【友達≦】幼馴染み萌えスレ13章【<恋人】at EROPARO
【友達≦】幼馴染み萌えスレ13章【<恋人】 - 暇つぶし2ch50:名無しさん@ピンキー
07/08/21 21:17:53 X3kUd9TG
運転手と車掌も幼なじみなのかw

51:名無しさん@ピンキー
07/08/22 02:43:14 U8oUoxCB
祥子は「さちこ」なのか「しょうこ」なのか
重要なのはそこだ

52:名無しさん@ピンキー
07/08/22 03:47:54 LSLAsdDb
>>51なぜにww

53:名無しさん@ピンキー
07/08/22 04:30:32 U8oUoxCB
>>52
「うえぇっ!?な、なんかわかんないけど、ごめん祥子!」
「ばか…!あやまるだけじゃやだ。行動で示して。」
そう言って泣きじゃくる彼女は時々嗚咽を漏らしながらも口を閉じ、目尻に涙が浮かぶ目で俺の顔を見つめてくる。
保護欲をかき立てる姿。こらえられず、俺は彼女をそっと抱きしめた。
「ごめんな、昔から俺はお前の気持ちをわかってやれないばっかりだ。こんな年になってまで泣かせちゃって、悪かったよ。」
「鉄ちゃん…ううん、いいの。私、いつもわがままで鉄ちゃんを困らせてばっかりだったから…私もごめんね…
でも…ふふっ、鉄ちゃん、あったかい…こうしてると幸せ。」
「さっちゃん……わがままだなんて、そんなことないよ。さっちゃんに付き合うのはいつも楽しかった。
それに今だって……その、すごくかわいいよ。」
気恥ずかしさから小学校高学年ごろから使わなくなった、昔の呼び名が口をついて出てしまう。
やはり気恥ずかしかったが、腕の中の小さな温もりを感じていると、そんなことはどうでもよくなった。
「鉄ちゃん…私、うれしいよ…」




「さちこ」ならこんなことができる

54:名無しさん@ピンキー
07/08/22 04:57:19 LSLAsdDb
>>53致命的打撃を受けました。

いかん・・・死ぬ・・・

55:名無しさん@ピンキー
07/08/22 09:00:29 JBqLV21D
「しょうちゃん」ではダメなのか?

56:名無しさん@ピンキー
07/08/22 11:10:08 4idSWq91
>>55
女の子相手に使うにはちょっと語呂が悪くないか?

57:名無しさん@ピンキー
07/08/22 12:23:02 3Slgiaio
そこで幼少の頃は男の子と思ってて実は女の子でしたパターンが使えるようになるんじゃないか

58:49
07/08/22 12:23:13 FJO7zegP
>>51
 車掌だから「しょうこ」(w
 でも『さっちゃん』ギザモユス

 ちなみに「祥子」とかいて「しょうこ」と読むのは、叔母の本名
 小さい頃は、しょこおば……じゃなくて「しょこ(ねー)さん」と呼んでいた
 

59:名無しさん@ピンキー
07/08/22 13:41:26 jTqBR6oC
>>57

  そ  れ  だ

60:名無しさん@ピンキー
07/08/22 13:54:13 tYWCzlUD
お前らはどうしてこういうとこで才能を浪費するんだw

61:名無しさん@ピンキー
07/08/22 14:59:59 vTs8jwdj
正しい使い道と信じてるからw

62:49
07/08/22 16:11:02 FJO7zegP
 その言葉と共に、俺の腕の中の小さな温もりの
うっすらと赤く染まった目尻に又、新しい煌めきが盛り上がる。
 
「ごめ……、ごめんね、鉄ちゃん。私、嬉しいのに、本当に嬉しいのに
 涙、止まんなくなっちゃった。……変だよね、こん……ひゃっ!!!」

 泣きながら笑う祥子が可愛くていじらしくて、俺は無意識に
彼女の目尻から流れる涙を舌で舐め取っていた。
結構色白なのと、それなりに整っている割には年頃の女に相応しい化粧をほとんど
していない、細かい産毛とそばかすに飾られた白桃のような頬の感触が非常に心地よい。

「……鉄ちゃ……鉄、ん!!!」

 当然、うわ言みたいに俺の名前を繰り返し呟やいていた薄赤い口も、そのまま塞ぐ。
がくがく震えている唇を強引にねじ割って、舌を滑り込ませ心行くまで蹂躙する。
柔らかい唇の裏側や上下の歯茎をねっちりと舐め回し、乱暴なまでに吸いたててから
一旦、唇を離す。
 
「……はぁっ、はぁ……、て」

 にっこり笑いながらも、彼女の口が完全に塞がらない内に、もう一度深い深いキス。
今度は小さな口の中で逃げ回る彼女の舌を絡め取る事に、見事成功した。
じゅるじゅるとイヤラシイ音を立てながら、俺と彼女の間をお互いの唾液が何度も行き来する。
最初はおずおずと、しかしやがてしっかりと俺を抱きしめて来た祥子の腕の力を確認してから
再度ゆっくりと唇を離すと、二人の間に細い銀の橋が架かった。
 
「……鉄ちゃぁん……、わたっ私、本当にオカシ……」

 抑えきれない欲情を湛える目元に辛め取られた俺の全身を、止めようの無い快感が支配する。
我慢しきれずに、太ももをもじもじとこすり合わせてぐったりともたれかかってきた彼女を
横抱きにして、その耳元でそっと囁いた。
 
「本当、可愛いな祥子……。だから、ちゃんとお仕置きして上げるよ」




つー事でっ、後はまかせたっノシ

63:名無しさん@ピンキー
07/08/22 16:46:51 jTqBR6oC
けしからん!もっとやれ!

64:名無しさん@ピンキー
07/08/22 17:29:24 6v1CCvJy
>>62
GJ!
健次理菜カップルといいこの地方は幼馴染カップルの聖地かww


おいおい最近幼馴染スレはじまりすぎだろw

65:名無しさん@ピンキー
07/08/22 20:38:01 Ta2UAA0e
なんか、このスレの皆才能有りすぎだろw
しょうちゃんだと某雀鬼思い出してしまって困る。

66:名無しさん@ピンキー
07/08/22 21:10:15 U8oUoxCB
>>53が俺のエロパロ板初投下であることは俺しか知らない

67:名無しさん@ピンキー
07/08/22 22:36:18 CG4Wch9+
仕事から帰ってきて、朝のカキコがこんな形で大暴走していることに
呆れつつ感心しつつの>>48の俺がいた


特急グリーン車の美人アテンダントもカコイイが
10年ばかり前にローカル線の2両編成で車内を往来していたお下げの車掌娘は思い出深い

68:名無しさん@ピンキー
07/08/23 00:36:33 BYy221mr
>>66
早くSS書き本格デビュー作の執筆作業に戻るんだ
もちろん投下先はここな

69:66
07/08/23 01:03:39 hQsPSkR7
>>68
言われなくてもこのスレ用のSSを鋭意制作中だぜ!
それを処女作にするはずが>>49が可愛かったので思わず

70: ◆prrsJaB8ts
07/08/23 10:15:12 tvri23pW
生徒会長松宮菜月が初めて学校を休んでから、もう一週間が経とうとしている。

「ああ、平和だ」

昼休みの屋上で、一人具の無いおにぎりを食べる俺こと土谷恵一は、平和を満喫していた。
幼なじみだった松宮にオタクキャラとしていじられ続け、学校全体の笑い者にされた俺だったものの、彼女が学校を休んでからはその嘲笑がピタリと止んだ。

「あいつがいなくなったおかげなのかねぇ」

そうだとしたら、不謹慎だが松宮にはずっと学校に来ないでもらいたい。
俺をイジり始めてからは疎遠になったわけだし、仲直りする気もないし。
そんなことを考えていると、後ろから突然声がした。

