ヤンデレの小説を書こう!Part9at EROPARO
ヤンデレの小説を書こう!Part9 - 暇つぶし2ch150:名無しさん@ピンキー
07/08/15 16:17:56 NTMO2mqS
おうっ、キモムスメ!ぐっじょぶ!
どこの方言か知らないけど、そのおかげでなんか田舎っぽい感じがする。
しかしキスされたぐらいでヤっちまうとは。主人公はロリコンだなあ……


あと、SSとは関係ないけど、
>長文乱文失礼しました。
これは入れなくてもいいと思いますぜ。そういうあとがきとか嫌いな人もいるし。
長文は望むところだし、話の展開もわかるから乱文ってほどではないし。


151:名無しさん@ピンキー
07/08/15 18:27:56 /jbeJCDx
GJ!これ読んでから何故かセミの鳴き声がうるさくなってビックリしたぜ。

152:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs
07/08/16 01:39:26 wmy+g0B6
短編投下します


  †


 これから話すのは、少しばかり奇妙な体験談だ。といっても、私の身に起きた
ことじゃない。お話の中に私は登場しないし、したとしても物語の本筋に関係の
ない脇役、語り手、通行人、そういった役くらいのものだ。あくまでも主人公は、
私の友人である『彼』で―これは彼の物語で、彼の体験談だ。
 他人の体験談を、私が語ることぉお許して欲しい。こればっかりは仕方のないこ
となのだ。なにせ、彼はあまり語ることを好まなかったし、そもそも彼の言葉は嘘だ
らけで語り手としてはあまり良くはなかったのだから。
 当事者は、もう、此処にはいない。
 だからこれは、嘘吐きのお話だ。体験談で、昔話で、法螺話だ。
 どこか遠くでおきた、いつかちかくでおきた、ほとんどが嘘で、わずかばかりに真実を
含んだ、愛情の話だ。
 だから、語りだしは、自然とこうなる。
 すべての御伽噺は、こうして始まるのだから。



 昔々、あるところに―――





■ 狂人は愛を嘯く.Case2





153:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs
07/08/16 01:49:13 wmy+g0B6

「君は好きな人がいるのかい」
 コーヒーカップを机の上に置いて、《彼》は唐突にそう話を切り出した。しばらくの間話が途切れていた
だけに、私はいきなりの彼の言葉に面食らってしまう。何を言うのだ、と言い換えそうと思ったが、途中で
馬鹿馬鹿しくなってやめた。
 同じように、自分の前にあるカップをすする。
 美味くもなく、
 不味くもなく。
 苦いだけのコーヒーだった。
「藪から棒に」
 唇を離し、突き放すように私は言う。まさか彼が、そんなことを言ってくるとは思わなかった。
 似合わない。
 正直にそう思った。その反面で―彼が真顔で愛を語る姿がありありと想像できた。彼は心に微塵
も思ってない愛を、さらりとすらりと、まるで言葉のように愛を口にするだろう。
 私に向かってでなければ、それもまた構わないのだが。
「蛇が出てきたらどうする気だい」
「それはそれで―」彼は言葉を切って、ゆっくりと、膝の上で手を組んだ。微かに膝を組みなおそうと
して、すぐにとりやめた動作が見えた。足が悪いのかもしれない。指を一本一本組み合わせながら、彼は
どこか穏やかな口調で言う。「―面白いと思うよ」
「……ふぅん」
 もう一度、彼の姿を上から下までゆっくりと見る。半袖のポロシャツにスラックス―ただしその色は
八月の炎天下に似合わない黒一色。髪も瞳もまた黒く、外を歩けば熱中症にでもなりそうな格好だった。
 もっとも、まあ。
 それは私とて、他人のことを言えないので黙っておく。少なくともコーヒーショップの中はクーラーが
きいていて、熱射病になる心配はない。僅かな奇異の目が気になるだけだ。
「……君はどうなんだい?」
 僅かに興味をひかれて、私は問い返した。
 彼―名前も知らない彼に、好きな人がいるのか、気になったのだ。
「僕?」
 彼は子供のように首を傾げて、それから、しばらくの間考え込んだ。考え込まなければ
出てこないようならば、間違いなくいはしないだろう。彼が考えているのは人名ではなく、
言い訳の言葉なのだろうから。
 私は興味を失い、視線を彼から窓の外へと映す。日中の気温は三十度をこえ、コンクリート
からは湯気が立ち昇っているように見えた。
 真夏日。
 どうして私は此処にいるのだろう―そんなことを、今更ながらに、ふと考えてしまう。


154:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs
07/08/16 01:58:56 wmy+g0B6

 私は彼の名を知らない。否、それ以外の何もかも知りはしない。
 私が此処にいるのも、
 彼が其処にいるのも、
 ただの偶然だ。
 私の待ち合わせの相手が《不幸な事故》―これもまた、話すと長くなることなので
割愛させていただく。機会があれば、また別の時に―にあって来られなくなり、独りで
暇を持て余していなければ。
 あるいは《彼》が、滑稽にも迷子になっていなければ、こうして向かい合って茶を飲むこと
はなかっただろう。あくまでも、ただの偶然だ。私も彼も暇を持て余していたから、とりとめ
のない会話を交わして―その挙句に、今のような質問が出たのだ。
 この街の人間ではない、と彼は言った。
 その言葉に嘘はないだろう。彼には街のにおいがない。この街の臭いが、という
意味ではなく、どこかに居住する人間の、ある種の生活感のようなものが存在しない。
 旅をしてきたのか、
 あるいは、旅をし続けている最中なのか。
 どちらにせよ彼は余所者で、別れてしまえば二度と出会うこともないだろう。彼が幾つか
もわからないが、見た目からすればまだ学生で通じる顔立ちだった。夏休みを利用しての旅行―
そう考えるのが、適切なのだろう。
 そう考えることができないのは、
 彼の持つ―雰囲気のせいなのかもしれない。
「好きな人、か」
 彼は繰り返すように言って、それから一度、大きく嘆息した。
 疲れを吐き出すような、
 哀れみさえ満ちた、
 深い深い―ため息だった。
 そして息が途絶えた頃に、彼は平然と、当たり前のように言った。
「好きになってくれる人ならいたんだけどね」
「……ふぅん」
 伊達男のような、取り様によっては酷く気障ったらしい言葉。
 けれど―その言葉は。
 酷く疲れて、
 惨く感想した、
 乾いて砕け散りそうな、声だった。


155:名無しさん@ピンキー
07/08/16 02:00:43 LOxMyIYk
出だしどっかで見たな

156:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs
07/08/16 02:07:41 wmy+g0B6

「恋人に死なれでもしたのかい」
「そんなところかな」
 私が嘯くと、彼は飄々と返した。嘘にしか聞こえなかった。嘘だと思う信憑性すらなかった。
嘘でも真実でもなく、ただ言葉を吐いているような―無意味な声だった。
 空っぽだ。
 言葉が反響している。
 経験上―自慢ではないし、全く自慢にならないが、七月の例を出すまでもなく私は『厄介な人種』と
めぐり合うことが多い。決して当事者にはならないのだが―こういった種類の人間は、総じてろくでもない。
 ろくでもない、ひとでなしだ。
 ・・・・・・・・・・
 私がそうであるように。
「……ふぅん。傷心旅行?」
「さぁね」
 彼は肩を竦めた。仰々しく、演技ぶった態度が心地良く感じられるのは、私だけなのだろうか。
「傷ついたかどうかも、よくわからないから」
「そういうものかい」
「そういうものだよ」
 それは嘘なんだね、と言おうと思ったが、やめた。言うまでもないことだった。私が言わなくても
彼は自分が嘘を吐いていることを知っているだろうし、指摘せずとも彼は認めているだろう。
 心は傷つかない。
 そんなものは、ありはしないのだから。
「いい子だったのかい」
「もう忘れてしまったよ」
「そうだろうと思ったよ」
 私は嘯いて、それからコーヒーを空にした。ほどなく給仕が代わりを注ぎにくる。その間中、彼は黙って
私を見ていた。私もまた、黙って彼の黒い瞳を見ていた。
 忘れたよ、と彼は言った。
 それは果たして、本当なのか、嘘なのか。
 そもそも―そんな恋人がいたのかどうか。
 私にはわからなかったし、詮索するつもりもなかった。ただ静かに、代わりが注がれたコーヒーカップを
傾けるだけだった。美味くもなく、不味くもなく、苦く、熱い。
 紅茶のほうがよかったかもしれないと、私は今更後悔する。
 後悔するのは、いつだって後になってからだ。
 終わってからでしか、気付けない。



157:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs
07/08/16 02:23:46 wmy+g0B6

「ふぅん……それで、君」
「うん?」
「今はいるのかい?」
 恋人がかい? と彼は問い返し、私は片思いでも結構だよ、と答えた。他人の色恋沙汰に興味はないが、
《彼》の色恋沙汰には、少しばかり興味があった。初対面の相手にしては珍しいが―逆に、初対面で、
これきりの出逢いだからこそ興味が沸いたのかもしれない。
 あとくされがないというのは、良いことだ。
 クーラーの中で呑むコーヒーと同じくらいには。
 彼は私の質問に、間をもたせるかのようにコーヒーをすすり、ゆっくりとカップを元に戻して、
 かちん、と皿とカップが触れる音がして。
 その音に被せるようにして、彼は言う。
「好きになってくれる人なら、いるけれどね」
 冗談のように、そういった。
 それが先の言葉を踏まえての韜晦なのか、それとも真実なのか―まったく関係のない嘘なのか。
 真実のように、聞こえた。
 なぜなら彼は、自身がその相手をどう思っているかとは、言わなかったのだから。初めの質問である
「好きな人がいるのか」という問いに、彼は微塵たりとも答えていない。はぐらかすような
嘘の返事は―ただの事実でしかないのだろう。
 となると、彼はその相手と旅行にきたのかもしれない。
 はぐれて迷子になっていたと言っていたから―そのはぐれた誰かが。
 彼を好きになった人間なのかもしれない。 
 興味はあった。けれどその興味は、《彼》に対しての興味よりは薄いものだった。わざわざ
それを確めようとも思わなかった。余計なことに巻き込まれるくらいならば、早々に立ち去る
つもりだった。
「そうかい……結局、君は誰のことも好きではないないというわけか」
 肩をすくめ、ため息混じりに私は言った。話はこれで終わり。そろそろ立ち去るべきか、私はそう思い、
 けれど、彼は。
 私を見たままに。
 薄い微笑みを浮かべ。
「―君のことを今好きになったといったら?」
 嘘か本当かわからない言葉を、口にした。
 私は驚く。
 突拍子のない彼の言葉に、ではない。
 真剣みのない、彼の言葉に答えるようにして。

「もしそうなら―兄さん。私はこの人を殺します」

 蕩けるような声が後ろからかかると共に、私の首筋に添えられたナイフの光に―私は漸く、驚愕したのだった。
 

 

158:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs
07/08/16 02:39:52 wmy+g0B6

 言葉と同時に、重く重く重く体がのしかかってくる。全身を預けるようにして―椅子ごしに
誰かが後ろから抱き付いてきたのだと、すぐに気付く。その誰かが声の主であることも、ナイフ
をつきつけた相手であることにも。
 わかっていても、動くわけはいかなかった。抱きついてきた誰かは悔しくなる程に手際がよく、
ナイフの刃先を一瞬たりともはなさなかったのだから。それどころか、抱きつきながら逆手に持ち
直すようにし、腕で隠すようにして私にナイフを当てた―傍から見れば、無邪気に後ろから抱き
つかれているようにしか見えない事だろう。
 言葉も、
 行為を挟む暇もない。
 流れるように―完璧な。
 恐ろしい程に、手馴れた動作。
「ああ」
 けれど《彼》は、その行為をすべて眼前にしていたにもかかわらず、眉一つ動かすことなく。
「いたのか」
 日常のように―そう言った。
 日常の続きであるように。
「探しましたよ、兄さん。何処でお茶を飲んでいたのですか」
「此処で飲んでいたんだよ」
 少女のように幼い声も、彼と変わりなかった。私に凶器を突きつけながら、淡々とした
口調で会話を続けている。突きつけられているナイフさえなければ、私はこの二人の会話を、
仲の良い兄妹の会話としか思えなかっただろう。
 否。
 そうではないのかもしれない。
 彼が異質であるように、
 彼女もまた、歪なのだと―私は気付いている。
「……はじめまして」
 言いながら、私は唯一動かせる瞳だけで彼女を観察する。私に抱きついている腕は少女のそれで―
ただしセーラー服の袖口から覗く左腕は、作り物だった。肩口から、彼女の黒い髪が垂れてくる。
 抱きつかれているせいで、少女の香りがする。
 甘い、香りが。
 腐り落ちる―果実のような。
「はじめまして―」
 返事は期待していなかったのに、少女は、律儀にも答えた。
 動作と共に。
「―さようなら、誰だかわからないあなた」
 ちり、と。
 僅かに―肌が避ける感触が、胸元からした。シャツの隙間、隠すようにあてられているナイフが、
わずかに体側にめり込んできている。刃先が皮一枚を破り、肌の上に薄く血が流れる。
 彼女は、本気だった。
 どこまでも―日常のように。
 言葉の通りに、理由もなく意味もなく、一瞬の後には私へとナイフをつきいれるのだろう。
 そうならなかったのは。


159:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs
07/08/16 02:57:55 wmy+g0B6

