嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その38at EROPARO
嫉妬・三角関係・修羅場系総合SSスレ その38 - 暇つぶし2ch279:名無しさん@ピンキー
07/09/14 20:16:09 322qKFaT
>>278
あなたの痛い過去話をする場所ではないので
他のスレでやってもらえませんか? 正直、スレ以外の
話でスレを荒らすのはよくないと思いますよ

280:名無しさん@ピンキー
07/09/14 20:22:21 HuWT5/Hg
ああ、すまん
たしかにチラシの裏だったな、、、

荒らすつもりはなかった
ちょっと感傷にひたってしまったようだ
忘れてくれ

281:名無しさん@ピンキー
07/09/14 20:36:20 NZPzasmC
>>279
荒らしがなにを偉そうにw

282:名無しさん@ピンキー
07/09/14 20:38:58 a9kyebtD
たった3行の身の上話だ。
聞いてやるぐらいの度量はある。
気にするこたあねえよ。

283:名無しさん@ピンキー
07/09/14 20:56:29 HrTAWQkD
>>282の漢気に惚れた

284:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:19:53 VI938PB7
この変な流れを変えてくれる神が来てくれないかなぁ・・・。

285:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/14 21:29:07 Km18UY3w
皆さん乙です
>>200の続き投下します。

286:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/14 21:30:02 Km18UY3w
「おはよ遼君」

 いつも通りの朝、通学路で私は遼君に声をかけた。

「あ、おはようございます」

 よし、今日は朝から遼君と会えた、いいことありそう。なんて心の中でガッツポーズ。

「今朝も寒いっすね~」

 何だか嬉しそうに遼君は言った。

「どうしたの、そんなにニヤニヤして?」

 彼の機嫌がいいと、私まで何だか嬉しくなる。

「冬は好きなんすよ」

 これまた笑顔。やっぱり私は彼のことが好きなんだ。

「そうなんだ~」

 こんな他愛もない会話をしながら、学校までの坂道を登る。

「あれ?」

 突然遼君が声をあげた。その視線の先には、

「あの車って………」

 いつぞやの黒塗りのベンツが悠々と走っていた。

「また誘拐されちゃうかもね」

 冗談めいた口調で私は言った。

「まさか」

遼君は苦笑いをしながら、それでもあの車が気になっているようだった。

287:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/14 21:31:07 Km18UY3w
あの誘拐事件か一週間が経っていた。遼君が可愛い女の子との再会について頬を思いっ
きり緩ませながら話すのを見て、私はどうしようもなく不愉快な気分になって、そしてそ
んな自分が嫌になったりもした。

 黒塗りのベンツは周りに威圧感を振りまきながら進んでいって、校門の前で停止した。

「もしかして……」

 私の心に今あるのは、不安。
 じゃあ遼君の心の中にあるのは?

「マジかよ……」

 ――もしそれが期待だったら、

「中原さん、おはようございます!!」
「え!? 綾瀬さん、それウチの制服じゃ」

 ――そしたら私は、どうすればいいんだろうか?




 正直、驚いた。こんなことが起こるなんて思ってもみなかった。

「今日からお世話になります、綾瀬楓です。よろしくおねがいします!!!」

 朝のHR、担任の紹介をうけた後、綾瀬さんはそう言って頭を下げた。彼女が教室に入
ってきたときからずっと、教室中がざわめいている。

「すげー、可愛い……」
「ほ、惚れた……」
「あんな娘、初めて見た……」

 それくらい、綾瀬さんは可愛いのだ。

指定された席に向かう途中、綾瀬さんは僕の方を見てニッコリ微笑んだ。
…………それだけで、今日一日幸せに過ごせそうだった。


288:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/14 21:32:48 Km18UY3w



一時間目が終わってからの休み時間、当然クラスメイトたちは綾瀬さんのもとに詰め寄
った。

「どこに住んでんの!?」
「え、えっと……桜ヶ丘のほうに」
「血液型は!?」
「え、Aです」
「誕生日は!?」
「十月さんじゅ」
「俺、高橋っていうの!!! よろしく!!!」
「え、あ、はい、よろし」
「てめえ、抜け駆けしやがって!!!! 俺武藤、よろ」
「お、俺佐藤!!!」
「え? え?」
「田中です!!!!!!!」
「わ、あわわ」

 可愛そうに綾瀬さん、飢えた獣たちに囲まれて。

「は、はう~~~」

 漫画とかだったら混乱で目が渦巻きになっているんだろうなあ、とか呑気に考えながら
僕は席をたって、手を叩きながら群集の中に割って入った。

「はいはい諸君落ち着いて、綾瀬さんも困ってるだろ?」

 みんなが次第に落ち着きを取り戻し始める。もう高校生だしそんなにガキじゃないって
ことだろう。

「はあ、はあ…………中原さん、助かりました。ありがとうございます」

 言うと同時に天使の笑みが発動。生きててよかった~。
 と、僕が和むのとは反対に、級友たちは殺気立っていった。

「何、おまえら知り合いなの?」

 し、しまった。

289:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/14 21:34:18 Km18UY3w

「い、いや、知り合いっつーか何つーか……」

僕は言葉を濁して何とか最悪の事態を回避しようと努める。

「い、いえ、中原さんは知り合いなんかじゃなくて……」
「そうそう知り合いなんかじゃなくて」

 ナイスだ綾瀬さん。

「中原さんは私の……だ、大事な人です」
「そうそう大事な……って、え!?」

 おいおいそんな顔を赤らめながら言ったら、みんなに誤解が……って、え? え?この
娘は何を言ってるんだ!?

 ほらみんなまた殺気立ってるし、

「み、みんなほら落ち着いて、もう高校生なんだから大人に、ね?」

 何を言っても無駄のようだ。目に宿った殺意は消えるどころかどんどん膨らんでいく。

「や、やめろーーーーーーーー!!!!!」

 死刑、確定。




「あ、あの中原さん」

昼休みになった。私は待ってましたというばかりに彼のところへ向かった。

「どうしたの、綾瀬さん?」

 中原さんはにこやかに振り向いて、それからすぐ
「あ………やば」
「え?」

 すぐに気まずそうな顔をした。

「とりあえず外へ!!」

 中原さんは急に私の手を掴んで、教室から逃げ出すように走り出した。

290:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/14 21:36:27 Km18UY3w

「え? え? どうしたんですか?」

 いきなりの出来事に私の頭は上手く動いてくれない。中原さんは走り続ける。

「あ! こら中原!!!」
「抜け駆けは許さねえぞ!!」
「待ちやがれーーー!!!」

 教室中から野太い声が溢れ出すのを、走りながら私は聞いていた。でもそのときの私の
心は、中原さんと繋がれた右手にあって、他の人達のことなんてちっとも考えていなかっ
た。

 胸が、すごくドキドキしていた。

 中原さんが私の手を握っている。

 私の、手を。

 私も中原さんの手をぎゅっと握り返す。

 このままずっと走っていてもいいな、なんてそんなことまで考えていた。




「はあ、はあ……ここまで来れば大丈夫かな……」

 鬼のようなクラスメイトたちから何とか逃げ切って、僕らがやってきた先は屋上だった。

「はあ、はあ、はあ、はあ………すっごく、ドキドキしました」

 綾瀬さんが息を切らしながらいった。

「ゴメンね、急にこんなに走らせちゃって」

 でも、こうでもしないと僕は確実に飢えた餓鬼ども、もとい愉快なクラスメイトたちに、
先ほど同様、ボコボコにされてしまう訳で。

「いえ、そんな………楽しかったですし」

 何故か綾瀬さんは顔を赤くしてモジモジしながら、まるで照れてるみたいにそんなこと
を――

291:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/14 21:38:57 Km18UY3w

「あ」

 やっとその理由に気付いて、僕は綾瀬さんと繋いでいた手を急いで離した。

「そっ、そのっ、ごめん!!!」
「あっ………」

 離された僕の右手を見て、切なそうな声を出す綾瀬さん。そんな綾瀬さんを見て僕も思
わず顔が赤くなってしまったりして、もうどうすればいいか分からない。

「え、ええっと、その………それで綾瀬さん、なんの用だったの?」

 何とか平常心を取り戻して、僕は綾瀬さんに尋ねた。

「あの、お昼ご飯、ご一緒できないかなって思って」

 これまた顔を赤らめながら。全く、こんな可愛い娘にこんな表情でこんな提案をされたら

「うん、もちろんいいよ」

 断れるはずがないだろう。

「本当ですか!? ありがとうございます!!」

 そんでもってこの笑顔が、僕をとんでもなく幸せな気分にしてくれる。

 僕と綾瀬さんはベンチに腰掛ける。流石にもう十二月ということもあって周りには誰も
いない。


292:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/14 21:40:03 Km18UY3w
綾瀬さんは嬉しそうに鼻歌なんかを歌いながらお弁当の包みを開いていく。その様子を
僕はにこやかに見ながら自分の弁当を……

「あ」

 持っていなかった。弁当、というか今朝コンビニで買ったおにぎりは教室に置きっぱなしだ。

「どうしました?」
「いや、昼飯、教室だった」

 取りに戻ろうにも教室に行った途端、僕はこの天国には帰って来られなくなるだろう。
愉快な仲間達の手によって。

「す、すみません。私が急に」
「いや、急に連れ出しちゃったのは俺だからそんな謝んないでよ」

 どっちが悪いとかそういう問題じゃなくて、仕方のないことなのだ。

「昼は次の休み時間にでも食べればいいから、綾瀬さんは気にしないで」

 ね、と付け足して僕は綾瀬さんに言った。

「それじゃあ、私のお弁当少しあげます」

 少し悩んだ後、綾瀬さんはそう言った。

「そんな、綾瀬さんのもらうなんて」
「いいんです。私どうせ食べきれないんだから」

 そう言って、はい、とサンドウィッチを手渡してくれた。なんだかんだ迷った挙句、僕
はそれを受け取って、楽しい昼食の時間を過ごした。




293:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/14 21:43:55 Km18UY3w
以上で投下終了です。
そいでもって、脱字発見したんで訂正です。
>>286
誤:あの誘拐事件か一週間が経っていた。
正:あの誘拐事件から一週間が経っていた。

申し訳ないです。
次回もよろしくお願いします。

294:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/14 21:45:50 Km18UY3w
安価>>286 じゃなくて>>287でした!!
重ね重ね申し訳ないです……。

295:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:46:03 zBiYI6Pc
リアルタイムktkr
作者様GJですっ。

296:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:47:16 NJ0klj84
乙ー。学園ものはこうでないとって感じだね!

297:名無しさん@ピンキー
07/09/14 21:48:23 3Ku+ObsL
GJです
毎回楽しみにしてます

あと皆さん、すいませんでした


298:名無しさん@ピンキー
07/09/14 22:39:25 b5XQgk5K
>>294
キタ━━(゚∀゚)━━ !!!!!
自分がフラグを踏んでると気付いていない遼君が可愛そうだw
続きも期待してますよ~

299:名無しさん@ピンキー
07/09/14 22:43:28 z3a/Yllu
>>298
乙です!二人が対面したらヤバいだろうな・・・w先輩頑張れ。超頑張れ。

300:名無しさん@ピンキー
07/09/14 23:08:39 E01vIY3O
>>255
乙!!GJ!!

301:名無しさん@ピンキー
07/09/14 23:16:02 z3a/Yllu
間違った・・・
>>299>>294宛です

302:名無しさん@ピンキー
07/09/15 13:43:58 aTttRovO
>>294
GJ!!!!
俺この作品ほんとに期待してるから頑張ってくれ!

303:名無しさん@ピンキー
07/09/15 18:02:58 pMyR0yVQ
草まちwktk

304:名無しさん@ピンキー
07/09/16 00:37:00 qZc18RN6
スレ違でスマンが携帯機種変して保管庫行ったら

QUERY_STRINGに y= が重複しており処理できません。この現象が出た場合、再度TOPページwww.sjk.co.jpから入りなおすことによって回避できる場合があります。

しか出ないんだか原因わかりませんか?


