逆転裁判エロパロ第10法廷at EROPARO
逆転裁判エロパロ第10法廷 - 暇つぶし2ch350:成歩堂×冥 5
07/09/03 20:19:33 2XFsCdPn
「マスターの見解だけじゃ、物的証拠はないな。すべては状況証拠か」
ペタペタとサンダルの音をさせながら、成歩堂はつぶやいた。
「・・・苦手なんだよな。状況証拠」
『まったく、なにがみぬきみぬきよ・・・』
そう言った時の冥の顔を思い出す。
あれは、成歩堂が霧緒の名前を出した後だ。
あの時の、今にも泣き出しそうな顔。
やっぱり、放っておけないな。
成歩堂は来た道を戻り始めた。

検事局まで戻ってきたはいいけれど、どうやって冥に取り次いでもらおうかと考えていると、地下駐車場から見覚えのある車が滑り出してきた。
車が成歩堂の横で止まり、運転席の窓が開いた。
「忘れ物なの?」
成歩堂が、笑った。
右側のドアを開けて助手席のシートに体を沈める。
「左ハンドルの車だとさ、助手席に座っても運転してるような気分になるね」
両手を上げて、ありもしないハンドルを握るマネをする。
「いいかげん、運転免許くらい取りなさい」
「うん、でもあと3~4年もしたらみぬきが取ると思うんだ」
「・・・あきれた」
「怒らないの?」
冥が首を回して成歩堂を見た。
「私だって意味もなくいつも怒ってるわけではないわ」
「みぬきの話をしたからさ」
「意味がわからないんだけど」
ハザードをつけたままの車の中で、冥は肩をすくめた。
「ふうん。じゃあ、昼間はみぬきの話をしたから怒ったんじゃないんだね」
「・・・バカバカしい。あなたがみぬきの話をするのが珍しいとでも言うつもり?」
「と、すると」
今度は、片手に持った見えない書類を手で叩くマネをする。
「あの時、僕はこう言った。『最近、霧緒さんにみぬきのマネージメントをお願いしたら、とてもいいみたいだよ』」
「よく覚えてるわね」
「そうしたら、君が言ったんだ。『まったく、なにがみぬきみぬきよ』って」
「・・・」
「でも、今の話だと君はみぬきの話に腹が立つわけではないようだ。これはムジュンする」
「・・・弁護士にでもなったつもり?」
「つまり、君が怒ったのは、この部分だ。『霧緒さん』」
「・・・」
「異議は?」
検事局から何人かの人が出てきて、人が乗ったままの路上駐車に不審そうな目を向けてくる。
冥は車を出した。


351:成歩堂×冥 6
07/09/03 20:20:44 2XFsCdPn
御剣以外で、冥が部屋に入れた男性は成歩堂が初めてだった。
「で、話ってなによ」
気ぜわしく聞いた。
成歩堂の事務所には王泥喜がいるし、どこか食事のできる店に行こうかと思ったが、成歩堂が君の家がいいと言ったのだ。
拒否することもできたのに、冥は黙って自宅へ車を向けた。
成歩堂は勝手にキッチンへ入ると、冷蔵庫を開ける。
「なにやってるのよ!」
「いやあ、見事に水しか入ってないね」
「わ、私が料理でもすると思ってるの?」
「思わないけど。キッチンがすごくキレイだもんね」
冥がムッとしたような顔をして、バッグを放り投げるとリビングのソファにどさりと座った。
「おっと、ポテトチップスだ。これ食べてもいい?」
「やっぱりお腹すいてるんじゃないの。だから・・・」
コンビニの袋に入ったままのビッグサイズのポテトチップスを見つけられた照れもあったが、だから食事に、と言えばまるで誘っているかのように聞こえる。
冥は言葉の途中で黙り、成歩堂が菓子袋とペットボトルの水を持って戻ってくる。
成歩堂は、冥の隣に腰を下ろして袋をバリバリと開け、冥は座りなおして距離をとった。
「真宵ちゃんが、千尋さんとお母さんのお墓を移したいらしいんだ」
冥が移動したことに構わず、ポテトチップスを音を立てて食べる。
「・・・・お墓?」
「うん。ほら、この間の命日。ぼくは君からの仕事で行けなかったろ?それで後から倉院のほうに行ったんだけど、その時にね」
そんな話をしたかったのか?
冥は手を伸ばしてポテトチップスをつまんだ。
「こっちにお墓を作ったのは、倉院の里のほうでもいろいろ分家の反対があったかららしいんだ。二人とも一度は里を出たわけだし。でもほら、今は真宵ちゃんが家元だからね。綾里家のお墓に移すことにしたんだって」
「それで?」
「ま、その時には僕も倉院に行こうと思うんだ」
「それで?」
パリっと音を立てて、組んだ冥の脚にポテトチップスの破片が落ちる。
「・・・まあ、そういう話」
「あいっかわらず、バカは仕事を変えてもバカなままね、成歩堂龍一!」
バッグの中に入っている鞭に手が届かず、冥はテーブルの上のペットボトルを投げつける。
「危ないなあ。当たったら痛いじゃないか」
投げつけられた水を受け止めて、成歩堂はキャップを開けて飲んだ。
「あんまり乱暴だと、嫁のもらい手がないよ」
「・・・ッ!」
「おっと、かんべんしてよ」
投げつけるもののなくなった冥が振り上げた手を、つかむ。
「まあ、御剣ならそれでもいいと言うかな」
「・・・バカがバカらしくバカなことを言ってないで、手を離しなさいっ」
「それは、異議?」
手を振りほどいて、冥は成歩堂をにらみつける。
「異議よ!だいたい、怜侍がそんなこと言うわけがない」
「それは、君の推理でしかない。証拠品の提出を求める」
「弁護士みたいな言い方をしない!」
たたみ掛けられて、成歩堂はポテトチップスの袋に手を伸ばした。
「あ、大きいの、見つけた」
パリッ。
冥は肩透かしをくって黙った。


352:成歩堂×冥 7
07/09/03 20:21:44 2XFsCdPn
「まったく、なにを考えているのかさっぱりわからないわ、あなたも」
「僕も・・・、御剣も?」
「だから、なんでそこに怜侍がっ」
「知ってるんだろ?御剣と霧緒さんのこと」
成歩堂は、冥の左手をとった。
白い手首に巻きついている、細いプラチナのブレスレットが軽い音をたてた。
「それで、妬いてる?」
冥は、手を振り払わなかった。
「私が?バカバカしい」
「そうかな」
「怜侍は、私のことなんか子供だと思ってるわよ。昔からずっと」
成歩堂は冥の指を口に含んだ。
ポテトチップスをつまんだ塩味がした。
「なにしてるのよ」
「・・・うん」
「離しなさい」
ゆっくりと冥の細い指に舌を這わせる。
一本ずつ、丁寧に。
「・・・っ」
ぞくりとする感覚に、冥が強く手を引いた。
引かれて体を乗り出した成歩堂が、そのまま冥の顎に手をかけて唇を重ねた。
成歩堂の舌が唇を割り、冥が力をこめて成歩堂の胸を押し返した。
「そんなつもりはないんだけど」
「・・・うん」
「バカじゃないの?」
「・・・うーん。好きな女の子の部屋に来た男としては、普通の反応じゃないかな」
振り上げた冥の手を、顔の横で受け止める。
「鞭がないと弱いね、冥」
「やめなさい、成歩堂龍一っ」
つかんだ冥の手を自分の頬に押し付けて、成歩堂はため息をつく。
「やめるよ。嫌われたくないからね」
「・・・・・」
ふいに、冥の目に涙が盛り上がった。
「冥?」
握ったままの手を引き寄せた。
抵抗なく成歩堂に抱きとめられた冥は、そのまま肩を震わせた。
声も立てずに泣く冥の背中を、優しく撫でる。
ずっと耐えてきたものに耐え切れなくなったかのように、冥はただ切ない想いを涙にする。
「御剣が、好きだったんだろ?」
ずっと。長いこと、ずっと。
冥は否定しなかった。
「言わなかったの?」
下唇をかみ締めてうつむいた冥の髪にそっと触れ、成歩堂はそこに唇を寄せた。
「・・・言えば、怜侍は困るわ」
ようやく、冥は言う。
『ご令嬢は、御剣に惚れていると・・・』
あのマスター、やっぱり見えていたんだな。
冥の髪から、甘い香りがする。
「嫌われたくないもの・・・」
言うと、頭に成歩堂のため息が吹きかかった。
御剣に嫌われたくない、冥。
冥に嫌われたくない、成歩堂。
すれ違う想いが、そこにあった。


353:成歩堂×冥 8
07/09/03 20:22:57 2XFsCdPn
成歩堂が指を冥の顎にかけると、冥はその手をそっと払った。
体を起こして、片手で頬に流れた涙をぬぐう。
「嘘よ。全部、嘘。忘れなさい」
「冥」
「嘘だって言ったでしょう。今の話は全部、嘘」
ぷい、と顔をそらせた冥を成歩堂が見つめる。
「・・・なに」
その視線に、冥がいらだったように聞く。
「ふうん。嘘なんだ」
「・・・」
「じゃあ、僕も嘘だ」
冥の肩を押すようにして、ソファに倒した。
「な・・・」
「やめるって言ったけど、嘘」
抵抗する冥の手首をつかむと、その手のひらに口付ける。
手のひらに舌を這わせ、指を順番に舐めつくす。
「やめ・・・」
冥の指を含んだまま、成歩堂は彼女の目を見つめる。
手首からひじまでゆっくり舐められて、冥はまたあのぞくりとする感覚に体を震わせた。
成歩堂の舌の感触が、ただ一本の腕から伝わる。
経験したことのない、もどかしいような痺れ。
成歩堂の視線が、痛い。
「やめなさい・・・」
「どうして?」
成歩堂が冥のスカートの上から体に触れた。
男の本気を感じて、冥が逃れようと体をよじった。
より強い力で、押さえつけられる。
「いや・・・!」
はっきりとした、拒絶。
成歩堂が手を離すと、冥はソファの端まで逃げた。
両腕で自分を抱くようにして、足を胸にひきよせるように丸くなる、防備の姿勢。
「・・・ごめん。もうしない」
「・・・」
「嘘じゃないよ。冥に嫌われたくないからね」
「・・・バカっ」
成歩堂は冥から離れて、ソファの反対側に寄る。
「あーあ。あいつには、かなわないのかな」
片手で、口元を撫でた。
「だいじょうぶだよ。あいつは、冥を嫌いになんかならない。絶対」
「なぜそんなことがわかるのよ」
成歩堂の手の中に、冥の感触が残っている。
「ごめん。帰るよ」
立ち上がった成歩堂を、冥が見上げた。
「帰るけど、・・・もう一回だけキスしていい?」
「いいわけないじゃない!」
「・・・そうだよね」
くす、と笑う。
「嫌いになんか、ならないよ。御剣も、・・・ぼくも」


354:成歩堂×冥 9
07/09/03 20:23:58 2XFsCdPn
冥は、見送らなかった。
ただ、ドアを開けて出て行く音を聞いただけで。
冥は、成歩堂の跡が残る腕を、そっと撫でてみた。
嘘よ。全部、嘘。・・・好きだなんて、嘘。
声にならないつぶやきが、吐息となって唇からこぼれる。
成歩堂が口付けた唇。それをなぞる指は、成歩堂が口に含んだ指。
ぎりっ、と指先を噛む。
痛みで、あの感覚を打ち消してしまいたかった。
成歩堂の胸の温かさに、すがってしまいそうになったあの気持ちと一緒に。
冥はゆっくりとソファの上で膝を抱えて丸くなる。
御剣でなければ、だめなのだ。

成歩堂は、マンションの下で冥の部屋の明かりを見上げる。
いつか彼女は、御剣をあきらめられるのだろうか。
それとも、御剣が彼女を振り返る日が来るのだろうか。
抱きとめた彼女の体と口づけた指や唇が震えていたのを思って、成歩堂は胸が痛かった。


355:345-354
07/09/03 20:25:37 2XFsCdPn
346=成歩堂×冥 1 です。


356:名無しさん@ピンキー
07/09/03 20:50:20 bdzlMNHS
GJ!続きが気になる!!

357:名無しさん@ピンキー
07/09/04 00:47:07 XZ2Ci8pB
GJ!!!
泥沼多角関係の予感にwktk

358:名無しさん@ピンキー
07/09/05 07:42:17 52qZ5fCp
響也×春美、途中までですが投下します。
エロ要素まだないです、すみません。

響也と春美が好きすぎてやってしまいました。
変な組み合わせですが…よければ読んでやって下さい↓

359:響也×春美1-1
07/09/05 07:42:58 52qZ5fCp
とある公園で起きた殺人事件。
事件はニュース報道でも大きく取り上げられ、現場付近には報道陣と野次馬がつめかけている。
そんな血なまぐさい殺人現場に全く似つかわしくない黄色い声が、一人の男に絶え間なく浴びせられていた。

ーーその男の名前は、牙琉響也。
ガリューウエーブのリーダーと敏腕検事の二足のわらじを履く彼は、どこにいても目立つ存在であった。
颯爽と事件現場にバイクで現れ、テキパキと現場検証をこなし、帰り際には詰めかけたファンへのサービスも怠らない。
そのスタイリッシュな彼の姿に魅了される女性は、日々増え続ける一方である。

この日も響也は現場検証とファン対応をこなすと、足早にバイクの元へ向かう。
再度ファンに捕まるのを避けるため、手際よくジャケットのポケットからバイクのキーを取り出す。

「すみません」

響也がバイクにキーを差し込もうとしたとき、背後から一人の女の子に声をかけられた。
しまった、と心の中で舌打ちをする。
一人のファンに構ってしまうと、その間に次々とファンは集ってくる。
一瞬、気づかないフリをしてしまおうかと脳裏をよぎるが、ファンを蔑ろにできない響也は咄嗟にファン向けの笑顔を作った。
「ごめんね、サインはまた明日でもー…」
そう言いながら振り向いた目の前に立っていた女の子の姿を見て、響也は少し驚く。
その女の子は響也を取り囲む今時の若い女子高生といった感じとは違う、どちらかといえば古風な姿であったからだ。

360:響也×春美1-2
07/09/05 07:43:40 52qZ5fCp
年齢は15、6くらいであろうか。
見慣れぬ学校の制服を着て、大きなバッグを小柄な体で精一杯抱え込んでいる。
色素の薄い髪を頭の上でくるりとまとめ、大きな瞳はぱちくりと響也を不思議そうに見ていた。
美人というよりは愛くるしい感じだが、よく見る取り巻きの女子高生とは雰囲気が違う女の子だった。
どこかで見た顔のような気もするが、思い出せない。

