07/09/26 02:07:27 AVu1T4qz
「ふわあぁ……、いぃ……」
「………どうですかカレン君?新しい肢体の感想は」
自身の変化の余韻に浸るカレンに、新しい主が声をかけてきた。
光を失っていた目でナルキッソスを見ると、たちまちその瞳が歓喜に染まった。
「あぁ………!ナルキッソス様ぁ………
この力、凄いです………。もう抑え切れなくて、溢れ出しちゃうくらい……です………」
カレンがまだ覚束ない脚でじりじりとナルキッソスににじり寄ると、ナルキッソスはカレンのうなじを
優しく撫で上げてきた。
「ひぃんっ!!」
敬愛する主人に体を触れられ、カレンは全身を歓喜で震わせその行為に報いた。
「ああぁ……嬉しいです、ナルキッソス様………」
「ふふ……、健気なものですね。ではカレン君、貴方にとってサイアスはなんですか?」
サイアスという言葉を聞いて。カレンの体がぴくりと動いた。
「私にとって………、『サイアス』は……」
サイアスという言葉を放った直後、カレンの顔に憎悪が浮かび上がった。
「サイアスは、憎むべき私たちの『敵』。決して揺るされざる業を背負った奈落の堕天使…」
カレンの返答に、ナルキッソスはにっこりと微笑んだ。
「そうです。あの男はこの世にに存在してはならない悪漢。必ず撃ち滅ぼさねばなりません。
そのために私は貴方達に力を授けたのです。その力を以って、あの男を滅ぼすのです」
「はい!貴方様から頂いたこの力で、必ずやあの男に死を!」
ナルキッソスの言葉に、カレンはぴっと襟を正し、凛とした声で答えた。
「殺してやるわ…。私の大事な主を苦しめ続けたあの男。決して生かしておきはしない……」
かつて尊敬し、敬愛し、恋慕していた上司。そのような記憶など涅槃の彼方へ消し去り、カレンは
サイアスに対する憎しみに全身を震わせていた。
「やろう姉さん。あの男に、生きていることが苦痛になるくらいの責め苦を与えて、絶望の淵に
叩き落してからゆっくりと息の根を止めてやろうよ」
「ええ。いくらあの男でも、ナルキッソス様から力を授かった私たち二人が相手なら勝てる道理はないわ。
せいぜい嬲って、縊り殺しましょう……」
サイアスを殺害する様を想像し悦に浸る二人を、ナルキッソスは冷ややかな視線で見つめていた。
(まあ、せいぜい頑張ってください。いくらお前達を強化したところであの男に適うはずもありませんけどね。
お前達はあの男をいたぶる餌なんですよ。信頼する部下と弟子に牙を剥かれ、本気で殺しに来る時
あいつはどう反応するでしょうかね?我が身可愛さに殺しますかね?それとも………、ククク………)
「ナルキッソス様?いかがなさいましたか?」
「いえ、何でもありませんよ。
それより二人とも、必ずやあの男を殺すのですよ。期待していますからね」
主人に自分たちは期待されている。そう思うとカレンとショウはパッと顔を輝かせた。
「分かりました。ナルキッソス様!」
「必ずや貴方様のご期待に応えて見せます!」
嬉々として反応する下僕の様に、ナルキッソスは嬉しげな、しかしどこか蔑んだ微笑を浮かべた。
終
以上です。ではまた次の機会に…
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