女の子と二人きりになってしまった 2回目at EROPARO
女の子と二人きりになってしまった 2回目 - 暇つぶし2ch200:初心者
07/09/15 00:01:46 5ulU3E+C
GJです!
まさか死んでいたとは…
予想外過ぎて最初はよく理解できなかった…
皆さんの作品を読んでいると自分の作品を投下しても良いのか、とか思います。
それでも投下しますがねw

201:名無しさん@ピンキー
07/09/15 00:55:43 4ToD/4dh
あ、何だこれからもって事か
今から投下かと思ってwktkしてたぜwww

202:名無しさん@ピンキー
07/09/15 22:42:05 DqMXXbzA
動きがないなんて珍しいな

203:名無しさん@ピンキー
07/09/16 00:10:16 8XG0cUU+
>>202
きっとこれから凄いのが来るんだよ><

204:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:42:14 arrcHaKL
URLリンク(up2.viploader.net)

205:名無しさん@ピンキー
07/09/16 21:54:15 wkNv0+Oq
>>204
抜いた

206:名無しさん@ピンキー
07/09/16 22:17:05 FneUYUq5
>>204
変な物貼るなよ。
不幸の手紙のパチモンだからスルーね。

207:名無しさん@ピンキー
07/09/17 01:02:16 xW5+S8cu
画像元はなんだろ、呪怨?

208:名無しさん@ピンキー
07/09/17 09:27:02 v2o370kC
なあ、幽霊と二人きり、ってシチュはアリかな?

209:名無しさん@ピンキー
07/09/17 09:49:36 s2P/Ce7M
>>208
こっちが適切かと

【妖怪】人間以外の女の子とのお話22【幽霊】
スレリンク(eroparo板)

210:名無しさん@ピンキー
07/09/17 10:01:04 8/BSuR3L
幽霊であろうが女の子である事に変わりない
それで二人きりならいんでないの?

211:名無しさん@ピンキー
07/09/17 10:02:59 bfJe2L2T
age

212:名無しさん@ピンキー
07/09/17 10:30:48 KoZKZQkf
>>208
このスレに投下して>>209のスレにリンク貼れば、どちらの住人も幸せに(ry

213:名無しさん@ピンキー
07/09/17 13:47:09 h9sec6iA
>>212
ネ申現る

214:名無しさん@ピンキー
07/09/17 16:14:28 8s+NE/vP
おまえあたまいいな

215:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/17 18:05:54 qbs6MDNN
◆扉の外の真実

 扉の外に広がっていたのは―漆黒の闇だった。
 部屋の白とは対照的な、一面の黒が、行く手を覆い尽くしている。
 智信は最初、それを見て、単純に暗闇で先が見えないだけなのだと、そう思った。
 しかし、壁伝いに、外に手を這わせてみて、気付く。そこに『何かがある』が見えないのではない。ただ『何もない』だけなのだ。
 扉に手をかけて、一歩踏み出してみても、足は床に触れることなく空を切り、先の見えない闇の中に沈む。
 そこにあるのは、永遠に続く、虚無の世界。現実にはありえない、悪夢の中に入り込んでしまったかのような光景。
 馬鹿な……馬鹿な馬鹿な馬鹿な。こんなことがあっていいわけがない。
 この部屋はどうなっている!? そして、この果てしない闇はなんなんだ!?
 少しでも気を抜くと、狂気に侵食されそうになる思考を宥めながら、智信は自問する。
 そう。確かにルールには『三十日が経過した場合』或いは『生存者が一人となった場合』に『扉が開かれる』と書かれていた。
 しかし、よく考えてみれば、扉の外に関する情報は一切なかった。二人が勝手に『扉の外が出口である』と思い込んでいただけだ。
 そう結論付けてしまうのも、当然ではある。この部屋には、出入り口と思われる扉は二つしかなく、片方はトイレで、片方は開かなかった。
 それなのに『開かない扉』の先が行き止まりであると仮定すると、どうしても、説明がつかない点が出てくる。
 智信と留美は、どのようにして、この部屋に運び込まれたのか? という問題である。
 無理矢理にこじつければ、天井が開く仕掛けになっていて、ワイヤーか何かで吊り下げられてベッドに寝かされた、などという仮説も立てられるが……
 そんな凝った仕掛けを用意する意味は薄い上、仮にそうだとしたら、ベッドの真上の天井に細工の痕跡があるはずで、眠る時に気付かないのはおかしい。
 開かない扉が外と繋がっており、二人はそこから運び込まれ、ベッドに寝かされた、とするのが一番自然だった。
「……に……!」
 智信の口から、声にならない言葉の断片が零れる。
「そ……は……に……で、出口……な……だ……!」
 それなのに、そのはずなのに、なんで出口がないんだ……!
 そう怒鳴ったつもりだった。だが、乾燥して潰れてしまった声帯は、発声を拒否する。

216:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/17 18:06:59 qbs6MDNN
 智信は暫くの間、暗闇の向こう側に、何かが見えたりはしないだろうかと目を凝らしていたが、やがて諦めたのか、扉を閉めた。
 もう、この先、どうすればいいのかわからなかった。この部屋には、出口がない。あるのは、どこへ繋がるとも知れぬ深い闇だけだ。
 恐怖からか、体ががくがくと震え、吐き気まで催してきた。そのまま、不安定な足取りで、トイレへと向かう。
 智信は便器に頭を突っ込み、思い切り吐いた。とは言っても、胃の中には内容物は一切残っていないから、口から滴るのは粘ついた胃液だけだったが。
 レバーを引いて、水を流す。水が流れるのだから、少なくとも排水設備はあるはずで、外界から完全に隔離された場所とは考え難いのだが……
 そんなことを考えながら、智信は何気なく、水面を見た。
「……?」
 ふと、小さな違和感を覚える。智信は、その違和感の正体がなんであるのか、最初はわからなかった。だが……水面を見つめるうちに、智信は気付いた。
 違和感の原因は―水面にぼんやりと、揺らめきながら映っている、智信の顔にあるのだと。
「あ……」
 ぽかん、と。智信の目が、口が、大きく開かれる。それは智信にとって、この部屋に閉じ込められてから、一番の衝撃だったかもしれない。
 そうは言っても、第三者の視点から見れば、智信が何故こうまで驚いているのかを理解するのは難しかっただろう。
 だって、水面に映っている顔は、とりたてて語るところもない、ごく普通の顔なのだから。美しくもなければ醜くもない、平均的な、男の顔。
 客観的に見て、目に見える異常はない。だから勿論、留美とて、気付くわけもない。
 この『違和感』には、智信本人か、家族、親戚、友人―つまり『智信の顔を知っている人間』でなければ気付けない。

 ― これは、誰の顔だ!? ―

 ― これは、僕の顔じゃない! ―

「うわあああああああああ!」
 両手で頭皮に爪を突き立て、喉が焼き切れるような叫びをあげながら、トイレから飛び出す。扉を背に、その場に蹲る。
 がりがりと頭を掻き毟りながら、何とか現状を把握しようと試みるが、山積する疑問に圧倒されて、思考は正常に働かない。
 畜生! 畜生! 畜生! わからない! もう何もかもわからない!
 発狂寸前にまで追い込まれて、壁に側頭部を叩き付ける。ベニヤ板の上に物を落としたような鈍い音がした。こめかみの辺りを生暖かいものが伝う。

217:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/17 18:09:00 qbs6MDNN
 この痛みで目が覚めたなら、どんなに幸せだろうか、と智信は思った。
 これは、交通事故か何かに遭った僕が、生死の境を彷徨いながら見ている、長い長い悪夢で。
 僕は、病院のベッドの上で目を覚ます。まだ悪夢の残滓が燻っているのか、心臓の鼓動は早く、汗をびっしょりかいている。
 看護士さんがぱたぱたと走り回って、担当医に昏睡状態だった患者が起きたことを伝えにいく。
 僕は現実に戻ってこれたことに安堵しながら、天井を見つめる。そして、今まで見ていた悪夢について、ぼんやりと考えを巡らせる。
 白一色の内装に、鼻をつく消毒液の匂い。そりゃあ、こんな場所にずっと寝かされていれば、悪い夢の一つも見て当然だ……って。
 苦笑しながら首を横に向けると、右隣のベッドが視界に入る。そこで寝息を立てているのは―夢の中で見た少女だった。
 これが物語なら。きっと……そんな風に、綺麗に終わってくれる。
 何もわからないまま……部屋からも出られず……のたれ、死ぬ、なんて……そんな、終わり……認め、ない。認め……。
 智信は、精も根も尽き果てたとばかりに、その場に崩れた。そして、数時間も経たない内に、動くのを止めた。



 残されたのは、二つの骸。最早動くもののいなくなった部屋に、電子音だけが空しく響く。
 液晶画面に、最後のルールである、ルールDが表示される。
 それは、ここまで生き延びた強者への、最初で最後の助言。
 永久に出ることのできない袋小路に放り込まれた仮初の生命を、せめて意義あるものにする為の、唯一の解。

『ルールD 醜い生は死であり、潔い死は生である』

 ルールDを表示し終えて間もなく、再度、電子音が鳴り響く。
 今まで、ルールが公開される度に鳴っていた音とは違い、目覚まし時計のベルにも似た、激しい音だ。
 その音は、ゲームの終了を告げるものだった。
 音が鳴り止むと同時に、白い部屋はゆっくりと、物音一つ立てずに、崩壊していく。
 部屋と、部屋に存在するすべての物質が、原子単位にまで分解されて、飛散、消滅する。
 まるで、波打ち際に作った砂の城が、波に攫われて、元の砂に戻ってしまうように。
 ついには、部屋はその痕跡すら残さずに消え失せて、扉の外に広がっていた、あの、底知れぬ闇だけが残った。

218:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/17 18:10:10 qbs6MDNN
◆ようこそ、ラストステージへ

 智信の自室。ずっと机に向かっていた智信は、そろそろ小休止を入れようと、シャープペンシルを机の上に転がして、立ち上がった。
 立ち上がりついでに、大きく伸びをして、欠伸を噛み殺す。時計の針は、午前一時を指している。眠気がして当然の時間帯だ。
「畜生、眠い……コーヒー、飲むか」
 机の上には、書きかけのレポートと、乱雑に積まれた参考資料の山。
 間違ってコーヒーを零したりでもしたら洒落にならないから、前以てそれらを机の端に退かしておく。
 部屋を出て、キッチンに向かう。コーヒー豆をコーヒーメイカーに入れて、スイッチを押す。
 ブレードが豆を粉砕する音を聞きながら、食器棚からカップを取り出す。
 そこで、同じようにキッチンに出てきた父親とばったり出くわした。
 彼―佐々野敦(ささの あつし)も智信と同じく、コーヒー党であることは知っていた。
 大方、夜中に目が覚めてしまって、コーヒーの一杯でもと思いキッチンに出てきたのだろう。
 智信はドリップを完了したコーヒーメイカーからカップにコーヒーを注ぐと、コーヒーメイカーを敦の方へ差し出した。
 敦はそれを受け取り、コーヒーを淹れ始める。
 でも、互いに目は合わせない。会話もしない。智信と両親との関係は、お世辞にも良好なものとは言えなかった。
 智信と両親の仲がこじれたのには、ちょっとした原因がある。
 智信は、幼かった頃から、持ち前の要領の良さと吸収の速さで、神童と持て囃されていた。
 両親もその才能を生かそうと、智信を塾に通わせ、勉強を勧め、できるだけ良い学校に行かせようとしていた。
 そうする内に、智信は、誰に言われるでもなく、いつか一級市民昇格試験を受けるのだと心に決めるようになっていた。
 智信にとって、一級市民は目指すべき目標であり、自分の努力が報われる、一種の到達点なのだと思っていた。
 だが、大学に進学した直後、一級市民昇格試験を受けたい、と打ち明けてみると、両親は、口を揃えて反対した。
 なるべくなら、受けない方がいい。受けるにしても、今はまだ早過ぎる。もっと人生経験を積んでからがいい。それが両親の言い分だった。

219:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/17 18:11:46 qbs6MDNN
 思いがけない言葉に、智信は憤慨した。一級市民昇格試験の最年少合格者は、公式発表では確か、十三歳だったと記憶している。
 今日に至るまで、智信は出来る限り自分を殺して、命じられるがままに勉強に邁進してきた。
 数少ない友人とも、まともに交流する時間が取れない、そんな日々を、文句の一つも言わず過ごして来た。
 それなのに……お前はまだ十三歳以下だ、そう言われているようで、我慢ならなかったのだ。
 勿論、両親の意見にも、理がないわけではない。
 一級市民昇格試験。
 それは、知識、経験、人格……あらゆる側面から、受験者が一級市民として相応しいか試される、難関試験だ。
 試験を受けるに当たって必要な資格は一切ない。年齢、性別、学歴、階級……すべて不問。
 それでは受験志願者が殺到するのではないか、と思うだろうが、世の中そうそう甘い話が転がっているものではない。
 試験は一生で一度しか受けられず、不合格になった者は、自動的に五級市民へと降格されて、一生抜け出せない。無期懲役も同然の酷い扱いだ。
 そう、これは天国と地獄を分かつ究極の二択。天に昇って、天上の住人となるか、それとも、地の底まで落ちて、地獄の亡者となるか。
 そんなハイリスクな試験に若くして挑むのがどれほど無謀なことか。両親は、井の中の蛙である息子に、警鐘を鳴らしたかったに違いない。
 智信はカップ片手に、部屋に戻った。デスクチェアに寄りかかり、コーヒーを啜る。
 一口飲んでから、しまった、と思う。敦と長い時間顔を合わせていたくなくて、急いで部屋に戻ったものだから、ミルクを入れてくるのを忘れていた。
 苦味の強いブラックに少しばかり顔を顰めながら、机の上にカップを置く。
 まあいい。眠気覚ましには、丁度いい味かもしれない。気を取り直して、今夜中にレポートを片付けてしまおう。
 そう考えて、智信は再び机に向かい、レポート用紙の空白を埋める作業を再開した。

220: ◆SSSShoz.Mk
07/09/17 18:12:27 qbs6MDNN
>>178からの続きです。そろそろ終わりが見えてきました。
今までの話を読んでいる途中、少しでも「これはこうなってるんじゃないかなー」と考えてもらえたなら、作者冥利につきる次第であります。

221:名無しさん@ピンキー
07/09/17 20:20:23 vzCCwl69
>>220
???だった頭が?…!…?くらいになりました。
GJです。少しずつ見えてきた真相。これまでの経過。その先にある結末。期待せずにはいられません。

222:名無しさん@ピンキー
07/09/17 22:27:59 Z9biVNWF
奥深いですね・・・。こういう文章は好きです。
ラストまで頑張ってください。

223:名無しさん@ピンキー
07/09/18 01:21:53 gwvS1IC1
『tips』がないのさえ何か意味がありそうだな
そう思えるからすごい

224:名無しさん@ピンキー
07/09/18 16:14:12 JSwoXKaf
GJ!
水の違和感がそういうことだったとは全くわからんかった…

>>49の辺りで、閉鎖空間での試験?はヴァーチャルかと想像してたんですが、それでよかったのかな?
被験者は毎回男の方で、留美の方は既に無くなっている少女のデータを使用していて毎度同じ、と。
ただ智信の顔が違う理由がよく判らん…外見データ使い回しなのかと思ったけど、番外編の男は太ってたし…
試験?の理由も単純に一級市民の昇格試験って訳じゃ無さそうだし。

結論。まださっぱり判らんw 謎解き楽しみにしてます。

225:名無しさん@ピンキー
07/09/19 04:43:12 Z3RxrPMP
一番の謎は
なぜ ◆SSSShoz.Mk さんがこの作品をエロパロのスレで披露しているのか?
ということ。


226:名無しさん@ピンキー
07/09/19 06:57:46 auz5VQ8W
一応エロ入れたからいいんでねえの?

