07/10/18 02:46:25 SZafKT1+
「はぁ・・・」
最近やたらと回数が増えた溜め息をつき俺は天井を仰いだ。
天海春香のお別れコンサートが終わって数ヶ月・・・春香はアイドルを続けることを決めてくれた
ようで、再デビューに向けて今はレッスンと休暇の充電期間中だ。
俺は765プロ始って以来のトップアイドルを育成したプロデューサーということで、社長の願いも
あり現在は別の番台プロダクションでのアイドル育成に携わっている。
・・・あの最後のコンサートの日、春香から打ち明けられたまっすぐな想い・・・。俺はその想いに
答えなかった。春香はトップアイドルとしてまだまだ多くのファンを虜にするだろう、1番傍にいた
俺だからわかる。
春香の未来のためにも俺が傍にいて邪魔になるなんてもってのほかだ。春香はもう1人でやっていける。
そう、プロデューサーとして最良の判断をした。・・・・はずだった。けれど最後に別れたときの春香の
無理に笑おうとする泣き顔が目に焼きついて離れない。
(・・・俺、間違ってないよな・・・)
溜め息の急増化の理由はこれにほかならなかった。あの日以来自分に同じ質問をしては答えの出せない
堂々巡りの思考を続けている。
正直・・・春香に惹かれていなかったなんて嘘だ。ドジでちょっとそそっかしい所もあるが前向きで
周囲にも元気をくれる笑顔の似合う女の子。確実に春香に惹かれていた・・・だが「プロデューサー」と
しての俺がその想いを認めるわけにはいかなかった。
自分自身でも驚くほど大きくなっていた春香への想いに戸惑う。
「本当に大事なものは失って初めて、その大きさがわかる・・・か。昔の人の言葉は重みが違うな」
自嘲気味にそんなことをつぶやいてみるも気分は全く晴れない。
「はぁ・・・仕事に戻るか」
仕事をしている時はなにも考えなくていい。それだけが救いだった。