07/09/13 18:47:42 Osjl1vaE
「…真里菜、起きてる?」
トントンとふすまをノックしながら、制服姿の少年は尋ねた。
しばらく待っても返事は無い。
…寝ているのだろうか?
だったら起こさない方がいいかな。
そう思い、静かにふすまを開ける。
和室の中で、布団で横になってる少女を見る。
すうすうと規則正しい寝息が聞こえる。
やはり眠っているようだ。
足音を立てないように気をつけながら、布団の横に座る。
そして、少女の右腕に眼をやり、点滴の針が外れてないか確認する。
「…よし、大丈夫だな」
やれやれと一息つくと、少年は少女を見る。
…今日も綺麗だなあ、こいつは。
肌こそ、病的に青白いが、その少女はまるで人形のようだ。
しかも人形の中でも、超一流の職人が精魂込めて作り上げたような、
見事な一品だ。
ぼんやりと少女を見続けていると、少女の顔に変化が現れた。
怖い夢でも見ているのだろうか、少女は苦しげに顔を歪ませ、微かなうめき声を
立て始めた。
穏やかだった寝息も苦しげなものに変わり、起こすかどうか迷っていた少年も、
少女のまぶたに、涙が浮かび始めた事に気付くと、慌てて少女の体を揺すり、
声をかける。
「真里菜、真里菜!」
必死に少年は少女の体を揺する。
「…う、あ?」
目が覚めたのか、少女は瞳を開けた。
「……お、にい、さま…?」
まだ意識が戻りきってない、焦点の合ってない瞳だったが、
少女はまるで縋るような手つきで、少年の手を握った。
「…あのね、またね、夢見たの。
あの時の、夢。お母さんに、刺されたときの」
「…うん」
震える少女――植田真里菜の頭を撫でながら、その少年、
白井真太郎は答える。
「もう、忘れたいのに、思い出したくないのに」
「…うん」
「…怖いの」
「…うん」
無言で、真里菜の頭を撫で続ける。