305:名無しさん@ピンキー
07/09/16 01:31:46 sEfajgjA
QUERY_STRINGに y=-( ゚д゚)・∵;;

306:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 01:57:31 7CWE98HW
では投下致します



307:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 02:01:16 7CWE98HW
 第11話『悪魔と呼ばれる者』

 幼馴染たちが桜荘にやってきてからもう2週間の月日が経過していた。
更紗も刹那も桜荘に自分の部屋を敷金保証金なしで借りることができた。
ただし、保証人が俺になっているおかげで奈津子さんに『二人が逃げたら未払いの家賃と賠償金を払うのよ』と
軽く脅されてしまった。

まあ、すでに帰る家がない住所不定の二人に部屋を素性が怪しいと判断されて、どの会社も貸してはくれないだろう。
桜荘は敷地が広く空き部屋も余っているというのに入居者は全くいないと言って等しい。
そのような事情があるためか、奈津子さんにとて、更紗と刹那を入居させることは歓迎すべきことであったのだ。
 ただ、困ったことに所持金をここに来るまでに使い果していた更紗と刹那の生活用品やら下着やらなどを揃える必要があった。
俺は仕方なく自分の貯金の半分も引き落として、二人の生活用品を揃えた。
その金額は二人が泣きながら絶対に返すよと真っ赤な誓いを強制的に結ばれた。

  更紗と刹那が桜荘に馴染んできた頃。桜は間もなく枯れ落ちようとしていた。

 憩いの場にて、桜荘の住民の皆と一緒に安曇さん作ってくれた朝食を食べていた時であった。
席を立った奈津子さんが珍しくお酒の一滴も飲まずに皆に語りかけた。

「さてと。桜荘の桜がもうじきに枯れるから、私たちのお花見を今週の休日に開こうと思うんだけど。
誰か都合の悪い人がいるかな?」

 桜荘の管理人兼オーナーである奈津子さんが提案するのは桜荘恒例のお花見会であった。
普段、桜荘の中央の庭にある木は桜が咲く頃になると一般人の方々、町内の皆様、会社のお花見会として場所を貸し出すのである。
奈津子さんは有料で提供しているおかげで桜が咲いている間は収入を得ることとなる。
そのお金は奈津子さんの懐にはいかずに桜荘を維持するために賄われるのだ。
桜の木が枯れ落ちる時期に合わせて、桜荘の住民たちだけのお花見会が開かれる。
  来年も良い桜が咲きますように祈りと感謝の意を込めながら。

「私は大学が休みなので朝からご馳走を作りますからね。楽しみにしてください」
「去年、雪菜は桜荘に住んでいなかったからね。初めてのお花見会だよ。真穂さん。美味しい料理を一杯作ってね」
「任せてくださいよ」
 去年の桜荘のお花見会の頃に雪菜はまだ桜荘に住んでいなかった。
その数日後に雪菜と邂逅するわけなのだが、それはまた別の話だ。

「去年のお花見会はいろんな意味で盛り上がりませんでしたね。
私が参加してなかったのも確かなことですが。一樹さんが場を盛り上げるために衣服の全てを脱いで、歩道に出てくれれば、
面白いことになっていたのに」
「引きこもっていた分際で人を犯罪者というか露出狂に仕上げるつもりか。美耶子……」

「まさか……一樹さんを陥れるために日々努力している女の子にそんな恐ろしい犯罪もどきが出来るわけがありませんよ。
せいぜい、近所の皆様に一樹さんは桜荘に住んでいる女の子を脅迫して凌辱しまくっていることを言い広めているだけですから」

「なお悪いわ!!」
 饒舌な毒舌口調の美耶子のテンションに頭がまだ寝呆けている状態ではさすがに付いていける状態ではない。
せめて、相手をするならコーヒを飲んで完全に目覚めてからだ。

308:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 02:02:32 7CWE98HW
「カズちゃんは凌辱するよりされる方が好きなんだよね?」
「更紗も美耶子という悪魔の囁きに乗るな」
 朝食を食べている更紗がお茶碗を持ちながら、箸を俺の方に差して言っていた。お行儀が悪いぞ。
「お花見会に参加するなら、カレー専門店オレンジの仕事と都合を合わせる必要がありますね」
「大丈夫だよ。刹那。今のあの店は客をライバル店に取られているから。
人手はそんなに必要じゃないし。お花見会に3人とも休めると思うよ」
 更紗と刹那はカレー専門店オレンジのスタッフとして採用された。
朝倉京子という頭のネジの外れた女の登場でうやむやになった件を改めてクソ店長に認めさせた。
単純にイナズマキックで気絶させてから腹話術化したクソ店長の口からサイヨウサイヨウサイヨウと言わせたので
文句なしに二人の採用は決定された。
 ただ、朝倉京子率いるライバル店のブルーは早くて美味しくて安いモットーに駅前で可愛い制服姿をして堂々と広告を配っていた。
その効果があったのか、ブルーには客が大幅に客入りが右肩上がりに好調になり。
逆にオレンジはライバル店に客を取られて、どんどんと寂れて行く一方であった。
「じゃあ、全員参加ということで。今週の休日のためにいろいろと準備するわよ!!」
「おっーーーー!!」
 皆が揃え合うように声を合わせて腕を上げた。桜荘恒例のお花見会は皆にとって楽しみな行事になりつつある。
去年と大きく比べて違うのはその瞳に生気が篭もり、自然と皆が笑顔を浮かべていた。
 ただ、とある二人以外は……。

309:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 02:05:40 7CWE98HW
 労働というのは日本人にとっての義務であり、ある年令に達すると強制的に社会に放り出されるわけだが。
さて、俺の働いている職場のカレーを専門に扱っているお店は客が全くやって来なくなった。
その原因は隣に何の伏線もなくライバル店のブルーが先週に開店されたから。
当初は開店セールが過ぎた頃にはある程度のお客が戻ってくるとお気楽に思っていたが計算が狂ってしまった。
 新しくアルバイトの更紗や刹那を雇ったのにこれでは何の意味もなくなった。

青山次郎、朝倉京子の勝ち誇る高笑いが脳裏に聞こえてくると自然と怒りが沸いてきた。
 とはいえ。

 アルバイトの立場である俺が出来ることは何もない。
唯一、店の最大最悪の危機に対して、皆を引っ張って行くリーダーシップを取るべき存在である店長は。

「ちょうちょ-ちょうちょーちょうちょー。わ~い」
 現実逃避していた。
「ダメだ。こりゃ」
 新たなバイト先か就職先を探した方がいいかもしれない。
 真面目にそう思っている最中に店のドアに飾られている鐘の音が鳴り響いた。
 客が来たと思って、ホールから飛び出してくるとそこには憎きライバル店の
ウエイトレス兼ホールスタッフの朝倉京子の姿がそこに在った。

「あらあら。せっかく、お客として来たんだからさ。もう少し笑顔で迎えてくれないの?」
「客ってか、あんたはただのスパイだろ」
「スパイ? こんな寂れた店にスパイする諜報機関があれば教えて欲しいわ。
とりあえず、私はあなたたちの絶対敗北を見届けるために遅い昼食を食べに来たんだから。
何でもいいから持ってきてくれる?」
「わ、わかりました……」

 一応、お客としてやってきた朝倉京子を邪険して追い出すのは敗北の二文字を認めることだ。
俺は不機嫌な顔を隠して朝倉京子をテーブルに案内する。
 そして、適当なメニューの名前を叫んだ。

「店長っっ!! 貧乳カレーをお願いします!!」

「Oh!! 気合いと私の怨念を込めて作らせて頂くぞよ!!!!」
「ってアンタら……いい度胸じゃない。コロス。コ、コロしてやるわ!!」

 顔を赤面させた朝倉京子が俺の衣服を掴んで、拳を強く握っていた。
ウエイトレスで鍛え上げた腕力は平均年令の女性を僅かに上回ると同時に
欠点を指摘された恥辱の怒りのおかげでそれは更に倍増されていた。
 いざ、殴りかからんとした時に心強い味方が通りすがりとしてやってきた。

「お客さま。水とおしぼりです。
後、カズちゃんの顔に傷の一つでも付けたら。
間違いなく、その場で八つ裂きになりますからね。お気を付けてください。
後、今度から馴々しくカズちゃんと口を聞いたら、問答無用に私がキレます」

「な、何よ。この子は……」
 突如、現われた更紗が黒い殺気を朝倉京子に向けて放っていた。
少しだけ後ろに一歩を下がりたい彼女は誇り高いプライドが邪魔して下がることができない。
表情は少し怯えを含めていたが、傲慢な態度を無理矢理に繕うとしていた。
「さっさと持って来なさいよね!!」
「はいはい」
 黒化した更紗の首っこを猫のように掴んで、俺達はホールに戻って行く。
これ以上、朝倉京子と会話すると更紗が熱いカレーライスを何かの拍子で顔面にぶつけるかもしれない。

それはそれでオレンジの信頼と信用というものを失ってしまうのだ。
 更紗よりも大人しい彼女に料理を運んでもらうしかない。
 俺はその彼女の名前を呼んだ。

310:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 02:08:41 7CWE98HW
「おめぇの出番だ。刹那!!」
「わ、私、頑張って貧乳カレーを運びます」

 おどおどしい態度で刹那は出来上がった貧乳カレーをトレイの上に載せて、貧乳の元へと向かう。
足はびくびくと震えているが、人見知り激しかった刹那はこの仕事をきっかけに対人スキルの方は上がっている。
ただ、不機嫌さを全く隠さない貧乳がホールの方に人を殺せそうな視線を送っているのだ。
その辺にいる見た目だけが格好いいチンピラだったら数秒で睨み負けて、情けない悲鳴を上げて退散するだろう。

「あ、あ、あの貧乳カレーです。冷めない内にどうぞ」
「貧乳言うなぁぁぁぁ!!
 そ・れ・か・ら・。注文を頼んでから、何分待たせるつもりなの? 
私の店じゃあ、この程度のカレーは数分以内に出来上がるわよ」

「ううっ……すみませんですぅ」
 貧乳の罵声に耐え切れずに、半分泣きそうな表情を浮かべた刹那は助けを求めるかのようにホールにいる俺達に視線を向けた。

(刹那ちゃん……ああいう狂暴な人種とか大苦手なんだよね)
(ああ。小さい頃、野良犬に追われたトラウマを思い出すんだろうな)

 と、俺と刹那は親鳥の暖かい目で小鳥の巣立ちを悠長に眺めていた。
又は見捨てたともいう。それから、刹那は朝倉京子の罵声を何分も聞かされるのであった。

 朝倉京子が遅い昼飯をのんびりと食べている時にドアに飾られている鐘の音が鳴り響く。
見知った制服と共に現われたのは毎日顔を合わせている雪菜と……美耶子だった。

「いらしゃいませ。って、雪菜ちゃん。それに美耶子ちゃんがオレンジにやって来るのは私がバイトしてから始めてだよね? だよね?」
「そうですね。桜荘唯一の危険人物の一樹さんがアルバイトしている
お店を荒らしたのは更紗さんがアルバイトする前でしたので、始めてと言えば始めてですね」
「うわっ。同じ空間で暮らしている人たちが自分の職場に来るとなんだか無性にサービスしたくなるよ……」
「雪菜ちゃんと一緒に来る時はいつも店に大赤字無限コンボを喰らわしているのでお気遣いなくですよ」
「まあ、更紗さんも美耶子さんがここに来る意味をおのずとわかってくると思うよ。
雪菜はお兄ちゃんが頑張って労働している姿を見るだけで満足なんだけど。この人は違うからね~」

 毎日のように通ってくる妹分の雪菜は常連客として扱っている為に何の動揺はしなかったが、
美耶子だけはさすがの俺も息を呑む程に驚愕する。
前回の悪夢の出来事を思い出すだけで胃が締め付けられるような痛みに襲われる。多分、神経胃炎だろう。

「じゃあ、二人とも席について。すぐに水とおしぼりを持って行くから」
 更紗が水とおしぼりを取りに行っている間に俺は雪菜と美耶子が着いた席に向かっていた。
今回はどのような意図で来たのか確かめるためである。

「いらしゃいませ。学校帰りの買い喰いは校則とかで禁止されていないのか?」
「あはははあははっ。何を怯えているんですか。一樹さん。
今日は雪菜ちゃんと一緒にカレーというものを食べに来たんですよ。
それにお客を接待する態度じゃあありませんよ」
「では。ご注文の方をどうぞ」

「雪菜ちゃんは何にする?」
「雪菜は当然、極・甘・カレーをお願いします」
「だったら……私は店長が推薦する100倍カレー、30分以内に完食すると賞金一万円が貰えちゃうものをお願いしますね」
「は、は、はい。わかりました」
 悪魔は意味ありげに微笑する。



それはきっと……これから起きる戦いの狼煙なんだろうということで次回に続く。

311:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 02:10:34 7CWE98HW
以上で投下終了です。
さすがにこの時間帯の投稿は眠たくてたまりませんね。
というわけで寝ます。

次回を楽しみに待ってください。
それでは。

312:名無しさん@ピンキー
07/09/16 04:04:45 FsV9FcoI
GJ!!!

313:名無しさん@ピンキー
07/09/16 04:13:43 hw5DSb5a
GJでした!!!!!

314:名無しさん@ピンキー
07/09/16 08:01:31 1P99776x
枯れちゃうんですか?

315:「草」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/16 11:25:14 AUXVMioS
投下します。

316:「草」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/16 11:25:48 AUXVMioS
+ + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + + +



「――以上だ。リザニア王の印は既に押されてある。後はお前の認可を貰うだけだが」
「……以上、って久景様」

 旧ジウ、改築を終えて今や完全にヒラサカ城とその名を変えた、城内の王室にて。私からウォーレ
ーンでのハーマインとの取引の報告と、同盟の誓約証を受け取ったユエが、いつもの余裕を失った表
情で信じられないという風にこちらを窺う。

「御言葉ですが…一体、何をお考えなのですか?」

 その呟きに、浮いた感情は全く無い。ただ単純に、自分の前に座っている人間の言っている事が理
解出来ない、納得が行かないといった、不信感を露わにした瞳。
 理由は、言うまでも無くキルキア大陸統一同盟について。

 ”リザニア国、ヒラサカ国間での物資流通、及び軍事面での相互支援。並びに、両国の領土侵略の
禁止。尚、期限は現在暫定的に、キルキア大陸において両国以外の国家が全て無くなるまでとする”

 とどのつまりが、手を取り合って仲良く大陸を支配しましょう、と言う内容。
 他の国を残さず滅ぼした後に互いをどうするか、それについては何も記されてはいない。改めて敵
対するも、同盟関係を続けるも本人達の考え一つとなっているが、

「こんな、みすみす敵に塩を送る様な同盟。こちらへ攻め入れる程に、リザニアの情勢が予想よりも
出来上がっているならばこそ、一時的な和睦としてこの案も認められます。ですが、これはその逆。
放っておけば自ずと崩れてくれるかもしれない強敵の手助けをするなど、わたくしには正気とは思え
ません」
「………」
「焦らずとも、我々は既に正面から他国へ侵略を行えるだけの力を有しております。多少なり時間を
掛けさえすれば、たとえリザニア級の国家がこの先あったとして、然したる障害にならないだけの軍
へ成長する見込みが十分あるのです。
 だと言うのに……久景様は、リザニアへと再び降るおつもりなのですか?」

 もう一度、真剣な眼差しで見つめてくる。大局の流れを決して見誤らぬその目が、今この状態で同
盟を結んだ場合のヒラサカ、ひいては私の行く末を雄弁に語っていた。
 自分の仕える主として信頼しているからこそ、内心の戸惑いをあえて隠そうとはせず、そう口にし
たユエ。そんな部下としての彼女は、やはり心強い存在と言えるだろう。

