【涼宮ハルヒ】谷川流 the 49章【学校を出よう!】at EROPARO
【涼宮ハルヒ】谷川流 the 49章【学校を出よう!】 - 暇つぶし2ch217:名無しさん@ピンキー
07/06/24 02:11:52 SyZlOShL
なんだこりゃ。ちょっと見ない間にとんでもないスレになっちまったな。

とりあえず>>197はイラネ。
それともマンセー感想以外NGだというのなら、こんな腐ったスレはもう見ないことにする。

218:名無しさん@ピンキー
07/06/24 02:14:05 wTwD7Ejx
そんなことはチラシの裏にでも書いていればよろしい

219:名無しさん@ピンキー
07/06/24 02:14:24 O2fd0zdN
流れに乗って。俺め! やる気が足りねーんだよしっかりしろ!

220:名無しさん@ピンキー
07/06/24 04:01:48 gWMSAS7Q
今だから言っておくが、俺も輪舞曲はそんな上手くはないと思うのだぜ。
悪くはないと思うが、まあなんというか唸るほど上手くはない。
中の上ぐらいというか、埼玉川口で一番美味いラーメン屋のような感じ。

221:名無しさん@ピンキー
07/06/24 04:22:03 8lz2RmIy
ちょww俺の住んでいるところ、しかもうちの近くには○玉ってラーメン屋があるんだぜ・・・・・・

222:名無しさん@ピンキー
07/06/24 08:09:09 xS/sP4Rz
>>217
何か辛い事があったのか?

223:名無しさん@ピンキー
07/06/24 08:25:16 9YH7j2Cm
>>217
いくらなんでも過剰反応しすぎだろ……

224:名無しさん@ピンキー
07/06/24 08:52:23 EFCwhxgU
>>222-223
あれ中学生だからスルー汁

225:名無しさん@ピンキー
07/06/24 08:53:49 0Ca5xSue
単に>>196=>>217ってだけだろ。
まだ騒ぐ時間じゃない。

226:名無しさん@ピンキー
07/06/24 10:33:42 xS/sP4Rz
>>225
OKブラザー、頭冷やしに電気街に行ってくる。

227:名無しさん@ピンキー
07/06/24 12:51:01 T7Y/xpWh
投下します。
エロなし、18レス予定。

228:オーパーツの謎を終え
07/06/24 12:51:50 T7Y/xpWh
 それは骨身に浸みる寒さがピークを迎え、春の到来が待ちわびしかったある日のこと
だった。
 そのある日というのは、俺が朝比奈さんと未来から指示されたお使いを律儀にもこなし
たり、宝探しと称してハルヒから穴掘りを命ぜられたりと、いつになくハードスケジュー
ルだったあれやこれやのイベントづくしを終え、さらにその後のバレンタイン騒動も終え
た数日後だ。
 その日、昼休みも半ばを過ぎ、国木田・谷口と机を合わせて食っていた弁当がもれなく
俺の腹に収まり、食後の緩やかなで穏やかなひとときを満喫していた時、入り口から俺の
見知った女生徒が顔を覗かせた。
「やっほーい、キョンくーん!」
 まるで孟宗竹をナタで真っ二つに割ったようなさっぱりとした、そして底抜けに明るい
声は、あのお人だ。
 すなわち、我が校でハルヒとあらゆる面で並ぶことの出来る存在、つまりは鶴屋さん
だった。



 鶴屋さんは、廊下から俺を手招きすると、何がそんなに楽しいのかニカっと笑うと、
「やあ、キョンくんっ! お姉さん、ちょっくら話があるんだけど、一緒に来てくんない
かなっ?」
 別にかまいませんが。
 そう言って俺はドアの外へ向かい、そして廊下へ出ると鶴屋さんのお供のように付き
従って歩き出した。
 その俺の後ろから、アホの谷口が「何であいつばっかり……」などと愚痴めいた言葉を
漏らしていたが、もちろん聞き流した。
 谷口、お前がうらやましがるような事じゃないと思うぜ。たぶんだがな。
 歩くこと数分、俺の前をスキップでもしかねない楽しげなオーラをスプリンクラーのよ
うに振りまきまきながら歩いている鶴屋さんに案内されたのは、生徒達の憩いの場である
中庭だった。
 確かにここでならば話はしやすいだろう。しかし、この季節に外で話をするというのは、
ややためらわれるところではある。
 というのも、俺たちの座っているベンチのあたりをビュンビュンと北風が吹きすさび、
心身もろともに凍えさせるにはそれで十分だったからだ。
 しかもその直後、ここ数日分の寒さが凝縮されたかと思えるような寒風にさらされ、俺
は大いに震えた。いろいろなところが縮み上がった思いだ。
 だが、俺の凍えた表情を見た鶴屋さんは申しわけなさそうな表情で、
「キョンくん、こんな寒いところに引っ張り出しちゃってごめんねっ! お詫びの印とし
てまずは温かいコーヒーを飲んでおくれよっ」
 そう言って鶴屋さんは、いったいどこから取り出したのか、両手で抱えても持て余しそ
うなほどの存在感のあるポットと紙コップを用意しており、俺にコップを手渡してそこに
濡羽色の液体をトクトクと注いでくれた。
 俺は鶴屋さんに礼を述べると、そのコーヒーを一口飲んでみた。
 すると熱い液体がノドを通り、それが胃に到達すると、体がポカポカして心まで温かく
なる気分だ。
 しかしこれ、いつも俺が飲んでいる自販機のコーヒーとはまるでモノが違う。もちろん
俺にすらわかるほどの違いだ。いや、驚いたね。
 そのせいか、俺は心底感心しながらもあっという間に極上のコーヒーを飲み干してし
まった。ちゃんと味わえってんだ。
 いいものを飲ませてもらって心までほっかほかになった俺は、鶴屋さんに顔を向け、
「うまいですね、これ」

229:オーパーツの謎を追え2
07/06/24 12:52:54 T7Y/xpWh
 コメンテーターとしては失格だなと思いながら、俺はごく素直な感想を口にしてみた。
 すると鶴屋さんは、俺たちの周囲半径2メートルほどに花が咲き誇る春を呼び込みそう
な笑顔で、俺の肩をぽんぽんと優しく叩きながら、
「そっかい、それはよかったよっ!」
 ついつい引き込まれそうな笑顔だった。これがカリスマなんだろうかと、ふと思う。
 鶴屋さんは俺のことをまるで弟でも見るかのように優しく微笑みながら、
「キョンくん、いい飲みっぷりだねっ。ほらほらもう一献どうだいっ?」
 まるで花見に来て酒盛りでもしているかのような言い草で、鶴屋さんは再びコーヒーを
注いでくれた。
 俺は二杯目にそっと口を付けつつ、
「それで、鶴屋さん。話というのはなんでしょうか?」
 鶴屋さんは八重歯を覗かせながら、
「それは禁則事項だよっ!」
 俺はコントのようにずっこけそうになった。上空から金ダライでも落ちてきそうな気分
だ。
 ええと、それじゃまるでわからないんですが……。ていうか、朝比奈さんのまねです
か?
 すると鶴屋さんは「わっはっは」と大笑いしながら、
「いやーごめんごめん。みくるがよくこの言葉を使っているからさっ。ついつい真似をし
たくなるんだよねー!」
 ……朝比奈さん、鶴屋さんの前でもそのセリフ言ってたのか。
 相変わらずうかつと言おうか、あるいはドジっ子と言おうか、そこがまた愛らしいとこ
ろではあるんだが。
「キョンくん、ごめんよっ。冗談はここまでにしておくっさ」
 鶴屋さんはてへへと舌をちょろっと出し、今度はやや顔を引き締めて、俺に再び向き
直った。
「……そんなら本題にはいるんだけど、キョンくん。キミ、今週の休日は暇かいっ?」
 とは聞かれても、予定などまるっきりありはしないので、俺はパブロフの犬のように即
座に返答した。
「はあ、暇ですが」
「そうかいっ、そしたらその日に宝探しでもしてみないかなっ?」
 どういうことでしょう?
「キョンくん。前にキミに言われて掘ったあの山から、例の合金が出てきたにょろ? ま
あ、そのことをキョンくんに問い質そうとは思わないんだけどさっ。……2匹目のドジョ
ウを狙っててわけじゃないんだけど、他にも何か出てこないかなって思ったにょろ」
 あれ、か。確かに他にも出てくる可能性はない訳じゃない。それに、俺にだって興味は
あるさ。別に朝比奈さん(大)の鼻を明かしてやろうと思っている訳じゃないが。
「いいですよ、俺も興味ありますし。でも、他の連中は誘わないんですか?」
「うーん、そうなんだけどさ。この話は、キョンくん以外にはしない方がいいような気が
しないかいっ?」
 と鶴屋さんが言ったところで、俺には少し思い当たることがあった。なんとなくさ。
 もちろん、ハルヒを誘えばややこしいことになるのは当然だが、朝比奈さんにしても長
門にしても、SOS団に属しているとはいえ、それぞれに立場があるってのはおそらく鶴屋
さんも理解しているだろうからな。そのうちの誰かを誘っちまったとしたら、どちらかの
組織に汲みすることにもなりかねんしな。間接的にとはいえ、鶴屋家は機関のスポンサー
だというんだから、なおさらだな。
 まあなんつーか、大人の事情ってやつか? といってもまだ鶴屋さんは高校生だがな。
 考えてみれば古泉を誘わないって言うのも、理由は思いつく。というのは、機関として
は、鶴屋家の次期当主である鶴屋さんに、こういった問題にはノータッチでいて欲しいだ
ろうからな。オーパーツなんていっても、どうせ未来人が関わっているんだろうし。

230:オーパーツの謎を追え3
07/06/24 12:53:45 T7Y/xpWh
 おっ、ひょっとして今日の俺は冴えているんじゃないか? なんて自画自賛してみる。
 だが、たぶん俺の今の推測は的を射ているだろうぜ。なら結論は出たな。これ以上は何
も鶴屋さんに何も言わず、何も聞かないことにしようぜ。
 その抑え気味の俺の表情から何かを読み取ったのか、鶴屋さんはニッコリと笑顔を見せ
た。まるで、わかってくれてありがとう、とでも言いたげに。
 しかし瞬時にそれに気づくとは、さすがに勘が鋭い。それに頭の回転も速い。本当にこ
の人は頭の切れる人だ。
 俺は舌を巻く思いで、季節をひとつすっ飛ばした夏の太陽を思わせる鶴屋さんの笑顔を
眺めていた。
「なんだい、キョンくん? お姉さんの顔をじっと見つめて。あんまり見つめられると、
お姉さん照れるじゃないかっ!」
 しかし言葉とは裏腹に、鶴屋さんはまるで照れた風もなく、可愛らしい八重歯をのぞか
せながら大笑いをしていた。
 鶴屋さんが照れるなんてことはあるんだだろうか? と思いながら、彼女の朗らか笑い
顔を眺めていると、なんだか俺まで楽しい気分になってくるから不思議だ。
 その後、集合時間と場所を取り決めて、俺たちは中庭を後にした。
「キョンくん、じゃねー!」



 その放課後、部室。俺はいつものごとく、我が天使の朝比奈さんから給仕された高級茶
葉で淹れられた緑茶を有り難くも味わっていた。
 値千金とはまさにこのことで、その極上の甘露は俺にとっては1ヶ月分の小遣いに相当
する価値があった。微妙に安いのは俺の経済観念の貧しさからくるものさ。
 もし部室前で朝比奈さんの緑茶を売り出せば、団の活動費が楽に稼げそうだ。もし余っ
たら部室を冷暖房完備にして欲しいものだ。
 俺がそんなことを考えながらリラックスした姿勢でいると、それまでじっと黙り込んで
いたハルヒが、顎を机の上で組んだ手の上に載せながらやおらアヒル口を俺に向け、
「キョン、あんた昼休みに鶴屋さんと一緒にいたみたいだけど、中庭で楽しそうに何話し
ていたの?」
 あまりに突拍子のないことを言われたため、俺はあわてて、ぶぴゅっとお茶を前方に噴
き出してしまった。
 古泉の持ってきたカードゲームがお茶まみれだぜ。すまん、古泉。
 しかし、見られていたのか……。なんて目ざといやつだ。だが、ここはなんとか言い逃
れしなければな。もちろん本当のことを言うわけにもいかんし、かといって躊躇ってしま
えばあらぬ疑いを持たれてしまいそうだ。
「ええとだな、あれはただの世間話さ。そう、お前が懸念を抱く必要もないほどのな」
「ふうん、でもなんか時折まじめな顔してたし、それにわざわざ鶴屋さんが教室にあんた
を呼びに来たそうじゃない。それでもただの世間話だって言い張るわけ?」
 何故こいつが知っているんだ? さては谷口か。
 しかし、そんなことを何でわざわざこいつに弁解せねばならんのだ、と思いつつも穏や
かならざる心境に陥り、これはあらたな言い訳をしなくてはと考えていた矢先、この部室
に救世主が現れた。
 まるで、地獄に蜘蛛の糸を垂らしてくれる釈迦を見る思いだぜ。
「こんちはー、ハルにゃんいるにょろ?」
 鶴屋さんだ。
 さすがのハルヒも、鶴屋さんに対して仏頂面で向き合うわけにもいかないようで、少し
だけ愛想をよくした長門のような表情をしながら、
「こんにちは、鶴屋さん。今日は何かしら?」
 ハルヒの口調がいつもよりもやや硬い。しかし、この場面に遭遇してどうして俺が冷や
汗をかいているんだろう? フロイト先生にでも解説してもらいたいもんだ。
「実はねー、キョンくんをちょっくら貸してもらおうと思ったのさっ」
「貸すって、どういう事?」
「今度の土曜日、キョンくんとデートしようと思ったのさっ!」