「土谷君」

その声だけで、誰なのかが十分理解できる。

「何の用だ?松宮の手先」
「名前で呼んでください」
「はいはい。坂野真琴さん」

長いストレートの黒髪に、ふちの黒い眼鏡を掛けた生徒会副会長、坂野真琴。
生徒会の中では一番おとなしい人だ。


71: ◆prrsJaB8ts
07/08/23 10:15:52 tvri23pW
「で、何の用?」
「会長のことで、お話があります」
「やだ」

即答。

「あいつの話題を振るな」

彼女に再び背を向けて歩きだそうとした、その時。

「待って!」

後ろから、抱き締められた。

「待って…ください…」

坂野は離れようとしない。
夏服ごしに、背中に小さな胸の感触が伝わるのが分かった。

「離れろ」
「お願いですから…話を…話を聞いてください…」

だんだん、彼女の声が弱々しくなり、涙声に変わっていく。
坂野が泣いているなんて、今まで一度もなかったことだった。

「会長は…菜月は、中央病院に入院しています」
「で?」
「退院の見込みは…ありません…」
「はぁっ!?」



72: ◆prrsJaB8ts
07/08/23 10:17:00 tvri23pW
~~~~~~~~~~~
「あ、松宮さんの面会ですか?こちらになります」

ナースに案内され、病室に向かう。
正直な話、恐い。
今、俺は平和のなかにいるわけで、わざわざ暗黒時代の原因に会いに行かなければならないというのが恐かった。
坂野が泣きながら頼んだりしなければ、絶対に断っていたぐらいである。

「こちらです」

病室のドア。
恐る恐る、開く。
そして、

「あ……」

驚いた顔をした松宮と、目が合った。

「来て、くれたんだ」

一週間前に見たときと同じ、ショートカットの似合う快活な生徒会長は、病院のベッドの上で、パジャマ姿で笑っていた。

「仕方なくな」

何だろう、少し違和感を感じる。
いじらないから、ではない。少し元気が無さそうだから、でもない。

「坂野が必死に頼むから来た」
「ああ、真琴は精一杯頼むはずだわ」
「で、何だ?」

この部屋に入ってからずっと、笑顔のままの松宮。

「―私ね、来月死ぬんだ」

そんなことも、笑顔のままで言ってのけた。



73: ◆prrsJaB8ts
07/08/23 10:18:04 tvri23pW
「手遅れなんだって、言われたの。もうだめ」
「お前……」
「きっと、罰が当たったんだよね」

無邪気な笑顔の松宮を見て、ようやく分かった。

「ずっと仲良しだったけーちゃんを、傷つけた罰が、当たったんだよね」

今の彼女には、以前溢れていた、希望が無いのだ。

「ほんとうに、ごめんなさい」

いつのまにか、彼女の頬に光の筋が見えていた。
弱々しく、頭を下げる松宮には、すでに過去の面影などどこにもなかったのだ。

「で、許してくれと?」
「ううん」

突然、彼女が立ち上がると、こっちにゆっくり歩いてくる。

「許しても、許さなくても、いいの」

そして、その腕が俺の背中に回される。

「ただ、私は、けーちゃんに償いがしたい」

とても弱い抱擁。

「けーちゃん……んっ……」

そのまま、彼女は背伸びして唇を重ねた。

74: ◆prrsJaB8ts
07/08/23 10:19:13 tvri23pW
今回の投下はここまでにします

75:名無しさん@ピンキー
07/08/23 15:42:57 Zgc/YPZq
良くも悪くも調子の良い幼馴染ですね

76:名無しさん@ピンキー
07/08/23 20:30:47 jz4l0ete
ここからどうやって彼女の魅力を表現していくのか気になる
この先に期待

77:62の続き? 1/2
07/08/23 20:59:34 djfka/1n
人間、何が『琴線』に触れるのかその直前まで
まったく解らないものでございます。
で、なにやら又毒電波を受信してしまいました。



「……鉄ちゃぁん……、本当の本当に、私に『お仕置き』してくれるの?」

 この世の醜い理を何も知らぬ無垢な幼女のような、そして同時に、己を強く突き動かす
肉欲以外の何も信じるものが無い天然の淫婦のような妖しく不思議な眼差しが、俺を追い詰める。
心の中で必死に歯を食いしばり、その顔を見ないように見ないようにと最大限努力する俺を
あざ笑うかのように、祥子の視線に、声に、息使いに、身じろぎに、匂いに、それら総てを
ひっくるめた恐らく彼女自身は意識すらしていないのに滲み出す痴態に、何よりも敏感な俺の
下半身が一層硬度と角度を増した。
(……あぁ、クソっ!!! このままじゃ、目的地まで持ちそうにねーよっ!!!)
一瞬、いっそこのまま行きずりの色気違いよろしくホームのベンチの上で……とも考えたが
それでは彼女の望んでいる『お仕置き』にはならない。
しかも、そんな俺の悲鳴じみた叫びを知ってか知らずか、腕の中の小さな温もりはその
細い両腕をゆるゆると伸ばしてきたかと思うと、俺の肩をぎゅっとつかみ、その上体を
ゆっくり起こして、初めて自分の方からうっとりと口付けて来た。

「……ぅん、大丈夫。平気だよ、鉄ちゃぁん。……何をどうされても私は、鉄ちゃんが
  この世で一番だぁい好きな人だから、イケナイ私にちゃんと『お仕置き』して下さぁぃ……」

(あーーーっ、莫迦祥子!!! もう我慢の限界だよっ、畜生!!!)
最初の目的地をあっさり諦めて、目の前の乗務員駐泊所の扉を半分蹴り開けるようにして飛び込み
最大限の性急さと優しさを込めたつもりながら、結局は随分荒々しく簡易寝台の上に、車掌を転がした。
それでも熱に浮かされたように蕩けかかった幸せな顔のままで、ゼンマイが切れかかったカラクリ人形の動きで
のろのろと祥子は、微笑みながら自らの上着のボタンを外し、スカートも脱ぎ捨て、足を開いて、俺を誘う。
それから、目を逸らす事が出来ないまま、それでも俺は最大限の冷静さを装いながら『お仕置き』を開始した。
 
「……本当なら、オマエの恋人の目の前でオマエをめちゃくちゃに犯してやるつもりだったんだけどな」

 ぴたりと祥子の動きが止る。

78:62の続き? 2/2
07/08/23 21:01:51 djfka/1n
「……だけど、イヤラシイ祥子さんは生まれ付いての淫売で、我慢が出来ない体なんだからしょうがない」
「……鉄ちゃん、何を言っているの? ……私、鉄ちゃん以外に好きな人なんかいな……」
「祥子ぉ、本当に俺がなにも知らないとでも思っているのか? …オマエ、結構図太い女だったんだなぁ」
「……て、鉄ちゃん、酷ぃ……。あた、私、今なにか気に触るようなコト言った?」

 熟れ過ぎたトマトみたいに真っ赤だった祥子の顔はいまや、真っ青を通り越して幽霊のように白い。
壊れたスプリンクラーみたいに必死で首を左右に振り、ぼろぼろ涙を溢しながら立ち上がり裸足のままで
ふらふらと夢遊病者の足取りで、俺の足元にへたり込み、そのまますがり付いて来た。
その華奢な肩を態と手荒く小突いて、顎を掴みむりやり顔を上げさせ、思い切り冷たい笑いを浴びせかけ
そして、訳も解らぬまま只しゃくりあげ続ける幼馴染の耳元でそっと囁いた。

「祥子さぁん、君も本っ当ーに強情だね。だけどさぁ、一週間前の今頃、事務室で君が何をしてたのか
  俺、全ー部知ってるんだけど?」

 忙しなく瞬きを繰り返していた祥子の瞳の焦点がやっと目の前の俺に合い、青白い顔にさっと朱が走った。

「やれやれ、やーっと思い出したみたいだね、事務室の机の角っこ相手によがってた、色情狂さん」

 今日と同じく、俺と祥子の組み合わせで、この駅が終点兼終電車までの勤務だったの場合、業務日記を
付けるのは何時も、車掌である祥子の役目だった。
そして、俺が電車内と構内をざっと清掃して電源を落とした後、バイクのにけつで帰るのが何時もの
パターン……だったのだが、たまたま三ヶ月ほど前、構内で蛍光灯が切れてる所を発見して何時もより
幾分早く事務所に行って見たら、祥子は声を漏らさないように自分の指を噛締めながら、お楽しみの最中だった。
最初、祥子の逼迫したくぐもり声を聞いた時は、急に具合でも悪くなったのかと思ってかなり焦ったが
結局、ぶるぶる震えながらも最後はあのすらりとした足をぴぃんと伸ばして、うっすらと上気した顔で
荒い息を吐きながら机の上にぐったりうつ伏せる、祥子の一部始終を息を殺しながらたっぷり視姦した後
大急ぎで運転席に戻り、自分で自分の高ぶりを納める……と言うかなり情無い自分がココにいるというのは
特に祥子だけには、一生知られたくない。
  
 二人のローテーションが偶然一致した深夜のみに許される『ご褒美』が、やがて視姦した直後だけではなく
夢精を伴う淫夢の中にまで現れ、終いに祥子は俺の空想の中では何度も何度も犯される性奴隷と化した。
だけど、本物の祥子は何時も何時も拙い絶頂を迎えるアノ時にも絶対声を漏らさず、俺は見知らぬ相手に
向けて、どす黒い嫉妬心を日に日に募らせていくしかない意気地の無い阿呆のまま、祥子の秘密を一方的に
知り、いざとなったらソレをネタに祥子を意のままに出来るかもしれないなどと莫迦な夢想をしながら
表面的には仲の良い同僚兼幼馴染という、非常に心地よい関係をずるずると続けようとした。
 
 しかし、こんな俺の心の動きを敏感に察したらしい祥子が先に動いて……。
 
  本当に『お仕置き』をされなきゃいけないのは、俺だ。

79:三人を書いた人  ◆vq1Y7O/amI
07/08/24 02:18:40 AbBVSXYt
お久しぶりです。
前スレから引き続き、参上させて頂きました。

『三人』を書かせて頂いている者です。

前スレ
>191-195
>199-203
>224-227
>236-240
>262-267
>317-321
>424-429
>444-447
>471-477
>494-500の続きです。

80:三人を書いた人  ◆vq1Y7O/amI
07/08/24 02:20:19 AbBVSXYt
 そして出会った。


11:What I've Done



 目配せに気付いて、正宗はそっと立ち上がった。何食わぬ顔で部屋から出て、待つこと数分。やはり
しれっとした顔で、美幸が出てくる。ぐっ、と親指を立てる彼女、同じように返す彼。
 こっそりと、ガラス張りの扉の中を覗くと、もはや歌そっちのけで高村と静香は話に夢中になっていた。
 二人とも、正宗と美幸が部屋を出ることに気付いていただろう。それでも止めなかったのは、その意味を
理解していたから。
「あんまり覗くの、良くないよ」
 耳元で小さく囁く少女の言葉に、彼は頷いて離れる。
 最後に正宗が見たのは、部屋の中の二人の視線がしっかりと絡まっているところだった。

「出番、あんまりなかったね」
 苦笑しながらの美幸の言葉に、彼は黙って頷いた。
 すでにカラオケ屋から出て、二人は当てもなく街をブラブラしていた。ゆっくりと歩く彼女に、正宗は
ちゃんと歩調を合わせてくれている。
「もうすっかり、両想いだったよね、二人とも。最初から別行動でも良かったかも」
「そういうわけにもいかないだろう」
 美幸が唇を尖らせて言った言葉に、彼は苦笑を交えて返してくる。勿論、彼女も冗談のつもりだったから、
だよね、と肩をすくめる他になかった。
 ふと見上げる空は、澄んで青い。どこまでも。
 吸い込まれるのは、心。そして想い。
「行きたい所は?」
 正宗の言葉がなければ、そのまま泣いてしまっていたかもしれない。一瞬、目を閉じて小さく息を吐く。
「少し、ブラブラしよ。それから考える」
 それは悲しいこと、辛いことがあった時に言う、美幸のいつものわがまま。買い物をするとか、甘いものを
食べるとか、幸せをたくさん味わいたい。
 もしそこに正宗がいてくれれば、もっと楽しくなる。そして優しい正宗は、何も言わずに付き合ってくれるのだ。


「これなんてどうかな?」
 向日葵の飾りの付いた麦わらの帽子を被って、彼女は笑う。今日の為にと用意した、白のキャミソールに
レース編みのフリルボレロ。七分丈のデニムと相まって、涼しげに夏を楽しむ美幸は、休日で賑わうデパートの
中でも一際、目立つ。
 その隣に立つ正宗は、ぶっきらぼうな表情ながらも優しい目で彼女を見つめる。タンクトップの上に羽織った
薄いブルーのシャツ、その袖からのぞく二の腕は、細いながらも引き締まっていて。
「いいんじゃないか?」
 彼の言葉に、美幸は嬉しそうに笑う。はにかんだ顔のまま、その隣に並んでいた帽子を手に取るが、
「そっちは、あんまり」
「えー。可愛いと思ったのに」
 なかなか正宗の審美眼は厳しい。唇を尖らせて不機嫌を装うが、彼は頑として首を縦には振らない。
美幸は、さして拘る素振りも見せずに元に戻した。それだけ、彼の目を信頼しているということ。
「じゃあ、こっちは?」
「前に着てたシャツにならあうんじゃないか?」
「あー、そうだね。あれに合わせたら可愛いかも」
 わずかな距離だけを置いてかわされる会話は、端から見れば恋人同士のそれにしか見えない。時々、
正宗の冗談に笑いながら、肩や胸を美幸が叩くのなどは、よほど仲睦まじいカップルなのだろうと、
通り過ぎる人々に思わせた。

 それでも聡い人は気付いただろう。
 少女が、彼にわがままを言って甘えながらも、溺れまいとしていることを。
 少年が、彼女を優しく受け止めながらも、強く抱きしめて我が物にしようとはしていないことを。
 つまり。
 二人の距離は、確かに恋人同士かと見間違わんばかりに近いけれど、決してそういった関係ではない
ということに。
 気付いただろう。

81:三人を書いた人  ◆vq1Y7O/amI
07/08/24 02:21:16 AbBVSXYt
 誰がこの夏を一番楽しんでいるかといえば、それは太陽なのだろう。張り切って大地を照らしつけている
様を見れば、誰もが少しうんざりした顔をしながら頷くに違いない。
 正宗と美幸も、その例外ではなかった。
「コルトン、行こうか」
 首筋の汗をぬぐう正宗に、美幸も手で自分をあおぎながらそう声をかける。
 存分にデパートの中を歩き回り、心ゆくまで買い物を済ませた頃には、随分と喉が渇いていた。だが
考えることは皆、同じなのだろう。どこの喫茶店に行っても満席で、席に付くことが出来ない。それは
暑いとわかっていて外に出ても同じことで。
 たまりかねた彼女が提案したのが、普段から通う馴染みの店だった。ここからは少し離れているが、
その分、人通りも少なく、座ることが出来るだろうと思ったのだ。
「ん、そうだな」
 頷きながら、交差点へと向かった彼が、一瞬、立ち止まった。硬直した体、その視線を知らず美幸は追う。

 そこにいたのは、二人だった。
 高村と静香。
 カラオケを終えて、次はどこに行こうとしていたのだろう。互いを見る彼らの目にははにかむような幸せが
浮かんでいて。
 そして彼らの手はしっかと結ばれている。指を絡めて、もう離さないと言わんばかりに。

 あぁ。良かった。うまくいったんだ。
 そう思った、次の瞬間。
 美幸の胸は、締め付けられた。終わりを実感して。

 いつも。いつでも。
 彼女のことを見ていた。だから、気付いた。
 泣き出しそうだと、いうことに。
「美幸」
 彼女の腕を掴んで、正宗は足早に歩き出す。幸い、激しい人波のおかげで彼らは二人の姿を認めて