「…列島の頃は、そこまで後の事を考える余裕も無かった。何せあの頃のあそこはここより余程切迫
していた上、私も口にこそしなかったが、自分が世界で一番優れているなどと言う壮大な勘違いをし
ていたからな」
「久景様?」
「折角の機会だ、お前にははっきり聞いて置いて欲しい」

 机を挟んで真向かいに居るユエに、私も視線を合わせる。
 遍く人民の頂点に立つ者は唯一でなければならない。人の上に立つからには、頂点は相応しい器を
持った者でなければならない。


317:「草」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/16 11:26:22 AUXVMioS
「私は支配者になりたいと思っている。何故だかわかるか?」
「そうした願望が自分にはあるからだと、以前に直接お聞きしました」

 突然の問い掛けに対して、もう随分前になされただろう会話の内容を忘れずに取り出すユエ。確か
に、たまたま機嫌が良かった時にそんな事を話した記憶がある。

「だが、理由はそれだけでは無い。侵略したい、征服したいと思うからには、そこに私個人の理想へ
変えようとする意思がある。付け加えて、私は完璧主義者だ」

 理想水準を満たせないものは自分で矯正し、納得の出来る秩序と完成度を求める。周囲との関係や
人材の教育もまた然り。
 それは、例えばこれまで習得した数々の技術であったり。リザニア所属時における、本来征服とは
縁の遠い筈の様々な行動であったり。――あるいは、列島や大陸の支配であったり。
 無秩序の中にも秩序を見出す。不完全なものがあれば穴埋めをする。満足の行く結果を出そうとあ
らゆる努力を惜しまず費やし、そうして常に成果を上げ続けた。

「エイブル将軍が私を必要としていた様に、私の中でのキルキアの治世にしても、エイブル将軍と、
リザニア国という優れた素材が必要となっている」

 全力で私と戦い勝利した人物なのだ。求める水準に見合わぬ筈も無い。
 さりとて、支配欲求のもう半分。完全に理屈ではない感情の部分が、人に従うのを決して良しとし
ないのもまた揺るがぬ事実。

 そこだけが、未だ割り切れないでいる。

 完璧さを求める為に征服をする。征服をする為に完璧さを求める。
 どちらかが元となっているのではない。この二つが並立している事こそが、私が大陸制覇を目指す
原動力。キルキア全土を制圧していく事も。その後にある支配も。全ては目的であり、手段なのだ。

「リザニアは他の国よりも優れている。軍事面ではなく、単純に国が豊かという意味でだ。王は良き
政治を行えるだけの器量と人望を併せ持ち、文官連中さえもう少しまともな人材が増えれば文句は無
いだろう。
 正直、あの国による支配であれば、私も特に不満は無い」
「! それは……ですが、ならばなぜ貴方様は、わたくしにヒラサカを立ち上げさせたのですか」

 書状を机に置き、ユエがそう申し立てる。
 不満が無いならそのままリザニアに居れば良い。言ってくれさえすれば、自分達もわざわざこんな
まどろっこしい事はせず、素直にリザニア内における私の軍団としてあったのに。言葉の端から、そ
うした意味合いがありありと読み取れた。
 私の視線はこちらを見るユエを外れ、再び机の上に置かれた紙へと移る。

「その通りだ。実際その同盟を結んでしまえば、ヒラサカとリザニアは事実上の合併をする様なもの
。最初からそうしておけば良かったと言うお前の考えももっともだろう。だから、言うなればこれは
問題の先送りという事になる」

 無論、本当に合わさったわけではない。例えその間に互いが何らかの危機にあったとしても、そこ
を好機と見限り裏切ってしまえばそれまで。
 これだけは断言出来るが、私やハーマインの様な人間は自らの利から離れれば時期を計って必ず相
手を切る。手段は場合により様々だが、その目的で動いた時には、相手はまず間違いなく逃れられな
い状況にある筈だろう。信頼と同じだけの警戒によって、薄皮一枚の協力関係は成り立つ。

 ……が、それでもまだ甘い。

318:「草」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/16 11:26:56 AUXVMioS
「最終的には、あの将軍に全て譲るおつもりなのですか? 大陸東半分を御自分で担当して。この同
盟は、貴方様の決心を付ける為の準備期間だと…」
「それが半分…いや、四分の一くらいか。残りは逆に、リザニアを上手く利用して、直接の衝突を避
けながらヒラサカへと」
「出来るのですか?」

 欺瞞を見透かさんと細められた瞳。

「久景様。貴方様はこんな手段でリザニアを奪えると、本当に御思いなのですか?」
「急ぐなら、この方法以外を取るわけには行かない」

 ならば何故、急ごうとするのですか?
 口に出さずとも、彼女の頭には既に答えが浮かんでいただろう。

「久景様は、変わられました。絡め手を使う事はあっても、昔はもっと強引に全てを支配して来まし
たのに」
「自覚している」

 中途半端。ここに来て、リザニアに対する私の態度はまさしくその一言に尽きる。
 認めてはいても、付こうとはしない。奪うつもりはあるが、拘り過ぎ。

「わたくしは、何があっても貴方様に付き従います」

 そう言ったユエが、誓約証へとペンを走らせた。これで、今ここにヒラサカとリザニアの同盟は締
結された事になる。一人の男の甘さによって。

「いつか決断する日が来た時、どの様に振舞ってもわたくしは構いません」

 徐に立ち上がり、私の背後へと回る。書状を手に持ったまま、ユエは後ろからそっとこちらの頭を
抱き寄せた。暖かな感触が伝わってくるそれは、私が彼女をあやすときに、膝枕の次に良く使ってい
た方法。

「ああ」

 未だに迷っている。決定的な一打を放つ事を。

「済まない、迷惑を掛ける」
「大丈夫です。貴方様の御傍に居られればそれで」

 征服者として、私はおそらく劣化しているのだ。

319:「草」 ◆yNwN3e7UGA
07/09/16 11:28:16 AUXVMioS
投下終了です。
本当は前回分と合わせて出したかったのですが、ペースが本来のものに
戻ってしまったため短く二つに分かれてしまいました。申し訳ない。

320:名無しさん@ピンキー
07/09/16 11:41:49 vtkv1QV8
一番槍GJ!!

321:名無しさん@ピンキー
07/09/16 12:11:49 q9JAVc5W
これは良いヘタレ
GJ!

322:名無しさん@ピンキー
07/09/16 12:19:55 76CXuacZ
GJ!!
完璧主義者かつ迷いのサンドロ……
どうでもいいけど暴走するかもなリザニア内の女達とかの事は計算に入ってるんだろうか?
いやそれより早くもっと修羅場要員増えないかな~、伏線は沢山出てるので期待が止まらなくて。

323:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:23:07 p/fKM0TD
では投下致します

324:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:25:09 p/fKM0TD

 第12話『オレンジの危機』
 
美耶子たちが注文したメニューをホールの方に伝えるため暗澹たる足取りで向かっていた。
当然であろう。これから始まるのはカレー専門店『オレンジ』の最大最悪の危機。
俺の時給以上の労力と一般人には縁がない常識を疑うような騒動に巻き込まれることとなる。
平穏な生活を望む俺としては何事もないカレー店を経営して、今日一日を無事に終えたいところなんですが……。
 厨房を覗くとまたアホなことをやっている店長の姿を見て、俺は凄まじい程にその大きな尻を蹴りを入れてやりたい気分になるが、
今は戦力を失うが惜しいので。腹の奥底から戦いの狼煙を上げるオーダーを読み上げた。

「オーダーが入ります……。極甘カレーが一つ。そして、100倍カレーが一つ。以上です」
「100倍カレーだって……!!」
「店長。悪魔がデビルの奴が来たんですよ」
「面白い。久々に腕が鳴るぜ……ただ、カレーを作る日々に飽き飽きしていたぞよ。
 貴様らは今この時を持って、悪魔を倒す剣として生まれ変わるぞよ!! 
 クソったれな平穏をぶち壊し、今度こそ我々はデビルに勝つ!! 
奴に奪われた一五万円をこの手に取り戻す!! 貴様らはその覚悟があるか!!」

「カレー!! カレー!! カレー!! カレー!!」
「カレー!! カレー!! カレー!! カレー!!」
「カレー!! カレー!! カレー!! カレー!!」

「野郎ども!! この戦いの目的は何だ!!」
「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ!! デビルの内臓を食い散らせ!!」
「ヤンマー!! ヤンマー!! ヤンマー!! ヤンマー!!」
「マンボー!! マンボー!! マンボー!! マンボー!!」

「OK! 行くぞ!!」
 店長の号令で俺や更紗や刹那が持ち場に着く。カレーが出来上がるまで待機するだけだが、
厨房にはかつてのない熱気と気合いだけが込められていた。
「アルバイトの研修で意味のわからない叫び声の練習はこのためなの?」
 更紗がぽつりと言う。
「デビルを打ち倒すための儀式みたいなもんらしい」
 だが、俺は知っている。そんなアホみたいな掛け声とは関係なしにデビルである美耶子には15連敗しているという現実。
特に意味はないんだろうなと……。

325:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:28:06 p/fKM0TD
 出来上がったカレーを刹那が美耶子と雪菜のテーブルの元に運ぶ頃には客席はギャラリーで埋まってしまっていた。
恐らく、隣のライバル店ブルーから流れてしまった客層だと思うが、
たった一人の小娘が100倍カレーに挑戦するだけなのに何でこんなに騒動しくなるのであろうか。
「極・甘・カレーと100倍カレーをお持ち致しました。
100倍カレーに挑戦するお客さまへ。
もし、そのカレーを食べて精神が発狂したり、ショックで突然死しても当店は一切責任はありません。
この契約書にサインしてから、私が合図してから30分以内に食べれたら賞金の一万をお渡しいたします。
もし、制限時間内に食べれなかった場合は罰金100万を頂くことになるので出来るだけ制限時間内にお召くださいませ」

 刹那が差し出された契約書に美耶子が躊躇なくサインをした。
100倍カレーに挑戦した勇者達は限りなくいたのだが……誰も罰金の100万円を払う人間はいなかった。
大抵は生死の境界線を彷徨い、五体不満足で日常生活を送ることになるからだ。
 美耶子はたった一人だけ人類が誰もが成し遂げることができなかったオレンジ名物100倍カレーを制した時には英雄と崇められた。
小遣い稼ぎのために100倍カレーに挑戦するだけで人々は恐れ、敬い、その偉業をこの目で見るために自然と集まってくるのだ。

「今日も軽く伝説を達成しましょうか……」
「美耶子さん。負けても勝ってもお兄ちゃんの奢りなんだから。そんなに気負うわなくても」
「あははっ……そうですね。でも、一樹さんの困った顔が見たいので。ここはいつものように完全勝利を目指しますよ」
「伝説に挑戦する前にどれだけ辛いのか私が一口だけ味見していいですか?」
「いいですよ。刹那さん 」
「よし。辛いと言っても人が食べれるものじゃないはずです」
 刹那は100倍カレーをスプーンで口に含んでから数秒後ぐらい経ってから。
その頬は真っ赤に染まって口から炎を吐いた。

「刹那ちゃん?」
 厨房の片隅で大人しく様子を見ていた更紗が刹那の変貌に思わず駆け出しそうになるが、俺は彼女の細い腕を掴んで制止させる。

「もう、刹那は俺が知っている刹那じゃないんだ。
常人が100倍カレーを食べると一般人なんて
一瞬で精神がドス黒い何かに汚染させられるんだ。もう、遅い」

「そんなことって……」
 焦点が合わない虚ろな瞳で刹那は100倍カレーを食べたことによる副作用で口から火炎放射をあちこち吐きまくっていた。
他の客の髪の毛に燃え移ったりするが、そんなことはどうでもいい。
 刹那は店の中央を陣取り、周囲の呼び掛けるように叫んだ。

「カレー専門店にいるオレンジのお客さま皆様。
 お願いがあります。死んで頂けないでしょうか?
 自殺して欲しかったのですけど。駄目ですか?
 ではオレンジの従業員方々、皆殺しにしてください。
 虐殺です」

「するかぁぁぁっっっ!!」
 俺と更紗が速攻で刹那の頭をハリセンでどついた。
「お客さま……どうも、申し訳ありませんでした」
 適当に周囲のお客に頭を下げて、俺と更紗で発狂した刹那を厨房の所にまで連行して行った。
あの100倍カレーを食べた刹那は虚ろな瞳で天井を見上げながら炎を吐く。
俺達が出来ることはその口に水を流すことしかできない。なんて無力なんだ俺達は。

326:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:30:26 p/fKM0TD
「なんなのよ。この店は……」
 朝倉京子が目を丸くしてこの状況を理解できずに驚愕してぼそりと呟いていた。

「うふふふっ……。今日のカレーは美味しいですね。えへへっへっ……」
「美耶子さん。今日も完全に完食コ-スだね。雪菜なら100倍カレーって聞いただけでも卒倒するというのに」
「雪菜ちゃんももう子供じゃないんだから、極甘味ばかり食べないで辛い物を食べて、
今度は一緒に100倍カレーに挑戦するべきです」
「雪菜、遠慮するよ……」
 あの刹那を発狂させた100倍カレーのほとんどを美耶子は平らげていた。
皿にはほんの少しだけ残っており、今回も完食コースなのは間違いなかった。
「何故だ。ワタシが徹夜で考え込んだ対デビル用100倍カレー改がこんなにあっさりと突破されるなんて。
悪夢を見ているのだろうかカズキ」

「クソ店長がどういうスパイスを作ったのかは知らないが。
あんたのポケットマネーから1万円のお札が飛び出すのは確定事項だな」
「カズキのお給料から差し引いてもいいか?」
「あっはははは。余裕ではみがき殺すことになるかもしれないが。それでもいいなら」
「だって、赤字続きのお店を更に傾けるなんて残酷なことを出来るわけがない」
「いや、更紗と刹那と俺の給料は毎月未来永劫支払うことができるのか? クソ店長」
「あきらめやがれですぅ」

 少し色気のあるクソ店長の言葉に静かな怒りと殺意が沸いてくる。
業務用のカレー鍋(中身アリ)を頭にぶちかけても、一体どこの誰が責められようか? 