231:オーパーツの謎を追え4
07/06/24 12:54:37 T7Y/xpWh
「ええーっ!?」

 長門以外の全員が驚愕の声を上げた。もちろん俺は顔から血の気が引いたのは言うまで
もない。鶴屋さん、なんてことを言い出すんですか……。
 ハルヒはビームが出てきそうな視線で俺を睨みつつ、
「つ、鶴屋さん、それ本当?」
「あれ、どったのかな? ハルにゃん。そんなにショックだったのかいっ? 心配しなく
ても、軽いアメリカンジョークっさ!」
 鶴屋さんはあっけらかんとそう言い放った。
 ハルヒは一瞬ポカンとしたあと、アホな子供のような表情で現在凍結中だ。
 いや、鶴屋さん。全然軽くないんですが……。
 それどころか、俺の寿命が確実に10日は縮みましたから、そう言ったジョークは本当
に勘弁して下さい。
「はっはっは。ごめんね、ハルにゃんにキョンくんも。ハルにゃんも安心していいにょろ
よ」
 ハルヒはそう指摘されると、焦った様子をこれ以上見せまいと顔を引き締め、
「ちょ、ちょっとびっくりしただけよ。それにキョンと鶴屋さんじゃ、全然釣り合わない
ものね。月とスッポンよ。いえ、アルタイルとカミツキガメだわ」
 ハルヒは幾分落ち着きを取り戻し、茶化すような表情で俺に視線をぶつけて来た。
 ほっとけ、つうかなんて例えだ。まるでわけわからん。
「それで鶴屋さん。本当はキョンをどうするつもりなの?」
「うん、キョンくんにはこないだ掘った山の後かたづけをお願いしようと思ってさっ! 
ちょうど男手が不足してたから、キョンくんにお願いしたにょろ」
 鶴屋さんの説明を聞いたハルヒは納得したように、
「こないだの、ね。確かに結構掘り返しちゃったもんね。……いいわ鶴屋さん、どんどん
使ってやってちょうだい。キョンは近頃精神がたるんできてるから、丁度いい機会だわ。
それと……もしかったらあたしも手伝うけど?」
 ……おい、ハルヒも来るだと? どういう風の吹き回しだ。そんな殊勝なことを言い出
すなんてな。
 だが、そりゃまずい。鶴屋さんが俺だけを誘った意味がなくなるからな。
 しかし、鶴屋さんはまるであわてた様子もなく、
「こういったことは、男の子の仕事っさ。ハルにゃんはわざわざ土まみれになることはな
いにょろ」
「それもそうね」
 おいハルヒ、汚れると聞いた途端にそんなにあっさり引き下がることもないだろう。現
金なやつだぜ、まったく。
 しかし、さすがにハルヒをあしらうのが上手いな、鶴屋さん。もちろん、乗せるのも上
手いが。
 いっそ、ハルヒの手綱を引き締める役をお願いしたいところだが、時には一緒に突貫し
かねないお人でもあるからな。今の立ち位置がベターってころか。
 鶴屋さんは朝比奈さんから出されたお茶を飲み干すと、俺へのウィンクを置きみやげに
「ほんじゃねー!」と去っていった。
 鶴屋さんが出て行った後の部室は、休日のビジネス街のようにひっそりと静まりかえっ
ていた。
 ハルヒとは異質の賑やかさだな。去ってしまうと、少し寂しくなるほどのな。
 それから程なく、長門が本を閉じると同時に、先ほどからの余韻を残して毒気を抜かれ
たようなハルヒが解散宣言を行い、俺たちは三々五々帰途についた。



232:オーパーツの謎を追え5
07/06/24 12:55:41 T7Y/xpWh
 そしてやってきた週末。つまり土曜日であり、お宝探索の当日だ。
 俺は出発の準備を整えると、リビングでくつろぎながら鶴屋さんを待っていた。
 何故俺の家で待っているかというと、鶴屋さんが俺を車で迎えに来てくれる事になって
いるからだ。
 ただ、約束の時間まではまだ少しあるため、ここで雑誌でも読みながら車がやってくる
のを待っているというわけさ。
 ところが俺が間抜け面でマンガ雑誌を眺めていると、突然この空間の静寂を破るかのよ
うに、何の前触れもなしにインターフォンが鳴り響いた。
 不覚なことに、俺の聴覚は車の走行音と停止音をまったく捉えることなかった。まるで
粗いザルのように俺の鼓膜を素通りしてしまったらしい。
 あわてた俺は、玄関に直行して靴を履き、そしてドアを開けた。すると、俺の目の前に
はジーパンにTシャツ、そしてその上にジャケットを羽織るというラフな出で立ちの鶴屋
さんが、いつものようににこやかな表情で手を振りながら立っていた。
「おっはよー、キョンくん。今日は絶好の宝探し日よりだねっ!」
「おはようございます。そんな表現があるのかどうかはわかりませんが、確かにいい天気
ですね」
「さあさあ、すぐに出発するから早く車に乗った乗った!」
 そう促されて鶴屋家所有の高級車に乗り込んでみると、まるで外界の喧騒が耳に届かな
かないことにまず驚かされた。その圧倒的な静けさに俺は度肝を抜かれつつ、極上の座り
心地を与えてくれる本革のシートに腰を沈めた。
 それを見届けた運転手が車をするすると発進させると、まるでエンジン音も聞こえるこ
となく動き出した。
 窓の外に目を向けてみると、俺の目に映し出される景色が、車の加速と共に緩やかに溶
けて後方に流れていった。
 なるほど、この車なら走行音が聞こえなくても俺の責任じゃないな。普段俺が父親に乗
せてもらっている車はなんだと思わせるような別次元の乗り物だ。これが天使のゆりかご
だと言われても俺は信じるね。
 車が動き出してしばらくすると、鶴屋さんは俺に温かい飲み物を手渡してくれた。この
車に備え付けの保温庫から取り出したらしい。
 もう何が出てきても俺は驚かないぜ。鶴屋家の車なら「やあ、マイケル」と車がしゃべ
り出してもおかしくはないからな。
 俺は鶴屋さんから飲み物を受け取って喉を潤したあと、
「そう言えば鶴屋さん、何であの時ハルヒに俺を貸してくれなんて言ったんですか? あ
れじゃあ納得したハルヒは別として、他の連中には俺たちが共に行動することを怪しむん
じゃないですか?」
 すると、鶴屋さんはイタズラっぽい目を俺に向けて、
「そんじゃあキョンくん。キミと一緒に行動するとハルにゃんに前もって言っておくのと、
あとでハルにゃんにバレるのどっちがいい?」
 ……俺には言葉がなかった。
 たしかに、朝比奈さんとの一件があるんだからバレないとはいえん。いや、ハルヒのこ
とだ、俺には想像も付かない経路でおそらく耳に届くだろうな。それは何よりも恐ろしい。
 そう考えると、わけもなく俺の背筋が一瞬寒くなった。
 しかし、鶴屋さんは俺のそんな様子を楽しそうに眺めていた。
 それに対し、俺はどうコメントしようかしばし迷っていると、都合よく車が登山口に到
着したようだ。
 車を降りた俺はその高級車をつらつらと眺めながらしみじみと思った。なんと言おうか、
俺には驚きの連続で、庶民と雲上人のとの格差をまざまざと見せつけられた気分だね。い
や、よしておこう。これ以上考えると惨めな気持ちになってきそうだ。



233:オーパーツの謎を追え6
07/06/24 12:56:44 T7Y/xpWh
 車を降り立った俺たちはリュックを背負いつつ、登山口から少し外れたけものみちに進
み、えっちらおっちらと上り続け、そしてようやく午前十時を少し回った頃に目的地であ
る山の中腹部に到着した。
 そこまでたどり着くと、俺は平地の真ん中あたりまで進んで、両手を膝について前屈み
になり、やや荒い息を小刻みに吐きだした。
 これはどうやら運動不足らしいな。
 しかし、年がら年中ハルヒにこき使われているというのに、いったいこれはどういう事
だ? それに若さ故のエネルギーをいろいろと持て余しているはずなのにな。
 ところが、俺と同じ運動量でここまでやって来たはずの鶴屋さんは、軽く散歩でもして
きたかのようにケロリとした顔つきで、腕を組みながら俺のくたびれた様子をやけに楽し
げに眺めていた。
「キョンくん、もうお疲れかいっ? いい若い者がだらしないぞっ! しょうがないから、
取りあえずこれでも飲んで一休みといこうか」
 鶴屋さんは妙に年寄りじみたことを言って、それでも俺の目の前に砂糖をたっぷりと溶
かし込んだ紅茶を差し出してくれた。
 俺はみっともない姿を鶴屋さんに見せてしまったことを後悔しつつ、痺れるほどに甘い
その紅茶で疲れを癒しながら、
「ところで、お目当てのお宝ですが、あてはあるんですか? まさか、闇雲に掘るってわ
けじゃないでしょう?」
「オフコースのもちろんさっ。さあ、キョンくん、これを見てくれたまえっ!」
 鶴屋さんは古びた和紙のような紙を十枚ほど、背負っているリュックから取り出した。
 はて、何処かで見覚えがあるような―って、それこないだの地図じゃないですか。
 しかし鶴屋さんは人差し指を左右に「ちっちっちっ」と言いながら小さく振った。
「こないだのとは違うっさ。よく見るにょろ。あれとはまた別の地図っさ。実はね、先週
倉庫を漁ったんだけど、古地図が次から次へと出るわ出るわで、ご先祖様もよくこんなに
ため込んでたもんだよねっ!」
 本当だ。確かに宝を示す印の場所が違っている。
 しかし、尋常じゃないこの枚数は何だ? まるで胡散臭い骨董屋じゃないか。
「それはしょうがないっさ。けっこうな変わり者だったらしいからね、そのご先祖様は」
 でも、鶴屋さんだってその血を受け継いでいるんですよね。
 俺はからかうようにそう言ってみる。
「あれあれ、キョンくん、キミもなかなか言うようになったね。お姉さんはキミをそんな
風に育てた憶えはないよっ」
 確かにあなたに育てられた憶えは、俺にもありませんがね。
「そりゃそうだね。わっはっはっ!」
 あとは、二人で大笑い。おかげでさっきまで感じていた俺の疲れが、強力な栄養剤を
打ったかのように何処かへと吹き飛んだ。
 本当に鶴屋さんは、周りにいる人間を片っ端から楽しい気分にさせてくれる、不思議な
魅力を持つお人だ。俺には朝比奈さんとは別の意味で崇拝したい思いだ。



234:オーパーツの謎を追え7
07/06/24 12:57:31 T7Y/xpWh
 つかの間の小休止で気分一新したところで、お宝の発掘作業を始めることになった。
 発掘方法だが、なにしろ宝の地図が十枚もあるので、一枚一枚しらみつぶしにしていく
しかない。
 それは非常に骨が折れる作業ではあるが、鶴屋さんと一緒に発掘作業をしていると、さ
ほど苦労を感じないから不思議だ。
「どうだい、キョンくん。なんか見つかりそうかいっ?」
 掘り出して十数分だが、早くも手応えがあったことに気がついた鶴屋さんが俺に声を掛
けてきた。これほど早く宝が見つかるなんて、意外だが幸先はいい。
「なんか出てきましたよ」
 そう言って俺は小さな重箱を穴の底から取り出し、鶴屋さんに手渡した。
 そしてよっこらせと穴からはい出て、鶴屋さんと中身を確認してみると、そこには手持
ちの地図と同じぐらいの古びた和紙が一枚入っており、そこには色あせているものの浮世
絵のような絵が描かれてあった。
「鶴屋さん、これは何でしょうね?」
 すると、鶴屋さんは身内の不祥事を知られたような気まずい顔で、
「ありゃりゃ、これは春画だね。まったく、こんなモノを隠しているなんて、なんてご先
祖様だいっ。たいしたお宝にょろ」
 春画―今で言うエロ本のようなものか。
 そりゃ鶴屋さんだって気まずいだろう。もっとも、肝心なところはすでに色あせてし
まっているので、俺には鶴屋さんに春画だと教えられなければわからなかったのだが。
 とは言っても、これじゃまるで死んだ爺さんの遺品整理をしていたら、エロ本ばかりが
出てきて、親族一同が凍り付いてしまうようなもんだ。
 しかし、こんなモノを隠しておくなんて、そのご先祖様にとってはよほどの宝物だった
のだろう。その気持ちは、同じ男としてわからないでもないが。
 だが、鶴屋さんは微苦笑を浮かべながら俺に視線を向けて、
「キョンくん、みっともないモノを見せちゃってごめんよ」 
「いえ、全然気にしてませんよ。それにまだ宝の地図がありますから、気を取り直して発
掘を続けましょう」
「うん、それもそうだねっ!」
 ニカッと全開スマイル。やっぱり鶴屋さんには笑顔が似合う。



 なおも発掘作業は続けられた。しかしながら、あらかたは一度掘られたことがあるらし
く、掘っても何もなかったり、あるいは、空箱だけが残されてあったりと中々芳しくな
かった。
 それでも俺は鶴屋さんと作業しているのが楽しく、鶴屋さんの冗談に笑わせられたり、
あるいは掛け合いの漫才をしながらせっせとシャベルを操った。
 そんな楽しげな雰囲気の中、俺は鶴屋さんに誘われたときから考えていたことを思い
切って訊いてみた。
「ところで鶴屋さん、本当のところどうして未知の金属を探そうと思ったんです? 俺が
こう言ってしまうのもなんですが、あなたの立場上深入りすると煩がる存在があると思う
んですが……?」
 俺の質問を受け、鶴屋さんはほんの一瞬思案顔になったが、すぐさま笑顔を浮かべて、
「それはね、キョンくん。あたしにだって、こういう事をしたいと思うこともあるってこ
とっさ! 誰かさんの影響にょろね」
 鶴屋さんの表情には、後悔や逡巡を思わせるような気配はまったくなかった。晴れ晴れ
としている。


235:オーパーツの謎を追え8
07/06/24 12:58:17 T7Y/xpWh
 ……そういえば古泉の話によると、鶴屋さんは俺たちの知らないところで結構な活躍を
しているらしい。本当か嘘かはわからん。それは古泉を信じるしかないがな。
 だが、それでも彼女が裏で奔走していることとはまた違った楽しさが、この作業という
かイベントにはあるんだろうか。それが鶴屋さんの言う『こういう事』なのかね。
 それから、『誰かさん』とは言わなくともわかるだろうが、ハルヒしかいねえな。
 それでも本来なら、鶴屋さんは俺たちと関わりを持つはずではなかったと言うし、まし
てや今回彼女が、ハルヒ、もしくは未来人に繋がるかも知れないようなお宝の発掘を提案
することもなかったはずだ。
 やれやれ、どこまで縦横無尽なんだ、ハルヒの変態パワーってやつは……? 
 なんて、今さらだな。夏休みを延々ループすることに比べればかわいいもんだ。



 俺たちはさらに発掘作業を続けていたが、残りの地図はあと2枚しかなかった。
 だがそんな状況にもかかわらず、今日の戦利品といえるものは、鶴屋さんのご先祖様の
春画だけだ。
 むろん、古美術商に持ち込めば多少の金には換えられるかも知れんが、お宝のイメージ
にはほど遠い。ましてや、俺たちの真の目的はすでに手に入れているチタンとセシウムの
合金に続く新たなオーパーツの姿だ。江戸時代の骨董品が欲しい訳じゃないんだ。
 だがそんなことをつらつらと考えていると、シャベルの先端に何か手応えのようなモノ
を感じ取った。
 みると、胡桃色をした壺、というより瓶といった印象の陶器が底から顔を覗かせていた。
「キョンくん。これはなにか入ってそうだねっ!」
 頭上から下を見下ろしている鶴屋さんは、まるでプレゼントを受け取った子供のように
満面の笑みを浮かべて、俺が掘り起こして腕に抱えられている古びた壺を見つめていた。
 ―今度こそ入っていてくれよ!
 俺はそう念じながら、まるで十年以上宝くじを買い続けていながら、末等以外当たった
ことがない愛好家の面持ちで壺の中を探った。
 
 ―あった!
 
