッドに熱心な街だが、腕の良いスキッダーはたいてい他の主要都市に集まる。
 少なくとも名声を手にしたいのならここより良い場所は幾らでもあるはずだ。
「まあ、大方あの一族の坊ちゃんの道楽かなんかだろ」
 俺の考え事をよそに、アザラスは呆れたような態度で話題を締めくくった。
 自分のことを棚にあげて何を、と言いかけて俺は何とか己の口を塞いだ。
 ここで反応してはこいつとの会話が長引いてしまう。
 とにかく俺の練習が遅れない内にここを出ようと思った瞬間だった。
「恥を知れ!」
 鋭い女の声が竜場内に轟いた。
 アズールでさえ驚いて飛び跳ねたぐらいだ。
 声は話題の主役であったベイヴェルグ家の一団の方向から来ていた。
 そーっと横目で見ると少女がベイヴェルグ家の兵士に向かって何か怒鳴りつけている。
「ん?あんな娘いたか?」
 不思議そうな顔でアザラスが尋ねてきたが俺もあの娘を見るのははじめてだ。
 あの一団に隠れて見えなかっただけだろうか。
 そう思っている内に少女は引きとめようとしているベイヴェルグの家来たちを無視して着替え室の方へと歩きはじめた。
 先ほどの叫び声で気圧されたのか途中スキッダー、従業員問わず全員少女に道を譲ってゆく。
 一瞬だけ情けないな、と思ったがすぐに自分の愚かさを理解した。
「「うおっ」」
 不覚にも隣のアザラスとハモってしまうぐらい少女の姿は美しく、気品があった。
 肩で切り揃えられた金髪。
 研ぎ澄まされた刃物を思わせる切れ長の眼。
 エリシアさんが森のように爽やかでゆったりとした美しさなら、目の前の少女はグレイ・クリフ山の如く壮大で鋭利な美しさだ。


450:蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:28:26 OyPy8Vpg
 それだけではない。
 洞窟内にとどく淡い光でも反射してみせる紅い革鎧と脇に抱えた女神のレリーフが施された兜。
 両方ともワイバーンを一頭買えるぐらいの品なのだろう。
 なにより革鎧の胸部に縫い付けられた紋章。
 彼女がまさしくアザラスの言っていたベイヴェルグ公爵家の“道楽”息子ならぬ娘であると確信した。
 とりあえず俺の好奇心は満たされたので後は自分のことに集中するだけだ。
「よう!俺はドレンの子、アザラス。昨日はいなかったようだけど今朝ついたのか?」
 一方で俺とは行動原理が正反対の奴がさっそく少女に声をかけていた。
 ここまで来ると気さく通り越して、ただの馬鹿である。
「馴れ馴れしい……」
 呼び止められた少女は一端止まると、強烈な視線をアザラスに向けた。
 まるで虫けらでも見ているかのような見下した眼。
 直接見られている訳でもないのに、つい後ずさりしたくなってしまう。
「おいおい、同じスキッダーじゃないか。それにここは闘技場じゃない。競技選手同士もっと気楽にいこうぜ」
 そのままビクついて引っ込むかと思っていたアザラスは意外にも真面目な顔で話していた。
 少しだけ見直したかもしれない。
「ふん、田舎貴族が偉そうに何を申すか!勝負事においては己以外すべてが敵。ましてやクリフ・スキッドはもとはと言えば竜騎兵を鍛えるための演習の一つ。戦へと赴くのと同じ覚悟で挑むのが礼儀」
 もとから不機嫌だったのか、アザラスの態度が癪に障ったのか少女は物凄い剣幕でまくし立てた。
「それを競技?選手同士?笑わせるな!まったく、お前のような輩がよくもスキッダーなどと名乗れるものだ!」
 相手に言い返す隙を与えぬ猛攻である。
 アザラスをはじめ、グレイ・クリフのスキッダーたちは割と気楽である。だからお互い貴族だの平民だのと気にしない。
 それに慣れて忘れていたが、本来貴族様というのはこういうものなのだろう。
「わかった、わかった。俺が悪かったよ。とにかく名前を聞かせてくれないか」
 出だしはよかったがアザラスはすぐに折れた。
 前言撤回。
 やっぱりこいつ駄目だ。
「……私はエラミノの子、ティオーナ。ティオーナ・エラミノ・ベイヴェルグだ」
 アザラスのみならず竜場のいる全員に宣言するかのように彼女は名乗りをあげた。
 まるで他の者に何度も名乗らせるな、と暗に言うような尊大な口ぶりである。
「そ、そうか。よろしくな」
 アザラスは手を差し出すもティオーナは一瞥をくれるだけで歩き去っていった。
「ありゃ乗ってるワイバーンの方が大人しいんじゃないのか?」
 誰かが声を潜めて言った。
 まったくその通りである。
 貴族の女性と言ったらもっと慎ましやかな淑女を想像していた。ティオーナ嬢は貴族女性の幻想を見事なまでに打ち砕いてくれた。
 だがこのままだとあのアザラスでも可哀相に見えてくる。もちろん間違っても俺は奴に同情なんてしてやらない。
 兜を持ち、俺は練習に赴くためさっさと竜場を後にした。