学生時代なら少年法というものがあったのでやりたい放題にできるわけだが、
社会人ならここは大人しく我慢しておく必要がある。
 さてと、視点を美耶子の方に戻すと彼女の中心に盛大な拍手と声援が店内を包み込んだ。

どうやら、あの100倍カレーを見事に完食したようである。

「さすがはデビル……あの人外カレーを16回も完食するとは……。

この街に新たな歴史が刻まれた。デビル・ミヤコに栄光あれーーー!!」

「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
 オレンジ店内はデビルコールに一色されていた。
それは店内にいる客だけではなく、外にいる見物客たちも大声で美耶子を讃えるように大声でデビルの名前を叫んでいる。
「ど、どうも。応援ありがとう!! 今度も私はきっと頑張って完食してみせます!!」

「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
「デビル・デビル・デビル・デビル」
 一番の最高の盛り上がりに客達は喉の奥底から吐き出される声は鼓膜が破れそうなに情熱が篭もっていた。
「ど、ど、どうして。カレー一つでこんなに盛り上がれるのよ……」
 耳を抑えながら、カレーをひたすら寂しく食べていた朝倉京子の呟きは……。
まあ、誰にも聞こえないだろうな。

327:桜荘にようこそ ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:32:35 p/fKM0TD
 美耶子が100倍カレーを完食してからのオレンジ店は正に大繁盛であった。
招き猫的存在の美耶子が閉店するまで雪菜と一緒に居てくれたおかげで彼女を拝もうとする客で後が絶えなかった。
おかげで隣のブルーが開店した以来でウチの売り上げはいつもの数倍以上の利益を得ることとなったのだ。
 カレー専門店オレンジの救世主的存在になった美耶子を労わるために閉店した店で祝賀会が開かれることとなった。
と言っても、残り物のカレーを皆で食べるだけなのだか。

「今日はもうカレーなんて見たくないんだけど」
「刹那ちゃん。100倍カレー改のことは記憶の彼方に忘れてさ、
これはカズちゃんが愛情を込めて作ったカレーライスだと思えば。きっと、大丈夫だよ」
「う、うん。そうだよね。カズ君が作ったカレーならきっと食べれるはず」
「刹那さん、よっぽどあのカレーのせいでカレー自体にトラウマが……」
「一樹さんの唾液入りのカレーだと私は食べれないんですけどね」

 と、女性陣は呑気に談笑しながらカレーを食べていた。
俺はホールの方で皿を洗っているわけだが、その量は気が遠くなるような膨大な量であった。
こんな小さな店に最新型の食器洗い機ははなく、節約の為に手洗いで今まで過ごしてきたわけだが。

この量を一人で洗うとなると、家に帰れるのは日付が変わる頃であろうか。
クソ店長は明日の仕込みをするので手伝うことができないし、刹那と更紗に手伝わせるのは俺のプライドが許さない。
というわけで一人で皿を洗っているわけだが、全てを終わらせるにはまだまだ遠い。

 人が丁寧にカレーの汚れが拭き取っている最中にクソ店長が鼻歌を歌いながら、こっちへとやって来た。
何か嫌味とか言えば、瞬時に俺の蹴りが奴の尻へ飛ぶであろう。

「よう。カズキ」
「何ですか。クソ店長」
「あの子はこの1年間で随分と元気になったぞよ」
「美耶子のことか?」
「最初に100倍カレーを無理矢理に挑戦させた頃と比べると今は人を引き寄せるようないい笑顔をしてる」
「うん? そうか。俺は小悪魔が何かを企んでいる笑顔のように見えるんだが」
「カズキの目は節穴か? 引きこもりだったミヤコが最初にここに来た時に比べるとな」
「んなことはわかってる」
 美耶子が外の世界に羽撃くきっかけはたった小さな思いやりであり、笑顔を取り戻したのは桜荘の皆の生活のおかげである。
一応、美耶子の件に関してはクソ店長もそれなりに貢献しているので、何かと気にかけているのであろう。

「あんたのカレーのおかげでもあるけどな」
 俺は人生で生まれて初めて、このクソ店長を誉めた。
お互い顔を見合わせながら苦笑すると自分の仕事に戻っていた。

328:トライデント ◆J7GMgIOEyA
07/09/16 17:36:29 p/fKM0TD
以上で投下終了です。

329:名無しさん@ピンキー
07/09/16 19:45:06 7N/7EH5s
まーたトライデント氏か、もういいよ

330:名無しさん@ピンキー
07/09/16 19:51:03 iAx/O3Zj
ツマンネ

331:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:06:44 YDtBB3/J
>>328
投下GJ!!

332:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:12:07 fRmFicEO
GJ!!ヤンマーマンボー吹いたwwww

333:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:28:07 e54PHnev
トライデント氏の作品はどうでもいいから
さっさと草を投下してくれないか?
いい加減に古参が威張って投下するのはやめて欲しいよね
引き際を考えてくれ

334:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:35:21 oc6hGqQv
嫉妬スレの終焉の時がやってきたな
神もいないし、スレの住人も愛想がついていなくなった
管理人の阿修羅に関しては3ヶ月も更新をサボったナマケモノ

もう、いいだろ。こんなスレは荒らしに食われて終了でいいよね?

335:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:51:23 7DmuslIR
だが断る!!!

336:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:55:56 1Qj/lTPQ
転帰予報の続きがすっごく気になる、早く投下ができるように頑張ってください!!

337:名無しさん@ピンキー
07/09/16 20:56:27 oc6hGqQv
自作自演で盛り上がるなよw

338:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:13:03 /GJ2C4i9
このスレ、さぁいよいよ来るぜ!ってところで筆を置いちゃう作品も結構あるからなー。
雨の音も、もう一人のヒロインが出てくる直前で止まってるし、
転帰予報も姉妹が覚醒したところで止まってるんだよな。
俺ぁ待ってますよ!

339:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:13:18 oc6hGqQv
私にGJと言わせたいなら
ツンデレ嫉妬少女を連れて来い
あのパルフェやらき☆すた以上のツインテールのツンデレだ

そして、最高のツンデレ海原雄山を超えることが出来たら
GJと叫ぼう

340:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:25:56 rxQs0bXg
話し切って悪いが、
ひぐらしのレナがヤンデレって思ってる奴多すぎないか?というか、詩音とかまで…ただの痛い子じゃん。すぐヤンデレな小説があると、テラひぐらしとかいうやついるけど…ヤンデレが好きな奴としてはなんか嫌なんだよな…。


過去に話されてると思うが言わせてくれ。スルーしておK

341:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:36:22 pUBVmJAf
>>340
とりあえずお前はヤンデレスレに帰れ

342:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:50:25 0JDOEqnF
愛あってこその狂気なのに、愛のない狂気なんて基地外以外の何者でもない
けど、このスレは嫉妬がメインだから、>>1さえ読めばヤンデレブームに流されてるだけのやつもスレ違いの発言はあまりしないだろ
最初、ろくに知らないのに流行に便乗する業者がいるから、そういうのが出てくるかもしれん。だが、ヤンデレがツンデレみたいに流行れば、ヤンデレの副産物として修羅場も流行するかもしれないし、そうなれば未完作品の作者が帰ってきてくれるかもしれない

343:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:56:14 Z0AZ+aIf
ヤンデレの流行の起爆剤は孝之と誠にかかっている

344:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:06:52 dmV8Bqk9
う、うろたえるなっ。嫉妬スレ住人はうろたえないっ!!

というか二三ヶ月ぐらいのんびり待とうぜ?ちょっとせっかち過ぎだよみんな。

345:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:09:10 zqmexN6M
とりあえずヤンデレ云々の話はヤンデレスレでやろうぜ?
嫉妬・修羅場とヤンデレは似て非なるものだと思うし

346:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:15:22 q9JAVc5W
これは良い住人点呼
ノシ


347:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:34:00 U0c2e/XM
ノシ

のんびり待ってるんで作者の皆様頑張って!!

348:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:43:31 TmDAAG58
とりあえず前スレ埋めようぜ

349:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:59:56 PtxtNgMv
前スレまだ埋まってなかったのかw

350:名無しさん@ピンキー
07/09/16 23:36:52 svVVP9n0
>>339
ツンデレ(のみ)はスレ違いだと承知しているがこれだけは言わせろ

最強のツンデレはオーガ

351:名無しさん@ピンキー
07/09/16 23:58:40 nXNkw26D
貴様はッ!!
中国拳法を嘗めたッ!!

352:名無しさん@ピンキー
07/09/17 00:33:58 HbeDmgAe
ツンデレキャラの嫉妬はOKじゃないのか_?
作品にするのは難しそうだな

ちゃんとツンとデレをやらないとツンデレにならないし
更に嫉妬と修羅場をやらなきゃね・・・・。

353:名無しさん@ピンキー
07/09/17 00:54:01 Wwek8nlD
このスレ、ツンデレっぽいのも結構いたんじゃなかったかな。特に幼馴染系で。
厳密にはツンではなくデレ隠しって状態か。
いきなり好きです付き合ってください、とはっきり言ってくる状態から始めると、
主人公をド外道にする以外の道を塞がれがちだろうし。

354:名無しさん@ピンキー
07/09/17 01:05:01 UbOy+I4Z
まぁ、ここはあくまで嫉妬・三角関係・修羅場っていうシチュエーションのスレだからな
キャラがツンデレだろうが素直クールだろうが素直シュールだろうが
三つのどれかのシチュエーションに当てはまっていれば何でもいいと思う、個人的には
まぁ、行き過ぎてる場合には単体のスレでやったほうがいいとは思うが

355:名無しさん@ピンキー
07/09/17 01:23:57 slqTC318
紗恵さんなんかおもくそツンヤンデレじゃないか

356:名無しさん@ピンキー
07/09/17 12:57:28 RtRON2RN
嫉妬と修羅場があればなんでもおいしく頂きますとも

357:名無しさん@ピンキー
07/09/17 15:49:46 n9s9MnX3
世界一嫉妬深いってのはいったいどんな人間なんだろうな
「男君が呼吸しているときに口の中に入っていく酸素が憎い!」

…くらいの思考の持ち主なのか

358:名無しさん@ピンキー
07/09/17 17:37:37 JWt8h2p3
>>357
そこまで行くと狂気だな
まぁ俺はおいしく頂くが、嫉妬かといわれると微妙かも (´・ω・`)

>>353
外道以外にも朴念仁だとか主人公が受け体質でもいけそうだぜ
受け体質だと主人公が萌えキャラになったりするが|ω・`)

359:名無しさん@ピンキー
07/09/17 17:56:42 jHQs/wbB
>>357
もはやそこまで逝くと、何かの経絡秘孔を突かれたとしか思えないw
想いが満たされないとボン!

(((( ;゚Д゚)))

360:名無しさん@ピンキー
07/09/17 18:12:29 UbOy+I4Z
せめて「男君の愛用してる○○(物)が憎い!」ぐらいにしておこうぜ
あれ?大して変わらない気が・・・

361:名無しさん@ピンキー
07/09/17 20:43:45 9/9p1TLD
いつになったら、本スレが復活するの?

362:↓みない方が良いです;;すみません。
07/09/17 21:19:57 tleaoYnA
URLリンク(pink.gazo-ch.net)

363:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:24:07 Tr/lqLpJ
なんかね、このスレの怖いとこは2日ぐらい見て無かっただけで大変なことになるのよね。

364:名無しさん@ピンキー
07/09/17 21:47:01 kgP1yiRu
とりあえずsageろ

365:名無しさん@ピンキー
07/09/17 23:58:11 9/9p1TLD
泥棒猫が始末されると三味線になるらしいが

366:名無しさん@ピンキー
07/09/18 00:26:29 C0lioQ2e
>>304ですが未だに原因がわかりません

スレチですが誰かわかりませんか?

携帯から失礼します

367:名無しさん@ピンキー
07/09/18 00:33:06 kyNOWJ8P
ロザライン:
私、昨日の夜は寝ずにずっと貴方を待っていたのよ?
ロザライン:
ほら、見なさい。私の目、真っ赤でしょう。昨日から姉
さん一睡もしてないのよ?
ロザライン:
瞼の下にはおっきな隈が出来ちゃって、朝仕事に行くと
きそれを隠すために厚化粧をしなくちゃいけなくなって、
ロザライン:
職場にいったらいったでああロザライン警視もとうとう
嫁き遅れを気にする年になったんだなハハハと無能な部
下たちに陰口を叩かれて
ロザライン
聞こえてんのよこの陰険野郎と逆上したせいで書記のオ
バサン連中がにやにやしてだいたいアンタこそ売れ残り
じゃないのと名前の後ろに嬢をつけて皮肉ったら
ロザライン:
取っ組み合いの喧嘩になって回りの馬鹿どもはそれを止
めもせずはやし立てて婆さんの癖に意外と力が強くて三
人がかりで間接を極められ痛みに喘いで参った参ったと
ロザライン:
苦渋をなめる結果になりそれが上司の目にとまって呼び
出されて見逃す代わりに性的嫌がらせをしようとしてき
たけど股間に蹴りいれてやって
ロザライン:
またその件でもっとえらい人に呼び出されて君減給ねと
事務的に言い渡された後ろに股間に氷嚢を当てた上司が
いたから睨み付けてやったら悲鳴を上げて逃げていって
ロザライン:
私の顔がそんなに恐いのかと化粧直しにいったお手洗い
の鏡をみるとさっき拭った時に口紅が滲んで般若もかく
わという顔で部署に戻ってもいらいらして
ロザライン:
仕事が手につかなくてあの俗物どもがまたロザライン嬢
のヒステリーかやれやれだぜなんて寝言をほざきやがる
ものだからババアどもがにやにやして
ロザライン:
散々な仕事をがんばって定時で終わらせて家に帰ってき
ても誰もいなくて昨日の夕食だったスープを見たら悲し
くなってきてそれも悪くなってたから捨てるはめになり
ロザライン:
そのうち涙があふれてきて聞いてるのヨセフ職場で受け
た屈辱も家で一人暮れていた悲しみもみんなみんなヨセ
フ貴方のためなのよわかる?
ロザライン:
それを貴方は謝りもせず必死に言い訳を考えているみた
いでなにか驚いたとおもったら急にだらしない顔になっ
て本当に聞いているのヨセフ
ロザライン:
どうせこのあいだのルーなんとかっていう売女のことで
も考えていたんでしょうけどみんな姉さんにはお見通し
なのよ