「おいで」
 一言だった。
 それだけだった。それ以上でもなく、それ以下でもなく。たったの一言だけ、《彼》は言った。
私にではなく、今にも私を殺そうとしている、彼女の妹に向かって。
 効果は絶大で、即効性だった。
 私の肉を抉ろうとしていたナイフが止まり―抱きつく彼女が、顔をあげて彼を見る
気配があった。彼女の中で、私という存在の重要性が、瞬く間に塗り替えられていくのを感じる。
 彼女の世界では、
 兄こそが全てなのだろう。
 そう、感じた。
「……でも、兄さん。私は兄さんにすりよる女を、殺さないといけないんです」
「おいで」
「……兄さん……ですから……」
「おいで」
 物騒なことをあっさりと言う彼女に対し、彼は同じことを三度繰り返した。そして、三度までが
限度だとでもいうように―彼はコーヒーを空にして、口をつぐんだ。
 真上で、気配が惑っているのを感じた。
 彼女は私と、彼を交互に見て。
「……もう、兄さんは、卑怯です」
 どこか拗ねたような、可愛らしい声でそういった。
 同時に―すっと、ナイフが遠ざかる。体にかかっていた圧力が瞬く間に消える。するすると、彼女の手が、
体が離れていく。あとには一筋、胸から血が流れるだけだった。
 自由になってようやく―私は顔を動かして、初めて彼女を見た。そのときにはもう、彼女は机を杖がわりにして
反対側へと移動している最中だった。黒いプリーツ・スカートがひるがえる。ナイフはいつのまにか姿を消していて、
彼女はつい先まで私にそうしていたように、《彼》に後ろから抱きつく。
 私の傍には、折りたたみ式の車椅子。左手だけでなく、彼女は、両の脚も作り物だった。
 まるで、
 作り物の人形のように。
 現実味のない―兄妹だった。ともすれば、作り物を身につけた妹よりも。生身にしか見えない
兄のほうが、作り物めいているというのは皮肉な話だが。
 そんな私の視線を気にすることなく、彼女は彼に抱きつき、後ろからキスをした。《彼》は拒むことなく
それを受け入れる。兄妹、という言葉が頭に浮かんだが、それこそ意味のない言葉だろう。
 二、三度ついばむようなキスを交わして―ようやく、《妹》は唇を離した。そうして、陶器のように白い頬
をわずかに赤く染めて、
「兄さん、私心配したんですよ」
 恋をする少女のように、そういった。
 彼の言った『好いてくれる相手』とは、彼女のことなのだろう―私は確信を持つが、それ以上詮索する気にはなれなかった。
 否。
 これ以上、此処にいる気にはなれなかった。
 ここは―異界だ。
 私の世界ではない。
 彼の世界だ。
 彼らの世界だ。
 彼はともかく、
 彼らは、語り手を必要としていない。
 一つの世界で―完結している。閉じきった環に、語り手は必要ない。
 暇潰しも、これで終いだ。


160:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs
07/08/16 03:17:36 wmy+g0B6
 それは彼もまた同じことだったのだろう。妹を抱きつかせたままに、彼は椅子から立ち上がった。
後ろから抱き付いていた彼女が、吊るされるようにして地から脚を浮かす。その彼女の脚が再びつく
よりも早く―彼はまるで王子様のように、《妹》を抱きかかえた。
 御姫様抱っこ。
 不思議と、似合っていた。
 彼は妹を抱きかかえたままに、私の横を通り過ぎ、

「―ばいばい」

 それが、別れの言葉だった。彼は妹を車椅子へとおろし、車椅子を押して、去っていく。
 あっけないほどに、あっさりと。
 私は。
 私は―
 一つだけ、彼に聞いておかなければならないことがあった。
 私は座ったままに振り返り、今にも立ち去ろうとしている《彼》の背に向かって、質問を投げた。
「どうして―私を助けた?」
 そう―
 もし彼が言葉で妹を止めなければ。
 ここが人前であるとか、ここが喫茶店の中であるとか、そういったことにまるで関係なく、彼女は
私を刺し殺していただろう。《兄》を奪いかねないという、それだけの理由で。
 狂的な愛。
 病むほどに一途で、儚い愛情。
 妹は、それを持っている。けれど―彼がそれを持っているとは、思えなかった。
 だから、訊ねた。
 私の質問に、彼は脚を止め。
 けれど、振り返ることなく―今までと何一つ変わらない口調で、言い切った。

「退屈しのぎになったから。それだけだよ」

 それは。
 それはきっと―彼が初めて口にした、嘘以外の言葉だったのだろう。
 韜晦でも、
 比喩でも、
 皮肉でもなく。
 彼の本心、だったのだろう。
「……そうかい」
 私はそれだけを言う。それ以外に、言うべき言葉はなかった。彼も、彼女も、何を言おうともしなかった。
 止めた脚を、再び動かしながら。
 彼は、歌う。

「雨に―唄えば―」

 退屈しのぎのように唄いながら、古ぼけた唄のサビの部分だけを繰り返しながら、名前も知らない彼と、
名前も知らない彼女は、私のもとから去っていく。

「雨に―唄えば―」

 そうして、
 彼らは、
 恐らくは二度と会うことはない、近くて遠い世界にいきる彼らは―去っていった。
 その歌声だけが、彼らの姿が見えなくなっても、私の耳から離れることはなかった。
「……雨に……唄えば……」
 彼が口ずさんでいた歌詞を口の中で弄びながら、私は。
 遅まきながら、気付く。
「ひょっとして……彼の代金は、私が払うのかい?」
 答えるものは、誰もいなかった。
 
   了

161:狂人は愛を嘯く.Case2 ◆msUmpMmFSs
07/08/16 03:20:34 wmy+g0B6
以上投下終了です
書きながらの投下でしたので時間がかかってごめんなさい

162:名無しさん@ピンキー
07/08/16 03:26:21 AExe0Yt8
>>161
GJ!
すばらしい!

というか書きながら!?
その速度が心底羨ましい。

163:名無しさん@ピンキー
07/08/16 04:44:31 WXc4V4QR
>>161
この二人ってもしかして…

164:名無しさん@ピンキー
07/08/16 07:03:27 RdaBNi5k
>>161
久しぶりにヤンデレ須藤兄妹ktkr!
やっぱりカッコヨス。

165:名無しさん@ピンキー
07/08/16 11:57:17 N3TeYklL
いや、相変わらずとても面白いです。
あちらの方にも期待させてもらってよろしいでしょうか?

166:名無しさん@ピンキー
07/08/16 13:31:19 ejVFDsTl
GJ!!
お茶会シリーズの中で須藤幹也が一番好きだったから久しぶりに彼が見れて良かった。
ヤンデレってる冬華もカワユス。

167:名無しさん@ピンキー
07/08/16 20:42:33 toTCstmq
GJ
キモウトは人類の至宝だとつくづく思った

168:名無しさん@ピンキー
07/08/17 00:54:05 gvBPpnl5
さて、戦に行く仕度を整えるか
ヤンデレ!ヤンデレ!
よし

169:名無しさん@ピンキー
07/08/17 03:29:33 x23Inc8p
ゼロ魔のルイズ?は主人公にフラれそうになったらヤンデレ化しないかな

170:名無しさん@ピンキー
07/08/17 06:04:07 BYY7AGdY
>>169
どっかにそんなSSあったな

171:名無しさん@ピンキー
07/08/17 09:08:12 AkPoR096
sola見たけど殆どの女がヤンデて笑った

172:名無しさん@ピンキー
07/08/17 12:24:07 x23Inc8p
>>170
教えていただきたい

173:名無しさん@ピンキー
07/08/17 14:47:42 gvBPpnl5
ネコマル行くの忘れてたぁぁぁあぁあああぁぁぁ!!!

174:名無しさん@ピンキー
07/08/17 18:26:01 SZ5VzSqK
>>172
羨ましいIDだ・・・

175:名無しさん@ピンキー
07/08/17 20:16:41 XdWr5G0E
やんデレおもすれーwwwww
小説とは違うリアルな雰囲気がたまらんwwww

176:名無しさん@ピンキー
07/08/17 20:20:42 k7txHbLf
>>175
それはちょっと違うだろ・・・

177:名無しさん@ピンキー
07/08/17 20:24:55 XdWr5G0E
>>176
いやだって、きれいなお姉さんがインターホンを何度も鳴らしながら俺を見つめてくれるんだぜwwwww

178:名無しさん@ピンキー
07/08/17 20:26:15 xn/qNQdj
角煮に行けよ。

179:名無しさん@ピンキー
07/08/17 20:55:14 c4sprJJn
VIPから出てくるなよ

180:名無しさん@ピンキー
07/08/17 21:38:10 GH4Kvdaz
こう…妄想はよく沸き立つんだが
何故か途中で銃器やら鈍器やら刃物やらでドンパチ始めちゃう俺の脳も
ヤンデレヒロイン達に負けず劣らず病んでるんだろうな

181:名無しさん@ピンキー
07/08/17 21:46:28 nm6cuKGO
ほととぎすまだかな

182:名無しさん@ピンキー
07/08/17 21:48:46 Sw57hH4h
いやいや、俺も妄想膨らましてSS書こうとしたが
膨らましすぎて最後とか「いくぞゾファー!!」になったw

183:名無しさん@ピンキー
07/08/18 00:29:11 FSEIve1I
メイス持ちのヤンデレヒロインだれかいない?
刃物なんかより魅力的だとおもうのだが

184:名無しさん@ピンキー
07/08/18 00:43:35 f52nVz4/
主人公が事故かなんかで死んだ後のヤンデレヒロイン達(もともとヤンデレでも
事故後にヤンデレ化でも)を見てみたいなと思うのは俺だけか
たいがいのエロゲは主人公死亡で終わってしまうから困る
精神的支柱を失った女の子がぶっ壊れていく様ほど悲しく美しいものはないのになぁ

185:名無しさん@ピンキー
07/08/18 01:00:05 JucljkAL
俺もよく漫画とかゲームの主人公が死んだらヒロインがどう壊れていくかを妄想するが
ヤンデレとはちょっと違う気がする。それとsageろ

186:名無しさん@ピンキー
07/08/18 08:11:21 /UVQQRd5
コミケに行った人は>>10をやったのかな?

187:名無しさん@ピンキー
07/08/18 09:48:49 W/EPNtzL
その話題はこっちでな。
スレリンク(hgame板)
スレリンク(ascii2d板)

188:名無しさん@ピンキー
07/08/18 18:06:53 mMp4SPnW
>>184
つセンチメンタルグラフティ2

189:名無しさん@ピンキー
07/08/18 18:08:23 4YJiC9Uv
核地雷w

190:伊南屋 ◆WsILX6i4pM
07/08/18 20:33:27 zgtsG9Ec
狂人は愛を嘯く/名も知れぬ少年
URLリンク(imepita.jp)
狂人は愛を嘯く/名も知れぬ少女
URLリンク(imepita.jp)

久しぶりに描いたなとか思ったり

191:伊南屋 ◆WsILX6i4pM
07/08/18 20:34:29 zgtsG9Ec
>>190
タイトル逆でしたorz

192:名無しさん@ピンキー
07/08/18 20:45:44 1FL9JT6W
>>190
毎度GJ!
でも冬華たんに両腕があるのは(ry

193:慎 ◆UPiD9oBh4o
07/08/18 22:58:18 N9Pvw1hJ
うわ…なんか久々にきたらもう9かorzみなさまお久しぶりです。
新しいのを書きました。投下します。

194:慎 ◆UPiD9oBh4o
07/08/18 22:59:59 N9Pvw1hJ
                           「Versprechung」
                              序曲


 さて皆さんの記憶にはまだ新しいと思うがとある市で市長候補が銃撃され、殺されてしまうというショッキングな事件が起こった。
市民は、犯人の野蛮なテロリズムを憎み、糾弾し、そして現職でもあった市長候補の死を悲しんだ。
 悪いことにこの市においては、このような事件は初めてのことではなく、以前にも同じような事件が起こったことがあったため、市民のショックはさらに大きなものとなった。
 何故ここの市だけにこんなことが?
 繰り返された悲しみの歴史に、人々は翻弄された。
 さてはて、すぐに犯人が取り押さえられたこの大事件の裏で一つのたわいもない出来事が起こっていた。
 そうそのときはほとんどの人からたわいもないことだと思われていた。
 少なくとも、なんらかの特異性、その他異常なことは散見できず、注目すべきことがないが故、人々の関心を引くことはその時はなかった。
 しかし、その、一つの出来事は、水面に落ちた水滴のように、徐々に波紋を広げていき、最後には世間の人々の関心をすべて持っていくことになった。
 その事件は、事件自体の特異性、また動機の異常性において、昨今の中では、もっとも理解しがたい事件のひとつとして記憶されることになる。
 動機も、また目的達成のために起こした事件も、行動も…犯人のすべてが人々にとっては理解しがたいものだった。否理解したくないものでもあった。しかも、その不可解な動機の根底にあったのはは人々が普段何気なくしている…そう、なんんともない、ありふれたものだった。
このようなありふれたことでこの特異なる事件が起きるとはだれも、思ってはいなかったし、想像もついていなかった。それゆえか、事件の全容が明るみに出たときに人々が受けた衝撃は、ここ10年で個人が起こした事件の中では、最上級なものであった。
さてここまで長い前置きを置いたが、この事件における物語は、事件が起こる数ヶ月まえより始まる。しかし、より正確に言うならば、真に始まったのは、20数年前といえる。
 そう、この事件はそのときに仕掛けられたタイマーが、息を潜め、ただひたすら時を刻み、そして時を経て発動したに過ぎない。
この事件は偶然に起きたのではなく必然に起きたものだったといえる。
否、偶然に起きる事件のほうが少ないのだろう。タイマーは常にどこにでも設置され、そして時間が設定され、誰に求められなかったそのうちのいくつかが発動するだけ…このような必然的に起きる事件のほうが多いのだろう。