いないだろう。もしも見つかったら、美幸は涙を我慢する。笑って高村と静香を祝福する。それがわかって
いるから、彼はその場を立ち去った。
 おめでとう、そう言うのは今じゃなくたっていい。美幸が辛い気持ちを抑えてより辛くなるのなら、今でなくても。
 だから正宗は、二人から逃げ出した。美幸もそれに逆らうことはなく、黙って彼に付いて行くのだった。

 彼女は、しかし泣かなかった。
 本当に、本当に泣きそうだったのだけれど。
 ぐっと耐え切ったのだった。


82:三人  ◆vq1Y7O/amI
07/08/24 02:22:04 AbBVSXYt
 噴水の前のベンチに腰を下ろした美幸は、一つ、大きく深呼吸。
 吸って、吐いて。その時に、自分の中の澱みを外に押し出す。
 ダメだなぁ、と彼女は思う。幸せを祈る、なんて啖呵を切ったのに、まだどこか振り切れていなかったから。
「大丈夫だよ」
 それでも。
 美幸はそう言った。目の前に立つ少年に言い聞かせるように。
 これ以上、心配をかけたくはなかった。今日はもう十分、わがままを聞いてもらったから。
 そして実際、彼女は大丈夫だと思っていたのだ。何故なら、彼が……正宗が側にいてくれたから。
「ねぇ、正宗」
 それでもほんの少しだけと、美幸は最後のわがままを言う。いや、言おうとした。
「…………正宗」
 なのに、彼に先を越されてしまって。彼女はくすぐったそうに笑う。

 彼の手は、美幸の頭をそっと撫でてくれていた。

 いつだってそうだった。
 辛い時。悲しい時。側にいてくれたのは、正宗だった。
 何度も何度もしてきた失恋。その度に、落ち込む彼女を励ましてくれたのは彼だった。
 言葉では何も言わない。優しさは態度で示すだけ。それでも十分だった。十分すぎるほどに、十分だった。
 常よりも深く落ち込んだ時には、こうして、頭を撫でてくれる。
 少し照れくさいけれど、彼のぬくもりが直に伝わってきて、暖かな気持ちが生れる。
 我ながら子供っぽい、と美幸は思う。それでも。
 正宗の優しさに、彼女は甘えてしまう。最後には、頼ってしまう。

 幼馴染という、関係に。

83:三人  ◆vq1Y7O/amI
07/08/24 02:22:39 AbBVSXYt
 どれぐらいの間、そうしていただろうか。
「ありがと、正宗」
 立ち上がった彼女の眼差しは、しっかりとしていた。別れを告げたのだろう、自分の想いに。きっぱりと、
はっきりと。
 正宗は、安心したように頷いて、さて、と言った。
「コルトン、行くか」
「そうだね。色々と付き合ってくれたから、今日はおごっちゃうよ」
「随分と気前がいいな。あれだけ買い物したわりには」
 大丈夫、大丈夫。笑いながら、不安になったのだろうか、財布を取り出して中身を見た彼女が、一瞬、
固まる。
「コーヒー一杯、290円でいいさ」
「そうしてくれると助かるかも……つ、次にはね」
 溜息混じりに差し出した言葉に、彼女はあっさりと飛びついてきた。
「さっき、買い物しすぎだ」
「だって、可愛いかったんだもん」
「それはわかるが、計画性を持て、って言ってるんだ」
 他愛もない言い争いをしながら歩く二人、正宗の目はいつだって美幸に優しい。
 だが、時にその目は煙る。二人の間の距離を、掴みかねて。
 美幸に望まれるようにあること。それは彼の願い。だが達観するまでには至っていなくて。
 何も言わずに側にいることも、想いを押し殺して立つことも辛くはなかった。
 辛いのは、知っていること。彼女が彼の全てを知っていると言うように、彼も彼女のことを理解している。
だから、気付いてしまう。
 優しい幼馴染。求められているのがそれだから、正宗はそう振舞う。
 決してその先には進まない。何故なら求められていないから。

 辛いのは、求められるものと、求めているものが違うこと。
 正宗は知っている。
 彼女が彼に求めているのは、幼馴染の自分でしかないことを。

 それでも彼は、他に術を知らなくて。
 幼馴染を続ける。いつ終ると知れなくても。

「正宗? どうかした?」
 覗きこんでくる彼女に、だから彼は言うのだ。
「なんでもないさ」
 と。

84:三人  ◆vq1Y7O/amI
07/08/24 02:23:16 AbBVSXYt
「あれ?」
 コルトンに近付いた時、美幸はふと首を傾げる。裸眼で2.0の彼女は、店内に誰かを見つけたらしい。
「店の中にいるの、忍じゃない?」
「え?」
 言われて、正宗はじっと目を凝らす。
 黒の短い髪。細い頬、スレンダーな首筋。確かに、それは彼の知るもう一人の幼馴染だった。
 だが、その隣には。
「あれって、男の人、だよね?」
 自信なさげに言う美幸に、彼は返事を返せない。テーブルを挟んで向かいあっているのは、確かに
男だった。シャツをラフに着こなし、どこかふてぶてしい。
 そして、何よりも二人が驚いたのは。
「忍、楽しそうだね」
「だな」
 普段は人見知りするのか、あまり表情を面に出さない忍が、今は違っていた。楽しそうに男と話している
彼女の様は、二人にはまるで知らない人間のように思えたほど。
 いつの間にか二人は、こっそりと見つからないように歩いていた。植え込みの影に隠れながら、そっと
窓から中を覗き込む。
 今度は、はっきりとわかった。
 忍の満面の笑みも。彼女の前に座る男の顔も、やはり楽しそうな様子も。

 思い出す。高村が言っていたことを。
『相手は一個上の三年らしいんだけど、なんか笑いながら喋っててさ。俺、塩崎があんな風に笑うとこは
初めて見た気がするな』
 もしかして、あの男が、忍が図書室で会っていたという男なのだろうか。

「忍にも、とうとう彼氏が出来たか~」
 感慨深そうに言う美幸の声は、嬉しそうで、楽しそうだった。心からの祝福を送る彼女をチラリと横目で
見ながら、何故か。
 何故か正宗は、言いようのない苛立ちを覚えていた。

 後になって彼は気付くことになる。
 それが虫の知らせだったということに。


 ――そして出会った――

85:三人を書いた人  ◆vq1Y7O/amI
07/08/24 02:30:06 AbBVSXYt
今回は謎とかはなくて、シンプルなストーリーですー。
忍と亮太から離れて、美幸と正宗の方へ視点を移してみました。

前スレ>502
考えていただけてありがとうございます。コルトンは、やっぱりフェアじゃなかったですね。反省です。

前スレ>503
namelessから「な」と「め」を捻り出すというのも、暗号としてどうかとは思ってはいましたw

前スレ>504
やはりキャラは自分の子供のようなものなので、そう言っていただけると嬉しい限りです。


そんなわけで、新スレとなっても、投下させていただきたく思っております。
お付き合い頂けると幸いです。

ではよろしくお願いいたします。

86:名無しさん@ピンキー
07/08/24 03:50:56 XcBG5m5c
GJ!

今回のラストの意味を素直に受け取るなら、美幸が亮太に惚れるか惚れられるかしそうだな。
もしくは両方か。

87:名無しさん@ピンキー
07/08/24 06:10:27 HotUew72
GJ! しかし、何か正宗が誰とくっつくにしろ、余った方が出そうですねぇ……。

いや、当たり前の話ですが、何か切なく感じてしまいますー。まぁ、そこがまた面白いのですけれど。

88:名無しさん@ピンキー
07/08/24 08:41:16 kYHfZ5Nd
>>78
GJ!

でも早く書ききってくれ。
俺の息子が反抗期なんだ。

89:名無しさん@ピンキー
07/08/24 14:15:32 dKBB0EXl
これはまさかの
正宗→美幸→亮太→忍→正宗

の予感!!
いやー・・・いつ読んでも「三人」は切ないねー

90:名無しさん@ピンキー
07/08/24 23:05:19 pLxjYgfL
俺は忍派だったはず…なのになぜ美幸にこんなに魅力を感じているんだろう!もう両方下さ(ry
ここからどう展開するか楽しみで仕方がない。GJです!

91: ◆QiN.9c1Bvg
07/08/24 23:44:44 Jy/bcMUJ
久しぶりの投下になります。
前スレ>>461-463及び>>516-523の続きです。

↓以下投下

92:防人と柱 ◆QiN.9c1Bvg
07/08/24 23:47:23 Jy/bcMUJ
第二章「中学生二日目の『出会い』」




「さて、と」
 昨日と同じように起きた後、制服に着替えて、歯磨きして顔を洗って、居間に入ると机の上におにぎりと
書置きを発見した。
「今日も遅くなります、か…」
 キッチンに椅子に座って、おにぎりを食べる。中身はおかか。あたしの好きなやつだ。
 お母さん、最近忙しそうだな。まぁ、それは良いんだけど。リモコンでテレビを点ける。朝のワイドショーの
ニュースキャスターの陽気な声が流れ出してきた。その声がいやに遠くから聞こえてくるように感じた。
 いつも通りの光景。あの時くらいからの。台所を見回す。今日、和美は来ていない。
 ……ちょっと早いけど、もう出ようかな。
 何か耐えられないものを感じたあたしはさっさとおにぎりを片付けて、おにぎりが置かれていた皿を洗って、
戸締りをした。鞄を取ってきて、玄関で靴を履いて、家の中を見る。
「――」
 いってきます、ってそういえばいつから言ってないかな。
 ふっ、と息を吐いて外に出て、鍵を閉める。すると、後ろで門を開ける音。

93:防人と柱 ◆QiN.9c1Bvg
07/08/24 23:49:37 Jy/bcMUJ
「勇希ちゃん、おはよう」
 和美だった。いつも通り、あたしに屈託のない笑みを見せて―あたしはその笑顔を少し呆然と見詰めてしまった。
「どうかした?」
「え、う、ううん、なんでもないなんでもない。おはよう、和美」
 そのまま二人並んで歩き出す。
「勇希ちゃん、これ試しに作ってみたんだけど」
 和美はそう言って鞄の中から青い包みを取り出した。これは……お弁当?
「自分の分作ったからついでに作ったんだ。良かったら。」
「あ、ありがと」
 あたしは両手でそれを受け取った。結構……いや、凄く嬉しい。
「でも、和美。あんた、あたしがお弁当作ってたり、学食で食べるとか言い出したらこのお弁当どう処分するつもり
だったの?」
 なんだか照れくさくて意地悪を言ってしまう。
「……あー、んー、考えてなかった、かな」
 和美が頬を人差し指で掻きながら答える。
 あたしはその様子を見て、口元を歪めて、目を細めた。
 ―和美らしいな、なんて思ったり。ああもう、なんであたしはこんな和やかな気持ちになっちゃってるのかしら。

94:防人と柱 ◆QiN.9c1Bvg
07/08/24 23:51:56 Jy/bcMUJ
 昨日が入学式。今日が授業の初日と来たら、まだ授業はまともに始まらない。教科ごとに先生の自己紹介
及び、授業内容の解説に半分以上の時間を取られ、あとはちょっとかじるだけ。
 知ってはいたけど、授業ごとに先生が変わるのってかなりおかしく感じる。あと、授業時間も五分だけだけど
長くなってるし。なんか肩が凝る感じ。
「勇希ちゃん、どう? 授業の感じ」
 休み時間に隣の和美が訪ねてきた。あたしは振り向かずに次の時間の教科―英語の教科書を取り出しながら
答えた。
「ちょっと慣れるまで時間かかりそうね。今から成績が心配かも」
「違和感あるよね。ほぼ一ヵ月半ごとにテストがあったりとか」
「そうよね。ところで、和美。あんたこの教科自信ある?」
 あたしは英語の教科書を両手で持って胸元で構えて見せる。
「うーん、どうだろ、やったことないからなぁ」
「あーあ、そうよねー。英語が一番心配。外来語なんて……」
「外来語って……」
 和美が苦笑する。
 だってしょうがないじゃない。苦手なんだから。日本人は日本語さえできれば良いじゃないのよぅ。

 そして、昼休み。あたしは机に突っ伏していた。結局、英語の授業は不安感を煽りに煽る内容だった。
 大丈夫かな、あたし……

95:防人と柱 ◆QiN.9c1Bvg
07/08/24 23:53:59 Jy/bcMUJ
「勇希ちゃん、ご飯食べようよ」
 和美が椅子だけ持ってきて、緑のハンカチで包まれた弁当箱をあたしの机に置いた。はぁ、と溜息を付いて
あたしも朝に貰ったお弁当を取り出した。
「そうね、切り替えないとね…」
 青いハンカチをほどいて、フタを開けると、なかなかの数のおかずが詰め込まれていた。玉子焼き、一口だけの
スパゲティに鳥のから揚げ、あと野菜にプチトマトとレタス、お新香、で白ご飯。
「ちょっと簡単なおかずばっかりで申し訳ないんだけど」と和美。
「そんなことないわよ、色合いも良いし、美味しそうじゃない」
 まずは鳥のから揚げ。あたしは好きな物を最初に食べるタイプだ。軽い塩味と胡椒の風味に生姜の香り。
奥歯で噛むと心地よい歯ごたえが返ってきた。ご飯が進む味だ。間に野菜を食べて、スパゲティ。からめてある
ミートソースはレトルトだけど、それでも美味しい。玉子焼きは砂糖醤油の味付けで葱を混ぜた物。お新香は
和美の家の自家製で、胡瓜と茄子が一切れずつ。噛むたびにキュッキュッと音を立てる。ご飯はお弁当用に
固めに炊いてあった。
「勇希ちゃん、あとこれも」
 同じように箸を進めながら和美が小さな丸いタッパーを出した。中は蜜柑と林檎にヨーグルトをかけた物。
いちいち心遣いが嬉しい。
 全部食べ終わるのに15分もかからなかった。最後に渡されたお茶を一息に飲んで―
「ごちそうさま」
「うん」
 和美が笑顔で頷いて昼食は終了した。和美も同じくらいに食べ終わる。そのままお弁当の品評もかねて雑談
していると、いつの間にか昼休みは終わってしまった。

96:防人と柱 ◆QiN.9c1Bvg
07/08/24 23:56:36 Jy/bcMUJ
 五時限目は…生物ね。それにしても、とあたしは思った。
 お弁当を食べてる時、何か視線を感じたけど一体何だったのかしら。

 そして、放課後は初部活。少しだけ緊張を感じながら武道館へ。道場に入ると、そこは雰囲気が違って感じた。
昔、空手をしていた時にも感じた凛とした空気。棚にズラリと並んだ防具。きらりと蛍光灯の光を反射する板の床。
その全てが特殊な雰囲気を醸し出していた。
 気付くと、周囲にはあたしや和美と同じ、制服に着られているという言葉がぴったりの一年生がいた。とりあえず、
来てみたもののどうすべきか迷っていたその時、奥の扉が無造作に開いたかと思うと、長身の女性が出て来た。
あたしたちを一瞥して女性はぶっきらぼうな口調で言った。
「おい、そこのお前ら、仮入部か見学希望の一年生か?」
 はい、そうです。と誰かが答えた。
「よしよし、良いぞ―私は剣道部顧問の秋水(あきみず)だ。よろしく頼む。見学の者は道場の、あー…」
 今秋水と名乗った先生は道場を見回した後、隅の方の空いてる部分を指差す。
「あの辺に適当に座っててくれ。仮入部の者は体操服を持ってきているだろうから、そこの更衣室で着替えて道場へ
集まってくれ」
 一年が体操服に着替えて、道場で待っていると先輩らしき人達も続々と入ってきた。やがて道場に男女合わせて
二十名以上の剣道部員が揃った。全員、袴は紺色だけど、上の胴着は男子が藍色で女子が白色だった。防具は
棚から下ろされて、床に一列に並べられ、一年生を除く全員が竹刀を持って中央に整列している。