 手触りからすると、石あるいは金属のように硬いものだ。
 それを取り出してみると、10センチ四方の銀色をした金属片のようだ。ただし、均整
のとれたた形ではなく、まるで花崗岩のようにデコボコで、いかにも砕け散ったあとの破
片といった印象だ。
 おそらく元は、ある程度しっかりした形ではなかったかと思う。根拠はないが。
 しかしながら、俺にはそれ以上考察のしようがないので、まずは宝の地図の現保有者で、
しかも俺よりは遙かに物知りであろう鶴屋さんに尋ねてみた。
「これ、なんでしょうね?」
「そうだね。……うーん、わかんないけどなにかの装置の一部じゃないかなっ?」
「……装置ですか? どうしてそう思ったんです?」
「ちょっとした勘っさ。でも、こないだ見っけた金属も何かの部品の一部って印象だった
からねっ! これもその部品の破片じゃないかと思ったにょろ」
 確かにそう考えるのが正解かも知れない。
 しかしどうやら、鶴屋さんはこの部品の一部だと思われる金属について、ある程度の推
測ができているように思える。すくなくとも、この金属が当時の人間が生み出したもので
はないことを感づいているような気配がある。
 鋭い人だ。この人が俺たちの味方で本当によかったと思うね。このお人だけは敵に回し
たくはないな。




236:オーパーツの謎を追え9
07/06/24 12:59:17 T7Y/xpWh
 今日最大の収穫であるその金属片は、結局鶴屋さんが専門家に鑑定を依頼することにな
り、とりあえずは俺のリュックに収めることにした。
 さて、では最後の発掘作業に取りかかろうかと、俺は再びショベルを手に携えたとき、
さっき時計を確認していた鶴屋さんが俺を呼び止めた。
「キョンくん。そろそろお昼にしないかなっ?」
 鶴屋さんにそう言われた瞬間、俺の腹に住むウシガエルが轟々と鳴き出すのだから体は
正直なもんだ。
 鶴屋さんはそれを聞いて大笑いしながら、あらかじめ持ってきていたレジャーシートを
大きな木の下に広げると、すかさず大きな包みを中心に据え、割り箸と紙製の皿、それに
コップをまるで主婦のようにてきぱきと用意した。
 鶴屋さんに手招きされた俺は、シャベルを木に立てかけると靴を脱いでシートの上に
座った。
 そして鶴屋さんが包みを解いて重箱を並べると、俺の目には壮観ここに極まれりといっ
た景色が広がっていた。
 なんとも豪華な料理の数々が、所狭しと重箱の中で俺たちに食されるのを今か今かと
待っていたのだ。
 今日は何度鶴屋さんに驚かされるんだろうかと思いつつ、
「鶴屋さん、これはひょっとして鶴屋さんが作ったんですか?」
 鶴屋さんは笑みを浮かべながらコクリとうなづき、
「そうだよっ! あたしがキョンくんのために腕によりを掛けて作ったにょろ。ほらほら、
いいから早く食べておくれ、キョンくんっ!」
 何とも有り難いことだ、鶴屋さんお手製の料理が食べられるなんてな。しかし、どこま
でオールマイティな人なんだ。こりゃ白旗揚げて降参するしかないね。
 こうまで完璧では、天はあらゆる才能や資質を鶴屋さんに詰め込んだんじゃないかと思
うしかないな。
 さて肝心の料理の味だが、もちろん美味かった。ハルヒや朝比奈さんもたいした腕前だ
が、それと同等以上の水準にある断言できる。
「鶴屋さん、本当に美味いですよ、この料理。俺、感動しましたよ」
 俺に表現できる最大限の賛辞を惜しみなく鶴屋さんに送った。
 すると、鶴屋さんはくすぐったそうにして少し照れながら、
「キョンくん、それは褒めすぎっさ! でもそんなに喜んでくれたら、あたしも作った甲
斐があるってもんだねっ!」
 鶴屋さんが照れるという珍しい光景に、俺はしばらくの間箸を止めて見入ってしまった。
 だが、その視線を敏感に感じ取った鶴屋さんは、照れ隠しのためか俺に対してとんでも
ない質問をぶつけてきた。
「ところで、キョンくんとハルにゃんって、どこまでいってるにょろ?」
 俺はもう少しで口の中のものを噴き出すところだった。
「あの、鶴屋さん、いっている意味がわからないんですが……? ていうか、俺とハルヒ
は何でもないっていうことは、すぐにわかりそうなもんでしょ」
 だが、鶴屋さんは今にも大笑いしそうな表情で、
「キョンくん、キミ本当にそう思っているのかい?」
 俺は当然ですといった風に頷いた。
「そうなのかい? そんなら、そういうことにしておくっさ!」
 何か気になる言い方だ。



237:オーパーツの謎を追え10
07/06/24 13:00:10 T7Y/xpWh
 そんなこんなで、クリスマスと正月を合わせたようなご馳走を十二分に堪能した俺は、
最後の一枚に記されているお宝を求めて、再び発掘作業を再開した。
 もっとも、俺としては先ほど発掘したオーパーツの一部と思われる金属ですでに打ち止
めだとは思っているのだが、そうはいってもまだ何かがあるのではないかという、仄かな
期待があるのも事実であり、こうして鶴屋さんに見守られながらせっせとシャベルで土を
地上に跳ね上げているわけだ。
 そうしてしばらく掘り進んでいると、なにやらコツンという音がして、そこから慎重に
掘り返してみると、またも壺が姿を現した。
 俺は息せき切って、
「鶴屋さん、また出てきましたよ!」
 そう声を掛けて、たった今掘り出した壺を鶴屋さんに手渡した。
 すると中身を取り出した鶴屋さんが、
「キョンくん、何か入っているみたいだよっ!」
 俺がやっとの思いで穴から這い出し一緒に確認してみると、鶴屋さんの手には以前俺が
彼女に頼んで発掘してもらったあのオーパーツにそっくりの金属棒があった。
 それは、以前のモノとうり二つ、どころか全くの同一物体に思えた。
 なんだろう、いったい何だというんだ? 何故こんな場所にオーパーツの類がこれほど
出土するんだろうか……? ここら一体は特異地帯か?
 俺は視界ゼロの霧の中を進むかのように自問自答を続けていたが、俺の浅い知識ではも
ちろんわかるはずもなかった。
「キョンくん。いったいこれは何だろうねっ? どう見ても今あたしん家で保管している
金属棒と同じにょろ」
「ええ、おそらく同じ種類のものでしょうね。これがいったい何に使用されるものなのか
はわかりませんが」
 俺たちは動きを止めてその金属棒をじっと見つめながら、様々なことに思いを巡らせて
いた。しかし、突如それを打ち消すような出来事が起こった。

「それをこっちに渡してもらおう!」

 振り返ってみると、二人の男が立っていた。年の頃は俺たちとあまり変わらないか。
 だが、いつの間に? まるで気配さえ感じさせなかったぞ。
 その二人の男はどちらも同じような中肉中背といった体型だ。だが、その二人の表情に
は俺たちをいかにも見下しきったような、蔑みの表情が浮かんでいた。
 ―この雰囲気はまるであの野郎だ。
 そう、かつて俺と朝比奈さんが未来からの指令とやらで動いていたとき、それを邪魔す
るかのように花畑で立ちふさがった、あのすかした野郎に雰囲気がそっくりだ。
 しかし、どう見ても姿は別人だ。つまりは、やつと立場を同じくする未来人の一派では
ないだろうか。俺は即座にそう直感した。
 事態は一変し、尖った刃物の切っ先を突きつけられたような、嫌な緊張感が俺の体を駆
けめぐった。
「これを渡せとはどういう事だ?」
 少しでも時間稼ぎをしなければ。
「お前たちに言うべきことなど何もない」
 にべもなかった。
「君たちがどう言うつもりか知らないけどさっ。あまりに不躾過ぎはしないかいっ?」
 鶴屋さんがやや強い調子で不快気にそう言い返した。しかし、鶴屋さんはこの連中と常
人との雰囲気が違うことを感づいているのか、あきらかに警戒心を滲ませていた。
 ひょっとしてこいつら、問答無用で俺たちから奪い取るつもりかもしれない。
 それに、こいつらが本当に未来人なら、俺たちの知らない武器を持っていても不思議じ
ゃない。

238:オーパーツの謎を追え11
07/06/24 13:01:03 T7Y/xpWh
「ふん、もう少し穏便に事を運ぶつもりだったのだが、しょうがない」
 そう言った瞬間、二人組のうちの一人が一瞬消え去り、次の瞬間鶴屋さんの真後ろに現
れた。
 これにはさすがの鶴屋さんも反応しきれず、オーパーツを抱えながら横に避けようとし
たが、その瞬間、そいつが鶴屋さんの長く綺麗な髪をつかんで、乱暴に引っ張った。
 鶴屋さんは「きゃっ!」と悲鳴を上げ、苦痛の表情を滲ませた。
 その男はさらに、鶴屋さんの持つその金属棒を奪い取ろうとしていた。
 鶴屋さんは抵抗するものの、髪の毛を掴まれている状態では、それもままならない。
 その鶴屋さんの表情を見た刹那、俺の全身の血が逆流しそうになり、次の瞬間、我を忘
れて駆け寄り、その男を力任せに殴りつけていた。

 俺の拳に鈍い痛みが走ることと引き替えに、その男は後方へ吹っ飛び、そして倒れ込ん
だ。

 完璧な不意打ちだったせいか、そいつは地面に倒れたまますぐには起き上がれないでい
る。
 俺はすぐさま視線を走らせ鶴屋さんの様子を確認したが、幸いにも彼女はたいしたこと
はなさそうだった。
「鶴屋さん、大丈夫ですか?」
「うん、このとおり平気っさ! ありがとうキョンくん!」
 だが、俺の攻勢もここまでで、俺の前に立っている鶴屋さんの表情が驚きのそれに変
わったとき、俺はかわけもわからず、そしてそれを知覚さえ出来ず、地面に倒された。
 ―全身が痛い。
 弱いな俺、今度護身術でも習ってみるか。だが、今はこの状況をどうするかだ。
 しかし顔を上げると、俺を殴りつけた男は、倒れている俺を一瞥しただけですぐさま標
的をオーパーツを持つ鶴屋さんに変え、迫りゆく。

 ―動け、俺の体! あんな奴らに鶴屋さんをどうにかさせてたまるか!

 だが、俺の脳が下した必死の命令にも衝撃を受けて間もない俺の体が中々言うことを聞
いてくれず、かろうじて足をガクガクさせながら立ち上がることができたに過ぎない。

「待て! もしその人に手を出したら許さねえ!」

 しかし、その男は俺の必死の言葉にも立ち止まることもせず、俺を振り返ることさえな
かった。
 俺は必死で追いすがろうとするが、間に合わない。
 しかし、そう思ったのもつかの間俺は意外な光景を目撃した。
 鶴屋さんに迫った男が彼女の腕を掴んだ瞬間、不思議なことにその男が弧を描くように
一回転してそのまま地面に叩きつけられた。
 目を疑うような3秒間だった。俺には、どのようにしてその男がそうなったのかすらわ
からなかった。
 さらには、さっき俺に殴られ倒れ伏していたもう1人の男がやにわに起き上がり、そい
つもまた鶴屋さんに向かっていった。
 しかし今度は鶴屋さんが近寄り、その男が掴みかかったと同時に、鶴屋さんは体を反転
させるようにして避け、逆にその男をの腕を掴んでその勢いを回転運動に変化させると、
男はあっさりと地面へとダイブする羽目になった。
 その男は呻きながら、まるで地を這う毛虫のようにもがいていたが、先に倒されていた
男がいち早く立ち上がり、そしてもう一人の男を立ち上がらせると、憎々しげな表情でそ
して殺気の籠もった視線を俺たちにぶつけてきた。
「わざわざこの時代に合わせて徒手でいたが、そうも言っていられないようだな」
 すると、そいつらは先ほどとは打って変わって、愉悦の色を浮かべながら自分の懐に手
を忍ばせた。

239:オーパーツの謎を追え12
07/06/24 13:02:18 T7Y/xpWh
 ―やばい、銃か?

 そう感じると、俺は咄嗟に鶴屋さんの前に立ちふさがった。俺は何も考えちゃいなかっ
たさ。ケガをするかも知れないなんて思考すら働かなかった。
 だが、そいつらが木々が生い茂り鬱蒼としている方向に視線を向けるやいなや、なぜか
ギョッとし、そして忌々しそうにその方角を凝視したあと、今度はいかにも悔しそうに俺
たちを睨み付け、チッと舌打ちして何処かへと去っていった。

 ―助かった……しかし、何だ?