さて前置きはこの変にしてこれから、この事件の顛末について述べていくことにしよう。

195:慎 ◆UPiD9oBh4o
07/08/18 23:01:46 N9Pvw1hJ
宮田秀樹は、冷たい感覚とともに目を覚ました。
 冷気に当てられた感覚。
 頭が痛い。腹辺りにも痛みを感じる。
 自分は今までなにをしていただろうか?
 たしか、アパートの近くの外の自販機に飲み物を買いにいこうとして、アパートを出て、そして…アパートをでたところでタクシーが止まって道がふさがった。
 誰か降りるのかなと思ったら、誰も降りてこない。不思議に思ってたら…
そこで記憶が途絶える。腹のほうに激しい痛みを覚えた記憶はある。しかしそれ以上は何も…まったく思い出せなかった。
 そもそも今自分がいるこの場所はいったいどこなのか…?
 とりあえず彼は、自分がおかれている今の状況を冷静なってに考えてみることにした。
しかし状況を把握すればするほど、彼は何がなんだかわからなくなってしまい、冷静さを失われそうになった。
 まずここは…光が電灯ぐらいしかなく、外から入る自然光の類はなかった。
 換気扇は何個か見受けられるが、窓がこの部屋には一つもない。
 そして…今の自分の状態はというと、手を縛られている状態でベットの上に横たわっていた。
俗に言う監禁という状態である。いや、なんともわかりやすく状況把握もしやすい…ということはない。
しかし彼は監禁とわかるとすぐに頭をまわせるようになった。
 想定外の事態ではなく…可能性としては低いと見ていたが想定内の範囲だったので、
軽い驚きを覚えた程度ですぐに切り替えることが出来たのだ。
 彼は、自分には監禁される理由がそれなりにはあると思っていた。
 彼は地元にあるそれなりに大きい会社の社長の息子であり、それでいて成績も優秀で、高校卒業後は現役で地元の大学の医学部に入った。
かといってがり勉というわけでもなく、何でもこなす、秀才といえる存在だった。
現在は、医学博士号を獲るために大学病院に勤務しながら、日夜勉強に、仕事に励んでいる。
まぁ俗に言うお坊ちゃまで、今まで自分の生活には無い一つ不自由を感じたことは無かった。
両親も同じ市に住んでいるが、勉強に集中するためと、もういい年であることを理由に、大学入学の頃から一人暮らしをはじめていた。
 現在26歳。親の会社のほうは不況を乗り越えさぁこれからというところ。さてはて自分を誘拐したのはライバル企業か?それとも、まったく関係のない人物の単なる金目当てか?
 いずれにしてもどうにかこの状況を打破出来ないかな…とまったく当てのないことを考えていると、部屋のドアの外から、階段を誰かが降りてくるような音がした。
 階段の音だとすると、この部屋がある階より上の階が少なくともあるようだ。
「誰だ!?」
 秀樹の叫び声による問いに答えはなかった。
 音の主は無言で階段を降りきってきて、部屋の扉を開けて姿を現した。
 どんな輩だと思って身構えていた秀樹は音の主の姿を見て絶句した。
「…お前…なんで…ここに…」

196:慎 ◆UPiD9oBh4o
07/08/18 23:03:20 N9Pvw1hJ
彼はドアを開けた人物を見て大きく混乱した。
なぜその人物がここにいるのか、そして、自分の前に姿を現したのか…
彼には皆目見当がつかなかった。
そもそも、この人物がこのような誘拐、監禁のようなまねをするとは彼は夢にも思ってもなかった。
理由が思い当たらない…
秀樹の頭は混乱してパンク状態になっていた。情報が頭の中をまったくいきわたらない。
「ふふふふふふ、目、覚めたぁ?」
能天気に問いかける、階段を降りてきた者。
「ちょ、放してくれよ。何のいたずらだ、まったく」
幾分か冷静さを取り戻した秀樹はおどけるように言った。
実際何かの冗談だと思っていたからだ。だが、相手からの返事は
「あら、放すわけなんかないじゃない、まだ寝てるの?起きてるなら寝言は無しよ」
だった。彼の望み、要求はさらっと拒絶された。だが秀樹もあきらめない。ここであきらめてはどうしようもない。
彼はとにかくやってみようと、このような状況におかれながらも、少しやる気になっていた
「なぁもういいじゃないか。放してくれよ。もう少しお前のお遊びに付き合ってあげてもいいが、
ほら、俺もさぁ仕事とかあってさ…明日もあるし、な?」
 彼はとりあえず穏やかに話してみることにした。まだ相手はふざけているんだ、と信じていたからだ。
おふざけで監禁する人間がどこにいるかともっと冷静に考えれば思いつくはずだが、
彼の思考はすでにこの状況からの脱出にしか向けられていなかったため、そのことにはまったく気付かなかった。
しかしというかやはりというか答えは無情にも
「あら、お遊びじゃなくってよ。何を勘違いなさって?まだ寝たりないの~困ったわね」
というものだった。
どうやらふざけているわけではないらしい。当たり前だが。
さて彼にとっては困ったことになったようだ。
相手は本気で、というと表現がおかしいかもしれないが、自分を監禁しているようだ。
少なくともお遊びではない。今更ではあるが。
そして放すつもりも無い。これも当たり前。
彼女と交わした交わした会話はまだ2回。だがその口調からは強い意志が感じられた。
というか感じられないとおかしい気もしなくもないが。
さてさてこれはどうしたことか。
監禁されるなんて―よもやこの人物に―彼にとってはまったく予想外―それこそ地球がいきなり爆発するぐらい―のことだった。
まったく理由が思いあたらない。何故俺はこいつに監禁されにゃならんのか。さらに頭を回してみる。だが思い当たる節はやはりない。
彼はこれはもう彼女に理由直接尋ねるしかないか、と心の中でため息を吐きながらつぶやいた。たずねてどうするかは、正直疑問ではあるが。
果たして彼女は素直に言ってくれるのやら…彼に確証は無かったがもうそれしか彼には方法が思いつかなかったので、
とりあえずだめもとで聞いてみることにした。

197:慎 ◆UPiD9oBh4o
07/08/18 23:04:56 N9Pvw1hJ
「どうして…俺を…こんなことに?まったくこんなことされる理由が思い当たらないんだが」
彼はどんな理由であれ、今回のものは解決できないものではないだろうと思っていた。
そんなわけあるはずないのだが、常識的に考えれば。しかし、彼はいまだ思考がおかしかった。明らかに混乱している。行動がめちゃくちゃだ。
彼女から具体的な理由が聞ければ対処もできる。今は原因も何もわからない状態。
まずは原因だけでも探りを入れなければ何もできない…と彼は考えてた。
自分の頭はこの緊急事態にも、このように非常に冷静に回っている…と自画自賛。
さぁどんな答えが出てくるか…彼はいろいろな答えに合わせた自分のこれからの行動、言動パターンを瞬時にシュミレートした。
ところが彼に返ってきた答えは彼の期待に反し至極簡単なものだった。
だがこの答えにより彼はさらに混乱することになる。
「理由…そうね…約束を遂行してもらうためかしら」
相手の返答はこの一言だけだった。
「約束だと…っ」
彼はいよいよどうしようもなくなってきていた。
約束…監禁されるなんて約束は当然のごとくした覚えはない。
ほかにこういうことをされかねない約束を交わした覚えもない。
さてはて、理由を聞いたはいいがやはり約束云々以前に、この監禁に関しては彼にはやはりわからないことが多すぎた。
情報の明らかな不足。まずここはどこなのか。
彼女はなぜここにいて、そしてなぜ自分を監禁したのか。
これから彼女は自分をどうするつもりなのか?
そして、自分が彼女とした約束とは…?
まったくわからない。
彼は深い霧の中を歩いてるかのような感じを受けていた。
前も後ろも、左も、右も…何も見えてこない。
そんなとき、暗闇に差した一筋の光を見つけたかのごとく、ふと彼は突然思い当たった。
一つだけ、理由ではないかと思い当たるものがあった。そこで、彼女に思い当たったことをぶつけてみて探ることにした。
「ほう…ところでよ、俺をこれからどうする気だ?家にでも知らせて金でも取る気か?ん?」
自分の実家と何らかの金銭契約を彼女、もしくは彼女の親あたりが結んでいたのではないか。
しかし何らかの理由でその契約が履行されず、じゃあ強引にでも契約を果たしてもらうために…といった所だろうと彼は予想したのだ。少し発想の飛躍のしすぎな感もあるが、彼にはこれしか思いつかなかった。
さてはて、彼の中のストーリーではそのことを知られたく無いがため、つまり金銭が目的であることを知られないためにに約束という言葉を使ったんだろう、ということになっていた。
なんてくだらない理由だと一瞬思いもした。
だが彼女も職業が職業柄、こういったことも秘密裏にすることも可能なのかもしれないとも思っていたし何より彼の両親は面子を重んじる人物だ。少しぐらいの金なら警察に知らせず、さらっと払ってしまうだろう。
ならば非常に理想的な方法じゃないか…よくわかってるなこいつ…まぁそれも当然っちゃ当然か…と結局は一人で納得してしまった。

198:慎 ◆UPiD9oBh4o
07/08/18 23:07:49 N9Pvw1hJ
納得したところで彼は勝手ながら自分が思いついたここまでのストーリーをまとめてみることにした。
だがその矢先、残念ながらそのストーリーはあっけなく崩れ去ることとなるもだが。彼女が
「あら、家には知らせないわよ」
と言った瞬間に。
彼は大いに疑問に思った。なんだって?何故?何故実家には知らせない?
彼は驚きというものを通り越えて呆れ果てた。
じゃあいったい何が目的なんだ。こうなってくると彼にはその約束とやらには思い当たりがまったくなくなってしまった。もともとないのだから、想像がはずれと確定した時点でお手上げだ。
「そうそう、警察にも知らせないわ…そうねぇ…捜索願扱いということで、まぁ普通の行方不明者として扱ってもらうことになると思うわ、私の予想では」
「ちょっと待て!じゃあ俺はいつ解放されるんだ!お前の気が済むまでか!え!?」
「そうね…交渉の状況しだいだわ」
「ちょっとまて。じゃあその交渉する相手は誰なんだよ!?どこにも連絡しないんだろ!?」
「あらまだわかってないの?」
「あぁ、まったくわからんね。」
「もちろん、あなたに決まってるじゃない。やっぱりまだ寝たりないの?」
交渉相手が自分だと聞かされ、彼はますます打つ手がなくなった。よくよく考えれば、むしろラッキーなはずなのだが、彼は交渉というものを特にやったことはなかったし、どうすればいいかわからなくなったという点では、打つ手がなくなったといえよう。
さてはてこれで彼のさっきの疑問の中に交渉内容はなんなのか?という疑問が追加されることとなった。
もしやその約束とやらと関係が?という確証に近い疑問は持っていた。
とは言っても肝心の約束の内容がわからない。わからないことには交渉のしようがない。
「さてお前と何の交渉をするんだ?そのお前が言う約束とやらに俺は思い当たる節がないのだが。」
彼は彼女に尋ねてみた。あくまで強気で。交渉というものがどんなものかはわからない。
でも足元を見られるとか言う状況だけにはなりたくないという思いがあった…どういう状況かはわかってはいなかったが。
「あら忘れちゃったの?そうねぇ…私が自分で言うのもいいけど、あなた自身でゆっくりでもいいから思い出してもらうほうが私はいいわ。
そう、あなたの自分の力でね」
「思い出せる自信はまったくもってないんだが?」
「安心して。思い出すまでここにいてもらうことになるから。言ったでしょう?私はゆっくり思い出してもらっても構わないから。
思い出してもらうまで私は待つわ。ここでね」

199:名無しさん@ピンキー
07/08/18 23:08:22 20wzF9he
短編投下
ここへの投下は初めてなんで、ヤンデレとは違うかも。その場合は教えてください。
あと、血とかいっぱいです。

200:慎 ◆UPiD9oBh4o
07/08/18 23:09:50 N9Pvw1hJ
要するに帰してくれないと。こうなるとどうしようもない。本格的に詰み。ようやく彼は自分のおかれている立場というものを理解した。
遅きに失した感はかなり否めない。もはや手遅れである。
 ここまでくると彼はしばらくはここにいないといけないであろうことを覚悟せざるをえなかったた。
だが、それもいつまでもは続かないだろうとこの期に及んで楽観もしていた。
 何日かすれば、こんな馬鹿げたことに彼女自身が冷めてくれるだろうとも思っていた。
どうやら理由も深刻なものではないようだし。
「食事は持ってきてあげるから。まぁ殺しはしないわ、安心して。ここでまずはゆっくり思い出してもらうわ。約束のこと」
 そういい残して、彼女は彼がいる部屋から立ち去った。
餓死の心配はないようだ。特に相手は自分に危害を加えるつもりはないこともわかった。
 そこまでわかったからこそ彼は楽観的になれた。まったく無意味なことだが。警
察もさすがに騒いでくれることだろうとも考えていた。人一人急に理由もなく消えたのだから騒がなければおかしいだろうと。
親も恋人もさすがに不審に思うだろうし。そう彼はあくまで楽観的だった。
楽観的だったというよりは、考えることが出来なかったともいえなくはないが。
 彼は多くの事実を忘れていた。いや、知らされることのない事実もある。
彼が拉致、監禁された日に、より大きな、この市すべてを揺るがす大事件が起きていたことを。
警察は当然そちらの事件のほうに全力を傾けていたし、
また、彼の親も、恋人も、友人も疑いもせず彼がふらっとどこかに出かけたのだろうとしか思ってなかったこと。
より正確に言うとそう思わされることになる。
このような状況が重なったこともあり結局彼が失踪したとわかるまで時間がそれなりにかかった。
また、このことが事件とわかったときでも、このことのために動ける刑事はたったの2人しかいなかった。
この通り、彼の希望はことごとく潰されていたのであった。
だが彼は当然ながらこのことにはまったく気付かず、救援はすぐ来ると思っていた。
すでに彼女の大きな策略の中に入ってることも知らず…

さて様々な宗教で、地獄というものの存在が言われている。罪人が落ちる場所、罪を償う場所。当然ながら、どんな場所かは、現世の人間には想像するのみで、実際のところはわかるはずもない。
そこで日本人は地獄の存在の一つを現世の温泉というものに見出した。
しかし、彼のこの先に待ち受けてるものこそまさに地獄といえるものではないだろうか?
事件の詳細が報道された後、人々は、地獄とは何かを知ることとなる。