451:蒼天の夢 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:30:10 OyPy8Vpg
 投下終了です
 ノリと勢いで書いてるせいか、嫉妬要素まだちょっと先です。
 ほんとうにすみません

452:名無しさん@ピンキー
07/09/21 23:03:34 Nm+jVp7t
いつか嫉妬があるなら問題なしだぜ

453:名無しさん@ピンキー
07/09/21 23:20:39 wDlTuyci
女性キャラの魅力をきちんと描写できていてGJ。
でも個人的には主人公のワイバーンに興味があったり。

454:名無しさん@ピンキー
07/09/22 01:45:34 1IPxH64I
何故か最近毎日沃野の胡桃が夢にでてくるwww

455:名無しさん@ピンキー
07/09/22 02:17:18 pgJyg+rr
>>454
マリー隊長(Ver.bad)と胡桃は最狂
ヒロイン人気投票をしたって勝つに違いない

456:名無しさん@ピンキー
07/09/22 11:28:41 AiiYfJF9
ごめん、話し切って悪いんだけど
↑の方に書いてあるログを読んでもリュンコイスの魔王の起動アイコンがどうしてもわからない。
誰か教えてもらえないだろうか?

457:名無しさん@ピンキー
07/09/22 12:00:55 yi/QmzbJ
>>456
いい加減ググれよクレクレ厨……

ようはツクール2000製RPGをプレイするには、RPG_RT.exeという実行ファイルが必要なんだよ。
ベクターとかで落とせるゲームには最初からこれが入っているんだけど、これみたいな2ch作品は容量削減やウイルス対策やらで実行ファイルを入れてない場合が多い。
だから他のゲームとかから実行ファイル持ってきてやらないとプレイ出来ないんだ。
で、実行ファイルは剣を持ったショタのアイコンなんだけど、バージョンが古いとゲームによっては起動できなかったりするから注意しろよ。
最新版の実行ファイルはURLリンク(park.geocities.jp)で落とせるから
ゲームフォルダ(マップや他のRPG_RTファイルが大量に入ってるところ)にそれをコピーして、最後にショタのアイコンをクリックしてやればゲーム起動が完了ってわけ。

458:名無しさん@ピンキー
07/09/22 12:02:06 ztfA45pU
なぜ本スレに移らないお前ら

459:名無しさん@ピンキー
07/09/22 12:10:14 U4bo3Kpq
>>457
わざわざ説明してあげるお前に脱帽した

460:名無しさん@ピンキー
07/09/22 12:46:37 IPg1m3Ta
スクイズ放送中止だってな

461:名無しさん@ピンキー
07/09/22 13:18:29 avDdhl3Q
こちらでどうぞ
嫉妬・三角関係・修羅場統合スレ 第22章
スレリンク(hgame板)

462:名無しさん@ピンキー
07/09/22 13:55:41 NQ/yrwXh
>>457
良いツンデレだな

463:名無しさん@ピンキー
07/09/22 17:51:57 U4bo3Kpq
>>456
つーか、リュンコイスは修羅場以外は糞ゲーだぞ?専門用語ばっかだし…無意味に言葉を難しくいうのがウザすぎてたまらない。そんなに必死になるなよ

