07/07/19 21:18:57 CjANcuvU
ティッシュを取り出し、簡単に外を拭う。中のものは連結肢との摩擦を抑える役割があるので、完全には
拭き取らない。ショーツはどこにいったかな、と首を巡らすと、少し離れた触手の先に引っかかっていた。
取りに行こうにも、完全に腰砕けの状態でどうしたもんかと思っていると、やおら触手達が動き出し、恭子の
足を取ってさっとショーツを履かせた。続いて連結肢の脊索部分を触手で内太股に縛りつけ、余って弛んだ
紐状の部分はショーツの中にしまい込む。その動きには無駄がなく、またオクトルらしい妙な可愛げや
愛嬌も消えていた。
彼女は触手に尋ねた。「えと、もう"ミノリ"なの?」
”ああ、完全に掌握した。”
ミノリはそう答えると、触手を一本、恭子の眼前でひらひらと振った。オクトルはいまや完全に『頭』の
支配下にあり、ミノリは久しぶりの体を動かす感覚を味わっていた。
恭子は時計を確認する。ちょうど一時半になるところだった。
出発の時だ。
水をナップザックへ戻す。中身を確かめて袋の口を閉め、恭子はそれをミノリに預けた。彼は肩紐を第7肢に
に絡め、それを器用に背負う。背負い鞄の触手って再び恭子の
体の拘束が始まる。
しかし、今度は今までのような色のある動きではない。八本の大肢の次に太い触手が、彼女の脇、股、腰を
正確に固定していく。パラシュートのハーネスの要領だ。やがて少女は巨大な触手の腹に抱え上げられ、
自らもそれにしっかりと抱きついた。出発準備よし。
ミノリはベランダからそっと顔(?)を出すと、素早く辺りの様子を窺った。恭子も耳をすませる。
誰もいない。
次の瞬間、オクトルの登りを上回る俊敏さで、ミノリはベランダを飛び出した。三階分の高さを降りるのに
5秒とかからない。音もなく地表に達すると、触手はそのままの勢いで街灯の影まで移動した。
相変わらず、夜の町は静まり返っている。ミノリはマンションの敷地を出ると、暗い県道を横切って素早く
向かいの木立の中へと飛び込んだ。
一瞬、木々のざわめきが辺りに広がるが、それに気を止めた人間は、やはりいない。
葉擦れの音が収まった時、彼らはとっくに闇の奥へと消えていた。
樹冠から漏れ来る月の光を頼りに、巨大な触手が森を奔る。
その先では、オクトルの同胞たちが、今宵の二人の到着を待っていた。