「あのー…、道をお尋ねしたいのですが」
響也に凝視された女の子は、少しオドオドした様子で言う。
てっきり自分のファンだと思った響也は、その言葉にきょとんとしてしまう。
有名人である自分に、まさか道を尋ねてくる人がいるなんて最近ではない光景だったからである。
自分も随分と天狗になったものだな、と小さく苦笑する。

「ああ、ごめんね。で、どこに行きたいのかな?お嬢ちゃん」
「成歩堂法律事務所なんですけど、確かこの辺りでしたよね?」
「!」

予想だにしなかった返事だ。
「成歩堂」といえば7年前、自分の手で弁護士バッジを奪った男の名前である。
まさかその名前を、こんな若い女の子の口から聞くことになるなんて予想できるはずもない。
だが、弁護士としての成歩堂龍一はもう存在しない。
法律事務所も、とうの昔に『成歩堂芸能事務所』へと成り代わってしまった。

「成歩堂法律事務所は、もう存在しないよ」
「えっ…えええーーっ!?」
その事実がよほど衝撃だったのか、女の子は抱えていた荷物を地面に落とした。
落としたバッグを全く気にも留めず、ひたすらオロオロしている。
そのリアクションからして、どうやら成歩堂法律事務所に何か重要な用事でもあったのだろう。
女の子が落としたバッグを拾い上げ、パンパンと土を払って手渡す。
「ありがとうございます」
女の子は響也からバッグを受け取ると、両手でギュッと抱え込んだ。
「もう7年も前のことになるんだけどね、知らなかったのかな」
「知りませんでした……。わたくし…ずっと里にこもっていたものですから…」
「里?」
「はい、里で霊媒の修行を。でも真宵さま、成歩堂くんが事務所を閉めたなんて一言も……」
がっくりと肩を落としながら、女の子は小さく呟く。
その言葉を響也は聞き逃さなかった。

361:響也×春美1-3
07/09/05 07:44:28 52qZ5fCp
彼女が口にした「霊媒」、「真宵」、そして「成歩堂」という単語。
それらのキーワードは昔よく耳にした。
過去に起こった霊媒をトリックとした奇異な事件は、法曹界に身を置くものなら誰もが知っている。

何やら訳アリという感じだが、響也自身には関係のないことだ。
とはいえ、成歩堂龍一から弁護士バッジを奪取した張本人として多少の罪悪感は感じる。
と同時に、女の子の異様なまでの落ち込みようはどうも引っ掛かるものがある。

「厳密に言うとね、成歩堂【弁護士】はもういないんだ。事務所の形跡は残ってるらしいけどね、今や芸能事務所さ」
「芸能事務所!?」
「まぁ話すと長くなるけど、今ではおデコく……いや、新米弁護士と成歩堂龍一の娘が跡を継いでる」
「なっ、な、な、な、成歩堂くんの娘さまっ!?!?」
女の子は全く訳が分からないといった様子で混乱している。
無理もない。その背景には、一言では到底説明できない複雑な理由が渦巻いているのだ。

「というわけで、成歩堂法律事務所は厳密に言うと存在しない。跡地でよければ教えられるけど」
どうする?と、響也はクルクルとバイクのキーを指に引っ掛けて回しながら尋ねる。
「…………」
少しの沈黙のあと、何かを決意したように女の子は俯いていた顔をあげて響也の目をじっと見つめる。
「もしご存知でしたらー…何があったのか教えて頂けないでしょうか?」
その目は真剣だった。
「ぼくに聞くより、直接本人に聞くのが早いんじゃないかい?」
「そ、そうなのですが…そうにもいかなくなりまして…あの…」
「何か聞けない理由があるのかな?」
「…………はい」

気まずそうに頷く姿を見て、響也はやれやれと首を振る。
面倒ごとは御免だが、多少の罪悪感と彼自身の性格の優しさが手伝ってNOとは言えなかった。
腕の時計を見ると、時刻は昼過ぎ。
検事局へ戻るには、まだ時間に余裕がある。

362:響也×春美1-4
07/09/05 07:45:31 52qZ5fCp
響也はメットインからスペアのメットを取り出すと、女の子へ投げてよこした。
「ここじゃあ色々とマズいから、場所を変えよう。バッグはショルダーで体にかけて、後ろに乗って」
そう言ってバイクの後部座席へと促す。

とその時、遠くから再び黄色い声が上がる。
「キャーーー、響也ァァァァー!!!」
「ガリュー、握手してぇー!!!」
熱烈な追っかけファンたちが、響也めがけて一目散に走ってくる。

「おっと、見つかったか。お嬢ちゃん、早く乗って!」
女の子は急な展開に戸惑うが、「いいから、早くッ!」と急かす響也に言われるままバイクへ股がる。
「オーケイ、しっかり捕まってて!」
エンジンを吹かし、響也は勢いよくバイクを走らせたーーー。

【つづく】

363:名無しさん@ピンキー
07/09/05 07:47:32 52qZ5fCp
めちゃくちゃ長くなりそうなので、いったん切ります。
また近々投下させていただきます。

響也×春美、パラレルすぎて申し訳ない‥

364:名無しさん@ピンキー
07/09/05 18:25:22 KLGfdMB3
>>363
4での旧キャラがどうなってるのかとか気になるんで楽しみ
続きに期待

365:名無しさん@ピンキー
07/09/06 01:13:50 N7DZiyfE
>>363
響也それは犯罪だ!!って一瞬思ったが、
4の時のはみちゃんはみぬきより年上なんだよね。
蘇るのときの茜と成歩堂みたいな感じと予想。
年齢もちょうど同じだしね
とにかく続きに期待!!

366:名無しさん@ピンキー
07/09/06 04:54:30 tmCuFo3j
連投で申し訳ないです、響也×春美の続き投下させて頂きます。
長過ぎて、また今回も途中までです…エロもまだありません。

>>364>>365
期待して下さって有り難うございます、添えられるように頑張ります!!

367:響也×春美2-1
07/09/06 04:56:11 tmCuFo3j
辿り着いた先は、響也の住む高級マンションのラウンジだった。
ここならば誰に邪魔されることもなく、落ち着いて話ができる絶好の場所である。

広々としたラウンジに設けられたソファに腰掛けた女の子は、キョロキョロと辺りを物珍しげに見渡している。
「紅茶でよかった?」
「はい、ありがとうございますっ」
響也は自販機で購入してきた紅茶を女の子に手渡し、次に自分用の缶コーヒーのプルタブを開けた。

「凄いですね、こんな素敵な場所に住んでらっしゃるなんて!」
「こういう場所は初めてかい?」
「はいっ!ソファもふかふかですっ」
よほど気に入ったのか、女の子は嬉しそうにソファの感触を何度も確かめている。

「そういえばお嬢ちゃんの名前をまだ聞いていなかったね」
「わたくし、もうすぐ18ですっ。お嬢ちゃんではありませんっ!」
ぷぅ、と小さく頬を膨らませて怒る様子が微笑ましい。
その可愛らしい主張に思わず響也は小さく笑ってしまうが、レディーは尊重するというのが彼のモットーだ。
「それは失礼、訂正するよ。ぼくは牙琉響也、キミの名前を教えてくれないかな?」
「わたくし、綾里春美と申します」
「綾里…。やっぱり、あの倉院の里の子だったんだね」
「えっ、倉院の里をご存知なんですか!?」

目を大きく見開いて驚く春美。
かれこれ9年前に倉院の里で起きた「外科医師殺人事件」は有名である。
その事件からわずか2年で起きた「童話作家殺人事件」と合わせて、綾里の一族の血は呪われていると
検事局内では今でも語り継がれている話だ。

「そういえば牙琉さんは、何をされてる方なのでしょう?多くの女性から追いかけられておりましたが…」
春美の純粋な質問に思わずガクッとなる。
まさかこの世代で、自分を知らない子がいるなんて思いもしなかった。
「ガリューウエーブって聞いたことないかい?」
「がりゅう…うえいぶ……? それは何かの機械の名前とかでしょうか?」
その答えに再度ガクッとする。
もしかしたら名前だけでもと思ったが、その淡い期待は響也のプライドと共に一瞬で砕かれた。

「いや、知らないならいいんだ…」
「すみません、わたくし横文字は苦手なものでして…」
春美は申し訳なさそうに肩をすぼめる。
ミリオンヒット連発の天下のガリューウエーブも、春美の前では単なる横文字にしか過ぎない。
なんだか調子狂うな…、と響也は苦笑する。

368:響也×春美2-2
07/09/06 04:56:48 tmCuFo3j
「ぼくは一端の検事さ。同時に音楽業もやっている、と言えば分かってくれるかな?」
見た目が派手なせいか、響也が初対面で検事だと思われることはまずない。
その理由からか、懐から身分証明書を取り出して相手に見せるのがいつしか癖となっていた。
「まぁっ、検事さんだったのですね」
差し出された身分証明書をまじまじと見つめながら、春美は感心したように言う。
「そう、だから成歩堂龍一のことは幾らか知ってる。綾里のことも多少は、ね」
「では成歩堂くんに何があったのか教え…」
「その前に」

響也が春美の言葉を遮る。
「1つ、キミに確認したいことがあるんだけど」
「なんでしょう?」
「キミさ、もしかして…家出少女かい?」
「!!!!」
ビックリした様子で春美は大きく開いた口を手で覆う。
図星ですと言わんばかりの、なんとも分かりやすいリアクションだ。

「…はい、わたくし悪い子です。勝手に里を飛び出てきてしまいました」
今度はしょぼんと項垂れる。
コロコロと変わる春美の表情を面白そうに眺めながら、響也は「やっぱりね」と笑った。

「なぜお分かりになったのです?」
「世間の学生は夏休みに突入したばかり。慣れない土地で大きなバッグを抱えてウロウロする女の子。
 行く当てだった場所が、自分の知らぬうちになくなってることを知って狼狽する…。
 こんなカードばかり並べられたら、安易に「家出少女」という役が出来てしまうよ」

まるで法廷で被告人を追いつめるかのような調子だ。
「やはり検事さんにはバレてしまうのですね……」
「何か事情があるんだろうけど、仕事柄、家出少女を放っておくワケにもいかなくてね。
 尋問のようで悪いけど、どういう経緯で家を飛び出てきたのか聞かせてくれるかい?」
甘いマスクと優しい口調で少しずつ相手ににじり寄っていく手法は、響也の天性の才能だろう。
じりじりと追いつめられた春美は、事情を白状するほかはなかった。

369:響也×春美2-3
07/09/06 04:57:30 tmCuFo3j
春美の家出事情は、響也が思っていたよりもずっと複雑なものだった。
原因はどうやら、綾里家の血筋問題らしい。

発端は7年前に起こった、倉院流の血縁をめぐる事件。
事件が解決した後、本家の血を継ぐ綾里真宵が倉院流師範代を無事に襲名したという。
すべては終わったかのように思えたが、血の争いというのはそう簡単には円満解決しないもの。

真宵を心から慕う春美は、補佐役として真宵の役に立てるように修行に明け暮れる日々だった。
だが、春美の実母であるキミ子の意思を継ぐ分家のものたちはまだ多い。
分家の血筋でありながらも、真宵よりも高い霊力を持つ春美を倉院流の師範代に就かせたいという願いはもはや執念だ。

「いつか春美さまが師範代になる日が来ますわ」
「真宵さまよりも、春美さまのほうが師範代に相応しい能力を持っていらっしゃるのだから」

まるで洗脳のように言われ続ける言葉と、春美の純粋な気持ちなどお構いなしの修行三昧の日々。
それでも真宵の力になれるなら、と修行に励む春美に転機を与えたのは、他ならない真宵本人であるーーー。

それは偶然の出来事であった。
本家の家に住む真宵を尋ねてきた春美は、真宵の部屋から漏れる会話を思い掛けず立ち聞きしてしまったのだ。
ハッキリと聞こえた、真宵の言葉。


「………だから私、はみちゃんを自分の側に近寄らせたくないの…」


春美は一瞬で頭の中が真っ白になった。
いつも優しく接してくれる、大好きな真宵。
実母のキミ子が手をかけようとしたことに負い目を感じた春美を、笑顔で許してくれた。

だけど本当は自分のことを疎ましく思っていたなんて気づかずもせずに、のうのうと過ごしていたなんて…
自分の能天気さが嫌になる。

気づけば春美は手当り次第に荷物をバッグに詰め込み、逃げるように里を飛び出していた。
滅多に里を出たことがない春美の行くアテは、ただ1つだけーーー。

370:響也×春美2-4
07/09/06 04:58:12 tmCuFo3j
「で、成歩堂法律事務所を尋ねてきて、今に至るというわけかい」
「…はい」
「勢いだけで飛び出してくるなんて、とんだおてんば娘だねえ」
響也からすれば「家族の揉め事が原因のよくある家出」に分類されるのだが、春美にとっては青天の霹靂である。

「わたくし、真宵さまにとって邪魔な存在なのですね…。
 それどころか成歩堂くんが弁護士を辞めていたなんて、更にショックです…」
「…………」
響也の胸がズキリと痛む。
「検事さん、成歩堂くんに一体なにがあったのですかっ?」

響也はソファに深く座りなおすと、ふぅ…、と軽く一息ついた。
真実はこの少女を更に傷つけることになるかもしれない。
だが例えそうなったとしても、真実は曲げられないのだ。

「…法廷でね、彼は捏造した証拠品を提出したんだ。それが原因で弁護士を辞めた」
「えっ……」
「そして彼から弁護士バッジを剥奪したのが、ぼくさ」
「!!!」

衝撃の事実を受け入れることが出来ず、春美は俯き、黙り込んでしまう。
まるで時が止まったかのような、長い沈黙のあと。
華奢な手を力一杯に握りしめながら、春美は声を振り絞る。

「…成歩堂くんが証拠品を捏造だなんて、そんなの嘘ですっ!」
「信じる、信じないはキミの自由さ。でもキミは知りたがった、だからぼくは真実を伝えた」
「で、でもっ!!」
「真実を追求するということは、同時に真実を受け入れる覚悟をするということだよ」
響也にピシャリと指摘され、春美はしゅんとなる。
「…そうですね、申し訳ありません。わたくし、動揺してしまいました」

響也は必要以上のことを春美に語ろうとはしなかった。
「真実は自分の力で追求するからこそ意味がある」というのが信念にあるからだ。

「真実の先には、更なる真実が隠れているものさ。
 納得がいくまで追究することをオススメするよ…自分自身の目と、耳でね」

どこか含みのある言い方だった。
春美はこくんと頷くと、「有り難うございました」と丁寧にお辞儀をする。

371:響也×春美2-5
07/09/06 04:58:58 tmCuFo3j
「それじゃあ、次にキミの家出についてだけど」
話はこれで全て終わったと思っていた矢先に、春美は不意をつかれた。
えっ、と驚く様子の春美などお構いなしに、響也は喋り続ける。