 遅まきながら、俺は奴らが見ていた方角に視線を向けてみたが、残念ながら何もなかっ
た。それでも、俺は直感的に何かを感じ取っていた。今はおぼろげでぼんやりとしている
んだが。
 しばらくして、俺ははっと我に返ったように鶴屋さんに駆け寄り、改めて無事を確認し
た。
「鶴屋さん、大丈夫ですか!?」
「うん、このとおり元気ハツラツっさ!」
 よかった、いつもの鶴屋さんだ。朗らかな笑顔を浮かべている。
 しかし……なんだろう、鶴屋さんから感じる違和感は? 俺の気のせいであればいいん
だが……。
 
 しかし、俺が鶴屋さんの手を引いたとき、俺はさっきの違和感の理由を理解した。
 鶴屋さんは、足をもつれさせて躓きそうになったのだ。
 幸い、すんでの所で俺が抱き留めたのでそれ以上倒れ込むことはなかった。
 抱き留めて俺の腕の中にいる鶴屋さんは、普段の存在感とは裏腹にどこまでも華奢で、
このまま抱きしめれば折れてしまいそうだった。
 その後しばらく、鶴屋さんはじっとしていたが、自分の置かれている状況―まだ俺に
抱き留められたまま―を理解するに従ってハッとしたようになり、
「……ごめんよ、キョンくんっ!!」
 鶴屋さんは顔を赤くしたまま、少しあわてながら俺から体を離した。
 しかしその時、鶴屋さんの足取りはやはりおぼつかなく、その上明らかに苦痛の色が滲
んでいた。 
「鶴屋さん、まさか足を……?」
「気づかれちゃったね……あたしとしたことが、ちょっとドジを踏んじゃったよ……」
「でも、やつらに傷つけられなくて、本当によかったですよ。本当に……」
「ごめんよ、キョンくん、心配させて……。それと、ありがとう……あたしを助けようと
してくれて……」
 いつもの口調とは違った鶴屋さんに見つめられていると、なぜかにわかに穏やかならざ
る気分に陥り、俺は平静を保つため、視界の半分を中空を見つめるように意識した。
 だがな、この状況なら誰だってそうなってしまうに違いないぜ。普通の男ならな。
 そんな俺の動揺を感じ取ったわけではないだろうが、鶴屋さんの顔が赤い。しかも妙に
艶やかな瞳で俺を見返している。
 何処か落ち着かない雰囲気だ。喉が渇く。自慢じゃないが、俺はこういったことに慣れ
ていないんだ。
 しかし今はそんな場合じゃない。いつまた、奴らが姿を現すかも知れないからな。
 俺は心の何処かで惜しいことをしたと悔いながらも、この空気を断ち切るように、
「鶴屋さん、俺が肩を貸しますから、とにかくここを下りましょう」
「……そうだね」
 鶴屋さんも心持ち残念そうな色そん表情に滲ませていたが、すぐさま俺の提案に従った。
そして俺たちは荷物をまとめると、再び獣道へと向かった。



240:オーパーツの謎を追え13
07/06/24 13:03:44 T7Y/xpWh
 俺は鶴屋さんに肩を貸しながら、ゆっくりと歩みを進めていた。さすがに、鶴屋さんの
足を気遣いながらの下山ではそうスピードは出なかった。当然だ、鶴屋さんに無理をさせ
るわけにはいかんのだからな。
 ところで鶴屋さんだが、今日襲撃してきた連中のことを口には出さなかった。おそらく
この人のことだ、ある程度は見当がついているんだろう。だからあえて言わないんだろう
がな。
 それでも、妙に静まりかえったこの空気はいかんともし難く、俺は何かを話しかける必
要に駆られた。
「それにしても鶴屋さん、あなたがあんなに強いとは思っても見なかったですよ。ひょっ
として、なにか武術でも習っているんですか?」
「まあね、ちびっちゃいころから、いろんな事を習わされていたからねっ! あんな連中
ぐらいならなんでもないことっさ」
「それでも、いくらあなたが強くてもあんな無茶はしないで下さいよ。俺の精神と心臓に
悪いですから……」
 そう言うと、鶴屋さんは少し嬉しげにしたあと、打って変わってやや呆れたふうに俺を
見返した。
「なーに言ってんだいっ! キョンくんのほうこそ、無茶してくれちゃって。あたしのた
めに……。でも、やっぱりキョンくんも男の子だよねっ! あたしを守ろうとしてくれた
とき、とってもかっこよかったよっ! それに嬉しかった……なんてねっ!」
 照れくさそうにしながら、鶴屋さんは俺の肩につかまったままの状態で、顔を俺に向け
た。
 当たり前だが顔が近い。互いの息づかいと体温が感じられて、俺の思考がまともじゃな
くなりそうだ。

 ―それに、今度ばかりは自分を抑えきれそうになかった。
 
 俺たちはまるで恋人同士のようにごく自然に互いの唇が近づけ、そしてそっと触れあっ
た。
 だがしばらく見つめ合ったあと、無性に照れくさくなり、この世のものとは思えないほ
ど真っ赤になりながら視線をそらせた。

 ―俺は鶴屋さんとキスをしたんだ!

 それでも、俺に後悔はなかった。それに他の誰かの顔が浮かぶことも……。
 誰がって? さて、な……。
 あとは互いに気恥ずかしくなり、俺たちは無言のまま、鶴屋家の車が迎えに来る手はず
になっている登山口まで急いだ。
 俺たちがやっとのことで懐かしの地上に降り立つと車がすでに待っており、乗り込むと
車は俺を自宅まで送ってくれた。
 俺は鶴屋さんに先に病院に行くように言ったんだが、自分は大丈夫だから後で行くと聞
かなかった。俺をあまり心配させたくなかったのかも知れないが。
 そして車は俺ん家の前で静かに止まり、俺は降り立った。その俺を見送ったときの鶴屋
さんの一言がとても印象的だった。

「キョンくん、あたし……本気になっちゃうけど、覚悟するにょろ!」

 意味がわからないほど俺はガキじゃない。わかっているさ……。俺にだってな。

 しばらくしてふと我に返り、気を取り直したように玄関のドアノブに手を掛けようとし
たとき、小さなメモ書きがドアに貼り付けられている事に気がついた。
 俺はそれを確認すると、反転してある場所に向かった。



241:オーパーツの謎を追え14
07/06/24 13:04:50 T7Y/xpWh
 俺は今自宅近くの公園にいる。そして、ベンチに腰を掛けている。
「そこにいるんでしょう?」
 俺はどこを見つめるでもなく、そう呼びかけた。
「こんにちわ、キョンくん。お久しぶりね」
 この間会ったばかりですが……。
「そ、そうだったわね。ごめんなさい」
 その女性は、ペロッと舌を出してそれだけが少し幼さを残しているように思えた。
 もうおわかりだろうが、俺の隣りに腰を下ろした妙齢の女性は朝比奈さん(大)だ。
 どうやら、俺の予感も当たっていたらしい。
「説明してもらいましょうか、朝比奈さん。……まず、奴らは何者なんです? まさか、
あなたの部下かなんかじゃないでしょうね?」
 俺にそこまであからさまな疑いを掛けられたことに、朝比奈さんは少し青ざめながら素
早く首を左右に振り、否定を表した。
「ちがうわ、キョンくん。あの人達は、私たちとはいわば敵対している組織の一員なの。
おねがい、信じてちょうだい」
 俺は頷いて見せたが、心の底では疑いを消してはいなかった。これまでの経験から、朝
比奈さん(大)の話を額面通りに受け取ることはできないと感じていたからだ。
「それから、鶴屋さんは無事なの? わたし、それがとても気に掛かっていたの」
「ええ、大事には至っていません。今頃病院で手当を受けているはずですが……」
「そう、それはよかったわ。心配していたから」
 朝比奈さんにとって鶴屋さんは、学生時代の大切な親友だったのだからな。それは偽り
のない気持ちだろう。
 鶴屋さんの状況を説明し終えると、俺は朝比奈さん(大)に向き直り彼女の瞳をじっと
見据え、
「朝比奈さん、全て話してもらえませんか? あの金属のことも全て……」
 朝比奈さん(大)は視線をふと地面に落としたあと、意を決したように俺に向き直り、
「そうね、あなたにそこまで色々と知られたじゃ、しょうがないわね。……わかっわ、全
てお話しします」
 朝比奈さん(大)は覚悟を決めたようにそう述べた。
「では、単刀直入に聞きます。あの金属棒、俺たちはオーパーツと呼んでいますが、あれ
はいったいなんです?」
「キョンくん、あなたはタイムマシンと聞くと、どんなものを思い浮かべるかな?」
「タイムマシン……ですか? そうですね、俺なら猫型のロボットが使っていたものやら、
車の形をしたもの、あるいは箱形のものを思い浮かべますが……」
「そうね、だいたいそのあたりが妥当なところよね。実は、あなた方が発見した2つの金
属棒、あれはごく初期に試作された時間遡行のためのタイムマシン、それの部品なの」
 未来人に関わっているんじゃないかと思っていたが、まさかそれだったとはな……。
「でも、今のあなた方はそういった装置は使っていないですよね?」
 俺は、実際に経験したからな。もちろん何かに乗り込んだことはないぜ。
 朝比奈さん(大)はコクッと首肯すると、
「ええ、今はそういったものは使っていません。詳しくは禁則だけど、もっとコンパクト
なものよ」
 なら、なぜ奴らはそれほどに重要視していたんだ?
 その俺の疑念を感じ取ったんだろう、朝比奈さん(大)は夕焼けの空を見上げながら、
「彼らがあれを狙ったのは、私たち未来の人間、とくに時間遡行をする人にとって、なく
てはならないものだからなの」
 どういうことです?


242:オーパーツの謎を追え15
07/06/24 13:05:58 T7Y/xpWh
「昔、といっても私たちの時代からすればだけど。……ある時、時間遡行の方法を考案し
た人がいたの。そして、それを可能にする装置、あなたの思い浮かべたようなタイムマシ
ンを試作することにも成功したわ。そこに部品として使用されていたのが、あなたがオー
パーツと呼んだセシウムとチタンの合金なの」
 ……そんな重要なものだったのか。ある意味、これほど衝撃的なこともないぜ。
 なおも朝比奈さん(大)は続ける。
「その金属棒、正式にはT・S・C・D(タイムアンドスペース・コントロールデバイス)と
呼ぶんですけど、それは、時空を制御して設定した時代や場所に人や物体を正確に遡行さ
せる能力を持つの。たとえれば、この時代で言うところのマイクロチップが載った基盤の
ようなものかしら」
 だったらなぜ、いつまでもあの山に埋まっていたんです? 
「そうね、キョンくんがそう疑問に持つのも無理ないわ。では理由を言ってしまうけど、
あれはずっとあそこになければならなかったの」
 それはいったい……?
「試作されたタイムマシンは、すぐにその博士が自ら乗り込んで実験を行ったわ。結果は
大成功。その人は私も知っている有名人として歴史に名を残すことになるの。でも、事態
は思いもよらないことになったわ。気をよくした博士は実験を何度も繰り返したのだけど、
ある時何度目かの実験で、ある時代についた直後に乗っていたタイムマシンが何らかの原
因で爆発を起こしたの。残念ながらその事故は、博士が帰らぬ人となるという最悪の結果
をもたらしたわ……」
ひょっとしてその博士というのは、俺が命を救うことになったあのハカセくんのことだ
ろうか? 俺はふとそう思った。
「博士が亡くなったことによって、時間遡行が一時的に不可能になってしまったわ。もち
ろん、その理論は論文の形で残されていたのだけれど、時空制御を可能にするそのTSCDを
製造するノウハウは博士しか知り得ないものだったし、製法については何も残されていな
かったの」
 俺は朝比奈さん(大)の話を聞きながら、TSCDと言う名称があるらしいオーパーツの映
像を頭に浮かべていた。
 あのパーツを作ることは、未来の技術でも簡単にはできないのか? それほどまでに特
殊なものなのか……。
「その後、多くの人がそのTSCDをなんとしても作り出そうと挑戦したけれど、誰一人とし
て叶わなかったの。それと共に時間遡行をすることも頓挫したまま。人々は途方に暮れた
わ。でも、ある人が気づいたの。そのTSCDが博士が事故にあった時代からずっと、その時
代までどこかで存在し続けていることに……。そしてそれは今も有効だと」
 話が壮大になってきた。聞いている俺も、どの程度理解しているんだかわからんね。
「それから以後は、製造が至難を極めるTSCDを作り出すことよりも、何処かで眠っている
そのTSCDの力を借りて、時間遡行を出来るようにした装置の開発に心血が注がれるように
なったの。そして、ようやく成功したわ。原理は簡単、設定した時間軸をその時代に存在
するTSCDにシンクロさせて、それによって時間遡行を出来るようにしたの。おかげで装置
はずっとコンパクトで、しかもシンプルになったわ。……ただし、欠点としてそのTSCDが
存在する時代までにしか遡ることは出来なくなったけど」
 といっても、今はハルヒの変態パワーによって、4年前までしかさかのぼれないわけで
しょうけどね。
 朝比奈さん(大)はフフっと笑って「そうね」と答えた。
 しかし、それなら奴らがTSCDとやらを狙った理由もわかるってもんだ。TSCDさえ自分た
ちのものにしておけば、時間遡行が出来るのはそいつらしかいなくなる。邪魔者はいなく
なり、既定とは違った別の未来を奴らの好きなように創り出せるってわけだ。
「キョンくんの思った通りよ。だから、今日はわたしが監視することになっていたの。で
も、あそこに来るタイミングがギリギリになっちゃったから、そのせいであなたと鶴屋さ
んを危ない目に遭わせてしまったけど……」


243:オーパーツの謎を追え16
07/06/24 13:07:32 T7Y/xpWh
 朝比奈さん(大)は「ごめんなさい」と言って頭を下げた。
 しかし、俺たちは朝比奈さん(大)のおかげで結果的には助かったんだから、そんなに
気にしなくてもいいですよ、と答えておいた。
「今日は色々とご迷惑を掛けてごめんなさい。キョンくんには全て話し終えたし、あたし
はもう帰ります」
「待って下さい、朝比奈さん! あのTSCDはどうすればいいんですか? あなたに引き渡
せとでも?」
 しかし、朝比奈さん(大)はかぶりを振り、
「いいえ、あれは鶴屋さんのおうちで保管してもらえればそれでいいわ。ただし、あれを
破壊したり、何処かへ移動させないで欲しいの。それだけよ」
 そう言い残して、朝比奈さん(大)は消え去った。未来へ帰ったのだろう。
 俺は一人ぽつんとベンチに座りながら朝比奈さん(大)の話を反芻していたが、やがて
雪がちらつくようになった頃、おもむろに腰を上げ、すでにあたりを夜の帳が支配しつつ
ある自宅への帰り道をたどった。
 やれやれ、重い話だぜ……。



 翌週の月曜日、そして放課後。俺はいつものようにSOS団アジトであるところの文芸部
室で、朝比奈さん給仕のお茶をありがたく啜りながらのんべんだらりとしていた。
 至極のひとときである。ハルヒの騒音さえなければなおよかったのだが。
 そんな時、突如としてドアが開き、鶴屋さんが飛び込んできた。
「こんちわー!」
 鶴屋さんは驚異の回復力ですでに足は治癒したらしく、平然と歩いていた。
 俺は鶴屋さんの顔を見た瞬間、あの時キスしてしまったことを思い出してしまい、人知
れず体温が上昇した事を感じたが、鶴屋さんはそんな様子を微塵も見せなかった。さすが
だ。
「鶴屋さん、今日は何かしら?」
 鶴屋さんは、ハルヒの問いには笑顔だけを向けてそれには答えず、俺に近づくとやおら
口を開き、
「やあ、キョンくん。ちょっと先になるんだけど、今週の土曜日は空いているかなっ?」
「はあ、予定はなにもありませんが」
「じゃあその日、ちょっと付き合ってもらってもいいにょろ?」
「ええ、いいですよ」
 するとハルヒは笑顔を浮かべて興味深げに、
「今度は何をさせるの? 薪割り? それとも温泉掘りとか? ひょっとしてメイド服姿
で一日鶴屋家の使用人体験をさせるとか……?」
 おいおい、どんな罰ゲームだよそれは……。
「あら、いいじゃない。たまにはあんたもコスプレしてみたら?」
 ごめん被る。なにが悲しゅうて男がメイド姿をせねばならんのだ?
 鶴屋さんはハルヒに向かって首を振ると、

「キョンくんには、うちの親父さんに会ってもらおうと思ってねっ!」

 その瞬間、部室の中は凍り付き、その後クラスター爆弾を投下されたようにあちこちで
怒気が炸裂した。誰に対してだって? ……そんなもの、俺に決まってるさ。
 ああ、めまいがする、それにやけに寒いな。俺はひょっとして八甲田山で雪中行軍の途
中だっけか? そう勘違いしてしまいそうな境遇だ。
 俺は焦点が定まらないまま視線を滑らせると、ハルヒは口を引きつらせながら、いかに
も平静を装って風に鶴屋さんに問い返した。


244:オーパーツの謎を追え17
07/06/24 13:08:34 T7Y/xpWh
「鶴屋さん。それって、冗談よね? びっくりさせないでよ、鶴屋さんも人が悪いわね」
 だが、鶴屋さんは再度首を振ると、
「本気っさ。キョンくんを鶴屋家の婿候補として親父さんに会ってもらうにょろ。もう親
父さんには話もしてあるしねっ!」
 そう言い終えるが早いか、鶴屋さんはハルヒが凍り付いている間にとっとと部室をあと
にした。「キョンくん、じゃあまたねー」という言葉を残しつつ……。

「キョン、これはいったいどういう事なの? 説明しなさいっ!!」

 再起動したパソコンのように我に返ったハルヒは、臨界を越えたプルトニウムのような、
ここら一帯消し去りかねない怒気と殺気とその他諸々のエネルギーをまき散らしながら俺
に迫ってきた。
 ええと、どうしようか。つうか、どう言い訳すればいいんだ? 実は俺も錯乱していて
考えがまるでまとまらないんだ……。
 見ると、古泉はこの世の終わりのような青い顔をしているし、朝比奈さんも怖い顔をし
ている。しかしより俺を震え上がらせたのは、長門が無表情ながらも以前会長に対峙した
ときのようなオーラを醸し出していることだ。

 ―鶴屋さん、あなたの本気って、こういう事だったんですか? 