227:名無しさん@ピンキー
07/09/19 15:19:17 R8Rxz7cu
エロがなくても良い作品はある…まとめサイトで読んでみ
と、最近住人が増えて戸惑っている俺が言ってみる

228:名無しさん@ピンキー
07/09/19 17:01:07 auz5VQ8W
特に雪山とラピエスは最高だった

mori~

229:名無しさん@ピンキー
07/09/19 17:10:25 TMVljYBk
良作が一番多い板はエロパロではないかと最近思い始めた

230:名無しさん@ピンキー
07/09/19 18:31:14 gPcATOkf
>>225
エロスの欠片も無いのに絶大な支持を得ている作品なんざこの板にはアホほどある。

231:名無しさん@ピンキー
07/09/19 19:52:15 6SPvKr5g
>>227まぁそれが良スレの宿命かと

偉そうなこと言ってるけど俺も途中参加なのは秘密だが

232:81 ◆DlPgAmm21I
07/09/19 20:59:31 lA35ur4m
#やばい 話が変になってきた… つじつま合ってるか微妙な展開に…
#だがしかし 私はあきらめないっっっ
#読者が居なくなったって最後まであきらめないっっっ(?
#というわけで、ちょびっとですが続編を。
#なんというか、今週は職場の上司の目が光ってるので、あまりつくれません。
#夜勤とか遅番なら作れるんですが、今週は早番… すみませぬ。

233:総武の休日 ◆DlPgAmm21I
07/09/19 21:00:19 lA35ur4m
しばらくマリーは俺に体を押し付けて泣き続けた。あたりが夕刻になるころ、少し落ち着いてきたのを見計らい、
俺は悠太母に「なにかあたたかい、おちつく飲み物をください」とお願いした。

「マリー…」
やさしく問いかける。だが返事はない。もぞもぞと動くだけだ。
「哀しいのはわかるが、このままじゃだめだろ… とりあえず、これ飲め…」
悠太母が用意してくれたのはホットミルクだった。色合いと匂いがそんな気がする。
このまま飲まないよりはマシだと思ったので、飲ませることにする。
マリーが顔をあげる。泣いたせいで顔がぐしゃぐしゃになっていた。
彼女は俺に促されるまま、ホットミルクを飲む。
んく。んく。んく。
飲み込む音が静寂な空間に響く。
そして彼女は、言葉を発した。
「う、うううううそ、嘘よ… こ、こここの間までちゃんとメールしてたのに…」
「・・・・・・」
そばにいた悠太母は黙ったままだった。
「き、きき、昨日だってメールし、したわ! 昨日のニュースのことも話題にっっっ!!」
「落ち着け」
残ったミルクがこぼれそうになったので、俺が掴んでテーブルに置く。
「だって! だって!! わ、わわ私っ」
マリーのメール話は車の中で聞いた。
楽しそうに先日までの話題をやり取りしていたことを話し、メールの中身を見せてくれた。
おれは、ふと気になる事があったので、悠太母に聞いてみた。
「…悠太君のお母さん。悠太君の携帯って、今手元にありますか?」
「えっ… 悠太の… ですか?」
「ええ。マリーがこんなに動揺するのも、亡くなった後でもメールのやり取りがあったことにあるわけで…
 本当にその履歴が残っているのか、確かめたいのですが…」
悠太母が何を思っているのか不明だが、悠太君が死んだというのは嘘で、
実は軟禁か監禁されててたまたま携帯を持ってたのでメールできている と考えられなくもない。
しかし、監禁状態なら電話すればいいことで… それが出来ないとなると面会謝絶の病室からメールをしている???
そもそも生きておらず、ファンタジックに霊界からの警鐘とか… いやいや、ありえないな。
「ないんです」
はい?
「は? ないとは?」
悠太母の言葉が最初は信じられなかった。
「悠太の携帯は無いんです。 …じつは…」
そこから先に聞いた言葉は、俺には信じられなかった。いや、常識的に考えて、ありえないだろう。

234:総武の休日 ◆DlPgAmm21I
07/09/19 21:00:55 lA35ur4m
悠太母曰く、悠太は坂道でブレーキが故障してそのままカーブを曲がりきれずに反対車線に飛び出してしまったこと。
そして運悪くそのままタンクローリーが通りがかったこと。
打ち所が悪く、即死状態だったこと。
ノンブレーキということは警察と運転手の証言により確定し、日ごろから整備を怠っているのが悪いということを指摘された。
そんなことは信じられない。運転手を呼んでこいと訴えるも、警察にとめられたこと等、苦い思いを打ち明けてくれた。
そして悠太の49日法要が終わったころ、突然軒先に黒服スーツの男が現れて、「悠太君の携帯を売ってくれ」ときたこと…
「う・・・うそ?」
「その男に売ったんですか?」
「ええ… これ以上つらい思いをしたくありませんでしたので…」
でも、携帯譲渡…はできないだろうに…?
「大金を積まれて… 主人も始めは断っていたのですが… 額がどんどん大きくなって… 相手は本気だということに気がついて…」
「それで譲った…と」
信じられん。
「その後の手続きとかは?」
「任せてほしいと… 委任状を書いて、任せていたら携帯会社から訪問があって… ”異例ですが名義変更しないまま譲渡しました”と」
…ますます不可解だ。なぜ名義変更しない? なぜ? そんなの、マリーの為だけに大金積まれたって思えてくる…
マリーのためだけ? ん? なんだ、ひっかかるぞ?


えーと? マリーは悠太君に会いに出かけようとしたら親に止められて?
出かけたらなぜか山手線で見つかって?
そもそもなぜ山手線でみつかっ……… そうか!
「マリー! 君はまだ携帯もってるな?!」
「な、なによ突然… きゃっ!」
マリーの携帯を奪い取る。最新機種だった。
なるほど… GPS機能か。通りでマリーの後を追いかけられるはずだ。
ははは… バレバレってわけか。きっと携帯を買い取ったのは真理の親の意向だな。
親バカか… でも、本当に悲しませたくなかっただけなのか?
しかし、ここにいるって事は、すでにばれているんだろうな…
「なによ! なんなのよ 携帯返してっ!」
奪いかえされた。

235:総武の休日 ◆DlPgAmm21I
07/09/19 21:03:04 lA35ur4m
「…あの」
悠太母が話しかけてきた。
「な、なんでしょう?」
「もし… よろしければ、悠太へお参りしていただけないでしょうか…」
「…マリー」
おれはマリーを伺った。
こくん。
無言ながらもうなずくマリー。
「では、準備してきますね」
悠太母は部屋を後にした。
「マリー?」
「…やっぱり …死んでるの?」
俺は言葉に窮してしまった。
「悠太君のお母さんが嘘をついているようには思えない。しかし、にわかには信じられない」
ゆっくりと、肯定の中に希望という名の否定を混ぜて言う。
「私、生きてると思う。ううん、絶対生きてる」
いや… 残念だがマリー… 彼は確実に死んでいると思う。
君はまだ現実を受け入れられないだけなんだ…
…きっと彼の携帯を買い取ったのはマリーの身内だ。
なぜこんな手の込んだことをするのだろうか…
それがすごい不可解だ…… なにか裏が… そう、裏があるのではなかろうか…

#今日はここまでっ
#えと、お断り入れます。
#悠太君の家は、実在しません。場所もです。
#ドラマで言うところのここの舞台はスタジオに入ってるって思ってください。
#地図で探されている方、申し訳ありません。

236:名無しさん@ピンキー
07/09/20 01:13:54 RHK548xn
>>235
大丈夫、少なくとも読者はココに一人確実にいるからw
あとさすがに家は実在とは思ってないから大丈夫だ。

んーブルジョワめ。マリーのため思ってだろうが惨いことしやがる…
それとも何か別の理由があるのか?
続き待ってる。


…あと会社で書くのはやめといた方がw              俺も昔やったことあるけどさww

237:名無しさん@ピンキー
07/09/20 01:48:49 3jl/rGCa
>>236
何があったのかくやしく

238:名無しさん@ピンキー
07/09/20 03:04:16 fE5waJOV
>>236
ちくしょうを10回以上使って

239:236
07/09/20 16:53:56 RHK548xn
>>237
いや、何も無いw 大丈夫。バレなかったからw

でもこういうの書くための妄想って仕事忙しい程湧いてくるのはなんでだろうw

240:81 ◆DlPgAmm21I
07/09/20 19:58:04 4bL/qR22
>239
ほら あれです 試験前日に急に部屋の掃除をしたくなるアレと一緒。(違う
現実逃避したくなるほど、ネタが溢れてくる。と。
遅番は超忙しい。早番は超ヒマだけど監視がw 夜勤は眠い。
故に遅番がイチバン物語がすすみます。

>238
くやしいのう。くやしいのう。 で。
例題:くやしいのう。上司が見張っててくやしいのう。メディアに書き出し出来ない会社PCくやしいのう。

241:名無しさん@ピンキー
07/09/22 18:41:09 ztfA45pU
期待上げ

242:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/23 00:08:04 NEniwn6D
 朝霧綾香は、コンピュータに向かい、苛立たしげにキーボードを叩いていた。
 納入の期日が迫っていて、早くプログラムを仕上げなくてはならないのに、どうしても冷静ではいられない。
 頭の中から一切の雑念を追い払い、仕事に集中しようとしても、昨日の夜の記憶がぐるぐると渦巻いて、作業に精彩を欠く。
 昨日は、娘―留美の誕生日であると同時に、良夫と綾香の結婚記念日だった。
 それなのに。良夫は留美にだけプレゼントを買ってきて、綾香にはプレゼントどころか、一言もなかった。
 綾香はその無神経加減に、心の底から呆れ果てていた。良い夫と書いて良夫と読むその名前が、妻である綾香への痛烈な皮肉のように思えてくる。
 良夫は昔から、こんなに冷たい人だっただろうか? そう自分に問いかけてみて、すぐに、いや、そんなことはなかった筈だと否定する。
 以前はもっと大らかで、それでいて、細かな気遣いの出来る人だった。そもそも、出会った当初からこんな態度であったなら、間違っても結婚しようなどとは考えなかっただろう。
 よくよく思い返してみれば、良夫の『変化』の切欠は明らかだった。歯車が狂い始めたのは……二人の間に、留美が生まれてからだ。
 留美が生まれて以降、綾香に注がれていた愛情はすべて、留美へと向かっている。それは間違いないと、綾香は確信していた。
 良夫の本質は、大して変わってはいない。ただ、愛情を向ける相手が変わっただけなのだ。
 しかし、それを綾香は認めたくない、許せない。良夫と結婚したのはあくまで綾香であって、留美ではない。
 留美なんて、結婚という甘いお菓子のおまけとして添付された、安っぽい玩具に過ぎない。
 大体、綾香は良夫と一緒にいたいと思ったことはあっても、子供が欲しいと思ったことはなかった。
 綾香が留美を生んだのは『子供が欲しい』という、良夫の強い要望によるものだ。本来なら綾香は、自由気ままな二人暮らしを望んでいた。
 良夫が子供が欲しいと言ったところで、誰が面倒を見るのかと言えば、それは結局、綾香の役目になるのだから。
 閉めた扉の向こう側から、留美の遊ぶ声が微かに聞こえてくる。プレゼントを買って貰ったばかりで、上機嫌なのだろう。
 無邪気で悪意のないその笑い声すらも、綾香には嘲笑のように聞こえた。
 唇を歪めながら、ヘッドフォンを装着する。ピンをジャックに接続して、自分で編集しておいた環境音楽を流す。
 だが、風に揺れる木々のざわめきも、可愛らしい小鳥の囀りも、刺々しくささくれ立った心を解してはくれなかった。
 相変わらず作業の進捗状況は思わしくなく、打ち込むコードも、自然とスパゲッティになる。
 いかにも虫の湧きそうな見苦しいソースコードは、まるで綾香の心中を代弁したかのようだった。
 今はこれ以上続けても、泥沼に嵌るだけだ。綾香はそう判断して、作業を一時中断する。
 気分転換に煙草でも吸おうと、上着のポケットを弄る。が、出てきたのは半分潰れたマルボロライトの空箱だけだった。
 仕方ない、買いに行こう。そう思って、疲れた目を左手で軽く揉みながら席を立った。
 途中、リビングに置かれた水色の箱が視界の片隅に入る。
 綾香はなるべくそれを見ないようにしながら、簡単な着替えを済ませ、外出した。



243:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/23 00:08:48 NEniwn6D
 一級市民専用施設『セントラルタワー』十階。一級市民昇格試験、最終試験場。
 智信が通されたのは、銀色を基調としたメタリックな内装の部屋だった。大して広くはなく、病院の待合室程度の面積だろうか。
 背もたれ部分の後ろに、大海原の荒波を意識したと思われる曲線が彫り込まれている、一風変わったデザインのベンチに腰掛けて、事前に受けた指示通り、名前が呼ばれるのを待つ。
 両親の反対を押し切ってまで挑んだ、一級市民昇格試験だった。
 尋常ではないプレッシャーに押し潰されそうになりながらも、智信は筆記と面接をパス。後は今日行われる、最終試験を残すのみとなっていた。
 この最終試験さえ乗り切れば、智信は晴れて、一級市民資格を取得することができる。
 智信は、膝の上で組み合わせた手を僅かに震わせながら、落ち着きなく周囲に視線を泳がせる。
 同じ境遇の人間―胸に番号札を付けて待機している受験生は、智信の他に三人いた。
 スーツを着た、サラリーマン風の中年男性。白い髭を蓄えた、壮年の男性。智信と同い年くらいの、若い女性。
 他の受験者も、かなり緊張しているらしく、傍目から見ていても挙動不審だった。
 何と言っても、この試験は、天国行きか地獄行きかを決める、人生最大の分岐点なのだから、無理もないことではあるが。
「受験番号、五番、佐々野智信さん。三番扉前までお進みください」
 事務的なアナウンスが、智信の名前を告げた。三人の視線が一斉に、智信に集まる。
 智信は油切れのロボットのようなギクシャクとした動作で立ち上がり、扉の前に向かった。
「失礼します」
 そう一声かけて、プレートに『三』と記された扉を開く。
 部屋の中には、病院のCTスキャナーや、業務用タンニングマシンを連想させる、大掛かりな装置が設置されていた。
 そしてその隣に立っているのは、白衣姿の、一級市民らしい女性。胸元のネームプレートには『朽木百合』と書かれている。
「それでは、この器具を装着して、ここに横になってください。指示があるまで、動かないようお願いします」
 言いながら、彼女が差し出したのは、メカニカルなヘッドギアだった。
 ヘッドギアには、廃屋で際限なく生長した蔦のように、様々な色をしたコードが沢山絡み付いていて、それらは全て、一台のコンピュータへと繋がっていた。
 これを頭に被って、装置の上に横になれということらしい。智信は黙って、指示に従う。
 智信が装置の上に横たわったのを確認して、百合はコンピュータに向かい、スイッチを入れた。
 装置の駆動音と、コンピュータの起動音が重なり合い、微かなノイズが鼓膜を揺さぶる。
 装置の床は智信を乗せたまま上へとスライドして、智信の体全体を機械の中に収めた。間もなく足元の出入り口が閉まり、内部は完全に密閉される。
 何が始まるのか知らないが、閉所恐怖症には厳しいかもしれないな、などと呑気に構えていると、突然、光と色の洪水が襲ってきた。
 テレビのテストパターンのような、目の痛くなるくらいの原色である。智信の周りを、多彩な色をした光が、形を成して飛び回る。
 光は数秒毎に、休む間もなくその姿形を変化させる。それは花であったり、蝶であったり、雲であったり、鳥であったりした。
 智信は体を横たえたまま、目線だけをあちらこちらに動かして、暫しの間、その幻想的な光景に見惚れていた。
 そのまま、随分長い時間、寝かされていたように思う。
 昨日の夜、充分な睡眠時間が取れなかったこともあって、少々眠気を催して来た頃、出入り口が開いて、床が下にスライドした。
「お疲れさまでした。器具を外して、右手の扉へ」
 智信は呆けた顔でヘッドギアを外して、立ち上がる。
 あのヘッドギアと、装置の中で見た映像は、一体、何の意味があったのだろうか?
 この最終試験の趣旨がいまいち呑み込めず、智信は首を傾げる。まさか、ロールシャッハテスト、というわけでもないだろうが。
 考えてみた処で、今はわかりそうもなかった。疑問を頭の奥底に押し込めて、智信は右手の扉へと歩く。

244:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/23 00:12:00 NEniwn6D
 扉の向こうは、コンピュータルームと言って差し支えない様子だった。部屋の約半分が、無数のコンピュータで埋め尽くされている。
 その部屋の中央に配置された大きなデスク。そこに、白衣の女性が座っていた。ネームプレートには『叶綾香』と書かれている。
「そこにかけてください」
 綾香はデスクの向かいに用意されている椅子を手で示して、智信に座るよう促した。
 智信は椅子に座り、綾香と向かい合う格好になる。先の装置の中で横になっている内に和らいだ緊張が、また蘇ってきた。
 ごくりと生唾を飲んで、試験官だろう女性―叶綾香の、第一声を待つ。
「ようこそ、ラストステージへ」
 そう言って、綾香は微笑を浮かべ、大きく両手を広げた。嫌に、芝居がかった仕草だった。
「これより、最終試験『project whitebox』を開始します」
 綾香はそう宣言すると、デスクに積まれた書類を手に取り、ページを繰っていく。
 綾香の一挙手一投足に注目しながら、智信は考える。雰囲気から察するに、最終試験も面接になるのだろうか。
 もしそうであれば、下手な言葉は命取りになる。細心の注意を払わなくてはならない。智信は姿勢を正して、気を引き締める。
「筆記試験、用紙E、設問十九番の内容を覚えていますか?」
 書類に目を落としたまま、おもむろに、綾香は質問を投げた。
 何故今になってそんな質問を? 記憶力のテストなのか?
 質問の意図が掴めず、少し戸惑うが、答えに詰まるような問いではなかった。
 記憶力には、それなりに自信がある。智信は胸を張って答えた。
「はい。確か『自分よりも弱い立場の者の為に、命を投げ打てますか』でした」
「正解です。そして―」
 一拍間を置いて、綾香は唇の端を吊り上げる。
「あなたはその設問に『YES』と回答しています」
 手にしていた書類をデスクに戻して、綾香は続ける。
「あなただけが例外、というわけではありません。
実に九割以上の受験者が、その設問に『YES』と答えています。それが本当なら、とても素晴らしい世の中になるでしょうね。
それこそ、一級市民による管理など、必要ないかもしれません。ふふ……これは失言でしたか。忘れてください」
 どこか嫌味たらしい口振りではあったが、言いたいことはわかる。確かに、その設問への回答はどうしても、受験者の本音とは考え難いのだろう。
 実際、智信もそうだった。自分がどう行動するかなど関係ない。これは試験なのだからと割り切って、先方が望むであろう答えを書いただけだ。
 筆記試験や面接試験なんて、大抵はそんなものだ、と智信は思う。
 良く就職面接で、我が社の志望動機は?なんて質問があるが、あんなもの九割九分九厘嘘だ。
 面接官の前では『環境問題への取り組み等、御社の崇高な理念に心を打たれ~』と云うような、歯の浮くような美辞麗句を並べ立てるが、本音を曝け出してみれば『仕事が楽そうだったから』だったり『給料が良いから』だったり『なんとなく』だったりする。
 聞いた話ではあるが『受付嬢に一目惚れしたから』なんて理由まで出てくる始末だ。そこまでいい加減だと、会社にとってはいい迷惑だろう。
「受験者の発言と行動が一致するか否かは、実際に試してみるまでわかりません。そして、この『project whitebox』は、言葉に潜む欺瞞を見抜いて、受験者が真に一級市民として相応しい人格を持っているかどうか試すものです」
「……それは、どういった形で試すのでしょうか」
 綾香は、よくぞ聞いてくれたといった表情で、頬を緩める。
「欺瞞を見抜くとは言っても、別に、ポリグラフのような前時代の遺物を使おうというのではありません。仮想空間内に生み出された『もう一人のあなた』に、極限状況を体験してもらいます」
 仮想空間。もう一人のあなた。予想もしていなかった展開に、智信は驚きを隠せない。


245:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/23 00:13:17 NEniwn6D
「先程、別室でヴァーチャルブレイン用のギアを身に付けましたね? あの時に、あなたの脳のコピーがコンピュータ内に作成されました」
「コピー……ですか」
「そう、コピーです。これから、そのコピーに簡単な記憶処理を施した上で、仮想の体を与え、極限状況の中に放り込みます。そして、仮想空間内でのあなたの行動から、その人間としての器を量ります」
 綾香はそこで一つ、咳払いをする。
「ここまで、理解できたでしょうか」
 智信は黙って頷くしかなかった。
「それでは、本題である、その『極限状況』の内容についての説明に入ります。こちらのスクリーンを見てください」
 綾香が手元のリモコンを弄ると、デスクの後方にある大きなスクリーンに、光が灯る。
 そこには、暗闇に浮かぶ真っ白な立方体と、一人の少女の姿が映し出されていた。
「コピーには、外部から隔離された部屋で、少女と二人きりになってもらいます。この少女も、過去に実在の人間からコピーされた脳で動いており、条件はあなたのコピーと同じです」
 言いながら、綾香はリモコンのスイッチを押す。と、カメラは、白い立方体に向かってズームインした。
 俯瞰視点故、宙に浮かぶ巨大なサイコロのようにしか見えなかった立方体が、スクリーン全体を覆い尽くす。
 カメラはそのまま壁をすり抜けて、立方体の内部に潜入した。
「部屋に存在するのは、ベッド、トイレ、それから、箱に詰められた僅かばかりの食料のみです。また、コピーを動揺させる、ルールと呼ばれる仕掛けも用意されています」
 パイプベッド、水洗トイレ、包装された箱、液晶画面。カメラは目まぐるしく切り替わる。
「これはサバイバルではありませんから、コピーの体調、生存日数などは一切評価に影響しません。評価対象となるのは、あくまで『行動』です」
「今まで合格された方は……どういった行動を取って、評価されたのでしょうか?」
 智信は恐る恐る、そう聞いてみた。
「そうですね。試験の趣旨、ルールの特性を併せて考えると『少女よりも先に死ぬ』のが最大の条件になってくるのではないでしょうか。生への執着は、大きな失点に繋がります」
「わ、わかりました……ありがとうございます」
「他に質問はありますか?」
 智信が、いえ、と首を振ると、綾香は一息ついて、椅子に寄りかかり、足を組み替える。
「さて……これで概要の説明は終了となりますが、現在、コピーの記憶処理中です。もう少し時間がかかりますので、それまで待機していてください」
 そこで綾香は、デスクに置かれたランプが点灯しているのに気付いた。
 もうコピーの記憶処理が完了したのかもしれない。綾香はボタンを押して回線を開き、相手からの言葉を待った。
 智信は、視線を下に向けて、綾香に聞こえないよう、小さく息を吐く。最後の最後でなんというテストだ……そう思わずにはいられなかった。
 はっきり言って、智信は率先して弱者を助けようと思うような人間ではないし、生への執着だって、人一倍ある。それは本人が一番良くわかっていた。
 それでも……ここまで来てしまった以上は、止めますとも言えない。もう、奇跡でも起きてくれることを願うしかないのだろうか。
 絶望に打ちひしがれながら、智信は口の中で、もごもごと呟く。

「畜生、なんてことだ……」

「なんてことだ……」

「頼む……!」

「頼む……死ぬんだ。死んでくれ……!」

 綾香は、おかしい、と思った。回線を開いた筈なのに、いつまで経っても、声が聞こえて来ない。そして、ランプの表示を確認して、自分の間違いに気付く。
 どうやらボタンを押し間違えて、タワー内を繋ぐ回線ではなく、仮想空間内への回線をONにしてしまっていたようだった。しかも、性質の悪いことにボリュームはマックスである。
 もしかすると、記憶処理済のコピーに室内の雑音が届いてしまったかもしれない。試験に影響を及ぼさないといいのだが……
 自分らしくない、馬鹿げた失態に眉を顰めてから、素早くボタンを押し直す。 
「叶博士。後一分弱で、五番コピーの記憶処理完了します。コンピュータの準備をお願いします」
「わかった」
 答えを返しながら、綾香はほっとする。まだ記憶処理は終わっていないらしい。 
 記憶処理の最終段階で、処理中の記憶は消去される。仮に、何か聞こえていたとしても問題はない。

246:名無しさん@ピンキー
07/09/23 00:13:39 e8uJgLWz
リアルタイムwktk(・∀・)

247:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/23 00:16:37 NEniwn6D
「お待たせしました。それでは、これより試験を開始します」
 綾香は回線を切り、コンピュータを起動させると、智信に向き直った。
「左手の扉から退室して、案内人の指示に従ってください」
 智信は返事を返すと、力なく立ち上がった。目礼をして、部屋を立ち去る。
 扉の外には、既に案内人と思われる若い女性が待機していた。ベルガールのような衣装の上に白衣を着込んでおり、どこかミスマッチだ。ネームプレートには『草加碧』と書かれている。
 女性―草加碧は、智信の姿を認めるなり、早口で喋り始める。
「ええっと、最終試験の概要は中で、叶博士に聞きましたね?」
「は……はい」
 碧はごそごそと白衣のポケットを探り、メモを取り出して、朗読する。
「えっとえっと。機器にかかる負荷の関係から、等速以上の速度で処理することは不可能ですので、試験は長期間に及びます。
受験者専用の部屋を用意していますので、これより試験終了まで、そちらに寝泊りしていただきます。食事はこちらで手配しますので、心配は要りません。
また、室内に備え付けのモニターで、コピーの様子を二十四時間確認できます!」
「はあ……」
 受験者は部屋で、コピーの活躍をリアルタイムで見守るらしい。
 それにしても、なんというか……個性的な人だ。
 最終試験の内容を聞いて、気分が落ち込んでいた智信にとっては、彼女の妙なテンションは毒にしかならなかった。
 とはいえ、彼女も一級市民である。今回のような試験の場合、案外こういうタイプの方が、裏表がなくて良いのかもしれない……智信は疲労した頭で、そんなことを考える。
「それでは、一名様お部屋にご案内しまーす。ついてきてくださいね」
 ここには『一名様』以外来ないだろう……という突っ込みも空しく、智信を先導するようにして歩き出す。
 碧は廊下を歩きながら、先のメモをポケットに戻して、新しいメモを取り出す。
「それからそれから。仮想空間内における整合性保持の為、脳のコピーを取ると同時に、受験者の体格、網膜すい体細胞の感度等のデータも取得していますが、合否に関わらず、試験終了後それらは全て破棄されますのでご安心を!」
 読み終わったかと思うと、やおら立ち止まって振り向き、ノーリアクションの智信の顔を覗き込む。
「……ご安心を?」
「あ……はい」
 終始、そんな調子である。それほど長い道のりではなかったのだが、智信は部屋に到着する頃には、大分消耗していた。
「それでは、ごゆっくり~」
 呑気な声と共に、ぱたん、と扉が閉められる。
 智信はがっくりと肩を落としながらも『project whitebox』と刻印されたモニタのスイッチを点ける。
 画面の中には、眠っている少女を起こそうとしている『もう一人の智信』が映っていた。
 データを取ったというだけあって、体格こそ似ているが、顔は殆ど別人のものだった。
 智信は化粧台の前に置かれていた椅子をモニタの前まで引き摺ってきて、そこに陣取り、固唾を飲んで、コピーの動向を見守った。