368:名無しさん@ピンキー
07/09/18 00:35:05 kyNOWJ8P
ロザライン:
昔の貴方はもっと素直で姉さんのいうことをよくきくい
い子だったのに今の弟ときたらちゃんと私の目を見なさ
いヨセフ
ロザライン
だいたい貴方はいつもそうね口ばかり達者になってそれ
で利口になったつもりなの?今の貴方をみたらジュリア
ン小父さんだってきっと草葉の陰で泣いてるでしょうね
ロザライン:
それもみんなあのフレデリックとかいういかがわしい男
と付き合った影響なのかしらまったく外でどんな悪さを
覚えてくるのやら姉さん心配で心配で夜も眠れないわ
ロザライン:
貴方の交友関係には口出しはしませんけどねもっと分別
をもって行動してくれなきゃいけないのよ分別よ分別わ
かる?
ロザライン
何よその目は男友達は良いとしても女に関しては私にも
口出しする権利はあるわ女ってものはとてもとても恐い
ものなのよといつも言ってるじゃない
ロザライン:
ああいった身持ちの軽い輩はヨセフみたいに純粋無垢な
若い燕をかどわかそうと必死なのよだって貴方の顔は女
の子みたいに可愛いですものね
ロザライン:
それで貴方が節操なく笑顔を振りまくものだから自分に
気があるのだと勘違いした馬鹿な雌犬どもが薄汚い尻尾
を振って恥も外聞のなく無様に媚びへつらうの
ロザライン:
そんな貴方の身と貞操を守るために私がどれだけ苦労し
たか酒場なんて浮浪者と娼婦の溜まり場へ行くことはラ
イオンの群れの中へ子ウサギを放すことに等しいわよ
ロザライン:
なのに貴方ときたら私がどれだけ泣いて懇願しても言う
ことなんか聞きやしないいいえお水はいらないわヨセフ
はそこに座って姉さんの話をちゃんと聞きなさい
ロザライン:
とにかく私が言いたいことはただ一つなのよ……
ロザライン:
私を一人にしないで!どこにもいかないで!
ロザライン:
何もいわずにいなくなったりしないと約束して!
ロザライン:
なぜかって?愛してるからに決まっているじゃない!
ロザライン:
そうよ愛しているのよ!弟に対する家族愛なんて陳腐な
ものじゃなくて、一人の男性としてあなたを愛してるの
よ!
ロザライン:
世界のなによりだれよりどんなことよりもヨセフが好き
なの!大好きなの!あなたさえいれば私はなにもいらな
いの!
ロザライン:
ヨセフが望むなら私はなんだってやってあげる!国王暗
殺だって眉一つ動かさずやってのけるから!

369:名無しさん@ピンキー
07/09/18 00:37:29 kyNOWJ8P
ロザライン:
あなたも私を愛して!姉としてでも、ロザラインという
恋人としてでもいい、何でもいいから私を愛してちょう
だい!
ロザライン:
だからもう、一人にしないで……
ロザライン:
むかしみたいに、私の傍からいなくなったりしないで…

ロザライン:
私だけを見て!他の女なんかみないで!他の女のところ
なんかいかないで!
ロザライン:
なにがあってもずっとわたしといっしょにいてください







某フリーRPG、主人公の姉の台詞からコピペ
ほぼ原文ママ
どうみてもキモ姉です本当に(ry

370:名無しさん@ピンキー
07/09/18 01:12:49 5FLmMN9h
そこまで書き込んでおいて「某」とかぼかすんじゃねえ
いや、教えてください

371:名無しさん@ピンキー
07/09/18 01:30:56 kyNOWJ8P
>>370
URLリンク(park.geocities.jp)
ここのゲサロ4ってところにある「リュンコイスの魔王」って作品
RPGツクール製だから色々準備しないといけないので注意


キモ姉の他にヤンデレ化するヒロインが出てくる
ここの住人なら知ってると思ったけど
やっぱマイナーなのかこれ

372:名無しさん@ピンキー
07/09/18 02:04:22 MwUjg0ya
自分の中でだけ常識

373:名無しさん@ピンキー
07/09/18 02:54:52 Zdh6+YPc
                       _,.-‐"':" ̄~゙'ヽ、       __
      _,---‐" ̄\         /          ``ー‐-、   ノ   \
    /        ヽ      ;"                ) /      \
   /   ぐ .し   |      /                |ノ/        \
  /    ら .ら     |     |                 )/.|   ・  オ   |
  |    .い な    |     |          ,;';;,,    /ノ |   ・   レ   |
  |     ・  い    |    |::::.................:::::::::;;,'^;、::::::'''..,,_;、丿 |   ・   に   |
  |     ・  作    |    /:::::::::::::::::::::::::::;"゙, /゙~゙`''::;'゙;     |  ・   だ.  |
  |    あ  品    |    `、;;::::::::::::::::;/ ),;'   :.'.,、   |  ・   っ  |
  |    る       |  ,へノ   `'''''"´   .:;     .:::_ヽ  |  ・   て   |
  |    ・        Y   \       .::;     ::::ゝ    .|  ・         |
  |    ・       ∧    \     ::::::、   .:;`     |         |
  |    ・       |ヽ丶    \;;  :::;;;;::..,,、. ::i       |          |
  |    ・       | `       \;;;;/    `゙"       \

374:名無しさん@ピンキー
07/09/18 03:35:20 ebXJVIJ9
ってか、キャラの初期位置が設定されてない、ってでてきてできないんだけど…

375:名無しさん@ピンキー
07/09/18 04:37:24 hjpU5zgf
俺もよくやり方がわからんな

376:名無しさん@ピンキー
07/09/18 05:36:54 vMV5mKGX
RPGと言えば懐かしのエストポリス伝記1のルフィアがなかなかに良かった。

377:名無しさん@ピンキー
07/09/18 19:45:25 W38s6/2T
なんかネットをテーマとした嫉妬を見たい
俺には文才が無いから無理だお

378:名無しさん@ピンキー
07/09/18 20:34:44 KZxwxSmo
>>357
その娘最終的には
「男君が埋められる土が憎い」とか、
「男君の骨が収められる骨壺が(ry」とか言い出しそう。
行き着く先はカニバリズム。

379:名無しさん@ピンキー
07/09/18 20:40:44 pCAFlMdM
ここってエロパロ板だよな?
誰もエロ書いてないみたいだがこのスレじゃ御法度なのか?

380:名無しさん@ピンキー
07/09/18 20:56:30 seiIWJ28
>>379
まずは保管庫に行って、ここにどんなSSが投下されたのか確認する事をお勧めする

381:名無しさん@ピンキー
07/09/18 20:57:11 JWVxXnz8
別にそんな事はないです。嫉妬、修羅場がメインならどっちでも。
優先順位の問題。

382:名無しさん@ピンキー
07/09/18 21:02:04 KPsrrQLi
エロありなしとかにこだわり始めるスレは大抵廃れる

383:名無しさん@ピンキー
07/09/18 21:14:24 2lQsVaVG
エロシーンと修羅場は直接からめにくいしな
ワンパターンになる


384:名無しさん@ピンキー
07/09/18 21:17:48 7nbcJKUG
>>379
修羅場で抜ける俺には関係のない話だ

385:名無しさん@ピンキー
07/09/18 21:36:26 Bpf2v0qf
359
女装したケンシロウみたいな女が、
神谷明の声で357の台詞を
言ってる所を想像した。

386:名無しさん@ピンキー
07/09/19 00:27:39 HPCpQSSH
エロってなにさ!
世の中にはネクロフィリアだっているんなら。
少女が嫉妬にもだえる様や、凶暴な純愛ってだけおったつ変態紳士だっているんだぜ。

387:名無しさん@ピンキー
07/09/19 05:47:58 r6RySyRL
変態じゃないよ変態という名の紳士だよ

388:名無しさん@ピンキー
07/09/19 05:52:15 4I9XavuC
新参ものですがよろしく御願いします。
投下させていただきます。

389:蒼天の夢 01 ◇4I9XavuC
07/09/19 05:56:09 4I9XavuC
 洞窟の中は所々から入り込んでくる陽光でほんのり明るかった。
 光と一緒に入ってくる歓声から推測するに今日の客入りも上々だ。
 そんな普段、気にもしないことを気にするあたり、今の自分の余裕のなさが伺えた。
「はぁ……」
 俺はため息をつきながら真新しい鞍を見つめた。
 まだ一度も使われていない鞍からは渋い革の匂いがしていた。どんな生き物のための鞍でも最初はこの匂いがする。
 そして、使われてゆくごとにどんどん変わってゆく。
 馬の鞍は汗臭くなる。
 ラクダの鞍は硫黄臭くなるそうだ。
 だが、ワイバーンの鞍は錆びた鉄のような臭いに変わる。
 なぜそういう臭いになるのかは分からない。
 どうなるにせよ、臭いが変わる頃には自分はもうこの鞍を使ってないだろう。そう自嘲気味に思いながら目の前に横たわる大きな水色の胴体に鞍を載せた。
 一瞬、胴体がくすぐったいように微かに震えた。
 長く、大きな胴体だ。なめらかな曲線を描き、そこからはトカゲのような鋭利な首と頭、力強い二本の足、鞭のような尾、そして蝙蝠のような、しかし蝙蝠のそれよりも美しく優雅な翼が生えていた。
ワイバーンと呼ばれる魔獣である。
 その姿は二本足なのを除けばドラゴンに非常に似ていた。
 しかし、ワイバーンはドラゴンより二周りも小さく炎も吐かず、知能も低い。
体も筋肉の塊のようなドラゴンと比べるととてつもなく細く、学者たちからはドラゴンの退化した姿などと言われている。
俺は鞍を固定する四本のベルトを締め、鞍を掴んで何回か揺らしてみた。
 びくともしない。
 鞍を確認し終えると、床においてあった兜をかぶり、しっかりと紐を結ぶ。
「おい、ジース早くしろ!」
「今いく」
 洞窟にぽっかり開いた大きな出口。そこにいた誘導員にこれ以上せかされないよう、手綱を水色のワイバーンにくわえさせ出口へと俺の“相棒”を引いていった。
 外に出た瞬間、新たな歓声が沸き起こる。
 快晴の下、断崖絶壁に建てられたいくつもの観客席からは色鮮やかな旗が振られ、応援歌が響いていた。
 俺たちはちょうど観客席から見下ろされる場所にある崖から突き出たプラットフォームに出ていた。
「そりゃ負け役がいないとレースにならないしな……」
 俺はそう呟きながらワイバーンに騎乗した。
 そして飛行中落ちないためのベルトを自分の体と鞍に固定すると、力いっぱい叫んだ。
「アズ―ル!」
 名を呼ぶと相棒は今まで折りたたんでいた水色の翼を広げた。
 再び歓声が上がる。
 貧弱とされるワイバーンたちはたった一つだけ、遠い親戚のドラゴンを凌駕する力を有していた。
 それは空を飛ぶことである。
 天を舞う時だけはワイバーンたちは他の生き物の追従を許さぬ美しさと強さを発揮する。
 鈍重なドラゴンより速く、綺麗なだけのペガサスより鋭く彼らは飛ぶ。
 そんなワイバーンの空中機動を一番よく見られるのがクリフ・スキッドと呼ばれる競技である。
 主に山や絶壁沿いのコースを飛び、一番速いワイバーンを競うという単純だが危険なレースだ。毎年多くの人間とワイバーンが勝利を得るため空へ舞い上がり、散ってゆくスポーツ。
 それでも参加しようと志す者は後を絶たず、ここ数年クリフ・スキッドの人気は衰えるところを知らない。
 俺もそうやって魅せられた連中の一人だ。
 アズールは二、三回大きく羽ばたくと、二本の足に力をこめた。準備が整った、の合図だ。
 俺は大きく息を吸い込むと相棒のわき腹を蹴った。
そして今日もスキッダーと呼ばれるワイバーンの騎手として、蒼い空にわが身を相棒と共に委ねた。


390:蒼天の夢 01 ◇4I9XavuC
07/09/19 05:57:59 4I9XavuC
 狭い店内には時計の音しかしなかった。
 既に十一時を回っているのに客が一人もこない。
 けどそれも当然だ。
 ここ、グレイ・クリフの住人なら今のわたしみたいに店番でもしてなければ土曜は絶対、街をうろついていたりしない。
 そんなことをするのはせいぜい郊外の塔に住んでいるあの忌々しいエルフ魔女ぐらい。
 土曜はみな、街の名の由来となる山、グレイ・クリフに上りクリフ・スキッドを観るのが普通だ。何せクリフ・スキッドはこの街の主要事業であり、それがなかったらそもそもこの土地に街を興そうなんて誰も考えなかっただろう。
 かく言うわたしも行きたくてうずうずしている。
 特に今日のレースはどうしても見たい。
 今日はわたしの憧れるスキッダーが出場しているからだ。
 彼の名はジース・グリン。
 グレイ・クリフの地元スキッダーの一人だ。今のところ大した成績はあげていないけど彼は間違いなく近い将来、王都のリーグ戦に出られるほどの大物スキッダーになるに違いない。
 わたしはそう確信している。
 彼がみたい。彼の飛ぶ雄姿がみたい。彼の勝利する瞬間がみたい。
 そんな気持ちだけがどんどん大きくなってゆく。
 そう思うと、いてもたってもいられなくなった。
 はっと周りを見回す。わたし以外にこの店には誰もいない。店主のおばさんもどうせクリフ・スキッドを観にいっているはず。
 一度決断すると行動は早かった。
 わたしはカウンターの引き出しから羽ペンを取り出すと、すばやく紙に―