「言っただろ?仕事柄、家出少女を放っておくワケにはいかないって」
「み、見逃してください…」
「ダメだよ」
「うううっ…」
表向きは爽やかな笑顔でも、譲れないことに対して容赦はしないのが響也だ。
春美の願いもアッサリと払いのける。

「家出して成歩堂のところへ行こうとしたものの、予想だにしない展開になっていて行きづらくなった。
 しかも自分の信頼する人物から成歩堂に関する話を一切されなかったことがショックで、余計にね。
 今の気持ちは、そんなところじゃないかい?」
「!!」

探偵のように春美の心情を推理していく響也。
そしてそれは、恐ろしいほど的確に当たっていた。

「なんで分かるんですかっ?」
「長年培ってきた、カンってやつかな。
 で、キミは行く場所がなくなってしまったワケだ。でも家には帰りづらいし、帰りたくない」
「…心が読まれているようで、恐いです」

流石と言うべきか、響也の推理は的を外さない。
けれど彼にとって大事なのはそんなことよりも、家出少女の対処だった。

「聞いた感じだと、家庭内暴力などの問題はないようだね。
 今日は警察に泊まって、明日にでも帰れるようにぼくが手続きをとっておくよ。
 捜索願が出されてるかもしれないけど、そっちも処理はしておく。
 今からぼくが警察まで送っていくからー…」
「お願いしますっ、わたくしを検事さんのお家に置いてくださいっ!!!」

缶コーヒーを口に運ぼうとした響也の手が一瞬止まる。
春美の申し出は予想の範疇にあったが、受け入れるわけにはいかない。

「随分と無理を言ってくれるね」
「無理を言っているのは承知の上です。でも長居はしませんし、迷惑もかけませんから…!」
「いま家に連れ戻されるのだけは回避したい、って?」
「はい」

どうかお願いします、と春美は深々と頭を下げる。
軽い気持ちで言っているのではないことは響也にも分かった。
だがしかし、自分にも立場というものがある。

372:響也×春美2-6
07/09/06 04:59:29 tmCuFo3j
「キミをかくまうのは立場上、色々とマズいんだよ」
「お願いしますっ、お願いしますっっ」

いくら言っても、春美は食い下がってくる。
どうしてそこまで必死になるのだろうかと不思議に思いながら、響也は缶コーヒーを口に含んだ。

「お金はあまりないですけど…。足りない分はわたくしの体でお支払いしますからっ!」
「ぶはッ!!」
イケメン台無しのごとく、響也は盛大にコーヒーを吹いた。

「なにを言って…」
「掃除に洗濯にお料理、なんでもいたしますっ!」
「…あ、ああ。なんだそういうことか、ぼくはつい…」
「え?」
「いや、なんでもないよ…」

うっかり変な妄想をするところであった。
気を取りなおし、響也は春美に尋ねる。

「ねえ、どうしてそこまで家に帰りたくないんだい?」
「…検事さんが仰っていた、真実の追求をしたいのです。
 成歩堂くんのことも、真宵さまのことも…知るのが恐い部分も正直ありますけど…
 それでも「真実の先に隠された真実」を、自分自身の目と耳で知りたいと思ってます」
「…なるほどね」

どうやら、先ほどの自分のアドバイスが起動力となったらしい。
春美が向けてくる真剣な眼差しは、真実を追究する者の目だった。
響也は、そういう目が好きだ。
真実を知るために、響也は検事になった。弁護士と検事の勝敗よりも、常に真実の追求をしてきた。
それ故に、春美の言い分も痛いほど分かるのだ。

響也は少し考えたのち、1つの決断を出した。
「わかった、とりあえず今日はぼくの家に泊まっていっていい。今日は警察にも引き渡さない。
 だけど、ぼくにも1日だけ考えさせてくれ。キミを家に置くかどうかは、また明日返事するよ」
その言葉に、春美はパアッと顔を明るくさせる。
「本当ですかっ、有り難うございますっ!!」

やれやれ、とんだ拾いものをしたもんだ…と響也は思ったが、満面の笑みで喜ぶ春美の姿を見ると拒絶できなくなる。
「今日、成歩堂のところへ行くのかい?」
「…いや、その…今はまだ心の準備が…」
「そう言うと思ったよ。じゃあ部屋に案内するから、着いておいで」

ひょい、と春美の荷物を持ち上げ、響也はエレベーターへ向かって歩き出す。
「あっ、はいっ」
スタスタと歩いていく響也の後ろを、春美は急いで追っていった。

373:名無しさん@ピンキー
07/09/06 05:01:15 tmCuFo3j
【つづく】
↑すみません、最後につけ忘れました。

一人でスレ消費してしまってごめんなさい、また書き溜めたら投下させて頂きます。

374:名無しさん@ピンキー
07/09/06 06:57:33 AxQTY+5j
冥タン切ないよ冥タン

375:響也×春美
07/09/06 06:58:29 kydKtt6m
それを陰から見ていた一人の男がいた。
金髪ドリルに眼鏡…牙琉響也の兄、霧人だ。
本来なら独房にいるはずの彼は、とあるコネを使って一時的に娑婆に出てきていたのである。

「フン…響也のくせに少女を家に連れ込むとは生意気ですよ。
今に見ていなさい……お前を後悔させてやりますからね…」

不気味に笑う霧人の手には悪魔が浮かんでいた。
そして翌日、新聞には響也の一面記事がトップに躍り出ることとなる。


『ガリューウエーブのガリュー、未成年の女子を家に連れ込んで猥褻な行為に及ぶ!』

376:373
07/09/06 07:29:55 tmCuFo3j
>>375
ちょ、吹いたwwwww
しかし書いてる立場からすると…orz orz orz

377:名無しさん@ピンキー
07/09/06 07:34:10 meWXU4Lk
>>366
とりあえず過度の謙遜・言い訳や全レス返しは嫌われるから止めた方がいい

378:名無しさん@ピンキー
07/09/06 09:44:04 xUFio8Gu
>>375
GJ!!
続きかと思って普通に読んだ。
もうこれが完結編でいいじゃんwwww

379:名無しさん@ピンキー
07/09/06 14:13:39 1grVNZbJ
>>375
一瞬本当に続きなのかと思って吹いたけど、別人が書いたんか。
作者本人の了承も無しに、まだ完結していない作品に勝手に書き加えるのはどうかと思うが。
>>378もせっかく投下してくれている>>366に失礼だよ。

>>366
響也×春美って、ここではまだ誰も挑んでないカプだよね。
どうエロに発展していくのか楽しみなんで頑張って!
でも続き投下するときは完結させてから投下したほうがいいかも。

380:名無しさん@ピンキー
07/09/06 14:29:48 dZkAfWKA
ハゲドー!
作者にどれだけ失礼なことしてるんか考えられねえボケなんだろ
俺が作者だったら二度と投下しないし、二度とスレ見なくなるわ


>響也×晴美作者
グッジョブ
これからどうなるのか楽しみです
頑張ってください!
勝手に完結つくるボケや、謙遜すんなとかごちゃごちゃうるさい注意厨はほっとけ!俺が許す


381:名無しさん@ピンキー
07/09/06 14:31:45 dZkAfWKA
そもそも全レス禁止なんつールールないわけで

響也×晴美が嫌いな腐が荒らしてんだろがな、どうせ

382:名無しさん@ピンキー
07/09/06 14:56:23 h5L1XY7B
>>373
GJ!
心無い人はスルーして続きお願いします

383:名無しさん@ピンキー
07/09/06 16:40:21 dZkAfWKA
響也×晴美作者がんばれ!
陰湿な嫌がらせにめげずに是非続きを。

あと荒らしと注意厨は消えろ

384:名無しさん@ピンキー
07/09/06 16:45:58 vYwXq2gm
18歳未満はお帰りください

385:名無しさん@ピンキー
07/09/06 16:46:01 I0qEoJT/
>>373
GJ!でもちょっと気になったんだけど、綾里は師範代じゃなくて家元じゃない?
春美のほうが師範代に向いてるってその上の師範は向いてないのかよ、みたいなw

>>381
なんでもかんでも腐のせいにするのはちょっとね…

386:名無しさん@ピンキー
07/09/06 20:47:49 AxQTY+5j
いろんな意味でいろいろ湧いてるな

387:名無しさん@ピンキー
07/09/07 00:29:14 Kd58mEB6
喫茶店の続きマダー?

388:名無しさん@ピンキー
07/09/07 08:05:22 1YscK+jN
ID:dZkAfWKA

言いたいことはいろいろあるけど一つだけ。
綾里のはみたんは「晴美」じゃなくて「春美」だ。

389:名無しさん@ピンキー
07/09/07 22:03:47 Thap5jfE
投下するならさっさと終わりまで投下した方がいい。
他の職人が遠慮するかもしれない

390:名無しさん@ピンキー
07/09/08 07:15:11 gwqgc4V5
まあでもハミノコもそんな感じだったしいいんじゃないか?

391:名無しさん@ピンキー
07/09/08 11:05:43 ut4Kdb/E
そして未完の道をたどるのか…

392:名無しさん@ピンキー
07/09/08 12:19:00 otk4IJhi
ハミノコにしろ響也春美にしろ喫茶店にしろ、完結まで読みたいもんだ・・・
保管庫をwktkで読んでて未完だったときのorz・・・

393:名無しさん@ピンキー
07/09/08 15:27:42 9X7vlbwP
連作もので完結したのって最近じゃオドミヌしかないしな。

394:名無しさん@ピンキー
07/09/08 19:36:27 GLbLLTIa
リロベンの完結まだー?

395:名無しさん@ピンキー
07/09/09 14:59:54 e5ty6AX4
響也×春美、続き投下させていただきます。今回で完結です。
ぶつ切り投下になってしまって申し訳ありませんでした。

それと訂正です。前回「師範代」と書いたのは「家元」の間違いです…。
ご指摘下さった方、どうも有り難うございました。

396:響也×春美3-1
07/09/09 15:00:44 e5ty6AX4
響也は高級マンションの高層階に住んでいる。
モデルルームのような部屋は、春美にとって未知の世界であった。

だだっ広いリビングの窓の外には、都内を一望できる景色が広がっている。
壁にディスプレイされた響也愛蔵のギターコレクションたちを見て、春美は目を輝かせた。
「すごいだろ?ぼくの可愛い恋人たちなんだよ」と自慢げに言う響也に、
春美は「音楽業とは、楽器屋さんのことだったのですね!」と、素でボケをかます。
世間知らずもここまでくると、響也は笑うしかない。

響也の住むマンションは、一人で暮らすには広すぎる物件だった。
そのため部屋は幾つか余っており、ゲストルームという名目になって放置されている。
春美が案内された部屋も、余ってる部屋とは到底信じられないほどに綺麗で広い部屋だ。
「ちゃんと鍵はかけられるから安心しなよ」
「あの、有り難うございます…。無理を聞き入れて下さって、わたくしなんてお礼を言えばいいのか」
春美は今さらモジモジと恐縮している。
あれだけ食い下がった割には謙虚な一面もあるんだな、と思いながら響也は春美に鍵を渡す。

「ぼくは今から職場に戻らなくちゃいけないんだ。何か困ったことがあったら、ここへ電話しておいで」
電話の横に置かれたメモに自身の携帯ナンバーを書き、響也は家を出ていく。
その後ろ姿を見送った春美は、1人になった途端に脱力してその場へとへたり込んでしまった。

勢いでここまできたものの、不安は拭いきれない。
今日は置いてもらえることになったが、明日は帰されてしまうかもしれないのだ。
もしそうなったとしても、その前に成歩堂に会わなければいけない…。

よしっ!、と意気込んで勢いよく立ち上がる。
とりあえず置いてもらったお礼に家事でもしようと辺りを見回すが、掃除も洗濯も必要なさそうなほど
綺麗に整頓されていたし、炊事しようにも冷蔵庫の中には酒か水かつまみしか入っていなかった。

「お仕事、なにもなさそうです…」
タダで居座るのは、なんだか気が引けた。
何か仕事はないかとリビングをうろうろすると、ローテーブルの上に散乱した雑誌や本、書類や楽譜を発見する。
大した仕事ではなさそうだが、せめてそれらを片付けようと春美はテキパキとまとめ始めたのだった。

「これは…?」
その最中、雑誌や楽譜の下から開きっぱなしのファイルが顔をのぞかせていることに気づく。
どうやら新聞や雑誌のスクラップファイルらしい。
普段だったら気にも留めないものだが、春美はどうしてもスクラップされている記事が気になってしまった。
なぜならば、その記事はビリビリに破いたあとにセロハンテープで丁寧に繋ぎ合わせてあったからだ。
いけないと思いつつ、好奇心が勝って記事を読んでしまう。

「ーー!!」
衝撃の文字が春美の目に飛び込んできた。
見出しに書かれていたのは、『有名弁護士、七年越しの殺人計画!!~衝撃の事実』の文字。
それだけで既に嫌な予感はした。しかし、目が離せない。
春美は夢中になって記事を読みあさった。
記事に出てくる「牙琉霧人」の名前は、響也の親族であることは春美にも容易に想像できる。

内容は、牙琉霧人の企てによる殺人事件に焦点を当てた記事。
それ以外の人物…つまり、成歩堂や響也のことについては詳しく触れられていなかった。

ファイルをパラパラと捲ると、過去の牙琉霧人の栄光を讃えた記事らがスクラップされている。
しかし何枚かはやはりビリビリに破かれ、テープで補修されているのだった。

響也にとって、ここは他人に踏み込まれたくない領域だったかもしれない。
本人の知らない所で勝手にその領域へ踏み込んでしまったことを悔やみながら、春美はファイルを閉じたーーー。

397:響也×春美3-2
07/09/09 15:02:39 e5ty6AX4
一方、そのころ。
検察庁へと戻ってきた響也は、午前に行った現場捜査の報告書を早々にまとめ終え、資料室へと足を運んでいた。
過去の事件の資料を引っ張りだし、読みふける。

2019年、2月7日の「童話作家殺人事件」…ーー綾里の血をめぐった事件である。
記憶にぼんやりと残っていた程度で、響也は内容を詳しくは把握していなかった。

ファイルしてあった「美柳ちなみ」と「葉桜院あやめ」の写真を見て、響也は「ああ、これだったか」と呟いた。
初めて春美を見た時に、どこかで見覚えがある顔だと思ったのだ。
そっくりではないにしろ、半分血が繋がっているせいかどことなく雰囲気が似ている。
どちらにせよ、春美が整った顔立ちをしていることに間違いはない。
だが、事件の内容はそれに反比例して醜いものだった。
資料をめくるたびに、響也は胸くそが悪くなりそうになる。