464:名無しさん@ピンキー
07/09/22 20:10:53 +CkQYhHp
草待ちwktk

465:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:33:36 G208EnIY
では投稿致します

466:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:37:35 G208EnIY
 第13話『枯れる桜』

 更紗と刹那が桜荘に来てから2週間。
桜はもうすぐ枯れ落ちて今年の最後の見納めの時に二人の歓迎会の意味を含めて桜荘の恒例のお花見会が開かれた。

毎年、桜荘にある桜は一般にも開放されて多くの人で賑わう。
どこぞの会社の団体がお花見する時にはちゃんと料金を支払って、桜荘の自慢の桜を見物しながら飲み食いをする。
その料金で桜荘の維持費に使われている。

桜荘に人があんまり住んでいないのに奈津子さんたちが生活をしていく理由はそこにある。
多くの会社にバショ代を払ってもらえるおかげであんな豪華な生活を送れるのだと俺は確信した。
 とはいえ。そんな私利利欲塗れの桜が散る風景をこの目に刻み込みながら、

安曇さんの料理を食べるのは悪いことではない。
去年は奈津子さんと俺だけで虚しく酒を飲んで二日酔いに遭うことに比べたら数倍マシである。
 今年のお花見会はちゃんと公言した通りに美耶子や安曇さん。そして、その後に桜荘に住むことになった雪菜。

そして、俺の大切な幼馴染である更紗と刹那。
 皆がようやく揃った、桜荘恒例のお花見会が始まろうとしていた。


「桜荘恒例のお花見会を始めるわよ。
今年は一樹君が公言した通りに桜荘の皆一緒に揃ってお花見をすることができた。
これは私たちにとって喜ばしいことであり、去年までは叶うはずがなかった行事でした。
新たに桜荘の仲間に加わった更紗ちゃんに刹那ちゃんも居るし。
今日のお花見会は私の奢りで盛大に盛り上げましょう!! 
 というわけで乾杯!! 真穂ちゃん、私の秘蔵のお酒を持ってきて。
今日はそう簡単に寝かせてあげないわよ」


「そうですね。奈津子さん。今日は地獄の果てまで御供します。うっっ……」
「真穂ちゃんもついに大人の階段を登り始める時がやってきたのよ」
 と、奈津子さんの挨拶終了後にさっそくパシリとして安曇さんは泣きながら秘蔵のお酒を取りに走りだした。
 桜荘の中でも大きな桜の木の前に場所を陣取り、俺達は安曇さんが懸命に作った料理を並べて、
夜の桜を見上げながら散り行く名残を楽しんでいた。

単純に言えば、花より団子の女性陣は奈津子さんにあっさりと捕まり、アルコ-ル度数が高そうな酒を飲まされている。
俺はちゃんと今年の桜の散る場面を思い出の一つとして刻み込んでいる。
すでに酒臭い女性陣に比べて、ちゃんとお花見をやってますよ俺。

 黙々と美味しいという言葉以外は評価できない安曇さんの料理を食べながら、
無意味にテンションが高い女性陣は五月蝿く騒いでいた。元気でいいことだ。

「で、雪菜は言ってあげたんですよ……私にコクってくるのは2000年早いって。
本当にどうして年頃の男の子は万年発情期なんだろうか?」
「それは男の本性がオオカミさんだからですぅ。
一樹さんが私たちを監禁して凌辱行為に走るのかと
毎日毎日怯えている私は彼氏がいない方が幸せな人生を送れると……」

467:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:39:23 G208EnIY
 と、美耶子は男という生物というよりは俺がどれだけ危険な男であると熱弁していた。
本来なら背後から首を絞めて失神コースの刑は確実なのだが。
二人の頬は真っ赤に染まるぐらいに出来上がっていた。
酔っ払い相手に実力行使すると俺の服に嘔吐物が付着しそうで恐い。
ここは大人しく雪菜と美耶子の会話を聞かなかったことにして、
更紗と刹那の方に近寄ると逆に近寄りづらい雰囲気を醸し出していた。 
二人は顔を俯いて奈津子さんのお酒を少しずつ小さな口で飲みながら、ぼそぼそと呟き始めていた。