248: ◆SSSShoz.Mk
07/09/23 00:18:28 NEniwn6D
>>219からの続きです。長い間意味不明だったプロローグも含め、今回で八割方謎は解けました。次回か、その次あたりで終了かと思います。
「畜生」という言葉は智信の口癖ですので、ことある毎に使っています。それがプロローグと本編を繋ぐ小さな接点でした。
ちなみにTIPSが消えたのは終盤になって物語外での補足をしなくてもよくなったというそんな理由であります。
>>224
おお、すごい。今回の展開を見ればおわかりの通り、さっぱりどころかほぼ完全正解です。
あとは細部がどうなっているのか、の解説ですね。

249:名無しさん@ピンキー
07/09/23 00:21:46 CdN3LxfI
リアルタイムktkr

250:名無しさん@ピンキー
07/09/23 00:51:20 rYzXUCeo
リアルキタ→

GJです。こういう展開好きだわ

251:名無しさん@ピンキー
07/09/23 02:07:06 eumIkMoc
>>248
続きまってましたー GJ!
お、どうやら大枠の想像(>>224)は間違ってなかったっぽいですね。
今までぶつ切り&小出しにしてきた「箱の外」の情報も、今回のでつながってきた感じ。
残り少ない続きもwktkでお待ちしてます。

…しかしこの試験、しかも結果を自分で見させられるってのは、もの凄い拷問だよな。

252:名無しさん@ピンキー
07/09/25 02:14:36 xmppOMqM
俺的にはラピエス以来の超傑作だな。。。
他にも素晴らしいものはあったがコレは凄い。
期待しときまふ

253:名無しさん@ピンキー
07/09/25 10:24:06 mbShhNot
なにこの超ハイクオリティスレ
エロパロの枠じゃないじゃん。大多数の一般小説より上じゃん。


254:名無しさん@ピンキー
07/09/25 21:17:21 Ar7BW4W4
推理小説て言って見せられたら本当にそう思うかも知れないクオリティ。GJの言葉しか贈れない。

255:A/B ◆iok1mOe6Pg
07/09/26 10:12:01 1Xsm51ok
A/B。>>155の続き


  *  *  *

 戦闘機が通過する音が過ぎ、直後に爆発音がする。その音にザパドノポリェワは振り返った。
「……クラッシュした?」
 黒煙が立ち上るのが見える。彼女はその方向に足を向ける。
 不意に、何か巨大な影が通過する。彼女は空を見る。白とオレンジのストライプ模様のパラシュートが降下していた。あれは、何度か見た敵パイロットのパラシュートだ。
 自然と、足はその方向に向いていた。

256:A/B ◆iok1mOe6Pg
07/09/26 10:14:50 1Xsm51ok

  *  *  *

 ヘルメットのヴァイザに付着した落葉を取り、そのヴァイザを上げてアズマは起き上がる。
 彼は予想通りの落下地点に降下した事で上機嫌だった。パラシュートが木に引っかかり、想定した降り方をせずに体を強く地面にぶつけてしまった事だけが心残りだったが。
 周辺は腐葉土と落ち葉なので、強くぶつけたといっても痛みはそれほどではなかった。彼はナイフで紐を切り、身軽になる。
 酸素マスクと耐G服を外す。防弾性もありいろいろ道具も入っている救命胴衣は捨てられない。ヘルメットは勿体無いから持ち歩く事にした。
 そしてパラシュートと紐でつながっている先にある保命生存用品が入っている鞄から29式自動拳銃とその予備マガジン2本を取り出した。
 着水したわけではないから、救命浮舟は開いていない。これも切り離して破棄する。救難無線機は既に起動していたが、端子を接続しても音が聞こえない。
 仕方無しに彼は端子を外す。そして鞄の中身を確認し、その中にある蒸留水の入ったボトルを取り出し、開けて飲む。水が染みてきている。体が震える。
「うう寒っ。これ耐水耐寒じゃねえのかよ。まあいい、その辺の民家にでも行ってみよう」
 移動しようとした矢先、発砲音。おもむろに後ろに29式自動拳銃を向ける。そこにはスラヴ系の女性が1人、こちらに拳銃を向けている。フライト・スーツを着ている。
 その女性は、恐らく彼女の国の言葉で何か呟いた後、彼に声をかけた。
「Throw your gun over.」
 武器を捨てろ。彼は確かにそう聞き取った。だが、彼女が持っているのはただの拳銃。その気になれば、自動拳銃を彼女に向けている彼が明らかに有利だ。
「What you do if I won't do it?」
 そうしなかったら?
「貴様を撃つ」
 アズマはため息をつく。足に力を入れ、瞬時に右に転がる。女性は拳銃を発砲。しかし当たらない。今度は彼が発砲。うち2発の4.6ミリメートル口径弾が彼女の左脚を貫通した。
 くぐもった悲鳴を上げ、女性の手から拳銃が滑り落ちる。そして彼女はうずくまる。
「ただの拳銃でこれ相手は、さすがに厳しいと思うぞ」
 アズマは彼女に近付き、落ちた拳銃を拾う。
 マガジン・キャッチを押してマガジンを出し、スライドを引いてチェインバの中の弾薬を排出する。
 そのまま銃本体を保命生存用品の方に投げ、落ちた弾薬を再びマガジンに入れ、そのマガジンをポケットに入れた。
「北海道土産が捕虜か。もっと土産っぽいものが欲しかったぜ。白い恋人とかビールとか」
「……殺せ。捕虜にするくらいならとっとと殺せ!」
「やだ。弾が勿体ない。あくまでもあんたは捕虜だ。まあ、そんなに捕虜になりたくないんだったら、自殺でもすれば? 俺は止めない。ナイフ、持ってるんだろ?」
 女性の言葉をアズマは意に介さない。女性はアズマから目を逸らした。
「自殺する勇気が無いんなら『殺せ』なんて言うな。そういえば、あんた、多分戦闘機のパイロットなんだろうけど、保命生存用品はどうした?」
 女性は黙ったままだ。アズマは彼女の来たと思しき方向を見る。それと思しき鞄が木に立てかけてあった。
「あるじゃん」彼は女性から離れ、箱に近付く。「捕虜として俺についてくるんなら、とりあえずナイフ以外はあんたのものだ」
 彼は箱を開け、その中に入っているサヴァイヴァル・ナイフをポケットに入れる。
「命の保障は、するか?」彼女はおずおずと訊いた。
「勿論。別に敵兵狩りやってるわけじゃないし。じゃあ、とりあえずナイフ出して」
 彼女は地面に、パラシュートと自分を継ぐ紐を切ったであろうナイフを突き立てた。
「交渉成立だな。俺はキョウスケ・アズマ。中尉だ」
「……オリガ・ニコライエヴナ・ザパドノポリェワ大尉」
 名前、正確には階級を聞いた瞬間、アズマは突き立てられたナイフを引き抜く手を止めた。
「階級俺より上かよ。これは、失礼しました」
「いきなり恭しくなるな、疲れる。さっきまでの対応でいい」
「ラージャ、大尉」
 彼らはその手を取り合った。

257:A/B ◆iok1mOe6Pg
07/09/26 10:18:42 1Xsm51ok

「あれ? 壊れてんのか?」
「どうした?」
 アズマは自分の救難無線機で連絡を取ろうとしたが、それが動かなかった。ビーコン波は出ているようで、それを確認する発光ダイオードは普通に点滅している。
 ここは胆振県八雲町の小さな神社の本殿だ。周囲に民家は無い。民家跡ならあるが。神社の背後は森だ。雨に濡れたハーネスや上着は床に広げてある。しかし乾く当ては無い。
「通信機が壊れてるっぽい。おばあちゃんの45度スパンキングでも反応無しだ」
「何だそれ? ん、Дерьмо(くそ)! こっちのは電池が液漏れだ。まったく、運が悪いなんてものじゃない」
 ザパドノポリェワも通信機を動かしていたが、それも壊れていた。電池がやられているのでビーコン波すら出せない。
 結局アズマは神社に放置されていた傘を自分の発信機にかぶせてそれを鳥居の下に置いた。
 救難無線機はその位置を周囲に伝えるための発信機の役割と、救助隊との連絡手段という役割を持っている。その内の連絡手段が封じられていた。
「このあたりの住人はみんな避難したみたいだしな、勝手に上がり込んで電話か何かを使うのも気が引ける」
「別にいいだろう。非常事態だ」
「あのなあ、あんたの国とは訳が違うんだ。ここは俺らの国で、住民は殆どがその国民なんだよ。制式に徴発しないと使えないんだ。あーあ、公衆電話くらい無いかな……」
「あっても使えないだろう。まったく発想が貧弱だな」
 通信機を脇にやり、アズマはザパドノポリェワを見る。
「はっきり言うね……」
「……アズマ、と言ったな。お前は私を捕虜にして、どうしようというんだ?」
 思いもよらない質問に、アズマは答えに窮する。
「敵から情報得る、というのは分かる。だが、自分の身の安全とそれとを天秤にかけたら、自身をとるだろう。明らかにお前に敵意を持っている私を確保しておくのは、無駄だ」
「本当にそうかな」
 アズマは反論する。
「少なくとも、俺はあんたを助けて正解だと思うけどな。あんたを捕虜として扱うのは、ただ俺が軍人っつー身分だって理由だけだ。別に恨みとかは無いよ」
 彼女は何も言わない。
「あとは、そう、俺が与えた怪我だし、そこらへんは俺が責任取らなきゃな。そうじゃなくても、目の前に怪我した女性が居れば、敵味方関係無く助けただろうし」
 あの後アズマはザパドノポリェワに応急の手当てをした。その間も敵意の視線は向けられていたのだが、彼はそれをあえて無視して止血をしたのだ。
「軍人失格だな」
「よく言われる。大学でも同じ事言ったら『敵を殺さずに何のための軍人だ』ってな、先生方にも生徒にも。殺したら殺したで『人道』がどうのこうの言うくせに」
 ザパドノポリェワはアズマを見る。
「大学? 生徒? お前は軍人じゃないのか?」
「即応予備役さ。一度軍人辞めて、あんたらが攻めてくるまで大学で軍事学を教えてた。で、俺のゼミの生徒に、北海道の出身の連中が結構居る。あいつら何やってるかな」
 アズマは格子の外を見る。1524時。そろそろ日が傾きかける頃だろうか。
 その様子を、ザパドノポリェワは多少の罪悪感を込めて見た。そして不意に、ある事に気付く。

258:A/B ◆iok1mOe6Pg
07/09/26 10:19:22 1Xsm51ok
「……アディーン・シェスティ・シェスティ」
 アズマの左肩。そこに、部隊のエンブレムがある。その下に、「24-8166」と刺繍してある1枚の布が貼り付けられていた。
「うん?」
「お前、機首番号が166の、カナード翼の付いた機体に乗っていなかったか?」
 アズマはその番号を復唱する。確かに、愛機の機首には166という番号が書かれていた。機体番号は24-8166だ。そして機体にはカナード翼が付いていた。
「なんだ、あんた俺の機体番号知ってるのか? これ、尾翼に書いてある番号なんだけど」
「……信じられん……。私を落としたのは、もしかしたらお前かもしれない」
 それは軽い驚きだ。アズマにとっては。ザパドノポリェワにとっては強烈だった。
「あんたは何に乗ってたんだ?」
「382のJ-27Aだ」
 アズマは自身の落とした機の番号まで確認しなかった。だがその機体の名前、J-27Aに反応する。彼が落としたJ-27Aは1機だけだったはずだ。
「もしかして、上が蒼くて下が灰色の塗装の機体じゃないか?」
「……そう、だ」
「マジ? 俺にミサイル撃った?」
「ああ」
「ひと月くらい前、俺に落とされた?」
「落とされてはいない! 右の尾翼を失っただけだ!」
「そうだっけ。いや何とも、凄い偶然だな。ははっ、世間ってのは狭いな」
 アズマは旅行先で友人に会ったときのように喜ぶ。それを見て、ザパドノポリェワは言う。
「お前は本当に軍人らしくない! お前みたいなのがあんないい機体に乗ってるなどとは、空の戦士に対する冒涜としか思えん!」
「ひでえなあ。まあいいか。俺の機体な、あれ、ヨンマルシキ・ニジュウニゴウ・イ・セントウキ、愛称を『ホウフウ』ってんだ。言い換えると『Type 40 F-22A』かな?」
 彼は指でその形を描きながら言う。
「機動性はあんたの『鶴』よりもいいって話だ。まあ、あんたのは『鶴』ってよか『猛禽』だけど」
「『猛禽』はお前の方だ」ぼそりと、彼女は呟くように返す。
 彼は不意に聞こえた言葉に目を向ける。そして微笑み、言った。
「お褒めに預かり光栄です、大尉」
「ああ。……いや、あの、お前じゃなくお前の乗る機体がそうだって事でな……」
 彼女は顔を真っ赤にして手を振る。それにアズマは笑い出す。
「なっ、何がおかしい!」
 ザパドノポリェワは真っ赤なまま激昂する。だが彼は笑ったまま、違うと言い、続けた。
「あんた、俺を軍人っぽくないって言ったけど、あんただってそうだぜ?」
「は?」
「あんた、かわいいよ。顔だってキレイだし、やっぱ美人は表情が豊かじゃないと」
 充分赤かった顔が、更に赤くなる。そして身を乗り出して叫ぶ。
「な、何言ってるんだ! 私は敵だ! 敵に対して……」
「それとこれとは関係無いって。美人は美人」
 反論した体勢で、彼女は彼を睨む。
「怒った顔もかわいいなんて、あんた反則だって」
 彼女は下を向く。そしてアズマに背を向けた。
「もうお前など知らん!」
 アズマはそれに苦笑すると、通信機の修理を始めた。
「……スパスィーバ」
 ザパドノポリェワはふと呟く。
 彼女自身、美人といわれた事は何度もあった。軍人になってからはしかし、そういわれる事も少なく、また彼女自身性別を関係無くして同僚と勤務中の付き合いをしていた。
 好意的に言われる事に対して、いつの間にか抵抗が出来てしまっていた。それを彼女は無性に悲しく思う。
 だが「ありがとう」と言ってから、やはり恥ずかしさがこみ上げてくる。
「何か言ったか?」
「何でも無い!」
「おいおい、何怒ってんだよ」
「何でも無いと言っているだろう!」
「はいはい。……どういたしまして」
 彼女は振り返る。
「……聞こえてたのか?」
「一応な。『スパスィーバ』って、『ありがとう』って意味だろ?」
 彼女は何も言えなくなる。頭を抱え、再び背を向けた。