自身のプライドの為なら、人を殺めることさえも厭わない。
そのためなら、身内だろうがなんだろうが手段遂行のための道具にすぎないのだ。
全くもって下らないプライドだーーー。

響也の頭の中に、実兄である牙琉霧人が浮かび上がる。
彼もまた自身のプライドのために身内を利用し、挙げ句に身を滅ぼした愚かな1人であった。
「クソっ…!」
ダン!!、と拳で壁を思い切り殴りつける。
「ぼくも所詮、あの子と変わらないってことか…。ははっ…」
薄暗い資料室に、響也の乾いた笑い声が吸い込まれるように消えていったー…。

 +++++++++++++++++++++++

その日響也は、いつもより早めに帰宅した。
リビングの灯りをつけると、響也お気に入りの広いソファでスヤスヤと気持ち良さそうに寝ている春美の姿が目に入る。
なんとも可愛らしい寝顔だ。

「あ…っ、おかえりなさいませ…」
響也の気配に気づいたのか、春美は眠気眼でのそのそと起き上がる。
「ごめん、起こしちゃった?」
「いえ、そんな…。はしたない格好で申し訳ありません」
「あのさ、キミを置いておくかどうか明日返事するって言ったけど…、今すぐするよ」

突然の展開に、春美は体をビクっとさせた。
そして不安げに、響也の顔を見上げる。心の準備なんて微塵も出来ていなかった。
「最初はやっぱり、キミを置いとくのはよくないかなと思ってたんだ。
 でも気が変わった、学校が始まるまでの間ならここにいてくれて構わない」
「えっ……、本当…です…か?」
「本当だよ、嘘じゃない」
はっきりと響也が言い切ると、春美はこれ以上ないほどの笑顔を作る。
「あ、あ、有り難うございますっ!」
「ただし、条件つきだ」

響也が提示した条件は以下の3つだった。
【家にすぐ連絡を入れ、滞在中も定期的に家に連絡をすること】
【親族以外には、牙琉響也の家にいることを内密にすること】
【もし万が一何かあった場合、すぐに家に帰ること】

春美はこれらの条件を快諾するも、響也の心変わりの理由がどうしても分からない。
それを尋ねてみたところ、「さあね、ぼくは気まぐれだから」とだけしか返ってこなかった。
響也の真意は計りかねないが、何はともあれ追い返されないことに春美は心の底から安堵する。

「あ、そうだ。もう1つ条件を言い忘れてた」
思い出したように響也が言う。
「プライベート空間で「検事さん」って呼ぶのは禁止だからね」

398:響也×春美3-3
07/09/09 15:03:57 e5ty6AX4
春美が響也の家に世話になって、早数日が過ぎた。

早く成歩堂の所へ行かなければと思いつつ、どうしてもあと1歩で春美は踏みとどまってしまう。
ただでさえ色々と抱えているのに、響也のスクラップファイルの記事の内容まで引っ掛かって仕方ない。
自業自得とはいえ、それらが枷となって春美の決断を鈍らせていた。

響也は響也で「別に焦らなくても、決心がついたら行けばいいさ」と悠長な意見である。
ついついその意見に流されそうになるが、いつまでも躊躇している訳にはいかない。

「わたくし、本日…成歩堂くんを訪問しようと思います」
とある日の朝、春美は職場へと向かう響也を玄関で見送りながら告げた。

「そう、やっと決心ついたのかい。場所はこの前、地図を渡したから分かるよね?」
「はい。夕方には戻ります」
「…気をつけていっておいで」
ぽんぽん、と春美の頭を優しく撫でる。
「子供扱いしないでくださいっ」と恥ずかし半分で怒る春美を横目に、響也は笑いながら家を出た。

検察庁への道のりの間、響也はずっと頭の中で考え事をしていた。
春美は今日、成歩堂に会って全てを知ることになる。
証拠品の捏造疑惑は自分の兄が謀ったこと、そして知らなかったとはいえ自身も加担していたこと。
それを知ったら彼女はきっと、自分を侮蔑するだろう。

苦い記憶は見えない鎖となって、今でも響也に絡みついて離れなかった。

 +++++++++++++++++++++++

夏の日差しがジリジリと照りつける中、春美は響也に書いてもらった地図を頼りに成歩堂芸能事務所へと足を運んだ。
分りやすく丁寧に書かれた地図のおかげで、迷うことなく目的地に辿り着くことができたものの。

「うーーーーん…」
「成歩堂芸能事務所」と書かれた看板の前で、春美はかれこれ10分以上も悩み続けている。
この扉の向こう側に成歩堂がいるのは、分かっているのに。
「ここまで来たら、もう行くしかありませんっ!」
自分に言い聞かせるように意気込んだのち、春美がドアノブに手をかけようとしたその時ーーー。

「うちになにか用ですか?」
「ひゃあぁぁっ!」

いつの間に背後にいたのか、突然声をかけらた春美は思わず素っ頓狂な声をあげる。
振り返るとそこに立っていたのは、無精ヒゲを生やし、サンダル履きという気の抜けた格好の男。
姿、格好は随分と変わったが、春美は彼が成歩堂だと直感で分かった。
「な、成歩堂くん…」
「あれ? …もしかして、春美ちゃん?」

数年ぶりの再会はお互いにとって、随分と衝撃的なものになった。
スーツを脱ぎ捨て、目もなんだか半目でやさぐれた印象の成歩堂は春美を驚かせ、
かたや身長も随分と伸び、幼女から女性へと美しく成長した春美の姿は成歩堂を驚かせた。

成歩堂に案内されて入った事務所の中も、7年の時を経て随分と様変わりしている。
あちらこちらに所狭しと並べられた手品用具を不思議そうに見つめる春美の前に、成歩堂がお茶を置く。
「最初、誰だか分からなかったよ」
「成歩堂くんも…随分と変わられましたね」
「はは、色々とあったからね」
そう言って笑う顔は、昔と同じままだなと春美は思った。
「真宵ちゃんから連絡があって、近々来るかなとは思ってたけど」
「ま、真宵さまから連絡があったのですか!?」
響也と約束した通り、春美はすぐに家のものへ連絡は入れている。
だが真宵本人にはまだ連絡をしていないのだ。

399:響也×春美3-4
07/09/09 15:04:53 e5ty6AX4
「真宵ちゃん、『はみちゃんが不良になった』って大慌てしていたな。
 すぐに分家に連絡があって少しは安心したようだけど…」
「…真宵さま、わたくしのこと気にかけて下さってるんでしょうか」
「そりゃもちろん、そうだろ。真宵ちゃんはいつだって、春美ちゃんのこと大事にしてるじゃないか」
「でも、わたくし聞いてしまったのです!!」
「なにを?」
「………実は…」

春美は向かいのソファに座る成歩堂に、洗いざらい話した。
里を飛び出した理由と、ある人物から成歩堂が弁護士を辞職した事実を聞いたこと。
春美の話に成歩堂は、なるほどね、と納得してポリポリと頭を掻く。

「真宵ちゃんの発言の真意は、真宵ちゃん自身から聞くべきだとして。
 ぼくに7年前なにがあったのかは、今からちゃんと説明するよ」
成歩堂はズズッとお茶を啜ったあと、ゆっくりと語り始めたーーー。

 +++++++++++++++++++++++

成歩堂の話を全て聞き終わったのは、既に日が傾き始めた頃だった。

「…ということで、理解してくれたかな?」
春美は俯いたまま、こくんと頷く。
捏造疑惑の真相も、娘のことも、牙琉霧人の7年越しの計画も、そして響也と事件の関わりも全てが消化された。
緊張が一気に緩んだせいか、春美は思わず涙ぐんでしまっていた。

「なっ、成歩堂くんがっ…ぐすっ…
 ね…捏造するなんてっ…絶対にっ…嘘だとっ…わたくし信じてましたっ…ぐすっ」
「信じてくれて有り難う、嬉しいよ」
成歩堂は優しく笑いながら、春美にティッシュの箱を差し出す。
春美はそれを何枚か取ると、成歩堂に見られないようにぐちゃぐちゃの顔を拭きながら言う。
「わたくし…、真宵さまに連絡しなくては…」
「ああ、そうしたほうがいい。真宵ちゃん心配してたから連絡してあげなよ」
「いえ、それだけではありません。ちゃんと自分の耳で、真宵さまからあの言葉の意味を聞こうと思います」

成歩堂は、先ほどとは違った意味で春美の成長に驚かされた。
7年と言う月日は、外見だけではなく中身も随分と成長させるのだなと感心しながら、成歩堂は受話器を春美に渡す。
春美は受話器を受け取ると、本家へ繋がる電話番号をゆっくりとプッシュした。

 +++++++++++++++++++++++

すっかり日も落ちた夏の夜。
体にまとわりつく湿った空気は響也を苛立たせる。
だがその苛立ちの理由は、決してそのせいだけではなかった。

表面にそれを出さないよう気をつけて帰宅すると、キッチンから鼻歌が聞こえてくる。
覗いてみれば、そこには嬉しそうに料理をする春美の姿があった。
「随分とご機嫌のようだね」
「おかえりなさいませっ。ご飯まだですよね?」
「ん、ああ…」
「では、すぐにご用意いたしますねっ」
花柄のワンピースに白いエプロン姿の春美は、再び鼻歌を歌いながら作業に取りかかる。

「すごいな、今夜はパーティーかい」
目の前に並べられたご馳走の数々は、春美の上機嫌の象徴のようだった。
「はいっ、お祝いです」
「なんのお祝いか、ぼくにも教えてくれよ」
「ふふふ、実はですね…」

春美は嬉しそうに、今日の出来事を話し始めた。

400:響也×春美3-5
07/09/09 15:05:39 e5ty6AX4
今から数時間前、春美は真宵と電話越しに話をした。
『はみちゃんっ、わたし心配したんだよっ!どうして家出なんてしちゃったのっっ!?』
開口一番にそう大声で叫ぶ真宵の声は、受話器越しに成歩堂にも聞こえるほどだった。
春美はまず心配をかけたことを詫びると、ずっと恐れていた真宵の発言についての話題に触れた。

『…そっか、はみちゃんあの時のわたしの会話聞いてたんだ』

「わたくし、真宵さまのお気持ちに気づかないでいたことがお恥ずかしいです…」

『ちょ、ちょっとはみちゃん!それは誤解だよっ!』

「え…?」

『あのね、よぉぉぉーーーーく聞いてね。
 …実はわたし、ずっと綾里の本家と分家の問題について、なんとか出来ないかなって考えてたんだ。
 あまり家元とか分家とかに捕われすぎないで、協力しあって倉院流を持続していきたいって。
 そうすぐ簡単にはやっぱ難しいみたいだけど、なるほどくんにも相談しながら頑張ってたんだよ』

「!! わたくし、全然知りませんでした…」

『だって内緒にしてたんだもん!
 その計画が軌道に乗るまで、はみちゃんには言わないでおくつもりだったんだ。
 近寄らせたくない、っていうのもそういうことだよ。
 だってもし失敗しちゃったら、はみちゃんまで巻き込んじゃうと思って…黙っててゴメンね』

「真宵さま…ありがとうございますっ…。私てっきり、邪魔だったのかと勝手に…」

『もうっ、大好きなはみちゃんを邪魔だなんて思うワケないじゃんっ!』

「はいっ…わたくしも真宵さまが大好きですっ!」

『でねっ、なるほどくんもまた司法試験受けようかなって考えてるみたいでね!
 一緒に頑張ろうって言ってて、目的を達成したらはみちゃんに報告しようかなって思ってたの。
 はみちゃんにはバレちゃったけど、応援してくれるかな?』

「もちろんですともっ!わたくし…心からお2人を応援しておりますっ!!」

ぼろぼろと嬉し涙をこぼしながら、春美は受話器の向こうにいる真宵へと笑いかける。
成歩堂はその様子を見守りつつ、「司法試験、頑張らないとなあ」と呟くのだった。

 +++++++++++++++++++++++

春美から真宵とのやりとりの内容を聞いても、響也は大して驚きはしなかった。
正直、それは響也にとって想定内であったからだ。
想定外なのは、成歩堂を陥れることに加担してしまった自分の前で春美が笑っていることだった。

食事が終わるまで、春美は結局そのことについては触れようとしなかった。
それが余計に響也を苛つかせるが、春美はそれに気づくことないままリビングを後にするーーー。

401:響也×春美3-6
07/09/09 15:06:17 e5ty6AX4
風呂から上がった春美は、リビングのソファに仰向けで転がる響也の姿を見て驚いた。
ローテーブルの上には、酒の瓶や缶が散乱している。
食後から短時間でこれだけの量を飲んだなんて、信じられなかった。

「牙琉さん、大丈夫ですかっ!?」
「ん……」
春美の呼びかけに僅かに反応するが、身じろぎひとつしない。
「しっかりしてください!!」
慌てて春美は響也の頬をペチペチと軽く叩くが、いきなり響也に手首を掴まれてしまう。
「きゃっ!?」
「心配しなくても大丈夫だよ、このくらいで潰れたりしないさ…」
「で、でも飲みすぎです…」
「それよりもさ、成歩堂から全部聞いたんだろ?」
ゆっくりと閉じていた目を開け、響也は喋る。春美の手首を離そうとはしない。
「は、はい。娘さまのこととか、捏造は成歩堂くんがわざとしたことではないって…」
「ぼくが言いたいのはそれじゃないッ!」
「…つっ!」
急に声を荒げた響也は、春美の手首を強く握った。

「ぼくは、アニキの用意した捏造品の情報で成歩堂から弁護士バッジを奪ったんだ。
 知らなかったとはいえ、キミからしたらぼくだってアニキと同罪だろ?」
「そんなこと…」
「そんなことないって? …分からないな、キミだってぼくと同じ気持ちだったんじゃないのかい?」
響也は上半身を起こし、春美の手首をぐいと自分の方へ引っ張った。
バランスを崩した春美は響也に倒れかかりそうになるが、寸でのところで堪える。
目の前に迫る響也の鋭い視線に、春美は思わず吸い込まれそうになってしまう。
 
「キミは信頼していた母親に利用されて、大好きな従姉妹をその手で殺すところだった。
 知らなかったとはいえ、今でもそのことを負い目に感じている。たとえ周りが許しても、自分も同罪だって…」
「やめてください…っ!!」
響也の指摘に耐えきれず、春美は思わず顔をそらした。
小さく体を震わせているのが、掴んだ春美の手首から響也にも伝わる。
「…ごめん、ひどいこと言ってしまったね」
響也は掴んだままだった手首を離すと、深く項垂れた。