97:防人と柱 ◆QiN.9c1Bvg
07/08/24 23:58:40 Jy/bcMUJ
 道場入り口上部に添えつけられた時計が四時を指し示した時、前に秋水先生が立ち、よく通る声で言った。
「では、準備体操を始める! 仮入部の一年生も見よう見まねで良いから準備体操をするように。別に中央に
並ばなくても、その場で良い。それと、佐藤、準備体操が終わったらいつも通りにこなせ。私は仮入部
を指導する」
 はい、と短く女子の一人が返事をした。
 ちなみに見学をしている一年生が五人。仮入部扱いで体操服を着ているのが私と和美を合わせて三人。見学者は
道場の隅の方に正座で座り、全員が辛そうにしていた。
「まず、基本を教える。剣道の移動の基本となる、すり足だ」
 秋水先生が準備体操が終わったあたし達の前にやってきて動作を示した。
「背筋を伸ばして、少し体重をかけるように右足を前に出せ。左足は爪先を右足の踵から若干ずらして離して、
踵を少し浮かせろ。膝は少し曲げるように。で、前進は右足から動かす。後退は逆に左足からだ」
 一通り見せた後で秋水先生は私達を見た。
「何か質問はあるか?」
「はい」
 和美が手を上げた。
「何だ?」
「僕、マネージャー志望でなんですけど……」
 そういえば、そうだったわね。
「そうか。気にするな」
「……は?」

98:防人と柱 ◆QiN.9c1Bvg
07/08/25 00:00:59 Jy/bcMUJ
「常識で考えろ。剣道の基本もロクに知らないヤツが剣道部のマネージャーなんてやったところでまともに
こなせるはずがない」
「そ、それはそうですけど」
「私はマネージャー志望であろうと、入部希望の者はとりあえず面を被る位までは基本をやってもらうことに
している。ああ、今マネージャーやってるアイツ―二年の小島と言うんだが」
 秋水先生がジャージで動いている女の人を指差した。
「アイツがそうだ。途中まで他の奴らと同じ事をやらせたが、やっぱりマネージャーが良いと言うから、
マネージャーになってもらった」
 また和美に向き直る。
「まぁ、そんなわけだ。とりあえず、基本は覚えろ。覚えてから後でどっちか決めても遅くはない、異議はあるか?」
 反論は無かった。こうして和美は暫定で剣道を本格的にすることとなった。
 和美がやりこめられたところで、ひたすらすり足の練習が始まった。道場の隅の空いてるスペースをひたすら往復。
時折おかしい所を指摘されながらもひたすらすり足。練習が終わったのは六時。ただ歩くだけ、と思っていたけど
終わってみれば足が結構疲れてる。
 一方、和美は腰を落としてへたり込んでいた。
「今更だけど、本当に体力ないわよねぇ……」
 あたしはその光景を回想しながら和美を武道館の前で待った。和美はまだ来ていない。疲れてるから時間が
かかってるのかしら。

99:防人と柱 ◆QiN.9c1Bvg
07/08/25 00:03:42 Jy/bcMUJ
 その時、肩を叩かれた。後ろを振り向くと、何かがぐにっと頬に突き刺さった。目線を頬に。……人差し指? 
そのままその人差し指の持ち主に目を向ける。
「宮間さん、やっけ? 引っ掛かかった~」
 いたずらが成功したことで嬉しそうにはしゃぐ女の子がいた。それは今日、あたしと和美と一緒に仮入部を
体験した女の子で……そうだ、思い出した。昨日、クラスの自己紹介で、かなり特徴的な喋り方をしてた―
「下園、さん?」
「お、覚えててくれたんか、嬉しいな~」
 明らかにあたしとはニュアンスというか、イントネーションの違う口調で下園さんが答えた。
「一緒のクラスの人を一緒の部活で発見したもんやからちょっとお近づきになっとこうと思ってな。
……ひょっとして怒っとる?」
「あ、いや、ううん。ちょっと突然だったからびっくりしただけで、別に」
「勇希ちゃん、お待たせ……あれ? どなた?」
 三人とも顔を見合わせる。これが、後にあたしや和美と大親友になる下園静との出会いだった。


100: ◆QiN.9c1Bvg
07/08/25 00:07:14 pl/e2VgM
以上、投下終了です。

書いてからいつも思うんですが、文を書くって難しい……
終わってみれば序盤とはいえ、今回もヤマが無い始末。
次回からは時計の針を早くまわして行きたいと思いますので、よろしくお願いします。

あと、前スレで指摘がありました、和美の長髪の件ですが、
その、書くのも下らない伏線になっております。ご指摘の分も含めまして見て頂けると幸いです。

次回もよろしくお願いします。では。

101:名無しさん@ピンキー
07/08/25 00:13:54 gjLxUkzY
早速GJ! シロクロにしろ絆と想いにしろ三人にしろ高校の話だから、初々しい感じの中学生、しかも一年生というのはいいね!

二人で仲良く弁当食っといてそれが何を意味するか分からないなんて……。

フフフ……そんな初心な勇希に萌え萌えだぜ!!

102:名無しさん@ピンキー
07/08/26 06:42:04 j32x08rA
これは百合wwwww

いやなんでもありませんwwサーセンwww

GJ!!楽しそうな学園生活だな

103:49 の前日談 1/2
07/08/28 19:08:27 mhKwCwUI

「……祥子ぉ、アンタいいかげん、その腐れ処〇膜、特別急行にでも破いてもらったらぁ~?
あ~、なんだったら、アタシの彼氏、貸すよぉ? 超鈍行だけど編成数多めで、結構デカイからぁ
アンタとぉ~、アタシとぉ~、アンタの想い人ぐらい、縦に重ねても、余裕で串刺しぃ……」

 この前の飲み会の時、隅っこで超薄っすいチューハイをちびちび舐めてた私の耳元に
酒臭い息を吹きかけながら、ちーちゃんはこっそりそう囁いてくれた。
そしていきなり咳き込んだ私を、その凶暴までに大きな胸へぎゅーーーーっと押し込めつつ
イイコイイコしてから、『んじゃ、私にもご褒美ぃ~』とか言って、私の太ももにぽすんと
顔を伏せ、そのままぐりぐりめり込ませてくる。

「ちっ、智津子ちゃん、ちょっと飲み過ぎ……。気分悪くなってない? 別室で、ちょっと休む?
 それとも、酔い覚ましのお薬買って……」
「そっかそか、祥子はそんなに『御休み所』に逝きたいのかぁ~。良ぉし良し、愛い奴じゃぁ~」

 親友がそんな事を大声で喚いても、殆どの同僚がそれ以上の乱痴気騒ぎを繰り広げていたので
幸い誰にも聞きとがめられなかったと思い込み、その時は迂闊にもホッとしてた。
しかも、ちーちゃんは『う~ん、遥か昔の懐かしき、処女の匂い~』とか言いながら、絶えず
変な刺激を与えてこようとするので、本当に始末が悪い。

 ほとんど泣きそうになりながら思わず、鉄ちゃんの姿を探すと、運良くちーちゃんの恋人の
若狭君の近くでウーロン茶を啜っていたので『お願い、こっちに気が付いて下さい』視線を
投げようとした途端、鉄ちゃんが顔を上げて、真正面から私を見た。
  
 それだけで、心臓が跳ね上がり、お腹の一番奥深い所から、熱い何かがじわっと流れ出る。
だから一瞬、鉄ちゃんの顔が、微妙に歪んだのは、自分の目の錯覚だと思った。


 べろんべろんに酔っ払っちゃったちーちゃんを、若狭君ごとタクシーに無理矢理押し込む直前
親友が私の耳元でもう一度、はっきり囁いてくれた。

「祥子~ぉ、アタシが貸してあげた『資料』で、毎日ちゃんとお勉強してま~すか~ぁ?」
「……ぅん……」
「勉強熱心で、本当にアンタは良い子だ~ぁね~」

 タクシーが街頭から少し離れた所に止っていたのが幸いして、私の顔がその瞬間、火を噴いたのは
多分ちーちゃんにしか解らなかっただろうが、声が少し震えたのは若狭君にもばれたかもしれない。
ちなみに、ちーちゃんの彼氏の若狭君は『お口とオッパイでの御奉仕』が大好きな人だそうで……。
しかも、ちーちゃんが一週間ごとに私に押し付けてくる『資料』とは、二人の隠し撮り無修正××テープ。
更に、400字詰め原稿用紙一枚以上の感想文提出まで、平気で要求してくる始末。
コレは、若狭君は絶対知らないちーちゃん個人の秘密な趣味だから、私は永遠に孤立無援だ。


104:49 の前日談 2/2
07/08/28 19:10:52 mhKwCwUI
 
 タクシーのテールランプが完全に見えなくなるまで、私はそこでしばらく深呼吸を繰り返していたら
誰かから、いきなり肩を叩かれて、本当に腰が抜けるかと思うぐらい驚いた。

「ひぃやぁぁぁ……、もがっ」
……人聞きの悪い反応はやめて貰えないかね、祥子君」

 薄い眼鏡の奥から、爬虫類みたいに何処を見ているのかよく解らない視線を光らせて『清竜鉄道一の
教育者』を自称する、菅さんが私の背後にこっそり忍び寄って来てた。

(うわ、私、この人、凄く苦手……)

 でも、鉄道会社はサービス業。
どんなに、見た目や第一印象が嫌いなタイプでも、まずはにっこり笑って、愛想良く応対しなきゃ
いけない基本精神だけは、しっかり叩き込まれてる。
特に私みたいな、ちんちくりんが持つ事の出来た武器は、満面の笑顔しかありませんでしたから。

「……えっと、何か御用でしょうか?」

 (何でこの人、私を名前で呼んだだけじゃなく、にたにた笑いながら、私の手を撫で回しているのかなぁ?)
なんて、ぼんやり思ってるあたりで、自分もかなり酔っている事に気が付かなきゃいけなかったみたいで
次の瞬間、菅さんが、私の手を強引に握り締めて、一直線に向かう先はピンク色のネオンがかなり安っぽい
ブティックホテル。

「……え? え? え?」
 
 強引に振り払おうにも、完全に力負けしてる。
しかも、菅さんは卑怯にも『鉄也くんがアソコの前で待ってるって言ってたよ』なんて口走ったので
一瞬、抵抗する力が抜けて……。
 
『げずっ!!!』

 とか、かなり痛そうな音がして、菅さんの体がぐらりと傾いた。
そのまま、誰かが自分の体を、小荷物みたいに脇に抱えて、より暗い方に即効で運搬される。
後ろで、なにか獣が大声で喚いていたけれど、目の前がぐるんぐるんして……。


  次に気が付いた時、私は鉄ちゃんの大きな背中に、ぐったりおぶさっていた。


 当然、翌日全然二日酔いなんかしてない超爽やか顔のちーちゃんが、やっと勤務が終わって
瀕死状態の私に新しいテープを押し付けるのと同時に『鉄也さんから、頼まれたんだけど~』
とか言いながら、二日酔いに苦しむ私の耳元で、延々3時間以上にわたって、惚気とお説教を
シームレスで呟き続けると言う、言葉攻めをしてくれた。

105:名無しさん@ピンキー
07/08/28 19:12:12 mhKwCwUI
>>88
 では >>78 の続き電波を受信する作業に戻ります 
 サーセンwww

106:名無しさん@ピンキー
07/08/28 22:14:53 MKiFQIh5
ぬはwwwwGJwwwww!!

祥子さんモテモテだな! 鉄ちゃん早くお仕置きしてあげないとやばいぞ!


107:名無しさん@ピンキー
07/08/29 04:11:31 Lm7s0tKI
管キメエwwwwwwwwwwwwww

こいつを拷問するSSキボンwwwwギャグ風味でもいいからさwww

>>105GJ!!

108:名無しさん@ピンキー
07/08/29 08:25:08 AVC26q/Y
>>105
アンカーのったら自分のレス表示されて吹いたwwww
俺キメエwww恥ずかしいww

わっふるわっふる

109:名無しさん@ピンキー
07/09/01 05:19:53 xGctEgS9


110:105
07/09/01 13:03:17 9t8FUvOv
10レスほどお借りします

111:祥子と鉄也 1/10
07/09/01 13:04:59 9t8FUvOv

私より2つ年上の、とても気の良い、鉄道が大好きな幼馴染は、ずっと『私のヒーロー』だった。

   田植え前、きれいに代かきされた田んぼの深い泥に足を取られて、全然動けなくなった時も
   七夕お泊り会の深夜、怖い話を聞きすぎて、一人で真っ暗なおトイレにいけなくなった時も
   ドングリ拾いの帰り道、崖の高い所に咲いている竜胆の花が、どうしても欲しくなった時も
   大雪の翌朝、融雪路の雪捨て場にうず高く積もった雪を踏み抜いて、危うく流されかけた時も

 何時でも鉄ちゃんは、莫迦な私をちゃんと助けてくれて、拙い言葉で背一杯感謝の気持ちを伝えると
『さっちゃんは、面白いからほっとけない』とか言って、私のお下げを2、3度引っ張るのが癖だった。

 本当の事を言うと、幼かった時の私にはイマイチ良く解らなかった旧国鉄車両の微妙な差異をいかにも
楽しそうに滔々と熱く語るその内容よりも、きらきらと目を光らせてる真剣な顔にずっと見とれていた。

 だけど、小学校高学年頃から、何故か前みたいに気安く『さっちゃん』ではなく、他人行儀な『祥子さん』
なんて呼ばれ始めてしまった事に少し寂しさも感じたが、鉄ちゃんは中学校で剣道部に入ったあたりから
初夏のイタドリみたいにぐんぐん背が伸びて、声が低くなり、体つきもすごくがっしりして、あっという間に
男の子から男の人になっていったので、それも仕方が無い事なのかなぁ……と思って我慢した。

 一方の私は、鉄ちゃんのお家にも『お赤飯のおすそ分け』をした頃から、背が全然伸びなくなって
胸に付いた以上に腰や太ももに重たく余計な肉がどんどん集まって、ひどくみっともない体になっていた。

 それでも、『清竜鉄道同好会』は、ずーっと鉄ちゃんと私と結局本当にいたのか最後まで良く解らない
何名かの幽霊部員とで、二人がご近所さんだった小・中・高校の12年間は、なんとか細々続けてこられて。

  だから、私が、鉄ちゃんの隣に永遠に居ても良いんだと、一人で勝手に思い込んでしまった。

 勘違いにやっと気が付いたのは、鉄ちゃんが遠くの大学から始めて帰省してきた高二の夏の暑い日。
鉄ちゃんの隣の洒落た日傘の影では、背がすらっと高くて、胸が大きくて、とても垢抜けた、綺麗な都会の
女の人が凄く楽しそうによく通る高い声で、絶えず笑ってた。


112:祥子と鉄也 2/10
07/09/01 13:06:16 9t8FUvOv

井戸でよく冷やした西瓜に麦わら帽子を被せ、鉄ちゃん家の軒先に黙って置き去りにして、一人でまとめた
『清竜鉄道同好会』のレポート抱えて西日に照らされながら、とぼとぼ自分の家へ逃げ帰り、深夜お風呂の中で
12年間以上何にも言わなかった自分の大莫迦さ加減を噛締めながら、生まれて始めて本気で泣いた。

 一年目と二年目は同じ人で、三年目と四年目はそれぞれ違う人。
夏になる度に、背が高くて、胸が大きくて、赤いバラみたいな雰囲気が共通している女の人を連れて
帰ってくる鉄ちゃんと、絶対鉢合わせしたくない一心で、私は毎年一週間決まって酷い夏風邪を患う。

 そして、枕元には毎年律儀に、都会の鉄道会社の期間限定グッズ(主に食べ物)が、届けられた。
玄関先で、お母さんが鉄ちゃんに色々と上手く謝ってくれてる声を布団の中で必死に耳をそばだてて聞き
その後必ずタヌキ寝入りをして、最後にはお母さんからも酷く怒られてしまったけれど……。

 地元の短大を卒業後、保母さんになるつもりだったのに、鉄ちゃんが『清竜鉄道』に入社するらしいと
聞いて、駄目元で試験を受けたら『清竜鉄道同好会』のレポートが功を奏したのか見事、補欠合格。
