07/09/14 21:31:07 Km18UY3w
あの誘拐事件か一週間が経っていた。遼君が可愛い女の子との再会について頬を思いっ
きり緩ませながら話すのを見て、私はどうしようもなく不愉快な気分になって、そしてそ
んな自分が嫌になったりもした。
黒塗りのベンツは周りに威圧感を振りまきながら進んでいって、校門の前で停止した。
「もしかして……」
私の心に今あるのは、不安。
じゃあ遼君の心の中にあるのは?
「マジかよ……」
――もしそれが期待だったら、
「中原さん、おはようございます!!」
「え!? 綾瀬さん、それウチの制服じゃ」
――そしたら私は、どうすればいいんだろうか?
正直、驚いた。こんなことが起こるなんて思ってもみなかった。
「今日からお世話になります、綾瀬楓です。よろしくおねがいします!!!」
朝のHR、担任の紹介をうけた後、綾瀬さんはそう言って頭を下げた。彼女が教室に入
ってきたときからずっと、教室中がざわめいている。
「すげー、可愛い……」
「ほ、惚れた……」
「あんな娘、初めて見た……」
それくらい、綾瀬さんは可愛いのだ。
指定された席に向かう途中、綾瀬さんは僕の方を見てニッコリ微笑んだ。
…………それだけで、今日一日幸せに過ごせそうだった。