「本当はずっと尊敬してたよ、優秀なアニキを。だからこそ、余計に信じたくなかったんだ」
「牙琉さん…」
「ぼくは心のどこかで、まだ真実を認めたくないのかもしれない。…検事のくせにさ」
今まで決して誰にも見せなかった心の内を、会って間もない少女にどうして話してしまうのだろう?
自分と少女を重ね合わせているなんて、バカらしい。
ははっ、と響也は軽く笑う。

「牙琉さんはちゃんと認めようとしていらっしゃるではないですかっ!!」
春美はスクラップブックを手に取り、響也の前へ突き出した。
「これ…、見たのかい」
「申し訳ありません。
 でも、お兄様の記事を破り捨てずに保存しているのは、受け入れようとしてることではないのですか?
 尊敬していた頃のお兄様のことも、犯罪に手を染めたお兄様のことも、すべて」
「…………ッ」

春美の指摘に、思わず言葉が詰まってしまう。
そんな響也の頭を、春美はいきなり自分の胸元に抱きかかえた。
響也は一瞬、何が起こったのか分からなかった。

402:響也×春美3-7
07/09/09 15:07:35 e5ty6AX4
「辛いときは、泣いていいですっ」
「えっ?」
「よく真宵さまが昔、わたくしにこうしてくださいました」
子供をあやすかのような扱いをされて思わず響也は苦笑するが、何故か不思議と心地がよい。
「わたくしだって、お母さまのしたことは許せませんけれど…。
 それでも大好きなお母さまに変わりはないですし、真宵さまがわたくしを必要としてくださるのなら、
 くよくよせずに頑張ろうって心に誓いました。だから…」
「…だから?」
「その、上手く言えませんが…。
 牙琉さんも、わたくしと一緒に頑張って乗り越えましょうっっ!!!」

春美の精一杯の励ましに、思わず響也は笑った。
ただの世間知らずの家出少女だとばかり思っていたのに、その辺の大人よりもよほど強い心を持っている。
現実から目を背けようとしていた自分のほうが、まるで子供のようだ。

「ははっ、まいったな」
響也は春美の体を引き剥がすと、今度は逆に春美の体を自分の胸元へ引き寄せて強く抱きしめた。
言いようのない感情がどんどんと溢れてくる。
「牙琉さん…?」
「ありがとう、キミのおかげで救われた気がするよ」
「い、いえ、そんな…。それより…恥ずかしいので、そろそろ離していただけませんか…」
響也に抱きしめられた春美は、動揺してジタバタともがいた。
この辺はやはり女子高生なんだな、と響也は笑った。

「ダメだよ、逃がさない」
そう言うなり、響也は春美をソファへと押し倒す。
何が起きたのか分からない春美は,響也の肩ごしに見える天井で状況を把握した。
「な、な、なにを…?」
「なにって、ぼくの口から言わせる気かい?」
両手を押さえつけられた春美は,抵抗する術もなく響也を見つめるばかりである。
不安そうな顔で自分を見上げてくる春美を、可愛いな、と素直に思う。
「ねえ、キスしていい?」
春美は一瞬、その言葉の意味を理解出来なかった。
そして遅れて、顔を真っ赤に染め上げながら軽くパニックを起こす。
「えっ、あのっ…そのっ…」
「ダメって言わないってことは、いいってことかな」
「あっ、ダ……っ…」
ダメです、と春美が言うより早く,響也は春美に口づけた。
初めての経験だった春美は,ぎゅっと固く口を閉ざしながらそれを受けていたが、
丁寧に何度も繰り返す響也の口づけに少しずつ解きほぐされ、呑まれていく。
そして口づけはいつしか深いものへと変わり、春美は響也の動きについていくのに必死だった。

響也の手が,春美のワンピースの裾を捲し上げた。
露になった白い太ももをなぞりあげると、春美は全身を大きく震わせる。
「やっ…いやっ……」
驚いた春美は、いつの間にか解かれていた両手で響也の胸を押して抵抗する。

403:響也×春美3-8
07/09/09 15:08:25 e5ty6AX4
響也はハッとして手を止めると、春美の上から退いた。
最初は軽い冗談のつもりだったのに、途中からブレーキが利かなくなってしまった。
遊びではなく、純粋に彼女を欲しいと思ったのだ。
「悪かったね」
響也はそれ以外にかける言葉が見つからなかった。
春美はなにも言わず、ただずっと黙っているばかりであった。

「…もしお寂しいのでしたら、わたくし添い寝いたしましょうか」
少しの沈黙のあと、春美が言う。
罵倒されるかと思っていた響也は、春美の言葉に面食らった。冗談かと思いきや、その表情は真面目である。
同情されているのだろうか?と響也は思ったが、たまにはそれもいいかもしれない。

「それって誘ってるのかい?」
「………………」
響也がわざと悪戯っぽく尋ねてみても、春美はYESともNOとも答えなかった。
「さっきも言ったけど、ダメって言わないことは、いいってことだと捉えるよ?」
「………はい」

一体、どういう心変わりなのか響也には分からない。
だが自分の気持ちを優先するのならば、答えは1つ。

「こっちへおいで」
響也に手を引かれ、春美は響也の寝室へと足を踏み入れたーー。

響也の寝室は、キングサイズのベッドにサイドボード、ルームランプとウォーターサーバーだけと、
いたってシンプルなものであった。
目立って設置されているキングサイズのベッドは、1人で寝るには広すぎる。
どうしてこんな広いベッドに1人で寝るのか理解出来ない春美は、ベッドの真ん中で小さく体育座りをしていた。

添い寝をすると言ったのは、昔よく悲しい時に真宵がやってくれたことだからだ。
もちろん響也にした提案が、真宵とは違った意味合いになることは春美も理解している。
口には出さなかったが、響也に「キミだってぼくと同じ気持ちだった」と言われた時、それを否定出来なかった。
自分と同じ隙間を抱えた彼を放っておけないと思ったのは、エゴなのだろうか。

ガチャリ、と寝室のドアが開き、シャワーを浴び終えた響也が入ってくる。
春美は上半身裸の響也を直視できずに、慌てて顔をそむけた。

「緊張してるの?」
ギシ、とスプリングを軋ませてベッドに乗り上げ、春美の顔を覗き込む。
「…いえ、大丈夫…です」
震えた声は、明らかに大丈夫ではない様子だ。
「無理はよくないよ」
そう言って優しく春美の頭を撫でる。
響也自身も無理強いなんてしたくはなかった。

404:響也×春美3-9
07/09/09 15:09:08 e5ty6AX4
「大丈夫ですから…」
目を逸らしながらではあるが、春美はハッキリとそう伝える。
「途中でやめる自信は、ないよ?」
「……………」

春美の沈黙を肯定と受け取った響也は、ゆっくりと春美に口づける。
「んっ…」
ぎこちなく春美はそれに答えるが、体はやはりガチガチだ。
キスをしながら、響也は春美の背中をあやすように撫でた。
体の力が少し抜けたところを見計らって、背中についているワンピースのボタンを1つずつ丁寧に外していく。
ワンピースを脱がせると、白い下着を身につけた春美の体が露出する。
「あまり見ないでください…っ」
恥ずかしそうに手で体を隠す仕草が初々しい。

「どうして?可愛いよ」
褒め言葉なのに、春美にとっては辱められている気分だ。
響也は春美の背中を後ろへ倒し、次にブラジャーを上にずらした。
発育途上の春美の胸は控えめな大きさであったが、捲し上げられたブラジャーのワイヤーに押されて
その存在を主張している。
薄桃色の可愛らしい乳頭はツンと立ち、響也を誘っているかのようだった。
「いい眺めだね」
組み敷いた春美を上から見下ろしながら、目を細めて笑う。
そして可愛らしいその果実を口に含むと、舌の上で味わうように転がしてみせた。
今まで感じたことのない感覚が、春美の全身を駆け抜ける。
「や、やあっ…。んんっ…」
恥ずかしさのあまり春美は退かそうと響也の頭に手をかけるが、髪を掴むだけで力が全く入らない。
それどころか、愛撫はますます激しさを増していく。

声を必死で堪えて耐える春美の耳元で、響也が囁いた。
「好きなだけ声、出していいよ。聞かせてよ、ぼくだけに」
「ーーあッ!!」
いつの間にか響也の指が春美のパンツの布地をずらし、秘部へと触れた。
「ああ、あっ…やめ…っ」
「濡れてるね」
「………!」
指摘通り、春美の秘部は既に湿っていた。
響也がゆっくりと中指を差し込んでいけば、キツく締め付けてくる。
「力、抜いて。慣らさないと辛い思いをするから」
余裕なんて微塵もない春美は、響也の言葉なんて頭に入ってこなかった。
響也は半ば強引に指を引き抜くと、再び差し込んだ。
「…やっ…やあああっ!!!」
春美の中に入り込んだ指が、何度も出入りを繰り返して内壁を擦り上げる。
春美の意思に反して、秘部はどんどんと潤いを増していった。
「いやっ…あぁぁっ…ん…っ」
随分と中が濡れてきたことを確認すると、響也は更に人差し指を増やす。
そしてポイントを探すように、指で上側を探っていった。
「やっっっ!!」
ある箇所を擦ったとき、春美の体がビクンと大きく体を震えた。
「見つけた」と、響也はそのポイントを重点的に擦り上げていく。

405:響也×春美3-10
07/09/09 15:09:51 e5ty6AX4
「あっ…やっ…ああぁぁぁあーっっ!!」
まるで悲鳴に近い、春美の声。
感じたことのない刺激にビクビクと体を震わせ、自然と上半身が上へ逃げようとする。
だが腰を響也の手でガッチリと掴まれ、逃げることは叶わなかった。
「やめっ…やめてっ…」
涙目で必死に春美が訴えても、響也の指の動きは止まらない。

おかしくなるーーー。

「もっ…、もう無理で…す…。ごめんな…さい、…やっぱりっ…」
春美は耐えきれず、咄嗟に響也の腕を掴んで動きを制止しようとする。
だが、春美の手は簡単に響也によって振りほどかれてしまう。
「ゴメン、もうダメだよ」
響也の指に、先ほどよりも強い力がこもる。
「言ったよね、途中で止める自信はないって」
「そ…んなっ…、あっ、あああぁぁっっ!」
感じたことのない波が、春美に襲いかかろうとしていた。
「イッていいよ」
「あぁぁ…………っっ!」
まるで響也の言葉が合図かのように、春美は全身をビクビクと小さく痙攣させたのち、クタリと力を抜いて果てた。

響也が指を抜くと、中からトロりと溢れ出てきた蜜がシーツに小さい染みを作った。
幸いなことに、春美は濡れやすい体質らしい。
「そろそろいいかな…」と、響也は春美の両足に手を伸ばした。

絶頂の後、ぼんやりと天井を眺めていた春美は、自分の下肢を這う手の感触に気づいて視線を移す。
そして目の前の光景に、思わず目を見張った。

自分の両足は響也に抱え込まれ、大きく膝を割られている。
その上、少しだけ持ち上げられているせいで腰が浮き、自分の秘部を響也の目の前にさらけ出しているのである。
余りの恥ずかしさに春美はジタバタともがくが、力が入らない為に抵抗にすらならない。

「うっ…いやぁっ…、見ないで…くださ…っ」
「どうして? すごく魅力的だよ」
「やっ…」
響也の視線に耐えられず、春美はきつく目をつむった。
心臓が強く脈を打っているのが自分でも分かるほどに緊張している。

濡れぼそった秘部に、響也は自身をあてがった。
なるべく傷つけないように、ゆっくりと先端を埋めていく。
「…ッ、さすがにキツいか…」
充分に濡れているとはいえ、初めて異性を迎え入れる春美のそこは簡単に侵入を許そうとしない。
緊張のせいで春美が全身に力を入れてしまっているので、尚更であった。

春美の力を抜かせるため、響也はいったん動きを止めて春美に口づける。
「ふ、あっ……」
口内を貪るかのような深い口づけを響也がすれば、春美の意識はそちらに持っていかれる。
春美の体から力が抜けていくのを確認すると、響也は一気に腰を進め、全てを春美の中へと押し込んだ。
「…あぁあっっ!!!」
突き上げられる衝撃に、春美は何もかも分からなくなる。

だが、余裕がないのは春美だけではなかった。
キツく締め付けてくる春美のそこに、響也は思わず持っていかれそうになる。

406:響也×春美3-10
07/09/09 15:10:26 e5ty6AX4
欲しいと思う気持ちが次から次へと湧き出て止まない。
まるで、いくら水を飲んでも乾いた咽が潤わないような感じだった。

シーツを握りしめる春美の手を、響也は自分の背中へと回させた。
「苦しかったら、爪を立ててくれて構わない」
「っ…」
春美が返事をする間もなく、響也は腰を動かし始める。
「あっ、あぁっ、はぁっ…」
「ねぇ、この音…聞こえる?」
響也はわざとらしく春美の耳元で囁いた。
春美の中が掻き回されるたび、くちゅ、くちゅ、とイヤらしい水音が結合部から聞こえてくる。

「あっ、あっ、ああっ…」
羞恥心で春美は泣きそうだった。胸が苦しくていっぱいになる。
けれども体は快楽を得ようと、いつしか貪欲に響也を求めていた。
ベッドのスプリングが軋む音すらも、興奮を掻き立てる。

響也も限界が近かった。
「……くッ」
背中にしがみつく春美の手が背中に爪を立てると同時に、響也は白濁した欲望を吐き出す。
びくん、と大きく震えた響也を感じとった春美は、ゆっくりと瞳を開けた。
涙でぼやけた視界には、切なそうに眉をひそめた響也の姿が映っている。

春美は響也の頬を優しく撫でると、自分からそっと口づけをした。

 +++++++++++++++++++++++

翌日、春美は倉院の里へ帰ると響也に告げた。
それは真宵との誤解が解けた時に、既に春美自身が決めていたことだった。
理由は「少しでも修行をして、早く真宵の役に立ちたいから」である。

「本当に色々とお世話になりました、どうも有り難うございます」
駅の改札口まで送ってもらった春美は、深々と響也に頭をさげて礼を言う。
丁寧に挨拶をする春美の顔は、初めて会った時と違って清々しいものへと変わっていた。
「いや、いいさ。ぼくのほうこそ…いろいろと有り難う」
「突然やってきて、突然帰ってしまうなんて…シンデレラみたいだね」
「す、すみません…」
「謝らないでいいよ。それよりもさ…手、出して」

なんだろう?と不思議に思いながら言われるがままに春美が手を差し出すと、響也は懐から取り出した鍵を乗せた。
ハート型のキーホルダーについた鍵は、春美が借りていたゲストルームのものである。
「これ…!」
「今度は家出じゃなく、ぼくに会いに出ておいで。その時はとびきり熱いギグを聴かせてあげるよ」
「はいっ!わたくし、また会いにきますねっ」
春美は嬉しそうに鍵を握りしめる。

きっと春美はギグの意味も、ハート型のキーホルダーの意味も分かっていないだろう。
「…今はそれでも、まぁいいか」
サングラス越しに小さくなっていく春美の後ろ姿を見送りながら、響也は小さく笑った。

【おわり】

407:名無しさん@ピンキー
07/09/09 15:12:46 e5ty6AX4
>>406は「響也×春美3-11」です、すんません

408:名無しさん@ピンキー
07/09/09 15:17:25 KS5iGCMT
はじめてリアルタイム遭遇した!
響×春の人お疲れ様ー。
物語にボリュームがあってよかった。GJGJ

409:名無しさん@ピンキー
07/09/10 00:25:33 T1NeqzY9
GJ!
お疲れ様です。いやー完結してよかった!
楽しませて頂きました。

410:名無しさん@ピンキー
07/09/10 03:17:42 e7Q1149a
GJ!!
はみちゃんが可愛くって、それでいて凛としていてすごくよかった!
ありえないカプだと思っていたけど、同じ辛さを経験した者同士でお似合いかも。
また話が浮かんだら是非投下をお願いします!
お疲れさまでした!