 気が早すぎます。っていうか、いきなり身も蓋もなく最終奥義を繰り出すようなことは
勘弁して下さい。本当に俺の命がやばいです。


 俺はライオンの群れに囲まれたインパラの心持ちで、ただ捕食されるのを待つしかな
かった……。

 ―合掌。


245:オーパーツの謎を追え18
07/06/24 13:09:35 T7Y/xpWh
 一応、俺は生きていたらしいので後日談を。まずは鶴屋さんと発掘をしていたときに先
に出土した金属に関してだ。
 あれは鑑定の結果、微量だが中に水素が含まれているとのことだった。どうも水素吸蔵
合金なのではないかという見解だ。おそらくタイムマシンの動力源だったのだろう。
 そして2本のTSCDだが、今も鶴屋家の倉庫に眠っている。これからも家宝として代々保
管していくとのことだ。
 めでたしめでたしなのかね?
 だが、めでたいかどうかわからないのが今の俺の立場だ。
 あの時、俺が集中砲火を浴びるすんでの所で鶴屋さんが再び入室して、ハルヒを口八丁
で宥めてくれた。といっても、ハルヒに対して挑戦状を突きつけた事には変わりないのだ
が。
 そのハルヒだが、今のところ沈黙を保っている。何を考えているのかはわからんが。
 それと、閉鎖空間が毎日猛烈に発生しているらしく、古泉が毎日ヨレヨレの姿で登校し
てくることには俺も心が痛む思いだ。ま、がんばってくれ。
 さて、明日は俺を鶴屋さんの親父さんに引き合わせるらしい。どうなるのかね。
 どうやらキスの代償が高く付いたな。だが、俺は後悔はしていない。というのもあの時
の気持ちは本物だったからだ。だから、今回の話も誠実に対応していくつもりだ。

 やれやれ、どうやら今日は眠れなくなりそうだ。



終わり

246:名無しさん@ピンキー
07/06/24 13:10:40 T7Y/xpWh
以上です。

247:名無しさん@ピンキー
07/06/24 13:15:59 wTwD7Ejx
GJ。
読みごたえがあった

だが原作ネタに関することが入ってるから、注意書きしといた方がよかったかもね

248:名無しさん@ピンキー
07/06/24 14:01:02 EFCwhxgU
キョンハアイカワラズフラグメイカーダネイッ
GJ

249:名無しさん@ピンキー
07/06/24 14:39:07 kwBB1pEE
オーパーツか…
穴堀名人のキョンならではの話ですね!
話は変わるがタイムカプセルでオナホ入れた奴の話を思い出した。


250:名無しさん@ピンキー
07/06/24 15:10:41 ccXwRM6r
GJ

俺は好きだ

251:名無しさん@ピンキー
07/06/24 16:30:04 c5WOGLVI
鶴屋さんSSはやっぱいいわぁ。癒される

252:名無しさん@ピンキー
07/06/24 17:25:52 lcNz4uOp

キョンと親父さんの会話。


「娘さんを俺にくださいっ」
「…………」
「お願いします!」
「……条件がある」
「何でしょう!?」

「仏の御石の鉢、蓬莱の玉の枝、火鼠の裘、龍の首の珠、燕の子安貝を持って来なさい」

「……笑うところですか」

253:名無しさん@ピンキー
07/06/24 18:26:37 Ia8wQIcu
漫画であったな・・・

254:名無しさん@ピンキー
07/06/24 19:17:01 j0NWzStg
>>252
鶴屋さんはそのうちお月様に帰ってしまうのか。。。

255:名無しさん@ピンキー
07/06/24 19:26:03 wTwD7Ejx
鶴屋さんはてるよなのか

256:名無しさん@ピンキー
07/06/24 19:51:49 xS/sP4Rz
鶴屋「ドロー!魔法カード!『両親に紹介』!」
鶴屋「ドロー!モンスターカード!『二人きりの満月夜』!」
鶴屋「ドロー!トラップカード!『既成事実作成』!」
鶴屋「ドロー!魔法カード!『子作りしまs
キョン「やめてぇぇぇぇぇぇ!もう俺の体力は0なのよ!」

257:名無しさん@ピンキー
07/06/24 20:15:58 lwP1/3Oj
レッドホットチキンテラウマスwww

258:名無しさん@ピンキー
07/06/24 23:13:45 lcNz4uOp
閑散とするなんて珍しい。

>>254
「その時はキョンくんだけと言わずみーんな一緒に連れてくにょろ!」

259:名無しさん@ピンキー
07/06/24 23:21:36 lcNz4uOp
……閑散としてるなんて言ったけどF5押したら人大杉になった。

260:名無しさん@ピンキー
07/06/24 23:23:25 gQ4VyCqr
専ブラ使えよ

261:名無しさん@ピンキー
07/06/24 23:27:41 lcNz4uOp
そうします。

262:名無しさん@ピンキー
07/06/24 23:29:20 gQ4VyCqr
しかしエロパロ板が人多すぎねぇ…
GW以来だな

263:名無しさん@ピンキー
07/06/24 23:48:49 zPGSyDfj
誰かキョンが転校してハルヒがそれについて行く作品のタイトルを教えてくれまいか?
確かこのスレで見かけた気がするんだがどうしても思い出せないんだ

264:名無しさん@ピンキー
07/06/24 23:59:32 kwBB1pEE
?あったか?VIPじゃないか?(´・ω・`)

265:名無しさん@ピンキー
07/06/25 00:06:23 1hlrtllz
内容の記憶が曖昧すぎて上手く言えないんだがオチがkanonっぽい作品だったんだが…
一応VIPの方も探してみます

266:名無しさん@ピンキー
07/06/25 00:26:51 CS6HP4/8
>オチがkanonっぽい

どうでもよくなった

267:名無しさん@ピンキー
07/06/25 00:49:08 MDwy+4HS
VIPの作品だな…
喧嘩して気まずいまま転校したやつだろ?

268:名無しさん@ピンキー
07/06/25 01:02:20 8oV7yH+P
VIPかな?
九条の人のじゃね?

269:名無しさん@ピンキー
07/06/25 01:19:19 d+1mcHOu
>>263
ハルヒが遊びでキョンを虐めてそれでキョンが学校を辞めて遠くの予備校に入ったらSOS団が全員いたって話だったかな

270:名無しさん@ピンキー
07/06/25 02:14:49 GLDs2sDt
>ハルヒが遊びでキョンを虐めてそれでキョンが学校を辞めて

ここまで見て「うぉ、面白そう。読みてえ!」と一瞬持ったが、

>予備校に入ったらSOS団が全員いた

めちゃくちゃどうでもよくなったw

271:名無しさん@ピンキー
07/06/25 05:21:04 oQN9Ei5e
おそらく「キョンの決断」だと思われ。268氏の言うとおり、九条さんのとこのSS。
改訂版があるかい奇譚で公開していたが、今は公開停止になってるな。

272:名無しさん@ピンキー
07/06/25 07:20:50 1hlrtllz
レスくれた方々サンクス
ここのじゃなかったか…お騒がせしました

273:名無しさん@ピンキー
07/06/25 07:31:12 W+sNsqNQ
結局許してもらうまでキョンの周りをうろつくのだろうな。
読んで違和感はあるが…

274:名無しさん@ピンキー
07/06/25 13:55:23 lBVR+Z+/
タイトル見ただけで厨くせえSSだなw
いにしえのKanonSSみたいだ

275:名無しさん@ピンキー
07/06/25 14:13:49 N3IBf+6I
ガキはお黙りなさい

276:名無しさん@ピンキー
07/06/25 15:31:03 vgggxu5l
祐一が家出とかな
やってることが全然変わってなくて笑えるかもw

277:名無しさん@ピンキー
07/06/25 16:46:34 6cDA1hqo
人格設定にかなり違和感のあったSSだと記憶している

278:名無しさん@ピンキー
07/06/25 16:52:51 kElH2WsP
>ハルヒが遊びでキョンを虐めてそれでキョンが学校を辞めて
これでアウトだろw
つーか引っ張りすぎつーか、どうでもいいよ。なんか無理して雑談てるっぽいぞw

279:名無しさん@ピンキー
07/06/25 17:20:10 WHQfHwmw
九条ってもしかして、40にもなってルリルリのオマ○コってやってる九条のことか?
そういやハルヒにも手を出したとか聞いてたが。

280:名無しさん@ピンキー
07/06/25 18:25:10 sfnChpTD
ところで森さんのエロって投下されたことある?

281:名無しさん@ピンキー
07/06/25 18:32:08 W+sNsqNQ
>>280
ある。キョンがレイプする話だが

282:名無しさん@ピンキー
07/06/25 18:54:36 3juqq/jy
古泉とするお話もあったな

283:名無しさん@ピンキー
07/06/25 20:09:02 sfnChpTD
>>281ー282
ありがとう。これでゆっくり眠れるよ。

284:名無しさん@ピンキー
07/06/25 20:24:59 vAwbPVVY
>>265
遅レスだが31-438じゃないか?

285:名無しさん@ピンキー
07/06/25 20:28:13 vAwbPVVY
ごめん。ミスった。31-441だ。
連投すまそ。

286:名無しさん@ピンキー
07/06/25 20:38:37 1hlrtllz
>>285
これを探してたんだよ俺は…マジでサンクス
kanonを見て祐一とキョンがあまりにも似てたから急にこのSSを読みたくなったんだ

287:名無しさん@ピンキー
07/06/25 22:28:36 m7hWp9Q6
>>280
森さんに酒を飲ませたらエロい事になった話があったはず。

288:名無しさん@ピンキー
07/06/25 22:32:53 W+sNsqNQ
>>280
涼宮ハルヒの酒乱だったかな?アレも、おティンティンオッキする作品だな。


289:名無しさん@ピンキー
07/06/26 00:54:00 TQTWwz/J
森さんssだったら古泉のズボンの尻を触る癖がなんたらってssが良かった。

290:名無しさん@ピンキー
07/06/26 03:27:38 WkjUxFgb
つまりウホッ?

291:名無しさん@ピンキー
07/06/26 06:51:56 CAYaxNOG
陰謀で森さんが橘に物凄い威圧感で迫った後で従わないから橘を監禁して調教する…


そんなことを朝飯を食いながら思い付いた。

292:名無しさん@ピンキー
07/06/26 07:57:21 B5zQfIiB
>>291
さぁそれをSSに!

293:名無しさん@ピンキー
07/06/26 08:12:09 CAYaxNOG
>>292
おっけ。なんとか頑張ってみる

294:名無しさん@ピンキー
07/06/26 11:35:18 bydh6gbj
>>293wktkしてまってるぜ!!

295:名無しさん@ピンキー
07/06/26 21:31:45 GIDKL0q7
珍しい流れだな

296:名無しさん@ピンキー
07/06/26 23:02:53 YXAS+Ay5
過去の作品を読み漁っていてふとよぎった考え

フラグの王様佐々木団バージョンはどんなんだろ?

297:名無しさん@ピンキー
07/06/26 23:19:50 zlTQH/V9
(´Д`)y─┛~エロイのまだ~?

298:名無しさん@ピンキー
07/06/27 07:25:28 DiqJKk7R
ここぞとばかりに、あと10分レスが無かったらハルヒは俺の嫁

299:名無しさん@ピンキー
07/06/27 07:34:34 cW9kfoVx
やれやれ。
阻止だ

300:名無しさん@ピンキー
07/06/27 20:42:01 4waHo0+5
>298じゃないがなんで阻止できるのか不思議すぎる

301:名無しさん@ピンキー
07/06/27 20:58:30 IZZ3AxAI
ここは書き込みはしないけど職人さんのSSをまだかまだかとチェックしてるピンク戦士が大勢いるからさっ

302:名無しさん@ピンキー
07/06/27 21:42:51 4jpcDG+t
>>300
住人皆変態

303:名無しさん@ピンキー
07/06/27 21:45:41 1HqmdSKO
>>300
専ブラ使ってりゃ新規書き込みなんてすぐに分かる

304:名無しさん@ピンキー
07/06/27 21:56:14 zr1Mtj6U
まあ、書き込み1人いればロムってるのはその30倍はいるし

305:名無しさん@ピンキー
07/06/27 21:57:01 xzhvfxKp
24時間SSが無かったらミヨキチはいただいて行きますね。

306:名無しさん@ピンキー
07/06/27 21:57:41 1HqmdSKO
なんてこったい

307:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:26:52 jrWdTCh4
>>305のために送る駄文かつ超短篇ストーリー(まとめには絶対載せないでね!)



ハルヒ、すまない。
俺はミヨキチとキスをしてしまった。
相手が小学生とかそういうくだらないものは関係ない。別に俺がロリコンというわけではない……たぶん。

そう、あれは先週の日曜日のコト。



308:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:38:34 JSbFA/Fj
>>307
GJ!ナイス阻止!!