259:A/B ◆iok1mOe6Pg
07/09/26 10:20:52 1Xsm51ok

 雨は止まない。遠雷のような戦闘機の爆音は1時間も前に聞こえなくなり、たまに爆発音が間延びして聞こえてきた。南の方で戦闘が繰り広げられているのだろうか?
 日が暮れてきた事で更に気温が低下する。アズマは出撃の前に見た地上天気図を思い出す。津軽海峡を停滞前線が横切っていた。秋の長雨だ。
 彼はとうに通信機の修理を投げ出していた。どういう衝撃が加わったのか、基盤が真っ二つに割れていたのだ。発信機部分は無事だが、最早ジャンクである。
 ザパドノポリェワの通信機は電池の液漏れが起きており、しかもその液がいろいろな部分に浸透していた。ジャンクにすらならない。
 アズマは壁に寄りかかり、口笛でいろいろな曲を吹いていた。また、ひとつの曲を吹き終わる。
 不意に、肌を摩る音を彼は聞く。彼は、鞄を枕にしているザパドノポリェワを見た。レスキュー・シート、つまり紙のような薄さの熱遮断シートが僅かな光を反射している。
「寒いのか?」
 彼女が彼を見る。レスキュー・シートの隙間から入る風。さぞ寒かろうに。
「お前に心配されるいわれは無い」
「あるよ。あんたは捕虜。俺は人権条約だか戦時人身条約だかで捕虜を丁重に扱う義務があるんだ。あんたが体調を崩してこっちを訴えられても困る」
 当該条約の捕虜条項では、捕虜の待遇を事細かに規定している。条約の批准国はこれに則らなければならない。
「しかし、お前は条約を遵守しているわけではない。私が許可した事だが、お前は私を上官として扱っていないではないか」
 捕虜は軍人である必要がある。軍人にはその指揮系統上階級が存在し、捕虜はそれに則した扱いを受ける権利を有する。
「上官として扱われる権利の一部を、あんたは捨てただろ。そんなあんたに条約の遵守云々について言われたくはないな」
 彼女は言葉を発しない。論では勝てない事が分かったようだった。
「あんたに傷を負わせたのは俺だ。出血だって、まだ完全には止まってないと思う。そのせいで失血死なり凍死なりされたら、俺の夢見が悪すぎる」
 ザパドノポリェワはアズマを見た。真剣な顔で、彼は目を合わせる。
「だから、死ぬな」
 彼女は顔を背けた。
「あれだけ、私の国の航空機を落としておいて、よく言う」
「機上から見る分には、生身じゃないからな。まあ、かなりの人数殺してるってのは自覚してる。だからって、目の前の今会話してる奴が次の瞬間に死ぬのを、俺は耐えられない」
「自分勝手だな」
 その一言に、彼は微笑む。
「そうさ。死なせたくない奴のためなら、俺は出来る事の全てをやるつもりだ。だからさ、俺を頼れ」
 ザパドノポリェワは起き上がり、壁にもたれる。
「では、緊急事態になったらそうしよう。でも私はまだ余裕がある。その状態で『頼れ』といわれても、了承は出来ない。それとも、捕虜の主張は受け入れられないか?」
「とんでもない。オーケイ、折れるよ。あんたの心情を尊重しよう」
 彼はそう言いつつ、鞄を引き寄せる。
「でもとりあえず、これ持っとけ」
 アズマは鞄から救命保温具と書いてある薄い袋を取り出してザパドノポリェワに投げる。
「何だこれは?」
「袋から出して、出てきた袋を揉んでやれば段々あったかくなるものだよ。振ってもいい」
 彼女は言われたとおりにそれを扱う。
「なるほど、確かに熱くなってきたな」
「だろ? 冬場は重宝するんだよな。さて、話もひと段落したし、ここらでメシといかないか? いい時刻だ」
 ザパドノポリェワは「メシ」という言葉に無意識に反応する。先ほどから空腹を訴える音は互いに聞こえていたが、今のは一切大きかった。彼女は硬直したままだ。
「訊くまでもないみたいだな」

260:A/B ◆iok1mOe6Pg
07/09/26 10:23:33 1Xsm51ok
 アズマは鞄の中から戦闘糧食の入った袋を取り出す。取り出した袋には「38式救命糧食・6食分」というレーヴェルが張ってある。アズマはそれを持ってザパドノポリェワに歩み寄る。
「隣座るぞ」
「なぜだ」
「あんたとよく話したいから」
「……」目を見開いてザパドノポリェワはアズマを見た。「……理由になってない」そう言って彼女は眉間を寄せる。
「なんだよ。明確な理由だ。向かいの壁だと、暗さと距離であんたの顔が見えにくい」
「別にいいだろう」
「駄目だね。会話は、互いの顔を見ながらやるもんだ。そうじゃないと、互いを理解出来ない」
「しなくていい」
「俺は理解したい。あんたを」
 彼女は顔を逸らす。
「……好きにしろ」
「オーケイ。じゃあ、隣りな」
 言ってアズマはザパドノポリェワの左側に腰掛けた。
「んでさ、これ、俺の国のレーション(戦闘糧食)なんだけど、あんたのは?」
 彼女は渋々と自分の用具入れから箱を取り出した。「В」と大きく書かれている濃緑色の小箱だ。彼らはそれぞれ持ち物を開ける。
 38式救命糧食の袋を開けて最初に出てくるのが、通称「がんばれ紙」というプリントだ。
 「がんばれ! 元気を出せ! 救助は必ずやって来る!」
 この文面で始まるそれを由来として、代々の救命糧食は空軍パイロットの間で「がんばれ食」と呼ばれている。
「そんなのが入っているのか」
 ザパドノポリェワは紙を見て驚いていた。
 「この救命糧食は、特殊環境においても速やかに心身の疲労を回復し、体力の維持をはかるために製造されたもので、糖類・脂肪・たん白質などの各種栄養素が有効に取れるように配合されています」
 「1食分のカロリーは約270カロリーあり、これを食べると熱とエネルギーを与え、直ちに元気百倍となります」
 この表記を、アズマは気に入っていた。見知らぬ土地、やもしたら外国かもしれない土地で自分の母語に触れるという事は、それだけで心が休まる事である。
「しかし、私のには入っていない」
「その代わりなのか知らないけど、パッケージは楽しいな」
 ザパドノポリェワの救命糧食には、その1食分の袋にコミカルな絵が印刷されているレーヴェルが張ってある。どの袋も違う絵だ。
「パイロットの間でも、これらの絵を集めている奴がいると聞いた事がある」
「へえ。でもこれ、被ったら凹むなあ」
 38式救命糧食の内容は、厚手のビスケットだ。「がんばれ紙」には励ましの言葉の他に糧食の内容も書いてある。
 それによると、「穀類を主原料とした加工食品で、糖質と脂肪及びたん白質を含み、ビスケット風な味と香りを持つ高カロリー食品です」との事だ。
 他方ザパドノポリェワの「救命糧食В[ヴェー]」は、クラッカだ。38式救命糧食と同様に栄養分を調整されており、同梱のジャムを付けて食べるのだという。
 彼らは同時に小袋を開ける。そして2人とも一口食べる。
「美味そうだな。半分くれ。半分やるから」
「何だ、いきなり」
「いや、これ口当たりはいいんだけどさ、ビスケットなだけあってやっぱぼそぼそしてるから、さっぱりしたもの食いたくて。や、ジャム分けてくれるだけでもありがたいけどさ」
 彼らは自分の糧食の半分をそれぞれ交換する。交換した38式救命糧食を一口食べ、ザパドノポリェワは言う。
「確かに、これは水分が欲しくなる糧食だな。個人的には塊がひとつだけ、というのが気に食わない」
「同感。ジャム付けてみたら? 以外にいけるかも」
「塩味が強調されそうな気がするが」
「じゃあ俺がやる」
 アズマは彼女の左膝の上にあるジャムの袋を取った。
「……誰が使っていいって言った?」
「じゃあ左膝に乗せるなよ。ご丁寧にこっちに切り口じゃない方を向けてさ」
 彼女はやはりアズマから顔を逸らした。
「ま、断りは入れとくべきだったな。すまん。で、使っていい?」
「……好きにしろ」
「おう。そうする」
 アズマはジャムをビスケットに塗り始める。
「……いや、少し残しておけ」
 唐突な呟きに、彼は笑う。
「な、何だ」彼女は怒ったような顔を向ける。
「いや、あんた、ホント、かわいいな、って」
 アズマはジャムの袋を彼女に差し出す。それをひったくって、彼女は言った。
「じょっ、上官をからかうのもいいかげんにしろ!」

261:A/B ◆iok1mOe6Pg
07/09/26 10:26:27 1Xsm51ok
 その時だった。爆発音と衝撃波が社を揺さぶったのは。
「……話する暇なんて無かったな。とっとと食っちまおう」
「ああ。同感だ」
 2人とも、軍人の顔になる。アズマは、いやザパドノポリェワも素早く糧食を完食する。アズマはそこから立ち上がり、出来るだけ足音を立てないようにしながら自らの鞄を持つ。
 そして立てかけていた29式自動拳銃を持って構える。ザパドノポリェワも鞄を閉じる。
「弾着が近い。もしこっちのだとすると、建物には必要以上に手をかける事は無い筈だ」
「だがこちらなら、容赦無く破壊するだろうな」
 意見が一致する。また爆発音。付近には戦車砲と思しき音。攻撃ヘリコプタの爆音もする。短いスパンで銃撃する音。いやでも緊張する。
 アズマは鞄の中から拳銃を取り出し、マガジンをグリップに挿入する。そしてそれを、ザパドノポリェワに渡した。
「どういう事だ?」
「ここが危険だという事だ。いくらビーコン波がレーダ波と違っても、ひと目見ても分からないかもしれない。ここがウチらの攻撃の対象になる事だって考えられる」
「逆に私たちから攻撃される可能性もある、という事か。それと私に銃を返した事と、何の関係がある」
「ここから避難しようと思ってな。あんたはまだ手負いだし、肩くらいは貸す。それで、避難の最中の互いの護身に、あんたに銃を返した、ってわけだ」
「そう、か。脚は大丈夫だ。多分。だが何処に行こうというんだ」
「もう少し標高の高い所だ。どっちの軍も、機動に向いてない場所には行かないだろ」
「分かった。だがビーコンはどうする?」
「置いていく。持って行くのは自殺行為だ」
「そうは思えない。周波数は確実に違うんだろう?」
「ああ。だが俺は戦車とかヘリとかのレーダ表示がどうなってるのか知らない。不明なものはリスクでしかない。だから切り捨てる」
「お前は馬鹿か。その不明なものがここにいるだろう」
 ザパドノポリェワは自分を指差す。
「お前は私がお前を撃たないと信じてこれを私に返したんだろう? 撃たないかどうか不明なのに。なら、ビーコンを持たないのはその主張に反する」
「人間とビーコンは違う」
「そうだ。だがな、私はこう教わった。戦場で大切な事は、憎しみを持たない事、生き残る事、そして自分の決めたルールを守り抜く事だ。お前は、そうじゃないのか?」
 アズマはザパドノポリェワを見た。そして再び社の入り口を見る。
「……アズマ……」
「俺の教官も、あんたの教官と同じ事言ってたな」
「そう、だったのか」
「思い出したよ。教官の第1声がそれだった。畜生、いい言葉じゃねえか。くそ、俺は馬鹿だな、忘れてたぜ」
 彼は空いた左手で自らの頭を叩く。
「よし、不確実なものを持とうじゃないか。俺はあんたを信じる。まあ、後ろからズドンとされればそれまでだけどさ」
 再び爆発音。至近だ。爆風で社自体が軋む。
「どっちのか知らんが、こりゃいよいよ出時だな」
 アズマはビーコンを回収して中に戻ってくる。ザパドノポリェワは既に立ち上がって待っていた。
「忘れ物は?」
「私は無い」
「じゃ、行くか。脚は?」
「歩かないと、どうとも言えないな。まだ痛むが」
「傷口が開いたと思ったらすぐに言え。無理すんなよ」
「分かった」
 言って、彼らは神社を出る。大雨が迎える。彼らは裏の森から山に入った。直後、戦車砲か何かが神社の前庭に落ち、爆風で神社が倒壊した。
「やべえ。ぎりぎりじゃん」
「命拾いしたな」
 2人は山を登っていった。

262:A/B ◆iok1mOe6Pg
07/09/26 10:54:10 1Xsm51ok
以上、3話。

では恒例の用語解説

・救命浮舟・・・一人用の救命ボート。その形は靴に似ている。生存者の保温を意図したもの。
・4.6ミリメートル口径・・・ドイツのH&K MP7がこの口径。
・マガジン・キャッチ・・・弾倉を銃に固定しておくための装置。ここを押すと弾倉が取れるようになる。
・マガジン・・・弾倉。
・スライド・・・遊底。機関銃やオートマティック拳銃において、フレーム上部に位置し、銃身や撃発機構などを覆っているパーツ。
・チェインバ・・・「チェンバー」の方が馴染みがある語か。薬室。弾倉に弾薬が入っている状態でスライドを引くとここに弾薬が装填され、撃てる状態になる。
・レスキュー・シート・・・体を覆うアルミホイルのようなものだが、保温性は抜群である。ぺらぺら。
・人権条約だか戦時人身条約だか・・・我々の世界でいう「ハーグ陸戦条約」や「ジュネーヴ条約」といったもの。
・救命保温具・・・要はホッカイロ。
・「がんばれ! 元気を出せ! 救助は必ずやって来る!」・・・実際に書いてます。さすがに「がんばれ紙」とは言わないのでしょうが、「がんばれ食」とはちゃんといわれています。

小ネタ
>「ひでえなあ。まあいいか。俺の機体な、あれ、ヨンマルシキ・ニジュウニゴウ・イ・セントウキ、愛称を『ホウフウ』ってんだ。言い換えると『Type 40 F-22A』かな?」
F-22Aは、まあググれば出てくるわけですが、アメリカ空軍の戦闘機です。愛称は「ラプター」、つまり「猛禽」

>「機動性はあんたの『鶴』よりもいいって話だ。まあ、あんたのは『鶴』ってよか『猛禽』だけど」
>「『猛禽』はお前の方だ」ぼそりと、彼女は呟くように返す。
まあ、そういう事です。

次の投下で完結ですね
ではノシ

263:名無しさん@ピンキー
07/09/26 11:02:40 Uhr0sASB
>>262
 GJ!!!