411:名無しさん@ピンキー
07/09/10 19:28:55 7+HV6luj
成歩堂冥って
成歩同盟みたいだな

まあそれだけなんだが

412:ミツメイ1
07/09/11 07:59:07 IVL63Jc6
指定された時間に、御剣怜侍は姿勢を正して上司の執務室を訪ねた。
中へ通されデスクの前に立つと、上司は不機嫌な顔を上げた。
叱責されるようなことをした覚えはないものの、とっさに覚悟をする。
「御剣検事」
「はっ」
上司は手にしていた万年筆の先を御剣に向けた。
「狩魔検事は、どこかね?」
「・・・は?」
一瞬、意味がわからない。
そういえば、この2、3日は狩魔冥の姿を見ていない。
しかし、多忙を極める職務でそれはよくあることだ。
「狩魔検事が、なにか?」
「昨日から携帯電話が通じないのだ。緊急に必要な資料があるのだが、それが過去に狩魔検事が扱ったものなのでな」
なにかあったのだろうか、と不安になる。
「では、検事局にも出勤していないと?」
「いや、狩魔検事は有給休暇中でな」
「・・・・・・は」
「だが、資料は必要だ。キミが連絡先を知っているなら、保管場所なりパスワードなりを聞き出してもらえないか」
最悪の事態がよぎっただけに、御剣はほっと胸をなでおろした。
「ですが、私は狩魔検事のプライベートまでは把握しているわけでは」
「しかし、キミは保護者なわけだからね」
「・・・・はあ?」
自分でも間抜けな声が出るものだ、と思った。
「この国では狩魔検事はまだ未成年だ。書類上キミが保護者ということになっているがねえ」
上司が引き出しから個人情報と思しきファイルを出して確認する。
そういえば冥がこの国に来た時、なにかに判を押せと言われたような気もする。
「というわけだ。早急に狩魔検事に連絡を取ってくれたまえ」

無理やり仕事を切り上げて、御剣は成歩堂に電話をかけた。
この国で冥の行くところなど、限られているはずだった。
あいにく成歩堂は冥の行方を知らず、市民法律相談会とやらに出かけるところだと言う。
「あ、でももしかしたら」
電話の向こうで成歩堂がなにかガサガサと探し物をする気配がした。
「ウチに来てたハガキ、冥さんのところにも行ったのかも」
御剣はそこで初めて思い出した。
「そうか。忘れていた。礼を言うぞ、成歩堂」

雪が溶けた葉桜院は、新緑に囲まれた、というよりはうっそうとして見えた。
山門の前に、誰かがうずくまっている。
御剣が近づくのにも気づかない様子で、熱心に・・・。
「やはり、ここか」
冥がぱっと振り返った。
「なにをしているのだ、このいたずらっ娘が!」
冥の足元に、いくつものチューリップの花が散らばっている。
ここの住職である毘忌尼が丹精したであろう花を、冥が手にしたハサミでちょん切っているのだ。
驚いて御剣が冥からハサミを取り上げる。
「あらあらあら、いらっしゃい。冥ちゃん、王子様がお迎えねえ」
足元・・・と言うのは大げさだが、かなり低い位置で声がする。
葉桜院の住職が声を聞いて出てきたようだった。
「おひさしぶりです」
きちっっと腰を折って御剣が挨拶をする。
「どうも、狩魔がたいへんなことをしてしまったようで」
「ちょっと怜侍、なに言ってるの?」
「まあまあまあ、この子ったら。ちがうのよう、オバサンが冥ちゃんに頼んだんだから、あっはっは」
毘忌尼が大きな声で笑う。
「チューリップはねえ、花が終わる前にちょん切っちゃうの。その方が、根元に栄養が行っていい球根が取れるのよ」
冥が落ちた花を集めながら、じろっと御剣を見上げた。
「・・・・バカ」
痛恨の、失態。

413:ミツメイ2
07/09/11 08:03:02 IVL63Jc6
本堂で茶菓の接待を受けながら、御剣は住職・毘忌尼に話を聞いた。
半月ほど前、検事局の御剣宛てに、葉桜院から新しい修行コース案内のダイレクトメールが届いた。
事件の関係者に挨拶のつもりで送ったのだろう。
恐らくそれを見た冥が休暇をとって葉桜院を尋ねたのだ、という御剣の推測は当たったようだった。
「もちろん、冥ちゃんは修行しに来たわけじゃなくてね。
ほら、オバサン、あの事件からここを一人でやってるでしょ?いろいろ心配してくれてね。あれこれ手伝ってくれたり、話し相手になってくれたり、
腰を叩いてくれたりねえ。
ほら、オバサンの腰って暴力的だから。春も。あはははははは」
「そうでしたか・・・」
「ま、明日には変える予定だったんだけどね。オバサンの腰もだいぶ調子がいいしね、春だから」
「・・・それはなにより」
相変わらずの住職に、御剣は返事に困る。
やはり、あやめさんが不在なのはかなりこたえているのだろう。
冥がいくらかでも力になってやったようだった。
「ま、せっかく王子様が迎えに来てくれたんだしね、今日のうちに帰った方がいいかもしれないねえ」
「・・・その、さきほどもおっしゃったようが。王子様というのは」
どこからどこまでが脚なのだろうと思うほど、ちんまりと正座した住職はお茶をすすりながら笑った。
「いやだねえ、この子は。冥ちゃんの王子様といえば、アンタしかいないでしょうが」
「わ、私が?」
「言ってたよ、冥ちゃん。だーいすきなんだって?」
「ジューショクさまっ」
本堂の入り口で、冥が叫んだ。
「あらあら、ご苦労様。お手伝いはもういいわよ、ほらほら帰る仕度をしなきゃね。王子様をお待たせしないようにね」
「ジューショクさま、バカなことをおっしゃらないでっ」
気のせいか薄っすらと頬を染めた冥の抗議も、人生経験には敵わないとみえ、あっさりとあしらわれた。
「いいわよう、コイはねえ。オバサンだって、若い頃はねえ、あははははは」


冥は御剣の指示通り検事局に連絡を入れ、寝泊りしていた部屋で不機嫌そうに荷物をまとめた。
「どうしてここがわかったのよ」
手持ち無沙汰に部屋の中をうろついていた御剣が足を止める。
「キミの行きそうな場所くらいはすぐにわかる」
成歩堂にヒントをもらったことは、言わなかった。
「明日までここでのんびりするつもりだったのに。あなたが来たせいで、ジューショクさまに追い出されちゃうなんて」
「・・・それは、私のせいではない」
荷物がまとまると、住職に挨拶をし、不機嫌なままの冥を伴って御剣は帰宅の途についた。
冥のマンションまで送ろうと駅からタクシーに乗ろうとした時、冥があっとつぶやいた。
「どうした?」
「クリーニングよ」
いまいましげに御剣を見上げる。
「せっかく部屋を空けるんだからって、休みを利用して徹底的にクリーニングを頼んだの。今日と明日でやるはずだから、今部屋に帰ってもめちゃくちゃなのよ」
「・・・なぜ、今になって思い出すのだ」
「あなたがいきなりやって来てやいのやいの言うから忘れてたんじゃない!どうしてくれるの」
御剣はため息をつく。どっと疲れた気がした。
「とりあえず、私の家へ行こう。それからホテルを探せばいい」
ぷんぷんに膨れた冥をタクシーに押し込む。
「・・・あいかわらず、とんだじゃじゃ馬だな」
「なんですって?」
狩魔は、聴覚も完璧なようだった。


414:ミツメイ3
07/09/11 08:03:42 IVL63Jc6
御剣の自宅リビングで、冥はソファに座り込む。
さすがに慣れないことをしたせいで疲れているらしい。
「ホテルを調べるから、少し休んでいるといい」
御剣が言うと、冥が首を横に振った。
「休むのはホテルに入ってからでいいわ」
書類を持ち帰ることが出来ないため、自宅に書斎がない御剣は、寝室にパソコンを置いている。
御剣がホテルを検索していると、心配そうにやってきて冥が後ろから覗き込む。
「そこかここがいいのだけど。やっぱり当日は無理かしら」
「うむ・・・、満室のようだな」
注文どおりの部屋を探していると、見ているのに飽きたのか冥はベッドに座り込んだ。
マウスを操作しながら、御剣は気になっていたことを聞いてみる気になった。
「住職の言っていたことだが」
「なによ」
「その、私がキミの王子様だという」
「バカじゃないの」
ピシリ、という口調で返事が返ってきた。
「だが、住職に言ったのだろう?だーいすき・・・」
「うるさいっ」
ふりかえると、冥が耳まで真っ赤にしていた。
御剣は、パソコンを操作する手を止めると、立ち上がって冥の隣に座った。
「な、なんなのよ」
「うむ。キミがその、どういうつもりでそう言ったのか、いい機会だし聞いてみたいと思ったのだが」
うつむき加減でそう言うと、隣で冥がたじろいだのがわかる。
「どういうって、どういうつもりもこういうつもりも、あなたに関係ないわよ」
「・・・そうか」
御剣は肩を落として、パソコンの前に戻ろうとする。
「すまなかった。キミの王子様は、他にいるのだな」
立ち上がった御剣の背に、冥が強い口調で言った。
「バカね!私がどう思っているかは、問題ではないの!あなたが私をどう思っているかが問題なのよ!」
御剣が、ふりむいた。
「どういうことだ?」
赤面したままの冥が、気の強いまなざしで御剣を見上げている。
「あなたが私を・・・、好きではないのならそれでおしまいよ。でも、もしそうじゃなければ」
「・・・・」
「それに返事をするのは、私だわ」
つまり、冥は自分から御剣に好きだとは言わないが、御剣が冥に告白すればそれにイエスかノーかを答えるということか。
「矛盾しているようないないような・・・、要するにキミは優位に立ちたいのだな?」
ぷっと頬を膨らませた冥の隣に、王子様が座りなおす。
「では、返事をいただこう。私は、キミが好きだ」

415:ミツメイ4
07/09/11 08:04:34 IVL63Jc6
抵抗なく、唇を重ねることに成功した御剣は、そのまま唇を割って舌を進入させた。
「・・ん、ふ」
うまく呼吸できずに苦しそうに離れた冥を抱きしめて、耳元でささやく。
「返事は?」
「ば・・・バカ」
「その言葉は、この国の言葉に訳して理解しよう」
そのまま、冥をベッドに押し倒した。
「ちょ、ちょっと」
冥が両手で御剣の肩を叩く。
御剣はそれにかまわず冥の服を脱がせながら、小さく笑った。
「あいにく私は住職とちがってどこも痛くない。叩いてもらわなくて結構だ」
「バカ!!」
むき出しになった肩と鎖骨に唇を押し当ててから、御剣は片手で冥の頬に触れた。
「それは、この国の言葉ではこう言うのだ。だーいすき、と」
「んっ」
いつのまにか一糸まとわぬ姿にされた冥は、同じように服を脱いで自分に覆いかぶさってくる御剣の胸板から目をそらした。
胸を、わき腹を、お尻も、太股も、くまなく探る手の感触に、恐怖心が芽生える。
「怜侍・・・、こわい」
小ぶりな乳房に口付けた御剣が、動きを止める。
冥の頬を両手で挟んで、ささやく。
「初めてなのだな」
「・・・バカっ」
まだ生意気な言葉を発する余裕のある唇を、そっと舐めた。
「今のは確かに聞こえた。だーいすき、と」
御剣は時間をかけて冥の全身を愛撫した。
両胸のふくらみを緊張をほぐすように揉み、桃色の突起をじっくりと舌で弄ぶ。
腕も脚も何度も撫で回し、指をくわえる。
冥の呼吸がわずかに乱れ始める。
足の指の一本一本をしゃぶりつくして、ふくらはぎから上へ上がってくると、そこに隠された絶景が存在した。
丘に手のひらを当てると、冥の体がピクリと震えた。
そのまま、手のひら全体を使って上下に動かす。
「んん・・・」
艶かしい吐息。
割れ目に沿って指をいれ、長いストロークで何度も擦り上げる。
徐々に指の動きが滑らかになり、膣から愛液がにじんでくるのがわかった。
「あ・・・ん、そんなとこ」
羞恥心からか、冥が自分の指を噛んで顔を背けた。
その顎に手をかけて上向かせ、唇を重ねる。
「とても、かわいい。冥」
「・・・やっ」
膣に押し込んだ指がきゅっと締め付けられる。
ゆっくり動かすと、充血した壁が熱く絡み付いてきた。
「は、あ・・・・・」
もどかしげに冥の体がしなった。
御剣が十分に反り返ったモノを冥の股間に当てる。
「え・・・」
その堅さと質量に、冥が再び恐怖の色を浮かべた。
「力を抜くんだ。いい子だ・・・」
こじ開けるように先端が侵入し、冥が悲鳴のような声をあげた。
「やめ・・・、あんっ」
半分ほどで進むのをやめ、そっと目尻の涙をぬぐってやると、いくらか落ち着きを取り戻したのか御剣の肩を押していた手から力が抜けた。
その油断は、次の瞬間、一気に突き上げられる苦痛で打ち破られた。

416:ミツメイ5
07/09/11 08:05:17 IVL63Jc6
「う、ん、怜侍っ・・・」
奥深くまで侵略して、御剣は高まる自分の欲望を抑えて冥に口付けた。
「冥の中は、とても気持ちがいい・・・」
「バカ・・・」
「違う。だーいすき、だ」
そう言うと、冥に苦痛を与えないように優しく腰を動かし始める。
眉を寄せて耐えていた冥の表情がだんだんと恍惚としてくる。
御剣の動きを助けるように、蜜があふれてきた。
指先で乳首を弄ると、悩ましい吐息が洩れる。
とろりとした愛液とともに、破瓜の血がシーツを汚す。
「は・・・あっ、ああ」
冥が御剣の腕にしがみつき、動きが速さを増す。
「冥・・・、言ってもらえないだろうか?この国の言葉で」
限界が近づいて、御剣が途切れがちに言う。
「あ・・・はっ・・・はっ・・・はあっ」
冥は喉を反らせ、痛みと快楽の両方に蹂躙される。
快感が痛みを凌駕し、御剣に抱かれているという思いが心を満たす。
「冥・・・私は・・・バカか?」
水音とともに肌を打ち付ける音がより刺激的に興奮させた。
「あ、あ、あっ」
「くっ・・・」
「あ、あああああんっ!」
大きく体を痙攣させて自分の中に入っているモノを強く締め付ける冥の中に、御剣は濃く長く射精した。

胸の中に抱きしめた冥の髪や背中を撫でながら、御剣はかつてないほど優しい声でささやく。
「ホテルの予約を、したほうがよいだろうか」
恥ずかしさと喜びでいっそう御剣にすがり付いて、冥が異議を申し立てる。
「・・・バカ」
冥の目元の小さな星に唇を寄せて、御剣が甘く言った。
「ちがう。それは、こう言うのだ。だーいすき、と」
絶対、言うものか。
冥は、引き締めようとしても微笑みそうになる口元を隠すようにうつむいた。

417:ミツメイ
07/09/11 08:05:49 IVL63Jc6
以上です

418:名無しさん@ピンキー
07/09/11 08:46:45 hlAtNGge
「だーいすき」をあの顔で連発する御剣想像して吹いたwww
相思相愛モノは可愛らしくていいなw
冥は大変良いツンデレだしビキニさんもいいキャラしてるしGJ!