つ24時間の間に長編SSが書かれなかったら周防は俺の嫁

309:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:41:07 oaxdpIZU
どうなんだろうね、この小学生のようなのりは。

310:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:41:37 iASy1GYF
夏だし。

311:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:41:48 ZfVl7RiH
いい歳してつまらんことするなよ。

312:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:43:07 S6VK0x6b
>>308 阻止してやんよ

「お前は・・・!」
 周防九曜が、そこにいた。
「私は――見ている・・・・・それだけ」
 お前の親玉は視姦プレイ推奨か。
「視姦――プレイ?・・・・・それは――何?」

周防九曜なる新手の宇宙人とのいかれた日常。その始まりであった。

313:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:45:27 S6VK0x6b
続く。

と書くべきだったな、失念していた

314:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:46:00 1HqmdSKO
>>308
URLリンク(www.uploda.org)

315:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:46:23 1M5/BtkL
もっと耐性つけないと夏は乗り切れんぞ

316:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:49:13 JSbFA/Fj
周防が可愛くてやった、ドラえもんが何とかしてくれると思った。
後長門はいらない

317:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:57:10 fKZy+E4v
久しぶりにSS書きたいけど時間がない…

318:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:58:48 Xftd1gIn
>>317
ないんだったらつくればいいのよっ!!

319:名無しさん@ピンキー
07/06/27 22:59:53 fKZy+E4v
無茶言うな

320:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:31:17 jrWdTCh4
>>315
俺ほどの超低クオリティはめったにいないぞ?

321:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:36:23 eDGaph0R
何だ?レスが進んでいたと思ったら、まったく



322:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:51:48 cJPF0fkQ
ああ、なんか描写ばっか気にして書いてたら、気付けば内容がスカスカになってた。

323:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:54:11 gtXY+bHL
描写は後でいくらでも整えられるから、まずは勢いでやってみれ

324:名無しさん@ピンキー
07/06/27 23:57:16 mbi9ZWvo
表面
(^ω^)<YOU!大丈夫だYO!投下しちゃいなYO!




(#^ω^)。。○(欝陶しいな。投下してないのに無駄口叩かないでくれる?)

325:名無しさん@ピンキー
07/06/28 00:05:08 VA6Sh9/e
皆、最初はだーっと書いて後から描写を書き加えていくような感じで書いてんの?
俺は今までずっと、書いては振り返って推敲して、また書いては振り返って、って感じなんだけど。
ていうか、気になってすぐに振り返ってしまうんだがw
だから最後に通して推敲する時にもあまり修正が入らないんだよなあ。

326:名無しさん@ピンキー
07/06/28 00:11:14 zMIqkzFV
そろそろ変態ハルヒ&佐々木シリーズが読みたい

327:名無しさん@ピンキー
07/06/28 00:34:38 lbWGmEfK
>>325
俺は少し書いては増やして削って
んで最終的におかしくなったが気にせず投下 って感じかな

328:名無しさん@ピンキー
07/06/28 01:05:27 YKM/6/JM
>>325
気分次第。ちょこちょこ直すほうが多い。
でも>>322のように描写気にして中身がおろそかになるなら、まず内容を書きたい分だけ書くのもありだと思った。

329:名無しさん@ピンキー
07/06/28 02:48:07 jpolAU2W
>>305-
おまいらみんな最高だよwww

330:名無しさん@ピンキー
07/06/28 09:53:16 2tvA/zVh
これのどこが?

331:名無しさん@ピンキー
07/06/28 20:00:54 rjXXS/Dg
ついでに訊きたいんだけどみんなプロット通りに書きあがる?
しょっちゅう外れるんだけど。

332:名無しさん@ピンキー
07/06/28 20:49:36 tRepDfNV
外れるって何がどういう風にどの程度

333:名無しさん@ピンキー
07/06/28 20:58:42 5K+o9hsB
書いてみればわかる

かも。

334:名無しさん@ピンキー
07/06/28 21:00:52 Bk2lTJU4
書きながら展開考える

335:名無しさん@ピンキー
07/06/28 21:01:50 YmMfg52x
俺も外れるっちゃあ外れるが、最後はなんとか予定通りに着地するな。

336:名無しさん@ピンキー
07/06/28 22:07:01 4qVktZ1y
書いている内に別の物になってるなんて良くあることだ。

ストーリー的にも最初に考えてたより良いしな

337:名無しさん@ピンキー
07/06/28 22:24:30 x/gT2VKG
短編は結末だけ決めて書き始めるの。勢いが重要。
長編はプロットをきっちり練って書き始める。で、書いてる途中はプロットのことを忘れるようにして、詰まったときに思い出すようにする。


338:名無しさん@ピンキー
07/06/28 22:28:44 ccbLEFNt
そういや最初の20行だけ書いて投げたSSがいっぱい溜まってる・・・
完成させたいけど何を書こうと思っていたのかさっぱり思い出せないというオチ

339:名無しさん@ピンキー
07/06/29 00:34:38 kBc1Lqbq
URLリンク(www.asahi-net.or.jp)
URLリンク(www.raitonoveru.jp)

このあたり見たら

340:名無しさん@ピンキー
07/06/29 00:43:28 fYU+snfs
「『驚愕』発売延期のお知らせ」のポスターのハルヒギザカワユス
普段からああやって素直っぽかったらいいのに


脱ツンデレ!!!!みたいな?

341:名無しさん@ピンキー
07/06/29 00:49:04 dYAM6gU4
>>339
単に他人のやり方を聴いてみたいだけで
別に方法論について教えを請いたい訳じゃないんじゃねーの?

342:名無しさん@ピンキー
07/06/29 02:50:52 5bkt/rN5
>>340
それは思ったw

素直ハルヒ新鮮ww

343:名無しさん@ピンキー
07/06/29 07:02:07 h26JMjUS
新ジャンル「素直ハルヒ」


VIPにどうぞ

344:名無しさん@ピンキー
07/06/29 07:09:10 0PLzOCAa
つまり佐々木出現で今のままではダメだと思ったハルヒが素直に感情出せるように変わろうと頑張ったが、
6月1日までには無理だと思い改変された世界が『驚愕』が発売延期されたこの世界なんだ

345:名無しさん@ピンキー
07/06/29 07:55:13 axz30wM4
また追い出している。

346:名無しさん@ピンキー
07/06/29 08:34:47 aYuOdtTU
さすが発売延期は谷川のお家芸だな。
田中よりはましだかな。

347:名無しさん@ピンキー
07/06/29 09:45:54 kScBP8Re
佐藤大(ry

348:名無しさん@ピンキー
07/06/29 10:12:14 YoAocWBS
いうなW

349:名無しさん@ピンキー
07/06/29 14:59:02 jmTeyf67
6年夏を待ってた作品の(上)が出るとか、
10年ぶりに敵は海賊の新刊が出たとか、
パーンの竜騎士までなぜか突然出たとか、
今年の出版界はなにか異様なことが起きてるから、
砂糖=苦瓜がもうヒモで新刊なんざださねーよとかで、
バランスを取ってるんではなかろうか。

350:40-355
07/06/29 22:41:58 2kQxWcr3
投下します。
エロなし。9レス予定。

前作を読まなくても大丈夫ですが、分かりにくい部分はあるかもしれません。



351:名無しさん@ピンキー
07/06/29 22:42:24 /6ZJdx9U
>>349
ソノラマの消滅で十分すぎるほどのバランスは取れてるなw

352:電気少女はここにいる事を高らかに宣言する
07/06/29 22:43:44 2kQxWcr3
Prologue.

――――――――――――――
「わたしはここにいる」
 それは、誰の言葉だった?
 誰に向けられた言葉だった?
 そして、本当にわたしはここにいるの?

 考えるのは良いけれど、答えなんて、きっと、――ない。

 ――ない――けれど………
――――――――――――――

 平凡で平穏、普通にして不変である、まるで俺の人生そのものを象徴しているかのような、そんなある日の夕暮れ時の話になる。
 浪人する事無く大学に入れたのは良いが、『人生って何だろう?』などというこの年代特有の病気にかかり、ここ数年ほどどことなく物足りない日々を送り続けていた俺は、卒業を間近にひかえたその日の帰り道、交差点で幸せそうな一組の夫婦とすれ違った。

 文字通り比翼の鳥のごとく、互いに寄り添ってゆっくりと歩く彼等。
 俺と一回り以上は離れているように見える男性と、俺と同い年ぐらいであろう女性。
 ぱっと見は、下手すりゃ親子にも見えてしまう二人組みなんだが、………なんだろう、彼等の間を流れる空気みたいなものが、二人が確かに夫婦である事を証明している、………みたいな。
 脳というエンジン内部のネジやら燃料やらが不足しているせいか、そんなどうでも良い事をぼんやりと考えていた俺の横を、子供が二人、俺との相対比率としてはサッカー選手並みの動きですり抜けて、彼等の元へと駆けていく。

 ――置いて行かれた。

 自分が持ってない、もしくは『いつか』に忘れてきた、何かを彼等の中に感じたのか、ただ単に目が焼けそうなほど鮮やかな夕焼けにメランコリックを打ち込まれただけなのか、………はっきりした理由は分からないのだが、俺は確かにそんな気分にさせられた。
 でも、それで良いような気がした。
 ああ、こっちの理由ははっきりしているようだ。

 だって、彼等は笑ってたから。
 幸せそうに、笑ってたから。

――――――――――――――
 存在しない答えを見つけるために、彼等の結末を観測する。

 笑えているから幸福なのか、幸福だから笑えているのか?
 ニワトリが先かたまごが先か?

 笑えている彼にはどうでも良い事でも、
 笑えない彼には、とても大事な事。

 少なくとも、今のところは、それが彼等の『選択』の結末。

 だったら、わたしの結末は?
   ――わたしの『選択』の結末は?
――――――――――――――

 ふいに、いつかの、俺達を置いて行ってしまった、ある日の風景を、あの日の彼等を思い出した。
 そこに何か引っかかりを覚えた俺は、昔の何でもない、しかし満ち足りていた頃の事を頭の中でセピア色の痛みとともに巡らせる事にした。


――――――――――
電気少女はここにいる事を高らかに宣言する
――――――――――




353:電気少女はここにいる事を高らかに宣言する
07/06/29 22:45:09 2kQxWcr3
1.

―――――――――――
 忘れて――が………彼女の――願い
 忘れないで………が………彼女の――願い
 彼の………彼等の――意思は――どこ?

 ――わたしの………意思?
―――――――――――

 何か大事なものが記憶のマリアナ海溝に沈んだまま錆びついてしまっているような、そんなザラザラした違和感がずっと抜けなかった高校二年の三月の話だ。
 俺達は見かけ上はいつも通り、モラトリアムと言えば聞こえは良いが要するにただの暇つぶしでしかないSOS団団活動に従事していた。

 部室で展開されているのはいつもとなんら変わりない光景。
 俺と古泉が『古泉一樹黒丸マークショー』という名のボードゲームを使った一方的な架空虐待を行っている横で、ハルヒと朝比奈さんが女二人でも十分姦しい事が証明されそうなくらいの音量で騒ぎ立てている。
「みくるちゃん、このサンバの衣装なんて、どうかしら?」
「ふえー、派手派手さんな衣装ですねー。で、これがどうかしたんですか?」
「着るのよ」
「………みー?」
「ゆー」
 ………訂正。どうやらこちらでも一方的なリアル虐待が行われているようだ。

「ふええええっ! む、無理無理、無理ですよー。見えちゃうじゃないですかー」
「大丈夫よ、みくるちゃん! あなたなら飛べるわ。アイウィッシュユーワーアバード、………メイビー」
「メ、メイビーとかついているうえ、さりげなく過去形なところにそこはかとない悪意を感じますー」
「でも、もう注文しちゃったしね」
「鳴かされちゃうのホトトギス!」
 さて、朝比奈さんも程よく壊れかけてきている事だし、出したところで泥舟かタイタニックくらいにしかなりそうにない助け舟であるという現実はあえて無視して、止めに入る事にしよう。

「アホ、着るならお前が着ろ」
 コツン、と軽くアホな子ことハルヒの頭をはたきながら、捕食者である彼女とそれに睨まれた愛くるしい小動物である朝比奈さん、二人の間に割り込む。
 ハルヒは少しだけ考え込んだ後、何故か顔をほんのり赤く染めながら、上目使いでこちらを見ながらこう言った。
「何よ、あんたあたしがこれ着てるところ、………見たいの?」
「いや、全然」
「コンマ5秒で否定した!」
 ってもそんなもん、俺にとっちゃ今日の日経株価指数並みに興味ないしなあ。
「うー、ちょっとは想像してみなさいよ。あたしがこれを着てあんたの前でサンバのリズムに合わせて飛び跳ねるのよ。どうなると思う」
「しわになって、洗濯するのが大変だよな」
 どう洗っていいかもよく分からん服だからな。洗濯機では、………無理だろうしなあ。
「………『見せてんのよ』とか、決め言葉を用意している女って、どーよ?」
「えっと、………痴女?」
「うがー!」
 殴られる俺、それをしょうがないといった感じで見つめる古泉と朝比奈さん。
 いつも通りの風景だ。………そのはずだ。

 だから、俺とハルヒを見つめる二人の目が悲しみを持っていた事だって、きっと気のせいに違いない。
 きっと、海溝に沈んだ記憶の錆とやらが、俺の目をマイナス方向に濁らせているだけなんだろう。



354:電気少女はここにいる事を高らかに宣言する
07/06/29 22:46:34 2kQxWcr3
―――――――――――――
 彼の――意思は………わたしの………意思?
 観測………不明――分からない――だから――

 彼に――会いに………行く。
―――――――――――――

「じゃ、本日の活動はこれにてしゅーりょー!」
 ハルヒの能天気100%な終了宣言とともにいったん帰宅の途についた俺達SOS団であったが、そのメンバーのうち朝比奈さんを除いた俺・ハルヒ・古泉の三人は、1時間ほど後で再び部室に集合する事になっていた。
 それは何故かというと、
「そいじゃあ、明日のみくるちゃんお別れパーティーの準備を始めるわよ」
 という、再集合時、開口一番に飛び出したハルヒのこの言葉どおりの理由によるものである。

 朝比奈さんは卒業と同時に海外へと移住する事が急に決まったらしく、普通の卒業生のようにお出かけ感覚の気軽さでSOS団にご降臨なさるのは難しくなるだろうとの事だ。
 急な知らせは驚きだったし、残念ではあるのだが、移住する事自体は既に朝比奈さんも納得済みの事であり、だったら俺達に出来る事は二年間SOS団のエンジェル兼お茶くみ係を勤め上げた彼女を華々しく送り出す事くらいであろう。
 ………パーティーの進行表を見る限りでは、いささかやりすぎの感はあるが。
 つーか、俺は口から火をふきながらムーンウォークでリンボーダンスだなんてファンキーすぎる真似はできんし、『ここで古泉くんが華々しく散る』って、朝比奈さんの前に古泉と今生の別れを済ましてどうするよ。
「うるさいわよ、キョン! あんただって、急な話だったんだから準備にかける時間が無いっていう業界っぽい裏事情や、準備不足はスタッフの熱意で補うっていう業界っぽいお約束は理解できるでしょ! それに、人間やろうと思えば割と何でも出来るんだから」
 ………こいつは。

「ははは、まあ、良いんじゃないでしょうか、………多分」
 少し引きつり気味の笑顔でそう言うイエスマン。まあ、自分が散るかも知れん提案に満面の笑顔で賛成はできんわな。
「………いや、でも、朝比奈さんを見送りたいという事それ自体なら、僕は全面的に賛成しますけれどもね」
 それは、まあ、同意する。………お前に同意する事なんて十五階からの目薬に成功するほど奇跡的な事だがな。
「失ってからでは、遅いですからね」
 俺の軽口というジャブを交わしてカウンター気味に届いた実感がこもっているそのセリフに、『まあ、そうだな』などと、煮え切らない返事を返しながら、パーティーの準備をのろのろと進めていった。

 そんな俺をハルヒが『遅いわよ、キョン』などと無理矢理作った元気印のハルヒボイスで責めたててくる。
 別にサボっているつもりはねーよ。つーか、さっきの古泉の言葉でノックダウンされなかった俺を、ちょっとだけでもいいから褒めてくれたって良いんじゃないか、本当に。
 そう言葉に出して反論しようかとも思ったのだが、空元気を空回りさせている我等が団長様を直視してしまうと、そんな気持ちもはじける事なく、プシューと音を立ててしぼんでいってしまう。
 そういう風に思い通りになってくれない自分の感情ってやつを持て余しながら、こちらも全く思い通りになりやしない別れってやつの準備を進めていく俺達であった。




355:電気少女はここにいる事を高らかに宣言する
07/06/29 22:49:34 2kQxWcr3
2.