201:慎 ◆UPiD9oBh4o
07/08/18 23:10:46 N9Pvw1hJ
                   序曲後の幕開けまでの幕間


「…とこんな感じなんでけど」
「で、結局ヤンデレってなんなんだよ。さっぱりわからない」
奈津子の話を聞き終えた後、俺は今一度たずねてみることにした。効いてみてもさっぱりわからない。
奈津子曰く、ヤンデレというジャンルに属する女性の話らしい。しかしヤンデレというのがいまいち俺にはわからなかった。
そう、この話を聞くきっかけになったのも、奈津子がヤンデレについて講義を突然始めて俺がわけわからんといったからだ。
だがこういった話をされてもやはりわからないものはわからない。むしろややこしくなった感もある。
「だから、相手のことを病むほど好きになることだって。簡単じゃん!何でわからないの?」
「抽象的過ぎる。具体化してくれ」
「じゃぁツンデレなんて何よ。ツンツンデレデレなんて、抽象的過ぎるにも程があると思わない?」
「ありゃステレオタイプができてるからな。そういった意味では具体化されてる。」
とりあえず、適当に答える。まぁ抽象的だというのには反対はしない。勘違いされてるとか言うが、それも仕方がないような気がする。
そもそも、キャラとしては昔からいたキャラなのだから今更騒ぐのもどうかとも思うが。
「ふん、ステレオタイプができてるからって、そもそもの言葉の意味が具体化されてるわけではないよね?」
あぁ言えばこういう奴だ。たく…
「具体例。」
「へ?」
「具体例挙げてみー?」
俺はとりあえず例を聞いてみることにした。そうすれば少しはイメージがつかめるだろうと思ったから。
「相手のことが好きすぎて監禁しちゃったり、嫉妬して鋸で主人公の彼女殺したり、わけがわからなくなって空鍋炊いたり、次々と人殺したり。」
「ずいぶん物騒だなぁ…」
「まぁね。病んでるから、判断力とか常識とか飛んでるのよ、きっと。」
まて…そう言われるとまさか絵里の一件もヤンデレ…ははは、まさかな。
俺はあのことはあんまり思い出さないようにしている。思い出して寝れなくなる日もあったしな。そう、今のも一瞬の思い過ごし。戯言だ。
俺はすぐに奈津子の話のほうに意識を戻した。今の考えを消し去るために。
だが、そんな折、ふと俺は思い当たることがあった。そこで奈津子に聞いてみた。
「俺の男の先輩なんだが、片思いが過ぎて、飛び降りかけたりしてたらしいんだが
この場合どうなるんだろうか。ヤンデレってやつに当てはまるのか?」
「男のヤンデレは私からすればNG。以上」

202:慎 ◆UPiD9oBh4o
07/08/18 23:11:38 N9Pvw1hJ
奈津子の返事は速かった。そりゃもう、俺が言い終わる前に言うような勢いだった。
「さいですか…」
じゃあ男のヤンデレなんか思いついても話しちゃ駄目なのか…厳しい。
「犯罪じゃん。だって」
自信満々に答える奈津子。
「ストーカーって言うのよ、そういうのは。ヤンデレとは違うわ。」
まったくどんな自信だ…たくっ。どこがどう違うのかわからないという突っ込みはOKなのだろうか?
まぁここはあえてスルーしてやることにしよう。
「わかったよ。てか、お前やたら男に厳しくないか?そこまではっきりとNGって言わなくたっていいじゃないのか?」
「う~んなんか男のだとやっぱりストーカーチックになってしまうのよね…私はうまく話が思いつかないわ。」
考えてみれば一理ある。女の子が病んだほうが話もすいすい行くだろうしな。
何よりいわゆる一つの萌え要素、てのになるんだろうし、不都合が何も無い。
これが男が絡んでくると…世間的に見れば一気に重大犯罪だ。十代の子に対する犯罪も十だ…やめよう。
われながらあほすぎる発想だ。女でも重大犯罪に変わりは無いのだがその辺は不問にしといたほうがいいのだろうか
「でね、続きがあるんだけど…え~と…やぁようこそ奈津子ハウスへ」
「おい、突然なんだ!?」
「この序曲はサービスだからまずは聞いて落ち着いてほしい」
「もう聞いたぞ?ていうかサービスだったのか?」
「そうね、またなんだわ…ごめんなさい。仏の顔もって言うしね、許してもらおうとは思ってないわ」
「はなからそんなこと思ってないだろ」
「でも、この話を聞いたとき、慎ちゃんはきっと言葉では言い表せない「病んでるなぁ」みたいなものを感じてくれたと思うんだ」
「さぁどうだかな」
奈津子はむすっとした顔になった。だがそんな顔されても奈津子が何を言ってるのか俺にはさっぱりわからんのだから、どうしようもないのだが。
「んん、もう…殺伐とした世の中でそういったものを忘れてほしくない、そう思ってこの話を考えたのよ」
ていうか殺伐とした世の中に、さらに殺伐としたものもってこられても…たくっこんなネタまで考えて…やれやれ。
続きを大人しく聞けとな?はぁ…
「で、続きは?そこまで言うからにはもうできてるんだろ」
「うん!じゃあ続きを行くね。第1幕始まり始まり~」
さて、物語の幕が開くようだ。どうなることやらさっぱりわからない。その分楽しみではあるが。
少しはやる気持ちを抑えるように、俺は手元にあったペットボトルのお茶を一口飲むと、俺はまた奈津子の話へと意識を持っていった。

203:慎 ◆UPiD9oBh4o
07/08/18 23:12:58 N9Pvw1hJ
投下終了。今回は奈津子が慎太郎に思いついた話という形で進めます。
また監禁される男はかなりの馬鹿に書いてます。ご了承を。
途中短編投下宣言された方ごめんなさい。

204:名無しさん@ピンキー
07/08/18 23:16:13 20wzF9he
こちらこそ、ごめんなさい。
更新してなかったです。

次から気をつけます。

205:かすみ 1/5
07/08/18 23:16:43 20wzF9he
 昔から変なヤツだった。
 小学生低学年の時は家の庭で一日中、アリを指で潰してた。
 小学生高学年の時は学校の水槽に農薬を撒いて、浮いてきた魚を見て笑ってた。
 中学生の時は子猫を川に投げ捨てて、恍惚とした表情を浮かべていた。
 高校生になったヤツは、ついに人を傷つけた。

「ゆうくん」
 そして、その事件で停学中のヤツの声が、背中から聞こえてきた。
 ここは・・・俺の部屋だ。
 なんで・・・なんで・・・ヤツが。
「かすみ」
 俺は恐る恐る後ろを振り向く。
「ひっ」
 息を呑んだ。
 長い黒髪。白い肌。病的なまでに濁った瞳。
 そして、いたるところについた・・・ドス黒い・・・血。
「お、お前まさか・・・」
 喉が張り付くように渇き、自分の声とは思えないほどかすれていた。
「心配しないで・・・ちゃんと、みんな息の根を止めてきたから」
 そういうと、シトシトとゆっくり俺に近づいてくる。
(なんで、なんでコイツが俺の部屋に!?)
 俺は恐怖の余り、座っていた椅子から転げ落ちる。
「と、とうさん!かあさん!」
 力の限り叫ぶ。
 それでも、いつもよりは声出ていないが、下の階にいる二人には聞こえるはずだ。
 しかし、下からの反応は無い。
「・・・うそだろ?」
 かすみは口を大きく横に開き、悪魔のような笑みを浮かべる。
『ちゃんと、みんな息の根を止めてきたから』
 かすみの言葉を思い出す。
「まさか」
「だって、ゆうくんのお父さんもお母さんも、ゆうくんに会わせないって言うんだよ」
 ヤツが一歩近づくたびに、俺は尻餅をついたまま、後ろに下がる。
「ゆうくんがアリを潰すのが楽しいって言ってたから、私もやってみたんだよ。
 ゆうくんが水槽当番で水を取りかえるのが大変って言ってたから、私がそんなことしなくてよくしたんだよ。
 ゆうくんが子猫を可愛がるから、私は悲しくなったんだよ。
 ゆうくんが私以外の女と一緒にいるから、ゆうくんを私だけのものにしたくなったんだよ」
 背中に壁があたる。
 もう、下がれない。

206:かすみ 2/5
07/08/18 23:17:46 20wzF9he
「えへへ」
「ひっ」
 追い詰められた俺の顔に、顔を近づけてくる。
 そして、振り上げられた右手には・・・光を反射する・・・ナイフが握られていて。
「ゆうくんは・・・かすみのものだよ」
 それが空を裂く音が聞こえた。
「う・・・あ・・・がぁっっ」
 左肩が熱い。
 肩を見ると、そこから血がダラダラと流れ、袖を真っ赤に染め上げていた。
「おいし」
 切りつけ血のついたナイフを、目を細めながら舐めている。
 狂ってる。
「ゆうくんも気持ちよくしてあげる」
 パサリと落ちる、白いワンピース。
 病的なまでの白い肌。
 下着を着けていないその白い肌には、無数の傷がまるでファッションのように走っていた。
 手首。首筋。胸。腹。脚。そして、秘部。
「ほら、女の子のおまんこ・・・ゆうくん見たことないよね」
 自分の指で秘部を大きく開き、俺に見せる。
「どう?興奮した?」
 かすみは左手だけで器用に俺のズボンとパンツを下ろす。
「これがゆうくんのおちんちん・・・ふふ。元気だね」
 ありえない。
 俺は脱がされた自分の下半身を見て驚いた。
 なんで、こんな状況で勃ってるんだ!?
 勃起している感覚はない。恐怖のせいか体が少ししか動かないっていうのに。
「じゃあ、いくね」
 かすみが俺の上にゆっくりと腰を下ろす。
「んっ・・・んっっ・・・ぁぁっ・・・はぁっ」

207:かすみ 3/5
07/08/18 23:18:48 20wzF9he
 真っ白なかすみの顔が上気して、紅くなっていくのがわかる。
「ゆうくんの初めて・・・奪っちゃった」
 初めて。
 実は違う。俺の初めては、アイツ。
 多分。もうこの世にはいないであろう・・・俺の大切な人。
「・・・違うの?」
 かすみの目が濁り始める。
「あの女?あの女なの?・・・これはゆうくんの初めてじゃないの?」
「うっ・・・がぁっ」
 かすみの細い指が俺の首を絞めつける。
 両手の爪が首に食い込んで、血が流れていくのがわかる。
 ・・・両手?
 俺は痛みにこらえながら、かすみの傍を見る。
 ナイフが無造作に床に転がっていた。
「どうして・・・私の初めてはゆうくんにあげたのに、ゆうくんの初めては私じゃないの?」
 かすみに気づかれないように、ゆっくりと左手を伸ばしてナイフの柄を握る。
「おかしいよ。そんなの・・・不公平だよ・・・ゆうくっんっっ!」
 かすみの顔が苦痛にゆがむ。
 俺の左手に握られたナイフが、かすみの脇腹を薙いだのだ。
「どけ!」
 俺は体を起して、かすみを突き飛ばす。
 かすみの反撃に備えて、俺はナイフを構える。
 しかし、かすみは一向に起き上がる気配を見せない。
 倒れた時に頭でも打ったのか?
「かすみ」
 俺は立ち上がってかすみの顔を覗き込む。
 濁ったままの瞳が俺を睨んでいる。
 意識はある。だが、小刻みに震える体と言葉を発することのできない口。
 先ほどの俺と同じ。
「・・・毒?」
 体を麻痺させる薬品か何かがナイフに塗られていたのだろう。

208:かすみ 4/5
07/08/18 23:20:13 20wzF9he
 全裸で倒れているかすみ。
 脇腹と股間から血を流していた。
「本当に処女だったんだ」
 俺はかすみから目を離さないようにしながら、ベッドに腰掛ける。
 っ。
 腰かけた時に、左肩に痛みが走った。
 そういや、さっき切りつけられてたんだった。
 あまりの展開に忘れていた。
「病院行かなきゃダメかな」
 俺が肩を見るためにかすみから目を離した・・・その瞬間。
「ぅぁっ!?」
 右足の甲に鋭い痛みを感じた。
 恐る恐る覗き込むと、、小さなバタフライナイフが俺の足の甲に深々と突き刺さっていた。
「かすみ」
「ひどいよ・・・ゆうくん・・・せっかく、無防備な体さらしたのに・・・何もしてくれないなんて」
 かすみがゆらりと立ち上がる。
「ゆうくんの精液頂戴」
「く、くるな!」
「ゆうくん・・・だいすき」
 俺はかすみに押し倒され、犯され、そして、果てた。


209:かすみ 5/5
07/08/18 23:21:05 20wzF9he
 その後、俺が目を覚ましたのは病院のベッドの上だった。
 翌朝、新聞配達員が、玄関にベッタリと血がついているのを発見。
 警察が駆けつけ、俺を保護してくれたらしい。
 両親は死亡。俺は出血こそ多かったものの、致死量には至らなかったらしい。
 そして、肝心のかすみはその日以来、行方知らずとなった。
 
 あの日から10年がたった。
 俺は結婚して子供も幼稚園にあがった。
 幸せだった。
 かすみのことなんて、完全に忘れていた。
「・・・おかえり」
「おかりなさい」
 その日、俺の帰りを家で待っていたのは、最愛の妻と子供ではなかった。
 血濡れた白のワンピースに身を包んだ、女性と少女。
「ゆうくん・・・今日から家族三人で暮らそうね」


210:名無しさん@ピンキー
07/08/18 23:22:47 20wzF9he
終了です。
慎さん。間にわりこんでしまい、本当にすみませんでした。


211:名無しさん@ピンキー
07/08/19 05:51:16 qDeBnKqv
>>203>>210御二方の処女(一番槍)は俺が貰いました。
GJ!!!

俺もヤンデレになる特訓してこよう

212:名無しさん@ピンキー
07/08/19 07:36:19 /q9RcvhG
>>203
ダークな展開になりそう、ガクブルしつつwktkしております。
それにしてもあんな目にあったのにまだヤンデレを理解してないのか、慎はw

>>210
狂うほどの愛があればそれでOKなんじゃないかなあ
てことでGJ!

213:名無しさん@ピンキー
07/08/20 08:55:33 IoGRKAqe
つーか、間違ってたら叩いてくれてかまわないんだけど、
よく狂った人の愛がヤンデレって言ってるの見るけど、そりゃただグロいだけであって、
本当は嫉妬なんかによって病んでいく様子をヤンデレって言うんだよな?


