07/12/16 01:15:56 XxQ10Myz
「…………二人とも、いい大人だとは思うけどさ。いい加減不自然じゃね?」
「なにが」
「そうやってさ、要にいが琴子を甘やかすからアイツ結婚できないんだよ。琴子が要にいに構うから、要にいが彼女作んないんだよ。そういうことだろ?」
大人なんだから、ちゃんとしろよな。
誰に言われるよりも、胸に刺さった。
家族みたいなもんだろ、甘えて何が悪い、とか。
そんなこと、僕が一番よく知っている、とか。
じゃあ僕は琴子が好きだけど、あいつにその気があるように思う? とか。
今くっついたら、お手軽に済ませたんだ感がぬぐえないよ、とか。
琴子と僕がセックスするなんて、琴子とイオがそうするぐらい気持ち悪くはないか? とか。
一瞬にして様々な返答が頭を廻ったけど、どれもこの場には不適切で、二日言酔いでないはずの頭が痛んだ。
「せっかく、俺が……、」
イオは何かを言いかけたけど、押し黙った僕をみて、結局はくちびるを引き結んだ。
ごくりと唾を飲んだ後、こんなこと言いたくなかったと呟いた。
「ごめんな」
「イオ―! 要起きた? ごはんもう食べれる?」
僕の謝罪を掻き消すように、琴子の呑気な声が、キッチンから響いてきた。
「おー!」
イオが張り切った声をあげて、腰を上げた。
逃げるように客間を出て行く。
僕も、それにゆっくりと続いた。
ダイニングに足を踏み入れて、キッチンの中の琴子と目が合った気がして、おはよう、と出来るだけナチュラルに微笑んだ。
「おはよう、要。眼鏡、テーブルの上だよ」
「ああ、ありがとう」
ぼんやりとした視界は、今の気分にとても相応しいけれどせっかく琴子が教えてくれたので素直に眼鏡を装着する。
手伝うよ、と踏み入れたキッチンは整然と片付けられていた。
昨夜二人で散らかした食器類はすっかりと洗い終えられて、水切りかごのなかにきれいに納まっている。
まるで、なにもなくなってしまったようだ。
昨夜の会話もはすべて夢だったんじゃないかとすら錯覚する。一緒に眠ったことも、すべて。
ぐつぐつとつゆが煮えたぎる土鍋と、琴子の晴れやかな笑顔だけが僕をぬるま湯の現実へ繋ぎ止めていてくれる気がした。
*
以上です。
お付き合いありがとうございました。