 “急用ができたのですこし店をあけます  ミリア”

 と書き残し、店の扉に『閉店』と書かれた札を下げグレイ・クリフ山へと走り出した。
 
 わたしがグレイ・クリフ山の山頂についた時にはレースがはじまる直前だった。
 さすがは普段使わない山頂と麓を往復する馬車に乗っただけのことはある。賃金は高いけど自分で山道を登るよりは遥かにはやい。
 わたしは急いでチケットを買い、それから竜券を買った。
 もちろん賭けるのはジースさんだ。
「ミリアちゃん、毎回言うのもなんだがそいつに賭けたって金をどぶに捨てるようなもんだよ」
 竜券を握りしめるわたしを見て売り場のおじさんが呆れた声でいった。
「いいんです!それにお金のために買ってるわけじゃないですし」
 そう、わたしは彼のレースを観にくるたびジースさんに賭けている。だけど別にお金のためじゃない。
「そりゃ毎回10ギード程度じゃ万が一勝っても大した金にゃならないが……」
 売り場のおじさんは首をかしげながら言う。
「いや、俺が言うのもなんだけどそれだったら貯めたほうがいいじゃないか?おまえさん以外にジースに賭けてるやつなんてほとんどいないぞ?」
「これは私のこだわりなんです。ほっといてください」
 わたしがジースさんに賭けているのは本当にただのこだわり。わたしなりの彼への想いを表現する方法にすぎない。それにわたし以外に彼に賭けている人がいないのなら好都合だ。
 正直、彼にはわたし以外賭けてほしくない。
 わたしだけでいい。
 彼のファンはわたし一人でいいのだ。
 すると突然、山頂に角笛の雄雄しい音が響きレース開始を告げていた。
「あ!レースはじまっちゃうからおじさんまたね!」
 わたしはおじさんの返事も待たずに急いで観客席へと向かった。
 遅れてきたので観客席はすでに満席だった。
 座れないのは残念だけど、ジースさんが観られるのなら立っているのも苦じゃない。
 それにこの観客席の位置は自分にとってある意味、特等席だ。
 本当の特等席はスタート地点やコーナー付近。それも貴族などお金持ち専用の席だ。わたしみたいな平民はたいてい山がまっすぐ横に伸びているところ、つまり直線コース近くの席しかとれない。
 だけど直線はスキッダーたちがワイバーンの高度を上げる場面なので観客たちのすぐ目の前を通過する場所だ。つまり一番ジースさんをよく見られるのがこの直線沿いにつくられた席なのだ。
 わたしは適当な場所に移動するとワイバーンたちがやってくるだろう方角に目を向けた。
 彼の姿をこの目に焼きつけるため。


391:名無しさん@ピンキー
07/09/19 06:00:35 4I9XavuC
投下終了です
まだ続きます。失礼します

392:名無しさん@ピンキー
07/09/19 06:27:07 sLiuDBYj
とりあえずsageませう

393:名無しさん@ピンキー
07/09/19 06:27:45 03ZKAL6i
一番ヤリGJ!
ファンタジー物は大好きなので続きwktkで待ってます

394:名無しさん@ピンキー
07/09/19 07:32:31 LrN81z1i
sageとトリップ知らないのかな?
2ちゃんの使い方を見れば分かるから、まずそちらを読むことオススメ。

395:名無しさん@ピンキー
07/09/19 07:45:41 4I9XavuC
ご指摘ありがとうございます
今後注意します

396:蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:18:26 4I9XavuC
再び投下します
今朝はありがとうございました

397:蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:20:55 4I9XavuC
 競技が終わり、陽が沈んでも絶壁をくり抜いてできたワイバーン用の馬場は活気に満ちていた。
 ワイバーンの鳴き声。走り回る従業員やスキッダーたち。
 たとえレースが終わってもやることは山ほどある。
 ワイバーンに餌をやったり装備を片付けたりとむしろレース中より忙しい。
 下男を雇えるスキッダーは楽だ。レースが終わればそのまま帰れるのだから。
 だが俺のようなスポンサーつきでようやく参加できている奴にそんな余裕はない。
 ワイバーンの餌や装備の手入れなど、全て自分でやらなければならない。
 とにかくため息が出そうになるのを堪え、俺は備品のチェックに専念しようとした。
 忙しい時は自分の不甲斐なさをあまり考えずに済む。
 ちなみにレースの結果は10人中6位。
 決してよくない結果だがいつものことだった。
「よう、ジース!お疲れ」
 そこへ別のスキッダーが声をかけてきた。
 短く刈られた茶髪に悪戯っぽい笑みが特徴的な青年。
 名はアザラスと言い、同じグレイ・クリフのスキッダーの一人。
 今日のレースでは俺の次、つまり7位だった騎手だ。
「お疲れ……」
 俺は適当に返事をすると再び雑務に戻った。
 アザラスは気にした様子もなく、話続ける。
「このあと友達と飲みにいくんだけどどうだ?」
「おまえ、ワイバーンの世話は終わったのか?」
 俺は呆れ声で返した。
 こいつは負けた割にのん気だなと思った。
「ああ、終わったよ。それよりどうだ?」
「いや、遠慮しておく」
「ん、そうか。んじゃ俺たちは縁者の園亭にいるから、気が変わったらきてくれ」
 そう言い残してアザラスは兜を肩にぶら下げながら去っていった。
 声が大きいためか途中途中、他のスキッダーにも声を掛けているのが聞こえてくる。
 俺はどうにもあの同世代の同僚が苦手だった。気に食わないと言ってもいい。
 一見、愛想がよくて気の良い男だが、ヘラヘラした感じが嫌だった。
 いつも王都リーグに出るだのでかいことを口にしながら、成績は中の下。それでいて、負けてもまるで勝ったかのように明るく振舞っている。
 他の皆が必死になって頑張っている中、どうにも彼の態度は好きになれない。
 貴族だから恐らく勝てなくとも大丈夫なのだろう。
 クリフ・スキッドはとにかくお金のかかる競技だ。誰もがすぐにはじめられるものではない。
 だから多くのスキッダーは貴族だ。もちろん全員という訳ではない。
 俺のように地元の商会の支援を受けてやっている平民のスキッダーもいる。
 但しワイバーンを含め、装備はすべてスポンサーのものであり、成績が悪ければ他のスキッダーと取って代われることもある。
 今回送られてきた新しい鞍だって贈り物ではなく、成績不振の続く俺に喝を入れるためのものだろう。
 このまま結果を残せなかった場合、最悪―
「あー!やめだ!やめ!」
 物事がうまくいかないとどんどん悪い方向に考えてしまう。
 俺の悪い癖だ。
 とにかく来週だ。来週のレースで今日以上の成績を残せばいいだけだ。
 気分を切り替え、俺はとにかく仕事を終わらせることに専念した。
 そして全ての後片付けが終わったあと、アズールの頭を一撫でしてから山を下りた。


398:蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:22:11 4I9XavuC
 麓の街につく頃には夜も更けていた。
 しかしそれでも街の方にはまだまだ活気が残っている。
 グレイ・クリフの街は主にクリフ・スキッドで収入を得ている街だ。
 国土の八割以上が山岳地帯のここアルス王国では珍しいことではない。
 元々資源の少ない土地。他に売り物にできるものは傭兵などの人的資源ぐらいしかない。
 よって観光やクリフ・スキッド関係の事業は特に力が入れられる。
 グレイ・クリフも例にもれず、夜になっても街の宿や酒場の明かりは灯ったままだ。
 夕飯がまだなので立ち寄ろうとも考えたが今日は騒がしい中で食事できる気分ではない。
 帰って適当に果物でもかじるか。
 俺は賑やかな繁華街を抜け、住宅地のはずれにある我が家へとまっすぐ帰った。
「ただいま」
 家の扉を開けるとまだ明かりがついていたことに驚いたがすぐにその理由が分かった。
「おうボウズ。帰ったか」
 そう言いながら熱いフライパン片手に出迎えたのが専業主夫の親父。
 エプロンをつけているものの、体格が大きいためどう見ても料理中、というより刀剣でも鍛えていそうな鍛冶屋にしか見えない。
「おかえりなさい。どうせ夕飯まででしょ?」
 見透かしたように言うのは食卓の上で何かを調合していた我が家の大黒柱にして街の薬師である母。
 そして―
「お久しぶり」
 部屋に響き渡るような澄んだ声。
 古典的な緑色のとんがり帽子に腰まで届く銀色の髪。
 美しいという言葉さえ陳腐に聞こえてしまうほどの端正な顔立ち。
 そして出自を語る細長く尖った耳。
「ひさしぶり、エリシアさん」
 母の隣には微笑を浮かべたエルフの魔術師、エリシアさんが座っていた。

「え?じゃあ俺のこと待っててくれたわけじゃないの?」
 遅い夕飯のあと、みなで食卓を囲んで紅茶をすすっていた。
 ちなみに俺の期待と反して遅い夕飯は何も俺のためではなかったらしい。
「当たり前でしょ。別にレースに勝ったわけでもなし」
「今日はエリシアさんが来てくれたからな。料理には少しこだわってみたんだが、少し遅くなった。おまえはタイミングよく帰ってきただけだ」
 相変わらず息子に対してデリカシーのない両親である。
「お疲れ様ジース君」
 対してエリシアさんの優しい労いはまさに神の贈り物だ。
「ありがとう。そういえばエリシアさんここ数年見かけなかったけど何処かに行ってたの?」
「秘密」
 そう言って人差し指を唇にあてるエリシアさん。
 相変わらず謎の多い女性だ。
 だがこの謎多きエルフの魔術師とはもう何年も家族そろって付き合いがある。
 母は薬師ということもあり、山で採れる様々な植物に詳しかった。
 エリシアさんはそういった植物を母から買うため、何年も前からちょくちょく我が家に訪れていた。
 普通ならお得意様で終わるところだが、母と妙に気が合ったらしく商売以外でも会うようになったとか。
 そんなこんなで俺も幼かった頃にはよく遊んでもらった記憶がある。
 他にも彼女は俺の家庭教師だったことさえあった。
 たいてい平民の子供は10歳前後になると街の神殿で読み書きを覚える。だが当時、神殿への寄付金という名の教育費をケチった親父はエリシアさんに俺の読み書きを教えさせた。
 結果、俺は平民ながら貴族の子弟たちのように、エリシアさんという専属の家庭教師がついていた。
 おかげで共通語に加えエルフ語まで読めるようになった。
 しばらく談笑していると帰る時間なのか、エリシアさんがすっと立ち上がった。
「あら、もうこんな時間。ごめんなさいね、引き止めちゃって」
 母親はすまなそうに言い、親父は俺に顎で扉の方を指した。
「言われなくともちゃんと送っていくさ」
 どうせ言うだろうと思い、俺はすぐさま家の倉庫からたいまつをとりにいった。
「ごちそうさまでした。ごきげんよう」
 エリシアさんは両親と礼を交わすとゆったりと扉を出て行った。
 俺もたいまつに火を灯し、あとに続く。


399:蒼天の夢 02  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:23:25 4I9XavuC
 治安が比較的良好なグレイ・クリフでも夜道は完全に安全というわけではない。
 もっとも『グレイ・クリフの魔女』ことエリシアさんに手を出す輩はいないだろう。
 魔女というのは彼女がこの街に越してきた時ついたあだ名らしい。
 なんでもグレイ・クリフに現れてからたった一日で彼女は街の郊外に五階建ての塔を興した。そのことに驚愕した街の住民つけた名だ。
 だから本当は見送りなんて必要ない。
 例え襲われたって賊程度じゃ簡単に返り討ちだろう。
 そんなことを考えながら隣を歩いていると、彼女の方から声をかけてきた。
「かわったのね」
「え?」
 いつもの淡白なしゃべり方だったので一瞬何のことかと分からなかった。
「あ、ああ。会うのは確か三年ぶりだったからね」
「人間ってすぐかわる」
「さすがにエルフほど長寿じゃないから―」
「そうじゃない」
 彼女は歩みを止めると、俺の眼を見た。
 確かにここ三年で俺の目線はようやくエリシアさんを見下ろす形になった。
 もうすぐ19歳にもなる俺にしてみれば当然なのだが、エルフの彼女からしてみれば大きな変化なのだろう。
「私の髪、触らなくなった」
 彼女は肩から銀の川のように流れる髪を差し出しながら言った。
 口元はわずかに笑っているようにも見える。
「あ、いや……」
 何のことかようやく分かった途端、急に恥ずかしくなった。
「触ってもいいのに……」
 小さい頃から俺にはちょっと変わった癖があった。女性の長い髪を見るとどうしても触りたくなるのだ。特にエリシアさんの綺麗な銀髪は耐え難い魅力を放っているので、よく研ぐように弄っていた記憶がある。
 母からはよく『恥ずかしいからやめなさい』とか『女性の髪を勝手に触るもんじゃない』など叱られてはいた。
 それでもエリシアさん本人からは止められなかったこともあり、気づくとすっかり癖として定着していた。
「さすがにこの歳でそれはマズいかな、と」
 最近になってようやく自分がどれだけ恥ずかしいことをやっていたかに気づいた。
 以来、件のこと思い出すと崖から飛び降りたくなる。
「どうして?」
「どうしてって……それはやっぱり女性の髪を触るのは無礼だし、その」
「でもジース君いつも触ってた」
「それは俺も小さかったし……」
「大きくなったら触っちゃいけないの?」
「大人になったら流石に……」
「ジース君まだ子供」
 変わらず微かな笑みを見せながらエリシアさんはそっと俺の頭を撫でた。
「これでもクリフ・スキッダーなんだけど」
 エルフの彼女から見れば俺なんてまだまだ子供なのは分かる。
 でも19歳にもなって子供の時みたいに頭を撫でられるのは納得がいかない。
「子供」
 彼女はそれでも撫で続けた。
 しかも段々と撫でられるのが気持ちなってくるから危険だ。
「そりゃ今は未熟かもしれないけど、俺だっていつかは―痛ッ!」
 ちょっと不機嫌な顔してみた途端、痛みが走った。
 よく見ると頭を撫でていた手には俺の黒い髪の毛が数本握られていた。
「ふふふ、生意気」
「何するんだよ!」
 頭を押さえる俺をよそに彼女はむしりとった髪の毛を懐から出したビンに入れていた。
「これはお土産」
「は?」
「あとは大丈夫。ありがとう」
 そう言うとエリシアさんはさっさと闇の中に消えていった。
 あまりにも突発的なことだったので一瞬唖然としてしまった。
 追いかけようと思ったが、気づくとたいまつに照らされた小さな空間と、夜空の中でもその存在を誇示する魔女の塔しか見えなかった。


400:蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA
07/09/19 19:24:56 4I9XavuC
投下終了です。
失礼します。

401:名無しさん@ピンキー
07/09/19 20:08:36 fk8Qfl+x
>>400
GJ!!!!
母から買っている植物と、ジースの髪の毛・・・。エリシアさん、一体何を・・・((;゚Д゚)ガクガクブルブル
続きを楽しみに待ってます。

402:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:12:34 W2mx5abe
朝ktkrかと思ってたら夜も来ててビックリしましたぃ。
作者様GJです。

403:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:28:34 sLiuDBYj
筆が早くて感心です。GJ。

404:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:35:37 oDve00IZ
>>400
一日に二度も投下するなよアホ

405:名無しさん@ピンキー
07/09/19 21:52:38 fxhlNnKU
>>400
ふぁんたじぃはええですのう。gj

406:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:00:12 EbKS8aA8
>>400
GJ!!エルフとかイイよね。

407:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:11:19 Irv0zJ1b
>>404
お前は二度と書き込むなよ、な!

408:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:23:46 oDve00IZ
>>407
アンカーすらまともに打てない人に言われたくないな^^;

409:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:28:51 QuR930p/
>407
スルースキルをそろそろ覚えろ

410:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:31:17 ZnpQv3J8
髪触るっていいよね、なんかいい

411:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:34:25 jFlTyVI9
>>407
何故粘着に釣られるのか
何故スルースキルを身につけないのか

412:名無しさん@ピンキー
07/09/19 22:49:57 LDi/NWlo
>>410
お前は俺か

413:名無しさん@ピンキー
07/09/19 23:22:44 WhJ7UuUe
>>400
面白いです。続き楽しみにしてます。

414:名無しさん@ピンキー
07/09/19 23:53:53 qdPmrU4e
リクームやグルドの過去話もよろ

415:名無しさん@ピンキー
07/09/19 23:59:44 STcDgHO8
>>414
それなんてギニュー特選鯛

416:名無しさん@ピンキー
07/09/20 00:27:37 5P4sgfkJ
>>371で紹介されていた「リュンコイスの魔王」をDLしてプレイしている。



まだ途中ではあるが……うん、良い修羅場。

>>366>>369の台詞を見たときには震えたね。
これからの展開が楽しみなので、続きのプレイに没頭します。


417:名無しさん@ピンキー
07/09/20 10:33:14 gbjy4ktp
ツクール2000のランタイムインストしてゲームダウンロードしたのだが
起動アイコンがみつからない・・・

418:名無しさん@ピンキー
07/09/20 14:03:39 ToW4xhgp
exeは共通だから、他所でダウソしる

419:名無しさん@ピンキー
07/09/20 23:27:03 Qg2ZmyZT
>>371

「リュンコイスの魔王」、このスレ的にはかなりオススメ。
純な乙女がキモ姉への対抗心と主人公への激しい愛情から、ヤンデレヒロインにクラスチェンジするところなんか最高。
 ……ラストは色々な意味で衝撃的。

420:名無しさん@ピンキー
07/09/21 03:53:15 6a1UONp1
プレイできてない奴も多そうだけどな

421:名無しさん@ピンキー
07/09/21 05:19:22 gIKo5rS7
できないやつは厨ばかり
ってか、やり方がわからないやつっているの?

422:名無しさん@ピンキー
07/09/21 06:08:17 UWyFIJ23
台詞回しがくどすぎて3時間ほどプレイしてダウンした

423:名無しさん@ピンキー
07/09/21 06:09:08 /9J/QbNe
おまいら今日の「暴れん坊将軍」の再放送は必見ですよ。 たとえ三次元でも。

424:a
07/09/21 17:17:29 jbOB5A4f
2007/08/10 17:10:12 oo
私は中3です。3月10日、卒業式でした。
そして、卒業式が終わっていえに帰って、友達と遊びに行っていました。
そしたら!!彼氏に見つかって(?)彼氏の家に急遽行く事になりました。
そして行き成り彼氏は私の胸を触り始めて、ベッドにたおれました。
そしたら制服のスカートをめくり上げて、パンツの中に手を入れて、
チンコの中に指を入れて・・・「クチュクチュクチュ」って。わざといやらしい音を立てて・・・。
そして彼氏はこういいました。「服脱いで」と。
私はビックリしたので「え?」と聞き返しました。私はもちろんエッチはやったことはあります。その彼氏と。ほかの人ともやった事はありますが・・・(藁
そして、彼氏は「オレ、脱いでる所とか写メとるの好きだから」っていいました。
私は納得して、自分でぬぎはじめました。
そして彼氏は私の体で遊び始めました。チンコに指を入れてクチュクチュいやらしい音を出したり、胸をもみもみしたり、なめたり。
そして彼氏は写メもとりまくってました。私のチンコの穴。胸。全体など。
そして彼氏は我慢できなくなったらしく、こういいました。
「オレのズボン脱がせて」と。私は喜んで脱がしました。
ズボンのチャックを開けて、ズボンを下ろして、ガラパンを下ろして。
そしたら彼氏のもうすでに大きくなっているあそこが出てきました。
そして私は彼氏をベッドに寝かし、私はうえにのぼって彼氏のあそこと私のチンコを押さえつけるようにしながら写メをとりました。
とても気持ちよかったです。
この写メを見たい人はこのスレを8箇所に張ってください。
そしたら[               ]←ここにアドレスが出てきます。
それをクリックすると、彼がとった写メすべてのってます。
私がとった写メも、動画も載せてます。
動画はわかりにくいようにしています。
「☆」をクリックすると動画がみれます。
このスレを1箇所にも張らなかった人は、不幸がおこります。
大好きな人が一年以上学校に来なかったり。
嫌いな人があなたの席の隣になったり。
親戚が亡くなったり。
けど本当に写メ、動画ありますので8ヶ所にはってみてください!



425:名無しさん@ピンキー
07/09/21 18:00:18 9w7WPnPx
>>423
暴れん坊将軍には何があったんだぜ?

426:名無しさん@ピンキー
07/09/21 18:14:41 IW6gG1s+
>>419
これは良い嫉妬だな
姉がハンケチを噛み締めながら尾行をしているシーンなどおっきしてしまったよ

あとでかい方のラスボスの最強技がエグ過ぎる
全滅の繰り返しで撃破に3時間かかったorz

427:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:05:25 bs+rZOTd
皆さん乙です。
>>292の続き投下します。

428:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:06:37 bs+rZOTd
 ――おかしい。

 昼休みが始まってもう三十分が経つのに、遼君はまだやってこない。いつもなら昼休み
の連絡放送と昼ごはんの為に、毎日放送室にやってくるのに……。無論私が放送室にいる
のは遼君と昼ごはんを食べるためだけど。

 ぐ~~。

 お腹が間抜けな音を立てて鳴る。遼君が来るまで私も昼ごはんは我慢していた。一体何
があったのだろう? 先生に用事でも頼まれたのだろうか?

「遅いよ、遼君……」

 思わずそう呟いてしまった。一人でいる放送室は静かで寒くて、そして寂しかった。

「はあ………」

 何だか、嫌な予感がする。

 教室にでも見に行ってみようか? でもそんなことしたら遼君に変に思われるだろう
か? でもやっぱり心配だし、行ったほうがいいかな。どういう理由にすればいいだろう?

『放送室に来なかったから心配になって』

 これじゃあ好きだってことがバレバレだ。

『連絡放送サボりやがって何やってんだコラァ!!』

 うん、これはいい。でもいちいちこんなことで教室まで行ったら嫌われるだろうか? ウ
ザイ先輩だなんて思われたら一貫の終わりだ。ああもうどうすればいいんだろう? とにか
く会いたいよ……会いたいよ遼君!!

「ええいもう、行ってしまえ!!!」

 とりあえず教室にいるかどうかだけ見に行ってみよう、それからどうするかはその時考
えればいい!!

「突撃!!」

429:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:08:45 bs+rZOTd

「突撃!!」

 私が放送室を出ようとノブに手をかけたときだった。

「あれ?」

 勝手にドアのノブは回って扉が開かれた。バランスを崩して私は前に倒れる。

「……おわっ、と。大丈夫っすか先輩?」

 バランスを崩した私が倒れこんだその先は、

「りょ、遼君……」

 誰よりも待ち望んだ彼の胸の中で、私はしばらくそのままで居たくなった。でも、その
幸せはやっぱりそんなに長くは続かないようで、

「よいしょっと」

 遼君は私の肩を掴んで、私の体勢を立て直した。

「怪我はないっすか?」
「……うん」

 やさしく笑う遼君。私はどうしようもない幸福感に包まれる。

 ―――だけど、

「し、失礼します」

 ―――だけどその瞬間、私の幸せは音を立てて崩れ去った。








430:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:09:58 bs+rZOTd
「んじゃあ入って」

 僕は綾瀬さんを中に招き入れた。

「し、失礼しま~す」

 綾瀬さんがおずおずと中に入ってきた。少し緊張したその表情も、ああ、ため息が出そ
うになるくらい可愛い。

「……………誰?」

 先輩はポカンとした様子で呟いた。

「あ、こちら今日転校してきた綾瀬楓さんです。学校の案内してたとこなんすよ」
「よ、よろしくお願いします」

 ぺこりと頭を下げる綾瀬さん。

「……………先輩?」

 未だにただ立ち尽くす先輩に、心配になって僕は声をかけた。

「……え? あ、ゴメンゴメンちょっとぼーっとしちゃって……」

 申し訳なさそうに笑った後、先輩は「よろしくね」といつものような口調で言った。

 だけど、その昼休みの先輩の様子はどこかおかしかった。






431:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:12:18 bs+rZOTd
 一瞬で分かった、とでも言うべきだろうか。

 あの人は、放送室にいたあの先輩は、確実に中原さんのことが好きだ。

 昼休みが終わって午後の授業が始まっても、私はそのことを思い出していた。

 最初に中原さんと喋っていたときのあの表情、同じく私が入ってきた時のそれ、そして
その後の様子。

『女の勘』とでも言うものなのだろうか、こんなのは初めてだ。

 綺麗な、人だった。

 あの人は私の何倍もの時間を中原さんと過ごしていて、私の知らない中原さんを沢山知
っている。正直、分は悪い。

でも、

「…………負けるわけには、行かないですよね」

 誰にも聞こえないくらいの声で、私は言った。自分自身を鼓舞するために、この戦いに
勝利するために。

 中原さんの後ろ姿を見て、今日何度目か分からないため息をついた。黒板に書いてある
授業内容をノートに写している。

 ああ、これから毎日彼の背中を眺められるなんて、私は何て幸せなんだろう?

 だめだめ、背中なんかで満足してちゃ駄目なんだ。

 もっと、もっと近くに。

 もっと、中原さんの近くに。

 ――そして願わくば………。

 その後のことを考えると、顔が赤くなった。

 これももう、今日何度目か分からない。

 よし、決めた。私も放送部に入ろう。

 まずは、そこからだ。




432:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:14:20 bs+rZOTd


 不安は的中した。当たりも当たり、大当たりした訳だから『女の勘』っていうのもあな
がち間違いじゃないんだろう。

「…………ハア」

 昼休みが終わって始まった午後の授業。今の私には何の教科なのかは分からないし、興
味すらない。

 窓の外を見ながら考えてるのは、もちろん彼のこと。

 あの娘(綾瀬さんっていったっけ)に話しかける遼君の目、それに遼君を見る彼女の目。
頭にこびりついて離れない。

(嫉妬ってやつか………)

 自分がこんなにそんなことをする人間だなんて今まで思ったこともなかった。

 遼君は彼女のことをどう思ってるんだろうか?

 あれだけ可愛い娘だし、嫌いってことはないだろう。でも、でもきっと知り合ってまだ
少ししか経ってないし、好きってことも………希望的観測すぎるだろうか。

 全く彼の気持ちは分からない。

「でも」

 はっきりしてるのは、あの娘が遼君のことを好きだっていうこと。

 あの表情は、あの声は、あの目は、完全に恋をしている。

433:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:14:58 bs+rZOTd

「…………ハア」

 それを考えるだけでまた、胸の中にとんでもなく汚いものが込みあがってくる。

 ――嫌だ。遼君を取られたくない。遼君が私以外の女の子にあんな風に笑うのを見た
くない。

 それに、それにあの娘が私は許せなかった。放送室に、私と遼君の聖域に、入り込んで
きたあの娘が私は許せなかった。

「…………負けるもんか」

 そうだ、負けてたまるか。遼君を好きな気持ちだったら、出会って間もないあんな娘に
なんか負けるはずがない。もう怖がってなんかいられないんだ。『ただの先輩』のままで
いる訳にはいかないんだ。臆病な自分を変えないといけないんだ。

「…………よし!」

 今日は遼君の勉強を見てあげよう。密室二人っきりの放送室、これは私にとっての最大
の武器だ。あわよくば急接近!!

 さあ心は決まった。あとは全力で事にあたるのみ!!