総合職として採用予定だった大学卒の女の人が、入社直前に寿辞職して、本当に同僚になってしまった。

  鉄ちゃんの邪魔にならない程度の距離から、こっそり見ているだけで、十分だったハズなのに。

 学習能力の無い莫迦な私は、又同じ過ちを犯してしまった。


113:祥子と鉄也 3/10
07/09/01 13:08:01 9t8FUvOv

「おい、祥子」

 ともすれば、後悔やら罪悪感やらで見っともなく震え出してしまう声を、極めて短い語彙の
命令口調でなんとか取り繕ろう事にして、俺は意地の悪いニヤニヤ笑いを貼り付けた顔のまま
俺の戒めから必死で逃げ出そうと無駄な努力を続けている、哀れで愛しい幼馴染を見下ろした。

「聞いてんのか、痴女」
 
 ぎゅっと固く閉じられた瞼からはとめどない煌めきが流れ落ち、泣き声を漏らぬように
強く引き結ばれた薄赤い口元は、俺からの許しの接吻を乞うかのように、わなないている。
力の入らない両手で、弱々しく俺を押し退けようとしているが、どうやら腰が抜けたようで
女の子座りの格好で力無く投げ出されている両足は、青い血管が浮き出して見えるほど白く
むっちりとした太ももが時折ひくひく痙攣するだけで、少しも動かせていない。

「……いっ……ゃ……ぁぁぁ」
「い・や?」

 ぐらぐらと頼りなく、それでもなお小刻みにいやいやと振られ続ける細い顎を掴んだままの手に
ゆっくりと力を込め、吊り下げるようにして無理矢理立たせると、彼女は小さな悲鳴を上げた。
それを態々、猫なで声で繰り返してから、そのまま小さな桜色の耳たぶを咥えて舐めしゃぶり
一気に耳の穴へ舌を突っ込んで掻き回してやると、面白いぐらいに体が跳ねて、又くたりと崩れた。

「ははっ、祥子ぉ。……イッた?」 
「……あ、あっ……、いやぁっっっ、ごめんなさい、ごめんなさい、鉄也さんっ
見ないで、私を、もう、見ないで……ぇ、下さぁぃ、おっ……、お願いーっ!!!」


114:祥子と鉄也 4/10
07/09/01 13:09:03 9t8FUvOv

一度苦しげにひゅぅっと息を呑んだ後、祥子は唯一自由になる両手で己の耳を塞ぎながら、そう喚く。

(本当ならそれは、こっちの台詞なんだけどな、祥子。
 ……あぁ、でも、今ココで辞めてしまったら『お仕置き』にはならねーんだよ)

 心を鬼にして、二人を隔てているその華奢な手を、指が砕けんばかりの勢いで握り締めて
引き剥がし、頭を垂れ身も世もなく泣き続ける彼女に向けて厳かに、魔法の言葉を告げてやる。

……コレは『お仕置き』だよ、祥子。イケナイ体と心に対する、正当な『お・仕・置・き』」
 
 ほどなくすすり泣きが止み、わずかな沈黙の後、ゆっくりと俺を見上げて来た幼馴染の顔には
最早、ある一線を踏み越えてしまい、ほとんどの意識を放棄した、白痴の笑みしか浮かんでいない。
……もっともそれを見た瞬間から、俺の根性無しな下半身様は持ち主の自制心を完全に殴り倒し
一刻も早くこの窮屈な場所から開放しろと、暴力的なまでの快感で全身を乗っ取りに来やがったが。

 出来る事ならもう少し、祥子と遊んでいたかったけど、意志薄弱なこの身では、もう無理だ。
愉悦にのみ支配され、頭のネジを完全にすっ飛ばしたまま『お仕置き』と言う言葉を何度も
嬉しそうにぶつぶつ繰り返す幼馴染の心を取り戻し、二度と俺なんかには届かない遥かに遠く
安全な所に、しっかりと据えてやらなきゃいけない。

 これで『お終い』にするための覚悟を固め、祥子をそっと抱き寄せると、彼女はこれから
自分がどんな目に合わされるのかまったく解らぬがゆえの無邪気さで、俺に擦り寄ってきた。


……俺からの最後の口付けは、わざと小鳥がついばむ様な軽いものにした……。


115:祥子と鉄也 5/10
07/09/01 13:10:09 9t8FUvOv

今時の幼稚園児でも、もうちょっとマシな技を持ってるぞ? とか、突っ込まれそうなほど
無愛想なキスを一度だけ、幼馴染と交わす。
今や、その程度の刺激では物足りなくなってた祥子は一瞬、不思議そうな表情で俺の顔を
覗き込んでくるが、あえてソレに気が付かない振りをして。
 だが、それにめげる事無い彼女は、俺を簡易寝台の上に押し倒し、自分から積極的に舌を
使って、少し前にうっかり教え込んでしまった以上の技で、俺の口内を遠慮会釈無しに犯してくる。
 しかも、今回は俺の胸にわざとらしく、下着越しでも十分柔らかい胸を、絶えず押し付ける
という、とんでもない特典付きでだ。
 
(本当、コイツって、昔っから無駄な所で、器用なんだよなぁ……)

 体中が感じている感覚とは全然関係無い事を必死で考えていないと、あっと言う間に総てを
持って行かれそうな快感を、握り締めた拳の内側に爪を立てると言う恐ろしくしょぼい方法で
なんとか押さえ込む。
……案の定、大莫迦野郎な俺の下半身様には、なんの効果が無かったが。
 まぁそれも、東海道本線の駅名をオサコヘから逆に、何回か行きつ戻りつしながらもシツヘンあたり
まで唱えた辺りで、いきなり口の中に広がった塩辛い錆味のおかげで、あっさり中断させられる。
 
「……なんで、なんにもしてくれないの、鉄ちゃん!!!」

 形良い薄赤の口元から、それ以上に赤い血をつぅっと一筋垂らしながら、祥子が叫ぶ。
この器用だか不器用だか良く判らない幼馴染が、俺の気を引くために、俺のではなく
自分の唇を態と噛み切りやがった事に、やっと気が付いたが、ぐっと我慢して無表情で言い返す。

「『机』は一々、反応しない」

 ざざぁっという派手な音が聞こえそうな勢いで、又、真っ赤な顔が一瞬で真っ青になった。

「『机』は一切、喋らない」

 つい先ほど踏み越えた一線の向こう側から、リニア並の速度で引っ返してきたようで
泣き出すよりも前にこわばった表情が、どんどん険しくなっていく。

「『机』相手に欲情なんかするな、変態」


116:祥子と鉄也 6/10
07/09/01 13:11:22 9t8FUvOv

祥子の体を押し退けながら心底嫌そうに吐き捨てて、簡易寝台と俺の体の間で皺だらけになった
彼女の制服を次々引っ張り出し、手荒く投げつける。
 
「……さっさと、着ろ。歩いて帰るつもりか?」

 絶対、祥子の方を見ないように(帰ったら、まず『配置転換願』か『退職届』だよなぁ……)
なんて事を、天井あたりを半眼で見上げながら、ぼんやり考えていたために一瞬、反応が遅れた。
 腰の辺りでカチャカチャという音がして、いきなりズボンを下ろされる。

「……ソコデ、ナニヲ、シテイラッシャルノディスカ、祥子サン?」
「『机』は喋らないっ!!!」

 どこかで見た覚えの有る表情の幼馴染が、上目使いで睨みつけながら、俺の下着に手をかけてきた。
ソレは間違いなく『スイッチ』が入ってしまった時の顔で、俺がこれまでそれに勝てた事は一度も無い。

「ちょっと待て、祥子!!!」
「私専用の、大切な『机』に、変な釘が、出っぱってるので、これから、修理、しますっ!!!」
「……なんだ、それはーっ!!!」
「『机』は一々、反応しないっ!!!」

 抵抗虚しく、一気に全部降ろされたのとほぼ同時に後退る俺の足がもつれて、二人とも床に尻餅をつく。
結果、男のO字開脚の真ん中で屹立している俺の下半身様の超至近距離で、祥子が固まってしまった。
その顔は、みるみるうちに真っ赤っ赤になって……。

「……う、動くなよ、祥子、絶っっ対動くな……、っ!!!」

 かつて『スイッチ』が入っちゃってる状態の祥子に、俺が何か提案をして、それをそのまま
すんなり聞き入れて貰った事も、決して無かったのを完全に忘れてる辺りがもぅ、てんぱり過ぎ。
そんな追い詰められた状態でも、彼女の荒く熱い吐息を感じ、おずおずと伸びてきた細い指がそっと
やさしく添えられる……、只それだけで、俺の根性無しな下半身様はよりいっそう大きく反り返った。

「……すごい……、熱くて……どきどきしてる……」

 膝を大きく開いた女の子座りのまま、にじり寄ってきた祥子は、とろんとした瞳でうっとりと
呟きながら、凶暴さを増していく俺の下半身様に、冷たくなめらかな指先で絶えず刺激を与えてくる。
 一方の俺はと言うと、そんな祥子の両膝の間のショーツのクロッチ部分が、いまやなんの役にも
立たないくらいぐちゃぐちゃに濡れて喰いこみ、布越しに透けて見える茂みの奥に有るモノの形すら
はっきり判ってしまう光景から完全に目が離せなくなった自分の浅ましさに、一層追い詰められていた。


117:祥子と鉄也 7/10
07/09/01 13:12:35 9t8FUvOv

……あれは、俺が一方的に気恥ずかしさなんて小賢しいものを覚えて、気軽に『さっちゃん』と
呼べなくなり、なんとなく祥子との間に距離を置き始めた時より、ほんの少し前。
 最後に二人っきりで、俺の家のお風呂に入った時にも何故か『スイッチ』が入ってしまった祥子は
恐ろしいまでの天真爛漫さを炸裂させて、俺の股間にあるコレを『私に無いのは、不公平!!!』とか
訳解らん屁理屈こねて散々いじくりまわし、結局コレは取り外しや付け替えが出来ないモノなのだと
十分納得してからやっと開放してくれたという微笑ましい思ひ出も……。

(……あれ? なんかその時、とんでもない『約束』を、させられたような覚えが……)

 目の前の現実から一瞬でも逃避したい俺の甘酸っぱい昔話……なんぞ全然お構いなしに、生身の祥子の
拙い指使いは、自分が空想の中で御奉仕させていた性奴隷の時とは全然違って、素人丸出しな所作のため
早く往かせるためのテクニックとか男を喜ばせるツボもへったくれもない、ぎこちなさ満開なのだが……。
 
「……あ、なにか……出てきた……」

 自分の指先を濡らす、俺の先走り汁の感触をしばらく面白そうに確かめていた祥子は、その
にちゃにちゃで汚された指を一瞬もためらう事無く、自分の口の中に突っ込んだ。

「……ん、ちょっと苦……しょっぱい?」
 
 ぺちゃぺちゃと言うイヤラシイ音を立てながら、細く白いその指をゆっくりなめまわすという
痴態を丁寧に見せ付けた後、俺の下半身に再び覆いかぶさる直前に、記憶力も良い俺の幼馴染は
にっこり笑いながら、言う。

「コレ、私が好きな時に好きなようにして良いって『約束』だったよね、鉄ちゃん!!!」

(やっぱり、覚えていやがったーっ!!!)

 薄赤い口元は、ピンク色の小さな舌をちろりと覗かせて、俺の頂上にゆっくりとキスをした。


118:祥子と鉄也 8/10
07/09/01 13:14:01 9t8FUvOv

ずいぶん小さい頃に、さんざん見せっこや触りあいした時と比べて、随分グロ……じゃなくて
凄く逞しくなってた鉄ちゃんのアレには正直、一瞬驚いた。
 だけど、ちーちゃんの『資料』のお陰でその後の私は、初めてにしては、割と上手く行動出来たと思う。
  
 しかも、ちーちゃんは『良いかぁ~、祥子~ぉ。まず、最初が肝心だぁ~。 相手の反応を確認後
速やかに、対処~っ!』とか言いつつ、自慢の『資料』をがんがん見せ付けながら、必ず最後には
涙目になってる私の口内に、ミルクアイスバーやソフトクリームを遠慮会釈無しにねじ込むという
『特訓』を何度も何度も施してくれた。
 その、美味しいんだけど結構辛かった練習を無駄にしない為にも私は、鉄ちゃんの顔をちらちら
盗み見ながら、どこをどうすれば一番気持ち良くなってくれるのか、体当たりで調べ始めた。

 溜めた唾を少しずつ少しずつ舌をつたわせて、熱い塊に注いでから、優しく丁寧に舐め上げる。
亀頭から雁首には細かく舌を這わせて、裏筋あたりはゆるゆる舐め上げ、根元の方はくすぐる様に。
時々、鈴口をちょんちょんと舌の先でつっつく事も、勿論忘れてない。
暑い日の犬みたいにハァハァ息を弾ませて、私の唾液と鉄ちゃんのお汁でどろどろになっても
熱さを失わず、そそり立つモノに頬をすりつけると、それだけで頭の中がビリビリ痺れた。
 
 ……なんだか、この辺りから無意識に、鉄ちゃんを気持ち良くさせる方法より、自分の方が
気持ち良くなれる事を、どんどん追求し始めてたような気がするけれど。
それ以上に、鉄ちゃんの切なそうにしかめられる顔や短く息を呑む声が、私を深く酔わせていった。
だから、『じゅぶじゅぼ』と、はしたなく響く水音も、『ふぁぁん、ふぅ、んふ』と鼻に抜ける嬌声も
どこか遠くの方から聞こえてきた『祥子、咥えてくれ』というお願いも、全部私の心が発したモノ。

 出来るだけ大きく口を開けゆっくりと、頂上から麓へと何処まで行けるのか、慎重に飲み込んでみる。
絶対、歯を当てないように、そして舌を全体的に絡め這わせながら、喉の一番深い底まで、誘い込む。
亀頭がこつっと当たった時、思わず咳き込みそうになったけど我慢して、今度は逆の方向へと唾液を
まぶしながらゆるゆると送り出して一転、リズム良く強めに唇でしごく。

119:祥子と鉄也 9/10
07/09/01 13:15:19 9t8FUvOv

急にブラが乱暴に引っ張り上げられ、私のあんまり大きくないオッパイが、ふるんと飛び出した。
 なんだか、少し怒ってるような顔の鉄ちゃんがつっと手を伸ばして来て、太く長い指で背一杯優しく
強く、私のはしたないくらい固く立ち上がっていた乳首を、つまんで捻り上げ、弾きながら転がす。
 すると、そこからきゅんきゅん甘い痺れが立ち起こって、お腹の一番奥深い所に絶え間なく流れ込み
私の中から、どんどんイヤラシイ滴りがあふれ出て、床にオモラシしたような水溜りを作っていく。
   
   
  鉄ちゃん、コレ、私の、モノ、だよね? 
  私、だけの、モノ、だよね?
  もうすぐ、身も、心も、蕩け堕ちる。
  だから、私を、繋ぎ留めて。
  世界中の、誰よりも、大好きな、鉄ちゃん。
  一刻も、早く、私で、気持ち、良く、なって、下さい。
  私の、魂に、鉄ちゃんを、しっかり、刻み込んで、下さい。
  どうぞ、莫迦な、私に、お仕置きを……。
   
  
 口内に収まりきらない熱い塊から直に流れ出る、総てを焼き尽くす媚薬を一滴も漏らさぬよう
私は、小さな子供みたいに良く回らない舌で、ちゅばちゅぶと一層強く吸いたてた。

 瞬間、訳の解らぬ咆哮が、私の名前を繰り返し、がっしりとごつい大きな手が、私の頭をわしづかみ
ながら引き上げて、欲望をその爆発へ向けて滅多矢鱈に突き入れてきた。
思わず、悲鳴を上げて激しく身悶えしたけれど、本当は嬉しくて堪らずに、体が勝手に動いただけ。
何度も何度も、重く粘つくご褒美を流し込まれ、全部飲んでしまいたかったのに、量が多くて間に合わない。
  
 やがて、私の喉の奥底からずるりと、白い粘液が絡みついたままの熱い塊が引きずり出されて……。

(……私の、机……、ちゃんと、綺麗に……)
 
 舌で舐め取ろうとしてみたけれど、何故か口の中からどろどろと青臭い白濁液が次々溢れ出して
更に酷く汚してしまい、私はそのまま、気を失った。


120:祥子と鉄也 10/10
07/09/01 13:17:01 9t8FUvOv

糸が切れた操り人形のようにくたくたと、床に崩れ落ちる体を抱きとめると、祥子はすごく嬉しそうに
微笑みながら、ゆっくり目を閉じた。
 途端に重みが増した体を、簡易寝台にそっと横たえて、こびり付いたままの俺の残滓を拭き取ろう
と口元に当てられた指を無意識のまま、しゃぶり始める。
 その時始めて、屋根を叩く強い雨音に気がついて、内ポケットの携帯を取りだそうとしたら上着の