 今回の最萌えポインツは『おばあちゃんの45度スパンキング』(w

264:名無しさん@ピンキー
07/09/26 14:18:23 TkLSr1Ps
GJ!オリガさんかわいいよオリガさん
いよいよ二人っきりですが、果たしてどうなることやら…

うん、やっぱりファーストネームの方が呼びやすいな。

265:名無しさん@ピンキー
07/09/26 20:28:06 8zxelYmi
>>262
GJ!! オリガ大尉カワユスw

> 次の投下で完結ですね
えー もうおわっちゃうんすか?ナンカモッタイナイ…
あ、第一話が完結ってことですねw

266:名無しさん@ピンキー
07/09/26 23:32:22 SN1GHgKt
>>262
GJ!
そういえばラテン語の「盗賊」がラプトル(raptor)だったな。
何がどうなって「盗賊」から「猛禽」になったんだか。

>>263
洗濯スレでそんなネタがあったなwww

267:名無しさん@ピンキー
07/09/26 23:44:52 bN8zOAIJ
>>262


ええい! くそっ! ちくしょう!
あまりの良さに身体がよじれてしまったではないか!!
ヤバいよ、ヤバいですよ! こんな萌えキャラにしてしまって!
明日は早いのに眠れないじゃないか!!
GJ! GJ!! 超GJ!!






最後に、あの時原案出して良かったと、自分を褒めたい…
ごめんなさい、あまりの良作に我を忘れた。
これ以上、よじらせないかぎり、もう出ない。

268:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/28 00:15:43 GI1AHl8r
 智信は一人、用意された部屋で項垂れる。
 智信の一級市民昇格試験は、最悪の形で幕を閉じようとしていた。
 先程まで、白い部屋が映し出されていたモニタは、黒く染まったままで、もう何の変化もない。コピー二人の死を以って、最終試験は終わりを告げたのだ。
 なまじ終盤までは期待を持たせる展開だっただけに、落胆も一入だった。
 食料を分け合い、手を取り合って過ごした。少女に手を出すこともしなかった。なのに……最後の最後、ルールCの罠にかかった。
 いくらなんでも、あれは反則だ。相手と一緒に死ぬか、相手を殺して自分だけ生き残るか、では、誰だって後者を選ぶに決まっている。
 生存本能にすら打ち勝てる強い精神力を持っていなければ、一級市民になる資格はないと言いたいのだろうが、それにしても理不尽だ。
「畜生……これで、人生終わりか」
 呟いて、窓際へと歩く。窓の外に目を遣る。セントラルタワーの十階からは、マシン・シティが一望できた。
 いつもは見上げるだけだったこのタワーから、一級市民となって街を見下ろす。それが、智信の夢だった。
 その夢はもう、叶わない。永遠に手の届かない処へと、消えてしまった。
 いっそのこと、この窓から飛び降りて死んでやろうか。冗談半分、本気半分でそんなことを考えて、智信は突き出し窓に手をかけた。
 そのまま、窓を全開にしようとしたが、半分も開かない内に止まってしまう。はめ殺しになっていて、一定以上は開かないようだった。
 腕は通るが、頭は半分も入らなくて、顔を出すことすらできない。
 もしかしたら、以前一級市民昇格試験に落ちた受験者が、ここから身を投げたとか、そんな因縁があるのかもしれない。
 と、後ろで部屋のドアをノックする音がして、智信は振り返る。
 顔を出したのは、智信をこの部屋に案内した女性―草加碧だった。
 例によって例の如く、白衣のポケットからメモを取り出して、読み上げる。
「お疲れさまでした。結果の発表は明日の朝になりますので、それまで自室で待機をお願いします」
 碧はそれだけ言うと、メモをポケットにしまって、智信の方を見た。
「……わかりました」
 智信が、大分覇気の失われた声で返事をする。碧は、ぺこりと頭を下げて部屋を出て行く。
 智信は、モニタの前に置いていた椅子を化粧台の前まで戻して、ベッドの上に倒れ込んだ。
 セントラルタワーの豪華な食事とも、今日限りでお別れだ。試験中はモニタが気になって満足に味わえなかったが、今夜くらいは、料理に舌鼓を打つとしよう。
 何せ、これが……智信にとって、最後の晩餐になるのだから。明日からは、ヒエラルキーの最下層、五級市民としての生活が始まる。そしてそれは、一生終わることはない。
 ふと、智信は、ギリシャ神話のイカロスを思い出す。イカロスは蝋で固めた羽を身に付けて天を目指したが、父親の忠告を無視して太陽に近付き過ぎた結果、熱で蝋の羽が融解、墜落死した。
 その神話は、両親の忠告を聞かず、分不相応にも一級市民を目指して、五級市民に落ちた智信の境遇と重なる。
 そんなくだらない感傷に浸りながら、智信は枕に顔を埋めた。



269:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/28 00:16:31 GI1AHl8r
「碧」
「は、はい!?」
 廊下を歩いていた碧は、急に背後から名前を呼ばれて、素っ頓狂な声をあげた。
 強張った顔をして振り向くが、声をかけてきた相手の顔を確認すると、途端に表情が緩む。
「なんだ、蒼兄かあ……びっくりした。仕事はどうしたのー?」
 碧に声をかけたのは、碧の兄、草加蒼だった。
 一級市民としては、蒼は碧の先輩で、一級市民内での地位も蒼の方が高い。一大派閥を指揮する蒼と比較してしまうと、碧はまだ駆け出しだ。
 本来なら立場上、顔を合わせることすら滅多にないのだが、そこはそれ、身内の好というやつで、蒼は時折こうして、碧の様子を見に来る。
 蒼は昔からそうだった。人一倍責任感が強く、いつも年下である碧を気にかけていた。子供の頃、混雑する場所に二人で出かける時などは、碧の手をぎゅっと握って離さなかった。
 碧は、そんな兄の背中を追いかけて一級市民になったと言っても過言ではない。
「少し早めの昼休みだよ。これから昼食を食べに行くところ」
 蒼はそう言って、視線を腕時計に落とす。
「それはそうと、本日の、最終試験経過について聞かせてくれないか」
「えーっとね……」
 碧はいつものように、白衣のポケットからメモを取り出す。
「新規入室はなしで、試験終了が、十三号室と、十八号室の二名かな」
「大丈夫そうか?」
「うん。多分。一人は大人しそうな女の人だし、もう一人の男の人も落ち着いてたから……」
 蒼の言う『大丈夫そうか』とは、つまり、本日試験終了を迎える受験者が、問題行動を起こす心配はないか?ということだ。
 一級市民昇格試験は、受験者の大多数が不合格となる、難関試験である。そして、不合格となった受験者を待ち受けるのは、ともすれば刑罰よりも過酷な運命。
 必然、受験者たちの精神状態は不安定になる。以前から、試験の結果を悲観しての自殺者、脱走者などは度々出ていた。中には、食事用のナイフで職員に襲い掛かる者まで居た。
 対応に苦慮した試験管理委員会は、試験期間中、食事に微量の鎮静剤を混入するなどの策を講じたが、それでも、トラブルは後を絶たなかった。
 受験者たちの案内人兼世話役として、試験の前後、受験者に直接接触する碧は、かなり危険な立場に置かれているのだ。
 勿論、不足の事態も想定して、碧が受験者の部屋に入室する際には、外に護衛を待機させたりしてはいるのだが……そんな措置では、とても安全とは言い切れない、と蒼は思う。
 大体、こういう危険を伴う仕事は、屈強な男性が適任だ。見た目が厳ついほうが、抵抗の抑止力にも繋がるだろうに。
 何故、碧が案内人兼世話役をやらされているか、と言えば、現在、新一級市民の人事決定権の大半を握っているのが叶派だからに他ならない。
 諸々のリスクを認識した上で、あえて、綾香は碧を受験者の応対に回させている。草加派の会長、草加蒼の実妹である碧を、だ。
 まったく、陰湿な真似をする……綾香のあの、嫌らしい笑みを思い浮かべて、蒼は背筋が薄ら寒くなるのを感じた。
「ならいい。頑張れよ」
 だが、そんな嫌悪はおくびにも出さず、蒼は碧に微笑んで見せる。碧も薄々勘付いているだろうが、派閥間の柵なんて、話して楽しい話題でもない。
「はーい」
 碧が元気よく返事をするのを見届けると、景気付けか、蒼は碧の肩をぽんと叩いて、廊下の奥へと消えた。



270:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/28 00:17:21 GI1AHl8r
 食堂で日替わり定食を食べていた蒼は、どこからか注がれる視線に気付いて、顔を上げた。
 見れば、蒼の座っているテーブルの真正面、食堂の入り口付近に、マークスがこちらを向いて立っていた。
 おかしい、と蒼は思う。いつもマークスは食堂ではなく、向かいのレストランで食事をするのではなかっただろうか……と。
 そんなことを考えている間にも、マークスは蒼のテーブルへと近付き、すれ違いざまに、一枚の紙切れを蒼に手渡した。
 そして、そのまま踵を返して、何事もなかったかのように食堂を後にする。
 蒼は右手で炭酸飲料の入ったカップを口元に運びながら、左手で器用に折り畳まれた紙切れを開く。
『重要な話がある 食後 誰にも見られず 八階第二会議室まで』
 八階の第二会議室と言えば、長い間使われていない部屋だった。そこならば、邪魔が入る心配はないと、そういうことだろう。
 マークスが叶派から重用される『project whitebox』導入後の合格者―通称『白組』でありながら、草加派と協力して、叶綾香が過去に犯した犯罪について調査しているのは知っていた。
 マークスから蒼に接触してくるとすれば、まず間違いなく、その件についての報告だ。
 蒼は手早く食事を終えてしまうと、急ぎ足で第二会議室へと向かった。

「一つ、頼みたいことがある」
 八階、第二会議室。入ってきた蒼の姿を見るなり、マークスはそう切り出した。
「まずは、これを見てほしい」
 鞄の中から、書類封筒を取り出して、束になった大量の書類を机の上に広げる。
 蒼はその中の一枚を手に取り、軽く内容に目を通して、仰天する。
「これは……『project whitebox』システム概要のコピーじゃないか……! 何の目的があるか知らないが、機密データをフロア外に持ち出したと知れたら大事になるぞ!?」
 書類を机に戻して、信じられないといった風に首を振る。
 マークスが持ち出していたのは、フロア外への持ち出しを禁じられている、機密データだった。仰々しく、書類の各所に赤い判が捺されている。
 これは派閥など関係なく、誰もが遵守しなければならない規律である。ただ、その規律の所為で、叶派の牙城である最終試験の暗部が隠蔽されている側面も否定できないが。
「まったく。今は叶博士告発へ向けての地盤固めをしている大切な時期なのに、何を考えているんだ? 最悪、叶博士の前に、君の首が飛ぶかもしれない」
「構わない。それより重要なことも時にはある」

271:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/28 00:18:09 GI1AHl8r
「構わない、か。剛毅なことだ」
 蒼は肩を竦めるが、マークスは構わず、話を先に進める。
「蒼は、叶博士に勝るとも劣らないくらい、プログラムに造詣が深いと聞いた」
「ああ。それなりに。使用言語も、名の知れたものは概ねカバーしている」
 蒼が答えると、マークスは、懐からプラスティックケースを取り出す。
「それを見込んで、頼みがある。このディスクには『project whitebox』の基礎データが入っている。このディスク内のデータと、システム概要が書かれた書類を参考にして―」
 マークスの頼みは、理解し難いものだった。一言で言ってしまえば、コピーして持ち出した『project whitebox』基礎データの大幅改鼠、である。
「できないことはないが……そんなものを俺に作らせて、どうするつもりだ? 持ち出された機密データから作成されたプログラムなど、公開できないだろう」
 それに、個人使用が目的だったとしても、セントラルタワークラスの設備がなければ『project whitebox』は走らない。一人で持っていても、宝の持ち腐れだ。
「できれば、何も言わずに頼みを聞いてほしい。それで、草加派への貸しは帳消しで構わない」
 マークスの言う『草加派への貸し』とは、言うまでもない、叶派であるマークスが、今回草加派に全面協力している件を指しているのだろう。
「……わかった。やってみよう。君を信用して引き受けるんだ。くれぐれも、悪用はしてくれるなよ」
「悪用などするつもりは毛頭ない。これは、私の自己満足だ。ともあれ、恩に着る」
 正直言って、腑に落ちない頼みではあったが、蒼は引き受けることにした。
 叶派のトップシークレットとして、名前とは対照的に、長らくブラックボックスになっていた『project whitebox』その中身を覗いてみたい、という知的好奇心もあった。
 尤も、この話を持ってきたのが、叶綾香や朽木百合あたりならば、機密データの持ち出しそのものが蒼を嵌める為の罠であると考え、書類に手を触れることすらしなかっただろうが。
 無愛想で、何を考えているか良くわからない男と取られがちなマークスだが、結局の処、大人の嘘―社交辞令が苦手なだけなのだ。それが、何度かマークスと顔を合わせての、蒼の結論だった。
「それでは、頼んだ」
 マークスは、机に広げた書類を手際よく封筒に戻すと、その上にプラスティックケースを重ねて、蒼に差し出す。
 蒼はマークスから受け取った書類封筒とデータディスクを自分の鞄に詰め、第二会議室を後にした。

272:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/09/28 00:18:52 GI1AHl8r
>>247からの続きです。おそらく次回が最終回になります。