419:名無しさん@ピンキー
07/09/11 12:49:41 YVB0ob26
>>417
GJ!!!
これは大変いいバカップルですねw
みったんも冥たんも可愛すぎて読んでる最中ずっとニヤけっぱなしだった


420:名無しさん@ピンキー
07/09/11 14:29:46 zUgKjrzc
ミツメイ最高!冥タン最高!!
ビキニさんには素直に言ったのかなwだーいすきってw

421:名無しさん@ピンキー
07/09/11 22:49:32 36JXBcPF
>>412-417
ミツメイキタキターー!!!!
このいたずらっ娘が!とか王子様とかバカ=だーいすきとか
その他全部まとめて萌えまくりでヤバかった(*゚∀゚)=3

御剣と冥っていつも神経を張りつめてそうな感じがするから
こういうほのぼのした話を見ると何だかとてもホッとする。
色々と苦労の多そうな二人だけど是非幸せになってほしいな。

422:名無しさん@ピンキー
07/09/11 23:40:43 +8/GnlOk
なんつーかもうこのバカップルめww
最後までツンデレな冥たん可愛いよ冥たん
二人に似合わぬお茶目な単語連発で、それが妙にハマってて吹いたw
冒頭のビキニさんのお陰だな。ジューショクさま可愛いよジューショクさま

423:名無しさん@ピンキー
07/09/12 00:06:43 CWFSj2AL
ここ色んなカプのSS読めて嬉しい。
しかもこのスレの職人さん、みんなレベル高いと思う

424:名無しさん@ピンキー
07/09/12 10:05:08 d+qOlD3H
クイーン・オブ・ツンデレwwww
修学旅行みたいにビキニと布団並べてコイバナしたのかとww

ミツルギはちょっとS入ってるのか…?

425:名無しさん@ピンキー
07/09/12 10:06:40 d+qOlD3H
あげちゃった…orz

426:名無しさん@ピンキー
07/09/12 19:19:36 Z+nn+jM2
冥たん相手だと何故か男はみんなサディスト化しやすいが
特に御剣はゲームで実際に冥たん泣かせてるからその傾向が顕著かもw

427:成歩堂×冥1
07/09/14 19:45:57 nCWyD+q/
「抱いて・・・欲しいの。なるほどう・・・りゅういち・・・」
 拳は既に真っ白になっていた。彼女の瞳も濡れている。
「もう、貴方を追わない。戻って欲しいなんて、言わないから」
 情欲で求められているのでないことは、見ればわかった。あれに僕なりの決意があったように、これには、彼女なりの決意が込められているのだ。きっと。
 ・・・でも。
「御剣、は?」
 途端、彼女は目を見開いた。その顔が真っ赤に染まる。
「どうしていつも怜侍なのッ?! 私は・・・私は貴方の声が聞きたいのに・・・!!」
「狩魔、冥・・・」
 それは怒りだった。そして僕は、僕がいかに今まで彼女ときちんと向かい合っていなかったかを、思い知らされたのだった。
「貴方は私と話してるの?! 私は怜侍じゃない・・・だからすべて聞かせてくれなんていう資格はないかもしれないわ・・・。でも、せめて・・・」
 瞳に溜まっていた、涙が遂に溢れた。たった、一滴。
 それでも彼女は、それですべてを語っていた。
「・・・・・・」
 言うより先に体が動いていて、結果的に僕は彼女の耳元で謝罪の言葉を言う羽目になってしまった。彼女が、息を飲む音が聞こえる。
「成歩堂・・・」
 彼女の肩は、細く小さく。
「あのさ」
「ええ・・・」
「僕。結構溜まってるから、加減とか出来ないかもしれない」
「・・・・・・」
「けど、いい・・・?」
 そういうと彼女は、恥ずかしそうに目を伏せて頷いた。

428:成歩堂×冥2
07/09/14 19:47:29 nCWyD+q/

 オドロキ君とみぬきが出かけていて、珍しく僕が事務所の留守番をしていた時だった。
 事務所のドアを叩く音が聞こえ、僕は呼んでいた新聞から顔をあげた。ドアの磨りガラス越しに影が見える。
(依頼人か)
 居留守を使ってもいいのだが、後からオドロキ君にばれるとまずいし、そもそも留守番の意味がない。どうぞ、と呼び掛ける。が、来訪者が入室してくる様子はなかった。
(聞こえていないのか・・・?)
 人影は何やら躊躇っているようで、辺りを見回している。その内入ってくるだろうなと判断し、僕は再び新聞に目を落とした。

 しばらくして、キィ、とドアが開く音がした。
 その頃には僕はもうすっかり新聞に夢中になっていたので、来訪者が何者なのか、その人物が目の前に来るまで気付くことが出来なかった。
 迂闊にも。気付くことが出来なかったのだ。
 コツ、とわざと音をたて、彼女は僕の前に立った。僕はその音に顔をあげ、柄にもなく目を見開く事になる。

「狩魔、冥・・・」
「久しぶりね、成歩堂龍一」

 そう言って彼女は、昔より大分寂しそうに笑った。
 そしてその手には、もう鞭は無かった。



「どうしたんだ? こんなところに、君みたいな人がわざわざ」
「・・・・・・」 
 僕はあの後、狩魔冥をソファーに座らせ、比較的彼女の好みそうな紅茶を出した。昔の知り合いに対する精一杯の気遣いだったが、勿論安物なので、結局彼女の口には合わないだろう。しかしそれ以前に、彼女は先程から何も言わずに俯き、黙り込んでいる。
「用事があって、来たんじゃないのかい?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 狩魔冥は答えない。僕は溜息をつき、ソファーに身を沈ませた。
 訪ねて来ておいてだんまりを決め込んでいる狩魔冥に、僕は正直なところいらついていた。
(・・・いや。それだけじゃないな)
 彼女の目が。仕草が。態度が。
 僕に同情している。
 証拠品の捏造で法曹界を追われた僕に、同情しているのだ。
 それを感じる。この狭い部屋の中で、彼女の胸の内に溢れる僕には必要のないその感情が、僕を限りなく不快にさせているのだ。
「用がないなら帰って貰えるかな? 僕、こう見えても忙しいから」
 僕のその台詞にも。昔なら直ぐさま飛んで来た、彼女の勝ち気な反論はない。まったくと言って良い程に姿を消していた。
 それが益々僕を不快にさせる。
「狩魔冥」
「なるほどう・・・りゅういち」
 苛立ちを含んだ声で彼女を呼ぶと、彼女は弱々しく僕の名を呼んだ。僕は黙って先を促す。
 狩魔冥が、口を開いた。
「もう・・・戻ってはくれないの」
「え?」
「法廷に。戻ってはくれないの」
「・・・君にそんな事を言われるなんて、意外だね。戻ってきて欲しかったのかい?」
「ええ」
「・・・・・・」
 僕の冷やかしの台詞に、彼女はきっぱりと答えた。それは彼女なりの覚悟だったのかもしれなかったが、その瞬間の僕はただただ驚いていて、それに気付けなかった。

429:成歩堂×冥3
07/09/14 19:49:20 nCWyD+q/
「・・・不意打ち、だね」
 そう言うと、彼女は顔を上げて僕を見つめた。その余りにもまっすぐな視線に、僕は苦しくなる。
 それは昔の僕の、僕と僕を取り巻くすべての人達がしていた目とまったく同じで。そこには同情など、微塵も含まれていなかった。
 僕は一体、何を見ていたのだろうか。

「狩魔、冥」
「会いたかったわ・・・ずっと。貴方の事ばかり、頭に、浮かんで」
「・・・・・・」
「生意気だった私に、嫌々ながらも付き合ってくれて。いつの間にか、寝ても覚めても、貴方の事ばかり・・・」
 いつの間にか彼女の目元は濡れていて、肩も小刻みに震えていた。握り締められた拳も、微かに揺れている。何を思ってそのような思考に至ったかは謎だ。凄く謎だったが、僕はもう少し早く、前を向いてあげたらよかったなあと、思った。

 僕は彼女を見つめる。彼女の胸元の、昔と同じにそこにある、ブローチを見つめる。
「でもね」
 狩魔冥は俯く。彼女の体が強張るのがわかった。
「でも、それを君が言うには」
 狩魔冥は黙っている。
 僕は続ける。
「少し、僕らの距離は離れすぎていたみたいだね」
 狩魔冥は、黙っている。
「残念だよ」
 本当に。

 僕は再び、溜息をついた。

 「じゃあ」と僕は立ち上がり、彼女の目の前のカップを持った。彼女は俯いたまま動かない。
「飲まないみたいだし、片付けるよ」
「ええ」
「・・・御剣は」
「え?」
 何気なく出した御剣の名に、彼女は顔を上げた。やはり、連絡は頻繁に取っているようだ。表情でわかる。
「帰って来た事、知ってるの?」
「知らないわ。・・・それが?」
 酷くあっさりと言ってのける彼女に、僕はまたしても驚かされた。
「どうして?」
「どうしてって」
「・・・・・・」
「貴方に、会いに来たのよ。怜侍の許可がないと貴方に会えないのなら、そうするけど」
「そんなことは」
 ないけど。
 ただ、不思議だった。
「・・・ねえ」
「なんだい?」
 彼女の声が、震えているのがわかった。気付かないふりをして、僕は問い掛ける。
 彼女は何を思ってここにいるのだろう。何を、言いに来たのだろうか。
 知りたかったのだ。

 ―僕は、卑怯だ。

 何故かその時、漠然とそう思った。
「お願いが、あるの」
 狩魔冥の、声がする。僕はカップを、再びテーブルの上に置いた。
 伏せた睫毛はとても長い。
 彼女の赤い唇が、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
「抱いて・・・欲しいの。なるほどう・・・りゅういち・・・」
 拳は、既に真っ白になっていた。

430:成歩堂×冥4
07/09/14 19:51:11 nCWyD+q/

「あ・・・やっ・・・な、る・・・っ」
「ッいい加減・・・フルネームで呼ぶの、やめてくれないか」
 僕の上に、彼女が座っている。汗やら何やらでソファーは大分汚れていたが、それすらもどうでもいいと感じる程に、僕はこの行為に没頭していた。
 久しぶりだからだろうか。
 それとも。
「・・・えっ?あ、っん・・・」
 夢中なのは彼女も同じなようで、僕はそれが少し、いや、かなり嬉しかった。
「フルネームで呼ぶのっ・・・止めてくれよ・・・冥」
 少し速度を落とし、彼女の名前を呼ぶ。彼女は初めはぼんやりとしていたが、すぐに理解し表情を変えると、僕の肩に顔を押し付けた。彼女が言おうとしているのを感じ、僕は止まる。
 声は小さく、だがよく聞こえて。
「なるほどう・・・」
「・・・そっち?」
「・・・りゅういち」
「それイイ」
 顔が、更に押し付けられる。
 純粋に、彼女が愛おしいと思った。丸まった背中を撫でると、背中の半ば、指先が髪の先に触れる。
「髪、のびたんだね」
「いま気付いたの?」
「うん」
 服を着て、テーブルごしに話していた時よりも。今の方が、様々な事に気付く。しかし、それは多分僕だけなのだろう。僕は彼女から目を逸らしていたけれど、彼女の方は、僕を見ていたのだから。
「動くよ」

 追ってきてくれて嬉しかった。
 僕を見ようとしてくれて、嬉しかった。
 素直になって思い返せば、こんなにも僕は彼女に喜ばせてもらっている。
 僕は、彼女に感謝している。

「あっ・・・りゅういちっ・・・」
 そして僕で喜んでくれる彼女がとても愛おしくて。僕は、彼女を妹のように大切にしていたであろう僕の友人に、心の中で謝罪した。
「冥・・・ッ」
「っや・・・りゅ、あん、ああっ・・・!!」
「――ッ!!」
 彼女の中で、僕は果てた。
 彼女は何も言わずに、僕の肩に頭を乗せた。

431:成歩堂×冥5
07/09/14 19:51:49 nCWyD+q/


 いつまでこうしているつもりかしら、と冥に言われるまで、僕は彼女を抱きしめていた。僕はもう少しこうしていたいと言おうとしたのだが、思い当たる節があり顔を上げる。
「オドロキくん達が帰って来るかもしれない。服は着よう」
「オドロキくん?」
「僕の・・・息子? いや・・・従業員? 今度紹介する」
「・・・ええ」
 自然に言葉が出た。
 僕たちには、次がある。そしてそれは、僕が。
 僕が、求めている。

 服を互いに着終わって。ソファーに座り僕が両手を広げると、彼女は来てくれた。僕の足の間に座る彼女を、後ろから抱きしめる。
「こうしないと話せない?」
「うん・・・そうかも」
 離れていると、また僕は君を見失ってしまいそうだから。
「あのさ、」
「ええ」
「これから近づいていくんじゃ・・・ダメかな」
 彼女は、振り返る。
「最初から、離れてなんかいないわ。貴方がそう、思い込んでいただけ」
「そっ・・・か」
 彼女の言葉は何よりも真実で。僕は少し、ほんの少しだけ、泣きたくなった。
「ねぇ」
「何だい?」
「・・・ううん、何でもないわ」
「そう」
 何も失くしてなんかいなかった。僕はようやく、それに気付けた気がしたんだ。