まぁ、スレ違いだったらスルーしてくれ

214:名無しさん@ピンキー
07/08/20 09:38:48 HQ2zPfAy
ヤンデレの定義合戦になるからね、そういうの言い出すと。
自分と愛しの彼との世界を邪魔されたくないから、他の女とかを殺したりするのが主流っぽくなっているけど、
個人的には彼を静かにじっくりゆっくりねっとり絡め取っていくのを読んでみたい。

そう思って自分で書いてみようとしたけど、難しいなこれorz

215:名無しさん@ピンキー
07/08/20 09:44:31 iR2xTkgi
>>213
原理主義的な考えでは、そうなるっぽい。
でも、拡大解釈的な考えでは、それもヤンデレに含めるみたい。

まあ213の質問は、ここでも何度か繰り返されてきて、最後には「心で(ヤンデレを)感じるんだ!」という感じのレスで、幕引きになったんだけどね。

216:名無しさん@ピンキー
07/08/20 09:49:58 IoGRKAqe
>>214 >>215
ありがとう、二人のレスでなんか納得できた

217:名無しさん@ピンキー
07/08/20 09:59:52 kR3Cu+Fn
そうか、ヤンデレってもともとはツンデレと同じく、
時間経過によって変化する感情の概念だったか。
>>1に書いてあることではあるけれど、なぜか間違った理解をしていた……

218:名無しさん@ピンキー
07/08/20 12:58:23 QT4NarRL
やはりそこに愛を感じないとダメだろ

219:名無しさん@ピンキー
07/08/20 17:07:53 eq2Sszje
ただ愛とは無関係に狂ってる人が、ついでで愛しちゃいますよみたいなのはゲンゲロ

220:名無しさん@ピンキー
07/08/20 18:17:26 MoHhUkkI
でもまあ、もともと常識からハズレてたとしても愛する故に「更に」狂うなら…



すまん、余りつっこむとまずいな定義問題は。スルーしてくれ

221:名無しさん@ピンキー
07/08/21 00:25:11 mnaltvOR
ここのSSのキャラは大体が話の冒頭から病んでることが多くないか。
最初はごく普通の片思いだったけど、次第に精神や行動がおかしくなるヒロインっていたっけ。

222:名無しさん@ピンキー
07/08/21 00:28:30 NYFHOLVi
それなんて、言葉様?

223:名無しさん@ピンキー
07/08/21 04:50:00 OJqwQCuA
ヤンキーのヤンデレを見てみたい・・・

224:名無しさん@ピンキー
07/08/21 05:04:51 hBd6oOyv
前スレにあったな

あと空鍋忘れんな

225:名無しさん@ピンキー
07/08/21 06:45:13 ZxWvXHiH
糸電話も忘れちゃだめだよ

226:名無しさん@ピンキー
07/08/21 10:29:13 nJw3ZVqg
>>223
怖さ2倍か、Mにはたまらんな

227:名無しさん@ピンキー
07/08/21 14:55:03 cZsCNxcq
そこはむしろ、どちらかといえば真面目な主人公に合わせてヤンキー辞めてしまうところだろ
それでも受け入れてもらえなくて、どうすれば受け入れてもらえるか試行錯誤していくうちに病んでいくわけだ

228:名無しさん@ピンキー
07/08/21 16:54:48 kxJ++Udz
>>227
SO!RE!DA!!!!!!!!!!

229:名無しさん@ピンキー
07/08/21 17:47:24 AgEPsUca
>>223
案外厳しいかもしれん。実力行使に出てもあんまり違和感無いから

230:名無しさん@ピンキー
07/08/21 20:46:44 fgNzD58F
ヤンキー娘大好きないじめられっ子ショタに馴染むために更生を決意してお淑やかに鉄壁の笑顔で表情を固めるんだよ
でも時々無理が生じてピキってなって
「………」とかって笑顔のまま無言になっちゃったりして人目のない所でコンクリの壁を拳からの血が滲むまで連打したりしてんだよ
でもショタが探しに来たらどうしたんです?みたいな表情で笑顔を浮かべるんだよ。握り締めた拳から血ぃダラダラ流してる癖に

あとヤンキー時代の悪い仲間が冷やかしや脅しに近づいて来たら「ちょっとお話しをしてきますね」とかショタに言っておいて路地裏でそいつら狩ってたり、
ショタを虐める連中を陰で粛清していて、その連中とショタが顔合わす時にはショタの背後から鬼の形相でプレッシャーを掛けてショタの平穏な学校生活を演出してたり…
ヤンキー娘には無限の可能性があるんですよ?

231:名無しさん@ピンキー
07/08/21 21:14:43 kcTMTlC8
>>230
なんかいんぱら思い出したw
でもそういうラブコメチックで明るい(?)ヤンデレもいいなw

232:名無しさん@ピンキー
07/08/21 21:27:31 WfHRahef
ヤンキーでデレデレか

233:名無しさん@ピンキー
07/08/21 21:31:27 OzNsSo8Y
病みヤンデレ

234:名無しさん@ピンキー
07/08/21 21:39:46 lH5Gjmt4
面白いんだが、そのままだとあんまり狂気が感じられないからヤンデレとしては物足りないという人がいるかも

病みっぷりを強調するなら自分の過去を知る不良仲間を文字通り抹殺しているとか
もう一つの顔を使って恋敵もぜんぶ抹殺しているとか
ショタの両親なり兄弟姉妹なりが自分の正体に気付きそうになったら抹殺しているとか

235:名無しさん@ピンキー
07/08/21 22:15:21 iTZfzZVR
でもそれだとなんだかただの悪女とかみたいでヤンデレとは違うなあ
元々暴力的だから他のに比べると殺害に怖さがあんまない


現実にあったら怖いんだがな

236:名無しさん@ピンキー
07/08/21 22:38:59 VU0luEsa
ヒロインの病みっぷりに気付いて主人公がヒロインを受け入れて病みとデレが激しくなるSSないですか?

237:名無しさん@ピンキー
07/08/21 23:17:02 3MU2kdDv
「上書き」はそんな感じじゃないの?

238:名無しさん@ピンキー
07/08/22 01:16:03 r2FNZwMr
つひぐらしの罪滅し編のレナ

239:名無しさん@ピンキー
07/08/22 01:50:38 lzeUJtGa
レナはヤンデレではなく、只のキチガイだと思う

240:名無しさん@ピンキー
07/08/22 03:20:06 LSLAsdDb
>>239おま・・・消されるぞ!!

一応聞くが、まさか後ろに鉈持った女の子なんていないよな?

241:名無しさん@ピンキー
07/08/22 04:04:30 S+qO4G1H
>>240
おいおい、本当にそんな奴がいるわけないだろwwwww
そんな女なら俺の後ろに

あれ?

242:名無しさん@ピンキー
07/08/22 05:04:27 mC4ZJvez
さっきから玄関から視線のようなものを感じるんだが、調べたほうがいいかな?
もう寝ようかと思ったんだがなんか気になる

243:名無しさん@ピンキー
07/08/22 06:59:31 r2FNZwMr
ピンポーン

244:名無しさん@ピンキー
07/08/22 08:33:52 9HRbXfrw
開けてよ…開けてよ…



ひぐらしのスレ今見てきたとこだったからこの流れに一瞬目を疑ったぞwwwww

245:名無しさん@ピンキー
07/08/22 09:20:03 DO0rdRgn
ストーカーは、ストーカーをする相手を間違えると今までの力を全て失う事が某漫画で判明。



ヤンデレも同じ事が言えるのでしょうか。

246:名無しさん@ピンキー
07/08/22 15:05:19 S+qO4G1H
>>245
ヤンデレとストーカーは違います

そもそも彼女達が"間違える"なんてことはしません

247:名無しさん@ピンキー
07/08/22 15:16:28 nU7TCcjY
ヤンデレは例え目がつぶれてても匂いで相手がわかるし
第6感がすぐれているので間違えるなんてありえません

間違えるのはヤンデレになりきれてない証拠です

248:名無しさん@ピンキー
07/08/22 15:32:19 DO0rdRgn
イイエ、ソレハリソウロンデス

249:名無しさん@ピンキー
07/08/22 17:02:26 OsZp7dGj
ハイ、ソレハボブデス

250:名無しさん@ピンキー
07/08/22 17:33:19 7/6J3f5O
ヤンデレはたとえ死んでも、彼の近くの人として生まれ変わりますよ?

たとえば○○君(主人公)が幼い頃、彼に対するあまりにも執着心が強い女の子、△△ちゃんがいたとする。
ある日彼がよその女の子と話しているところをその子が発見、詰め寄ろうとして道路を渡ってるときに車にひかれ、死んでしまった。
その後しばらくして彼には妹が生まれた。
そして妹が小学校に上がろうとするある日のこと。
「お兄ちゃん……実はわたし、△△なんだ。
 そう、お兄ちゃんが6歳のとき死んじゃった女の子。
 すごく仲がよかったよね、お兄ちゃんと。
 でもそのすぐ後に生まれた妹に生まれ変わったんだ。」
彼は普段からたまに大人びた仕草を見せる妹の思いがけない告白に呆然としながらも、よその女の子と接触するたびに△△ちゃんから受けた凄惨な「おしおき」を思い返して身震いするのでした。
そう、彼には少し前、初めてのガールフレンドができたのです。昨日は彼女を家族に紹介したばかりでした。
「もう離れないよ。だって妹だもんね。
 ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと
 ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっといっしょ。
 あの女よりもあの女よりもあの女よりもあの女よりも
 あの女よりもあの女よりもあの女よりもあの女よりも。」
満面の笑みを見せる妹、言われてみれば△△とそっくりな笑い方をする妹の手には、彼女の……
「あの女にはおしおきしたから、次は○○君だよね。
 あ、お兄ちゃんって呼ぶほうがいい? 間をとって○○君お兄ちゃんにする?
 さ、おしおき……うふふふふふはははははははふふふ
 ははははははははははははははははははははははははははは
 ははははははははははははははははははははははははは」

251:名無しさん@ピンキー
07/08/22 18:14:12 NqBegY0q
いやすべてのヤンデレが妖怪とか怪奇現象というわけでは……

252:名無しさん@ピンキー
07/08/22 21:07:21 KJrVLwdh
平和なヤンデレってのはありえないのかなあ。見てみたい気がする。

253:名無しさん@ピンキー
07/08/22 21:50:14 cBUrM/12
平和なヤンデレ…、それって読後感すっきりで、
ヤンデレ属性以外の人から見てもまあハッピーエンド、みたいなヤンデレ?

254:名無しさん@ピンキー
07/08/22 21:51:18 8M/WgEod
主人公を独占しようとあれこれ画策するんだけどドジなので全く上手くいかないという、ヤンデレドジっ娘で一つ

255:名無しさん@ピンキー
07/08/22 22:08:29 NtbaHIl3
ちっちゃくてかわいいみんなにマスコット扱いされるドジな女の子がヤンデレ。
主人公を含めた仲良しグループの女全員を殺そうとするんだけどいつも失敗。
ナイフは怖いからペーパーナイフで刺そうとするがあっさり折れて冗談だと思われる。、
毒は手に入らないから正露丸をご飯に混ぜて飲ませるが、勿論死なない。
高所恐怖症だから突き落とすことも出来ない。
彼を閉じ込めたいけど拉致監禁は出来ないから、家に招いて美味しいご飯でもてなして帰りたくなくするがご飯すら失敗。
最後の手段で足を切ろうとするが、血を見ると気絶してしまうので正座を強制して痺れて立てなくしようと考える。
でも彼一人に正座させるのも失礼なので自分も正座して、彼以上に痺れてしまって一歩も動けなくなる。

256:名無しさん@ピンキー
07/08/22 22:17:31 x/J+KKxg
>>255
よし、それでいこう。

257:名無しさん@ピンキー
07/08/22 22:25:02 Y1aRclk4
>>255
なんというヤンドジw

258:名無しさん@ピンキー
07/08/22 22:41:38 3qo/KBqP
>>255
ぜひそのネタで書いて頂きたい。

259:名無しさん@ピンキー
07/08/22 22:42:40 dHJiIWTq
>>255
これは流行る

260:名無しさん@ピンキー
07/08/22 23:24:18 lnGCZxsC
>>255
このヤンドジください!是が非にも。

261:名無しさん@ピンキー
07/08/23 00:04:32 HsgCBYnE
>>255
お前さんは俺の中にある新しい扉を開けた
ありがとう!!

262:名無しさん@ピンキー
07/08/23 00:16:42 O4D9eMZ2
>>255
その発想はなかった!
そして俺を萌え死にさせる気かw

263:名無しさん@ピンキー
07/08/23 00:17:24 fnOLjxmQ
>>255
声は籐野らんでひとつ

264:名無しさん@ピンキー
07/08/23 00:37:45 7wFebw7Y
新ジャンル「ヤンドジ」

265:名無しさん@ピンキー
07/08/23 00:41:36 R/mXdq67
    /: : /:: : : / : : : !:: : : : !: : !: : : ヽ:: : : : : ',
   /: : /: : : 斗--、 :|: : : : :|: : | ,ィT: ',: : :ヽ : !
   |: : |: : : : : |: /  \: : /|:.ィ: :ヽ: : :.|.: : : ト、:|
   |: : |: : : : /!/ ⌒ヽ| :/ |:./⌒ヽV: |.: : : | V
  < : _: : : / 〈  {} |/  レ  {} }|:./ヽ: : |
  <:: |. 小{   _,,.. -    、-.,_  レ{: :.|ヽ:|    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
   厶ヘ ハ         、     {ハ/ V   |
      \_!      _ '     !         | 空気読まないように生きるのも
        ヽ    /   `t   /      <  楽じゃないwww
      ___,r| \  {    / /         \____________
    /:/::::| \  ヽ `_⌒ ィ ´            (⌒) 
  /::::::/::::::|  \   ´ ∧>、         ノ ~.レ-r┐、
/:::::::::::/::::::::|    \  /  !\::`ー- 、  ノ__  | .| | |

266:名無しさん@ピンキー
07/08/23 01:07:36 YyVw0Wah
ヤンドジ!ヤンドジ!

267:名無しさん@ピンキー
07/08/23 03:05:01 74pgFU1W
おーい!誰かVIPに新ジャンルスレ建ててこい!

268:名無しさん@ピンキー
07/08/23 03:07:38 kXmu6Pxh
さあ、小ネタでもいいから全員>>255を書かないか?

初めてでもいい。ヤンデレ旋風・・・いや烈風を巻き起こせ!

269:名無しさん@ピンキー
07/08/23 03:08:55 kXmu6Pxh
>>268てへっドジっちゃった(はーと

×ヤンデレ
○ヤンドジ

270:名無しさん@ピンキー
07/08/23 03:59:50 rN6/Ewn3
>>255お前はヤンデレ神が遣わした預言者か!?