裾が、強く握り締められていた。
 上着を脱ぐため、未練たらたらで祥子の口内からゆっくり指を引き抜くと『……嫌だぁ……
鉄ちゃん……、もっとぉ……』との御達。

(……流石に、意識の無いヤツを襲うのは、趣旨に反するんだよなぁ……)

 とりあえず、脱いだ上着を彼女に掛けて、そのまま枕元に座り込み、しばし規則正しい寝息を
堪能してから、送信。

  To.MAP 【件名】明日レチ、ウヤ
    本文:オマエと連結中ウテシの最新属性は『緊縛』
 
 携帯画面をぼけーっと見つめながら、左薬指のサイズ とか、祥子の父親は昔から結構腕っ節が
強かった事 とかを、つらつら考えてるだけで胸の奥底がどんどん暖かくなってきた。
 お、早速返信が……。
  
  To.金失 【件名】ヌキ&車交、セチ 
    本文:4P、スワップ、NTRに興味有?

 脊髄反射的速度で

  To.MAP 【件名】市ね!!! 
    本文:今後ともレチ教育ヨロ

 と叩き返し、祥子が次に覚めた時、必ず目の前に居るために腕枕添い寝してやって
まずは最初に『俺もさっちゃんが世界で一番大好きだ』って、しっかり教え込まねーと……
なんて思いながら、幸せな眠りに付いた。


 ……あぁ、これで翌朝、超鈍行とオッパイ性人が、人の枕元でやらかしていた手鎖プレイの嬌声で
強引に起床させられなきゃ、本当に最高だったんだけどな!!!


121:105
07/09/01 13:18:09 9t8FUvOv
以上です

最後に
健次と理菜 の中の人
>>48 の中の人
>>53 の中の人
 本当にごめんなさいorz

>>107
 管の属性は『つるぺた、言葉攻め、足こき』なんだけど
 ソレを出来る拷問役は、某ツンツンお嬢しか自分のストックに無いため、㍉

122:名無しさん@ピンキー
07/09/01 19:14:47 KhnfYv4K
うはGJ!! 祥子健気だなぁ。次は是非本番の方をよろしく!!

あ、あと、最後のメールに出て来た単語の意味も教えてもらえると有難い。レチとかウヤとセチとか。鉄道用語なんだろうけど……。



123:名無しさん@ピンキー
07/09/02 01:13:16 0lYYH+/h
GJ!

>>122
それぞれ鉄道用語で、レチは車掌、ウヤは運休、ウテシは運転士のこと。

・・・セチって何?

124:名無しさん@ピンキー
07/09/02 06:52:26 WsamF+Fa
ヌキは、当該列車を運行順序の枠組みから抜く事
セチは、承知
この2つ(+レチ、ウヤ、ウテシ)は鉄道用電報略号より

車交は、車両交換の略語

125:名無しさん@ピンキー
07/09/03 20:33:47 9D7RUt0r
最近絆こないな・・・投下きてくれ。
いそがしのかな?


126:名無しさん@ピンキー
07/09/03 22:29:38 6X6RfMl/
関連スレが 新スレになってます、よろしくお願いします o(_ _)o

いもうと大好きスレッド! Part4
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お姉さん大好き PART5
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気の強い娘がしおらしくなる瞬間に… 第8章
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127: ◆RFJeoF38Ko
07/09/04 18:35:50 TjBUT8k8
1.
私は震えていた。
布団の中で、ずっと震えていた。
泣いていたかもしれない。

夜。
私は押し寄せる後悔と恥ずかしさに、悶えるような思いで一杯だった。
なんてことしちゃったんだろう。
私は、なんてことを。

冷静に戻ってみれば、頭がおかしくなったとしか思えない。
裕輔に、あんなこと言うなんて。
あんな格好で裕輔の部屋で待っていたなんて。
誰がどう見たって、あれは私が……。

誘っていたとしか、見えない。

そんなつもりがなかったなんて言ったって、信じてくれないだろう。
それに私には、もうあのときの話を裕輔の前で蒸し返す勇気も無かった。
きっと、裕輔は軽蔑したに違いない。
もちろん、私たちはキスをしあうような仲だった。
たまにふざけて唇以外の場所にキスもした。
首筋とか、耳たぶとか。
それに抱き合ったときに、普通なら触らないような場所に触れちゃうこともあった。
私の手が裕輔のおなかを撫でたり。
裕輔が私の後ろに回した手が、私のお尻に触れたり。

でもそれは、いいわけが出来た。
多分私たち二人とも、心の中でいいわけしながらこんな関係を続けていた。
「これはいとこ同士のおふざけだ」って。
実際、私たちは決してキス以上のことをしなかったし、そんなそぶりも見せなかった。

いや。
いいわけしていたのは私だけだったんだ。
裕輔は、ずっとおふざけのつもりだった。
私だけが、「おふざけ以上」のことを望んでいた。
一人で興奮して一人で盛り上がって……一人で勝手に裕輔のことを「恋人」だと思ってた。
だけど、裕輔にとって私はやっぱりいとこに過ぎなかった。

私がスカートを捲り上げ、下着をずらし、自分の手で自分を弄りながら彼を待っていた時。
裕輔は一瞬目をそむけた。
そしてそれ以後、私の方を決してみることは無かった。
長い沈黙が流れた。
私はだんだん、心が冷えていくのを感じた。
私はとんでもないことをしてしまったって。

「なっちゃん」
裕輔の声に、私はついに我に返った。
「僕、出てるから、ちゃんと服を直しなさい。お母さんもうすぐ帰ってくる」
そう言って裕輔は部屋を出て行った。
私は一人、裕輔の部屋に残された。
下着をはきなおし、乱れたスカートを直すとき、私は知らず知らず泣いていた。
恥ずかしくて。惨めで。
涙がこぼれて仕方なかった。
自慰に使った裕輔のジャケットを壁にかけるときなんて、死んでしまいたいぐらいだった。
私はそっと部屋を出ると、入れ替わるように裕輔さんが部屋に入った。
後ろで戸が閉まる音がして、それは夕食まで開くことは無かった。
謝ろうと思った勇気は、戸が閉まる音で打ち砕かれた。


128:那智子の話・第六話 2/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:36:34 TjBUT8k8

私と裕輔は、目を合わせようともしなかった。
お母さんもお父さんも不思議がり、「喧嘩したの?」と聞いた。
喧嘩の方がよっぽどマシだったと思う。
私は勝手に暴走して、裕輔との一線を無理やり飛び越えようとした。
裕輔は戸惑い、自分の心の扉を閉めた。
もう、二度と私たちは仲のいいいとこ同士には戻れない。
キスも出来ない。手も握れない。
目を合わせて微笑みあうこともない。

いつかは二人の様子がおかしいことに両親も気づくだろう。
その時裕輔はたぶん秘密を守ってくれる。
でも。
それを機会に裕輔は私から遠ざかろうとするかもしれない。
家を出て下宿するなり、学校の寮に入るなり。
私はそれを考えると胸が痛んだ。
こんな状況を招いた自分のバカさ加減に腹が立った。
もし神様がいるなら、今朝まで時間を巻き戻して欲しい。
布団の中で体をぎゅっと丸くしながら、私はどれくらい真剣にそう願っただろう。
でも、神様はいないし、ドラえもんもタイムマシンも現れなかった。

こんな辛いときこそ、裕輔に抱きしめて欲しかった。
そして、頭を撫でて欲しかった。
対等な関係でなくたっていい。
子ども扱いでもいい。私は裕輔に甘えていたい。
「裕輔―さん」
でも、私はどう頑張っても、彼の顔をはっきりと思い出せない。
だんだん記憶がぼやけて、裕輔の顔が頭の中から消えていく。
そんな錯覚に、私は怖くなった。

「ゆう……すけ……」
でも、私の部屋の中には、答える声も、支えてくれる腕も、何も無かった。
何も。



129:那智子の話・第六話 3/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:37:00 TjBUT8k8

ギィッ。

私の部屋の静寂を破る音がした。
夢うつつの私は、それが何の音なのか分からなかった。
と、言うより、本当に音がしたのかどうかすら分からなかった。
風の音か、外の物音。
あるいは、夢の中で聞いている音なんだろう。
私はそんな風に思って、布団の中で丸くなっていた。

ゴト。

だから、二つ目の音がしたときも私は身じろぎ一つしなかった。
外のベランダにおいた植木鉢が転がったような、そんな低く硬い音だった。
私は相変わらず、ぼんやりとした頭で、後悔と羞恥の間を漂っていた。

ギシッ。

ベッドのきしむ音に、私ははっと目が覚めた。
これは、夢じゃない。
何かが私のそばに、いる。
突然私は恐怖に襲われた。
あるいはまだ夢を見ているのかもしれない。
だって私の家には夜、人の部屋に忍び込んでくるものなんていない。

不意に私は友達の青葉に教わった怖い話を思い出した。
女の子が飼い犬といっしょに留守番をしている。
両親は出かけていない。
夜ベッドの中で変な物音がして、女の子は目を覚ます。
怖くなった女の子は、ベッドのそばに寝ているはずの犬を撫でる。
犬は女の子の手をなめたので、女の子は安心して寝てしまう。
次の日の朝。
女の子が目を覚ますと、飼い犬は殺され、天井からつるされている。
犬の死骸にメッセージの紙が挟んであって
「人間だって舐めるんだぜ」……

私は犬なんて飼ってない。
でも、私の横に大きなものが横たわっている。
もうはっきりと目を覚ましていた。
これは、夢なんかじゃない!




130:那智子の話・第六話 4/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:37:22 TjBUT8k8

2.

突然、私の体が抱き寄せられた。
大きな手が肩をつかみ、隣に横たわるものに引き寄せられる。
シーツが剥ぎ取られた。
目の前に、黒い顔のような影が迫っていた。

(……ゆう……すけ…………?)
その顔は、身間違えようもない。
裕輔が、私の体の上に覆いかぶさるようにして、そこにいた。
一瞬、やっぱり私は夢を見ているのだろうか、そんな風に思った。
でも夢じゃない。
その証拠に、私の顔に裕輔の吐く息が当たる。
こんなリアルな夢、十六年生きてきて一度も見たことなかった。

裕輔の顔は、いつもの優しい微笑みを浮かべた顔じゃなかった。
引き結んだ口は少し青ざめ、目はまるで喧嘩するみたいに私を睨んでいる。
荒々しい息を収めるかのように、肩が時々震えていた。
息を小出しにしようと努力しているのか、吐息のたびに鼻がぴくぴくと動いた。
私は、やっぱり怖くて動けなかった。
まるで裕輔は見たことのない男の人のようだった。

裕輔の両手が、私の顔をつかむ。
抵抗しようにも、私の体は恐怖と緊張でぴくりとも動かなかった。
きっと私の目にはおびえが浮かんでいたに違いない。
突然裕輔は手の力を緩め、そっと私の頬を撫でた。
硬い指が、私の頬をそっとなでていき、やがて唇のところで止まる。
もう一方の手は、私の髪をやさしくかき混ぜている。
彼が、何を望んでいるのか分かった。
指にうながされるように、私はそっと口を開く。

そこに、裕輔の口が押し付けられた。
普段のキスより荒っぽく、普段のキスより熱心に。
思わず私は小さく呻いた。
唇を味わっていたのは一瞬だった。裕輔の舌が、いつもより慌ただしく私の唇を割った。
ねじ込まれた舌に、私も舌を絡める。
私は嬉しかった。
熱い彼の舌も、彼の唇もいつもより愛しい。
今日、今の今まで欲しかったのに与えられなかったもの。
私は、今、裕輔に抱きしめられてる……



131:那智子の話・第六話 5/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:37:39 TjBUT8k8

気がつけば、私の体の上にぴったりと裕輔の体が寄り添っていた。
裕輔は私の頭を手でキスしやすいようにそっと支えている。
そしてもう一方の手で、私の胸元をまさぐっていた。
もどかしげに私のパジャマを脱がし、破るように開いていく。
私は乳首の先に、冷たい夜の空気が触れるのを感じた。
露になった私の胸を、裕輔の片方の手がそっと揉みしだく。
私は小さく子犬のような声を上げた。
それは初めて彼から受けた、新鮮な愛撫だった。
最初は手全体で私の乳房を揉み、次第に搾り出すみたいに乳首へと力を込めていく。
私は息苦しさを感じて、思わず裕輔の口から逃れた。

裕輔は相変わらず真剣そのもの、といった顔で私を見つめている。
けれど、手は愛撫を止めようとしない。
それどころか、両手で私の対の乳房を激しくもみ始めた。
パジャマを半ば脱がされたまま、私は裕輔が私の胸を弄ぶさまをじっと見ていた。
胸がどきどきして、時々乳首の先からしびれるような刺激が体の中を走る。
私の顔をじっと見ていた裕輔は、やがて私の乳首を口に含んだ。
熱い唾液が私の胸をべたべたと汚していく。
はじけそうなほど硬くなった乳首を舌先で転がし、ついばむ。
片方の胸を十分味わうと、今度はもう一方へと移り、また最初に戻る。
愛撫に合わせて私が淫らな吐息を漏らすようになるまで、彼は私の乳房を吸い続けた。

不意に、体の奥で何かが始まった。
今日、裕輔の部屋で感じたのと同じ感覚。
両脚の間から、わきあがり、背骨を貫くような感覚だった。
私はもじもじと足をすり合わせ、裕輔の体の下で身悶えた。
「ゆぅ……す……け……」
私の囁きが聞こえたのか、それとも聞こえなかったのか。
とにかく、裕輔は不意に愛撫を中断した。

顔の火照りがはっきり分かる。
それでも裕輔は、まじめそのものの顔で私を見つめていた。

さっと彼の手が私のパジャマのズボンにかかる。
ゆるいゴムで私の腰にまとわりついているだけのそれは、何の抵抗も示さなかった。
あっという間に、それは膝のところまで脱がされていた。
既に太ももに滴っていた私の愛液が、空気に触れてひやりと感じられた。
(あ……すっごい、濡れてる……)
私はそんなことを思いながら、膝までずり下ろされたパジャマを自分から脱ぎ捨てた。
くしゃくしゃに丸まったそれを、足首のひねりでベッドの外へと追い出す。

その間に、裕輔の手は私のショーツにかかっていた。
滑り込む彼の手。
太い指が、その場所を確かめるかのように、私の叢をかき分けた。
「んっ……!」
初めて私は怖くなった。
でも、私の声なんか裕輔には聞こえてないようだった。
彼の指が、私の割れ目を撫でて、その場所はしっかりと確かめている。
敏感な先に裕輔の指が触れるたび、私は恐怖と期待の混じった声を上げた。



132:那智子の話・第六話 6/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:37:59 TjBUT8k8

それは突然やってきた。
裕輔はためらいもなく、私のショーツを太ももの半ばまでずらした。
今度は、私も自分から脱ごうとはしなかった。
最後の一線を越えようとしている、そのことが一瞬だけ頭をよぎる。
いいの?
本当に?
裕輔と?
短い単語が電気みたいにぱちっとはじけて、消えた。
だけど、私には迷う暇すら与えられなかった。

「あっ……い、いたっ――!」
