07/09/10 18:27:07 HLNTYt4i
播磨の逸物が膣から抜けると、白く濁ったゼリー状のものがコポリと飛び出してくる。
そしてその後も、八雲の呼吸に合わせて断続的に溢れ出てきた。
まるで酸欠の鯉が必死に口を開閉させているかのようだ。しかし、それを恥じらい
隠すだけの余力が八雲にはない。見て愉しむだけの余力も播磨にはない。精液と愛
液が混じった淫らな液体がベッドに垂れて染みを作っていくが、拭き取ろうという気す
ら二人には沸いてこなかった。
今はただ、余韻に浸り続けていたい。
やがてそれも堪能しきった時―
「も、もう駄目だ。悪いがこのまま休ませてもらうぜ」
「えっ……あ……」
体力尽きたのか、播磨がドサリと倒れこんできた。
相応の重量が圧し掛かり、どうにも身動きが取れなくなってしまう八雲。しばらく両
手をワタワタと動かすのだが、ついに諦め受け入れ始める。
胸が押し潰れて肺を圧迫しているのだから、本当なら息をするのも苦しいはずなの
だ。しかし八雲は、播磨の荒い吐息が耳朶をくすぐってくるのを感じて笑みを零してし
まう。無尽蔵とも思える彼の体力が枯渇したということは、その分だけ愛情に変換し
て自分に注ぎ込んでくれた証でもあるのだから。
「重い……けど、それが気持ちいいな……」
「ん? 何か言ったか、妹さん」
「……いえ」
彼を胸に迎え入れながら、八雲は天井を見上げる。
音が聞こえた。互いの呼吸が熱く耳元に掛かる音、廊下からコソコソと去っていくよ
うな足音、はるか遠くから聞こえる車のクラクションの音。しかしそれらはやがて静ま
り、今は冬特有の澄んだ空気が軽い耳鳴りを運んでくれる。
いつ終わるとも知れないノイズが常に一定の大きさで鳴り響いているせいだろうか、
八雲の心は時間が経つごとに平たく透明になっていった。波紋すら立たない水面の
ように。
見慣れた部屋が妙に広く感じるのは、多分そのせい。手を伸ばしても距離感は判
らず、背後のベッドすらそこに存在しているかも怪しい。まるでこの世界には自分と
播磨しか居ないようにも感じてしまう。確かなのは、胸に圧し掛かる播磨の重さと、同
じく伝わってくる彼の体温だけ。他の目に見えるものや感じるものは、すべて幻だった。
彼を胸に迎え入れながら、八雲は天井を見上げる。
「……私、好きなんだ……」
無心の中、自覚もないまま漏れたその言葉。
そして最後、誰もいない廊下が愛液と小水の混合液で水浸しになっているのを確
認すると、八雲はゆっくりと目を閉じていくのだった。
― FIN ―