―――――――――――――――――
「これが俺の選択だ」
 そう………言って――彼は………わたしの………手を――握り締めた。
 彼の――意思を………込める――かの………ごとく――
 強く――強く――
―――――――――――――――――

 パーティーの最終準備のせいですっかり遅くなってしまったその日の帰り道、ハルヒや古泉と別れて一人になった瞬間に、今までごまかしてきた、ごまかせてきた寂寥感ってやつが一気に俺に襲い掛かってきた。

 意味不明な言葉を叫びそうになる口を手やら気合やらで必死で押さえこむ。
 それが襲ってくるのは、多分仕方の無い事だ。
 思い起こされる彼女との二年間はとても楽しいもので、だからこそとても悲しいものなのだから。
 そう思いながら、そう思おうとしながら、ぎゅっと目を閉じたその瞬間だった。

「彼女――それは………誰?」

 ふいにあたりに響いた声にはっと目を開いた俺は、太陽はまだ沈んでいないはずなのに、俺の周囲だけがいきなり夜になったかのような感覚に襲われた。
 気配も何もなく、それでいて周囲を漆黒に染めていくような、そんな見覚えのない少女が俺の目の前に立っていた。
 ………見覚えなんて、無い、はず、だ、………よな?

「わたしは――周防――九曜?」
「何で疑問文なんだよ」
 あまりに堂々とずれたセリフを喋るため、思わず隣の電柱に突っ込みを入れてしまった、がつん。
「………いてぇ」
 コンクリートを割かし本気で叩いた手がかなり本気で痛い、………つーか、めがっさ痛い。
 どうやらこれは現実のようだ、調査料は俺の左手、………割にあわねぇ。
「彼女は………あなたから………奪った」
 俺の惨状(自爆とも言う)を無視して、延々と意味のつかめない話を続ける少女。
 先程――俺の………敵となった――コンクリートジャングルに――先住民の………ビートが――響き………渡って――いく。
 すまん、今のは痛みのあまりに目の前のコレがうつった自分でも意味が分からない妄言だ、聞き流せ。
「彼女は………彼に――与えた」
 しかし、何故だろうな? でたらめに思いついた言葉を並べているとしか思えないこいつの話それ自体は、俺の妄言とは違って聞き流しちゃいけない、そんな気がするんだ。
 それはまるで、戻れないとしても、進まなきゃいけない道であるような気がして………。

「選択肢の――ある………彼は――幸福?」
 割舌の悪いテンポのズレたセリフがコンクリートで跳ね返り、俺の中の柔らかい場所に次々と突き刺さってくる。
「選択肢の――ない――あなたは………不幸?」
 頭痛とは少し違うおかしな感覚に襲われ、頭を押さえてしゃがみこむ俺を無視し、彼女は淡々と自分のペースを崩さずに話を続ける。
 確かに、ある、と、思う。
 俺が誰かに奪われたもの。俺が失くしたもの。
 それは――
「………分からない。――だから………観測者は――石を投げ込む」
 演者は、投げ込まれたその石を踏み台にして手を伸ばす。
 2・3センチほどの踏み台はしかし、俺が『  』を思い出すには十分なもので………、
 ………思い出せそうになるには、十分な、助力で、
「観測者は――聴衆に――なる」
 俺の手が、心が、以前失くした『  』に届きそうな気がしたその瞬間、

「キョン!」

 強い力で、強い声で、俺は非現実から渡された石の上から、このどうしようもない現実世界に引き戻された。
 ………結局、届く事はなかった。



356:電気少女はここにいる事を高らかに宣言する
07/06/29 22:51:04 2kQxWcr3
 俺を引き戻した声の持ち主は、ハルヒは、まるで目の前にいる九曜に気付かないかのように俺だけに対して一方的に言い、喋り、叫ぶ。
「何か分かんないけど、あんたが、あんたまで、どっかに行っちゃうような気がして、いや、その、行っちゃうってのはみくるちゃんじゃなくて、でも誰だかは分かんなくって、それで、あたしも、ほんとわけ分かんないんだけど、追いかけてきちゃった」
 その声を左耳から右耳へと流そうとして失敗し、脳内にハルヒボイスが溢れかえっている状態で、それでも俺は別の事を、こんな事を考えていた。
(届かなかった、………って、何に? ………誰に?)

 今の状況に、そして今までの展開に、正常な思考とかいうやつを粉微塵に粉砕され、電池が切れたかのように呆然とするしかない俺に再び蛇が声をかけてきた。
「………これが――選択肢。得るもの………失うもの――選ぶのは――あなた」
 そう言って、俺に林檎という名の手を差し出す九曜。
「キョン、何なの、この子?」
 そこでようやく異次元的な彼女の存在に気付いたのか、ジト目で俺の袖をつかむハルヒ。
 何故だか浮気がばれた若旦那のような気分に陥ったが、それは今特に関係ないのでほっとく事にする。
 それより問題なのは、九曜の言葉だ。
 時間が止まったかのような感覚の中で、足りない頭を働かせる。
 多分こいつについていく事を選ぶと、俺は俺が失くしたものを見つける事が出来るのだろう。それは疑いようが無い。
 理由は、………無い、けれど。

 じゃあ、仮に九曜を選ぶとして、選ばなかった方というのは何なのだろうか?
 もう一つの選択肢は、失うものとは何なのだろうか?
 天秤のもう片方にかけられている、そいつは、
「キョン………」
 不安そうに俺の袖を掴んでいるこいつ、………なの………か?


 気付くと、いつの間にか俺はハルヒをかばうように九曜と向き合っていた。
 俺の手は、ハルヒの手を掴んでいた。
 離れないように、失くさないように、しっかりと、しっかりと。
「それが――あなたの………選択?」
「………知るか」
 あいにくだが俺の頭は難しい事を考えられるようにはできちゃいないんでね。因数分解くらいならまだ何とかなるが、『選択?』だなんて聞かれてもどうしようもないのさ。
 それでもあえて答えをひねり出せってんなら、………そうだな。
 ただ、失くしたくないって思っただけだ。………思っちまっただけ、なんだよ、………悪いか。
「――それなら――良い」
 ………いや、正解なのかよ。
「あなたが………選んだのなら――構わない」
 こんな、意味が分からないまま選んだ、投げっぱなしの選択なのにか?

 九曜は俺の疑問に答える事無く、振り返る事も無く立ち去っていく。
 最後に風に乗って、こんなセリフが聞こえてきた。
「あなたの――瞳は………キレイな――まま」
 冷静に考えると結局、最初から最後まで意味が分からない言葉を呟きながら立ち去って行っただけの彼女。
 でも、俺はそんな彼女の後姿を見ながら、何故か、『失った』と、『完全に失ってしまった』と、そう思った。
 そう思い、そう感じた事で、また寂しさが強くなる。

「キョン」
 今にも消えそうなハルヒの声はそれでも確かに届いてはいたのだが、俺はそれに答える事無く、三月だというのに肌寒い風をただひたすら受け続けていた。
 心も体も風をさえぎってくれるものなんて無かった。

 ――無い、って思い込んでいたかった。




357:電気少女はここにいる事を高らかに宣言する
07/06/29 22:53:32 2kQxWcr3
3.

―――――――――――――――――
 観測者は――聴衆に………なり………聴衆は――演者に――なる。
 だから………これはきっと――必然。
 だから――わたしは………演者に――なる。

 彼の――意思に………答えて………。
―――――――――――――――――

 次の日の放課後、朝比奈さんのお別れパーティーに参加するため廊下を歩いていたところで、俺は元生徒会長であり、我がSOS団の宿敵である人物に呼び止められた。
「少し話があるのだが、いいかね?」
 半強制的な疑問文、会ったのは久しぶりだがこの人も変わらないね。
 いつもなら、そんな皇帝レベルの尊大さを皇帝ペンギンレベルまで中和するかのように彼の後ろには………、

(あれ?)
 後ろには、誰がいたというのだろうか?

 元会長は、疑問に思う事すら疑問に思えるような、そんな意味不明の状況に襲われてクエスチョンマークを舞い躍らせながら首を傾げる俺を、B級映画のエンドロールを見るような目で眺めながら、
「ふん、ま、そうなるだろうね」
 無性に癇に障る諦めを込めて、そう呟いた。
 原因不明ないらつきとともに、俺がその言葉の意味を問いただそうとした時、
「コラー! うちのスーパー雑用星人に何絡んでんのよー!」
 ハルヒが喜んでいいのか悲しんでいいのか分からないセリフをはきながら、ヒーローごっこをする小学生のように颯爽と登場した。
 ………できればそのまま退場してくれ、ややこしい話になる前にな。正義の味方も悪の組織も、町を破壊する事に変わりは無いんだから。


「何よ、あんたもう生徒会長じゃないんでしょ! 今のあんたには『正義の名の下に大いにあたしを楽しませる涼宮ハルヒの団略してSOS団』に何かする権限なんてないはずよ。大人しくピーピー泣きながら女の尻でも追っかけまわしてなさい、全裸でね」
 いつも通り、聞くに堪えないめちゃくちゃな内容を並べ立てるハルヒ。………勝手に団名を変えるのは悪の組織のやり方だろ、ま、今更だが。
 しかし、いつもならそれに対し何かこっちもこっちだと思わせるような大人気ない言葉を返してくる元会長は、今回は反論する事も無く、ぼそりとこう呟くだけだった。
「………ああ、それも悪くないかもな」
 自分の予想したのと違う反応に戸惑ったのか、呆けた顔で黙り込むハルヒに彼は続ける。
「安心したまえ。今日はそこの彼に伝えたい事があってきただけだよ。キミが目くじら立てるような内容じゃない」
「じゃ、あたしが聞いてても問題ないでしょう」
「………ああ、そうだな。もう、何の問題もなくなってしまったんだからね」
 俺の意思を無視して話が進んでいく。………まあいつもの事だ、気にするな、俺もしない、てかしたくない。

「私は、………俺は、全部覚えてる」
 いきなり意味が分からない。というか、あんたキャラ変わってないか?
「それがあの馬鹿の最後の願いだったから。あいつが関わった全ての事を、俺はずっと、覚えている」
 それでも多分、それは本気のセリフなのだろう。
「だからお前等の仲間の事も、俺が全部覚えてるさ」
 俺もハルヒも余計な茶々を入れる事無く、………違うな。
 ――入れる事が出来なくて、ただ聞いている事しか出来ないのだから。

 それだけだ、といって振り返り、歩き出す彼に問いかける。
「どこ、行くんだ?」
「追いかけるのさ。あいつは俺の後ろで何か企みながら、ずっと笑ってりゃいいんだから」
 言いながらも足は止まらず、俺達から離れていく。
 その迷いの無い後姿を見ていると、まるでもう二度と彼には会えないような、そんな気がして、
「「ちょ、待(ちなさい)てって!」」
 ハルヒと二人で、追いかけようと走り出した瞬間、
「――駄目」
 聞いた覚えのある誰かの声とともに、視界が漆黒の闇に染まった。


358:電気少女はここにいる事を高らかに宣言する
07/06/29 22:55:17 2kQxWcr3


 闇に見えたのは舞い上がった髪の毛、テニスコート一面くらいならゆうに覆えそうな長髪が、俺達と彼の間を遮断し、
「あなた達に――選択肢は――もう………ない」
 緞帳が舞い降りた時には既に、そこには誰もいなかった。
 彼はおろか、あの長髪の持ち主すらも。

――――――――――
 別に………理由なんて――ない。
 ただ――そうしたいと………思った。
 だから――多分――

 コレが………わたしの――意思
――――――――――

「………何なのよ、一体!」
「俺が知るか」
 我に返って騒ぎ出す団長様に冷静にそう返す。
 一応ではあるが、SOS団は不思議を追い求めるための団体である。
 だがしかし、現実に不思議事件に出会った時に、何の力も無い高校生の集まりでしかない俺達に何が出来るかって言うと、………まあ、こんな感じで何も出来ないわけである。
 あの長髪は多分九曜だったとは思うのだが、はっきりとは分からないし、そもそも九曜だったとしても、別に俺は連絡先を知っているわけじゃないからな。

「大体、人数が少なすぎるのよ」
「無茶を言うな、無茶を。あんな行動目的は不明のくせして、活動内容は半ゲリラ的な団体、四人いるだけでも十分だろう」
 それも、朝比奈さんがいなくなったら、俺と古泉とお前の三人になっちまうわけだが。
「………そうだったかしら?」
 まあ、奇跡的に新入生が入ってくるような事があったら話は別だがな。
「そうじゃなくて、こう、何かあったような気がするのよ、………忘れちゃいけない、何かが」
 それは、俺も思う。………だけど、

『それが――あなたの………選択?』

 そう思うたびに、昨日の九曜の言葉がリプレイされる。
 リプレイされる度に、俺の足はそこで止まってしまうのだ。
 彼のように迷いなく足を踏み出す事は、どうやら俺には出来そうにない。

「で、お前は朝比奈さんのお別れパーティーと得体の知れない不思議事件と、一体どっちを選ぶ気なんだ?」
「その質問、ずるくない?」
 かもな、とだけ返し、背を向ける。
 よく分からない、けれど確かに大事な、大事だった何かに、背を向ける。
「ちょっと、待ちなさいよ、キョン!」
 追いかけてくる別の『何か』を感じながら、俺は部室へと向かうのであった。


 次の日、俺は失くしてしまった何かに気付き、泣き叫ぶ事になる。
 選択する事の重みを、知る事になる。
 それを抱えて、生きていく事になる。

 ――ずっと、ずっと、それを背負って、生きていく事になる。




359:電気少女はここにいる事を高らかに宣言する
07/06/29 22:58:31 2kQxWcr3
Epilogue.