突然下半身を襲った痛みに、私は叫びかけ……そして声が出せなくなった。
裕輔の手が、私の口を塞いでいた。
彼の腰は、私の腰にぴったりと押し付けられている。
両脚の間に、今まで感じたことのない、はっきりとした異物感があった。
それは私を真っ二つにするみたいに、ゴリゴリと私の体に入ってくる。
あまりの痛みに私は頭を振って、裕輔の手を振り解こうとした。
けれど、裕輔の力を余りに強く、彼の厚い手が苦痛のうめき声すら押し込めた。
体を押しのけようと腕を動かそうにも、半ば脱がされたパジャマが自由を奪っていた。
それでも私は抵抗し続けた。

裕輔の物が、私を裂いていく。
やがて、私の体が裕輔の腰の動きにあわせて、わずかに浮き上がった。
体の奥から、何かが私の骨盤に当たるような、コツッという音が聞こえた。

―最後まで、入ったんだ。

私はそれを悟った瞬間、なぜか体中から力が抜けるのを感じた。
「言い訳は出来ないところにきちゃった」。意味は分からないけど、そんな気分だった。
裕輔も、私がもう抵抗しないのが分かったのか、手を口から離してくれた。
彼はしばらく動かなかった。
きっと、私が破瓜の痛みに慣れるのを待っていたんだと思う。
その間、彼の手はまたいつもみたいに、私の髪をそっと撫で始めた。

不意に、裕輔の顔が私の耳元に近づいた。
私は涙を浮かべた目で(気づいていなかったけど、私は痛みで泣いていた)彼を睨む。
裕輔は一瞬目をそらし、私の頭を抱きすくめた。
「…………だよ」
裕輔が、口の中でもごもごと何か呟く。
抱きすくめられてから、彼が言葉を言い終わるまで、本当に一瞬の出来事だった。

「え……?」
私が聞きなおそうとした次の瞬間、また痛みが体を走った。
裕輔が腰を動かす。私の体をビリビリと痛みが走る。
動きにあわせてコツコツと体の奥から何かが打ち合う音が聞こえた。
それ以上に激しく、私と裕輔の肉が打ち合い、絡み合う音が部屋に響いた。
そして、愛液がかき混ぜられるグチュグチュという音も。
なにより、獣みたいに興奮している裕輔の息も……。
あまりの痛みに言葉を失った私は、不思議とそんな音を冷静に聞き、記憶していた。



133:那智子の話・第六話 7/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:38:19 TjBUT8k8

どれくらいの間のことだっただろう。
だんだんと裕輔の息づかいが荒くなり、腰の動きも激しくなっていった。
ベッドがぎしぎしと悲鳴をあげ、私は早く終わって欲しい、それだけを考えていた。

やがて。

「くっ」という裕輔の短い苦悶の声がして。

私の中に熱いものが一杯に打ち込まれるのを感じ。

それは終わった。


力尽きた裕輔は私の体の上でしばらく息を整えていたけれど、それは私も同じだった。
のろのろと彼の腕が半裸の私を抱きしめた。
私たちは何も言わず、暗闇の中でじっとしていた。

名残惜しそうに裕輔のものが私から引き抜かれる。
けれど、じんじんとした痛みはひくことはなく、私は体を動かせなかった。
初めてのセックスが終わって初めて、裕輔は私の顔を見た。
眉毛は下がり、目は伏せられている。
困ったような、申し訳ないような顔。
私はどんな顔をしていたんだろう。多分呆然としていたんだと思う。
とにかく自分の体の痛みより裕輔が気になって、彼の顔の隅々まで観察していた。

不意に裕輔が動いた。
彼の唇が、汗をかいた私の額にそっと触れ、離れた。
唇が離れるのと同時に、裕輔は立ち上がった。
暗闇の中で、パンツとズボンをずりあげる衣擦れの音がした。
そして裕輔は、入ってきたときと同じように気配を消して部屋から出て行った。



134:那智子の話・第六話 8/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:38:36 TjBUT8k8

二人分の汗と、淫靡な臭いが部屋中に立ち込めているのに、しばらくして私は気づいた。
(明日、消臭剤買って来なきゃ……)
初体験の後にふさわしくない、そんなことを考えながら、私は手を下半身に伸ばす。
痛みの元へと指を伸ばし、おずおずと触る。
恐る恐る触れると、私の「中」からねっとりとしたものが湧き出しているのが分かった。
私はそれを指に絡め、目の前に持ってくる。
そこからは嗅いだことのない青臭い臭いと、それに混じってかすかな鉄の臭いがした。

(血……出てるんだ……)
私はそれをそっと口に含んだ。
裕輔の味。
初めての味。
私はそれをしっかりと記憶に刻んだ。

(このまま履いたら、下着汚れちゃうなぁ……)
私は立ち上がると、引き出しから生理ナプキンを一つ取り出した。
そっと部屋を抜け、お手洗いへとむかう。
下半身は裸のままだった。
便座に腰掛け、改めて自分の下腹部に視線を落とす。
私の陰部からわずかに血の混じった精液が垂れてきていた。
まるで科学の実験結果を見るみたいに、私はその様子をしげしげと見つめる。
明々とした電灯の下でみると、それは何か滑稽な物体に思えた。
ふき取ろうかと思ったけど、そうするのは何故か裕輔に悪いような気がした。
まるで裕輔の精液を汚いものとして扱っているようだったから。
逃げ出そうとする裕輔の分身を押し留めるように、私はそっとナプキンを当てた。
そのまま私は部屋に戻ると、パジャマを着なおし、眠りについた。

もう痛みは無かった。




135:那智子の話・第六話 9/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:38:55 TjBUT8k8
3.

次の朝は、相変わらず気まずい空気が流れていた。
洗面所で会ったとき、裕輔はちょっと会釈しただけですぐ私に場所を譲った。
朝食のテーブルにも、よそよそしさが漂った。
お父さんは余り口出ししないと決めたのか、ずっと新聞を見ていた。
お母さんは私に向かって「いい加減に仲直りしなさいよ」と言っただけだった。
どうやら原因は私にあると勝手に思い込んでいるらしい。
もちろん、最初の原因を作ったのは私だ。それは両親が思いもよらない出来事だけど。
いつもなら二人同時に出て、同時に乗り込むエレベーターも、今日は一人だった。
両親を心配させないよう裕輔と同時に玄関を出たとたん、私は猛然とダッシュした。
そして、裕輔が来る前にエレベーターに駆け込む。
「閉」のスイッチを押し、さっさと一階へ降りた。裕輔も、追ってはこなかった。

―それから、何時間かが経って。
退屈で特筆することのない学校の一日が終わり、私はまた一人で下校していた。
学校は適度に慌ただしく、友人たちは青葉を筆頭に適度に騒がしかった。
だから、学校にいる間私は昨晩起こったことを考えなくてすんだ。
だけど今、私は一人で歩きながら、昨日の夜のことを思い返している。
これほど時間がたってしまうと、あれはやっぱり夢だったんじゃないか。
そんな気がしてくる。
でも気のせいじゃなかった。
その証拠に、私の下着の下には確かにナプキンのごわごわとした感触がある。
朝起きたときと、昼休みのお手洗いで、昨晩の痕跡は全部流れて行ってしまった、はず。
でも私は何故か怖くて、ナプキンをとることが出来なかった。
ふとした弾みで下着が汚れてしまい、それにお母さんが気がついて……
そんな想像をすると、私は直に下着を履く勇気すら出てこなかった。バカバカしいけど。

これから、どうしたらいいんだろう。
そんなことを思いながら一人上の空で歩く。
裕輔と私は一線を越えてしまった。
私はそれを望んでいた、はず。
私が昼間誘いをかけ、裕輔は夜になってやってきた。
(そういえばこれって夜這いになるのか……古風だなあ、と私は一瞬思った)
私は何をされるのかすぐ分かったし、拒まなかった。
だから後悔しているわけじゃない。
でも、何か心に引っかかるものがあった―裕輔の気持ちが、よく分からない。
何より、あの言葉をどう考えたらいいんだろうか、と。
最後の瞬間私の耳元で囁いた言葉。
あれは、どういう意味だったのか……。
結局私の心は、その言葉の解釈にけつまずいて、その先へと進むことが出来ない。
裕輔のところへ、飛び込んでいけない。
だから―

「帰りですか、妙高さん」

―この男の登場は、渡りに船とでもいうタイミングだった。



136:那智子の話・第六話 10/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:39:12 TjBUT8k8

「……今日は、静かですね」
隣で相変わらずの笑顔を見せている望月近衛に、私は黙って頷いた。
申し訳ないけれど、さすがに今日は元気にもなれない。
というか、望月の顔を見た瞬間、相談しようと決心して、そのことばかり考えている。
余計な口は聞いてられないの、OK?

とはいえ、どうたずねたものか。
「昨日いとことセックスしちゃったんだけどさー」
とは流石に言えない。差しさわりがあるところが多すぎる。
問題。上の文章から差しさわりのあるところを挙げよ。
答え。「昨日」以外全部。
たぶん望月は私に男性経験があると知っただけでパニックになるに違いない。
いやしくも神さまとマリアさまに守られた聖マッダレーナ女子の生徒が……
とはいえ、青葉と「アイツ」が付き合って長いことは望月だって知ってるはずだし。
最近の高校生が約一年付き合ってやることやってないとは思ってないだろうし。
あれ、案外平気なのかな。

いやいや。
望月のことだ。
かつて好きだった女の子(青葉のことね)は清いお付き合いを続けてると信じてるかも。
うむ。
やはり純真な男子の幻想は守ってあげなくては。
とはいえぶち壊してるのは女であるこっちなんだけど。
そもそも、望月と私は友達だけど、さすがに女の子から性の相談は出来ない。
男の方からされても不謹慎だけど、やっぱ男女の友人関係でする話じゃない。
それに、私の場合相手が相手だ。
いとこと関係というだけで軽蔑しないとも限らない。
うーん。
望月が私に変な幻想を抱いていて、それを木っ端微塵にするのはいいとして。
やっぱり軽蔑されるのはイヤだ。

……あれ。私何を考えてるんだ? 望月と私ってそんな深い付き合いかな―

「……やっぱり、静かすぎますね、今日」
恐る恐る声をかけてくれたおかげで、私は自分の生み出した思考の迷宮から救い出された。
ありがとうアリアドネくん、と私はテーセウスの気分。
いやむしろ彼がテーセウスで、私はラビリンスから助け出された乙女かしらん。
ラビリンスに送り込まれる生け贄は清い少年と処女だから、私には資格なしだけど。
……そんなことはどうでもよくて。
「悩み事なら聞きますよ」
そう言ってくれるのを待っていたわけ。
ずるいな、とは思うけど、望月のそういう空気を読む力に私は甘えっぱなしだ。

「……難しい問題なんだけどね」
「はい」
私が言葉を選びながら話始めると、望月はそれを重大事と受け取ったのか、深く頷いた。
「たとえば、たとえばよ? 望月に好きな女の子がいたとして、ね」
「ぼ、僕にですか……えっとそれは、あの仮定として……」
「いいから黙って聞きなさい」
「はい」
何故か急にうろたえまくる望月を黙らせると、私はまた言葉を続けた。
「お互いなんとなく好きかなー、ということは薄々さっしてる関係だとしよう。
(その瞬間、また望月がうろたえたが、私は眼力で黙らせた)
その子とある日一緒に遊びにいったとして、その帰りにね。
突然、『よっていきません?』って言われて、指差す方にラブホがあったら……
望月どうする」


137:那智子の話・第六話 11/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:39:28 TjBUT8k8

私の言葉の意味を理解するのに、この少年はかっきり三十秒をかけた。
「……えっと、多分、行くと思います」

「あー、やっぱ男ってそういう生き物かー」
私が天を仰ぐのを見て、望月が不意に真剣な顔をした。
「あの、妙高さん、もしかして変な男に言い寄られてるとか、ストーカーとか……」
あまりの真剣さに、私はちょっと吹いてしまった。
「あー違うちがう、そういう深刻な話じゃないから(と私は嘘をついた)、軽く聞いて」
望月が落ち着きを取り戻すのを待って、私は本当に聞きたいことの核心に迫っていった。
「じゃあ、まあホテルに行って、そーいうことをしたとしよう」
「はい」
望月が神妙に頷いたので、私はちょっと咳払いをした。
どうも望月が相手だと、余計なことまで喋ってしまいそうで怖い。
「その女の子を見る目、変わる?」
望月は黙った。
今度は理解するのに時間がかかったわけじゃなかった。
それが証拠に、望月はとっさに何か言おうとして、すぐに黙ったから。
そして、私を横目で見ながら、しばらくブツブツと小声で呟いていた。

「答えが決まってるなら、さっさと言ってよ」
「あー、答えをいうのにやぶさかではないのですが」
あんたはどこの古風な探偵だ、と突っ込みを入れたくなる様子で望月は答えた。
「妙高さんの性格からして、必ず理由をお聞きになるだろうと」
「聞くわね」
望月はさらに困った顔をしかめて見せた。なによ、そんなに言いにくいの?

「その場合、僕を見る目が変わるのではないかということを心配しておりましてその」
探偵から政治家に転向した望月はごにょごにょと言葉を濁した。
まあ、問いが問いだから、何を答えても微妙だけど。
私だって聞きにくいことを望月と見込んで尋ねたのだ。
そちらも誠意ある回答を聞かせてくれてもいいではないか、と私は数分間熱弁を振るった。

「……じゃあ、答えますけど、女の子に対する気持ちは、多分変わらないと思います」
「で、『何故』?」
言いにくいとあらかじめ聞いていたにもかかわらず、私はずばりそれを尋ねた。
望月は視線をさまよわせたり、横目で私をうかがったり、散々迷った挙句、答えた。
「たぶんそのころには、僕もその女の子とそういうことをしたい、と思っているからです」
「……はあ」
「つまり、ここで一般論に逃げるのは大変卑怯だとは思うのですが、えー。
男という生き物はそもそも性欲が女性に比べて旺盛である、と言えるのではないかと。
それは原始時代に男が狩りを受け持っていた名残であるとも、言われますし―
ドーキンスでしたかは、遺伝子をより広範囲に撒き散らすのが生物の役目であると……。
まあ利己的遺伝子論はともかく、その、薄々好きになった女の子に対して、ですね。
そういうことを想像したり、望んだりするのは女性より男性の方が早いわけで。
そこに女性側から提案があった場合、男としては断ることは出来ないというか……」



138:那智子の話・第六話 12/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:39:45 TjBUT8k8

「『据え膳食わぬは男の恥』ってヤツ?」
私の言葉に、望月は黙った。
「……だから言いたくなかったんです」
私の方はそんなもんだろう、というつもりで言ったのに、望月は意外なほどしょげていた。
望月に聞かなくても、半ばあきらめていた。
まあ、人並みの女の子がさそったら、裕輔ぐらい若い男なら、当然手を出すだろう、と。
そこに対して深い愛情がなくたって、仕方が……

仕方がない、そう思うととたんに情けなくなった。