 ノートに大きく太く、『打倒綾瀬楓!!!!』と書いて、私の決断式は完了した。



434:愛しさと心の壁  ◆oNTNicc3Mg
07/09/21 20:17:27 bs+rZOTd
以上で今回分終了です。
やっと嫉妬成分が入り始めたところでしょうか……。
次回もよろしくお願いします。

435:名無しさん@ピンキー
07/09/21 20:37:45 uLTYp2W5
GJ


436:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:20:09 r8gnCUIt
私の親友は少しだけ変わっている。腰まで伸びた栗色の髪に、染み一つない白磁のような肌。長い睫毛と宝石のようにきらきらと輝く大きな瞳。小さく整った頬骨と露に濡れた薔薇の蕾のような唇。
スカートから覗くしなやかな素肌の脚は、言い様のない艶やかさを思わせる。
セーラー服の上に薄い膨みを主張する乳房と、小さくはだけられて薄紅に色付いた鎖骨。
なんと淫靡な姿だろう。ただそこに立っているというだけで見るものに官能的な衝動を催させる、天性の娼婦。
それでもなお、控えめに伏せた目元と穏かな物腰はどこか修道女のような貞淑さを感じさせた。
女の私から見ても、親友の姿は綺麗だ。その上、仕草は可愛くもある。
天は二物を与えずというが、目の前にいる親友の美しさに関してはこれでもかというぐらい甘やかし放題だ。
私だって、容姿に少しは自身がある。何度となく男子から告白されたし、同性から綺麗で羨ましいと言われることなんてしょっちゅうだ。
だけれど、親友はそれ以上に綺麗で可愛い。そんじょそこらのモデルなんか比較にならないくらいスタイルも顔立ちも優れている。
悔しいなんて思う気持ちも萎えるほど別次元の美しさを誇るのだ、親友の容姿は。
しかし、先に述べたように、私の親友は少し変わっている。
具体的にいうならば、体のごく一部分が。観念的にいうならば、その全てが。
アイドルにも負けないくらい綺麗な親友はその見かけに反して、実は男の子なのだ。
そう、男の子。男で雄でMANで♂。生物学上完っ璧な男性。小さい頃一緒にお風呂に入ったときには股座にちゃんとぞうさんがくっ付いていた。



437:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:23:26 r8gnCUIt
「あはは。ずっと夢だったんだ。今みたいにこうして制服着て町を歩くのが。どう?ボクのセーラー服姿、似合ってる?」
「すっごく似合ってる。思わず嫉妬しちゃうくらいに。」
目の前でくるくると廻ってスカートをはためかせている親友の制服姿は、本当に悔しくなるくらい似合っている。
三月十日、卒業式を終えて一旦家に帰ってから、私と親友は町へ繰り出した。
私は私服で、私の親友は前から彼の悲願であった、セーラー服に袖を通して。
幸い、私たちの体格は同じくらいだったので彼が私の制服を着込んでいても違和感はない。
親友は昔から女装が好きだった。いや、女装は彼の趣味だといってもいい。
小学校のころは毎日女の子の姿で登校し、中学ではやはり校則で学生服を着なければいけなかったが、彼の学生服姿はまるで男装の麗人のようで、男子女子の両方に倒錯的な想いを抱かれたりもしていた。
私は彼の趣味に口を出すつもりはないが、やはり女装というのはちょっといただけない。
「なんだかボクたち姉妹みたいだね。ほら、早くいこ!」
「う、うん。」
親友が私の手をとって歩き出す。柔らかい感触に思わず顔が熱くなった。
たしかに私たち姉妹のように見えるかもしれないが、恋人同士には見てもらえないだろうか。
私は女で、彼は男。異性で手を繋いで町を歩くのだから、これは立派なデートじゃないか。
一度意識してしまうと、一気に落ち着きを失ってしまった。心臓の動悸が激しくなる。顔に血が上り、視線が定まらずきょろきょろと動く。
今の私の姿を見る人がいたら、女の子同士腕を組んで顔を赤らめている私を挙動不審に思うだろう。
でも、それも仕方が無い。私は彼に恋をしているのだから。



438:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:25:55 r8gnCUIt
初めに意識したのがいつだったのかは覚えていない。気が付けば、私は親友を好きになっていた。
私たちは幼馴染で、小さいころから良く一緒に遊んでいた。彼は女の子のような容姿に違わず女の子のような性格で、女の子の遊びが好きだった。
親友の趣味と性格は見て通りのああだから周りに馴染めずいつも孤立していて、幼馴染の私くらいしかまともに接しようという人間はいなかった。
そのころの私は時々考えたものだ。私は親友なのだから彼と遊んであげなきゃいけない、私だけが彼を助けてあげられるのだ、と。
それからだろう、私の心の中に彼に対する独占欲ともいえる責任感が目覚めたのは。
年齢が上がるにつれて排他的だった周りの子供たちにも寛容さが生まれ、彼の存在もクラスの輪に馴染み始めてくる。
ちょっと変わった子だけど性格はいいし、何より可愛い美少年。そんな彼がクラスの人気者になるまでにはそれほど時間はかからなかった。
彼は私だけのものではなくなってしまったのだ。

「ぼーっとしてどうしたの?早くたべなきゃアイスとけちゃうよ?」
「あっ……そうだね。ごめん。」
気が付けば、考え事で上の空になっていた私を不信に思い首をかしげる彼が目の前にいた。細かいことは気にしない性格なのか、彼はすぐにまた自分のアイスに舌を伸ばした。
彼の仕草はひとつひとつが艶かしい。垂れてきたクリームをつつ、と充血した舌でなぞり、掬い取る姿に色気を感じる。
彼はそのまま棒状のソレに満遍なく舌を這わせ、頂点に溜まった液体に美味しそうに吸い付いた。
なんという厭らしい仕草だろう。周囲にいる男性は誰しもが彼を凝視している。以前に、耳年増の同級生に見せられたビデオの映像を思い出してむず痒い気持ちになった。



439:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:29:30 r8gnCUIt
「あれ?キミはもしかして……」
突然、横から野太い声が聞こえた。髭の濃い中年がやたら馴れ馴れしい仕草で私たちに近づいてくる。
新手のナンパなのだろうか。それにしても一度鏡で自分の顔を確認してからきて欲しいものだ。私たちの年齢以前に、顔面そのものが条例違反に引っかかっている。
「どうも、こんにちは。こんなところで会うなんて奇遇ですね。」
「いや~、相変わらず可愛いねキミは。その娘もしかして、コレかい?」
ぶよぶよと脂肪が集まった赤ん坊のような小指を立てる肉団子。
「ち、違いますよ。ただの幼馴染ですって。」
どういうことだろう。目の前にいるクリーチャーは彼の知り合いだとでもいうのだろうか。
こんな汚らわしい生き物に視姦されると体じゅうにさぶいぼが出る。中年特有の腐ったチーズのような体臭が鼻をつき、私は目をしかめた。
「あ、この人?父さんの友達だよ。」
どうやら彼の父親の関係者らしい。私は握手を求められたが、こんなおぞましいものに触れるのはごめんなので視線で断ってやった。
私を蚊帳の外にしたまま、彼とニューボーンエイリアンは談笑を続ける。異種族コミュニケーションも大事だが、歩み寄る相手は選んだほうがいいと思う。
あんな青魔法を使いそうな種族は、人間とは決して相容れないだろうから。
こんな街中ではなくエリア51でやるべきである会談をしばらく行うと、目の前のラージノーズグレイは彼の耳元にその汚らしい口元を寄せて、なにやら二三言呟いた。
いったいなにを言われたのだろうか、ジャバ・ザ・ハットの唇が動くにつれ、彼の儚い表情は徐々に歪んでいく。
顔を真っ青を通り超して蒼白にした彼が、私の方に向き直る。
「ちょっと用事が出来ちゃったからさ……先に帰っててもらえる、かな。」
悲しそうにそれだけ言い残して、親友は先ほど現れた髭の中年に手を引かれほいほいついて行ってしまった。
そして私は彼の様子を不審に思い、彼らの後を尾行した。





440:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:32:08 r8gnCUIt
窓から覗く部屋の中に、引き締まった腿と銀色に光る腹が見える。一本の大きな黒い線がその腹を横切っている。
男の腕だ。男は寝台にうずくまって、親友をかかえ、ひしと抱きしめる。そして、男の口は親友の性の口のすぐ近くにあり、彼らは途方もなくおぞましい接吻のために身体を近づけあう。
暗い色の身体がほの白い体の前に跪いているのが見える。
しばらくすると、男が親友の上に身体を横たえ、呻くようになにかを言いながらぴったりと身を寄せる。男は親友を引き裂こうとし、親友の上にのしかかった。
二人は互いの身体のなかに深くはいりこみ、男は快楽へと突き進んでゆく。二人は身体を波打つように動かす。二人の充血した器官が私の目にはいる。
私は、彼ら二人がつくりなす汚らわしく奇怪な交合を目の当たりにした。
男が機械的に何かを繰り返すと、肉の結びつきはぐったりとなった。男はもう堪能しきっていた。
傍観者の私は、一人涙を流した。








441:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:35:45 r8gnCUIt
>>424を見て勢いで書いてしまった。
女装美少年なら萌えると思ったが、自分の文章力では萌えられなかった。今は後悔している。
スレ汚しごめんなさい。吊ってきます。


442:名無しさん@ピンキー
07/09/21 21:57:41 oY6SIra6
これは・・・なんともコメントしずらいな

443:名無しさん@ピンキー
07/09/21 22:00:14 JL9NHrpN
うん、、まぁその、、、なんだ

ガンバレ

444:名無しさん@ピンキー
07/09/21 22:01:06 mBRfhwJ7
もう少し書いてくれればよかったんだがな

445:名無しさん@ピンキー
07/09/21 22:02:11 JUDoFNkX
スレ間違えたかとおもた

446:蒼天の夢  ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:22:59 OyPy8Vpg
皆さん、こんばんは
続きを投下させていただきます

447:蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:24:13 OyPy8Vpg
 俺の朝は早い。
 まだ朝靄が街を覆い、空が紫かがっている内から家を出る。
 グレイ・クリフでレースが行われるのは週一回だがスキッダーは毎日練習する。
 そして俺の練習は家を出た瞬間からはじまる。
 まずはワイバーンの馬場(竜場とも言う)があるグレイ・クリフ山頂まで走りこみ。
 家から街までは平坦だから楽だ。問題は麓の街から山頂までの道のり。
 アルス王国の者なら誰でも山道は慣れたもの。しかし、走って登るとなると話は別である。
 ペースを考えながら走らないといけないのでなかなか馬鹿にできない鍛錬だ。
 唯一、気に入らないのは山道の幅が狭いこと。
 特に大きな馬車が通れば山腹にへばりついて道を開けなくてはならない。
 そして案の上、今朝走っていたら馬車が来たため一旦道を開けなければならなかった。
 ただ今回ばかりはへばりつくどころか道から外れ、山の斜面にまで退かなければならなかった。
「はあ……はあ……なんだよ。あれ」
 思わず立ち止まってしまうほど派手な馬車だった。
 四頭の黒馬に引かれたワインレッドの車両。所々金の装飾で彩られ、馬車の横腹には翼を生やした狼の紋章が描かれていた。
 貴族の馬車なんてグレイ・クリフじゃ珍しくもないが、あそこまで大きく豪華な馬車は未だ見たことがない。
 以前アザラスの馬車を見たことがあるが今の馬車に比べたらそれこそ小悪魔インプとドラゴンぐらいの差はある。
 まさに権力と財力を誇示するが如く。
 名のある貴族には違いないだろうが、生憎と俺はそういった事柄に興味はない。
 と同時にレースのない日曜の朝に大貴族がグレイ・クリフ山に何の用か、と好奇心が湧く。
 幸い、俺の目的地も恐らくあの馬車と同じだ。
 考え事は山頂に着いてから。
 俺は再び険しい山道を走り出した。

 山頂の洞窟内に到着すると俺は汗をしっかりと拭き取り、クリフ・スキッド用の革鎧に着替える。
 着替え室から竜場に向かい、腹を空かしたアズールにたっぷりと餌をやる。
 朝早いにも関わらず、周りには既に何人ものスキッダーたちが各々の練習の準備をしていた。
 そんな中、俺の走りこみ中の疑問の答えが目に入った。


448:蒼天の夢 03 ◆ozOtJW9BFA
07/09/21 22:25:15 OyPy8Vpg
 竜場の中でも大きめに作られた奥の区画の一つ。
 そこには見たことのない赤いワイバーン。
 まるで竜神を拝めるかのように赤いワイバーンを世話する茶色い制服の一団。
 一団を護衛するかのように直立不動で立つ完全武装の兵士。
 そして彼らの盾には山を登ってくる際に見たあの馬車と同じ、翼の生えた狼が描かれていた。
 なるほど、と納得した。
 つまり今日からスキッダーがもう一人増えるのだ。
 とてつもなく“高貴”なスキッダーが。
「おはよう諸君!今日も王都リーグ目指して頑張ろうじゃないか!」
 準備をしながらチラチラと高貴な一団を見ていると、全く高貴じゃない貴族が姿を現した。
 アザラスである。
 最初は他の従業員やスキッダーに挨拶して回っていたが、俺の望みとは逆に奴の声がどんどんと近づいてくる。
「おはよう!ジース」
 予想はしていたが、アザラスは最終的に俺の方にやってきてしまった。
 こうなっては適当にはぐらかすしかない。
「おはよう」
「次のレースのため頑張ろうな!」
「ああ」
「次こそは上位にあがろう」
「そうだな」
「ところで見たか?ベイヴェルグ公爵家の連中だぜ」
「ベイヴェルグ?」
 ひたすら生返事で通そうと思っていたが、どうやら好奇心の方が勝ってしまったようだ。
「ん?ジースは知らないのか?」
 一見気さくに笑っているアザラス。その実、眼には自分の知識を披露したいという気持ちがありありと浮かんでいた。
「貴族の名前なんて一々覚えてられん」
「悲しいこと言うなよ」
「んで、そのベイなんとか様はどうなんだ?」
「ああ、そうそう。とにかく地味に影響力が大きい―」
 ベイヴェルグ公爵家。
 公爵という爵位の中でも最も高い位を持っているから偉い、というのは俺でも分かっていた。



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