――――――――――――――――
 時は止まらず流れて行き、カーテンコールが近づいてくる。
 演者は聴衆にはなれない。
 聴衆は観測者には戻れない。
 ならば、全公演が終了した時、演者はどうすれば良いのだろうか?
 脇役のわたしは、どうすれば良いのだろうか?
 わたしは、どこにいれば良いのだろうか?

 詰まらずに喋れるようになっても、
 人間らしく振舞えるようになっても、
 今だ、その答えは出ないまま。

 今日もわたしは、答えを探し続ける。
   ――多分、幸福になるために。
――――――――――――――――

 目の前に広がる光景を見ながら、俺は一通りの回想を終えた。
(ああ、似ているんだ)
 あの日、俺達の目の前から消えた彼と目の前の男性は、年齢を考えると同一人物ではないだろうが、顔や雰囲気はそっくりなのだ。
(そういえば、)
 あの日の彼は、どうなったんだろうか?
 何を得て、何を失ったのだろうか?

「おとーさん、おかーさん、まってよー。………わわっ!」
 転びそうになる我が子を左手一本で受け止める父親。
 勢いに任せて一緒に転びそうになるのを母親が後ろで支えながら、父親の腕の中の女の子に話しかける。
「もう、慌てて走らないの。あなたも女の子なんだから、もうちょっとお姉ちゃんを見習っておしとやかに、ね」
「はーい」
「………」
 母親の注意に元気よく返事する長髪で元気な妹と、追いついてからぎゅっと父親の服の袖を握り締める短髪で眼鏡の姉。
 父親は左手で順番に二人の少女の頭を撫でていく。
 言葉はないがおそらく、ありったけの愛情をそこに込めて。

 幸せを得るためには犠牲が付き物なのだろうか?
 目の前にいるのは温かい家族、しかし、父親らしき男性を見ていると俺はついそんな事を考えてしまうのだ。
 彼はまだ、一言も喋っていない。
 いや、俺の予測ではあるが、彼はおそらくまともに喋る事が出来ないのだろう。

 その右半身はほとんど動かないようで、彼はずっと傍らの女性に支えられている。

 得るものや失うものなどを考えながら、ぼーっと眺めていたせいだろう。その男性と目が合ってしまう。
 彼は、『どうだ』と見せ付けるかのように、こっちを見て笑った。
 やはり右側は動かないのだろう。その笑みは左側のみ口角を上げた不自然なもので、
 ………しかし確かに、彼の、彼等の幸福さを感じさせる笑みだった。
「ははっ」
 笑顔が伝染する。
 幸福が広がっていく。
 答えが伝わってくる。

(どうでも、良いんだな)
 それが多分、彼の、彼等の答え。
(ああ、そういう事なのか)
 そして、気付く。
 あれからずっと、何故かは分からないが、幸せにならなきゃいけないと思いこんでいた。
 まるで呪いのように、そう心に刻み付けられているかのように、幸福だけを求めていた。

 ――俺達は、不幸な事に、ずっと幸福という形だけを追い求めていたんだ。


360:電気少女はここにいる事を高らかに宣言する
07/06/29 23:01:44 2kQxWcr3


 目を閉じて、深呼吸を一つ、吐き出した息と共に思い込みを捨て、少しだけ人生やら歩みやらを止めて、ゆっくりと考える。
 俺の幸せって何だったっけ?

(………あ、そうだ)

 それは意外と近くにあった。
 さあ、青い鳥に会いに行こう。
 今から彼女に会いに行こう。

 ――笑顔で、キミに会いに行こう。

―――――――――――――
 そんないつかの二人を見て、わたしはやっと理解した。

 答えなんて、ない、………けれど、

 それでも構わないのだ、という事を
―――――――――――――

 彼女へと続く道を歩きながら、先程の彼等の事を考える。
 不揃いで一見ボロボロにも見える彼等。

 いっぱいなくしたのだろう。
 いっぱい犠牲にしたのだろう。
 いっぱい失ったのだろう。

 それでも、………だ。
 彼等は幸福になったのだ。


 つまるところはそれが全てで、
   ――要するに、これはハッピーエンドなのだろう。

――――――――――――――――――――
 そしてわたしは、おそらくもう二度と交わる事はないであろう二人を見送った。
 相変わらず答えは出ないままなのだが、彼女達の選択の意味は今なら分かる気がする。

 そして、だから、わたしは決心した。

 わたしもここから、始めてみようと思う。
 主役になって見ようと思う。
 ………なり方なんて、分からないけど。


 とりあえず、胸をはり、前を見る。そこに確かにある未来を、自らの瞳で見据える。
 そして、電気仕掛けの機械人形に過ぎなかったわたしは、

「………わたしは、」

 『イマ』という現実に対し、
 『ココ』という世界に向けて、

「わたしはここにいる」

 ――そう、高らかに宣言した。
――――――――――――――――――――



361:40-355
07/06/29 23:02:26 2kQxWcr3
以上です。
では、また。


362:名無しさん@ピンキー
07/06/29 23:10:55 h26JMjUS
俺の読解力では内容の理解は難しいようだ。

363:名無しさん@ピンキー
07/06/29 23:38:33 vI5J7v0e
大体記憶していたけど、↑のを読み終わってから前作を読み直してみた。
上手い感じにリンクさせてて、矛盾がなくて、きちんと繋がりができてる。
谷川原作が妙に後付的な矛盾を感じさせるから、悲劇的でも面白かった。

ただ・・・悲劇苦手な僕としては、原作にこの手の落ちがないことを願うばかりだ・・・

しかし、ゲーム化はいいんだけど、「驚愕」はまだなのかね。

364:名無しさん@ピンキー
07/06/30 00:42:27 Jx3KigMj
この救いがあるようで、無いようで、でもやっぱりあるような感じは好きかもしれん。
「御都合主義的ハッピーエンド」じゃなかったことにある意味ほっとしてるんで、
結局この手の作風が俺の好みだってことなんだろうか。

365:名無しさん@ピンキー
07/06/30 06:06:03 AttBH4BH
こういう寂寥感が残る作品もすごくいいね。
まるくおさめるよりも、ずっと感じるものが多い。
次も期待しますね。

366:名無しさん@ピンキー
07/06/30 07:45:35 3FYmw7FJ
個人的にはハッピーエンドのほうが後味スッキリな感じで好きだが
この寂寞チックなのも好きだな。基本的には苦手な部類の作品なんだが・・・。
やっぱり書き方の問題だろうな。こういった作品はうまい人が書かないと
苦手な人にはつらいんだろうな。

367:名無しさん@ピンキー
07/06/30 11:07:21 rLYP1cal
1回目……?
2回目……やっぱりちょっと? で、前作その他を読み直す
3回目……余韻に浸ってる自分を発見
こういう軽々しいGJが似合わないくらいの静かで上質な余韻を残すのは難しいですよね。
すばらしいです。次回作にも期待!

368:名無しさん@ピンキー
07/06/30 14:48:41 lX310nSS
長門厨はキモくてウザいのぉ
陶酔するのは自分の引きこもり部屋の中でだけにして欲しいわい

369:名無しさん@ピンキー
07/06/30 17:00:40 oVER6BQ1
オペラでこんな感じの演目観た記憶があるが思いだせん

普遍性のある内容を説教臭く、下品な感じを受けずに読ませるのはやっぱ鍛錬の賜物なんだろうかね
自己啓発本のようないやらしさもあんまし感じない。掲示板形式だからなんだろうか。すげぇ不思議だ

大人が読んでも日頃逡巡したりするような問題や疑問と、宇宙人(だっけw)の側のある種対比がおもちろい
こういう問題の処理方法全てがバランスを取る事で解決されたりする事じゃないと思うけど
資本主義どっぷりになってる人間には良い意味のおせっかいの作品だと感じる

高校1年生ぐらいの時にこういう作品読みたかったわw

370:名無しさん@ピンキー
07/06/30 17:15:30 jKBHcUZA
寂しい。寂しいけれど綺麗です。


371:名無しさん@ピンキー
07/06/30 19:42:52 vcetN3OG
内容がよく解らないな
長門や喜緑さんが消えててそこに九曜が出てきているってことでいいのか?
前作を見てみたい

372:名無しさん@ピンキー
07/06/30 20:51:45 AttBH4BH
>>371
大人なら空気読みましょう。

373:名無しさん@ピンキー
07/06/30 21:01:30 BoayMCDQ
>>371
あー。空気は読まなくてもいいから、前作を読んできてくれw

374:名無しさん@ピンキー
07/06/30 22:15:10 4r1W+wcN
>>372>>373
お前らが一番子供っぽい

375:名無しさん@ピンキー
07/06/30 22:59:21 bbvENgLZ
もうみんな子供。

376:48 -154です
07/06/30 23:57:17 BsSnJPjM
空気を読まずにバカエロシリーズを投下。保管庫様に収蔵してもらっている48-154『笹の木~~曲』(変態佐々木?)シリーズのオチ的な番外編です。
3Pシリーズを書くつもりだったんですが、なぜか先にこっちが出来てしまったんで、投下させてもらいます。
今回は佐々木やハルヒは出てきませんが、他の登場人物がバカエロキャラとなって壊れていますので、作中のイメージを大切にしたい方は、出てきた時点で撤収することをお勧めします。
また、文中に一部ロリを示唆する表現がありますので、そういったものが苦手な方もスルーヨロ。
13レス予定。


『驚愕は結曲?』

377:48 -154です
07/06/30 23:58:02 BsSnJPjM
今日も激戦を何とかくぐり抜け、ハルヒを送り届けたあと、重い腰を引きずりつつ一日の中でも数少ない自由時間を満喫していると、背後から落ち着いた声が掛けられた。
「キョンくん、こんばんは」
やはり朝比奈さん(大)か。連日ハルヒと佐々木を相手に機関砲並みの連射をこなしているというのに、それでも尚、目線を一部に固定せざるを得ない神々しいプロポーションは相変わらずだ。
「キョンくん、ちょっとお話があるの。少しだけ時間をもらえないかしら」
もちろん喜んで。朝比奈さんのお誘いなら、いつでもどこでも馳せ参じますよ。と、二つ返事でOKしたいところだが、いまの俺は二柱の神様(仮)に挟まれて、どこにどんな監視がついているか分からないご身分だったな。
「ありがとう。それに安心して。涼宮さんと佐々木さんは、あなたの下校時間だけは牽制しあって絶対に手を出してこないから。いわばこの時間帯は38度線のDMZみたいなものなの」
えーと、やはり未来のあなたは俺の現状をご存知なんですね。
「ふふ。何を言ってるんですかぁ。私も手篭めにしたくせにぃ」

!!!!!!

「あれ?今日って笹鈴戦争開始から3週間目の月曜日ですよね?……え゛?1週間ずれてるの!?やだっ私ったら……ごめんなさい!いまの忘れてください!!」
そんな風に拝み倒されても無理ですって。それにいまの俺は大概のことには驚かない間違った体質を獲得しちゃってますから、ネタバレをお願いします。
「そう言ってもらえると助かるわ。私も要件が要件だけに、どうやって切り出そうかと悩んでいたんです。ちょっと長くなるから、いったん他の時空に移動してもいいかな?」
どーぞどーぞ。いまの俺は休憩が一秒でも増えるのは大歓迎です。


と、いうことで、俺は朝比奈さん(大)のたおやかなる御手に触れるという僥倖に預かりながら、あのぐらっとした感覚を堪能した。
で、着いた先で周囲を見回すと、鏡張りの天井と回転式のピンクのベッド、それに無駄に広いガラス張りの風呂……どう見てもラブホです。ほんとうに(ry
えーと、ここは?
「ごめんなさい、禁則事項です。でも、一応言っておきますと、ここは21世紀初頭からずっと経過した時代になります。このアンティークな内装を揃えるのに苦労したのよ」
いや、我々の時代でもここまでベタなラブホはアンティークです。と、ツッコミを入れたいところだが、そんなことより確認しておく必要があるな。
こういった装備が重要になる案件についてお話をするということなんでしょうか?
「ええ。少しタイミングが前後してしまったようだけど、せっかくですから、これからあなたの身に起こることをお話しておきます。
結論から言うと、キョンくんにとっての今日から数日後、涼宮さんは小さな私や長門さんがキョンくん争奪戦へ参加してくることを提案します。
これは涼宮さん曰く、休み時間や放課後に部室を占領しちゃうのは申し訳ないし、部室で行われるイベントなら女子団員には自由参加の資格がある、というのが表向きの理由。でも本当は、彼女は私たちの気持ちを汲んでくれたの」
女子団員限定で自由意志を認める辺りがハルヒらしいが……未来人組織は朝比奈さん(小)の参戦を許可するんですか?
「ええ。昔の私も上司に聞いてみたんですが、自分が望むなら積極的に参加してもよろしいと言われて大はしゃぎしました。
日曜日の佐々木さんを交えた制服で3P対決でだいたい察しが付いていると思うけど、彼女たちには強いNTR属性があるでしょ。
だから、乱交で気を逸らしたほうが涼宮さんの感情が安定し、新たな時空震の引き金にならないと判断されたんです。まぁその判断を下したのは、今の私なんですけどね」
それじゃ、あなたが元凶じゃないですか!
「だって私にはそれが規定事項ですから。それに佐々木さんも団体戦に乗り出してくるので、遅かれ早かれ、SOS団vs佐々木団(仮)の総力戦は避けられなかったと思います」
佐々木も団体戦!?……あの、目眩がしてきたんですが、それじゃあ俺は放課後にSOS団の3人娘と乱交パーティーをする上に、家に帰ったら佐々木だけじゃなく、橘や周防の相手もする必要があるということですか?


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