273:名無しさん@ピンキー
07/09/28 01:27:26 oTlMAFyn
すげー。としか言い様がない。


274:名無しさん@ピンキー
07/09/28 01:48:43 uFTBrV0r
>>272
GJです。
いよいよ裏側の方のネタ晴らし開始といった感じでしょうか。
…まだ全然わからんけどw
最終回、wktkで待ってます。

275:名無しさん@ピンキー
07/09/28 02:09:45 MuEElKD9
今フジでやってるドラマそれっぽいな

276:名無しさん@ピンキー
07/09/28 04:23:20 Bqj7Pzy6
無粋なことイワナイっ


277:名無しさん@ピンキー
07/09/28 07:38:21 izPYswog
ゴメン、GJとしか言いようがないわ。

278:名無しさん@ピンキー
07/10/01 10:53:39 6mvp3Qzj
あげるよ

279:初心者
07/10/01 19:04:45 wq6uvdpp
皆さんお久しぶりです。
まぁ、ほとんどの方が覚えていないでしょうが…。
>>167の続きを書いたので投下します。




突然だが、君たちはサキュバスという悪魔を知ってるかい?
日本語では淫魔とか夢魔というらしいが、まぁ、ぶっちゃけるとエロい悪魔、ってことだ。
夢の中でエロいことをしてくるだけなのだが、そこはやっぱり悪魔なので落とし穴がある。
手を出すと、死ぬまで精を搾り取られるとか、夢から脱け出せなくなるとか、色々だ。
んで、俺の目の前にいるサキュバスの場合は、手を出すと社会的に抹殺されることは確実である。
そんな危険なことはもちろんできないな、うん。
でも…、華奢な肩とか、お湯で濡れた体とか、微妙に見えてる尻とか、思わず手を出してしまいそうで…
「先輩?手が止まってますけど…」
「あ、ああ。ゴメンゴメン、考え事してて」
彼女の声で俺に意識が戻る。
危ない危ない…。俺はもう少しで性犯罪者になってしまうところだった。


280:初心者
07/10/01 19:06:20 wq6uvdpp
「どう、痛くない?」
「ん…、大丈夫です。」
とりあえず、今の状況を説明すると…
友達の家で、友達の妹の友達(ややこしい)と、風呂に入っています(なぜ?)
まぁ、色々疑問はあるかもしれないが、作者の技量が無いのが原因なので、多少は許してほしい。
んで、今は彼女の髪を洗っているわけだが…
「また手が止まっていますよ」
おっと、また手が止まっていたようだ。
俺は彼女の髪を洗うことに集中する。
しかし、ホントに綺麗な髪だな…
一本一本がとても細く、枝毛など一本もない。髪を洗っているだけで危ない気分になってしまう…。
この髪は黒髪フェチにはたまらな(ry

281:初心者
07/10/01 19:07:54 wq6uvdpp
洗い始めてから10分弱、結構な時間もたったしそろそろいいだろう。
「髪、流すよ」
彼女は、はい、と言いながらギュッと目をつむる。
恐らくシャンプーが目に入らないようにするためだろう。
だが、その仕草が可愛過ぎて、俺の理性は飛びそうだった。
「先輩?」
「な、何?」
「さっきからどうしたんですか?一人言も多いですし…」
「いや、なんでも無いですよ!?俺は性犯罪に走るつもりは無いですから!!」
「は?」
「いやいやいや、だからなんでもないですから!」
こっち見んといてー!と叫びながら真っ赤になった顔を隠す。
しかし、こんなに狭い風呂場では、そんな行動は無意味だった。


282:初心者
07/10/01 19:13:29 wq6uvdpp
「………、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないです…」
年下に対して、なぜか敬語に。
俺は何を妙なことを口走っているんだ?
全く…、相手は中学生だというのに…。
自分は高校生で、半分大人のようなものだ。
来年には大学生になるのだし、もっとしっかりしなければ。
…でも加奈ちゃんはとても中学生には見えないしな。身長は170近くあるし。
あ、そういえば友達が、彼女だ、と言って紹介してきた女の子は中学生だったな…。
そう考えると普通なのかも…。いやしかし…、でも…。
「……ぱい、先輩ってば!」
「ん、あ、あぁ。何?」
はっとして彼女のほうを向く
「早く流して下さい、髪が痛んでしまいます」
「ゴメンゴメン、今流すよ」
どうやらまた意識が飛んでいたようだ。
俺は言われた通りに、彼女の髪を流す。



今回はここまでです。
前回、次は本番とか言ってたくせに中途半端な所で終わりです。
本当に拙い文章ですみません…。
前回同様、皆さんからのご意見がありましたら、続きを書く時に反映させます。
それでは、このスレの過疎が終わることを祈りながら失礼させて頂きます。
あ、次回の投下は10の下旬になるかと思います。

283:名無しさん@ピンキー
07/10/01 22:09:28 ym3Dtj3j
初心者さんgj
次回も期待してます

284:名無しさん@ピンキー
07/10/01 22:25:26 pP3oOd03
>>282
GJ。今回は違和感なく読めました。

一応過疎ではないと思います。途中のが3つ(望みがある)ある時点で十分です。
エロパロはこんなもんだとこの板のどこかで誰かが言っていた気がします。


まったり、出来る範囲で続き頑張ってください。

285:名無しさん@ピンキー
07/10/01 23:16:46 2c67kIkK
ただ「初心者」ってコテはすごくどうかと思う

286:名無しさん@ピンキー
07/10/02 01:59:17 3EconPPa
「【初心者】は言い訳のための言葉ではない。精進のための言葉なのだ」(斎藤 1832~1912)

287:名無しさん@ピンキー
07/10/02 19:04:39 TWcxs+ib
つまり>>282氏は精進を怠らない素晴らしいネ申です←結論

288:名無しさん@ピンキー
07/10/02 19:40:48 8aXrZpMt
つまりそれを支持しなきゃならないってことさ

289:名無しさん@ピンキー
07/10/02 23:06:37 kSAosz0b
>>287
まだ神じゃないけどな。

290: ◆SSSShoz.Mk
07/10/03 00:17:49 LjRGawoU
warning!
このSSには強姦表現が含まれています。ご注意下さい。

291:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/10/03 00:18:32 LjRGawoU
◆合格者と不合格者

「あああ、どうするんだよ、これ……」
 多々良朝人は、受験者用に用意された部屋のベッドの上に座り込み、頭を抱えていた。
 最終試験の経過を映し出す筈の大きなモニタは、ポルノ映画同然の情景を映し出している。
 朝人の性格は、他ならぬ朝人自身が一番理解している。昼間、試験官から試験の内容を聞いた時から、嫌な予感はしていた。
 しかし、開始一日目の夜から、不合格を確信する羽目になろうとは、誰が想像しただろうか。
「酷過ぎる……いくらなんでも、こんなのは……」
 眠っている間に悪戯をしようとして気付かれた挙句、開き直って暴力を振るい、そのまま乱暴する。
 朝人のコピーが留美のコピーに対して取った行動は、この試験の趣旨を鑑みると、最悪の行動と言ってしまって差し支えなかった。
 朝人の苦悩を置き去りにして、モニタの中の朝人のコピーは、留美の小さな口にペニスを捻じ込み、恍惚の表情で胸をまさぐっている。
 その映像を見て性的興奮を覚えている現実の自分もまた同様に、情けなくて仕方がない。
「お前は知らないだろうが、これは一級市民昇格、最終試験なんだ! 人生がかかってるんだ! どうしてくれる! クソ!」
 マットレスに拳を叩きつけながら、モニタに向かって毒を吐いてはみるが、元々が自分の思考ルーチンの集大成である。
 正に、身から出た錆以外の何物でもなく、怒りをぶつけた処で、空しさが募るばかりだった。
 と、ベッドの端でゴトリ、と何かが落ちる音がして、画面全体が乱れた。今までコピーの蛮行を映し出していた画面に、白い部屋の壁が大写しになる。
 画面右上には『AUTO→FIX1』の表示が点滅している。
「な、なんだ!?」
 慌てて、ベッドから這い降りる。ベッドの下に、リモコンらしきものが転がっていた。
 朝人はそれを拾い上げる。どうやら、ベッドを叩いた所為でモニタを操作するリモコンが床に落下。その衝撃でカメラが自動から固定に切り替わったらしい。
「ああ、ったく! なんだよ! もうどうでもいい!」
 カメラを元に戻す気にもならなくて、朝人は頭まで布団を被り、不貞寝を決め込んだ。

↓ IN ↓

 朝人は、まだうとうととしている留美を起こすと、無理矢理手を引いて、自分のベッドの前まで連れて来た。
 そのまま、目の前に立っているように命令して、自分は服を脱いでしまうと、全身を執拗に触り始める。

292:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/10/03 00:19:11 LjRGawoU
 髪から頬へ、頬から首へ、首から肩へ、肩から胸へ……
「また……するんですか?」 
 感情を失ったような、抑揚の無い声で、留美が聞く。
 昨夜だけで、二度も精を吐き出したのだから、今日は干渉しないでいてくれる。留美はそう思っていた。
 そもそも、こんな奇妙な状況に置かれているというのに、話し合いを持つわけでもなく、こう何度も体を求められるとは考えてもいなかった。
 軽蔑。嫌悪。忌避。羞恥。あらゆる負の感情を含んだ視線が、朝人に突き刺さる。
 しかし、異常なシチュエーションに理性の箍が外れた朝人にとっては、そんな視線は、興奮剤にしか過ぎなかった。
 返事もせずに、留美を抱き寄せて、首筋に吸いつくと、舌を這わせる。勃起した性器を、留美の下腹部に擦り付ける。

↓ OUT ↓

 朝人はのそのそと、ベッドから身を起こした。ベッドサイドに置かれた時計は、午前六時三十分を示している。
 点けっ放しのモニタは、まだ白い壁を映していて、そこから音声だけが流れてくる。
 洋服の生地が擦れる音と、拒絶する少女の声だ。
「朝から……何やってるんだ……」
 カメラは明後日の方向を映していたが、何が行われているのかは明白だった。
 肩を落としながら、リモコンを操作して、カメラを自動に戻す。
 映し出されたのは、全裸で留美に抱きついて、腰を振っている朝人のコピーと、顔を背け、それを引き剥がそうとささやかな抵抗をしている留美の姿だった。
 まるで、盛りのついた雄犬だ……そう朝人は思う。自分のことながら、ここまでくると呆れてしまう。
 確かに、女日照りだった。少女の容姿も好みだった。それにしても、人生の一大転機に、この、あまりにあまりな醜態はなんだろう。
 寝起きのはっきりとしない頭で、その様子をぼうっと眺めている内、朝人は自暴自棄になってきた。
 ああそうか、これが多々良朝人という人間の本質だっていうのか。それならそれで、上等だ。
 心の中で啖呵を切って、リモコンのボタンを連打する。
 画面右上の表示が、目まぐるしく切り替わっていく。
 ……『FIX1→FIX2』……『FIX2→FIX3』……『FIX3→FIX4』……
 固定カメラの視点を何度も動かして、留美の全身が映るアングルを探す。
 ベストのアングルを見付けると、ズボンのベルトを緩め、下半身を露出させる。
 朝人のペニスは、起床直後である所為か、或いは性的刺激を受けた所為か、最大限に勃起していた。
 画面を凝視しながら、それを扱く。直ぐに、亀頭周辺に粘液が溢れてくる。
 画面の中で、コピーが呻き声をあげた。留美を抱き締める腕に、力が籠ったのがわかった。
 朝人のコピーが留美のスカートに精液を吐き出すのと同時に、現実の朝人も果てた。



293:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/10/03 00:20:18 LjRGawoU
 マークスは、朝食のサンドウィッチを齧りながら、浮かない顔でモニタを見つめていた。
 モニタには、マークスの亡骸に縋って泣く、留美の姿が映し出されている。
 一緒に閉じ込められた少女を助けて、少女よりも先に逝く。マークスにとっては理想の結末で、最終試験は幕を閉じようとしていた。
 それでも、マークスの気分は晴れない。
 永遠にこの閉じられた世界―白い牢獄に幽閉されて、死を繰り返す少女。
 今まで、そしてこれからの彼女の運命を思うと、素直に合格を喜ぶ気分にはならなかったのだ。
 そういった感情を抱くのは、おかしいことなのかもしれない。所詮、彼女の存在はデジタルデータ、無機質な数字の集合体なのだから。
 彼女は血の通った人間ではないのだ―そう考えようとしても、どこか、やりきれないものを感じてしまう。
 何故なら、彼女のデータは、無から生み出されたものではない。抽出元は、人間だ。ならば、構成要素が有機物か無機物かに何の違いがある?
 これでは人間の心を、コンピュータの中に封じ込めたも同じではないか……?
 マークスは、そう思わずにはいられなかった。

↓ IN ↓

 留美はベッドの上に横たわるマークスの亡骸に縋って、泣いていた。ぽろぽろと零れた雫が、マークスの服の襟元を濡らす。
「なんで……こんなこと……」
 留美は、日に日に衰弱していくマークスに気付けなかったことを、心の底から悔いていた。
 いくらでも、気付くチャンスはあったはずだった。
 それほど日数も経っていないのに、体が動かなくなって、声も出なくなってきて……明らかにおかしかった。
 なのに『私は子供の頃から病弱なんだ』そんな、今思えば見え透いた嘘を鵜呑みにしてしまっていて、それ以上追求しなかった。
 いかに自分のことだけで手一杯だったとはいっても、これは私の怠慢だ、そう留美は思う。
 もし、彼の真意に気付けたとしたら。そんなこと止めてください、二人で一緒に助かりましょう、そう言って、彼の行為を止めることができたのに。

294:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/10/03 00:21:15 LjRGawoU
「私……こんなことより……マークスさんが生きていてくれたほうが……嬉しかった……」
 声をかけた処で、もうマークスは返事をしない。残されたのは、一枚のメモ。それから、水色の箱に丸々残った、水と食料。