裕輔に私の気持ちを伝えることは、もう出来ないのかもしれない。
私が、どれだけ裕輔のことを思っているのか、とか。
単なる肉親でもなくて、単なる好きでもなくて、すごくややこしい気持ちなんだ、とか。
そんなこと、もう伝わらないかもしれない。
だって、もう私は裕輔に抱かれてしまったから。
私は隣に望月がいるのも忘れて、涙を拭こうと、かばんのハンカチを探った。

「でも、そんなことを言ってくれた女の子を、僕なら本当に大事にしますよ」
「……?」
望月は私の方を見ずに、そう呟いた。
「女の子なら、そう言い出すまでにきっとものすごく葛藤があったと思うんです。
僕が好きになるようなタイプなら、ですが。
ああ、これは妙高さんの問題にはない勝手な前提条件ですけど。
でも、それだけ勇気を出して僕にむかって飛び込んできてくれたんだから。
僕はその子のことを心から好きになると思います。僕もそれにちゃんと応えたいです」
望月は誰にむかって言っているのか分からないくらい熱心な目で、そう言った。
言ってから、自分の演説が恥ずかしくなったのか、そっぽを向いて頬をかいてみせた。

「……そんなときに言った男の子の言葉、信じていいと思う?」
「僕が言ったのなら、信じてください」
私は笑った。
望月も笑った。
たぶんアイツのは照れ笑いだったんだろうけど。
私は泣き笑いの顔だった。
そうか。
信じていいのか。

ようし。



139:那智子の話・第六話 13/13 ◆ZdWKipF7MI
07/09/04 18:40:01 TjBUT8k8

4.

そのあと、二週間ほど私と裕輔は気まずい日々を過ごした。
言葉少なく、触れ合うこともない日々。
でも私はずっと考えていた。あの時裕輔が囁いた言葉の意味。
裕輔はこういった。

「僕も、なっちゃんで『ああいうこと』をしてた。ごめん」って。

私をずっと求めてた。
裕輔は私をそういう目で見ていた。
ショックで、嫌悪感すら感じる言葉。でもそのあとに裕輔はこう言った。

「好きだよ」

私は信じることにした。
裕輔の言葉を。裕輔に私の気持ちがまだ通じることを。


「おはようございます」
『憂鬱』な朝が明けたある日、私は洗面所で裕輔に声をかけた。
びっくりしたように振り返り、出て行こうとする裕輔。
でも、待ち構えていた私はさっと彼の袖をつかんで引き止めた。
戸惑う裕輔に、私は告げる。

「……アレ、今朝来ましたから、安心してください」
そう、月に一度の憂鬱なあれ。
初めての夜、その心配を欠片も思い浮かべなかった自分に呆れるぐらいだ。
裕輔もそれを薄々気にしていたのか、一瞬心の底からほっとしたような顔をして。
それからまた真剣に私を見つめた。
「……なっちゃん…………ごめん、あの日は……」
なによ、いまさらゴメンなんて、言わせないんだから。
私はしょげかえる裕輔の目を覗き込むようにして、きっぱりと宣言した。
「今度からは、ちゃんとゴム……してくださいね」
そういって私はさっと彼に背を向けた。

駄目だ。
顔が火照る。
こんなこと宣言するなんて、やっぱり変かぁ……?
ああでも大事なことだもん。
私バカだけどやっぱり大学は行きたいし、この年で母になるのはまだ覚悟が……。
なんて。
頭の中は大パニックになりながら、私は一番大事な言葉を告げた。
「私も、好きです」

裕輔もパニックになっていたのだろう。
私の言葉を理解するのにきっかり一分はかかった。
けれど、答えははっきりしていた。
私たちはそっと抱きしめあって、ほぼ一ヶ月ぶりのキスをした。
懐かしくて、たまらない味だった。

(つづく)


140:名無しさん@ピンキー
07/09/04 18:41:45 TjBUT8k8

二ヶ月ぶりの那智子の話の続きでした。
余りに久々で、最初トリップミスしてしまった…orz
大変スローペースではありますが、宜しくお付き合いください。未完にはしません。

141:名無しさん@ピンキー
07/09/04 18:59:54 YyShSMWn
>>140
 お帰りなさいませ
 続きを書いてくださって、本当にありがとうございます
 那智子さんと裕輔さんに幸せな結末が来るのなら、何ヶ月でも待ちます

 後、望月近衛くんも出来るなら幸せにしてやってください
 お願いします


142:名無しさん@ピンキー
07/09/04 20:00:39 bf9m9uOF
GJです!!

遂に一線を越えた二人! これから二人がどうなっていくのか、とっても楽しみです!!

143:名無しさん@ピンキー
07/09/04 23:20:37 BTPG47U8
ktkr
超待ってた。激しく待ってた。GJ

144:名無しさん@ピンキー
07/09/05 00:46:21 VBKtDBD0
GJですー! ではこちらも投下します!!

145:絆と想い 外伝2
07/09/05 00:48:13 VBKtDBD0
夏休みに入ったばかりの、とある日の夕方。学校の弓道場で、一人で練習をしている少女の姿があった。
「ふっ……!!」
弓を引き絞ると的目掛けて矢を放つ。狙い過たず、矢は的のほぼ中央に突き刺さる。
「ふぅ……。」
矢を放った少女は、ゆっくりと息を吐いた。と、ぱちぱちぱちと拍手が聞こえてきた。
「どなたですか?」
彼女が問うと、弓道場の出入り口から一人の少年が姿を現した。

「精が出るね美沙姫さん。皆が帰った後も一人で居残り練習だなんて。」
そう言う少年に、少女……神崎美沙姫は笑顔で答えた。
「そんな事はありません。それに、貴方だって同じではないですか、雄一郎君。」
その言葉に、少年……京極雄一郎(きょうごく ゆういちろう)はまぁね、と応えてにこやかに微笑んだ。

少年の名は京極雄一郎。高校二年で、美沙姫の幼馴染であり、クラスメートでもある。
身長は180を超えるほど高く、また艶やかな髪、綺麗に整った顔を持ち、性格も温厚で優しく、そのため女性からの人気は凄まじく高かった。
成績も全科目トップクラスで運動神経も抜群。更に彼は、合気道の天才でもあった。
中学の時から公式戦では未だに不敗なのである。その容姿ともあいまって、高校合気道界では常に話題の中心となっていた。

「それにしても、君がこんなに頑張るだなんて……。やっぱり副部長としての責任感? IH制覇のため? それとも……。」
持ってきたスポーツドリンクを美沙姫に渡しながら、雄一郎は悪戯っぽい笑みで言った。
「……今度のインターハイが、東京で行なわれるから、かな?」
その言葉に、美沙姫は頬を軽く染めながら頷いた。

「……インターハイ出場が決まったことと、会場が今年は東京だという事を正刻様に手紙でお伝えしたら、絶対に観に行くという返事を頂きま
 して。これはもう、頑張るしかないなぁって。もちろん久遠寺学園弓道部副部長としての責任も果たしますが、それ以上に、あの方の前で無
 様な姿だけは晒さないようにしようって。そう思ったらもっと練習しなきゃって、そう思ったんです。」

久遠寺学園。京都にある小・中・高・大一貫教育を行なっている私立の学校であり、美沙姫や雄一郎が通う学校である。
その規模はかなり大きく、また優秀な講師を多数集めているため、政治・経済・スポーツ等、各方面に多くの優秀な人材を輩出している。
ちなみにスポンサーには神崎家と、京極家も名前を連ねている。

そう、京極家もかなりの名家であった。神崎家程ではないが、主に医療方面でかなりの実績を築いている。雄一郎はその跡取りでもあった。

146:名無しさん@ピンキー
07/09/05 00:49:33 VBKtDBD0
彼は頬を染めた美沙姫を見ると、複雑そうな笑みを浮かべた。

別に彼は美沙姫に恋愛感情を抱いてはいない。
だが、幼い頃から仲良くしている女の子が、自分以外の男に好意……しかもとびきり強烈な……を向けているのを見ると、やはり寂しさと
嫉妬が入り混じったような、複雑な気持ちを抱いてしまうのである。
仲の良い友人が自分以外の者と仲良くしているのを見た時というのが、心情的には近いかもしれない。

それが、自分と因縁のある相手ならば尚更である。

そう、雄一郎と正刻には因縁……少なくとも雄一郎はそう思っている……があった。
忘れもしない、幼き日の出来事。それまで挫折を知らなかった自分に、初めてそれを味わわせた男。

自分に、楔を打ち込んだ男。

その出来事自体は美沙姫も知っている。だが、雄一郎がその事にここまでの拘りを持っていることは、彼女にも分からなかった。
笑顔で話を続ける彼女に相槌を打ちながら、雄一郎は頭の隅で考える。

彼は……正刻は、公式の大会に全く出てこない。
理由は美沙姫から聞いている。家庭の事情の所為だということだが、頭では分かっていても、長年抱いた想いは解消されない。
(いつになったら彼と闘えるのだろう……。)
知らず知らず、拳に力を込めてしまう。彼がここまでの実力を得たのは天賦の才も持ち合わせていたからであるが、それよりも、正刻と再び
闘う日に向けて鍛えに鍛えたことが大きかった。

(早く闘いたい……彼と……!)
中学からずっと、雄一郎は公式戦では無敗であった。もちろん苦戦したことはあるし、強敵も多い。
だがそれでも。幼い時の、あの闘い。正刻と闘った、あの試合の時のような気持ちになれた事は一度も無い。
初めて遭遇した、同世代で自分と互角以上に渡り合う相手。
子供離れした闘志とプレッシャー。
そんな相手を前にした時、幼いながらも自分は確かに闘う喜びに震えていた。
自分の力と技を全てぶつけられる相手。そして、それらを全て受け止め、更に自分の力を限界以上に引き出してくれる相手。
雄一郎にとって正刻とは、そのような存在……まさしく『好敵手』であったのだ。


147:絆と想い 外伝2
07/09/05 00:50:26 VBKtDBD0
「雄一郎君?」
美沙姫に名を呼ばれ、雄一郎ははっと気がついた。どうやら考え込んでしまっていたらしい。
「あ、ごめんね美沙姫さん。ちょっと考え込んじゃって……。」
「いえ、別に大丈夫ですよ? それより貴方がそんなに考え込むなんて。また正刻様と闘いたいと考えていたのでしょう? 違います?」
美沙姫にそう言われた雄一郎は、苦笑しながら頭をかいた。
「参ったね、お見通しか。……そう、彼といつになったら闘えるのかなってね、そんな事を考えてたんだ。いけないよね、本当ならIHの
 事を考えなくちゃいけないのに。」

それに、と雄一郎は続けた。
「彼が、今でも僕と互角以上に闘えるレベルでいるかは……疑問だしね。」
雄一郎は、正刻が兵馬の道場で修業を積んでいることは知っていた。
だが、それで果たして今の自分に匹敵するような腕を正刻が持っているかは、正直分からなかった。
正刻の才能は認めている。だが、十分に修行が出来るような環境だとは言いがたい。
それが唯一、雄一郎が不安に思っていることだった。

しかし。

そう言う雄一郎を見ながら、美沙姫は微笑んで言った。
「大丈夫ですよ。正刻様は貴方の期待を裏切りません。そして貴方はきっと、再び正刻様と相見えることになります。私が彼と再び出逢う
 ことになるように。必ず。」
はっきりと言い切る美沙姫を、驚いた顔で見返しながら雄一郎は言った。
「ずいぶんはっきりと言い切るんだね……。何か根拠はあるの?」
そう問う雄一郎に、美沙姫は少し胸を張りながら答えた。
「根拠なんてありません。強いていうなら、女のカンです。」

その答えを聞いて思わず脱力する雄一郎に、にこやかな笑みを浮かべながら美沙姫は言った。
「馬鹿にしたものじゃありませんよ? 結構当たるんですから。それに、そういう機会はふとした拍子に訪れることもありますから。そう
 考えていた方が、その瞬間が訪れた時に適切な行動をとることが出来ますからね。」

にこやかにそう言う美沙姫を見ていた雄一郎はぽかんとしていたが、やがて笑みを浮かべると、ゆっくりと頷いた。
「そうだね。それに何より僕にはやるべきこともあるしね。まずはそちらを優先させないと、ね。」
「そうです。団体戦は五連覇、個人戦は貴方の二連覇がかかってますからね。頑張って下さい。」
「そっちこそ。今年こそは個人も団体もIH制覇出来るように、ね。」

そうして二人はひとしきり笑いあった後、それぞれの家路へとついた。

高村正刻と京極雄一郎、この二人が激突する時は、意外と早く訪れることになるのだが、それはもう少し先のお話。



148:名無しさん@ピンキー
07/09/05 00:53:45 VBKtDBD0
以上ですー。

温泉編はエロシーンを加えたら膨大な量になってしまったので、現在再構成中ですー。

それと、男の新キャラを出しましたが、NTRはありません。

キャラや伏線ばっかり増えてしまって反省してます。もう少し早いペースで投下出来る様頑張りますー。ではー。

149:名無しさん@ピンキー
07/09/05 01:49:02 RcOktIYv
なんだ、平日にもかかわらずこの恐るべき職人コンボは…!

>>140
遂に関係を持ってしまった二人!まだ続きますか。楽しみで仕方がない。GJ!

>>148
温泉編wktk!誰のエロシーンなんだ誰の!まさか全員と…楽しみだ。待てるかな俺w

150:名無しさん@ピンキー
07/09/05 03:10:56 fAYkHM+1
平日なのに幸せすぎる・・・
>>140ついにですな・・・・
GJです!

>>148GJ!温泉編も待ってます。

151:名無しさん@ピンキー
07/09/07 00:40:11 jAMc3nIg
投下させていただきます
関西弁が苦手な方はスルーしてください


 なぁなぁ、ひろちゃん。

 なに?

 ゆきとけっこんして。

 はぁ?なんで?

 ゆきなぁ、ひろちゃんのこと、すきやねん。

 しらんわ。そんなもん。ゆきみたいなんタイプちゃうし。

 ひろちゃん、ひどい…。

 どーしてもっていうんやったら、ほれさせてみて。そしたら、けっこんしたるわ。

 ほんま?!やくそくやで!わすれたらあかんで!

152:ひろ ゆき
07/09/07 00:40:55 jAMc3nIg
「俊之ぃ!宿題教えてー!」
 広子はノックもせずに俊之の部屋に飛び込んだ。
 俊之は勉強机の椅子に座り、顔だけをこちらに向けて広子を迎え入れる。
「お前の場合は教えてじゃなくて、代わりにやれやろ」
 俊之は椅子をくるりと回し、体をこちら側に向けた。
「たまには自分でやったら?」
「自分でできるんやったら、とっくにやってるわ。問題が難しすぎんねん」
「それはお前が勉強しぃひんからやん。お前、テストとかどうすんの?」
 広子はそれにへらりと笑って答える。
「まぁ、そん時はそん時。どうにかなると思う」
 宿題のプリントをピラピラさせながらローテーブルに置くと、広子はテレビの前へと移動し、いそいそとゲーム機を起動させる。
「おい。ちょい待て、コラ。人に宿題やらせといて自分はゲームか」
「だって、俊之が宿題やってる間、あたし暇やん」
「お前には感謝の気持ちというものがないんか」
「じゃあ、お礼にあたしの使用済みパンt…」
「いらんわ!」
 俊之は広子の発言を遮るように広子の顔面にクッションを投げつけた。
「乙女に向かって何すんねん!」
 広子はクッションを投げ返したが、俊之はそれをいとも容易く両手で受け止める。


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