「ねぇ、刹那ちゃん」
「なぁに更紗ちゃん」
「私たちってそんなに魅力がないのかな?」
「カズ君。私たちをデートに誘ったり、夜に襲ったりとかしないよね」
「私は桜荘に引っ越してきた時はちょっと期待していたんだよ。
カズちゃんと一緒に暮らせるから、以前みたいな関係に戻れるって思っていたんだけど」
「うんうん」
「カズちゃんは私たちに少しだけ距離を置いているよ」
「やっぱり、カズちゃんが好きだって言った英津子さんの事が忘れなくて……。
でも、英津子さんを徹底的に問い詰めても何にもわからなかったし。カズ君の嘘だったね」
「その英津子さんは問い詰めのせいで人間不振になって、
一人の男の子を監禁して犬プレイさせているらしいよ。羨ましいよ」
 と、二人は痛々しい会話を永遠と続けていた。
やはり、お酒が入ると普段のタガが外れるらしいが、当事者である俺は傍目から聞いているだけで身震いがする。
更紗と刹那に視線を合わせないように俺は二人の会話を全身全霊で耳に傾けていた。

『カズ君の観察日記とかさ……』

『カズちゃんを監禁して、思う存分に甘えたり、』

『カズ君の首輪と鎖を買ってこなきゃ』

『カズちゃんの口に私の唾液を……』

『カズ君のためならなんでも……』

 と、恐ろしい呟きが含み笑いと共に聞こえてきた。お酒を飲む人が変わるのかと長い間幼馴染をやっているけど、
この驚愕の事実を今知った。出来るだけ二人に酒を飲まさないようにしよう。


『恋愛同盟を結成して……本格的にアプローチを』


『あの時の言葉は嘘だったのかな?』

 もう、俺は完全に無視を決め込みこれ以上幼馴染の会話を聞き取るのをやめた。
だって、そうだろう。こんな会話を聞けば幼馴染に拒絶反応の一つや二つぐらい起こるもんである。

468:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:41:09 G208EnIY
 さて、盛り上がってきたお花見会は奈津子さん以外の参加者はすでにノックアウトで倒れていた。
俺は女性陣のスカートの裾から見える下着などを隠しながら、奈津子さんの元で一緒に酒を飲んでいた。
泡を吹いて倒れている安曇さんの髪を優しく撫でている奈津子さんは魔性の女がよく似合っていた。

「こんなに楽しいお花見会は始めてだよ」
「いつもと変わらないと思うぞ。憩いの場で皆で飯を食べるのと殆ど一緒だな」
「確かにそうかもしれないけどね。一樹君と私にとっては違うでしょ。
寂しく二人きりでこうやってお酒を飲み明かした時と比べれば」
「桜荘恒例のお花見会と言っても、去年初めて開かれたし……。
それに安曇さんや美耶子も去年みたいに荒れてもいなかったしな」

「一樹君のフィンガーテクニックのおかげだよ」
「んな猥褻な表現の仕方すんなコラァ」
「でも、一樹君が頑張らなかったら、今日のお花見会はなかったわ。
美耶子も雪菜ちゃんや真穂ちゃんもずっと荒れたままだったでしょ」
「確かにそうだけど……」
 1年前のお花見会は悲惨な物であった。俺は幼馴染の事で酷く憔悴していたし、
嫌々に奈津子さんによって強制的にお花見会に参加させられて、
二人で寂しくお酒を飲み明かした。今思い出すだけでも充分に寒い。


「桜荘に向かって、大声で叫んだでしょ?」
「うっ……当の本人にとっては記憶の彼方に忘却したい事なのに」
「確か、俺が絶対にあいつらを絶望から救ってやるって」
「その場に雪菜が居てくれなかっただけが救いだな。
あいつなら朝を起こす時にマイクで復唱するかもしれんし」
「雪菜ちゃんもその一生モノの名場面を見逃したって言っていたし、
今年の抱負をここで桜荘に向かって叫んでみたら?」