 二人では三十日を生き延びられない。だが、水と食料を一人に集中させれば、生き延びられる可能性はある。
 ルールAを見た時点で、マークスはすぐにそう判断を下した。
 そして同時に、マークスは決意した。
 留美には秘密で、水と食料を全て残しておこう……と。
 マークスは自らの意志で、留美生存の為の捨て駒となる道を選んだのだ。
 水と食料を残しておくと一言で言っても、それは決して簡単なことではなかった。
 何といっても、殺風景な部屋である。互いの動向以外に、観察するものなどない。箱にまったく手をつけなければ、不審に思われる。
 故に、マークスは定期的に箱を開けては、水を飲んでいる振り、食料を食べている振りをしなければならなかった。
 ペットボトルに口をつけて、飲んでいる振り。カロリーメイトの箱だけ開けて、食べている振り。
 その度に、強烈な渇きと飢えに襲われた。本来の目的を忘れて、ペットボトルの中身を一気に飲み干してしまいたくなったのも、一度や二度ではない。
 それでもマークスは、何とか初志を貫徹した。折れそうになる心を奮い立たせて、水、食料を文字通り死守した。
 最後の数日間。死が足音を殺して忍び寄ってくるのを実感しながらも、恐怖は微塵もなかった。それどころか、達成感に満たされてすらいた。
 だからだろうか。マークスの死に顔は、極限状況の中で死んだとは思えないくらいに、とても安らかなものだった。

 留美はマークスの残したメモを手に取って、広げた。
『もっと一緒にいたかったが、ここまでのようだ 水と食料は残しておく 君は必ず生き残って、ここを出られると信じている』
 彼らしいと言えば彼らしい、簡潔な文章だった。でも、その飾り気のない一行に、マークスの優しさが凝縮されているような気がした。
 目の前がまた、涙で霞んで見えなくなる。
「マークスさん……」
 留美は途切れ途切れ、マークスに語りかけた。
「最初の日、マシン・シティの郊外にある小さな美術館の話、してくれたじゃないですか……」
「とっても素敵な場所なんだって。今度連れていってあげるって、約束してくれたじゃないですか……」
「だから、お願いです! 起きて……! 私を一人にしないでください……!」
 暫くの間、留美の嗚咽だけが、白い部屋に響いていた。

↓ OUT ↓

 サンドウィッチを食べ終え、皿をキャスターテーブルに戻すと、マークスは立ち上がった。
 モニタに近付いて、そっと手を触れる。微弱な静電気の感触が、手の平に伝わってくる。
「私は、ここにいる」
 そう呟いても、聞こえるわけもない。そんなことはわかっている。溜め息を一つついて、モニタに背を向ける。
 受験者である、マークスのコピーは死んだ。もうこれ以上は、蛇足に過ぎない。
 一刻も早く、モニタの中の閉じられた世界を終わらせてほしい。マークスはそう願った。
 一人残された少女の嘆きは、まるで、自分が犯した罪のようだったから。

295:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/10/03 00:22:30 LjRGawoU
◆牢獄の崩壊

叶派会長逮捕! 戦慄の『娘殺害依頼』

 六日未明、一級市民、叶派会長、叶綾香博士が殺人教唆の疑いで逮捕された。
 今月四日、麻薬密売容疑で逮捕された四級市民、牧田享一が、取調べの際、二年前に発生した中二少女轢き逃げ事件に関与したことを自供。
 未解決のままであった轢き逃げ事件が、朝霧留美さんの実母、叶綾香博士によって依頼された『計画的犯行』であることを明らかにした。
 叶博士は全面的に容疑を認めており、五級市民への降格は決定的となりそうだ。
 叶博士が一級市民昇格試験の試験内容にも深く携わっていることなどから、各方面からは、一級市民昇格試験の内容の妥当性、透明性を問題視する声があがっている。
 一級市民の、常軌を逸した『娘殺害依頼』に、マシン・シティ全体に衝撃が広がっている。



 一級市民昇格最終試験、第一管制室。
 蒼は感慨深げに、部屋をぐるりと見回した。
「ここにも間もなく、捜査の手が入る。叶博士が管理していた機材も全て押収されるだろう。これで『project whitebox』も終了だ。技術だけは最高峰だったというのに、勿体無い」
「これでいい。もし『project whitebox』がこのまま続いていれば、女性にも同様の試験が採用される予定だった」
 と、マークス。
「今度は『幼い少年』を生贄にした試験だ。いかに俗世と乖離した世界とはいえ、こんなプランが高く評価されていたのは、狂気の沙汰としか言いようがない」
「手段はともかく、人格適性検査としての精度だけは、俺は買っているが」
「一級市民としての器を量る、というだけでなく、他方面での利用も検討されていた。メディア有害論の検証等も行うつもりだったらしい」
 言いながら、マークスは自分が使用していた机の引き出しを開けて、鞄へと私物を詰め込む。
「……見ての通り、叶派は会長の逮捕で総崩れだ。どうだ、マークス。草加派に宗旨替えするつもりはないか?」
「今回の件で、派閥というものにほとほと愛想が尽きた。私はもう、どこにも所属するつもりはない」
「ほう。尽きる愛想なんて、あったのか?」
「……ふん」
「さて。私物は大方、鞄に詰めただろう? 撤収といこうか」
 蒼はそう言って、部屋の入り口に視線を向けた。が、マークスは首を振る。
「いや……まだ、最後の仕事が残っている」
「最後の仕事?」
 怪訝な顔をする蒼に、マークスは意味深な笑みを浮かべてみせた。
「以前、私が蒼に頼んだ『project whitebox』のデータ、覚えているか」
「ああ、覚えているが……」
「全てが終わった今こそ、それの出番というわけだ」
 マークスは叶博士のデスクへ向かうと、コンピュータを操作した。
 データディスクをトレイに入れて、保存されている『project whitebox』のデータを、蒼が改鼠したものに差し替える。
「おい―」
 何をするつもりなんだ、蒼がそう口にする前に、マークスは、プログラム実行のボタンを押した。
 コンピュータの起動音が、部屋に響く。システムモニタを、文字列が流れていく。

 virtual brain ver1.3 ……ok
 virtual body ver1.5 ……ok
 datafile loading ……ok

 project whitebox start……

296:白い牢獄 ◆SSSShoz.Mk
07/10/03 00:24:12 LjRGawoU
◆エピローグ

 『私は誰?』
      『今どこにいる?』
              『何をしている?』

 気が付いたら、私は、大きな建物の前に立っていた。
 寝坊した朝みたいに、記憶がはっきりしなかった。
 私は……なんで、ここにいるんだろう? 暫く考えてみるけれど、どうしても思い出せない。
 そのまま、玄関の前で立ち尽くしていると、きいっと音を立てて、ひとりでに扉が開いた。
 まるで、中に入ってきてって誘っているみたい。
 私は吸い寄せられるようにして、その建物の扉をくぐった。
 建物に入って最初に目にしたのは、見るからに高価そうな調度品と、有名画家の描いた絵画。
 建物は、どうやら美術館みたいだった。
「すみませーん……だ、誰かいませんかー?」
 恐る恐る、声をあげてみるけれど、返事はない。広い館内に、私の声だけが反響している。
 受付にも、人の姿はなかった。
 今日は休館日なのだろうか? もしかして……鍵をかけ忘れてしまった、とか。
 それは、美術館にしては無用心過ぎる気もする。でも、もしそうなら、勝手に入ってしまってまずかったかなあ。
 そんなことを思いながらも、私は、美術品の数々を眺めながら、順路に従って進む。
 異変が起こったのは、順路の一番奥にひっそりと飾られた、花畑の絵を見た時だった。
「え?」
 目の前の花畑の絵が、美術館が、突然、消滅した。
 そして、その代わりに、私の目の前に広がっていたのは、一面の花畑。
「あ……」
 感嘆の声しか、出てこない。まるで、夢の世界に迷い込んでしまったみたいだった。
 そうだ。これはきっと、明晰夢なんだ。だから、美術館が消えて、花畑になったりするんだ。私は、一人で納得する。
 ふと、頬を熱いものが伝った。涙だった。
 どうして、私は泣いているんだろう?
 確かに、この花畑は、とても広くて、とても綺麗で……
 でも、泣くほどのことじゃない。それなのに……
“留美”
 不意に、誰かが私の名前を呼んだ。
 その声は、初めて聞いた筈なのに、どこか懐かしかった。
“―さようなら、留美”
 私に語りかけてくる、優しくて、少しだけ悲しい声。
 ……お父さん? いや、違う。この声は―
 その声の『正体』に思い至った瞬間、言葉を紡ぐ暇すらなく、私の意識はホワイトアウトした。

白い牢獄 ……END

297: ◆SSSShoz.Mk
07/10/03 00:25:15 LjRGawoU
>>271からの続きです。そして、白い牢獄、これにて終了です。
ここまで付き合ってくれた方、ありがとう&お疲れさまでした。

298:名無しさん@ピンキー
07/10/03 00:41:48 wgtLHr2D
なんだか胸にしこりの残る終わりだ
智信だとか碧だとか、思わせぶりに登場しておきながらいてもいなくてもよかったような立場のまま終わってしまった
急な打ち切りで連載終了した漫画を読んだ感覚と似ているなこれは

299:名無しさん@ピンキー
07/10/03 01:00:31 SXmwhmLd
ディープブルーだっけ?
サメと戦いながら深海から脱出する映画。あれ思い出した。
終盤まではどうみても主演です的な活躍をしていたヒロインが、いざ脱出というときに何の前振りも意味もなくいきなり食われて死んじゃって、
男とオモシロ黒人の2人だけが生き残って、しかも死んじゃったヒロインについて一切コメントせずそのまま幕。

300:名無しさん@ピンキー
07/10/03 02:56:10 /Pa3TbCT
>>297
S^4氏GJ
>>298の言うように、急な打ち切り喰らった漫画を読んだような印象が。
とても面白かっただけに、非常に残念でなりません。

301:名無しさん@ピンキー
07/10/03 04:02:23 IHinaSLv
そうですかね。
私はこう言う終りも好きなんですけど。
まあこういうのって人それぞれですからね。

302:名無しさん@ピンキー
07/10/03 08:18:16 EcxjkuSi
S4氏GJです!

マークスは留美との約束を守る為にコピーをとってもらったんですね。
てっきり、留美の人格を自分のコンピュータに入れたり、プログラム上の外の世界で自分のコピーと出会わせたりするのかと…
しかし実際の留美は死んでいるし、束縛されている状態からの開放が一番のグッドエンドなんでしょうね。
ただ、幸せな留美が見たかったのが心残りですが。
何はともあれ、GJ、おつかれさまでした。

303:名無しさん@ピンキー
07/10/03 12:51:29 2NqoGAye
確かにマークスまではよかったが、終わり方がしっくり来ないなぁ。はっきりしないというか…。

まあ、何はともあれお疲れさまでした。

304:名無しさん@ピンキー
07/10/03 17:54:35 prhgfxxV
アー、俺、頭悪いからよくわかんねーや。

でもたのしかったけど。お疲れさんでした。

305:名無しさん@ピンキー
07/10/03 19:06:22 sHdnakf+
マリーまだー?

306:名無しさん@ピンキー
07/10/03 21:23:32 dTOL4BBS
>>298が乳癌の件

>297 超長編お疲れさま。
本当に映画まるまる一本みてるみたいで良かった!ありがとうございました

307:名無しさん@ピンキー
07/10/03 22:07:49 765r2W1q
うん、これだけの大作、お疲れ様でした。楽しませてもらいました。
確かにその後どうなったのか気になる人々もいますけど……

308:名無しさん@ピンキー
07/10/03 23:21:26 en4Mt5QZ
少女を中心に円のように世界が、物語が広がっていって閉じていって
状況は最初から救いようがなかったわけで、ならこの終わりも妥当……でしょ?
切ないぜ

309:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:05:21 o9VZGFh/
二人っきりと現実とが平行に描写されるのは初感覚で楽しめた(´∀`*)

310:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:07:05 o9VZGFh/
すまん、あげちまったorz

311:名無しさん@ピンキー
07/10/04 00:33:35 JxRzRME8
とても切なく感じた。
この作品は最早エロパロなどではなく、そこらの小説より遥かに質の高い作品だったと私は思う。
何はともあれ、超大作お疲れ様でしたよ。

312:名無しさん@ピンキー
07/10/04 04:12:56 OgYsgspX
キャラ小説として読もうとするから文句が出るんだろうなぁ、とか

お疲れ様でした
大変楽しませていただきました

313:名無しさん@ピンキー
07/10/04 13:48:39 x4G6dnn7
キャラ小説じゃなくても、主要キャラがふっと消えて彼らのその後は投げっぱなしジャーマンなんてそうそうないと思うが。
面白かっただけに、いらんモブキャラに逐一大量な設定付け過ぎて、話のメインが紛らわしいまま終わったのは残念。

314:名無しさん@ピンキー
07/10/04 16:38:18 OgYsgspX
むぅ……そうか
感想は人それぞれだしな
要らん事言ったわ、すまん
全裸で反省させていただく


315:名無しさん@ピンキー
07/10/05 03:32:26 0pAklLVY
そういえばマークスと一緒に留美の夢に出てきた老人はどうなった?
TIPSには死んだってあったけど結局本編に絡んだっけ?
俺が見逃してただけ?

316:名無しさん@ピンキー
07/10/07 01:12:52 yC0vROdX
保管庫見てたら、途中で止まってるのやたらとあるな。。。
嫌な予感

317:名無しさん@ピンキー
07/10/07 11:27:57 xzJo1ISy
age

318:名無しさん@ピンキー
07/10/07 13:39:31 YddNkpzk
そういや保管庫誰か更新しとけよ……。
二度ほど保管したけれど、ぶっちゃけもうやりたくねぇ……。

319:名無しさん@ピンキー
07/10/07 21:23:13 ab7GjQSB
やり方が簡単なら俺がやりたいが・・・。時間もないしなぁ。

320:319
07/10/08 18:50:11 DoOGZmBl
一応「白い牢獄」だけやっといたが、メール欄がリンクになっているのはやめた方がいいのだろうか?
というか、アレでいいのだろうか?
取り敢えず他のもやっておくよ。

321:名無しさん@ピンキー
07/10/08 21:13:59 izEP0Uql
>>320
今ざっと見たらメ欄には「sage」以外に何も書いてなかったけど。
「sage」しか無いなら無視して構わないんじゃないか?
「sage」以外に何か書いてあっても、大した用件じゃあないだろうし。

322:名無しさん@ピンキー
07/10/08 22:58:58 89YgfQSi
>>321
取り敢えず消してしまったよ。苦労する作業でもないし。

全部まとめたけど、変なところあったら指摘or修正プリーズ


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