271:名無しさん@ピンキー
07/08/23 05:26:53 d1mQ/T8X
>>255の才能に嫉妬

272:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:02:09 HJTKs6Y5
>>255
なんという天才
これは書くしかない

続き投下します

273:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:03:42 HJTKs6Y5

「なぁ……もういいだろ。そろそろ離せよ」
 隣に座ってくっついてくる如月更紗にそういうと、彼女はまーだだよー、とふざけたように
言って上目遣いに見てきた。どういう態度をとればいいかわからずに、僕はまた沈黙してしま
う。それを確認して、如月更紗はうれしそうに笑ったまま、頭を僕の肩に乗せるようにしてく
っついてくる。
 そんなことが、かれこれ十数分も続いていた。
 もっとも、正確な時間はわからない―今隣り合って座っている位置からだと校舎の時計は
見えないし、空を見上げても月と星ばかりで、時間の経過はわかりやしない。気のせい程度に
月が動いているだけだった。
 夏の暑さに、夜風が心地いい。
 如月更紗と触れ合ったところだけが、熱を持ったように暑くて……けど、それは不快じゃな
かった。
 不快じゃないんだけれど……
 何やってんだ僕、と思わなくもない。
 冷静になって今の状況を客観視してみれば、真夜中の屋上でいちゃついているようにしか見
えない。こんなことをしにきたはずはないのだが、気づけばこうなっていた。
 右手には、未だ魔術短剣を握っている。
 これを手放すつもりはない―けれど、使う気もない。左手は如月更紗に絡めとられていて
動かすこともできない。屋上のフェンスにもたれかかるようにして、二人並んで座っている。
正面、離れたところにある入り口扉は沈黙を保っている。
 夜は静かで、
 僕ら二人の他には、誰もいない。
「離すのが嫌ならせめて話せよ……いい加減、わけがわからなくなってきた。そろそろ解決編
にはいってもいいころだろ」
「犯人は滅亡しました」
「またずいぶんと急展開だな!?」
「解決編、といわれてもね」
 言って、如月更紗はすりよるように体を動かした。すぐ間近から、甘い香りがする。如月更
紗の香り。血のにおいでも、死のにおいでもない。生きている彼女のにおい。
 そのにおいが、
 触れたぬくもりが、
 如月更紗が生きていると、伝えてくる。
 生首じゃなくて―生きていると。
 しばらく体をこすりつけ、居心地がいい場所を見つけたのか、如月更紗は動きを止めて言葉
を続けた。


274:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:04:35 HJTKs6Y5

「私としては困るのよ。解決するべき謎なんて一つとしてないのだから」
「お前にとってはそうかもしれないが、僕にはいろいろあるんだよ……」
「たとえば?」
「たとえば―」
 言いかけて、僕は考える。
 解決しなければならない謎は、本当に残っているのか?
 僕は此処にきた時点で、此処にいる時点で、姉さんのことは振り切ったはずだ。姉さんの死
の真相も、姉さんを殺した三月ウサギのことも、すべてはもう関係ないはずだ。僕を慕ってく
れていた神無志乃も、僕を必要としていた姉さんももういない。
 残ったのは、僕と、如月更紗だけだ
 如月更紗さえいれば―それでいい。
 ……もういいんじゃないのか?
 心の中にいる僕がひっそりとささやく。もういいんじゃないかと。ここで終わっていいんじ
ゃないかと。ハッピーエンドと、ここでエンドマークをうってもいいんじゃないか。すべてを
捨てて、如月更紗といつまでもいつまでも幸せに生きました―それでいいじゃないか、何が
悪い。
 何もかもが悪い。
 ささやいてくる自分自身に突っ込みをいれる。何が悪いって、悪いに決まってる。ハッピー
エンドなんて冗談じゃない。
 終わるときは―死ぬときだ。
 まだ、終わるわけにはいかない。
 終わることを、僕は選ばなかった。
 続くことを、選んだのだから。
 如月更紗と、共に。
「……如月更紗。ハッピーエンドとまではいわなくても、そろそろ何も問題なくハッピーって
言い切ってもいいものなのか?」
 言葉を選んだ僕の問いに、如月更紗ははっきりときっぱりとただの一言で返答した。
「無理」
「またあっさりと切り捨てたな!?」
「それは無理なのよ冬継くん―そうとも無理なのさ冬継くん。何も問題がないというには
、問題がありすぎる」
「…………」
 問題が―ありすぎる。
 解決編には、まだ遠い。
 如月更紗の言葉を、ゆっくりと、ゆっくりと心中で咀嚼する。問題。問題が残っている。い
ったいどんな問題が残っている? もはや、姉さんも、三月ウサギも、関係ない。狂気倶楽部
との接点は―

 ―狂気倶楽部。



275:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:05:37 HJTKs6Y5

「……あ」
「思い出したかい?」
 横からささやく如月更紗の声には、どこかいたずらめいた響きがあった。最初からわかって
いて言わなかったに違いない。如月更紗とはそういう奴だ。
 畜生。
「そういや……そんな問題がまだ残ってたな」
「そうとも、そうだとも冬継くん。私はこの屋上で、最初に、こういったはずよ―貴方は命
を狙われている、と」
 そうだ。
 そうだったのだ。
 いくら姉さんのことをきっぱりと振り切ったからといって―そんなこととは関係なく、僕
は既に狂気倶楽部からマークされているのだった。だからこそ如月更紗は僕を守るといったの
だし、だからこそ―
 あの夜に。
 白い服を着た少女に、殺されかけたのだから。
 チェシャ。
 アリス。
 裁罪の、アリス。
 狂気倶楽部にとっての切り札。『なかったこと』にするために、『終わらせる』ためにやっ
てくる、容赦のない殺人鬼。
「あの夜、お前が助けてくれなかったら……僕は首をはねられて死んでたんだろうな」
「猫は首だけになっても死なないそうよ」
「僕はそんな不思議人間じゃないんだ……」
 白いドレスを身にまとった殺人鬼。僕の命を狙う彼女。
 それが、まだ残っていた。
 いや―それだけじゃない。
「それに、神無志乃を殺した、お前の『姉』もいるんだったな……」
 そうだ。 
 如月更紗のふりをして、神無志乃の首をはねたあの女が。如月更紗と同じ顔をし、同じ体躯
をもつ双子の姉妹。
 許すわけには、いかない相手。
 けれど、隣から帰ってきたのは予想外の反応だった。如月更紗は僕につっついたままわずか
に首をかしげ
「…………ん?」
 と、不可思議そうにつぶやいた。
 心底不思議そうな、納得のいっていないつぶやきだった。そんな反応がどうして帰ってくる
のかがわからない。僕は思わず如月更紗のほうを向いて、
 目があった。
 如月更紗も、僕を見ていた。大きな瞳にまっすぐに見据えられて、吸い込まれてしまいそう
な錯覚を覚える。瞳に、夜の星が映っていた。
 揺るぐことなく、
 如月更紗が、僕を見ている。


276:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:06:44 HJTKs6Y5

「冬継くん」
「なんだよ」
「ひょっとしてひょっとしてひょっとしてとは思うのだけれど」
「だから、なんだよ」
 再度問いかける僕に対し、如月更紗は、僕を見たまま、恐る恐ると言った風に言う。
「私、話していなかったかしら?」
 嫌な予感がした。
 半端なく嫌な予感がした。
 次に如月更紗の口から測れる言葉は、心底ろくでもない言葉に違いないという確信があった
。そしてその確信を肯定するかのように、如月更紗は僕を見つめたまま、どこか投げやりに、
あっさりと。


「私の姉さんが、裁罪のアリスだということを」


 寝言に耳を、ぶちまけた。
「……………………ナニソレ」
「…………」
「……おい」
「…………」
「初耳だぞ、それ」
「…………」
「まったくもって聞いてなかったぞ僕はそんな大切なことを今まで一度たりとも!」
「星がきれいね、冬継くん」
「あからさまに話をそらしてんじゃねえ! どうしてそんな大事なことをお前は話してないん
だよ!?」
「だって」
 如月更紗はすねたような顔をして、遠くに視線をそらして、ほうり捨てるように言った。
「冬継くんが私を置いて愛人のもとに逃げたからよ」
「愛人!? 誰だそれは!?」
「ラ・マンと言ったほうがいいかしら」
「誰も呼び名を変えろとは言ってねえ!」
 もしかしなくても神無志乃のことか。
 そういえば……あの夜は話の途中で神無佐奈さんがきて、肝心の会話は途中で途切れたんだ
ったか。もしあの件さえなければ、確かに如月更紗はゆっくりと話せていたのかもしれないが
……
 その後も監禁されたり逃げたりで、まともに話すどころか、あってすらないからな、僕ら。
 仕方がない……のか。
 致命的な仕方なさだけれど。


277:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:07:54 HJTKs6Y5

「頼むから如月更紗、僕にもわかるように初めから順序立てて話してくれ。正直僕は、お前ほ
ど狂気倶楽部に詳しいわけじゃないんだ」
 さぐったといっても、基本的に秘密主義な集まりだから、そこまで深くはわからなかったん
だよな……そもそも『そういう集まりがある』というところにたどり着くほうが大変だったの
だ。
 それでも。
 裁罪のアリスの噂は―聞いていた。都市伝説のような、まがまがしいものとして。どこま
でが本当でどこからが嘘かなんてわからないけれど、それがろくでもないものであることだけ
はわかる。
 …………。
 そんなモノに命を狙われてるって、どこまで悲惨なんだろうな、僕。
「そこまで難しい話ではないのよ、冬継くん。裁罪のアリスというのはね」 勝手にへこんで
いる僕に対して、如月更紗はいつものように朗々と、謡うような言葉で言った。

「誰か個人のことを指すのではなく、裁罪するモノのことを―『アリス』と呼ぶのよ」

 狂気倶楽部の、秘密を。
「…………裁罪する、モノ?」
 どういうことだろう―それは。
 個人を指すのではない。
 狂気倶楽部とは、つまるところごっこ遊びではなかったのか。
 困惑する僕に対し、如月更紗はすりよったまま、子供に言い聞かせるように、ゆっくりと話
し出す。
「冬継くんのお姉さんが三月ウサギであったように、私がマッド・ハンターであるように、私
の姉さんが白の女王であるように―狂気倶楽部は、誰もが役割を演じている。童話にそって
、物語にそって」
「それは―知ってる」
 そこまでは知っている。物語の登場人物になぞらえて二つ名を騙り、狂った物語を語る。そ
れこそがお茶会であり、狂気倶楽部なのだと僕は知っている。
 そこまでは、いい。
 問題はそこからだ。
「お前の言葉だと……同じようにいるんじゃないのか、『アリス』を演じてる人が」
 アリス。
 不思議の国のアリス。
 永遠の、少女。
 それこそ、狂気倶楽部のような集団では人気すぎる、役柄の取り合いがおきてもおかしくは
ない『役』だとは思うのだが。
 ……そういえば、三月ウサギもマッド・ハンターも、(厳密には鏡の国ではあるものの)ハ
ンプティ・ダンプティや白の女王も、アリスの登場人物なのか。
 物語。
 お茶会。
 符丁なのか……偶然なのか。「お茶会」だからこそ、姉さんはマッド・ハンターである如月
更紗は仲がよかったのかもしれない。


278:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:18:00 HJTKs6Y5

「初めはいたわ、始まりはいたのよ―ただし、永久欠番となったけれど」
「…………」
「その代わりに、都市伝説として『裁罪のアリス』という人物が物語れた。そして狂気倶楽部
の人間は、誰かの罪を裁くとき―役柄をアリスへと代えるのよ」
「なんとなく……わかった」
 裁罪のアリスなんて「人物」は存在しない。
 その代わりに、狂気倶楽部の人間は誰もが裁罪のアリスになることができる。いや―なる
ときがある。
 罪を裁くとき。
 狂気倶楽部にとって不利益な誰かを殺すときに、彼らは/彼女たちは、アリスを名乗るのだ。
 ・・・・・・・・・・・・・
 物語を終わらせるものとして。

 だからこその、都市伝説。
 たとえば、如月更紗の姉が、白の女王であると同時に『裁罪のアリス』でもあるのだ―
「って、ちょっと待った」
「……?」
 いきなり話をぶったぎった僕に対し、如月更紗は目を丸くする。その表情はちょっとかわい
かったが、今はそんなことを考えている場合ではない。
「まさか、あの夜に僕を襲ったのって」
「そうだよ」
 あっさりと。
 如月更紗は、肯定した。
「白いドレスに身をまとった首撥ね女王―白の女王陛下。そしてあの時は同時に『裁罪のア
リス』として冬継くんを殺しにきたのは、私の姉さんだよ」
「…………」
 本当にろくでもない回答が帰ってきた……
 あのときに一言でもいってくれれば、あとの展開が楽だったのに……ああでも、やっぱりあ
のときにもそんな余裕はなかったし……
 否。
 そもそも、向こう側が気づかれないようにしていたのか。たぶん、『白の女王』は、はじめ
からすりかわるつもりだったのだろう。そのために、できるかぎり言葉をしゃべらず、如月更
紗と同一の顔を隠していた。
 伏線は、いろいろ張っていたわけだ。
 たぶん……姉さんのことをふっきらなければ。如月更紗の家にいかなければ。この屋上にく
ることなく、図書館に向かっていれば。
 僕は―その伏線にひっかかっていた。
 その果てにどうなっていたのかは、考えたくはない。考える必要も、ないだろう。今、僕は
こうして屋上にいるのだから。回りくどい白の女王の計画は、終えたと考えてもいいはずだ。
 ただ一点。
 彼女が何のためにそんなことをするのかが、わからないけれど。


279:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:18:43 HJTKs6Y5

「姉さんは」
 僕の疑問を読み取ったかのように、如月更紗はぽつりと、
「私のことを壊したいほどに好きで、殺したいほどに嫌っているから」
 その声は。
 聞いたこともないくらいに―弱弱しい声だった。力のない、今にも消えてしまいそうな声。
 それは、たぶん。
 その言葉は、他の誰でもない、如月更紗の本音だったのだろう。
 双子の姉妹。
 双子の、狂気倶楽部。
 彼女たちの間に何があったのか、僕は知らない。それは立ち入れることではないし、決して
立ち入っていいことではないはずだ。
 それはまた、別のお話。
 そういうことなのだろう。
「……つまり、ただの嫌がらせか」
 茶化すように僕が話をまぜっかえすと、同じように如月更紗は唇の端をつりあげて、からか
うように答えた。
「そうね。妹によりつく悪い虫を―いじめたかったのだろうね」
 …………。
 悪い虫、か。
 アリスにはそういえば、芋虫とかもでてきたな。
 妹への嫉妬、か。妹へとよりつく相手の。妹がよりつく相手の。妹が幸せも許せないし妹が
不幸でも許せない。
 かけら。
 ハンプティと、ダンプティ。
「……なあ、如月更紗」
「なぁに、冬継くん」
「お前のその話聞いてると……お前があの屋上で近づいてこなかったら、僕は平穏だったんじ
ゃないのか?」
 いってからそうでもないことに気づく。如月更紗がこようとこまいと、『裁罪のアリス』は
襲ってきていたはずだ。ただその中身が、白の女王……如月更紗の姉でないというだけで。そ
ういう意味では、アリスに狙われていることをはっきりとしてくれた分だけ、如月更紗がきて
くれてよかったというべきなのだろうか。
 いや……それでも。
 白の女王がこなければ、神無志乃は死ななくてすんだはずだ。
 けれど。
 如月更紗がこなければ、僕は、如月更紗と出会うことはなかった。
 どちらなんて、選べない。
 どちらかを―選ぶしかない。
 はじめから。
 如月更紗も、神無志乃も、姉さんもだなんて……そんなことが、できるはずが、なかったのだ。
 僕は立派な人間でも、
 真人間でもないから。
 抱えることができる相手なんて―一人で精一杯だ。
 手をつないで、
 寄りかかって歩いていくことしか、できない。


280:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:19:26 HJTKs6Y5

「そうでもないよ。姉さんがこなくても、他のアリスがきていただろうし。そもそも―」
 案の定、如月更紗はそういって。
 それから、
 今までとはがらりと表情をかえて。
 僕を見上げて、こういった。
 

「私もまた、裁罪のアリスなんだよ、冬継くん。君を殺すように命令された―ね」


 …………。
 右手には、魔術短剣を握ったままで。
 左手は、如月更紗につかまれていて。
 二人の他には、誰もいない。
 僕と、
 彼女の、
 二人だけだ。
 だから僕は、いつものように「へぇ」とだけ頷いた。如月更紗は目を細め、 
「……驚かないのかい?」
「そんなことだろうとは」僕はため息を吐いた。「思ってはいたんだよ」
 チェスのポーンがクイーンになるように。
 狂気倶楽部の誰もが裁罪のアリスに成るというのならば。
 如月更紗がそうであたっとしても、おかしくはない。
 それだけのことだ。
「……逃げないのかい? 私は、君を殺すためにいるかもしれないのに」
「お前な」
 僕はもう一度、深々とため息を吐いた。
 なんというか……今更馬鹿みたいな話だけど、実感した。如月更紗は、如月更紗なのだ。
 なぜって。
 そんな物騒なことを言う如月更紗の顔は―にやにやと、にやにやにやと、とても楽しそう
に笑っていたから。
「お前が僕を守るって言ったんだろ……あの言葉を、嘘だなんて思えねえよ」
 それに、殺すだけなら、いつでもできたはずだ。
 否―そんな理屈はおいといて。
 如月更紗がそんなことをするはずないだろうと思う程度には、僕はもう、こいつに入れ込ん
でいたのだ。
 そうでなければ、今、此処にはいない。
「そういってくれて」
 僕の言葉に如月更紗は、僕に抱きつくようにしたまま、器用にも肩をすくめた。
「私はうれしいかぎりだよ」
 その言葉に―きっと、嘘はないのだろう。
 如月更紗は、僕を好きだといっていた。
 彼女が僕を好きでいてくれて、守るためにそばにいてくれている。
 それだけは―もう疑うことが、できるはずもない。
「なあ、如月更紗」
 僕は再び、彼女に問いかける。
 ふと、疑問に思ったのだ。
 如月更紗は、僕を好きだといってくれた。
 それはいったいいつから、そしてどうしてなのだろうと―そんな、普通な学生同士のような
質問をしたくなったのだ。
 けれど。
 その質問をする機会は、永遠に失われた。


281:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:20:16 HJTKs6Y5



 かつん、と。


 音一つない夜の屋上に―音が響いたからだ。
「…………」
「…………」
 かつん。
 かつん。
 かつん。
 気のせいではなかった。僕と如月更紗は声を殺し、音を殺し、耳をすます。かつん、かつん
、かつん。上ってきている。音は屋上と校舎を区切る扉の向こうから聞こえてきていた。かつ
ん、かつん。上ってきるのだ。
 誰かが、屋上に来ようとしている。
 誰か。
 考えるまでもなかった。この状況で、屋上を訪れるのが、他にいるはずもない。
 かつん。
 音を聞きながら、如月更紗が体をよせ、そっと耳に唇を近づけてささやいた。
「決着の時間さ、幕引きの時間だよ。いつまでも冬継くんがこないので、しびれをきらしたの
だろうね」
 そうか、と僕は今更ながらに納得する。如月更紗が動かなかったのはこのためか。
 向こうから、きてもらうために。
 もともとこの場所を指定したのは白の女王なのだ―なら当然のように、僕を殺すために何
らかの罠があってもおかしくない。そうでなくとも、明かりのない夜の校舎を歩くには危険すぎる。
 そのアドバンテージをなくすために、屋上で待ち構えていたのか。
 相手が痺れをきらして、校舎中を探し出すまで。
 あるいは、如月更紗が此処にいることだけは知っていて、やってきたのかもしれない。
 どちらにせよ―
 決着のときだ。
 僕は右手に握る魔術短剣を、強く強く強く握り締める。
 これが、最後なのだ。
 決着をつけなくてはならない。今更のように、僕は覚悟を決める。その結果―たとえ人を
殺すことになったとしても。この町を永遠に離れることになったとしても。
 彼女を―打倒する。

 僕は如月更紗に、言いいたいことがあるのだから。



282:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:21:04 HJTKs6Y5


 かつん、かつん、かつん。
 かつ。
 音が、途切れた。
 気配がある―それは気のせいなのかもしれないけれど、たしかに気配があった。
 扉の向こうに、誰かがいる。
 そっと、僕は如月更紗を抱きかかえたままに、立ち上がる。如月更紗もまた、僕に身を寄り
寄せたままにたち、左手でキャリーケースをひきよせた。
 どくん、と。
 僕か如月更紗の心臓の音が、聞こえたような気がした。
 その音を掻き消すようにして。
 ―ぎぃ、と。
 扉のノブが―回った。


「ほぉら、ほぉら、見てごらん―アリスがやってくる。お茶会を終わらせるために」


 そうして。
 如月更紗の言葉に答えるようにして―ノブが回りきる。一拍の間をおいて、重い鉄扉がゆ
っくりと、ゆっくりと、ゆっくりと開いていく。
 扉が、開いていく。
 その向こうには。
 暗い校舎から、ゆっくりと、月明かりに照らされていくそこには。
「…………白の、女王―」
 如月更紗とまったく同一の、顔。
 あの時、あの夜に見た、神無志乃の首を跳ね飛ばしたあの顔が、そこにあった。変わること
のない表情を浮かべて、月明かりの中、その顔が、



 
 ・・・・ ・・・・・・・・・・・・・
 その首が、すとんと地面に落ちて撥ねた。



<続く>

283:いない君といる誰か ◆msUmpMmFSs
07/08/23 08:23:15 HJTKs6Y5
以上、投下終了です
書いてて思ったけれど本当に裏ルート……楽しめていただけたら幸いです
強調点ふってるところがいくつかありますが、ズレてます。ごめんなさい



284:名無しさん@ピンキー
07/08/23 08:26:47 hH6Xw1AI
リアルタイムGJ!!
続きが非常に気になる

285:伊南屋 ◆WsILX6i4pM
07/08/23 08:28:39 Mj73xpsy
一番槍GJは頂いた。

アリスのデザインが問題点になるのは分かっていたけどいざとなるとわりかし凹む…。
この際全キャラデザインをVer2.0にアップデートするしか!
という内輪では二回目な話。

286:伊南屋 ◆WsILX6i4pM
07/08/23 08:29:18 Mj73xpsy
一番槍じゃねえ…orz

287:名無しさん@ピンキー
07/08/23 09:06:32 4xkL06fv
>>283
更紗と冬継君のデレっぷりに身悶えして萌えた。
そして今回で結末がさらに予想できなくなった……
wktkと不安が止まらない

288:名無しさん@ピンキー
07/08/23 09:09:51 G9fNGH9t
>>283 GJ!
うわ…、裏だけあってテンポが速いな。
>>286
伊南屋さん、それは全キャラ別々のアリスVerってことすか!?

あと、某SS投稿掲示板サイトのその他板の『EX=Gene』
に出てくる華神さんがヤンドジに近いかな~とか思うのです…。
病みまくってるわけではないですが…、まあ軽くズレてます。

289:伊南屋 ◆WsILX6i4pM
07/08/23 09:19:11 Mj73xpsy
>>288
最初、「なにをバカな事を…」と思ってしまったけど、成る程そうか……誰しもがアリスになれるのならば、それは逆に現時点で顔を晒しているアリスのデザインを少なくとも「白の女王ではないアリス」という事にすれば更紗とのデザイン問題は解決されるのか。

290:名無しさん@ピンキー
07/08/23 12:17:10 +vnpqrPk
>>283
GJ!
「愛人のもとに~」発言前後のさりげない嫉妬がイイ!
更紗可愛いよ更紗


291:名無しさん@ピンキー
07/08/23 12:22:52 ZrfKlO2A
>>283
GJ!
お茶会シリーズはプロのものみたいに待ち遠しいw

292:名無しさん@ピンキー
07/08/23 13:47:53 eFvv16U2
もうね、出版しろ

293:名無しさん@ピンキー
07/08/23 13:56:38 5kbIL8og
いない君といる誰かのHPを見ているだけで凄いと思うのですよ

294:名無しさん@ピンキー
07/08/23 14:02:01 SVmAol79
あれ?
ゲーム化とか言ってなかったっけか?
あと選択肢有りな紙媒体ではかなり読みにくい気が。

というかヤンデレって一般に需要あるんだろうか。

295:名無しさん@ピンキー
07/08/23 15:36:01 ZMIviEdW
この方の文章は、紙媒体で購入すると
繰り返し表現が行数稼ぎに見えてしまう希ガス。

296:名無しさん@ピンキー
07/08/23 23:17:30 L0qxBvt1
なに、気にすることはない

297:名無しさん@ピンキー
07/08/24 00:18:35 9OXj3OBb
>>283
あーうー
いつもながら読んでいて不安になる
例えまとめて出版されても休みながら読むよw


ヤンドジは考えてみたら視点をどこに置くかが難しかった
神の視点だとヤンドジ娘と周囲のズレの解説が必要だから、みんなの心情描写が入り乱れて読みづらいし

298:名無しさん@ピンキー
07/08/24 01:06:54 y4l1tHkh
>>294
何、ルート別に本を出せば問題ない
そうすれば二倍量売れて読者も選んで読めてみんなハッピー

299:伊南屋 ◆WsILX6i4pM
07/08/24 01:33:44 xklRQrCy
昨日描いたっきり投下するの忘れてた
如月更紗
URLリンク(imepita.jp)
絵柄の変遷にともないデザインは補正がかかっております。あしからず。

300:名無しさん@ピンキー
07/08/24 01:42:02 xfu0K3iV
ん?なんかみれないんだが・・・

301:名無しさん@ピンキー
07/08/24 01:43:18 5l7mEwpD
おっきした

302:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:45:27 QT51TBcr

彼の病院へ行くこともままならず、そのまま自転車の車輪をゆっくりと転がし、
すれ違ったクラスメイトの蔑視の混じった冷たい視線を背中に浴びているのを感じながら、私は家に帰った。
居間でお手伝いさんが出してくれた、父が貰ったという玉露と戸棚にしまってある前に作った羊羹とに手をつけた。
羊羹を見るたびに松本君の為に練習したときの事を思い出す。
基本的に私は料理が苦手ではないのだが、作るのに苦労した覚えがある。
彼の為に作るのだから、という理由でこの家に出入りしている、三人いるお手伝いさんの手を借りずに試行錯誤を重ねた。
本だけに頼りながら、作っていたので形にはなったのだが、それでは誰にだってできること。
細かいミスはいくつもあったが、その細かいミスを克服するのが一苦労だった。
自分の学習効果の無さにただあきれるくらいに何度と無く失敗を繰りかえした。
眺めている写真に写った彼の姿を思い浮かべながら、時間が矢のように過ぎていった。
とりあえず、羊羹を自分で作ってみて、ミスがなくなった頃に、初めて私は彼と接触を取った。
あのとき私が彼に聞いた、和菓子と洋菓子のどちらが好きか、という質問はそんな自分なりの努力の上にしたものであったから、
あっさりと洋菓子と答えられてしまったことに失望感を隠せなかったのだ。
しかし、私はあの質問に別の意味もかけていた。

303:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:46:27 QT51TBcr
和菓子と洋菓子―。
すなわち、私とあの害物。
いつだったか、彼が私の黒髪が落ち着いていながら、美しいと褒めてくれたことがあったが、それに相対して、あの害物はブロンドの髪と小柄な姿。
私だけでなく、普通の人であればその日本人離れした容姿であり人の目を引くだろう。
それは、私も同感であり、私を和菓子に、あの害物を洋菓子に例えた。
しかし、それはあまりに突飛すぎる話であると後になってみて、気がついて人知れず赤面した。
確かに常人ならば、会ってすぐに、私があの害物よりも好きか、と聞くなどとは思わないだろう。
しかし、私は純粋に羊羹を努力して作れるようになった事と彼をずっと想い続けてきたことに対する見返りが欲しかったのかもしれない。
だから、あれほど常人からすれば、不可解で愚かな質問を呈してしまったのかもしれない。

304:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:47:33 QT51TBcr
そして私は羊羹を食べ終わり、学校に持ち込んでいる歴史系の本を開く。その際にカード状の何かが落ちてきたことに気がついた。
それは例の村越という、私と一つ違いとは到底思えない程の、まるで小学生と言ったほうが相応しいような女の子の連絡先が記されていた。
考えてみると、あの少女に関して、妙なことばかり思い浮かぶ。
前もそうだったが、私が彼女に思うところがあって確認を取ろうとすると、既に彼女はその姿を消している。
それに、害物からすれば先輩格の人間までも味方につけているにも拘らず、親友と思われる彼女に協力を仰がず、
それどころか村越という名の女子は正面きってでは無いが、四面楚歌の私に協力するという。
さらに、今、最も不可解なのは、私は彼女の電話番号を伝えたが、私の電話番号を相手は知らない。
にも、関わらず、彼女は私に連絡する、協力すると、しながらも私の連絡先を素人はしていないことである。
相手が既に私の電話番号を知っているという可能性はありえない。
委員会でも、今までにこなしてきた自分の仕事でも、日常生活でもあんなに目立つ子であるにも関わらず、接触することはおろか、会ったことすらない。
私の学校は生徒数が多いから単に私がその存在を認識していなかっただけ、そうも言えるが、私の電話番号を知っているわけが無い。

305:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:48:25 QT51TBcr
連絡網などという旧時代の異物が廃止されたこの学校において、私が電話番号を共有しているのはただ一人、松本君のみだからである。
そうすると、尚の事、彼女の行動が理解できない。
松本君から電話番号を手に入れるということは、彼女と村越という子に何らかの接点があることになる。
否、なんらかの接点、というレベルで私の電話番号を教えるだろうか?
深いつながりがあるのかもしれない。
しかし、朝に彼女は私に松本君の情報を教えて欲しい、そう要求してきた。
これは松本君との深いつながりを否定する材料とできるかもしれない。
もしそうなると、害物から流れてきた、というところだろうか。
しかし、それは何故だろうか?
ろくに内容を頭に入れることができなかった歴史書を閉じ、学校の用具と一緒に鞄にしまってから私は自室に戻った。
自室に引かれている電話から村越という名の彼女に電話をかける。

306:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:49:46 QT51TBcr
繰りかえされる呼び出し音が焦燥感を駆り立てる。
時間に追われているわけでもないのに、なぜか迫り来る不安感と自分のむき出されている猜疑心から、
一刻も早く、村越さんと接触を取って、どうして自分の電話番号を聞かなかったのか、ひいては電話番号を知っていたのか、ということを確認したかったのだ。
無機質な音が繰りかえされる中で、結局のところ自分はあの害物の手のひらで転がされているような、嫌悪感が増幅していった。
この不安をどこにもって行けばいいのか。松本君に打ち明ければ、彼ならばきっと私の為に協力してくれるだろう。
でも、父の言いつけを破ることで、私は非を作るわけにもいかないし、第一に松本君を心配させるだけなので選択できない。
かといってクラスメイトに話せば、それこそ害物の思う壺。担任の田並先生ならば話は聞いてくれるだろうが、十人並みの対応しか取れない。
それどころか不安の原因である、あの害物と話し合いで解決しようとする可能性もある。それは危険極まりない。

「…あ、あの……、……もしもし?どちらさま……ですか?」
電話の受話器を伝って、唐突に聞こえてきた声に不意をつかれ、咄嗟に体を強張らせた。しかし、狼狽の色を相手に見せないようにしなければならない。
まだ彼女がどの陣営に属するのかわからないままであるから。
「…北方です。」
「き、北方先輩ですか?」
いつものように、震えた何かを恐れるような声が受話器の奥から聞こえてきた。紛れも無く、これは村越智子の声だろう。
「そうよ。」
いつも多くのクラスメイトに対する機械的な対応と同じような対応をした。

307:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:51:36 QT51TBcr
「あ…あの、その、用件は…何でしょう?」
私はいつもどおりの対応をし、彼女自身も私がどのような態度を取るか知っているはずなのに、今回は奇妙なまでに緊張や恐れ、というレベルを通り越したひどく狼狽の色がその声から感じ取れた。
しかし、私は彼女を安心させて話しやすくしよう、などと思うことも無く、淡々と自分の用件を続けて言った。
「今朝、あなたは私にあなたの電話番号を伝えてくれた。
けれども、あなたは私の電話番号を知らない。
だからあなたに私の電話番号を伝えようと思って。
それともあなたは私の電話番号、知っているのかしら?」
どのような反応をするか気になったので、そこで話を断ち切った。
他意がなければ、そのまますぐに電話番号を聞くであろう。
しかし、何か腹に一物、であれば咄嗟に反応が遅れるとか、ぼろが何か出るに違いない。
めぐらした罠に彼女がかかるのを待つことにした。
暫くしてから、彼女は口を開いた。
「えっ、あの?私、先輩の電話番号聞いていませんでしたか?」
「ええ、そうよ。だから、電話番号を伝えようと思って。」
「……わ、わかりました。…め、メモをとります。」
狼狽していた彼女がより一層、取り乱していくのが感じられた。彼女に対する、あの害物と裏で繋がっているのでは、という疑いが強まる。
それとも、狼狽してしまうほど、私と接触を取りたくない理由が何かあるのだろうか?
「村越さん」
「は、はいっ!」
「あなた、何か私に隠していること、むしろ、話さなければならない事、かしら…何かあるのでしょう?」
一言一言を少しずつ切って強調して言った。
「何もありません、私は先輩にお知らせしなければならないほどの重要な事を知っていません。」

即答だった。

不自然なまでに間髪いれず、まるで聞きたくないとでも言うように、即答された。
しかも、さっきまで狼狽していたのが演技だったかのように、淀むことなくはっきりと言った。

308:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:52:51 QT51TBcr
「先輩こそ、電話番号、いいんですか?」
「そうね、電話番号は教えるわ。
でも、あれだけうろたえていたあなたが、それだけはっきりした受け答えを行えた、というのは釈然としない、かしら。
あなたは、何か知っていることがあるのでしょう?」
「………。」
「小さいことだと言っても、もしかしたら何かの助けになるかもしれないでしょう?」
「重要なことじゃない、ですよ。」
「重要かどうかは、情報を得た私が判断すること。とにかく、何かあったら知らせてくれる、そういったわよ?」
「………はい。」
観念したような声で搾り出すように承諾の意を伝えてきた。
そんな彼女の声を聞きながら、先程の恐怖や狼狽にさいなまれている彼女の声が私にはどうも演技か何かのような空々しさを感じていた。
彼女はやはり、あの害物と協力している、悪くすると、私を貶める側の人間なのかもしれない。
「では、話しますよ…。先輩がどう感じるか考えると……私は話したくありませんが…」

309:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:53:43 QT51TBcr
ちぎれた瑠璃色の美しいしおりがゴミ箱に捨てられている部屋
棚の上の装飾のない、素朴なノートの36ページ目

 今日はあまり気分がよくない。
 夏に相応しくない雨が降っていることもあるだろう。
 病院食が不味いこともあるだろう。
 数週間も外に出ていないで、行動が定められている以上、テレビも特定の番組しか見られないこともあるだろう。
 そういえば、アニメの放送内容も近々変わるらしい。確認はしておく。
 しかし、今日はそんなありがちな事が原因で、メランコリーを感じているわけではない。

 何故だろう?
 そんなのは、昨日、僕が理沙を拒んだ事が関連しているに決まっている。
 その行動は、いろいろな事が原因で、元から不安定だった理沙を切り捨て、悲しみの淵に追いやることになった。
 後悔しているかといえば、否だ。
 自分の決断が間違っている、とは思わない。しかし、心は痛む。
 昨日の心からの決意が僕を勇気付けてくれはしたが、やはり後ろめたさは残る。
 数週間に渡って、顔を合わせ続けている、僕の大変な手術の執刀もした医師は好々爺で、今日の診察の際も、僕が考え事をしているのを見て、
 退屈していると取ったのか、趣味のつりの話をしてくれて、退院したら教えてくれると言って来た。
 つりに興味の無い僕だったが、生き生きしたこの老人の話に耳を傾けることに苦痛を感じなかった。
 その老医師の話では、退院はそう遠くないと言う。
 リハビリの器具が重く感じる。

310:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:54:38 QT51TBcr
126号室・松本弘行というプレートが掲げられた部屋
真紅の本の下に置かれたノートの38ページ目

 うだるような暑さが襲ってきた。冷房の利きが悪いのか、今日が以上に暑い日なのか。
 この天気の大きな変化では、偏頭痛持ちだと言っていた、北方さんは頭痛に苦しんでいるだろう。
 腕のギプスははずしている為、蒸れて気持ちが悪くなることは無いが、汗が肌を伝い、服が皮膚にぺたりと張り付いて気持ちが悪い。
 リハビリを続けているが、なかなか苦しいものがある。
 放課後の時間を見計らって、家に電話をかけてみたが、理沙は電話に出てこない。
 未練がましいとは、わかりつつも自分のエゴの為にか、電話をかけている。
 五回かけても駄目だったので諦めることにする。
 そういえば、夏休みはもうすぐだ。僕はもう少しで退院だという。

 机の上の真紅の装丁、北方さんの本を再び読んでみた。
 理由は特に、これといったものは無いが、北方さんに似ているヒロインとその結末が気になった、そんなところだと思う。
 理沙がここのところずっと病室を訪れていたが、思い返せば、北方さんのお父さんの提案で、二人ともここにこないことになっていた。
 理沙は弊履(へいり)の如く約束を破ったが、北方さんにはここのところ会っていない。話すらしていない。
 だからこそ、本の中の髪長姫と彼女を重ねているのだろうか?
 

311:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:55:43 QT51TBcr
リノリウムが味気なく、窓も一つしかない光の届きにくい部屋
走り書きされているノートの41ページ目

 ここ数日の間、この日記をつけていない。
 理由は、本をずっと読んでいたことと、その数日間に北方さんのお父さんが電話をかけてきたので、それに対応していたことである。
 北方さんの本の内容は衝撃的であった。
 あらすじを述べると以下の通りだ。
 ある老夫婦は長い間、求めていた子供を授かる。しかし、それは難産になり、妻は母子共に助かるために魔女のラプンツェルを望む。
 夫は魔女にラプンツェルを分けて貰い、子供は無事に生まれるが、ラプンツェルとの交換条件で子供は魔女の元に引き取られる。
 この少女は魔女に酷使され苦しみながらも、長い黒髪を持つようになり、美しくなっていった。
 ある日、魔女の住む森の近くで、自身の父親の死体を発見する。これは、妻と魔女が殺したものだった。
 彼女が年頃になった頃、彼女はたまたま狩りの最中、森に迷い込んだ王子と出会い、魔女の目を盗んでは逢引きするようになった。
 これを知った魔女は怒り、王子の許婚の王女は八方手を尽くして、ヒロインを苦しめ、二人の仲を裂く。
 それに悲観したヒロインは去り行く王子を横目に墜死を試みる。
 が、失敗し、彼女は失明する。本来ならば再び王子との逢瀬を迎えるはずだが、そうではなく悲劇的な結末に終わっていた。

 北方さんのお父さんは、自分の身の回りに変化が無いかということと、最近、北方さんの立場があまり良くないから、退院したらまた、助けてやってくれということを、言っていた。
 また、娘を慮って、教師陣にも喝を入れてきたという。その娘を思う気持ちがあるならば、どうして北方さんが幼い時に虐待を止められなかったのか。
 思うところを口にしたら、悲しげに君しか彼女の傍にいてやることはできないよ、とつぶやくように言っていた。
 なんとなく、この物語を北方さんが好んで読んでいる理由がわかったような気がした。
 このヒロインと自分を重ね合わせて、僕の傍にいたい、と祈願するように言っていたのだとすれば、心が痛む。
 物語のような結末にはしたくない。

312:和菓子と洋菓子
07/08/24 01:57:03 QT51TBcr
面会人も無くいつもどおりの静謐さを崩さない部屋
切抜きされた新聞と共に棚に置かれているノートの44ページ目
(左ページに切り抜かれた新聞記事が貼ってあり、適宜、赤線が引いてある)

 今日も暑い日のようだ。ミンミンという蝉の鳴く声が鬱陶しい。
 北方さんの立場があまりよくないという彼女のお父さんの話を聞いて、北方さんの事が心配でたまらない。
 冷静で隙を作らず、誰とも価値観を共有しない、そういう状態でいるのは本人自身厳しいことだろうし、周りが悪意をもって彼女に接していたとすれば、殊更だ。

 南雲が今日、僕に夏休みの宿題と新聞を片手に面会にやってきた。
 南雲は成績がよく、冷静な性格で僕の親友である。
 一、二週間くらい前だったか、理沙が僕のところに出入りしていた頃、僕に友人の南雲が北方さんの立場が悪い、むしろいじめに近い状態になっていることを示唆するような連絡を受けた。
 スタンガン事件の事と、理沙の事でいろいろと悩んでいてその時は恥ずかしい話だが、気に留めることができなかった。
 その南雲曰く、最近はどんどん迫害がエスカレートしているという。僕と南雲の仲間は北方さんが悪い人ではないことを気づいているので、悪意をもって接することはしないという。
 南雲は北方さんにアプローチをかけてみたり、教師の協力を仰いだりしてみたらしいが、北方さん自身が自分の殻に篭っているので、どうすることもできなかったことを伝えた。
 さらに、彼女はここ数日の間、北方さんが休んでいるとも言っていた。
 
 南雲が持ってきた新聞記事は一面にでかでかと載っていた。
 北方さんのお父さんが何者かに刃物で刺されて、重傷の状態で病院へ搬送されたという。
 細かいことは知らなかったが、彼の会社は相当規模が大きく、ここ数日、大きな商談があって山口を訪れていたという。
 テレビでもそう報道していた。
 北方さんは一層、悲しい思いをしているだろう。
 こんなときに病院を出ることができない自分が嫌だ。
 断るかもしれないが、北方さんと会う必要がある。電話を明日にでも、かける事にする。


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