「だが、断る」

 去年みたいな最悪の状況は回避されているし、今年の抱負は正月の時にでも適当に決めておくものである。
それに赤の他人の問題に突っ込むのはどれだけ大変なのかと言うことをこの1年間で思い知ったし。
これ以上何かの問題が発生するというならば、間違いなく舞台から下りる。てか、降板させてくれ。

「今年は去年以上の問題が起きるかもしれないわよ?」
「起きてたまるもんですか」
「あら。そう」
「ちょっと酔いを覚ましてきます」
「酔いの勢いで一般人の人たちを襲ったらダメよ」
「誰が襲うかっての!!」

 と、酔っ払いの絡みから逃げるためにさっさとこの場から離れた。

469:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/22 22:43:21 G208EnIY
 酒の勢いが体全身に回っているせいか、歩くだけで足はふらついていた。
さすがは奈津子さんの秘蔵のコレクション。

ラベルのアルコール度数は偽装表示されているんじゃないのかと言うぐらいにきつい。
夜風に当たるために桜荘の敷地で酔いを覚まそうとするが、心地良い睡魔に襲われつつあった。
その辺にある桜の木に背中を預けると俺は安堵の息を吐いた。

 1年間。
 言葉にするとそんなに時間が流れていないかもしれない。
ただ、体感してきた当事者にとっては忙しい日々と多くの苦難を乗り越えてきた。
特に桜荘のいる住人にとって人類が月に上陸するぐらいに大きな進歩があった。

過去の悲しみを乗り越えて成長した少女の姿がここにはある。
 だが……。
 更紗と刹那は過去にあった悲しみを乗り越えたのだろうか?

 否。
 俺が逃げている限りは一生解決できる問題ではない。
二人の想いを真っ正面に受けとめることができない臆病な自分が真っ向から立ち向かわない限り。ずっと。

 でも、解決する方法が一つだけある。
 早く、新しい人を見つければいい。そうなったら、更紗と刹那は俺から離れて新しい男と幸せにできるだろう。

「それでいいの?」

 刹那。

 少女の呟きが聞こえてた。少なくても、桜荘の住人ではない誰かが女の子の声が。
 その声の位置には純白なワンピースを身に纏った少女が立っていた。

「優柔不断で中途半端な人間のやる事全てがあの子達を傷つけてゆく……」
「アンタは誰さ?」
「私はさくら。人間じゃないわ。桜荘の桜の木の精。わかりやすく例えるなら……悪霊。そう、言った方がわかりやすいわ」
「酒を飲みすぎて何か幻覚を見ているのかな。木の精って、どこのマンガの世界だよ」
「ううん。現実とか架空の世界はどうでもいいんだよ」
「えっ?」

「絶望。その言葉を覚えていて。あなたが無意識に避けていた問題が一気に噴出する。
これは避けられない事態。来るべき、幼馴染との破局にあなたの心は耐えられるかしら?」
「何を言ってやがる」
「美耶子、真穂、雪菜の絶望を解き放ったことだけは誉めてあげる。
でも、あなた自身の暗闇の中を彷徨っているのに、二人を暗闇の中から手を差し伸べることができる」
「絶望とか暗闇とか意味わからんことをグタグタと」
「まあ、仕方ないでしょう。私が桜の木から解放される条件の一つに桜荘の住人の幸せと希望。
対局の状況に陥っているのは偶然ではないわ。桜荘には世界に絶望した人間が集まるようになっている」
「類は友を呼ぶって奴か?」
「わかりやすいことわざをありがとう。それと似たような状況が桜荘にも起きているの。
だから、同じく絶望している更紗と刹那がここにやってきたのよ」
「一体、二人はどうして絶望しているんだ?」

「こ、この鈍感野郎っっ!!!!」
 さくらと名乗った少女はどこぞに隠していたわからないが、棍棒を右手に持ち、
手慣れた動作で俺の頭部に叩きつけた。すでに酒の酔いが体に回っていたので
その衝撃と痛みは俺の心地の良い睡魔を与えることになった。


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