432:名無しさん@ピンキー
07/09/14 19:53:56 nCWyD+q/
サディストでもないしすげーぬるいんだけど
これで終わりですー。どうもありがとうございました。

433:名無しさん@ピンキー
07/09/16 19:48:28 OZ/+Ytfb
>>432
GJ!
事務所でヤるとは大胆だなwwwww




ナルマヨ、ミツメイ(ナルメイ、ミツマヨ)のスワッピングを待機している俺がいる

434:響也×茜 1
07/09/17 21:00:18 WW9WyGeH
『喫茶店の人々』 #4

貸切で深夜営業中の喫茶店が、にぎわっていた。
「じゃ、みぬき嬢の新しい魔術の成功を祝って、乾杯!」
牙琉響也が、腰に手を当ててキザにコーラを掲げた。
なんでオマエが仕切るんだよ、というその場の全員の心の中のツッコミが聞こえたような気がしたが、それが発せられることはなかった。

その夜、みぬきが新作『ハイパーぼうしくん』を初披露する、というので茜に招待された響也は、同じ「ステージに立つ者」として見に行く気になった。
ステージ終了後、他の面々と一緒に誰が言うともなくいつもの喫茶店へ場所を移し、閉店しようとしていた店を無理やり借り切る。
コーヒー以外メニューがない店に宅配ピザを取り寄せ、サラダやチキンと一緒に並べたテーブルを囲んだ。
今日の主役のみぬきが、響也の隣であれこれと食べ物を取り分けていた。

テーブルの食事に群がっているのは、みぬきと、マネージャーの霧緒、王泥喜と茜。
カウンターの向こうには、コーヒーを飲むマスター、向き合って並んでいるのが、成歩堂と王泥喜、一つ椅子を空けて御剣。
「皆さん忙しいのに、みぬきの魔術を見に来てくれて、ありがとうございましたっ」
みぬきが何度目かの礼を言って、『ハイパーぼうしクン』を披露した。
響也がグラスを置いて手を叩き、テーブル席は大喝采となった。
「コーラで泥酔してるな、あいつら」
呆れ顔でマスターが言うのが聞こえたが、気にしない。
日常の緊張から解かれたかのように、まだ十分若者の域を出ない彼らは陽気にはしゃいでいた。

各自がピザを一切れずつ平らげた頃、店の前にタクシーの止まる音がしてドアが開き、遅れてきた冥が両手一杯の差し入れとともにまた大きな歓声で迎えられた。
そして、小さなピンクと黄色のブーケをみぬきに手渡す。
「見に行けなくてごめんなさい。『ハイパーぼうしクン』成功、おめでとう。みぬき」
「ありがとう、冥さん!」
嬉しそうに、みぬきがブーケに顔を寄せて香りを楽しんだ。
「まあ、素敵なお花ですね」
保護者のごとくみぬきに寄り添っていた霧緒が、ブーケを覗き込む。
「冥さんはセンスがいいわ」
「・・・ありがとう」
そう答えた冥がやや屈託していたように見えたが、響也は先輩に余計なことは聞かないことにした。
ただ、霧緒の隣に腰を下ろして勧められるままにサラダのカップを手に取り、なにか言われて笑っている冥を見た成歩堂がつぶやいたのは、聞こえた。
「オンナって、コワイかも」
それを聞き逃さなかったマスターが、身を乗り出すようにして言ったのも。
「今頃気づいたのかい、アンタ」


435:響也×茜 2
07/09/17 21:01:46 WW9WyGeH
差し入れのお礼にと、そこでまたみぬきが『ハイパーぼうしクン』をやってみせる。
成功にますます機嫌を良くしたみぬきは興奮気味に、茜の切り分けている差し入れのフルーツケーキを覗き込んだ。
「あ、茜さん、みぬき、イチゴのとこがいいです!」
「はいはい、みぬきちゃんはイチゴね。王泥喜くんもイチゴでしょ?」
三角形のフルーツケーキの乗った皿を受け取ったみぬきの肩に、響也が手を置いた。
「おっと刑事クン、ぼくもイチゴ」
茜が冷たく言う。
「もうイチゴはありません。牙琉検事はバナナで」
不満そうに口をとがらせた響也に、みぬきが自分のケーキからイチゴをつまんだ。
「あげましょうか、牙琉さん」
響也の口にイチゴを押し込む。
くるくると丸い目が、響也を見上げていた。
「むぐ・・・。あ、ありがとう」
見上げたまま、指についたクリームを舐めるみぬきに、響也は違和感を覚えた。
この子が王泥喜と一緒にいるところを何度も見ているし、この店で宿題をしているところに出くわして、教えてやったこともある。
さっきステージに立っているのを見たときも、けっこうちゃんとやるんだなと思っただけで、こんな違和感はなかった。
その違和感を自分の中に探しながら、響也はなにげなくケーキの上のイチゴに手を伸ばした。
「あああっ!」
みぬきが叫ぶ。
「ひどい、牙琉さんがみぬきのイチゴ、食べちゃいました!!」
イチゴのなくなったケーキの皿を持って抗議され、響也が両手を上げて降参した。
「あ、ごめん、つい。そんなに怒るとは」
みぬきの今の言い方には、先ほど感じた違和感がない。
「大人げないです!人のイチゴ盗るなんて」
本気でくってかかるみぬきに、響也がカウンター席の成歩堂に助けを求めた。
「ちょっと、なんとか言ってくれないか弁護士さん!」
成歩堂は振り返りさえしなかった。横で御剣が眉間にシワを寄せてコーヒーを飲んでいる。
「窃盗で訴えられたら、弁護してあげましょうか」
響也の背中をポンポンと叩いて、王泥喜『弁護士』が笑顔で助けを差し伸べる。
「じゃあ、検察側は私が」
真顔で冥が言い、王泥喜が響也をまねて降参した。
「まちがいなく有罪です、牙琉さん」
みぬきが笑って響也の腕にからみついた。
また、違和感。
腕から伝わる暖かさと柔らかさ、みぬきの笑顔。
「な、成歩堂さん、顔、顔!」
イチゴを守るように皿を持ってカウンター席に戻った王泥喜が、ものすごい渋顔で響也を睨みつけている成歩堂の腕をつついていた。
「むぅ、ぼくはみぬきの相手に牙琉くんはどうかと思うよ、王泥喜くん」
「・・・し、心配しすぎですよ。たぶん」
聞こえてるよ、オデコくん。
響也がため息をついて、みぬきの頭にそっと手を乗せた。

閑静な住宅街でいつまでも続く大騒ぎに、無責任な責任者はクックッと笑いながら、マスクの奥から楽しげに店の中を見ていた。

436:響也×茜 3
07/09/17 21:02:36 WW9WyGeH
仕事を終えた牙琉響也が、バイクで検事局を出る。
しばらく走ると、制服姿のみぬきがショップのウィンドウを覗き込んでいるのに通りかかった。
見ているのは、季節には少し早い冬物のバッグ。
バイクを止め、ヘルメットを取って声をかける。
「寄り道はいけないな。魔術師さん」
ぱっとふりむいたみぬきが、跳ねるように響也に駆け寄る。
「牙琉さん、こんにちは」
「なにを見ていたんだい、パパにおねだり?」
みぬきはぺろっと小さく舌を出した。
「親孝行ですよ。パパはみぬきがおねだりするのが嬉しいんです」
やれやれ、と肩をすくめた響也の前で、みぬきはちょっと唇をとがらせた。
その表情が、意外にかわいい。
齢相応のしぐさの中に、ふっと以前感じた違和感を思い出す。
「でも、パパは最近元気ないんですよね。ショーシン、なんだって」
首を傾げて、響也を見上げた。
「ショーシン?」
見上げた目が、真剣だった。
「はい。みぬきはまだ、ママがいなくてもいいよね、って」
その言葉を、響也は頭の中でめぐらしてみる。
「ああ、傷心、か。ま、キミのパパもいろいろあるんだね」
成歩堂が誰に“傷心”させられたのか。
それは追及しないことにしよう。
「だから、みぬき早く大人になってパパを助けてあげたいんですよ」
「・・・それは、立派なことだね」
顔つきはまだまだ子供っぽく見えるが、考え方はしっかりしているのかもしれない。
「あ、牙琉さん、笑ってる。みぬき、もう一人前の魔術師なんですからね。『ハイパーぼうしクン』も好評だし」
制服の胸をそらせると、意外とちゃんとした盛り上がりが見え、響也はつい目をそらした。
・・・なんだ。
かわいいじゃないか。
まったくの子供だと思っていたみぬきの意外な面に、響也は興味をそそられた。
「いや、まだまだ子供だよ。パパ、パパって言っているうちはね」
軽く、挑発してみる。
「うーん」
みぬきは人差し指をほっぺたに当てて、首をかしげる。
その細い指で、口にイチゴを押し込まれた感触を思い出した。
まずい。
本当に、かわいい。
ヤバイことをしてしまいそうだ。
響也は腰に片手を当てて体をかがめ、みぬきの頭に手を乗せて顔を覗き込んだ。
「・・・どうしたらオトナになれるか、教えて欲しい?」

肯定されるとは、本気で思っていなかった。


437:響也×みぬき 4
07/09/17 21:03:27 WW9WyGeH
「どうするんですか?」
牙琉響也のマンションで、みぬきはギターやアンプがぎっしり並べられた部屋を見回して聞いた。
「そうだね。まず、たしなみとしてはシャワーかな」
「はいっ」
元気が良すぎるのも、ムードがない。
「洗ってあげようか」
いたずらっぽく言うと、みぬきは赤面した。
「やだ、牙琉さんのえっち」
「なんだい、もっとえっちなことしようとしてるくせに」
みぬきは両手で頬をおさえ、響也が教えたバスルームに飛び込む。
なにをどこまで知っているのか、みぬきはあっという間に体にバスタオルを巻きつけて出てくる。
「たしなみは、これでいいですか?」
「ああ、オーケイだ。じゃあ、そこで待っておいで」
指さしたベッドの上に、ぴょんと飛び乗る。
スプリングを確かめるように跳ねたり、手触りのいいシルクのシーツに頬ずりしていると、響也がバスローブ姿でやってきた。
「あ、牙琉さんもたしなみオーケイですね?」
その言い方に、響也が苦笑した。
「さあ、どうすると思う?」
みぬきの座り込んでいるベッドの端に腰掛けて、その小さな顎に指をかけた。
「どうするんですか?」
「たしなみとしては・・・、まず、キスだよ」
みぬきの唇がふさがれた。
暖かいものが押し付けられ、なにかが唇を割る。
その何かが押し込んでくる。
「んふ・・・っ」
息苦しさにみぬきが大きく口を開けた。
「はあっ、息ができないかと思いました」
響也が笑う。
「息ができるようになると、オトナかな」
「うー、みぬき、まだ子供なのかも」
「じゃあ、そこに寝て」
みぬきがベッドに仰向けになると、響也はバスタオルをはずした。
小さな乳房と、ささやかな茂み。
「うん、いいね」
脚の間に、手を差し込む。
「ここを、オトナにしてあげるよ」
「・・・どうするんですか」
本当に知らないのか、知らないふりをしているのか。
すぐに、わかるさ。
響也はバスローブを脱いでみぬきの上にまたがった。
「でもまだ、ぼくは準備が出来ていない。手伝ってもらわないと」
「みぬきが?」
「そう。口を開けて」
みぬきが恐る恐る口の中に、響也を含んだ。
「ん・・・、んむ・・・」
「歯を立てないで。舐めてごらん」
「・・・ん」
やはり、なにも知らないわけではなさそうだ。
「う、ぐ、む・・・、がりゅうひゃんの、これ・・・、む、お、おっきくなってきました」
「そう、いいよ。大きくなったら、ここに入れるからね」
「そんなとこ・・・」
響也はみぬきの口から己を抜くと、華奢な体を裏返した。
「そんなとこに、だよ。でもその前に、キミも準備をしなきゃ。初めてだと、特に念入りにね」

438:響也×みぬき 5
07/09/17 21:04:01 WW9WyGeH
「準備?」
うつぶせたまま、みぬきが聞く。
響也はそれに応えず、ベッドサイドの引き出しから何かを取り出した。
低いモーター音がして、みぬきはきゃっと体をそらした。
「な、なんですか?」
「だいじょうぶ、そのままで」
小さなローターが、弱い振動でみぬきの背骨をなぞった。
ゆっくり上下し、肩と耳の後ろをなぞり、脇の下へ移動する。
「く、くすぐったいです」
「ガマンして。準備だから」
ローターが下がり、みぬきのお尻の間に挟みこまれる。
「う、うう。くすぐったい・・・」
響也は腰から手を回しいれて、みぬきの小さな胸を下から両手で包み込んだ。
「ここも、くすぐったい?」
胸を触られて、みぬきは頬を染める。
「な、なんだか変な感じ」
「うん、それはいいね」
ゆっくり胸をもまれ、下半身にはゆるい振動が続いている。
みぬきは次第に息を乱した。
「あ、やっぱり変です、牙琉さん」
響也はみぬきの体をもう一度ひっくりかえし、仰向けにしてローターを抜き取ると、今度は前から押し当てる。
「きゃっ」
脚を閉じたまま、割れ目を上下するとみぬきが声を上げた。
「さあ、自分で胸を触ってごらん」
「・・・こうですか」
みぬきの両手が、自分の乳房を覆った。
「そのまま、下から上に。そう、動かして。どうだい?」
「あ・・・ううん・・・」
「くすぐったい?」
「くすぐ・・・ったく、ないです」
「じゃあ、乳首をつまんでみて。そう、すり合わせるみたいに。もっと」
「あ・・・、なんですか、これ・・・」
はあ、と息をついて、みぬきは自分の両手で乳首をこする。
小さな突起は硬く尖ってくる。
ローターの振動を、強くする。
脚を開かせて、表面をそっと上下していたもので中をくすぐる。
濡れ始めていたそこは、ぬるっとローターを受け入れた。
「あ、きゃっ・・・」
「どう?どんな気持ち?」
「あ・・・なんだか、すごい・・・ぞくぞくってします。なにか、こう・・・変」
「変じゃない。それをね、感じてるっていうんだ」
「感じ・・・」
「ここ、自分で触ってごらん」
手をつかんで下へ下げ、ローターで弄った場所へ導く。
「や・・・こんなの、どうして」
「熱くて濡れてるだろ?キミが感じてるってことなんだよ」
「・・・・感じてる?」
「そう。もっと触って。どこが感じる?いいところを探してごらん」
みぬきはぎゅっと目を閉じ、懸命に自分で指を動かした。


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